JP2010130926A - ミヤコグサ由来のレトロトランスポゾンlore1を用いた変異体植物の作製方法 - Google Patents

ミヤコグサ由来のレトロトランスポゾンlore1を用いた変異体植物の作製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】培養変異による変異体の作出を回避することができる、レトロトランスポゾンを用いた新規な変異体植物の作製方法を提供する。
【解決手段】(a) 植物組織を脱分化させてカルスを形成させるステップと、(b) ステップ(a)で得たカルスを植物体まで再分化させるステップと、(c) 再分化させた植物体を自殖して、次世代個体を得るステップとを含み、ここで、植物組織はそのゲノム中にレトロトランスポゾンLORE1又はその変異体を含んでいることを特徴とする、変異体植物の作製方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、レトロトランスポゾンを用いた変異体植物の作製方法、より具体的には配偶体的な転移様式を有するレトロトランスポゾンを用いた変異体植物の作製方法に関する。
レトロトランスポゾンは、自身をRNAに転写した(本明細書中、「活性化される」ともいう)後、逆転写酵素によって相補的DNA(cDNA)に移し変えられてゲノム中の他の位置に再挿入される(「転移する」という)可動遺伝因子の一種である。
レトロトランスポゾンの転移による遺伝子破壊は、点変異に比べ、変異体の原因遺伝子の同定と、逆遺伝学的利用が容易であるため、植物の分野における遺伝子タギングの有用なツールとして利用されている(非特許文献1)。
しかしながら、現在までに報告されている転移能を持つレトロトランスポゾンの多くは培養細胞において転移するため、これらを利用して遺伝子破壊を行う場合、転移と同様に高頻度で生じる塩基置換や欠失による変異体の出現のために、必ずしも遺伝学的解析に適しているとはいえない。
植物のゲノム研究プロトコール、秀潤社、2001年2月5日発行
そこで本発明は、上記培養変異の問題を回避することができる新規な変異体植物の作製方法を提供することを目的とする。
マメ科のモデル植物であるミヤコグサ(Lotus japonicus)内在のレトロトランスポゾンとしてLORE1(Lotus Retrotransposon 1)が知られている(Madsen et al., Plant Journal (2005) 44:372-381)。LORE1は、その両末端側にLTRを有するTy3-gypsy型レトロトランスポゾンであるが、その転移様式は不明であった。
本発明者らは今回、(1) LORE1が植物組織の脱分化を経ることにより活性化されるが、活性化されたLORE1は脱分化中は転移せず、したがって再分化当代個体(R0)の栄養組織(葉など)では転移コピーは認められない;(2)活性化したLORE1はR0の主に配偶体において転移し、転移コピーはR0を自殖することにより得られるR1個体に遺伝する(本明細書中、「配偶体的に転移する」又は「配偶体的な転移様式を有する」ともいう);及び(3)LORE1は遺伝子領域に適切に転移することができ、したがって遺伝子を効率的に破壊することができる、ことを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の特徴を包含する。
(1) 変異体植物の作製方法であって、(a) 植物組織を脱分化させてカルスを形成させるステップと、(b) ステップ(a)で得たカルスを植物体まで再分化させるステップと、(c) 再分化させた植物体を自殖して、次世代個体を得るステップとを含み、ここで、植物組織はそのゲノム中にレトロトランスポゾンLORE1又はその変異体を含んでいることを特徴とする、前記方法。
(2) LORE1又はその変異体は植物組織のゲノム中に外的に導入されたものであることを特徴とする上記(1)記載の方法。
(3) LORE1は配列番号1に示すヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、上記(2)記載の方法。
(4) 前記植物組織は胚軸であることを特徴とする上記(1)記載の方法。
(5) (d)次世代個体の自殖を繰り返すことによりさらに後代の個体を得るステップをさらに含む、上記(1)記載の方法。
(6) 植物組織はLORE1又はその変異体を内在している植物由来であることを特徴とする上記(1)又は(5)記載の方法。
(7) 植物組織はミヤコグサ(Lotus japonicus)由来であることを特徴とする上記(6)記載の方法。
(8) ステップ(c)を開放系にて実施することを特徴とする、上記(6)記載の方法。
(9) ステップ(d)を開放系にて実施することを特徴とする、上記(6)記載の方法。
本発明によれば新規な変異体植物の作製方法が提供される。本発明に用いるレトロトランスポゾンLORE1は、配偶体的な転移様式を有するため、培養変異による変異体の作出を回避することができる。またこの特性により、再分化植物を自殖することにより得られる個々の種子がそれぞれ独立の変異を有するため、採種するだけで多数の独立の遺伝子破壊系統を作出できるという利点を有する。
本発明に係る変異体植物の作製方法(以下、単に本発明の方法という)は、ミヤコグサ(Lotus japonicus)内在のレトロトランスポゾンであるLORE1を利用する。
LORE1は、両末端側にLTRを有するLTR型のレトロトランスポゾンである。両末端LTRに挟まれた領域には、転移に必要な逆転写酵素及びインテグラーゼなどをコードする配列を含み、機能ドメインの並び順からTy3-gypsy型に分類されている(図1)。ミヤコグサのアクセッションGifuにおいて、LORE1ファミリーのメンバーが10コピー見出されており、そのうち9コピー(それぞれLORE1a〜iと命名される)については全体又は部分塩基配列が決定されている(Madsen et al., 前掲)。
本発明者らは今回、植物ゲノム中の上記LORE1の転移を、植物組織を脱分化させた後に植物体に再分化させること、及び再分化させた植物体を自殖して次世代個体を得ることによって誘導できることを見出した。
したがって本発明の方法は、(a) 植物組織を脱分化させてカルスを形成させるステップと、(b) ステップ(a)で得たカルスを植物体まで再分化させるステップと、(c) 再分化させた植物体を自殖して、次世代個体を得るステップとを含み、ここで、植物組織はそのゲノム中にレトロトランスポゾンLORE1を含んでいることを特徴とする。
本発明の方法において、LORE1は、上記LORE1メンバーのいずれか又はその変異体であることができる。本明細書で使用する用語「LORE1の変異体」は、上記様式の転移能を失わない程度にその塩基配列中に1〜複数個の塩基の置換、付加、欠失又は挿入を含んでいるLORE1をいう。また本明細書で使用する「複数個」とは、500個以下、好ましくは100個以下、より好ましくは50個以下、より好ましくは25個以下、そして最も好ましくは10個以下をいう。なお、LORE1の変異体は、LORE1の5’LTR領域を除く領域に塩基の置換、付加、欠失又は挿入を含むことが好ましい。5’LTR領域はLORE1のプロモーター活性を有する領域であり、LORE1の配偶体的な転移様式に重要であると考えられるからである。
本発明において、特に好ましいLORE1メンバーはLORE1a又はその変異体である。LORE1aの塩基配列を配列番号1に示す。LORE1aの変異体において、5’LTRを除く領域とは、配列番号1の226〜5041番目である。
ゲノム中の内在のLORE1又はその変異体を変異体植物の作製に利用する場合(例えばミヤコグサの変異体植物を作製する場合)には、当該ステップ(a)に供する植物組織に特別な操作を要しない。
一方、上記LORE1又はその変異体を内在していない植物の変異体を本発明の方法により作製する場合には、まず上記LORE1又はその変異体を、対象植物の植物ゲノムに導入することを要する。植物ゲノムへのLORE1の外的な導入は、例えばLORE1ポリヌクレオチド断片を、その配列情報に基づいて化学合成するか、又はミヤコグサのゲノムDNAから単離及びクローニングするか若しくはLORE1領域を特異的に増幅することができるプライマーセットを用いたPCR技術を使用して取得し、当業者に公知のトランスジェニック技術を利用して行えばよい。
本発明に使用することができるトランスジェニック技術として、例えばアグロバクテリウム(Agrobacterium)を利用した形質転換を挙げることができる。簡潔に説明すると、植物感染性であるアグロバクテリウムからプラスミドを取り出し、該プラスミドのT-DNA遺伝子を上記のようにして取得したLORE1で置換し、これをアグロバクテリウムに戻して植物組織の感染に利用する。その際、LORE1と共に当業者に公知の選択マーカー遺伝子を挿入することで、LORE1が導入されている植物組織を選択することができる。そのような選択マーカー遺伝子として、例えばカナマイシン、テトラサイクリン、リファンピシン、スペクチノマイシン、カルベニシリン、ゲンタマイシンなどの抗生物質に対する耐性を付与する遺伝子などを使用することができる。アグロバクテリウムを利用した形質転換の実例は、例えばモデル植物の実験プロトコール、イネ・シロイヌナズナ編、細胞工学別冊、植物細胞工学シリーズ4、島本功・岡田清孝監修 (1996)や米国特許第5,188,958号などに記載されている。
本発明の目的で使用することができる他のトランスジェニック技術として、これに限定されるものではないが、ウイルスベクターを介した形質転換、エレクトロポレーション及びパーティクルガンなどを挙げることができる。パーティクルガンを利用した形質転換の実例は、例えば米国特許第5,204,253号などに記載されている。
本発明の方法で使用することができる植物組織は、再分化能及び培養特性がよいものであれば植物のいずれの部分に由来するものであってもよく、これに限定されるものではないが種子、茎、葉、胚軸、根、葯(花粉)などに由来するものを使用することができる。好ましくは、植物組織は胚軸に由来するものである。
ステップ(a)における植物組織の脱分化は、当業者に一般的なカルス誘導培地を用い、一般的なカルス誘導条件で組織培養することによって行えばよく、特別な条件を用いる必要はない。例えば、所与の植物部位から得た組織片を滅菌した後、オーキシン、サイトカイニンを適切な量で含む培地中で、培養温度22〜25℃(例えば23℃)、7〜14日(例えば7日)に1度培地を取換えながら4〜8週間培養することによりカルスを形成させることができる。
ステップ(b)の再分化も、当業者に一般的な再分化培地を用いて培養することによって行うことができる。例えば、ステップ(a)で得たカルスを再分化培地に植え継ぎ、一般的な条件下で培養することにより再分化植物を得て、鉢上げすればよい。
上記ステップ(a)〜(c)により取得される次世代個体(R1)は、必ずしも全てではないが、植物の遺伝子領域内にLORE1が転移されたものであり、またその転移は各R1間で異なるものである。
一方、上記のようにして取得される特定の遺伝子破壊を有する次世代個体(R1)は、当該遺伝子破壊をヘテロ接合型で有するものである。したがって、特定の遺伝子破壊をヘテロ接合型で有するR1を自殖してさらに後代の個体を得ることにより、該遺伝子破壊をホモ接合型で有する表現型変異体を作製することもできる。
以上説明したように、本発明の方法は、LORE1が配偶体的に転移することに起因して、培養変異による変異体の作出を回避することができるため、正遺伝学的及び逆遺伝学的解析に有用な方法である。また、このようなLORE1の特性に基づき、再分化植物体を自殖することにより得られるR1種子を採種するだけで、多数の独立の遺伝子破壊系統を取得することができるという利点を有する。
LORE1はまた、再分化当代個体(R0)において活性化された後、数世代にわたって転移を繰り返すことができるが、永続的に転移を繰り返すわけではなく、数世代後には転移を生じなくなるというデータもある(下記実施例5参照)。レトロトランスポゾンを用いた遺伝子タギングにおいては、レトロトランスポゾンの転移が繰り返されることによる多重変異体の発生が有用遺伝子同定の弊害となる場合があるが、LORE1はこのような問題を回避することができると考えられる。
本発明の方法において、変異体植物の作製の対象となる植物は特に制限されない。LORE1を含むレトロトランスポゾンは、一般的に種を超えて転移することができるからである(例えばLucas et al., EMBO J. (1995) 15;14:2364-2373;及びOkamoto et al., Plant J.(2000) 23:291-304参照)。例えばこれに限定されるものではないが、マメ科植物、イネ科植物、アブラナ科植物、キク科植物などを変異体植物作製の対象として使用することができる。
特に好ましい植物は、LORE1又はその変異体をそのゲノム中に内在している植物、例えばミヤコグサである。そのような植物は、下記に詳述するように、LORE1又はその変異体をそのゲノム中に外的に導入する必要がなく、開放系にて大規模な変異体集団を確立することができるという利点を有する。
本発明の方法において、例えばミヤコグサ(Lotus japnicus)を使用することには、次のような利点がある。
(1) ミヤコグサを含むマメ科植物は、食料、工業原料、薬効成分原料など多岐の用途にわたる重要な作物を含んでいる。近年マメ科植物は塩基配列情報の蓄積が進み、今後分子育種が急速に進むと予想されるが、マメ科には有用な遺伝子破壊実験系がまだ存在せず、このことが有用遺伝子単離とその育種利用の律速となっていた。本発明の方法は、マメ科植物における新規な遺伝子破壊実験系の確立するものである。
(2) これまでマメ科植物においては、人為的な活性化誘導が可能な内在の転移因子が同定されていなかった。したがって、従来のマメ科植物において試みられてきた遺伝子破壊系は全て外来DNAの導入を伴う遺伝子組み換え体を利用するものであった(例えば、タバコのレトロトランスポゾンTnt1のタルウマゴヤシ(Medicato truncatula)への導入、トウモロコシのトランスポゾンAcのシステムのダイズ(Glycine max (L.) Merr.)への導入:Tadege et al., Plant J.(2008) 54:335-547; Mathieu et al., Planta. (2008) DOI:10.1007/s00425-008-0827-9参照)。これらは遺伝子組み換え体集団であり、その利用は閉鎖系温室などに限られるため、屋外などにおける大規模な変異体選抜を困難にし、これがマメ科植物の有用遺伝子同定の律速となっていた。本発明の方法は、ミヤコグサ内在のレトロトランスポゾンを利用した非形質転換型の遺伝子破壊植物体の作製方法であるため、屋外で大規模な変異体植物集団を確立することができる。
(3) LORE1の挿入がランダムに生じると仮定した場合、ミヤコグサの全遺伝子について1挿入変異体を95%の確立で得るための集団サイズを算出すると、約20万系統(R1個体)と推定される。ミヤコグサは多年生であり、栄養繁殖が可能であるため、20万粒の種子を、LORE1が活性化された特定の植物体から採種するのは比較的容易である。
以下、本発明を実施例によってより詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[実施例1] ミヤコグサにおけるLORE1転移誘導
本実施例は、ミヤコグサ内在のLORE1が配偶体的に転移することを立証する。
本実施例に使用した培地の組成は以下の通りである。
Callus培地及びShoot Induction培地
1xB5, 2% sucrose, BAP 0.5mg/ml, NAA 0.05mg/ml, 10mM NH4, 0.3% phytagel
Shoot Elongation培地
1xB5, 2% sucrose, BAP 0.2mg/ml, 0.3% phytagel
Root Induction培地
1/2 B5, 1% sucrose, 0.5mg/ml NAA, 0.4% phytagel
Root Elongation培地
1/2 B5, 1% sucrose
本実施例においては、変異体植物作製の対象としてミヤコグサ(Lotus japonicus)アクセッションGifuを使用した。
<滅菌>
まずミヤコグサ種子200種子を2〜3mlの濃硫酸に漬け、20分間静置した。次に、滅菌水で5回洗浄後、市販の次亜塩素酸ソーダの1/2希釈液に0.02%Tween20を加え、種子をこの中に漬けて10分間穏やかに攪拌しながらインキュベートした後、滅菌水で10分x3回、及び20分x3回洗浄した。
<発芽>
次いで、滅菌した濾紙(6x6cm)を5mm程度の厚さにパイルし、90x20mmペトリ皿においた。これに20-25mlの滅菌水を加え、この上に約100粒を播種し、パラフィルムでシールした。その後、暗黒下、26℃で4日間培養し、その後2日間連続照明においた。
<カルス誘導>
幼植物の胚軸(長さ1〜2cm)を子葉の直下と根の境目で切り、10本程度を束ねてピンセットで押さえ、メスで3mm程度に細切し、隙間に空気が入らないようにして90x20mmペトリ皿中のCallus培地の上に置いた。23℃、明(17hrs)、暗(7hrs)のグロースキャビネット内におき、7日間培養した。切片を1つずつ新しいCallus培地に植え継ぎ、これを7日ごとに繰り返して4〜8週間選別培養を継続した。
<再分化>
再分化は以下の通りにして行った。
苗条の誘導:カルスをShoot Induction培地に植え継ぎ、これを7日ごとに繰り返しながら3〜7週間培養を続けた。
苗条の伸長:苗条原基が形成されたカルスをShoot Elongation培地に植え継ぎ、これを7日ごとに繰り返しながら3〜7週間培養を続けた。
根の誘導:1cm程度に成長した苗条を切り取り、これをRoot Induction培地に浅く突き刺して、10日間培養した。
根の伸長:円形プラントボックスにRoot Elongation培地(約40ml)を入れて減菌し、植物を浅く突き刺した。その後、3〜4週間26℃(明、16hrs)、23℃(暗、8hrs)のグロースキャビネットで培養した。
鉢上げ:根が1.5〜2cm程度伸びたら、Root Elongation培地から取り出し、バーミキュライトを詰めた2段重ねの角形プラントボックスに移植した。その後、蓋をして、3週間程度グロースキャビネット内で育成し、蓋をはずしてさらに1週間培養した。植物が十分な大きさ(苗条の長さ3〜4cm)になった時点で、パワーソイル(クレハ園芸用培土)を詰めたビニールポットに移植し(1個体/ポット)、温室に出した。
<サザンブロット分析>
上記のようにして得た1個体の再分化R0植物体を生育させ、自殖によりR1個体を得た。R0とR1のLORE1のコピー数は、ゲノムサザンブロット分析により解析した。葉からCTAB法(Murray and Thompson, (1980)Nucleic Acids Res. 8:4321-4325)により抽出したR0とR1植物のゲノムDNAをHind IIIで消化し、1.0%アガロースゲルに電気泳動後ナイロンメンブランにトランスファーし、LORE1特異的プローブをハイブリダイズさせた。この解析では、LORE1の5’末端と5’フランキング配列を含むHind III断片が検出される。
<結果>
図2から明らかな通り、LORE1の転移は、再分化当代個体(R0)では観察されず、R1世代で初めて検出される。さらに、R1個体間で独立の転移を生じていることがわかる。これらの結果はLORE1の転移が再分化当代個体(R0)の配偶体で起こることを示しており、したがってLORE1は主に配偶体的に転移することが示された。
[実施例2] LORE1による遺伝子破壊の立証
本実施例は、LORE1がミヤコグサの遺伝子を効率的に破壊していることを立証する。この目的のために、実施例1に記載されるようにして得たR1個体において転移していたLORE1の近傍配列を以下のようにして解析した。
近傍配列の取得はSSAP (Sequence Specific Amplified Polymorphisms)法(例えばMadsen et al., 前掲)により行なった。R1個体の葉から抽出したゲノムDNAを制限酵素Mse Iで消化後、2種類のアダプター(Mse Iアダプター: 配列番号2:TACTCAGGACTCATと配列番号3:GACGATGAGTCCTGAGとをアニーリングさせたもの、Long Mse Iアダプター:配列番号2と配列番号4:GTAATACGACTCACTATAGGGCTCGAGCGACGATGAGTCCTGAGとをアニーリングさせたもの)をライゲーションした。このライゲーション反応物をテンプレートに、リンカー特異的プライマー(配列番号5:GTAATACGACTCACTATAGGGC)と、リンカーとLORE1の境界配列に特異的プライマー(配列番号6:GAGTCCTGAGTAACCAACTAAC)とを用いて1次PCRを行なった(94℃で2分加熱後、94℃30秒、57℃1分、72℃1分を23サイクル)。次に、1次PCR産物をテンプレートとして、2次PCRを行った(94℃で2分加熱後、94℃30秒、65℃30秒、72℃1分30秒を、アニーリング温度を1サイクルあたり0.7℃下げながら13サイクル、その後94℃30秒、56℃30秒、72℃1分30秒を23サイクル)。2次PCRで用いたプライマーは、1次PCRで用いたプライマーよりも、増幅されるべき産物の内側にアニーリングするよう設計した(リンカー側プライマー:GATGAGTCCTGAGTAA(配列番号7);LORE1側プライマー:GCTAACAGTAAACATCTGTAAC(配列番号8))。こうして増幅された産物をポリアクリルアミドシークエンスゲルに泳動し、バンドを銀染色により検出した。バンドのうち、コントロール(C)植物では検出されないもの、つまり新規に転移したLORE1に由来するものを、メスにより切り出した。切り出したアクリルアミドゲル片を、1x濃度のPCRバッファー中でインキュベート(68℃、2時間)し、ゲル中のDNAをバッファーに溶出させた。その溶出液をテンプレートに用い、2次PCRのプライマーを用いDNA断片を再増幅した(94℃で1分30秒加熱後、94℃30秒、60℃30秒、72℃45秒を35サイクル)。得たDNA断片を直接用いて、又はTAクローニング後のプラスミドDNAをテンプレートに用いて、シークエンス反応を行ない、塩基配列情報を解析し、計97の配列情報を得た。それらの塩基配列情報について相同性検索を行なった結果、43配列は遺伝子または推定遺伝子領域に挿入し、そのうち31はエキソンに挿入しており、高効率で遺伝子を破壊していることが分かった(表1)。
Figure 2010130926
[実施例3] R0でのLORE1転写量とR1でのLORE1転移との相関
本実施例では、ROでのLORE1転写量の増加とLORE1転移とが相関していることを示す。この目的のために、実施例1に記載されるようにして誘導した再分化当代におけるLORE1転写量と、その後の自殖個体におけるLORE1転移の有無とを以下のようにして調べた。
独立の8個体のR0の花におけるLORE1の転写量をRT-PCRにより解析した。各個体の花からトータルRNAを抽出し、DNase処理を行ない、カラム精製した。分光光度計により濃度を測定後、等量のトータルRNAをテンプレートに、oligo-dTプライマーと逆転者酵素を利用し一本鎖cDNAを合成した。合成した一本鎖cDNAをテンプレートに、LORE1特異的プライマー(正方向プライマー:GTTGCCAGTATCGCCATGGACG(配列番号9);逆方向プライマー:GGATTGAGGCCTCCAAGATAAC(配列番号10))を用いPCRを行なった(94℃で5分加熱後、94℃30秒、60℃30分、72℃30分を28サイクル)。DNAの混入がない事を示すネガティブコントロールとして、逆転写酵素を利用しなかった反応も行なった。テンプレートに用いたcDNA量がサンプル間で等しい事を示す為のコントロールとして、Elongation factor 1-alpha(EF1-α)遺伝子の転写産物のRT-PCRを特異的プライマー(正方向プライマー:GTGAGGGACATGAGACAGACTG(配列番号11);逆方向プライマー:AAATAGCAGTGTAGGACAAGTC(配列番号12))を用い行なった(94℃で5分加熱後、94℃30秒、60℃30分、72℃30分を23サイクル)。その結果を図3に示す。
図3の結果から分かるとおり、R0におけるLORE1転写量とR1でのLORE1転移とは相関していることが示された。したがってLORE1の転移には、再分化当代でのLORE1の活性化が必要であることが明らかになった。
[実施例4] R2世代でのLORE1転移の検証
本実施例は、LORE1が数世代にわたって転移を繰り返すことを示す。この目的のために、実施例1に記載されるようにして取得した3種のR1系統(A〜C)をそれぞれ自殖してR2個体を取得し、各系統からのR2をそれぞれ5個体無作為に選別した。これらを実施例1に記載されるようにサザンブロット分析に供し、各R2個体についてR1個体からさらにLORE1転移を生じているかを調べた。結果を図4に示す。
図4から明らかな通り、各系統から選別したR2個体は、それぞれ独立の新たなLORE1転移を有していることが分かった。このようにLORE1は、再分化当代個体(R0)で活性化されると、その後の世代においても転移を繰り返すことが立証された。
[実施例5] 後代個体におけるLORE1の転移の検証
LORE1の挿入により生じた共生変異体nup133-3 (Kanamori, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. (2006), 103:359-364)の後代において、LORE1の新規の転移が生じているか否かを、実験例1と同様に、ゲノムサザンブロット分析により解析した(図5)。
その結果、nup133-3に共通して存在しコントロールのGifuには存在しないバンドが1つ検出されたが(矢印で示す)、nup133-3個体間にバンドの多型は見られなかった。これは、nup133-3においてLORE1が既にサイレンシングされたことを示す。
図1は、ミヤコグサ(Lotus japonicus)由来のレトロトランスポゾンLORE1の構造を示す模式図である。両端の三角を含むボックスはLTRを示す。各符号はそれぞれ以下の通りである。GAG:レトロトランスポゾンgagタンパク質;RT:逆転写酵素;IN:インテグラーゼコアドメイン;chromo:クロモドメイン。 図2は、組織培養を経た再分化当代個体(RO)ではLORE1の転移は起きていないが、R0を自殖して得た次世代個体(R1)個体間で独立の転移が生じていることを示す。Cはコントロール(すなわち、再分化誘導前)を示している。 図3は、R0でのLORE1の転写量とR1での転移とが相関していることを示す。Cはコントロール(すなわち、再分化誘導前)を示している。 図4は、R1を自殖することにより得たR2個体において、それぞれゲノムの異なる位置にLORE1の転移が生じていることを示す。Cはコントロール(すなわち、再分化誘導前)を示している。星印は転移したLORE1を示す。 図5は、共生変異体nup133-3の後代において、LORE1がサイレンシングされていることを示す図である。Cはコントロール(すなわち、再分化誘導前)を示している。矢印はコントロールには存在しないバンド(すなわち、LORE1転移)を示す。

Claims (9)

  1. 変異体植物の作製方法であって、
    (a) 植物組織を脱分化させてカルスを形成させるステップと、
    (b) ステップ(a)で得たカルスを植物体まで再分化させるステップと、
    (c) 再分化させた植物体を自殖して、次世代個体を得るステップ
    とを含み、ここで、植物組織はそのゲノム中にレトロトランスポゾンLORE1又はその変異体を含んでいることを特徴とする、前記方法。
  2. LORE1又はその変異体は植物組織のゲノム中に外的に導入されたものであることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. LORE1は配列番号1に示すヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、請求項2記載の方法。
  4. 前記植物組織は胚軸であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  5. (d)次世代個体の自殖を繰り返すことによりさらに後代の個体を得るステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
  6. 植物組織はLORE1又はその変異体を内在している植物由来であることを特徴とする請求項1又は5記載の方法。
  7. 植物組織はミヤコグサ(Lotus japonicus)由来であることを特徴とする請求項6記載の方法。
  8. ステップ(c)を開放系にて実施することを特徴とする、請求項6記載の方法。
  9. ステップ(d)を開放系にて実施することを特徴とする、請求項6記載の方法。
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