JP2010005670A - ダイカスト用金型 - Google Patents

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忠弘 岩倉
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Abstract

【課題】かご形誘導電動機の回転子などを対象として、銅,銅合金などの高融点金属材のダイカスト製品を安価な生産コストで量産できるように金型構造を改良したダイカスト用金型を提供する。
【解決手段】銅,銅合金などの高融点金属の鋳造に適用するダイカスト用金型で、その金型8の固定,可動母型9,10にはキャビティを構成する部位に交換可能な“入れ子”を設けたものにおいて、“入れ子”17を安価な汎用金属板の絞り加工成形品で構成し、操業中に “入れ子”17が損傷した場合には、“入れ子”を予備のものと交換するため次のようにする。
(1)“入れ子”17を予熱ヒータ15付きのホルダ18に組み付けた上で、このホルダを母型9,10に形成した凹所内に嵌め込んで取付ける。
(2)前記ホルダ18の外面と母型9,10の凹所との間に突起状のリテーナ19を介して断熱空隙20を確保し、“入れ子”17のヒータ予熱状態を安定保持させる。
【選択図】 図1

Description

この発明は、かご形誘導電動機の回転子などを対象に、その導体バー,エンドリングを純銅や銅合金などの高融点金属材で鋳造するダイカスト用金型に関する。
まず、頭記したかご形誘導電動機の一般的な回転子構造を図3(a)〜(c)に示す。周知のように、かご形誘導電動機の回転子1は、アルミ合金製の導体バー2と、導体バー2の両端に結合した一対のエンドリング(短絡環)3からなるケージ4を鋼板積層体の鉄心5に組み合わせた構成になり、一般には鉄心5をダイカスト用金型の内部に挿入セットした上で、この金型にアルミ合金の溶湯を加圧注入してケージ3を鋳造するダイカスト法で作られている。なお、5aは鉄心5の周上に沿って形成した導体バー2の鋳込み用スロット、6はエンドリング3の端面に一体成形したファン兼用の放熱フィン、7はバランス取り用のウエイト取付ピンである。
次に、前記したアルミ合金製の回転子1を鋳造するダイカストマシンの基本的な金型構造を模式図として図4に示す。図4において、ダイカスト用金型8は固定母型9と、可動母型10と、先記した鉄心5を挿入セットする中間型11とからなり、この金型8にアルミ合金の溶湯を送り込むスリーブ12を組み合わせてダイカストマシンを構成している。ここで、固定母型9,可動母型10には、図3に示した回転子1のエンドリング3に対応した円環状のキャビティを構成するキャビティブロック13を“入れ子”として装備している。
上記のダイカスト用金型でかご形誘導電動機の回転子1を鋳造するには、金型8の中間型11に回転子鉄心5(図3(b)参照)を挿入セットして金型8を型締めした状態で、スリーブ12にアルミ合金の溶湯(溶融アルミ合金)Aを供給し、プランジヤ12aの押圧操作により溶湯を高速で金型に向けて押し出す。これにより、溶湯Aはゲート14を通じて金型内のキャビティ,および鉄心5のスロット5aに充填されて鉄心5に導体バー2,エンドリング3が鋳造される。
また、前記したアルミ合金のダイカスト用金型の金型材料については、一般にSKD61などの熱間金型用の合金工具鋼が使用されている。
この場合に、ダイカスト用金型8においては、高温,高圧で流れ込む溶湯Aとの摩擦、アルミ合金の凝固,脱型に伴って金型の表面に作用する熱的、機械的な負荷が繰り返し作用することから、金型8のキャビティ表面にはヒートチェック(微細な亀裂)や溶損などの損傷が生じて金型の寿命が低下するという問題があるが、溶湯が低融点金属のアルミ合金である場合に、実用的な金型の寿命は約10万ショット以上とも言われている。
一方、前記のかご形誘導電動機については、電動機の効率,特性を高めるために、図3に示した導体バー2,エンドリング3を、アルミ合金に代えて導電率の高い純銅,あるいは銅合金で構成したものもある(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。
この場合に、先記したアルミ合金ダイカスト用の金型8をそのまま使用して純銅の導体バー,エンドリングを鋳造すると、純銅の融点は1083℃と高いことから金型に作用する熱衝撃も大きく、このためにわずか数回のショットで溶湯に接触する金型のキャビティ表面に微細な亀裂のヒートチェックが発生して金型の寿命が著しく低下してしまう。
そこで、純銅,銅合金のような高融点金属材の鋳造に適用するダイカスト用金型には、その寿命対策として従来よりいろいろな工夫がなされおり、その一例として、先記したSKD61よりも高耐熱性のNi基合金、Co基合金などの耐熱合金、またはセラミック、サーメット材など特殊材料を用いて金型を構成する、さらには金型のキャビティ面を窒化処理して改質するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、図5で示すように固定側,可動側の母型9,10に嵌め込んだキャビティブロック13(“入れ子”)を前記のように耐熱性の高い材質で製作するとともに、銅,銅合金の溶湯Aから受ける充填直後の温度と金型温度の差に起因する熱的衝撃の緩和,加熱立ち上げ時間の短縮,および溶湯捨て打ち量の減少による製品歩留りの向上を狙いに、キャビティブロック13には予熱ヒータ(カートリッジヒータ)15を付設して金型を200〜650℃に予熟するようにし、さらにこの予熱温度を安定保持するためにキャビティブロック1と母型9,10との間に高い型締め圧力にも充分に耐える樹脂やセラミック製などの断熱材16を追加装備した構成になるダイカスト用金型の製品も出現している。
そのほかにも、ダイカスト用金型の寿命延命対策として、キャビティ面の損傷箇所に局所的な肉盛り溶接を施す金型の補修方法なども知られている。
特開昭58−86847号公報 特開平6−86516号公報 特開2003−10958号公報
ところで、先記のようにダイカスト用金型に高価な耐熱材料を採用するなどして金型寿命を延ばす対策を施したとしても、銅などの高融点金属材溶湯の繰り返しショットに伴いヒートチェック,溶損に起因する金型の破損の発生が完全に無くなる訳ではなく、金型寿命を延ばす効果には限界がある。また、金型が破損に至るよう大きな割れの発生時期を予測することも困難であることから、金型に生じた損傷の程度に応じて“入れ子”であるキャビティブロック13(図5参照)を随時交換してダイカストマシンの操業を続ける必要がある。
このために、ダイカストマシンを長期に亙り安定操業してダイカスト製品(かご形誘導電動機の回転子)を量産するには、平時から高価な金型の予備品を多数保有しておく管理体制,および予備金型の保有に要する高額な費用の投資が必要となり、結果として生産コストが嵩んでしまうという問題点がある。
加えて、図5の金型に追加装備した断熱材16は、大きな型締め力にも耐える強度(剛性)が要求されることから断熱性能の高いポーラス構造の断熱材料は使えず、そのために充分な断熱効果は期待できない。
この発明は上記の点に鑑みなされたものであり、先記したかご形誘導電動機の回転子などを対象として、銅,銅合金などの高融点金属材のダイカスト製品を量産する場合に、従来のように金型を高価な耐熱材料で構成する、あるいは操業中に損傷した金型に肉盛り溶接などの補修を施して延命を図る寿命対策から発想を転換し、安価な生産コストでダイカスト製品の量産が実現できるように金型構造を改良したダイカスト用金型を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、この発明によれば、銅,銅合金などの高融点金属のダイカスト用金型であって、その母型にはキャビティを構成する部位に交換可能な“入れ子”を設けたものにおいて、
前記“入れ子”を汎用金属薄板の絞り加工成形品で構成し(請求項1)、具体的には次記のような態様で実現する。
(1)前記のダイカスト用金型において、“入れ子”を予熱ヒータ付きのホルダに組み付けた上で、このホルダを母型に形成した凹所内に嵌め込んで取付ける(請求項2)。
(2)前項(1)において、ホルダの外面と母型の凹所との間に、突起状のリテーナ部材を介して断熱空隙を確保する(請求項3)。
(3)また、前記構成のダイカスト用金型は、回転子鉄心に純銅,もしくは銅合金の導体バー,エンドリングを鋳込むかご形誘導電動機に適用するものとして、そのエンドリングに対応した形状の“入れ子”を母型に着脱可能に設置する(請求項4)。
上記構成のダイカスト用金型を採用することにより、次記のような効果を奏する。
まず、汎用金属薄板の絞り成形加工で製作した“入れ子”は先記した高耐熱性金属材と比べて材料費も安く、かつ絞り成形加工も容易で安価に製作できことから、ユーザーは大きな経費の負担を掛けずに数多い予備の“入れ子”の保有が可能である。
したがって、従来のようにキャビティブロック13(図5参照)に高価な耐熱材料を用いて製作した金型と比べて、操業に伴う“入れ子”の損傷程度の進行が早まり、このために“入れ子”の部品交換頻度が増え、かつ交換した使用済みの“入れ子”は使い捨て(ワンウエー)になるものの、トータル的には安価な生産コストで多量のダイカスト製品を量産することができる。
しかも、操業途中で、金型の“入れ子”が損傷して新しい“入れ子”に部品交換する場合でも、金属薄板の絞り成形品になる“入れ子”は熱容量が小さくて素早い温度の立ち上がりにも対応でき、かつ“入れ子”の部品交換にも大きな手間を掛けずに短時間で交換作業を終了できることから、高い操業効率を維持してダイカスト製品を量産することが可能となる。
また、前記“入れ子”のホルダは、突起状のリテーナ部材を介して金型の母型との間に断熱空隙を確保したことにより、溶湯注入による熱衝撃を抑えて“入れ子”に発生する熱応力を低減して部品の長寿命化が図れる。しかも、この断熱空隙による“入れ子”の断熱構造によれば、従来のように硬質樹脂やセラミックなどの高価な断熱材をキャビティブロックに付設する(図5参照)必要がなく、安価なコストで高い断熱効果を発揮できる。
以下、かご形誘導電動機の回転子の鋳造に適用するダイカスト用金型を対象に、この発明の実施の形態を図1,図2に示す実施例に基づいて説明する。なお、図1は鋳造状態を表す金型構造の模式図、図2(a),(b)は図1の金型における“入れ子”の正面図,および断面図あり、図4,図5の金型に対応する部材には同じ符号を付してその説明は省略する。
すなわち、図示実施例の金型構造においては、図5の従来構造におけるキャビティブロック13に代えて、薄肉な汎用金属薄板の絞り加工で成形した“入れ子”17と、予熱ヒータ(カートリッジヒータ)15を内蔵して前記“入れ子”17の背面側に重ね合わせたホルダ18との部品組立体を、固定側,可動側の母型9,10に形成した嵌め込み凹所内に取付けて、かご形回転子のエンドリング3(図3参照)に対応するキャビティを構成している。なお、前記ホルダ18は溶湯に直接接触することがなく、例えば母型9,10と同様なSKD61などの熱間金型用の合金工具鋼で作られている。
ここで、前記“入れ子”17の形状は図3に示した回転子のエンドリング3の外形(円環状)に対応した型形状で、図1(b),(c)で示すように底面中央に円形段部17aを膨出し、この段部と外周面との間に円環状のキャビティ部17bを形成するとともに、外周縁には鍔部17cを形成したハット形状の絞り成形加工品になる。また、この“入れ子”17の材質はステンレス鋼,合金鋼,炭素鋼などの汎用金属板で、その実用的な厚さは0.5〜3.0mm程度である。
また、“入れ子”17の背面に重ね合わせたホルダ18には、その背面,外周面に突起のリテーナ19を分散して突設形成しておき、このリテーナ19の先端を固定側,可動側母型9,10の凹所内面に突き当ててホルダ18と母型9,10との間に断熱空隙20を確保するようにしている。なお、前記リテーナ19は母型9,10の内面側に突設してもよい。
上記構成のダイカスト用金型8は、操業中に予熱ヒータ15を通電して“入れ子”17を200℃以上に予熱しておく。そして、金型8の中間型11に図3に示したかご形誘導電動機の回転子鉄心5を挿入セットして型締めした状態で、スリーブ12に供給した純銅,銅合金の溶湯Aをプランジャ12aの押圧操作により金型に向けて送り出すと、図4のダイカスト用金型で述べたと同様に、溶湯(銅,銅合金の溶融金属)はランナーのゲート14を通じて“入れ子”17の内面側に形成したキャビティ,および鉄心5のスロット5aに充填されて銅材の導体バー2,エンドリング3が鋳造される。
そして、ダイカストの繰り返しショットにより“入れ子”17の損傷が進行して寿命に至った際には、損傷した“入れ子”17を取り外し、ユーザーが保有していた予備の“入れ子”と交換して操業を続けるようにする。
なお、かご形誘導電動機の回転子の導体バー2,エンドリング3をアルミ合金よりも導電性,伝熱性の高い純銅,銅合金で鋳造することにより、電動機の運転に伴う回転子のジュール発熱量も減少することから、図3の回転子構造でアルミ合金性回転子1のエンドリング3に形成した放熱フィン6は省略可能となる。また、回転子1のバランス取りにはバランスウエイトを用いずに、エンドリング3の周上の一部をトリミングする方法でも対応できることから、図示実施例のダイカスト用金型8で使用する“入れ子”17は、図3に示した放熱フィン6,バランス取り用のウエイト取付ピン7に対応するキャビティの複雑な凹凸形状を排除し、キャビティ面の形状を単純化して絞り成形加工が容易に行えるようにしている。
上述のように、汎用金属薄板の絞り成形加工で製作した金型の“入れ子”17は、高耐熱性金属材と比べて材料費も安く、かつ成形加工も容易で安価に製作できことから、ユーザーは大きな経費の負担を掛けずに数多い予備の“入れ子”の保有が可能である。したがって、キャビティブロックに高価な耐熱材料を用いて製作した従来の金型と比べて、金型寿命(ダイカストのショット回数)が短くなって“入れ子”17の部品交換頻度が増え、かつ交換した使用済みの“入れ子”は使い捨て(ワンウエー)になるものの、トータル的には安価な生産コストで多量のダイカスト製品を量産できる操業面での経済的効果が得られる。
この発明の実施例によるダイカスト用金型の模式構造図 図1における“入れ子”の構造図で、(a),(b)はそれぞれ正面図,および断面図 アルミ合金で回転子の導体バー,エンドリングをダイカストしたかご形誘導電動機の回転子構造図で、(a),(b),(c)はそれぞれ回転子のケージ、鉄心,および回転子組立体の外形斜視図 図3に示した回転子の鋳造に適用するダイカスト用金型の模式構造図 銅,銅合金などの高融点金属材に対応した従来例のダイカスト用金型の模式構造図
符号の説明
1 かご形誘導電動機の回転子
2 導体バー
3 エンドリング
5 回転子の鉄心
5a スロット
8 ダイカスト用金型
9 固定母型
10 可動母型
11 中間型
12 スリーブ
15 予熱ヒータ
17 汎用金属薄板の絞り加工成形品になる“入れ子”
18 “入れ子”のホルダ
19 リテーナ
20 断熱空隙
A 溶湯

Claims (4)

  1. 銅,銅合金などの高融点金属のダイカスト用金型であって、その母型にはキャビティを構成する部位に交換可能な“入れ子”を設けたものにおいて、
    前記“入れ子”を汎用金属薄板の絞り加工成形品で構成したことを特徴とするダイカスト用金型。
  2. 請求項1に記載のダイカスト用金型において、“入れ子”を予熱ヒータ付きのホルダに組み付けた上で、このホルダを母型に形成した凹所内に嵌め込んで取付けた特徴とするダイカスト用金型。
  3. 請求項2に記載のダイカスト用金型において、ホルダの外面と母型の凹所との間に、突起状のリテーナ部材を介して断熱空隙を確保したことを特徴とするダイカスト用金型。
  4. 請求項1ないし3のいずれかの項に記載のダイカスト用金型において、当該金型が回転子鉄心に純銅,もしくは銅合金の導体バー,エンドリングを鋳込むかご形誘導電動機に適用するダイカスト用の金型であり、前記エンドリングに対応した形状の“入れ子”を母型に着脱可能に設置したことを特徴とするダイカスト用金型。
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