JP2010066380A - 波長可変テラヘルツ波発生装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】連続した広帯域で波長可変のテラヘルツ波発生装置の実現。
【解決手段】第1励起光を放射し、この第1励起光の波長が、モードホップがなく連続して可変できる第1波長掃引幅を有した第1励起光源51と、モードホップを有し、第1波長掃引幅以下の間隔で、離散的に発振波長を可変設定でき、第1励起光との周波数差がテラヘルツ帯域である第2励起光を放射する第2励起光源52と、第1励起光と前記第2励起光の成す角度が位相整合角となるよう角度を調整して混合させる角度調整手段64と、2つの前記増幅光が位相整合角を成して入射し、差周波混合によって同時に2方向にテラヘルツ波を放射する非線形光学結晶65とを有する。
【選択図】図1
【解決手段】第1励起光を放射し、この第1励起光の波長が、モードホップがなく連続して可変できる第1波長掃引幅を有した第1励起光源51と、モードホップを有し、第1波長掃引幅以下の間隔で、離散的に発振波長を可変設定でき、第1励起光との周波数差がテラヘルツ帯域である第2励起光を放射する第2励起光源52と、第1励起光と前記第2励起光の成す角度が位相整合角となるよう角度を調整して混合させる角度調整手段64と、2つの前記増幅光が位相整合角を成して入射し、差周波混合によって同時に2方向にテラヘルツ波を放射する非線形光学結晶65とを有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、非線形光学結晶を用いて差周波混合によりテラヘルツ波を生成する波長可変のテラヘルツ波発生装置に関する。特に、広い帯域で連続的に波長可変とした装置に関する。
近年、電波と光との境界の電磁波であるテラヘルツ波が注目され、テラヘルツ波を用いた分光技術やイメージング技術について研究開発がなされている。
テラヘルツ波の発生には、パラメトリック素子を用いた差周波による発生法、非線形素子を用いたパラメトリック発振器による発生法、半導体基板に形成された光伝導アンテナや電気光学(Electro-Optical )効果を有する結晶にピコ秒〜フェムト秒の短パルスレーザ光を入力して発生する方法がある。
非線形光学結晶を用いた差周波数の発生を利用するものが知られている(たとえば、特許文献1〜3)。これは、周波数差がテラヘルツ帯域である2つの励起光を位相整合条件を満たすようにして非線形光学結晶に入射させ、差周波混合によってテラヘルツ波を発生させるものである。
GaPなどの等方性の非線形光学結晶を用いる場合は、複屈折性を利用して位相整合させることができないため、2つの励起光に微小な角度を持たせるノンコリニア位相整合を行っている。GaP結晶の場合のノンコリニア位相整合について、特許文献1、3に詳しく記載されている。
非線形光学効果の一つである差周波発生を利用する方法では、ポンプレーザ、信号レーザと呼ぶ周波数の異なる2つのパルス光をテラヘルツ電磁波発生用結晶である半導体GaP、GaSe結晶などに入射させることにより、その周波数の差に相当する単色コヒーレントテラヘルツ波の発生が可能となる。これらテラヘルツ光源により、物質のテラヘルツ帯におけるスペクトル測定やイメージングを行うことで、分子の同定、食品・医薬品の検査等の非破壊検査、癌組織の発見などが可能となる。
2つのレーザパルス光を用いてテラヘルツ電磁波を発生するには、ポンプ光、信号光そしてテラヘルツ電磁波が位相整合条件を満たす必要がある。屈折率が等方的であるGaP結晶などを使う場合、2つの入射ビームに所定の角度を持たせる必要がある。これらのテラヘルツ波は、例えば、分光分析に用いる場合には、波長が広帯域において連続して変化できることが必要である。
特開2004−318028
特開2006−91802
特開2007−133339
しかしながら、上記のテラヘルツ波発生装置において、波長を広帯域において可変できるようにするためには、励起光源に近赤外半導体レーザを用いた場合に、モードホップにより可変波長が連続しないという問題や可変波長掃引幅が狭いという問題がある。このことから、従来においては、広帯域において波長を連続的に可変することは困難であった。
そこで本発明の目的は、広帯域において連続して波長を可変できるテラヘルツ波発生装置を実現することである。
第1の発明は、波長可変のテラヘルツ波を発生させるテラヘルツ波発生装置において、第1励起光を放射し、この第1励起光の波長が、モードホップがなく連続して可変できる第1波長掃引幅を有した第1励起光源と、モードホップを有し、第1波長掃引幅以下の間隔で、離散的に発振波長を可変設定でき、第1励起光との周波数差がテラヘルツ帯域である第2励起光を放射する第2励起光源と、第1励起光と第2励起光の成す角度が位相整合角となるよう角度を調整して混合させる角度調整手段と、2つの励起光が位相整合角を成して入射し、差周波混合によってテラヘルツ波を放射する非線形光学結晶と、を備えたことを特徴とするテラヘルツ波発生装置である。
また、第2野発明は、波長可変のテラヘルツ波を発生させるテラヘルツ波発生装置において、第1励起光を放射し、この第1励起光の波長が、モードホップがなく連続して可変できる第1波長掃引幅を有した第1励起光源と、モードホップを有し、第1波長掃引幅以下の間隔で、離散的に発振波長を可変設定でき、第1励起光との周波数差がテラヘルツ帯域である第2励起光を放射する第2励起光源と、第1励起光と第2励起光とを合波させて合波光を生成する合波手段と、合波光を2つに分割する分割手段と、分割手段により分割された2つの合波光の成す角度が位相整合角となるように角度を調整して混合させる角度調整手段と、2つの合波光が位相整合角を成して入射し、差周波混合によって同時に2方向にテラヘルツ波を放射する非線形光学結晶と、を備えていることを特徴とするテラヘルツ波発生装置である。
第1の発明が、第1励起光と第2励起光とを、別々の光路を伝搬させて、両者を位相整合角となるように角度調整して、非線形光学結晶に入射させるようにしたのに対して、第2の発明は、第1励起光と第2励起光とを、一旦、合波して、その合波光を2分割して、分割されたそれぞれの合波光を、位相整合角となるように角度調整して、非線形光学結晶に入射させている。
また、第1の発明においては、角度調整手段の前段に、第1励起光と第2励起光とを、それぞれ、増幅する増幅器を設け、角度調整手段は、それぞれの増幅器の出力する第1励起光と第2励起光の角度調整をすることが望ましい。増幅器には、ファイバーアンプを用いることができる。また、第2の発明においては、第1励起光と第2励起光とを合波した後、その合波光を分割する前に、増幅するファイバーアンプを設けることが望ましい。
また、第1の発明及び第2の発明において、第1励起光源は、DFBレーザ、又は、DBRを用いた半導体レーザであり、第2励起光源は、外部共振器型半導体レーザであることが望ましい。一般的に、モードホップがない場合には、波長可変幅は狭いが、モードホップがある場合には、連続的に波長を可変することはできないが、不連続であっても可変し得る波長範囲は広い。したがって、本第1の発明及び第2の発明において、第1励起光源には、モードホップがなく連続して可変できる所定の第1波長掃引幅を有した光源を用い、第2励起光源には、モードホップを有し、第1波長掃引幅よりも狭い間隔で、離散的に発振波長を可変設定できる光源を用いれば十分であり、その種類には限定されない。DFB(分布帰還型)半導体レーザ、又は、DBR(分布ブラッグ反射型)半導体レーザは、温度制御により、屈折率を変化させることで、モードホップがなく1THz程度の連続した波長可変幅を実現することができるので、第1励起光源として最適である。また、外部共振器型半導体レーザは、回折格子と外部共振器とを用いて共振光を半導体にフィードバックさせて発振させるレーザであり、回折格子への入射角により、共振波長を変化させるものである。このため、共振波長幅が狭く、次の共振波長との間で、モードホップがあり、連続して波長を変化させることができない。しかし、不連続であっても、波長を可変設定できる範囲は広いので、第2励起光源として最適である。この場合、周波数幅は、外部共振器型半導体レーザにもよるが、5〜15GHz、又は、1〜4MHz程度であり、モードホップの周波数間隔も5〜15GHz、又は、1〜4MHz程度である。
また、第1発明及び第2発明において、テラヘルツ波発生装置は、非線形光学結晶においてもっともビーム径が絞られるように調整するレンズを備えるのが望ましい。
さらに、非線形光学結晶には、GaP結晶を用いることができる。
さらに、非線形光学結晶には、GaP結晶を用いることができる。
第2励起光の波長をある波長に設定して、第1励起光の波長を第1波長掃引幅で変化させる。そして、第2励起光の波長を他の波長に設定して、同様に、第1励起光の波長を第1波長掃引幅で変化させる。これを繰り返すことで、出力されるテラヘルツ波の波長を広い帯域において、連続して変化させることができる。このため、広い波長帯域における物質の分光分析などを、一度に、実施することができる。
また、第2の発明では、第1励起光と第2励起光とを合波しているため、1台のファイバーアンプで第1励起光と第2励起光の双方を増幅することができ、テラヘルツ波発生装置の構成を簡素化することができ、低コスト化を図ることができる。また、第1励起光と第2励起光を合波して同時に集光しているため、ビーム径が円形となり、非線形光学結晶において2つの合波光を効率的に重ねることができ、テラヘルツ波の出力を向上させることができる。
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照して説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
まず、本発明の原理について説明する。図1(a)に示すように、第1励起光の連続した波長可変幅である第1波長掃引幅の下限値λL と上限値λu を、c/(f10−Δf10)、c/(f10+Δf10)とする。ただし、cは光速度、f10は、中心周波数、2Δf10は、周波数での掃引幅である。波長掃引幅の中心波長λ10は、c/f10であり、波長掃引幅2Δλ10は、次式を満たす。
まず、本発明の原理について説明する。図1(a)に示すように、第1励起光の連続した波長可変幅である第1波長掃引幅の下限値λL と上限値λu を、c/(f10−Δf10)、c/(f10+Δf10)とする。ただし、cは光速度、f10は、中心周波数、2Δf10は、周波数での掃引幅である。波長掃引幅の中心波長λ10は、c/f10であり、波長掃引幅2Δλ10は、次式を満たす。
次に、第1波長掃引幅内での第1励起光の周波数と、波長を、それぞれ、f1 (x)、λ1 (x)として、第2励起光の周波数をf2 (y)、波長をλ2 (y)とし、得られるテラヘルツ波の周波数をf3 (x,y)、波長をλ3 (x,y)とする。次の関係式が成立する。ただし、とり得るx、yの値に対して、f2 (y)>f1 (x)とする。また、xは、第1波長掃引幅内での第1励起光の周波数を決定するインデックス、yは、第2励起光の設定される周波数を決定するインデックスである。
また、第2励起光の設定される周波数の間隔は、第1波長掃引幅の周波数幅2Δf10以下とする。
すなわち、
とする。また、yの値の最小値を1、最大値をkmax とし、第2励起光の可変設定幅の最小値をf2 (1)、その最大値をf2 (kmax )とする。
すなわち、
なお、第2励起光は、モードホップがあり、連続して周波数が可変できる幅と、その実現できる周波数の隣接周波数間隔の最小値は、通常は、5〜15GHz程度であり、第1波長掃引幅に対応する周波数幅2Δf10や、第2励起光の可変設定周波数幅f2 (kmax )−f2 (1)に比べて、十分に短い。したがって、(6)式を満たすように、(6)式の等号の場合も含めて、第2励起光の周波数、波長を選択することができる。
第2励起光は、図1(b)のように、f2 (1),f2 (2),…f2 (k),…f2 (kmax )のように、離散的に周波数を設定することができる。もちろん、f2 (1),f2 (2),…,f2 (k)の間においても、離散的な周波数で発振させることが可能である。図1(b)のように、任意の周波数間隔で、第2励起光の周波数を設定する。
今、第2励起光の周波数をf2 (y)に設定して、第1励起光の周波数を第1波長掃引幅において、変化させたとする。すると、Δf1 (x)は、−Δf10からΔf10へと変化するので、出力されるテラヘルツ波の周波数f3 は、(4)式から明らかなように、f30(y)+Δf10からf30(y)−Δf10へと変化する。
第2励起光の設定周波数をf2 (1)に設定して、第1励起光の周波数を変化させると、出力されるテラヘルツ波の周波数の可変範囲は、図1(c)に示すA1の領域となる。また、第2励起光の設定周波数をf2 (2)に設定して、第1励起光の周波数を変化させると、出力されるテラヘルツ波の周波数の可変範囲は、図1(c)に示すA2の領域となる。そして、これらを繰り返して、第2励起光の設定周波数をf2 (kmax )に設定して、第1励起光の周波数を変化させると、出力されるテラヘルツ波の周波数の可変範囲は、図1(c)に示すAkmax の領域となる。
第2励起光の可変設定できる周波数間隔f2 (k+1)−f2 (k)は、第1励起光の波長掃引幅に対応した周波数掃引幅2Δf10以下にできるので、出力されるテラヘルツ波の周波数可変幅A1,A2,…Ak,…Akmax は、連続することになる。
図2に、実施例1にかかるテラヘルツ波発生装置の構成を示す。テラヘルツ波発生装置50は、DFB半導体レーザから成る第1励起光源51と、外部共振型半導体レーザから成る第2励起光源52とを有する。第1励起光源51と第2励起光源52は、それぞれ、1/2波長板53、54を介して、ファイバーアンプ55、56に接続されている。ファイバーアンプ55、56の出力は、それぞれ、レンズ57、58を介して、ミラー59、60に、接続されている。ミラー59により反射された第1励起光は、1/2波長板62を通過して、ミラー63により反射されて、偏光ビームスプリッタ64に入射する。また、ミラー60により反射された第2励起光が1/2波長板61を通過して、偏向ビームスプリッタ64に入力している。偏向ビームスプリンタ64に入射した第1励起光と第2励起光とは、GaP結晶65に入射している。偏光ビームスプリッタ64が本発明の角度調整手段に相当し、GaP結晶65が本発明の非線形光学結晶に相当している。
ファイバーアンプ55、56は、Ybをドープした光ファイバ増幅器である。レンズ57、58は、焦点距離500mmである。このレンズ57、58によって、それぞれ、ファイバーアンプ55、56からの第1励起光及び第2励起光のビーム径がGaP結晶65において最も絞られる。
偏光ビームスプリッタ64は、三角プリズムの斜面に誘電体多層膜を形成し、2つの三角プリズムを斜面で接着したキューブ型の素子である。偏光ビームスプリッタ64は回転及び光軸方向及びそれに垂直な方向に移動させることができる。たとえば、回転可能に支持された偏光ビームスプリッタ64を1軸ステージ上に乗せることで移動と回転の制御が可能である。偏光ビームスプリッタ64は、その回転、移動を制御することで、2つの合波光の成す角度と重なる位置を調整して混合するものである。
GaP結晶65は(110)面で研磨されている。この(110)面が光の入射面となる。実施例1のテラヘルツ波発生装置は、このGaP結晶65に2つの励起光を入射させて差周波混合を生じさせることによりテラヘルツ波を発生させるものである。GaP結晶65は等方性の非線形光学結晶であり、複屈折性を有していないため、2つの励起光に角度を持たせて行う位相整合(ノンコリニア位相整合)によって位相整合条件を満たすようにする。
ミラー59、60、63は、いずれも光の照射方向を制御するためのものであり、1/2波長板53、54、61、62は、いずれも光の偏光方向を調整するためのものである。このテラヘルツ波発生装置50は、GaP結晶65から第1励起光と第2励起光との差周波数のテラヘルツ波を発生させることができるものである。
次に、本テラヘルツ波発生装置50により、広帯域に渡り、出力されるテラヘルツ波の周波数、波長を変化させる方法を説明する。
まず、第2励起光源52における回折格子への入射角を制御することで、第2励起光の周波数をf2 (k)に設定する。次に、第1励起光源51の温度を制御することで、第1励起光の周波数をf10+Δf10から、f10−Δf10へと2Δf10の範囲で変化させる。すると、出力されるテラヘルツ波の周波数はf2 (k)−f10−Δf10から、f2 (k)−f10+Δf10へと幅2Δf10で変化する。すなわち、f2 (k)−f10を中心周波数として、その中心周波数からΔf10だけ低い周波数から、その中心周波数からΔf10だけ高い周波数まで、出力されるテラヘルツ波の周波数を連続的に変化させることができる。
まず、第2励起光源52における回折格子への入射角を制御することで、第2励起光の周波数をf2 (k)に設定する。次に、第1励起光源51の温度を制御することで、第1励起光の周波数をf10+Δf10から、f10−Δf10へと2Δf10の範囲で変化させる。すると、出力されるテラヘルツ波の周波数はf2 (k)−f10−Δf10から、f2 (k)−f10+Δf10へと幅2Δf10で変化する。すなわち、f2 (k)−f10を中心周波数として、その中心周波数からΔf10だけ低い周波数から、その中心周波数からΔf10だけ高い周波数まで、出力されるテラヘルツ波の周波数を連続的に変化させることができる。
次に、第2励起光源52を制御して、第2励起光源の周波数を第2励起光の周波数をf2 (k+1)に設定する。次に、上記の場合と同様に、第1励起光源51の温度を制御することで、第1励起光の周波数をf10+Δf10から、f10−Δf10へと2Δf10の範囲で変化させる。すると、出力されるテラヘルツ波の周波数はf2 (k+1)−f10−Δf10から、f2 (k+1)−f10+Δf10へと幅2Δf10で変化する。すなわち、f2 (k+1)−f10を中心周波数として、その中心周波数からΔf10だけ低い周波数から、その中心周波数からΔf10だけ高い周波数まで、出力されるテラヘルツ波の周波数を連続的に変化させることができる。f2 (k+1)−f2 (k)≦2Δf10に設定されているので、f2 (k)−f10−Δf10からf2 (k)−f10+Δf10までの周波数領域と、f2 (k+1)−f10−Δf10からf2 (k+1)−f10+Δf10までの周波数領域とは、一部領域が重複するが、連続した領域となる。このように、第2励起光の周波数f2 (k)を順次、変化させて、同様に第1励起光の周波数を温度制御により掃引することで、出力されるテラヘルツ波の周波数は広帯域において連続した周波数となる。
なお、レンズ57、58の光軸方向の位置を制御することで、GaP結晶65に入射する第1励起光と第2励起光のスポットの直径を最小にすることで、テラヘルツ波を出力を最大にすることができる。また、出力されるテラヘルツ波の周波数fとGaP結晶65に入射する2つの励起光の位相整合角θとの間には、図3に示す特性がある。したがって、出力されるテラヘルツ波を周波数に応じて、位相整合角θを調整する必要がある。このため、第1励起光と第2励起光との入射角を制御するために、偏光ビームスプリッタ64の回転角、及び位置を制御する。偏光ビームスプリッタ64は角度調整手段を構成する。
また、f2 (k+1)−f2 (k)=2Δf10に、第2励起光の周波数f2 (k)を設定することで、出力されるテラヘルツ波の周波数は、周波数領域に重なりがなく、連続させることができる。この条件は、第2励起光源のモードホップ間隔が15GHz程度と、出力されるテラヘルツ波の周波数に比べて小さいために、容易に満たすことができる。
図4は、第2励起光の周波数f2 (k)を285.11THzに設定して、第1励起光の中心周波数f10を283.55THzに設定して、周波数掃引幅2f10を0.5THzとして、出力されるテラヘルツ波を用いて、空気の吸収スペクトルを測定したものである。1.55THz〜2.05THzまで、周波数が連続的に変化していることが分かる。
第2励起光の周波数を順次変化させて、第1励起光の波長を第1波長掃引幅で掃引することで、図4に示される出力されるテラヘルツの帯域が平行移動して生成される図5に示すような1〜7THzの広帯域において、出力されるテラヘルツ波の波長を連続的に変化させることができる。
実施例2は、同時に2方向にテラヘルツ波を発生させることができ、そのテラヘルツ波の周波数が可変であるテラヘルツ波発生装置である。図6は、実施例2のテラヘルツ波発生装置の構造について示した図である。テラヘルツ波発生装置1は、第1励起光源11と、第2励起光源10と、無偏光ビームスプリッタ12と、ファイバーアンプ13と、レンズ14と、偏光ビームスプリッタ15、16と、GaP結晶17と、ミラー18〜20と、1/2波長板21〜24と、を備えている。また、無偏光ビームスプリッタ12が本発明の合波手段に相当し、偏光ビームスプリッタ15が本発明の分割手段に相当し、偏光ビームスプリッタ16が本発明の角度調整手段に相当し、GaP結晶17が本発明の非線形光学結晶に相当している。
第1励起光源11は、実施例1と同様にDFB半導体レーザである。また、第2励起光源10は、実施例1と同様に外部共振型半導体レーザである。ファイバーアンプ13は、Ybをドープした光ファイバ増幅器であり、無偏光ビームスプリッタ12からの合波光を増幅させるものである。
レンズ14は、焦点距離500mmである。このレンズ14の光軸方向の位置を制御することにより、ファイバーアンプ13からの合波光のビーム径がGaP結晶17において最も絞られるようにする。
無偏光ビームスプリッタ12および偏光ビームスプリッタ15、16は、三角プリズムの斜面に誘電体多層膜を形成し、2つの三角プリズムを斜面で接着したキューブ型の素子である。偏光ビームスプリッタ16は回転及び光軸方向及びそれに垂直な方向に移動させることができる。たとえば、回転可能な偏光ビームスプリッタ16を1軸ステージ上に乗せることで回転と移動の制御が可能である。無偏光ビームスプリッタ12に入射した光は、その偏光状態によらずに反射光と透過光に分割される。偏光ビームスプリッタ15、16に入射した光は、反射光と透過光に分割され、その反射光と透過光の偏光方向は互いに直交する。無偏光ビームスプリッタ12は、第2励起光と第1励起光とを合波するためのものである。偏光ビームスプリッタ15は、第2励起光と第1励起光との合波光を2つに分割するものである。偏光ビームスプリッタ16は、その回転、移動を制御することで、2つの合波光の成す角度と重なる位置を調整して混合するものである。
GaP結晶17は(110)面で研磨されている。この(110)面が光の入射面となる。実施例1のテラヘルツ波発生装置は、このGaP結晶17に2つの励起光を入射させて差周波混合を生じさせることによりテラヘルツ波を発生させるものである。GaP結晶17は等方性の非線形光学結晶であり、複屈折性を有していないため、2つの励起光に角度を持たせて行う位相整合(ノンコリニア位相整合)によって位相整合条件を満たすようにする。
ミラー18〜20はいずれも光の照射方向を制御するためのものであり、1/2波長板21〜24はいずれも光の偏光方向を調整するためのものである。このテラヘルツ波発生装置は、GaP結晶17から第1励起光と第2励起光との差周波数のテラヘルツ波を2方向に同時に発生させることができるものである。
以下、テラヘルツ波発生装置によるテラヘルツ波発生の動作についてより詳しく説明する。第1励起光源11から放射される第1励起光は、1/2波長板21を通したのち、無偏光ビームスプリッタ12に入射させる。一方、第2励起光源10から放射される第2励起光は、1/2波長板22を通して、ミラー18により反射させて、無偏光ビームスプリッタ12に入射させる。これにより、偏光方向が揃った状態で第1励起光および第2励起光を合波させ、合波光を出力させる。
次に、無偏光ビームスプリッタ12から出力された合波光をファイバーアンプ13に入射させ、合波光を増幅させる。
次に、レンズ14の光軸方向の位置を制御することでその焦点位置を制御して、合波光を集光し、GaP結晶17においてもっともビーム径が絞られるようにする。
次に、偏光ビームスプリッタ15によって合波光を、合波光A、Bの2つに分割する。一方の合波光Aは、1/2波長板23を通して偏光ビームスプリッタ16に入射させる。他方の合波光Bは、ミラー19によって反射させ、1/2波長板24を透過し、さらにミラー20によって反射させたのち、偏光ビームスプリッタ16に入射させる。そして、偏光ビームスプリッタ16によって、GaP結晶17において2つの合波光A、Bが角度を成して混合するようにする。合波光A、Bの成す角度および重なる位置は、偏光ビームスプリッタ16を回転、移動させることで制御することができる。合波光A、Bの成す角度は位相整合条件を満たすように制御する。
2つの合波光A、Bは、GaP結晶17の(110)面に重ね合わせて入射させる。(110)面に入射させるのは、他の結晶面よりも効率よくTOフォノンが励起され、効率よくテラヘルツ波を発生させることができるからである。また、合波光A、Bの偏光方向は、一方が[001]軸方向となるように、他方が[1−10]軸方向となるようにする。これは、ラマン選択則から導かれるフォノンの励起効率に優れるからである。いずれの現象もGaP結晶のフォノン−ポラリトンの分散曲線から説明される。
GaP結晶17中では差周波混合によってフォノン−ポラリトンが励起され、第2励起光と第1励起光との差周波数のテラヘルツ波が発生する。図7は、GaP結晶17中における第2励起光、第1励起光、およびテラヘルツ波(フォノン−ポラリトン)の波数ベクトルの関係を示した図である。図7中において、ks は合波光A中の第1励起光の波数ベクトル、kp は合波光B中の第2励起光の波数ベクトル、ks ’は合波光B中の第1励起光の波数ベクトル、kp ’は合波光A中の第2励起光の波数ベクトル、q、q’は発生するテラヘルツ波の波数ベクトルを示している。q=kp −ks 、q’=kp ’−ks ’である。この図7のように、第2励起光の波数ベクトルと第1励起光の波数ベクトルとの差kp −ks 、kp ’−ks ’がテラヘルツ波の波数ベクトルq、q’と一致するときに位相整合条件が満たされる。2本の合波光A、Bを入射させているため、一方の合波光B中の第2励起光と他方の合波光A中の第1励起光によるテラヘルツ波(q=kp −ks 、図7(a)参照)と、一方の合波光A中の第2励起光と他方の合波光B中の第1励起光によるテラヘルツ波(q’=kp ’−ks ’、図7(b)参照)の2波が発生し、GaP結晶17からそれぞれ異なる方向に放射される。すなわち、qとkp との成す角度と、q’とkp ’との成す角度が等しく、kp +kp ’の方向に対して対称的な2方向にテラヘルツ波が出力される。
また、レンズ14によってシグナル光およびポンプ光を同時に集光しているため、GaP結晶17において合波光A、Bのビーム形状はほぼ円形となる。そのため、合波光A、Bを効率的に重ね合わせることができる。
以上のように、実施例2のテラヘルツ波発生装置からは、同時に2方向にテラヘルツ波が発生する。したがって、実施例2のテラヘルツ波発生装置を用いて分光装置を構築すれば、テラヘルツ波を光学部品を用いて分割して参照光を生成する必要がないので、低コストに分光装置を構築することができ、また高精度に分光測定を行うことができる。
実施例2においても、実施例1と同様に、広い波長帯域において、出力されるテラヘルツ波の波長を連続的に変化させることができる。また、出力されるテラヘルツ波の周波数に依存して、偏光ビームスプリッタ16の回転角度や位置を制御して、GaP結晶17に入射させる第1励起光と第2励起光との角度差を制御して、その周波数において位相整合条件が成立するように制御される。なお、上記実施例では非線形光学結晶としてGaP結晶を用いたが、差周波混合によってテラヘルツ波を発生させ、ノンコリニア位相整合により位相整合条件を満たすことができる非線形光学結晶であれば他のものを用いてもよい。たとえば、LiNbO3 結晶などを用いることができる。
本発明のテラヘルツ波発生装置は、分光法などに用いることができる。
51、11:第1励起光源
52、10:第2励起光源
12:無偏光ビームスプリッタ
13:ファイバーアンプ
14:レンズ
15、16:偏光ビームスプリッタ
17:GaP結晶
52、10:第2励起光源
12:無偏光ビームスプリッタ
13:ファイバーアンプ
14:レンズ
15、16:偏光ビームスプリッタ
17:GaP結晶
Claims (7)
- 波長可変のテラヘルツ波を発生させるテラヘルツ波発生装置において、
第1励起光を放射し、この第1励起光の波長が、モードホップがなく連続して可変できる第1波長掃引幅を有した第1励起光源と、
モードホップを有し、前記第1波長掃引幅以下の間隔で、離散的に発振波長を可変設定でき、前記第1励起光との周波数差がテラヘルツ帯域である第2励起光を放射する第2励起光源と、
前記第1励起光と前記第2励起光の成す角度が位相整合角となるよう角度を調整して混合させる角度調整手段と、
2つの前記励起光が位相整合角を成して入射し、差周波混合によってテラヘルツ波を放射する非線形光学結晶と、
を備えたことを特徴とするテラヘルツ波発生装置。 - 波長可変のテラヘルツ波を発生させるテラヘルツ波発生装置において、
第1励起光を放射し、この第1励起光の波長が、モードホップがなく連続して可変できる第1波長掃引幅を有した第1励起光源と、
モードホップを有し、前記第1波長掃引幅以下の間隔で、離散的に発振波長を可変設定でき、前記第1励起光との周波数差がテラヘルツ帯域である第2励起光を放射する第2励起光源と、
前記第1励起光と前記第2励起光とを合波させて合波光を生成する合波手段と、
前記合波光を2つに分割する分割手段と、
前記分割手段により分割された2つの合波光の成す角度が位相整合角となるように角度を調整して混合させる角度調整手段と、
2つの前記合波光が位相整合角を成して入射し、差周波混合によって同時に2方向にテラヘルツ波を放射する非線形光学結晶と、
を備えていることを特徴とするテラヘルツ波発生装置。 - 前記角度調整手段の前段に、前記第1励起光と前記第2励起光とを、それぞれ、増幅する増幅器を有し、
前記角度調整手段は、それぞれの増幅器の出力する第1励起光と第2励起光の角度調整をすることを特徴とする請求項1に記載のテラヘルツ波発生装置。 - 前記テラヘルツ波発生装置は、前記合波光を前記分割手段により分割する前に増幅するファイバーアンプを備えている、
ことを特徴とする請求項2に記載のテラヘルツ波発生装置。 - 前記第1励起光源は、DFBレーザ、又は、DBRを用いた半導体レーザであり、前記第2励起光源は、外部共振器型半導体レーザであることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のテラヘルツ波発生装置。
- 前記テラヘルツ波発生装置は、前記非線形光学結晶においてもっともビーム径が絞られるように調整するレンズを備えている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のテラヘルツ波発生装置。 - 前記非線形光学結晶は、GaP結晶であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のテラヘルツ波発生装置。
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JP2008230919A JP2010066380A (ja) | 2008-09-09 | 2008-09-09 | 波長可変テラヘルツ波発生装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2014196207A1 (ja) * | 2013-06-07 | 2014-12-11 | Nttエレクトロニクス株式会社 | 波長変換光源 |
CN107095673A (zh) * | 2017-05-24 | 2017-08-29 | 西北核技术研究所 | 一种反射式实时肿瘤成像方法及*** |
KR102101921B1 (ko) | 2018-11-08 | 2020-04-21 | 전남대학교산학협력단 | 연속 테라헤르츠파 발생장치 및 방법 |
-
2008
- 2008-09-09 JP JP2008230919A patent/JP2010066380A/ja active Pending
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