JP2010116289A - チタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法 - Google Patents

チタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低熱膨張性と高い機械的強度を実現しつつ、焼結による寸法変化の小さいチタン酸アルミニウム系セラミックスを製造しうる方法を開発する。
【解決手段】チタン源粉末、アルミ源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末を含む前駆体混合物を900〜1350℃の温度範囲にて、時間あたりの温度変化が−50〜+50℃/hで3時間以上保持した後、1400℃以上の温度に昇温し、同温度で焼成するチタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法で、前駆体混合物に含まれる酸化物成分の内、ケイ素源の重量比が2〜8%であり、ケイ素源が非晶質で、融点が800〜1350℃のアルミノシリケートであることを特徴とするチタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、チタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法に関し、詳しくはチタン源粉末、アルミ源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末を含む前駆体混合物を所定の条件で焼成してチタン酸アルミニウム系セラミックスを製造する方法に関する。
ディーゼルエンジン用の排ガスフィルタは排ガスに含まれる煤などをろ過・捕集するフィルタであり、一般に高い気孔率を有するセラミックス焼結体からなる。この多孔質セラミックスからなるフィルタに煤を一定量捕集するとガスの流通抵抗が大きくなるため、目詰まりした煤をフィルタ上で燃焼させる再生処理を行う。この際、フィルタ内で急速な温度上昇が生じ、フィルタは高温に曝されるとともに、大きな熱衝撃を受けることになる。このため、ディーゼルエンジン用の排ガスフィルタ材には高い耐熱衝撃性と熱疲労による特性劣化が小さいことが要求される。
チタン酸アルミニウム(Al2TiO5)は、高融点、低熱膨張性を示すセラミックスとして知られており、排ガスフィルタ材として注目されている。しかし、チタン酸アルミニウムは一般に機械的強度が低く、フィルターの使用温度域に近い900〜1100℃付近での熱安定性が悪い(TiO2とAl2O3に分解してしまう)ことが問題となっている。従来のチタン酸アルミニウムでは種々の添加元素を加え、その低熱膨張性を維持しつつ、機械的強度と熱安定性を改善させる試みが為されてきた。
特許3612943号 特開平11−060240号公報 特開2005−534474号公報 特開平06−040766号公報
チタン酸アルミニウムの低熱膨張性を実現させるためには高温での熱処理が不可欠である、しかし、高温での熱処理はチタン酸アルミニウムの機械的強度を損なうことが知られている。多孔性のチタン酸アルミニウムの製法として、酸化チタン、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素等の原料粉末を有機結合剤とともに直接成形し、一度の熱処理で多孔体を得る方法が特許3612943号(特許文献1)に、チタン酸アルミニウムの粉末から多孔性の焼結体を得る方法が特開平11−060240号公報(特許文献2)等に提案されている。しかし、これらの方法で得られた成形体を高温で焼結すると低熱膨張性は実現できるが、焼結収縮に伴う体積変化が大きく、機械的強度も著しく低下するという問題がある。
また、チタン酸アルミニウムの焼結収縮を抑えるためにチタン酸アルミニウムの粗大粒子を用いて焼結収縮率を抑制する方法もある。しかし、チタン酸アルミニウムの粗大粒子は保形性や焼結性に乏しく、多孔体の焼結においては焼結途中に成形体が崩れたり、焼結体に大きなクラックが入ったりし易いという問題がある。
チタン酸アルミニウムで低熱膨張性と高機械的強度を一度に実現させるためにはムライト(3Al2O3・2SiO2、融点=1850℃)やコージェライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2、融点=1460℃)との複合材料にすることが特開2005−534474号公報(特許文献3)や特開平06−040766号公報(特許文献4)などに提案されている。しかし、これらの材料はチタン酸アルミニウム(融点=1860℃)と同程度もしくは低融点のセラミックスであり、これらの複合材料を高温で焼結しても、焼結収縮による寸法変化は大きいままである。
そこで本発明者は、低熱膨張性と高い機械的強度を実現しつつ、焼結による寸法変化の小さいチタン酸アルミニウム系セラミックスを製造しうる方法を開発するべく鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、チタン源粉末、アルミ源粉末、マグネシウム源粉末およびシリコン源粉末を含む前駆体混合物を900〜1350℃の温度範囲にて、時間あたりの温度変化が−50〜+50℃/hで3時間以上保持した後、1400℃以上の温度に昇温し、同温度で焼成する際に、前駆体混合物に含まれる酸化物成分の内、ケイ素源の重量比が2〜8%であり、ケイ素源が非晶質で、かつ融点が800〜1350℃のアルミノシリケートを用いることで、低熱膨張性と高い機械的強度を両立しつつ、焼結の際の寸法精度が高いチタン酸アルミニウム系セラミックスを製造しうる方法を提供することである。
本発明のチタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法はチタン源粉末、アルミ源粉末およびケイ素源粉末を含む前駆体混合物を900〜1350℃の温度範囲にて、時間あたりの温度変化が−50〜+50℃/hで3時間以上保持した後、1400℃以上の温度に昇温し、同温度で焼成するチタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法で、前駆体混合物に含まれる酸化物成分の内、ケイ素源の重量比が2〜8%であり、ケイ素源が非晶質で、融点が800〜1350℃の非晶質のアルミノシリケートであることを特徴とする。
本発明の方法における前駆体混合物は、チタン酸アルミニウムの耐熱安定性を向上させる目的で、マグネシウム源粉末や鉄源粉末をさらに含んでもよく、特にマグネシウム源粉末をさらに含むことが好ましい。
本発明におけるチタン酸アルミニウム系セラミックスは、チタン酸アルミニウム母相中にチタン酸アルミニウムより高融点のセラミックスが粒径0.1〜20μmの微粒子として均一に分散させても良い。高融点のセラミックス微粒子がチタン酸アルミニウム中に均一に分散することにより、チタン酸アルミニウムの焼結収縮を抑制するとともに、チタン酸アルミニウム系セラミックスの機械的強度を大幅に向上させることができる。
チタン酸アルミニウム母相中に分散しているチタン酸アルミニウムより高融点のセラミックスとしては、酸化アルミニウム(α−Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、炭化珪素(SiC)などが挙げられるが、特に酸化アルミニウムを含むことが好ましい。
本発明におけるチタン酸アルミニウム系セラミックスのケイ素源には融点が800〜1350℃のアルミノシリケートが用いられるが、特に酸化物の重量比でSiO2=70〜80%、Al2O3=5〜15 %、(Na2O+K2O)=5〜25%、MgO=0〜3.0%、(CaO+SrO+BaO)<4.0%である非晶質のアルミノシリケートであることが望ましい。
本発明の請求項3に記載のように、チタン酸アルミニウム中に酸化アルミニウムや酸化チタンが存在すると、チタン酸アルミニウムの熱安定性が著しく低下することが知られている。しかし、本発明の請求項1および4に記載の製造方法でチタン酸アルミニウム系セラミックスを作製すると、ケイ素源である非晶質のアルミノシリケートにより酸化アルミニウムが被覆され、チタン酸アルミニウムと直接接触しなくなるため、良好な熱安定性を得ることができるという作用を持つ。
本発明を実施する上で望ましい組成は組成式:Al2(1-x)MgxTi1+xO5-aAl2O3-bSiO2でx=0.05〜0.30、a=0.1〜0.3、b=0.05〜0.25をそれぞれ満足する組成である。
本発明はまた、請求項4に記載のチタン酸アルミニウム系セラミックスの粉末と有機系結合剤とを含有するセラミック可塑性練り土を作製して、所定の形状に成形し、成形したセラミックス可塑性練り土を任意の温度で焼結したチタン酸アルミニウム焼結体についても提供する。
本発明によれば、熱膨張率が小さく、機械的強度および耐熱安定性に優れ、焼結収縮が小さく、焼結前後での寸法変化の小さい焼結体を得られるチタン酸アルミニウム系セラミックスを製造することができる。
本発明のチタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法においては、まずチタニウム源粉末、アルミニウム源粉末およびケイ素源粉末を含む前駆体混合物を調整する。
前駆体混合物を構成するチタニウム源粉末とは、チタン酸アルミニウムを構成するチタニウム成分となりうる化合物の粉末を指す。このようなチタニウム源粉末としては、例えば酸化チタン(IV)、酸化チタン(III)、酸化チタン(II)などが挙げられ、酸化チタン(IV)が好ましく用いられる。酸化チタン(IV)の結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型などが挙げられ、アモルファスであってもよい。
また、チタニウム源粉末として、これを単独で空気中にて焼成することによりチタニア(酸化チタン)に導かれる化合物の粉末も挙げられる。かかる化合物としては、例えばチタニウム塩、チタニウムアルコキシド、水酸化チタニウム、窒化チタン、硫化チタン、チタン金属などが挙げられる。チタニウム塩として具体的には、三塩化チタン、四塩化チタン、硫化チタン(IV)、硫化チタン(VI)、硫酸チタン(IV)などが挙げられる。チタニウムアルコキシドとして具体的には、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)t−ブトキシド、チタン(IV)イソブトキシド、チタン(IV)n−プロポキシド、チタン(IV)テトライソプロポキシドおよびこれらのキレート化物などが挙げられる。
本発明におけるチタニウム源粉末として、安価で工業的に入手の容易なアナターゼ型またはルチル型の酸化チタン(IV)が好ましい。また、酸化チタン粉末の平均粒子サイズは、工業的に入手の容易な点、他の原料粉末との均一混合性、反応性向上などの観点から、0.1〜50μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることが特に好ましい。なお、本発明で言う粒子サイズとはレーザー回折法により測定される値であり、平均粒子サイズとは、測定した粒子サイズにおいて、粒子の累積質量が測定した全重量に対して50%となる粒子サイズ(d50)である。
また、前駆体混合物を構成するアルミニウム源粉末とは、例えばアルミナ(酸化アルミニウム)の粉末が挙げられる。アルミナの結晶型としては、γ型、δ型、θ型、α型などが挙げられ、アモルファスであってもよい。アルミニウム源粉末として好ましくはα型のアルミナである。
アルミニウム源粉末として、単独で空気中にて焼成することによりアルミナに導かれる化合物の粉末も挙げられる。かかる化合物としては、例えばアルミニウム塩、アルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、金属アルミニウムなどが挙げられる。アルミニウム塩は、無機酸との無機塩であってもよいし、有機酸との有機塩であってもよい。アルミニウム無機塩として具体的には、例えば硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウムアルミニウムなどのアルミニウム硝酸塩、炭酸アンモニウムアルミニウムなどのアルミニウム炭酸塩などが挙げられる。アルミニウム有機塩としては、例えば蓚酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウムなどが挙げられる。アルミニウムアルコキシドとして具体的には、例えばアルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、アルミニウムtert−ブトキシドなどが挙げられる。水酸化アルミニウムの結晶型としては、例えばギブサイト型、バイヤライト型、ノロソトランダイト型、ベーマイト型、擬ベーマイト型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。アモルファスの水酸化アルミニウムとしては、例えばアルミニウム塩、アルミニウムアルコキシドなどのような水溶性アルミニウム化合物の水溶液を加水分解して得られるアルミニウム加水分解物も挙げられる。
アルミニウム源粉末として、好ましくはアルミナの粉末であり、特に好ましくはα型のアルミナである。
本発明において、チタン酸アルミニウムにアルミナ粒子を析出させる場合、原料粉末中のアルミニウム源の量をチタン酸アルミニウムの化学量論組成(Al2TiO5またはAl2(1-x)MgxTi1+xO5)よりも過剰に加えることがある。この場合、原料として用いるアルミナ粉末のサイズが大きくなると、本発明のチタン酸アルミニウム系セラミックスに含まれるアルミナ粒子のサイズも大きくなる傾向にある。
上述の理由から、本発明で用いるアルミナ粉末の平均粒子サイズは0.1〜50μmであることが好ましく、他の原料粉末と均一に混合する観点から、1〜30μmであることが特に好ましい。アルミナ粉末の粒子サイズが50μmを超える場合、他の原料粉末との反応性が低下するとともに、アルミナの添加量にもよるが、焼成後のチタン酸アルミニウム系セラミックスに含まれるアルミナ粒子のサイズが20μmを超えることがある。チタン酸アルミニウム系セラミックスに含まれるアルミナ粒子のサイズが20μmを超えると、チタン酸アルミニウムの焼結収縮抑制の効果や強度向上の効果が得られなくなる。
また、前駆体混合物を構成するケイ素源粉末とは非晶質で、かつ融点が800〜1350℃のアルミノシリケートの粉末であって、例えば二酸化ケイ素や一酸化ケイ素と言った結晶性シリカは含まれないものとする。
本発明においては、チタン酸アルミニウム系セラミックスの機械的強度と耐熱安定性を向上させる目的で、ケイ素源粉末として非晶質で、かつ融点が800〜1350℃のアルミノシリケートの粉末を用いることが特徴である。このアルミノシリケートの融点は好ましくは900〜1100℃であり、屈伏点が700〜1000℃のアルミノシリケートであることが特に好ましい。本発明において、アルミノシリケートの融点とは示差熱分析装置(DTA)で吸熱ピークが見られる温度(軟化点)であり、屈伏点とはアルミノシリケートの熱膨張曲線の測定において、ガラスの軟化によりガラスの熱膨張が検出できなくなり、熱膨張曲線の屈曲点として現れる温度を指す。
融点が800℃未満のアルミノシリケートを用いた場合には、チタン酸アルミニウムの耐熱安定性が著しく低下する。また、融点が1350℃を超えるアルミノシリケートまたは結晶性シリカの残存したアルミノシリケートを用いた場合には耐熱安定性と耐熱衝撃性の向上の効果が小さくなる傾向にある。
ケイ素源粉末の使用量は、前駆体混合物に含まれる酸化物成分の内、重量比で2〜8%の範囲であることが好ましく、2〜4%の範囲であることが特に好ましい。前駆体混合物に含まれる酸化物成分のうちケイ素源が2%未満である場合には、チタン酸アルミニウム系セラミックスの耐熱安定性や機械的強度が低くなるためであり、8%を超える場合には、焼結収縮が大きくなり、寸法精度の高いチタン酸アルミニウム系セラミックスが得られなくなるとともに、熱膨張率も大きくなる傾向にある。
さらに本発明で用いるケイ素源は非晶質であり、かつ酸化物の重量比でSiO2=70〜80%、Al2O3=5〜15%、(Na2O+K2O)=5〜25%、MgO=0〜3.0%、(CaO+SrO+BaO)<4.0%であるアルミノシリケートであることが好ましい。このようなケイ素源粉末を用いることで耐熱安定性と機械的強度に優れるチタン酸アルミニウム系セラミックスが得られる。
同じ組成のケイ素含有酸化物としてアルカリ長石などの天然鉱物も挙げられるが、これらは結晶性シリカ等を含む複数の酸化物からなる混合物である。これら天然鉱物の融点や屈伏点は一般に本発明の温度範囲より高く、原料として用いた場合は結晶性シリカがチタン酸アルミニウム系セラミックスの粒界に残存する可能性がある。結晶性シリカにはクリストバライトのように低温で大きな体積変化を伴う相変態を起こすことがあり、これはチタン酸アルミニウム系セラミックスの強度特性を低下させる。このため、アルカリ長石などの天然鉱物をシリコン源に用いることは好ましくは無い。シリコン源粉末に含まれる結晶性シリカの量はチタン酸アルミニウムに対して重量比で0.1%以下であることが望ましい。
なお、上述したアルミノシリケートにおいて、SiO2が重量比で70%未満の場合には、耐熱安定性が低下する傾向にあり、また80%を超える場合には結晶性シリカが析出する傾向にある。上述したアルミノシリケートにおけるSiO2の重量比は、より好ましくは70〜75%の範囲内である。
また、上述したアルミノシリケートにおいて、Al2O3が5%未満、および/またはNa2O+K2Oが20%を超える場合にはケイ素含有相の化学的安定性が低下する傾向にあり、Al2O3が15%を超える場合、および/またはNa2O+K2Oが10%未満の場合は結晶性シリカや融点が1350℃以上のケイ素含有の結晶性化合物(例えばムライトなど)が析出する傾向にある。上述したアルミノシリケートにおけるAl2O3の重量比は7〜12%、かつ、Na2O+K2Oの重量比は10〜20%であることが好ましく、Na2OとK2Oの重量比がNa2O/(Na2O+K2O)で0.10〜0.60であることがより好ましい。
上述したアルミノシリケートにおいて、ガラスの融点や粘性を変えない範囲で不可避不純物を含んでも良い。不可避不純物としてはLi、B、F、Mg、P、Ca、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Sr、Y、Zr、Nb、Sn、Ba、La、Ta、Ce、Pb、Biなどが挙げられるが、これら不純物はその合計量が酸化物換算(F、Pは純物質換算)で5%以下であることが好ましい。特にMg、Ca、Sr、Baはガラスの特性を大きく変化させることから、酸化物換算でMgは3.0%以下が好ましく、(Ca+SrO+BaO)は4%以下が好ましく、(Ca+SrO+BaO)は3%以下であることがより好ましい。
また、本発明で用いるケイ素源粉末の平均粒子サイズは、工業的に入手の容易な点、他の原料粉末との均一混合性、反応性向上などの観点から、0.1〜50μmであることが好ましく、0.5〜20μmであることが特に好ましい。
本発明における前駆体混合物は、チタン酸アルミニウムの耐熱安定性を向上させること、焼結温度を低下させる目的から、チタン源、アルミ源、ケイ素源とは別にマグネシウム(Mg)や鉄(Fe)の原料粉末を含んでもよく、特にマグネシウム源粉末を更に含んでいることが好ましい。ここでマグネシウム源粉末とは、チタン酸アルミニウムマグネシウム(Al2(1-x)MgxTi1+xO5)を構成するマグネシウム成分となる化合物の粉末であり、例えばマグネシア(酸化マグネシウム)の粉末が挙げられる。
マグネシウム源粉末としては、単独で空気中にて焼成することによりマグネシアに導かれる化合物も挙げられる。かかる化合物としては、例えばマグネシウム塩、マグネシウムアルコキシド、水酸化マグネシウム、窒化マグネシウム、金属マグネシウムなどが挙げられる。マグネシウム塩として具体的には、塩化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、蓚酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、ジメタクリル酸マグネシウム、安息香酸マグネシウムなどが挙げられる。マグネシウムアルコキシドとして具体的にはマグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシドなどが挙げられる。
マグネシウム源粉末として、マグネシウム源とアルミニウム源、マグネシウム源とチタン源とを兼ねた化合物を用いることもできる。このような化合物としては、例えばマグネシアスピネル(MgAl2O4)、チタン酸マグネシウム(MgTiO3、Mg2TiO5)等が挙げられ、特にマグネシアスピネルは安価で、工業的に入手が容易なため、本発明のマグネシウム源粉末として好ましい。
また、本発明で用いるマグネシウム源粉末の平均粒子サイズは、工業的に入手の容易な点、他の原料粉末との均一混合性、反応性向上などの観点から、0.1〜50μmであることが好ましく、0.5〜20μmであることが特に好ましい。
また更に、本発明におけるチタン酸アルミニウム系セラミックスの組成は、組成式:Al2(1-x)MgxTi1+xO5-aAl2O3-bSiO2であらわされるチタン酸アルミニウム系セラミックスにおいて、x=0.05〜0.30、a=0.1〜0.3、b=0.05〜0.20をそれぞれ満足することが好ましく、x=0.10〜0.20、a=0.1〜0.3、b=0.05〜0.12をそれぞれ満足することが特に好ましい。例えば実施例1で用いたケイ素源の重量比が2〜4%である場合には、上記bは0.05〜0.10の範囲となる。
本発明における前駆体混合物は、本発明の効果を阻害しない範囲でチタニウム、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素以外の添加剤粉末を含んでもよい。添加剤としては例えばLi、B、F、P、Ca、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Sr、Y、Zr、Nb、Sn、Ba、La、Ta、Ce、Pb、Biなどが挙げられ、これら不純物はその合計量が酸化物換算(F、Pは純物質換算)で3%以下であることが好ましい。
かかる前駆体混合物は、例えばチタニウム源粉末、アルミニウム源粉末およびケイ素源粉末、またはチタニウム源粉末、アルミニウム源粉末、ケイ素源粉末およびマグネシウム源粉末を混合することにより得ることができる。混合は乾式混合法、湿式混合法のいずれによってもよいが、金属元素を含有する化合物をより均一に混合できる方法によることが好ましく、原料粉末を粉砕メディアとともに粉砕容器内で粉砕しながら混合する方法はより好ましい。この場合、混合装置としては、例えばボールミル、V型混合機、振動ミル、アトライター、ダイノーミル、ダイナミックミル等の装置が挙げられる。
上述の混合方法の中でも、工業的規模での実施が容易であることから、振動ミルにより前駆体粉末の混合と粉砕を同時に行う方法が好ましく用いられる。混合は連続式で行ってもよいし、バッチ式で行ってもよいが、工業的規模での実施が用意であると言う点から、連続式で行うことが好ましい。
粉砕容器としては、ステンレス鋼などの金属材料で構成されたものが通常は用いられ、内表面がフッ素樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂などでコーティングされていてもよい。
粉砕メディアとしては、たとえば粒子径1〜100mm、好ましくは5〜50mmのアルミナビーズ、ジルコニアビーズなどが挙げられ、不純物混入の点から、アルミナビーズを用いることが好ましい。
粉砕にあたっては、分散剤、粉砕助剤、解膠剤などの添加剤を加えてもよい。
粉砕助剤としては、例えばメタノール、エタノールプロパノールなどのアルコール類、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類、トリエタノールアミンなどのアミン類、パルチミン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸類、カーボンブラック、グラファイトなどの炭素材料などが挙げられ、これらはそれぞれ単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
添加剤を用いる場合、その合計使用量は、原料粉末(つまりチタニウム源粉末、アルミニウム源粉末、ケイ素源粉末およびマグネシウム源粉末)の合計使用量100質量部あたり通常0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部、さらに好ましくは0.75〜2質量部である。
また、添加剤を用いた場合、混合後の前駆体混合物から添加剤を除去してもよい。添加剤の除去は、例えば大気中で加熱することにより消失しうる添加剤を用いた場合には、大気中で加熱することにより焼失させればよい。このときの加熱温度は、通常は500℃以下である。
また、本発明においては上記の前駆体混合物を焼成前に成形してもよい。前駆体混合物を成形する方法としては、通常の方法、例えば一軸プレス機、打錠機などを用いて成形型内で加圧する方法、前駆体混合物に水などの液体成分を加えた後、造粒機、押出機などを用いて成形し、乾燥する方法などが挙げられる。
本発明においては、上述した前駆体混合物を、900〜1350℃の温度範囲にて、時間あたりの温度変化が−50〜+50℃/hで3時間以上、好ましくは4時間以上保持した後、1400℃以上の温度に昇温し、チタン酸アルミニウム系セラミックスを得る。本発明で言う時間あたりの温度変化とは、例えば50℃/hの場合は3時間保持したときの温度変化が900〜1350℃の温度範囲で150℃の時のことを言い、900〜1350℃の温度範囲にて保持する間、同温度範囲を外れない限り、前駆体混合物を一定温度に保持してもよいし、昇温速度を随時変化させたり、昇温と降温を交互に繰り返したりしてもよい。900〜1350℃の温度範囲にて前駆体混合物を保持する場合、通常は時間あたりの温度変化が−50〜+50℃/hで3時間以上保持し、温度変化が0℃/hで3時間以上保持することが好ましい。
上記温度範囲にて、時間あたりの温度変化が−50〜+50℃/hで3時間以上保持した後に、1400℃以上、通常は1600℃未満の温度に昇温し、同温度で熱処理することにより、目的のチタン酸アルミニウム系セラミックスを得ることができる。熱処理に要する時間は前駆体粉末がチタン酸アルミニウム形セラミックスに遷移するのに十分な時間であればよく、原料粉末の種類や熱処理条件によって異なるが、通常は10分〜24時間であり、好ましくは3時間以上12時間未満である。
本発明のチタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法において、上述の900〜1350℃の温度範囲にて、時間あたりの温度変化が−50〜+50℃/hで3時間以上保持した場合、前駆体粉末中に含まれるケイ素源であるアルミノシリケートが溶融し、毛管現象によりアルミノシリケート融液が前駆体粉末中に均一に染み渡る。この現象により原料粉末は凝集してより均一で効率のよいチタン酸アルミニウムの生成反応が進行するようになり、かつ、上記方法で得られるチタン酸アルミニウム系セラミックス中に均一に分散して存在するアルミナ粒子の一つ一つがアルミノシリケート層で被覆されるようになる。アルミナ粒子はチタン酸アルミニウムの熱分解反応の促進剤として働き、その耐熱安定性を著しく劣化させることが知られているが、上記の製造方法によりアルミノシリケート層でアルミナ粒子一つ一つを均一に被覆することが可能になり、このアルミノシリケートの被覆層によりアルミナ粒子の熱分解促進効果を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
上述の900〜1350℃の温度範囲よりも低い900℃未満の温度で前駆体粉末を保持しても、前駆体混合物に含まれるアルミノシリケートは溶融しなかったり、溶融しても融液が粒子間に染み渡るのに十分低い粘性を有さなかったりするので、チタン酸アルミニウム系セラミックス内でのアルミノシリケートの分布は不均一になる。また、1350℃以上の温度で前駆体粉末を保持しても、アルミノシリケートの溶解と平行してチタン酸アルミニウムの生成反応も進行する。このため、900〜1350℃の温度範囲以外で前駆体粉末を保持しても、得られるチタン酸アルミニウム系セラミックス中にアルミノシリケートは均一に分布せず、かつ、チタン酸アルミニウム母相中に存在するアルミナ粒子がアルミノシリケート層で被覆されなくなり、その耐熱安定性が低下するとともに、得られるチタン酸アルミニウム系セラミックスの強度も低下する。
上述のチタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法において、900〜1350℃の温度範囲で前駆体粉末を保持した後に、1400℃以上で熱処理し、前駆体粉末からチタン酸アルミニウムを生成させる。この際、熱処理温度が1500℃以上になると、前駆体粉末にマグネシウムが含まれる場合はそのマグネシウムがガラス層に溶け出してしまうことが確認されており、チタン酸アルミニウム相の組成が変わるため、所望の特性が得られなくなることがある。このため、1400℃以上の熱処理温度としては1400℃以上、1500℃未満であることが好ましく、より好ましくは1430℃以上、1470℃以下である。
上記温度範囲に昇温する際、および保持する際の雰囲気は通常、大気中であるが、用いる原料粉末、すなわちチタニウム源粉末、アルミニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の種類や使用量比によっては、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス中で焼成してもよいし、一酸化炭素ガス、水素ガスなどのような還元性ガス中で焼成してもよい。また水蒸気分圧を低くした雰囲気中で昇温してもよい。
昇温は通常、管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉などの通常の加熱炉を用いて行われる。
かくしてチタン酸アルミニウム系セラミックスの焼成物が得られる。
焼成物は通常は塊状または焼結体の形状で得られ、塊状または焼結体の前記セラミックス焼成物を粉砕・分級することにより、前記セラミックス焼成物の粉末を得ることができる。解砕は、例えば手解砕、乳鉢、ボールミル、振動ミル、遊星ミル、媒体撹拌ミル、ピンミル、ジェットミル、ハンマーミル、ロールミルなどの通常の解砕機を用いて行うことができる。解砕により得られた前記セラミックス粉末は、通常の方法で分級してもよい。かくして得られる前記セラミックス粉末は、概ね球形をしているので、これを取扱う際に、取扱容器などを磨耗させることがない。
上記セラミックス粉末を成形、焼結すれば、排ガスフィルタ用ハニカムや触媒担体などに好適に用いられることができる。ハニカムや触媒担体の原料粉末に用いる場合、平均粒子径d50=10〜40μmに調整することが好ましく、d50=10〜30μmであることがより好ましい。平均粒子径を10μm未満にするとハニカムの焼結に伴う収縮が極端に大きくなり、ハニカムの変形が生じるためであり、40μmを超える平均粒子径にすると成形体の保形成が低下し、焼結の最中に成形体が崩れてしまうためである。
上述のチタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法で得た焼成物を粉砕して、上記の粒度分布を有する粉末にすると、その粉末のBET比表面積は0.2〜0.5m2/gとなり、細孔容積は1.5〜3.0mm3/gとなる。ここで言う細孔容積とは粉末表面に存在する細孔を水銀圧入法で測定したときの値であり、細孔容積の値が小さいほど緻密で焼き締まった粉末と言うことになる。同じ粒度分布で比較した場合、上述の製造方法で得た焼成物の粉末の細孔容積は、800〜1350℃の温度範囲にて前駆体混合物を保持しなかった粉末の細孔容積に比べて小さくなり、これらの粉末でハニカムを作製したときの焼結による寸法変化は細孔容積の小さな粉末のほうが小さくなる。
更に前記セラミックス粉末を公知の粉末成型技術により顆粒状にしてもよい。
更に本発明は上述のチタン酸アルミニウム系セラミックスの粉末と有機系結合剤とを含有するセラミック可塑性練り土を作製して、所定の形状に成形する工程と、成形したセラミックス可塑性練り土を任意の温度で焼結したチタン酸アルミニウム焼結体も含む。
本発明のチタン酸アルミニウム系セラミックスを排ガスフィルタ材として用いるには、通気抵抗が低い多孔性の焼結体が必要であり、通常は気孔率が30%以上で60%以下の連通孔を含む多孔質の焼結体が好ましく用いられる。
上記の多孔性チタン酸アルミニウム系セラミックス焼結体の製造方法としては公知の技術を用いることができる。本発明に用いられる造孔剤としては、従来公知の造孔剤を特に制限無く用いることができる。造孔剤としては、例えばグラファイト、発泡樹脂、吸水性樹脂、小麦粉、澱粉、フェノール樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、またはポリエチレンテレフタレートなどが用いられる。
バインダとしては、例えばヒドロキシプロピル、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニールアルコールなどを挙げることができる。分散剤としては、例えばエチレングリコール、デキストリン、脂肪酸酒石酸、ポリアルコールなどが挙げられる。
上述したセラミックス粉末と有機系結合剤を分散させる分散媒としては、例えば水、ワックスなどを挙げることができる。中でも乾燥時の体積変化が小さく、ガスの発生が少ない、取扱の容易さなどの理由から、水が好ましく用いられる。
上述した成形原料を混合および混練し、セラミック可塑性練り土を作製してから所定の形状に成形するが、可塑性練り土を成形するための装置としては、例えばニーダーと押出し成形機とを組み合わせたものや連続混錬押出し機などを挙げることができる。
このような本発明のチタン酸アルミニウム系セラミックスは低熱膨張性と高い耐熱安定性、優れた機械的強度を併せ持つとともに、本発明の粉末は焼結の際の焼結収縮が少なく、この粉末を用いて作製した成形体は高い寸法精度を示す。本発明のチタン酸アルミニウム系セラミックスの粉末は、例えばディーゼルエンジンなどの内燃機関の排気ガス浄化に用いられるフィルタや触媒担体用ハニカムの原料として好適に用いることができる。
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、各実施例で得たチタン酸アルミニウム系セラミックスのチタン酸アルミニウム化率〔AT化率〕は、粉末X線回折スペクトルにおける2θ=27.4°の位置に現れるピーク〔チタニア・ルチル相(110)面〕の積分強度(I[TiO2])と、2θ=33.7°の位置に現れるピーク〔チタン酸アルミニウムマグネシウム相(230)面〕の積分強度〔I[AT]〕とから、式(1)より算出した。
AT化率(%)= I[AT]/(I[AT] + I[TiO2])×100 ・・・(1)
また、耐熱安定性とはチタン酸アルミニウム系セラミックスを900〜1100℃の温度域にて任意の時間保持した後でのチタン酸アルミニウム結晶相の残存率のことを指す。本発明において、耐熱安定性の評価とは、チタン酸アルミニウム系セラミックス粉末を箱型電気炉にて、大気中にて950℃で48時間保持することで熱分解評価用サンプルを得、得られた熱分解評価用サンプルの構成相を粉末X線回折スペクトル測定(XRD)にて測定し、熱処理前後のAT化率の変化を見るものであり、「耐熱安定性に優れる」とは式(2)より算出した熱分解率が1.0%以下であることを言う。
分解率(%)= 100 - I[AT]/(I[AT] + I[TiO2])×100 ・・・(2)
本発明においては、作製したチタン酸アルミニウム系セラミックスを粉砕して、d50=15〜30μmの粒度分布を有する粉末とし、このセラミックス粉末100質量部に対して、造孔剤としてポリエチレン粒子(d50=23μm)を10質量部、バインダとしてメチルセルロースを7.5質量部、界面活性剤としてポリオキシアルキレンアルキルエーテルを9.3質量部、潤滑剤としてグリセリンを0.8質量部加えて成形原料とし、更に分散媒として水を38質量部を加えた後、混練機で混練して坏土を調製し、坏土を押し出し成形してハニカム成形体を作製した。得られたハニカム成形体を大気雰囲気下、400℃で脱脂を行い、最高温度1450℃で5時間焼結することで、多孔質のハニカム焼結体を得た。
チタン酸アルミニウム系セラミックス多孔質焼結体の熱膨張率(K-1)は、各実施例で得られたチタン酸アルミニウム系セラミックスの多孔質焼結体から約4mm×4mm×10mmの試験片を切り出し、この熱機械的分析装置(SIIテクノロジー(株)製、TMA6300)を用いて室温から1000℃まで600℃/hの昇温速度で昇降温して上述の角柱試料の熱膨張曲線を測定し、室温から1000℃間の膨張率を算出した。
(実施例1)
アルミニウム源原料として酸化アルミニウム(住友化学社製、AT−50)の粒子を47.3質量%、チタン源原料として酸化チタン(デュポン社製、R−900)の粒子を41.0質量%、マグネシウム源としてマグネシアスピネル(サンゴバン社製)の粉末を6.2質量%、ケイ素源原料としてガラスフリット(SiO2=77.9%、Al2O3=9.7%、Na2O=3.1%、K2O=7.5%、CaO=2.7%、MgO=2.8%)粒子を5.6質量%用いた。用いたガラスフリットの融点は948℃、屈伏点は768℃であった。この場合、組成式:Al2(1-x)MgxTi1+xO5-aAl2O3-bSiO2で表すと、x=0.08、a=0.16、b=0.14となる。これら原料粉末10kgをアルミナビーズ(直径15mm)5kgと共にアルミナ製粉砕容器(内容積50L)に投入し、粉砕容器を振動ミルにて30分間混合・粉砕し、前駆体混合物を得た。得られた前駆体粉末は電気炉にて1300℃まで300℃/hで昇温し、1300℃で3.5時間保持した後に、再度1450℃まで300℃/hで昇温し、1450℃で3.5時間保持して焼成し、目的のチタン酸アルミニウム系セラミックス焼成物を得た。得られたセラミックス焼成物はアルミナ製ディスクミルにより粉砕し、振動篩にて分級し、d50=27μmの粉末を得た。
実施例1で作製した粉末を粉末X線回折にて分析した結果、このセラミックス粉末のAT化率は100%であった。この粉末を構成する結晶相としてはチタン酸アルミニウムマグネシウム(Al1.84Mg0.08Ti1.08O5)とアルミナ(Al2O3)のみが確認され、SiO2もしくはSi含有酸化物の結晶相を示す回折ピークは確認されなかった。この粉末を1100℃にて48時間熱処理した後のAT化率も100%(分解率は0%)のままであり、優れた耐熱安定性を示すことが確認された。微細組織観察の結果、チタン酸アルミニウム母相中に平均粒子サイズ(走査型電子顕微鏡により、粉末の断面組織を観察し、200〜400個のアルミナ粒子のサイズを測定し、平均した値)が4μmのアルミナ粒子が分散しており、非晶質のアルミノシリケート層はアルミナ粒子やチタン酸アルミニウムの粒子を被覆するように粒界に薄く存在していることが確認された。
実施例1で作製した粉末100質量部に対して、造孔剤としてポリエチレン粒子(d50=23μm)を10質量部、バインダとしてメチルセルロースを7.5質量部、界面活性剤としてポリオキシアルキレンアルキルエーテルを9.3質量部、潤滑剤としてグリセリンを0.8質量部加えて成形原料とし、更に分散媒として水を38質量部加えた後、混練機で混練して坏土を調製し、坏土を押し出し成形してハニカム成形体を作製した。ハニカム成形体は乾燥機にて100℃で12時間乾燥した後に、箱型電気炉にて大気雰囲気下400℃で、バインダを除去する脱脂過程を経た後に、1450℃まで300℃/hで昇温し、1450℃で5時間焼結することによりハニカム焼結体を得た。
得られたハニカム体のアルキメデス法で測定した気孔率は42%であり、乾燥後と焼結後の寸法変化は10%であった。ハニカム焼結体の熱膨張率は1.6×10-6K-1であった。分析結果を表1にまとめて示す。
(実施例2〜3)
表1に記載の組成で前駆体混合物を作製し、あとは実施例1と同じ条件で焼成・粉砕を行い、粉末を得た。いずれの粉末もAT化率100%であり、SiO2もしくはSi含有酸化物の結晶相を示す回折ピークは確認されなかった。この粉末を1100℃にて48時間熱処理した後の分解率はいずれも0%であった。
実施例2〜3の粉末を用いて、実施例1と同じ条件で多孔性のハニカム焼結体作製した。いずれのサンプルでも焼結収縮率は10%以下、気孔率は40%以上、CTEは2.0×10-6K-1以下であることが確認された。
Figure 2010116289
(比較例1)
実施例1において、ケイ素源粉末の量を8.1wt%とした以外は実施例1と同じ条件で粉末およびハニカム焼結体を作製した。粉末の分解率は0%、ハニカム焼結体のCTEは1.5×10-6K-1と実施例1とほぼ同じ結果が得られたが、収縮率は15%、気孔率は38%となり、大きな焼結収縮を示した。

Claims (5)

  1. チタン源粉末、アルミ源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末を含む前駆体混合物を900〜1350℃の温度範囲にて、時間あたりの温度変化が−50〜+50℃/hで3時間以上保持した後、1400℃以上の温度に昇温し、同温度で焼成するチタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法で、前駆体混合物に含まれる酸化物成分の内、ケイ素源の重量比が2〜8%であり、ケイ素源が非晶質で、融点が800〜1350℃のアルミノシリケートであることを特徴とするチタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法。
  2. ケイ素源粉末が非晶質で、酸化物の重量比でSiO2=70〜80%、Al2O3=5〜15%、(Na2O+K2O)=5〜25%、MgO=0〜3.0%、(CaO+SrO+BaO)<4.0%であるアルミノシリケートであることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法。
  3. ケイ素含有相に含まれる結晶性SiO2の量がチタン酸アルミニウムに対して重量比で0.1%以下であることを特徴とする請求項2に記載のチタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法。
  4. チタン酸アルミニウム系セラミックスが、組成式:Al2(1-x)MgxTi1+xO5-aAl2O3-bSiO2
    (式中、x=0.05〜0.30、a=0.1〜0.3、b=0.05〜0.20をそれぞれ満足する)で表わされるものである、請求項3に記載のチタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法。
  5. 請求項4に記載のチタン酸アルミニウム系セラミックスの粉末と有機系結合剤とを含有するセラミック可塑性練り土を作製して、所定の形状に成形する工程と、成形したセラミックス可塑性練り土を任意の温度で焼結したチタン酸アルミニウム焼結体の製造方法。
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