本発明のポリエステルフィルムは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、チタンを除く遷移金属及び典型元素金属の合計量である全金属元素含有量がポリエステルに対して150ppm以下であること特徴とする。
ここで、アルカリ金属とは、Li、Na、K、Rb、Cs、及びFrであり、アルカリ土類金属とは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、及びRaを表す。
また、チタンを除く遷移金属とは、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、及びAuの周期表3族〜11族の金属元素であり、典型元素金属とは、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Sb、及びBiを表す。
上記元素を除く金属元素が、ポリエステル中に含まれると、高温下でポリエステルの熱分解反応を促進し、ポリエステルの熱劣化を引き起こす要因となりうる。そこで、本発明では、ポリエステルフィルムの長期熱安定性を保持する点から、上記元素を除く金属元素の含有量を150ppm以下にする。さらに、前記金属元素の含有量は、100ppm以下が好ましく、80ppm以下がより好ましく、50ppm以下がさらに好ましい。ポリエステルの熱劣化を低減する点からは前記金属元素の含有量は少ない方が良いが、ポリエステル製造時において重合反応を促進するために、触媒として前記濃度範囲内で遷移金属もしく典型金属元素を添加することが望ましい。そのため、前記金属元素の含有量の下限は、1ppm以上が好ましく、5ppm以上がより好ましく、10ppm以上がさらに好ましい。ポリエステルの生産性の点から、上記含有量の範囲内でありながら、十分な触媒活性を奏するためには、後述するように適切な触媒種を選定することが望ましい。
なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属については、ポリエステルの重合における触媒もしくは助触媒の構成元素として用いることができるが、その際に用いられるべき好ましい元素種および濃度については後述する。
ポリエステルの重合方法は、ジエステルカルボン酸成分とグリコール成分を出発物質とするエステル交換法、ジカルボン酸成分とグリコール成分を出発物質とする直接エステル化法がある。エステル交換法では、生産性を確保するためエステル交換時にZn、Ca、Mgなどの触媒を添加するため前記濃度範囲を満たさないことがあるため、本発明におけるポリエステルの重合方法は直接エステル化法が好ましい。
本発明のポリエステルを重合する際の、重合触媒としては、環境負荷の点から重金属でないことが好ましく、重合活性、ポリエステルの物性の面からアルミニウム及び/又はアルミニウム化合物であることがさらに好ましい。
前記アルミニウム及び/又はアルミニウム化合物として、金属アルミニウムのほか、公知のアルミニウム化合物を使用することができる。
アルミニウム化合物としては、具体的には、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムiso-プロポキサイド、アルミニウムn-ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、などのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩およびキレート化合物が好ましく、これらの中でもさらに酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートが特に好ましい。
ただし、アルミニウム単独では重合活性が低く、生産性を確保するためにはポリエステルのジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットに対して150ppm以上添加する必要がある。そこで、全金属元素含有量がポリエステルに対して150ppm以下とするためには、重合活性を上昇させる目的で助触媒としてリン化合物を添加することが好ましい。
本発明において、上記助触媒として用いるべきリン化合物の濃度は、リン元素含有量としてポリエステルに対して100ppm以下であることが好ましい。ポエステルに対するリン元素含有量が上記範囲を超えると、ポリエステルの重合反応においてリン化合物がポリエステルの主鎖に組み込まれ、ポリエステルの耐久性が低下する場合がある。上記ポリエステルに対するリン元素含有量は、95ppm以下であることがより好ましく、90ppm以下であることがさらに好ましい。また、上記助触媒として用いる場合、重合活性を上昇させる目的から、ポリエステル元素含有量は1ppm以上であることが好ましく、3ppm以上であることがさらに好ましい。なお、本発明において用いられるべき好ましいリン化合物の種類およびその添加量が後述するが、その際、リン化合物の添加量としては、カルボン酸成分の全構成ユニットに対する添加量として表示する。これは重合反応の際に消失する量を見越しての添加量であって、フィルムとして形成後のポリエステルに対するリン元素含有量は上記範囲内とすることが好ましい。
上記助触媒として用いるリン化合物は特に限定はされないが、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらの中でも、一種または二種以上のホスホン酸系化合物を用いると触媒活性の向上効果が特に大きく好ましい。なかでも、ポリエステルの熱酸化安定性を向上の点から、フェノール部を同一分子内に有するリン化合物が特に好ましい。
前記のホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物とは、それぞれ下記式(1)、(2)で表される構造を有する化合物のことである。
前記のホスホン酸系化合物としては、例えば、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチルなどが挙げられる。
前記のホスフィン酸系化合物としては、例えば、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニルなどが挙げられる。
ホスフィン酸系化合物、としては、下記式(3)、(4)で表される化合物を用いることが好ましい。
助触媒においては、前記のリン化合物の中でも、分子中に芳香環構造を有する化合物を用いることが、十分な触媒活性を得るためには好ましい。
また、助触媒を構成するリン化合物としては、下記一般式(5)、(6)で表される化合物を用いると、特に触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
(式(5)、(6)中、R1、R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2、R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
助触媒を構成するリン化合物としては、上記式(5)、(6)中、R1、R4が芳香環構造を有する基である化合物が特に好ましい。
前記の重縮合触媒を構成するリン化合物としては、例えば、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニルなどが挙げられる。これらのうちで、フェニルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチルが特に好ましい。
前記のリン元素としての添加量は、ジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットに対して1〜120ppmが好ましく、更に好ましくは3〜100ppmである。
助触媒としてのリン化合物は、前述のようにポリエステルの熱酸化安定性向上の観点からフェノール部を同一分子内に有することが特に好ましい。助触媒を構成するフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、フェノール構造を有するリン化合物であれば特に限定はされないが、フェノール部を同一分子内に有する、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらの中でも、一種または二種以上のフェノール部を同一分子内に有するホスホン酸系化合物を用いると触媒活性の向上効果が特に大きく好ましい。
また、助触媒を構成するフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、下記一般式(7)、(8)で表される化合物などが挙げられる。これらのうちで、下記式を用いると特に触媒活性が向上するため好ましい。
(式(7)、(8)中、R1はフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基およびフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2、R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基は分岐構造やシクロR2とR4の末端どうしは結合していてもよい。)
前記のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、例えば、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジエチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸メチル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸フェニルおよび下記式(9)〜(12)で表される化合物などが挙げられる。これらのうちで、下記式(11)で表される化合物およびp−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチルが特に好ましい。
上記の式(11)にて示される化合物としては、例えばSANKO−220(三光株式会社製)が使用可能である。
これらのフェノール部を同一分子内に有するリン化合物をポリエステルの重合時に添加することによってアルミニウム化合物の触媒活性が向上するとともに、重合したポリエステルの熱安定性も向上する。
前記のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の添加量としては、ジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットに対して1〜120ppmが好ましく、更に好ましくは3〜100ppmである。
また、前記のリン化合物として、リンの金属塩化合物を用いることが好ましい。前記のリンの金属塩化合物とは、リン化合物の金属塩であれば特に限定はされないが、ホスホン酸系化合物の金属塩を用いると、触媒活性の向上効果が大きく好ましい。リン化合物の金属塩としては、モノ金属塩、ジ金属塩、トリ金属塩などが含まれる。
また、上記のリン化合物の中でも、金属塩の金属部分が、Li、Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると、触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgが特に好ましい。
前記のリンの金属塩化合物として、下記一般式(13)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると、触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
(式(13)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、(l+m)は4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
上記のR1としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。上記のR2としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。R3O-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
上記一般式(13)で表される化合物の中でも、下記一般式(14)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
(式(14)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、(l+m)は4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
上記のR1としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。R3O-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
上記のリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
上記式(14)の中でも、Mが、Li、Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgがとくに好ましい。
前記のリンの金属塩化合物としては、リチウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、カリウム[(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、リチウム[ベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[ベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベリリウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ストロンチウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、マンガンビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベンジルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸]、ナトリウム[(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−クロロベンジルホスホン酸フェニル]、マグネシウムビス[4−クロロベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−アミノベンジルホスホン酸メチル]、マグネシウムビス[4−アミノベンジルホスホン酸メチル]、フェニルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[フェニルホスホン酸エチル]、亜鉛ビス[フェニルホスホン酸エチル]などが挙げられる。
これらの中で、リチウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、リチウム[ベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[ベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベンジルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸]が特に好ましい。
前記の重縮合触媒を構成する別の好ましいリン化合物であるリンの金属塩化合物は、下記一般式(15)で表される化合物から選択される少なくとも一種からなるものである。
(式(15)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4O-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、(l+m)は4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
これらの中でも、下記一般式(16)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
(式(16)中、Mn+はn価の金属カチオンを表す。nは1、2、3または4を表す。)
上記式(15)または(16)の中でも、Mが、Li、Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgが特に好ましい。
前記の特定のリンの金属塩化合物としては、リチウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸]、カリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸]、ベリリウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチル]、ストロンチウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、バリウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸フェニル]、マンガンビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ニッケルビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、銅ビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、亜鉛ビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]などが挙げられる。これらの中で、リチウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]が特に好ましい。
本発明の別の実施形態は、リン化合物のアルミニウム塩から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とするポリエステル重合触媒である。リン化合物のアルミニウム塩に他のアルミニウム化合物やリン化合物やフェノール系化合物などを組み合わせて使用しても良い。
前記の重縮合触媒を構成する好ましい成分であるリン化合物のアルミニウム塩とは、アルミニウム部を有するリン化合物であれば特に限定はされないが、ホスホン酸系化合物のアルミニウム塩を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。リン化合物のアルミニウム塩としては、モノアルミニウム塩、ジアルミニウム塩、トリアルミニウム塩などが含まれる。
上記リン化合物のアルミニウム塩の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
上記の重合触媒を構成するリン化合物のアルミニウム塩としては、下記一般式(17)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
(式(17)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、(l+m)は3である。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
上記のR1としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。上記のR2としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。上記のR3O-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、エチレングリコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
前記のリン化合物のアルミニウム塩としては、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、(1−ナフチル)メチルホスホン酸のアルミニウム塩、(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、ベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、ベンジルホスホン酸のアルミニウム塩、(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、2−メチルベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、4−クロロベンジルホスホン酸フェニルのアルミニウム塩、4−アミノベンジルホスホン酸メチルのアルミニウム塩、4−メトキシベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、フェニルホスホン酸エチルのアルミニウム塩などが挙げられる。
これらの中で、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、ベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩が特に好ましい。
また、別の実施形態は、下記一般式(18)で表されるリン化合物のアルミニウム塩から選択される少なくとも一種からなるポリエステル重合触媒である。リン化合物のアルミニウム塩に、他のアルミニウム化合物やリン化合物やフェノール系化合物などを組み合わせて使用しても良い。
(式(18)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、(l+m)は3である。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
これらの中でも、下記一般式(19)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
(式(19)中、R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、(l+m)は3である。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
上記のR3としては、例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。上記のR4O-としては、例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、エチレングリコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
前記のリン化合物のアルミニウム塩としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチルのアルミニウム塩、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸イソプロピルのアルミニウム塩、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸フェニルのアルミニウム塩、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸のアルミニウム塩などが挙げられる。
これらの中で、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチルのアルミニウム塩が特に好ましい。
また、前記リン化合物としてP−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物を用いることが好ましい。P−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物とは、分子内にP−OHを少なくとも一つ有するリン化合物であれば特に限定はされない。これらのリン化合物の中でも、P−OH結合を少なくとも一つ有するホスホン酸系化合物を用いると、触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
上記のリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
前記の重縮合触媒を構成するP−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物として、下記一般式(20)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると、触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
(式(20)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
上記のR1としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。上記のR2としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
上記のリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
P−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物としては、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、(1−ナフチル)メチルホスホン酸、(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸、(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、2−メチルベンジルホスホン酸エチル、4−クロロベンジルホスホン酸フェニル、4−アミノベンジルホスホン酸メチル、4−メトキシベンジルホスホン酸エチルなどが挙げられる。これらの中で、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸エチルが特に好ましい。
また、好ましいリン化合物としては、P−OH結合を少なくとも一つ有する特定のリン化合物が挙げられる。重縮合触媒を構成する好ましいリン化合物であるP−OH結合を少なくとも一つ有する特定のリン化合物とは、下記一般式(21)で表される化合物から選択される少なくとも一種の化合物のことを意味する。
(式(21)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
これらの中でも、下記一般式(22)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
(式(22)中、R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
上記のR3としては、例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
前記のP−OH結合を少なくとも一つ有する特定のリン化合物としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸イソプロピル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸フェニル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸オクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸などが挙げられる。これらの中で、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチルが特に好ましい。
好ましいリン化合物としては、化学式(23)であらわされるリン化合物が挙げられる。
(式(23)中、R1は炭素数1〜49の炭化水素基、または水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜49の炭化水素基を表し、R2、R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基は脂環構造や分岐構造や芳香環構造を含んでいてもよい。)
また、更に好ましくは、化学式(23)中のR1、R2、R3の少なくとも一つが芳香環構造を含む化合物である。
前記リン化合物の具体例を以下に示す。
また、前記リン化合物は、分子量が大きいものの方が重合時に留去されにくいためより好ましい。
重縮合触媒として使用することが好ましい別のリン化合物は、下記一般式(30)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種のリン化合物である。
(上記式(30)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3、R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
上記一般式(30)の中でも、下記一般式(31)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると触媒活性の向上効果が高く好ましい。
(上記式(31)中、R3、R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
上記のR3、R4としては例えば、水素、メチル基、ブチル基等の短鎖の脂肪族基、オクタデシル等の長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基等の芳香族基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
前記の特定のリン化合物としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジイソプロピル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジ−n−ブチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジオクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジフェニルなどが挙げられる。
これらの中で、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジオクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジフェニルが特に好ましい。
重縮合触媒として使用することが好ましい別のリン化合物は、化学式(32)、化学式(33)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種のリン化合物である。
上記の化学式(32)で示される化合物としては、Irganox1222(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)が市販されている。また、化学式(33)にて示される化合物としては、Irganox1425(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)が市販されている。
リン化合物は、一般に酸化防止剤としてはよく知られていたが、これらのリン化合物を従来の金属含有ポリエステル重合触媒と組み合わせて使用しても、溶融重合を大きく促進することは知られていない。実際に、ポリエステル重合の代表的な触媒であるアンチモン化合物、チタン化合物、スズ化合物あるいはゲルマニウム化合物を重合触媒としてポリエステルを溶融重合する際に、リン化合物を添加しても、実質的に有用なレベルまで重合が促進されることは認められない。
即ち、前記のリン化合物を併用することにより、ポリエステル重合触媒中のアルミニウムの含有量が少量でも、十分な触媒効果を発揮することができる。
前記のリン元素としての添加量は、ジカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して、1〜120ppmが好ましく、3〜100ppmであることがさらに好ましい。リン化合物の添加量が1ppmの場合には添加効果が発揮されない場合がある。一方、120ppmを超えて添加すると、逆にポリエステル重合触媒としての触媒活性が低下する場合がある。また、その低下の傾向は、アルミニウムの添加量等により変化する。
リン化合物を使用せず、アルミニウム化合物を主たる触媒成分とし、アルミニウム化合物の添加量を低減し、さらにコバルト化合物を添加することにより、アルミニウム化合物を主触媒とした場合の熱安定性の低下による着色を防止することが検討されているが、コバルト化合物を十分な触媒活性を有する程度に添加するとやはり熱安定性が低下する。従って、この技術では両者を両立することは困難である。
前記の特定の化学構造を有するリン化合物の使用により、熱安定性の低下、異物発生等の問題を起こさず、しかも金属含有成分のアルミニウムとしての添加量が少量でも十分な触媒効果を有する重縮合触媒が得られ、この重縮合触媒により重合したポリエステルを使用することにより、溶融成形後のポリエステルフィルムの熱酸化安定性が改善される。
また、前記リン化合物に代えてリン酸やトリメチルリン酸等のリン酸エステルを添加しても、前記添加効果は見られない。さらに、前記のリン化合物を前記好ましい添加量の範囲で、従来のアンチモン化合物、チタン化合物、スズ化合物、ゲルマニウム化合物等の金属含有ポリエステル重縮合触媒と組み合わせて使用しても、溶融重合反応を促進する効果は認められない。
一方、本発明においてアルミニウムもしくはその化合物に加えて少量のアルカリ金属、アルカリ土類金属並びにその化合物から選択される少なくとも1種を第2金属含有成分として共存させても良い。かかる第2金属含有成分を触媒系に共存させることは、ジエチレングリコールの生成を抑制する効果に加えて触媒活性を高め、従って反応速度をより高めた触媒成分が得られ、生産性向上に有効である。
アルミニウム化合物にアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を添加して十分な触媒活性を有する触媒とする技術は公知である。アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を併用した公知の触媒は、実用的な触媒活性を得ようとすると、触媒添加量を多くする必要があり、本発明で求められる加水分解性と熱安定性を両立することはできない。
アルカリ金属化合物を併用した場合、それに起因する異物量が多くなり、フィルム製造時の溶融押出し工程でフィルター交換頻度が短くなったり、フィルム欠点が増加する傾向がある。
また、アルカリ土類金属化合物を併用した場合には、実用的な活性を得ようとすると、得られたポリエステルの熱安定性や熱酸化安定性が低下し、加熱による着色が大きく、異物の発生量も多くなる。
第2金属含有成分として共存させるアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を添加する場合、その添加量は、ポリエステルを構成する全カルボン酸ユニットに対して、1ppm以上50ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1ppm〜40ppmであり、さらに好ましくは1ppm〜30ppmであり、特に好ましくは、1〜25ppmである。
上記範囲内であれば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の添加量が少量であるため、熱安定性低下、異物の発生、着色等の問題を発生させることなく、反応速度を高めることが可能である。また、耐加水分解性の低下等の問題を発生させることもない。
アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物の添加量がポリエステルを構成する全カルボン酸ユニットに対して50ppm以上になると熱安定性の低下、異物発生や着色の増加、耐加水分解性の低下等が製品加工上問題となる場合が発生する。アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物の添加量がポリエステルを構成する全カルボン酸ユニットに対して1ppm未満では、添加してもその効果が明確ではない。
触媒としてのアルミニウムもしくはその化合物に加えて使用することが好ましい第2金属含有成分を構成するアルカリ金属、アルカリ土類金属としては、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Baから選択される少なくとも1種であることが好ましく、アルカリ金属ないしその化合物の使用がより好ましい。
アルカリ金属ないしその化合物を使用する場合、アルカリ金属としては、特にLi、Na、Kが好ましい。アルカリ金属やアルカリ土類金属の化合物としては、例えば、これら金属のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸などの飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸、クエン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、炭酸水素、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸、1−ペンタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシなどのアルコキサイド、アセチルアセトネートなどとのキレート化合物、水素化物、酸化物、水酸化物などが挙げられる。
これらのアルカリ金属、アルカリ土類金属またはそれらの化合物のうち、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いる場合、これらはエチレングリコール等のジオールもしくはアルコール等の有機溶媒に溶解しにくい傾向があるため、水溶液で重合系に添加しなければならず重合工程上問題となる場合が有る。
さらに、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いた場合、重合時にポリエステルが加水分解等の副反応を受けやすくなるとともに、重合したポリエステルは着色しやすくなる傾向があり、耐加水分解性も低下する傾向がある。
従って、前記のアルカリ金属またはその化合物、アルカリ土類金属またはその化合物として好適なものは、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、不飽和脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン塩、ハロゲン含有カルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸から選ばれる無機酸塩、有機スルホン酸塩、有機硫酸塩、キレート化合物、および酸化物である。これらの中でもさらに、取り扱い易さや入手のし易さ等の観点から、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、特に酢酸塩の使用が好ましい。
本発明のポリエステルフィルムの主たる構成成分であるポリエステルは、前述の触媒種を用いて好適に得ることができるため、ポリエステルに対する全金属元素量を150ppm以下にすることができる。そのため、本発明のポリエステルフィルムは熱酸化安定性に優れ、長期にわたる熱安定性を奏することが可能となる。本発明のポリエステルフィルムに用いられるポリエステルは、熱酸化安定性の指標である、下記式で表されるTODΔカルボキシ末端量が20eq/ton以下であることが好ましい。
(TODΔカルボキシ末端量)=(下記による熱酸化試験後のカルボキシ末端量)−(熱酸化試験前のカルボキシ末端量)
(熱酸化試験)
ポリエステルフィルム試料を凍結粉砕後、100メッシュ以下の粉末とし、130℃で12時間真空乾燥する。これを0.3g秤量し、ガラス試験管に入れ、更に70℃で12時間真空乾燥した後、空気下で230℃、15分間加熱処理する。係る加熱処理前後の試料および加熱処理前の試料についてカルボキシ末端量を測定する。
前記TODΔカルボキシ末端量は、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下、よりさらに好ましくは5以下である。全金属含有量が少なければ少ないほど、熱酸化安定性に有利である。しかし、金属含有量が少ない即ち触媒量が少ない場合は、生産性の面では不利となる。そこで少量のアルミニウムと助触媒であるリン化合物を併用し、重合活性を確保することが好ましい。さらにリン化合物はフェノール部位を持つことが好ましい。さらに、フェノール部位含有のリン化合物は、酸素下でラジカル機構により分解するポリエステル劣化を抑制する効果を有するため特に好ましい。この機能を高めるためには、フェノール部位が立体的、電子的に安定化され、よりラジカルトラップ能を発現するヒンダートフェノール骨格を有することが好ましい。なお、前記TODΔカルボキシ末端量は小さい方が好ましいが、0.1程度が下限であると考える。
本発明のフィルムの主たる構成成分たるポリエステルはチタンを触媒とすることもできる。チタンを触媒として用いる場合も150ppm以下の少量の添加量で生産性を確保できるが、チタンは触媒活性が高いため、加熱下でポリエステルの熱酸化劣化が生じやすくなり、長期の熱安定性を得られない場合がある。そのため、本発明においてはポリエステルの触媒種としてチタン以外の前述の触媒種を用いることが好ましい。なお、本発明のフィルムには後述するように易滑性付与もしくは隠蔽性を付与するために酸化チタンを添加することも好ましい。この場合は、触媒として用いるチタン添加量と異なり、易滑性付与のためにはチタン元素量として好ましくは300ppm以上、より好ましくは400ppm以上、隠蔽性付与のためにはチタン元素量として好ましくは10000ppm以上の酸化チタンを添加する。チタンを触媒として用いるか、あるいは他の目的として用いるかどうかは、チタンの添加量により区別することが可能である。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、カルボキシ末端量がポリエステルに対して5eq/ton以下であることを特徴とする。カルボキシ末端量をこのように極小濃度とすることで本発明のフィルムは高い耐加水分解性を奏することができる。カルボキシ末端量が上記範囲を超えると、カルボキシ末端がプロトンソースとなり自己作用を奏し、耐加水分解性が低下するため、太陽電池裏面封止用途もしくは電気絶縁用途として十分な耐久性が得られない場合がある。
上記カルボキシ末端量の上限は、4eq/ton以下が好ましく、3eq/ton以下がさらに好ましく、2eq/ton以下がよりさらに好ましい。上記カルボキシ末端量は少ない方が好ましいが、生産性の点から0.1eq/tonが下限であると考える。
ポリエステルのカルボキシ末端量を上記範囲にする手段としては、特に限定しないが、(1)重合反応の時間や温度などの条件を適宜選択し、重合度の高いポリエステルを得る方法、(2)固相重合を行う方法、(3)ポリエステルの水分率を低下する方法、(4)ポリエステルのカルボキシ末端を反応性末端封鎖剤で修飾する方法、などから適宜選択および組合せて行うことができる。ポリエステルの重合度を高めることでカルボキシ末端量を低減させることは可能であるが、ポリエステルの固有粘度も上昇するため、フィルム製膜時に高い応力が必要となったり、溶融押出し機内で発熱が生じて熱劣化が生じる場合がある。そのため、固有粘度を高めず、カルボキシ末端量を上記範囲にするためには、ポリエステルのカルボキシ末端を反応性末端封鎖剤で修飾することが好ましい。
反応性末端封鎖剤とは、ポリエステルのカルボキシ末端基と反応し、カルボキシ基を修飾する化合物である。反応性末端封鎖剤は、その効果を有するものであれば特に制限されないが、反応性の高さおよび取扱のしやすさの点から、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物及びエポキシ化合物からなる群より選ばれる化合物が好適に用いることができる。
カルボジイミド化合物の具体例としては、ジ−o−トルイル−カルボジイミド、ジ−(2,4−ジイソプロピル)フェニル−カルボジイミド、p−フェニレン−ビス−(2,6−キシリル−カルボジイミド)、p−フェニレン−ビス−(t−ブチル−カルボジイミド)、テトラメチレン−ビス−(t−ブチル−カルボジイミド)、シクロヘキサン−1,4−ビス−(メチレン−t−ブチル−カルボジイミド)、オルゴ−2,4−トルイル−カルボジイミド、日清紡ケミカル株式会社製カルボジライト(LA−1)、ラインケミー製スタバックゾール、スタバックゾールP、スタバックゾールP100、スタバックゾールP400、スタバックゾールKE7646等が挙げられるが本発明においてこれらに限定されるものではない。
オキサゾリン化合物の具体例としては、例えば、2−メトキシ−2−オキサゾリン、2−エトキシ−2−オキサゾリン、2−プロポキシ−2−オキサゾリン、2−ブトキシ−2−オキサゾリン、2−ペンチルオキシ−2−オキサゾリン、2−ヘキシルオキシ−2−オキサゾリン、2−ヘプチルオキシ−2−オキサゾリン、2−オクチルオキシ−2−オキサゾリン、2−ノニルオキシ−2−オキサゾリン、2−デシルオキシ−2−オキサゾリン、2−シクロペンチルオキシ−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシルオキシ−2−オキサゾリン、2−アリルオキシ−2−オキサゾリン、2−メタアリルオキシ−2−オキサゾリン、2−クロチルオキシ−2−オキサゾリン、2−フェノキシ−2−オキサゾリン、2−クレジル−2−オキサゾリン、2−o−エチルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−o−プロピルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−o−フェニルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−m−エチルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−m−プロピルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、2−プロピル−2−オキサゾリン、2−ブチル−2−オキサゾリン、2−ペンチル−2−オキサゾリン、2−ヘキシル−2−オキサゾリン、2−ヘプチル−2−オキサゾリン、2−オクチル−2−オキサゾリン、2−ノニル−2−オキサゾリン、2−デシル−2−オキサゾリン、2−シクロペンチル−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシル−2−オキサゾリン、2−アリル−2−オキサゾリン、2−メタアリル−2−オキサゾリン、2−クロチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2−o−エチルフェニル−2−オキサゾリン、2−o−プロピルフェニル−2−オキサゾリン、2−o−フェニルフェニル−2−オキサゾリン、2−m−エチルフェニル−2−オキサゾリン、2−m−プロピルフェニル−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェニル−2−オキサゾリンなどが挙げられ、さらには、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4,4’−ジエチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−プロピル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−ヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−シクロヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−デカメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−9,9’−ジフェノキシエタンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−シクロヘキシレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)、株式会社日本触媒製エポクロスなどが挙げられる。さらには、上記した化合物をモノマー単位として含むポリオキサゾリン化合物など、例えばスチレン・2−イソプロペニル−2−オキサゾリン共重合体等が挙げられるが、本発明においてこれらに限定されるものではない。
エポキシ化合物の具体例としては、ジアリルモノグリシジルイソシアヌル酸、モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノールグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ラウリルアルコールグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル、ジグリシジル−o−フタレート、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジグリシジルテレフタレート、N−グリシジルフタルイミド、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、アクリルグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ビスフェノール−A−ジグリシジルエステル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、p−ヒドロキシベンゾイック酸グリシジルエステルエーテル等が挙げられるが本発明においてこれらに限定されるものではない。またエポキシ化合物を添加する際、トリフェニルホスフィンなどの触媒を添加することが好ましい。
末端封鎖反応を有効に行うために、ポリエステルに添加するカルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物及びエポキシ化合物の水分率は、1000ppm以下が好ましい。さらに好ましくは化合物の水分率800ppm以下であり、特に好ましくは500ppm以下である。乾燥工程によりカルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物及びエポキシ化合物の水分率を低減することが可能であるが、乾燥工程での取り扱いの面から固体であることが望ましい。
また、反応性末端封鎖剤の添加量は、反応基単位で、ポリエステルのカルボキシ末端量に対し0.1〜10当量であることが好ましい。添加量が0.1当量以下の場合は、末端封鎖剤として機能せず加水分解性を改善できない。また、添加量が10当量を越えると、多官能カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物及びエポキシ化合物の場合は、ゲル化が発生しフィルム製膜時の背圧が上昇する場合がある。また官能基を一つしか持たない化合物である場合でもフィルム中に未反応官能基が多く存在し、後工程に悪影響を及ぼす場合がある。さらに好ましい添加量は、ポリエステルのカルボキシ末端量に対し0.2〜7当量、特に好ましい添加量は、ポリエステルのカルボキシ末端量に対し0.3〜5当量である。
カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物及びエポキシ化合物を添加することに加え、酸化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤は、上記の化合物と併用して使用されることで効果をなす。そのメカニズムは明確にされてはいないが、酸化防止剤が上記末端封鎖剤の熱劣化を抑制することで、耐加水分解性や耐熱変色性が改善されるものと考えられる。本発明の酸化防止剤としては、分解抑制効果が高いことから、好ましくはフェノール系の酸化防止剤が使用される。フェノール系の酸化防止剤の具体例として、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−フェノール、4,4−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]−メタン、ステアリル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート等が挙げられるが、本発明においてこれらに限定されるものではない。
ポリエステルと反応性末端封鎖剤との反応は、ポリエステルを好ましくは250℃以上、より好ましくは260℃以上、さらに好ましくは280℃以上に溶融させた状態で、反応性末端封鎖剤を添加し、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上攪拌することにより行うことができる。反応性末端封鎖剤との反応は、ポリエステルに熱履歴を付加することになるが、本発明においては全金属元素含有量を150ppm以下にすることで高い熱安定性を奏することができるため、末端封鎖剤との反応においても熱酸化分解が生じにくく好適である。
ポリエステルに反応性末端封鎖剤を配合する工程は、特に限定しないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートの重縮合工程で配合する方法、ポリエステルの重縮合工程後に配合する方法、二軸配向フィルムの製膜工程(ポリエステル原料の溶融工程)で配合する方法などがある。配合形態としては、上記化合物をポリエチレンテレフタレートに直接配合して溶融混練を行う方法、高濃度の上記化合物を含むマスターバッチを予め作製しておき、そのマスターバッチを配合する方法がある。
また、二軸配向フィルムを製膜する際、フィルムの端部の製品にならない部分(いわゆる耳)を回収原料として使用することがある。回収原料を再利用することは、フィルム原単位を下げることになりコスト的に有利である。しかし、回収フィルムは、熱履歴によるカルボキシ末端上昇により、加水分解性悪化する場合があるため、高度な耐久性が得られない場合がある。この場合、回収原料として使用する際に、前処理として反応性末端封鎖剤を添加することも有効である。回収原料を再度、固相重合することでカルボキシ末端量を低下させることも可能であるが、製造コストは高くなり、回収原料を使用するメリットが低下する。そこで本発明に記載の末端封鎖技術によるカルボキシ末端量の低減が有用である。
さらに、ポリエステルに粒子や紫外線吸収剤などの各種添加剤を配合する際は、ポリエステルに余計な熱履歴がかかり、耐久性が低下する場合があるが、その場合でも上記反応性末端封鎖剤を添加することで、ポリエステルの耐久性を保持することができ有効である。
本発明のポリエステルフィルムは、上記の範囲のカルボキシ末端量を有するため、高度な耐加水分解性を奏する。そのため、本発明のポリエステルフィルムの主たる構成成分であるポリエステルは、耐加水分解性の指標である、下記式で表されるHSΔカルボキシ末端量が10eq/ton以下であることが好ましい。
(HSΔカルボキシ末端量)=(下記による加水分解試験後のカルボキシ末端量)−(加水分解試験前のカルボキシ末端量)
(加水分解試験)
ポリエステルフィルムを1cm×1cm片に切断し、130℃で12時間真空乾燥した後、1gを秤量し、純水100ml中に入れる。これを密閉系にして130℃に加熱、加圧した条件下に6時間攪拌する。係る加水分解処理前後の試料および加水分解処理前の試料についてカルボキシ末端量を測定する。
上記HSΔカルボキシ末端量は、9eq/ton以下がより好ましく、8eq/ton以下がさらに好ましく、7eq/ton以下がよりさらに好ましい。上記HSΔカルボキシ末端量を上記範囲にするには、ポリエステルのカルボキシ末端量を低減させることが好ましいが、より好適にはポリエステルのカルボキシ末端を反応性末端封鎖剤で封鎖することにより、HSΔカルボキシ末端量を上記範囲にすることが可能となる。上記HSΔカルボキシ末端量は小さいほうが好ましいが、生産性の点からは0.1eq/tonが下限であると考える。
本発明でフィルム原料として使用するポリエステルとは、ジカルボン酸を含む多価カルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から選ばれる一種または二種以上とグリコールを含む多価アルコールから選ばれる一種または二種以上とから成るもの、またはヒドロキシカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体からなるもの、または環状エステルからなるものをいう。
好ましいポリエステルとしては、主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体、もしくはナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であり、主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルである。
主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体もしくはナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であるポリエステルとは、全酸成分に対してテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。
主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルとは、全グリコール成分に対してアルキレングリコールを合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。
テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸に共重合可能なジカルボン酸としては、耐加水分解性を低下させないことから、オルソフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などに例示される芳香族ジカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体が好ましい。また、ピロメリット酸、トリメリット酸、などの3官能以上のカルボン酸成分を共重合させても良い。
グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、1,10−デカメチレングリコール、1,12−ドデカンジオールなどのアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコール、などに例示される芳香族グリコールが挙げられる。
これらのグリコールのうち、アルキレングリコールが好ましく、さらに好ましくは、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールである。また、前記アルキレングリコールは、分子鎖中に置換基や脂環構造を含んでいても良く、同時に2種以上を使用しても良い。
これらグリコール以外の多価アルコールとして、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオールなどが挙げられる。
これらの中でも、とくに好ましく本発明で用いるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレートおよびこれらの共重合体が好ましく、特に好ましくはポリエチレンテレフタレートおよびこの共重合体である。
ポリエステルフィルムの固有粘度(IV)は、強度ならびに耐久性の点から0.65dl/g以上にすることが望ましい。ポリエステルフィルムの固有粘度(IV)の上限は、特に限定されないが生産性の点から1.20dl/g以下であることが好ましく、1.00dl/gであることがより好ましく、0.80dl/gであることがよりさらに好ましい。0.65dl/g以上にするために固相重合を実施することが好ましい。溶融重合でも固有粘度(IV)を0.65dl/g以上にすることは可能であるが、反応時間が長くなり、かつ溶融粘度が高くなるため生産性が悪化する。反応時間が長いと、副反応として耐久性を悪化させる環状三量体、ジエチレングリコールが生成するため、太陽電池用途もしくは絶縁用途としては不適である。
ポリエステルの重合中にジアルキレングリコールが副生するが、ジアルキレングリコールは耐熱性を低下させる。代表的なジアルキレングリコールとしてジエチレングリコールを例にすると、ジエチレングリコール量は2.3モル%以下であることが好ましい。より好ましくは2.0モル%以下、さらに好ましくは1.8モル%以下である。ジエチレングリコール量を上記範囲にすることにより、耐熱安定性を高めることができ、乾燥時、成形時の分解によるカルボキシ末端量の増加を小さくすることが出来る。さらに、セルを封止する際の充填剤を硬化させる熱による分解も低いレベルに抑えることが出来る。なお、ジエチレングリコール量は少ない方が良いが、ポリエステル製造の祭のテレフタル酸のエステル化反応時、テレフタル酸ジメチルのエステル交換反応時に副反応物として生成するものであり、現実的には下限は1.0モル%、さらには1.2モル%である。
アセトアルデヒド含有量は50ppm以下であることが好ましい。さらに好ましくは40ppm以下、特に好ましくは30ppm以下である。アセトアルデヒドはアセトアルデヒド同士で縮合反応を容易に起こし、副反応物として水が生成し、この水により、ポリエステルの加水分解が進む場合がある。アセトアルデヒド含有量の下限は現実的には1ppm程度である。アセトアルデヒド量を上記範囲にするためには、樹脂の製造時の溶融重合、固相重合など各工程での酸素濃度を低く保つ、樹脂保管時、乾燥時の酸素濃度を低く保つ、フィルム製造時に押し出し機、メルト配管、ダイ等で樹脂にかかる熱履歴を低くする、溶融させる祭の押し出し機のスクリュー構成等で局所的に強い剪断がかからないようにするなどの方法を採用することが出来る。
なお、アセトアルデヒド含有量は、冷凍粉砕したフィルム/蒸留水=1g/2mlを窒素置換したガラスアンプルに入れて上部を溶封し、160℃で2時間抽出処理を行い、冷却後抽出液中のアセトアルデヒドを高感度ガスクロマトグラフィ−で測定した値である。
酢酸含有量は1ppm以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.5ppm以下、特に好ましくは0.3ppm以下である。上記範囲を超えると、ポリエステルの加水分解を促進させる場合がある。酢酸含有量を上記範囲にするためには、上記アセトアルデヒド含有量を低くするための方策が採用できる。
なお、酢酸含有量は、冷凍粉砕したフィルム2gをガラス容器に入れ、沸騰したイオン交換水500mlを注ぎ、密栓後10分間放置後室温に冷却し、7日間放置後、この液1mlを用いてイオンクロマトグラフ法により定量した値である。
本発明で用いるポリエステル中には、使用する目的に応じて、無機粒子、耐熱性高分子粒子、架橋高分子粒子などの不活性粒子、蛍光増白剤、紫外線防止剤、赤外線吸収色素、熱安定剤、界面活性剤、酸化防止剤などの各種添加剤を1種もしくは2種以上含有させることができる。酸化防止剤としては、芳香族アミン系、フェノール系などの酸化防止剤が使用可能であり、安定剤としては、リン酸やリン酸エステル系等のリン系、イオウ系、アミン系などの安定剤が使用可能である。
本発明のポリエステルフィルムは、耐久性および機械的強度の点から二軸配向ポリエステルフィルムである。二軸配向ポリエステルフィルムの場合、重合したポリエステルチップを押出機において溶融する溶融工程、押出機から溶融樹脂を押出すことにより未延伸フィルムを形成するフィルム化工程、未延伸フィルムの少なくとも一方向に延伸する延伸工程、および、延伸したフィルムを熱処理する熱固定工程を経ることにより製造することが望ましい。
溶融工程においては、ポリエステルチップを溶融押出機に供給し、ポリマー融点以上の温度に加熱し溶融する。この際、フィルム製造中のカルボキシ末端量の上昇を抑制するために、十分乾燥したポリエステルチップを用いることが好ましい。用いるポリエステルチップの水分量は100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、30ppm以下であることがさらに好ましい。ポリエステルチップを乾燥する方法は、減圧乾燥など公知の方法を用いることができる。
押出機内におけるポリエステル樹脂の最高温度は、280℃以上であることが好ましく、285℃以上であることが好ましく、290℃以上であることがさらに好ましい。溶融温度を上げることにより、押出機内での濾過時の背圧が低下し、良好な生産性を奏することができる。また、押出機内におけるポリエステル樹脂の最高温度は、320℃以下が好ましく、310℃以下がさらに好ましい。溶融温度が高くなるとポリエステルの熱劣化が進行し、ポリエステルのカルボキシ末端量が上昇し、耐加水分解性が低下する場合がある。
本発明で用いた少ない金属触媒量で重合したポリエステルは、熱酸化安定性が高く、押出機内での最高温度が上記の範囲であっても、フィルム製造中におけるカルボキシ末端量の低下を抑制することができる。原料樹脂として用いるポリエステルチップのカルボキシ末端量と製膜後のポリエステルフィルムでのカルボキシ末端量との差(変動量)は6eq/ton以下であることが好ましく、5eq/ton以下であることがさらに好ましい。上記範囲であれば、固有粘度が0.65dl/g超のポリエステルチップを用いても、フィルム製造中でのカルボキル末端濃度の上昇が抑制され、耐久性の良好なポリエステルフィルムを高い生産性を維持したまま製造することができる。なお、上記変動量の下限は、生産性の点から0.5eq/tonが下限であると考える。
フィルム化工程においては、少ない金属触媒量で重合したポリエステル樹脂を溶融押出しし、T−ダイスより冷却回転ロール上にシート状に成型し、未延伸フィルムを作成する。この際、例えば特公平6−39521号公報、特公平6−45175号公報に記載の技術を適用することにより、高速製膜性が可能となる。また、複数の押出し機を用い、コア層、スキン層に各種機能を分担させ、共押出し法により積層フィルムとしても良い。
延伸工程においては、本発明のポリエステルフィルムは、公知の方法を用いて、ポリエステルのガラス転移温度以上結晶化温度未満で、少なくとも一軸方向に1.1〜6倍に延伸することにより得ることができる。
例えば、二軸配向ポリエステルフィルムを製造する場合、縦方向または横方向に一軸延伸を行い、次いで直交方向に延伸する逐次二軸延伸方法、縦方向及び横方向に同時に延伸する同時二軸延伸する方法、さらに同時二軸延伸する際の駆動方法としてリニアモーターを用いる方法を採用することができる。
さらに、延伸終了後、フィルムの熱収縮率を低減させるために、熱固定工程において(融点−50℃)〜融点未満の温度で30秒以内、好ましくは10秒以内で熱固定処理を行い、0.5〜10%の縦弛緩処理、横弛緩処理などを施すことが好ましい。
ポリエステルフィルムとしてより高度な熱寸法安定性が要求される場合は、縦緩和処理を施すことが望ましい。縦緩和処理の方法としては、公知の方法を用いることができるが、例えばテンターのクリップ間隔を徐々に狭くして縦緩和処理を行う方法(特特公平4−028218号公報)や、テンターの内で端部に剃刀を入れ切断しクリップの影響を避けて緩和処理を行う方法(特公昭57−54290号公報)などが利用できる。
得られたポリエステルフィルムの厚みは、10〜500μmであることが好ましく、より好ましく15〜400μmであり、さらに好ましくは20〜250μmである。10μm未満では腰が無く取り扱いが困難である。また500μmを超えるとハンドリング性が低下し、取り扱いが困難となる。
また、接着性、絶縁性、耐擦り傷性、などの各種機能を付与するために、ポリエステルフィルム表面にコーティング法により高分子樹脂を被覆してもよい。また、被覆層にのみ無機及び/又は有機粒子を含有させて、易滑ポリエステルフィルムとしてもよい。さらに、無機蒸着層もしくはアルミ層を設け水蒸気バリア機能を付与したりすることもできる。
また、本願発明のポリエステルフィルムは、滑り性、走行性、耐摩耗性、巻き取り性などのハンドリング特性を向上させるために、フィルム表面に凹凸を形成させることが好ましい。フィルム表面に凹凸を付与するためには、ポリエステルの重合工程で無機及び/又は耐熱性高分子樹脂粒子を添加する外部粒子添加法、重合工程で触媒残渣とポリエステルの構成成分とを反応させて不溶性の粒子を析出させる内部粒子法、被覆層に前記粒子を含有させる方法、薄膜層表面に凹凸が付与されたロールなどでエンボス加工する方法、レーザービームなどで表面凹凸をパターニングする方法、などが挙げられる。
易滑性付与のためにポリエステルに添加する不活性粒子の種類及び含有量は、特に限定されるものではないが、シリカ、二酸化チタン、タルク、カオリナイト等の金属酸化物、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属の塩または耐熱性高分子粒子など、ポリエステル樹脂に対し不活性な粒子が例示される。これらの不活性粒子は、いずれか一種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
ヘイズを小さくするためには、ポリエステルに含有させる不活性粒子としては、粒子の屈折率がポリエステルに近いシリカ、ガラスフィラー、アルミナ−シリカ複合酸化物粒子が好ましく、可視光線の波長よりも小さな粒子径を有する粒子が好ましく、含有量も低いほうが良い。また、延伸張力が大きくなると、粒子周囲に発生するボイドが大きくなるため、延伸張力が低くなるように、すなわち、延伸温度を高目にする又は延伸倍率を小さくするように延伸条件を適正化する必要がある。さらに、積層構成とし、中心層のポリエステル層には不活性粒子を含有させず、表面層のみ粒子を含有する方法もヘイズを小さくするのにきわめて有効な方法である。
前記の不活性粒子は、平均粒子径が0.01〜3.5μmであることが好ましく、粒子径のばらつき度(標準偏差と平均粒子径との比率)が25%以下であることが好ましい。また、粒子の形状は、面積形状係数が60%以上の粒子が1種類以上含まれていることが好ましい。このような特性を有する不活性粒子をポリエステル樹脂に対し0.005〜2.0質量%含有させることが好ましく、特に好ましくは1.0質量%以下である。
また、フィルムを積層構成とし、最外層にのみ無機及び/又は耐熱性高分子樹脂粒子を添加する構成としても良い。
本発明のポリエステルフィルムは、高い長期熱安定性を有し、熱安定性の指標である160℃での耐熱テストにおける破断伸度保持率半減期が700時間以上、より好ましくは800時間以上である。係る範囲にあることで、太陽電池用途もしくは電気絶縁用途として長期間高温に晒される条件においても好適に利用することができる。
また、本発明のポリエステルフィルムは、高い耐加水分解性を有し、耐加水分解性の指標である105℃、100%RH、0.03MPa下192時間での伸度保持率が好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、よりさらに好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。係る範囲にあることで、太陽電池用途もしくは電気絶縁用途として長期間屋外に晒される条件においても好適に利用することができる。
本発明でいう太陽電池とは、太陽光、室内光等の入射光を取り込んで電気に変換し、当該電気を蓄えるシステムをいい、表面保護シート、高光線透過材、太陽電池モジュール、充填剤層および裏面封止シートなどから構成される。用途によりフレキシブルな性状のものがある。
本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムは、上記表面保護シート、裏面封止シートやフレキシブルな電子部材の張合材の基材フィルム(ベースフィルム)として用いることができる。特に、高い耐久性、長期熱安定性が求められる太陽電池裏面封止シートのベースフィルムとして好適である。太陽電池裏面封止シートとは、太陽電池の裏側の太陽電池モジュールの保護するものである。
本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムは、単独または2枚以上を貼り合わせて、太陽電池裏面封止シートとして使用することができる。本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムには、水蒸気バリア性を付与する目的で、水蒸気バリア性を有するフィルムやアルミ箔などを積層することができる。バリア性フィルムとしては、ポリフッ化ビニリデンコートフィルム、酸化ケイ素蒸着フィルム、酸化アルミニウム蒸着フィルム、アルミニウム蒸着フィルムなどをもちいることができる。これらは、本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムに接着層を介して、または直接積層したり、サンドイッチ構造をとる形態で用いることができる。
また、太陽電池封止シートと充填剤層との接着性を向上させるために、本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムに、オフラインコートまたは/およびインラインコートにより易接着層を設けることも好ましい。
また、電気絶縁用ポリエステルフィルムとは、電子部材の絶縁用途の用いされる単層もしくは多層積層したフィルムもしくはシートである。本発明のポリエステルフィルムは、高い耐久性と耐熱性を有するため、例えば、コンデンサーの内装、外装、または、モーター用電気絶縁帯、フレキシブルプリント配線基板、トランス、ケーブル、ジェネレーターなどのベースフィルムとして好適である。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はもとよりこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各実施例および比較例において用いた評価方法を以下に説明する。
(1)ポリエステルフィルム中の全金属元素の含有量(ppm)、リン元素含有量
ポリエステルフィルムを灰化/酸溶解後、高周波プラズマ発光分析および原子吸光分析により求めた。
(2)カルボキシ末端量の測定方法
A.試料の調整
ポリエステルを粉砕し、70℃で24時間真空乾燥を行った後、天秤を用いて0.20±0.0005gの範囲に秤量する。そのときの重量をW(g)とする。試験管にベンジルアルコール10mlと秤量した試料を加え、試験管を205℃に加熱したベンジルアルコール浴に浸し、ガラス棒で攪拌しながら試料を溶解する。溶解時間を3分間、5分間、7分間としたときのサンプルをそれぞれA、B、Cとする。次いで、新たに試験管を用意し、ベンジルアルコールのみ入れ、同様の手順で処理し、溶解時間を3分間、5分間、7分間としたときのサンプルをそれぞれa、b、cとする。
B.滴定
予めファクターの分かっている0.04mol/l水酸化カリウム溶液(エタノール溶液)を用いて滴定する。指示薬はフェノールレッドを用い、黄緑色から淡紅色に変化したところを終点とし、水酸化カリウム溶液の滴定量(ml)を求める。サンプルA、B、Cの滴定量をXA、XB、XC(ml)とする。サンプルa、b、cの滴定量をXa、Xb、Xc(ml)とする。
C.カルボキシ末端量の算出
各溶解時間に対しての滴定量XA、XB、XCを用いて、最小2乗法により、溶解時間0分での滴定量V(ml)を求める。同様にXa,Xb,Xcを用いて、滴定量V0(ml)を求める。次いで、次式に従いカルボキシ末端量を求めた。
カルボキシ末端量(eq/ton)=[(V−V0)×0.04×NF×1000]/W
NF:0.04mol/l水酸化カリウム溶液のファクター
W:試料重量(g)
(3)TODΔカルボキシ末端量の測定方法
フィルム試料(熱酸化試験前)を冷凍粉砕して100メッシュ以下の粉末として130℃で12時間真空乾燥したもの0.3gをガラス試験管に入れ70℃で12時間真空乾燥した後、シリカゲルで乾燥した空気下で230℃、15分間加熱した。熱酸化処理前および後の試料を(2)の方法によりカルボキシ末端量を測定した。得られた測定結果から、(TODΔカルボキシ末端量)=(熱酸化試験後のカルボキシ末端量)−(熱酸化試験前のカルボキシ末端量)により計算した。
(4)HSΔカルボキシ末端量の測定方法
フィルム(加水分解試験前)を1cm×1cm片に切断し、130℃で12時間真空乾燥した後、1gを純水100mlに入れ、密閉系にして130℃に加熱、加圧した条件下に6時間撹拌した。加水分解試験前および後の試料を(2)の方法によりカルボキシ末端量を測定した。得られた測定結果から、(HSΔカルボキシ末端量)=(加水分解試験後のカルボキシ末端量)−(加水分解試験前のカルボキシ末端量)により計算した。
(5)耐加水分解性破断伸度保持率
耐加水分解性評価として、JIS−60068−2−66で規格化されているHAST(Highly Accelerated temperature and humidity Stress Test)を行った。機器はエスペック社製EHS−221を用い、105℃、100%RH、0.03MPa下の条件で行った。
フィルムを70mm×190mmにカットし、治具を用いてフィルムを設置した。各フィルムは各々が接触しない距離を保ち設置した。105℃、100%RH、0.03MPaの条件下で192時間処理を行った。処理前、処理後の破断伸度をJIS−C−2318−1997 5.3.31(引張強さ及び伸び率)に準拠して測定し、下記式に従い破断伸度保持率を算出した。
破断伸度保持率(%)=[(処理後の破断伸度(MPa))/(処理前の破断伸度(MPa))]×100
(6)160℃での耐熱テストの破断伸度率半減期
フィルムを長手方向に、長さ200mm、幅10mmの短冊状サンプルを切り出して用いた。JIS K−7127に規定された方法に従って、引っ張り試験器を用いて25℃、65%RHにて破断伸度を測定した。初期引っ張りチャック間距離は100mmとし、引っ張り速度は300m/分とした。測定はサンプルを変更して20回行い、その破断伸度の平均値(X)を求めた。また、長さ200mm、幅10mmの短冊状サンプルをギアオーブンに入れ、160℃の雰囲気下で放置した後、自然冷却し、このサンプルについて前記と同条件での引っ張り試験を20回行い、その破断伸度の平均値(Y)を求めた。得られた破断伸度の平均値(X)、(Y)から伸度保持率を次式で求めた。
伸度保持率(%)=(Y/X)×100
伸度保持率が50%以下となるまでの熱処理時間を求め、破断伸度保持率半減期とした。
(7)ポリエステルの固有粘度(IV)
ポリエステルをフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの6/4(重量比)混合溶媒を使用して溶解し、温度30℃にて測定した。
(重縮合触媒溶液の調製)
(リン化合物のエチレングリコール溶液の調製)
窒素導入管、冷却管を備えたフラスコに、常温常圧下、エチレングリコール2.0リットルを加えた後、窒素雰囲気下200rpmで攪拌しながら、リン化合物としてIrganox1222(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)の200gを加えた。さらに2.0リットルのエチレングリコールを追加した後、ジャケット温度の設定を196℃に変更して昇温し、内温が185℃以上になった時点から60分間還流下で攪拌した。その後加熱を止め、直ちに溶液を熱源から取り去り、窒素雰囲気下を保ったまま、30分以内に120℃以下まで冷却した。得られた溶液中のIrganox1222のモル分率は40%、Irganox1222から構造変化した化合物のモル分率は60%であった。
(アルミニウム化合物の水溶液の調製)
冷却管を備えたフラスコに、常温常圧下、純水5.0リットルを加えた後、200rpmで攪拌しながら、塩基性酢酸アルミニウム200gを純水とのスラリーとして加えた。さらに全体として10.0リットルとなるよう純水を追加して常温常圧で12時間攪拌した。その後、ジャケット温度の設定を100.5℃に変更して昇温し、内温が95℃以上になった時点から3時間還流下で攪拌した。攪拌を止め、室温まで放冷し水溶液を得た。
(アルミニウム化合物のエチレングリコール混合溶液の調製)
上記方法で得たアルミニウム化合物水溶液に等容量のエチレングリコールを加え、室温で30分間攪拌した後、内温80〜90℃にコントロールし、徐々に減圧して、到達27hPaとして、数時間攪拌しながら系から水を留去し、20g/lのアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液を得た。得られたアルミニウム溶液の27Al−NMRスペクトルのピーク積分値比は2.2であった。
(リチウム化合物のエチレングリコール溶液の調整)
酢酸リチウムをエチレングリコールに溶解し、20g/lの酢酸リチウムのエチレングリコール溶液を得た。
(カルシウム化合物のエチレングリコール溶液の調整)
酢酸カルシウムをエチレングリコールに溶解し、20g/lの酢酸カルシウムのエチレングリコール溶液を得た。
(アンチモン化合物のエチレングリコール溶液の調整)
三酸化アンチモンをエチレングリコール溶液に溶解し、14g/lの三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を得た。
(実施例1)
(1)ポリエステルペレットの作成
攪拌機付き2リッターステンレス製オートクレーブに高純度テレフタル酸とエチレングリコールを仕込み、常法に従ってエステル化反応を行い、オリゴマー混合物を得た。このオリゴマー混合物に重縮合触媒として、上記アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液/リン化合物のエチレングリコール溶液の混合物をアルミニウム元素の残存量が20ppm、リン元素の残存量が80ppmとなるように添加した。次いで、窒素雰囲気下、常圧にて250℃で10分間攪拌した。その後、60分間かけて280℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(0.1Torr)として、さらに280℃、13.3Pa下でポリエステルの固有粘度(IV)が0.55dl/gになるまで重縮合反応を行った。放圧に続き、微加圧下のレジンを冷水にストランド状に吐出して急冷し、その後20秒間冷水中で保持した後、カッティングして長さ約3mm、直径約2mmのシリンダー形状の固有粘度(IV)が0.55、カルボキシ末端量が12eq/tonのペレットを得た。
上記の溶融重合によって得たペレットを0.5mmHgの減圧下、220℃で固相重合を行い、固有粘度(IV)が、0.75dl/g、カルボキシ末端量が5eq/tonポリエステルペレットを得た。
(2)フィルムの製膜
ポリエチレンテレフタレートのペレットと平均粒子径1.0μm、粒子径のばらつき度が20%、面積形状係数が80%のシリカ粒子をPETに対し0.06質量%となるようにし、135℃で10時間減圧乾燥(1Torr)した後、カルボジイミド化合物であるカルボジライトLA−1(日清紡ケミカル株式会社製)を得られたポリエステルペレットに対して1質量部とともに押出機に供給した。押出機熔融部、混練り部、ポリマー管、ギアポンプ、フィルターまでの樹脂最高温度は290℃、その後のポリマー管では285℃とし、ダイスよりシート状にして押し出した。これらのポリマーは、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度20μm粒子95%カット)を用いて濾過した。また、フラットダイは樹脂温度が285℃になるようにした。なお、押出機入り口で抜き出したPETペレットの水分率を測定した結果、水分率は18ppmであった。押し出した樹脂を静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。
次に、この未延伸フィルムを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.3倍延伸して一軸配向PETフィルムを得た。引き続いて、テンターで、130℃で幅方向に4.0倍に延伸を行った後、熱固定を235℃で行い、さらに200℃で幅方向に弛緩処理を行い、厚さ50μmの二軸配向PETフィルムを得た。得られたPETフィルムの特性を表1に示す。
(実施例2)
カルボジライトLA−1の代わりに、フィルムの製膜時にポリエステルペレットのカルボキシ末端に対し、エポキシ量が等量となるようにエポキシ化合物であるジアリルモノグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業株式会社製)を添加した以外は、実施例1と同様に二軸配向PETフィルムを得た。得られたPETフィルムの特性を表1に示す。
(実施例3)
カルボジライトLA−1の代わりに、フィルムの製膜時にオキサゾリン化合物であるエポクロスRPS−1005(日本触媒株式会社製)を得られたポリエステルペレットに対して4質量部添加した以外は、実施例1と同様に二軸配向PETフィルムを得た。得られたPETフィルムの特性を表1に示す。
(実施例4)
重縮合触媒として、上記アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液/リン化合物のエチレングリコール溶液の混合物、リチウム化合物のエチレングリコール溶液をアルミニウム元素の残存量が20ppm、リン元素の残存量が80ppm、リチウム元素の残存量が20ppmとなるように添加してポリエステルペレットを得た。得られたポリエステルペレットを用い、カルボジライトLA−1の代わりに、フィルムの製膜時にポリエステルペレットのカルボキシ末端に対し、エポキシ量が等量となるようにエポキシ化合物であるジアリルモノグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業株式会社製)を添加した以外は、実施例5と同様に二軸配向PETフィルムを得た。得られたPETフィルムの特性を表1に示す。
(比較例1)
重縮合触媒として、重縮合触媒として、上記アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液/リン化合物のエチレングリコール溶液の混合物をアルミニウム元素の残存量が160ppm、リン元素の残存量が80ppmとなるように添加して作製したポリエステルペレットを用い、カルボジライトLA−1の代わりにフィルムの製膜時にポリエステルペレットのカルボキシ末端に対し、エポキシ量が等量となるようにジアリルモノグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業株式会社製)を添加した以外は、実施例1と同様に二軸配向PETフィルムを得た。得られたPETフィルムの特性を表1に示す。
(比較例2)
溶融重合によって固有粘度(IV)が0.50dl/g、カルボキシ末端量が34eq/tonのポリエステルペレットを得て、固相重合により固有粘度(IV)が0.75dl/g、カルボキシ末端量が16eq/tonのポリエステルペレットを用い、反応性末端封鎖剤を添加しなかった以外は、実施例1と同様に二軸配向PETフィルムを得た。得られたPETフィルムの特性を表1に示す。
(比較例3)
(1)ポリエステルペレットの作成
攪拌機付き2リッターステンレス製オートクレーブにジメチルテレフタル酸とエチレングリコール、カルシウム元素の残存が200ppmになるようにカルシウム化合物のエチレングリコール溶液を仕込み、常法に従ってエステル交換反応を行い、オリゴマー混合物を得た。このオリゴマー混合物にリン元素の残存量が400ppmになるようにトリメチルリン酸を添加し、窒素雰囲気下、常圧にて200℃で10分間攪拌した。その後、重縮合触媒として、上記アンチモン化合物のエチレングリコール溶液/リチウム化合物のエチレングリコール溶液の混合物をアンチモン元素の残存量が200ppm、リチウム元素の残存量が100ppmとなるように添加した。次いで、窒素雰囲気下、常圧にて250℃で10分間攪拌した。その後、60分間かけて280℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(0.1Torr)として、さらに280℃、13.3Pa下でポリエステルの固有粘度(IV)が0.55dl/gになるまで重縮合反応を行った。放圧に続き、微加圧下のレジンを冷水にストランド状に吐出して急冷し、その後20秒間冷水中で保持した後、カッティングして長さ約3mm、直径約2mmのシリンダー形状の固有粘度(IV)が0.55dl/g、カルボキシ末端量が12eq/tonのペレットを得た。
上記の溶融重合によって得たペレットを0.5mmHgの減圧下、220℃で固相重合を行い、固有粘度(IV)が、0.75dl/g、カルボキシ末端量が5eq/tonポリエステルペレットを得た。
(フィルム製膜)
上記ポリエステルペレットを用い、反応性末端封鎖剤としてフィルムの製膜時にポリエステルペレットのカルボキシ末端に対し、エポキシ量が等量となるようにジアリルモノグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業株式会社製)を添加した以外は実施例1と同様に二軸配向PETフィルムを得た。得られたPETフィルムの特性を表1に示す。