ところが、上記の電圧検出装置には、以下のような問題点がある。すなわち、この電圧検出装置では、検出対象体(試料)の電圧に追従して電圧が変化する金属針が、電流電圧変換器の入力端子に直接接続されている。このため、この電圧検出装置には、電圧の高い検出対象体に対して使用可能とするためには、高耐圧の演算増幅器、つまり高耐圧の電子部品を使用して電流電圧変換器を構成しなければならず、装置コストが上昇するという問題点が存在している。
本発明は、上記の問題を解決すべくなされたものであり、高耐圧の電子部品の使用を回避しつつ、高い電圧の検出対象体についてもその電圧を検出し得る(非接触型)電圧検出装置を提供することを主目的とする。
上記目的を達成すべく請求項1記載の電圧検出装置は、検出対象体に生じている検出対象交流電圧を検出する電圧検出装置であって、前記検出対象体に対向して配設される検出電極と、第1の入力端子が基準電圧に規定されると共に、第2の入力端子が前記検出電極に直接または間接に接続されて、当該検出電極と当該第2の入力端子に接続された帰還回路とを含む経路において前記検出対象交流電圧と当該基準電圧との間の交流の電位差に応じた電流値で流れる検出電流を検出電圧信号に変換して出力する演算増幅器を有する電流電圧変換回路と、前記検出電圧信号を積分して前記電位差に応じて振幅が変化する積分信号を出力する積分回路と、前記積分回路の前段または後段に配設されて、前記検出電圧信号および前記積分信号のうちの一方を入力すると共に電気的に絶縁して出力する絶縁回路と、前記電位差が減少するように前記積分信号に基づく信号を増幅して前記基準電圧を生成する電圧生成回路とを備えている。
また、請求項2記載の電圧検出装置は、検出対象体に生じている検出対象交流電圧を検出する電圧検出装置であって、前記検出対象体に対向して配設される検出電極と、前記検出電極と基準電圧の部位との間に配設されると共に前記検出対象交流電圧と当該基準電圧との間の交流の電位差に応じた電流値で流れる検出電流を電圧信号に変換する検出部、および当該電圧信号をインピーダンス変換して検出電圧信号として出力する増幅器を有する電流電圧変換回路と、前記検出電圧信号を積分して前記電位差に応じて振幅が変化する積分信号を出力する積分回路と、前記積分回路の前段または後段に配設されて、前記検出電圧信号および前記積分信号のうちの一方を入力すると共に電気的に絶縁して出力する絶縁回路と、前記電位差が減少するように前記積分信号に基づく信号を増幅して前記基準電圧を生成する電圧生成回路とを備えている。
また、請求項3記載の電圧検出装置は、検出対象体に生じている検出対象交流電圧を検出する電圧検出装置であって、前記検出対象体に対向して配設される検出電極と、第1の入力端子が基準電圧に規定されると共に、第2の入力端子が前記検出電極に直接または間接に接続されて、当該検出電極と当該第2の入力端子に接続された帰還回路とを含む経路において前記検出対象交流電圧と当該基準電圧との間の交流の電位差に応じた電流値で流れる検出電流を積分することにより、当該電位差に応じて振幅が変化する積分信号を出力する演算増幅器を有する積分回路と、前記積分信号を入力すると共に電気的に絶縁して出力する絶縁回路と、前記電位差が減少するように前記積分信号に基づく信号を増幅して前記基準電圧を生成する電圧生成回路とを備えている。
また、請求項4記載の電圧検出装置は、請求項1から3のいずれかに記載の電圧検出装置において、前記絶縁回路は、光絶縁素子および/またはトランスを備えて構成されている。
また、請求項5記載の電圧検出装置は、請求項1から3のいずれかに記載の電圧検出装置において、前記絶縁回路は、デジタルアイソレータを備えて構成されている。
また、請求項6記載の電圧検出装置は、請求項1から5のいずれかに記載の電圧検出装置において、前記基準電圧に規定されたガード電極を備え、前記検出電極の後段の回路から前記絶縁回路の一次側回路までの間が当該ガード電極によって覆われている。
また、請求項7記載の電圧検出装置は、請求項6記載の電圧検出装置において、前記ガード電極に開口部が形成され、前記検出電極は、前記ガード電極内における前記開口部を臨む位置に、当該開口部から突出しない状態で配置されている。
また、請求項8記載の電圧検出装置は、請求項1から7のいずれかに記載の電圧検出装置において、前記検出電極における前記検出対象体と対向する表面全体を覆う絶縁物を備えている。
また、請求項9記載の線間電圧検出装置は、前記検出対象体としての対応する複数の電路に前記検出電極が対向可能に構成されて当該各電路に生じている交流電圧を前記検出対象交流電圧としてそれぞれ検出可能な複数の請求項1から8のいずれかに記載の電圧検出装置と、前記複数の電圧検出装置のうちの一対の電圧検出装置によって検出された2つの前記電路の前記交流電圧の差分電圧を算出して当該2つの電路間の線間電圧を求める算出部とを備えている。
請求項1記載の電圧検出装置では、検出電極を検出対象体に対向させて配置した状態において、電流電圧変換回路が、検出対象体と検出電極との間に形成されている静電容量および検出電極を介して、検出電極と第2の入力端子に接続された帰還回路とを含む経路において検出対象交流電圧と基準電圧との電位差に応じた電流値で流れる検出電流を検出電圧信号に変換し、積分回路が、この検出電圧信号(具体的には、検出電圧信号と基準電圧との電位差に基づいて流れる電流)を積分して、検出電極の電圧と検出対象体の交流電圧との電位差に応じて振幅が変化する積分信号を生成し、積分回路の前段または後段に配設された絶縁回路が、検出電圧信号および積分信号のうちの一方を入力すると共に電気的に絶縁して出力し、電圧生成回路が、検出対象交流電圧および基準電圧の電位差が減少するように積分信号に基づく信号を増幅していて基準電圧を生成する。
したがって、この電圧検出装置によれば、静電容量の容量値が一般的に極めて小さいために、検出対象体と検出電極との間のインピーダンスを十分に大きな値(数MΩ)とすることができる結果、電流電圧変換回路の入力インピーダンスを相対的に小さな値にできることから、電流電圧変換回路に過電圧が印加されにくく、電流電圧変換回路に入力耐圧の低い安価な電子部品(例えば演算増幅器)を使用したとしても、検出対象交流電圧および基準電圧の電位差によって電流電圧変換回路が破壊される可能性を大幅に低減することができる。また、ダイオードなどによる保護回路を追加することにより、このような破壊を確実に回避することができる。
また、請求項2記載の電圧検出装置によれば、上記の電圧検出装置と同様に電流電圧変換回路の入力インピーダンスを相対的に小さな値にできるため、過電圧が印加されにくく、検出対象交流電圧および基準電圧の電位差によって電流電圧変換回路が破壊される可能性を大幅に低減することができる。
また、請求項3記載の電圧検出装置によれば、上記の電圧検出装置と同様に電流電圧変換回路の入力インピーダンスを相対的に小さな値にできるため、過電圧が印加されにくく、検出対象交流電圧および基準電圧の電位差によって積分回路が破壊される可能性を大幅に低減することができる。
また、請求項4記載の電圧検出装置によれば、絶縁回路を光絶縁素子および/またはトランスを使用して構成したことにより、電流電圧変換回路と、その後段の回路とを任意の部位で簡易に電気的に絶縁する(分離する)ことができる。また、光絶縁素子を使用した場合には、広い周波数範囲に亘って周波数特性が良好なため、広い周波数範囲に亘る検出対象体の交流電圧を精度良く検出することができる。また、トランスを絶縁回路として使用した場合には、一般的にトランスは光絶縁素子よりも高い周波数域で良好な周波数特性を有しているため、交流電圧の周波数が高い周波数に限定されているときには、トランスを使用することで、交流電圧を精度良く検出することができる。また、光絶縁素子およびトランスを並列に接続して絶縁回路を構成した場合には、低周波数域側では光絶縁素子が主として作動し、高周波数域側ではトランスが主として作動することにより、絶縁回路の周波数特性を広帯域化することができる結果、一層広い周波数範囲に亘る検出対象体の交流電圧を精度良く検出することができる。
また、請求項5記載の電圧検出装置によれば、絶縁回路をデジタルアイソレータを使用して構成したことにより、電気的に絶縁された信号を伝送する伝送路の温度や経時変化などの影響を受けることなく高精度でこの信号を電圧生成回路に伝達することができるため、検出対象交流電圧の検出精度を一層向上させることができる。
また、請求項6記載の電圧検出装置によれば、検出電極の後段の回路から絶縁回路の一次側回路までの間をガード電極内に収容して、これらをガード電極で覆う構成としたことにより、外部からの電界の影響をこれら回路が受けにくくすることができる結果、検出対象交流電圧の検出精度を向上させることができる。
また、請求項7記載の電圧検出装置によれば、ガード電極内であって、ガード電極に形成された開口部を臨む位置に、開口部から突出しない状態(非突出状態)で検出電極を配置したことにより、外部の電界の影響を検出電極が受けにくくすることができる結果、検出対象交流電圧の検出精度を一層向上させることができる。
また、請求項8記載の電圧検出装置によれば、検出電極における検出対象体と対向する表面全体を絶縁物で覆う構成としたことにより、検出対象体と検出電極との短絡を確実に防止することができる。
また、請求項9記載の線間電圧検出装置によれば、上記の電圧検出装置を使用したことにより、各電圧検出装置における電流電圧変換回路に入力耐圧の低い安価な電子部品(例えば演算増幅器)を使用したとしても、検出対象交流電圧および基準電圧の電位差による電流電圧変換回路の破壊を回避することができるため、装置コストの低減を図りつつ、線間電圧を検出することができる。
以下、添付図面を参照して、電圧検出装置および線間電圧検出装置の実施の形態について説明する。
最初に、電圧検出装置1について、図面を参照して説明する。
電圧検出装置1は、非接触型の電圧検出装置であって、図1に示すように、フローティング回路部2および本体回路部3を備え、検出対象体(測定対象体)4に生じている交流電圧V1(検出対象交流電圧)を非接触で検出(測定)可能に構成されている。
フローティング回路部2は、図1,2,3に示すように、ガード電極21、検出電極22、電流電圧変換部CV、駆動回路25および絶縁回路26を備えている。電流電圧変換部CVは、本例では一例として電流電圧変換回路23および積分回路24を備えている。絶縁回路26は、本例では一例としてフォトカプラ(以下、「フォトカプラ26」ともいう)で構成されている。ガード電極21は、導電性材料(例えば金属材料)を用いて、フローティング回路部2における基準電圧部として構成されて、一例としてその内部に、検出電極22の後段の回路から絶縁回路26までの回路、つまり、電流電圧変換回路23、積分回路24、駆動回路25およびフォトカプラ26が収容されている。これにより、電流電圧変換回路23からフォトカプラ26までがガード電極21に覆われた構成となっている。なお、ガード電極21で覆うべき部位は、検出電極22の後段の回路(検出電極22に接続される回路。本例では電流電圧変換回路23)からフォトカプラ26の一次側回路(後述する発光ダイオード)まででよい。このため、フォトカプラ26の二次側回路(後述するフォトトランジスタ)については、ガード電極21で覆われない構成とすることもできる。一例として、樹脂材料で一次側回路と二次側回路とが1つのパッケージに封止されて構成されたフォトカプラ26のような光絶縁素子の場合には、パッケージにおける一次側回路が含まれる部位(パッケージの発光ダイオード側の半分)がガード電極21の内部に位置し、二次側回路が含まれる部位(パッケージのフォトトランジスタ側の半分)がガード電極21の外部に突出(露出)するように、ガード電極21に対してフォトカプラ26を配置する。また、ガード電極21には開口部(孔)21aが形成されると共に、本例では、さらに、図2,3に示すように、ガード電極21全体が絶縁層(絶縁物の一例)21bで覆われている。検出電極22は、例えば、平板状に形成されて、ガード電極21内における開口部21aを臨む位置に、開口部21aからガード電極21の外側に突出しない状態(つまり、検出電極22の表面をガード電極21の表面から凹ませた非突出状態)で配設されている。このようにガード電極21全体が絶縁層21bで覆われ、かつ検出電極22が開口部21aを臨む位置に配置されている構成のため、絶縁層21bが検出電極22における検出対象体4と対向する表面全体を覆う構成となっている。
電流電圧変換回路23は、一例として、図1に示すように、非反転入力端子(第1の入力端子)が抵抗23aを介してガード電極21に接続されると共に、反転入力端子(第2の入力端子)が検出電極22に接続され、かつ抵抗23bが帰還回路として反転入力端子と出力端子との間に接続された第1演算増幅器23cを備えて構成されている。この電流電圧変換回路23は、第1演算増幅器23cが後述する正電圧Vf+および負電圧Vf−の供給を受けて作動して、検出対象体4の交流電圧V1とガード電極21の電圧(基準電圧)との電位差(交流の電位差。つまり、交流電圧V1の交流成分と基準電圧の交流成分との電位差)Vdiに起因して、この電位差Vdiに応じた電流値で検出対象体4と検出電極22との間(具体的には、検出電極22と抵抗23bとを含む経路)に流れる検出電流(以下、電流信号ともいう)Iを検出電圧信号V2に変換して出力する。この場合、検出電圧信号V2は、その振幅が電流信号Iの振幅に比例して変化する。
積分回路24は、一例として、非反転入力端子が抵抗24aを介してガード電極21に接続されると共に、反転入力端子が入力抵抗24bを介して第1演算増幅器23cの出力端子に接続され、かつコンデンサ24cが帰還回路として反転入力端子と出力端子との間に接続された第2演算増幅器24dを備えて構成されている。この積分回路24は、第2演算増幅器24dが正電圧Vf+および負電圧Vf−の供給を受けて作動して、検出電圧信号V2を積分することにより、検出対象体4の交流電圧V1とガード電極21の電圧(基準電圧)との電位差Vdiに比例して電圧値が変化する積分信号V3を生成して出力する。なお、積分回路24は、上記構成に代えて、ローパスフィルタで構成することもできる。
駆動回路25は、フォトカプラ26と共に積分回路24の後段、つまり積分回路24と電圧生成回路34との間に配置されている。また、駆動回路25は、一例としてベース端子が入力抵抗25aを介して第2演算増幅器24dの出力端子に接続され、コレクタ端子がフォトカプラ26に接続され、かつエミッタ端子が負電圧Vf−に接続されたトランジスタ(本例では一例としてNPN型のバイポーラトランジスタ)25bで構成されている。フォトカプラ26は、絶縁回路の一例である光絶縁素子に含まれるものであって、その一次側回路としての発光ダイオードは、カソード端子がトランジスタ25bのコレクタ端子に接続され、アノード端子が正電圧Vf+に接続されている。また、フォトカプラ26の二次側回路としてのフォトトランジスタは、配線W1を介して本体回路部3と接続されている。この構成により、フォトカプラ26が駆動回路25で駆動されてリニア領域で作動することにより、積分信号V3の電圧値に応じて(ほぼ比例して)フォトカプラ26におけるフォトトランジスタの抵抗値が変化する。したがって、このフォトカプラ26が、後述する本体回路部3の抵抗33と相俟って、積分回路24から入力したアナログ信号である積分信号V3を、この積分信号V3と電気的に絶縁された新たなアナログ信号である積分信号V3aに変換する。また、フォトカプラ26に代えて、同じ光絶縁素子である光MOS−FETを使用することもできる。この場合、光MOS−FETは、その一次側回路としての発光ダイオードが上記したフォトカプラ26の発光ダイオードと同様にしてトランジスタ25b等に接続され、その二次側回路としてのFET対が配線W1を介して本体回路部3と接続される。
本体回路部3は、図1に示すように、一例として、主電源回路31、DC/DCコンバータ(以下、単に「コンバータ」ともいう)32、電流電圧変換用の抵抗33、電圧生成回路34および電圧計35を備えている。主電源回路31は、例えば、バッテリーを備えて構成されて、本体回路部3の各構成要素32,34を作動させるための正電圧Vddおよび負電圧Vss(グランドG1の電位を基準として生成される絶対値が同じで、互いの極性の異なる直流電圧)をそのバッテリーの直流電圧から生成して出力する。コンバータ32は、一例として互いに電気的に絶縁された一次巻線および二次巻線を有する絶縁型のトランスと、このトランスの一次巻線を駆動する駆動回路と、トランスの二次巻線に誘起される交流電圧を整流平滑する直流変換部(いずれも図示せず)とを備えて、一次側に対して二次側が電気的に絶縁された絶縁型電源として構成されている。このコンバータ32では、入力した正電圧Vddおよび負電圧Vssに基づいて駆動回路が作動して、正電圧Vddが印加された状態にあるトランスの一次巻線を駆動して二次巻線に交流電圧を誘起させる。また、直流変換部が、この交流電圧を整流して平滑する。これにより、内部基準電位(内部グランド)を基準として、上記電圧(正電圧Vf+および負電圧Vf−)がフローティング状態(グランドG1、正電圧Vddおよび負電圧Vssと電気的に分離された状態)で生成される。このようにして生成された正電圧Vf+および負電圧Vf−は、上記の内部グランドがガード電極21に電気的に接続された状態で、フローティング回路部2に供給される。なお、正電圧Vf+および負電圧Vf−は、絶対値がほぼ同一で、極性が互いに異なる直流電圧として生成される。
抵抗33は、一端が正電圧Vddに接続されると共に、他端がフォトカプラ26におけるフォトトランジスタのコレクタ端子に接続されている。これにより、抵抗33とフォトトランジスタとが正電圧Vddと負電圧Vssとの間に直列に接続された状態となる。このため、フォトトランジスタの抵抗値が積分信号V3の電圧値に応じて変化したときには、正電圧Vddおよび負電圧Vssの電位差(Vdd−Vss)が抵抗33の抵抗値とフォトトランジスタの抵抗値とで分圧されることにより、上記した積分信号V3aがフォトトランジスタのコレクタ端子に発生する。
電圧生成回路34は、積分信号V3aを入力して増幅することにより、電圧信号V4(つまり基準電圧)を生成して、ガード電極21に印加する。この場合、電圧生成回路34は、フローティング回路部2のガード電極21、検出電極22、電流電圧変換回路23、積分回路24、駆動回路25およびフォトカプラ26と共にフィードバックループを形成して、電位差Vdiを減少させるように積分信号V3aを増幅する増幅動作を行うことにより、電圧信号V4を生成する。本例では、一例として、電圧生成回路34は、交流増幅回路34a、位相補償回路34bおよび昇圧回路34cを備えて構成されている。ここで、交流増幅回路34aは、積分信号V3aを入力して増幅することにより、電圧信号V4aを生成する。この場合、交流増幅回路34aは、積分信号V3aの電圧値についての絶対値の増加・減少に対応して、電圧値の絶対値が変化する電圧信号V4aを増幅動作によって生成する。位相補償回路34bは、フィードバック制御動作の安定化(発振防止)を図るため、電圧信号V4aを入力してその位相を調整して電圧信号V4bとして出力する。昇圧回路34cは、一例として昇圧トランスを用いて構成されて、電圧信号V4bを所定の倍率で昇圧することにより(極性は変えずに絶対を増加させることにより)、電圧信号V4を生成してガード電極21に印加する。電圧計35は、この電圧信号V4の実効値を検出(測定)して出力する(一例として自らの表示部(不図示)に表示させる)。
次いで、電圧検出装置1による検出対象体4の交流電圧V1についての検出動作(測定動作)について説明する。
まず、検出電極22が非接触の状態で検出対象体4に対向するように、フローティング回路部2(または電圧検出装置1全体)を検出対象体4の近傍に位置させる。これにより、図1に示すように、検出電極22と検出対象体4との間に静電容量C0が形成された状態となる。この場合、静電容量C0の容量値は、検出電極22と検出対象体4の距離に反比例して変化するが、フローティング回路部2を一旦配設した後は、温度などの環境が一定の条件下においては一定の(変動しない)値となる。また、静電容量C0の容量値が一般的に極めて小さい(例えば数pF〜数十pF程度)ため、交流電圧V1の周波数が数百Hz程度であったとしても、検出対象体4と検出電極22との間のインピーダンスが十分に大きな値(数MΩ)となる。このため、この電圧検出装置1では、検出対象体4の交流電圧V1とガード電極21の電圧(電圧信号V4の電圧)とが大きく異なる場合(電位差Vdiが大きい場合)においても、電流電圧変換回路23を構成する第1演算増幅器23cに入力耐圧の低い安価な製品を使用することができ、この構成においても、電位差Vdiによる第1演算増幅器23cの破壊が回避されている。
次いで、電圧検出装置1の起動状態において、検出対象体4の交流電圧V1と、ガード電極21の電圧(基準電圧。電圧信号V4の電圧)との電位差Vdiが増加しているとき(例えば、交流電圧V1の上昇に起因して電位差Vdiが増加しているとき)には、検出対象体4から検出電極22を介して電流電圧変換回路23に流れ込む(流入する)電流信号Iの電流量が増加する。この場合、電流電圧変換回路23は、出力している検出電圧信号V2の電圧値を低下させる。積分回路24では、この検出電圧信号V2の低下に起因して、第2演算増幅器24dの出力端子からコンデンサ24cを介して反転入力端子に向けて流れる電流が増加する。このため、積分回路24は、積分信号V3の電圧を上昇させる。また、この積分信号V3の電圧上昇に伴い、駆動回路25のトランジスタ25bが深いオン状態に移行する。これにより、フォトカプラ26では、その発光ダイオードに流れる電流が増加し、フォトトランジスタの抵抗が減少する。したがって、抵抗33の抵抗値とフォトトランジスタの抵抗値とで電位差(Vdd−Vss)が分圧されて生成される積分信号V3aは、その電圧値が低下する。電圧生成回路34は、この積分信号V3aに基づいて、生成している電圧信号V4の電圧値を上昇させる。この電圧検出装置1では、このようにしてフィードバックループを構成する電流電圧変換回路23、積分回路24、駆動回路25、フォトカプラ26および本体回路部3が、検出対象体4の交流電圧V1の上昇を検出して、電圧信号V4の電圧値を上昇させるフィードバック制御動作を実行することにより、ガード電極21の電圧(電圧信号V4の電圧)を交流電圧V1に追従させる。
また、交流電圧V1の低下に起因して電位差Vdiが増加したときには、検出電極22を介して電流電圧変換回路23から検出対象体4に流れ出る(流出する)電流信号Iの電流量が増加する。この際には、フィードバックループを構成する電流電圧変換回路23等が上記のフィードバック制御動作とは逆の動作を実行して、電圧信号V4の電圧を低下させることにより、ガード電極21の電圧(電圧信号V4の電圧)を交流電圧V1に追従させる。このようにして、電圧検出装置1では、ガード電極21の電圧(電圧信号V4の電圧)を交流電圧V1に追従させるフィードバック制御動作が短時間に実行されて、ガード電極21の電圧(第1演算増幅器23cのバーチャルショートにより、検出電極22の電圧でもある)が交流電圧V1に一致させられる。電圧計35は、電圧信号V4の実効値(基準電圧。ガード電極21の電圧)をリアルタイムで計測(検出)して表示する。したがって、この電圧計35に表示される数値を観測することにより、検出対象体4の交流電圧V1が検出(測定)される。
このように、この電圧検出装置1では、検出電極22を検出対象体4に対向させて配置した状態において、検出対象体4と検出電極22との間に形成されている静電容量C0および検出電極22を介して、交流電圧V1および電圧信号V4(基準電圧)の交流の電位差に応じた電流値で検出対象体4と電流電圧変換回路23との間で流れる電流信号Iを電流電圧変換回路23で検出電圧信号V2に変換し、この検出電圧信号V2(具体的には、検出電圧信号V2と基準電圧との電位差に基づいて流れる電流)を積分回路24で積分して、検出電極22の電圧(ガード電極21の電圧)と検出対象体4の交流電圧V1との電位差Vdiに応じて振幅が変化する積分信号V3を生成し、この積分信号V3をフォトカプラ26を用いて電気的に絶縁された積分信号V3aに変換し、この積分信号V3aに基づいて電圧生成回路34が電圧信号V4を生成してガード電極21に印加する。
したがって、この電圧検出装置1によれば、静電容量C0の容量値が一般的に極めて小さい(例えば数pF〜数十pF程度)ために、検出対象体4と検出電極22との間のインピーダンスを十分に大きな値(数MΩ)とすることができる結果、電流電圧変換回路23の入力インピーダンスを相対的に小さな値にできることから、電流電圧変換回路23に過電圧が印加されにくく、電流電圧変換部CVの電流電圧変換回路23に入力耐圧の低い安価な製品を使用したとしても、具体的には電流電圧変換回路23を構成する第1演算増幅器23cに入力耐圧の低い安価な製品を使用したとしても、電位差Vdiによる第1演算増幅器23cの破壊を回避することができる。
また、この電圧検出装置1によれば、絶縁回路としてフォトカプラ26を使用したことにより、電流電圧変換回路23と、その後段の回路とを任意の部位で簡易に電気的に絶縁する(分離する)ことができる。また、広い周波数範囲に亘ってフォトカプラ26の周波数特性が良好なため、広い周波数範囲に亘る検出対象体4の交流電圧V1を精度良く検出(測定)することができる。なお、フォトカプラ26等の光絶縁素子に代えてトランス(例えばパルストランス)を用いて絶縁回路を構成することもできるし、フォトカプラ26とトランスとを並列に接続して絶縁回路を構成することもできる。この構成においては、トランスの一次巻線が絶縁回路の一次側回路として機能し、二次巻線が二次側回路として機能する。この場合、前者の構成では、一般的にトランスがフォトカプラ26よりも高い周波数域で良好な周波数特性を有しているため、交流電圧V1の周波数が高い周波数に限定されているときには、トランスを使用することで、交流電圧V1を精度良く検出(測定)することができる。また、後者の構成では、低周波数域側ではフォトカプラ26が主として作動し、高周波数域側ではトランスが主として作動することにより、絶縁回路の周波数特性を広帯域化することができる結果、一層広い周波数範囲に亘る検出対象体4の交流電圧V1を精度良く検出(測定)することができる。
また、この電圧検出装置1によれば、少なくとも検出電極22の後段の回路から絶縁回路(フォトカプラ26)の一次側回路までの間の回路、本例では電流電圧変換回路23、積分回路24、駆動回路25およびフォトカプラ26をガード電極21内に収容して、これらをガード電極21で覆う構成としたことにより、外部からの電界の影響をこれら回路が受けにくくすることができる結果、交流電圧V1の検出精度(測定精度)を向上させることができる。
また、この電圧検出装置1によれば、ガード電極21内であって、ガード電極21に形成された開口部21aを臨む位置に、開口部21aから突出しない状態(非突出状態)で検出電極22を配置したことにより、外部の電界の影響を検出電極22が受けにくくすることができる結果、交流電圧V1の検出精度(測定精度)を一層向上させることができる。
また、この電圧検出装置1によれば、検出電極22における検出対象体4と対向する表面全体を絶縁物としての絶縁層21bで覆う構成としたことにより、検出対象体4と検出電極22との短絡を確実に防止することができる。
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。上記の電圧検出装置1では、ガード電極21内であって、ガード電極21に形成された開口部21aを臨む位置に、開口部21aから突出しない状態(ガード電極21の表面から凹ませた状態)で検出電極22を配置する構成を採用したが、外部からの電界の影響が少ない場合には、検出電極22を開口部21a内にガード電極21とほぼ面一の状態または一部が突出する状態で取り付ける構成や、検出電極22をガード電極21の外表面に開口部21aを覆うようにして取り付ける構成を採用することもできる。なお、いずれの構成においても、検出電極22とガード電極21とを電気的に絶縁するのは勿論である。また、ガード電極21全体を絶縁層21bで覆う構成について上記したが、検出対象体4との接触の可能性の高い検出電極22だけを絶縁層21bで覆い、他の部位を覆わない構成を採用することもできる。
また、主電源回路31が外部から交流電圧の供給を受けて正電圧Vddおよび負電圧Vssを生成する構成の場合には、コンバータ32は、正電圧Vddおよび負電圧Vssの供給を受けて正電圧Vf+および負電圧Vf−を生成する構成(DCからDCを生成する構成)に代えて、主電源回路31と同様に外部から交流電圧の供給を受けて正電圧Vf+および負電圧Vf−を生成する構成とすることもできる。なお、この構成(ACからDCを生成する構成)においても、コンバータ32は、上記した例と同様にトランスを使用することにより、一次側に対して二次側が電気的に絶縁された絶縁型電源として構成する。
また、例えば、フォトカプラ26をその駆動回路25と共に積分回路24の後段に配置して、積分信号V3をこの積分信号V3と電気的に絶縁された積分信号V3aに変換する構成を採用した例について上記したが、フォトカプラ26をその駆動回路25と共に積分回路24の前段、すなわち、電流電圧変換回路23と積分回路24との間に配置して、検出電圧信号V2をこの検出電圧信号V2と電気的に絶縁された新たな検出電圧信号に変換して積分回路24に出力する構成を採用することもできる。また、本体回路部3と電圧生成回路34との間に、駆動回路25、フォトカプラ26、および積分回路24以外の回路を適宜追加する構成を採用することもできるが、この構成を採用したときには、絶縁回路(光絶縁素子やトランス)は、電流電圧変換回路23と電圧生成回路34との間に存在するいずれかの回路において生成された信号を入力し、この入力した信号を電気的に絶縁しつつ出力するように、この信号の経路に介装される。また、前述したようにガード電極21で覆うべき部位は、検出電極22の後段の回路(本例では電流電圧変換回路23)からフォトカプラ26の一次側回路、つまり絶縁回路の一次側回路までの回路となる。このため、絶縁回路の位置を上記のように変更した場合には、絶縁回路の配置に応じてガード電極21で覆うべき回路が変わることになる。例えば、絶縁回路であるフォトカプラ26をその駆動回路25と共に積分回路24の前段に配置する構成では、電流電圧変換回路23、駆動回路25およびフォトカプラ26の一次側回路をガード電極21で覆う構成とする。また、電圧信号V4の実効値を電圧計35で検出(測定)して出力する構成と共に、またはこの構成に代えて、例えば電圧信号V4をサンプリングして、その波形を表示部に表示させるDSP(デジタル信号処理部)を備える構成を採用することもできる。
また、電流電圧変換部CVは上記の構成に代えて、図4や図5に示す構成を採用して実現することもできる。具体的には、図4に示す電流電圧変換部CVでは、電流電圧変換回路23は、ボルテージフォロアに構成された第1演算増幅器23c、および第1演算増幅器23cの非反転入力端子とガード電極21(基準電圧部)との間に配置された抵抗23dで構成されている。これにより、この抵抗23dで電流信号Iを電圧V5に変換することができ、この電圧V5(抵抗23dの両端間に発生する電圧)をバッファ(倍率が1倍の増幅器)として機能する第1演算増幅器23c(増幅器)が検出電圧信号V2として出力する。また、図5に示す電流電圧変換部CVでは、電流電圧変換回路23は、第1演算増幅器23c、第1演算増幅器23cの非反転入力端子とガード電極21(基準電圧部)との間に配置された抵抗23d、第1演算増幅器23cの反転入力端子とガード電極21との間に配置された抵抗23e、および第1演算増幅器23cの出力端子と反転入力端子との間に帰還回路として配置された抵抗23bで構成されている。これにより、抵抗23dで電流信号Iを電圧V5に変換することができ、この電圧V5(抵抗23dの両端間に発生する電圧)を非反転増幅器として機能する第1演算増幅器23c(増幅器)が検出電圧信号V2として出力する。したがって、図4,5に示す構成の電流電圧変換部CVを採用した電圧検出装置1においても、図1に示す構成の電流電圧変換部CVを採用した電圧検出装置1と同様の作用効果を奏することができる。
また、電流電圧変換回路23と積分回路24とで電流電圧変換部CVを構成する例について上記したが、図6に示すように、電流電圧変換部CVを1つの積分回路27で構成することもできる。積分回路27は、電流電圧変換回路の機能と積分回路の機能とを有し,一例として、図1に示す電流電圧変換回路23の構成を基本構成として、その抵抗23bにコンデンサ27aを並列接続して構成されている。この場合、コンデンサ27aは、一例として0.01μF程度のコンデンサで構成され、抵抗23bは、例えば1MΩ程度の高い抵抗値の抵抗で構成されている。このため、この積分回路27では、主としてコンデンサ27aに電流信号Iが流れることにより、電流電圧変換動作と同時に積分動作が行われて、検出対象体4の交流電圧V1とガード電極21の電圧(基準電圧)との電位差Vdiに比例して電圧値が変化する積分信号V3が生成される。したがって、図6に示す構成の電流電圧変換部CVを採用した電圧検出装置1においても、図1に示す構成の電流電圧変換部CVを採用した電圧検出装置1と同様の作用効果を奏することができる。なお、この積分回路27では、コンデンサ27aのみでは直流付近での帰還量が著しく低下してゲインが極端に大きくなり、バイアス電流によるオフセットで第1演算増幅器23cが飽和する虞があるため、抵抗23bはダイナミックレンジの低下を抑制するものとして機能している。また、第1演算増幅器23cの非反転入力端子とガード電極21とを抵抗23aを介して接続しているが、直接接続する構成を採用することもできる。
また、フローティング回路部2において生成されたアナログ信号である積分信号V3を、積分信号V3と電気的に絶縁されたアナログ信号である積分信号V3aとして本体回路部3に出力する構成を採用した電圧検出装置1について上記したが、積分信号V3をデジタル信号に変換して本体回路部3に出力する構成を採用することもできる。以下、図7,8を参照して、この構成を採用した電圧検出装置1A,1Bについて説明する。なお、上記した電圧検出装置1と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
最初に、電圧検出装置1Aについて説明する。電圧検出装置1Aは、図7に示すように、フローティング回路部2Aおよび本体回路部3Aを備え、検出対象体4に生じている交流電圧V1を非接触で検出可能(測定可能)に構成されている。フローティング回路部2Aは、同図に示すように、ガード電極21、検出電極22、電流電圧変換部CV、バッファアンプ28、A/D変換回路29および絶縁回路26Aを備えている。電流電圧変換部CVは、図1、図4、図5および図6に示されているいずれの回路で構成してもよいが、本例では一例として図6に示す積分回路27を採用して構成されている。バッファアンプ28は、高入力インピーダンス、かつ低出力インピーダンスのアンプで構成されて、積分回路27から出力される積分信号V3を入力して低インピーダンスで出力する。A/D変換回路29は、A/Dコンバータで構成されて、積分信号V3を所定のサンプリング周期(交流電圧V1の周期に対して十分に短い周期)でサンプリングして、積分信号V3の電圧波形を示すデジタルデータD1に変換して出力する。絶縁回路26Aは、デジタルアイソレータ(以下、「デジタルアイソレータ26A」ともいう)を使用して構成されている。デジタルアイソレータ26Aは、デジタル信号を入出力間で電気的に絶縁して伝達するデバイスであって、例えば、フォトトランジスタやフォトカプラといった光絶縁式アイソレータを用いて構成されたものや、磁気結合式アイソレータを用いて構成されたものが存在する。本例では、デジタルアイソレータ26Aは、A/D変換回路29から出力されるデジタルデータD1を電気的に絶縁されたデジタルデータD1aに変換して、配線W1を介して本体回路部3Aに出力する。
本体回路部3Aは、図7に示すように、一例として、主電源回路31、DC/DCコンバータ32、電圧生成回路34Aおよび電圧計35を備えている。電圧生成回路34Aは、処理部34d、D/A変換回路34eおよび昇圧回路34cを備えている。処理部34dは、CPUやDSP(デジタル信号処理部)で構成されて、上記した電圧検出装置1の交流増幅回路34aおよび位相補償回路34bにおいて実施されていた増幅処理および位相の調整処理などを、入力したデジタルデータD1aに対してデジタル処理にて実行して、新たなデジタルデータD2として出力する。D/A変換回路34eは、このデジタルデータD2を入力してアナログ信号に変換することにより、位相補償回路34bで生成していた電圧信号V4bと同じ信号を生成して出力する。昇圧回路34cは、この電圧信号V4bを所定の倍率で昇圧することにより、電圧信号V4を生成してガード電極21に印加する。
したがって、この電圧検出装置1Aによっても、電圧検出装置1と同様にして、容量値の一般的に極めて小さい静電容量C0を介して検出対象体4の交流電圧V1を検出(測定)することができるため、電流電圧変換部CVの電流電圧変換回路23を構成する第1演算増幅器23cに入力耐圧の低い安価な製品を使用したとしても、電位差Vdiによる第1演算増幅器23cの破壊を回避することができる。また、この電圧検出装置1Aでは、絶縁回路としてデジタルアイソレータ26Aを使用して、積分回路27から出力される積分信号V3をデジタルデータD1に変換すると共に、このデジタルデータD1を電気的に絶縁してデジタルデータD1aとして本体回路部3Aに出力するため、アナログ信号として積分信号V3を出力する構成と比較して、積分信号V3についての情報(電圧波形)を伝送路(配線W1)の温度や経時変化などの影響を受けることなく高精度で本体回路部3Aに伝達することができる結果、交流電圧V1の検出精度(測定精度)を向上させることができる。
なお、図示はしないが、電圧生成回路を、D/A変換回路34e、および電圧検出装置1の電圧生成回路34の構成要素(交流増幅回路34a、位相補償回路34bおよび昇圧回路34c)で構成して、D/A変換回路34eがデジタルデータD1aを直接入力すると共にアナログ信号に変換し、このアナログ信号に対して、交流増幅回路34a、位相補償回路34bおよび昇圧回路34cが電圧検出装置1と同様に動作して、電圧信号V4を生成する構成を採用することもできる。
次に、電圧検出装置1Bについて説明する。なお、電圧検出装置1,1Aと同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
電圧検出装置1Bは、図8に示すように、フローティング回路部2Bおよび本体回路部3Bを備え、検出対象体4に生じている交流電圧V1を非接触で検出可能(測定可能)に構成されている。フローティング回路部2Bは、同図に示すように、ガード電極21、検出電極22、電流電圧変換部CV、バッファアンプ28、PWM信号生成回路29Aおよび絶縁回路26A(デジタルアイソレータ26A)を備えている。電流電圧変換部CVは、電圧検出装置1Aと同様にして、一例として図6に示す積分回路27を採用して構成されている。バッファアンプ28は、積分信号V3を入力して低インピーダンスで出力する。PWM信号生成回路29Aは、入力した積分信号V3をパルス幅変調(Pulse Width Modulation)することにより、積分信号V3の電圧値に応じてパルス幅が変化するパルス信号(二値化信号。HighレベルおよびLowレベルが所定の電圧値に規定された信号)Spを生成して出力する。PWM信号生成回路29Aは、本例では一例として、一定の周期の三角波を生成する三角波生成回路、およびこの三角波と入力した積分信号V3とを比較してパルス信号Spを生成するコンパレータ(いずれも図示せず)を備えて構成されている。本例では一例として、PWM信号生成回路29Aは、積分信号V3の電圧値が上昇したときにはパルス幅が減少し、積分信号V3の電圧値が低下したときにはパルス幅が増加するパルス信号Spを三角波と同一周期で生成する。デジタルアイソレータ26Aは、このパルス信号Spを電気的に絶縁されたパルス信号Spaに変換して、配線W1を介して本体回路部3Bに出力する。
本体回路部3Bは、図8に示すように、一例として、主電源回路31、DC/DCコンバータ32、電圧生成回路34B、および電圧計35を備えている。電圧生成回路34Bは、本例では一例として、同図に示すように、パルス信号Spaによってオン・オフ制御されるスイッチング素子を備えて構成された駆動回路34f、一次巻線および二次巻線を有すると共に一次巻線が駆動回路34fによって駆動される昇圧トランス34g、およびこの昇圧トランス34gの二次巻線に誘起される交流電圧を整流平滑することで電圧信号V4を生成する直流変換回路34hを備え、昇圧回路として構成されている。この構成により、電圧生成回路34Bは、パルス信号Spaのパルス幅が減少したときにはスイッチング素子のオン期間が短く制御されることで、電圧信号V4を低下させ、パルス信号Spaのパルス幅が増加したときにはスイッチング素子のオン期間が長く制御されることで、電圧信号V4を上昇させる。また、電圧生成回路34Bは、この電圧信号V4をガード電極21に印加する。
したがって、この電圧検出装置1Bによっても、電圧検出装置1,1Aと同様にして、容量値の一般的に極めて小さい静電容量C0を介して検出対象体4の交流電圧V1を検出(測定)することができるため、電流電圧変換部CVの積分回路27を構成する第1演算増幅器23cに入力耐圧の低い安価な製品を使用したとしても、電位差Vdiによる第1演算増幅器23cの破壊を回避することができる。また、この電圧検出装置1Bでは、電圧検出装置1Aと同様にして、絶縁回路としてデジタルアイソレータ26Aを使用して、積分回路27から出力される積分信号V3を二値化信号であるパルス信号Spに変換すると共に、このパルス信号Spを電気的に絶縁してパルス信号Spaとして本体回路部3Bに出力するため、アナログ信号として積分信号V3を出力する構成と比較して、積分信号V3についての情報(電圧波形)を伝送路(配線W1)の温度や経時変化などの影響を受けることなく高精度で本体回路部3Bに伝達することができる結果、交流電圧V1の検出精度(測定精度)を向上させることができる。
次に、上記した電圧検出装置1、電圧検出装置1Aまたは電圧検出装置1Bを複数利用した線間電圧検出装置51について説明する。なお、線間電圧検出装置51は、電圧検出装置1のみ、または電圧検出装置1Aのみ、または電圧検出装置1Bのみで構成することもできるし、電圧検出装置1、電圧検出装置1Aおよび電圧検出装置1Bから選択された2種類の装置、さらに全種類の装置を混ぜて構成することもできるが、以下では、一例として電圧検出装置1のみで構成する例を挙げて説明する。
最初に、線間電圧検出装置51について、図面を参照して説明する。なお、以下では、三相(R相、S相およびT相)三線式の交流電路(以下、「電路」ともいう)R,S,Tの線間電圧を検出(測定)する例について説明する。
線間電圧検出装置51は、一例として、図9に示すように、電路R,S,Tの数と同数(3つ)の電圧検出装置1(以下、各電路R,S,Tに対応させて電圧検出装置1r,1s,1t(以下、特に区別しないときには「電圧検出装置1」ともいう)、算出部52、および表示部53を備え、電路R,S間の線間電圧Vrs、電路S,T間の線間電圧Vst、および電路R,T間の線間電圧Vrtを非接触で検出可能(測定可能)に構成されている。
各電圧検出装置1は、図9に示すように、上記したフローティング回路部2および本体回路部3をそれぞれ備えて同一に構成されて、各電路R,S,Tを検出対象体としてこれらの交流電圧Vr,Vs,Vt(検出対象交流電圧)に自らの電圧信号V4をフィードバック制御動作を実行して一致させる。また、本例の各電圧検出装置1r,1s,1tでは、電圧計35が、検出(測定)した電圧信号V4の波形を示す電圧データDva,Dvb,Dvcを出力する。以下、電圧データDva,Dvb,Dvcについては、特に区別しないときには「電圧データDv」ともいう。
算出部52は、CPUおよびメモリ(いずれも図示せず)を備えた算出回路で構成されて、各電圧検出装置1から出力された電圧データDvに基づいて、線間電圧を求める(算出)する線間電圧算出処理を実行する。また、算出部52は、線間電圧算出処理の結果を表示部53に表示させる。表示部53は、本例では、液晶ディスプレイなどのモニタ装置で構成されている。なお、プリンタなどの印字装置で構成することもできる。また、各本体回路部3は、後述するように互いのグランドG1同士が接続される。また、算出部52および表示部53は、3つの本体回路部3のうちのいずれか1つの本体回路部3に含まれている主電源回路31から正電圧Vddおよび負電圧Vssの供給を受けて作動する。この構成により、各フローティング回路部2、各本体回路部3、算出部52および表示部53は、大地からフローティングされた状態となっている。
次いで、線間電圧検出装置51の検出動作(測定動作)について説明する。
まず、検出(測定)に際して、図9に示すように、電圧検出装置1rで電路Rの交流電圧Vrを検出(測定)するため、そのフローティング回路部2を電路Rに近づけると共に、その検出電極22を対応する電路Rに対向させる。同様にして、他の電圧検出装置1s,1tについても、電路S,Tの交流電圧Vs,Vtを検出(測定)するため、各フローティング回路部2の検出電極22を対応する電路S,Tにそれぞれ対向させる。これにより、各検出電極22と各電路R,S,Tとの間に静電容量C0(図1参照)がそれぞれ形成された状態となる。この場合、各静電容量C0の容量値は、各検出電極22と電路R,S,Tの芯線の距離に反比例して変化するが、フローティング回路部2を配設し終えた後は、湿度などの環境条件が一定のもとでは一定となる(変動しない)。また、静電容量C0の容量値が一般的に極めて小さい(例えば数pF〜数十pF程度)ために、電路R,S,Tと各検出電極22との間のインピーダンスが十分に大きな値(数MΩ)となる。これにより、線間電圧検出装置51においても、各電路R,S,Tと、対応する各検出電極22との間の電位差Vdiが大きい場合であっても、電路R,S,Tの交流電圧Vr,Vs,Vtによって、各電圧検出装置1の第1演算増幅器23cが破壊される事態が防止されている。また、各電圧検出装置1のグランドG1同士を接続(短絡)することにより、各電圧検出装置1のグランドG1の電位を共通化する。
次いで、線間電圧検出装置51の起動状態において、電圧検出装置1rでは、フィードバックループを構成する電流電圧変換回路23、積分回路24、駆動回路25、フォトカプラ26および本体回路部3が、電路Rの交流電圧Vrの変化に対応させて、電圧信号V4の電圧値を変化させるフィードバック制御動作を実行することにより、ガード電極21の電圧(電圧信号V4の電圧および検出電極22の電圧でもある)を交流電圧Vrに追従させる。また、他の電圧検出装置1s,1tでも、フィードバックループを構成する電流電圧変換回路23、積分回路24、駆動回路25、フォトカプラ26および本体回路部3が、電路S,Tの交流電圧Vs,Vtの変化に対応させて、電圧信号V4の電圧値を変化させるフィードバック制御動作を実行することにより、それぞれのガード電極21の電圧(電圧信号V4の電圧および検出電極22の電圧でもある)を交流電圧Vs,Vtに追従させる。また、各電圧検出装置1の電圧計35は、検出(測定)した電圧信号V4の電圧、すなわち各電路R,S,Tの交流電圧Vr,Vs,Vtの波形を示す電圧データDva,Dvb,Dvcを連続して出力する。
算出部52は、各電圧検出装置1から出力された各電圧データDva,Dvb,Dvcを入力してメモリに記憶する。次いで、算出部52は、線間電圧算出処理を実行する。具体的には、算出部52は、各電圧データDva,Dvbの差分電圧を算出することにより、各電路R,S間の線間電圧Vrsを求める(算出する)。また、算出部52は、同様にして、各電圧データDvb,Dvcの差分電圧を算出することにより、各電路S,T間の線間電圧Vstを求め(算出し)、各電圧データDva,Dvcの差分電圧を算出することにより、各電路R,T間の線間電圧Vrtを求める(検出する)。この場合、前述したように、各電圧検出装置1は共通化されたグランドG1を基準として各電路R,S,Tの交流電圧Vr,Vs,Vtを検出(測定)するため、基準電位がどのような電位であったとしても、各交流電圧Vr,Vs,Vtの差分電圧を算出することにより、各線間電圧Vrs,Vst,Vrtが正確に求められる(算出)される。また、算出部52は、算出した線間電圧Vrs,Vst,Vrtを表示部53に表示させる。
このように、この線間電圧検出装置51によれば、電圧検出装置1を使用したことにより、各電圧検出装置1における電流電圧変換回路23を構成する第1演算増幅器23cに入力耐圧の低い安価な製品を使用したとしても、電位差Vdiによる第1演算増幅器23cの破壊を回避することができるため、装置コストの低減を図りつつ、線間電圧Vrs,Vst,Vrtを検出(測定)することができる。
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、主電源回路31およびコンバータ32をそれぞれ備えた同一構成の電圧検出装置1を複数使用した例について上記したが、複数の電圧検出装置1のうちの1つに主電源回路31およびコンバータ32を配置し、この電圧検出装置1から残りの電圧検出装置1に対して正電圧Vdd、負電圧Vss、正電圧Vf+および負電圧Vf−を供給する構成を採用することもできる。