JP2010075093A - 麹を使用したエイ調味食品及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】エイは捕獲後鮮度が低下しアンモニア臭を呈することや、軟骨が多く咀嚼困難なため加工食品とされることは殆どなかった。魚臭がなく旨味のあるエイ調味食品を提供する。
【解決手段】エイの魚肉又は/及び軟骨を細断・加熱殺菌処理したエイ魚体に、プロテアーゼを有する麹と、食塩水とを加え、魚肉又は/及び軟骨を完全に分解する。分解ろ液は魚醤油として、分解残渣は味噌風の調味料として、アミノ酸やコラーゲンに富む食品に変換する。
【選択図】なし
【解決手段】エイの魚肉又は/及び軟骨を細断・加熱殺菌処理したエイ魚体に、プロテアーゼを有する麹と、食塩水とを加え、魚肉又は/及び軟骨を完全に分解する。分解ろ液は魚醤油として、分解残渣は味噌風の調味料として、アミノ酸やコラーゲンに富む食品に変換する。
【選択図】なし
Description
本発明は、エイの魚体を原料として、麹を使用して製造するエイ調味食品及びその製造方法に関するものである。
エイは古くから一部は生食用として、また干物として食されている。エイは、捕獲後の鮮度管理が充分でないと魚肉中に含まれる尿素がアンモニアに変わり食用できなくなることや、軟骨部分が多く特別な加工をして柔らかくしないと、そのままでは咀嚼できないため殆どは廃棄されている。
エイを利用した食品の製造に関するものとしては、下記の特許文献1〜2が挙げられる。これらの文献にはシート状にしたエイのひれの珍味食品、魚肉の自己消化を利用した抗アレルギー魚醤油がそれぞれ開示されている。
特開2002−051750公報
特許第2999441号公報
上記の特許文献に見られるようにエイを食品として利用するためには、軟骨を物理的にシート状に加工したり、自己消化による可溶化処理が必要となる。しかし、自己消化は魚肉にある酵素反応を進めるため40℃以上で反応させることになり、エイの場合には魚肉に残存する尿素が急速にアンモニアに変換されるため、魚肉の可溶化はできても異臭を呈する食品となることが予測される。
本発明は、近年我が国の近海に急速に増加して漁業に甚大な被害を与えているエイ、特にナルトビエイを廃棄することなく、軟骨やたんぱく質を利用した旨味のある調味食品に利用しようという目的でなされたものである。
本発明者らは、エイの骨及び内臓を除去した、魚肉及び軟骨を麹のプロテアーゼにより可溶化・分解し、使用した魚肉及び軟骨を全て調味食品に製造するとの観点で実施した。
前処理工程として、エイの軟骨を機械的、物理的手段により裁断する。捕獲後時間が経過してバクテリアの汚染や、アンモニア臭を呈することがあるので、魚体重量の2〜3倍量の濃度が5〜10%食塩水を加え、1〜60分間煮沸の加熱殺菌工程により加熱殺菌処理をする。軟骨が軟化しアンモニア臭がある場合は、これを除去できるという知見を得た。
さらに、これまで醸造食品工業で一般的に使用されてきた、醤油麹、味噌麹、清酒麹、又は焼酎麹、の1種類を使用することにより、加熱殺菌工程終了後の魚肉及び軟骨の可溶化・液化が容易であるとの知見を得た。この場合、使用する麹の中性プロテアーゼ及び酸性プロテアーゼは、それぞれ4,000ユニット/g窒素以上を要する。
可溶化工程では、もろみ(加熱殺菌した魚肉又は軟骨、食塩水及び麹の混合物)の食塩濃度が15〜20%になるように調整し、15〜60℃、90〜300日間反応させる。食塩濃度は耐塩性菌や産膜系酵母の汚染を防止するために再度調整する。
一定期間、麹のプロテアーゼの作用によりもろみを分解した後上槽する。上槽は通常、醤油の上槽に使用する圧搾機かサラシまたは化繊の袋にもろみを入れ、自然ろかの後圧搾してもよい。この場合上槽により得られた、ろ液は魚醤油であり、残渣として残った半固形物は味噌風調味料となる。魚醤油にはグルタミン酸、アラニン、ロイシン、リジン、オルニチン等のアミノ酸の含有が多い。通常、魚醤油にありがちな魚臭は全くない。
近年、大繁殖して漁業被害を与えているエイ、特にナルトビエイを、本願発明によって、麹のたんぱく質分解酵素により、有用なアミノ酸を多量に含有する食品に変換することが可能になった。また、これまで加工食品として利用されることが殆どなかったエイを、魚臭がない旨味のある魚醤油と調味食品として利用できる。そしてエイの骨と内臓を除去した魚肉と軟骨が容易に可溶化・分解されて全てが食品化できる。こ本願発明によるこれらの新規食品はアミノ酸が豊富であり、ペプチドやコラーゲンが含有されているためヒトの健康にやさしい食品である。
本願発明におけるエイとしてはどのような種類のものでも使用できる。たとえばナルトビエイ、ガンギエイ、テングカスベ、コモンカスベ、モヨウカスベ、アカエイ、ホシエイ、トビエイ、マダラトビエイ、ヒラタエイ、ツバクロエイなどを使用することができる。
前処理工程では、エイの内臓と骨を除去した軟骨と魚肉の部分を例えば約5cm角に細断する。よく洗浄し口径10〜20ミリのチョッパーにかけてミンチ状に細断する。
加熱殺菌工程では、細断した魚肉と軟骨に、その重量の2倍量の濃度5%食塩水を加え、1〜60分間煮沸して加熱する。鮮度が低下してアンモニア臭のあるものは煮沸することにより臭いが飛散・消失する。そして魚肉及び軟骨は加熱により軟化する。使用した食塩水はアミノ酸が溶出しているので、そのまま使用する。
次いで、エイ魚体の30重量%の醤油麹を加える。醤油麹は濃い口用種麹((株)ビオック製)を使用して標準的な醤油麹を製造する。中性プロテアーゼ力価は8,200ユニット/g窒素、酸性プロテアーゼ力価は7,600ユニット/g窒素であった。(プロテアーゼ力価は国税庁所定分析法注解にしたがう)。エイ魚体と麹の重量の200重量%になるように水を加え、さらに、もろみ中の食塩濃度が15重量%になるように食塩を加える。
仕込んだもろみは、25〜60℃で60〜250日間酵素反応を行う。酵素反応が進行すると、もろみが完全に沈殿分解物の層と上澄と分離する。分解物を手に取り分解・軟化していることを確認して仕込みを終了し上槽する。
前処理工程における軟骨と魚肉の細断は、5cm以上であればチョッパーで目詰まりを起こしやすく均一なミンチ状にならない。
加熱殺菌工程では5〜10%濃度の食塩水の添加量は1.5〜3.0倍が適当であり、それ以下であれば熱の伝達にムラを生じる。添加量が多すぎると最終分解物が薄くなる。1〜60分間の煮沸による加熱はアンモニア50mg/100g魚肉がほぼ飛散・消失しうるに必要な時間であり、新鮮なエイを使用する限り充分な時間である。
可溶化工程において、麹の添加量が多いと最終製品のアミノ酸パターンが、醤油麹であれば濃い口醤油のパターンに近くなり、魚体由来のオルニチンが減少してくるため魚醤油としての個性が薄れる。10〜50重量%の添加が適当である。醤油麹以外の全ての麹に関して、標準的な製麹を行えば、中性プロテアーゼ力価及び酸性プロテアーゼ力価は4,000ユニット/g窒素以上のものができる。4,000ユニット/g窒素以下の場合は、軟骨の可溶化が困難となり、7,000〜8,000ユニット/g窒素であればもろみの温度に比例して可溶化が進行する。この条件下で50℃であれば100日で充分可溶化できる。
軟骨の溶解が充分に進行したならば、実験室であればサラシ又は化繊のろ過布を使用し、醤油醸造工場であれば圧搾機で搾汁する。搾汁されたろ液が魚醤油であり、分解残渣が味噌風調味食品となる。魚醤油には溶解した遊離アミノ酸が多くグルタミン酸を主体とするさわやかな旨味がある。味噌風調味食品には未分解のペプチドやコラーゲンが残存している。魚類で造った味噌という感じがする。どちらの食品にも植物由来の醤油と比較するとオルニチン含量が多いのが特徴である。また、一般の魚醤油にありがちな魚臭は全く存在しない。
[実施例1]
前処理工程により細断し、さらに加熱殺菌処理したエイ魚体1.2kgに、醤油麹0.36kg、水3.2リットルを加え、もろみの食塩濃度が15重量%になるように食塩を加えた。(醤油麹は小麦と脱脂大豆を等量使用してビオック社製『良い種麹』(醤油用ソーヤ)を散布して通常の方法で製麹した。麹の中性及び酸性プロテアーゼはそれぞれ7,800及び8,500ユニット/g窒素であった。)
仕込んだもろみは50℃、100日間可溶化させ化繊のろ布で上槽した。エイの魚醤油(ろ液)3.1リットル、味噌風調味(残渣)1.5kgがえられた。
これらの分析値を表1に示した。
前処理工程により細断し、さらに加熱殺菌処理したエイ魚体1.2kgに、醤油麹0.36kg、水3.2リットルを加え、もろみの食塩濃度が15重量%になるように食塩を加えた。(醤油麹は小麦と脱脂大豆を等量使用してビオック社製『良い種麹』(醤油用ソーヤ)を散布して通常の方法で製麹した。麹の中性及び酸性プロテアーゼはそれぞれ7,800及び8,500ユニット/g窒素であった。)
仕込んだもろみは50℃、100日間可溶化させ化繊のろ布で上槽した。エイの魚醤油(ろ液)3.1リットル、味噌風調味(残渣)1.5kgがえられた。
これらの分析値を表1に示した。
魚醤油は、アミノ酸分析値から旨味、甘味、苦みを呈するアミノ酸が含有されているが、深い旨味を感じ後味がきれいである。オルニチンが比較的多い。
魚醤油、味噌風調味料とも魚臭は全くない。味噌風調味料はよく分解・可溶化している。エイ軟骨は残存していない。
魚醤油、味噌風調味料とも魚臭は全くない。味噌風調味料はよく分解・可溶化している。エイ軟骨は残存していない。
Claims (5)
- 骨と内臓を除去した、エイの魚肉又は/及び軟骨からなる魚体をよく洗浄し、チョッパー等で細断する前処理工程と、これに濃度5〜10重量%の食塩水を魚体重量の2〜3重量倍加えて、1〜60分間煮沸して、加熱殺菌する加熱殺菌工程と、エイ魚体100重量部に対して5〜150重量部の麹を加えてもろみとなし、さらにもろみの食塩濃度を15〜20重量%に調整し、15〜60℃で90〜300日間、魚肉又は/及び軟骨を可溶化・分解する可溶化工程と、さらに可溶化・分解された可溶化物を上槽する上槽工程からなることを特徴とする、旨味のあるエイの調味食品の製造方法。
- 麹が、麦、大豆、又は米から選ばれるいずれか1つを原料として製麹された、醸造食品工業で通常使用される、醤油麹、味噌麹、清酒麹、又は焼酎麹のうちのいずれか1種類を使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 麹の中性プロテアーゼ力価及び酸性プロテアーゼ力価が、それぞれ4,000ユニット/g窒素以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
- エイがナルトビエイであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法により製造された麹を使用したエイ調味食品。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008246862A JP2010075093A (ja) | 2008-09-25 | 2008-09-25 | 麹を使用したエイ調味食品及びその製造方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011193849A (ja) * | 2010-03-23 | 2011-10-06 | Susumu Kashiwagi | 尿素を含有する魚類からアンモニア臭の無い調味食品原材料及び調味食品を製造する方法 |
CN104543920A (zh) * | 2014-12-05 | 2015-04-29 | 浙江省海洋水产研究所 | 一种鳀鱼干粉调味料的制备方法 |
-
2008
- 2008-09-25 JP JP2008246862A patent/JP2010075093A/ja active Pending
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