JP2010058455A - 延伸フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】
可撓性に優れ、複屈折がほとんど発生しないフィルム、およびその製法を提供する。
【解決手段】
下記条件(i)、(ii)を同時に満足する事を特徴とする、非晶性の熱可塑性樹脂を含む延伸フィルム。および、その製法。
(i)偏向ラマンスペクトル測定における面内配向度Dplが0.3以上3.0以下。
(ii)偏向ラマンスペクトル測定における厚み配向度Dthが0.1以上0.25以下、或いは4以上10以下。
【選択図】なし

Description

本発明は光学部材に適した、延伸することによって可撓性を付与した複屈折の生じない延伸フィルム、およびその製法に関するものである。
液晶表示装置(LCD)などの偏光を扱う画像表示装置に用いる光学部材は、光学的に透明であり、かつ複屈折が小さい他に光学的な均質性が求められている。特に、偏光子を保護するための偏光子保護フィルムや、プラスチック液晶表示装置用のフィルム基板の場合、複屈折と厚みの積で表される位相差が小さいことが要求される。また、光学部材の生産工程では、扱いやすさを高めるため、高い可撓性を求められている。
現在、光学的特性に優れているアクリル系樹脂(アクリル系重合体)を用いた低複屈折フィルムが検討されているが、アクリル系樹脂は一般的に可撓性が低いという欠点があった。そこで、縦横二軸延伸を施すことにより可撓性を向上させる方法が開示されている(特許文献1参照)。
しかし、縦横の延伸倍率が異なる、すなわち縦横の配向度に大きな差がある場合には、裂けやすいフィルムとなり、また、縦横の配向度に大きな差がなくても、縦横の延伸倍率が大きい場合には厚み方向に剥離しやすいフィルムとなる。厚み方向に剥離とは、例えば雲母のように薄く剥がれることである。このように、延伸による可撓性の付与は縦横の延伸バランスによるところが大きい。
特開2005−162835号公報
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、光学用途に適した、低複屈折、高可撓性で、厚み方向への剥離性が低い延伸フィルムを提供せんとするものである。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用する。すなわち、本発明の延伸フィルムは、
(1)下記条件(i)、(ii)を同時に満足する事を特徴とする、非晶性の熱可塑性樹脂を含む延伸フィルム。
(i)偏向ラマンスペクトル測定における面内配向度Dplが0.3以上3.0以下。
(ii)偏向ラマンスペクトル測定における厚み配向度Dthが0.1以上0.25以下、或いは4以上10以下。
(2)波長589nmの光に対する面内位相差Reが10nm以下であることを特徴とする、(1)に記載の延伸フィルム。
(3)波長589nmの光に対するフィルム厚み方向位相差Rthが−10〜+10nmであることを特徴とする、(1)または(2)に記載の延伸フィルム。
(4)非晶性の熱可塑性樹脂がアクリル系重合体であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の延伸フィルム。
(5)前記アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)が110℃以上200℃以下である、(4)に記載のアクリル系延伸フィルム。
(6)前記アクリル系重合体が、環構造を有することを特徴とする、(4)または(5)に記載のアクリル系延伸フィルム。
(7)前記アクリル系重合体が、主鎖に環構造を有することを特徴とする、(4)〜(6)のいずれかに記載のアクリル系延伸フィルム。
(8)前記環構造が、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造、N−置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造から選ばれる少なくとも1種である、(7)に記載のアクリル系延伸フィルム。
(9)前記環構造が、ラクトン環構造である、(7)または(8)に記載のアクリル系延伸フィルム。
(10)フィルム製造開始時点で偏向ラマンスペクトル測定を行って面内配向度Dplと厚み配向度Dthを算出し、その結果を元に下記条件(iii)から(v)のいずれかを調整する、延伸フィルムの製造方法。
(iii)延伸温度
(iv)延伸倍率
(v)ラインスピード
本発明によれば、光学用途に適した、低複屈折、高可撓性で、厚み方向への剥離性が低い延伸フィルムを提供することができるので、例えば、各種カバー、カメラ、VTR、プロジェクションTV等のファインダー、フィルター等に用いることができ、さらに、偏光子保護フィルム等の液晶表示装置用フィルム、各種光ディスク基板保護フィルム等に極めて好適に使用することができる。
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。また、本明細書において「主成分」とは、50重量%以上含有していることが意図される。なお、範囲を示す「a〜b」は、a以上b以下であることを示す。以下に本発明を詳述する。
本発明の延伸フィルムに含まれる熱可塑性樹脂は、非晶性であれば特に限定されることは無いが、シクロオレフィン(共)重合体、セルロース系樹脂、アクリル系重合体であればより好適である。本発明に用いる熱可塑性樹脂の具体例を示す。
(1.シクロオレフィン(共)重合体)
シクロオレフィン(共)重合体は、好ましくはノルボルネン構造をベースとするオレフィン、特にノルボルネン、テトラシクロドデセン、必要に応じて、ビニルノルボルネンまたはノルボルナジエンを含む。また、好ましくは、例えば2〜20個の炭素原子を有するα−オレフィン、特に好ましくはエチレンまたはプロピレンのような末端二重結合を有する非環式オレフィンから誘導される重合単位を含むシクロオレフィン(共)重合体である。特に好ましくは、ノルボルネン・エチレンコポリマーおよびテトラシクロドデセン・エチレンコポリマーである。
(2.セルロース系樹脂)
セルロース系樹脂は、セルロースの水酸基が各種置換基によって置換されているものであれば特に制限されないが、複屈折が生じにくいためにアシル基によって置換されたセルロースアシレートであることが好ましい。さらに、また、置換度が低いと正の複屈折を発現し易く、置換度が高いと負の複屈折を生じ発現し易くなることから、セルロース誘導体の置換度は2.3以上2.9以下であることが好ましい。
このようなセルロースアシレートの具体例としては、セルロースアセテート、セルロールプロピオネート、セルロースブチレートや、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエートのような複数種のアシル基を有するものが挙げられる。
(3.アクリル樹脂)
アクリル樹脂は、主成分として、アクリル酸、メタクリル酸およびその誘導体を重合して得られる樹脂およびその誘導体である。例えば、一般式(1)
Figure 2010058455

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を示す。有機残基とは、具体的には、炭素数1〜20の直鎖状、枝分かれ鎖状、若しくは環状のアルキル基を示す。)で表される構造を有する化合物(単量体)、アクリル酸、メタクリル酸およびその誘導体の好ましい具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシエキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられる。これらのうち1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。中でも、熱安定性に優れる点で(メタ)アクリル酸メチルが最も好ましい。
また、メタクリル系熱可塑性樹脂は、耐熱性の観点より、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドおよびメチルマレイミドなどのN−置換マレイミドが共重合されていてもよいし、分子鎖中(重合体中の主骨格中または主鎖中ともいう)にラクトン環構造、グルタル酸無水物構造およびグルタルイミド構造などが導入されていてもよい。中でも、フィルムの着色(黄変)し難さの点で、窒素原子が含まれない構造が好ましい。また、正の複屈折率(正の位相差)を発現させやすい点で、主鎖にラクトン環構造を有するものが好ましい。主鎖中のラクトン環構造に関しては、4〜8員環でもよいが、構造の安定性から5〜6員環の方がより好ましく、特に6員環が好ましい。このように、主鎖中のラクトン環構造が6員環である場合としては、後述する一般式(2)や、特開2004−168882号公報において表される構造などが挙げられるが、主鎖にラクトン環構造を導入する前の重合体を合成するうえにおいて、重合収率が高い点や、ラクトン環構造の含有割合の高い重合体を高い重合収率で得易い点や、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステルとの共重合性が良い点で、一般式(2)で表される構造であることが好ましい。
また、これらのアクリル樹脂は、耐熱性を損なわない範囲で共重合可能なその他の単量体成分を共重合した単位を有していても良い。共重合可能なその他の単量体成分としては、具体的にはスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル等のニトリル系単量体、酢酸ビニル等のビニルエステル類等があげられる。以上のアクリル樹脂の重量平均分子量は、50,000以上2,000,000以下の範囲内であれば、厚みムラを最小限にする発明の効果を発揮できるが、好ましくは70,000以上1,000,000以下の範囲内、より好ましくは90,000以上500,000以下の範囲内である。
上記アクリル樹脂を製造する方法としては、公知の方法を用いて(メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体組成物を重合すればよい。重合温度、重合時間は、使用する単量体(単量体組成物)の種類、使用比率等によって異なるが、好ましくは、重合温度が0℃以上150℃以下の範囲内、重合時間が0.5時間以上20時間以下の範囲内であり、より好ましくは、重合温度が80℃以上140℃以下の範囲内、重合時間が1時間以上10時間以下の範囲内である。溶剤を用いた重合形態の場合、重合溶剤は特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;などが挙げられ、これらの1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。後述するラクトン環含有重合体を製造する場合は、使用する溶剤の沸点が高すぎると、最終的に得られるラクトン環含有重合体の残存揮発分が多くなることから、沸点が50℃以上200℃以下の範囲内のものが好ましい。
重合反応時には、必要に応じて、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;などが挙げられ、これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、用いる単量体の組み合わせや反応条件などに応じて適宜設定すればよい。
重合を行う際には、反応液のゲル化を抑止するために、重合反応混合物中の生成した重合体の濃度が50重量%以下となるように制御することが好ましい。具体的には、重合反応混合物中の生成した重合体の濃度が50重量%を超える場合には、重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加して50重量%以下となるように制御することが好ましい。重合反応混合物中の生成した重合体の濃度は、より好ましくは45重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下である。なお、重合反応混合物中の重合体の濃度があまりに低すぎると生産性が低下するため、重合反応混合物中の重合体の濃度は、10重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましい。
重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加する形態としては、特に限定されず、連続的に重合溶剤を添加してもよいし、間欠的に重合溶剤を添加してもよい。このように重合反応混合物中の生成した重合体の濃度を制御することによって、反応液のゲル化をより十分に抑止することができ、特に、ラクトン環含有割合を増やして耐熱性を向上させるために分子鎖中の水酸基およびエステル基の割合を高めた場合であってもゲル化を十分に抑制できる。
添加する重合溶剤としては、重合反応の初期仕込み時に用いた溶剤と同じ種類の溶剤であってもよいし、異なる種類の溶剤であってもよいが、重合反応の初期仕込み時に用いた溶剤と同じ種類の溶剤を用いることが好ましい。また、添加する重合溶剤は、1種のみの溶剤であってもよいし、2種以上の混合溶剤であってもよい。上記重合反応を終了した時点で得られる重合反応混合物中には、通常、得られた重合体以外に溶剤が含まれている。上記重合体を、以下に詳述するラクトン環含有重合体とする場合では、溶剤を完全に除去して重合体を固体状態で取り出す必要はなく、溶剤を含んだ状態で、その後に続くラクトン環化縮合工程を行うことが好ましい。また、必要な場合は、固体状態で取り出した後に、続くラクトン環化縮合工程に好適な溶剤を再添加してもよい。
重合反応によって得られたアクリル樹脂の色相は特に問わないが、透明であり黄変度が小さい方がアクリル樹脂の本来の特徴を損なわない為、好適である。上記アクリル樹脂は例えば3mm厚の成形体とした場合のヘイズ値が3以下、更に好ましくは2以下、最も好ましくは1以下である。また該成形体のYI(イエローインデックス)値が、10以下、好ましくは5以下である。
(ラクトン環含有重合体)
上記アクリル樹脂としては、透明性、耐熱性、光学等方性がいずれも高く、各種光学用途に応じた特性を十分に発揮できるため、(メタ)アクリル酸エステルの共重合体に、分子内環化反応によりラクトン環構造を導入した、いわゆるラクトン環含有重合体を含むことが好ましく、主成分とすることが特に好ましい。ラクトン環含有重合体としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、下記一般式(2)で表されるラクトン環構造を有する。
Figure 2010058455

(式中、R3、R4、R5は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいても良い。)
ラクトン環含有重合体構造中の、一般式(2)で表されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5重量%以上90重量%以下、より好ましくは10重量%以上70重量%以下、さらに好ましくは10重量%以上60重量%以下、特に好ましくは10重量%以上50重量%以下である。上記含有割合が5重量%よりも少ないと、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が不十分になることがあり、好ましくない。また、上記含有割合が90重量%よりも多いと、成形加工性に乏しくなることがあり、好ましくない。
ラクトン環含有重合体は、一般式(2)で表されるラクトン環構造以外の構造を有していてもよい。一般式(2)で表されるラクトン環構造以外の構造としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、下記一般式(3)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)が好ましい。
Figure 2010058455

(式中、R6は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R7基、または−C−O−R8基を表し、Ac基はアセチル基を表し、R7およびR8は水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。) 特に、ラクトン環含有重合体に本発明を用いると、破断、ひび割れ、表面ムラ、スジなどの不具合が発生せず、均一物性である耐熱アクリル樹脂製の光学フィルムが得られる。
ラクトン環含有重合体において、一般式(2)で表されるラクトン環構造以外の構造の含有割合は、(メタ)アクリル酸エステルを重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは10重量%以上95重量%以下の範囲内、より好ましくは10重量%以上90重量%以下の範囲内、さらに好ましくは40重量%以上90重量%以下の範囲内、特に好ましくは50重量%以上90重量%以下の範囲内である。
また、水酸基含有単量体を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、一般式(2)で表されるラクトン環構造以外の構造の含有割合は、好ましくは0重量%以上30重量%以下の範囲内、より好ましくは0重量%以上20重量%以下の範囲内、さらに好ましくは0重量%以上15重量%以下の範囲内、特に好ましくは0重量%以上10重量%以下の範囲内である。また、不飽和カルボン酸を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、一般式(2)で表されるラクトン環構造以外の構造の含有割合は、好ましくは0重量%以上30重量%以下の範囲内、より好ましくは0重量%以上20重量%以下の範囲内、さらに好ましくは0重量%以上15重量%以下の範囲内、特に好ましくは0重量%以上10重量%以下の範囲内である。
また、一般式(3)で表される単量体を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、一般式(2)で表されるラクトン環構造以外の構造の含有割合は、好ましくは0重量%以上30重量%以下の範囲内、より好ましくは0重量%以上20重量%以下の範囲内、さらに好ましくは0重量%以上15重量%以下の範囲内、特に好ましくは0重量%以上10重量%以下の範囲内である。
ラクトン環含有重合体の製造方法は特に限定されるものではないが、好ましくは、重合工程によって分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得た後に、当該重合体を加熱処理することによりラクトン環構造を重合体に導入するラクトン環縮合反応を行うことによって得ることができる。
ラクトン環構造が重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中)に形成されることにより、重合体に高い耐熱性が付与される。ラクトン環構造を導く環化縮合反応の反応率が不十分であると、耐熱性が十分に向上しなかったり、成形時の加熱処理によって成形途中に縮合反応が起こり、生じたアルコールが成形品中に泡やシルバーストリークとなって存在する恐れがあるため好ましくない。
上記重合体をラクトン環縮合反応を行うために加熱処理する方法については、例えば、重合工程によって得られた、溶剤を含む重合反応混合物を、そのまま加熱処理してもよい。また、溶剤の存在下で、必要に応じて閉環触媒を用いて加熱処理してもよい。また、揮発成分を除去するための真空装置あるいは脱揮装置を持つ加熱炉や反応装置、脱揮装置のある押出機等を用いて加熱処理を行うこともできる。
環化縮合反応を行う際に、上記重合体に加えて、他のアクリル樹脂を共存させてもよい。また、環化縮合反応を行う際には、必要に応じて、環化縮合反応の触媒として一般に用いられるp−トルエンスルホン酸等のエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いてもよいし、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸等の有機カルボン酸類を触媒として用いてもよい。特開昭61−254608号公報や特開昭61−261303号公報に示されている様に、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩などを用いてもよい。
環化縮合反応を行う際には、有機リン化合物を触媒として用いることが好ましい。触媒として有機リン化合物を用いることにより、環化縮合反応率を向上させることができるとともに、得られるラクトン環含有重合体の着色を大幅に低減することができる。さらに、有機リン化合物を触媒として用いることにより、後述の脱揮工程を併用する場合において起こり得る分子量低下を抑制することができ、優れた機械的強度を付与することができる。
環化縮合反応の際に触媒として用いることができる有機リン化合物としては、例えば、メチル亜ホスホン酸、エチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸等のアルキル(アリール)亜ホスホン酸(但し、これらは、互変異性体であるアルキル(アリール)ホスフィン酸になっていてもよい)およびこれらのジエステルあるいはモノエステル;ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、フェニルエチルホスフィン酸等のジアルキル(アリール)ホスフィン酸およびこれらのエステル;メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、トリフルオルメチルホスホン酸、フェニルホスホン酸等のアルキル(アリール)ホスホン酸およびこれらのジエステルあるいはモノエステル;メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸等のアルキル(アリール)亜ホスフィン酸およびこれらのエステル;亜リン酸メチル、亜リン酸エチル、亜リン酸フェニル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸ジエステルあるいはモノエステルあるいはトリエステル;リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸イソデシル、リン酸ラウリル、リン酸ステアリル、リン酸イソステアリル、リン酸フェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジ−2−エチルヘキシル、リン酸ジイソデシル、リン酸ジラウリル、リン酸ジステアリル、リン酸ジイソステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリイソデシル、リン酸トリラウリル、リン酸トリステアリル、リン酸トリイソステアリル、リン酸トリフェニル等のリン酸ジエステルあるいはモノエステルあるいはトリエステル;メチルホスフィン、エチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のモノ、ジ若しくはトリアルキル(アリール)ホスフィン;メチルジクロロホスフィン、エチルジクロロホスフィン、フェニルジクロロホスフィン、ジメチルクロロホスフィン、ジエチルクロロホスフィン、ジフェニルクロロホスフィン等のアルキル(アリール)ハロゲンホスフィン;酸化メチルホスフィン、酸化エチルホスフィン、酸化フェニルホスフィン、酸化ジメチルホスフィン、酸化ジエチルホスフィン、酸化ジフェニルホスフィン、酸化トリメチルホスフィン、酸化トリエチルホスフィン、酸化トリフェニルホスフィン等の酸化モノ、ジ若しくはトリアルキル(アリール)ホスフィン;塩化テトラメチルホスホニウム、塩化テトラエチルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム等のハロゲン化テトラアルキル(アリール)ホスホニウム;などが挙げられる。これらの中でも、触媒活性が高くて低着色性のため、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸ジエステルあるいはモノエステル、リン酸ジエステルあるいはモノエステル、アルキル(アリール)ホスホン酸が好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸ジエステルあるいはモノエステル、リン酸ジエステルあるいはモノエステルがより好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、リン酸ジエステルあるいはモノエステルが特に好ましい。これら有機リン化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
環化縮合反応の際に用いる触媒の使用量は、特に限定されないが、上記重合体に対して、好ましくは0.001〜5重量%の範囲内、より好ましくは0.01〜2.5重量%の範囲内、さらに好ましくは0.01〜1重量%の範囲内、特に好ましくは0.05〜0.5重量%の範囲内である。触媒の使用量が0.001重量%未満であると、環化縮合反応の反応率の向上が十分に図れないおそれがあり、一方、5重量%を超えると、着色の原因となったり、重合体の架橋により溶融賦形しにくくなることがあるため、好ましくない。触媒の添加時期は特に限定されず、反応初期に添加しても、反応途中に添加しても、それらの両方で添加してもよい。
環化縮合反応を溶剤の存在下で行い、且つ、環化縮合反応の際に、脱揮工程を併用することが好ましい。この場合、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態、および、脱揮工程を環化縮合反応の過程全体にわたっては併用せずに過程の一部においてのみ併用する形態が挙げられる。脱揮工程を併用する方法では、縮合環化反応で副生するアルコールを強制的に脱揮させて除去するので、反応の平衡が生成側に有利となる。
次に、本発明の延伸フィルムの具体的製法を示す。
フィルムを成形する方法としては、従来公知の任意の方法が可能である。例えば、溶液キャスト法(溶液流延法)及び溶融押出法等などが挙げられ、そのいずれをも採用することができる。例えば溶液キャスト法(溶液流延法)を用いてフィルムを得ようとする場合は、主成分である熱可塑性樹脂と、必要によりその他の重合体やその他の添加剤などを良溶媒中に撹拌混合して均一混合液とし、支持フィルムやドラムにキャストして自己支持性を有するまで予備乾燥した後、支持フィルムやドラムから剥がして乾燥すると得ることができる。 溶液キャスト法(溶液流延法)に用いられる溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタンなどの塩素系溶媒;トルエン、キシレン、ベンゼン、およびこれらの混合溶媒などの芳香族系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノールなどのアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ジオキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル;などが挙げられる。これら溶媒は1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
溶液キャスト法(溶液流延法)を行うための装置としては、例えば、ドラム式キャステ
ィングマシン、ベルト式キャスティングマシン、スピンコーターなどが挙げられる。
溶融押出法はT型ダイス等を装着した押出機、或いはインフレーション法によって、熱可塑性樹脂、或いは、必要によりその他の重合体やその他の添加剤などを予め混練した熱可塑性樹脂を加熱溶融にて押し出し、得られるフィルムを引き取ることにより任意の厚みを持つフィルムとすることができる。
本発明に係る延伸フィルムを得るための延伸方法としては、従来公知の延伸方法が適用できる。例えば、自由幅一軸延伸、定幅一軸延伸等の一軸延伸;逐次二軸延伸、同時二軸延伸等の二軸延伸;フィルムの延伸時にその片面又は両面に収縮性フィルムを接着して積層体を形成し、その積層体を加熱延伸処理してフィルムに延伸方向と直交する方向の収縮力を付与することにより、延伸方向と厚さ方向とにそれぞれ配向した分子群が混在する複屈折性フィルムを得る延伸等が挙げられる。耐折り曲げ性が向上する点で、二軸延伸が好ましい。さらに、フィルム面内の任意の直交する二方向に対する耐折れ曲げ性が向上するという点で、同時二軸延伸が好ましい。
延伸等を行う装置としては、例えば、ロール延伸機、オーブン型延伸機、テンター型延伸機、小型の実験用延伸装置として引張試験機、一軸延伸機、逐次二軸延伸機、同時二軸延伸機等が挙げられ、これら何れの装置を用いても本発明に係る位相差フィルムを得ることができるが、フィルムの流れ方向(X方向)と幅方向(Y方向)に逐次二軸延伸を行う場合にはロール延伸機、或いはオーブン型縦延伸機とテンター型延伸機の組み合わせで行うことが望ましいが、同時二軸延伸機を用いてフィルムの流れ方向(X方向)と幅方向(Y方向)に同時に延伸を行っても良い。
本発明の延伸フィルムの厚みは特に限定されるものではない。これは、測定にラマンスペクトルを用いるためであり、測定焦点の大きさ、及びフィルム内部のどの深度に対してもピントを合わせることができるという特性によるものであり、2μm以上10mm(1cm)以下であれば問題なく使用できる。また、積層フィルムであっても各層の厚みが2μm以上であれば、任意の層の配向度を測定することができる。ただし、フィルムとしてのハンドリング性を考慮すると5μm以上500μm以下が好適である。さらに好ましくは10μm以上100μm以下である。
本発明の延伸フィルムは、少なくとも下記条件(i)、(ii)を同時に満足する、非晶性の熱可塑性樹脂を含む延伸フィルムである。
(i)偏向ラマンスペクトル測定における面内配向度Dplが0.3以上3.0以下。
(ii)偏向ラマンスペクトル測定における厚み配向度Dthが0.1以上0.25以下、或いは4.0以上10.0以下。
次に、本発明の面内配向度Dpl、及び厚み配向度Dthの評価方法を詳述する。評価方法は以下の手順に従って進める。
〔1〕延伸フィルムのラマンスペクトルを偏光フィルタを用いずに測定し、フィルムを構成する樹脂の主鎖に対して平行、或いは垂直な方向を向く置換基に帰属されるピークを1つ選択する(Pとする。)。同じく主鎖に対して向きを特定できない置換基に帰属されるピークを1つ選択する(Pとする)。
〔2〕フィルムの流れ方向をX方向、フィルムの幅方向をY方向、フィルムの厚み方向をZ方向とし、XY平面のX方向の偏光ラマンスペクトルを測定し、Pに対応するピークの強度(SXY)とPに対応するピークの強度(SXY)の比(SXY/SXY)を算出し、SXYXとする。なお、カットフィルムなどのように流れ方向と幅方向が明確ではない場合、XY平面内の偏光ラマンスペクトルを10°毎に面内回転させ、0°〜170°の範囲でそれぞれ同様に測定し、Pが最も大きく測定される方向をX方向、Pが最も小さく測定される方向をY方向とする。また、Pに差が見られない場合は任意の方向をX方向とY方向に定める。
〔3〕同様にXY平面のY方向の偏光ラマンスペクトルを測定し、Pに対応するピークの強度(SXY)とPに対応するピークの強度(SXY)の比(SXY/SXY)を算出し、SXYYとする。
〔4〕(SXYX/SXYY)を面内配向度Dplとする。
〔5〕XZ平面のX方向の偏光ラマンスペクトルを測定し、Pに対応するピークの強度(SXZ)とPに対応するピークの強度(SXZ)の比(SXZ/SXZ)を算出し、SXZXとする。
〔6〕XZ平面のZ方向の偏光ラマンスペクトルを測定し、Pに対応するピークの強度(SXZ)とPに対応するピークの強度(SXZ)の比(SXZ/SXZ)を算出し、SXZZとする。
〔6〕YZ平面のY方向の偏光ラマンスペクトルを測定し、Pに対応するピークの強度(SYZ)とPに対応するピークの強度(SYZ)の比(SYZ/SYZ)を算出し、SYZYとする。
〔7〕YZ平面のZ方向の偏光ラマンスペクトルを測定し、Pに対応するピークの強度(SYZ)とPに対応するピークの強度(SYZ)の比(SYZ/SYZ)を算出し、SYZZとする。
〔8〕{(SXZX×SYZY)1/2}/{(SXZZ×SYZZ)1/2}を厚み配向度Dthとする。
延伸フィルムを構成する樹脂の配向度がX方向、Y方向で等しい場合、面内配向度Dplは1となる。
面内配向度Dplが1よりも小さい場合、Pを樹脂の主鎖に対して平行な方向を向く置換基に帰属されるピークとするとY方向に配向しており、逆に垂直な方向を向く置換基に帰属されるピークとするとX方向に配向している。また、面内配向度Dplが1よりも大きい場合、Pを樹脂の主鎖に対して平行な方向を向く置換基に帰属されるピークとするとX方向に配向しており、逆に垂直な方向を向く置換基に帰属されるピークとするとはY方向に配向している。
なお、面内配向度Dplは0より大きい値となる。
面内配向度Dplが0.3より小さい、または3.0より大きい場合には、縦横の延伸倍率のバランスが取れておらず、裂けやすいフィルム、及び/又は縦横で異方性を示すフィルムとなる。好ましくは0.6以上2以下であり、さらに好ましくは0.8以上1.2以下である。
延伸フィルムを構成する樹脂が配向していない、或いは樹脂の配向度がX方向、Y方向、Z方向で等しい場合、或いはX方向とY方向の樹脂の配向度の平均とZ方向の配向度が等しい場合、厚み配向度Dthは1となる。
厚み配向度Dthが1よりも小さい場合、Pを樹脂の主鎖に対して平行な方向を向く置換基に帰属されるピークとするとZ方向に配向しており、逆に垂直な方向を向く置換基に帰属されるピークとするとXY平面方向の延伸倍率(面倍率)が高い。また、厚み配向度Dthが1よりも大きい場合、Pを樹脂の主鎖に対して平行な方向を向く置換基に帰属されるピークとするとXY平面方向の延伸倍率(面倍率)が高く、逆に垂直な方向を向く置換基に帰属されるピークとするとZ方向に配向している。
なお、厚み配向度Dthも0より大きい値となる。
厚み配向度Dthが0.25より大きく4.0より小さい場合には、延伸による可撓性を向上させる効果が小さく、脆いフィルムとなる。また、0.1より小さい、または10.0より大きい場合には、面配向が強すぎて厚み方向に剥離しやすいフィルムとなる。好ましくは0.11以上0.2以下、或いは5以上9以下であり、さらに好ましくは0.13以上0.17以下、或いは6以上8以下である。
また、得られた延伸フィルムの面内配向度Dplが0.3より小さい、或いは3.0より大きい場合には、X方向とY方向の延伸バランスを合わせるために、延伸温度、および/または延伸倍率を変更してやればよく、連続製膜装置であればラインスピードを変更しても同じ効果が得られる。
さらに、得られた延伸フィルムの厚み配向度Dthが0.25より大きく4より小さい場合には、延伸が足りないためであるから延伸温度、および/または延伸倍率を変更して面倍率を上げてやればよい。また、連続製膜装置であればラインスピードを下げても同様の効果が得られる。厚み配向度Dthが0.1より小さい、或いは10より大きい場合には、延伸しすぎているためであるから、延伸温度、および/または延伸倍率を変更して面倍率を下げてやればよい。また、連続製膜装置であればラインスピードを上げても同様の効果が得られる。
次に、フィルム物性の測定方法について示す。
本発明における物性の測定は以下の方法で行う。実施例及び比較例においても、同様の方法で行った。
<ガラス転移温度>
ガラス転移温度には各種の測定方法があるが、本明細書においては示差走査熱量計(DSC)によってASTM−D−3418に従って中点法で求めた温度と定義する。
<フィルムの厚さ>
デジマチックマイクロメーター((株)ミツトヨ製)を用いて測定した。
<位相差>
波長589nmにおける、フィルムの面内位相差値(Re)及び厚み方向位相差値(Rth)は、王子計測器社製KOBRA−WRを用いて測定した。なお、厚み方向位相差値(Rth)はアッベ屈折率計で測定したフィルムの平均屈折率、膜厚d、傾斜中心軸として遅相軸、入射角を40°と入力し、面内位相差値(Re)及び厚さ方向位相差値(Rth)、遅相軸を傾斜軸として40°傾斜させて測定した位相差値(Re(40°))、三次元屈折率nx、ny、nzの値を得た後、下記式から求めた。
厚み方向位相差Rth(nm)=d×{(nx+ny)/2−nz}
<折り曲げ試験>
フィルムの折り曲げ試験は、フィルムを延伸した方向および延伸した方向と垂直の方向の二方向でそれぞれ試験を行った。二軸延伸したフィルムの場合は、直交する二つの延伸方向で試験を行った。25℃、65%RHの雰囲気下、折り曲げ半径1mmにおいて180°折り曲げた際、二方向ともクラックを生じない状態を「○」、一方向のみクラックを生じる状態を「△」、二方向両方でクラックが生じる状態を「×」として評価した。
以下に、本発明を実施例によってさらに詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
[製造例1]
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した1m2の反応釜に、204kgのメタクリル酸メチル(MMA)、51kgの2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、249kgのトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温し、還流したところで、重合開始剤として281gのターシャリーアミルパーオキシイソノナノエート(アトフィナ吉富製、商品名:ルペロックス570)を添加すると同時に、561gの重合開始剤と5.4kgのトルエンからなる溶液を2時間かけて滴下しながら、還流下(約105〜110℃)で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。
得られた重合体溶液に、255gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物(堺化学製、商品名:Phoslex A−18)を加え、還流下(約90〜110℃)で5時間、環化縮合反応を行った。
次いで、上記環化縮合反応で得られた重合体溶液を、バレル温度250℃、回転数150rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出し機(Φ=42mm、L/D=42)に、樹脂量換算で15kg/時間の処理速度で導入し、該押出し機内で環化縮合反応と脱揮を行い、押出すことにより、透明なペレットを得た。
次いでΦ50mm、多条フライト構造のミキシング部を有するフルフライト型スクリューからなるL/D=36の単軸押出し機を用い、耐熱アクリル樹脂ペレット90部、AS樹脂(旭化成ケミカルズ社製スタイラックAS783)10部および酢酸亜鉛0.04部をシリンダ設定温度270℃にて50kg/時間の処理速度で溶融押出しをおこない、樹脂ペレット(1A)を作成した。得られた樹脂ペレット(1A)の質量平均分子量は132000、ラクトン環含有割合は28.5%であり、ガラス転移温度は125℃であった。
(実施例1)
製造例1で得られた樹脂ペレット(1A)を、温度270℃で溶融押出して、厚み180μmの未延伸フィルムを成膜し、次いで、温度130℃まで加熱して縦方向に1.9倍に延伸を行った。さらにそのまま、フィルムの両端部から20mmの位置を2インチのクリップで掴みテンターへ供給し、145℃まで加熱して2.2倍の延伸を行い、平均膜厚45μmの延伸フィルム(1AF−1)を得た。
得られた延伸フィルム(1AF−1)について日本分光株式会社製Laser Raman Spectrophotometer JASCO NRS−3100を用いてラマンスペクトルを測定し、面内配向度Dpl、及び厚み配向度Dthを算出した。測定、算出は以下の手順で行った。
(1)フィルムの流れ方向をX方向、フィルムの幅方向をY方向、フィルムの厚み方向をZ方向とし、X方向、Y方向ともに10mmずつ正方形の測定サンプルを正確に切り出した。切り出したサンプルは、サンプルホルダーにXY平面を測定できるように軸をそろえてセットした。
(2)偏光フィルタを用いずにラマンスペクトル測定を行った。得られたラマンスペクトルのピークの帰属を行った。主鎖に対して垂直な方向を向く置換基に帰属されるピーク(P)として2960cm−1のピーク(C−H伸縮)、主鎖に対して向きを特定できない置換基に帰属されるピーク(P)として1460cm−1のピーク(CH変角)を選択した。
(3)XY平面のX方向の偏光ラマンスペクトルを測定し、Pに対応するピークの強度(SXY)とPに対応するピークの強度(SXY)の比(SXYX)を算出したところ、5.64であった。なお、SXYX=SXY/SXYである。
(4)XY平面のY方向の偏光ラマンスペクトルを測定し、Pに対応するピークの強度(SXY)とPに対応するピークの強度(SXY)の比(SXYY)を算出したところ、4.58であった。なお、SXYY=SXY/SXYである。
(5)面内配向度Dpl=(SXYX/SXYY)=1.23であった。
(6)サンプルホルダーに切り出したサンプルのXZ平面(切断面)を測定できるように軸をそろえてセットし、XZ平面のX方向の偏光ラマンスペクトルを測定した。Pに対応するピークの強度(SXZ)とPに対応するピークの強度(SXZ)の比(SXZX)を算出したところ、0.95であった。なお、SXZX=SXZ/SXZである。
(7)同じくXZ平面のZ方向の偏光ラマンスペクトルを測定し、Pに対応するピークの強度(SXZ)とPに対応するピークの強度(SXZ)の比(SXZZ)を算出したところ、6.10であった。なお、SXZZ=SXZ/SXZである。
(8)サンプルホルダーに切り出したサンプルのYZ平面(切断面)を測定できるように軸をそろえてセットし、YZ平面のY方向の偏光ラマンスペクトルを測定した。Pに対応するピークの強度(SYZ)とPに対応するピークの強度(SYZ)の比(SYZY)を算出したところ、0.93であった。なお、SYZY=SYZ/SYZである。
(9)同じくYZ平面のZ方向の偏光ラマンスペクトルを測定し、Pに対応するピークの強度(SYZ)とPに対応するピークの強度(SYZ)の比(SYZZ)を算出したところ、5.71であった。なお、SYZZ=SYZ/SYZである。
(10)厚み配向度Dth={(SXZX×SYZY)1/2}/{(SXZZ×SYZZ)1/2}=0.16であった。
得られた延伸フィルム(1AF−1)の特性は次の通りであり、可撓性に優れた延伸フィルムであった。
面内位相差Re(nm) :1.6
厚み方向位相差Rth(nm) :0.9
折り曲げ試験 :○
面内配向度Dpl :1.23
厚み配向度Dth :0.16
(実施例2)
製造例1で得られた樹脂ペレット(1A)を、温度270℃で溶融押出して、厚み180μmの未延伸フィルムを成膜し、平均膜厚180μmの未延伸フィルムを得た。次に、得られた未延伸フィルムから、流れ方向(X方向)、幅方向(Y方向)ともに98mmの正方形の未延伸フィルムサンプルを正確に切り出した。
切り出した未延伸フィルムサンプルを二軸延伸装置(東洋精機製作所製TYPE EX4)により逐次二軸延伸して、平均膜厚60μmの延伸フィルム(1AF−2)を得た。なお、一段目の延伸はX方向に延伸温度150℃、延伸倍率1.5倍、延伸速度1000%/分で行い、二段目の延伸はY方向に延伸温度150℃、延伸倍率1.5倍、延伸速度1000%/分で行った。
得られた延伸フィルム(1AF−2)の特性は次の通りであり、可撓性に優れた延伸フィルムであった。
面内位相差Re(nm) :0.8
厚み方向位相差Rth(nm) :3.1
折り曲げ試験 :○
面内配向度Dpl :1.18
厚み配向度Dth :0.22
(比較例1)
テンターでの延伸条件を2.4倍に変更した以外は実施例1と同様の方法で延伸フィルム(1AF−3)を得た。得られた延伸フィルム(1AF−3)の特性は次の通りであり、Y方向に裂け易い延伸フィルムであった。
面内位相差Re(nm) :1.5
厚み方向位相差Rth(nm) :1.8
折り曲げ試験 :△
面内配向度Dpl :3.72
厚み配向度Dth :0.13
(実施例3)
比較例1の結果を受けて、テンターの延伸温度を5℃上げて150℃として延伸フィルム(1AF−4)を得た。得られた延伸フィルム(1AF−4)の特性は次の通りであり、延伸条件の変更で可撓性に優れた延伸フィルムを得ることができた。
面内位相差Re(nm) :2.0
厚み方向位相差Rth(nm) :1.3
折り曲げ試験 :○
面内配向度Dpl :2.23
厚み配向度Dth :0.14
(比較例2)
延伸倍率を一段目、二段目ともに1.2倍に変更した以外は実施例2と同様の方法で延伸フィルム(1AF−5)を得た。得られた延伸フィルム(1AF−5)の特性は次の通りであり、可撓性に劣る延伸フィルムであった。
面内位相差Re(nm) :0.0
厚み方向位相差Rth(nm) :0.3
折り曲げ試験 :×
面内配向度Dpl :1.11
厚み配向度Dth :0.74
(比較例3)
延伸倍率を一段目、二段目ともに3.5倍に変更した以外は実施例2と同様の方法で延伸フィルム(1AF−6)を得た。得られた延伸フィルム(1AF−6)の特性は次の通りであり、可撓性に優れた延伸フィルムであったが厚み方向に剥がれやすいフィルムであった。
面内位相差Re(nm) :1.9
厚み方向位相差Rth(nm) :1.6
折り曲げ試験 :○
面内配向度Dpl :1.11
厚み配向度Dth :0.09
実施例、比較例のデータを表1に纏めた。
Figure 2010058455
本発明の延伸フィルム、および/またはその製法は、液晶表示装置などのフラットパネル表示装置に用いられる、保護フィルム、反射防止フィルム、位相差フィルム、偏光フィルム等の各種光学用フィルムのように可撓性に優れ、複屈折がほとんど発生しないフィルム用途に好適に用いることができる。

Claims (10)

  1. 下記条件(i)、(ii)を同時に満足する事を特徴とする、非晶性の熱可塑性樹脂を含む延伸フィルム。
    (i)偏向ラマンスペクトル測定における面内配向度Dplが0.3以上3.0以下。
    (ii)偏向ラマンスペクトル測定における厚み配向度Dthが0.1以上0.25以下、或いは4以上10以下。
  2. 波長589nmの光に対する面内位相差Reが10nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の延伸フィルム。
  3. 波長589nmの光に対するフィルム厚み方向位相差Rthが−10〜+10nmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の延伸フィルム。
  4. 非晶性の熱可塑性樹脂がアクリル系重合体であることを特徴とする、請求項1〜
    3のいずれかに記載の延伸フィルム。
  5. 前記アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)が110℃以上200℃以下である、請求項4に記載のアクリル系延伸フィルム。
  6. 前記アクリル系重合体が、環構造を有することを特徴とする、請求項4または5に記載のアクリル系延伸フィルム。
  7. 前記アクリル系重合体が、主鎖に環構造を有することを特徴とする、請求項4〜6のいずれかに記載のアクリル系延伸フィルム。
  8. 前記環構造が、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造、N−置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造から選ばれる少なくとも1種である、請求項7に記載のアクリル系延伸フィルム。
  9. 前記環構造が、ラクトン環構造である、請求項7または8に記載のアクリル系延伸フィルム。
  10. フィルム製造開始時点で偏向ラマンスペクトル測定を行って面内配向度Dplと厚み配向度Dthを算出し、その結果を元に下記条件(iii)から(v)のいずれかを調整する、延伸フィルムの製造方法。
    (iii)延伸温度
    (iv)延伸倍率
    (v)ラインスピード
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