JP2010048116A - 筒内噴射式の内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】筒内噴射式の内燃機関において出力向上を図る。
【解決手段】エンジン10は、燃焼室23内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁39を備える。ECU40は、均質燃焼を実施する際の1燃焼サイクルごとの燃料噴射期間にて、燃料噴射弁39を制御することにより複数回の燃料噴射を実施する。また、ECU40は、複数回の燃料噴射のうち先噴射による筒内充填空気量の増加分に応じて後噴射の燃料量を算出し、その算出した燃料量を、燃料噴射期間において先噴射の後に燃料噴射弁39から噴射させる。
【選択図】図1
【解決手段】エンジン10は、燃焼室23内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁39を備える。ECU40は、均質燃焼を実施する際の1燃焼サイクルごとの燃料噴射期間にて、燃料噴射弁39を制御することにより複数回の燃料噴射を実施する。また、ECU40は、複数回の燃料噴射のうち先噴射による筒内充填空気量の増加分に応じて後噴射の燃料量を算出し、その算出した燃料量を、燃料噴射期間において先噴射の後に燃料噴射弁39から噴射させる。
【選択図】図1
Description
本発明は、筒内噴射式の内燃機関の燃料噴射制御装置に関するものであり、詳しくは、燃料噴射弁から複数回の燃料噴射を実施して均質燃焼を行う筒内噴射式の内燃機関の燃料噴射制御装置に関するものである。
気筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射式の内燃機関では、主に吸気行程で燃料噴射することにより燃料と空気との均一な混合気を形成して燃焼を行わせる均質燃焼と、圧縮行程で燃料噴射することにより燃料の濃い層と薄い層とを形成して燃焼を行わせる成層燃焼とが、内燃機関の運転状態等に応じて実施される。このうち、均質燃焼については、出力向上とスモーク悪化の抑制とを図るために、燃料の霧化拡散を十分に行うことで燃料の気化を促進し、その気化した燃料と空気とを十分に混合させる必要がある。そこで、均質燃焼を実施する運転領域において燃料を効率的に霧化拡散させて混合気の均質度を向上させるために、吸気行程で複数回の燃料噴射を行うことが提案されている(例えば特許文献1や特許文献2参照)。
例えば特許文献1には、吸気行程の前半にて必要燃料量の半分を噴射し、残り半分の燃料量を吸気行程の末期で噴射することが開示されている。また、特許文献2には、燃料を、吸気の充填効率が最大となる時期と混合気の均一度が最適となる時期とに分割して噴射するとともに、先の燃料噴射での噴射量を後の燃料噴射での噴射量よりも多くすることが開示されている。
特開平7−119507号公報
特開平11−101146号公報
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2では、先の噴射燃料と吸気の充填効率との関係については考慮されていない。すなわち、筒内噴射式の内燃機関では、燃料を直接燃焼室に噴射するため、その噴射燃料の気化潜熱により筒内の空気が冷却されて吸気の充填効率が向上する。また、気化潜熱については、噴射燃料の量に応じて異なる。そのため、吸気行程で燃料を分割噴射した場合、先の燃料噴射量に応じて吸気の充填効率が異なり、それに伴い空燃比のリーン度合いが異なることが考えられる。したがって、上記特許文献1及び特許文献2のように、先の噴射燃料による吸気の充填効率を考慮しない構成では、内燃機関の気筒内に充填される空気量(筒内充填空気量)に対応する燃料量が不足し、その結果、目標空燃比(例えば理論空燃比)で燃焼が実施されず、出力の低下等を招くことが懸念される。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、筒内噴射式の内燃機関において出力向上を図ることができる内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することを主たる目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
本発明は、燃料を直接気筒内に噴射する燃料噴射弁を備え、前記燃料噴射弁からの噴射燃料により均質燃焼が実施される筒内噴射式の内燃機関に適用され、前記均質燃焼を実施する際の1燃焼サイクルごとの燃料噴射期間にて複数回の燃料噴射を実施する内燃機関の燃料噴射制御装置に関する。請求項1に記載の発明は、前記複数回の燃料噴射のうち先の燃料噴射である先噴射による筒内充填空気量の増加分に応じて、前記先噴射に続く燃料噴射である後噴射の燃料量を算出する燃料量算出手段と、前記燃料噴射期間において、前記燃料量算出手段により算出した燃料量を前記先噴射の後に噴射する噴射制御手段と、を備える。
要するに、筒内噴射式の内燃機関で複数回の燃料噴射を実施する場合、先の噴射燃料の気化潜熱により吸気の充填効率が向上する。本発明は、先の燃料噴射(先噴射)による筒内充填空気量の増加分を考慮して後の燃料噴射(後噴射)における燃料量を設定するため、吸気行程において気筒内に実際に充填される空気量に対して適正量の燃料を噴射することができる。また、その適正量の燃料を均質燃焼の燃料噴射期間において複数回の燃料噴射により供給することから、気筒内において混合気の均質度を高めることができる。したがって、本発明によれば、目標空燃比(例えば理論空燃比)で燃焼を安定に行うことができ、ひいて出力向上を図ることができる。
先噴射による筒内充填空気量の増加分は先噴射の燃料量に応じて異なり、先噴射の燃料量が多いほど気化潜熱が大きく、充填効率が向上することが考えられる。その点に鑑み、請求項2に記載の発明は、前記燃料量算出手段が、前記後噴射の燃料量の一部又は全部として、前記先噴射の燃料量に基づいて前記筒内充填空気量の増加分相当の燃料量を算出する。この構成によれば、充填効率の向上度合いに応じて先噴射による充填効率向上分の燃料量を設定することができ、気筒内に実際に充填される空気量に対して適正量の燃料を噴射する上で好適である。このとき、先噴射の燃料量が多いほど筒内充填空気量の増加分相当の燃料量を多くするのが望ましい。
先噴射の燃料噴射量が同じであっても、内燃機関の負荷が大きく筒内に充填される空気量が多いと噴射燃料の拡散が促進されにくいのに対し、内燃機関の負荷が小さい場合には噴射燃料の拡散が促進され、充填効率がより向上することが考えられる。その点に鑑み、請求項3に記載の発明は、前記燃料量算出手段が、前記内燃機関の負荷が小さいほど、前記筒内充填空気量の増加分を基に算出される燃料噴射量を多くする。この構成によれば、内燃機関の負荷に応じて充填効率向上分の燃料量を設定することができ、気筒内に実際に充填される空気量に対して適正量の燃料を噴射する上で好適である。
また、先に噴射される燃料の噴射量が同じであっても、内燃機関の機関回転速度が低いほど燃料の拡散時間が長くなり、気筒内で燃料の拡散が促進されて充填効率が向上することが考えられる。その点に鑑み、請求項4に記載の発明は、前記燃料量算出手段が、前記内燃機関の機関回転速度が低いほど、前記筒内充填空気量の増加分を基に算出される燃料噴射量を多くする。この構成によれば、内燃機関の機関回転速度に応じて充填効率向上分の燃料量を設定することができ、気筒内に実際に充填される空気量に対して適正量の燃料を噴射する上で好適である。
内燃機関の負荷が小さいほど1燃焼サイクルで要求される燃料噴射量が少ない上、噴射燃料の拡散が促進されやすい。したがって、筒内壁等への燃料の付着を抑制するとともに、混合気の均質度を高めるには、内燃機関の負荷が小さいほど先噴射の燃料量を多くするのが望ましい。その点に鑑み、請求項5に記載の発明は、前記燃料量算出手段が、前記先噴射の燃料量と前記後噴射の燃料量とを算出するものであり、前記内燃機関の負荷が小さいほど前記先噴射の燃料量に対する前記後噴射の燃料量の比率を小さくする。この構成によれば、先噴射と後噴射との燃料量の比率が内燃機関の負荷に応じて設定されるため、筒内壁等への燃料の付着を抑制してスモークを低減できるとともに、混合気の均質度を効果的に高めることができる。
また、内燃機関の機関回転速度が低いほど燃料の拡散時間が長くなるため、気筒内で燃料の拡散が促進されて充填効率が向上することが考えられる。その点に鑑み、請求項6に記載の発明は、前記燃料量算出手段が、前記先噴射の燃料量と前記後噴射の燃料量とを算出するものであり、前記内燃機関の機関回転速度が低いほど前記先噴射の燃料量に対する前記後噴射の燃料量の比率を小さくする。この構成によれば、先噴射と後噴射との燃料量の比率が内燃機関の機関回転速度に応じて設定されるため、気筒内壁等への燃料の付着を抑制してスモークを低減できるとともに、混合気の均質度を効果的に高めることができる。
請求項7に記載の発明は、前記噴射制御手段が、前記内燃機関の吸気行程初期において気筒内での燃料付着が生じやすい燃料付着発生期間を除く極力早い時期に前記先噴射を実施し、前記吸気行程後半から前記内燃機関の圧縮行程前半までの期間内に前記後噴射を実施する。この構成によれば、燃料付着発生期間を除くできるだけ早い時期に先噴射が実施されるため、先噴射において燃料の拡散期間を長く設けることができ、燃料付着の低減と混合気の均質度の向上とを図る上で好適である。また、後噴射の時期を吸気行程後半から圧縮行程前半に設けることにより、燃費向上を好適に図ることができる。なお、後噴射の噴射時期については、吸気行程後半とするのが望ましい。
請求項8に記載の発明は、前記内燃機関の排気弁の閉弁時期を制御する閉弁時期変更手段を更に備える。また、前記閉弁時期変更手段が、前記燃料噴射期間において前記噴射制御手段により前記後噴射を実施するときに、該燃料噴射期間にて燃料を1回噴射する場合に比べて前記排気弁の閉弁時期を遅角側にする。この構成によれば、複数回の燃料噴射を実施する場合に、排気弁の閉弁時期をより遅角側に設定するため、内燃機関のポンピングロスを低減することができ、ひいては燃費の向上を図ることができる。
以下、本発明を具体化した実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施の形態は、内燃機関である筒内噴射式の車載多気筒4サイクルガソリンエンジンを対象にエンジン制御システムを構築するものとしている。当該制御システムにおいては、電子制御ユニット(以下、ECUという)を中枢として燃料噴射量の制御や点火時期の制御等を実施する。このエンジン制御システムの全体概略構成図を図1に示す。
図1に示すエンジン10において、吸気管11の最上流部にはエアクリーナ12が設けられ、エアクリーナ12の下流側には吸入空気量を検出するためのエアフロメータ13が設けられている。エアフロメータ13の下流側には、DCモータ等のスロットルアクチュエータ15によって開度調節されるスロットルバルブ14が設けられている。スロットルバルブ14の開度(スロットル開度)は、スロットルアクチュエータ15に内蔵されたスロットル開度センサにより検出される。スロットルバルブ14の下流側にはサージタンク16が設けられ、このサージタンク16には、吸気管内圧力を検出するための吸気管内圧力センサ17が設けられている。また、サージタンク16には、エンジン10の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド18が接続されており、吸気マニホールド18において各気筒の吸気ポート近傍には、スワール流やタンブル流を発生させる気流制御弁19が設けられている。
エンジン10の吸気ポート及び排気ポートには、それぞれ吸気バルブ21及び排気バルブ22が設けられている。この吸気バルブ21の開動作によりサージタンク16内の空気が燃焼室23内に導入され、排気バルブ22の開動作により燃焼後の排ガスが排気管24に排出される。吸気バルブ21及び排気バルブ22には、それら各バルブの開閉時期を可変とする可変バルブ装置37,38が設けられている。
エンジン10のシリンダヘッドにおいて、燃焼室23の中央上方には、燃焼室23に燃料を直接供給するセンター噴射式の燃料噴射弁39が取り付けられている。燃料噴射弁39は、燃料配管36を介して燃料タンク(図示略)に接続されている。燃料タンク内の燃料は、電磁駆動式の低圧用ポンプ(図示略)により汲み上げられた後、機関駆動式の高圧用ポンプ26により加圧される。この高圧燃料は、高圧用ポンプ26からデリバリパイプ35に圧送され、デリバリパイプ35から各気筒の燃料噴射弁39に供給された後、燃料噴射弁39により燃焼室23の中央上方からピストン上面に向けて噴射される。
また、エンジン10のシリンダヘッドには、燃料噴射弁39の排気バルブ22側に点火プラグ27が取り付けられている。点火プラグ27には、点火コイル等よりなる点火装置(図示略)を通じて、所望とする点火時期において高電圧が印加される。この高電圧の印加により、各点火プラグ27の対向電極間に火花放電が発生し、燃焼室23内の混合気が着火され燃焼に供される。
排気管24には、排出ガス中のCO,HC,NOx等を浄化するための三元触媒等の触媒31が設けられている。また、触媒31の上流側には、排ガスを検出対象として混合気の空燃比(酸素濃度)を検出するためのO2センサ32が設けられている。
排気管24は、EGR配管33を介してサージタンク16に接続されており、このEGR配管33の途中に電磁駆動式のEGRバルブ34が設けられている。なお、EGR配管33の排気側接続部位は三元触媒31の下流側であってもよい。EGRバルブ34においては、その開度(EGR開度)が調節されることにより、排気管24から吸気通路側に再循環される排気の量(EGRガス量)が制御される。
また、エンジン10には、冷却水温を検出する冷却水温センサ28や、エンジンの所定クランク角毎に(例えば10°CA周期で)矩形状のクランク角信号を出力するクランク角度センサ29が取り付けられている。
ECU40は、周知の通りCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)41を主体として構成され、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、都度のエンジン運転状態に応じてエンジン10の各種制御を実施する。すなわち、ECU40のマイコン41は、前述した各種センサなどから各々検出信号を入力し、それらの各種検出信号に基づいて燃料噴射量や点火時期等を演算して燃料噴射弁39や点火装置の駆動を制御したり、あるいは吸気バルブ21及び排気バルブ22の開閉時期を制御したりする。
燃料噴射制御についてマイコン41は、燃焼ごとの筒内充填空気量に基づいて燃料噴射量を決定する必要がある。具体的には、例えば吸入空気量とエンジン回転速度とから筒内充填空気量を算出し、その筒内充填空気量に見合う燃料噴射量を算出する。そして、算出した燃料噴射量に対応する噴射時間だけ燃料噴射弁39を開弁する。また、エンジン10の燃焼形態として本実施形態では、吸気行程噴射により燃焼室23内で燃料と空気とを均一に混合し空燃比が均一な(例えば理論空燃比の)混合気に対して点火を行う均質燃焼と、圧縮行程噴射により燃焼室23内の全体としては空燃比リーンでありながら点火プラグ27近傍を部分的に空燃比リッチにして点火を行う成層燃焼とをエンジン運転状態に応じて使い分けている。
均質燃焼を実施する場合、出力向上とスモークの悪化の抑制とを図るためには、燃料の霧化拡散をシリンダ内で十分に行うことにより燃料の気化を促進し、その気化した燃料と空気とを十分に混合させる必要がある。このとき、筒内充填空気量に応じた必要燃料量を一回でまとめて噴射すると、燃焼室23内に多量の燃料が供給されることにより、エンジン10のシリンダ内壁に燃料が過剰に付着したり、あるいは噴射燃料の拡散時間が不足したりする。その結果、気筒内で燃料気化が十分に行われないおそれがある。そこで、本実施形態では、均質燃焼を実施する場合において、空燃比が均一の(例えば理論空燃比の)混合気に対し、吸気行程で複数回の燃料噴射を実施することにより、運転者の要求出力を得るのに必要な燃料量を燃焼室23内に供給している。つまり、複数回の燃料噴射を行うことにより1回あたりの燃料噴射量を少なくし、更にその噴射タイミングを吸気行程の前半と後半とに設けることで、噴射燃料を筒内空間全体に拡散させ、均質度の高い混合気が形成されるようにしている。
ここで、筒内噴射式のエンジン10では、燃料を直接燃焼室23に噴射するため、噴射燃料の気化潜熱による吸気冷却効果に起因して吸気の充填効率が向上する(筒内充填空気量が増加する)とともに、その充填効率の向上の度合いが燃料噴射量に応じて異なる。そのため、吸気行程で複数回(本実施形態では2回)の燃料噴射を実施する場合には、先に実施される燃料噴射(先噴射)の燃料量に応じて吸気の充填効率が異なることが考えられる。つまり、1燃焼サイクルごとの筒内充填空気量が先噴射の燃料量に応じて異なることから、先噴射後の混合気のリーン度合いが都度異なる。したがって、混合気を目標空燃比(例えば理論空燃比)で燃焼させるには、先噴射の燃料量の相違(リーン度合いの相違)を考慮して、先噴射に続いて実施される燃料噴射(後噴射)の燃料量を決定する必要がある。
そこで、本実施形態では、先噴射の噴射燃料による筒内充填空気量の増加分ΔVに相当する燃料量を考慮して後噴射の燃料噴射量(後噴射量Q2)を算出し、その後噴射量Q2を吸気行程後半で噴射する。また、先噴射の燃料噴射量(先噴射量Q1)に対する後噴射量Q2の比率を、エンジン10の運転状態に基づいて可変に設定する。この処理としてECU40のマイコン41は、以下の処理を実行する。
図2は、本実施形態における燃料噴射処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、ECU40のマイコン41により所定周期毎に実行される。
図2において、まずステップS10では、例えばクランク角度センサ29により検出されるクランク角度に基づいて、先噴射量Q1及び後噴射量Q2を算出するタイミングか否かを判定する。先噴射量Q1及び後噴射量Q2の算出タイミングであれば、ステップS11へ進み、吸入空気量とエンジン回転速度とから1燃焼サイクルあたりの筒内充填空気量V1を算出し、その筒内充填空気量V1を理論空燃比とする燃料量(空気量対応燃料量Qv1)を算出する。
続くステップS12では、先噴射量Q1を算出する。本実施形態では、空気量対応燃料量Qv1を先噴射と後噴射とにより燃焼室23に供給するのにあたり、先噴射量Q1と後噴射量Q2との比率をエンジン負荷(吸入空気量又はアクセル開度)に応じて可変にしてある。具体的には、エンジン負荷が大きいほど筒内充填空気量が多くなることから、1燃焼サイクルで要求される燃料噴射量が多くなる上、噴射燃料の拡散が促進されにくくなる。そこで、エンジン負荷と噴射量比率(Q2/Q1)との関係につき、本実施形態では、図3に示すように、エンジン負荷が小さいほど噴射量比率(Q2/Q1)を小さくしている。具体的には、低負荷領域では空気量対応燃料量Qv1の大半(例えば9割)を先噴射量Q1とし、高負荷領域では空気量対応燃料量Qv1のほぼ半分(例えば5割)を先噴射量Q1としている。また、中負荷領域ではその中間(例えば7割)を先噴射量Q1としている。
なお、先噴射量Q1については、ピストン上面やシリンダ内壁面への燃料付着が生じやすい期間(燃料付着発生期間)内を除くできるだけ早い時期(例えば圧縮上死点前300°CA)を噴射開始タイミングとした場合に、その噴射開始タイミングにおいて、ピストン上面等への燃料付着を抑制する観点から許容される燃料噴射量になるよう設定してある。
続いてステップS13では、先噴射の噴射燃料による筒内充填空気量の増加分ΔVを考慮して後噴射量Q2を算出する。具体的にはまず、筒内充填空気量の増加分ΔVによりリーン化した混合気を理論空燃比とするための燃料量(増加分燃料量ΔQ)を、先噴射量Q1に応じて例えばマップ等から算出する。また、増加分燃料量ΔQについて、同じ先噴射量Q1であっても、エンジン負荷が大きく筒内充填空気量V1が多いほど噴射燃料の拡散が促進されにくくなる(充填効率の向上が抑制される)ことを考慮し、エンジン負荷(例えば吸入空気量やアクセル開度)に応じて増加分燃料量ΔQを算出する。そして、算出した増加分燃料量ΔQに、空気量対応燃料量Qv1から先噴射量Q1を差し引いた分の燃料量を加えることで後噴射量Q2を算出する。つまり、後噴射量Q2は、1燃焼サイクルでの実筒内充填空気量(V1+ΔV)を理論空燃比にするのに必要な燃料量を、先噴射と後噴射とで噴射するのに必要とされる燃料量である。
図4は、先噴射量Q1と増加分燃料量ΔQとの関係を示すマップである。図4において、先噴射量Q1が多いほど増加分燃料量ΔQが多くなるように設定してある。また、図4では、エンジン負荷に応じて増加分燃料量ΔQが設定してあり、エンジン負荷が小さいほど増加分燃料量ΔQが多くなっている。
図2の説明に戻り、ステップS14で、先噴射の噴射開始タイミングか否かを判定する。本実施形態では、ピストン上面等への燃料付着をできるだけ抑制でき、かつ吸気行程のできるだけ早い時期(例えば圧縮上死点前300°CA)を先噴射の噴射開始タイミングとしている。先噴射の噴射開始タイミングであればステップS15へ進み、先噴射量Q1の燃料を燃料噴射弁39から噴射する。
また、ステップS16で、後噴射の噴射開始タイミングか否かを判定する。後噴射の噴射開始タイミングについて本実施形態では、燃費が最適となる噴射開始タイミングを実験等により予め設定してある。図5は、後噴射の噴射開始タイミングと燃費データとの関係を示す図である。なお、図5中の点線は、吸気行程で1回のみ燃料噴射する場合を示す。また、燃費データとは、所定距離を走行した場合における消費燃料の単位量あたりのエンジン出力をいい、エンジン出力が大きいほど燃費が良好であることを示す。
図5に実線で示すように、先噴射による充填効率の向上分を考慮して後噴射を実施する場合において、吸気行程後期から圧縮行程初期までの期間に噴射開始タイミングを設けて燃料噴射を実施する場合には、1回噴射する場合の燃費の最適タイミング(図5では圧縮上死点前300°CA)で1回噴射する場合に比べて燃費が良好になっている。一方、スモーク低減を効果的に行うには、上記期間のできるだけ早期に噴射するのが好ましい。そこで、本実施形態では、吸気行程の前期(例えば圧縮上死点前220°CAや210°CA)を後噴射の噴射開始タイミングとしている。
図2の説明に戻り、後噴射の噴射開始タイミングであればステップS17へ進み、後噴射量Q2の燃料を燃料噴射弁39から噴射する。
また、本実施形態では、ポンピングロスの低減を図るために、吸気行程での1回噴射に比べ、排気バルブ22の閉弁時期を遅角側に設定している。つまり、本実施形態では、後噴射において先噴射による充填効率の向上分を考慮した燃料量を燃焼室23内に供給していることから、燃焼が理論空燃比で行われ、その結果、燃焼安定性が向上する。したがって、排気バルブ22の閉弁時期を遅角側にしても、燃焼安定性が確保される。
図6は、後噴射の噴射開始タイミングと燃費データとの関係を示す図である。図6中、一点鎖線は、排気バルブ22の閉弁時期を吸気行程で1回のみ噴射する際の閉弁時期と同じにする場合を示し、実線は、排気バルブ22の閉弁時期を吸気行程で1回のみ噴射する際の閉弁時期よりも遅角側に設定する場合を示す。なお、点線は、吸気行程で1回のみ燃料噴射する場合を示す。
図6に実線で示すように、排気バルブ22の閉弁時期をより遅角側に設定すると、後噴射の噴射開始タイミングを吸気行程後期から圧縮行程初期までの期間に設けることにより、排気バルブ22の閉弁時期を遅角側に設定しない場合に比べて燃費が良好になっている。このことから、複数回の燃料噴射を実施する場合には、先噴射による充填効率の向上分を考慮して後噴射の燃料量を設定するとともに、排気バルブ22の閉弁時期をより遅角側に設定することにより、燃費向上に有意であることが分かる。
以上詳述した実施形態によれば以下の優れた効果が得られる。
吸気行程にて複数回の燃料噴射を実施するのにあたり、先噴射の噴射燃料による筒内充填空気量の増加分ΔVを考慮して後噴射量Q2を算出し、その後噴射量Q2を吸気行程後半で噴射する構成としたため、気筒内に実際に充填される空気量に対して適正量の燃料を噴射することができる。また、その適正量の燃料を複数回の燃料噴射により燃焼室23に供給することにより、気筒内において混合気の均質度を高めることができる。したがって、理論空燃比での燃焼を安定に行うことができ、ひいては出力向上を図ることができる。また、出力向上により、所定距離を走行する場合の消費燃料を低減することができる。
また、先噴射量Q1が多いほど先噴射による充填効率向上分の燃料量(増加分燃料量ΔQ)を多くするとともに、エンジン負荷に応じて増加分燃料量ΔQを設定する構成としたため、充填効率の向上度合いを考慮して増加分燃料量ΔQを設定することができ、気筒内に実際に充填される空気量に対して適正量の燃料を噴射する上で好適である
エンジン負荷が小さいほど先噴射量Q1に対する後噴射量Q2の比率を小さくする構成としたため、先噴射による充填効率の向上分に応じて先噴射量Q1及び後噴射量Q2を設定することができる。したがって、ピストン上面や気筒内壁への燃料の付着を抑制できるとともに、混合気の均質度を高めることができ、ひいては出力向上やスモーク低減をより効果的に実現することができる。
エンジン負荷が小さいほど先噴射量Q1に対する後噴射量Q2の比率を小さくする構成としたため、先噴射による充填効率の向上分に応じて先噴射量Q1及び後噴射量Q2を設定することができる。したがって、ピストン上面や気筒内壁への燃料の付着を抑制できるとともに、混合気の均質度を高めることができ、ひいては出力向上やスモーク低減をより効果的に実現することができる。
排気バルブ22の閉弁時期を遅角側に設定する構成としたため、吸気バルブ21及び排気バルブ22の開弁時期のオーバーラップが大きくなることによってエンジン10のポンピングロスを低減することができ、ひいては燃費の向上を図ることができる。また、複数回の燃料噴射において、先噴射の噴射燃料による筒内充填空気量の増加分ΔVを考慮して吸気行程後半で後噴射による燃料噴射を実施することにより燃焼安定性が向上するため、排気バルブ22の閉弁時期を遅角側に設定したとしても、燃焼安定性を確保でき好適である。
また、吸気行程初期において燃料付着発生期間を除くできるだけ早い時期に先噴射を実施し、吸気行程後半に後噴射を実施する構成としたため、気筒内壁等への燃料付着の抑制と、混合気の均質度の向上とを図ることができ、スモーク低減と出力向上とを好適に図ることができる。
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
本発明は、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
・上記実施形態では、増加分燃料量ΔQを算出するのにあたり、エンジン負荷に応じて増加分燃料量ΔQを算出する構成としたが、エンジン負荷の代わりに又はこれに加えて、エンジン回転速度に応じて増加分燃料量ΔQを算出する構成としてもよい。こうすれば、エンジン回転速度に応じて充填効率向上分の燃料量を設定することができる。つまり、エンジン回転速度が低いほど燃料の拡散時間が長くなり充填効率が向上する。したがって、エンジン回転速度が低いほど増加分燃料量ΔQを多くすることで、気筒内に実際に充填される空気量に対して適正量の燃料を供給することができる。
・上記実施形態では、エンジン負荷が小さいほど先噴射量Q1に対する後噴射量Q2の比率を小さくする構成としたが、エンジン負荷の代わりに又はこれに加えて、エンジン回転速度に応じてその比率を可変に設定してもよい。つまり、エンジン回転速度が低いほど燃料の拡散時間が長くなるため、気筒内で燃料の拡散が促進されて充填効率が向上する。したがって、エンジン回転速度が低いほど先噴射量Q1に対する後噴射量Q2の比率を小さくすることにより、気筒内に実際に充填される空気量に対して適正量の燃料を供給することができ好適である。
・上記実施形態では、先噴射の噴射開始タイミングを、吸気行程前半のうち、気筒内で燃料付着が生じないできるだけ早い時期に固定にする構成としたが、同噴射開始タイミングを可変にする構成としてもよい。この場合、先噴射量Q1及び後噴射量Q2については、先噴射の噴射開始タイミングが遅角側ほど燃料の拡散期間が短くなることから、同噴射開始タイミングが遅角側ほど先噴射量Q1を少なくして後噴射量Q2を多くするのが好ましい。また、増加分燃料量ΔQについては、先噴射の噴射開始タイミングが遅角側ほど、先噴射量Q1が少なく充填効率の向上分が少なくなることから、同タイミングが遅角側ほど増加分燃料量ΔQを少なくするのが好ましい。
・上記実施形態では、1燃焼サイクルあたりの筒内充填空気量V1を理論空燃比とする燃料量(空気量対応燃料量Qv1)を算出し、その空気量対応燃料量Qv1の一部を先噴射量Q1とし、その残り分に増加分燃料量ΔQを加えたものを後噴射量Q2とする構成としたが、空気量対応燃料量Qv1の全部を先噴射量Q1とし、増加分燃料量ΔQだけを後噴射量Q2とする構成としてもよい。すなわち、1燃焼サイクルあたりの筒内充填空気量V1に見合う燃料を先噴射で燃焼室23内に供給し、その先噴射により増加した分の筒内充填空気量(増加分燃料量ΔQ)に見合う燃料を後噴射で燃焼室23内に供給する。この場合にも上記と同様の効果を得ることができる。
・上記実施形態において、燃料噴射弁39の燃料噴射圧に基づいて先噴射の燃料量Q1を設定してもよい。燃料噴射圧が高いほど燃料噴射弁39の貫徹力が大きく、ピストン上面等への燃料付着が生じやすいからである。具体的には、燃料噴射圧が高いほど先噴射量Q1を少なくするのが望ましい。
・上記実施形態では、後噴射の噴射開始タイミングを吸気行程後半に設ける構成としたが、圧縮行程前半に設ける構成としてもよい。この場合、後噴射の噴射開始タイミングを吸気行程後半に設ける場合よりもエンジン出力が小さくなるものの、吸気行程にて1回の燃料噴射により必要燃料を供給する場合よりもエンジン出力を高めることができる点で好適である。
・上記実施形態では、吸気行程で2回の燃料噴射を実施する構成としたが、3回以上の燃料噴射を実施してもよい。この場合にも上記と同様に、n回目(nは1以上の整数)の燃料噴射による充填効率の向上分を考慮して(n+1)回目の燃料噴射における噴射量を設定することにより、上記と同様の効果を得ることができる。
10…エンジン、21…吸気バルブ、22…排気バルブ、23…燃焼室、35…デリバリパイプ、37,38…可変バルブ装置、39…燃料噴射弁、40…ECU、41…マイコン。
Claims (8)
- 燃料を直接気筒内に噴射する燃料噴射弁を備え、前記燃料噴射弁からの噴射燃料により均質燃焼が実施される筒内噴射式の内燃機関に適用され、
前記均質燃焼を実施する際の1燃焼サイクルごとの燃料噴射期間にて複数回の燃料噴射を実施する内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
前記複数回の燃料噴射のうち先の燃料噴射である先噴射による筒内充填空気量の増加分に応じて、前記先噴射に続く燃料噴射である後噴射の燃料量を算出する燃料量算出手段と、
前記燃料噴射期間において、前記燃料量算出手段により算出した燃料量を前記先噴射の後に噴射する噴射制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記燃料量算出手段は、前記後噴射の燃料量の一部又は全部として、前記先噴射の燃料量に基づいて前記筒内充填空気量の増加分相当の燃料量を算出する請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
- 前記燃料量算出手段は、前記内燃機関の負荷が小さいほど、前記筒内充填空気量の増加分を基に算出される燃料噴射量を多くする請求項1又は2に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
- 前記燃料量算出手段は、前記内燃機関の機関回転速度が低いほど、前記筒内充填空気量の増加分を基に算出される燃料噴射量を多くする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
- 前記燃料量算出手段は、前記先噴射の燃料量と前記後噴射の燃料量とを算出するものであり、
前記内燃機関の負荷が小さいほど前記先噴射の燃料量に対する前記後噴射の燃料量の比率を小さくする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記燃料量算出手段は、前記先噴射の燃料量と前記後噴射の燃料量とを算出するものであり、
前記内燃機関の機関回転速度が低いほど前記先噴射の燃料量に対する前記後噴射の燃料量の比率を小さくする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記噴射制御手段は、前記内燃機関の吸気行程初期において気筒内での燃料付着が生じやすい燃料付着発生期間を除く極力早い時期に前記先噴射を実施し、前記吸気行程後半から前記内燃機関の圧縮行程前半までの期間内に前記後噴射を実施する請求項1乃至6のいずれか一項に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
- 前記内燃機関の排気弁の閉弁時期を制御する閉弁時期変更手段を更に備え、
前記閉弁時期変更手段は、前記燃料噴射期間において前記噴射制御手段により前記後噴射を実施するときに、該燃料噴射期間にて燃料を1回噴射する場合に比べて前記排気弁の閉弁時期を遅角側にする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
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-
2008
- 2008-08-20 JP JP2008211318A patent/JP2010048116A/ja active Pending
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