JP2010203002A - 工程剥離紙用原紙、及び当該工程剥離紙用原紙を用いた工程剥離紙 - Google Patents
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【解決手段】木材パルプを主体とした基紙の少なくとも片面に、無機顔料及びバインダーを主成分とする塗工層を1層以上設けてなる工程剥離紙用原紙において、該基紙の超音波伝播速度測定器に基づき測定される繊維配向比が1.20以下、該塗工層がカオリン及びスチレン−ブタジエン共重合体を主成分とするものであり、かつ該工程剥離紙用原紙を150℃で2分加熱後、23℃で相対湿度50%の条件下での24時間後の横方向の伸び率が0.5%以下であることを特徴とする工程剥離紙用原紙。
【選択図】なし
Description
また、合成樹脂やセラミックなどのシート状成型物を製造する工程において使用される工程剥離紙は、支持体として流動性のある原料を保持し、各種処理を施した後に製造物から剥離し、除去されるものである。そのため、工程剥離紙の支持体には剥離性能の他に、各種処理工程に対する寸法安定性が要求される。特に熱処理工程を経る場合、熱による寸法変化やカールが生じると成型物に不具合が生じる。該寸法変化のうち、特に収縮はシワ状の表面欠陥を始めとした品質面での問題となる。また、カールは製品の変形などの品質問題に加え、剥離作業性の悪化といった操業性の悪化を招く。
また、原紙の片面或いは両面にポリビニルアルコールを含む塗工層を有した剥離紙用原紙が記載されており(特許文献2、3)、原紙に耐水化されたポリビニルアルコールが塗工或いは含浸された工程剥離紙用原紙が提案されている(特許文献4)。さらに、原紙の少なくとも片面に無機顔料/スチレン・ブタジエン共重合体の重量混合比が7/3〜3/7である塗工層を片面あたり7〜30g/m2設ける剥離紙用原紙が提案されている(特許文献5)が、いずれも120℃以上の熱に対する寸法安定性については不十分であった。
熱に対する寸法安定性とは、詳細に言えば加熱及び冷却によって、原紙が水分の吸脱湿により伸縮する挙動をいかに抑制するかということである。本発明の寸法安定性において、最も重要なのは横方向の伸び率を抑えることである。
上記の手段により、該工程剥離紙用原紙を150℃で2分加熱後、23℃で相対湿度50%の条件下での24時間後の横方向の伸び率を0.5%以下に制御し、上記課題を解決した工程剥離紙を提供できるに至った。
(1)木材パルプを主体とした基紙の少なくとも片面に、無機顔料及びバインダーを主成分とする塗工層を1層以上設けてなる工程剥離紙用原紙であって、該基紙の超音波伝播速度測定器に基づき測定される繊維配向比が1.20以下、該塗工層がカオリン及びスチレン−ブタジエン共重合体を主成分とするものであり、かつ該工程剥離紙用原紙を150℃で2分加熱後、23℃で相対湿度50%の条件下での24時間後の横方向の伸び率が0.5%以下である工程剥離紙用原紙。
本発明において使用される基紙は繊維配向比を制御し、以下に詳述する方法によって抄紙して製造することができる。
原紙のパルプ配合においては、寸法安定性に優れるLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)を多く配合することが好ましく、全パルプ100質量%のうち70〜100質量%配合するのが好ましい。
さらに、紙料中には内添紙力増強剤として、澱粉、酸化澱粉、カチオン化澱粉、カルボキシメチル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アニオン性、カチオン性または両性ポリアクリルアミド系樹脂等を使用することができる。
水和ケイ酸塩は、一般的に填料に使用される炭酸カルシウムやカオリン、タルクに比べて粒子内部に空隙を持つ嵩高な顔料であり、パルプ繊維間に入り込んで繊維の伸縮を阻害すると考えられる。
径105Å以下の細孔の積算容量が4cc/g未満、細孔径が0.10〜0.80μmであることが好ましい。比表面積が15m2/g未満の場合は、粒度分布が悪くなり、微細粒子と粗大粒子が多くなり、内部結合強さが低下する。160m2/gを超えると、凝集構造体の結合力が弱くなり、パルプスラリー調製時およびプレス圧、キャレンダー処理圧力で潰れやすく、繊維間の結合面積が増加する傾向が見られるため好ましくない。
また、細孔径が0.10μm未満であれば、凝集構造体の結合力が弱くなり、パルプスラリー調製時およびプレス圧、キャレンダー処理圧力で潰れやすく、繊維間の結合面積が増加する。0.80μmを超えると、粒度分布が悪くなり、微細粒子と粗大粒子が多くなり、内部結合強さが低下する。
なお、本発明における平均粒子径とは、SALD2000J((株)島津製作所製)を用いて、レーザー回折法により測定し、体積積算で50%となる値のことである。また、水和ケイ酸塩の粒度分布としては、標準偏差(σ)が0.350以下であることが好ましい。このような粒度分布であれば、粗大粒子および微細粒子が共により少なくなり、紙に配合した際に、より優れた表面強度および内部結合強さが得られる。
水和ケイ酸塩の添加量は、紙中灰分で1〜8質量%が好ましい。添加量が1質量%より少ないと寸法安定性の改善効果が得られず、8質量%より多いと強度の低下が大きく、好ましくない。
ガラス繊維として特に限定はないが、直径2〜20μmで、長さ1〜3mmのカットファイバーが好ましく用いられる。また、ガラス繊維の添加量はパルプに対して8〜15質量%であることが好ましい。8質量%より少ない添加量では寸法安定性の改善効果が少なく、15質量%より多いと寸法安定性の改善効果が飽和し、コストの面で不利になる。
塗工層において、主成分となるカオリンは全無機顔料の60質量%以上を含有する。塗工層に使用する無機顔料は、カオリンの他に、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、チョーク等の炭酸カルシウム、焼成カオリン、パイオロフィライト、セリサイト、タルク等のケイ酸塩類、酸化チタンなどが挙げられるが、平滑性及びシリコーンの目止めの効果の点からカオリン及び炭酸カルシウムが好ましく用いられる。
前記塗工層の塗工量は特に限定されるものではないが、片面当たり10〜20g/m2であれば十分なシリコーンの目止め効果が発揮される。更に好ましくは12〜16g/m2である。
塗工層形成後は、平滑性をより高めるためにキャレンダーに通紙して仕上げてもよいが、キャレンダー処理によって基紙の繊維間結合面積が増加する傾向があるため、寸法安定性を高めるためには塗工後のキャレンダー処理は行わない方が好ましい。
工程剥離紙用原紙の横方向の伸び率が0.5%を超えると、縦方向に配列したカーボン繊維に隙間が生じて品質欠陥となる。
(基紙の製造)
カナダ標準濾水度(CSF)が450mlの針葉樹晒化学パルプ(NBKP)スラリーと、400mlの広葉樹晒化学パルプ(LBKP)スラリーを20/80(固形分比率)で混合した後、絶乾パルプ100部当たり、軽質炭酸カルシウムを4部となるよう添加し、さらに澱粉1.0部、硫酸バンド0.5部、歩留向上剤0.02部(DR−1500、ハイモ社製)となるように添加して紙料を調製した。その紙料を、長網抄紙機を用いて目標坪量が風乾で80g/m2となり、かつワイヤーシェーキング装置で振幅20mm、振動数200rpmとなるようワイヤーを摺動させながら抄造し、プレスにより脱水後、シリンダードライヤーを用いて乾燥し、シートを作製した。その後、線圧10kg/cmでキャレンダー処理を施して基紙を得た。
(塗工層の形成)
微粒カオリン(商品名:「ミラグロスOP」、平均粒子径:0.25μm、エンゲルハード社製)70部、重質炭酸カルシウム(商品名:「FMT90」、ファイマテック社製)20部からなる顔料をコーレス分散機で水中に分散して顔料スラリーを得た。このスラリーにSBR(商品名:「PA−9000」、日本エイアンドエル社製)10部(固形分)、予め糊化した酸化澱粉(商品名:「エースA」、王子コーンスターチ社製)3.5部(固形分)、消泡剤を添加し、最終的に固形分濃度64%の塗工液を調製した。この塗工液を、上記のように作製した基紙に片面あたりの乾燥塗布量が15g/m2になるようにブレードコーターで両面塗工、乾燥し、工程剥離紙用原紙1を製造した。
実施例1の基紙の製造において、有機系嵩高剤として脂肪酸ポリアミド系化合物(商品名:「サイズパインDL−FA20」、荒川化学社製)を絶乾パルプ100部当たり0.2部添加したこと以外は、実施例1と同様にして工程剥離紙用原紙2を作製した。
実施例1の基紙の製造において、下記のように合成した水和ケイ酸塩を絶乾パルプ100部当たり4部となるよう添加したこと以外は実施例1と同様にして、工程剥離紙用原紙3を作製した。
(水和ケイ酸塩の合成)
水357部、5%濃度の硫酸ナトリウム水溶液427部、JIS K 1408−1966に規定される3号ケイ酸ナトリウム347部を攪拌しながら順次添加した。攪拌しながら温度50℃にし、その後、攪拌翼の周速を10m/秒に調整し、硫酸(濃度20%)91部を15分間で添加して1段目の中和を行った後、上記周速の状態で90℃まで昇温した。次いで、このままの温度で20%濃度の硫酸をpH5.5となるまで攪拌しながら添加して2段目の中和を行った。次に上述で得たスラリーを200メッシュ篩で分離、ろ過し、12%の水和ケイ酸塩スラリーを得た。
得られた水和ケイ酸塩を、レーザー回折式粒度分布計(商品名:「SALD2000J」、(株)島津製作所製)で測定したところ、50%体積積算値の粒子径は15.5μmであった。
実施例1の基紙の製造において、絶乾パルプ100部当たりガラス繊維としてカットファイバー(直径5μm、長さ3mm)を10部添加したこと以外は実施例1と同様にして、工程剥離紙用原紙4を作製した。
実施例1の基紙の製造において、使用するパルプスラリーをLBKPのみとしたこと以外は実施例1と同様にして、工程剥離紙用原紙5を作製した。
実施例1において、塗工層の微粒カオリンを100部として重質炭酸カルシウムを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして工程剥離紙用原紙6を作製した。
実施例2で作製した工程剥離紙用原紙2の片面に、重剥離用シリコーン樹脂(商品名:KS−830、信越化学工業社製)10部、トルエン100部からなる塗工液を、絶乾固形分が1.0g/m2となるようにグラビアコーターで塗布して150℃で乾燥、硬化させた。
次いで、もう片方の面に軽剥離用シリコーン樹脂(商品名:KS−847T、信越化学工業社製)10部、トルエン100部からなる塗工液を、さきほどと同様に絶乾固形分が1.0g/m2となるように塗布して乾燥、硬化させ、本発明の工程剥離紙1を作製した。
実施例1において、塗工層の微粒カオリンを60部、重質炭酸カルシウムを20部、SBRを20部としたこと以外は実施例1と同様にして工程剥離紙用原紙8を作製した。
実施例2の基紙の製造において、有機系嵩高剤として脂肪酸ポリアミド系化合物の代わりに多価アルコール型非イオン界面活性剤を添加したこと以外は、実施例2と同様にして工程剥離紙用原紙9を作製した。
実施例2の基紙の製造において、さらに実施例3で使用した水和ケイ酸塩を絶乾パルプ100部当たり4部となるよう添加して、有機系嵩高剤と無機系嵩高剤を併用したこと以外は、実施例2と同様にして工程剥離紙用原紙10を作製した。
実施例1において、ワイヤーシェーキング装置を停止して、基紙の繊維配向比を1.45としたこと以外は実施例1と同様にして工程剥離紙用原紙を作製した。
実施例1において、ワイヤーシェーキング装置を停止して基紙の繊維配向比を1.45とし、塗工層の微粒カオリンを50部、重質炭酸カルシウムを20部、SBRを30部に増配してブレード塗工を行ったが、塗料がロールに付着し易く、連続操業が困難であった。
実施例1において、ワイヤーシェーキング装置の振幅を3mm、振動数50rpmとなるようにワイヤーを振動させて基紙の繊維配向比を1.25とし、塗工層を以下のように変更したこと以外は実施例1と同様にして工程剥離紙用原紙を作製した。
(塗工層の形成)
微粒カオリン(商品名:「ミラグロスOP」、平均粒子径:0.25μm、エンゲルハード社製)70部、重質炭酸カルシウム(商品名:「FMT90」、ファイマテック社製)20部からなる顔料をコーレス分散機で水中に分散して顔料スラリーを得た。このスラリーにPVA(商品名:「PVA105」、クラレ社製)10部(固形分)、予め糊化した酸化澱粉(商品名:「エースA」、王子コーンスターチ社製)3.5部(固形分)、消泡剤を添加し、最終的に固形分濃度25%の塗工液を調製した。この塗工液を、作製した基紙に片面あたりの乾燥塗布量が15g/m2になるようにブレードコーターで両面塗工、乾燥した。
(寸法安定性の測定方法)
23℃、相対湿度50%環境下で調湿した測定用サンプルを、長さ210mm、幅15mmで断裁し、原紙の横方向が長さ方向になるようにする。これを150℃乾燥器にそのまま入れて、2分間加熱後すぐに取り出してガラススケールで0.01mmオーダーまで長さを読み取る。この時の長さをL0とする。
加熱したサンプルは、23℃、相対湿度50%環境下で24時間吸湿させた後、再びガラススケールで長さを読み取り、この時の長さをL1とする。伸び率=(L1−L0)/L0で算出し、表1に示した。この伸び率が少ないと熱に対する寸法安定性に優れると評価する。
比較例1〜3においては、基紙の繊維配向比が1.20より高いと伸び率は0.5%より大きくなり、塗工層のバインダーをPVAにすると更に寸法安定性が悪化した。また、塗工層の無機顔料とSBRの混合比が8/2以下になると、ブレード塗工時に塗料がバッキングロールに付着しやすく連続操業が困難であった。
Claims (6)
- 木材パルプを主体とした基紙の少なくとも片面に、無機顔料及びバインダーを主成分とする塗工層を1層以上設けてなる工程剥離紙用原紙において、該基紙の超音波伝播速度測定器に基づき測定される繊維配向比が1.20以下、該塗工層がカオリン及びスチレン−ブタジエン共重合体を主成分とするものであり、かつ該工程剥離紙用原紙を150℃で2分加熱後、23℃で相対湿度50%の条件下での24時間後の横方向の伸び率が0.5%以下であることを特徴とする工程剥離紙用原紙。
- 前記基紙中に嵩高剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の工程剥離紙用原紙。
- 前記嵩高剤が脂肪酸ポリアミド系化合物および/または水和ケイ酸塩であることを特徴とする請求項2に記載の工程剥離紙用原紙。
- 前記塗工層のカオリンを含む無機顔料とスチレン−ブタジエン共重合体の混合比が8/2以上であり、実質的にポリビニルアルコールを含有しないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の工程剥離紙用原紙。
- 前記基紙がガラス繊維を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の工程剥離紙用原紙。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の工程剥離紙用原紙の塗工層上に剥離剤層を設けた工程剥離紙。
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