JP2010082497A - 水処理剤及び水処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)カルシウムアルミネート、及び、カルシウムアルミネート水和物を加熱処理することによって得られる物質の少なくともいずれかと、(B)硫酸塩とを含有することを特徴とする水処理剤、及び、前記水処理剤を用いることを特徴とする水処理方法である。
【選択図】なし
Description
<1> (A)カルシウムアルミネート、及び、カルシウムアルミネート水和物を加熱処理することによって得られる物質の少なくともいずれかと、(B)硫酸塩とを含有することを特徴とする水処理剤である。
<2> (B)硫酸塩が、硫酸カルシウムである前記<1>に記載の水処理剤である。
<3> 更に、(C)炭酸塩を含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の水処理剤である。
<4> 前記<1>から<3>のいずれかに記載の水処理剤を用いることを特徴とする水処理方法である。
<5> 前記<1>から<3>のいずれかに記載の水処理剤を水に分散させた後、有害物質含有水の処理に用いる前記<4>に記載の有害物質含有水の処理方法である。
<6> 前記<1>から<3>のいずれかに記載の水処理剤を用いて有害物質含有水を処理した後、該処理後の液に(D)高分子凝集剤を添加し、前記処理後の液を前記水処理剤と有害物質が除去された水とに固液分離する前記<4>から<5>のいずれかに記載の水処理方法である。
本発明の水処理剤は、(A)カルシウムアルミネート、及び、カルシウムアルミネート水和物を加熱処理することによって得られる物質の少なくともいずれかと、(B)硫酸塩とを含有してなり、好ましくは更に(C)炭酸塩を含有してなり、必要に応じて更にその他の成分を含有してなる。
なお、前記「(A)カルシウムアルミネート、及び、カルシウムアルミネート水和物を加熱処理することによって得られる物質の少なくともいずれか」、前記「(B)硫酸塩」、前記「(C)炭酸塩」は、本明細書中において、それぞれ単に「(A)成分」、「(B)成分」、及び、「(C)成分」と称することがある。
前記(A)成分は、カルシウムアルミネート、及び、カルシウムアルミネート水和物を加熱処理することによって得られる物質(本明細書中において、単に「カルシウムアルミネート水和物の加熱処理物」と称することがある)の少なくともいずれかである。
前記カルシウムアルミネートとは、CaOとAl2O3を主体とする化合物の総称であり、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CaAl2O4、CaAl4O7、CaAl12O19、Ca3Al2O6、Ca12Al14O33、Ca5Al6O14、Ca9Al10O24、Ca2Al2O5や、これらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、前記カルシウムアルミネートとしては、有害物質除去力を向上させることができる点で、Ca12Al14O33、Ca3Al2O6や、これらの混合物が好ましい。前記カルシウムアルミネートは、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
また、前記カルシウムアルミネートには不純物が含まれることがあるが、その種類及び含有量は、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば特に制限はなく、具体例としては、例えば、カルシウムアルミネート水和物、Fe2O3、SiO2、MgO、TiO2、P2O5、Cl等が挙げられる。また、前記カルシウムアルミネートは、結晶性の化合物であってもよいし、非結晶性の化合物であってもよく、また、合成品であってもよいし、天然に産出されるものであってもよい。また、その粒子径も特に制限はなく、例えば、取り扱い上の点から0.1μm以上が好ましい。
前記カルシウムアルミネートは、例えば、合成により得ることができ、前記合成は、特に制限はなく、公知の方法によって行うことができる。例えば、水中でカルシウム化合物とアルミニウム化合物とを混合してカルシウムアルミネート水和物を合成した後、高温(好ましくは60℃以上、より好ましくは100℃以上の温度)で焼成することにより合成することができるし、また、アルミニウム化合物とカルシウム化合物とを混合して1,000℃以上、好ましくは1,300℃以上の温度で高温焼成することにより合成する(固相法)こともできる。固相合成法の加熱時間の上限に特に制限はないが、24時間以内が好ましい。長時間焼成すると硬い結晶が生成するため、焼成時間は、10時間以内がより好ましく、5時間以内が特に好ましい。
前記焼成処理に用いる装置としても、特に制限はなく、例えば公知の熱風乾燥機、電気炉、恒温器、流動層乾燥機、真空乾燥機、スプレードライヤー、ロータリーキルン等を用いて行うことができる。このときのカルシウム化合物は、カルシウムを含有するものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化カルシウム、硝酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム等やこれらの水和物等が挙げられ、これらを1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。アルミニウム化合物は、アルミニウムを含有するものであれば特に制限はなく、例えば、硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、炭酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム等やこれらの水和物等が挙げられ、これらを1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。また、これらの原料は純品だけでなくアルミスラッジ等の不純物を含むものであっても使用することができる。
前記カルシウムアルミネート水和物の加熱処理物は、前記カルシウムアルミネート水和物を更に加熱処理することにより得ることができる。カルシウムアルミネート水和物の加熱処理は、好ましくは60℃以上、より好ましくは100℃以上の温度で、10分間以上行うことが好ましく、30分間以上行うことがより好ましい。前記加熱温度の上限としては、特に制限はないが、1,600℃以下が好ましい。また、前記加熱時間の上限としても、特に制限はないが、24時間以内が好ましい。
前記加熱処理は、大気圧環境下で実施してもよいし、減圧しながら実施してもよい。また合成したカルシウムアルミネート水和物を乾燥した後に加熱処理を実施してもよいし、乾燥せずに加熱処理を実施してもよい。前記加熱処理に用いる装置としても、特に制限はなく、例えば公知の熱風乾燥機、電気炉、恒温器、流動層乾燥機、真空乾燥機、スプレードライヤー、ロータリーキルン等を用いて行うことができる。
なお、前記カルシウムアルミネート、及び、前記カルシウムアルミネート水和物の加熱処理物は、いずれかを単独で前記(A)成分として使用してもよいし、両者を併用して前記(A)成分として使用してもよい。両者を併用する場合の、前記カルシウムアルミネートと前記カルシウムアルミネート水和物の加熱処理物との使用量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記(B)成分は、硫酸塩である。
前記硫酸塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸銀、硫酸カルシウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸銅、硫酸マンガン、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムナトリウム、硫酸アルミニウムカリウム等が挙げられる。また、前記硫酸塩としては、これらの水和物であってもよい。
これらの中でも、前記硫酸塩としては、より有害物質除去力を向上させることができる点で、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウムが好ましく、中でも、硫酸カルシウムが特に好ましい。前記硫酸塩は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
前記水処理剤における、前記(A)成分、及び前記(B)成分の使用量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、質量比で、(A)成分:(B)成分=20:80〜90:10となるように使用されることが好ましく、25:75〜75:25となるように使用されることがより好ましく、30:70〜70:30となるように使用されることが更に好ましい。前記使用量比が、前記好ましい範囲内であると、より有害物質除去力を向上させることができる点で、有利である。
前記(C)成分は、炭酸塩である。
前記炭酸塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウムナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸マグネシウムやこれらの水和物等が挙げられる。これらの中でも、前記炭酸塩としては、より有害物質除去力を向上させることができる点で、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムが好ましく、中でも、炭酸カルシウムが特に好ましい。前記炭酸塩は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
また、本発明の水処理剤は、前記(A)成分、及び、前記(B)成分(好ましくは更に前記(C)成分のみからなるものであってもよいし、更に適宜その他の成分を含有してなるものであってもよい。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、原料として用いたカルシウム化合物や、酸やアルカリ等のpH調整剤などが挙げられる。なお、前記その他の成分の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明の水処理剤は、例えば、前記(A)成分、前記(B)成分、好ましくは更に前記(C)成分、並びに必要に応じてその他の成分を混合することにより、製造することができる。また、前記水処理剤は、塊状、粒状、粉状等、いずれの状態でも使用することができる。粒状、粉状の水処理剤は、例えば、粉砕することにより製造することができる。粉砕方法は特に制限はなく、公知の装置を用いて行うことができ、前記(A)成分、前記(B)成分、好ましくは更に前記(C)成分、並びに必要に応じてその他の成分のそれぞれを、混合する前に粉砕してもよいし、前記(A)成分、前記(B)成分、好ましくは更に前記(C)成分、並びに必要に応じてその他の成分を、混合した後に粉砕してもよい。
本発明の水処理剤は、有害物質含有水中から有害物質を簡便かつ効率的に除去することができ、かつ、有害物質除去後の凝集性(沈降性)にも優れるので、有害物質濃度が十分に低下した水と水処理剤を容易に分離することができる。そのため、本発明の水処理剤は、例えば後述する本発明の水処理方法に、好適に利用可能である。
本発明の水処理方法は、前記した本発明の水処理剤を用いて行うことを特徴とする。
本発明の水処理方法において処理対象となる水(処理対象水)としては、何らかの有害物質を含有する水であれば、特に制限はなく、例えば、様々な製品の製造工程や、燃焼ガスの洗煙工程、汚染土壌の浄化工程等から生じる産業廃水等が挙げられる。処理対象となる有害物質としても、特に制限はなく、例えば、セレン、銅、クロム、モリブデン、アンチモン、鉛、ヒ素、亜鉛、カドミウム、ニッケル、マンガン、鉄、スズ、コバルト等の重金属類や、ホウ素等が挙げられる。特に、本発明の水処理方法は、ホウ素含有水に適している。
前記ホウ素含有水は、通常オルトホウ酸(H3BO4)の形でホウ素を含有するが、ホウ酸塩やその他の形でホウ素を含むものであってもよい。このようなホウ素含有水としては、種々の工程、工場から排出される廃水などが挙げられる。また、本発明の水処理剤は、有害物質含有水のpHが2〜14の範囲で使用することができ、中でも、pH2〜13の範囲で使用することが好ましく、pH3〜12の範囲で使用することがより好ましい。なお、前記水処理剤は、有害物質含有水中に塩化物イオンなどの他のイオンが共存しても使用することができる。また、前記水処理剤に含まれるカルシウムアルミネートやカルシウムアルミネート水和物の加熱処理物がアルカリ性であるため、通常は、処理時のホウ素含有水は弱アルカリ性になる。有害物質含有水が強酸性溶液である場合には、必要に応じて、水酸化ナトリウムや水酸化カルシウムを添加して、弱アルカリ性にすることができる。
本発明の水処理方法は、前記水処理剤が有害物質含有水と接触することができればよく、その方法に特に制限はない。例えば、有害物質含有水中に所定量の前記水処理剤を添加して有害物質を除去した後、前記水処理剤を固液分離により分離する方法(添加法)や、前記水処理剤を充填した充填塔へ有害物質含有水を通水させることによって有害物質を除去する方法(充填法)などが挙げられる。いずれの方法においても、効率的に有害物質を除去することが可能である。
添加法における水処理剤の添加量は、特に制限はなく、有害物質含有水の有害物質濃度に応じて適宜決定される。また、添加法における水処理剤の添加方法にも、特に制限はなく、例えば、廃水処理設備の配管などの流路や貯水槽に添加する方法などが挙げられる。また、添加法における処理時間にも、特に制限はなく、例えば10分間以上、好ましくは30分間以上とすることができる。また処理中に撹拌しても、しなくてもよい。撹拌するとき、装置、操作などは特に制限されず、従来公知である装置、操作を用いることができる。
なお、前記添加法においては、前記水処理剤を予め水に分散させた(前処理工程)後、有害物質含有水の処理に用いることが好ましい。予め水に分散させた状態で水処理剤を使用することにより、低撹拌力条件下で有害物質含有水の処理を行った場合であっても、有害物質を効率的に除去することができる点で、有利である。前記水処理剤を水に分散させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、従来公知の撹拌装置を用いて行うことができる。また、前記水処理剤を分散させる際の水の使用量としても、特に制限はなく、例えば、水処理剤が、0.1〜20%となる量の水を使用することが好ましい。
なお、本発明の水処理剤は凝集性(沈降性)に優れるため、凝集剤を添加しなくとも、容易に水処理剤と有害物質が除去された水とに固液分離することができるが、有害物質含有水の処理後、直ちに次工程に移行する必要がある場合や、例えば、前記のように、水処理剤を予め水に分散させた後、有害物質含有水の処理に用いたような場合(前処理工程を行った場合)では、水処理剤の凝集性(沈降性)はやや低下する。したがって、このような場合には、有害物質除去処理の後、処理後の液に、高分子凝集剤(本明細書中において、「(D)成分」と称することがある)を添加し(後処理工程)、水処理剤と有害物質が除去された水とを固液分離することが好ましい。前記高分子凝集剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アニオン系高分子凝集剤、ノニオン系高分子凝集剤、カチオン系高分子凝集剤、両性系高分子凝集剤などが挙げられる。中でも、前記高分子凝集剤としては、アニオン系高分子凝集剤、ノニオン系高分子凝集剤、両性系高分子凝集剤が好ましい。前記高分子凝集剤の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、処理対象とされた有害物質含有水量に対して、0.0001〜1質量%となるような量で使用されることが好ましく、0.005〜0.5質量%となるような量で使用されることがより好ましい。前記使用量が、前記好ましい範囲内であると、より水処理剤の凝集性を高めることができる点で、有利である。
充填法における充填塔への水処理剤の充填量は、特に制限はなく、充填塔の大きさや、有害物質含有水の通水速度などに応じて適宜決定される。
充填法における充填塔は、特に制限はなく、公知のものを用いることができ、またその数も特に制限はなく、例えば、充填塔1基のみを使用することもできるし、複数基の充填塔を直列につなぎ使用することもできる。
充填法における水処理剤の充填層への流入は上向流でも下向流でもよく、空間速度(SV)にも特に制限はないが、例えば1〜120hr−1、好ましくは5〜50hr−1とすることができる。
本発明の水処理方法によれば、簡単な装置及び操作により、少ない薬剤量(水処理剤量)で効率よく有害物質を除去することができ、かつ、有害物質濃度が十分に低下した水と水処理剤を容易に分離することができる。そのため、本発明の水処理方法は、例えば、各種産業廃水における有害物質除去(特に、ホウ素除去)に、好適に利用可能である。
なお、「G−1」〜「G−4」の各成分は、「A−1」、「A−2」、「A−3」、「A−5」、「E−1」、「E−2」の各成分の合成に用いている。
水1L中に水酸化アルミニウム(G−1)41.2gと水酸化カルシウム(G−2)58.8gとを混合し、100℃で12時間撹拌、24時間熟成し、反応させた。反応終了後、沈殿物を濾過、室温で乾燥し、不溶性固体(E−2)81.7gを得た。この固体E−2を500℃で3時間焼成して固体(A−1)59.5gを得た。それぞれの生成物を広角X線回折測定により分析し、固体A−1がCa12Al14O33であり、固体E−2がCa3Al2O6・6H2Oであることを確認した。
水酸化アルミニウム(G−1)4.1gと水酸化カルシウム(G−2)5.9gを混合し、るつぼの中に入れ、焼成炉((株)モトヤマ製、SUPER BURN)を用いて1,400℃で7時間加熱し、硬い結晶性の固体7.0g得た。この固体を乳鉢で粉砕し、固体(A−2)7.0g得た。この固体A−2を広角X線回折測定により測定し、Ca3Al2O6であることを確認した。
水酸化アルミニウム(G−1)4.1gと水酸化カルシウム(G−2)5.9gを混合し、るつぼの中に入れ、焼成炉((株)モトヤマ製、SUPER BURN)を用いて1,400℃で2時間加熱し、軟らかい固体を得た。この固体を乳鉢で粉砕し、固体(A−3)7.0gを得た。この固体A−3を広角X線回折測定により測定し、Ca3Al2O6であることを確認した。
水1L中に硝酸アルミニウム・9水和物(G−3)14.1gと、硝酸カルシウム・4水和物(G−4)26.6gとを混合し、水酸化ナトリウムでpHを12に調整した後、室温で1時間撹拌し、反応させた。反応終了後、沈殿物を濾過、室温で乾燥し、不溶性固体(E−1)10.9gを得た。この固体を広角X線回折測定により測定し、Ca2Al2O5・6H2Oであることを確認した。また、この固体E−1を500℃で3時間焼成して固体(A−5)を得た。
得られた実施例1〜35、比較例1〜15の水処理剤について、下記表2〜5に示す条件でホウ素含有水を処理したときのホウ素除去率を算出することにより、ホウ素除去力を評価した。具体的には、75mLの市販のマヨネーズ瓶に、ホウ素含有水50.0gと、所定量の水処理剤(ホウ素除去剤)を添加し、5時間以上激しく撹拌した後、10分間静置した。処理液を濾過し、必要に応じて純水で希釈した後、ICP発光分析装置((株)パーキンエルマージャパン製、optima5300DV)を用いてホウ素濃度を測定した。ホウ素除去率は下記式(1)により算出した。なお、前記ホウ素除去率は100%に近い方が、ホウ素除去力が高いことを示す。本発明では、60%以上をホウ素除去率の合格レベルとした。結果を表2〜5に示す。
[式]
ホウ素除去率(%)=(1−C1/C0)×100 ・・・式(1)
C1:処理後のホウ素濃度(mg/L)
C0:処理前の初期ホウ素濃度(mg/L)
また、実施例1〜35、比較例1〜15の水処理剤について、ホウ素除去後の凝集性(沈降性)を、以下のようにして評価した。75mLの市販のマヨネーズ瓶に、ホウ素含有水50.0gと、所定量の水処理剤を添加し、5時間以上激しく撹拌した後、静置した。10分後、気液界面の高さと固液界面の高さを測定し、下記式(2)により凝集率(沈降率)を算出した(図1参照)。なお、凝集率は100%に近い方が、凝集性が良好であることを示すが、凝集率が100%の場合は、水処理剤がホウ素含有水に溶解したことを示し、凝集性に優れることの指標とはならない(比較例7、8、10)。本発明では、50%以上(かつ100%未満)を凝集率の合格レベルとした。結果を表2〜5に示す。
[式]
凝集率(%)=(1−b/a)×100 ・・・式(2)
a:気液界面の高さ(mm)
b:固液界面の高さ(mm)
得られた実施例24〜35の水処理剤について、下記表6に示す条件で、ホウ素とホウ素以外の有害物質(ニッケル、亜鉛、鉄、銅、鉛、マンガン)含有水(処理対象水)を処理したときのホウ素除去率と有害物質除去率を算出することにより、ホウ素と有害物質除去力を評価した。具体的には、75mLの市販のマヨネーズ瓶に、ホウ素と有害物質含有水(処理対象水)50.0gと、所定量の水処理剤を添加し、所定の時間激しく撹拌した後、10分間静置した。処理液を濾過し、必要に応じて純水で希釈した後、ICP発光分析装置((株)パーキンエルマージャパン製、optima5300DV)、又は、イオン電極(サーモエレクトロン(株)製、Orion370)を用いてホウ素と有害物質濃度を測定した。有害物質濃度は、前記ICP発光分析装置を用いて測定した。ホウ素除去率は、上記式(1)、有害物質除去率は下記式(3)により算出した。なお、前記有害物質除去率は100%に近い方が、有害物質除去力が高いことを示す。本発明では、50%以上を有害物質除去率の合格レベルとした。結果を表6に示す。
[式]
有害物質除去率(%)=(1−C’1/C’0)×100 ・・・式(3)
C’1:処理後の有害物質濃度(mg/L)
C’0:処理前の初期有害物質濃度(mg/L)
ホウ素処理後の処理液の入ったビーカーを、ジャーテスター(宮本製作所、MJS−2)にセットした。120rpmで撹拌しながら、必要に応じて高分子凝集剤((D)成分)含有水溶液を添加し、120rpmで5分間撹拌後、30rpmで2分間撹拌した。3分間静置後、上澄み溶液をサンプリングし、日本電色工業(株)Water Analyzer 2000Nを用いて濁度を測定した。なお、濁度の値が小さい程、水処理剤の凝集性(沈降性)が高いことを示し、濁度の値は、30ド以下であることが好ましい。
直径240mmのろ紙(東洋濾紙社、No.5B)をロートにセットし、ホウ素処理後の処理液(又は、ホウ素処理と高分子凝集剤処理とを行った後の処理液)を注ぎ、ろ過を行った。10分後のろ液重量を測定した。なお、ろ液重量の値が大きい程、固液分離が良好に行われたことを示し、ろ液重量は、150g以上であることが好ましい。
(実施例36)
500mLのビーカーに、ホウ素濃度30mg/L(pH6)のホウ素溶液水350g、A−3(Ca3Al2O6)0.70gとB−1(硫酸カルシウム・2水和物)0.70gを添加し、ビーカーの底から1.5cmに撹拌羽根(60mm×19×4t、撹拌棒(直径8mm))をセットし、スリーワンモーター(Fine社、FBL1200)を用い、400rpmで5時間撹拌して、ホウ素処理を行った。ホウ素処理後の処理液について、ホウ素除去力を評価した結果、ホウ素除去率は、97.1%であり、ホウ素を効率的に除去できることがわかった。
ホウ素処理後の処理液の入った500mLビーカーをジャーテスターにセットし、120rpmで撹拌しながら0.1%高分子(D−1)水溶液7.0gを添加し、120rpmで5分撹拌後、30rpmで2分間撹拌した。3分間静置した後、上澄み溶液をサンプリングし、濁度を測定し、残りは、ろ液重量測定に用いた。固液分離性を評価した結果、濁度は、5ド、ろ液重量は、305gとなり固液分離性は良好であった。
B−1(硫酸カルシウム・2水和物)の添加量を0.70gから0.55gに変え、また、C−1(炭酸カルシウム)0.15gを添加したこと以外は、実施例36と同様にして、ホウ素処理を行った。ホウ素処理後の処理液について、ホウ素除去力を評価した結果、ホウ素除去率は、99.5%であり、ホウ素を効率的に除去できることがわかった。
また、このホウ素処理後の処理液の固液分離性を実施例36と同様の方法により評価した結果、濁度は、5ド、ろ液重量は、300gとなり固液分離性は良好であった。
初期のホウ素濃度を100mg/L(pH6)にしたことと、A−3(Ca3Al2O6)0.70gに代えてA−1(Ca12Al14O33)1.75gを用いたこと、B−1(硫酸カルシウム・2水和物)の添加量を0.70gから1.75gに変えたこと以外は、実施例36と同様にして、ホウ素処理を行った。ホウ素処理後の処理液について、ホウ素除去力を評価した結果、ホウ素除去率は、92.1%であり、ホウ素を効率的に除去できることがわかった。
また、このホウ素処理後の処理液の固液分離性の評価は、0.1%高分子(D−1)水溶液の添加量を17.5gに変えたこと以外は、実施例36と同様の方法により評価した結果、濁度は、8ド、ろ液重量は、295gとなり固液分離性は良好であった。
(実施例39)
撹拌速度を400rpmに変えて150rpmにしたこと以外は、実施例38と同様にホウ素処理を行った結果、ホウ素除去率は、72.2%であり、ホウ素を効率的に除去できることがわかった。
また、このホウ素処理後の処理液の固液分離性を実施例38と同様の方法により評価した結果、濁度は、7ド、ろ液重量は、302gとなり固液分離性も良好であった。
(実施例40)
500mLのビーカーに、水175g、A−1(Ca12Al14O33)1.75gとB−1(硫酸カルシウム・2水和物)1.75gを添加し、ビーカーの底から1.5cmに前記撹拌羽根をセットしたスリーワンモーターを用い、400rpmで20時間撹拌して、水処理剤の分散液を調製した(前処理工程)。
前記分散液のスリーワンモーターの撹拌速度を150rpmに設定し、ここに200mg/Lのホウ素水溶液(pH6)175gを添加(初期ホウ素濃度;100mg/L)し、150rpmで5時間撹拌し、ホウ素処理を行った。
ホウ素処理後の処理液について、ホウ素除去力を評価した結果、ホウ素除去率は、91.9%であり、前処理工程を行うことにより、撹拌力が小さい条件下でもホウ素を効率的に除去できることがわかった。
また、このホウ素処理後の処理液の固液分離性を実施例38と同様の方法により評価した結果、濁度は、9ド、ろ液重量は、295gとなり固液分離性は良好であった。
実施例40と同様にして、前処理工程を行い、水処理剤の分散液を調製した。
次いで、撹拌速度を150rpmに変え、ここに200mg/Lのホウ素水溶液(pH6)175gを添加(初期ホウ素濃度;100mg/L)し、1分間撹拌した後、5時間静置し、ホウ素処理を行った。
ホウ素処理後の処理液について、ホウ素除去力を評価した結果、ホウ素除去率は、80.5%であり、前処理工程を行うことにより、撹拌力を付与できない条件下でもホウ素を効率的に除去できることがわかった。
また、このホウ素処理後の処理液の固液分離性を実施例38と同様の方法により評価した結果、濁度は、8ド、ろ液重量は、288gとなり固液分離性は良好であった。
A−1(Ca12Al14O33)1.75gに代えてA−3(Ca3Al2O6)0.44gを用いたこと、また、B−1(硫酸カルシウム・2水和物)の添加量を1.75gに変えて0.44gとしたこと以外は、実施例40と同様にして前処理工程を行い、水処理剤の分散液を調製した。
ここに40mg/Lのホウ素水溶液(pH9)175gを入れ(初期ホウ素濃度20mg/L)、400rpmで3時間撹拌し、ホウ素処理を行った。
ホウ素処理後の処理液の入った500mLビーカーを、ジャーテスター(宮本製作所、MJS−2)にセットした。120rpmで撹拌しながら、表7に示す(D)成分(高分子凝集剤)を添加し(実施例42を除く)、120rpmで5分間撹拌後、30rpmで2分間撹拌し、高分子凝集剤処理を行った(後処理工程)。
上記のようにして、(1)ホウ素除去力、(2)凝集性(沈降性)、(3)固液分離性をそれぞれ評価した。結果を表7示す。
75mLの市販のマヨネーズ瓶に、ホウ素含有水(ホウ素濃度105mg/L、pH9)50.0gとナトリウムアルミネート(F−1)0.5質量%と水酸化カルシウム(G−2)0.5質量%、硫酸カルシウム・2水和物(B−1)0.5質量%を添加して、5時間撹拌し、ホウ素処理を実施した。ホウ素除去率は20.1%であり、ホウ素濃度はやや低減されたが、その効果は低かった。
この系では、水中でカルシウムアルミネート水和物が生成されたと考えられるが、このカルシウムアルミネート水和物と、添加した硫酸カルシウムとでは、ホウ素除去力が低く、本発明におけるカルシウムアルミネート、及び、カルシウムアルミネート水和物を加熱処理することによって得られる物質の少なくともいずれかを用いた実施例1〜23よりも、ホウ素除去率が劣っている。
また、この時の凝集率は、72%であった。
Claims (6)
- (A)カルシウムアルミネート、及び、カルシウムアルミネート水和物を加熱処理することによって得られる物質の少なくともいずれかと、(B)硫酸塩とを含有することを特徴とする水処理剤。
- (B)硫酸塩が、硫酸カルシウムである請求項1に記載の水処理剤。
- 更に、(C)炭酸塩を含有する請求項1から2のいずれかに記載の水処理剤。
- 請求項1から3のいずれかに記載の水処理剤を用いることを特徴とする水処理方法。
- 請求項1から3のいずれかに記載の水処理剤を水に分散させた後、有害物質含有水の処理に用いる請求項4に記載の水処理方法。
- 請求項1から3のいずれかに記載の水処理剤を用いて有害物質含有水を処理した後、該処理後の液に(D)高分子凝集剤を添加し、前記処理後の液を前記水処理剤と有害物質が除去された水とに固液分離する請求項4から5のいずれかに記載の水処理方法。
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