JP2010192327A - 非水電解液および非水電解液二次電池 - Google Patents

非水電解液および非水電解液二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】高温保存時の充放電効率を向上させるとともに低温時のサイクル特性を向上させることが可能な非水電解液およびそれを用いた非水電解液二次電池を提供すること。
【解決手段】非水溶媒に電解質塩が溶解された非水電解液であって、前記非水溶媒は、特定のハロゲン化ベンゼン化合物と、特定のハロゲン化鎖状炭酸エステルおよび特定のハロゲン化環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種のハロゲン化炭酸エステルとを含む非水電解液およびそれを用いた非水電解液二次電池とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、非水電解液および非水電解液二次電池に関し、詳しくは低温時のサイクル特性に優れた非水電解液、およびこれを用いた非水電解液二次電池に関する。
近年、カメラ一体型VTR(Video Tape Recorder)、携帯電話あるいはノートパソコンなどのポータブル電子機器が広く普及しており、その小型化、軽量化および長寿命化が強く求められている。そしてこれらの電子機器のポータブル電源として、電池、特に二次電池について、エネルギー密度を向上させるための研究開発が活発に進められている。二次電池の中でも、充放電反応にリチウム(Li)の吸蔵および放出を利用する二次電池(いわゆるリチウムイオン二次電池)は、従来の水溶液系電解液二次電池である鉛電池やニッケルカドミウム電池よりも高いエネルギー密度が得られるため、大いに期待されている。
かかるリチウムイオン二次電池の電解液としては、炭酸プロピレンあるいは炭酸ジエチルなどの炭酸エステル系の溶媒と、六フッ化リン酸リチウムなどの電解質塩との組み合わせが広く用いられている。これは、導電率が高く、電位的にも安定だからである。
このほか、電解液の組成に関しては、各種性能の改善を目的として、いくつかの技術が提案されている。例えば、過充電時の高負荷特性や安全性向上、膨れ抑制のためにハロゲン化メトキシベンゼンを含有させる技術が知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。また、使用時に低温状況下に置かれた際の電池特性を改善するために、ハロゲン化炭酸エステルを含有させる技術が知られている(例えば、特許文献5、6参照)。
特開2003−217652号公報 特開2003−217653号公報 特開2004−79532号公報 特開2004−87282号公報 特開2006−294403号公報 特開2006−173124号公報
最近の電子機器では、高性能化および多機能化が益々進行する傾向にあるため、二次電池の充放電が頻繁に繰り返されて充放電容量が低下しやすい状況にある。また、使用時などに、高温状況下だけでなく低温状況下に置かれることが多くなり、いずれの雰囲気中においても、サイクル特性に関してより一層の向上が望まれている。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、高温保存時の充放電効率を向上させるとともに低温時のサイクル特性を向上させることが可能な非水電解液およびそれを用いた非水電解液二次電池を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討を行った結果、非水電解液中に特定の構造を有するハロゲン化ベンゼン化合物とハロゲン化炭酸エステルとを含有させることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は下記の非水電解液および非水電解液二次電池を提供する。
[1] 非水溶媒に電解質塩が溶解された非水電解液であって、
前記非水溶媒は、
下記式(1)で表されるハロゲン化ベンゼン化合物と、
下記式(2)で表されるハロゲン化鎖状炭酸エステルおよび下記式(3)で表されるハロゲン化環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種のハロゲン化炭酸エステルと
を含む、非水電解液。
Figure 2010192327
(式中、Xは炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基であり、R1,R2,R3,R4,R5は互いに独立して水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基、またはハロゲン原子であり、互いに環を形成していてもよい。)
Figure 2010192327
(式中、R21〜R26は互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子あるいはハロゲン化アルキル基である。)
Figure 2010192327
(式中、R27〜R30は互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子あるいはハロゲン化アルキル基である。)
[2] 正極および負極と、非水溶媒に電解質塩が溶解された非水電解液を備えた非水電解液二次電池であって、
前記非水溶媒は、
前記式(1)で表されるハロゲン化ベンゼン化合物と、
前記式(2)で表されるハロゲン化鎖状炭酸エステルおよび前記式(3)で表されるハロゲン化環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種のハロゲン化炭酸エステルと
を含む、非水電解液二次電池。
本発明の非水電解液によれば、非水溶媒中に特定のハロゲン化ベンゼン化合物と特定のハロゲン化鎖状炭酸エステルおよびハロゲン化環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種のハロゲン化炭酸エステルを含むようにしたので、電極の表面に良好な被膜を形成することにより電解液の分解反応を抑制し、低温における化学的安定性が向上する。これにより、本発明の非水電解液を用いた非水電解液二次電池によれば、高温保存時にも高い充放電効率であるとともに、低温状況下で使用しても優れたサイクル特性を得ることができる。
本発明の一実施の形態に係る非水電解液を用いた第1の二次電池の構成を表す断面図である。 図1に示した巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。 図2に示した負極の構成を拡大して表す断面図である。 参考例の負極の構成を表す断面図である。 図2に示した負極の断面構造を表すSEM写真およびその模式図である。 図2に示した負極の他の断面構造を表すSEM写真およびその模式図である。 本発明の一実施の形態に係る非水電解液を用いた第3の二次電池の構成を表す分解斜視図である。 図7に示した巻回電極体のVIII−VIII線に沿った構成を表す断面図である。 図8に示した巻回電極体の断面構造の一部を拡大して示す図である。 本発明の一実施の形態に係る電解液を用いた第4の二次電池の構成を表す断面図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明するが、本発明は以下の形態に限定されるものではない。
本発明の非水電解液(以下、単に「電解液」とも言う。)は、非水溶媒と電解質塩を含んで構成されている。本発明の非水電解液は、非水溶媒中に、特定のハロゲン化ベンゼン化合物と、特定のハロゲン化鎖状炭酸エステルおよびハロゲン化環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種のハロゲン化炭酸エステルとを含んでいる。
ハロゲン化ベンゼン化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。ハロゲン化ベンゼン化合物を非水電解液に添加することにより、低温での電池特性を向上できる。
Figure 2010192327
式(1)中、Xは炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基である。尚、「ハロゲン化アルキル基」とは、直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル基のうちの少なくとも一部の水素原子がフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子で置換されたものである。炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。
式(1)中、R1,R2,R3,R4,R5は互いに独立して水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基、好ましくは炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、またはハロゲン原子であり、互いに環を形成していてもよい。炭素数1〜18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル等が挙げられる。
本発明において、式(1)で表される化合物の中でも、安定性が高いという点から、下記式(1A)で表される化合物を用いることが好ましい。
Figure 2010192327
式(1A)中、Yは水素原子、炭素数1〜19のアルキル基、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜19のハロゲン化アルキル基、好ましくは炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、またはハロゲン原子である。
式(1)で示される化合物の具体例としては、例えば、下記式(1−1)〜(1−16)に示した一連の化合物が挙げられる。すなわち、式(1−1)のフルオロメトキシベンゼン、式(1−2)のジフルオロメトキシベンゼン、式(1−3)のトリフルオロメトキシベンゼン、式(1−4)の4−トリフルオロメトキシトルエン、式(1−5)の1,1,2,2−テトラフルオロエトキシベンゼン、式(1−6)の1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシベンゼン、式(1−7)の2−トリフルオロメトキシトルエン、式(1−8)の3−トリフルオロメトキシトルエン、式(1−9)のペンタフルオロエトキシベンゼン、式(1−10)のトリフルオロメトキシキシレン、式(1−11)の2,2,2−トリフルオロエトキシベンゼン、式(1−12)の4−(トリフルオロメトキシ)ベンジルクロリド、式(1−13)の1−クロロ−4−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、式(1−14)の1−フルオロ−3−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、式(1−15)の5−トリフルオロメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、式(1−16)の1,1−ジフルオロエトキシベンゼン、などである。これらのハロゲン化ベンゼン化合物は1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。なかでも、式(1−1)で示したフルオロメトキシベンゼン、式(1−2)で示したジフルオロメトキシベンゼン、式(1−3)で示したトリフルオロメトキシベンゼン、式(1−4)で示した4−トリフルオロメトキシトルエン、式(1−5)で示した1,1,2,2−テトラフルオロエトキシベンゼン、式(1−6)で示した1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシベンゼン、式(1−13)で示した1−クロロ−4−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、式(1−14)で示した1−フルオロ−3−(トリフルオロメトキシ)ベンゼンがより好ましい。これは、化学的安定性が高いであるからである。
Figure 2010192327
Figure 2010192327
非水溶媒中におけるハロゲン化ベンゼン化合物の含有量は、特に限定されないが、0.1〜20質量%の範囲内であることが好ましく、0.1〜10質量%の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であれば、優れたサイクル特性を得ることができるため好ましい。
非水溶媒には、ハロゲン化ベンゼン化合物と共に、下記式(2)で表されるハロゲン化鎖状炭酸エステルおよび下記式(3)で表されるハロゲン化環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種のハロゲン化炭酸エステルを含有する。ハロゲン化炭酸エステルを非水電解液に添加することにより、良好な被膜を形成することができる。
Figure 2010192327
(式中、R21〜R26は互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子あるいはハロゲン化アルキル基である。)
Figure 2010192327
(式中、R27〜R30は互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子あるいはハロゲン化アルキル基である。)
なお、式(2)に示したR21〜R26は、同一でもよいし、異なってもよい。式(3)に示したR27〜R30についても同様である。R21〜R26あるいはR27〜R30について説明した「ハロゲン化アルキル基」とは、アルキル基のうちの少なくとも一部の水素原子がハロゲン原子に置換されたものである。尚、R21〜R26あるいはR27〜R30において、ハロゲン原子の種類は、特に限定されないが、例えば、フッ素、塩素および臭素からなる群のうちの少なくとも1種が挙げられ、中でも、フッ素が好ましい。これは、本発明の高い効果が得られるからである。もちろん、他のハロゲン原子であってもよい。
本発明において、ハロゲン原子の数は、1つよりも2つが好ましく、さらに3つ以上であってもよい。これは、二次電池などの電気化学デバイスに用いられた場合に、電極表面において保護膜を形成する能力が高くなり、より強固で安定な保護膜が形成されるため、電解液の分解反応がより抑制されるからである。
式(2)に示したハロゲン化鎖状炭酸エステルとしては、例えば、下記式(2−1)に示した炭酸フルオロメチルメチル(FDMC)、下記式(2−2)に示した炭酸ビス(フルオロメチル)(DFDMC)あるいは炭酸ジフルオロメチルメチルなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。なかでも、良好な被膜を形成するという点から、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)を用いることが好ましい。
Figure 2010192327
式(3)に示したハロゲン化環状炭酸エステルとしては、例えば、下記式(3−1)〜(3−21)に示した一連の化合物が挙げられる。すなわち、式(3−1)の4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)、式(3−2)の4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、式(3−3)の4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)、式(3−4)のテトラフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、式(3−5)の4−クロロ−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、式(3−6)の4,5−ジクロロ−1,3−オキソラン−2−オン、式(3−7)のテトラクロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、式(3−8)の4,5−ビストリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、式(3−9)の4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、式(3−10)の4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、式(3−11)の4,4−ジフルオロ−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、式(3−12)の4−エチル−5,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、式(3−13)の4−フルオロ−5−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、式(3−14)の4−メチル−5−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、式(3−15)の4−フルオロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、式(3−16)の5−(1,1−ジフルオロエチル)−4,4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、式(3−17)の4,5−ジクロロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、式(3−18)の4−エチル−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、式(3−19)の4−エチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、式(3−20)の4−エチル−4,5,5−トリフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、式(3−21)の4−フルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられる。これらのハロゲン化環状炭酸エステルは1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。なかでも、式(3−1)で示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、式(3−3)で示した4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが好ましく、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンがより好ましい。これは、化合物が容易に入手可能であると共に、高い効果が得られるからである。特に、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンとしては、シス異性体よりもトランス異性体が好ましい。
Figure 2010192327
Figure 2010192327
非水溶媒中におけるハロゲン化炭酸エステルの含有量は、0.1〜50質量%の範囲内であることが好ましく、0.1〜20質量%の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であれば、良好な被膜を形成することができるため好ましい。
なお、非水電解液は、上記以外の他の非水溶媒を含んでいてもよい。この非水溶媒としては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、リン酸トリメチルまたはジメチルスルホキシドなどが挙げられる。電解液を備えた、電池などの電気化学デバイスにおいて、優れた容量、サイクル特性および保存特性が得られるからである。これらは1種を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
中でも、非水溶媒としては、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルからなる群のうちの少なくとも1種を含むものを用いることが好ましい。サイクル特性および保存特性の十分な効果が得られるからである。この場合には、特に、高粘度(高誘電率)溶媒(例えば、比誘電率ε≧30)である炭酸エチレンまたは炭酸プロピレンと、低粘度溶媒(例えば、粘度≦1mPa・s)である炭酸ジメチル、炭酸ジエチルまたは炭酸エチルメチルとを混合して含むものを用いることが好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するため、より高い効果が得られるからである。
また、非水溶媒は、スルトン(環状スルホン酸エステル)や、酸無水物を含有していてもよい。電解液の化学的安定性がより向上するからである。
前記スルトンとしては、例えば、プロパンスルトンあるいはプロペンスルトンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。中でも、プロペンスルトンが好ましい。また、非水溶媒中におけるスルトンの含有量は、0.5〜3質量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲内であれば、電解液の化学的安定性の高い効果が得られるからである。
前記酸無水物としては、例えば、コハク酸無水物、グルタル酸無水物あるいはマレイン酸無水物などのカルボン酸無水物や、エタンジスルホン酸無水物あるいはプロパンジスルホン酸無水物などのジスルホン酸無水物や、スルホ安息香酸無水物、スルホプロピオン酸無水物あるいはスルホ酪酸無水物などのカルボン酸とスルホン酸との無水物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。中でも、コハク酸無水物あるいはスルホ安息香酸無水物が好ましい。また、非水溶媒中における酸無水物の含有量は、0.5〜3質量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲内であれば、電解液の化学的安定性の高い効果が得られるからである。
非水溶媒の固有粘度は、例えば、25℃において10.0mPa・s以下であるのが好ましい。非水溶媒の固有粘度を10.0mPa・s以下とすることで、電解質塩の解離性およびイオンの移動度を確保できるからである。なお、溶媒に電解質塩を溶解させた状態における固有粘度(すなわち、非水電解液の固有粘度)も、同様の理由により、25℃において10.0mPa・s以下であるのが好ましい。
電解質塩は、イオンを伝導するために非水電解液に添加する。電解質塩としては、例えば、リチウム塩などの軽金属塩の1種あるいは2種以上を含有している。このリチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF)、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C)、メタンスルホン酸リチウム(LiCHSO)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl)、六フッ化ケイ酸二リチウム(LiSiF)、塩化リチウム(LiCl)あるいは臭化リチウム(LiBr)、モノフルオロリン酸リチウム(LiPOF)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2)などが挙げられる。中でも、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムおよび六フッ化ヒ酸リチウムからなる群のうちの少なくとも1種を用いることが好ましく、六フッ化リン酸リチウムがより好ましい。特に、六フッ化リン酸リチウムと一緒に四フッ化ホウ酸リチウムを用いるのが好ましい。これは、非水電解液の抵抗が低下するため、より高い効果が得られるからである。
本発明において、この電解質塩は、下記式(5)〜(7)で表される化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含有しているのが好ましい。上記した六フッ化リン酸リチウム等と一緒に用いられた場合に、より高い効果が得られるからである。
Figure 2010192327
(式中、X31は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素、またはアルミニウムである。M31は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。R31はハロゲン原子である。Y31は−OC−R32−CO−、−OC−C(R33)−あるいは−OC−CO−である。ただし、R32はアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基である。R33はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基あるいはハロゲン化アリール基である。なお、a3は1〜4の整数であり、b3は0、2あるいは4であり、c3、d3、m3およびn3は1〜3の整数である。)
Figure 2010192327
(式中、X41は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素である。M41は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。Y41は−OC−(C(R41))b4−CO−、−(R43)C−(C(R42))c4−CO−、−(R43)C−(C(R42))c4−C(R43)−、−(R43)C−(C(R42))c4−SO−、−OS−(C(R42))d4−SO−あるいは−OC−(C(R42))d4−SO−である。ただし、R41およびR43は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子あるいはハロゲン化アルキル基であり、それぞれのうちの少なくとも1つはハロゲン原子あるいはハロゲン化アルキル基である。R42は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子あるいはハロゲン化アルキル基である。なお、a4、e4およびn4は1あるいは2であり、b4およびd4は1〜4の整数であり、c4は0〜4の整数であり、f4およびm4は1〜3の整数である。)
Figure 2010192327
(式中、X51は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素である。M51は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。Rfはフッ素化アルキル基あるいはフッ素化アリール基であり、いずれの炭素数も1〜10である。Y51は−OC−(C(R51))d5−CO−、−(R52)C−(C(R51))d5−CO−、−(R52)C−(C(R51))d5−C(R52)−、−(R52)C−(C(R51))d5−SO−、−OS−(C(R51))e5−SO−あるいは−OC−(C(R51))e5−SO−である。ただし、R51は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子あるいはハロゲン化アルキル基である。R52は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子あるいはハロゲン化アルキル基であり、そのうちの少なくとも1つはハロゲン原子あるいはハロゲン化アルキル基である。なお、a5、f5およびn5は1あるいは2であり、b5、c5およびe5は1〜4の整数であり、d5は0〜4の整数であり、g5およびm5は1〜3の整数である。)
なお、式(5)に示したR33は、同一でもよいし、異なってもよい。式(6)に示したR41〜R43および式(7)に示したR51およびR52についても同様であり、互いに同一でもよいし、異なっていてもよい。
また、長周期型周期表における1族元素とは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムである。2族元素とは、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムである。13族元素とは、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムおよびタリウムである。14族元素とは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズおよび鉛である。15族元素とは、窒素、リン、ヒ素、アンチモンおよびビスマスである。
式(5)に示した化合物としては、例えば、下記式(5−1)〜(5−6)で表される化合物などが挙げられる。式(6)に示した化合物としては、例えば、下記式(6−1)〜(6−8)で表される化合物などが挙げられる。式(7)に示した化合物としては、例えば、下記式(7−1)で表される化合物などが挙げられる。中でも、式(5−6)の化合物が好ましい。高い効果が得られるからである。なお、式(5)〜(7)に示した構造を有する化合物であれば、式(5−1)〜(5−6)、式(6−1)〜(6−8)、並びに式(7−1)に示した化合物に限定されないことは言うまでもない。
Figure 2010192327
Figure 2010192327
Figure 2010192327
また、電解質塩は、下記式(8)〜(10)で表される化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含有しているのが好ましい。上記した六フッ化リン酸リチウム等と一緒に用いられた場合に、より高い効果が得られるからである。
Figure 2010192327
(式中、mおよびnは1以上の整数である。)
Figure 2010192327
(式中、R61は炭素数が2以上4以下の直鎖状あるいは分岐状のパーフルオロアルキレン基である。)
Figure 2010192327
(式中、p、qおよびrは1以上の整数である。)
なお、式(8)に示したmおよびnは、同一でもよいし、異なってもよい。式(10)に示したp、qおよびrについても同様であり、互いに同一でもよいし、異なってもよい。
式(8)に示した鎖状の化合物としては、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CFSO)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CSO)、(トリフルオロメタンスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CFSO)(CSO))、(トリフルオロメタンスルホニル)(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CFSO)(CSO))、あるいは(トリフルオロメタンスルホニル)(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CFSO)(CSO))などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。中でも、高い効果が得られるため、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムを用いることが好ましい。
式(9)に示した環状の化合物としては、例えば、下記式(9−1)〜(9−4)で表される一連の化合物が挙げられる。すなわち、式(9−1)の1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミドリチウム、式(9−2)の1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドリチウム、式(9−3)の1,3−パーフルオロブタンジスルホニルイミドリチウム、式(9−4)の1,4−パーフルオロブタンジスルホニルイミドリチウムなどである。これらは1種を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。中でも、高い効果が得られるため、1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドリチウムを用いることが好ましい。
Figure 2010192327
式(10)に示した鎖状の化合物としては、例えば、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(LiC(CFSO)などが挙げられる。
電解質塩の含有量は、非水溶媒に対して0.3mol/kg以上3.0mol/kg以下の範囲内であるのが好ましい。この範囲外では、イオン伝導性が極端に低下する可能性があるからである。
この非水電解液によれば、非水溶媒が式(1)に示したハロゲン化ベンゼン化合物を含有しているので、低温時のサイクル特性を向上させることができる。非水溶媒中における式(1)に示した化合物の含有量が0.1〜20質量%の範囲内であれば、より高い効果を得ることができる。そして、非水溶媒が式(2)に示したハロゲン化鎖状炭酸エステルおよび式(3)に示したハロゲン化環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種のハロゲン化炭酸エステルを含有しているので、良好な被膜を形成することができる。非水溶媒中におけるハロゲン化炭酸エステルの含有量が0.1〜50質量%の範囲内であれば、より高い効果を得ることができる。
次に、上記した非水電解液の使用例について説明する。ここで電気化学デバイスの一例として、二次電池を例に挙げると、非水電解液は以下のようにして用いられる。
(第1の二次電池)
図1および図2は第1の二次電池の断面構成を表しており、図2では図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して示している。この電池は、例えば、負極の容量が電極反応物質であるリチウムの吸蔵および放出に基づいて表されるリチウムイオン二次電池である。
この二次電池は、主に、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、セパレータ23を介して正極21と負極22とが巻回された巻回電極体20と、一対の絶縁板12,13とが収納されたものである。この円柱状の電池缶11を用いた電池構造は、いわゆる円筒型と呼ばれている。
電池缶11は、例えば、一端部が閉鎖されると共に他端部が開放された中空構造を有しており、鉄、アルミニウムあるいはそれらの合金などの金属材料によって構成されている。なお、電池缶11が鉄によって構成される場合には、例えば、ニッケルなどの鍍金が施されてもよい。一対の絶縁板12,13は、巻回電極体20を上下から挟み、その巻回周面に対して垂直に延在するように配置されている。
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、その内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめて取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の金属材料によって構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されている。この安全弁機構15では、内部短絡あるいは外部からの加熱などに起因して内圧が一定以上になると、ディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との間の電気的接続が切断されるようになっている。熱感抵抗素子16は、温度の上昇に応じて抵抗が増大して電流を制限し、大電流に起因する異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料によって構成されており、その表面にはアスファルトが塗布されている。
巻回電極体20は、例えば、センターピン24を中心に巻回されている。この巻回電極体20では、アルミニウムなどの金属材料によって構成された正極リード25が正極21に接続されていると共に、ニッケルなどの金属材料によって構成された負極リード26が負極22に接続されている。正極リード25は、安全弁機構15に溶接されて電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は、電池缶11に溶接されて電気的に接続されている。
図2に示したように、正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが設けられたものである。なお、正極活物質層21Bは、正極集電体21Aの片面だけに設けられていてもよい。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によって構成されている。正極活物質層21Bは、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種あるいは2種以上を含んでおり、必要に応じて、結着剤や導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム含有化合物が好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。このリチウム含有化合物としては、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物や、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物などが挙げられる。中でも、遷移金属元素としてコバルト、ニッケル、マンガンおよび鉄からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが好ましい。より高い電圧が得られるからである。その化学式は、例えば、LiM1OあるいはLiM2POで表される。式中、M1およびM2は、1種類以上の遷移金属元素を表す。xおよびyの値は、充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10である。
リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物としては、例えば、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(LiNi1−zCo(z<1))、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi(1−v−w)CoMn(v+w<1))、またはスピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(LiMn)あるいはリチウムマンガンニッケル複合酸化物(LiMn2−tNi(t<2))などが挙げられる。中でも、コバルトを含む複合酸化物が好ましい。高い容量が得られると共に、優れたサイクル特性も得られるからである。また、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物としては、例えば、リチウム鉄リン酸化合物(LiFePO)あるいはリチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe1−uMnPO(u<1))などが挙げられる。
この他、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムあるいは二酸化マンガンなどの酸化物や、二硫化チタンあるいは硫化モリブデンなどの二硫化物や、セレン化ニオブなどのカルコゲン化物や、硫黄、ポリアニリンあるいはポリチオフェンなどの導電性高分子も挙げられる。
もちろん、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記した一連の正極材料は、1種を単独で用いてもよいし、任意の組み合わせで2種以上を混合して用いてもよい。
導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックあるいはケチェンブラックなどの炭素材料が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。なお、導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子などであってもよい。
結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピレンジエンなどの合成ゴムや、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
図2に示したように、負極22は、例えば、一対の面を有する負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられたものである。なお、負極活物質層22Bは、負極集電体22Aの片面だけに設けられていてもよい。
負極集電体22Aは、例えば、銅、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によって構成されている。この負極集電体22Aの表面は、粗面化されているのが好ましい。いわゆるアンカー効果によって負極集電体22Aと負極活物質層22Bとの間の密着性が向上するからである。この場合には、少なくとも負極活物質層22Bと対向する領域において、負極集電体22Aの表面が粗面化されていればよい。粗面化の方法としては、例えば、電解処理によって微粒子を形成する方法などが挙げられる。この電解処理とは、電解槽中において電解法によって負極集電体22Aの表面に微粒子を形成して凹凸を設ける方法である。この電解処理によって粗面化された銅箔を含め、電解法によって作製された銅箔は、一般に「電解銅箔」と呼ばれている。
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種あるいは2種以上を含んでおり、必要に応じて、導電剤や結着剤などの他の材料を含んでいてもよい。なお、導電剤および結着剤に関する詳細は、例えば、正極21について説明した場合と同様である。また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の充電容量は、正極活物質による充電容量よりも大きくなっているのが好ましい。満充電時においても、負極22にリチウムがデンドライトとなって析出する可能性が低くなるからである。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、炭素材料が挙げられる。この炭素材料とは、例えば、易黒鉛化性炭素や、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化性炭素や、(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛などが挙げられる。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭あるいはカーボンブラック類などがある。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどが含まれる。有機高分子化合物焼成体とは、フェノール樹脂やフラン樹脂などを適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。炭素材料は、リチウムの吸蔵および放出に伴う結晶構造の変化が非常に少ないため、高いエネルギー密度が得られると共に優れたサイクル特性が得られ、さらに導電剤としても機能するので好ましい。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状あるいは鱗片状のいずれでもよい。
上記した他、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能であると共に金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として有する材料が挙げられる。このような負極材料は高いエネルギー密度が得られるからである。この負極材料は、金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、ここで言う「合金」には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含まれる。また、「合金」は、非金属元素を含んでいてもよい。この組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物、あるいはそれらの2種以上が共存するものがある。
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、リチウムと合金を形成することが可能な金属元素あるいは半金属元素が挙げられる。具体的には、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)などである。これらの金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として有する材料としては、例えば、これらの金属元素あるいは半金族元素の合金または化合物が挙げられ、具体的には、MaMbLi(s、tおよびuの値はそれぞれs>0、t≧0、u≧0である。)や、MaMcMd(p、qおよびrの値はそれぞれp>0、q>0、r≧0である。)の化学式で表されるものなどが挙げられる。ただし、Maはリチウムと合金を形成可能な金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、MbはリチウムおよびMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表わしている。また、Mcは非金属元素のうちの少なくとも1種を表し、MdはMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表している。これらの材料は結晶質であってもよく、非晶質(アモルファス)であってもよい。
リチウムと合金を形成することが可能な金属元素あるいは半金属元素により構成された負極材料としては、長周期型周期表における14族の金属元素および半金族元素のうちの少なくとも1種を構成元素として有する材料が好ましく、ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を構成元素として有する材料が特に好ましい。リチウムを吸蔵および放出する能力が大きいため、高いエネルギー密度が得られるからである。
ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を有する負極材料としては、例えば、ケイ素の単体、合金あるいは化合物や、スズの単体、合金あるいは化合物や、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン(Sb)およびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を有するものが挙げられる。ケイ素の化合物としては、例えば、酸素あるいは炭素(C)を有するものが挙げられ、ケイ素に加えて、上記した第2の構成元素を有していてもよい。ケイ素の合金あるいは化合物の一例としては、SiB、SiB、MgSi、NiSi、TiSi、MoSi、CoSi、NiSi、CaSi、CrSi、CuSi、FeSi、MnSi、NbSi、TaSi、VSi、WSi、ZnSi、SiC、Si、SiO、SiO(0<v≦2)あるいはLiSiOなどが挙げられる。
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を有するものが挙げられる。スズの化合物としては、例えば、酸素あるいは炭素を有するものが挙げられ、スズに加えて、上記した第2の構成元素を有していてもよい。スズの合金あるいは化合物の一例としては、SnOw(0<w≦2)、SnSiO、LiSnOあるいはMgSnなどが挙げられる。
特に、ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を有する負極材料としては、例えば、スズを第1の構成元素とし、それに加えて第2および第3の構成元素を有するものが好ましい。第2の構成元素は、コバルト、鉄、マグネシウム、チタン、バナジウム(V)、クロム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ(Nb)、モリブデン、銀、インジウム、セリウム(Ce)、ハフニウム、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマスおよびケイ素からなる群のうちの少なくとも1種である。第3の構成元素は、ホウ素、炭素、アルミニウムおよびリン(P)からなる群のうちの少なくとも1種である。第2および第3の構成元素を有することにより、サイクル特性が向上するからである。
中でも、スズ、コバルトおよび炭素を構成元素として含有し、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内、スズおよびコバルトの合計に対するコバルトの割合(Co/(Sn+Co))が30質量%以上70質量%以下の範囲内であるSnCoC含有材料が好ましい。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られるからである。
このSnCoC含有材料は、必要に応じて、さらに他の構成元素を含んでいてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素、鉄、ニッケル、クロム、インジウム、ニオブ、ゲルマニウム、チタン、モリブデン、アルミニウム、リン、ガリウムあるいはビスマスなどが好ましく、それらの2種以上を含んでいてもよい。より高い効果が得られるからである。
なお、SnCoC含有材料は、スズ、コバルトおよび炭素を含む相を有しており、その相は、低結晶性あるいは非晶質な相であるのが好ましい。この相は、リチウムと反応可能な反応相であり、これによって優れたサイクル特性が得られるようになっている。この相のX線回折によって得られる回折ピークの半値幅は、特定X線としてCuKα線を用い、挿引速度を1°/minとした場合に、回折角2θで1.0°以上であることが好ましい。リチウムがより円滑に吸蔵および放出されると共に、電解質との反応性が低減されるからである。
X線回折によって得られた回折ピークがリチウムと反応可能な反応相に対応するものであるか否かは、リチウムとの電気化学的反応の前後におけるX線回折チャートを比較することによって容易に判断することができる。例えば、リチウムとの電気化学的反応の前後において回折ピークの位置が変化すれば、リチウムと反応可能な反応相に対応するものである。この場合には、例えば、低結晶性あるいは非晶質な反応相の回折ピークが2θ=20°〜50°の間に見られる。この低結晶性あるいは非晶質な反応相は、例えば、上記した各構成元素を含んでおり、主に、炭素によって低結晶化あるいは非晶質化しているものと考えられる。
なお、SnCoC含有材料は、低結晶性あるいは非晶質な相に加えて、各構成元素の単体または一部を含む相を有している場合もある。
特に、SnCoC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素あるいは半金属元素と結合しているのが好ましい。スズなどの凝集あるいは結晶化が抑制されるからである。
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)が挙げられる。このXPSは、軟X線(市販の装置ではAl−Kα線か、Mg−Kα線を用いる)を試料表面に照射し、試料表面から飛び出してくる光電子の運動エネルギーを測定することによって、試料表面から数nmの領域の元素組成、および元素の結合状態を調べる方法である。
元素の内殻軌道電子の束縛エネルギーは、第1近似的には、元素上の電荷密度と相関して変化する。例えば、炭素元素の電荷密度が近傍に存在する元素との相互作用によって減少した場合には、2p電子などの外殻電子が減少しているので、炭素元素の1s電子は殻から強い束縛力を受けることになる。すなわち、元素の電荷密度が減少すると、束縛エネルギーは高くなる。XPSでは、束縛エネルギーが高くなると、高いエネルギー領域にピークはシフトするようになっている。
XPSにおいて、炭素の1s軌道(C1s)のピークは、グラファイトであれば、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば炭素よりも陽性な元素と結合している場合には、C1sのピークは、284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、SnCoC含有材料に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素などと結合している場合には、SnCoC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる。
なお、XPS測定を行う場合には、表面が表面汚染炭素で覆われている際に、XPS装置に付属のアルゴンイオン銃で表面を軽くスパッタすることが好ましい。また、測定対象のSnCoC含有材料が負極22中に存在する場合には、二次電池を解体して負極22を取り出したのち、炭酸ジメチルなどの揮発性溶媒で洗浄するとよい。負極22の表面に存在する揮発性の低い溶媒と電解質塩とを除去するためである。これらのサンプリングは、不活性雰囲気下で行うのが望ましい。
また、XPS測定では、例えば、スペクトルのエネルギー軸の補正に、C1sのピークを用いる。通常、物質表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、それをエネルギー基準とする。なお、XPS測定では、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば、市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、SnCoC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
このSnCoC含有材料は、例えば、各構成元素の原料を混合した混合物を電気炉、高周波誘導炉あるいはアーク溶解炉などで溶解させたのち、凝固させることによって形成可能である。また、ガスアトマイズあるいは水アトマイズなどの各種アトマイズ法や、各種ロール法や、メカニカルアロイング法あるいはメカニカルミリング法などのメカノケミカル反応を利用した方法などを用いてもよい。中でも、メカノケミカル反応を利用した方法が好ましい。SnCoC含有材料が低結晶性あるいは非晶質な構造になるからである。メカノケミカル反応を利用した方法では、例えば、遊星ボールミル装置やアトライタなどの製造装置を用いることができる。
原料には、各構成元素の単体を混合して用いてもよいが、炭素以外の構成元素の一部については合金を用いることが好ましい。このような合金に炭素を加えてメカニカルアロイング法を利用した方法によって合成することにより、低結晶性あるいは非晶質な構造が得られ、反応時間も短縮することができるからである。なお、原料の形態は、粉体であってもよいし、塊状であってもよい。
このSnCoC含有材料の他、スズ、コバルト、鉄および炭素を構成元素として含むSnCoFeC含有材料も好ましい。このSnCoFeC含有材料の組成は、任意に設定可能である。例えば、鉄の含有量を少なめに設定する場合の組成としては、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内、鉄の含有量が0.3質量%以上5.9質量%以下の範囲内、スズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合(Co/(Sn+Co))が30質量%以上70質量%以下の範囲内であることが好ましい。また、例えば、鉄の含有量を多めに設定する場合の組成としては、炭素の含有量が11.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内、スズとコバルトと鉄との合計に対するコバルトと鉄との合計の割合((Co+Fe)/(Sn+Co+Fe))が26.4質量%以上48.5質量%以下の範囲内、コバルトと鉄との合計に対するコバルトの割合(Co/(Co+Fe))が9.9質量%以上79.5質量%以下の範囲内であることが好ましい。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られるからである。このSnCoFeC含有材料の結晶性、元素の結合状態の測定方法、および形成方法などについては、上記したSnCoC含有材料と同様である。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料として、ケイ素の単体、合金あるいは化合物や、スズの単体、合金あるいは化合物や、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料を用いた負極活物質層22Bは、例えば、気相法、液相法、溶射法、塗布法あるいは焼成法、またはそれらの2種以上の方法を用いて形成される。この場合には、負極集電体22Aと負極活物質層22Bとが界面の少なくとも一部において合金化しているのが好ましい。詳細には、両者の界面において、負極集電体22Aの構成元素が負極活物質層22Bに拡散していてもよいし、負極活物質層22Bの構成元素が負極集電体22Aに拡散していてもよいし、それらの構成元素が互いに拡散し合っていてもよい。充放電時における負極活物質層22Bの膨張および収縮に起因する破壊が抑制されると共に、負極集電体22Aと負極活物質層22Bとの間の電子伝導性が向上するからである。
なお、気相法としては、例えば、物理堆積法あるいは化学堆積法、具体的には真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法あるいはプラズマ化学気相成長法などが挙げられる。液相法としては、電解鍍金あるいは無電解鍍金などの公知の手法を用いることができる。塗布法とは、例えば、粒子状の負極活物質を結着剤などと混合したのち、溶剤に分散させて塗布する方法である。焼成法とは、例えば、塗布法によって塗布したのち、結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。焼成法に関しても公知の手法が利用可能であり、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法あるいはホットプレス焼成法が挙げられる。
さらに、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な金属酸化物あるいは高分子化合物なども挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムあるいは酸化モリブデンなどが挙げられる。高分子化合物としては、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
もちろん、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記した一連の負極材料は、任意の組み合わせで2種以上を混合して用いてもよい。
上記した負極材料からなる負極活物質は、複数の粒子状をなしている。すなわち、負極活物質層22Bは、複数の負極活物質粒子を有しており、その負極活物質粒子は、例えば、上記した気相法などによって形成されている。なお、負極活物質粒子は、気相法以外の方法によって形成されていてもよい。
負極活物質粒子が気相法などの堆積法によって形成される場合には、その負極活物質粒子が単一の堆積工程を経て形成された単層構造を有していてもよいし、複数回の堆積工程を経て形成された多層構造を有していてもよい。なお、堆積時に高熱を伴う蒸着法などによって負極活物質粒子を形成する場合には、その負極活物質粒子が多層構造を有しているのが好ましい。負極材料の堆積工程を複数回に分割して行う(負極材料を順次薄く形成して堆積させる)ことにより、その堆積工程を1回で行う場合と比較して負極集電体22Aが高熱に晒される時間が短くなり、熱的ダメージを受けにくくなるからである。
この負極活物質粒子は、例えば、負極集電体22Aの表面から負極活物質層22Bの厚さ方向に成長しており、その根本において負極集電体22Aに連結されている。この場合には、負極活物質粒子が気相法によって形成されており、上記したように、負極集電体22Aとの界面の少なくとも一部において合金化しているのが好ましい。詳細には、両者の界面において、負極集電体22Aの構成元素が負極活物質粒子に拡散していてもよいし、負極活物質粒子の構成元素が負極集電体22Aに拡散していてもよいし、両者の構成元素が互いに拡散しあっていてもよい。
特に、負極活物質層22Bは、必要に応じて、負極活物質粒子の表面(電解液と接する領域)を被覆する酸化物含有膜を有しているのが好ましい。酸化物含有膜が電解液に対する保護膜として機能し、充放電を繰り返しても電解液の分解反応が抑制されるため、サイクル特性が向上するからである。この酸化物含有膜は、負極活物質粒子の表面のうちの一部を被覆していてもよいし、全部を被覆していてもよい。
この酸化物含有膜は、金属元素あるいは半金属元素の酸化物を含有している。この金属元素あるいは半金属元素の酸化物としては、例えば、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、ゲルマニウムあるいはスズなどの酸化物が挙げられる。中でも、この酸化物含有膜は、ケイ素、ゲルマニウムおよびスズからなる群のうちの少なくとも1種の酸化物を含有しているのが好ましく、特にケイ素の酸化物を含有しているのが好ましい。負極活物質粒子の表面を全体に渡って容易に被覆しやすいと共に、優れた保護機能が得られるからである。もちろん、酸化物含有膜は、上記以外の他の酸化物を含有していてもよい。
この酸化物含有膜は、例えば、気相法あるいは液相法などの1種あるいは2種以上の方法を用いて形成される。この場合の気相法としては、例えば、蒸着法、スパッタ法あるいはCVD法などが挙げられ、液相法としては、例えば、液相析出法、ゾルゲル法、ポリシラザン法、電析法、塗布法あるいはディップコーティング法などが挙げられる。中でも、液相法が好ましく、液相析出法がより好ましい。負極活物質粒子の表面を広い範囲に渡って容易に被覆しやすいからである。なお、液相析出法では、まず、金属元素あるいは半金族元素のフッ化物錯体と共にアニオン捕捉剤としてフッ化物イオンを配位しやすい溶存種を含む溶液中において、フッ化物錯体から生じるフッ化物イオンをアニオン捕捉剤に補足させることによって、負極活物質粒子の表面が被覆されるように金属元素あるいは半金族元素の酸化物を析出させる。こののち、水洗および乾燥させることにより、酸化物含有膜を形成する。
また、負極活物質層22Bは、必要に応じて、負極活物質粒子の粒子間の隙間や粒子内の隙間に、電極反応物質と合金化しない金属材料を有していることが好ましい。金属材料を介して複数の負極活物質粒子が結着されると共に、上記した隙間に金属材料が存在することで負極活物質層22Bの膨張および収縮が抑制されるため、サイクル特性が向上するからである。
この金属材料は、例えば、リチウムと合金化しない金属元素を構成元素として有している。このような金属元素としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛および銅からなる群のうちの少なくとも1種が挙げられ、中でも、コバルトが好ましい。上記した隙間に金属材料が容易に入り込みやすいと共に、優れた結着作用が得られるからである。もちろん、金属材料は、上記以外の他の金属元素を有していてもよい。なお、ここで言う「金属材料」とは、単体に限らず、合金や金属化合物まで含む広い概念である。この金属材料は、例えば、気相法あるいは液相法によって形成されており、中でも電解鍍金法あるいは無電解鍍金法などの液相法が好ましく、電解鍍金法がより好ましい。上記した隙間に金属材料が入り込みやすくなると共に、その形成時間が短くて済むからである。
なお、負極活物質層22Bは、上記した酸化物含有膜あるいは金属材料のいずれか一方だけを有していてもよいし、双方を有していてもよい。ただし、サイクル特性をより向上させるためには、双方を含んでいるのが好ましい。
ここで、図3〜図6を参照して、負極22の詳細な構成について説明する。
まず、負極活物質層22Bが複数の負極活物質粒子と共に酸化物含有膜を有する場合について説明する。図3は負極22の断面構造を模式的に表しており、図4は参考例の負極の断面構造を模式的に表している。図3および図4では、負極活物質粒子が単層構造を有している場合を示している。
負極活物質層22Bが複数の負極活物質粒子と共に酸化物含有膜を有する場合の負極22では、図3に示したように、例えば、蒸着法などの気相法によって負極集電体22A上に負極材料が堆積されると、その負極集電体22A上に複数の負極活物質粒子201が形成される。この場合には、負極集電体22Aの表面が粗面化され、その表面に複数の突起部(例えば、電解処理により形成された微粒子)が存在すると、負極活物質粒子201が上記した突起部ごとに厚さ方向に成長するため、複数の負極活物質粒子201が負極集電体22A上において配列されると共に根本において負極集電体22Aの表面に連結される。こののち、例えば、液相析出法などの液相法によって負極活物質粒子201の表面に酸化物含有膜202が形成されると、その酸化物含有膜202は負極活物質粒子201の表面をほぼ全体に渡って被覆し、特に、負極活物質粒子201の頭頂部から根本に至る広い範囲を被覆する。この酸化物含有膜202による広範囲な被覆状態は、その酸化物含有膜202が液相法によって形成された場合に得られる特徴である。すなわち、液相法によって酸化物含有膜202を形成すると、その被覆作用が負極活物質粒子201の頭頂部だけでなく根本まで広く及ぶため、その根本まで酸化物含有膜202によって被覆される。
これに対して、参考例の負極では、図4に示したように、例えば、気相法によって複数の負極活物質粒子201が形成されたのち、同様に気相法によって酸化物含有膜203が形成されると、その酸化物含有膜203は負極活物質粒子201の頭頂部だけを被覆する。この酸化物含有膜203による狭範囲な被覆状態は、その酸化物含有膜203が気相法によって形成された場合に得られる特徴である。すなわち、気相法によって酸化物含有膜203を形成すると、その被覆作用が負極活物質粒子201の頭頂部に及ぶものの根本まで及ばないため、その根本までは酸化物含有膜203によって被覆されない。
なお、図3では、気相法によって負極活物質層22Bが形成される場合について説明したが、焼結法などによって負極活物質層22Bが形成される場合においても同様に、複数の負極活物質粒子の表面をほぼ全体に渡って被覆するように酸化物含有膜が形成される。
次に、負極活物質層22Bが複数の負極活物質粒子と共に電極反応物質と合金化しない金属材料を有する場合について説明する。図5は負極22の断面構造を拡大して表しており、(A)は走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)写真(二次電子像)、(B)は(A)に示したSEM像の模式絵である。図5では、複数の負極活物質粒子201が粒子内に多層構造を有している場合を示している。
負極活物質粒子201が多層構造を有する場合には、その複数の負極活物質粒子201の配列構造、多層構造および表面構造に起因して、負極活物質層22B中に複数の隙間204が生じている。この隙間204は、主に、発生原因に応じて分類された2種類の隙間204A,204Bを含んでいる。隙間204Aは、隣り合う負極活物質粒子201間に生じるものであり、隙間204Bは、負極活物質粒子201内の各階層間に生じるものである。
なお、負極活物質粒子201の露出面(最表面)には、空隙205が生じる場合がある。この空隙205は、負極活物質粒子201の表面にひげ状の微細な突起部(図示せず)が生じることに伴い、その突起部間に生じるものである。この空隙205は、負極活物質粒子201の露出面において、全体に渡って生じる場合もあれば、一部だけに生じる場合もある。ただし、上記したひげ状の突起部は、負極活物質粒子201の形成時ごとにその表面に生じるため、空隙205は、負極活物質粒子201の露出面だけでなく、各階層間にも生じる場合がある。
図6は負極22の他の断面構造を表しており、図5に対応している。負極活物質層22Bは、隙間204A,204Bに、電極反応物質と合金化しない金属材料206を有している。この場合には、隙間204A,204Bのうちのいずれか一方だけに金属材料206を有していてもよいが、双方に金属材料206を有しているのが好ましい。より高い効果が得られるからである。
この金属材料206は、隣り合う負極活物質粒子201間の隙間204Aに入り込んでいる。詳細には、気相法などによって負極活物質粒子201が形成される場合には、上記したように、負極集電体22Aの表面に存在する突起部ごとに負極活物質粒子201が成長するため、隣り合う負極活物質粒子201間に隙間204Aが生じる。この隙間204Aは、負極活物質層22Bの結着性を低下させる原因となるため、その結着性を高めるために、上記した隙間204Aに金属材料206が充填されている。この場合には、隙間204Aの一部でも充填されていればよいが、その充填量が多いほど好ましい。負極活物質層22Bの結着性がより向上するからである。金属材料206の充填量は、20%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。
また、金属材料206は、負極活物質粒子201内の隙間204Bに入り込んでいる。詳細には、負極活物質粒子201が多層構造を有する場合には、各階層間に隙間204Bが生じる。この隙間204Bは、上記した隙間204Aと同様に、負極活物質層22Bの結着性を低下させる原因となるため、その結着性を高めるために、上記した隙間204Bに金属材料206が充填されている。この場合には、隙間204Bの一部でも充填されていればよいが、その充填量が多いほど好ましい。負極活物質層22Bの結着性がより向上するからである。
なお、負極活物質層22Bは、最上層の負極活物質粒子201の露出面に生じるひげ状の微細な突起部(図示せず)が二次電池の性能に悪影響を及ぼすことを抑えるために、空隙205に金属材料206を有していてもよい。詳細には、気相法などによって負極活物質粒子201が形成される場合には、その表面にひげ状の微細な突起部が生じるため、その突起部間に空隙205が生じる。この空隙205は、負極活物質粒子201の表面積の増加を招き、その表面に形成される不可逆性の被膜の量も増加させるため、電極反応(充放電反応)の進行度を低下させる原因となる可能性がある。したがって、電極反応の進行度の低下を抑えるために、上記した空隙205に金属材料206が埋め込まれている。この場合には、空隙205の一部でも埋め込まれていればよいが、その埋め込む量が多いほど好ましい。電極反応の進行度の低下がより抑えられるからである。図6において、最上層の負極活物質粒子201の表面に金属材料206が点在していることは、その点在箇所に上記した微細な突起部が存在していること表している。もちろん、金属材料206は、必ずしも負極活物質粒子201の表面に点在していなければならないわけではなく、その表面全体を被覆していてもよい。
特に、隙間204Bに入り込んだ金属材料206は、各階層における空隙205を埋め込む機能も果たしている。詳細には、負極材料が複数回に渡って堆積される場合には、その堆積時ごとに負極活物質粒子201の表面に上記した微細な突起部が生じる。このことから、金属材料206は、各階層における隙間204Bに充填されているだけでなく、各階層における空隙205も埋め込んでいる。
なお、図5および図6では、負極活物質粒子201が多層構造を有しており、負極活物質層22B中に隙間204A,204Bの双方が存在している場合について説明したため、負極活物質層22Bが隙間204A,204Bに金属材料206を有している。これに対して、負極活物質粒子201が単層構造を有しており、負極活物質層22B中に隙間204Aだけが存在する場合には、負極活物質層22Bが隙間204Aだけに金属材料206を有することとなる。もちろん、空隙205は両者の場合において生じるため、いずれの場合においても空隙205に金属材料206を有することとなる。
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触に起因する電流の短絡(ショート)を防止しながらリチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、平均孔径が5μm程度あるいはそれ以下の多孔質膜であるのが好ましく、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂からなる多孔質膜、またはセラミックからなる多孔質膜や、これらの2種以上の多孔質膜が積層されたものなどが挙げられる。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜は、ショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による二次電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。特に、ポリエチレンは、100℃以上160℃以下でシャットダウン効果を得ることができると共に、電気化学的安定性が優れているので好ましい。また、ポリプロピレンも好ましく、他にも化学的安定性を備えた樹脂であれば、ポリエチレンあるいはポリプロピレンと共重合させたものや、ブレンド化したものを用いることができる。
セパレータ23には、液状の電解質として上記した非水電解液が含浸されている。本発明の非水電解液を用いることで、低温時のサイクル特性が向上するとともに、高温保存時の安定性も高くなるからである。
この二次電池は、例えば、以下の手順によって製造される。
まず、正極21を作製する。最初に、正極活物質と、結着剤と、導電剤とを混合して正極合剤としたのち、有機溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、ドクタブレードあるいはバーコータなどによって正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させる。最後に、必要に応じて加熱しながらロールプレス機などによって塗膜を圧縮成型して正極活物質層21Bを形成する。この場合には、圧縮成型を複数回に渡って繰り返してもよい。
次に、負極22を作製する。最初に、電解銅箔などからなる負極集電体22Aを準備したのち、蒸着法などの気相法によって負極集電体22Aの両面に負極材料を堆積させて、複数の負極活物質粒子201を形成する。最後に、必要に応じて、液相析出法などの液相法によって酸化物含有膜202を形成し、あるいは電解鍍金法などの液相法によって金属材料を形成して、負極活物質層22Bを形成する。
次に、正極集電体21Aに正極リード25を溶接などして取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接などして取り付ける。続いて、セパレータ23を介して正極21と負極22とを積層させてから、長手方向において巻回させて巻回電極体20を作製する。
二次電池の組み立ては、以下のようにして行う。最初に、巻回電極体20の巻回中心部にセンターピン24を挿入する。続いて、巻回電極体20を一対の絶縁板12,13で挟みながら電池缶11の内部に収納すると共に、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接し、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接する。続いて、電池缶11の内部に電解液を注入してセパレータ23に含浸させる。最後に、電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1および図2に示した二次電池が完成する。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して負極22に吸蔵される。一方、放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して正極21に吸蔵される。
この円筒型の二次電池によれば、負極22の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づいて表される場合に、上記した電解液を備えているので、充放電を繰り返しても、その電解液の分解反応が抑制される。したがって、サイクル特性を向上させることができる。
特に、負極22が高容量化に有利なケイ素あるいはスズを有する材料等(リチウムを吸蔵および放出することが可能であると共に金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を有する材料)を含む場合にサイクル特性が向上するため、炭素材料などの他の負極材料を含む場合よりも高い効果を得ることができる。
この二次電池に関する他の効果は、上記した電解液について説明した場合と同様である。
(第2の二次電池)
次に、第2の二次電池について説明するが、第1の二次電池と共通の構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。第2の二次電池は、負極22の容量がリチウムの析出および溶解に基づいて表されるリチウム金属二次電池である。この二次電池は、負極活物質層22Bがリチウム金属によって構成されている点を除き、第1の二次電池と同様の構成を有していると共に同様の手順によって製造される。
この二次電池は、負極活物質としてリチウム金属を用いており、これにより高いエネルギー密度を得ることができるようになっている。負極活物質層22Bは、組み立て時から既に有するようにしてもよいが、組み立て時には存在せず、充電時に析出したリチウム金属によって構成されるようにしてもよい。また、負極活物質層22Bを集電体としても利用することにより、負極集電体22Aを省略するようにしてもよい。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、電解液を介して負極集電体22Aの表面にリチウム金属となって析出する。一方、放電を行うと、例えば、負極活物質層22Bからリチウム金属がリチウムイオンとなって溶出し、電解液を介して正極21に吸蔵される。
この円筒型の二次電池によれば、負極22の容量がリチウムの析出および溶解に基づいて表される場合に、上記した電解液を備えているので、サイクル特性を向上させることができる。この二次電池に関する他の効果は、上記した電解液について説明した場合と同様である。
(第3の二次電池)
図7は、第3の二次電池の分解斜視構成を表している。この二次電池は、主に、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30をフィルム状の外装部材40の内部に収容したものである。このフィルム状の外装部材40を用いた電池構造は、ラミネートフィルム型と呼ばれている。
正極リード31および負極リード32は、例えば、それぞれ外装部材40の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。正極リード31は、例えば、アルミニウムなどの金属材料によって構成されている。また、負極リード32は、例えば、銅、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によって構成されている。正極リード31および負極リード32を構成するそれぞれの金属材料は、例えば、薄板状あるいは網目状とされている。
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムがこの順に貼り合わされた矩形状のアルミラミネートフィルムによって構成されている。この外装部材40では、例えば、ポリエチレンフィルムが巻回電極体30と対向していると共に、各外縁部が融着あるいは接着剤によって互いに密着されている。外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。この密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂によって構成されている。
なお、外装部材40は、上記した3層構造のアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルムにより構成されていてもよいし、またはポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムによって構成されていてもよい。
図8は、図7に示した巻回電極体30のVIII−VIII線に沿った断面構成を表しており、図9は図8に示した巻回電極体30の断面構成の一部を拡大して示す図である。この電極巻回体30は、正極33と負極34とがセパレータ35および電解質36を介して積層されたのちに巻回されたものであり、その最外周部は保護テープ37により保護されている。
正極33は、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bが設けられたものである。負極34は、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bが設けられたものであり、その負極活物質層34Bが正極活物質層33Bと対向するように配置されている。正極集電体33A、正極活物質層33B、負極集電体34A、負極活物質層34Bおよびセパレータ35の構成は、それぞれ上記した第1あるいは第2の二次電池における正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22A、負極活物質層22Bおよびセパレータ23の構成と同様である。
電解質36は、上記した電解液と、それを保持する高分子化合物とを含んでおり、いわゆるゲル状になっている。ゲル状の電解質は、高いイオン伝導率(例えば、室温で1mS/cm以上)が得られると共に漏液が防止されるので好ましい。
高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとポリヘキサフルオロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンあるいはポリカーボネートなどが挙げられる。これらは、単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。特に、電気化学的安定性の点から、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドなどを用いることが好ましい。電解液中における高分子化合物の添加量は、両者の相溶性によっても異なるが、5質量%以上50質量%以下の範囲内であることが好ましい。
電解液の組成は、上記した第1の二次電池における電解液の組成と同様である。ただし、ここで言う溶媒とは、液状の溶媒だけでなく、電解質塩を解離させることが可能なイオン伝導性を有するものまで含む広い概念である。したがって、イオン伝導性を有する高分子化合物を用いる場合には、その高分子化合物も溶媒に含まれる。
なお、電解液を高分子化合物に保持させた電解質36に代えて、電解液をそのまま用いてもよい。この場合には、電解液がセパレータ35に含浸される。
この二次電池は、例えば、以下の3種類の製造方法によって製造される。
第1の製造方法では、最初に、例えば、第1の二次電池の製造方法と同様の手順により、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bを形成して正極33を作製すると共に、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bを形成して負極34を作製する。
続いて、電解液と、高分子化合物と、溶剤とを含む前駆溶液を調製して正極33および負極34に塗布したのち、溶剤を揮発させてゲル状の電解質36を形成する。続いて、正極集電体33Aおよび負極集電体34Aにそれぞれ正極リード31および負極リード32を取り付ける。続いて、電解質36が設けられた正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層させてから長手方向に巻回し、その最外周部に保護テープ37を接着させて巻回電極体30を形成する。最後に、例えば、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込んだのち、その外装部材40の外縁部同士を熱融着などで接着させて巻回電極体30を封入する。その際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間に、密着フィルム41を挿入する。これにより、図7および図8に示した二次電池が完成する。
第2の製造方法では、最初に、正極33に正極リード31を取り付けると共に負極34に負極リード32を取り付けたのち、セパレータ35を介して正極33と負極34とを積層して巻回させると共に最外周部に保護テープ37を接着させて、巻回電極体30の前駆体である巻回体を作製する。続いて、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回体を挟み込んだのち、一辺の外周縁部を除いた残りの外周縁部を熱融着などで接着させて、袋状の外装部材40の内部に巻回体を収納する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を調製して袋状の外装部材40の内部に注入したのち、外装部材40の開口部を熱融着などで密封する。最後に、モノマーを熱重合させて高分子化合物とすることにより、ゲル状の電解質36を形成する。これにより、二次電池が完成する。
第3の製造方法では、最初に、高分子化合物が両面に塗布されたセパレータ35を用いることを除き、上記した第2の製造方法と同様に、巻回体を形成して袋状の外装部材40の内部に収納する。このセパレータ35に塗布する高分子化合物としては、例えば、フッ化ビニリデンを成分とする重合体、すなわち単独重合体、共重合体あるいは多元共重合体などが挙げられる。具体的には、ポリフッ化ビニリデンや、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンを成分とする二元系共重合体や、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびクロロトリフルオロエチレンを成分とする三元系共重合体などである。なお、高分子化合物は、上記したフッ化ビニリデンを成分とする重合体と共に、他の1種あるいは2種以上の高分子化合物を含んでいてもよい。続いて、電解液を調製して外装部材40の内部に注入したのち、その外装部材40の開口部を熱融着などで密封する。最後に、外装部材40に加重をかけながら加熱し、高分子化合物を介してセパレータ35を正極33および負極34に密着させる。これにより、電解液が高分子化合物に含浸し、その高分子化合物がゲル化して電解質36が形成されるため、二次電池が完成する。
この第3の製造方法では、第1の製造方法と比較して、二次電池の膨れが抑制される。また、第3の製造方法では、第2の製造方法と比較して、高分子化合物の原料であるモノマーや溶媒などが電解質36中にほとんど残らず、しかも高分子化合物の形成工程が良好に制御されるため、正極33、負極34およびセパレータ35と電解質36との間において十分な密着性が得られる。
このラミネートフィルム型の二次電池によれば、上記した電解液を備えているので、サイクル特性を向上させることができる。この二次電池に関する上記以外の効果は、第1あるいは第2の二次電池と同様である。
(第4の二次電池)
図10は第4の二次電池の断面構成を表している。この第4の二次電池は、正極51を外装缶54に貼り付けると共に、負極52を外装カップ55に収容し、それらを電解液が含浸されたセパレータ53を介して積層したのちにガスケット56を介してかしめたものである。この外装缶54および外装カップ55を用いた電池構造は、いわゆるコイン型と呼ばれている。
正極51は、正極集電体51Aの一面に正極活物質層51Bが設けられたものである。負極52は、負極集電体52Aの一面に負極活物質層52Bが設けられたものである。正極集電体51A、正極活物質層51B、負極集電体52A、負極活物質層52Bおよびセパレータ53の構成は、それぞれ上記した第1あるいは第2の二次電池における正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22A、負極活物質層22Bおよびセパレータ23の構成と同様である。また、セパレータ53に含浸された電解液の組成も第1あるいは第2の二次電池における電解液の組成と同様である。
このコイン型の二次電池による作用および効果は、上記した第1ないし第3の二次電池と同様である。
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
<実施例1−1〜1−24、比較例1−1〜1−17>
(実施例1−1)
図1に示したような円筒型二次電池を作成した。最初に、正極21を作製した。まず、炭酸リチウム(Li2 CO3)と炭酸コバルト(CoCO3)とをLiCo:CoCO=0.5:1のモル比で混合したのち、空気中において900℃で5時間焼成することにより、正極材料としてのリチウム含有化合物であるリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2)を得た。次いで、このリチウム・コバルト複合酸化物91質量部と、導電剤としてグラファイト6質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して正極合剤としたのち、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状の正極合剤スラリーとした。続いて、帯状のアルミニウム箔(12μm厚)からなる正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを厚さ140μmとなるように塗布して乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成型して正極活物質層21Bを形成した。そののち、正極集電体21Aの一端に、アルミニウム製の正極リード25を溶接して取り付けた。
次に、負極22を作製した。負極活物質として人造黒鉛粉末97質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して負極合剤スラリーとしたのち、N−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状の負極合剤スラリーとした。続いて、帯状の銅箔(15μm厚)からなる負極集電体22Aの両面に負極合剤スラリーを厚さ130μmとなるように均一に塗布して乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成型して負極活物質層22Bを形成した。その後、負極集電体22Aの一端に、ニッケル製の負極リード26を取り付けた。
次に、非水電解液を調製した。まず、非水溶媒として、炭酸エチレン(EC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、ハロゲン化環状炭酸エステルとして式(3−1)に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、ハロゲン化ベンゼン化合物として式(1−1)に示したフルオロメトキシベンゼンを、質量比29.8:70:0.1:0.1の割合で混合した。その後、非水溶媒に電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を加えて溶解させた。この際、電解液中における電解質塩の濃度が1.3mol/kgとなるようにした。
次に、微多孔性ポリプロピレンフィルム(25μm厚)からなるセパレータ23を用意し、正極21、セパレータ23、負極22とをこの順に積層してから渦巻状に多数回巻回させたのち、巻き終わり部分を粘着テープで固定することにより、巻回電極体20を作製した。続いて、ニッケルめっきが施された鉄製の電池缶11を準備し、巻回電極体20を一対の絶縁板12,13で挟み、負極リード26を電池缶11に溶接すると共に正極リード25を安全弁機構15に溶接して、その巻回電極体20を電池缶11の内部に収納した。その後、電池缶11の内部に、減圧方式により非水電解液を注入した。
最後に、表面にアスファルトが塗布されたガスケット17を介して電池缶11をかしめることにより、安全弁機構15、熱感抵抗素子16および電池蓋14を固定した。これにより、電池缶11の内部の気密性が確保され、円筒型の二次電池が完成した。
(実施例1−2〜1−4)
非水電解液の非水溶媒として、炭酸エチレン(EC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、フルオロメトキシベンゼンを表1に示す比率で配合した以外は、実施例1−1と同様とした。
(実施例1−5〜1−8)
非水溶媒中、フルオロメトキシベンゼンを式(1−2)に示したジフルオロメトキシベンゼンに代えたこと以外は、実施例1−1〜1−4と同様とした。
(実施例1−9〜1−12)
非水溶媒中、フルオロメトキシベンゼンを式(1−3)に示したトリフルオロメトキシベンゼンに代えたこと以外は、実施例1−1〜1−4と同様とした。
(実施例1−13〜1−16)
非水溶媒中、フルオロメトキシベンゼンを式(1−4)に示した4−トリフルオロメトキシトルエンに代えたこと以外は、実施例1−1〜1−4と同様とした。
(実施例1−17〜1−20)
非水溶媒中、フルオロメトキシベンゼンを式(1−5)に示した1,1,2,2−テトラフルオロエトキシベンゼンに代えたこと以外は、実施例1−1〜1−4と同様とした。
(実施例1−21〜1−24)
非水溶媒中、フルオロメトキシベンゼンを式(1−6)に示した1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシベンゼンに代えたこと以外は、実施例1−1〜1−4と同様とした。
(比較例1−1)
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、ならびにフルオロメトキシベンゼンを加えなかったこと以外は、実施例1−1と同様とした。
(比較例1−2、1−3)
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを加えなかったこと以外は、実施例1−1、1−2と同様とした。
(比較例1−4、1−5)
フルオロメトキシベンゼンをジフルオロメトキシベンゼンに代えたこと以外は、比較例1−2、1−3と同様とした。
(比較例1−6、1−7)
フルオロメトキシベンゼンをトリフルオロメトキシベンゼンに代えたこと以外は、比較例1−2、1−3と同様とした。
(比較例1−8、1−9)
フルオロメトキシベンゼンを4−トリフルオロメトキシトルエンに代えたこと以外は、比較例1−2、1−3と同様とした。
(比較例1−10、1−11)
フルオロメトキシベンゼンを1,1,2,2−テトラフルオロエトキシベンゼンに代えたこと以外は、比較例1−2、1−3と同様とした。
(比較例1−12、1−13)
フルオロメトキシベンゼンを1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシベンゼンに代えたこと以外は、比較例1−2、1−3と同様とした。
(比較例1−14、1−15)
フルオロメトキシベンゼンを加えなかったこと以外は、実施例1−1、1−3と同様とした。
(比較例1−16、1−17)
フルオロメトキシベンゼンを3,5−ジフルオロアニソールに代えたこと以外は、実施例1−1、1−4と同様とした。
これらの実施例1−1〜1−24および比較例1−1〜1−17の二次電池について低温(−5℃)サイクル特性および高温保存特性を調べたところ、表1および表2に示す結果が得られた。
低温でのサイクル特性を調べる際には、以下の手順によって二次電池を繰り返し充放電させて放電容量維持率を求めた。まず、23℃の雰囲気中で1サイクル目の充放電を行い、放電容量を測定した。次いで、23℃で充電し、−20℃で3時間保存したのち、−5℃の雰囲気中で放電するという2サイクル目の充放電を行い、続いて、−5℃の雰囲気中で3サイクル目から50サイクルとなるまで充放電を行い、放電容量を測定した。最後に、1サイクル目の放電容量を100とした場合の50サイクル目の放電容量維持率(%)を求めた。その際、いずれも充電は、1mA/cmの定電流密度で電池電圧が4.2Vに達するまで行ったのち、4.2Vの定電圧で電流密度が0.02mA/cmに達するまで行い、放電は、1mA/cmの定電流密度で電池電圧が3.0Vに達するまで行った。
高温保存特性は、23℃の雰囲気中で充放電を2サイクル繰り返し、放電容量を測定した。次いで、再び充電して80℃の恒温槽に10日間放置したのち、再び23℃の雰囲気中で放電を行い、放電容量を測定した。80℃での保存前の放電容量に対する保存後の放電容量の割合、すなわち放電容量維持率(%)=(「保存後の放電容量」/「保存前の放電容量」)×100を求めた。なお、保存前の放電容量は2サイクル目の放電容量であり、保存後の放電容量は保存直後の放電容量、すなわち全体では3サイクル目の放電容量である。
Figure 2010192327
Figure 2010192327
表1および表2に示したように、非水溶媒中にハロゲン化ベンゼン化合物およびハロゲン化環状炭酸エステルを含有する実施例1−1〜1−24では、それらをいずれも含有しない比較例1−1、ならびにいずれか一方のみを含有する比較例1−2〜1−15よりも低温サイクルにおける放電容量維持率および高温保存後の放電容量維持率が高かった。そして、本発明に係る式(1)で示されるハロゲン化ベンゼン化合物以外の化合物である3,5−ジフルオロアニソールを加えた比較例1−16、1−17よりも実施例1−1〜1−24の放電容量維持率が高かった。
これらのことから、特定のハロゲン化ベンゼン化合物とハロゲン化環状炭酸エステルを組み合わせることで、低温サイクルにおける放電容量維持率および高温保存後の放電容量維持率が向上することが確認された。
<実施例2−1〜2−72、比較例2−1〜2−10>
(実施例2−1〜2−6)
非水溶媒中におけるフルオロメトキシベンゼンの添加量を3質量%とし、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)の添加量を0.1質量%、1質量%、5質量%、10質量%、29.1質量%、50質量%として、炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)の添加量をそれぞれ表3に示す比率で配合した以外は、実施例1−1と同様の手順で二次電池を作製した。
(実施例2−7〜2−12)
非水溶媒中、フルオロメトキシベンゼンをジフルオロメトキシベンゼンに代えたこと以外は、実施例2−1〜2−6と同様とした。
(実施例2−13〜2−18)
非水溶媒中、フルオロメトキシベンゼンをトリフルオロメトキシベンゼンに代えたこと以外は、実施例2−1〜2−6と同様とした。
(実施例2−19〜2−24)
非水溶媒中、フルオロメトキシベンゼンを4−トリフルオロメトキシトルエンに代えたこと以外は、実施例2−1〜2−6と同様とした。
(実施例2−25〜2−30)
非水溶媒中、フルオロメトキシベンゼンを1,1,2,2−テトラフルオロエトキシベンゼンに代えたこと以外は、実施例2−1〜2−6と同様とした。
(実施例2−31〜2−36)
非水溶媒中、フルオロメトキシベンゼンを1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシベンゼンに代えたこと以外は、実施例2−1〜2−6と同様とした。
(実施例2−37〜2−72)
非水溶媒中、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンに代えて式(3−3)に示した4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を添加したこと以外は、実施例2−1〜2−36と同様とした。
(比較例2−1〜2−6)
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを加えなかったこと以外は、実施例2−1、2−7、2−13、2−19、2−25、2−31と同様とした。
(比較例2−7)
フルオロメトキシベンゼンを加えなかったこと以外は、実施例2−3と同様とした。
(比較例2−8)
フルオロメトキシベンゼンを3,5−ジフルオロアニソールに代えたこと以外は、実施例2−3と同様とした。
(比較例2−9)
フルオロメトキシベンゼンを加えなかったこと以外は、実施例2−39と同様とした。
(比較例2−10)
フルオロメトキシベンゼンを3,5−ジフルオロアニソールに代えたこと以外は、実施例2−39と同様とした。
これらの実施例2−1〜2−72および比較例2−1〜2−10の二次電池について低温(−5℃)サイクル特性および高温保存特性を調べたところ、表3、表4および表5に示す結果が得られた。
Figure 2010192327
Figure 2010192327
Figure 2010192327
表3〜5に示したように、ハロゲン化環状炭酸エステルとして4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を用いた実施例2−37〜2−72でも、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)を用いた実施例2−1〜2−36と同様に比較例2−1〜2−10と比較して、低温サイクルにおける放電容量維持率および高温保存後の放電容量維持率が向上することが確認された。また、ハロゲン化環状炭酸エステルの非水溶媒の含有量が0.1〜50質量%の範囲内で高い放電容量維持率が得られ、1〜50質量%の範囲内でより高い放電容量維持率が得られることがわかった。
<実施例3−1〜3−20、比較例3−1〜3−4>
(実施例3−1〜3−5)
非水溶媒を、炭酸エチレン(EC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、ハロゲン化鎖状炭酸エステルとして式(2−1)に示した炭酸フルオロメチルメチル(FDMC)と、ハロゲン化ベンゼン化合物として式(1−2)に示したジフルオロメトキシベンゼンとで構成した。非水溶媒中におけるジフルオロメトキシベンゼンの添加量を3質量%とし、FDMCの添加量を0.1質量%、1質量%、10質量%、30質量%、50質量%として、炭酸エチレンと炭酸ジメチルの添加量を表6に示す比率で配合した以外は、実施例1−1と同様の手順で二次電池を作製した。
(実施例3−6〜3−10)
非水溶媒中、ジフルオロメトキシベンゼンをトリフルオロメトキシベンゼンに代えたこと以外は、実施例3−1〜3−5と同様とした。
(実施例3−11〜3−15)
非水溶媒中、炭酸フルオロメチルメチルを式(2−2)に示した炭酸ビス(フルオロメチル)(DFDMC)に代えたこと以外は、実施例3−1〜3−5と同様とした。
(実施例3−16〜3−20)
非水溶媒中、炭酸フルオロメチルメチルを炭酸ビス(フルオロメチル)に代えたこと以外は、実施例3−6〜3−10と同様とした。
(比較例3−1、3−2)
ジフルオロメトキシベンゼンを加えなかったこと以外は、実施例3−3、3−13と同様とした。
(比較例3−3、3−4)
ジフルオロメトキシベンゼンを3,5−ジフルオロアニソールに代えたこと以外は、実施例3−3、3−13と同様とした。
これらの実施例3−1〜3−20および比較例3−1〜3−4の二次電池について低温(−5℃)サイクル特性および高温保存特性を調べたところ、表6に示す結果が得られた。
Figure 2010192327
表6に示したように、非水溶媒中にハロゲン化ベンゼン化合物およびハロゲン化鎖状炭酸エステルを含有する実施例3−1〜3−20では、ハロゲン化ベンゼン化合物を含有しない比較例3−1、3−2よりも低温サイクルにおける放電容量維持率および高温保存後の放電容量維持率が高かった。また、この結果は、ハロゲン化ベンゼン化合物とハロゲン化鎖状炭酸エステルのいずれも含有しない比較例1−1、ならびにハロゲン化鎖状炭酸エステルを含有しない比較例2−1、2−2と比較しても放電容量維持率が高かった。そして、本発明に係る式(1)で示されるハロゲン化ベンゼン化合物以外の化合物である3,5−ジフルオロアニソールを加えた比較例3−3、3−4よりも実施例3−1〜3−20の放電容量維持率が高かった。
これらのことから、特定のハロゲン化ベンゼン化合物とハロゲン化鎖状炭酸エステルを組み合わせることで、低温サイクルにおける放電容量維持率および高温保存後の放電容量維持率が向上することが確認された。
<実施例4−1〜4−60>
(実施例4−1〜4−5)
非水溶媒中における4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)の添加量を5質量%とし、フルオロメトキシベンゼンの添加量を0.1質量%、1質量%、3質量%、10質量%、20質量%として、炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)の添加量をそれぞれ表7に示す比率で配合した以外は、実施例1−1と同様の手順で二次電池を作製した。
(実施例4−5〜4−10)
非水溶媒中、フルオロメトキシベンゼンをジフルオロメトキシベンゼンに代えたこと以外は、実施例4−1〜4−5と同様とした。
(実施例4−11〜4−15)
非水溶媒中、フルオロメトキシベンゼンをトリフルオロメトキシベンゼンに代えたこと以外は、実施例4−1〜4−5と同様とした。
(実施例4−16〜4−20)
非水溶媒中、フルオロメトキシベンゼンを4−トリフルオロメトキシトルエンに代えたこと以外は、実施例4−1〜4−5と同様とした。
(実施例4−21〜4−25)
非水溶媒中、フルオロメトキシベンゼンを1,1,2,2−テトラフルオロエトキシベンゼンに代えたこと以外は、4−1〜4−5と同様とした。
(実施例4−26〜4−30)
非水溶媒中、フルオロメトキシベンゼンを1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシベンゼンに代えたこと以外は、実施例4−1〜4−5と同様とした。
(実施例4−31〜4−60)
非水溶媒中、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンに代えて式(3−3)に示した4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を添加したこと以外は、実施例4−1〜4−30と同様とした。
これらの実施例4−1〜4−60の二次電池について低温(−5℃)サイクル特性および高温保存特性を調べたところ、表7および表8に示す結果が得られた。
Figure 2010192327
Figure 2010192327
表7、8に示したように、ハロゲン化環状炭酸エステルとして4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)を用いた実施例4−1〜4−30、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を用いた実施例4−31〜4−60は、特定のハロゲン化ベンゼン化合物と組み合わせることにより、表5に示した比較例2−1〜2−10と比較して、低温サイクルにおける放電容量維持率および高温保存後の放電容量維持率が向上することが確認された。また、ハロゲン化ベンゼン化合物の非水溶媒の含有量が0.1〜20質量%の範囲内で高い放電容量維持率が得られ、1〜10質量%の範囲内でより高い放電容量維持率が得られることがわかった。
<実施例5−1〜5−20、比較例5−1〜5−4>
(実施例5−1〜5−5)
非水溶媒中における炭酸フルオロメチルメチル(FDMC)の添加量10質量%とし、ジフルオロメトキシベンゼンの添加量を0.1質量%、1質量%、3質量%、10質量%、20質量%として、炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)の添加量をそれぞれ表9に示す比率で配合した以外は、実施例1−1と同様の手順で二次電池を作製した。
(実施例5−6〜5−10)
非水溶媒中、ジフルオロメトキシベンゼンをトリフルオロメトキシベンゼンに代えたこと以外は、実施例5−1〜5−5と同様とした。
(実施例5−11〜5−15)
非水溶媒中、炭酸フルオロメチルメチルを炭酸ビス(フルオロメチル)(DFDMC)に代えたこと以外は、実施例5−1〜5−5と同様とした。
(実施例5−16〜5−20)
非水溶媒中、炭酸フルオロメチルメチルを炭酸ビス(フルオロメチル)(DFDMC)に代えたこと以外は、実施例5−6〜5−10と同様とした。
(比較例5−1、5−2)
ジフルオロメトキシベンゼンを加えなかったこと以外は、実施例5−3、5−13と同様とした。
(比較例5−3、5−4)
ジフルオロメトキシベンゼンを3,5−ジフルオロアニソールに代えたこと以外は、実施例5−3、5−13と同様とした。
これらの実施例5−1〜5−20および比較例5−1〜5−4の二次電池について低温(−5℃)サイクル特性および高温保存特性を調べたところ、表9に示す結果が得られた。
Figure 2010192327
表9に示したように、ハロゲン化鎖状炭酸エステルとして炭酸フルオロメチルメチルを用いた実施例5−1〜5−10、炭酸ビス(フルオロメチル)を用いた実施例5−11〜5−20は、特定のハロゲン化ベンゼン化合物と組み合わせることにより、ハロゲン化ベンゼン化合物を含有しない比較例5−1、5−2、ならびに本発明に係る式(1)で示されるハロゲン化ベンゼン化合物以外の化合物である3,5−ジフルオロアニソールを加えた比較例5−3、5−4と比較して、低温サイクルにおける放電容量維持率および高温保存後の放電容量維持率が向上することが確認された。
<実施例6−1〜6−16>
非水溶媒を、炭酸エチレン(EC)と、炭酸ジメチル(DMC)と、ハロゲン化環状炭酸エステルと、ハロゲン化鎖状炭酸エステルと、ハロゲン化ベンゼン化合物とで構成し、表10に示す比率で配合した以外は、実施例1−1と同様の手順で二次電池を作製した。
これらの実施例6−1〜6−16の二次電池について低温(−5℃)サイクル特性および高温保存特性を調べたところ、表10に示す結果が得られた。
Figure 2010192327
表10に示したように、非水溶媒中に、特定のハロゲン化環状炭酸エステルと、ハロゲン化鎖状炭酸エステルと、ハロゲン化ベンゼン化合物を添加することにより、低温サイクルにおける放電容量維持率が60%以上、高温保存後の放電容量維持率が約85%以上であった。これは、ハロゲン化ベンゼン化合物と、ハロゲン化環状炭酸エステル、ハロゲン化鎖状炭酸エステルのいずれも含有しない比較例1−1、ハロゲン化ベンゼン化合物のみを添加した比較例2−1〜2−6、ハロゲン化環状炭酸エステルのみを添加した比較例2−7、2−9、ならびにハロゲン化鎖状炭酸エステルのみを添加した比較例5−1、5−2と比較しても放電容量維持率が高かった。
<実施例7−1〜7−4、比較例7−1〜7−8>
(実施例7−1)
非水溶媒中、ハロゲン化環状炭酸エステルとして4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)を5質量%と、ハロゲン化ベンゼン化合物として式(1−3)に示したトリフルオロメトキシベンゼンを3質量%、ビニレンカーボネート(VC)を1質量%添加し、炭酸エチレン(EC)と炭酸ジメチル(DMC)とを質量比23.1:67.9の割合で混合して非水溶媒を作製した。この非水溶媒を用いて、実施例1−1と同様の手順で二次電池を作製した。
(実施例7−2〜7−4)
非水溶媒中、ビニレンカーボネートを、こはく酸無水物(SCAH)、2−スルホ安息香酸無水物(SBAH)、プロペンスルトン(PRS)に代えたこと以外は、実施例7−1と同様とした。
(比較例7−1)
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを加えなかったこと以外は、実施例7−1と同様とした。
(比較例7−2)
トリフルオロメトキシベンゼンを加えなかったこと以外は、実施例7−1と同様とした。
(比較例7−3)
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを加えなかったこと以外は、実施例7−2と同様とした。
(比較例7−4)
トリフルオロメトキシベンゼンを加えなかったこと以外は、実施例7−2と同様とした。
(比較例7−5)
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを加えなかったこと以外は、実施例7−3と同様とした。
(比較例7−6)
トリフルオロメトキシベンゼンを加えなかったこと以外は、実施例7−3と同様とした。
(比較例7−7)
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを加えなかったこと以外は、実施例7−4と同様とした。
(比較例7−8)
トリフルオロメトキシベンゼンを加えなかったこと以外は、実施例7−4と同様とした。
これらの実施例7−1〜7−4および比較例7−1〜7−8の二次電池について低温(−5℃)サイクル特性および高温保存特性を調べたところ、表11に示す結果が得られた。
Figure 2010192327
表11に示したように、非水溶媒中にハロゲン化ベンゼン化合物およびハロゲン化環状炭酸エステルを含有させた実施例7−1〜7−4では、そのいずれかを含有しない比較例7−1〜7−8に比べて、その他の添加剤を添加した場合においても低温サイクルにおける放電容量維持率および高温保存後の放電容量維持率が高かった。
<実施例8−1〜8−4、比較例8−1〜8−8>
(実施例8−1〜8−4)
非水溶媒中、ハロゲン化環状炭酸エステルとして4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)を5質量%と、ハロゲン化ベンゼン化合物として式(1−3)に示したトリフルオロメトキシベンゼンを3質量%添加し、炭酸エチレン(EC)と炭酸ジメチル(DMC)とを質量比23.1:67.9の割合で混合して非水溶媒を作製した。この非水溶媒に電解質塩として、フッ化リン酸リチウム(LiPF)1.3mol/kgにかえて、表12に示すように、LiPF1.2mol/kgとリチウムテトラフルオロボレート(LiBF)0.1mol/kg、リチウムビス(オギザレート)ボレート(LiBOB)0.1mol/kg、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)0.1mol/kg、1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドリチウム(環状イミド)0.1mol/kgを組み合わせたものを加えて溶解させて非水電解液を調製した。この際、電解液中における電解質塩の濃度が1.3mol/kgとなるようにした。
この非水電解液を用いて実施例1−1と同様の手順で二次電池を作製した。
(比較例8−1)
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを加えなかったこと以外は、実施例8−1と同様とした。
(比較例8−2)
トリフルオロメトキシベンゼンを加えなかったこと以外は、実施例8−1と同様とした。
(比較例8−3)
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを加えなかったこと以外は、実施例8−2と同様とした。
(比較例8−4)
トリフルオロメトキシベンゼンを加えなかったこと以外は、実施例8−2と同様とした。
(比較例8−5)
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを加えなかったこと以外は、実施例8−3と同様とした。
(比較例8−6)
トリフルオロメトキシベンゼンを加えなかったこと以外は、実施例8−3と同様とした。
(比較例8−7)
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを加えなかったこと以外は、実施例8−4と同様とした。
(比較例8−8)
トリフルオロメトキシベンゼンを加えなかったこと以外は、実施例8−4と同様とした。
これらの実施例8−1〜8−4および比較例8−1〜8−8の二次電池について低温(−5℃)サイクル特性および高温保存特性を調べたところ、表12に示す結果が得られた。
Figure 2010192327
表12に示したように、非水溶媒中にハロゲン化ベンゼン化合物およびハロゲン化環状炭酸エステルを含有させた実施例8−1〜8−4では、そのいずれかを含有しない比較例8−1〜8−8に比べて、その他の電解質塩を添加した場合においても低温サイクルにおける放電容量維持率および高温保存後の放電容量維持率が高かった。
<実施例9−1〜9−20、比較例9−1〜9−4>
(実施例9−1〜9−5)
負極活物質にケイ素を用い以下に説明するように作製した負極を用い、実施例1−1と同様にして、実施例9−1〜9−5の二次電池を作製した。
銅箔(15μm厚)からなる負極集電体22Aの両面に、電子ビーム蒸着法によりケイ素からなる負極活物質層22Bを形成することにより、負極22を作製した。こののち、負極集電体22Aの一端に、ニッケル製の負極リード26を取り付けた。
非水溶媒は、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)の添加量を1質量%として、トリフルオロメトキシベンゼン、炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)をそれぞれ表13に示す比率で配合して調製した。
(実施例9−6〜9−10)
非水溶媒中、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの添加量を10質量%としたこと以外は、実施例9−1〜9−5と同様とした。
(実施例9−11〜9−15)
非水溶媒中、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの添加量を50質量%とし、炭酸エチレンを添加しなかったこと以外は、実施例9−1〜9−5と同様とした。
(実施例9−16〜9−20)
非水溶媒中、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)に代え、炭酸エチレンを炭酸プロピレン(PC)に代えたこと以外は、実施例9−6〜9−10と同様とした。
(比較例9−1)
トリフルオロメトキシベンゼンと4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンをともに用いなかったこと以外は、実施例9−3と同様とした。
(比較例9−2)
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを加えなかったこと以外は、実施例9−3と同様とした。
(比較例9−3、9−4)
トリフルオロメトキシベンゼンを加えなかったこと以外は、実施例9−8、9−18と同様とした。
これらの実施例9−1〜9−20および比較例9−1〜9−4の二次電池について低温(−5℃)サイクル特性および高温保存特性を調べたところ、表13に示す結果が得られた。
Figure 2010192327
表13に示したように、負極活物質にケイ素を用いた場合でも、非水溶媒中にハロゲン化ベンゼン化合物およびハロゲン化環状炭酸エステルを含有する実施例9−1〜9−20では、それらをいずれも含有しない比較例9−1、ならびにいずれか一方のみを含有する比較例9−2〜9−4よりも低温サイクルにおける放電容量維持率および高温保存後の放電容量維持率が高かった。
<実施例10−1〜10−20、比較例10−1〜10−4>
(実施例10−1〜10−5)
負極を以下に説明するように作製した以外は、実施例1−1と同様にして、二次電池を作製した。負極22を作製する際には、まず、スズ・コバルト・インジウム・チタン合金粉末と、炭素粉末とを混合したのち、メカノケミカル反応を利用してSnCoC含有材料を合成した。このCoSnC含有材料の組成を分析したところ、スズの含有量は48質量%、コバルトの含有量は23質量%、炭素の含有量は20質量%であり、スズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合Co/(Sn+Co)は32質量%であった。
次に、負極活物質として、上述のCoSnC含有材料粉末80質量部と、導電剤として黒鉛12質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン8質量部とを混合し、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させた。最後に、銅箔(15μm厚)からなる負極集電体22Aに塗布して乾燥させたのちに圧縮成形することにより、負極活物質層22Bを形成した。
非水溶媒は、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)の添加量を1質量%として、トリフルオロメトキシベンゼン、炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)をそれぞれ表14に示す比率で配合して調製した。
(実施例10−6〜10−10)
非水溶媒中、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの添加量を10質量%としたこと以外は、実施例10−1〜10−5と同様とした。
(実施例10−11〜10−15)
非水溶媒中、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの添加量を50質量%とし、炭酸エチレンを添加しなかったこと以外は、実施例10−1〜10−5と同様とした。
(実施例10−16〜10−20)
非水溶媒中、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)に代えたこと以外は、実施例10−6〜10−10と同様とした。
(比較例10−1)
トリフルオロメトキシベンゼンと4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンをともに用いなかったこと以外は、実施例10−3と同様とした。
(比較例10−2)
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを加えなかったこと以外は、実施例10−3と同様とした。
(比較例10−3、10−4)
トリフルオロメトキシベンゼンを加えなかったこと以外は、実施例10−8、10−18と同様とした。
これらの実施例10−1〜10−20および比較例10−1〜10−4の二次電池について低温(−5℃)サイクル特性および高温保存特性を調べたところ、表14に示す結果が得られた。
Figure 2010192327
表14に示したように、負極活物質として、CoSnCを用いた場合でも、非水溶媒中にハロゲン化ベンゼン化合物およびハロゲン化環状炭酸エステルを含有する実施例10−1〜10−20では、それらをいずれも含有しない比較例10−1、ならびにいずれか一方のみを含有する比較例10−2〜10−4よりも低温サイクルにおける放電容量維持率および高温保存後の放電容量維持率が高かった。
以上、実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々変形が可能である。
本発明によれば、高温状況下だけでなく低温状況下の何れにも適用できるサイクル特性に優れた二次電池とすることができる。
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、15A…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17,56…ガスケット、20,30…巻回電極体、21,33,51…正極、21A,33A,51A…正極集電体、21B,33B,51B…正極活物質層、22,34,52…負極、22A,34A,52A…負極集電体、22B,34B,52B…負極活物質層、23,35,53…セパレータ、24…センターピン、25,31…正極リード、26,32…負極リード、36…電解質、37…保護テープ、40…外装部材、41…密着フィルム、54…外装缶、55…外装カップ、201…負極活物質粒子、202…酸化物含有膜、204(204A,204B)…隙間、205…空隙、206…金属材料。

Claims (15)

  1. 非水溶媒に電解質塩が溶解された非水電解液であって、
    前記非水溶媒は、
    下記式(1)で表されるハロゲン化ベンゼン化合物と、
    下記式(2)で表されるハロゲン化鎖状炭酸エステルおよび下記式(3)で表されるハロゲン化環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種のハロゲン化炭酸エステルと
    を含む、非水電解液。
    Figure 2010192327
    (式中、Xは炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基であり、R1,R2,R3,R4,R5は互いに独立して水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基、またはハロゲン原子であり、互いに環を形成していてもよい。)
    Figure 2010192327
    (式中、R21〜R26は互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子あるいはハロゲン化アルキル基である。)
    Figure 2010192327
    (式中、R27〜R30は互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子あるいはハロゲン化アルキル基である。)
  2. 前記非水溶媒中における前記ハロゲン化ベンゼン化合物の含有量は、0.1〜20質量%である、請求項1に記載の非水電解液。
  3. 前記非水溶媒中における前記ハロゲン化炭酸エステルの含有量は、0.1〜50質量%である、請求項1に記載の非水電解液。
  4. 前記ハロゲン化ベンゼン化合物が、下記式(1A)で表される化合物である、請求項1に記載の非水電解液。
    Figure 2010192327
    (式中、Yは水素原子、炭素数1〜19のアルキル基、炭素数1〜19のハロゲン化アルキル基、またはハロゲン原子である。)
  5. 前記ハロゲン化鎖状炭酸エステルは、炭酸フルオロメチルメチルおよび炭酸ビス(フルオロメチル)のうちの少なくとも1種である、請求項1に記載の非水電解液。
  6. 前記ハロゲン化環状炭酸エステルは、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、および4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンのうちの少なくとも1種である、請求項1に記載の非水電解液。
  7. 前記電解質塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、過塩素酸リチウム(LiClO)および六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF)からなる群のうちの少なくとも1種である、請求項1に記載の非水電解液。
  8. 正極および負極と、非水溶媒に電解質塩が溶解された非水電解液を備えた非水電解液二次電池であって、
    前記非水溶媒は、
    下記式(1)で表されるハロゲン化ベンゼン化合物と、
    下記式(2)で表されるハロゲン化鎖状炭酸エステルおよび下記式(3)で表されるハロゲン化環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種のハロゲン化炭酸エステルと
    を含む、非水電解液二次電池。
    Figure 2010192327
    (式中、Xは炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基であり、R1,R2,R3,R4,R5は互いに独立して水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基、またはハロゲン原子であり、互いに環を形成していてもよい。)
    Figure 2010192327
    (式中、R21〜R26は互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子あるいはハロゲン化アルキル基である。)
    Figure 2010192327
    (式中、R27〜R30は互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子あるいはハロゲン化アルキル基である。)
  9. 前記非水溶媒中における前記ハロゲン化ベンゼン化合物の含有量は、0.1〜20質量%である、請求項8に記載の非水電解液二次電池。
  10. 前記非水溶媒中における前記ハロゲン化炭酸エステルの含有量は、0.1〜50質量%である、請求項8に記載の非水電解液二次電池。
  11. 前記ハロゲン化ベンゼン化合物が、下記式(1A)で表される化合物である、請求項8に記載の非水電解液二次電池。
    Figure 2010192327
    (式中、Yは水素原子、炭素数1〜19のアルキル基、炭素数1〜19のハロゲン化アルキル基、またはハロゲン原子である。)
  12. 前記ハロゲン化鎖状炭酸エステルは、炭酸フルオロメチルメチル、および炭酸ビス(フルオロメチル)のうちの少なくとも1種である、請求項8に記載の非水電解液二次電池。
  13. 前記ハロゲン化環状炭酸エステルは、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、および4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンのうちの少なくとも1種である、請求項8に記載の非水電解液二次電池。
  14. 前記電解質塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、過塩素酸リチウム(LiClO)および六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF)からなる群のうちの少なくとも1種である、請求項8に記載の非水電解液二次電池。
  15. 前記負極は、負極集電体と、その負極集電体に設けられた負極活物質層とを有し、
    該負極活物質層は、負極活物質として、ケイ素の単体、合金および化合物、ならびにスズの単体、合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含有する、請求項8に記載の非水電解液二次電池。
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