JP2010148485A - フェルラ酸高含有発酵アルコール飲料 - Google Patents

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Yuto Yoshida
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Kumiko Koizumi
久美子 小泉
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  • Distillation Of Fermentation Liquor, Processing Of Alcohols, Vinegar And Beer (AREA)

Abstract

【課題】ビールや発泡酒、又はその他の醸造酒のような発酵アルコール飲料において、飲料に機能性を付与するために遊離フェルラ酸を高含有させ、しかも発酵アルコール飲料の香味バランスを保持した高機能、高香味の発酵アルコール飲料を製造する方法を提供すること。
【解決手段】大麦、小麦、大豆、大麦麦芽、及び小麦麦芽のいずれか1つ以上を醸造原料と用いる発酵アルコール飲料の製造において、糖化工程を、フェルラ酸エステラーゼ活性を有する酵素、セルラーゼ活性を有する酵素、及びキシラナーゼ活性を有する酵素の存在下において、糖化温度45℃±10℃、及び蛋白休止時間5分以上の糖化温度パターンを用いて行うことにより、遊離フェルラ酸を高含有し、かつ、4−VG(4−ビニルグアイアコール)生成能の低い酵母を用いて発酵することにより4−VGの生成を抑制し香味バランスを保持した発酵アルコール飲料を製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、遊離フェルラ酸を高含有し、かつ、4−ビニルグアイアコール(4−VG)の生成を抑制して、発酵アルコール飲料の香味バランスを保持したビール、発泡酒、又は、その他の醸造酒のような発酵アルコール飲料の製造方法に関する。更に、本発明は、バイツェン香が抑えられ、かつ、遊離フェルラ酸を高含有するバイツェンビールの製造方法に関する。
近年の健康志向ブームから食品の機能性に対する関心が高まっており、ビール類のような発酵アルコール飲料においても健康に配慮した商品開発が期待されつつある。ビールの健康機能性について、生活習慣病予防効果の観点からビールとその原材料の機能性を科学的にアプローチする研究が行なわれている(醸造協会誌、98、228−240、2003)。ビールの抗酸化性に関する検討が行われており、試験管内で比較検討した場合、ビールはアルコール換算等量の赤ワインの5分の1程度であるが、経口投与後のラット血液中に付与される抗酸化活性は、ほぼ同程度であったことが示されている。このことからビール中の何らかの抗酸化成分が高い生体内抗酸化作用を示す可能性が示唆されるが、この物質が何であるかは明らかにされていない。
一方で、健康機能を有する成分として、フェルラ酸が知られている。フェルラ酸は小麦ふすま、米ぬかなどに多量に含まれているフェノール性化合物である。植物組織においてフェルラ酸は細胞壁中に存在し、細胞壁多糖間に架橋を形成させることにより、植物の生長を調節し、また病原微生物の侵入を抑制する働きを有している。植物の細胞壁中ではフェルラ酸はアラビノースなどの糖とエステル結合して存在しているが、フェルラ酸エステラーゼによりエステル結合が加水分解されて、フェルラ酸を遊離させることができる。酒類中では、この遊離フェルラ酸が微生物の酵素であるフェルラ酸デカルボキシラーゼにより脱炭酸されることで、4−ビニルグアイアコール(4−VG)由来のバイツェン香と呼ばれる独特の香りが作られる。
フェルラ酸の機能性については、フェノール性の−OH基によってフリーラジカルに水素を供与することで抗酸化作用を有すると言われている。このような性質から酸化防止剤として利用されると共に、脂質代謝改善・抗炎症・認知症・糖尿病腎症予防・美白作用等の機能性も報告されている。フェルラ酸を含むフェノール酸がモノカルボン酸トランスポーター(MCT、monocarboxylic acid transporter)様の輸送システムによって能動的に効率良く吸収されることが報告され、体内利用性や吸収性の優れているフェルラ酸が注目を浴びつつある(化学と生物、44、532−538、2006)。フェルラ酸のin vitroの抗酸化活性は高くはないが体内利用性や吸収性に優れている点から、in vivoでより高い抗酸化機能を示すことが予想される。しかし、実際にフェルラ酸高含有ビールの抗酸化活性を比較した報告はない。
フェルラ酸高含有を目指した研究は数多く行なわれている。例えば、細胞壁分解酵素を糖化工程にて添加することにより、麦芽からフェルラ酸の遊離を促進させ、フェノール化合物を高含有することを特徴とするビールの製造を試みた研究が行なわれている(日本農芸化学大会講演要旨集、2004)。しかし、フェルラ酸生成に関する酵素についての研究は行なわれているものの、仕込条件等や香味バランスの検討は行なわれず、フェルラ酸高含有と抗酸化活性との関係についても検討されていない。酒類以外では、穀類のフェルラ酸に関する知見と併せて、麦味噌麹の製麹過程におけるフェルラ酸の消長と抗酸化活性の関連について調査が報告されている(醸造協会誌、96、100−106、2001)。
他方で、従来より、蒸留酒においては、味覚の改善として、その製造工程においてフェルラ酸を添加したり、或いは遊離のフェルラ酸を生成して、芳醇な味覚の蒸留酒を製造する技術、及びそのための遊離のフェルラ酸を生成する方法が開示されている。すなわち、蒸留酒では、その香味の生成のメカニズムとして、原料の穀類の細胞壁を構成するアラビノキシランとエステル結合したフェルラ酸が、麹菌等のエステラーゼによりもろみ中に遊離し、このフェルラ酸が常圧蒸留時に加熱脱炭酸されて4−VGとなり、得られる蒸留酒中に留出する。そして、蒸留酒中に含まれる4−VGは、その貯蔵中に酸化されてバニリンになり、蒸留酒に芳醇な味覚を付与するというメカニズムがある。そこで、かかる味覚生成の機構を促進する技術として、各種の方法が開示されている。
例えば、特開平6−62829号公報には、蒸留酒に、酢酸、コハク酸、シリンガ酸、フェルラ酸、イソアミルアルコール等を添加して、マイルドな蒸留酒に改良する方法が開示されている。また、特開平9−238673号公報には、フェルラ酸脱炭酸酵素を有するサッカロミセス・セレビシエTSH−1を用いてアルコール発酵を行うことにより、もろみ中の4−VG濃度を増大させ、貯蔵後の蒸留酒中のバニリンを増加させて、豊かな香味を有する焼酎(泡盛)のような蒸留酒を製造する方法が開示されており、特開平10−276788号公報には、フェルラ酸脱炭酸酵素遺伝子を導入した酵母を用いて、香味の優れた蒸留酒を製造する方法が開示されている。
更に、特開2000−125840号公報には、焼酎の製造に際して、酵母としてフェルラ酸脱炭酸活性の高い酵母を使用することにより、甘い芳醇な香味とコクの増強された焼酎を製造する方法が、特開2008−75号公報にはフェルラ酸を4−VGに転化する酵素を有するラクトコッカス・ラクチスをもろみに作用させることにより、香味豊かな泡盛のような蒸留酒を製造する方法について、特開2004−236634号公報には、穀類蒸留酒の製造方法において、製麹に使用する麹菌としてキシラナーゼ活性が13.5U/g麹以上で、フェルラ酸エステラーゼ活性が10.0U/g麹以上である麹菌を使用することにより高香味穀類蒸留酒を製造する方法が開発されている。
これらの蒸留酒における、味覚の改善として、その製造工程においてフェルラ酸を添加したり、或いは遊離のフェルラ酸を生成して、芳醇な味覚の蒸留酒を製造する方法は、いずれもその蒸留酒の製造工程における蒸留や、貯蔵工程でフェルラ酸が、酸化等により、4−VGやバニリンに変換されることを期待したものであるが、しかし、かかる方法は、例えば、ビールや発泡酒のように、嫌気的な条件下で、製造や製品管理が行なわれる発酵アルコール飲料の製造には適用し難いものである。
また、清酒のような酒類において、フェルラ酸等により香味の改善を図ることも開示されている。例えば、特開平8−89230号公報には、清酒のもろみ糖化発酵熟成工程において、ヒドロキシシンナミック酸エステル加水分解酵素を添加作用させて、フェルラ酸、フェルラ酸エチルエステル、バニリン、バニリン酸等の芳醇な香味成分の豊かな清酒の製造方法が開示されている。更に、特開2007−202504号公報には、清酒等の酒類の製造に際して、キシラナーゼ活性/フェルラ酸エステラーゼ活性の比が4.1以上である植物細胞壁分解酵素剤を用いることにより、酒類の製造に際して活性炭処理してもフェルラ酸を高含有する酒質に優れた酒類を製造することが開示されている。この開示の方法は、清酒等にフェルラ酸を高含有させるために糠や精白歩合の低い原料を用いた場合に、持ち込まれる脂質や蛋白質等を活性炭処理により吸着除去するに際して、同時にフェルラ酸が吸着除去されることを防止して、酒類中にフェルラ酸を高含有させるものであるが、かかるフェルラ酸は糖結合型であり、遊離型のフェルラ酸ではない。
これらの清酒のような酒類において、フェルラ酸等を高含有させるために用いられている方法も、清酒のような酒類を対象とする方法であって、上記のように、ビールや発泡酒のような発酵アルコール飲料の製造に、直接適用し得るものではない。
特開平6−62829号公報。 特開平8−89230号公報。 特開平9−238673号公報。 特開平10−276788号公報。 特開2000−125840号公報。 特開2004−236634号公報。 特開2007−202504号公報。 特開2008−75号公報。 醸造協会誌、98、228−240、2003。 化学と生物、44、532−538、2006。 日本農芸化学大会講演要旨集、2004。 醸造協会誌、96、100−106、2001。
本発明の課題は、ビールや発泡酒、又はその他の醸造酒のような発酵アルコール飲料において、飲料に機能性を付与するために遊離フェルラ酸を高含有させ、しかも発酵アルコール飲料の香味バランスを保持した高機能、高香味の発酵アルコール飲料を製造する方法を提供することにある。
すなわち、従来より、蒸留酒等においては、味覚等の改善のために、原料の穀類の細胞壁を構成するアラビノキシランとエステル結合したフェルラ酸に、エステラーゼ等を作用させて、フェルラ酸を遊離し、遊離脂肪酸の含有量を増大する方法が開示されている。しかしながら、該方法をビールや発泡酒、又はその他の醸造酒のような発酵アルコール飲料について、遊離フェルラ酸を高含有させ、飲料に機能性を付与するための方法として用いた場合には、遊離フェルラ酸を高含有させることによって、発酵アルコール飲料に機能性を付与させることはできるが、発酵アルコール飲料の香味バランスが保持できず、高香味の発酵アルコール飲料を製造することができないという問題がある。そこで、その原因について、鋭意検討する中で、発酵アルコール飲料の製造に際して、アラビノキシランとエステル結合したフェルラ酸を遊離させる酵素反応や、発酵工程の反応の中で製造される4−VG(4−ビニルグアイアコール)に原因があることを突き止めた。
すなわち、既に説明したように、蒸留酒における味覚の改善として、その製造工程において遊離のフェルラ酸を生成して、芳醇な味覚の蒸留酒を製造する方法は、いずれもその蒸留酒の製造工程における蒸留や、貯蔵工程でフェルラ酸が、酸化等により、4−VGからバニリンに変換されることに依存するものであり、したがって、かかる方法を、例えば、ビールや発泡酒のように、嫌気的な条件下で、製造や製品管理が行なわれる発酵アルコール飲料の製造に適用しても、4−VGからバニリンへの変換が行われず、フェルラ酸を高含有し、しかも、香味バランスが保持された高香味の発酵アルコール飲料を製造することができない。4−VGは、バイツェン香と呼ばれ、小麦麦芽を用いて製造されるバイツェンビールの香味成分であるが、該成分が増加すると発酵アルコール飲料の香味バランスが保持できない原因となる。
そこで、本発明の課題は、ビールや発泡酒、又はその他の醸造酒のような発酵アルコール飲料において、飲料に機能性を付与するために、遊離フェルラ酸を高含有し、しかも発酵アルコール飲料の香味バランスを保持した高機能、高香味の発酵アルコール飲料を製造するために、発酵アルコール飲料中の遊離フェルラ酸を有効に増加させ、しかも、4−VGの生成を抑制した発酵アルコール飲料の製造方法を提供することにある。ここで「その他の醸造酒」とは、酒税法の改正により、改正前の「その他の雑酒」が「その他の醸造酒」に変更されたものであり、日本の酒税法上、発泡性を有する「雑酒」は、麦又は麦芽を原料の一部とした「発泡酒」と、発泡酒以外の「その他の醸造酒」に分類される。「その他の醸造酒」は、麦又は麦芽を使用せず、マメ類、穀類などの植物タンパク質等を酵素で分解して、必要とする窒素源を得、糖化液を加えて発酵させたものである。したがって、かかる点を除いて、「その他の醸造酒」の製造方法は、ビールや発泡酒の製造方法と変わるところはない。
本発明者は、上記課題を解決すべく、発酵アルコール飲料中の遊離フェルラ酸を有効に増加させ、しかも、4−VGの生成を抑制し、香味バランスを保持した高機能、高香味の発酵アルコール飲料の製造方法について鋭意検討する中で、醸造原料に、大麦、小麦、大豆、大麦麦芽、及び小麦麦芽を用いて、発酵アルコール飲料を製造するに際して、糖化工程における用いる酵素の種類、糖化温度パターン、添加酵素量を選択し、フェルラ酸が原料中のアラビノキシランから遊離する至適条件を設定し、4−VG生成能の低い酵母を用いて発酵することにより、発酵アルコール飲料中の遊離フェルラ酸を有効に増加させ、しかも、4−VGの生成を抑制し、香味バランスを保持した高機能、高香味の発酵アルコール飲料の製造が可能であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
本発明において、発酵アルコール飲料中の遊離フェルラ酸を有効に増加させる糖化温度のパターンは、4−VGの前駆体となるフェルラ酸が多く生産される温度条件として、フェルラ酸が麦芽中のアラビノキシランから遊離する至適温度45℃を考慮した麦下し温度20〜60℃及び蛋白休止時間5分以上の糖化パターンを設定した。すなわち、本発明は、大麦、小麦、大豆、大麦麦芽、及び小麦麦芽のいずれか1つ以上を醸造原料と用いる発酵アルコール飲料の製造において、糖化工程を、フェルラ酸エステラーゼ活性を有する酵素、セルラーゼ活性を有する酵素、及びキシラナーゼ活性を有する酵素の存在下において、糖化温度45℃±10℃、及び蛋白休止時間5分以上の糖化温度パターンを用い、4−VG生成能の低い酵母を用いて発酵することにより、遊離フェルラ酸を高含有し、かつ、香味バランスを保持した発酵アルコール飲料を製造する方法からなる。
本発明において、フェルラ酸エステラーゼ活性を有する酵素としてはプロテアーゼMGを、セルラーゼ活性を有する酵素としてはラミネックススーパーを、キシラナーゼ活性を有する酵素としてはセルロシンBGLを、好ましい酵素の例として挙げることができる。本発明においては、醸造原料に小麦ふすまを添加することによって、遊離フェルラ酸の含有量を更に高めることができる。更に、本発明においては、酵素の添加量を増加することにより、麦汁中の遊離フェルラ酸量を高めることができ、麦汁中の遊離フェルラ酸量を30mg/Lになるまで増加することができる。
本発明において、遊離フェルラ酸の含有量を高めた発酵アルコール飲料の香味バランスの保持は、4−VG生成能の低い酵母を用いて発酵することにより4−VGの生成を抑制することによって達成することができ、本発明の方法を適用することにより、4−VGの生成量を、0.62mg/L以下に抑制することができる。本発明の製造方法によって製造される発酵アルコール飲料としては、ビール、発泡酒、又は、その他の醸造酒を挙げることができる。本発明の発酵アルコール飲料の製造方法をバイツェンビールの製造に適用して、バイツェン香が抑えられ、かつ、遊離フェルラ酸を高含有するバイツェンビールを製造することができる。
すなわち具体的には本発明は、(1)大麦、小麦、大豆、大麦麦芽及び小麦麦芽のいずれか1つ以上を醸造原料と用いる発酵アルコール飲料の製造において、糖化工程を、フェルラ酸エステラーゼ活性を有する酵素、セルラーゼ活性を有する酵素、及びキシラナーゼ活性を有する酵素の存在下において、糖化温度45℃±10℃、及び蛋白休止時間5分以上の糖化温度パターンを用いて行うことを特徴とする遊離フェルラ酸を高含有し、かつ、香味バランスを保持した発酵アルコール飲料の製造方法や、(2)フェルラ酸エステラーゼ活性を有する酵素がプロテアーゼMGであり、セルラーゼ活性を有する酵素がラミネックススーパーであり、キシラナーゼ活性を有する酵素がセルロシンBGLであることを特徴とする前記(1)記載の遊離フェルラ酸を高含有し、かつ、香味バランスを保持した発酵アルコール飲料の製造方法や、(3)醸造原料に、小麦ふすまを添加したことを特徴とする前記(1)又は(2)記載の遊離フェルラ酸を高含有し、かつ、香味バランスを保持した発酵アルコール飲料の製造方法や、(4)遊離フェルラ酸量が、30mg/L以上であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載の遊離フェルラ酸を高含有し、かつ、香味バランスを保持した発酵アルコール飲料の製造方法、からなる。
また本発明は、(5)酵素の添加量を、麦汁中の遊離フェルラ酸量が30mg/Lになるまで増加することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の遊離フェルラ酸を高含有し、かつ、香味バランスを保持した発酵アルコール飲料の製造方法や、(6)香味バランスの保持が、発酵工程における4−ビニルグアイアコールの生成を抑制することからなることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか記載の遊離フェルラ酸を高含有し、かつ、香味バランスを保持した発酵アルコール飲料の製造方法や、(7)4−ビニルグアイアコールの生成量が、0.62mg/L以下に抑制されていることを特徴とする上記(6)記載の遊離フェルラ酸を高含有し、かつ、香味バランスを保持した発酵アルコール飲料の製造方法や、(8)発酵アルコール飲料が、ビール、発泡酒、又は、その他の醸造酒であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか記載の遊離フェルラ酸を高含有し、かつ、香味バランスを保持した発酵アルコール飲料の製造方法や、(9)バイツェン香が抑えられ、かつ、遊離フェルラ酸を高含有するバイツェンビールであることを特徴とする上記(8)記載の遊離フェルラ酸を高含有し、かつ、香味バランスを保持した発酵アルコール飲料の製造方法、からなる。
本発明により、ビールや発泡酒、又はその他の醸造酒のような発酵アルコール飲料において、遊離フェルラ酸を高含有し、しかも発酵アルコール飲料の香味バランスを保持した高機能、高香味の発酵アルコール飲料、及びその製造方法を提供することができる。本発明の発酵アルコール飲料の製造方法をバイツェンビールの製造方法に適用して、バイツェン香が抑えられ、かつ、遊離フェルラ酸を高含有する高機能、高香味の新しい味覚のバイツェンビールを提供することができる。
本発明は、大麦、小麦、大豆、大麦麦芽、及び小麦麦芽のいずれか1つ以上を醸造原料と用いる、ビールや発泡酒、又はその他の醸造酒のような発酵アルコール飲料の製造において、糖化工程を、フェルラ酸エステラーゼ活性を有する酵素、セルラーゼ活性を有する酵素、及びキシラナーゼ活性を有する酵素の存在下において、糖化温度45℃±10℃、及び蛋白休止時間5分以上の糖化温度パターンを用いて行うことにより遊離フェルラ酸を高含有し、かつ、4−VG生成能の低い酵母を用いて発酵することにより4−VGの生成を抑制して香味バランスを保持し、高機能、高香味の発酵アルコール飲料を製造することからなる。
本発明の発酵アルコール飲料の製造法における糖化工程において、醸造原料中のアラビノキシランからフェルラ酸を遊離させ、麦汁中に高含有の遊離フェルラ酸を生成するために用いる酵素としては、フェルラ酸エステラーゼ活性を有する酵素、セルラーゼ活性を有する酵素、及びキシラナーゼ活性を有する酵素の組み合わせが用いられる。また、発酵工程における酵素反応において、4−VGの生成を抑制する目的から、4−VG生成能の低い酵母の使用が望ましい。該酵母としては、例えば、下面発酵酵母KBY011等を挙げることができる。
プロテアーゼMG(プロテアーゼ、ペプチダーゼ、フェルラ酸エステラーゼ)(プロテアーゼMアマノG:天野エンザイム(株));ラミネックススーパー(セルラーゼ(β−グルカナーゼ)(ダニスコジャパン(株));セルロシンBGL(キシラナーゼ)(エイチビイアイ(株))はいずれも市販の酵素であり、該商品名で入手することができる。本発明の発酵アルコール飲料の製造方法において用いられる酵素の組合わせを例示すれば、例えば、プロテアーゼMG0.2g/kg麦芽、ラミネックススーパー0.5g/kg麦芽、及びセルロシンBGLg/kg麦芽となるような酵素の添加量を挙げることができる。
本発明の発酵アルコール飲料の製造方法において、遊離フェルラ酸を生成するための醸造原料としては、大麦、小麦、大豆、大麦麦芽、及び小麦麦芽が用いられるが、更に、フスマや玄米、精白米を添加することができる。穀類及び穀類を原料とする食品素材において、フェルラ酸は、米では玄米、胚芽精米、精白米の順に多く含まれ、小麦では胚芽と玄米に多く含まれている。これはフェルラ酸が主として細胞壁に含まれているため、細胞壁含量が多いものほどフェルラ酸が多くなるものと考えられる。また、麦芽においては、小麦麦芽よりも大麦麦芽を原料とした場合の方がフェルラ酸の生成量が増大する。したがって、麦芽を使用した発酵アルコール飲料の製造に際しては、醸造原料として大麦麦芽と小麦麦芽との配合割合を適宜変更して、フェルラ酸の生成量を調整することができる。
本発明の発酵アルコール飲料の製造方法において、遊離フェルラ酸を生成するために添加する酵素の量は適宜決定することができる。本発明において、添加する酵素量の増大に伴い、生成する遊離フェルラ酸量は、約30mg/Lまで直線関係で増大する。約30mg/Lを超えると、酵素量の増大に伴い緩やかな遊離フェルラ酸濃度の上昇が見られた。本発明においては、酵素量を増やすことで、遊離フェルラ酸量を34mg/Lまで生産させることが可能である。
本発明の発酵アルコール飲料の製造方法において、遊離フェルラ酸の生成を増大するために、醸造原料に小麦ふすまを添加することができる。小麦ふすまには、多くのフェルラ酸が含まれていることから、大麦麦芽や小麦麦芽等の醸造原料に加えて、小麦ふすまを添加することにより、麦汁中の遊離フェルラ酸含量を増大することができる。本発明の発酵アルコール飲料の製造方法を適用して、小麦麦芽と大麦麦芽を混合して用いて、糖化工程の最適化と4−VG生成能の低い酵母を用いて発酵することにより、バイツェン香が抑えられ、かつ、遊離フェルラ酸を高含有する高機能、高香味の新しい味覚のバイツェンビールを製造することができる。
本発明の発酵アルコール飲料の製造方法において、発酵アルコール飲料中の遊離フェルラ酸を有効に増加させる糖化工程の条件として、糖化温度のパターンは、4−VGの前駆体となるフェルラ酸が多く生産される温度条件として、フェルラ酸が麦芽中のアラビノキシランから遊離する至適条件、糖化温度45℃を考慮した麦下し温度20〜60℃及び蛋白休止時間5分以上の糖化パターンを設定した。すなわち、該糖化温度のパターンとして、糖化温度45℃±10℃、及び蛋白休止時間5分以上の糖化パターンが用いられる。蛋白休止時間は5分以上であり、通常は5〜60分で行い、最大でも5〜120分の範囲で行なう。
本発明の発酵アルコール飲料の製造方法において、発酵アルコール飲料中の遊離フェルラ酸を有効に増加させる糖化工程の条件として、醸造原料、添加する酵素の種類、添加酵素量、糖化温度において最適化した条件、並びに発酵工程での4−VG生成能の低い酵母の使用が採用される点を除いて、通常の発酵アルコール飲料の製造における糖化及び発酵工程の処理方法及び処理条件と変わるところはなく、また、糖化及び発酵工程以外の発酵アルコール飲料の製造工程の処理方法及び処理条件においても、通常の発酵アルコール飲料の製造工程と変わるところはない。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
<試験方法>
[500ml糖化試験]
500ml糖化試験として、以下の糖化温度のパターンを用いて、糖化試験を行なった:大麦麦芽或いは小麦麦芽の合計80gに対して、湯張り量320mlを加えて、プロテアーゼMG0.2g/kg麦芽、ラミネックススーパー0.5g/kg麦芽、セルロシンBGL0.5g/kg麦芽となるように酵素添加を行ない、糖化処理を行なった。糖化温度のパターンは、4−VGの前駆体となるフェルラ酸が多く生産される温度条件を使用した。フェルラ酸が麦芽中のアラビノキシランから遊離する糖化温度45℃±10℃、及び蛋白休止時間5分以上を考慮した糖化パターンを用いた。
[200L糖化試験]
200L糖化試験として、以下の糖化温度のパターンを用いて、糖化試験を行なった:大麦麦芽或いは小麦麦芽を合計50kgに対して、プロテアーゼMG0.2g/kg麦芽、ラミネックススーパー0.5g/kg麦芽、セルロシンBGL0.5g/kg麦芽となるように酵素添加を行ない、酵素処理を行なった。小規模糖化試験と同様に、フェルラ酸が麦芽中のアラビノキシランから遊離する糖化温度45℃±10℃、及び蛋白休止時間5分以上の糖化パターンを用いた。
[発酵試験]
500ml糖化試験及び200L糖化試験において調製された麦汁を用いて発酵試験を行なった:500ml発酵試験では、麦汁500mlに対して、下面発酵酵母KBY011株2.5gを加えて、通気後、温度20℃で7日間発酵試験を行った。200L発酵試験では、麦汁200Lに対して、0.52%の酵母を添加した。
[フェルラ酸濃度の測定]
本実施例において、遊離フェルラ酸濃度及び糖結合型フェルラ酸の濃度測定は、次の方法によって行った。
[遊離フェルラ酸の濃度測定方法]
遊離フェルラ酸の濃度測定には、使用サンプル1gに水5ml及び1mol/L水酸化ナトリウム水溶液50mLを加えて、40℃、3時間で加水分解を行なった。2mol/L塩酸を約28ml及び酢酸エチルを150ml加えて、振とうを15分間行なった。酢酸エチル層分取後、脱水乾固し、メタノール及び水の混液(1:1)を5ml加えて、メンブレンフィルター濾過を行った。その後、高速液体クロマトグラフに供した。高速液体クロマトグラフの操作条件は、以下のとおりである。
<高速液体クロマトグラフの操作条件>
カラム:YMC-Pack ODS-A AA12S05−1506WT, φ6.0×150mm
移動相:酢酸及びアセトニトリルの混液
流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
測定波長:320nm
[4−VG濃度の測定]
4−VG濃度の測定は、前処理後GC(ガスクロマトグラフィー)によって解析した。
[抗酸化活性測定]
抗酸化活性測定には、ORAC(Oxygen Radical Absorbance Capacity)法(J.Agric.Food Chem.,53,4290-4302,2005)を用いた。ORAC法は食品の抗酸化力の測定方法として代表的で、生体内の主要なフリーラジカルであるペルオキシルラジカルに対する抗酸化力が測定できるとされている。ORAC値が高いほど活性酸素の消去能(抗酸化力)が高い。なお、血清のORAC測定では血中タンパク質の影響を排除するために過塩素酸による前処理を行った(J.Agric.Food Chem.,54,7940-7946,2006)。また、血清中のフェルラ酸濃度は小西らの方法(J.Agric.Food Chem.,53,9928-9933,2005)に従って測定した。
<試験と結果>
フェルラ酸高含有ビール類の開発を検討するにあたり、まずは既存製品ビール類中にどれくらいのフェルラ酸が含まれているかを分析した。分析したビール類は、ドイツのバイツェンビール[製品A,B,C]、日本の小麦麦芽使用ビール類[製品D,E,F]、コントロールとして、通常のビール[製品G]及び、発泡酒[製品H]の8種類である。分析項目は、遊離型フェルラ酸、及び4−VGである。
その結果、図1(製品ビール類中における遊離フェルラ酸、及び4−VGの濃度)に示したようにドイツのバイツェンビール製品A,B,Cは、4−VGを多く含むが、遊離フェルラ酸をほとんど含まなかった。日本の小麦麦芽使用ビール類製品D,E,F通常のビール製品G、及び発泡酒製品Hは、遊離フェルラ酸濃度を約2mg/L含むが、ドイツのバイツェンビールと比較して4−VG濃度が低かった。以上の結果から、調査したバイツェンビールとそれ以外のビール類で遊離フェルラ酸と4−VGの濃度が大きく異なることが示唆された。
[酵素量と遊離フェルラ酸の生成]
酵素量が遊離フェルラ酸の生成に及ぼす影響について試験した。フェルラ酸はアラビノキシランと結合したフェルラ酸がフェルラ酸エステラーゼによって遊離フェルラ酸に分解される。このフェルラ酸エステラーゼを含んでいる蛋白質分解酵素プロテアーゼMG、ヘミセルラーゼ酵素であるラミネックススーパー及びセルロシンBGLの混合物を用いて、酵素量がフェルラ酸生成に及ぼす影響について試験した。大麦麦芽80gに、プロテアーゼMG0.2g/kg麦芽、ラミネックススーパー0.5g/kg麦芽、セルロシンBGL0.5g/kg麦芽となるように添加して、糖化温度45℃±10℃、及び蛋白休止時間5分以上の糖化条件を用いてフェルラ酸の遊離を行なった。
その結果、図2のように酵素量の増大に伴い、約30mg/Lまで遊離フェルラ酸量が直線関係でフェルラ酸濃度が増大した。約30mg/Lを越えると、酵素量の増大に伴い緩やかな遊離フェルラ酸濃度の上昇が見られた。この結果より、酵素量を更に増やすことで、遊離フェルラ酸濃度を約34mg/Lまで生産させることが可能であることが示唆された。
[酵素の種類が遊離フェルラ酸の生成に及ぼす影響]
酵素の種類が遊離フェルラ酸の生成に及ぼす影響について試験した。フェルラ酸を遊離させるフェルラ酸エステラーゼは、単独では市販されている酵素ではない。ヘミセルラーゼや蛋白質分解酵素に混在して含まれている。そこで、酵素の種類がフェルラ酸生成に及ぼす影響を検討した。8種類の酵素(アマノ3G、ニュートラーゼ、HP、プロテアーゼMG、スミチームLPL、スミチームFP−G、ウマミザイムG、ブロメラインF)について、フェルラ酸生成能を評価した。
結果、図3(酵素の種類と遊離フェルラ酸の生成)に示したようにプロテアーゼMGを用いた場合、酵素なしのコントロールと比較して、フェルラ酸生成量が増大した。プロテアーゼMGは蛋白質分解酵素であるが、フェルラ酸エステラーゼも保有する。また、図4(プロテアーゼMG、ラミネックススーパー、セルロシンBGLの酵素単独及び組合せと遊離フェルラ酸の生成)では、プロテアーゼMG、ラミネックススーパー、セルロシンBGLの3種類について酵素単独が遊離フェルラ酸生成に及ぼす寄与について試験した。その結果、アマノMGとラミネックススーパーの酵素の活性が高く、遊離フェルラ酸生成に寄与が大きいことが明らかとなった。これらの酵素3種類を混合することにより、高い遊離フェルラ酸生成を達成できることが示された。
[小麦麦芽使用比率と遊離フェルラ酸の生成]
小麦麦芽使用比率と遊離フェルラ酸の生成について試験した。穀類及び穀類を原料とする食品素材と加工食品に含まれるフェルラ酸含量が調査され、米では玄米、胚芽精米、精白米の順に多く含まれ、小麦では胚芽と玄穀に多く含まれることが明らかにされている(醸造協会誌、96、100−106、2001)。これはフェルラ酸が主として細胞壁に含まれるため、細胞壁含量が多いものほどフェルラ酸が多くなるものと推定されている。そこで、小麦麦芽使用比率がフェルラ酸生成に及ぼす影響について調査した。その結果、予測に反して、小麦麦芽使用比率が増大するにつれて、フェルラ酸生成量が減少した(図5)。つまり、小麦麦芽よりも大麦麦芽を原料とした方が、この条件下では、フェルラ酸生成量が増大することが示された。
[遊離フェルラ酸高含有糖化液の抗酸化活性]
遊離フェルラ酸高含有ビールのin vitroにおける抗酸化活性をORAC法で測定した。図6(フェルラ酸高含有ビールのin vitro抗酸化活性測定結果)に示したように、上記記載の製造方法によりフェルラ酸を高含有としたビール(フェルラ酸高含有ビール)は、同様の原材料を用いた一般的な製造方法によるビール(コントロールビール)と比較して、50%以上抗酸化力が増強していることが確認された。そこで、次にフェルラ酸高含有ビールとコントロールビールを経口強制投与した場合の血中のORAC値を経時的に測定した。各ビールは凍結乾燥した後、水に再溶解し、0.58g/kg体重(3mL)となるようラット(Wistar系、雄性8週齢)へ投与した。図7(フェルラ酸高含有ビールのin vivo抗酸化活性測定結果)に示したように、コントロールビール投与群と比較して、フェルラ酸高含有ビール投与群ではORAC値が顕著に上昇し、経口摂取による生体内の抗酸化力の増強にも優れていることが示された。また、図8(フェルラ酸高含有ビールを経口投与したラットの血中フェルラ酸濃度)に示したように、ORAC値が顕著に上昇した20分後のラット血清中のフェルラ酸濃度を測定したところ、フェルラ酸高含有ビール投与群でコントロールビール投与群と比較して確かに高い血中フェルラ酸濃度が検出された。
[バイツェン香を抑制した遊離フェルラ酸高含有バイツェンビールの製造]
バイツェン香を抑制した遊離フェルラ酸高含有バイツェンビールの製造を行った。
バイツェンビールは、ドイツのバイエルン州を中心によく飲まれている上面発酵ビールであり、その特徴は、原料に小麦麦芽を50%以上使用し、エステル香及び4−VG由来のバイツェン香と呼ばれる独特の香りを持つ点である。
そこで、バイツェン香が抑えられ、フェルラ酸を高含有するバイツェンビールの製造を目的として、小麦麦芽を70%使用い、4−VG前駆体(遊離フェルラ酸)を多く生産する仕込条件、4−VG生産を抑えるため下面発酵酵母KBY011株を使用した発酵条件で200L糖化試験と発酵試験を行い、試験醸造ビールを作製した。その結果、試醸したビールでは、遊離フェルラ酸が9mg/L(市販品の4.5倍)含まれ、4−VG含量は、0.62mg/L(ドイツのバイツェンビールの約1/4)であった(図9:バイツェン香を抑制した遊離フェルラ酸高含有バイツェンビールにおける遊離フェルラ酸及び4−VGの濃度)。すなわち、本方法により、バイツェン香が抑えられ、フェルラ酸を高含有するビールを作製することができた。調製したビールを試飲したところ、わずかに渋みは感じるものの、フェノール香が少なく、バイツェン香が抑えられ、フェルラ酸を高含有する新しい香味のバイツェンビールを製造することができた。
[小麦ふすま添加によるビール類の遊離フェルラ酸含有量の増大]
小麦ふすま添加によるビール類の遊離フェルラ酸含有量の増大について試験した。小麦ふすまには、多くのフェルラ酸が含まれていると考えられている。そこで、小麦、小麦麦芽、小麦ふすま、大麦麦芽のフェルラ酸含有量や小麦ふすま添加量がフェルラ酸生成に及ぼす影響について試験した。
その結果、図10(小麦、小麦麦芽、小麦ふすま、大麦麦芽のフェルラ酸含有量について、麦汁11プラトー当たりの平均遊離フェルラ酸濃度(mg/L))に示したように、麦汁11プラトー当たりの平均遊離フェルラ酸濃度を比較した場合、小麦麦芽よりも大麦麦芽に多くのフェルラ酸が含まれ、小麦ふすまのみが一番濃度が高かった。また、図11(小麦ふすま添加量と遊離フェルラ酸生成、麦汁11プラトー当たりの平均遊離フェルラ酸濃度(mg/L))のように小麦ふすま添加量が増えるにつれてフェルラ酸生成量が増大した。ビール類の遊離フェルラ酸含有量を増大されるために、大麦麦芽に小麦ふすまを添加することで、遊離フェルラ酸含有量を増大させることができる。
本発明の製品ビール類における遊離フェルラ酸、及び4−VGの濃度の比較試験の結果を示す図である。 本発明の実施例における、酵素量が遊離フェルラ酸の生成に及ぼす影響についての試験において、その結果を示す図である。 本発明の実施例における、酵素の種類と遊離フェルラ酸の生成についての試験において、その結果を示す図である。 本発明の実施例における、プロテアーゼMG、ラミネックススーパー、セルロシンBGLの酵素単独及び組合わせと遊離フェルラ酸の生成についての試験において、その結果を示す図である。 本発明の実施例における、小麦麦芽使用比率と遊離フェルラ酸の生成についての試験において、その結果を示す図である。 本発明の実施例における、フェルラ酸高含有ビールのin vitro抗酸化活性の測定結果を示す図である。 本発明の実施例における、フェルラ酸高含有ビールを経口投与したラットの血中抗酸化活性の測定結果を示す図である。 本発明の実施例における、フェルラ酸高含有ビールを経口投与したラットの血中フェルラ酸濃度の測定結果を示す図である。 本発明の実施例において、バイツェン香を抑制した遊離フェルラ酸高含有バイツェンビールにおける遊離フェルラ酸及び4−VGの濃度の測定結果を示す図である。 本発明の実施例において、小麦、小麦麦芽、小麦ふすま、大麦麦芽のフェルラ酸含有量についての測定試験において、麦汁11プラトー当たりの平均遊離フェルラ酸濃度(mg/L)を示す図である。 本発明の実施例において、小麦ふすま添加量と遊離フェルラ酸生成についての測定試験において、麦汁11プラトー当たりの平均遊離フェルラ酸濃度(mg/L)を示す図である。

Claims (9)

  1. 大麦、小麦、大豆、大麦麦芽及び小麦麦芽のいずれか1つ以上を醸造原料と用いる発酵アルコール飲料の製造において、糖化工程を、フェルラ酸エステラーゼ活性を有する酵素、セルラーゼ活性を有する酵素、及びキシラナーゼ活性を有する酵素の存在下において、糖化温度45℃±10℃、及び蛋白休止時間5分以上の糖化温度パターンを用いて行うことを特徴とする遊離フェルラ酸を高含有し、かつ、香味バランスを保持した発酵アルコール飲料の製造方法。
  2. フェルラ酸エステラーゼ活性を有する酵素がプロテアーゼMGであり、セルラーゼ活性を有する酵素がラミネックススーパーであり、キシラナーゼ活性を有する酵素がセルロシンBGLであることを特徴とする請求項1記載の遊離フェルラ酸を高含有し、かつ、香味バランスを保持した発酵アルコール飲料の製造方法。
  3. 醸造原料に、小麦ふすまを添加したことを特徴とする請求項1又は2記載の遊離フェルラ酸を高含有し、かつ、香味バランスを保持した発酵アルコール飲料の製造方法。
  4. 遊離フェルラ酸量が、30mg/L以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の遊離フェルラ酸を高含有し、かつ、香味バランスを保持した発酵アルコール飲料の製造方法。
  5. 酵素の添加量を、麦汁中の遊離フェルラ酸量が30mg/Lになるまで増加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の遊離フェルラ酸を高含有し、かつ、香味バランスを保持した発酵アルコール飲料の製造方法。
  6. 香味バランスの保持が、発酵工程における4−ビニルグアイアコールの生成を抑制することからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の遊離フェルラ酸を高含有し、かつ、香味バランスを保持した発酵アルコール飲料の製造方法。
  7. 4−ビニルグアイアコールの生成量が、0.62mg/L以下に抑制されていることを特徴とする請求項6記載の遊離フェルラ酸を高含有し、かつ、香味バランスを保持した発酵アルコール飲料の製造方法。
  8. 発酵アルコール飲料が、ビール、発泡酒、又は、その他の醸造酒であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の遊離フェルラ酸を高含有し、かつ、香味バランスを保持した発酵アルコール飲料の製造方法。
  9. バイツェン香が抑えられ、かつ、遊離フェルラ酸を高含有するバイツェンビールであることを特徴とする請求項8記載の遊離フェルラ酸を高含有し、かつ、香味バランスを保持した発酵アルコール飲料の製造方法。
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