以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態に於いて、インクジェットプリンタは、4種類の色のインク(C、M、Y、K)を用いて画像を形成する画像形成装置である。
図1は、本発明の第1の実施形態に於けるインクジェットプリンタのインク経路及び大気開放路の構成を概略的に示すもので、当該インクジェットプリンタのうち、ある1色の画像形成を担うインク経路及び大気開放路の構成を示した図である。
このインクジェットプリンタ1は、大別すると、複数のインクヘッド10を備える画像記録部13と、各インクヘッド10に対してインクを循環させるインク循環経路と、インク循環経路内を大気に対して開放、又は遮断可能とする大気開放路と、を備えている。
更に、このインクジェットプリンタ1は、インクが充填されたインクカートリッジ51を着脱可能に装着するインクカートリッジ部50と、不要となったインクやオーバーフローしたインクを収容する廃液部60と、第2のタンク30内部の負圧を調整する圧力調整機構81を備えている。
尚、図1には示されていないが、インクジェットプリンタは、記録媒体を供給する供給部、該供給部から供給された記録媒体を搬送する搬送部、画像形成された記録媒体を搬送部から排出するための排出部、インクヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス部、及び装置全体を制御する制御部等の通常のインクジェットプリンタが備えている構成を有している。
第1の実施形態に於けるインクジェットプリンタのそれぞれの構成について説明する。
インク循環経路は、第1のタンク20から流路101を経て、画像記録部13、流路102、第2のタンク30、流路104、ポンプ40、流路105、フィルタ45を順に流れ、流路106を経て第1のタンク20へと戻る。これらの部材の配置は、鉛直方向(重力方向)に低い順に、ポンプ40、第2のタンク30(内のインク面の高さ位置)、画像記録部13(インクヘッド10のノズル面の高さ位置)、第1のタンク20(内のインク面の高さ位置)、となっている。尚、フィルタ45の高さは任意である。
ここで、インク循環経路は以下の2つに大きく分けることができる。すなわち、第1のタンク20から画像記録部13を経由して第2のタンク30へ、水頭差による自然落下により流れる部分と、第2のタンク30からフィルタ45を経由して第1のタンク20まで、ポンプ40によってインクを送液する部分である。
先ず、前述した第1のタンク20から画像記録部13を経由して第2のタンク30へ、水頭差による自然落下により流れる部分の構成について詳細に説明する。
第1のタンク20には、インク入口ポート21と、インク出口ポート22と、大気ポート23が設けられている。また、第1のタンク20内には、インク面を所定の一定高さに保つために液面検出装置を構成する、例えばフロート25が設けられている。
このフロート25は、支持軸26によって軸支され、液面の高さに応じて回動する。また、フロート25には磁石27が取り付けられており、図示されない磁気センサによりフロート25の位置が検出される。これによって、第1のタンク20内の液面の高さが検出されるようになっている。
インク入口ポート21は、流路106を介してフィルタ45と接続しており、ここから第1のタンク20内にインクが流入する。
また、インク出口ポート22は、流路101を介して、画像記録部13と接続されている。
この画像記録部13は、インク分配タンク11と、複数のインクヘッド10と、インク回収タンク12と、で構成され、前述した流路101は、インク分配タンク11と接続されている。これにより、第1のタンク20内のインクは、インク出口ポート22を通過してインク分配タンク11へ流れる。そして、インク分配タンク11に流入したインクは、インクジェット方式の複数のインクヘッド10に分配供給される。本実施形態では、例えば、複数のインクヘッド10が、搬送される記録媒体の幅方向に、それぞれ隣接するインクヘッド10との印刷領域がオーバーラップするように配置され、ラインヘッドを構成している。そして、インクヘッド10は、下方を搬送される記録媒体に対して複数のノズルからインクを吐出して、画像記録を行う。
インクは、インク分配タンク11からそれぞれのインクヘッド10内部に流れ込み、一部がノズルから吐出されるが、ノズルから吐出されなかったインクは、再びインクヘッド10の外部に出て、インク回収タンク12へ流れ込む。インク回収タンク12は、複数のインクヘッド10からインクを回収し合流させるためのものである。そして、流路102を経由して第2のタンク30に送られる。
尚、本実施形態では、複数のインクヘッド10によって画像記録を行っているため、インク分配タンク11及びインク回収タンク12が設けられているが、必ずしもインク分配タンク11及びインク回収タンク12は設けられる必要はなく、各インクヘッド10を直接第1のタンク20及び第2のタンク30と接続しても構わない。また、使用されるインクヘッド10の数についても複数である必要はなく、適宜設定される。
更に、大気ポート23は、第1の大気開放路116と接続されている。
第1の大気開放路116は、3方向継ぎ手130と、第1のタンク20内を大気に対して開放、又は遮断するための第1の大気開放弁128と、塵等が入り込むのを防止するフィルタ125と、を有している。
3方向継ぎ手130は、例えば、T字形状となっており、3つの接続部を有する。この3方向継ぎ手130の第1の接続部は、第1の経路としての第1の大気開放弁128が設けられた大気チューブ122にと接続されている。また、3方向継ぎ手130の第2の接続部は、第2の経路としての一端がフィルタ125と接続された大気チューブ121の他端と接続されている。更に、3方向継ぎ手130の第3の接続部は、第3の経路としての一端が後述する廃液部60のオーバーフローパン70に接続されたオ―バーフロー(OF)チューブ123の他端と接続されている。尚、本実施形態では、フィルタ125から更に大気チューブ124が延出し、後述する廃液部60のオーバーフローパン70と接続されており、この大気チューブ124のオーバーフローパン70側のチューブ端は大気に開放されている。
そして、3方向継ぎ手130は、詳細は後述するが該3方向継ぎ手130の分岐点の位置が廃液部60より重力方向で高い位置となり、フィルタ125より重力方向で低い位置となるように配置されている。
尚、本実施形態では、3方向継ぎ手130の形状をT字形状としているが、T字形状に限られず、Y字のような形状であってもよい。そして、3方向継ぎ手130の形状がT字形状の場合は、大気チューブ122が他の大気チューブ121及びOFチューブ123と90度の角度をなすように接続され、大気チューブ121が3方向継ぎ手130の分岐点より重力方向上方位置、OFチューブ123が3方向継ぎ手130の分岐点より重力方向下方位置となるように接続されることが好ましい。また、Y字形状の場合は、大気チューブ122と大気チューブ121とが鋭角をなすように接続され、これらチューブ121、122が3方向継ぎ手130の分岐点より重力方向上方位置となるように接続されることが好ましい。
次に、第2のタンク30からフィルタ45を経由して、第1のタンク20までポンプ40によってインクを持ち上げる部分の構成について説明する。
第2のタンク30には、インク回収タンク12からのインクが流入するインク入口ポート31と、ポンプ40にインクを送り出すインク出口ポート33と、第2の大気開放路115に接続されている大気ポート34と、インクカートリッジ部50からの補給インクが流入するインク補給ポート32と、が設けられている。また、第2のタンク30の内部には、液面検出装置を構成するフロート36が設けられている。尚、このフロート36は、前述したフロート25と同一の構成及び動作を行うものである。
フロート36は第2のタンク30内のインクに浮いており、第2のタンク30内部のインク量が所定の範囲になるように、第2のタンク30から第1のタンク20へインクを汲み上げるポンプ40の駆動を制御するためのものである。第2のタンク30内のインク液面が所定位置よりも低くなった場合はポンプ40の駆動が停止され、液面が所定の位置よりも高くなった時はポンプ40の駆動が開始される。これにより、第2のタンク30内からポンプ40へとインクの供給が制御される。
インク出口ポート33と接続されるポンプ40は、図1では1つのみが示されているが、実際には色毎に独立して設けられており、前述したように各色の液面検出装置(フロート36)の出力に基づいて駆動制御される。
尚、本実施形態では、ポンプ40の送液能力は、第2のタンク30に流入してくるインク量よりも多くのインクを送液可能に設計されている。これは、第2のタンク30のオーバーフローを防止するためである。すなわち、通常の使用状態で第2のタンク30に流入するインク流量よりも、ポンプ40で汲み出し可能なインク流量を多くすることで、第2のタンク30が溢れないようにすることとしている。
ポンプ40から送液されたインクは、流路105を介してフィルタ45と接続されている。
フィルタ45は、インクヘッド10に供給されるインクに含まれる異物を除去し、ノズルの目詰まり等に起因する印字不良をなくすために設けられている。また、フィルタ45は、メッシュ状の部材から成り、メッシュの目がヘッドノズルの大きさに対して充分小さい異物まで除去できるようなサイズのものが選択される。そして、このフィルタ45は、流路106を介して第1のタンク23と接続されている。
次に、インク補給ポート32と接続されるインクカートリッジ部50について説明する。
インクカートリッジ部50は、インクカートリッジ51と、このカートリッジ51を保持するカートリッジ保持部52と、インク補給ポート32とカートリッジ保持部52とを接続する補給電磁弁108が設けられた流路103とから構成されている。このカートリッジ保持部52には、インクカートリッジ51と接続するためのジョイント部53が設けられており、該ジョイント部53は、ジョイント接続/離間モータ54によって移動可能となっている。
すなわち、カートリッジ保持部52に適正なインクカートリッジ51が装着されると、ジョイント接続/離間モータ54によってジョイント部53が移動し、インクカートリッジ51との接続がなされる。そして、インク循環系内のインクが減少した場合に、補給電磁弁108を開放し、インクカートリッジ51から第2のタンク30にインクが供給される。尚、カートリッジ保持部52は、チューブ110を介して廃液部60と接続されている。
次に、大気ポート34と接続される第2の大気開放路115について説明する。
第2の大気開放路115は、共通気室80と、第2の大気開放弁133と、で構成されている。
共通気室80は、チューブを介して4色全ての第2のタンク30の大気ポート34と接続されている。すなわち、共通気室80は、全色で共有して使用されている。
この共通気室80は、チューブ132を介して廃液部60のオーバーフローパン70に接続されており、該オーバーフローパン70側のチューブ端は大気に開放されている。尚、このチューブ132には、共通気室80内を大気に開放/遮断可能にするための第2の大気開放弁133が設けられている。
また、共通気室80は、チューブを介して圧力調整機構81と接続されている。この圧力調整機構81は、共通気室80と、中空でその内部を共通気室80に連通された伸縮自在のベローズ部82と、その下部に固定された錘部83と、該錘部83の下部に配置されて、駆動源により図示上下方向に移動してベローズ部82を伸縮させる昇降アーム84と、から構成される。ここで、第2の大気開放弁133を閉じた状態にすると、全色の第2のタンク30の空気部、共通気室80、ベローズ部82の内部が閉じられた空間となる。この状態でベローズ部82を伸縮すると、前記した閉鎖空間の体積を増減させることができる。これによって、圧力調整機構81は、共通気室80を介して第2のタンク30内部の圧力を全色共通に変化させることができる。
次に、廃液部60について説明する。尚、この廃液部60についても全色で共有して使用されている。
廃液部60は、インク経路の最下位の高さに配置されるタンクトレイ62と、タンクトレイ62上に配置された廃液タンク61と、インク循環経路4から溢れた(オーバーフロー)インクを回収し廃液タンク61に流すトレイ状のオーバーフローパン44と、で構成される。
オーバーフローパン70は、ポンプ40の下方に配置され、ポンプ40が破損してインクが漏れてもオーバーフローパン70で全てのインクを受けることが可能なようになっている。このオーバーフローパン28の底面は斜面状に形成されており、受けたインクを一段深く形成された異常廃液検出部74に導くように構成されている。
異常廃液検出部74には、液面検出装置を構成する、例えばフロート76が設けられている。このフロート76は、液面の高さに応じて回動可能に支持軸75により軸支されている。前記フロート76には、図示されない磁石が取り付けられており、ケースに設けられた図示されない磁気センサによってフロート76の位置が検出されることによって、液面高さが検出されるようになっている。また、フロート76の検出位置より上までインク液面が上昇したら、そのインクを廃液タンク61に流すためのインク出口ポート77が、オーバーフローパン70に設けられている。
このように構成することで、装置異状によりオーバーフローパン70に流れ込んだインクは、異状廃液検出部74に溜まっていく。そして、異常廃液検出部74に溜まった廃インクが所定の量以上になると、浮力によってフロート76が変位することで装置異状を検出する。通常の使用状態では、この以上廃液検出部74にインクが溜まることはあり得ず、この検出によって装置はユーザに異常を報知する。異状の状態によっては、フロート76が廃液を検出した後に、更に異常廃液検出部74に流れ込むこともあり得るが、それらのインクはインク出口ポート77から流路111を介して廃液タンク61に排出され、オーバーフローパン70にはこれ以上のインクは溜まらないようになっている。
また、オーバーフローパン70には、前述したOFチューブ123が接続されている。さらに詳細には、オーバーフローパン70の底面に形成された開口部71を有するポートにOFチューブ123の一端が接続されている。この開口部71の上部には、開口部71の直径よりも大きい直径を有するボール72が配置されている。通常時は、ボール72が開口部71に嵌ることによって、開口部71が閉鎖された状態にしている。
また、開口部71のボール72の上部を含む周囲には、該ボール72とクリアランスを有した状態でボール72の移動を規制する規制部材73が配置されている。このクリアランスの中をボール72が移動することで、前述した開口部71の閉鎖/開放を可能にしている。
尚、OFチューブ123内に流れ込んだインクによってボール72が押し上げられるようにボール72の重さが決められる。つまり、ボール72は、OFチューブ123内に流入したインクが3方向継ぎ手130から大気チューブ121側のフィルタ125に流れ込まないうちに、インクの圧力でボール72を押し上げる重さとする。これにより、開口部71が開放されるため、OFチューブ123のインクは、オーバーフローパン70の異常廃液検出部7に流れる。
更に、オーバーフローパン70には、大気チューブ124、及びチューブ132の大気開放端部も接続されている。これにより、第1のタンク20は、第1の大気開放弁128を開放することで大気圧となり、遮断することで密閉状態となる。同様に、第2のタンク30は、第2の大気開放弁133を開放することで大気圧となり、遮断することで密閉状態となる。 廃液タンク61には、装置各部からの廃液が流れてくるように構成されている。廃液タンク61は、廃液タンクの重さによって揺動可能に支持されている廃液タンクトレイ62の上に載置されており、廃液が所定量溜まると、図示されないセンサにより検知されて装置に報知される。 以上のように構成されたインクジェットプリンタ1のインクの流れは、第1のタンク20→インク分配タンク11→インクヘッド10→インク回収タンク12→第2のタンク30→ポンプ40→フィルタ46→第1のタンク20→…といったように、循環が繰り返されるように構成されている。
ここで、インクヘッド10のノズルは、通常、負圧に保たれている。これによって、ノズル部に、内側に球面状に凹むインクのメニスカスが形成され、正常な印字動作ができるように構成されている。本インク循環経路は、インクを前述した如く循環させながら、ノズル部に於ける負圧を作るために、以下のような構成をとっている。
すなわち、図1に示されるように、インクヘッド10のノズルに対して、第1のタンク20の液面は上方向に距離Aを持たせ、第1の大気開放弁128が開放されることによって、第1のタンク20内が大気開放状態にされる。これにより、インクヘッド10のノズル部には、一定の正圧力がかかる。
更に、インクヘッド10のノズルに対して、第2のタンク30の液面は下方向に距離Bを持たせている。そして、第2の大気開放弁133が開かれた状態で、負圧発生部となる圧力調整機構81のベローズ部82及び錘部83が、昇降アーム84により持ち上げられてベローズ部82が圧縮される。この状態で第2の大気開放弁133が閉じられた後、昇降アーム84が下げられることで、ベローズ部82は錘部83の重さによって下方に引っ張られる。すると、錘部83に加わる重力と釣り合う大きさの負圧が、ベローズ部82の内部(共通気室80内)に生成される。ベローズ部82と第2のタンク30とは連通しているので、第2のタンク30内にも同じ負圧がかかる。これによって、インクヘッド10のノズル部にも、所定の負圧をかけることができる。
この方式によれば、PV=一定となるように、ベローズ部82が錘部83によって自動的に伸縮して体積を補正し、錘の重さと釣り合う一定負圧力を生成可能であるため、第2のタンク30内の空気容積が変動しても、第2のタンク30内は一定の圧力に保たれる。この負圧力と、インクヘッド10と第1のタンク20のインク面との距離Aによる正圧力とのバランスをとることで、インクヘッド10のノズルに所定の負圧を発生させることが可能となる。また、インクが第1のタンク20からインクヘッド10内部を通過して第2のタンク20に流れることが可能になる。
尚、インクを循環させていないとき、第1のタンク大気開放弁122は大気に対して閉じられ、第2の大気開放弁133は大気に対して開放される。上記距離Bは、この状態でインクヘッド10のノズルに負圧がかかり、正常なメニスカスが形成されるように設定されている。また、距離Bは、装置設置面の傾きによって装置が傾いても、所定の傾き範囲内であれば、インクヘッド10のノズル面が、第2のタンク30の液面より下になって正圧がかかることのないように設定されている。
次に、図2に示される本発明のインクジェットプリンタの第1の大気開放路116の概略図を参照して、本発明の第1の実施形態の動作について詳細に説明する。
印字可能なインク循環状態では、第1の大気開放弁128は開状態、第2の大気開放弁133は閉状態となっている。これによって第1のタンク20内部のインクは、水頭差によってインク分配タンク11、インクヘッド10、インク回収タンク12を経由して、第2のタンク30へ流れる。このインク流出によって、第1のタンク20内のインク液面は低下し、フロート25の位置が下がる。
この時、フロート25には磁石27が設けられているため、この磁石27の位置が図示されない検出センサで検出されることで、第1のタンク20内のインク量がわかる。そして、インク量が所定量以下になったことが検出されると、ポンプ40が駆動されて、第2のタンク30から第1のタンク20へインクが持ち上げられる。これによって、第1のタンク20内のインク液面高さが上昇し、それに伴いフロート位置も上昇する。その後、インク液面が所定の高さになると、ポンプ40の駆動が停止される。
このようにしてインクの循環が行われるが、第1のタンク20のインク液面は、上下動が繰り返される。これは、第1のタンク20内部の空気量が変化することを示している。つまり、変化する空気量に応じて、装置外の空気が、フィルタ125、大気チューブ121、3方向継ぎ手130、大気チューブ122、開放状態の第1の大気開放弁128を経由して、第1のタンク20に対して出入りする。この空気は、フィルタ125を介しているため、塵埃等が取り除かれ、前述したインク循環経路内にゴミが入ることはない。
また、3方向継ぎ手130にはOFチューブ123も接続されているが、開口部71に於いてボール72の自重により閉鎖されているため、ここから空気がインク経路内に対して出入りすることはない。これにより、インク経路内の空気は常に清浄され、インク中にゴミが入る恐れはない。
ここで、装置異状が発生した場合、例えば、ポンプ40の駆動が停止しない場合は、ポンプ40によって第2のタンク30から第1のタンク20へインクが継続的に汲み上げられる。すると、ポンプ40の揚水能力は第1のタンク20から流れ出るインク流量に対して多く設定されているので、第1のタンク20のインク液面はどんどん上昇し、最終的には第1のタンク20から溢れ出す(流れ出る)。
この流れ出したインクは、大気チューブ122及び第1の大気開放弁128を経由して3方向継ぎ手130に向かって自重によって流れ落ちる。ここで、フィルタ125は、大気チューブ121を介して3方向継ぎ手130の分岐点より重力方向上方に配置され、オーバーフローパン70は、OFチューブ123を介して3方向継ぎ手130の分岐点より重力方向下方に配置されている。そのため、3方向継ぎ手130に流れ落ちたインクは、OFチューブ123を経由してオーバーフローパン70に流れる。なお、本実施形態では、大気チューブ121は、3方向継ぎ手130の分岐点より常に重力方向上方となるようにフィルタ125と接続され、OFチューブ123は、3方向継ぎ手130の分岐点より常に重力方向下方となるようにオーバーフローパン70に接続されている。
そして、OFチューブ123を流れてきたインクは、自重によって開口部71を塞いでいるボール72を押し上げる。この時、ボール72の重さは、OFチューブ123に溜まったインクがフィルタ125に達する前に押し上げられるような重さに設定されている。また、ボール72は、規制部材73によって所定量以上の変位が規制されている。
これにより、第1のタンク20から溢れ出たインクは、オーバーフローパン70の異常廃液検出部74に流れる。
そして、第1のタンク20からのインクのオーバーフローがなくなり、流れ落ちたインクがオーバーフローパン70の異常廃液検出部74に流れると、ボール72は自重により下に落ち、再び開口部71が塞がれる。
このように、第1のタンク20からインクがオーバーフローした際、フィルタ125は、3方向継ぎ手130から上方に伸びた大気チューブ121の先にあるので、第1のタンク20から流出したインクが大気チューブ121を昇ってフィルタ125を濡らしてしまうことはない。
フィルタがインクで濡れると、フィルタの目が細かいためインクによる層ができてしまい、空気を取込むことができなくなってしまう。このため、本実施形態に於いては、フィルタ125の配置箇所を、第1のタンク20からオーバーフローパン70に流れるインクの経路とは別の箇所(インクが触れない箇所)に配置している。更に、インクが流れ出ている時は、空気中のゴミはOFチューブ123内に入り込むことはできないので、この場合もインク経路内にゴミが侵入することはない。
また、インクヘッド10がノズルつまりを起こした場合は、以下のようにして回復動作が行われる。
すなわち、第1の大気開放弁128が閉じられ、第2の大気開放弁133が開かれた状態で、圧力調整機構81の昇降アーム84が下げられてベローズ部82が伸張される。この動作により、第2の大気開放弁133を介して外部から空気が流入され、ベローズ部82内に入る。次いで、第2の大気開放弁133が閉じられる。これにより、インク系路全体が密閉されて、外部に対して開口している部分はインクヘッド10のノズルだけとなる。
次に、昇降アーム84が上昇されると、ベローズ部82内部の空気が圧縮され、これによって、第2のタンク30、第1のタンク20の内部の空気も圧縮される。そのため、インク経路内全体に正圧がかかり、経路内のインクがノズルから流れ出す。この動作によって、全色同時に、ノズルに詰まったゴミや、ノズル面に付着したゴミが洗い流される。
このように、経路内全体に所定時間の間、正圧をかけた後、第2の大気開放弁133、第1の大気開放弁128が所定時間開放され、圧縮されている経路内の空気を逃がす。このとき、第1のタンク20から開放される空気は、大気ポート23から流れ出る。空気流は、大気チューブ122を経由して、3方向継ぎ手130で2方向に分岐され、一方は大気チューブ121を経由してフィルタ125を介して外気へ、他方はOFチューブ123を経由し、開口部71を介して外気へ放出される。このとき、空気流は、ボール72を吹き上げようとするが、規制部材73によって規制されるため、ボール72が所定の範囲から移動することはない。
また、装置異状を起こした来歴がある装置の場合、図2に一点差線で示されるインクたまり部78に第1のタンク20からオーバーフローしたインクが溜まっている可能性がある。しかしながら、ここにインクが溜まっていると、空気流によって、インクも開口部71から吹き出すことになる。ところが、規制部材73が上部及び側方に設けられているため、飛散することはない。
以上のように、第1の実施形態によれば、インク経路へのゴミの流入を確実に阻止することができ、また、装置異常時にインクが溢れても、機内汚れを起こすことなく溢れたインクを廃インク容器へ流して溜めることができる。さらに、大気開放用の流路と廃インク流路とを一部共用することによって省スペース化、低コスト化を実現できる。
尚、第2の大気開放路115についても第1の大気開放路116と同様に構成してもよい。
また、図3に示すような大気開放路としてもよい。つまり、色毎に第1の大気開放弁、フィルタ125等が設けずに、図3に示すように、各色の第1のタンク20と接続される共通気室90を設ける。このように、共通気室90を設けることにより、複数個タンクがあったとしても第1の大気開放弁128、フィルタ125を1つにすることができる。そのため、さらに省スペース化、低コスト化を実現できる。
(第1の変形例)
次に、本発明の第1の実施形態の第1の変形例について説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態に於けるインクジェットプリンタの第1の変形例の大気開放路を概略的に示した図である。
前述した第1の実施形態では、ボール72を用いてオーバーフローパン70のインクの封止を行っていたが、この第1の変形例では、ボール72の代わりにキャップ72aを用いて封止を行っている。キャップ72aの自重により、開口部71aに接続されたOFチューブ123の先端を塞ぐ構成は、前述した第1の実施形態と同じである。キャップ72aも、開口部71aから流れ出るインクによって上方へ持ち上げられることにより、インクがオーバーフローパン70へ流れ出す。
このとき、キャップ72aは、OFチューブ123内に流入したインクが3方向継ぎ手130から大気チューブ側の空気フィルタ125に流れ込まないうちに、インクの圧力でボール72を押し上げて開口部71aより噴出することができるような重さとする。
キャップ72a以外の部分の構成及び動作は、前述した第1の実施形態のインクジェットプリンタの構成及び動作と同じであるので、同一の部分には同一の参照番号を付して、その図示及び説明は省略するものとする。
このように、第2の変形例によっても、前述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第2の変形例)
次に、本発明の第1の実施形態の第2の変形例について説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態に於けるインクジェットプリンタの第2の変形例の大気開放路を概略的に示した図である。
前述した第1の実施形態では、オーバーフローパン70のインクの封止をボール72を用いて行っていたが、この第2の変形例では、ボール72の代わりに一端が固定された弾性板73aを用いて開口部71bを開閉する構造となっている。尚、規制部材73は不要である。
通常、弾性板73aは、開口部71bを塞ぐように弾性付勢されている。そして、第1のタンク20からインクがオーバーフローしてOFチューブ123を介して流入してくると、弾性板73aが上方へ弾性変形され、オーバーフローパン70に流れ出す。流れ出すインクがなくなると、弾性板73aは弾性力により元の形状に戻り、開口部71bは再び閉鎖される。
尚、弾性板73は、OFチューブ123内に流入したインクが3方向継ぎ手130から大気チューブ側の空気フィルタ125に流れ込まないうちに、インクの圧力で押し上げられて開口部71aより噴出することができるように、その弾性力が設定される。
弾性板73a以外の部分の構成及び動作は、前述した第1の実施形態のインクジェットプリンタの構成及び動作と同じであるので、同一の部分には同一の参照番号を付して、その図示及び説明は省略するものとする。
このように、第2の変形例によっても、前述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
前述した第1の実施形態は循環系に用いた例で説明したが、この第2の実施形態では非循環系に適用した例について説明する。
図6は、本発明の第2の実施形態に於けるインクジェットプリンタのインク経路構成、及び大気開放路を概略的に示すもので、当該インクジェットプリンタのうち、ある1色の画像形成を担うインク経路、及び大気開放路の構成を示した図である。
尚、図6には示されていないが、インクジェットプリンタ140は、記録媒体を供給する供給部と、該供給部から供給された記録媒体を搬送する搬送部と、画像形成された記録媒体を搬送部から排出するための排出部と、インクヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス部と、を有している。
図6に於いて、このインクジェットプリンタ140は、画像記録部13と、第2のタンク30と、インクカートリッジ部50と、廃液部60と、第1の大気開放路116と、画像記録部13、第2のタンク30、及びインクカートリッジ部50を接続するインク供給経路とから構成されている。尚、画像記録部13、第2のタンク30、インクカートリッジ部50、廃液部60、第1の大気開放路116については、前述した第1の実施形態とほぼ同様な構成をしているため、異なる部分のみ説明し、その他の部分については説明を省略する。
インク供給経路について説明する。
インク供給経路は、インクカートリッジ部50からフィルタ45、及び補給電磁弁108を経て第2のタンク30へ流れ、また、この第2のタンク30からインク分配タンク15、インクヘッド10に至るようになっている。
第2のタンク30には、インク補給ポート32と、インク出口ポート33と、大気ポート34が設けられている。また、第2のタンク30内には、液面検出装置を構成する、例えばフロート36が設けられている。
インク補給ポート32は、インクカートリッジ部50からの補給インクが、流路103及びフィルタ45、補給電磁弁108を介して流入する。一方、インク出口ポート33は、流路102を介して、複数のインクヘッド10にインクを分配するためのインク分配タンク15と接続されている。これにより、第2のタンク30内のインクは、インク出口ポート33を通過してインク分配タンク15へ流れる。このインク分配タンク15には、該インク分配タンク15内を大気開放可能とする大気開放弁135が設けられている。
更に、大気ポート34は、前述した第1の実施形態と同様に第1の大気開放路116が接続されている。この第1の大気開放路116は、第1の大気開放路116は、接続部としての3方向継ぎ手130と、第2のタンク30内を大気に対して開放、又は遮断するための第1の大気開放弁128と、塵等が入り込むのを防止するフィルタ125と、を有している。そして、3方向継ぎ手130は、該3方向継ぎ手130の分岐点の位置が廃液部60より重力方向で高い位置となり、フィルタ125より重力方向で低い位置となるように配置されている。詳細な説明については、前述した第1の実施形態と同様なためここでは省略する。
このように構成されたインクジェットプリンタ140は、重力方向下方から廃液部60、第2のタンク30、画像記録部13、インクカートリッジ部50の順に配置されている。このように配置することで、インクカートリッジ51の補給インクは、高低差によって第2のタンク30に流すことができる。また、インクヘッド10には、該インクヘッド10のノズル面と第2のタンク30のインク液面との高低差(水頭差)によって所定のメニスカスを形成することができる。さらに、異常によりインク供給径路で、インクが溢れ出したとしても、廃液部60が最も下方に配置されているためすべては廃液部60に回収することができる。
そして、画像記録時は、第1の大気開放弁128を開放し、第2のタンク30内を大気
状態にする。これにより、インクヘッド10には、前述した高低差によって所定の負圧が掛かり、画像記録を行うことができる。そして、第2のタンク30内のインク量が所定量以下であるとフロート36が検知すると、補給電磁弁108が開放し、インクカートリッジ51からインクが補給される。
ここで、フロート36や補給電磁弁108が故障した場合、第2のタンク30から溢れ出したインクが大気ポート34を介して第1の大気開放路116に流れる。しかしながら、何れの場合も、前述した第1の実施形態と同様な構成の大気開放系及びオーバーフロー系で構成しているので、同様の効果を得ることができる。
(第1の変形例)
次に、本発明の第2の実施形態の第1の変形例について説明する。
前述した第2の実施形態は、画像記録時に第2のタンク30からインクが溢れ出た場合について説明したが、この第2の実施形態の第1の変形例では、初期充填時にインクが溢れた場合について説明する。
図7は、本発明の第2の実施形態の第1の変形例に於けるインクジェットプリンタ140aのインク経路構成を概略的に示した図である。
本変形例は、インク分配タンク150内に液面検出装置である支持軸154に支持された液面によって回動するフロート155を設けた点が前述した第2の実施形態と異なる。更に、インク分配タンク150に第1の大気開放路116を接続した点が前述した第2の実施形態と異なる。その他の構成については、前述した第2の実施形態と同様なため説明を省略する。尚、図7に示す第2のタンク30と廃液部60を接続する経路を前述した第2の実施形態と同様に構成してもよい。
インクジェットプリンタ140aに於けるインクの初期充填は、以下のようにして行なわれる。
先ず、大気開放弁128、大気開放弁133、及び補給電磁弁108を開放する。これにより、インクカートリッジ51内の補給インクは、第2のタンク30へと流れ落ちる。そして、フロート36によって、第2のタンク30内のインク量が所定量に達したことを検知すると、大気開放弁133を閉じ、第2のタンク30内を密閉状態となる。これによって、インクは、第2のタンク30を介してインク分配タンク150へと流れる。そして、インク分配タンク150内に設けられたフロート155によって、該インク分配タンク内のインク量が所定量に達したことを検知すると、電磁補給弁108及び大気開放弁128を閉じると共に、大気開放弁133を開放する。このようにして、インクジェットプリンタ140aは初期充填を行っている。
ここで、初期充填を行っている最中で、例えば、フロート155が故障した場合、インク分配タンク150内のインクは、溢れだし、第1の大気開放路116へと流れ込む。しかしながら、このような場合でも、前述した第1の実施形態と同様な構成の大気開放系及びオーバーフロー系で構成しているので、同様の効果を得ることができる。
尚、前述した実施形態では、Y、M、C、及びK等の複数色のインクを用いて、記録媒体にフルカラー記録を行っているが、Kのみ等の1色の画像記録を行うモノクロのインクジェットプリンタであってもよい。
また、インクヘッド10は、サーマルインクジェットヘッド、インク室の振動板が振動することによりインクが吐出される、いわゆるピエゾタイプのインクジェットヘッド等、各種のインクヘッドを好適に利用可能である。
更に、前述した実施形態では、インクヘッドを記録媒体の幅以上に延存したライン型ヘッドとして記録媒体上に記録を行う例を説明したが、これに限られずに、記録媒体上を走査することで記録を行うシリアル型ヘッドにも適用することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態以外にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。
更に、上述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。