以下に、本発明についてさらに詳細に説明する。本発明におけるインクは、染料や顔料などの色材を含有する組成物を意味し画像形成に好適に使用できる
[フタロシアニン化合物]
本発明に用いる一般式(I)〜(III)で表されるフタロシアニン化合物は、例えば一般式(III)で表される特定のフタロシアニン母核に少なくとも一種の特定の環{例えば、上記一般式中(IV)}を導入し、及び、少なくとも一種の特定の置換基{例えば、上記一般式(V)中}を特定の置換位置に導入した、置換フタロシアニン化合物(混合物)であり、本発明においては、フタロシアニン化合物合成時、可能性がある全てのフタロシアニン混合物{一般式(IV)及び一般式(V)の混合比}全てを包含しても良く、特定の混合比{例えば、一般式(IV)/一般式(V)=99.9/0.1〜0.1/99.9(eq./eq.)}で特定の混合物だけを使用することも、あるいは、そのうちの数種を混合物として使用することもできる。それ故、複数の特定の置換基を有するフタロシアニン化合物が存在する混合物を使用することで結晶化を阻害することができ、インク中における色素(フタロシアニン化合物)の保存安定性の改良が期待できる。
本発明では、求電子剤であるオゾンとの反応性を下げるために、フタロシアニン骨格に電子求引性基を導入して酸化電位を1.0V(vs SCE)よりも貴とすることが望ましい。酸化電位は貴であるほど好ましく、酸化電位が1.05V(vs SCE)よりも貴であるものがより好ましく、1.10V(vs SCE)より貴であるものが最も好ましい。
発明者らは着色画像のオゾンガス堅牢性について研究したところ、着色画像に用いる化合物の酸化電位とオゾンガス堅牢性との間に相関があり、酸化電位の値が飽和カロメル電極(SCE)に対して1.0Vよりも貴であるフタロシアニン化合物を用いることにより、オゾンガス堅牢性がより改良されることがわかった。
着色画像のオゾンガス堅牢性が改良される理由としては、化合物とオゾンガスのHOMO(最高被占軌道)およびLUMO(最低空軌道)の関係によって説明できる。すなわち、着色化合物のHOMOとオゾンガスのLUMOとの反応により着色化合物が酸化されて、その結果着色画像のオゾンガス堅牢性が低下していると考えられるため、オゾンガス堅牢性を向上させるには、化合物のHOMOを下げてオゾンガスとの反応性を低下させればよい。
酸化電位の値は、試料から電極への電子の移りやすさを表わし、その値が大きい(酸化電位が貴である)ほど試料から電極への電子の移りにくい、言い換えれば、酸化されにくいことを表わす。化合物の構造との関連では、電子求引性基を導入することにより酸化電位はより貴となり、電子供与性基を導入することにより酸化電位はより卑となる。
酸化電位の測定方法は下記に詳述するが、化合物がボルタンメトリーにおいて陽極で、化合物の電子が引き抜かれる電位を意味し、その化合物の基底状態におけるHOMOのエネルギーレベルと近似的に一致すると考えられている。
酸化電位の値(Eox)は当業者が容易に測定することができる。この方法に関しては、例えばP.Delahay著“New InstrumentalMethods in
Electrochemistry”(1954年 Interscience Publishers社刊)やA.J.Bard他著“Electrochemical Methods”(1980年 JohnWiley & Sons社刊)、藤嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年 技報堂出版社刊)に記載されている。
酸化電位の測定について具体的に説明する。酸化電位は、過塩素酸ナトリウムや過塩素酸テトラプロピルアンモニウムといった支持電解質を含むジメチルホルムアミドやアセトニトリルのような溶媒中に、被験試料を1×10-4〜1×10-6mol・dm-3の濃度に溶解して、サイクリックボルタンメトリーや直流ポーラログラフィーを用いてSCE(飽和カロメル電極)に対する値として測定する。また、用いる支持電解質や溶媒は、被験試料の酸化電位や溶解性により適当なものを選ぶことができる。用いることができる支持電解質や溶媒については藤嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年 技報堂出版社刊)101〜118ページに記載がある。
酸化電位の値は、液間電位差や試料溶液の液抵抗などの影響で、数10ミルボルト程度偏位することがあるが、標準試料(例えばハイドロキノン)を用いて校正することにより、測定された電位の値の再現性を保証することができる。
本発明における酸化電位は、0.1mol・dm-3の過塩素酸テトラプロピルアンモニウムを支持電解質として含むN,N−ジメチルホルムアミド中(化合物の濃度は1×10-3mol・dm-3)で、参照電極としてSCE(飽和カロメル電極)、作用極としてグラファイト電極、対極として白金電極を使用し、直流ポーラログラフィーにより測定した値を使用する。
また、化合物の構造によっても酸化電位は異なるため、求電子剤であるオゾンとの反応性を下げるためには、元々酸化電位が貴である色素構造を選択したほうが、オゾンガス堅牢性の観点だけでなく、その他の堅牢性、色相、物性などを調節するために電子求引性基または電子供与性基を任意に導入することができるため、分子設計の観点からもより好ましいと言える。
例えば、求電子剤であるオゾンとの反応性を下げるために、化合物の構造のうち[1]ヘテロ原子(例えば窒素原子)を導入;[2]任意の位置に電子求引性基を導入して;酸化電位をより貴とすることが好ましい。従って、置換基の電子求引性や電子供与性の尺度であるハメットの置換基定数σp値を用いれば、σp値が大きい置換基を導入することにより酸化電位をより貴とすることができる。
ハメットの置換基定数σp値について説明する。ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L. P. Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J. A. Dean編“Lange's Handbook of Chemistry”第12版(1979年
McGraw-Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁(1979年 南光堂)に詳しい。
発明者らは数種のフタロシアニン化合物の色相、堅牢性、結晶性、保存安定性について検討したところ、少なくとも1種の特定の置換基{例えば、上記一般式中(IV)}を特定の置換位置に導入、及び、少なくとも一種の特定の置換基{例えば、上記一般式(V)}を導入したフタロシアニン化合物(混合物)用いることで、上記課題を解決でき、良好な色相、画像堅牢性とインク液長期経時安定性の両立を可能なことを見出した。
以下に、本発明のインクに用いられる下記一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物について詳細に説明する。
本発明の前記一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物は、化合物とその塩及びこれらの水和物を含む。
上記一般式(I)において、X1〜X4およびY1〜Y4は、それぞれ独立に、炭素原子あるいは窒素原子が好ましく、炭素原子がより好ましい。X1−Y1、X2−Y2、X3−Y3、X4−Y4の結合は、それぞれの原子種や下記A1〜A4のヘテロ環種に応じて、単結合でも二重結合でもとりうるものとする。
上記一般式(I)において、A1〜A4は、それぞれ独立に、X1〜X4およびY1〜Y4と共に芳香族環あるいはヘテロ環(更に他の環と縮合環を形成しても良い)を形成するのに必要な原子群を表す。芳香族環とは、特に明示しない限り、環を構成する原子が炭素原子のみである芳香族環を指し、具体的にはベンゼン環が挙げられる。芳香族環は、さらに他の芳香族環、ヘテロ環、脂肪族環と縮環していてもよい。ヘテロ環を形成する場合、該原子群は炭素原子、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選択される少なくとも2種から構成されることが好ましい。 A1〜A4、X1〜X4およびY1〜Y4で構成されるヘテロ環の中でも、特に5あるいは6員環のヘテロ環が好ましい。A1〜A4 、X1〜X4およびY1〜Y4で構成されるヘテロ環の好ましい例にはピリジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、ピロール、ピラゾロン、インドール、イソオキサゾール、チオフェン、フラン、ピラン、ペンチオフェン、キノリン、イソキノリン、ピリダジン、ピリミジン、ピリドン等が含まれる。但し、A、X、Yから成る環の4つ全てが同時に芳香族環になることはない。またA、X、Yから成る環の4つ全てが同時にピリジン環の場合、ピリジン環内のX、Yに隣接する原子の何れか一方が窒素原子であるピリジン環は除く。またA、X、Yから成る環の4つ全てが同時にピラジン環の場合、ピラジン環内のX、Yに隣接する原子の両方が窒素原子であるピラジン環は除く。
また、A1〜A4は置換基を有してもよく、その置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、スルフィニル基、ホスホリル基、アシル基またはイオン性親水性基が好ましい。これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。
なかでも、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アルコキシ基、アミド基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、およびアルコキシカルボニル基またはイオン性親水性基が好ましく、特に、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、およびアルコキシカルボニル基またはイオン性親水性基が好ましく、スルファモイル基、スルホニル基、およびイオン性親水性基が最も好ましい。
A1〜A4の少なくとも1つは、あるいはA1〜A4の置換基のうち少なくとも1つはイオン性親水性基を置換基として有する。
置換基としてのイオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基および4級アンモニウム基等が含まれる。該イオン性親水性基としては、カルボキシル基およびスルホ基が好ましく、特にスルホ基が好ましい。
カルボキシル基、ホスホノ基、スルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)および有機カチオン(例、テトラメチルグアニジウムイオン)が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すアルキル基には、置換基を有するアルキル基および無置換のアルキル基が含まれる。アルキル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が1〜20のアルキル基が好ましい。その中でも特に炭素原子数が1〜12のアルキル基が好ましい。特に溶解性の理由から、炭素原子数が1〜8の直鎖アルキル基及びまたは分岐のアルキル基が好ましく、特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。置換基の例には、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シアノ基、およびハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。アルキル基の例には、メチル、エチル、ブチル、イソプロピル、t−ブチル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、シアノエチル、トリフルオロメチル、3−スルホプロピルおよび4−スルホブチルが含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すシクロアルキル基には、置換基を有するシクロアルキル基および無置換のシクロアルキル基が含まれる。シクロアルキル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が3〜20のシクロアルキル基が好ましい。その中でも特に炭素原子数が5〜12のシクロアルキル基が好ましい。特に溶解性の理由から、炭素原子数が4〜8の分岐のシクロアルキル基が好ましく、特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。シクロアルキル基の例には、シクロヘキシル基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すアルケニル基には、置換基を有するアルケニル基および無置換のアルケニル基が含まれる。アルケニル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が2〜20のアルケニル基が好ましい。その中でも特に炭素原子数が2〜12のアルケニル基が好ましい。特に溶解性の理由から、炭素原子数が3〜12の分岐のアルケニル基が好ましく、特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基等が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すアルキニル基としては、置換基を有するアルキニル基および無置換のアルキニル基が含まれる。アルキニル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が2〜20のアルキニル基が好ましい。その中でも特に炭素原子数が2〜12のアルキニル基が好ましい。特に溶解性の理由から、炭素原子数が4〜12の分岐のアルキニル基が好ましく、特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すアラルキル基としては、置換基を有するアラルキル基および無置換のアラルキル基が含まれる。アラルキル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が7〜20のアラルキル基が好ましい。その中でも特に炭素原子数が7〜12のアラルキル基が好ましい。特に溶解性の理由から、炭素原子数が9〜12の分岐のアラルキル基が好ましく、特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アラルキル基の例には、ベンジル基、および2−フェネチル基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すアリール基には、置換基を有するアリール基および無置換のアリール基が含まれる。アリール基としては炭素原子数が6〜40のアリール基が好ましい。その中でも特に炭素原子数が6〜12のアリール基が好ましい。特に好ましい置換基の例としては溶解性の理由から、炭素原子数が7〜12の分岐のアラルキル基が好ましく、特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。置換基の例には、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルキルアミノ基およびイオン性親水性基が含まれる。アリール基の例には、フェニル、p−トリル、p−メトキシフェニル、o−クロロフェニルおよびm−(3−スルホプロピルアミノ)フェニル、m−スルホフェニルが含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すヘテロ環基には、置換基を有するヘテロ環基および無置換のヘテロ環基が含まれ、さらに他の環と縮合環を形成していてもよい。ヘテロ環基としては、5員または6員環のヘテロ環基が好ましい。また、芳香族ヘテロ環基であっても非芳香族ヘテロ環基であっても良い。
A1〜A4で表されるヘテロ環基は(例えばピリジンであれば、2位、3位、4位で置換することが可能である。)ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾール、イソオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリンなどが挙げられる。
中でも芳香族ヘテロ基が好ましく、その好ましい例を先と同様に例示すると、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾールが挙げられる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すアルキルアミノ基には、置換基を有するアルキルアミノ基および無置換のアルキルアミノ基が含まれる。アルキルアミノ基としては、置換基を除いたときの炭素原子数1〜6のアルキルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルキルアミノ基の例には、メチルアミノ基およびジエチルアミノ基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すアルキルオキシ基には、置換基を有するアルキルオキシ基および無置換のアルキルオキシ基が含まれる。置換基を除いたときのアルキルオキシ基としては、炭素原子数が1〜12のアルキルオキシ基が好ましい。置換基の例には、アルキルオキシ基、ヒドロキシル基およびイオン性親水性基が含まれる。アルキルオキシ基の例には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシエトキシ基および3−カルボキシプロポキシ基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すアリールオキシ基には、置換基を有するアリールオキシ基および無置換のアリールオキシ基が含まれる。アリールオキシ基としては、炭素原子数が6〜30のアリールオキシ基が好ましい。置換基の例には、アルコキシ基およびイオン性親水性基が含まれる。アリールオキシ基の例には、フェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基およびo−メトキシフェノキシ基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すアシルアミノ基には、置換基を有するアミド基および無置換のアミド基が含まれる。アシルアミノ基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が2〜12のアシルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アシルアミノ基の例には、アセトアミド基、プロピオンアミド基、ベンズアミド基および3,5−ジスルホベンズアミド基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すアリールアミノ基には、置換基を有するアリールアミノ基および無置換のアリールアミノ基が含まれる。アリールアミノ基としては、炭素原子数が6〜30のアリールアミノ基が好ましい。置換基の例としては、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。アリールアミノ基の例としては、アニリノ基および2−クロロアニリノ基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基表すウレイド基には、置換基を有するウレイド基および無置換のウレイド基が含まれる。ウレイド基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が1〜12のウレイド基が好ましい。置換基の例には、アルキル基およびアリール基が含まれる。ウレイド基の例には、3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基および3−フェニルウレイド基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すスルファモイルアミノ基には、置換基を有するスルファモイルアミノ基および無置換のスルファモイルアミノ基が含まれる。置換基の例には、アルキル基が含まれる。スルファモイルアミノ基の例には、N, N−ジプロピルスルファモイルアミノ基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すアルキルチオ基には、置換基を有するアルキルチオ基および無置換のアルキルチオ基が含まれる。アルキルチオ基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が1〜12のアルキルチオ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基およびエチルチオ基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すアリールチオ基には、置換基を有するアリールチオ基および無置換のアリールチオ基が含まれる。アリールチオ基としては、炭素原子数が6〜30のアリールチオ基が好ましい。置換基の例には、アルキル基、およびイオン性親水性基が含まれる。アリールチオ基の例には、フェニルチオ基およびp−トリルチオ基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すアルキルオキシカルボニルアミノ基には、置換基を有するアルキルオキシカルボニルアミノ基および無置換のアルキルオキシカルボニルアミノ基が含まれる。アルキルオキシカルボニルアミノ基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が2〜12のアルキルオキシカルボニルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルキルオキシカルボニルアミノ基の例には、エトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すスルホンアミド基には、置換基を有するスルホンアミド基および無置換のスルホンアミド基が含まれる。スルホンアミド基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が1〜12のスルホンアミド基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、および3−カルボキシベンゼンスルホンアミドが含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すカルバモイル基には、置換基を有するカルバモイル基および無置換のカルバモイル基が含まれる。置換基の例には、アルキル基が含まれる。カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基およびジメチルカルバモイル基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すスルファモイル基には、置換基を有するスルファモイル基および無置換のスルファモイル基が含まれる。置換基の例には、アルキル基、アリ−ル基が含まれる。スルファモイル基の例には、ジメチルスルファモイル基およびジ−(2−ヒドロキシエチル)スルファモイル基、フェニルスルファモイル基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すスルホニル基には、アルキルスルホニル基、アリ−ルスルホニル基が含まれる。スルホニル基の例には、3−スルホプロピルスルホニル基および3−カルボキシプロピルスルホニル基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すアルコキシカルボニル基には、置換基を有するアルコキシカルボニル基および無置換のアルコキシカルボニル基が含まれる。アルコキシカルボニル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が2〜12のアルコキシカルボニル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基およびエトキシカルボニル基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すヘテロ環オキシ基には、置換基を有するヘテロ環オキシ基および無置換のヘテロ環オキシ基が含まれる。ヘテロ環オキシ基としては、5員または6員環のヘテロ環を有するヘテロ環オキシ基が好ましい。置換基の例には、ヒドロキシル基、およびイオン性親水性基が含まれる。ヘテロ環オキシ基の例には、2−テトラヒドロピラニルオキシ基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すアゾ基には、置換基を有するアゾ基および無置換のアゾ基が含まれる。アゾ基の例には、p−ニトロフェニルアゾ基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すアシルオキシ基には、置換基を有するアシルオキシ基および無置換のアシルオキシ基が含まれる。アシルオキシ基としては、置換基を除いたときの炭素原子数1〜12のアシルオキシ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アシルオキシ基の例には、アセトキシ基およびベンゾイルオキシ基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すカルバモイルオキシ基には、置換基を有するカルバモイルオキシ基および無置換のカルバモイルオキシ基が含まれる。置換基の例には、アルキル基が含まれる。カルバモイルオキシ基の例には、N−メチルカルバモイルオキシ基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すシリルオキシ基には、置換基を有するシリルオキシ基および無置換のシリルオキシ基が含まれる。置換基の例には、アルキル基が含まれる。シリルオキシ基の例には、トリメチルシリルオキシ基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すアリールオキシカルボニル基には、置換基を有するアリールオキシカルボニル基および無置換のアリールオキシカルボニル基が含まれる。アリールオキシカルボニル基としては、炭素原子数が7〜30のアリールオキシカルボニル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニル基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すアリールオキシカルボニルアミノ基には、置換基を有するアリールオキシカルボニルアミノ基および無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が含まれる。アリールオキシカルボニルアミノ基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アリールオキシカルボニルアミノ基の例には、フェノキシカルボニルアミノ基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すイミド基には、置換基を有するイミド基および無置換のイミド基が含まれる。イミド基の例には、N−フタルイミド基およびN−スクシンイミド基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すヘテロ環チオ基には、置換基を有するヘテロ環チオ基および無置換のヘテロ環チオ基が含まれる。ヘテロ環チオ基としては、5員または6員環のヘテロ環を有することが好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。へテロ環チオ基の例には、2−ピリジルチオ基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すスルフィニル基には、アルキルスルフィニル基、アリ−ルスルフィニル基が含まれる。スルフィニル基の例には、3−スルホプロピルスルフィニル基および3−カルボキシプロピルスルフィニル基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すホスホリル基には、置換基を有するホスホリル基および無置換のホスホリル基が含まれる。ホスホリル基の例には、フェノキシホスホリル基およびフェニルホスホリル基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すアシル基には、置換基を有するアシル基および無置換のアシル基が含まれる。アシル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が1〜12のアシル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アシル基の例には、アセチル基およびベンゾイル基が含まれる。
A1〜A4の有することができる置換基が表すイオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、および4級アンモニウム基等が含まれる。イオン性親水性基としては、カルボキシル基およびスルホ基が好ましく、特にスルホ基が好ましい。カルボキシル基およびスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)および有機カチオン(例、テトラメチルグアニジウムイオン)が含まれる。
前記一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物は、イオン性親水性基を有することが好ましい。イオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基および4級アンモニウム基等が含まれる。前記イオン性親水性基としては、カルボキシル基、ホスホノ基、およびスルホ基が好ましく、特にカルボキシル基、スルホ基が好ましい。カルボキシル基、ホスホノ基およびスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)および有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれる。対イオンの中でもアルカリ金属塩が好ましく、特にリチウム塩は化合物の溶解性を高めインク安定性を向上させるため特に好ましい。イオン性親水性基の数としては、フタロシアニン化合物1分子中少なくとも2個有するものが好ましく、特にスルホ基および/またはカルボキシル基を少なくとも2個有するものが特に好ましい。
Mは、水素原子、金属元素、金属酸化物、金属水酸化物、または金属ハロゲン化物を表す。
Mとして好ましいものは、水素原子の他に、金属元素として、Li、Na、K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi等が挙げられる。なかでも、特にCu、Ni、Zn、Alが好ましく、Cuが最も好ましい。
金属酸化物としては、VO、GeO等が好ましく挙げられる。また、金属水酸化物としては、Si(OH)2、Cr(OH)2、Sn(OH)2等が好ましく挙げられる。さらに、金属ハロゲン化物としては、AlCl、SiCl2、VCl、VCl2、VOCl、FeCl2、GaCl、ZrCl等が挙げられる。
また、一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物は、L(2価の連結基)を介してPc(フタロシアニン環)が2量体(例えば、Pc−M−L-M−Pc)または3量体を形成してもよく、そのとき複数個存在するMは、それぞれ同一であっても異なるものであってもよい。
Lで表される2価の連結基は、オキシ基−O−、チオ基−S−、カルボニル基−CO−、スルホニル基−SO2−、イミノ基−NH−、メチレン基−CH2−、及びこれらを組み合わせて形成される基が好ましい。
なお、一般式(I)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物の中でも、下記一般式(II)で表される構造のフタロシアニン化合物がさらに好ましい。以下に、本発明の一般式(II)で表されるフタロシアニン化合物について詳しく述べる。
一般式(II)中、Q1〜Q4、R1〜R4は、それぞれ独立に、炭素原子、窒素原子、硫黄原子、酸素原子または燐原子を表し、なかでも炭素原子、硫黄原子、窒素原子または酸素原子を表すことが好ましく、炭素原子又は窒素原子を表すことがより好ましい。
E1〜E4は、Q1〜Q4およびR1〜R4と共に芳香族環あるいはヘテロ環(更に他の環と縮合環を形成しても良い)を形成するのに必要な原子群を表す。ヘテロ環を形成する場合には、該原子群は炭素原子、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選択される少なくとも2種から構成されることが好ましい。また、E1〜E4、Q1〜Q4、R1〜R4と共に構成されるヘテロ環の好ましい例は前記一般式(I)のA1〜A4、X1〜X4およびY1〜Y4で構成されるヘテロ環の例と同様である。但し、E、Q、Rから成る環の4つ全てが同時に芳香族環になることはない。またその環の4つ全てが同時にピリジン環の場合、Q及びRの何れか一方が窒素原子であるピリジン環は除く。また、その環の4つ全てが同時にピラジン環の場合は除く。
また、E1〜E4は置換基を有してもよく、その置換基は、一般式(I)で示したA1〜A4の有することができる置換基と同義であり、好ましい例も同様である。これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。
上記一般式(II)で表されるフタロシアニン化合物が水溶性である場合には、イオン性親水性基を有することが好ましい。イオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基および4級アンモニウム基等が含まれる。前記イオン性親水性基としては、カルボキシル基、ホスホノ基、およびスルホ基が好ましく、特にカルボキシル基、スルホ基が好ましい。カルボキシル基、ホスホノ基およびスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)および有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれる。対イオンの中でもアルカリ金属塩が好ましく、特にリチウム塩は化合物の溶解性を高めインク安定性を向上させるため特に好ましい。イオン性親水性基の数としては、フタロシアニン化合物1分子中に少なくとも2個有するものが好ましく、特にスルホ基および/またはカルボキシル基を少なくとも2個有するものが特に好ましい。
前記一般式(II)で表されるフタロシアニン化合物の中でも、特に好ましい置換基の組み合わせは、前記一般式(I)中の特に好ましい置換基の組み合わせと同様である。
なお、一般式(II)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記の好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
一般式(II)で表されるフタロシアニン化合物の中でも、下記一般式(III)で表される構造のフタロシアニン化合物がさらに好ましい。以下に、本発明の一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物について詳しく述べる。
一般式(III)中、Q1〜Q4、P1〜P4、W1〜W4、R1〜R4は、それぞれ独立に、(=C(J1)−及びまたは−N=)、(=C(J2)−及びまたは−N=)、(=C(J3)−及びまたは−N=)、(=C(J4)−及びまたは−N=)を表す。
但し、(Q1、P1、W1、R1)、(Q2、P2、W2、R2)、(Q3 、P3、W3、R3)、(Q4、P4、W4、R4)から成る環{A環:(A)、B環:(B)、C環:(C)、D環:(D)}の4つ全てが同時に芳香族環になることはない。
Mは、一般式(II)の場合と同義であり、好ましい例も同じである。
特に、(Q1、P1、W1、R1)、(Q2、P2、W2、R2)、(Q3 、P3、W3、R3)、(Q4、P4、W4、R4)から成る環{A環:(A)、B環:(B)、C環:(C)、D環:(D)}の少なくとも1つが、含窒素ヘテロ環を表すフタロシアニン化合物が好ましい。
J1〜J4はそれぞれ独立に、水素原子及びまたは置換基を表す。
また、J1〜J4が置換基を表す場合は、更に置換基を有してもよい。但し、J1〜J4のうち少なくとも1つは、あるいJ1〜J4が有する置換基のうち少なくとも1つはイオン性親水性基を置換基として有する。
更に、(Q1、P1、W1、R1)、(Q2、P2、W2、R2)、(Q3 、P3、W3、R3)、(Q4、P4、W4、R4)から成る環{A環:(A)、B環:(B)、C環:(C)、D環:(D)}の少なくとも1つが下記一般式(IV)で表される含窒素ヘテロ環を表すフタロシアニン化合物が好ましい。
但し、A環:(A)、B環:(B)、C環:(C)、D環:(D)の4つ全てが同時にピリジン環の場合は、(Q1及びR1)且つ(Q2及びR2)且つ(Q3及びR3)且つ(Q4及びR4)の何れか一方が窒素原子であるピリジン環は除く。
また、A環:(A)、B環:(B)、C環:(C)、D環:(D)の4つ全てが同時にピラジン環の場合は除く。
更に好ましくは、(Q1、P1、W1、R1)、(Q2、P2、W2、R2 )、(Q3、P3、W3、R3)、(Q4、P4、W4、R4)から成る環{A環:(A)、B環:(B)、C環:(C)、D環:(D)}の少なくとも1つ(好ましくは少なくとも2つ)が芳香族環を表し、且つ、少なくとも1つがピリジン環及びまたはピラジン環を表すものが好ましい。
その中でも特に、(Q1、P1、W1、R1)、(Q2、P2、W2、R2 )、(Q3、P3、W3、R3)、(Q4、P4、W4、R4)から成る環{A環:(A)、B環:(B)、C環:(C)、D環:(D)}の少なくとも1つ(好ましくは少なくとも2つ)が、下記一般式(V)で表される芳香族環を表すフタロシアニン化合物が好ましい。
一般式(V)中Gは、−SO−Z1、−SO2−Z1、−SO2NZ1Z2、−CONZ1Z2、−CO2Z1、−COZ1、またはスルホ基を表す。
特に、−SO2−Z1、−SO2NZ1Z2、−CONZ1Z2が好ましく、その中でも−SO2−Z1、−SO2NZ1Z2が好ましく、−SO2−Z1が最も好ましい。
Z1は、同一または異なっていてもよく、置換もしくは無置換の総炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数3〜20のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数2〜20のアルケニル基、置換もしくは無置換の総炭素数2〜12のアルキニル基、置換もしくは無置換の総炭素数7〜20のアラルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数6〜20のアリール基、置換もしくは無置換の総炭素数4〜20ヘテロ環基が好ましく、その中でも置換もしくは無置換の総炭素数1〜12アルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、置換もしくは無置換の総炭素数4〜12のへテロ環基が好ましく、置換の総炭素数1〜12アルキル基が最も好ましい。
Z2は、同一または異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは無置換の総炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数3〜20のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数2〜20のアルケニル基、置換もしくは無置換の総炭素数2〜12のアルキニル基、置換もしくは無置換の総炭素数7〜20のアラルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数6〜20のアリール基、置換もしくは無置換の総炭素数4〜20ヘテロ環基が好ましく、その中でも水素原子、置換もしくは無置換の総炭素数1〜12アルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、置換もしくは無置換の総炭素数4〜12のへテロ環基が好ましく、更に水素原子、置換の総炭素数1〜12アルキル基が好ましく、水素原子が最も好ましい。
なお、Z1及び/又はZ2は、上記A1〜A4が有することができる置換基に挙げたような置換基を更に有してもよい。Z1及び/又はZ2 の少なくとも一つはイオン性親水性基を置換基として有する。
tは、0〜4の整数を表し、特に1〜2が好ましく、1が最も好ましい。
上記一般式(V)は、好ましくは一般式(V―1)である。一般式(V―1)でのG及び及びその好ましい範囲は一般式(V)と同じであり、t1は0〜2の整数を表し、1〜2が好ましく、1がより好ましい。
上記一般式(V)で表される芳香環の中でも、特に、下記一般式(VI)でで表される芳香環が好ましい。
一般式(VI)中、Z1は、上記一般式(V)中のZ1と同義であり、好ましい例も同じである。t1、及び*は、上記一般式(V−1)中のt1、及び*と同義であり、好ましい例も同じである。
前記一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物として特に好ましい組み合わせは、(イ)(Q1、P1、W1、R1)、(Q2、P2、W2、R2)、(Q3、P3、W3、R3)、(Q4、P4、W4、R4)から成る環{A環:(A)、B環:(B)、C環:(C)、D環:(D)}の少なくとも1つがヘテロ環を表すフタロシアニン化合物が好ましい。
(ロ)(Q1、P1、W1、R1)、(Q2、P2、W2、R2)、(Q3、P3、W3、R3)、(Q4、P4、W4、R4)から成る環{A環:(A)、B環:(B)、C環:(C)、D環:(D)}の少なくとも1つが含窒素6員ヘテロ環を表すフタロシアニン化合物が好ましい。但し、A環:(A)、B環:(B)、C環:(C)、D環:(D)の4つ全てが同時にピリジン環の場合は、(Q1及びR1)且つ(Q2及びR2)且つ(Q3及びR3)且つ(Q4及びR4)の何れか一方が窒素原子であるピリジン環は除く。また、A環:(A)、B環:(B)、C環:(C)、D環:(D)の4つ全てが同時にピラジン環の場合は除く。(ハ)(Q1、P1、W1、R1)、(Q2、P2、W2、R2)、(Q3、P3、W3、R3)、(Q4、P4、W4、R4)から成る環{A環:(A)、B環:(B)、C環:(C)、D環:(D)}の少なくとも1つが芳香族環を表し、且つ、少なくとも1つがピリジン環及びまたはピラジン環を表すものが好ましい。その中でも特に、(Q1、P1、W1、R1)、(Q2、P2、W2、R2)、(Q3、P3、W3、R3)、(Q4、P4、W4、R4)から成る環{A環:(A)、B環:(B)、C環:(C)、D環:(D)}の少なくとも1つが、イオン性親水性基を置換基として有する、スルフィニル基、スルホニル基、スルファモイル基で置換された芳香族環を表すフタロシアニン化合物が好ましく、更に、(Q1、P1、W1、R1)、(Q2、P2、W2 、R2)、(Q3、P3、W3、R3)、(Q4、P4、W4、R4)から成る環{A環:(A)、B環:(B)、C環:(C)、D環:(D)}の少なくとも1つが、イオン性親水性基を置換基として有する、スルホニル基、スルファモイル基で置換された芳香族環を表すフタロシアニン化合物が好ましい。
(ニ)Mは、水素原子、金属原子、またはその酸化物、水酸化物、及びハロゲン化物が好ましく、中でも、Cu、Ni、Zn、Al等が好ましく、Cuが最も好ましい。
(ホ)フタロシアニン化合物の分子量(平均)は995〜2500の範囲が好ましく、更に995〜2000の範囲の分子量が好ましく、その中でも995〜1800の範囲の分子量が好ましく、特に995〜1600の範囲の分子量が最も好ましい。
(ヘ)前記一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物一分子中有するイオン性親水性基の中でも、スルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基が好ましく、その中でもスルホ基が特に好ましい。スルホ基、カルボキシル基、およびホスホノ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)および有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれる。対イオンの中でもアルカリ金属塩が好ましく、特にリチウム塩は化合物の溶解性を高めインク安定性を向上させるため特に好ましい。
前記一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物一分子中、イオン性親水性基を少なくとも1個以上有するものが好ましく、特に、イオン性親水性基がスルホ基であるのが好ましい、その中でもスルホ基を2個以上有するものが最も好ましい。
一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物は、分子内に少なくとも1つ以上のイオン性親水性基を有しているので、水性媒体中に対する溶解性または分散性が良好である。
本発明の一般式(I)、(II)、(III)で表されるフタロシアニン化合物は、特定の構造の(特に、フタロシアニン母核のベンゼン環がヘテロ環及びまたは特定の置換基で置換された芳香環に置き換わった)新規な水溶性化合物であり、インクジェット用水溶性染料及び該水溶性染料合成中間体として有用であり、また、有用な化学・医薬・農薬有機化合物中間体となり得る化合物である。
本発明の一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物は、例えば下記式で表されるジカルボニトリル誘導体(一般式a)および/または1,3−ジイミノイソインドリン誘導体(一般式b)を一般式(VII)で表される金属誘導体と反応させて誘導することができる。水溶性置換フタロシアニン化合物の合成では、あらかじめ一般式aおよび/または一般式bにイオン親水性基を導入したものを原料に用いる方法と、フタロシアニン化合物を得た後にイオン性親水性基を導入して水溶性化する方法がある。
上記各式中、Q、P、W、Rは上記一般式(III)のそれぞれQ1〜Q4、P1〜P4、W1〜W4、R1〜R4に相当する。
一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物中の(A)環、(B)環、(C)環及び(D)環のいずれか1つ(またはそれ以上)が、ヘテロ環基(特に好ましくは含窒素ヘテロ環)を表し、且つ、一般式(III)で表される置換フタロシアニン化合物中の(A)環、(B)環、(C)環及び(D)環のいずれか1つが、芳香族環を表す場合は、例えば、上記式中のジカルボニトリル誘導体(一般式a)および/または1,3−ジイミノイソインドリン誘導体(一般式b)のQ、P、W、R環がヘテロ環を形成する(特に好ましくは含窒素ヘテロ環)誘導体と上記式中のジカルボニトリル誘導体(一般式a)および/または1,3−ジイミノイソインドリン誘導体(一般式b)のQ、P、W、R環が芳香族環を形成する誘導体を原料にして、一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物を製造することができる。
本発明の一般式(I)〜(III)で表されるフタロシアニン化合物の製造方法おいて、上記式で表されるジカルボニトリル誘導体(一般式a)および/または1,3−ジイミノイソインドリン誘導体(一般式b)と、一般式(VII)で表される金属誘導体との反応条件について詳細に説明する。
本発明に用いられる酸としては、特に制限されるものではないが、25℃における水溶液中の解離指数pKaが7.0以下のものであれば有機化合物および無機化合物のいずれでも好ましい。pKaは酸解離定数の逆数の対数値を表し、イオン強度0.1、25℃で求められた値を示す。このpKa0.0〜7.0の酸としては、リン酸などの無機酸、酢酸、マロン酸、クエン酸等の有機酸のいずれであってもよいが、上記の改良により効果を示すpKa0.0〜7.0の酸は有機酸である。また、有機酸にあってもカルボキシル基を有する有機酸が最も好ましい。pKaが0.0〜7.0の有機酸は一塩基性有機酸であっても多塩基性有機酸であってもよい。多塩基性有機酸の場合、そのpKaが上記0.0〜7.0の範囲にあれば金属塩(例えばナトリウムやカリウム塩)やアンモニウム塩として使用できる。また、pKa0.0〜7.0の有機酸は2種以上混合使用することもできる。本発明に使用するpKa0.0〜7.0の有機酸の好ましい具体例を挙げると、ギ酸、酢酸、モノクロル酢酸、モノブロモ酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、モノクロルプロピオン酸、乳酸、ピルビン酸、アクリル酸、酪酸、イソ酪酸、ピバル酸、アミノ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸などの脂肪族系一塩基性有機酸;アスパラギン、アラニン、アルギニン、エチオニン、グリシン、グルタミン、システイン、セリン、メチオニン、ロイシンなどのアミノ酸系化合物;安息香酸及びクロロ、ヒドロキシ等のモノ置換安息香酸、ニコチン酸等の芳香族系一塩基性有機酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、オキサロ酢酸、グルタル酸、アジピン酸等の脂肪族系二塩基性有機酸;アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタル酸、シスチン、アスコルビン酸等のアミノ酸系二塩基性有機酸;フタル酸、テレフタル酸等の芳香族二塩基性有機酸;クエン酸などの三塩基性有機酸など各種有機酸を列挙することができる。本発明においては、有機酸の中でも、脂肪族系一塩基性有機酸が好ましくギ酸、酢酸、プロピオン酸が最も好ましい。
当該pKaが7.0以下の化合物の使用量は、上記式で表されるジカルボニトリル誘導体(一般式a)および/または1,3−ジイミノイソインドリン誘導体(一般式b)使用量に対して0.05〜20当量であり、好ましくは0.1〜10倍量を仕込むことで上記式で表されるジカルボニトリル誘導体(一般式a)および/または1,3−ジイミノイソインドリン誘導体(一般式b)の分解抑制作用が得られる。pKaが7.0以下の酸の使用量が、上記式で表されるジカルボニトリル誘導体(一般式a)および/または1,3−ジイミノイソインドリン誘導体(一般式b)の使用量に対して0.05倍量未満の場合には、上記式で表されるジカルボニトリル誘導体(一般式a)および/または1,3−ジイミノイソインドリン誘導体(一般式b)の分解を抑えるには不十分である。一方、pKaが7.0以下の酸の使用量が、上記式で表されるジカルボニトリル誘導体(一般式a)および/または1,3−ジイミノイソインドリン誘導体(一般式b)の使用量に対して20倍量を超える場合には、反応系が酸性側に偏るため反応が進行しにくくなる。また緩衝液になるまで塩基を過剰に使用するため、酸と塩基の塩が結晶として生じたりする。
本反応で使用できる塩基としては無機塩基、もしくは有機塩基である。無機塩基としては、例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等の無機塩基を、有機塩基としては、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等を使用することができる。他に酢酸リチウム、酢酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩等の有機酸塩を使用することもできる。但し、これら塩基は反応溶媒に溶解することで緩衝液として働くため、溶解性の高い塩基が好ましく、有機塩基やアルカリ金属イオンからなる有機酸塩が最も好ましい。アルカリ金属イオンの中でもリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンが好ましく、中でもリチウムイオン、ナトリウムイオンの有機酸塩が最も好ましい。塩基の使用量としては上記式で表されるジカルボニトリル誘導体(一般式a)および/または1,3−ジイミノイソインドリン誘導体(一般式b)の使用量に対して0.05〜30.0当量であり、好ましくは0.5〜15.0当量である。
緩衝液とは、溶液中のある成分濃度の変化に対する緩衝作用が大きい溶液である。例えば酢酸など弱酸(AH)とその共役塩基(A-)の混合溶液は,少量のH +またはOH-を添加しても、pH変化をわずかに抑えことができる。弱塩基(B) と共役酸(BH+)を含む系も同様な作用を示す。実用的なpH緩衝液としては多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、長倉三郎編「理化学辞典」第5版(1999年 岩波書店)に詳しい。
本発明のフタロシアニン化合物の製造方法では、上記式で表されるジカルボニトリル誘導体(一般式a)および/または1,3−ジイミノイソインドリン誘導体(一般式b)と上記一般式(VII)で示される金属誘導体を上記pKaが7.0以下の酸との存在下で反応させるのが望ましいものであるが、この際の反応条件としては、反応温度が30〜220℃、好ましくは40〜200℃、更に好ましくは50〜180℃である。上記反応温度が30℃未満の場合には、反応速度が顕著に遅くなり合成に要する時間が著しく長くなるため経済的でなく、また220℃を超える高温で合成する場合には、副生成物の生成量が増加するため好ましくない。
本発明の反応に添加する上記一般式(VII)で示される金属誘導体としては、導入しようとする金属または金属酸化物に対する金属、金属水酸化物のほか、金属塩化物、金属酢酸塩、また錯体としては金属のアコ錯体、アンミン錯体を用いることができる。
上記一般式(VII)において、好ましいMとしては、金属原子、またはその酸化物、水酸化物、及びハロゲン化物を挙げることができる。
金属原子としては、Li、Na、K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi等が挙げられる。
酸化物としては、VO、GeO等が挙げられる。
水酸化物としては、Si(OH)2、Cr(OH)2、Sn(OH)2等が挙げられる。
ハロゲン化物としては、AlCl、SiCl2、VCl、VCl2、VOCl、FeCl、GaCl、ZrCl等が挙げられる。
中でも、Mとしては、Cu、Ni、Zn、Al等が好ましく、Cuが最も好ましい。
上記一般式(VII)において、Zは、ハロゲン原子、酢酸陰イオン、アセチルアセトネート、酸素などの1価又は2価の配位子を表し、dは、1〜4の整数を表す。
金属誘導体{一般式(VII)で表される金属誘導体}の具体例としては、Al、Si、Ti、V、Mn,Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Ru、Rh、Pd、In、Sn、Pt、Pb等のハロゲン化物、カルボン酸誘導体、硫酸塩、硝酸塩、カルボニル化合物、酸化物、錯体等が挙げられる。さらに具体的には、塩化銅、臭化銅、沃化銅、酢酸銅、塩化ニッケル、臭化ニッケル、酢酸ニッケル、塩化コバルト、臭化コバルト、酢酸コバルト、塩化鉄、塩化亜鉛、臭化亜鉛、沃化亜鉛、酢酸亜鉛、塩化バナジウム、オキシ三塩化バナジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、塩化アルミニウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、アセチルアセトンマンガン、塩化マンガン、塩化鉛、酢酸鉛、塩化インジウム、塩化チタン、塩化スズ等が挙げられる。
その中でも特に、塩化第二銅(CuCl2)、酢酸銅が好ましく、特に塩化第二銅(CuCl2)が好ましい。
使用量としては、上記式で表されるジカルボニトリル誘導体(一般式a)および/または1,3−ジイミノイソインドリン誘導体(一般式b)の使用量に対して、0.01〜10倍当量が好ましく、更に0.05〜5倍当量が好ましく、特に好ましい量は、0.1〜3倍当量である。
また、本発明では触媒を同時に用いてよい。本発明の触媒としては通常フタロシアニン化合物の合成に用いられるすべての触媒を使用することができ、その例としてはモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸、リンモリブデン酸アンモニウム、酸化モリブデン等のモリブデン化合物、タンクステン酸アンモニウム、リンタングステン酸アンモニウム等のタングステン化合物、ヒ素バナジウム化合物、ほう酸、またはチタン、スズ、アンチモンのハロゲン化物あるいはオキシハロゲン化物が有り、中でもモリブデン酸アンモニウムが優れている。
本発明の方法で使用の溶剤は、一般的な有機溶剤を使用することができる。中でもヒドロキシル基を有する有機溶媒や、極性溶剤(例、アセトニトリル、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、プロピレンカーボネート、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N,N−ジエチルドデカンアミド)が好ましい。より好ましいアルコールの例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ペンタノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、フェニルプロピルアルコール、フルフリルアルコール、アニスアルコールが挙げられる。またモノ−のみならずオリゴ−(特にジ−及びトリ−)及びポリ−C2〜C4−アルキレングリコール(簡単にいうと「グリコール」)並びにこれらのモノ−C1〜C8−アルキル−及びモノアリールエーテル(簡単にいうと「グリコールモノエーテル」)も好適である。またエチレンを基礎とする化合物も有利である。例として、エチレングリコール、1,2−及び1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、トリ−及びテトラエチレングリコール、ジ−、トリ−及びテトラプロピレングリコール、ポリエチレン−及びポリプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチル−、−モノエチル−、−モノプロピル−、−モノブチル−及び−モノヘキシルエーテル及びプロピレングリコールモノメチル−、−モノエチル−、−モノプロピル−、−モノブチル−及び−モノヘキシルエーテル、ジ−、トリ−及びテトラエチレングリコールモノメチル−、−モノエチル−及び−モノブチルエーテル及びジ−、トリ−及びテトラプロピレングリコールモノメチル−、−モノエチル−及び−モノブチルエーテル並びにエチレン−及びプロピレングリコールモノフェニルエーテルが挙げられる。その中でも、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、1,2−及び1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリ−及びテトラエチレングリコール、ジ−、トリ−及びテトラプロピレングリコールが好ましく、特に、エチレングリコール、ジエチレングリコールが最も好ましい。
また本発明では、工業的に使用される不活性溶剤を使用することもできる。例としてニトロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、メチルナフタレン、ナフタレン、アルキルベンゼン、パラフィン、ナフテン、ケロシンが挙げられる。
これらは1種もしくは互いに影響しない組み合わせであれば2種以上を適当に混合していて用いても良い。溶媒の使用量は上記式で表されるジカルボニトリル誘導体(一般式a)および/または1,3−ジイミノイソインドリン誘導体(一般式b)の1〜100質量倍、好ましくは1〜20質量倍であり、更に好ましくは1〜5質量倍である。
本反応において反応を長時間行うことは、目的物の安定性や副反応の発生が懸念され、また不経済である。反応時間として好ましくは10時間未満であり、更に好ましくは8時間未満であり、更に好ましくは6時間未満である。
本発明のフタロシアニン化合物の製造方法においては、これらの反応によって得られる生成物(フタロシアニン化合物)は通常の有機合成反応の後処理方法に従って処理した後、精製してあるいは精製せずに供することができる。
すなわち、例えば、反応系から遊離したものを精製せずに、あるいは再結晶、カラムクロマトグラフィー(例えば、ゲルパーメーションクロマトグラフィ(SEPHADEXTMLH−20:Pharmacia製)等にて精製する操作を単独、あるいは組み合わせて行ない、供することができる。
また、反応終了後、反応溶媒を留去して、あるいは留去せずに水、又は氷にあけ、中和してあるいは中和せずに遊離したものを精製せずに、あるいは再結晶、カラムクロマトグラフィー等にて精製する操作を単独に、あるいは組み合わせて行なった後、供することもできる。
また、反応終了後、反応溶媒を留去して、あるいは留去せずに水、又は氷にあけ中和して、あるいは中和せずに、有機溶媒/水溶液にて抽出したものを精製せずに、あるいは晶析、カラムクロマトグラフィーにて精製する操作を単独あるいは組み合わせて行なった後、供することもできる。
以上をまとめると、本発明のフタロシアニン化合物の製造方法は、下記(イ)〜(チ)の組み合わせからなる製造方法が好ましい。
(イ)本発明で使用する酸としては、特に制限されるものではないが、25℃における水溶液中の酸または共役酸の解離指数pKaが7.0以下のものであれば有機化合物および無機化合物のいずれでも好ましい。中でもpKa0.0〜7.0の酸である有機酸が好ましく、カルボキシル基を有する有機酸が最も好ましい。有機酸の中でも、脂肪族系一塩基性有機酸が好ましくギ酸、酢酸、プロピオン酸が最も好ましい。
(ロ)塩基としてはアルカリ金属からなる無機塩基あるいは有機塩基を使用することができ、無機塩基としては、例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等の無機塩基を、有機塩基としては、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等を使用することができる他に酢酸リチウム、酢酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩等の有機酸塩を使用することもできる。
(ハ)反応条件としては、反応温度30〜220℃、好ましくは40〜200℃、特に好ましくは50〜180℃である。
(ニ)導入可能な金属または金属酸化物としては、VO、TiO、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、Cd、Mg等を挙げることができ、これらの中でもNi、Cu、Znが好ましい。また、塩の状態として特に好ましいものは塩化物、酢酸塩である。使用量としては、上記式で表されるジカルボニトリル誘導体(一般式a)および/または1,3−ジイミノイソインドリン誘導体(一般式b)の使用量に対して、0.1〜3倍当量が特に好ましい。
(ホ)溶媒として最も好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールであり、使用量として特に好ましい量は上記式で表されるジカルボニトリル誘導体(一般式a)および/または1,3−ジイミノイソインドリン誘導体(一般式b)の1〜5質量倍である。
(へ)反応時間としては6時間未満が特に好ましい。
以下に、本発明のフタロシアニン化合物の構造と性能の相関について、(1)画像形成用インクに用いるフタロシアニン化合物の酸化電位、(2)置換フタロシアニン化合物の構造的な特徴について;(1)と(2)に分けて説明する。
(1)フタロシアニン化合物の酸化電位:
本発明のフタロシアニン化合物の製造方法において、前記、溶解性基や置換基として電子吸引性の大きな置換基を選択することで、得られるフタロシアニン染料の酸化電位を高く(貴に)調整でき、オゾンや一重項酸素などの活性ガス(例えば酸化性ガス)に対して反応性をより抑制することが可能となり、活性ガスに対して耐性を持つ色素を得ることができる。
本発明のフタロシアニン化合物では、いずれも酸化電位が1.0V(vs SCE)よりも貴であり、この物性値を有することが形成画像の堅牢性向上に非常に重要であることが見出された。
すなわち、本発明の目的の一つである形成画像の保存性改良(耐光性・耐オゾンガス性等)を達成する手段として極めて重要な構造上の特徴(フタロシアニン染料混合物の酸化電位を支配する)である。
本明細書において、オゾンガス耐性と称しているのは、オゾンガスに対する耐性を代表させて称しているのであって、オゾンガス以外の酸化性雰囲気に対する耐性をも含んでいる。すなわち、上記の本発明に係る一般式(I)で示されるフタロシアニン化合物は、自動車の排気ガスに多い窒素酸化物、火力発電所や工場の排気に多い硫黄酸化物、これらが太陽光によって光化学的にラジカル連鎖反応して生じたオゾンガスや酸素−窒素や酸素−水素ラジカルに富む光化学スモッグ、美容院などの特殊な薬液を使用する場所から発生する過酸化水素ラジカルなど、一般環境中に存在する酸化性ガスに対する耐性が強いことが特長である。したがって、屋外広告や、鉄道施設内の案内など画像の酸化劣化が画像寿命を制約している場合には、本発明に係るフタロシアニン化合物を画像形成材料として用いることによって、酸化性雰囲気耐性、すなわち、いわゆるオゾンガス耐性を向上させることができる。
(2)フタロシアニン化合物の、インク経時安定性:フタロシアニン化合物の色相、堅牢性、結晶性、保存安定性について検討したところ、少なくとも一種の特定の置換基を特定の置換位置に導入{例えば、フタロシアニン母核の4つの芳香環中の少なくとも1個所にスルホニル基を導入}し、且つ、少なくとも一種の特定の置換基{例えば、フタロシアニン母核の4つの環中の少なくとも1つが含窒素6ヘテロ環}が混入したフタロシアニン化合物を用いることで、上記課題を解決でき、良好な色相、画像堅牢性とインク液長期経時安定性の両立を可能なことを見出した。
詳しくは、[1]良好な分光吸収特性(ジカルボニトリル誘導体(一般式a)および/または1,3−ジイミノイソインドリン誘導体(一般式b)を主原料に使用する);[2]高い画像堅牢性(高酸化電位:スルホニル基、スルファモイル基、含窒素へテロ環導入により、例えば、フタロシアニン化合物と親電子試薬であるオゾンガスとの酸化反応による褪色を抑制する);[3]インク組成物への高い溶解性;[4]良好なインク液経時安定性付与;を有する本発明のフタロシアニン化合物が、特定の溶解基を特定の置換位置に特定の数だけの導入(少なくとも1種以上のジカルボニトリル誘導体(一般式a)および/または1,3−ジイミノイソインドリン誘導体(一般式b)の最適な混合比率による)により達成したものと考えられる。
これらの特定の置換基による構造上の特徴によってもたらされる色相・光堅牢性・オゾンガス耐性等の向上効果並びインク(着色組成物)に対する要求特性の付与は、前記先行技術から全く予想することができないものである。
以下、一般式(III)で表される本発明のフタロシアニン化合物の具体例(染料101〜125)を挙げるが、本発明は、これら具体例に限定されるわけではない。
表中、フタロシアニン母核の4つの環(A)(B)(C)(D)の例は、本発明のフタロシアニン化合物合成の際、縮合反応時のジカルボニトリル誘導体(一般式a)および/または1,3−ジイミノイソインドリン誘導体(一般式b)の構造の異なる仕込み比(eq./eq.)から由来するものであり、得られたフタロシアニン化合物の混合比の平均値を表す。
従来フタロシアニン化合物は、特定の置換基の導入位置(場合によっては導入数)が異なる異性体の混合物として用いられており、本発明の化合物(一般式(I)〜(III)で表される化合物:特定の置換基を特定の位置に特定の数選択的に導入された特定の構造のフタロシアニン化合物)は、従来分離して認識されていない特定の構造の新規な化合物であり、その特定の構造が及ぼす性能は、高機能性を付与したインクジェット用染料及び該染料合成中間体として極めて有用である。
更に詳しくは、本発明のフタロシアニン化合物(混合物)の用途としては、画像、特にカラー画像を形成するための材料が挙げられ、具体的には、インクジェット記録用記録材料(インク)を初めとして、感熱転写型画像記録材料、感圧記録材料、電子写真方式を用いる記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等であり、好ましくはインクジェット記録用記録材料(インク)、感熱転写型画像記録材料、電子写真方式を用いる記録材料であり、更に好ましくはインクジェット記録用記録材料(インク)である。また、米国特許4808501号、特開平6−35182号公報などに記載されているLCDやCCDなどの固体撮像素子で用いられているカラーフィルター、各種繊維の染色のための染色液にも適用できる。本発明のフタロシアニン化合物は、その用途に適した溶解性、熱移動性などの物性を、置換基により調整して使用することができる。
[インクジェット記録用インク]
次に本発明のインクジェット記録用インクについて説明する。
インクジェット記録用インクは、親油性媒体や水性媒体中に前記フタロシアニン化合物(混合物)を溶解及び/又は分散させることによって作製することができる。好ましくは、水性媒体を用いたインクである。
必要に応じてその他の添加剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有される。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、水溶性インクの場合にはインク液に直接添加する。油溶性染料を分散物の形で用いる場合には、染料分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相または水相に添加してもよい。
乾燥防止剤はインクジェット記録方式に用いるノズルのインク噴射口において該インクジェット用インクが乾燥することによる目詰まりを防止する目的で好適に使用される。
記乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。具体的な例としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチルー2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体が挙げられる。これらのうちグリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールがより好ましい。また上記の乾燥防止剤は単独で用いても良いし2種以上併用しても良い。これらの乾燥防止剤はインク中に10〜50質量%含有することが好ましい。
浸透促進剤は、インクジェット用インクを紙により良く浸透させる目的で好適に使用される。浸透促進剤としてはエタノール、イソプロパノール、ブタノール,ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を用いることができる。これらはインク中に5〜30質量%含有すれば通常充分な効果があり、印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲で使用するのが好ましい。
紫外線吸収剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。紫外線吸収剤としては特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号明細書等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。前記褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。より具体的にはリサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンおよびその塩等が挙げられる。これらはインク中に0.02〜1.00質量%使用するのが好ましい。
pH調整剤としては前記中和剤(有機塩基、無機アルカリ)を用いることができる。前記pH調整剤はインクジェット記録用インクの保存安定性を向上させる目的で、該インクジェット記録用インクがpH6〜10と夏用に添加するのが好ましく、pH7〜10となるように添加するのがより好ましい。
表面張力調整剤としてはノニオン、カチオンあるいはアニオン界面活性剤が挙げられる。なお、本発明のインクジェット用インクの表面張力は25〜70mN/mが好ましい。さらに25〜60mN/mが好ましい。また本発明のインクジェット記録用インクの粘度は30mPa・s以下が好ましい。更に20mPa・s以下に調整することがより好ましい。界面活性剤の例としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。更に、特開昭59−157,636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。
消泡剤としては、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も必要に応じて使用することができる。
本発明のフタロシアニン化合物を水性媒体に分散させる場合は、特開平11-286637号、特願平2000-78491号、同2000-80259号、同2000-62370号等の各公報に記載されるように、色素と油溶性ポリマーとを含有する着色微粒子を水性媒体に分散したり、特願平2000-78454号、同2000-78491号、同2000-203856号,同2000-203857号の各明細書のように高沸点有機溶媒に溶解した本発明の化合物を水性媒体中に分散することが好ましい。本発明の化合物を水性媒体に分散させる場合の具体的な方法,使用する油溶性ポリマー、高沸点有機溶剤、添加剤及びそれらの使用量は、上記特許公報等に記載されたものを好ましく使用することができる。あるいは、前記フタロシアニン化合物を固体のまま微粒子状態に分散してもよい。分散時には、分散剤や界面活性剤を使用することができる。分散装置としては、簡単なスターラーやインペラー攪拌方式、インライン攪拌方式、ミル方式(例えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル等)、超音波方式、高圧乳化分散方式(高圧ホモジナイザー;具体的な市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、DeBEE2000等)を使用することができる。上記のインクジェット記録用インクの調製方法については、先述の特許以外にも特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号、特開平11−286637号、特願2000−87539号の各公報に詳細が記載されていて、本発明のインクジェット記録用インクの調製にも利用できる。
水性媒体は、水を主成分とし、所望により、水混和性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。前記水混和性有機溶剤の例には、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。尚、前記水混和性有機溶剤は、二種類以上を併用してもよい。
本発明のインクジェット記録用インク100質量部中は、前記フタロシアニン化合物を0.2質量部以上10質量部以下含有するのが好ましい。また、本発明のインクジェット用インクには、前記フタロシアニン化合物とともに、他の色素を併用してもよい。2種類以上の色素を併用する場合は、色素の含有量の合計が前記範囲となっているのが好ましい。
本発明のインクジェット記録用インクは、粘度が30mPa・s以下であるのが好ましい。また、その表面張力は25mN/m以上70mN/m以下であるのが好ましい。粘度及び表面張力は、種々の添加剤、例えば、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、防黴剤、防錆剤、分散剤及び界面活性剤を添加することによって、調整できる。
本発明のインクジェット記録用インクは、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー色調インクを用いることができ、また、色調を整えるために、更にブラック色調インクを用いてもよい。
適用できるイエロー染料としては、任意のものを使用することが出来る。例えばカップリング成分(以降カプラー成分と呼ぶ)としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロンやピリドン等のようなヘテロ環類、開鎖型活性メチレン化合物類、などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアゾメチン染料;例えばベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料;例えばナフトキノン染料、アントラキノン染料等のようなキノン系染料などがあり、これ以外の染料種としてはキノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料等を挙げることができる。
適用できるマゼンタ染料としては、任意のものを使用することが出来る。例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分としてピラゾロン類、ピラゾロトリアゾール類などを有するアゾメチン染料;例えばアリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料、シアニン染料、オキソノール染料などのようなメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料などのようなカルボニウム染料、例えばナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドンなどのようなキノン染料、例えばジオキサジン染料等のような縮合多環染料等を挙げることができる。
適用できるシアン染料としては、任意のものを使用する事が出来る。例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、ピロロトリアゾールのようなヘテロ環類などを有するアゾメチン染料;シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料などのようなポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料などのようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料;アントラキノン染料;インジゴ・チオインジゴ染料などを挙げることができる。
前記の各染料は、クロモフォアの一部が解離して初めてイエロー、マゼンタ、シアンの各色を呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、さらにはそれらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよい。
適用できる黒色材としては、ジスアゾ、トリスアゾ、テトラアゾ染料のほか、カーボンブラックの分散体を挙げることができる。
[インクジェット記録方法]
本発明のインクジェット記録方法は、前記インクジェット記録用インクにエネルギーを供与して、公知の受像材料、即ち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−337947号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載されているインクジェット専用紙、フイルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等に画像を形成する。
画像を形成する際に、光沢性や耐水性を与えたり耐候性を改善する目的からポリマー微粒子分散物(ポリマーラテックスともいう)を併用してもよい。ポリマーラテックスを受像材料に付与する時期については、着色剤を付与する前であっても,後であっても、また同時であってもよく、したがって添加する場所も受像紙中であっても、インク中であってもよく、あるいはポリマーラテックス単独の液状物として使用しても良い。具体的には、特願2000−363090号、同2000−315231号、同2000−354380号、同2000−343944号、同2000−268952号、同2000−299465号、同2000−297365号等の各明細書に記載された方法を好ましく用いることが出きる。
以下に、本発明のインクを用いてインクジェットプリントをするのに用いられる記録紙及び記録フィルムについて説明する。
記録紙及び記録フィルムにおける支持体は、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等からなり、必要に応じて従来公知の顔料、バインダー、サイズ剤、定着剤、カチオン剤、紙力増強剤等の添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機等の各種装置で製造されたもの等が使用可能である。これらの支持体の他に合成紙、プラスチックフィルムシートのいずれであってもよく、支持体の厚みは10〜250μm、坪量は10〜250g/m2が望ましい。
支持体には、そのままインク受容層及びバックコート層を設けてもよいし、デンプン、ポリビニルアルコール等でサイズプレスやアンカーコート層を設けた後、インク受容層及びバックコー卜層を設けてもよい。更に支持体には、マシンカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置により平坦化処理を行ってもよい。本発明では支持体として、両面をポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブテン及びそれらのコポリマー)でラミネートした紙及びプラスチックフィルムがより好ましく用いられる。
ポリオレフィン中に、白色顔料(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛)又は色味付け染料(例えば、コバルトブルー、群青、酸化ネオジウム)を添加することが好ましい。
支持体上に設けられるインク受容層には、顔料や水性バインダーが含有される。顔料としては、白色顔料が好ましく、白色顔料としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、合成非晶質シリカ、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン、硫化亜鉛、炭酸亜鉛等の白色無機顔料、スチレン系ピグメント、アクリル系ピグメント、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。インク受容層に含有される白色顔料としては、多孔性無機顔料が好ましく、特に細孔面積が大きい合成非晶質シリカ等が好適である。合成非晶質シリカは、乾式製造法によって得られる無水珪酸及び湿式製造法によって得られる含水珪酸のいずれも使用可能であるが、特に含水珪酸を使用することが望ましい。
インク受容層に含有される水性バインダーとしては、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、デンプン、カチオン化デンプン、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド誘導体等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。これらの水性バインダーは単独又は2種以上併用して用いることができる。本発明においては、これらの中でも特にポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコールが顔料に対する付着性、インク受容層の耐剥離性の点で好適である。
インク受容層は、顔料及び水性結着剤の他に媒染剤、耐水化剤、耐光性向上剤、界面活性剤、その他の添加剤を含有することができる。
インク受容層中に添加する媒染剤は、不動化されていることが好ましい。そのためには、ポリマー媒染剤が好ましく用いられる。
ポリマー媒染剤については、特開昭48−28325号、同54−74430号、同54−124726号、同55−22766号、同55−142339号、同60−23850号、同60−23851号、同60−23852号、同60−23853号、同60−57836号、同60−60643号、同60−118834号、同60−122940号、同60−122941号、同60−122942号、同60−235134号、特開平1−161236号の各公報、米国特許2484430号、同2548564号、同3148061号、同3309690号、同4115124号、同4124386号、同4193800号、同4273853号、同4282305号、同4450224号の各明細書に記載がある。特開平1−161236号公報の212〜215頁に記載のポリマー媒染剤を含有する受像材料が特に好ましい。同公報記載のポリマー媒染剤を用いると、優れた画質の画像が得られ、かつ画像の耐光性が改善される。
耐水化剤は、画像の耐水化に有効であり、これらの耐水化剤としては、特にカチオン樹脂が望ましい。このようなカチオン樹脂としては、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン、ポリエチレンイミン、ポリアミンスルホン、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、カチオンポリアクリルアミド、コロイダルシリカ等が挙げられ、これらのカチオン樹脂の中で特にポリアミドポリアミンエピクロルヒドリンが好適である。これらのカチオン樹脂の含有量は、インク受容層の全固形分に対して1〜15質量%が好ましく、特に3〜10質量%であることが好ましい。
耐光性向上剤としては、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、ヒンダードアミン系酸化防止剤、ベンゾフェノン等のベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの中で特に硫酸亜鉛が好適である。
界面活性剤は、塗布助剤、剥離性改良剤、スベリ性改良剤あるいは帯電防止剤として機能する。界面活性剤については、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載がある。界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。有機フルオロ化合物の例には、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例えば、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例えば、四フッ化エチレン樹脂)が含まれる。有機フルオロ化合物については、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭61−20994号、同62−135826号の各公報に記載がある。その他のインク受容層に添加される添加剤としては、顔料分散剤、増粘剤、消泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、pH調整剤、マット剤、硬膜剤等が挙げられる。なお、インク受容層は1層でも2層でもよい。
記録紙及び記録フィルムには、バックコート層を設けることもでき、この層に添加可能な成分としては、白色顔料、水性バインダー、その他の成分が挙げられる。バックコート層に含有される白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬べーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント,ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。
バックコート層に含有される水性バインダーとしては、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、デンプン、カチオン化デンプン、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。バックコート層に含有されるその他の成分としては、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等が挙げられる。
インクジェット記録紙及び記録フィルムの構成層(バックコート層を含む)には、ポリマーラテックスを添加してもよい。ポリマーラテックスは、寸度安定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止のような膜物性改良の目的で使用される。ポリマーラテックスについては、特開昭62−245258号、同62−136648号、同62−110066号の各公報に記載がある。ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマーラテックスを媒染剤を含む層に添加すると、層のひび割れやカールを防止することができる。また、ガラス転移温度が高いポリマーラテックスをバックコート層に添加しても、カールを防止することができる。
本発明のインクは、インクジェットの記録方式に制限はなく、公知の方式、例えば静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して、放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式等に用いられる。インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
[実施例]
(合成例)
以下、実施例に本発明のフタロシアニン化合物(混合物)の合成法を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
本発明の代表的なフタロシアニン化合物(混合物)は、例えば下記合成ル−トから誘導することができる。以下の実施例において、λmaxは吸収極大波長であり、εmaxは吸収極大波長におけるモル吸光係数を意味する。
以下の実施例(合成例)で合成した本発明のフタロシアニン化合物及び比較化合物1〜3の酸化電位の値は、以下の条件で測定した。0.1moldm-3の過塩素酸テトラプロピルアンモニウムを支持電解質として含むN,N−ジメチルホルムアミド中(前記化合物の濃度は0.001moldm-3)でグラファイト電極を使用し、POLAROGRAPHIC ANALYZER P−1100(YANACO製)を用いて、直流ポーラログラフィーにより測定した。測定したフタロシアニン化合物の酸化電位の値(vs SCE)は、以下の表−6中に示す。
合成例1:化合物1の合成
窒素気流下、4−ニトロフタルイミド(東京化成品)288.2gを1442mLのDMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解し、内温20℃で攪拌しているところへ、333gの3−メルカプト−プロパン−スルホン酸ナトリウム(85%)を添加した。続いて、内温50℃で攪拌しているところへ、173.8gの無水炭酸ナトリウムを徐々に加えた。反応液を攪拌しながら、70℃まで加温し、同温度で1時間撹拌した。40℃まで冷却した後、反応液をヌッチェでろ過し、ろ液を2885mLのメタノールにあけて晶析し、引き続き室温で30分間撹拌して、更にイソプロパノール1442mLを注入し、撹拌しながら内温10℃まで冷却した。析出した粗結晶をヌッチェでろ過し、メタノール962mLで洗浄し、乾燥して化合物1の粗結晶を、503.4gを得た。1H-NMR(DMSO-d6),δ値TMS基準:1.89〜1.99(2H,m);2.51〜2.65(2H,t);3.24〜3.50(2H,t);7.64〜7.76(3H,m);11.29〜11.41(1H,s)
合成例2:化合物2の合成
485.0gの化合物1を48.5mLの酢酸と1500mLのH2Oの混合液に添加し、内温25℃で攪拌しているところへ、15gNa2WO4・2H2Oを添加した後、内温45℃まで昇温し溶解した。引き続き、374mLの過酸化水素水(30%)を発熱に注意しながら徐々に滴下した。内温50℃で60分間撹拌した後に、内温50℃の反応液に亜硫酸ナトリウム88.2g/400mLの水溶液を滴下し、同温度で532mLのイソプロパノールを滴下した後、10℃まで冷却した後、引き続き同温度にて30分間撹拌した後に、析出した結晶をヌッチェでろ過し、525mLのイソプロパノールで洗浄した後、乾燥して、462.6gの化合物2を得た。1H-NMR(DMSO- d6),δ値TMS基準:1.25〜1.89(2H,m);2.48〜2.52(2H,t);3.59〜3.65(2H,t);8.04〜8.11(1H,d);8.20(1H,s)8.29〜8.33(1H,d);11.59〜11.90(1H,s)
合成例3:化合物3の合成
300gの化合物2を900mLのDMF(ジメチルホルムアミド)に添加し、内温20℃で攪拌しているところへ、NH3ガスを90分間吹き込み、引き続き同温度で3時間撹拌した。次に、反応液を内温20℃以下で減圧下(<400mmHg)撹拌しながら、溶存している残存NH3ガスを留去した。(化合物2+NH3⇒化合物3の反応液)
合成例4:化合物4の合成
600mLのDMF(ジメチルホルムアミド)に内温5℃で、315.1mLのPOCl3を内温15℃以下を保ちながら滴下した。引き続き、POCl3/DMF溶液中に、内温10℃以下を保ちながら上記合成例3(化合物2+NH3⇒化合物3)の反応液を滴下し、内温17℃で引き続き1時間撹拌した。次に、4500mLのH2Oへ反応混合物を内温35℃以下を保ちながら滴下して、化合物4を晶析させた。引き続く、内温30℃で30分撹拌した後、析出した粗結晶をヌッチェでろ過し、4200mLのH2Oで洗浄後、2700mLのイソプロパノールで洗浄後風乾し、234.6gの化合物を得た。1H-NMR(DMSO-d6),δ値TMS基準:1.81〜1.91(2H,m);2.49〜2.54(2H,t);3.62〜3.74(2H,t);8.07〜8.16(1H,d);8.36〜8.49(1H,d);8.66〜8.67(2H,s)
合成例5:化合物5の合成
100gの化合物4を400mLのアセトンに内温35℃で添加して溶解し、引き続き45mLのH2O注入して、撹拌しながら内温20℃まで冷却した。次に、49mLのピリジンを内温が40℃を超えない速度で滴下し、引き続き内温を55℃まで昇温して、同温度で2時間撹拌した。次に、同温度で34gの塩化リチウム/750mLのイソプロパノール溶液を滴下し、引き続き同温度で1時間撹拌した後、室温まで徐冷した。析出した結晶をヌッチェでろ過し、1000mLのイソプロパノールで洗浄し、乾燥後86.5gの化合物5を得た。1H-NMR(DMSO-d6),δ値TMS基準:1.81〜1.91(2H,m);2.29〜2.54(2H,t);3.62〜3.672H,t);8.07〜8.16(1H,d);8.30〜8.36(1H,d);8.66(1H,s)
化合物101の合成
19.22gの化合物5と2.58gのピリジン−2,3−ジカルボニトリル(東京化成品)を2.28mLの酢酸と135.22mLのジエチレングリコール混合溶液に内温102℃で溶解させた。引き続き、内温84℃に冷却後、5.16gの酢酸リチウム、2.69gの塩化第二銅(無水)を添加し、内温を90℃まで加温した。同温度で4時間攪拌後、内温91℃まで昇温し、59.42mLの濃塩酸を滴下した。続いて、同温度で30分間撹拌した後、内温を70℃まで冷却し、3.84gの塩化リチウムを加え、同温度で540mLのイソプロパノールを滴下し晶析した。次に、内温を23℃まで冷却後、晶析物をろ過し、1000mLのイソプロパノールで洗浄を行った。乾燥した16.0gの粗結晶を20mLのメタノールと60mLのイオン交換水の混合液に溶解後、50℃で2.5N−LiOHaq.をpH9.7になるまで添加した。引き続き、同温度で水溶液をゴミ取りろ過し、ろ液を内温90℃まで昇温し、同温度で30分攪拌後、240mLのイソプロパノールを滴下して晶析した。懸濁液を室温まで冷却後、析出物を吸引ろ過し、960mLのイソプロパノールで洗浄を行い、80℃で30時間乾燥した。収量13.54g。溶液吸収:λmax=626nm,ε=52300(H2O)。
化合物102の合成
19.22gの化合物5と2.58gの3,4−ピリジンジカルボニトリル(Aldrich品)を2.28mLの酢酸と135.22mLのジエチレングリコール混合溶液に内温105℃で溶解させた。引き続き、内温84℃に冷却後、5.16gの酢酸リチウム、2.69gの塩化第二銅(無水)を添加し、内温を90℃まで加温した。同温度で4時間攪拌後、内温91℃まで昇温し、59.42mLの濃塩酸を滴下した。続いて、同温度で30分間撹拌した後、内温を70℃まで冷却し、3.84gの塩化リチウムを加え、同温度で541mLのイソプロパノールを滴下し晶析した。次に、内温を23℃まで冷却後、晶析物をろ過し、1082mLのイソプロパノールで洗浄を行った。乾燥した18.0gの粗結晶を22.5mLのメタノールと67.5mLのイオン交換水の混合液に溶解後、50℃で2.5N−LiOHaq.をpH9.7になるまで添加した。引き続き、同温度で水溶液をゴミ取りろ過し、ろ液を内温90℃まで昇温し、同温度で30分攪拌後、270mLのイソプロパノールを滴下して晶析した。懸濁液を室温まで冷却後、析出物を吸引ろ過し、1080mLのイソプロパノールで洗浄を行い、80℃で30時間乾燥した。収量14.91g。溶液吸収:λmax=625nm,ε=56336(H2O)。
化合物103の合成
19.22gの化合物5と2.60gの2,3−ピラジン−ジカルボニトリル(Aldrich品)を2.28mLの酢酸と135.22mLのジエチレングリコール混合溶液に内温110℃で溶解させた。引き続き、内温83℃に冷却後、5.16gの酢酸リチウム、2.69gの塩化第二銅(無水)を添加し、内温を90℃まで加温した。同温度で4時間攪拌後、内温91℃まで昇温し、59.42mLの濃塩酸を滴下した。続いて、同温度で30分間撹拌した後、内温を70℃まで冷却し、3.84gの塩化リチウムを加え、同温度で541mLのイソプロパノールを滴下し晶析した。次に、内温を23℃まで冷却後、晶析物をろ過し、1082mLのイソプロパノールで洗浄を行った。乾燥した14.0gの粗結晶を17.5mLのメタノールと52.5mLのイオン交換水の混合液に溶解後、50℃で2.5N−LiOHaq.をpH9.7になるまで添加した。引き続き、同温度で水溶液をゴミ取りろ過し、ろ液を内温90℃まで昇温し、同温度で30分攪拌後、210mLのイソプロパノールを滴下して晶析した。懸濁液を室温まで冷却後、析出物を吸引ろ過し、840mLのイソプロパノールで洗浄を行い、80℃で30時間乾燥した。収量13.54g。溶液吸収:λmax=623nm,ε=52000(H2O)。
[比較化合物の合成]比較化合物1の合成
冷却管の付いた三つ口フラスコに、クロロスルホン酸150mLを加え、攪拌しながら引き続き20℃を超えない温度を保ちながら25.0g の銅フタロシアニンをゆっくり分割添加した。(発熱するため冷却を同時に実施した)次いでこの混合物を100℃まで、1時間かけて加温し、更に135℃まで1時間かけて加温を続け、ガスの発生が終了するまで同温度で5時間撹拌した。その後この反応液を10℃まで冷却した後、次いで、反応液を1500mLの飽和食塩水と500gの氷との混合物にゆっくり添加して青色結晶の目的物を析出させた。懸濁液内の温度は、氷を補足的に添加することによって0〜5℃に保った。更に室温で1時間攪拌した後に、ヌッチェでろ過し、1000mLの冷飽和食塩水で洗浄した。得られた固体を700mLの0.1M水酸化ナトリウム水溶液に溶解させた。溶液を攪拌しながら80℃まで加温し、同温度で1時間撹拌した。水溶液を熱時ゴミ取りろ過した後、ろ液を攪拌しながら塩化ナトリウム270mLを徐々に添加した塩析した。この塩析液を攪拌しながら80℃まで加温し、同温度で1時間撹拌した。室温まで冷却した後、析出した結晶をろ過し、150mLの20%食塩水で洗浄した。引き続き、80%エタノール200mLに得られた結晶を加え、1時間還流下撹拌し、室温まで冷却した後、析出した結晶をろ過し、更に、60%エタノール水溶液200mLに得られた結晶を加え、1時間還流撹拌し、室温まで冷却した後、析出した結晶をろ過し、エタノ−ル300mLで洗浄後乾燥して、34.2gの下記比較化合物1を青色結晶として得た。λmax : 624.8nm;εmax=3.40×104;λmax : 663.8nm;εmax=3.57×104(水溶液中)。得られた化合物を分析した結果、スルホ基置換数比、約4個:3個:2個=1:3:1の混合物(ESI−MS)}であることが確認できた。
比較化合物2の合成
冷却管の付いた三つ口フラスコに、ニトロベンゼン100mL加え、180℃まで1時間かけて昇温し、そこに4−スルホフタル酸一ナトリウム塩43.2g、塩化アンモニウム4.7g、尿素58g、モリブデン酸アンモニウム0.68g、塩化銅(II)6.93gを加え、同温度で6時間撹拌した。反応液を40℃まで冷却したのち、50℃の加温したメタノ−ル200mLを注入して、生成した固形物を粉砕してながら室温で1時間攪拌した。得られた分散物をヌッチェでろ過し、400mLのメタノールで洗浄した。続いて得られた固体を塩化ナトリウムで飽和した1000mLの1M塩酸水溶液を加え、煮沸して未反応の銅塩を溶かし出した。冷却後沈殿した固体をヌッチェでろ過し、100mLの1M塩酸飽和食塩水溶液で洗浄した。得られた固体を700mLの0.1M水酸化ナトリウム水溶液に溶解させた。溶液を攪拌しながら80℃まで加温し、同温度で1時間撹拌した。水溶液を熱時ゴミ取りろ過した後、ろ液を攪拌しながら塩化ナトリウム270mLを徐々に添加した塩析した。この塩析液を攪拌しながら80℃まで加温し、同温度で1時間撹拌した。室温まで冷却した後、析出した結晶をろ過し、150mLの20%食塩水で洗浄した。引き続き、80%エタノール200mLに得られた結晶を加え、1時間還流下撹拌し、室温まで冷却した後、析出した結晶をろ過し、更に、60%エタノール水溶液200mLに得られた結晶を加え、1時間還流撹拌し、室温まで冷却した後、析出した結晶をろ過し、エタノ−ル300mLで洗浄後乾燥して、29.25gの青色結晶として得た。λmax : 629.9nm;εmax=6.11×104(水溶液中)。得られた化合物を分析(質量分析法:ESI−MS、元素分析、中和滴定等種々の機器解析方法により測定)した結果、下記構造のスルホ基を1個、銅フタロシアニン一分子中スルホ基を合計4個有する}であることが確認できた。
下記の成分に脱イオン水を加え1リッターとした後、30〜40℃で加熱しながら1時間撹拌した。その後KOH 10mol/LにてpH=9に調製し、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過しシアン用インク液を調製した。
インク液Aの組成:
本発明のフタロシアニン染料混合物(例示化合物101) 6.80g
ジエチレングリコール 10.65g
グリセリン 14.70g
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 12.70g
トリエタノールアミン 0.65g
オルフィンE1010 0.9g
フタロシアニン染料混合物を、下記表−6に示すように変更した以外は、インク液Aの調製と同様にして、インク液B〜E、比較用のインク液として、以下の化合物を用いてインク液101,102,103を調整した。
染料を変更する場合は、添加量がインク液Aに用いた染料に対して等モルとなるように使用した。染料を2種以上併用する場合は等モルずつ使用した。
(画像記録及び評価)
以上の各実施例(インク液A〜E)及び比較例(インク液101〜103)のインクジェット用インクについて、下記評価を行った。その結果を表−6に示した。
なお、表−6において、「色調」、「紙依存性」、「耐水性」及び「耐光性」は、各インクジェット用インクを、インクジェットプリンター(EPSON(株)社製;PM−700C)でフォト光沢紙(EPSON社製PM写真紙< 光沢>(KA420PSK、EPSON)に画像を記録した後で評価したものである。
<色調>
フォト光沢紙に形成した画像を、390〜730nm領域のインターバル10nmによる反射スペクトルをGRETAG SPM100−II(GRETAG社製)を用いて測色し、これをCIE(国際照明委員会)L*a*b*色空間系に基づいて、a*、b*を算出した。
JNC(社団法人日本印刷産業機械工業会)のJAPAN Colour(日本印刷産業連合会のメンバー21社から提供された、各社の校正刷りのベタパッチを測色し、その平均値に対して色差(ΔE)が最小になるように、Japan Colour Ink SF−90及びJapan Paperを使用して印刷したときの色)の標準シアンのカラーサンプルと比較してシアンとして好ましい色調を下記のように定義した。L*: 53.6±0.2の範囲において、
A: a*(−35.9±6の範囲)、及び、b*(−50.4±6の範囲
B: a*、b*の一方のみ(上記○で定義した好ましい領域)
C: a*、b*のいずれも(上記○で定義した好ましい領域外)
ここで、参考に用いた JAPAN Colorの標準シアンのカラーサンプルの測色値を以下に示す。L*: 53.6±0.2a*:−37.4±0.2b*:−50.2±0.2ΔE: 0.4(0.1〜0.7)(1)印刷機:マンローランドR−704, インキ:Japan Colour SF−90,用紙:特菱アート(2)測色 :測色計;X−rite 938, 0/45,D50,2deg.,black backing
<紙依存性>
フォト光沢紙に形成した画像と、別途にプロフェショナルフォトペーパーPR101(CANON社製;QBJPRA4)に形成した画像との色調を比較し、両画像間の差が小さい場合をA(良好)、両画像間の差が大きい場合をB(不良)として、二段階で評価した。
<耐水性>
画像を形成したフォト光沢紙を、1時間室温乾燥した後、10秒間脱イオン水に浸漬し、室温にて自然乾燥させ、滲みを観察した。滲みが無いものをA、滲みが僅かに生じたものをB、滲みが多いものをCとして、三段階で評価した。
<耐光性>
前記画像を形成したフォト光沢紙に、ウェザーメーター(アトラスC.I65)を用いて、キセノン光(85000lx)を14日間照射し、キセノン照射前後の画像濃度を反射濃度計(X-Rite310TR)を用いて測定し、色素残存率として評価した。なお、前記反射濃度は、1、1.5及び2.0の3点で測定した。
何れの濃度でも色素残存率が70%以上の場合をA、1又は2点が70%未満をB、全ての濃度で70%未満の場合をCとして、三段階で評価した。
<暗熱保存性>
前記画像を形成したフォト光沢紙を、80℃−15%RHの条件下で14日間試料を保存し、保存前後の画像濃度を反射濃度計(X-Rite310TR)を用いて測定し、色素残存率として評価した。色素残存率について反射濃度が1,1.5,2の3点にて評価し、いずれの濃度でも色素残存率が90%以上の場合をA、2点が90%未満の場合をB、全ての濃度で90%未満の場合をCとした。
<耐オゾンガス性>
シーメンス型オゾナイザーの二重ガラス管内に乾燥空気を通しながら、5kV交流電圧を印加し、これを用いてオゾンガス濃度が0.5±0.1ppm、室温、暗所に設定されたボックス内に、前記画像を形成したフォト光沢紙を14日間放置し、オゾンガス下放置前後の画像濃度を反射濃度計(X-Rite310TR)を用いて測定し、色素残存率として評価した。なお、前記反射濃度は、1、1.5及び2.0の3点で測定した。ボックス内のオゾンガス濃度は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01)を用いて設定した。
何れの濃度でも色素残存率が70%以上の場合をA、1又は2点が70%未満をB、全ての濃度で70%未満の場合をCとして、三段階で評価した。
<インク保存安定性>
インクについて保存安定性および目詰まり回復性の試験を実施することで染料の溶解性を評価した。インク保存安定性は、各インク液をポリエチレン製容器に入れ、−15℃条件下24時間保存後、引き続き、60℃の条件下で24時間保存する;−15℃(24hr.)⇒60℃(24hr.)の繰り返しを10サイクル繰り返して、保存前後の不溶物析出の有無を調べ、下記基準で評価した。
[判定基準]
経時後の記録液を試験管にとり目視で観察した。
A:不溶分が全く認められない状態である。
B:不溶分が少量認められる状態である。
C:不溶分が目立ち、実用レベルでない状態である。
<目詰まり回復性>
プリンターに各インクを充填し、キャップをしない状態で40℃の環境に1ヶ月間放置し、放置後、全ノズルが正常吐出するまでに要するクリーニングの動作回数から、下記基準で評価した。
[判定基準]A;クリーニング2回以内で復帰する。B;クリーニング3〜5回で復帰する。C;クリーニング6回以上で復帰する。NG;復帰しない。
<溶解度>
蒸留水5mlに対して、染料を混合させ、マグネティックスターラーで30分間攪拌した。攪拌後、染料が溶媒に完溶したかどうかを確認した。評価は、以下に示されるように定義し、3段階で行った。染料0.5gが溶媒5mlに完溶する……A染料0.5gは完溶しないが、染料0.1gでは溶媒5mlに完溶する……B染料0.1 gは溶媒5mlに完溶しない……C
<酸化電位:Eox>
実施例・比較例で用いたフタロシアニン染料(混合物)の酸化電位の値は、以下の条件で測定した。
フタロシアニン染料を10.0mgから25.0mgの範囲で秤量し、0.1mol・dm-3の過塩素酸テトラプロピルアンモニウムを支持電解質として含むN,N−ジメチルホルムアミド 5mlから15ml(前記染料の濃度は約0.001mol・dm-3)で直流ポーラログラフィーにより測定した。ポーラログラフィ装置には、作用極として炭素(GC)電極を、対極として回転白金電極を用いて、酸化側(貴側)に掃引して得た酸化波を直線近似してそのピーク値との交点と残余電流値との交点の中点を酸化電位の値(vs SCE)とした。
評価は酸化電位が1.0以上ならばA、それ未満ならばBとした。
表−6から明らかなように、本発明のインクジェット用インクは色調に優れ、紙依存性が小さく、耐水性および耐光性並びに耐オゾン性に優れるものであった。特に耐光性、耐オゾン性等の画像保存性に優れることは明らかである。
また、本発明の調製法によるインク液は、厳しい保存条件に曝されても低溶解成分の析出による印字の悪化が無く、インク保存安定性、および目詰まり回復性に優れる事が判った。
実施例4で作製した同じインクを用いて、実施例4の同機にて画像を富士写真フイルム製インクジェットペーパーフォト光沢紙EXにプリントし、実施例4と同様な評価を行ったところ、実施例4と同様な結果が得られた。
実施例4で作製した同じインクを、インクジェットプリンターBJ−F850(CANON社製)のカートリッジに詰め、同機にて同社のフォト光沢紙GP−301に画像をプリントし、実施例4と同様な評価を行ったところ、実施例4と同様な結果が得られた。
実施例4の試験方法を、下記の環境試験方法に変更した以外は、実施例4と同じ操作を用いて試験を行なった。すなわち、自動車の排気ガスなどの酸化性ガスと太陽光の照射を受ける屋外環境をシミュレートした酸化性ガス耐性試験方法として、H.Iwano, et al; Journal of Imaging Science and Technology ,38巻、140-142(1944)に記載の相対湿度80%、過酸化水素濃度120ppm、蛍光灯照射チャンバーを用いた酸化耐性試験方法を用いて試験した。試験の結果は、実施例4と同様の結果であった。