JP2010248172A - アクリル酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
アクロレインを高負荷条件で接触気相酸化してアクリル酸を製造する際におけるスタートアップの方法(反応停止状態から所定の反応条件までアクロレイン供給量(負荷量)を高めてゆく工程)の改良が提供される。
【解決手段】
この方法は、当該反応のスタートアップに際して、アクロレイン転化率が90モル%以上に、各反応帯における触媒層の最大ピーク温度が400℃以下に、かつ、各反応帯の触媒層でのΔT(触媒層最大ピーク温度−反応温度)の合計が150℃以下に、それぞれ維持される様に、反応温度、反応原料ガス組成および反応原料ガス風量の少なくとも1つを調整しながら、所定の反応原料ガス組成および反応原料ガス風量になるまでアクロレイン供給量を高めることを特徴としている。この方法によれば、反応が迅速に定常状態に到達し、反応開始当初から安定して高いアクリル酸収率が達成される。
【選択図】 なし
Description
触媒性能が達成されるまでに長時間を要し、また、触媒活性が不安定なため、場合によっては局所的な発熱のため触媒が劣化する。
(触媒層最大ピーク温度−反応温度)の合計が150℃以下に、それぞれ維持されるように、反応温度、反応原料ガス組成および反応原料ガス風量の少なくとも1つを調整しながら、所定の反応原料ガス組成および反応原料ガス風量になるまでアクロレイン供給量を高めることを特徴とする。
(ここで、Moはモリブデン、Vはバナジウム、Wはタングステン、Cuは銅、Aはコバルト、鉄、ニッケル、鉛およびビスマスからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素、Bはアンチモン、ニオブおよびスズからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素、Cはケイ素、アルミニウム、チタンおよびジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素、Dはアルカリ金属からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素、Oは酸素を表し、a、b、c、d、e、f、gおよびxはそれぞれMo、V、W、Cu、A、B、C、D及びOの原子数を表し、2≦a≦15、0≦b≦10、0<c≦6、0≦d≦30、0≦e≦6、0≦f≦60、0≦g≦6でありxは各元素の酸化状態により定まる値をとる。)
触媒の形状についても特に制限はなく、球状、円柱状、リング状、不定形などのいずれの形状でもよい。もちろん球状の場合、真球である必要はなく実質的に球状であればよく、円柱状およびリング状についても同様である。
反応温度の調整
例えば、反応帯が2つの場合には、触媒層ΔTに関して下記(1)又は(2)の状態が想定されるので、触媒層最大ピーク温度および各反応帯の触媒層でのΔTについての調整を行う。
(2)第1層目ΔT<第2層目ΔT
(1)の場合は、反応温度を下げ、(2)の場合は、反応温度を上げることで、第1層目ΔTと第2層目ΔTのバランスをとりながら、触媒層の最大ピーク温度が400℃を超えないようにする。第1層目ΔTと第2層目ΔTの合計値が150℃を超えない範囲で、さらに原料供給量を増大させる。これらの触媒層最大ピーク温度および各反応帯の触媒層でのΔTの合計を所定の範囲に収めるための反応温度の調整は、原料供給量を固定したままあるいは増大させながらのいずれでも行うことができる。
反応原料ガス組成および反応原料ガス風量の調整
酸化反応装置能力やプロセスにもよるが、通常ある程度の条件変更は可能であり、原料ガス中のアクロレイン濃度、酸素/アクロレイン比又は水蒸気濃度を変更することにより、第1層目ΔTと第2層目ΔTのバランスをとりながら、触媒層の最大ピーク温度が400℃以上を超えないようにする。第1層目ΔTと第2層目ΔTの合計値が150℃を超えない範囲で、さらに原料供給量を増大させる。これらの触媒層最大ピーク温度および各反応帯の触媒層でのΔTの合計を所定の範囲に収めるための反応原料ガス組成の調整は、原料供給量を固定したままあるいは増大させながらのいずれでも行うことができる。
アクロレイン転化率(モル%)
=(反応したアクロレインのモル数/供給したアクロレインのモル数)×100
アクリル酸収率(モル%)
=(生成したアクリル酸のモル数/供給したアクロレインのモル数)×100
<実施例1>
[触媒1の調製]
蒸留水2500部を加熱攪拌しながら、この中にパラモリブデン酸アンモニウム350部、メタバナジン酸アンモニウム58.0部およびパラタングステン酸アンモニウム89.2部を溶解した。別に、蒸留水250部を加熱攪拌しながら、この中に硝酸銅59.9部および硝酸コバルト28.9部を溶解した。得られた2つの水溶液を混合し、さらに三酸化アンチモン36.1部および二酸化チタン17.2部を添加し、懸濁液を得た。得られた懸濁液を加熱、攪拌、蒸発せしめた。このようにして得られた乾燥物を230℃で乾燥後に150μm以下に粉砕し、触媒粉体を得た。遠心流動コーティング装置に平均粒径5.0mmのシリカ−アルミナ球状担体1150部を投入し、次いで結合剤として15質量%のグリセリン水溶液とともに触媒粉体を90℃の熱風を通しながら徐々に投入して担体に担持させた後、空気雰囲気下410℃で6時間熱処理をして触媒1を得た。この触媒1の担持率は約32質量%であり、酸素および担体を除く金属元素組成は次のとおりであった。
Mo12V3W2Sb1.5Cu1.5Ti1.3Co0.6
[触媒2の調製]
同様に、平均粒径8.0mmのシリカ−アルミナ球状担体を用いた以外は触媒1と同様にして触媒2を得た。触媒2の担持率は約32質量%であった。
[反応器]
全長3000mm、内径25mmの鋼鉄製の反応管、これを覆う熱媒体を流すためのシェル、および反応管内で温度を測定するための温度検出部を有する熱電対が反応管内の管軸線方向に自由に移動できるようにした温度計測装置からなる反応器を鉛直方向に用意し、触媒層温度を常時モニターした。反応器上部より触媒2および触媒1を順次落下させて、第1反応帯(触媒2を充填した触媒層)および第2反応帯(触媒1を充填した触媒層)を形成し、それぞれの反応帯の層長が800mmおよび2100mmとなるように充填した。アクロレイン転化率およびアクリル酸収率は、反応器入口ガスおよび反応器出口ガスを連続的にサンプリングし、オンラインガスクロによりモニターした。
[酸化反応]
熱媒体温度を270℃に保ち、触媒を充填した反応管に、空気0.870m3(標準状態)/hr、窒素0.788m3(標準状態)/hrおよび水蒸気0.454m3(標準状態)/hrからなる混合ガスを反応器下部より供給した。続いてアクロレインの供給を開始し、3時間後に0.128m3(標準状態)/hrとなるようにした。3時間後の反応ガス組成は、アクロレイン5.7容量%、酸素8.1容量%、水蒸気20容量%、残りは窒素等の不活性ガスであり、アクロレイン転化率は99.2%、アクリル酸収率は93.9%であった。各反応帯での触媒層最大ピーク温度はそれぞれ第1反応帯が335℃、第2反応帯が295℃で、各反応帯触媒層のΔTの合計は90℃であった。
上記した段落[0028]から段落[0034]に至るまでの反応過程におけるデータを、下表に示す。
実施例1と同様に反応を開始し、アクロレイン供給量を徐々に増加させる途中において、アクロレイン供給量を0.148m3(標準状態)/hrまで増加させた時点で、第2反応帯の触媒層最大ピーク温度は300℃であったが、第1反応帯の触媒層最大ピーク温度が380℃まで上昇し400℃を超えそうになった。しかし、そのままのアクロレイン供給量を維持したところ、第1反応帯の触媒層最大ピーク温度は410℃に達した。このとき、アクロレイン供給開始より約30時間経過しており、アクロレイン転化率は98.0%で、各反応帯の触媒層最大ピーク温度はそれぞれ第1反応帯が410℃、第2反応帯が283℃で、各反応帯触媒層のΔTの合計は147℃であった。
<比較例2>
実施例1と同様に反応を開始し、アクロレイン供給量を徐々に増加させる途中において、アクロレイン供給量を0.151m3(標準状態)/hrまで増加させた時点で、アクロレイン転化率が90%未満になりそうであったが、そのままアクロレイン供給量を増大させた。経時50時間のアクロレイン供給量は0.155m3(標準状態)/hr、各反応帯の触媒層最大ピーク温度はそれぞれ第1反応帯が340℃、第2反応帯が320℃で、各反応帯触媒層のΔTの合計は124℃であり、アクロレイン転化率は94.6%、アクリル酸収率は89.6%であった。以降は実施例1と同様にアクロレイン供給量を目標値である0.160m3(標準状態)/hrまで増大させて所定の反応条件に到達せしめることにより、スタートアップを完了した。スタートアップの間、実施例1に較べて触媒層温度の挙動が不安定であり、各反応帯における触媒層の最大ピーク温度を400℃以下に維持し、かつ、各反応帯の触媒層でのΔT(触媒層最大ピーク温度−反応温度)の合計を150℃以下に維持するためにより多くの時間を必要とし、スタートアップに約150時間かかった。
<実施例2>
[触媒3の調製]
蒸留水2000部を加熱攪拌しながら、この中にパラモリブデン酸アンモニウム300部、メタバナジン酸アンモニウム66.3部およびパラタングステン酸アンモニウム49.7部を溶解した。別に、蒸留水200部を加熱攪拌しながら、この中に硝酸銅68.4部を溶解した。得られた2つの水溶液を混合し、さらに三酸化アンチモン20.6部および二酸化チタン14.7部を添加し、懸濁液を得た。得られた懸濁液を加熱、攪拌、蒸発せしめた。このようにして得られた乾燥物を230℃で乾燥後に150μm以下に粉砕し、触媒粉体を得た。遠心流動コーティング装置に平均粒径5.0mmのシリカ−アルミナ球状担体960部を投入し、次いで結合剤として15質量%のグリセリン水溶液とともに触媒粉体を90℃の熱風を通しながら徐々に投入して担体に担持させた後、空気雰囲気下400℃で6時間熱処理をして触媒3を得た。この触媒3の担持率は約31質量%であり、酸素および担体を除く金属元素組成は次のとおりであった。
Mo12V4W1.3Sb1.0Cu2.0Ti1.3
[触媒4の調製]
同様に、平均粒径8.0mmのシリカ−アルミナ球状担体を用いた以外は触媒3と同様にして触媒4を得た。触媒4の担持率は約31質量%であった。
[反応器]
反応管数24本の各全長3000mm、内径25mmの鋼鉄製の反応管、これを覆う熱
媒体を流すためのシェルからなる反応器の上部より触媒4および触媒3を順次落下させて、第1反応帯(触媒4を充填した触媒層)および第2反応帯(触媒3を充填した触媒層)を形成し、それぞれの反応帯の層長が800mmおよび2100mmとなるように充填した。反応管のうち6本は反応管内で温度を測定するための温度検出部を有する熱電対が、反応管内の管軸方向に自由に移動できるようにした温度計測装置を備えてあり、触媒層温度を常時モニターした。アクロレイン転化率およびアクリル酸収率は、反応器入口ガスおよび反応器出口ガスを連続的にサンプリングし、オンラインガスクロによりモニターした。
[酸化反応]
熱媒体温度を267℃に保ち、触媒を充填した反応管に、空気20.9m3(標準状態)/hr、窒素21.9m3(標準状態)/hrおよび水蒸気8.2m3(標準状態)/hrなる組成の混合ガスを反応器下部より供給した。続いてアクロレインの供給を開始し、4時間後に、アクロレイン供給量が3.1m3(標準状態)/hrとなるようにした。4時間後の反応ガス組成は、アクロレイン5.7容量%、酸素8.1容量%、水蒸気15容量%、残りは窒素等の不活性ガスで、アクロレイン転化率は99.2%、アクリル酸収率は93.7%、各反応帯での触媒層の最大ピーク温度はそれぞれ第1反応帯が318℃、第2反応帯が306℃で、各反応帯触媒層のΔTの合計は90℃であった。
<比較例3>
実施例2と同様に反応を開始し、アクロレイン供給量を増大させる途中において、アクロレイン供給量を3.4m3(標準状態)/hrまで増加させた時点で、第2反応帯の最大ピーク温度が335℃まで上昇した反応管があったが、そのままのアクロレイン供給量を維持したところ、各反応帯触媒層のΔTの合計が158℃に到達した。このとき、アクロレイン供給開始より約50時間経過しており、第2反応帯の最大ピーク温度は346℃、第1反応帯の最大ピーク温度は348℃であった。以降は実施例2と同様にアクロレイン供給量を目標値である3.6m3(標準状態)/hrまで増大させて、所定の反応条件に到達せしめることにより、スタートアップを完了した。このとき、アクロレイン供給開始より120時間経過しており、熱媒体温度は268℃、触媒層最大ピーク温度は349℃、各反応帯触媒層のΔTの合計は143℃であった。アクロレイン転化率は98.2%、アクリル酸収率は92.1%であり、実施例2と比較して、所定の反応条件到達時の触媒性能が低かった。
<実施例3>
[反応器]
全長3000mm、内径25mmの鋼鉄製の反応管、これを覆う熱媒体を流すためのシェル、および反応管内で温度を測定するための温度検出部を有する熱電対が反応管内の管軸線方向に自由に移動できるようにした温度計測装置からなる反応器を鉛直方向に用意し、触媒層温度を常時モニターした。反応器上部より触媒2、触媒4および触媒1を順次落下させて、第1反応帯(触媒2を充填した触媒層)、第2反応帯(触媒4を充填した触媒層)および第3反応帯(触媒1を充填した触媒層)を形成し、それぞれの反応帯の層長が150mm、700mmおよび2100mmとなるように充填した。アクロレイン転化率およびアクリル酸収率は、反応器入口ガスおよび反応器出口ガスを連続的にサンプリングし、オンラインガスクロによりモニターした。
[酸化反応]
熱媒体温度を271℃に保ち、触媒を充填した反応管に、空気0.87m3(標準状態)/hr、窒素0.87m3(標準状態)/hrおよび水蒸気0.42m3(標準状態)/hrからなる混合ガスを反応器下部より供給した。続いてアクロレインの供給を開始し、3時間後に0.131m3(標準状態)/hrとなるようにした。3時間後の反応ガス組成は、アクロレイン5.7容量%、酸素7.9容量%、水蒸気18.3容量%、残りは窒素等の不活性ガスであり、アクロレイン転化率は99.1%、アクリル酸収率は93.8%であった。各反応帯での触媒層最大ピーク温度はそれぞれ第1反応帯が280℃、第2反応帯が331℃、第3反応帯が294℃で、各反応帯触媒層のΔTの合計は92℃であった。
Claims (5)
- 各反応管の管軸方向に活性の異なる2層以上の反応帯が形成されるように触媒を充填した固定床反応器を用い、アクロレインまたはアクロレイン含有ガスを分子状酸素または分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化してアクリル酸を製造する方法において、当該反応のスタートアップに際して、アクロレイン転化率が90モル%以上に、各反応帯における触媒層の最大ピーク温度が400℃以下に、かつ、各反応帯の触媒層でのΔT(触媒層最大ピーク温度−反応温度)の合計が150℃以下に、それぞれ維持されるように、反応温度、反応原料ガス組成および反応原料ガス風量の少なくとも1つを調整しながら、所定の反応原料ガス組成および反応原料ガス風量になるまでアクロレイン供給量を高めることを特徴とするアクリル酸の製造方法。
- 反応ガス入口側から出口側に向かって反応帯の活性が順次高くなるように触媒が充填された固定床反応器を用いる請求項1記載の方法。
- 定常状態において90hr−1(標準状態)以上のアクロレイン空間速度で接触気相酸化を行う請求項1または2のいずれかに記載の方法。
- 前記アクロレインまたはアクロレイン含有ガスが、プロピレンの分子状酸素または分子状酸素含有ガスによる接触気相酸化反応によって得られるものである請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記アクロレインまたはアクロレイン含有ガスが、グリセリンの脱水反応によって得られるものである請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
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