JP2010206046A - 磁石成形体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電気抵抗及び磁気特性の双方に優れた磁石成形体を提供する。
【解決手段】磁石粉末と、前記磁石粉末を覆う絶縁皮膜とを含む磁石成形体であって、前記絶縁皮膜で被覆された前記磁石粉末の粒径が150μm超の粒子を断面面積率として50%以上有する磁石成形体である。
【選択図】図1

Description

本発明は、磁石成形体及びその製造方法に関する。より詳細にいえば、特に高い電気抵抗を有し、モータ等に組み込んだ場合の渦電流損失を低減してモータ効率を向上可能とする磁石成形体、及びその製造方法に関する。
従来より、モータ等に搭載される永久磁石としては、安価なフェライト磁石が多用されているが、近年では、モータの小型化や高性能化に伴い、より高性能な希土類磁石の使用量が年々増加する傾向にある。
しかし、希土類磁石は金属磁石であるため電気抵抗が低く、モータに組みこんだ場合に、渦電流損失が増大し、モータの効率を低下させるという問題がある。
そこで、希土類磁石自体の電気抵抗を高めて、このような問題を解決しようとする各種の提案がなされている。
例えば、SiO及び/またはAlからなる粒子状酸化物を磁石粉末に結着した構造を有する希土類磁石が開示されている(特許文献1)。
特開平10−321427号公報
しかしながら、これらの酸化物は、磁石特性を損なうことから、モータの出力が高い場合には適用が困難となるという問題がある。
そこで本発明は、電気抵抗及び磁気特性の双方に優れた磁石成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る磁石成形体及びその製造方法は、絶縁皮膜で被覆された磁石粉末の粒径が150μm超の粒子を断面の面積率として50%以上含有する点に特徴を有する。
本発明によれば、磁石粉末の粒径を制御することにより、電気抵抗及び磁気特性の双方に優れた磁石成形体を得ることが可能となる。
本発明の第1実施形態における磁石成形前駆体の構成を模式的に示す断面図である。 酸化ジスプロシウム(Dy)からなる絶縁皮膜で被覆した希土類磁石粉末を熱間成形により圧密化してなる磁石成型体の保磁力と、希土類磁石粉末の粒径との関係を示すグラフである。 150μm超の粒径の磁石粉末と75μm以下の粒径の磁石粉末とを混合した場合の、細粒粒子の断面面積率による保磁力の変化を示したグラフである。 点算法による粗大粒及び細粒の(断面)面積率の算出方法を示す図である。 本発明の磁石成形体が適用された集中巻の表面磁石型モータの1/4断面図である。 実施例1で得られた被覆処理後の原料磁石粉末のSEM写真である。 実施例1で得られた被覆処理前の原料磁石粉末のSEM写真である。 図6Bの断面のSEM写真である。 同じく、図6Bの別の断面のSEM写真である。 表1における結果をプロットしたグラフである。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。ここで、本明細書における「%」は、特記しない限り、「質量%」を意味するものとする。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る磁石成形体は、磁石粉末と、前記磁石粉末を覆う絶縁皮膜とを含む磁石成形体であって、前記絶縁皮膜で被覆された前記磁石粉末の粒径が150μm超の粒子を断面の面積率として50%以上有する。
本明細書において、まず、「磁石粉末」とは、不定形の単磁区粒子(ドメイン)の集合体であって一般に入手可能な磁石粒子の粉末を意味する。次に、「磁石成形前駆体」とは、磁石粉末に皮膜を施した構造体を意味する。次に、「磁石成形体」とは、磁石成形前駆体を加熱加圧成形(焼結を含む)して得られた、本実施形態に係る目的物を意味する。
上述のように、電気抵抗及び磁気特性の双方に優れた、出力の高いモータ等にも好適に使用可能な磁石が強く求められている。しかしながら、従来技術はいずれもかかる要求を到底満足するものではない。
例えば、磁石特性を損なうことのない絶縁材料として、希土類主体の酸化物が見出され、磁石特性の低下を最小限に抑制しつつ、高い電気抵抗を有する希土類磁石が開示されている(特開2004−319955号公報)。かような高い電気抵抗を有する磁石の製造に際して、原料となる希土類磁石の粉末を圧密化することになる。具体的には、圧密時に単純に絶縁物を混合する手法や、磁石粉末に絶縁材を被覆した原料粉末(磁石成形前駆体)を圧密化する手法が用いられる。しかし、上記の手法では、磁石粉末間に分散する酸化物の分布状況にばらつきが生じ、高い電気抵抗を安定して実現させることは非常に困難である。また、高い電気抵抗を安定して実現でき渦電流損失を低減することが可能な希土類磁石や、絶縁物質として希土類酸化物を用いることを特徴とする希土類磁石の製造方法が開示されている(特開2004−31781号公報、特開2007−88108号公報)。
上記の磁石は、磁石粉末を希土類酸化物で被覆したものであるため、電気抵抗を向上させる点では、一見すると比較的有益なものと考えられる。しかし、本発明者らが検討したところ、加熱成形工程で絶縁皮膜と磁石粉末との間で化学反応が積極的に進行してしまい、得られる磁石成型体の磁気特性を低減させたり、必ずしも電気抵抗を十分に発現できない問題が生じる場合があった。一方、化学反応を抑制するような製造条件は非常に限定されたものであるため、従来技術ではかかる条件から容易に外れやすく、磁気特性の劣化を非常に引き起こしやすいという問題があった。
本発明者らは、以上の課題を解決すべく、不可避的に起こる上記の化学反応に起因した磁気特性の劣化を最小限に抑えるため、鋭意研究を重ねた。その結果、原料である磁石粉末の粒径という条件に着目することによって、上記の課題を解決しうることを見出した。さらに詳細な検討を重ねたところ、所定の粒径以上の磁石粉末を所定以上の断面面積率で含有させてなる磁石粉末という構成に辿り着いたのである。換言すれば、磁石粉末の粒径に着目することなく製造した磁石成形体の場合、粒度分布が広範な範囲に亘る磁石粉末から構成されるため、上記の課題を解決することはできないことを見出したのである。なお、前記「粒度分布が広範な範囲に亘る磁石粉末」とは、様々な粒径(例えば1〜500μm程度)の磁石粒子を全体に亘って有意な断面面積率で有する磁石粉末と言い換えることもできる。
そして、上記の構成により、磁気特性の劣化する磁石粉末が大幅に低減され、磁気特性を維持した電気抵抗の高い希土類磁石が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。以下、本発明の技術的な原理について詳細に説明する。
絶縁物質と接する磁石粉末の表面では、不可避的に化学反応が起こり、磁気特性の劣化が生じうる。ここで、原料である磁石粉末の粒度を小さくすると、表面積が増加すると同時に、磁石粉末内部において上記の化学反応の起こっていない領域(以下、「健全領域」ともいう)が相対的に減少することになる。磁石粉末内部のかかる健全領域が一定の割合を下回ると、磁石としての磁気特性が全体的に大幅に低減してしまう。そのため、バルク磁石全体としても、急激に磁気特性の劣化が生じうる。
一方、所定の粒径以上の磁石粉末を所定以上の断面面積率で含有する磁石粉末という構成の場合、バルク磁石内部の磁石粉末の表面積を低減することができる。そのため、化学反応によって磁気特性の劣化する領域が低減することに加えて、バルク磁石を構成する個々の磁石粉末においても、磁石粉末内部の健全領域が増加する。そのため、たとえ磁石粉末の表面の一部が磁気特性を消失しても、磁石粉末自体としては、磁気特性を維持することができると共に、磁石粉末の集合体であるバルク磁石も特段の磁気特性の劣化を生じずに目的物(製品)を得ることができる。
本発明に係る磁石成形体は、以上の技術的な原理に基づくものであって、磁石粉末の50%以上(断面の面積率)が粒径150μm超の粒子で構成され、それらの個々の磁石粉末が希土類酸化物で被覆されたことを特徴とする。
図1は、本実施形態における磁石成形前駆体1の構成を模式的に示す断面図である。図1を見ると、磁石粉末2(このうち、断面の面積率50%以上が粒径150μm超である)を絶縁皮膜3が被覆している。換言すれば、磁石粉末2全体で、断面面積率50%以上が150μm超である。以下、本実施形態の各構成要素について詳細に説明する。
<磁石粉末>
磁石粉末2は、永久磁石であって固体磁石である限り、特に制限されることはない。磁石粉末2の素材としては、例えば、磁鉄鉱(マグネタイト)、クロム鋼、高コバルト鋼、アルニコ、フェライト、希土類または希土類鉄などが挙げられる。このうち、強力な磁気特性が得られ、高性能の磁石が得られる観点からいえば、磁石粉末2は希土類磁石からなることが好ましい。なお、本明細書において、「希土類磁石からなる」とは、正確には「実質的に希土類磁石からなる」ことを意味する。換言すれば、本実施形態による磁石成形体の性能が有意に損なわれない範囲であれば、磁石粉末は希土類磁石以外の成分を含有してもよい。
希土類は、磁鉄鉱(マグネタイト)、クロム鋼や高コバルト鋼などと比較して、モータ用磁石として使用する際の磁気特性が強い。また、希土類は、アルニコ磁石などと比較すると、磁気特性が同等に優れている。さらに、フェライトなどの酸化物磁石は、酸化物であることに起因して、高抵抗化手法を用いることなく十分な電気抵抗を有することから、本発明による高抵抗化手法は、必ずしも必要でない場合が多い。そのため、本発明による高抵抗化手法は、希土類磁石を用いることにより、最も高性能の磁石を得ることが可能となる。
上記の希土類磁石からなる磁石粉末(以下、「希土類磁石粉末」ともいう)としては、以下に制限されることはないが、Nd−Fe−B(ネオジム−鉄−ホウ素)系磁石、Sm−Co(サマリウム−コバルト)系磁石などが挙げられる。希土類磁石は、これらNd−Fe−B系磁石などの構成要素が1種単独からなっても、2種以上からなってもよい。また、各構成要素における組成比、例えばNd−Fe−B系磁石におけるNd、Fe及びBの組成比については、特に制限されることはない。数例を挙げると、本実施形態による希土類磁石は、単一の組成比を有するNd−Fe−B系磁石からなってもよく、2種以上の異なる組成比を有するNd−Fe−B系磁石からなってもよい。あるいは、単一のまたは2種以上の異なる組成比を有するNd−Fe−B系磁石に加えて、Sm−Co系磁石からなってもよい。したがって、上記の「2種以上」の構成要素とは、先に例示した、「2種以上の異なる組成比を有するNd−Fe−B系磁石」、及び「単一のまたは2種以上の異なる組成比を有するNd−Fe−B系磁石に加えて、Sm−Co系磁石」の双方の意味を含む。
希土類磁石粉末として、好ましくは、永久磁石の中でも高い磁気特性を有するという観点より、Nd−Fe−B系磁石を主成分とする。より好ましくは、HDDR法によって製造されたNd−Fe−B系磁石や、熱間アップセット(熱間後方押出し加工)処理によって配向処理したNd−Fe−B系磁石から作製した粉末を主成分とする。かかる場合、従来の(焼結用)磁石粉末とは異なり、絶縁皮膜の被覆処理を施しても、磁気特性が損なわれることが殆どないため有利である。なお、前記HDDR法とは、Hydrogenation Decomposition Desorption Recombination法を指す。
上記のなかでも、経済的に優れ、熱間加工によるバルク化にも耐えうる磁石であるという理由から、HDDR処理を施したNd−Fe−B系磁石を主成分とすることが特に好ましい。そして、HDDR処理によって作製されたNd−Fe−B系磁石粉末を用いた場合、一層高い磁気特性が得られうる。HDDR処理によって作製された磁石粉末は、バルク化時に加圧することにより、通常の焼結磁石より低温での成形が可能なため、過剰な液相が発現しない低温で高密度な成形体を得ることができるため、優れた磁気特性が得られうる。
また、磁石粉末2が希土類磁石からなる場合に、アップセット処理によって製造されたMQパウダー(ネオジウム系磁性粉末)や、ボンド磁石用に用いられるナノコンポジット磁石粉末を使用してもよい。かかる場合も、通常の焼結磁石用の磁石粉末とは異なり、絶縁皮膜の被覆処理を施しても、磁気特性を発現できるため、有利である。
以下、希土類磁石粉末についてさらに詳細に説明する。
希土類磁石粉末は、強磁性の主相及び他の成分からなる。例えば、希土類磁石がNd−Fe−B系磁石である場合には、主相はNdFe14B相である。したがって、磁石粉末2がNdFe14Bを主成分とすることは経済面及び磁気特性の面から特に好適である。前記希土類磁石粉末として、磁場配向処理をしない等方性希土類磁石を製造するためのものと、磁場配向処理をする異方性希土類磁石を製造するためのものとが挙げられる。しかし、異方性磁石の方が強磁力性など磁石特性に優れている点より、前記希土類磁石粉末は、異方性希土類磁石を製造可能な磁石粉末であることが好ましい。
ここで、磁石粉末1の粒径の範囲は、磁石粉末2がNd−Fe−B系のHDDR磁石粉末である場合に磁気特性の低下を効果的に抑制できる観点より、50μmを超えて500μm以下が好ましい。より好ましくは100μmを超えて500μm以下であり、さらに好ましくは150μmを超えて500μm以下である。なお、本明細書において、「磁石粉末1の粒径」は、篩いで分けたものである。そして、本明細書で用いる篩いは、東京スクリーン社のステンレス製試験用ふるい(JIS Z 8801)である。
ここで、本明細書における「主成分」とは、含量として最も多い成分を必ずしも意味するものではなく、本願所望の効果を得る上で主要かつ不可欠な成分を意味する。上記主成分を具体的な数値で表すと、希土類磁石粉末100体積%に対して、Nd−Fe−B系の合金相の濃度は、75体積%以上であることが好ましく、85〜100体積%であることがより好ましい。75体積%以上の場合、得られる希土類磁石の磁石特性の向上や、製造コストの低減などが達成できる。なお、Nd−Fe−B系の合金相以外の成分として、配向性や保磁力向上のため、Co、Tb、Dy、Zn、Al、Cu、Zrなどを含有してもよい。
本明細書における「Nd−Fe−B系磁石」とは、Nd及び/またはFeの一部が他の元素で置換されている形態をも包含する概念である。Ndは、その一部または全体がプラセオジム(Pr)に置換されていてもよく、また、Ndの一部がテルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)等の他の希土類元素で置換されていてもよい。置換にはこれらの一方のみを用いてもよく、双方を用いてもよい。置換は、元素合金の配合量を調整することによって行うことができる。かような置換によって、Nd−Fe−B系磁石の保磁力向上を図ることができる。置換されるNdの量は、Ndに対して、0.01〜20atom%であることが好ましい。かような範囲でNdが置換されると、置換による効果を十分に確保しつつ、残留磁束密度を高レベルで維持することが可能である。
一方、Feは、Co等の他の遷移金属で置換されていてもよい。かような置換によって、Nd−Fe−B系磁石のキュリー温度(Tc)を上昇させ、磁石の耐熱性を向上させることができる。置換されるFeの量は、Fe 100atom%に対して、0.01〜30atom%であることが好ましく、0.1〜5atom%であることがより好ましい。かような範囲でFeが置換されると、置換による効果を十分に確保しつつ、保磁力の低下が抑制されうる。
上記に加えて、例えば、HDDR処理により作製された、前記「異方性希土類磁石を製造可能な希土類磁石粉末」を原料として異方性磁石を製造する場合には、希土類磁石粉末における主相の配向を揃えることが容易となる。なお、前記主相は、Nd−Fe−B系磁石においてはNdFe14B相を指す。
磁石粉末2の含有量は、100質量%の磁石成形前駆体1に対して、80〜98質量%であることが好ましく、85〜98質量%であることがより好ましく、90〜98質量%であることがさらに好ましい。かかる範囲内の場合、磁石成分の正味の密度を高くすることができ、磁束密度及び最大エネルギー積に優れた磁石を得ることができる。
図2は、酸化ジスプロシウム(Dy)からなる絶縁皮膜で被覆した希土類磁石粉末を熱間成形により圧密化してなる磁石成型体の保磁力と、希土類磁石粉末の粒径との関係を示すグラフである。ここで、前記粒径は、原料である希土類磁石粉末(原料磁粉)を75μm、150μm、250μmの各メッシュを有する篩いを用いて分級したものである。
また、図3は、150μm超の粒径の磁石粉末と75μm以下の粒径の磁石粉末とを混合した場合の、細粒粒子の断面面積率による保磁力の変化を示したグラフである。図3を見れば、当該断面面積率が0.45未満程度で特性(保磁力)が急落し、当該断面面積率が0.5程度に変曲点の存することが分かる。ここで、図中の横軸(細粒粒子の断面面積率)について説明する。絶縁物質(絶縁皮膜形成用)による被覆処理を行わない磁石粉末(被覆処理無)については、光学顕微鏡観察による断面観察からは粒径が不明瞭であるため、代わりに、混合した磁石粉末の割合を示している。他方、絶縁被覆処理を行った磁石粉末(被覆処理有)については、光学顕微鏡観察による断面観察を行い、50倍の視野を5箇所以上測定し、細粒粒子の断面面積率を測定した。粒径は、長径と短径の平均値から算出し、150μm超のものを粗大粒、150μm以下のものを細粒とし、分解能の制約で粒径が測定困難なものは対象外とした。図4は、点算法による粗大粒及び細粒の(断面)面積率の算出方法を示す図である。図4に示すように、粒径の計測は光学顕微鏡を用いた断面観察により行い、50倍の組織写真を撮影し、画像解析処理装置で約40倍に拡大し、0.5mmのメッシュ間隔による点算法により算出した。
ここで、本願における「点算法」は、JIS G0555として鋼中の介在物の面積率を計測する手法として定められているものを採用する。本手法は、金属組織観察による相比の計測手法としても代表的な計測方法のひとつとして用いられており、オーステナイトステンレス鋼中のフェライト量の定量化や分散強化型合金の分散相の定量化に使用されている。JIS G 0555による方法では、顕微鏡の接眼鏡に縦横それぞれ20本の格子をもつガラス板を挿入して、介在物によって占められた格子点の中心を数えるもので、被検面を無作為に移動し、その度ごとに同じ手順を繰り返すものである。一般に、この移動する回数(視野数)を60(最小でも30以上)とするように定められ、介在物の占める面積百分率dは次式により判定される。
ただし、n:介在物によって占められた総格子点中心数、p:ガラス盤の格子点数、f:視野数である。
なお、ここでいう格子点中心とは各格子線の交点の中心で数学的な点を意味するものである。また、一般的に、この際の誤差範囲は視野数を大にすれば小さくなることが知られている。
本実施形態では、上記手法に鑑みて、光学顕微鏡で断面を観察し、粗大粒子(粗大粒)と細粒粒子(細粒)との断面面積率を点算法から測定し、細粒の断面面積率を求めた。即ち、50倍の視野で観察した観察像に縦横500μm間隔に相当する格子線を設け、格子点の中心に該当する粒子が粗大粒と細粒のどちらに該当するかを判別する手法で計測した。視野の数は、観察する試料の形状によって異なるが、各試料とも合計の格子点が12000点以上になる様に視野数を決定した。これは、20×20の格子点で30視野以上に相当する。なお、粒径は、図4に示すように、まず、光学顕微鏡による断面観察から50倍の組織写真を撮影した。続いて、画像解析処理装置で約40倍に拡大して計測し、長径と短径の平均値から算出し、150μm超のものを粗大粒、150μm以下のものを細粒とし、分解能の制約で粒径が測定困難なものは細粒に含めた。図4には、例として150μm超の粗大粒に相当すると判断した格子点に「●」印を示した。
なお、図2及び図3において、保磁力は、250μm超の粒子のみを用いた場合の値を「100%」とする相対値で表している。即ち、図2及び図3中の縦軸(保磁力相対値)は、250μm超の粒径からなる原料磁粉の保磁力を「100%」としたときの、粒径の各範囲における相対値を示す。
図2及び図3には、高抵抗化のための絶縁被覆処理を行わない磁石粉末をバルク化した場合についても併せて示している。この場合、絶縁物質と磁石粉末との化学反応は起こらないため、不可避的に発生する表面酸化の程度でしか保磁力が低下しない。そのため、保磁力の劣化は観察されない。また、通常、HDDR処理した磁石粉末においては、粒径が過度に大きいと、内部の集合組織の配向度が低下するため、100〜150μm程度の粒子を用いることが好適であると考えられる。しかし、本実施形態のように粒径の大きいものは、絶縁物質(絶縁皮膜形成用)で被覆せずに使用する場合、配向度に劣る結果として最大エネルギー積が低くなる等、却って磁気特性が低下し得る。そのため、従来、このような、比較的大きな粒径の割合が高い磁石粉末は、使用が避けられてきた。
しかし、これらの図から明らかなように、バルク磁石の保磁力は用いる磁石粉末の粒径によって異なる。150μm以下の粒子を用いると劣化が著しく、また保磁力が良好な粗い粒子を用いた場合でも、磁気特性が劣化する150μm以下の粒子を50%以上(断面の面積率)含有すると、バルク磁石全体の磁気特性が損なわれることを見出した。
本実施形態において、150μm超の粒径を有する磁石粉末が断面の面積率として50%以上あれば、保磁力を85%以上に保持できる。好ましくは60%以上の断面面積率を有するものであれば、保磁力を90%以上に保持することができる。
<絶縁皮膜>
磁石粉末2は、実質上完全に絶縁皮膜3によって被覆されていることが好ましい。なぜなら、磁石粉末2同士の間に絶縁皮膜3が実質上、常に存在するような状態の下では、磁石成形体の電気抵抗が有意に高まるからである。
絶縁皮膜3は、絶縁性材料から構成される。絶縁皮膜3は、特に制限されることはないが、希土類酸化物を含むことが好ましく、希土類酸化物からなることがより好ましい。前記希土類酸化物として、好ましくは下記式(I):
で表される組成を有する希土類酸化物が挙げられる。希土類酸化物は、非晶質であってもよいし、結晶質であってもよい。式(I)において、Rはイットリウム(Y)を含んでもよい希土類元素を表す。Rの具体例としては、上記イットリウム(Y)の他、ジスプロシウム(Dy)、スカンジウム(Sc)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)が挙げられる。希土類酸化物を構成する希土類元素は、1種単独の元素からなってもよく、2種以上の元素からなってもよい。なかでも、絶縁皮膜3はジスプロシウム(Dy)及び/またはテルビウム(Tb)の酸化物を含むことが好ましい。なぜなら、希土類磁石粉末との反応を抑制できるため、優れた磁気特性(保磁力)と高い電気抵抗性とを共に得ることができるためである。経済性(コスト面)で見れば、Dyの酸化物を必須に含むことがより好ましい。
このように、希土類酸化物は、希土類元素の酸化物でさえあれば、混合物であっても複合酸化物であっても特に限定されない。ここで、磁気特性の低下を一層抑制する観点からは、下記式(II):
で表される組成を有する希土類酸化物を含むことがさらに好ましい。なお、上記式(II)中、R’及びR”は、それぞれテルビウム(Tb)及びジスプロシウム(Dy)を示し、Xは0を超えて1以下の値を意味する。
絶縁皮膜3が希土類酸化物を十分量含有すると、希土類磁石における絶縁性が十分に確保され、高抵抗の希土類磁石が得られる。さらに、磁石粉末2との反応性が低く、且つ磁気特性に優れた磁石成形体を得ることができる。希土類酸化物の具体的な構成元素や組成については上述した通りである。なお、絶縁皮膜3の構成成分としては、絶縁性物質であれば特に制限されることはなく、希土類酸化物以外にも、例えば、金属酸化物、フッ化物またはガラスなどがありうる。
なお、絶縁皮膜3が希土類酸化物からなる場合であっても、これ以外の不純物や製造工程に起因する反応生成物、未反応残存物、微小な空孔等の存在が生じうることは不可避的にありうる。これらの不純物の混入量は、導電性や磁気特性の観点からは少ないほど好ましい。ただし、絶縁皮膜3における希土類酸化物の含有量が上記した範囲内であれば、製品としての磁石の磁気特性にとって実質的に問題ない。
絶縁皮膜3の含有量については特に制限はないが、磁石成形体100質量%に対して、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは3〜10質量%である。特に、絶縁皮膜3の含有量が1質量%以上であれば、磁石における高い絶縁性が確保され、一層高抵抗の磁石成形体が提供される。また、絶縁皮膜3の含有量が20質量%以下であれば、磁石粉末2の含有量が相対的に減少することに伴う磁気特性の低下を効果的に防止できる。
一方、絶縁皮膜3は、希土類元素の有機錯体を熱分解して得られた酸化物を含むことも好ましい。希土類元素の有機錯体を原料として熱分解により得られる絶縁皮膜は、XPS(光電子分光法)等を用いて希土類元素の結合形態を解析すると、酸素との結合(酸化物)に混じって炭素や炭化水素との結合が確認できる。酸化物以外の上記の結合は、少なければ少ないほど好ましいものと言える。しかし、磁石粉末1の磁気特性を維持する観点からいえば、相変態を防止し粒成長を抑制するために、通常、熱分解温度を完全な酸化物の形成に必要な温度にまで高めることは困難である。したがって、不可避的に残留する不純物や残留物が、絶縁皮膜3中に存在してしまう。
このため、完全な酸化物からなる絶縁皮膜と比較した場合、現実の絶縁皮膜は少なからず電気抵抗が劣化していることが考えられる。しかし、絶縁皮膜は、モータ内の電磁誘導により発生する起電力に起因した、磁石粉末1内の誘導電流が、その内部で還流するように、粒子間での経路を阻害すればよい。したがって、本実施形態における絶縁皮膜3は、完全な酸化物からなる絶縁皮膜が有すると考えられる値ほど高い絶縁性を必要とせず、2〜10桁程度低くなった値でも十分に本願所望の目的を果たし、効果を発揮することができる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態は、上記第1実施形態の磁石成形体の製造方法に係る。以下、本実施形態を詳細に説明するが、上記第1実施形態で説明した事項と重複するものについては、既に説明した事項がそのまま本実施形態に引用されるため、ここでは説明を省略する。
本実施形態に係る希土類磁石の製造方法は、絶縁皮膜で被覆された磁石粉末(磁石成形前駆体)を高温下で加熱加圧成形することを特徴とする。
本実施形態における希土類磁石は、上記したように、希土類酸化物で被覆された希土類磁石粉末を、さらに結着用の希土類酸化物(上記希土類酸化物と同一物質であっても異なる物質であってもよい)と共に混合することにより混合体としてもよい。そして、これを高温加圧成形することによって製造することができる。ここで、磁石粉末(希土類磁石粉末など)に絶縁性材料(希土類酸化物など)を被覆させる際、物理気相蒸着(PVD)法及び化学気相蒸着(CVD)法などによる蒸着法、並びに磁石粉末に塗布した希土類錯体を酸化させる方法などを用いることができる。
上記の蒸着法によれば、高純度の希土類酸化物からなる理想的な絶縁皮膜を形成できる反面、コストが高くなる虞がある。絶縁皮膜で被覆する工程は、希土類錯体を含む溶液を磁石粉末に塗布する段階と、前記希土類錯体を酸化させて希土類酸化物とする段階とからなる方法を採用することが好ましい。即ち、上記の2段階からなる方法を用いることにより、溶液を用いることによって均一な膜厚の塗布被膜(絶縁皮膜)が得られる。加えて、磁石粉末に対する密着性及び酸化物に対する濡れ性に優れた絶縁皮膜が得られる。
上記の希土類錯体としては、希土類元素を含有し、軟磁性合金粉末に被膜を形成することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、Rで表される希土類錯体を用いることができる。ここで、Rはイットリウム(Y)を含んでもよい希土類元素を表す。Rの具体例としては、上記イットリウム(Y)の他、ジスプロシウム(Dy)、スカンジウム(Sc)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)が挙げられる。なかでも好ましくはDy及び/またはTbである。
一方、Lは有機物の配位子であって、(CO(CO)CHCO(CH))−、(CO(C(CH)CHCO(CCH))−、(CO(C(CH)CHCO(C))−、及び(CO(CF)CHCO(CF))−、並びにβ−ジケトナトイオン等の陰イオンの有機基を表す。なお、例えば、(CO(CO)CHCO(CH))−における「−」は結合手を表し、ここで列挙した他の化合物についても同様である。
また、絶縁皮膜の形成の際には、メタノール、エタノール、n−プロパノールや2−プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンやジエチルケトン等のケトン類、またはヘキサン等を用いてもよい。Rを溶解させ得るこれらの低沸点溶媒に溶解させて塗布することができる。
本実施形態により得られる磁石成形体は、上記のように、磁石粉末2に絶縁皮膜3を被覆して得られる磁石成形前駆体1を、加熱加圧成形(燒結を含む)して得られる磁石成形体である。そして、絶縁皮膜(絶縁酸化物)で被覆された磁石粉末の粒径として、150μm超の粒子を断面の面積率として50%以上有する磁石成形体である点を特徴とする。絶縁酸化物により被覆された磁石粉末の粒子間に絶縁酸化物(絶縁皮膜形成用及び/または結着用)が介在することによって、磁石粉末同士が結着した構造を採る。上記の磁石成形体が希土類磁石である場合を例に説明すると、前記希土類磁石は、希土類酸化物からなる絶縁皮膜で被覆された希土類磁石粉末を結着用の希土類酸化物と共に高温で加圧成形することによって得られるものである。上記の磁石粉末の被覆層または被覆された磁石粉末間に介在する結着部を形成する希土類酸化物については、1種単独であってもよいし、2種以上の混合物または複合酸化物であってもよい。
本実施形態により得られる磁石成形体は、従来の焼結磁石とは異なり、圧密体を得るために加圧下で加熱処理(加熱加圧処理)することを特徴とする。加圧と加熱は同時に行っても別工程で行ってもよいが、加圧時の温度は通常、500〜800℃となるように調節する。従来の焼結磁石の場合には、磁気特性を得るために1000℃以上での加熱による液相焼結が不可避である。これに対し、本実施形態は、磁石粉末の表面に絶縁皮膜を形成するための絶縁物質を塗布することを特徴の1つとするため、従来の焼結磁石のような液相焼結による磁気特性は比較的発現しにくい。そのため、既に磁気特性を備えた磁石粉末を用いることが好ましい。そのような磁石粉末の加熱温度は500〜800℃とすることが好ましい。800℃以下で加熱すると、粒成長などのミクロレベルでの組織変化の発生を効果的に抑制でき、磁気特性の劣化を防止しうる。一方、500℃以上で加熱すれば、粒子の変形が十分となって、密度の大きな成形体が得られうる。より好ましくは600〜750℃であり、さらに好ましくは620〜720℃である。なお、加圧をせずに緻密化する場合、加熱温度が500〜800℃では低すぎ、1000℃以上での加熱が必要となりうる。そのため、加圧成形を施すことによって圧密化を促進することが好ましい。なお、加圧する際の圧力としては、緻密化を促進するという観点より、好ましくは200〜600MPaであり、より好ましくは300〜500MPaである。
得られた成形体は、歪み取りを目的として、500〜800℃の範囲で、再度加熱することにより、安定した磁気特性を得ることができる。
以上のように、本実施形態は、絶縁皮膜形成用の絶縁物質(希土類酸化物など)により被覆された磁石粉末を、結着用の絶縁物質(希土類酸化物など)と共に高温で加熱加圧成形(焼結を含む)する。そして、成形された磁石においては、個々の磁石粉末が絶縁皮膜によって効果的に絶縁されると共に、絶縁された磁石粉末の粒子間に絶縁物質(絶縁皮膜形成用及び/または結着用)が介在することによって磁石粉末同士が結着した構造をとる。そのため、従来、絶縁材の混合や被覆のみでは避けることのできなかった磁石粉末間の絶縁不良部を、本実施形態によれば大幅に低減することができる。これにより、成形後の本実施形態に係る磁石成型体の電気抵抗が増し、かような永久磁石を搭載したモータの渦電流損失を減らすことにより、モータ効率の向上が可能になるという優れた効果がもたらされる。
さらに、例えば加熱温度が高くなる等の理由から製造条件が所望の範囲から外れると、絶縁被覆材の残留物に起因して不可避的に起こる、絶縁物質(希土類酸化物)と磁石粉末(希土類磁石粉末)との化学反応により、磁気特性が顕著に低下しうる。これに対し、本実施形態では、磁気特性の劣化が、バルク磁石を構成する磁石粉末の表面に限定され、個々の磁石粉末内部の磁気特性は維持される。したがって、厳しい条件下での高温加圧成形を経た後でも、高密度で、且つ良好な電気抵抗性や磁気特性を有するバルク磁石が得られる。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係るモータは、上記第1実施形態の磁石成形体及び上記第2実施形態の製造方法により得られる磁石成形体を用いてなる。参考までに図5に、本発明の磁石成形体が適用された集中巻の表面磁石型モータの1/4断面図を示す。図中、21はu相巻線、22はu相巻線、23はv相巻線、24はv相巻線、25はw相巻線、26はw相巻線、27はアルミケース、28はステータ、29は磁石、30はロータ鉄、31は軸である。上記第1及び第2の実施形態による磁石成形体は、高い電気抵抗を有し、その上、保磁力などの磁石特性にも優れる。このため、上記第1及び第2の実施形態の磁石成形体を用いて製造されたモータを利用すれば、モータの連続出力を高めることが容易に可能であり、特に大出力のモータとして好適といえる。また、本実施形態の磁石成形体を用いたモータは、保磁力などの磁石特性が優れるために、製品の小型軽量化が図れる。
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態に係る電動駆動車両は、上記第3実施形態のモータを搭載してなる。上記第3実施形態の、磁石成形体を用いたモータは、例えば、自動車用部品に適用した場合には、車体の軽量化に伴う燃費の向上が可能である。さらに、特に電気自動車やハイブリッド電気自動車の駆動用モータとしても有効である。これまではスペースの確保が困難であった場所にも駆動用モータを搭載することが可能となり、電気自動車やハイブリッド電気自動車の汎用化に大きな役割を果たすと考えられる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、以下の実施例によって本発明の技術的範囲は何ら限定されるものではない。
[実施例1]
希土類磁石として、HDDR法を用いて調製したNd−Fe−B系異方性磁石粉末を用いた。具体的な調製の手順は以下の通りである。
まず、「Nd:12.6%、Co:17.4%、B:6.5%、Ga:0.3%、Al:0.5%、Zr:0.1%、Fe:残部」の成分組成を有する鋳塊を準備し、この鋳塊を1120℃に20時間保持して均質化した。さらに、均質化した鋳塊を水素雰囲気中で室温から500℃まで昇温させて保持し、さらに850℃まで昇温させて保持した。
引き続いて850℃の真空中に保持した後、冷却して微細な強磁性相の再結晶組織を有する合金を得た。この合金をジョークラッシャー及びブラウンミルを用いて、Ar雰囲気中で粉体化し、粒径(平均値)が200μmの希土類磁石粉末とした。さらに、篩いにて分級して目的の範囲の粒径を有する磁石粉末を得た。
磁石粉末は、250μm超の粉末と、150μm超250μm以下の粉末と、75μm超150μm以下の粉末と、75μm以下の粉末とに分級した。その後、150μm超250μm以下の粉末8gと75μm以下の粉末2gとを混合して、よく攪拌して被覆処理用の原料磁石粉末として用いた。
上記で得られた被覆処理後の磁石粉末のSEM写真を図6Aに示す。図6Bは、被覆処理前の磁石粉末のSEM写真(倍率は図6Aと同じ)である。図6C、図6Dは図6Bの断面のSEM写真である。
希土類磁石粉末の表面への絶縁皮膜の形成には、希土類アルコキシドであるジスプロシウムトリイソプロポキシド((株)高純度化学研究所製)を塗布し、ジスプロシウムトリイソプロポキシドの加熱処理による重縮合により、希土類酸化物を表面に固着させる手法を採用した。絶縁皮膜の形成から磁石の成形に至るまでの詳細な手順は、以下の通りである。
(1)露点が−80℃以下のArガスを満たしたグローブボックス内で、希土類アルコキシドであるジスプロシウムトリイソプロポキシド20gに、有機溶媒として脱水ヘキサンを加えて溶解し、全量が100mlのジスプロシウム表面処理液を調製した。ICPにて、溶液残渣中のDy濃度を分析した結果、5.3mg/mlであった。
(2)Ar雰囲気としたグローブボックス内で、前記ジスプロシウム表面処理液30mlを、上記で得た混合粉末10gに添加し、攪拌したのち、溶媒を除去し、混合粉末の表面を、希土類アルコキシド(ジスプロシウムトリイソプロポキシド)で被覆した。
(3)上記の操作により得られた皮膜を有する磁石粉末を、真空中で350℃にて30分間熱処理した。引き続き、600℃で60分間熱処理を実施して、錯体を熱分解し、絶縁皮膜を形成することにより、被覆粉末を得た。
被覆後の磁石粉末の断面をSEM観察した結果、希土類酸化物から成る絶縁被覆の膜厚は、厚いところで約5μmであった(図示せず)。また、薄いところでは、オージェ電子分光(AES)解析によって表面からの酸素の浸透深さを測定した結果、約100nmであった(図示せず)。なお、前記断面は、耳かき一杯分の粉を埋め込み研磨して、数十個の粉の断面を見たものである。
得られた希土類酸化物で被覆された軟磁性合金粉末に、希土類酸化物としてDyを体積比で2.5%となるように混合し、十分に攪拌し、4gの混合物を調製した。上記の希土類酸化物(Dy)の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察の結果0.5〜5μmであった。なお、前記「平均粒径」とは、SEMにより得られたイメージより、無作為に選択した20個の磁石粉末の長軸及び短軸を測定し、それらの平均を算出して得られる値を意味する。
なお、上記希土類酸化物の添加量については、希土類磁石粉末と希土類酸化物粉末のバルク体における真密度の値を用いて、計算によって求めた。また、上記希土類酸化物は、(株)高純度化学研究所製のDy試薬を用いた。
上記混合粉末を10mm×10mmのプレス面を有する金型に充填し、室温で磁場配向させながら仮成形した。この時の配向磁場は1.6MA/m、成形圧力は20MPaとした。
そして、仮成形された上記混合体を真空中での加圧焼成によって成形し、バルク成形体の希土類磁石を得た。この成形にはホットプレスを用い、昇温中も一定の成形圧力490MPaを保持すると共に、成形温度600℃で1分間保持し、冷却することにより、10mm×10mm×約5mmの寸法を有する希土類磁石に加工した。なお、このとき、冷却中も室温まで真空を保持した。また、得られた磁石圧密体には、600℃で0.5時間、歪取り焼鈍を施した。
このようにして得られた希土類磁石について、その密度(単位:g/cm)、磁気特性(保磁力(iHc)(単位:KA/m)、最大エネルギー積BHmax(単位:kJ/m))、及び電気比抵抗(単位:μΩm)を測定した。このとき、上記密度は得られた磁石の寸法及び密度から算出する一方、保磁力及び最大エネルギー積の磁石特性については、東英工業(株)製パルス励磁型着磁器MPM−15を用いた。そして、着磁磁界10Tにて予め着磁した試験片を準備し、東英工業(株)製BH測定器TRF−5AH−25Autoを用いてB-H曲線を測定することにより求めた。また、電気抵抗率(電気比抵抗)については、エヌピイエス(株)製抵抗率プローブを使用した4探針法によって測定した。このとき、プローブの針材料をタングステンカーバイド、針先端半径を40μm、針間隔を1mm、4本の針の総荷重は400gとした。
当該実施例1において得られた希土類磁石の磁石密度は7.4g/cm、保磁力は848KA/m、最大エネルギー積は139KJ/m、比抵抗は280μΩcmであった。以上の条件及び結果を表1に示す。
[実施例2〜10、比較例1〜4]
混合した原料磁石粉末粒径の混合比を表1に示した条件とした以外は、実施例1と同様にして実験を行った。
[比較例5]
分級を行わず、被覆処理も行わなかった点を除いて、実施例1と同様にして実験を行った。
以上の条件及び結果を表1にまとめて示す。さらに、表1における結果をプロットしたグラフを図7に示す。
表1より、磁石粒子について、断面観察による粒径150μm超の粒子断面率が50%以上の条件を満たす磁石成形体の場合、かかる条件を満たさない磁石成形体と比較して、電気比抵抗及び磁気特性(保磁力)が共に有意に高い値を示すことを確認した。
1 磁石成形前駆体、
2 磁石粉末、
3 絶縁皮膜、
21 u相巻線、
22 u相巻線、
23 v相巻線、
24 v相巻線、
25 w相巻線、
26 w相巻線、
27 アルミケース、
28 ステータ、
29 磁石、
30 ロータ鉄、
31 軸。

Claims (8)

  1. 磁石粉末と、前記磁石粉末を覆う絶縁皮膜とを含む磁石成形体であって、
    前記絶縁皮膜で被覆された前記磁石粉末の粒径が150μm超の粒子を断面の面積率として50%以上有する、磁石成形体。
  2. 前記磁石粉末は希土類磁石からなる、請求項1に記載の磁石成形体。
  3. 前記磁石粉末はNdFe14Bを主成分とする、請求項1または2に記載の磁石成形体。
  4. 前記絶縁皮膜はジスプロシウム及び/またはテルビウムの酸化物を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁石成形体。
  5. 前記絶縁皮膜は、希土類元素の有機錯体を熱分解して得られた酸化物を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁石成形体。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁石成形体の製造方法であって、
    磁石粉末を絶縁皮膜で被覆して磁石成形前駆体を得る段階と、
    前記磁石成形前駆体を加熱加圧成形する段階とを含む、磁石成形体の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁石成形体を用いた、モータ。
  8. 請求項7に記載のモータを搭載した、電動駆動車両。
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