JP2009511604A - 緑内障の原発性形態および続発性形態を処置するための方法 - Google Patents
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Abstract
(i)原発性開放隅角緑内障(POAG)、(ii)他の形態の緑内障、または(iii)グルココルチコイド治療と関連する高眼圧をコントロールするための方法および組成物が開示される。本方法は、眼球の前方セグメントに対する局所注入による血管新生抑制剤、および他のIOP降下剤の投与を含む。もっとも好ましいIOP降下剤は、血管新生抑制性ステロイド、特に酢酸アネコルタブであり、もっとも好ましい投与ルートは、前強膜近傍注入またはインプラントである。本発明の一部は、酢酸アネコルタブの前強膜近傍への注入が、1から数ヶ月の長期に亘って眼内圧のコントロールを可能とするという発見に基づく。この結果は、前強膜近傍投与ルートによって酢酸アネコルタブの線維柱網に対するアクセスが促進されるためと考えられる。
Description
(発明の背景)
本出願は、米国出願第60/726,740号(2005年10月14日出願)および米国出願第60/753,751号(2005年12月23日出願)からの優先権を主張する。
本出願は、米国出願第60/726,740号(2005年10月14日出願)および米国出願第60/753,751号(2005年12月23日出願)からの優先権を主張する。
(発明の分野)
本発明は、(i)原発性開放隅角緑内障、(ii)他の形の緑内障、または(iii)グルココルチコイド治療と関連する高眼圧を、血管新生抑制剤および他のIOP降下剤を、眼球の前方セグメントへ局所注入することによって、特に、前強膜近傍へ注入することによってコントロールするための方法および組成物に関する。
本発明は、(i)原発性開放隅角緑内障、(ii)他の形の緑内障、または(iii)グルココルチコイド治療と関連する高眼圧を、血管新生抑制剤および他のIOP降下剤を、眼球の前方セグメントへ局所注入することによって、特に、前強膜近傍へ注入することによってコントロールするための方法および組成物に関する。
(関連技術分野の記述)
「緑内障」は、アメリカ合衆国の黒人およびヒスパニックにおける非可逆性失明の主要原因、アメリカ合衆国白人の失明の第二主要原因、および、先進国および発展途上国の両方を含めた世界全国の失明の主要原因となっている一連の侵食的眼疾患である。この疾患は、40歳を超える全成人の0.4%から3.3%を冒していると推定されている(Leske,M.C. et al.(1983);Bengtsson,B.(1989);Strong,N.P.(1992))。さらに、この疾患の出現頻度は、年齢と共に上昇し、75歳以上では6%を超える(Strong,N.P.,(1992))。2010年には、世界中で6千50万人の人々が、開放隅角緑内障および閉塞隅角緑内障に冒され、2020年にはそれが7千960万人に増加すると推定されている(Quigley and Broman 2006)。全ての緑内障において、眼圧低下は、病気の進展速度の低下、ならびに障害および失明へ向かう進行速度の低下と強く相関する。「眼内圧(IOP)」と呼ばれる眼圧の低下は、この疾患の効果的治療のための唯一知られる方法である。IOPの1mmHgの低下毎に、進行性損傷の機会が約10%減少することが知られる。
「緑内障」は、アメリカ合衆国の黒人およびヒスパニックにおける非可逆性失明の主要原因、アメリカ合衆国白人の失明の第二主要原因、および、先進国および発展途上国の両方を含めた世界全国の失明の主要原因となっている一連の侵食的眼疾患である。この疾患は、40歳を超える全成人の0.4%から3.3%を冒していると推定されている(Leske,M.C. et al.(1983);Bengtsson,B.(1989);Strong,N.P.(1992))。さらに、この疾患の出現頻度は、年齢と共に上昇し、75歳以上では6%を超える(Strong,N.P.,(1992))。2010年には、世界中で6千50万人の人々が、開放隅角緑内障および閉塞隅角緑内障に冒され、2020年にはそれが7千960万人に増加すると推定されている(Quigley and Broman 2006)。全ての緑内障において、眼圧低下は、病気の進展速度の低下、ならびに障害および失明へ向かう進行速度の低下と強く相関する。「眼内圧(IOP)」と呼ばれる眼圧の低下は、この疾患の効果的治療のための唯一知られる方法である。IOPの1mmHgの低下毎に、進行性損傷の機会が約10%減少することが知られる。
緑内障の病因学は、依然として米国およびその他の国々における多くの研究の主題である。この病気の原因は、依然として、完全には明らかになっていないが、眼球の線維柱帯組織が、この疾患において、特に、眼球内の流体力学の維持に関して決定的役割を果たしていることが知られる。具体的には、線維柱網が本来のように機能しなくなると、この機能不全は、眼球から離れる眼房水の生常時の能力を滞らせ、IOPの上昇を招き、これが、適切にかつ時宜をえて治療されないと、進行性の視力低下、視力障害、および失明を招く。
眼内圧の上昇はまた、炎症性疾患を治療するためにコルチコステロイドを使用した結果として起こる場合もある。コルチコステロイド、特に、グルココルチコイドは、近年、様々の炎症性疾患の治療に使用されている。例えば、過去数年、グルココルチコイドは、特に下記のものが、眼球背部の、ある種の障害を治療するために医学界によって使用されている。Kenalog(登録商標)(トリアムシノロンアセトニド)、Celestone Soluspan(登録商標)(ベータメタゾンリン酸ナトリウム)、Depo−Medrol(登録商標)(酢酸メチルプレドニソロン)、Decadron(登録商標)(デキサメタゾンリン酸ナトリウム)、Decadron L.A.(登録商標)(酢酸デキサメタゾン)、およびAristocort(登録商標)(トリアムシノロンジアセテート)である。このようにして治療される障害としては、血管閉塞による黄班浮腫および糖尿病網膜症が挙げられる。トリアムシノロンはまた、白内障の手術後にも投与され、他の硝子体網膜症と関連する黄班浮腫を持つ眼球にも投与される。
これらの製薬は、一般に、眼球周辺注入によって、または、炎症性障害の治療では硝子体内注入によって局所的に投与される。効果的で、安全な治療法が欠如するために、例えば、網膜浮腫および加齢性黄班変性(AMD)の治療のためのグルコルチコイドの使用に次第に大きな関心が寄せられている。Bausch & Lomb and Control Delivery Systemsは、最近、黄班浮腫治療用の硝子体内インプラントを介して送達されるフルオロシノロンアセタニド関してFDAの承認を得た。Oculex Pharmaceuticalsは、頑固な黄班浮腫用のデキサメタゾンインプラントについて研究中である。さらに、眼科医は、治療抵抗性の(recalcitrant)嚢胞性糖尿病黄班浮腫および浸出性AMDの治療用として、トリアムシノロンアセトニドの硝子体内注入について実験している。
炎症性障害の治療のためにグルココルチコイドを投与することも、眼圧の上昇を招く可能性のあることが知られる。グルココルチコイドは、線維柱網におけるミオシリン(MYOC)の発現を増し、それによってミオシリンタンパクの分泌を増し得る。MYOCは、元々差次的に発現される遺伝子として発見され、緑内障患者に認められる突然変異によって、緑内障連結部位GLC1Aにマップされる。MYOCは、線維柱網を含む様々の組織において発現される。グルココルチコイドの投与によってもたらされるMYOC発現の増大が、線維柱網のうっ血を引き起こし、これが、次に、IOPの上昇をもたらすと考えられている。トリアムシノロンの硝子体内注入と、IOP上昇の頻度および持続時間が相関することを多くの著者が記録している。IOP上昇は早くも4日で出現し、60mmHgに近い、またはそれを超えるIOPに達することもあり得る(非特許文献1)。通常、IOP上昇は、ステロイドの注入の2から3週後に始まり(Epstein et al.1997)、6から8ヶ月続き得る(Jonas 2003;Jonas 2004)。IOP降下剤の局所投与は、IOPの上昇に若干の緩和をもたらすが、多くの場合、眼球組織への損傷を回避するに足るほど十分にIOPを下げない。さらに、多くの患者は、上昇したIOPに対処するために、複数のIOP降下剤を処方され、しかもその全てを自ら局所投与によって投薬しなければならない。
グルココルチコイドによる、眼球背部の、このような障害の治療は効果的ではあるが、ステロイドに関連して、突然IOPが上昇する合併症がもっとも一般的な合併症の一つとして見られる。これは、数日以内に起こり、少なくとも6ヶ月続き、この上昇IOPを降下させるための薬剤を必要とし、しかも、硝子体内、あるいは、眼球内または周辺に薬剤が連続的に存在するために、重大な、視覚障害性合併症となり得る。このIOP上昇の病因学は、ほんの部分的にしか理解されていない。グルココルチコイドの投与後、線維柱網細胞の形態的および生化学的変化が見られる。このような改変としては、細胞サイズの増大、および細胞骨格の再組織化が挙げられるが、これらは、線維柱網細胞におけるミオシリンmRNAの顕著な誘発に一部よるものと考えられている。
グルココルチコイドによる治療の結果IOP上昇を来たした患者は、通常、この副作用に対処するために、多くのIOP降下薬剤を局所的に処方される。多くの患者では、グルココルチコイド投与によるIOPの上昇は、通常局所的に送達される複数のIOP降下剤の同時投薬にも拘わらず、固執する傾向がある。最近出回っているIOP降下剤は、多くの場合、これらのステロイド誘発性のIOP上昇を十分にコントロールできない。このような場合、通例のろ過手術またはシャントを伴う外科的介入が必要となることがある。このような手術には、特に、ろ過手術の失敗および合併症に対するさらなるリスクが複数ある可能性のある被験者グループにとっては、かなりの内在的危険が伴う。さらに、そのIOP降下剤の処方における服用規則を100%守らない人の方が多い傾向があり、このような規則遵守の不足が、失明をもたらす可能性がある。
IOP上昇を示す患者に対し現在利用可能な治療処方には、通常、その原因とは無関係に、IOP降下性化合物を含む一または複数の点眼薬または丸剤を、1日1回から1日複数回局所投与することが含まれる。さらに、作られる眼房水の量を下げる丸剤は、1日2から4回の範囲で与えられ得る。緑内障初期患者の約40%(高眼圧治療試験;“OHTS”)、より進行した緑内障患者の約75%(初期緑内障治療共同試験;“CIGTS”)が、IOPを十分に下げるために一つを超える緑内障薬剤を必要とすると推定されている。
緑内障治療では、規則遵守および補助治療の両方が重大な問題となっている。さらに、現在、慣用的に、投与当たり24時間を超える間隔で与えられ得る眼内圧(IOP)低下剤は、存在しない。現在の緑内障治療は全て、局所的か、または経口的に与えられるが、別のIOP降下剤に加えられる場合、IOP低下が新たに25%低下することは慣用的にない。さらに、相当数の患者において、1種以上の既存のIOP降下剤を局所投与しても十分にIOPをコントロールすることができない。このような患者においてIOPの十分なコントロールを実現するためには、多くの場合、従来の緑内障ろ過手術またはシャントが必要となる。これらの患者のIOPを手術に訴えることなくコントロールするための改良手段が強く求められている。この需要に応え、本発明は、このような患者において、新しい投与ルートを用いることによって、特に、酢酸アネコルタブ、または他の血管新生抑制剤の前強膜近傍注入によって、IOPの十分なコントロールを実現するための手段を提供する。
点眼薬を取ることができない人が多い(Sleath et al.,2000)。さらに、丸剤には、それと関連する有害事象が多くあり、このため、患者の50%を超える人々が、短期間の使用ですらも、それらを忍容することができない。さらに、薬剤の局所使用に関して処方された治療レジメンを遵守しない患者がたくさんいる。投薬レジメンが複雑になればなるほど、患者の治療法を固守する態度が見られなくなる(Robin and Covert,2005)。処方される治療レジメンの効果、および患者に与えられる利益は、患者の薬剤の服用が不適切になるにつれて減少する。さらに、多くの患者は、一旦診断され薬を処方されると、定期的な経過観察に戻ってこない(Nordstrom et al.,2005)。
治療レジメンに対する患者の遵守性を調べた文献を総覧すると、眼障害(すなわち、緑内障)は、服用条件遵守性リストの最下部に当たる5条件の中に含まれることがわかった(DiMatteo 2004)。眼障害患者の低遵守率は、一部は、治療レジメンの変動(処方される1日当たりの投与回数、処方される薬剤の数、投与ルート、遵守性の評価法、および遵守性試験期間の長さを含む)に関連する可能性があると考えられている。ある文献は、点眼レジメンに対する遵守性が40%から78%の範囲にあると推定した(Gurwitz et al.1998;Spooner et al.2002;Lee et al.2000;Patel and Spaeth 1995;Claxton et al.2001)。その原因が何であれ、非遵守性は、不十分な眼内圧コントロール、および視野欠損の増大をもたらす。
一つの形態の緑内障によるものであれ、または、コルチコステロイドの投与によるものであれ、薬剤の毎日の自己投与を必要とせずに、患者に持続的効力を発揮し、IOPの降下を実現する、眼内圧上昇治療用の管理レジメンが求められている。薬剤の補充をしなくてもよく、複数回の経過観察を欠席することのある人でも受け入れ可能とする治療が求められている。本発明の方法および組成物はその要求に応える。
(文献)
さらなる背景情報のために、下記の文献を参照してもよい。これらの文献が、本明細書に記載されるものを補足する、例示の実験手順、またはその他の詳細を提供するその程度に応じて、これらの文献の内容も、参照を通じて特異的に本明細書に含められる。
さらなる背景情報のために、下記の文献を参照してもよい。これらの文献が、本明細書に記載されるものを補足する、例示の実験手順、またはその他の詳細を提供するその程度に応じて、これらの文献の内容も、参照を通じて特異的に本明細書に含められる。
(発明の要旨)
本発明は、緑内障治療薬を、患者の眼球の前方セグメントに、好ましくは、薬剤デポの前強膜近傍投与によって投与することによって、緑内障を治療するための、または、眼内圧(IOP)の上昇をコントロールするための方法および組成物を含む。ある実施態様では、投与される薬剤は、IOP降下剤である。本発明の方法に従って投与される薬剤は、血管新生抑制コルチセンなどの血管新生抑制剤である。
本発明は、緑内障治療薬を、患者の眼球の前方セグメントに、好ましくは、薬剤デポの前強膜近傍投与によって投与することによって、緑内障を治療するための、または、眼内圧(IOP)の上昇をコントロールするための方法および組成物を含む。ある実施態様では、投与される薬剤は、IOP降下剤である。本発明の方法に従って投与される薬剤は、血管新生抑制コルチセンなどの血管新生抑制剤である。
好ましい一実施態様では、本発明は、ある形態の緑内障を有する患者の眼内圧を下げるための方法を提供する。本発明の方法によれば、IOP降下剤を含む組成物は、前強膜近傍デポ投与によって高眼圧に悩む患者に投与される。IOP降下剤は、眼内圧の低下をもたらすものであれば、公知のどのような薬剤であってもよく、例えば、カルボニニックアンヒドラーゼ阻害剤、ベータ遮断剤、アルファ作用剤、セロトニン作用剤、エタクリン酸、縮瞳薬、プロスタグランジン類縁体、また血管新生抑制剤であってもよい。薬剤は、血管新生抑制剤、例えば、血管新生抑制コルチセンであることが好ましい。
別の好ましい実施態様では、本発明は、グルココルチコイドの硝子体内注入、またはその他の投与によって高眼圧を有する、または、高眼圧を発症する危険性のある患者において眼圧を下げるための方法を提供する。本発明の方法は、硝子体網膜障害、または、眼球背部のその他の障害の治療のためにグルココルチコイドの投与を受けたことのある、または受ける予定の患者に対し、治療的有効量のIOP降下剤を含む組成物を投与することを含む。通常、IOP−降下剤の投与は、グルココルチコイドの硝子体内注入の前か、その後か、または、それと同時に行われる。
グルココルチコイドは、網膜障害、または眼球背部のその他の障害を治療するために、または、外科処置による炎症を治療するために使用される、任意のグルココルチコイドであってよいと考慮されるが、ある好ましい実施態様では、グルココルチコイドは、トリアムシノロンアセトニドである。別の好ましい実施態様では、グルココルチコイドは、フルオシノロンアセトニド、デキサメタゾン、プレドニソロン、またはロトプレドニソールなどである。
一般に、本発明の方法は、治療を要する患者に対し、治療有効量のIOP降下剤を含む組成物を投与することを含む。薬剤は、前強膜近傍デポ投与によって投与されるのが好ましい。IOP降下剤の他の投与法としては、前テノン下投与、前結膜下注入、前強膜近傍デポ投与、および前部インプラントが挙げられる。
IOP上昇のコントロールまたは阻止が可能であるならば、いずれの薬剤であっても本発明の方法に有用であると考えられるが、好ましい薬剤は、血管新生抑制剤である。本発明の方法に使用するのに好ましい血管新生抑制剤は、別名酢酸アネコルタブとも呼ばれる、4,9(11)−プレグナジエン−17α,21−ジオール−3,20−ジオン−21−アセテート、またはその対応アルコール、別名アネコルタブデザセテートとも呼ばれる4,9(11)−プレグナジエン−17α,21−ジオール−3,20−ジオンである。
(好ましい実施態様の詳細な説明)
本発明は、例えば、IOP降下剤の前強膜近傍注入による、眼球の前方セグメントに対するIOP降下剤の局所注入が、緑内障に関連する、または、グルココルチコイド投与によって生じるIOP上昇の対処に対し、現在公知の治療法よりもより有効であるという発見に一部基づく。本発明の送達法では薬剤が線維柱網の前方に移動するが、本方法の利点として、1)点眼薬のように局所的に送達された場合、有効でない可能性のある薬剤の使用を可能とすること;および、2)持続的、長期的活性期間を実現し、服薬規則遵守問題を回避すること、が挙げられる。
本発明は、例えば、IOP降下剤の前強膜近傍注入による、眼球の前方セグメントに対するIOP降下剤の局所注入が、緑内障に関連する、または、グルココルチコイド投与によって生じるIOP上昇の対処に対し、現在公知の治療法よりもより有効であるという発見に一部基づく。本発明の送達法では薬剤が線維柱網の前方に移動するが、本方法の利点として、1)点眼薬のように局所的に送達された場合、有効でない可能性のある薬剤の使用を可能とすること;および、2)持続的、長期的活性期間を実現し、服薬規則遵守問題を回避すること、が挙げられる。
本発明はさらに、酢酸アネコルタブのデポ送達の長期持続性により、この、または他の比較的不溶なIOP降下剤の、前方セグメントの局所注入による、特に、前強膜近傍の注入による眼球内投与が、緑内障関連の、またはグルココルチコイド投与によるIOP上昇の持続的コントロールの提供を可能とするという発見に一部基づく。
IOP降下剤は、高IOPに悩む患者のIOPを下げるために投与されるものであれば、いずれの薬剤であってもよい。あるいは、IOP降下剤は、IOP降下活性を持つが、眼球に局所的に適用されても、角膜浸透が僅かであるために、治療的に有効でないと予想される大分子であってもよい。好ましい局面では、このIOP降下剤は、比較的不溶の薬剤で、1ヶ月以上、好ましくは3ヶ月以上、もっとも好ましくは6ヶ月以上の長期に亘ってIOPのコントロールを提供するために、前強膜近傍デポ投与として処方することが可能な薬剤である。本発明の方法において有用なIOP降下剤としては、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤、アルファ1拮抗剤、アルファ2作用剤、ベータ遮断剤、セロトニン作用剤、エタクリン酸、縮瞳薬、またはプロスタグランジン類縁体が挙げられる。本発明の方法に使用するのに好ましい薬剤は、血管新生抑制剤、例えば、血管新生抑制コルチセンである。
血管新生を抑制する薬剤は、様々な用語で、例えば、血管新生抑制剤、血管退化剤、または血管向性(angiotropic)剤と呼ばれる。本明細書の目的においては、「血管新生抑制剤」という用語は、血管新生を抑制するために使用することが可能であるが、ステロイドに関連するグルココルチコイド活性を持たない化合物を意味する。本発明の方法において使用するのにもっとも好ましい化合物は、血管新生抑制性コルチセン、別名酢酸アネコルタブとも呼ばれる、4,9(11)−プレグナジエン−17α,21−ジオール−3,20−ジオン−21−アセテートである。
酢酸アネコルタブは、コルチセンであり、コーチゾルアセテートの類縁体である。ステロイドバックボーンに対する改変の中には、11−ヒドロキシル基の除去、C9−11二重結合の導入、および21−アセテート基の付加がある。これらの改変の結果、酢酸アネコルタブは、グルココルチコイドに典型的な抗炎症性および免疫抑制性を持たない。酢酸アネコルタブは、線維柱網のミオシリン発現を下方調節する。培養線維柱帯細胞を用いて、Clarkら(2000)は、酢酸アネコルタブによる、デキサメタゾン誘発ミオシリン発現の抑制を証明した。Clarkは、酢酸アネコルタブの局所投与が、ウサギにおいて、デキサメタゾンの局所投与に関連するIOP上昇を下げる所見を論じている。しかしながら、上に示したように、多くの患者は、局所的薬剤使用のために処方された治療スケジュールを遵守しない。
可能な特異的IOP降下剤の例として、ベータ遮断剤(例えば、チモロール、ベータキソロール、レボベータキソロール、カルテオロール、レボブノロール、およびプロパノロール)、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤(例えば、ブリンゾルアミド、およびドルゾルアミド)、アルファ−1拮抗剤(例えば、ニプラドロール)、アルファ−2作用剤(例えば、イオピジンおよびブリモニジン)、縮瞳薬(例えば、ピロカルピンおよびエピネフィリン)、プロスタグランジン類縁体(例えば、ラタノプロスト、トラボプロスト、およびウノプロストン)、低血圧性脂質(例えば、ビマトプロスト、および、米国特許第5,352,708号に記載される化合物)、神経保護剤(例えば、メマンチン)、セロトニン作用剤[例えば、5−HT2作用剤、例えば、S−(+)−1−(2−アミノプロピル)−インダゾール−6−オール]、抗血管新生剤(例えば、酢酸アネコルタブ)、および、エタクリン酸が挙げられる。この眼科薬は、マレイン酸チモロール、酒石酸ブリモニジン、またはナトリウムジクロフェナクなどの製薬学的に受容可能な塩の形として存在してもよい。発明の化合物はまた、眼科薬の組み合わせ、例えば、(i)ベータキソロールおよびチモロールから成る群から選らばれるベータ遮断剤、および、(ii)ラタノプロスト、1,5−ケト・ラタノプロスト、トラボプロスト、ビマトプロスト、およびウノプロストンイソプロピルから成る群から選ばれるプロスタグランジン類縁体、および(iii)プロスタグランジン類縁体、および/または、上に特定した、他のIOP降下剤の内の任意のものと組み合わせた血管新生抑制ステロイド(例えば、酢酸アネコルタブ)の組み合わせを含んでもよい。
本発明の方法によれば、比較的不溶のIOP降下性組成物が、緑内障関連の、または、グルコルチコイド治療によるIOP上昇をコントロールするために、前強膜近傍デポ投与によって投与される。本発明のある実施態様では、眼球の血管新生、浮腫、または糖尿病網膜症などの、眼球背部の障害を治療するために、または、血管閉鎖または白内障手術などの、外科処置による炎症を治療するために、グルココルチコイドが眼球内に投与される。酢酸アネコルタブなどのIOP降下剤が、患者の眼球に、前強膜近傍デポ投与によって投与される。IOP降下剤は、グルココルチコイドの投与の前か、同時か、または、その後に投与してよい。トリアムシノロンおよびIOP降下剤の投与は、数分、数時間、数日、数週、または場合によっては数ヶ月の間隔を置いて行われることも可能であることが予想される。
本発明の方法において使用されるIOP降下剤は、通常、前強膜近傍デポ投与によって投与されるが、代替的に、該薬剤は、前テノン下投与、前結膜下注入、前方インプラント、およびそれらの組み合わせによって投与されてもよい。
前強膜近傍デポの投与ルートは、通常、下記のように実行される。投与されるIOP降下剤を含む組成物が、滅菌技術を用いて注射器に輸送される。30ゲージ注射針が、該注射器に取り付けられる。所望の量の組成物が、眼球の下部、または下側部4分の1円に前強膜近傍デポとして配置される。前強膜近傍デポの配置については図1を参照されたい。
本発明の方法に従って前強膜近傍デポ投与によってIOP降下剤を投与することは、通常、約2ヶ月から12ヶ月、好ましくは約3ヶ月から8ヶ月、より好ましくは少なくとも6ヶ月の期間IOPの低下を提供する。前強膜近傍デポ投与によって送達される、組成物中のIOP降下剤の量は、通常、約0.5mLから約1mLで、送達される薬剤の最大量は、約250mg(0.5mLの送達の場合)から約500mg(1mL送達の場合)である。あるいは、組成物中のIOP降下剤のパーセントは、一般に、最大約50重量パーセントである。縣濁液の注入可能な最大パーセントの決定は、IOP降下剤の粒径、および、当業者には周知の他の要因に依存する。
同様に、治療的な組織レベルを実現するのに必要な最適速度を実現するように組成物を処方することは、薬物動態学および薬理学、および当業者には周知の、他の要因によって定義される。一般に、可溶性、および/または、粒子からの薬剤の分散性は、治療的な組織レベルを実現するのに必要な速度以上でなければならない。当業者には直ちに明らかなように、縣濁液における薬剤の水溶性は、下記の要因が考慮されるならば、任意のレベルが可能である。1)1日当たり可溶化され、放出される最低量は、効力のために必要な量に対応しなければならない;2)注入量は、所望の活動期間を有するほど十分なものでなければならない;3)注入限度を超えてはならない;および4)所望の活動持続時間を満たすのに必要な最低速度を超える速度が、安全性を冒してはならない。
本発明の好ましい局面では、酢酸アネコルタブが、OAGと関連する、または、グルココルチコイド投与によるIOP上昇を下げるためにより効率的に機能するように、前強膜近傍デポ投与によって投与される。前強膜デポ投与によって投与される酢酸アネコルタブの量は、一般に、約1mgから約60mgである。好ましくは、患者に投与される酢酸アネコルタブの量は、約3mgから約30mg、約12mgから約27mg、または約21mgから約27mgである。もっとも好ましい投与用量は、24mgの酢酸アネコルタブである。あるいは、本発明の方法によって投与される、組成物中の血管新生抑制剤の好ましい濃度は、0.005から5重量パーセントである。
本発明の方法において使用される組成物は、必要とされる特定の投与ルートに応じて当該分野で公知の方法に従って処方される。組成物は、通常、治療量の、比較的不溶のIOP降下剤、例えば、他のやり方では局所的に送達された場合角膜に浸透しないと考えられる大型分子、または、任意の公知のIOP降下剤を含む縣濁液である。このような組成物は、一般に、前テノン下投与、前結膜下注入、前強膜近傍デポ投与、前方インプラント、およびそれらの組み合わせ用として処方される。他の実施態様では、組成物は、デポまたはインプラントとして投与されるためにゲルまたは錠剤処方されてもよい。
本発明の方法において使用されるIOP降下剤の濃度は、慣用的に、化合物のタイプ、患者、組成物のタイプ、およびその他の要因に基づいて当業者によって決められる。好ましくは、組成物は、米国特許第5,972,922号;第5,679,666号;または第5,770,592号に記載される処方を有する。なお、これらをそれぞれ引用により本明細書に含める。もっとも好ましくは、組成物は、実施例1に記載される処方を有する。
下記の実施例は、本発明の好ましい実施態様を具体的に示すために含められる。当業者であれば、下記の実施例に開示される技術は、本発明の実施において十分に機能することが本発明者によって発見された技術を表すものであること、従って、本発明の実施のための好ましい方式を構成するものであることを理解するはずである。しかしながら、当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示される特定の実施態様において多くの変更を実行しながらも、同様の、または類似の結果を獲得することが可能であることを理解しなければならない。
実施例1
下記の処方は、本発明の方法において使用するのに好適な処方を表す。
下記の処方は、本発明の方法において使用するのに好適な処方を表す。
約24mgの酢酸アネコルタブの単一投与を、原発性開放隅角緑内障を持つ、6名の患者の5眼に対し、その下部または下側部4分の1円のテノン下投与によって与えた。
方法:INDおよびIRB研究者承認が得られた。患者には全てインフォームドコンセントを行った。局所麻酔下、下部AJDを与え、本発明者らは、1、2、および4週、その後は1ヶ月に1度、経過を観察した。従前の緑内障投薬は、実験期間中変えなかった。
結果:緑内障で、IOP≧23mmHg(POAG[4]、PDS[1]、PXF[1])を持つ6人の患者の平均年齢は59±8歳。平均C/D比は0.8±0.2。従前の緑内障投薬は、プロスタグランジン、ベータ遮断剤、および/またはアルファ作用剤(4名は1種、1名は3種、および1名は4種)を含んでいた。処置前IOPの平均は、31.3±11.3mmHgであった。6名の患者の内、5名は、3ヶ月で平均IOPが16.4±6mmHgで、10.8±7.0mmHg(38.5%±21%)の平均IOP低下であり、>25%のIOP低下を経験した(図2を参照されたい)。臨床的に重大な有害事象は全く見られなかった。患者は、12ヶ月間経過観察した。IOP低下作用は約1ヶ月でピークに達した。酢酸アネコルタブの作用の持続時間は、少なくとも12ヶ月であった。
考察:前述の結果は、酢酸アネコルタブの前強膜近傍の配置によって得られる長期作用を実証する。2名の患者においては、強膜近傍に投与された酢酸アネコルタブが驚くべきIOP降下作用をもたらしたために、従前の緑内障投薬による治療を打ち切った。この新規治療法は、点眼薬に関連する問題、および服薬規則遵守に関する多くの論点を回避する。現在利用が可能な、いずれの補足的投薬よりもはるかに優れた、臨床的に有意義な、追加的、中期的IOP低下を、酢酸アネコルタブの、前強膜近傍の単一デポ注入によって実現することが可能である。
実施例3
約24mgの酢酸アネコルタブの単一投与を、1回以上のグルココルチコイドの硝子体内注入誘発による緑内障を持つ、7名の患者の8眼に対し、その下部または下側部4分の1円のテノン下投与によって与えた(1つの眼あたりの注射回数は、1〜8回である)。患者は全て、緑内障に対し耐容し得る最大の投薬治療を受けており、実験期間もずっと実験前の服薬を続行した。下記の表2に示すように、治療前の平均IOPは、40.125±10.8mmHgであった。この、酢酸アネコルタブの投与によって、29%から51%の範囲のIOP低下がもたらされ、IOP低下は、有害事象もなく少なくとも6ヶ月持続し、そのため、患者の75%において緑内障ろ過手術が回避された。
8眼から成るこの群において、その3眼は、眼球内手術を受けており、かつ、全てが、少なくとも三つの異なるタイプの緑内障投薬を受けていた(最大6種類、平均して4.1種の異なる薬剤クラスの投薬を受けていた)。IOP低下は、早くも1週後に現れており(平均11.4mmHg)、3週後には最大低下に達するように見えた(平均16.4mmHg)。図3は、20ヶ月に亘ってこれらの患者で観察されたIOPの低下を示す。全ての眼は、顕著なIOP低下を示した。
一眼において、45%の低下があったにも拘わらず、2ヶ月後30mmHgのIOPは、患者の視神経にとっては不十分であり、ろ過手術が必要となった。別の2眼でも、IOP低下は、外科的介入を阻止するには不十分であった。残りの5眼では、酢酸アネコルタブは、トリアムシノロンによるIOP上昇を逆転し、最大12ヶ月上昇IOPの再発を阻止し、追加の外科手術の必要を回避した。
複数の緑内障治療薬の投薬を受けていたにも拘わらず、平均的IOP低下は、この12ヶ月期間において29%から51%の範囲に亘っていた。観察されたIOP低下は、別の緑内障治療薬を追加することによって通常観察されるものよりもはるかに大きかった。さらに、IOP低下作用は数ヶ月持続した。
実施例4
上昇IOPを持つダッチベルト種ウサギの眼球の前方セグメントに、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤を注入した。
方法:IOP基礎値を、5日間毎日測定し、平均した。7匹のウサギに対し、ブリンゾルアミド(AZOPT(登録商標))の、非最適化1%眼科用縣濁液800μlを、前テノン嚢下投与した。7匹のウサギには、1日1回7日間、ブリンゾルアミド(AZOPT(登録商標))の1%眼科用縣濁液を局所に送達した。7匹のウサギに、800μlのBSS(登録商標)を前テノン嚢下投与した。毎日、局所点眼投与後2時間目にIOPを監視し、これを7日間、その後は毎週行い、IOP測定値が、2回の測定において基礎値と同じ値を保つまで続けた。
結果:IOPは、実験の開始時にBSS(登録商標)ビヒクル液の単一注入を受けたウサギでは著明に変化しなかった。治療前IOPの平均値は27.41mmHgであった。この群のIOPの平均変化は、+0.18mmHgであった。毎日、ブリンゾルアミドのテノン下注入、または局所投与を受けたウサギでは、持続的なIOPの低下が見られた。局所投与群では、治療前IOPの平均値は、28.37mmHgであった。この群の、IOPの平均変化は、−2.48mmHgであった。この群では、評価期間において、基礎値からの、最大11.1%のIOP低下が観察された。1%ブリンゾルアミドの眼科用縣濁液の、1回の前テノン下投与を受けた群では、治療前IOPの平均値は27.44mmHgであった。この群のIOPの平均変化は−1.85mmHgであった。テノン下注入群において、評価期間に観察された、IOP低下の最大パーセントは、15.9%であった(図4参照)。
考察:基礎値からの、IOPの平均パーセント変化は、全ての点において、7日間に亘り、BSS(登録商標)コントロールに比べ、局所投与群およびテノン下注入群の両群において統計的に低く、ピークレベルは、最初の3日以内に観察された。より高濃度の縣濁液(例えば、5%または10%)を用いるか、または、ミクロスフェアなどの持続的放出剤形に封入して投与したならば、テノン嚢下投与によるブリンゾルアミド縣濁液から、さらに長時間持続の活動が実現される可能性がある。
実施例5
上昇IOPを持つダッチベルト種ウサギの眼球の前方セグメントに、プロスタグランジン類縁体を注入した。
方法:7匹のウサギに対し、1%プロスタグランジン類縁体を含むミクロスフェア懸濁液1mLを前テノン嚢下投与した。7匹のウサギには、2.5%プロスタグランジン類縁体を含むミクロスフェア縣濁液1mLを前テノン嚢下投与した。7匹のウサギに、空の、プラシーボミクロスフェアを前テノン嚢下投与した。IOPは、最初の1週間は毎日、次いで週に1回、その後は、IOPが基礎値に戻るまで監視した。
結果:1%または2.5%のプロスタグランジン類縁体含有ミクロスフェア縣濁液を投与された動物は、最低4日間、基礎値からの、IOPの、持続的パーセント低下を示した。両方の、プロスタグランジン類縁体ミクロスフェア縣濁液群において、IOPのパーセント変化は、14日間、全ての点においてプラシーボミクロスフェアよりも低かった。このIOP低下は用量依存性であるように見える。2.5%プロスタグランジン類縁体懸濁液投与群(IOPの平均低下=−1.97mmHg)は、1%プロスタグランジン類縁体懸濁液投与群(IOP平均低下=−1.63mmHg)よりも大きな作用を示した。1%縣濁液群のIOP平均パーセント低下は、14日間において3.58%から最大8.17%の範囲に亘っていた。2.5%縣濁液群のIOP平均パーセント低下は、14日の期間において4.73%から最大低下13.54%の範囲に亘っていた。プラシーボ縣濁液投与群は、僅かに1.0mmHgのIOP平均低下を示し、14日間においてプラシーボで観察されたIOPの最大パーセント低下は僅かに5.39%であった(図5参照)
考察:空のミクロスフェアのテノン下注入された動物は、最大5.39%の、基礎値からの、IOPの平均パーセント変化のプラシーボ効果を示した。しかしながら、1%または2%濃度のプロスタグランジン類縁体を負荷したミクロスフェア縣濁液を注入されると、IOPの、より大きな最大パーセント低下が観察された(それぞれ、8.17%および13.54%)。この用量依存性作用は、最低4日間持続し、IOP低下の残留作用(基礎値のパーセント)も、14日間において、空のミクロスフェアに比べ、薬剤負荷ミクロスフェアで若干大きいものが観察された。
実施例4
上昇IOPを持つダッチベルト種ウサギの眼球の前方セグメントに、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤を注入した。
方法:IOP基礎値を、5日間毎日測定し、平均した。7匹のウサギに対し、ブリンゾルアミド(AZOPT(登録商標))の、非最適化1%眼科用縣濁液800μlを、前テノン嚢下投与した。7匹のウサギには、1日1回7日間、ブリンゾルアミド(AZOPT(登録商標))の1%眼科用縣濁液を局所に送達した。7匹のウサギに、800μlのBSS(登録商標)を前テノン嚢下投与した。毎日、局所点眼投与後2時間目にIOPを監視し、これを7日間、その後は毎週行い、IOP測定値が、2回の測定において基礎値と同じ値を保つまで続けた。
結果:IOPは、実験の開始時にBSS(登録商標)ビヒクル液の単一注入を受けたウサギでは著明に変化しなかった。治療前IOPの平均値は27.41mmHgであった。この群のIOPの平均変化は、+0.18mmHgであった。毎日、ブリンゾルアミドのテノン下注入、または局所投与を受けたウサギでは、持続的なIOPの低下が見られた。局所投与群では、治療前IOPの平均値は、28.37mmHgであった。この群の、IOPの平均変化は、−2.48mmHgであった。この群では、評価期間において、基礎値からの、最大11.1%のIOP低下が観察された。1%ブリンゾルアミドの眼科用縣濁液の、1回の前テノン下投与を受けた群では、治療前IOPの平均値は27.44mmHgであった。この群のIOPの平均変化は−1.85mmHgであった。テノン下注入群において、評価期間に観察された、IOP低下の最大パーセントは、15.9%であった(図4参照)。
考察:基礎値からの、IOPの平均パーセント変化は、全ての点において、7日間に亘り、BSS(登録商標)コントロールに比べ、局所投与群およびテノン下注入群の両群において統計的に低く、ピークレベルは、最初の3日以内に観察された。より高濃度の縣濁液(例えば、5%または10%)を用いるか、または、ミクロスフェアなどの持続的放出剤形に封入して投与したならば、テノン嚢下投与によるブリンゾルアミド縣濁液から、さらに長時間持続の活動が実現される可能性がある。
実施例5
上昇IOPを持つダッチベルト種ウサギの眼球の前方セグメントに、プロスタグランジン類縁体を注入した。
方法:7匹のウサギに対し、1%プロスタグランジン類縁体を含むミクロスフェア懸濁液1mLを前テノン嚢下投与した。7匹のウサギには、2.5%プロスタグランジン類縁体を含むミクロスフェア縣濁液1mLを前テノン嚢下投与した。7匹のウサギに、空の、プラシーボミクロスフェアを前テノン嚢下投与した。IOPは、最初の1週間は毎日、次いで週に1回、その後は、IOPが基礎値に戻るまで監視した。
結果:1%または2.5%のプロスタグランジン類縁体含有ミクロスフェア縣濁液を投与された動物は、最低4日間、基礎値からの、IOPの、持続的パーセント低下を示した。両方の、プロスタグランジン類縁体ミクロスフェア縣濁液群において、IOPのパーセント変化は、14日間、全ての点においてプラシーボミクロスフェアよりも低かった。このIOP低下は用量依存性であるように見える。2.5%プロスタグランジン類縁体懸濁液投与群(IOPの平均低下=−1.97mmHg)は、1%プロスタグランジン類縁体懸濁液投与群(IOP平均低下=−1.63mmHg)よりも大きな作用を示した。1%縣濁液群のIOP平均パーセント低下は、14日間において3.58%から最大8.17%の範囲に亘っていた。2.5%縣濁液群のIOP平均パーセント低下は、14日の期間において4.73%から最大低下13.54%の範囲に亘っていた。プラシーボ縣濁液投与群は、僅かに1.0mmHgのIOP平均低下を示し、14日間においてプラシーボで観察されたIOPの最大パーセント低下は僅かに5.39%であった(図5参照)
考察:空のミクロスフェアのテノン下注入された動物は、最大5.39%の、基礎値からの、IOPの平均パーセント変化のプラシーボ効果を示した。しかしながら、1%または2%濃度のプロスタグランジン類縁体を負荷したミクロスフェア縣濁液を注入されると、IOPの、より大きな最大パーセント低下が観察された(それぞれ、8.17%および13.54%)。この用量依存性作用は、最低4日間持続し、IOP低下の残留作用(基礎値のパーセント)も、14日間において、空のミクロスフェアに比べ、薬剤負荷ミクロスフェアで若干大きいものが観察された。
本明細書に開示され、特許請求される組成物および/または方法は、全て、本開示に照らして、過度の実験を要することなく、製造および実行することが可能である。本発明の組成物および方法は、好ましい実施態様に関連づけて記載されたが、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される組成物および/または方法、および、方法の工程において、または工程の順序において、変更を適用することが可能であることは当業者には明白であろう。より具体的には、類似の結果を達成するために、本明細書に記載される薬剤を、化学的および構造的に近縁なある種の薬剤によって置換してもよいことは明白であろう。当業者にとって明白な、このような置換および改変は全て、付属の特許請求の範囲によって定義される、本発明の精神、範囲、および概念の中に納まるべきものと考えられる。
下記に簡単に説明される本出願に添付の図面は、本明細書の一部を形成するものであり、本発明のある局面をさらに具体的に表すために含まれる。本発明は、本明細書に提示される特異的実施態様の詳細な記述と組み合わせて、これらの図面を参照することによってよりよく理解されよう。
図1は、本発明の、前強膜近傍デポ送達法を示す。IOP降下剤を含む縣濁液は、患者の眼球の下部、または下側部4分の1円内に前強膜近傍デポ投与を通じて投与される。図1Aは、組成物投与の開始時の手順を示す。図1Bは、所望量の組成物の投与後の手順を示す。
図2は、実施例2に記載されるように、眼球の前方セグメントに酢酸アネコルタブを注入された、6名の患者の、8ヶ月に亘るIOPの低下を示す。
図3は、実施例3に記載されるように、グルココルチコイド投与後眼球の前方セグメントに酢酸アネコルタブを注入した6名の患者におけるIOP低下の時間経過を示す。
図4は、実施例4に記載されるように、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤を前方セグメントに注入した、上昇IOPを持つダッチベルト種ウサギにおけるIOP低下の時間経過を示す。
図5は、実施例5に記載されるように、プロスタグランジン類縁体を前方セグメントに注入した、上昇IOPを持つダッチベルト種ウサギにおけるIOP低下の時間経過を示す。
Claims (18)
- ヒトの患者において眼内圧をコントロールするための方法であって、前記方法が、治療的有効量のIOP降下剤を含む組成物を前記患者に投与することを含み、前記投与が、前テノン下投与、前結膜下注入、前強膜近傍デポ投与、前方インプラント、およびそれらの組み合わせから成る群から選ばれる方法による、前記コントロールするための方法。
- 前記投与が、前強膜近傍デポ投与による、請求項1に記載の方法。
- 前記IOP降下剤が、血管新生抑制剤、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤、縮瞳薬、ベータ遮断剤、アルファ1拮抗剤、アルファ2作用剤、セロトニン作用剤、エタクリン酸、およびプロスタグランジン類縁体から成る群から選ばれる、請求項2に記載の方法。
- 前記IOP降下剤が血管新生抑制剤を含む、請求項1に記載の方法。
- 前記血管新生抑制剤が、4,9(11)−プレグナジエン−17α,21−ジオール−3,20−ジオン−21−アセテート、および4,9(11)−プレグナジエン−17α,21−ジオール−3,20−ジオンから成る群から選ばれる、請求項4に記載の方法。
- 前記血管新生抑制剤が、0.005から5.0重量パーセントの濃度で前記組成物の中に存在する、請求項5に記載の方法。
- 前記IOP降下剤が、血管新生抑制剤を含み、投与される前記血管新生抑制剤の量が約3mgから約30mgである、請求項2に記載の方法。
- 前記血管新生抑制剤が酢酸アネコルタブである、請求項7に記載の方法。
- 投与される前記血管新生抑制剤の量が約24mgである、請求項8に記載の方法。
- 前記患者が、グルココルチコイド投与による高眼内圧を有するか、または、その高眼内圧を発症する危険性を有し、前記IOP降下剤の投与が、前記グルココルチコイド投与の前か、または後に行われる、請求項1に記載の方法。
- 前記IOP降下剤が、前記グルココルチコイド投与後に投与される、請求項10に記載の方法。
- 前記IOP降下剤が、前記グルココルチコイド投与後1時間以内に投与される、請求項11に記載の方法。
- 前記血管新生抑制剤が、前記グルココルチコイド投与の1から5日後に投与される、請求項11に記載の方法。
- 前記血管新生抑制剤が、前記グルココルチコイド投与後1週間以内に投与される、請求項11に記載の方法。
- 前記血管新生抑制剤が、前記グルココルチコイド投与の1週から8週後に投与される、請求項11に記載の方法。
- 前記血管新生抑制剤が、前記グルココルチコイド投与後3ヶ月以内に投与される、請求項11に記載の方法。
- 前記患者が、原発性開放隅角緑内障を有する、請求項1に記載の方法。
- 患者において眼内圧をコントロールするための、治療有効量のIOP降下剤を含む組成物であって、前テノン下投与、前結膜下注入、前強膜近傍デポ投与、前方インプラント、およびそれらの組み合わせから成る群から選ばれる方法によって投与される、前記組成物。
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