JP2010191029A - 吸音構造体、吸音構造体群および音響室 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】振動体30の外側に設けた音響フィルタ50は、矩形状の枠体51と、格子状に配置され、複数の流路53を形成する複数枚の板体52,52,・・・と、を具備する。音響フィルタ50は、各流路53を通過した音に垂直方向の成分を持たせる。これにより、音は、振動体30に対して垂直方向から到達する。振動体30に音のエネルギーが効率良く伝わることで音響フィルタ50を有していない吸音構造体に比べて、吸音効率を高める。
【選択図】図1
Description
振動体の形状が長方形で一辺の長さをa[m]、もう一辺の長さをb[m]、振動体のヤング率をE[N/m2]、振動体のポアソン比をσ[−]、p,qを正の整数とすると、以下の数式2に示すようにして板・膜振動型吸音構造体の共振周波数が求められる。そして、建築音響の分野においては、この求めた共振周波数を音響設計に利用している(例えば、非特許文献2参照)。
図1は本発明の実施形態に係る吸音構造体10の分解斜視図、図2は吸音構造体10を上側から見た平面図、図3は図2中の矢視III−III方向から見た縦断面図である。なお、図面においては、本実施形態の構成を分かりやすく図示するために、吸音構造体10の実際の寸法とは異なる寸法で描画している。
図に示す如く、吸音構造体10は、当該吸音構造体10の基台をなす筐体20と、この筐体20の開口部23を施蓋する振動体30と、筐体20と振動体30によって筐体20内に画成される空気層40と、振動体30の外側(筐体20が設けられる面の反対面)に設けられ、流路形成手段となる音響フィルタ50と、を具備する。
また、音響フィルタ50は、各流路53を通過した音に略垂直方向の成分を持たせる。これにより、音は、振動体30に対して略垂直方向から入射される。
このように構成される吸音構造体10においては、振動体30の外側から加わる音圧と空気層40側の音圧との差(即ち、振動体30の前後の音圧差)によって振動体30が弾性振動する。これにより、当該吸音構造体10に到達する音波のエネルギーは、この振動体30の振動により消費されて音が吸収されることになる。この際、振動体30は、前記数式2に示すようにして設定される共振周波数fを中心とした周波数を吸音することになる。
本実施形態による吸音構造体10においては、音響フィルタ50の各流路53を通過した音は、振動体30に向かって略垂直となる成分を持つことになるため、振動体30に対して略垂直方向から入射することになる。これにより、振動体30に対して垂直方向を含めて斜め方向から入射する音の伝搬方向を、音響フィルタ50によって振動体30に対して略垂直方向に変更することで、振動体30に音のエネルギーが効率良く伝わる。この結果、効率良く伝わった音は、振動体30による振動で吸音されるため、同じ音場であっても、音響フィルタ50を有する吸音構造体10は、音響フィルタ50を有していない吸音構造体に比べて、吸音効率を高めることができる。
以上、本発明の一つの実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。
<変形例1>
前記実施形態では、音響フィルタ50の板体52を格子状に形成する場合を例示したが、本発明はこれに限らず、種々の音響フィルタ(流路形成手段)とすることが可能である。
図4に示す音響フィルタ50Aは、矩形状の枠体51Aに対して板体52Aをハニカム状に形成して、板体52A間に六角形状の流路53Aを形成したものである。
図5に示す音響フィルタ50Bは、矩形状の枠体51Bに対して互いに径寸法の異なった筒体52Bを同心円状に配置して、筒体52B間に環状の流路53Bを形成したものである。
図6に示す音響フィルタ50Cは、矩形状の枠体51Cに対して板体52Cを平行状態で配置して、板体52C間にスリット状の流路53Cを形成したものである。
この変形例に記載の吸音構造体10Dは、図7および図8に示すように、当該吸音構造体10Dの基台をなす有底筒状の筐体20Dと、この筐体20Dの開口部23Dを施蓋する円板状の振動体30Dと、筐体20Dと振動体30Dによって筐体20D内に画成される空気層40Dと、振動体30Dの外側に設けられ、流路形成手段となる音響フィルタ50Dと、を具備する。
音響フィルタ50Dは、円錐体の頭部を切り取った円錐台状の枠体51Dに対して、同様の形状で径寸法の異なった複数個の筒体52Dを同心円状に配置して、筒体52D間に環状の流路53D,53D…を形成したものである。枠体51Dの両開口には、図8に示すように、各筒体52Dを固定するための梁55D,55Dが架設される。また、各筒体52Dと振動体30Dとの間には、振動体30Dが振動する領域を確保するための隙間54Dが形成される。
図9に示す吸音構造体10Eは、音響フィルタ50Eの枠体51Dを筐体20Eの一部として形成することで、空気層40Eの容量を変形例1−4に比べて大きく確保する構成となっている。なお、変形例1−4と同一の構成要素には、添え字「E」を付けて、その説明を省略する。この吸音構造体10Eにおいて、振動体30Eが取り付けられる筐体20Eの開口部23Eは、枠体51Eの縮径部となる。
このように構成される吸音構造体10Eにあっては、変形例1−4に記載の吸音構造体10Dの最大寸法(枠体51Dの径寸法)と同じ大きさであっても、空気層40Eの容量を大きく確保できる。そして、吸音構造体10Eは、空気層40Eで形成される空気バネの係数を下げることで振動体30Eの振幅が大きくなり、吸音効率を高めることができる。
図10に示す吸音構造体10Fは、音響フィルタ50Fの枠体51Fを筐体20Fの一部として形成すると共に、振動体30Fを筐体20Fに設けるようにすることで、空気層40Fの容量を変形例1−4に比べて大きく確保する構成となっている。なお、変形例1−4と同一の構成要素には、添え字「F」を付けて、その説明を省略する。
この吸音構造体10Fにおいては、振動体30Fが取り付けられる筐体20Fの開口部23Fの径寸法をL1、枠体51Fの縮径部の径寸法をL2とした場合、L1>L2となる。そして、音響フィルタ50Fは、径寸法L2となった振動体30Fの中央部に向けて音を入射する。
図11に示す吸音構造体10Gは、音響フィルタ50Gの各流路53G内に多孔質材56G(例えば、発泡樹脂、フェルト,ポリエステルウール等の綿状繊維)が充填される。なお、変形例1−5と同一の構成要素には、添え字「G」を付けて、その説明を省略する。
このように構成される吸音構造体10Gにあっては、音響フィルタ50Gに振動体30Gの振動によって吸音する周波数と異なった周波数を吸音する構造を設けることにより、吸音周波数の帯域を広帯域化することが可能となる。
このように構成される吸音構造体においては、バネマス系による共振周波数と、板の弾性による弾性振動による屈曲系の共振周波数との関連性については、前記数式2によって一義的に決められるものの、実際には十分に解明されておらず、低音域で高い吸音力を発揮する吸音構造体の構造が確立されていないのが実情である。
(数3)
0.05≦fa/fb≦0.65
(数4)
0.05≦fa/fb≦0.40
このように、上記した数式3,4の条件を満足するように各種パラメータを設定することにより、吸音のピークとなる周波数を低くした吸音構造体が構成できる。
上記例においては、振動体を一様な構成として記載したが、振動体30のその一部が他の部分と異なる密度となるように形成したり、その一部が他の部分よりも異なる厚さに形成したり、その一部に錘を付与して形成したりして、振動体30の一部が他の部分と異なる質量を有するように形成してもよい。このように振動体30を形成することによって、振動体30に対して振動条件を変更することが可能となる。
シミュレートの結果を見ると、300〜500[Hz]の間と、700[Hz]付近において吸音率が高くなっている。
また、前記実施形態における吸音構造体10の構成は、矩形状の筐体20、筐体20の開口部23を閉塞する振動体30と、筐体20内に画成される空気層40と、を具備する構成としたが、本発明による筐体の形状は矩形状に限らず円形状、多角形状であってもよい。
また、本発明においては、吸音構造体群を形成する場合、上述した実施形態または変形例のいずれか一種類の吸音構造体を複数組み合わせて吸音構造体群とするだけでなく、例えば、吸音特性の異なった吸音構造体を組み合わせたり、3種類以上の吸音特性の異なった吸音構造体を組み合わせたりするというように、異なった吸音特性を有する吸音構造体を組み合わせて吸音構造体群としてもよい。
Claims (7)
- 開口部を有する筐体と、
前記開口部に設けられ、前記筐体内に空気層を画成する板状または膜状の振動体と、
前記振動体の外側に離間して設けられ、前記振動体に入射する音に対して略垂直方向から入射する成分を持たせるための流路を複数形成する流路形成手段と、を具備する
ことを特徴とする吸音構造体。 - 請求項1記載の吸音構造体において、
前記流路形成手段は、複数の板体によって前記各流路を形成する
ことを特徴とする吸音構造体。 - 請求項1記載の吸音構造体において、
前記流路形成手段は、板体によってスリット状、格子状、ハニカム状或いは同心円状に形成される
ことを特徴とする吸音構造体。 - 請求項1から3のいずれか1に記載の吸音構造体において、
前記流路は、音が入射する側の開口よりも前記振動体側の開口が、その面積が小さくなるように形成される
ことを特徴とする吸音構造体。 - 請求項1乃至4のいずれか1に記載の吸音構造体において、
前記振動体は、当該振動体の一部がその他の部分と質量が異なるように形成される
ことを特徴とする吸音構造体。 - 請求項1乃至5のいずれか1に記載の吸音構造体を複数組み合わせた
ことを特徴とする吸音構造体群。 - 請求項1乃至5のいずれか1に記載の吸音構造体、または請求項6記載の吸音構造体群を有する
ことを特徴する音響室。
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