JP2010226965A - 糖質系食品素材の粉末状態での焙焼による改質糖質系食品素材の製法及びその製品 - Google Patents

糖質系食品素材の粉末状態での焙焼による改質糖質系食品素材の製法及びその製品 Download PDF

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Yoshiharu Matahira
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Abstract

【課題】糖質系食品素材の粉末状態での焙焼による改質糖質系食品素材の製法及びその製品を提供する。
【解決手段】原料の糖質系食品素材を、単独で又2種以上組み合わせて混合し、粉末状態又はガラス転移した状態を維持して焙焼することにより、溶解性及び/又は抗酸化性を付加して、その機能性を改質する工程からなり、上記原料の糖質系食品素材が、単糖、オリゴ糖、澱粉又は増粘多糖類であることから成る糖質系食品素材の機能性の改質方法、及び溶解性及び/又は抗酸化性が人為的に付加された改質糖質系食品素材。
【効果】溶解性及び/又は抗酸化性、香味質を付加した加工製品の改質糖質系食品素材を提供することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、単糖などの糖質系食品素材を、単独で又は2種以上組み合わせて混合し、粉末状態又はガラス転移した状態を維持して、焙焼することにより、該糖質系食品素材に有用な機能性を付加した新規な改質糖質系食品素材の製法及びその製品に関するものであり、更に詳しくは、原料の糖質系食品素材を、単独で又は2種以上組み合わせて混合し、粉末状態又はガラス転移した状態を維持して、焙焼することにより、溶解性及び/又は抗酸化性を持つ糖質系食品素材に改質する方法、改質された糖質系食品素材の製造方法、及びその改質糖質系食品素材に関するものである。
本発明では、上記糖質系食品素材の成分として、単糖類、オリゴ糖類、多糖類があり、その構成成分は、三単糖、四単糖、五糖類、六糖類、七糖類、アルドース、ケトース、デオキシ糖、ウロン酸、アミノ糖、糖アルコール、ラクトン、誘導体などがあげられる。具体的には、グルコース、ガラクトース、マンノース、リボース、キシロース、アラビノースなどのアルドース中性糖、フルクトース、ソルボースなどのケトース中性糖、グルクロン酸、ガラクツロン酸などの酸性糖質、ラムノース、フコースなどのデオキシ糖、グルコサミンなどのアミノ糖、そのアセチル誘導体などの糖質系食品素材があげられる。
従来から、例えば、澱粉を加熱処理することによって、デキストリンとしたり、該澱粉を温水中で処理して、一部難消化性の澱粉として利用したり、あるいは、澱粉に、加圧−減圧処理を施して、難消化性の澱粉としたり、砂糖の結晶形を変化させて、溶解性を改良したりする事例がみられるように、糖質の本来の特性を、人為的に改質して、その加工製品を製造する方法が種々知られている。
それらのうち、例えば、溶解性の澱粉としては、デキストリンが知られており、焙焼デキストリンは、数%の水を含む澱粉を、酸の存在下又は非存在下に加熱して得られるものである。その加熱条件は、酸を添加しないで焙焼する場合は、135〜218℃で、10〜20時間の加熱処理が必要とされ、酸を添加する場合は、79〜121℃で、3〜8時間の加熱処理が必要とされ、加水分解程度を高める場合は、酸を添加して、150〜220℃で、6〜18時間の加熱処理が必要とされる。
本発明の方法で製造される糖質系食品素材と類似性のある製品としては、各種の製品が知られているが、例えば、上記焙焼デキストリンについては、焙焼度合いにより、白色デキストリンと黄色デキストリンがある。また、無酸又はアルカリ添加の状態で、焙焼し、加水分解したブリティッシュガムもある。
白色デキストリンとしては、可溶性澱粉と呼ばれる低分解物のものから、分解率が90%近い冷水可溶性成分のものまである。黄色デキストリンは、白色デキストリンの加水分解程度を更に高めたものであり、黄色に変化し、冷水可溶性成分は、98%以上となったものである。ブリティッシュガムは、酸焙焼法によるデキストリンと比べ、分子量の大きい高分岐状分子構造のものである。
酵素変性デキストリンは、マルトデキストリンと総称され、澱粉を、酵素を用いて高温液化法により、加水分解したものである。酸分解でんぷんは、澱粉を、無機酸又は有機酸で処理して、可溶性としたものであり、冷水には溶解せず、加熱により、低粘度の糊液となるので、Thin Boiling Starchとも呼ばれる。
更に、最近、加工澱粉として、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロビル化リン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン及びリン酸架橋デンプンが、食品衛生法第10条に基づく添加物として指定することは差し支えないもの、とされている。これらの加工澱粉は、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊料、乳化剤への用途がある。
砂糖の溶解性の改良は、結晶形を変化させてアモルファスにするもので、添加時の溶解を容易とすることができる。ショ糖の溶解度は、210であり、溶解性に優れているが、トレハロースは、68.9、アセチルグルコサミンは、45程度でやや小さく、乳糖は、21.6でかなり小さい。特に、サイクロデキストリン(CD)は、β―CDでは2以下で低く、α―CDでは14程度、γ―CDでも23程度であり、これらの糖質の溶解度を高めることが望まれている。
例えば、サイクロデキストリンの溶解性は、CD環に、各種の糖を結合させて、分岐サイクロデキストリンとすることにより、改良されている(非特許文献1、特許文献1〜4)。しかし、煩雑な工程を要するために、高価となり、より簡便な方法が求められ、このような技術が開発されれば、その利用が更に発展する可能性がある。
また、例えば、抗酸化性の糖質関連素材としては、抗酸化性多糖類があり、抗酸化活性を持つ低メトキシペクチンが、豆モヤシ胚軸多糖類から得られている(非特許文献2)。抗酸化性成分部分を持つ高分子素材であれば、その分解により、潜在化していた部分が顕在化して、抗酸化性を持つ素材に変換できることは予想できる。また、中国産薬用ハーブから抽出した多糖類と、その硫酸化、リン酸化、アセチル化誘導体に、元の多糖類より強い抗酸化能があることが知られている(非特許文献3)。
一般に知られている抗酸化性物質としては、各種の生体内成分があり、これらは、生体を酸化から防御するために、多様な種類と酸化防御機構が知られている。ポリフェノール、ビタミン類、不飽和脂肪酸などは、強力な抗酸化能を示し、これらの成分を利用した抗酸化性関連製品は、極めて多い。
抗酸化性に関連する学術的なものとして、グルコサミンとアミノ酸、糖質及び有機酸との褐変反応により生成した褐変物質について、抗酸化性及びその性状を報告した例がある(非特許文献4)。これは、遊離グルコサミンに、アミノ酸、糖質及び有機酸を添加して、37℃と100℃で、液状で反応させたものであり、アミノ酸:L−リジン、DL−アラニン、L−ロイシン、グリシン、L−メチオニン、L−グルタミン酸、糖質:D−キシロース、D−グルコース、D−マルトース、D−ガラクトース、D−サッカロース、有機酸:L−アスコルビン酸、コハク酸、クエン酸、シュウ酸、を用いている。
この文献では、褐変物質の調製は、遊離グルコサミン0.1Mと、0.05Mのアミノ酸、糖及び有機酸を、それぞれ加え、蒸留水に溶解後、褐色容器に入れ、37℃のインキュベーターで、30日間放置褐変させている。同様の濃度に調製した溶液を、100℃、60分間加熱褐変させたものについて、抗酸化性を、ワールブルグ検圧装置により、酸素吸収量を測定して求め、酸素吸収量の値が小さいもので、抗酸化性があるとしている。
また、上記文献では、抗酸化性については、37℃で30日間、及び100℃で60分間の加熱で褐変させた試料の抗酸化性は、30日間の放置では、アミノ酸添加区のロイシン区、グルタミン酸区、糖添加区のグルコース区、キシロース区及びすべての有機酸添加区に、明らかな抗酸化性が認められたとしている。一方、100℃、60分間の加熱では、30分間の加熱時に、グルコース区、コハク酸区、クエン酸区、シュウ酸区で、酸化を促進し(抗酸化とは逆)、この現象は、有機酸添加区で、顕著に表れたが、それ以後には、すべての添加区で、抗酸化性が認められたとしている。
特に、アスコルビン酸区、グルコース区が顕著であり、更に、37℃、30日間の放置の有機酸添加区では、全試料区とも、効果的な効力を示したが、100℃、60分間の加熱では、アスコルビン酸区のみに、強い抗酸化性が認められ、逆に、アミノ酸及び糖添加区では、強い抗酸化性を示すものが多かったとしている。
このように、反応条件により、抗酸化性の出現は、多様に変化し、特に、成分の組合せ、温度条件が、抗酸化性の発現には大きく影響し、これらは、実際に、実験して実証することによって初めて見出せるものである。また、この例では、溶液状での反応であるが、粉末状での反応(焙焼)で、抗酸化性の発現が、どのようになるかは予想することはできない。また、グルコサミン褐変物質を添加したビスケット及びいわしの開き干しの、保存中の過酸化物価の変化に関する、当該褐変物質の利用についての報告もある(非特許文献5)。
また、メラノイジンは、アミノ酸と糖質の組合せで起こるメイラード反応(褐変反応)により生成するものであり、アミノ酸と糖質の種類により、各様に変化する。糖質単独で、抗酸化能を持ち、味質に優れた製品とすることも知られており、例えば、ショ糖を、カラメルとする例がある。しかし、糖質の粉末状態を維持しての焙焼による抗酸化能については、知られていない。
酸性糖質、アセチルグルコサミンが、単独で、高温処理により、抗酸化性になる傾向があることは本発明者らにより提案されている(特許文献5)。しかし、この処理方法では、具体的には、各糖質10%溶液を調製し、その1mLを、150℃、30分大気中で加熱処理した後、抗酸化能を評価したものである。アセチルグルコサミン、グルクロン酸Naでは、かなり強い抗酸化能があり、ガラクツロン酸、キシロース、フルクトースでは、僅かな抗酸化能が検出されているが、水、有機酸、又は油脂を必須としている点で、本発明とは区別されるものである。
このように、従来、溶解性、抗酸化性などを持つ糖質関連製品の製造方法、類似製品は、極めて多いが、これらの方法は、一般に、工程が複雑であったり、目的とする機能を付加できない場合が多々あり、その方法や、得られる製品も、原料に比較して、十分な優位性がないか少ないと云うのが実情である。
特開平5−306301号公報 特開平6−14789号公報 特開平8−56691号公報 特開平10−25305号公報 特願2007−233463
澱粉科学、Vol.30、pp.231−239(1982) 日本食品科学工学会誌、Vol.54(6)、pp.247−252(2007) Food Science and Technology Research、Vol.14(2)、pp.160−168(2008) 日本食品工業学会誌、第35巻、第12号、pp.846−850(1988年) 栄養学雑誌、Vol.46(1)、pp.35−40(1988)
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、簡便な方法で、原料の糖質系食品素材の特性を、人為的に変換、改質させて、機能性を付加した加工製品の改質糖質系食品素材を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、糖質の選択及び組み合わせと特定の焙焼処理を採用することにより、付与できる機能性を大きく変換して、改質できることを初めて見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、溶液状ではなく、各糖質系食品素材の粉末を、単独で又は2種以上組み合わせて混合して、粉末状態又はガラス転移した状態を維持して直接焙焼することで、溶解性及び/又は抗酸化能を付加して、その機能性を改質する糖質系食品素材の機能性の改質方法及びその改質糖質系食品素材製品を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)原料の糖質系食品素材を、単独で又2種以上組み合わせて混合し、粉末状態又はガラス転移した状態を維持して焙焼することにより、溶解性及び/又は抗酸化性を付加して、その機能性を改質する工程からなり、上記原料の糖質系食品素材が、単糖、オリゴ糖、澱粉又は増粘多糖類であることを特徴とする糖質系食品素材の機能性の改質方法。
(2)原料として糖質系食品素材を用い、焙焼し、その機能性を改質させて特定の機能性を付加した改質糖質系食品素材を製造する方法であって、原料の糖質系食品素材を、単独で又は2種以上組み合わせて混合し、粉末状態又はガラス転移した状態を維持して焙焼することにより、溶解性及び/又は抗酸化性を付加した改質糖質系食品素材を製造する工程からなり、上記原料の糖質系食品素材が、単糖、オリゴ糖、澱粉又は増粘多糖類であることを特徴とする改質糖質系食品素材の製造方法。
(3)原料の糖質系食品素材が、アセチルグルコサミン、グルコサミン、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、アラビノース、D−リボース、L−ソルボース、L−ラムノース、D−フコース、グルクロン酸、マンヌロン酸、又はガラクツロン酸である、前記(1)又は(2)に記載の方法。
(4)原料の糖質系食品素材が、マルトース、スクロース、ラクトース、トレハロース、α−CD、β−CD、又はγ−CDである、前記(1)又は(2)に記載の方法。
(5)糖質系食品素材の2種以上の組み合わせが、アセチルグルコサミンと、ショ糖、マルトース、乳糖、澱粉及び/又は増粘多糖類との組み合わせ、あるいはフコースと、ショ糖、マルトース、乳糖、澱粉及び/又は増粘多糖類との組み合わせである、前記(1)から(4)のいずれかに記載の方法。
(6)糖質系食品素材の混合の割合が、糖質系食品素材の主材に対して、他の糖質系食品素材が0.1〜50重量%である、前記(1)から(5)のいずれかに記載の方法。
(7)糖質系食品素材を、単独で又は2種以上組み合わせて混合し、焙焼する、あるいは混合しながら平板又は回転式で焙焼する、前記(1)から(6)のいずれかに記載の方法。
(8)焙焼の温度が、120〜300℃である、前記(1)から(7)のいずれかに記載の方法。
(9)前記(1)から(8)のいずれかに記載の方法により、原料の糖質系食品素材を、単独で又は2種以上組み合わせた混合物を、粉末状態又はガラス転移した状態を維持してでの焙焼で、その特性が改質された改質糖質系食品素材であって、上記焙焼により、溶解性及び/又は抗酸化性・香味質が、人為的に付加されて溶解性及び/又は抗酸化性が改質された糖質系食品素材であることを特徴とする改質糖質系食品素材。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、糖質系食品素材の機能性を改質する方法であって、原料の糖質系食品素材を、単独で又は2種以上組み合わせて混合し、粉末状態又はガラス転移した状態を維持して焙焼することにより、溶解性及び/又は抗酸化性、香味質を付加して、その機能性を改質する工程からなり、上記原料の糖質系食品素材が、多糖類である澱粉、増粘多糖類、オリゴ糖、又は単糖であることを特徴とするものである。
本発明では、原料の糖質系食品素材が、アセチルグルコサミン、グルコサミン(塩酸塩など)、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、アラビノース、D−リボース、L−ソルボース、L−ラムノース、D−フコース、グルクロン酸、マンヌロン酸、又はガラクツロン酸であること、を好ましい実施の態様としている。
また、本発明では、原料の糖質系食品素材が、マルトース、マルチトール、スクロース、ラクトース、トレハロース、α−CD、β−CD、又はγ−CDであること、また、糖質系食品素材の2種以上の組み合わせが、アセチルグルコサミンと、ショ糖、マルトース、乳糖、糖アルコール、澱粉及び/又は増粘多糖類との組み合わせ、あるいはフコースと、ショ糖、マルトース、乳糖、糖アルコール、澱粉及び/又は増粘多糖類との組み合わせであること、を好ましい実施の態様としている。
また、本発明は、原料の糖質系食品素材の特性を、人為的に変換、改質させて、特定の機能性を付加した改質糖質系食品素材を製造する方法であって、該方法は、原料の糖質系食品素材を、単独で又は2種以上組み合わせて混合し、粉末状態又はガラス転移した状態を維持して焙焼し、溶解性及び/又は抗酸化性、香味質を付加した改質糖質系食品素材を製造する工程から構成される。原料の糖質系食品素材の一部の粉末は、焙焼により融解し、ガラス転移した状態となるが、本発明は、これらをも含むものである。
本発明では、上記原料の糖質系食品素材として、各種多糖類、オリゴ糖、単糖を用いることが好ましい。しかし、本発明は、これらの糖質の種類には限定されず、穀粉でも、これらの多糖類又は糖質成分を含むものであれば、本発明の方法を適用することができる。
本発明では、糖質系食品素材の混合の割合が、糖質系食品素材の主材、すなわち主成分に対して、それ以外の糖質系食品素材が0.1〜50重量%であること、また、糖質系食品素材を、単独で又は2種以上組み合わせて混合し、焙焼する、あるいは混合しながら平板又は回転式で焙焼すること、更に、焙焼の温度が、120〜300℃であること、を好ましい実施の態様としている。
また、本発明は、原料の糖質系食品素材の特性を、人為的に変換、改質させて、特定の機能性を付加した加工製品の改質糖質系食品素材であって、原料の糖質系食品素材を、単独で又は2種以上組み合わせて混合し、粉末状態又はガラス転移した状態を維持して焙焼することにより、溶解性及び/又は抗酸化性、香味質を付加したことを特徴とするものである。
本発明では、糖質系食品素材は、糖質の種類は限定されることなく使用することができ、例えば、糖アルコールを使用することも適宜可能である。本発明は、原料の糖質系食品素材を、単独で又は2種以上組み合わせて混合し、粉末状態又はガラス転移した状態を維持して焙焼することにより、溶解性及び/又は抗酸化性の改質された改質糖質系食品素材を製造することを特徴とするものである。
本発明における抗酸化性を評価する方法について説明する。抗酸化性の評価方法では、以下のDPPH−EtOH溶液(1液)と、0.1M 酢酸緩衝液−50%エタノール溶液(2液)を調製し、試料の呈色度を測定し、抗酸化性(又は抗酸化能と記載することがある)を評価する。
DPPH−EtOH溶液(1液)の調製:
2,2−Diphenyl−1−picryl−hydrazyl(SIGMA製)、FW 394市販試薬(暗所で凍結保存)約4mgを、10mLバイアルに取り、2mMとなるように、計算量の99.5%エタノールを加えて(DPPH 3.94mg/5mL99.5%エタノールで2mM)、振盪して、溶解する。尚、これを暗所で凍結保存しておけば、2,3ヶ月は使用可能である。
0.1M 酢酸緩衝液−50%エタノール溶液(2液)の調製:
0.2M 酢酸緩衝液(pH 5.0)と、99.5%エタノールを当量混合して、0.1M 酢酸緩衝液−50%エタノール溶液を調製する。尚、この溶液は、室温で、数ヶ月使用可能である。更に、1mMビタミンEエタノール溶液を調製する。冷凍庫で保存した場合、冷凍庫から取り出して、直ぐに使用でき、2、3ヶ月は使用可能である。
呈色度の測定方法:
呈色度は、1mMビタミンEエタノール溶液の、0、25、50、75、100μLを、2.4、2.375、2.35、2.325、2.3mLの2液に加え、これを1液の100μLと混合して、発色させ、呈色尺の値、0:−、25:2+、50:4+、75:6+、100:8+、として評価する。
試料の呈色度が、この中間に位置すれば、+、3+、5+、7+とし、計算により、ビタミンEとしての含有率を求める。正確な測定が必要な場合は、各呈色液を、一定時間(発色10分)後に、分光々度計で、520nmの吸光度を測定する。糖質を焙焼処理した試料は、時間経過で、呈色度が緩慢に変化する。
発色10分後に測定した値で、抗酸化能を算出すると、10mgの試料で+8の呈色を示した場合、0.1μmole/10mg試料、すなわち、10μmole/g試料、となる。一般の野菜、果実の抗酸化能は、10μ前後である。尚、ビタミンE、ビタミンC 1m mole は、トロロックス1m mole と同等の呈色を示す。
液体試料の場合は、100μLを用いるが、固形試料の場合は、25mgを秤取り、2.3mLの2液に溶解し、これに1液100μLを加えて、発色させ、その呈色度を、呈色尺の値と比較して、大凡の含有率を求める。尚、pHにより、呈色度は変化するので、pHチェックを行い、比較する一連の試験では、同一pHにする。尚、塩基サイドでは、呈色が変化しやすい。ビタミンE100mLと同等の呈色の場合、1mM濃度ビタミンE100μLは、0.1μmoleであるから、試料量が10mgでは、10μmole当量/g試料、となる。
糖質を単独で焙焼した場合について、例を示して説明する。各糖質粉末を、100mg、大気バイアル中で、170℃で、60分間焙焼処理した。その観察結果を、図1に示し、1〜21までの焙焼試料に、水を2mL加えて、沸騰水浴中、3分間加熱で溶解し、その100μLを、DPPH発色した結果を、図2に示す。図中、2は、炭化している様子で、不溶物が多いが、他は、全て透明に溶解した。尚、抗酸化能の測定用試料の量は、5mgとした。
図1に、糖質単独で、焙焼、焙焼後の試料の観察写真を示す。また、図2に、図1の各試料の抗酸化能を、DPPH呈色尺法で測定した値を示す。発色10分後に観察した。21は、瞬間に黄色に変化した。図の下の値が、抗酸化能の呈色尺である。
図1において、各糖質の番号は、以下の糖質を示す。
1.アセチルグルコサミン
2.グルコサミン塩酸塩
3.グルコース
4.ガラクトース
5.マンノース
6.フルクトース
7.キシロース
8.アラビノース
9.マルトース
10.スクロース
11.ラクトース
12.α−CD
13.β−CD
14.γ−CD
15.ソルビトール
16.エリスリトール
17.マンニトール
18.D−リボース
19.L−ソルボース
20.L−ラムノース
21.D−フコース
22.グルクロン酸
23.グルクロン酸Na
24.ガラクツロン酸
尚、以下の3種は、焙焼による着色が強いので、150℃で、30分間焙焼した。
(糖質番号) (種類) (呈色尺)
22. グルクロン酸 6+
23. グルクロン酸Na 10+
24. ガラクツロン酸 4+
以上の実験から、1.アセチルグルコサミン:4+、2.グルコサミン塩酸塩:4+、6.フルクトース:4+、7.キシロース:3+、18.D−リボース:3+、19.L−ソルボース:6+、21.D−フコース:25+の結果が得られ、特に、フコースは、単独焙焼で、着色も少なく、高い抗酸化能を示す糖質であることが判明した。尚、無処理区での各糖質の抗酸化能は、−であった。
このように、単糖、オリゴ糖などが、単独の焙焼で、糖質によっては、強い抗酸化能が生成することが判明した。しかし、これらと、他の糖質との組合せによる機能の発現・増強については、知られていない。そこで、アセチルグルコサミン、グルクロン酸、グルクロン酸Na、ガラクツロン酸を、各種濃度、各種温度で処理したところ、150℃で、30分間〜210℃で、1時間の範囲で、抗酸化能は高まり、これ以下では、抗酸化能が極めて発現しにくく、これ以上では、糖質の炭化が進み、特に、着色を嫌う食品への利用がしにくくなることが判明した。
糖質は、炭化しても、利用できる食品には利用可能であるが、抗酸化能は、炭化が進むと低下し、210℃、1時間の焙焼で、最高値になった後、230℃、1時間の焙焼では、試料が黒褐色に着色して、抗酸化能は、170℃、1時間の焙焼の場合の抗酸化能にまで低下することが見出された。温度と焙焼時間を選択することにより、抗酸化能の生成程度は、制御できるので、糖質は、好適な条件を適宜選択して焙焼を行う。
ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトールなどの糖アルコールでも、焙焼条件を強くすることにより、機能性を付与することが可能である。また、一般に、糖質の高温処理により、食物繊維含有量を高めることも可能であるので、本発明の方法で、食物繊維含有糖質を製造することも可能である。
また、β−CDを、170℃で、1時間焙焼した場合、その100mgを、室温の水2mLに溶解することが可能となり、この溶液は、一夜、室温放置しても、透明であり、この溶解性は、通常の2倍以上である。
次に、糖質を混合し、焙焼処理した場合について説明する。各糖質100mgを秤取り、水300μLで溶解してから、コーンスターチ1gを加えて、よく撹拌、混合し、ミニビーカー中、170℃で、60分間焙焼した。その結果を、図3に示す。全て、極めて良好な粉状で、スパーテルでかき回しただけで、微粉状になる。図4に、各試料の抗酸化能を評価した結果を示す。表1に、各種糖質とコーンスターチの混合系を焙焼して生成する抗酸化能について示す。
抗酸化能評価用の各試料中には、コーンスターチ以外の糖質が、2.27mg含まれている。表1において、※は、150℃で、30分間焙焼した場合の値である。試験区試料の焙焼後の観察は、170℃で、60分焙焼した後に行い、呈色尺の値で示した。着色度は、++:褐色 +:薄褐色 ±:極薄褐色 −:白色、を示す。
図3は、各種糖質とコーンスターチを混合して焙焼した場合の、焙焼後の観察写真を示したものである。ミニビーカー中の試料は、薬匙で磨砕して、バイアルに詰め替えた。図4は、図3の試料の抗酸化能をDPPHで発色した結果を示したものである。結果は、発色10分後に観察したものである。上段は、ビタミンEの標準呈色液 0、25、50、75、100μLを加えて、発色させたものである。
上記実験により、1.アセチルグルコサミン:10+、2.グルコサミン塩酸塩:75+、6.フルクトース:10+、8.アラビノース:8+、19.L−ソルボース:10+、21.D−フコース:6+、22.グルクロン酸:10+、23.グルクロン酸Na:25+、の結果が得られた。
単糖単独で焙焼した場合の、1.アセチルグルコサミン:4+、2.グルコサミン塩酸塩:4+、6.フルクトース:4+、7.キシロース:3+、18.D−リボース:3+、19.L−ソルボース:6+、21.D−フコース:25+、を比較すると、混合焙焼では、単糖の量が、2.27mg(単糖単独での焙焼の場合の抗酸化能測定に用いた量は、5mg)にもかかわらず、アセチルグルコサミン、グルコサミン塩酸塩、グルクロン酸Naでは、抗酸化能が増強され、逆に、フコースは、減少した。
したがって、糖質の組合せを選択して、求める機能性の生成に好適な条件を選択して焙焼することが好ましい。本発明では、デオキシ糖、アミノ糖、ウロン酸が好適であるが、これらの誘導体、この他の糖質でも適用可能である。また、グルコサミン(塩酸塩など)、D−リボース、L−ソルボース、L−ラムノース、D−フコースとの混合、焙焼試料には、快い香気があり、食すと、美味を呈する。香気の生成には、より高温での焙焼が好ましいが、着色が進むので、好適な条件を設定する。香気の成分としては、各種のマルトールが考えられる。
本発明では、原料のうち、多糖類としては、カラギーナン、寒天、マンナン、アルギン酸、ペクチン、大豆多糖類、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、キサンタンガム、ジェランガム、アラビアガム(アカシアガム)などがあげられるが、何れでも、本発明の方法を適用可能である(但し、セルロース系は除く)。単糖、オリゴ糖には、特に制限はない。
本発明は、原料の澱粉系食品素材として、コーンスターチ、馬鈴薯、甘藷、米、タピオカ、サゴなどの各種澱粉、米粉、小麦粉などの穀類粉と組み合わせることができる。着色を低減する必要があれば、各種の脱色剤があるが、食品としての使用を避けたい場合は、焙焼した後、酵素、微生物を用いて、脱色することも可能である。
ここで、上記試料を焙焼する際の焙焼温度は、120〜500℃が好ましく、特に、150〜300℃がより好ましい。焙焼温度が120℃未満であると、上述の機能性の付加ができず、一方、焙焼温度が500℃を超えると、素材が分解してしまうので、いずれも好ましくない。また、焙焼工程においては、通常の物質の変化速度は、10℃の上昇ごとに約2倍となるので、目的の素材に応じて、その製造条件として、好ましい焙焼温度と焙焼時間を適宜設定する。
焙焼の際には、原料の澱粉系食品素材を、例えば、回転ドラム内で、糖質溶液と混合しながら処理すること、各素材を、よく撹拌、混合して、パンに広げて、処理すること、が好ましい。その他、本発明では、高温を維持できる適宜の装置で、同様に焙焼することができ、焙焼方法は、特に制限されるものではない。本発明の製品は、従来の加工製品とは本質的に異なるものであり、食品原料を用いて、煮る・焼くという調理手法を用いて製造されるものであり、原料が、食品添加物でなければ、食品扱いが可能であり、従来の加工素材などのような、「加工」の文字を付記することは必要とされない。
本発明の抗酸化性澱粉素材は、特に、これまでにない新素材として位置づけられるものである。これに関連する素材としては、茶カテキン、アントシアンなどのポリフェノール類など、植物抽出液、エリソルビン酸、トコフェロール、ビタミンC(アスコルビン酸)、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)などの食品添加物、メラノイジンなどがあげられる。
本発明の方法で生成する成分は、糖質を、単独で又は2種以上組み合わせて混合し、焙焼することにより生成するものであり、その生成物は、着色の僅かなものでも、抗酸化能を示すことから、従来の糖質とアミノ酸から生成するメラノイジンとは、本質的に異なるものと推量される。
本発明では、糖質を焙焼してできた素材を、全体として、CARB糖、カルブ糖(又はカルボ糖)と呼称する。そして、例えば、糖質がフコースの場合は、フコースCARB糖(Carbohydrate baked with Sugar)の如く呼称する。
本発明者らは、先に、原料の粉末状の食品素材の特性を、人為的に変換させて、特定の機能性を付加した加工製品の粉末状の機能性食品素材を製造する方法(特許文献5)を開発した。この方法は、原料の粉末状の食品素材を、該粉末を構成する粒子の分離状態を保持しながら、大気中で加熱処理することにより、粉末状の難消化性、乳化性乃至抗酸化性を付加した機能性食品素材を製造する工程から構成されるものである。
それにより、上記原料の粉末状の食品素材が、小麦粉、米粉又は糖質素材粉末であることを特徴とする加工製品の粉末状の機能性食品素材の製造方法及びその製品として、糖質と糖質以外の食品成分を混合して、大気中で高温処理することで、当該機能性食品素材を製造し、その素材を提供するものである。
この方法の中で、水、有機酸又は油脂を混合して高温処理する、各種製品の製造方法が提案されているが、乳化性澱粉、溶解性澱粉、抗酸化性澱粉については、その製造条件では、有機酸を特定していないが、水、有機酸又は油脂を必要とし、更に、この方法では、例えば、乳化性澱粉を製造する場合、澱粉+有機酸+水に、更に、油脂を添加することを必須としている。また、該方法では、有機酸の種類を選択することにより、抗酸化性素材を製造できるという知見に基づいて、多機能食品素材、OAB糖を製造している。
これに対して、本発明は、上記方法を更に発展させて、有機酸ではなく、糖質自体、又はこれに異種の糖質を混合し、粉末状態又はガラス転移した状態を維持して焙焼することで、糖質系食品素材の機能性を改質する方法及びその改質糖質系食品素材を提供するものである上記方法とはその基本構成を異にするものである。
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)原料の糖質系食品素材を、単独で又は2種以上混合して焙焼することにより、溶解性及び/又は抗酸化性、香味質を付加した加工製品の改質糖質系食品素材を製造することができる。
(2)各種の糖質系食品素材から、例えば、抗酸化性を付加した改質糖質系食品素材を製造することが可能であり、また、その製造方法は、簡便で、低コストの工程から成る。
(3)本発明の改質糖質系食品素材は、例えば、溶解性と抗酸化性を兼ね備えた製品として、健康志向食品などの食品用新素材として好適に利用することが可能である。
(4)本発明の製品は、その抗酸化性を利用して、例えば、酸化防止、着色防止、食品の品質劣化防止、不快臭の低減などの食品の高付加価値化に好適に利用することが可能である。
(5)本発明の製品は、溶解性及び/又は抗酸化性の他に、香味質を付加して、例えば、液状食品、練り食品、パン類、めん類、菓子類などの食品素材として好適に利用することが可能である。
各糖質試料単独で焙焼した、焙焼後の試料の観察写真を示す。 図1の各試料の抗酸化能を、DPPH呈色尺法で測定した値を示す。 各種糖質とコーンスターチを混合して焙焼した、焙焼後の観察写真を示す。 図3の各試料の抗酸化能(DPPHで発色させた結果)を、ビタミンEの標準呈色液を加えて発色させた結果と比較して示す。
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
D−フコース粉末1gを、ビーカーに入れ、恒温乾燥機中で、170℃で、1時間静置し、焙焼処理した。D−フコース粉末は、融解し、ガラス転移した状態となったが、着色は、極僅か(薄黄色)で、溶解性に優れ、溶液の抗酸化能を測定・算定した結果、62.5μmole/gフコース粉末、であった。同条件で、ショ糖を処理した結果、フコースと同程度の着色度であるが、抗酸化能は、−であった。
実施例1と同様にして、アセチルグルコサミン、グルコサミン塩酸塩、フルクトース、L−ソルボースを処理して、抗酸化性が、各10、10、10、15μmole/g粉末、の値を得た。尚、グルコサミン塩酸塩の着色度は、本条件では、黒褐色であったが、処理条件を、150℃で、30分間の焙焼に弱めることにより、抗酸化能が、20μmole/g粉末、の値の粉末を得た。また、ガラクトサミンは、グルコサミン塩酸塩よりも着色しやすく、高い抗酸化能を示した。
アセチルグルコサミン粉末1gを、ビーカーに秤取り、水3mLで、溶解(均一に懸濁した)してから、コーンスターチ10gを加えて、よく撹拌、混合し、恒温乾燥機中で、170℃で、1時間静置し、焙焼処理した結果、薄褐色の粉末を得た。抗酸化能は、5μmole/g粉末、であった。同様にして、グルコサミン塩酸塩を焙焼し、褐色で、抗酸化能が37.5μmole/g粉末、の粉末を得た。
アセチルグルコサミン粉末10mgを、ビーカーに秤取り、水3mLで、溶解(均一に懸濁した)してから、コーンスターチ10gを加えて、よく撹拌、混合し、恒温乾燥機中で、180℃で、3時間静置し、焙焼処理した結果、薄褐色の粉末を得た。抗酸化能は、30μmole/g粉末、であった。処理時間1時間で、温度条件を変化させて、抗酸化能の値を追跡した結果、210℃で、最高値に達し、試料の色は、ほぼ黒色であり、これ以上の温度では、急激に抗酸化能は下落した。
グルクロン酸Na粉末1gを、ビーカーに秤取り、水3mLで、溶解してから、コーンスターチ10gを加えて、よく撹拌、混合し、恒温乾燥機中で、150℃で、30分間静置し、焙焼処理した結果、褐色の粉末を得た。抗酸化能は、12.5μmole/g粉末、であった。同様にして、グルクロン酸を加えて、焙焼し、薄褐色で、抗酸化能が、5μmole/g粉末、の粉末を得た。
D−フコース粉末1gを、ビーカーに秤取り、水3mLで溶解してから、フコイダン10gを加えて、よく撹拌、混合し(固い糊状)、恒温乾燥機中で、170℃で、1時間静置し、焙焼処理した結果、黒褐色の塊を得た。該塊の磨砕は、容易であり、その粉末の水への分散も、良好であった。抗酸化能は、30μmole/g粉末、であった。同様にして、フコイダンのみを焙焼し、褐色の粉末を得た。抗酸化能は、25μmole/g粉末、であり、単独で焙焼する方が、良好な製品となる可能性が高いと考えられた。
アセチルグルコサミン粉末1gを、ビーカーに秤取り、水3mLで溶解してから、ショ糖微粉末10gを加えて、よく撹拌、混合し、恒温乾燥機中で、170℃で、1時間静置し、焙焼処理した結果、褐色の粉末を得た。抗酸化能は、30μmole/g粉末、であった。同様にして、アセチルグルコサミンの代わりに、D−リボースを用いて、焙焼し、薄褐色の粉末を得た。抗酸化能は、25μmole/g粉末、であり、ほのかな香味を呈していた。
アセチルグルコサミン粉末1gを、ビーカーに秤取り、水3mLで溶解してから、マルトース粉末10gを加えて、よく撹拌、混合し、恒温乾燥機中で、170℃で、1時間静置し、焙焼処理した結果、薄褐色の粉末を得た。抗酸化能は、20μmole/g粉末、であった。同様にして、アセチルグルコサミンの代わりに、L−ソルボース又はD−フコースを用いて、焙焼し、各薄褐色の粉末を得た。各抗酸化能は、15、35μmole/g粉末、であり、ほのかな香味を呈していた。
グルコサミン塩酸塩粉末1gを、ビーカーに秤取り、水3mLで溶解してから、トレハロース微粉末10gを加えて、よく撹拌、混合し、恒温乾燥機中で、170℃で、1時間静置し、焙焼処理した結果、薄黄褐色の粉末を得た。抗酸化能は、15μmole/g粉末、であり、ほのかな香味を呈していた。また、溶解性は、元のトレハロースより優れており、1.5倍量を溶解することができた。
D−フコース粉末1gを、ビーカーに秤取り、水3mLで溶解してから、β−サイクロデキストリン微粉末10gを加えて、よく撹拌、混合し、恒温乾燥機中で、170℃で、1時間静置し、焙焼処理した結果、薄黄色の粉末を得た。抗酸化能は、40μmole/g粉末、と高く、ほのかな香味を呈していた。また、溶解性は、元のβ−サイクロデキストリンより優れ、2倍量を溶解することができた。β−サイクロデキストリン単独で、170℃、1時間焙焼した場合も、同様に、溶解性は高まり、2倍以上の量を溶解させることはできるが、1日、室温での放置で、結晶が現れた。
ソルビトール粉末1gを、ビーカーに秤取り、水3mLで溶解してから、β−サイクロデキストリン微粉末10gを加えて、よく撹拌、混合し、恒温乾燥機中で、180℃、1時間静置して焙焼処理した結果、白色の粉末を得た。抗酸化能は、−であるが、溶解性は、β−サイクロデキストリンの2倍以上に高まり、1日、室温で放置しても、結晶は析出しなかった。ソルビトールの代わりに、エリスリトールを用いても、同様の結果であった。
以上詳述したように、本発明は、糖質を用いた糖質系素材の改質方法及び改質糖質系食品素材に係るものであり、本発明により、原料の糖質系食品素材を粉末状態又はガラス転移した状態を維持して焙焼することにより、溶解性及び/又は抗酸化性、香味質を付加した加工製品を製造することができる。例えば、各種単糖、オリゴ糖、多糖類から、抗酸化性を付加した改質糖質系食品素材を製造することが可能であり、また、その製造方法は、極めて簡便で、低コストである。本発明の製品は、例えば、溶解性と抗酸化性、更には、香味質を兼ね備えた製品として、一般食品、健康志向食品などの食品素材として好適に利用可能である。本発明の製品は、その抗酸化性を利用して、酸化防止、着色防止、食品の品質劣化防止、不快臭の低減などの食品の高付加価値化に利用することができる。本発明の製品は、その溶解性、香味を利用して、液状食品、練り食品、パン類、めん類、菓子類などへ利用可能な、各種機能を付加した改質糖質系食品素材を提供するものとして有用である。

Claims (9)

  1. 原料の糖質系食品素材を、単独で又2種以上組み合わせて混合し、粉末状態又はガラス転移した状態を維持して焙焼することにより、溶解性及び/又は抗酸化性を付加して、その機能性を改質する工程からなり、上記原料の糖質系食品素材が、単糖、オリゴ糖、澱粉又は増粘多糖類であることを特徴とする糖質系食品素材の機能性の改質方法。
  2. 原料として糖質系食品素材を用い、焙焼し、その機能性を改質させて特定の機能性を付加した改質糖質系食品素材を製造する方法であって、原料の糖質系食品素材を、単独で又は2種以上組み合わせて混合し、粉末状態又はガラス転移した状態を維持して焙焼することにより、溶解性及び/又は抗酸化性を付加した改質糖質系食品素材を製造する工程からなり、上記原料の糖質系食品素材が、単糖、オリゴ糖、澱粉又は増粘多糖類であることを特徴とする改質糖質系食品素材の製造方法。
  3. 原料の糖質系食品素材が、アセチルグルコサミン、グルコサミン、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、アラビノース、D−リボース、L−ソルボース、L−ラムノース、D−フコース、グルクロン酸、マンヌロン酸、又はガラクツロン酸である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 原料の糖質系食品素材が、マルトース、スクロース、ラクトース、トレハロース、α−CD、β−CD、又はγ−CDである、請求項1又は2に記載の方法。
  5. 糖質系食品素材の2種以上の組み合わせが、アセチルグルコサミンと、ショ糖、マルトース、乳糖、澱粉及び/又は増粘多糖類との組み合わせ、あるいはフコースと、ショ糖、マルトース、乳糖、澱粉及び/又は増粘多糖類との組み合わせである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
  6. 糖質系食品素材の混合の割合が、糖質系食品素材の主材に対して、他の糖質系食品素材が0.1〜50重量%である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
  7. 糖質系食品素材を、単独で又は2種以上組み合わせて混合し、焙焼する、あるいは混合しながら平板又は回転式で焙焼する、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
  8. 焙焼の温度が、120〜300℃である、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の方法により、原料の糖質系食品素材を、単独で又は2種以上組み合わせた混合物を、粉末状態又はガラス転移した状態を維持してでの焙焼で、その特性が改質された改質糖質系食品素材であって、上記焙焼により、溶解性及び/又は抗酸化性・香味質が、人為的に付加されて溶解性及び/又は抗酸化性が改質された糖質系食品素材であることを特徴とする改質糖質系食品素材。
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