JP2009500030A - 新規なファージディスプレイ技術 - Google Patents
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Abstract
本発明は、繊維状ファージの表面上で融合タンパク質を生成およびスクリーニングするための新規な技術を提供する。具体的には、2つのファージコートタンパク質の一方または他方のいずれかに融合した所定の一連のタンパク質配列を含む細胞およびファージライブラリーを作製するために、単一のベクターを用いることができる。この手法によって、それに続く、抗体、ペプチド、またはエピトープ結合領域等の、治療または診断上の有用性を有するタンパク質結合分子の、ファージディスプレイベースの選択の効率が単純化および改良される。
Description
(発明の分野)
本発明は、ファージディスプレイライブラリーを作製するための、改良されたファージミドベクターに関する。
本発明は、ファージディスプレイライブラリーを作製するための、改良されたファージミドベクターに関する。
(発明の背景)
ファージディスプレイをベースとする技術により、それが別のタンパク質または任意の他の生物学的標的に結合することによって媒介される生物学的機能をもつポリペプチドを、クローニング、発現、選択、および加工(操作)するための手段が提供されている。親和性に基づく選択の繰り返しのプロセスによって、抗体、エピトープ、抗原、生物活性ペプチド、酵素阻害剤、酵素、DNA結合タンパク質、単離されたタンパク質ドメイン、または受容体のリガンド等のタンパク質配列の、大きいライブラリーから単離された、関連性のあるクローンへの濃縮が可能になる。
ファージディスプレイをベースとする技術により、それが別のタンパク質または任意の他の生物学的標的に結合することによって媒介される生物学的機能をもつポリペプチドを、クローニング、発現、選択、および加工(操作)するための手段が提供されている。親和性に基づく選択の繰り返しのプロセスによって、抗体、エピトープ、抗原、生物活性ペプチド、酵素阻害剤、酵素、DNA結合タンパク質、単離されたタンパク質ドメイン、または受容体のリガンド等のタンパク質配列の、大きいライブラリーから単離された、関連性のあるクローンへの濃縮が可能になる。
他の技術と組み合わせて、ファージディスプレイ技術は、任意の種類の核酸含有物質から単離された配列から開始し、いくつかの型の生成物(抗体、酵素、ペプチド等)をもたらし、現代のバイオテクノロジーの多くの必要性を満たすことができる。最近、数名の著者が、種々のファージディスプレイ技術を用いて機能性タンパク質配列が得られるだけでなく、(診断において、免疫化のために、プロテオミクスにおいて、抗菌化合物(antibacterial compound)として、細胞形質転換において、産業的バイオテクノロジーのために、ナノテクノロジーにおいて、等の)多くの用途に組換えファージを直接用いることができることを報告した。
さらに、組換えファージの表面上で発現される可変重/軽鎖ヘテロ二量体(またはFab)および単鎖可変領域(またはscFv)等の幅広いレパートリーの抗体断片の構築、それに続く、抗原上を「パニング(panning)」することによる親和性に基づくファージの選択が、所望の親和性および特異性を有する抗体を得るための多用途の、かつ迅速な方法として開発されている。この選択プロセスは、続いて、選択されたファージの変異抗体のレパートリーを作製することによって最適化することができ、例えば、よりストリンジェントな条件下およびより高い親和性で抗原に結合する、子孫についてサンプリングすることができる。
ファージディスプレイ技術は、細菌細胞(具体的にはF−piliを有する大腸菌(Escherichia coli)細胞)に感染し、相同性の高い、一本鎖ゲノムを有する、繊維状ファージ(M13、f1、またはFd等)の小さい容量および適応性を利用する。多くの最近の論文(Sidhuら、2000年、Benhar、2001年、Sidhu、2001年、Szardenings、2003年、BradburyおよびMarks、2004年、HustおよびDubel、2004年、Manciniら、2004年、Piniら、2004年、ConradおよびScheller、2005年、HustおよびDubel、2005年、Silacciら、2005年、Smithら、2005年)および書籍(「Phage display:A practical Approach」、第266巻、ClacksonおよびLowman H編、Oxford Univ.Press、2004年、「Phage Display:A laboratory Manual」、Burton DRら、CSHL Press、2001年)で概説されているように、多数のベクター、ライブラリー、およびディスプレイフォーマト(形式)が開発されている。
繊維状ファージの表面を形成するタンパク質配列(コートタンパク質と呼ばれる)は、融合タンパク質を形成しているそのNまたはC末端にクローニングされた異種タンパク質配列を、多かれ少なかれ効率的に収容および提示することができる。この目的のために、種々のコートタンパク質(cp)、具体的にはマイナーコートタンパク質(コートタンパク質III/3、g3p、gIIIp、p3、pIII、cpIII、またはcp3とも名づけられている)およびメジャーコートタンパク質(コートタンパク質VIII/8、g8p、gVIIIp、p8、pVIII、cpVIII、またはcp8とも名づけられている)だけでなく、他のコートタンパク質cp6、cp7、およびcp9も用いられてきた(Gaoら、1999年、Huftonら、1999年、Kwasnikowskiら、2005年)。修飾されたファージタンパク質が存在するコピーの数によって、高価数(high valency:すなわち、cp8のようにファージタンパク質が多数のコピーで存在する場合)と低価数(すなわち、cp3、cp6、cp7、またはcp9のようにファージタンパク質が少数のコピーで存在する場合)のディスプレイを区別することができ、両方の手法によって、特定の標的に結合するタンパク質配列を選択する可能性が提供される。
コートタンパク質と、提示されるべきタンパク質との融合は、ファージベクターまたはファージミドベクターのいずれかを用いることによって行うことができ、特定の結合剤または標的を用いてスクリーニングすることができるライブラリーを提供する(O'Connellら、2002年)。両方の場合において、そのN末端にクローニングされて分泌/リーダー配列によって露出した異種タンパク質配列を有する融合タンパク質への転写および翻訳のために、コートタンパク質が修飾される。
ファージベクターを用いる場合、融合タンパク質をコードするDNAが、ファージゲノムのコートタンパク質に直接クローニングされ、高いディスプレイレベルが可能になるが、異種配列のサイズおよびクローニング戦略は大きく制限される。このシステムのいくつかの変形が記載されており、ここで、同じコートタンパク質の、修飾された、および修飾されていない変異体の組合せが、同じファージベクター中に存在する。かかるベクターは、「88」、「33」、または「8+8」型として定義される(Enshell-Seijffersら、2001年、PetrenkoおよびSmith、2004年)。
ファージミドベクターを用いる場合、構築物はより小さく、細菌およびファージ細胞周期の両方の間に複製を引き起こすが、1つ(または少数)のコートタンパク質しか発現しない配列を含む。ファージミドベクターは、ファージの表面上で発現される配列のライブラリーを作製するために、組換えDNA技術によって、より容易に操作される。しかしながら、これらのベクターは、形質転換細菌細胞が、後に、ファージの正しい複製およびパッケージングを支持する完全なファージ(「ヘルパー」ファージ)に感染した場合にのみ、完全なファージを提供することができ、組換えファージの再感染およびそれに続く増幅に必要な野生型のコートタンパク質を供給する。
ファージディスプレイスクリーニングを行うために使用されるベクターおよび配列を最適化する可能性に関して広範な研究が行われ、別のものよりもあるコートタンパク質を使用することにおける、いくつかの制約(Makowski、1993年)または種々のコートタンパク質によって異種タンパク質配列が実際どのようにして提示されるのかの違い(Iannoloら、1995年、WeissおよびSidhu、2000年、Weissら、2000年、Rothら、2002年、Liら、2003年、HeldおよびSidhu、2004年)が同定された。
例えば、異なる特性を有する2つ以上のタンパク質配列(例えば、あるものは抗原を結合し、別のものは固体基質上に存在するリガンドまたは異なるエピトープ結合ペプチドを結合する)が、単一の二機能性ファージ(文献中、「デュアルディスプレイ」または「ダブルディスプレイ」ファージとも名づけられている)に提示された。各配列を、異なるコートタンパク質(または同じコートタンパク質の異なる変異体)とともに、モノもしくはバイシストロニック(cictronic)な変異体中に集合した同じファージミドベクター中の異なる転写単位にインフレームでクローニングすることによって、またはそれぞれが特定の融合コートタンパク質についての2つのファージミドベクターで細菌細胞を二重感染することによって、同様のファージを得ることができる(Bonnycastleら、1997年、MalikおよびPerham、1997年、Gaoら、1999年、Gaoら、2002年、Chenら、2004年、国際公開第98/05344号、国際公開第95/05454号、国際公開第01/25416号)。非常に効率的ではあるが、現在利用可能なファージディスプレイ技術は、依然として改良の余地があり、提示のためのコートタンパク質の選択は、依然として重要な課題である。
実際、システムの効率は、予め判定することができない特性である、他の特定のコートタンパク質配列よりはよいものを用いて、発現、提示、およびスクリーニングされるべきタンパク質配列の「適応度(fitness)」に、実質的に影響される。例えば、この目的のためにより頻繁に使用されるコートタンパク質を考慮すると、cp8は、cp8システムの多価性(multivalency)によって増強される結合能力のために、ペプチドまたは低親和性抗体を選択するのにより適切であるようである。対照的に、異種タンパク質配列がファージ表面上に存在しているコピー数が少ないことを考慮すると、cp3ベースのディスプレイは、高親和性抗体を選択するのにより適切であるようである。しかしながら、ライブラリー中の抗体の親和性が高度に可変性であり、その程度を予測するのが不可能であると仮定すると、大腸菌(E.coli)の細胞膜周辺腔(ペリプラズマ空間)中のcp3/cp8ベースの融合タンパク質の原核生物またはファージミドベクターに含まれる配列を排除する組換え事象等の他の要因が、ディスプレイシステムに影響を及ぼし得る。
ファージディスプレイペプチドを考慮する場合により関連性のある同様の問題が、いくつかの論文において実証されており、この技術の可能性の完全な利用のために、提示される抗体/ペプチドレパートリーをコードするDNAを含む同じ試料から開始する、少なくとも2つの異なるファージライブラリーを構築する必要性を明らかに示している。タンパク質配列を提示および選択するためのcp3およびcp8の使用についての文献から判断すると、タンパク質エピトープおよびペプチド(Rouschら、1998年、Zwickら、1998年、Addaら、1999年、GaoおよびZhong、1999年、Yipら、2001年、Al-bukhariら、2002年、O'Connor Kら、20051)、抗体(KretzchmarおよびGeiser、1995年)、または酵素(Verhaertら、1999年)について、種々の特性および/または配列が報告されている。さらに、それぞれが異なるファージミドで別々に作製された2つのファージライブラリーを混合すること(Jacobssonら、2003年)、またはあるコートタンパク質を用いて選択された配列を別のコートタンパク質を提示しているライブラリーに配列を再クローニングすること(Wangら、1997年)もまた、記載されている。機能性タンパク質配列もまた、特に方向付けられることなくランダムな配列がクローニングされるが、ベクターバックボーン内のクローニング部位の5’および3’領域に位置する調節およびコード配列によって一方向に実際に転写および翻訳されるファージディスプレイライブラリーを用いて同定された(ZelenetzおよびLevy、1990年、van Zonneveldら、1995年、StratmannおよびKang、2005年)。
いくつかの特許出願によって、cpVIIおよびcpIXの組み合わせ使用(国際公開第00/71964号)、ファージベクターへの制限酵素認識部位の付加(国際公開第03/093471号、国際公開第03/91425号)、重鎖および軽鎖配列が反対の転写方向に正面に位置する双方向性プロモーターの使用(Denら、1999年)、モノもしくはバイシストロニックな発現のために配置された配列をコードする種々の組合せ(Kirschら、2005年)、コートタンパク質への変異の導入(国際公開第02/103012号、国際公開第00/06717号)、またはライブラリー構築、発現、およびスクリーニングのための種々の手法(国際公開第98/20036号、国際公開第98/14277号、国際公開第97/35196号、国際公開第97/46251号、国際公開第97/47314号、国際公開第97/09446号、国際公開第03/029456号)等の、ファージディスプレイ技術の変形が開示されている。あるいは、多くの文献に、ファージミドへタンパク質配列を集合させるための部位特異的組換えに基づいたクローニングシステムが記載されている(国際公開第92/20791号、国際公開第95/021914号、国際公開第97/020923号、国際公開第00/31246号、国際公開第96/40714号、Tsurushitaら、1996年、SblatteroおよびBradbury、2000年)。
しかしながら、これらの文献のうち、2種のコートプロテインの一方または他方に融合した複数の異種タンパク質のディスプレイを可能とする単一ファージライブラリーを、異種タンパク質をコードするDNAのライブラリーと単一のファージミドから開始して、どのようにして作製できるかを開示しているものはない。
(発明の概要)
本発明は、単一のファージミドベクター、ならびに単一のクローニング及び形質転換工程を用いた、繊維状ファージの表面上の2つのコートタンパク質のいずれか一方と融合したタンパク質としてアミノ酸配列をクローニング、生成、およびスクリーニングする手段を提供する。
本発明は、単一のファージミドベクター、ならびに単一のクローニング及び形質転換工程を用いた、繊維状ファージの表面上の2つのコートタンパク質のいずれか一方と融合したタンパク質としてアミノ酸配列をクローニング、生成、およびスクリーニングする手段を提供する。
第一の実施形態において、本発明は、2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合するアミノ酸配列をコードするDNAの双方向性クローニング(bidirectional cloning)のためのファージミドベクターを提供する。
第二の実施形態において、本発明は、
a)第一のDNAリンカーをその5’末端に含む第一の機能性コートタンパク質をコードするDNA、および
b)第一の機能性コートタンパク質と反対の転写の方向を有し、第二のDNAリンカーをその5’末端に含む、第二の機能性コートタンパク質をコードするDNA
を含み、
第一および第二のDNAリンカーが、ファージミドベクター中の前記リンカーの外側には存在しない、制限酵素のための少なくとも1つの同一の部位を含む、ファージミドベクターを提供する。
a)第一のDNAリンカーをその5’末端に含む第一の機能性コートタンパク質をコードするDNA、および
b)第一の機能性コートタンパク質と反対の転写の方向を有し、第二のDNAリンカーをその5’末端に含む、第二の機能性コートタンパク質をコードするDNA
を含み、
第一および第二のDNAリンカーが、ファージミドベクター中の前記リンカーの外側には存在しない、制限酵素のための少なくとも1つの同一の部位を含む、ファージミドベクターを提供する。
pDD(ダブルディスプレイのためのファージミド)として遺伝学的に定義されるかかるファージミドの例は、DISリンカー2(配列番号2および配列番号3)を形成するタンパク質リンカーをコードするDNA配列が続く場合がある、それぞれが近接したSpeI-BgII制限酵素認識部位(配列番号1)をそれらの5’末端に有するDISリンカーとも呼ばれる2つの分離したDNAリンカーを含むものである。あるいは、それぞれが2つの鎖上下流および上流のタンパク質リンカーをコードする2つの異なるDNA配列の付加でDD-DISリンカー2(配列番号5)を形成することができる単一の配列(配列番号4)中に、SpeI-BgII制限酵素認識部位を組み合わせることができる。DNAリンカーは、機能性コートタンパク質をコードするDNAの5’末端、並びに前記機能性コートタンパク質に融合し、これによって提示されるタンパク質配列をコードするDNAの3’末端とともにインフレーム(in frame)で転写することができる。
第三の実施形態において、本発明は、ダブルディスプレイ発現カセット(DDカセット)を含むファージミドベクターを提供する。かかるベクターは、前記DNAリンカーによって前記機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合すべき少なくとも1つのタンパク質配列のクローニング、発現、および提示のためのDNAカセットをさらに含む。
pDDベクター内でクローニングされた後、DDカセットは、DDカセットがクローニングされる方向に応じて2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかに作動可能に連結した状態になり、DDカセット内に存在する配列によってそのN末端に異種配列を含む融合タンパク質へのその転写および翻訳が可能になる。
修飾cp3(modified cp3: cp3*、配列番号6)および修飾cp8(modified cp3: cp8*、配列番号8)と呼ばれる2つの機能性コートタンパク質をコードするDNAを含むpDDベクターによって、同様のファージミドが提供される。かかるベクターの例は、cp3*DDcp8*(配列番号10)、DDaカセット(配列番号11)、またはDDbカセット(配列番号12)を含むものである。
DDカセットは、例えば選択マーカー遺伝子、細菌の代謝を変化させる遺伝子、または2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合した異種タンパク質配列と相互作用するタンパク質配列をコードする、1つまたは複数のさらなる遺伝子を含んでもよい。かかるさらなる遺伝子は、DDカセットが挿入される方向から独立して転写および翻訳され、任意の方向に方向付けることができる。
第四の実施形態において、本発明は、前記ライブラリーの各タンパク質配列がDISリンカーによって2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合しているファージまたは細胞ライブラリーを作製するための、上記で定義されたベクターの使用を提供する。
第五の実施形態において、本発明は、上記で定義されたベクターを用いて得られる、前記ライブラリーの、各タンパク質配列がDISリンカーによって2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合している、ファージまたは細胞ライブラリーを提供する。
2つの機能性コートタンパク質の例には、修飾cp3タンパク質(cp3*タンパク質、配列番号7)および修飾cp8タンパク質(cp8*タンパク質、配列番号9)が含まれる。
ライブラリーは、いずれの型のベクター中でもクローニングすることができるDDカセットを、あるいはpDDベクター中ですでにクローニングされているDDカセットを、用いて作製することができる。後者の場合、DDカセット中で構築されたライブラリーは、DDカセットの双方向性クローニングを得るために、DISリンカー内で切断する制限酵素での消化、および適合する末端を提供する酵素で切断されたpDDベクターとのライゲーションに供されるべきである。
細胞ライブラリー中のファージミドを、細菌の複製開始点を使用して複製することができるので、pDDベクターのライブラリーは、次いで、細菌細胞中に維持することができる。あるいは、ライブラリーは、かかる細菌細胞をヘルパーファージに感染させることによってファージライブラリーとして複製することができ、ファージミドを含み、DISリンカーによって2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合して、それらの表面上で異種タンパク質配列を発現する組換えファージの形態で、精製することができる。
第六の実施形態において、本発明は、上記で定義されたベクターを含む、ライブラリーの各タンパク質配列がDISリンカーによって2つの機能性コートタンパク質配列の一方または他方のいずれかのN末端で融合している、ファージまたは細胞ライブラリーを作製するためのキットを提供する。
第七の実施形態において、本発明は、
a)2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合するアミノ酸配列をコードするDNAの双方向性クローニングのためにファージミドベクターのDISリンカーに対応させてDDカセットを挿入すること、および
b)得られたベクターで細胞を形質転換すること
を含む、ライブラリーの各タンパク質配列がDISリンカーによって2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合している、ファージまたは細胞ライブラリーを生成するための方法を提供する。
a)2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合するアミノ酸配列をコードするDNAの双方向性クローニングのためにファージミドベクターのDISリンカーに対応させてDDカセットを挿入すること、および
b)得られたベクターで細胞を形質転換すること
を含む、ライブラリーの各タンパク質配列がDISリンカーによって2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合している、ファージまたは細胞ライブラリーを生成するための方法を提供する。
前記DDカセットの挿入は、DDカセットと、BgIIで消化されて適合する末端を有するベクターとを、ライゲートすることによって得ることができる。
本発明の方法によって得られる組換えファージ、ならびに融合タンパク質は、単離された形態、または混合物の形態で、リガンド、細胞、または標的分子を、結合、検出、中和、および/または変化させるために使用することができる。組換えファージ、または融合タンパク質のこの活性は、in vivoおよび/またはin vitroで検出することができる。
全ての実施形態において、DISリンカーによって2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合した異種タンパク質配列は、抗体、抗体断片、エピトープ、エピトープ結合領域、抗原、アレルゲン、生物活性(bioactive)ペプチド、酵素、酵素阻害剤、酵素触媒部位(enzymatic catalytic site)、DNA結合タンパク質、単離されたタンパク質ドメイン、受容体のリガンド、受容体、増殖因子、サイトカイン、および目的のタンパク質配列の近接(contiguous)または重複する断片であってもよい。
単離された組換えDNAおよびタンパク質配列ならびに他の方法および使用を含む、本発明のさらなる実施形態を、以下の説明において提供する。
(発明の詳細な説明)
本発明の基礎にある技術的問題は、配列を単一もしくは2つのいずれかのファージミドベクター中で2度クローニングすることなく、および/または細菌細胞に2度感染することなく、繊維状ファージにおいて2つの代替的ファージコートタンパク質のいずれか一方との融合タンパク質として発現および提示されるアミノ酸配列の発現を可能にする単純かつ効率的なシステムを、どのようにして確立するかということである。
本発明の基礎にある技術的問題は、配列を単一もしくは2つのいずれかのファージミドベクター中で2度クローニングすることなく、および/または細菌細胞に2度感染することなく、繊維状ファージにおいて2つの代替的ファージコートタンパク質のいずれか一方との融合タンパク質として発現および提示されるアミノ酸配列の発現を可能にする単純かつ効率的なシステムを、どのようにして確立するかということである。
この技術的問題の解決法は、組換えファージの2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合させるべきアミノ酸配列をコードするDNAの双方向性クローニングを可能にするファージミドベクターを構築することによって達成される。
遺伝学的にpDD(ダブルディスプレイのためのファージミド)として定義される、このベクターの基本的要素は、
a)第一のDNAリンカーをその5’末端に含む第一の機能性コートタンパク質をコードするDNA、および
b)第一の機能性コートタンパク質と反対の転写の方向を有し、第二のDNAリンカーをその5’末端に含む、第二の機能性コートタンパク質をコードするDNA
であり、ここで第一および第二のDNAリンカーは、ファージミドベクター中で前記リンカーの外側には存在しない、少なくとも1つの、同一な、制限酵素のための部位を含む。
a)第一のDNAリンカーをその5’末端に含む第一の機能性コートタンパク質をコードするDNA、および
b)第一の機能性コートタンパク質と反対の転写の方向を有し、第二のDNAリンカーをその5’末端に含む、第二の機能性コートタンパク質をコードするDNA
であり、ここで第一および第二のDNAリンカーは、ファージミドベクター中で前記リンカーの外側には存在しない、少なくとも1つの、同一な、制限酵素のための部位を含む。
本発明のベクターに含まれるべき特定のDNAリンカー配列は、以下、「DISリンカー」(提示および挿入部位リンカー)として示される。同一の、制限酵素のための部位は、かかる酵素で消化されて単純なライゲーション反応に供されたときに、機能性コートタンパク質の5’末端を互いに、またはその先端に同じ部位を有するDNA断片の挿入に、適合させるよう意図されている(平滑または単鎖の相補的3’/5’末端による)。
さらに、DISリンカーは、機能性コートタンパク質をコードするDNAの5’末端、および前記機能性コートタンパク質に融合し、これによって提示されるべきタンパク質配列をコードするDNAの3’末端とともにインフレームで転写することができるように消化されるべきである。したがって、機能性コートタンパク質および提示されるべきタンパク質配列は、結果として、DISリンカーによってコードされるタンパク質リンカーによって分離される。このタンパク質リンカーにより、機能性コートタンパク質および提示されるべきタンパク質は配列の両方の特性を質的に変化(例えば、その長さまたはリガンドに対するその親和性によって)させるべきではない。
同様のリンカーが、文献中でファージミドベクターについて開示されており、制限酵素認識部位の型および位置に関して本発明の要件に適合させることができる。例(図1および6)は、Gly4Serリンカーをコードするさらなる配列、形成するDISリンカー2(配列番号2および配列番号3)と組み合わせることができる、2つの制限酵素認識部位(配列番号1)を含む、DISリンカーを示す。特に好ましいリンカーは、リンカーの地点で融合タンパク質に高い程度の可動性を提供するものである。例示的かつ好ましいリンカーは、式(Gly4Ser)nを有し、式中nは1〜5である。FabまたはScfvに適合させられたリンカーが、文献中で同定されている(Henneckeら、1998年)。ファージミドベクター中の2つのDISリンカーは、単純に適合する(すなわち、1つまたは複数の同一な制限酵素認識部位を有する)か、または同一(すなわち、実施例中のように、同一なリンカー配列も有する)であってもよい。
DISリンカーおよび機能性コートタンパク質配列をコードするDNA配列の配置は、実施例中および図中に示される種々の基準および状況に従って達成することができる。本発明のファージミドは、可変の長さおよび特性を有するDNA配列によって分離される2つのDISリンカーを含んでもよく、2つのDISリンカーはまた、DD-DISリンカー2について示されるように、共通の制限酵素認識部位によって互いに直接連結されてもよい(図16、配列番号4および配列番号5)。
DISリンカーを定義するものと同様な制限酵素認識部位を含む、アダプター/リンカー配列で修飾されたコートタンパク質が、従来技術において開示されている(国際公開第04/078937号、国際公開第03/091425号、国際公開第02/088315号、国際公開第99/29888号)。しかしながら、これらの文献には、2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかに融合したタンパク質配列の双方向性クローニングを得るために、ファージミドベクターへの2つのDISリンカーの組合せおよび物理的配置を開示しているものはない。
さらに、ベクター中で反対の方向にクローニングされたDISリンカーおよび対応する機能性コートタンパク質の存在(すなわち、それぞれ異なる鎖から転写されている)によって、前記DISリンカーの1つによって前記機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合する少なくとも1つのタンパク質配列のクローニング、発現、および提示のためのDNAカセットをさらに含むファージミドベクターの構築が可能になる。
前記DISリンカーの1つによって前記機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合する少なくとも1つのタンパク質配列のクローニング、発現、および提示を可能にする特定のDNAカセットを、以下、ダブルディスプレイ発現カセット(DDカセット)として示す。DDカセットを作製することができる種々の形態を、図14に示す。
ベクター内に存在するDISリンカーに共通する制限酵素認識部位によってpDDベクター内でクローニングされた後、DDカセットは、DDカセットがクローニングされている方向によって、2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかに作動可能に連結した状態になり、DDカセット内に存在する配列およびDISリンカーによって、N末端に異種配列を含む融合タンパク質への転写および翻訳が可能になる。
実際、機能性コートタンパク質をコードする各DNAセグメントは、相違するセンス(divergent sense)の転写はあるが適切なプロモーターなしで、pDDベクター中に組み込まれており、転写および翻訳されるために、DDカセットによって提供されることができるプロモーター(および、欠けている場合は、5’末端で融合する開始ATG含有タンパク質配列)の正しい挿入を必要とする。DDカセットを挿入することができる2つの反対方向を考慮すると、これは、DDカセットを含む各pDDベクターにおいて、機能性コートタンパク質の1つのみについて達成される(図15)。
統計的に、DDカセットが一方のセンスまたは他方に挿入される機会は等しく、同時に、ライゲーション混合物中で得ることができる各DDカセットのいくつかのコピーがある。したがって、pDDベクターおよび同じDDカセット(かつクローニングされている異種タンパク質配列について異なる)に基づくいくつかのDNA断片で構築されたライブラリーが、一方または他方の方向にクローニングされた各DDカセットを有する少なくとも一対のpDDベクターを含むと予想される。したがって、本発明の方法に従って構築されるライブラリーを形成する細胞組換えファージの集団は、潜在的に、2つの形式(すなわち、一方または他方の機能性コートタンパク質に融合した)で異種タンパク質配列のレパートリーを表す。
「機能性コートタンパク質」は、ファージのコートに挿入されることができ、前記ファージの表面上でそのN末端で融合した異種配列を提示することができる、繊維状ファージのコートタンパク質の全体または一部として意図されるべきである。コートタンパク質は、cp3、cp7、cp8、またはcp9を含む、いずれかの繊維状ファージによってコードされるもの(例えば、M13、fl、およびfd)の1つであってもよい。
修飾cp3(cp3*、配列番号6および配列番号7)および修飾cp8(cp8*、配列番号8および配列番号9)と呼ばれる2つの機能性コートタンパク質をコードするDNAでの実施例に示されるように、本発明のファージミドにクローニングされた機能性コートタンパク質の第一および第二の配列の両方は、5’末端(図1および6)に、それらの正しい発現に必要な配列を含まない。適切な調節配列とともに、提示される異種配列の挿入後にのみ、第一または第二いずれかの機能性コートタンパク質が、かかる異種配列を提示する融合タンパク質に実際に転写および翻訳される。
実施例はまた、cp3*およびcp8*をコードするDNAを反対の方向に直接クローニングして、共通の制限酵素認識部位によって互いに連結させ、cp3*DDcp8*と呼ばれる得られる配列に含まれるDD-DISリンカー2を形成することができることを示す(図16、配列番号10)。
これらのタンパク質の天然の機能性変異体は公知であり、機能性コートタンパク質と同程度活性のある天然のコートタンパク質の特定の変異体は、実施例に開示されている。多数の非天然コートタンパク質変異体もまた、異種タンパク質配列の提示におけるそれらの特性について、発現および試験されている(Iannoloら、1995年、Gao Cら、1999年、Petrenkoら、2002年、Weissら、2003年、WeissおよびSidhu、2000年、HeldおよびSidhu、2004年、Kwasnikowskiら、2005年)。それらのN末端で融合したタンパク質の提示を可能にするコートタンパク質配列のこれらの代替的非天然および天然の変異体のいずれかを、本発明のベクター中で、機能性コートタンパク質として用いることができる。
さらに、機能性コートタンパク質はまた、正しい発現および提示活性に影響を及ぼさない位置に位置するべきである、1つまたは複数の短い異種配列(一般に「タグ」配列と呼ばれる)を含んでもよい。機能性コートタンパク質のこれらの変異体は、上記で定義されたようなアミノ酸配列の1つ、およびタンパク質提示活性を有意に損なうことなくさらなる特性を提供するアミノ酸配列を含む。かかるさらなる特性の例によって、融合タンパク質の、より容易な検出手順、さらなる結合部分、または翻訳後修飾(例えば、リン酸化、細胞内タンパク質分解消化)が提供される。
部分、リガンド、およびリンカーの設計、ならびに融合タンパク質の構築、精製、検出および使用のための方法および戦略は、文献中で広範に議論されている(Nilssonら、1997年、「Applications of chimeric genes and hybrid proteins」Methods Enzymol.第326〜328巻、Academic Press、2000年、国際公開第01/77137号)。
かかるさらなるタンパク質配列は、DISリンカー内、一方もしくは両方の機能性コートタンパク質内、またはDISリンカーと一方もしくは両方の機能性コートタンパク質のN末端領域と間で、ファージミドベクター中に位置することができる。さらに、このさらなる配列は、本発明のファージミド中に存在する一方のみまたは両方の機能性コートタンパク質配列に対応して配置することができるか、または一方から他方のコートタンパク質において異なっていてもよい。この手法は、異種タンパク質配列が特定の機能性コートタンパク質に融合するように機能性ディスプレイカセット(ダブルディスプレイ発現カセット、またはDDカセット)が挿入されている、本発明の方法に従って作製されたライブラリー中のファージ全ての検出および単離を助けることができる。
したがって、特定の基質、酵素、または抗体によって検出または固定することができる、ポリヒスチジン、FLAG、c−Myc、HAタグ、タンパク質分解部位、または任意の他の短いタグ配列等の配列を含むことが特に重要である。種々のタグ(単一または正確な組合せで)が、ファージミドベクター中に存在して、融合タンパク質のin vivoおよび/もしくはin vitroの同定、またはその精製を助けてもよい。種々のタグ配列が、種々のコートタンパク質について試験されている(Nakashimaら、2000年)。タグはまた、水性二相分配(Bandmannら、2002年)または蛍光媒介検出(Morinoら、2001年)を可能にすることができる。コートタンパク質上での提示を向上させることができるプロリンに富むテザーについて示されているように、同様のさらなる配列が、コートタンパク質と、提示されるべき異種配列との間のテザー(tehter)として作用してもよい(Nakayamaら、1996年)。
用語「異種タンパク質配列」は、この配列が、それぞれの天然に生じる繊維状ファージのアミノ酸またはヌクレオチド配列として天然に生じないことを示す。融合タンパク質に関連して、異種配列は、それぞれの天然のポリペプチドと同じポリペプチド配列中に生じない。所望とされるタンパク質配列は、典型的には、少なくとも5つのアミノ酸を含む。
修飾cp3タンパク質(cp3*タンパク質、配列番号7)および修飾cp8タンパク質(cp8*タンパク質、配列番号9)での実施例に示されるように、「第一」および「第二」の機能性コートタンパク質は、機能性コートタンパク質の2つの異なる配列として意図されるべきである。これらは、同じまたは異なるファージに由来するべきであり、それぞれは、前記ファージの表面上に異種配列を提示することができることが公知である異なるコートタンパク質、または2つの異なる様式で配列のレベルで修飾された同じコートタンパク質に、相当するべきである(例えば、短い、および長いバージョン、天然および変異のバージョン、タグおよび非タグバージョン、2つの、異なってタグされた配列、等)。
2つの機能性コートタンパク質をコードするDNAは、ファージミドベクターpDDを2つの部分:
a)バックボーン、すなわち、2つの機能性コートタンパク質のそれぞれをコードし、細菌およびファージにおける複製に必要な最小の要素を含むDNAの3’末端の間に含まれる領域、ならびにおそらく選択マーカーのための第一の遺伝子等の追加可能な遺伝子、
b)DDカセットがDISリンカーによって、クローニングされているか、またはクローニングされることができる、機能性コートタンパク質をコードする各DNAの5’末端のDISリンカーの5’末端の間に含まれる領域
に物理的に分割する(図15参照)。
a)バックボーン、すなわち、2つの機能性コートタンパク質のそれぞれをコードし、細菌およびファージにおける複製に必要な最小の要素を含むDNAの3’末端の間に含まれる領域、ならびにおそらく選択マーカーのための第一の遺伝子等の追加可能な遺伝子、
b)DDカセットがDISリンカーによって、クローニングされているか、またはクローニングされることができる、機能性コートタンパク質をコードする各DNAの5’末端のDISリンカーの5’末端の間に含まれる領域
に物理的に分割する(図15参照)。
文献によって、実施例に記載されているベクター中に含まれるColE1およびf1(+)開始点等の細菌およびファージにおける複製に必要な最小の要素の多くの例が提供されている。
ディスプレイカセットの内容は、前記DISリンカー中に存在する制限酵素認識部位内にクローニングされた配列によって判定される。ファージミドベクターが、提示されるべきいかなる配列も欠いている場合(「空のベクター」)、ディスプレイカセットは(図15)
a)単に非存在であって、共通の制限酵素認識部位の適合する末端によって単一のものにおいて融合している2つのDIS部位であってもよく、
b)非必須の非コードDNA配列(一般に、「スタッファー」(stuffer)配列と呼ばれる)からなってもよく、
c)その5’および3’末端に位置する2つのスタッファーDNA配列によって2つのDISリンカーから分離した第二の選択マーカー遺伝子(バックボーン中に含まれるものと異なる)の遺伝子を含んでもよい。
a)単に非存在であって、共通の制限酵素認識部位の適合する末端によって単一のものにおいて融合している2つのDIS部位であってもよく、
b)非必須の非コードDNA配列(一般に、「スタッファー」(stuffer)配列と呼ばれる)からなってもよく、
c)その5’および3’末端に位置する2つのスタッファーDNA配列によって2つのDISリンカーから分離した第二の選択マーカー遺伝子(バックボーン中に含まれるものと異なる)の遺伝子を含んでもよい。
「選択マーカー遺伝子」は、前記遺伝子を発現する細胞の陽性または陰性の選択を可能にするタンパク質をコードする遺伝子として意図されるべきである。本発明に関連して、遺伝子は、例えば、抗生物質に対する、ファージミドベクターで形質転換された細菌細胞の耐性を可能にするタンパク質をコードして、ベクターの維持を助けてもよい。システムの各要素(すなわち、バックボーン、ディスプレイカセット、およびダブルディスプレイ発現カセット)についての特定の選択マーカーの選択によって、所望のファージミドベクターを含む細菌を単離するための適切な選択基準を適用する機会が与えられる。典型的な細菌の薬物耐性遺伝子は、アンピシリン、テトラサイクリン、ネオマイシン/カナマイシン、ゼオシン、またはクロラムフェニコールに対する耐性を与えるものである。
第二のDNA配列に「作動可能に連結された」第一のDNA配列は、2つのDNA配列が、第一のDNA配列(通常、非調節または調節可能なプロモーターまたは別の転写調節部位を含む)が、測定可能な程度で、第二のDNA配列(例えば、完全または部分的に完全な、遺伝子のオープンリーディングフレーム)の転写を可能にするか、または変更するように、連結されていることが意図されるべきである。シグナル配列に作動可能に連結されて、DDカセットの特定の末端に向いたプロモーター配列の存在によって、転写がカセットからpDDバックボーンに向けられ、DDカセットの挿入を可能にする要素の対称性と比較した、DDカセットの機能性非対称性が判定される。
異種タンパク質配列を提示するためのpDDベクターの使用は、クローニングおよび/またはPCR手順によって作製された適切なDDカセットでの、「空の」ベクターにおけるディスプレイカセットの置換によって可能になる。
「ダブルディスプレイ発現カセット」(DDカセット)は、線状断片の2つの末端の一方に位置し、バックボーン中に存在する一方または他方の機能性コートタンパク質のN末端で提示されるタンパク質配列をコードする、開始ATG含有リーダー配列に作動可能に連結された少なくとも誘導可能および構成的(constitutive)プロモーター領域をさらに含む、ファージミドベクターのDISリンカー中に存在する(かつ一般に前記カセット中の残りの部分にない)制限酵素認識部位と適合する5’および3’末端を有する線状DNA断片として意図されるべきである。
図14に示されるように、通常1つまたは複数の制限酵素のための部位によって分離された、異なる機能を有するDNAセグメントの非対称な並置(asymmetric juxtaposition)によって、DDカセットが形成される。この非対称な配置は、ベクターのバックボーンへの方向でカセットから転写が開始する特定の方向に関与する。DDカセットがpDDベクターにクローニングされる場合、この転写によって、DISリンカーによってpDDベクター中の機能性コートタンパク質をコードするDNAに提示されるべき配列をコードするDNAの融合が可能になる。
LacZプロモーターおよびPelBシグナル配列の制御下でペプチドおよびタンパク質を発現するための2つのDDカセットが、DDaカセット(図17、配列番号11)およびDDbカセット(図18、配列番号12)の名前で実施例中に提供される。特定のカセットは、これらの配列を含むベクターの選択を可能にするマーカー遺伝子の型に関して本質的に異なる。したがって、抗生物質耐性を使用すると、獲得された耐性に基づいて、pDDベクター(または任意の他のベクター)がDDカセットを含んでいるクローンを選択することが可能である。
機能性リーダー/シグナル配列は、PelB(軟腐病菌(Erwinia carotovora)由来、実施例に記載されている)、MalE4、PhoA4、LamB4、およびLpp4等の、原核生物遺伝子を細胞膜周辺腔(ペリプラズム)に配置するためのいくつかのタンパク質分解遺伝子において、同定されるものである。改良されたリーダー配列もまた、同定されている(Strobelら、2003年)。
融合タンパク質のDDカセット媒介発現は、リーダー配列によって提示され、DDカセット内で前記タンパク質配列をコードする開始ATG含有リーダー配列の5’に作動可能に連結されたプロモーター(細菌中で構成的または誘導可能)の存在によって可能になる。このプロモーターの5’末端は、スタッファーDNA配列によって、1つまたは複数のさらなる遺伝子を含んでもよいDDカセットの他方の末端から分離している。
文献によって、提示されるタンパク質の発現を向上させるための、および特定の使用のために本発明のベクターを適合させるのに使用することができる、ベクター設計および培養条件の両方をどのようにして最適化するかに関する、多くの比較例が提供されている(「Phage display:A practical Approach」、第266巻、ClacksonおよびLowman H編、Oxford Univ.Press、2004年、「Phage Display:A laboratory Manual」、Burton DRら、CSHL Press、2001年、CorisdeoおよびWang、2004年、Kirschら、2005年、Sidhuら、2000年、Benhar、2001年、Sidhu、2001年、Szardenings、2003年、BradburyおよびMarks、2004年、HustおよびDubel、2004年、Manciniら、2004年、Piniら、2004年、ConradおよびScheller、2005年、HustおよびDubel、2005年、Silacciら、2005年、Smithら、2005年)。
DISリンカーの間またはDDカセット中のスタッファーDNAは、クローニングおよび/または提示プロセスに影響を及ぼしても及ぼさなくてもよい1つまたは複数のさらなる遺伝子(すなわち、タンパク質に自律的に転写および翻訳されることができるDNA配列)等の、DDカセット中で有するのに望ましい場合があるさらなる要素を含んでもよい。例えば、さらなる選択マーカー遺伝子(クローニングの前に存在する場合、バックボーン中および空のベクターのディスプレイカセット中に含まれるものと異なる)が、DDカセットに組み込まれて、正しいDDカセットを含むファージミドベクターの選択を可能にしてもよい。
あるいは、さらなる遺伝子が、繊維状ファージの別の異なる機能性コートタンパク質、細菌細胞の代謝もしくは生理を変更するタンパク質(BothmannおよびPluckthun、1998年)、またはDISリンカーによって機能性コートタンパク質に融合した提示されるべきタンパク質と相互作用するか、もしくはその活性を変更させる、タンパク質をコードしてもよい。この後者の場合の例は、細菌細胞中で一旦発現されると機能性コートタンパク質に融合した免疫グロブリン重鎖のセグメントとヘテロ二量体化して、ファージの表面上に完全な抗原結合部位を形成することができる、免疫グロブリン軽鎖遺伝子によって表される。このように発現されることができる他のヘテロ二量体化パートナーは、いくつかの受容体タンパク質に特有なものである。しかしながら、DDカセット中のかかるさらなる完全な遺伝子は、それらの発現を誘導可能なプロモーター系の制御下に置くことができるが、DDカセットが挿入される方向から独立して転写および翻訳されるよう意図される。
DDカセットを、pDDベクターを含むいずれかの型のベクター中で、作製、クローニング、維持、および修飾することができる。DDカセットが本発明のファージミド中にクローニングされるとき、または別の型のベクターに挿入されるとき、DDカセット中にクローニングされる要素は、種々の様式で配置することができ(Hoetら、2005年、Kirschら、2005年、Schoonbroodtら、2005年)、さらに細菌中でCre/Loxベースのシステムを利用してシャッフルすることもできる(SblatteroおよびBradbury、2000年)。本発明のファージミドベクターによって、ベクター中に存在する2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかを含む融合タンパク質の転写可能および翻訳可能な配列からなる発現単位の構築が可能になる。したがって、その3’末端で機能性コートタンパク質をコードするDNAを有するモノまたはバイシストロニックな転写産物の発現を駆動することができる、プロモーター、リボソーム結合部位(必要な場合)、開始コドン、およびリーダー/分泌配列が、DDカセットによって提供される。DDカセットはまた、可溶性タンパク質として異種配列の発現を確立するのに十分な配列を含んでもよい。
用語「プロモーター」は、RNAポリメラーゼによって転写が開始されることができる配列をいう。例示的原核プロモーターとしては、ポリメラーゼ結合部位、および場合により、シグマ因子の部位が挙げられる。プロモーターは、構成的(すなわち、常に活性がある)または調節可能(すなわち、ある条件下でのみ活性がある)であってもよい。大腸菌(E.coli)において、プロモーターは、長さが30〜50塩基対の間である。調節可能プロモーターは、グルコース、ラクトース、IPTG、cAMP、トリプトファン、または他の小分子等の、調節性化学物質に応答することができる。プロモーターは、リプレッサーおよび/または活性化因子によって調節することができ、培養条件を変化させること(例えば、温度、pH、栄養分等を変化させること)によっても調節することができる。
本発明の双方向性クローニングおよび提示プロセスを得るための、ファージミドベクター中およびDDカセット中のDISリンカーの制限酵素認識部位の根本的な重要性を考慮すると、それらの数は、DNAの事前の配列決定および/または消化によって、具体的にはDDカセットにおいて(しかし必要な場合、pDDバックボーンにおいても)、確定されるべきである。さらなる望ましくない部位が存在する場合、(実施例中に示されるような)PCR変異誘発等の技術によって、元々のDNAに関連する活性を質的に変化させることなく、これらの部位の修飾が可能になる。
ファージミドベクター中に含まれ、機能性コートタンパク質、DISリンカー、または機能性ディスプレイカセットによって発現されるタンパク質をコードするDNA配列の最適化は、コドン使用頻度が細菌細胞に最も適切であるDNA配列を選択することによって達成することができる(Rodiら、2002年)。配列を発現する生物に従ってコドン適応および最適化を得るために適用されるソフトウエアおよび基準が利用可能であり、一旦正しい異種配列が検出されると、ファージミドベクター自体または他の発現ベクターへのクローニングに潜在的に危険な制限酵素認識部位を欠くDNA配列を選択するのを助ける(Groteら、2005年)。
ファージミドベクターの構造および2つのDISリンカーに並置された2つの機能性コートタンパク質の反対の方向を考慮すると、所望のDDカセットをもつ空のベクター(または別のDDカセット)中のDNAカセットの置換は、2つの等しく可能な配置に組み込まれることができるファージミドベクターの2つのDISリンカー中ならびにDDカセットの5’および3’末端中にのみ存在する制限酵素認識部位によって可能になる。したがって、提示されるべきタンパク質(複数可)は、DISリンカーによってコードされるタンパク質配列を用いて、前記コートタンパク質の一方または他方とともにインフレームで連結および発現することができる。
したがって、本発明は、単一の空のベクターおよび単一のDDカセットから開始して、細菌細胞培養物を形質転換するのに使用することができる2つの異なるディスプレイファージミドベクターを作製するための手段を提供する。得られた組換えファージのさらなる使用に応じて、一方または他方のいずれかの融合タンパク質を発現するpDDベクターを含む形質転換細胞の混合物を含むことのような、単一のクローニングおよび形質転換工程によって得られた細胞培養物を維持することが適切である。あるいは、元々の混合された細胞培養物中の単一のクローンを分析して(例えば、プラスミドDNA抽出、それに続くDNA配列決定および/または制限分析によって)、所望の方向を有する2つの型のpDDベクターの一方のみを含む特定のクローンを別々に同定および増殖させることができる。
さらに、ファージミドベクター(空の、またはすでにDDカセットを含んでいる)中の選択マーカー遺伝子の選択および位置によって、特定の培養条件を適用して、所望のファージミドベクターを含む細菌クローンを選択することが可能になる。
一旦本発明が理解されると、少なくとも2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかに融合したタンパク質配列のクローニング、発現、および提示を可能にするDDカセットを含む、多種多様なファージミドベクターを作製することができる。具体的には、DDカセットの挿入のためのモジュラー構造および代替的様式によって、単一のクローニングおよび形質転換プロセスで作製された単一のファージライブラリー中で2つの異なるコートタンパク質上に潜在的に提示される同じタンパク質を有するという利点とともに、一般にファージディスプレイシステムに基づいたスクリーニングアッセイに必要なように、タンパク質配列の大きなライブラリーを提示することが可能になる。この手法は、例えばcp3またはcp8において融合タンパク質を発現する組換えファージの場合(KretzschmarおよびGeiser、1995年、Wangら、1997年、Rouschら、1998年、Zwickら、1998年、Addaら、1999年、Verhaertら、1999年、Yipら、2001年、Al-bukhariら、2002年、Jacobssonら、2003年、O'Connor Kら、2005年)において、文献中に開示されている技術において今まで必要とされたクローニングおよび/または形質転換工程を繰り返すことなく、ファージライブラリー中で関連のある配列を同定する機会を相当に増大させることができる。したがって、DDカセットの双方向性クローニングを可能にするファージミドベクターで細菌細胞を形質転換することによって、改良されたファージディスプレイライブラリー、およびより高いレベルの多様性を得ることができる。
この範囲で、DDカセットは、シグナル/リーダー配列と、pDDベクターのDISリンカーにおける挿入のために使用される部位と、の間の正しいフレーム中で提示される配列をクローニングするための適切な制限酵素認識部位を含む。異なる組換えファージにおいて1種を超える配列が提示されなければならない場合(ペプチドまたは抗体のレパートリーで通常起こるように)、クローニングされるべきDNA断片の一団が、かかる制限酵素認識部位によってDDカセット内にライゲートされ、対応する二重のファージミドの一団を生じる(すなわち、一方または他方のいずれかの機能性コートタンパク質をコードするDNAに作動可能に連結した各DNA断片を有する)。pDDベクターにすでにクローニングされたDDカセット中でライブラリーが構築される場合(すなわち、特定の機能性コートタンパク質とともにインフレームで)、かかるライブラリーは、DISリンカー内で切断する制限酵素での消化、および酵素で切断されたpDDベクターとのライゲーションに供されて、DDカセットの所望の双方向性クローニングを得るために、適合する末端を提供するべきである。
「形質転換細胞」は、細胞にとって外来性であって任意の方法(例えば、エレクトロポレーション、化学的形質転換、またはファージ感染を含む感染)によって導入することができる自己複製するDNAを含む、細胞である。
本発明は、単一のDDカセットの双方向性クローニングのための単一のファージミドベクターを利用することならびに単一のDISリンカーベースのクローニングおよび形質転換工程を適用することによって、2つのコートタンパク質の一方または他方のいずれかに融合したライブラリー中に各単一のタンパク質配列が存在する、ファージディスプレイライブラリーを作製するための、キットおよび方法を提供する。キットは、DDカセットの双方向性クローニングのための唯一のファージミドベクター、またはpDDベクターと適合し、cDNA/ゲノム配列の正しいクローニングを可能にするDDカセットを作製するためのベクターおよびプライマー、PCR増幅産物、または機能性コートタンパク質を用いて提示されるタンパク質配列をコードする任意の他の二本鎖合成DNAを含んでもよい。
前記ライブラリーの各タンパク質配列が2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合している細胞またはファージライブラリーを作製するための方法は、
(a)2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合するべきアミノ酸配列をコードするDNAの双方向性クローニングのためのファージミドベクターのDNAリンカーに対応してDDカセットを挿入すること、および
(b)得られたベクターで細菌細胞を形質転換すること
を含む。
(a)2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合するべきアミノ酸配列をコードするDNAの双方向性クローニングのためのファージミドベクターのDNAリンカーに対応してDDカセットを挿入すること、および
(b)得られたベクターで細菌細胞を形質転換すること
を含む。
これらの工程は、繊維状ファージの表面上でいずれかの特定のアミノ酸配列をクローニングおよび発現するための方法にも、特にかかるアミノ酸配列の存在をライブラリー中に検出することが望ましい場合はいつでも、適用されよう。
実施例に記載されているもののようなDISリンカーを使用する場合、DDカセットの挿入は、DDカセットと、BgIIで消化されて適合する末端を有するベクターとを、ライゲートすることによって得ることができる。
本発明のベクターおよび方法を用いて得られるライブラリーは、概説に一般に開示されている技術(Manciniら、2004年、Piniら、2004年、Rhynerら、2004年)またはより適切な戦略および形式を選択するための最近の論文に記載されている改良された方法(Louら、2001年、Vanherckeら、2005年)を用いて、選択または「パニング」することができる。
本発明は、ファージ複製開始点およびファージ非依存性開始点の両方を含む、新規なファージミドベクターを提供する。ファージミドは、完全な組のファージ遺伝子、例えばファージ粒子を生成するのに十分な数の遺伝子を含まない。ファージミドを内部に有する細胞は、細胞が、ファージミド中に存在しない要求性のファージ遺伝子を保有する「ヘルパー」ファージに感染したときに、ファージミドゲノムを含むファージ様粒子を生成することができる。ファージミドベクターは、細菌細胞に感染するために、ヘルパーファージを必要とする。
実施例に開示されているものとは別に、他の適切なヘルパーファージを、それらの使用を支持する細菌培養条件および大腸菌(E.Coli)株とともに、文献中で同定することができる(Rondotら、2001年、Baekら、2002年、Intasaiら、2003年、Kramerら、2003年、Soltesら、2003年、Ravnら、2004年)。一般に、ヘルパーファージは、DDカセットが挿入される方向が何であれ、組換えファージの1つの型のみの感染および増殖を可能にする(すなわち、特定の機能性コートタンパク質にのみ融合したタンパク質を提示する)のが望ましいのでなければ、組換えファージの感染および増殖を支持するべきである。
DDカセット中に含まれ、DISリンカーによってpDDベクター中に存在する一方または他方のいずれかの機能性コートタンパク質配列のN末端に融合すべき配列は、リガンドまたは抗体(Fab、ScFV、および任意の他のエピトープ結合断片または誘導体を含む)、エピトープ、エピトープ結合領域、抗原、アレルゲン、生物活性ペプチド、酵素、酵素阻害剤、酵素触媒部位、DNA結合タンパク質、単離されたタンパク質ドメイン、受容体のリガンド、受容体、増殖因子、サイトカイン、および目的のタンパク質配列の近接もしくは重複する断片等の標的分子と相互作用することが公知の任意の目的の配列であってもよい。
提示されるタンパク質が、(fabを形成する免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域等の)2つの異なるタンパク質配列によって形成されるものである場合、配列の1つが、機能性コートタンパク質に融合するべきDDカセット中にクローニングされるが、他方は同様にDDカセット内でも、またはpDDベクターのバックボーン中で、完全な別々の遺伝子によってクローニングおよび自律的に発現される。
DDカセットは、予め他のベクター、cDNAライブラリー、もしくはゲノムライブラリーが、または化学合成のいずれかによって生じた核酸からクローニングおよび/または増幅された機能性コートタンパク質に融合するDNA配列の正しい転写および翻訳を可能にするべきである。具体的には、DNAは、哺乳動物タンパク質等の、およびより好ましくはヒトタンパク質、またはヒト病原体(例えば、ウイルス)についての、治療または診断上の目的を有するタンパク質をコードするべきである。ヒトタンパク質をコードするDNAの供給源は、任意のヒト細胞および組織であってもよいが、(抗体または抗原等の)免疫性関連タンパク質を同定するためのファージディスプレイ技術の広範な使用を考慮すると、ヒトDNAおよびcDNAの好ましい供給源は、診断もしくは治療上の目的を有する抗原を発現している細胞(例えば癌細胞)または(腫瘍浸潤リンパ球(tumors-infiltrating lymphocytes)、末梢血リンパ球(total peripheral blood lymphocytes)、循環記憶B細胞(circulating memory B cells)等の)血液、骨髄、扁桃腺、もしくは癌から単離することができる抗体産生細胞のいずれかである。これらの細胞は、特定の個体(未処理または抗原曝露)から単離することができ、任意の適切な基準(例えば、IgGアイソタイプを有する抗体を発現している、または表面上にCD27を発現している、B細胞)によって予め選択することができる。
本発明に従って調製されたファージミドベクターは、2つのコートタンパク質の一方または他方のいずれかに融合したファージまたは細胞ライブラリーにおいて、細胞または組織に由来するcDNAライブラリーにおいてコードされるもの等の、多数のタンパク質配列を同時に発現させることに利用でき、双方向性クローニングプロセスによって判定された2つの可能なコンフォメーションの一方における種々のタンパク質をよりよく発現および/またはよりよく提示することができることを利点としている。さらに、コートタンパク質自体に対する抗体を用いて、ファージを検出することができる(Denteら、1994年、Bhardwajら、1995年)。
本発明のベクターを使用して、SIPにおけるように、異種タンパク質配列の相互作用によって媒介されることができる、2つの、異なって分化したコートタンパク質の間の複合体の形成を含む、他のより複雑な戦略を再現することもできる(Henneckeら、1998年、CebeおよびGeiser、2000年)。あるいは、本発明のベクターを適合させて、一方または他方のいずれかの機能性コートタンパク質へのあるカテゴリーのタンパク質配列の提示を得ることができる「地形(landscape)」組換えファージ(Petrenkoら、2002年)または二機能性ファージ(Gaoら、1999年、Chenら、2004年)を作製することができる。
本発明の方法に従って生成されるファージのライブラリーは、ファージに適用可能なことが公知である任意のスクリーニングアッセイを用いてスクリーニングすることができる。例えば、複合体構造中に、および特に標的同定/検証のために生理学的または治療的に関連のある配置(例えば、in vivoまたはin vitroで癌細胞または内皮に結合する)で存在する標的に接着するファージを同定するために、ファージを、可溶性もしくは固定化された(例えば、プレート上またはビーズ上に)精製された抗原に曝露するか、または細胞全体、組織、もしくは動物に曝露してもよい。これらの抗原に対してなされるファージの選択は、ポジティブ選択(すなわち、特定のリガンドに結合する分子を検出するための)またはネガティブ選択(すなわち、あるリガンドに結合するファージを排除するための)と見なすことができる。
その後、例えば細菌、植物、酵母、または哺乳動物細胞における大規模な組換え生成のために、特定のリガンドに対するその結合に基づいて、異種配列がクローニング、発現、および特異的に単離されている、選択されたファージミドベクターを細菌細胞から抽出し、配列決定し、PCR増幅し、および/または別の適切なベクターに再クローニングすることができる。
提示される配列が機能性ダブルディスプレイカセットによって正しくクローニングおよび発現されることができる形式で一旦提供されると、本発明のベクター、方法、およびライブラリーを、ファージディスプレイの公知の使用のいずれかに適合させることができる。配列は、大きいcDNA/ESTライブラリーに由来してもよく、または関連のあるオープンリーディングフレームもしくはタンパク質ドメインおよび配列のファミリーを同定するためにスクリーニングされるゲノム/プロテオームワイドライブラリーに由来してもよい(Rosanderら、2002年、Jacobssonら、2003年、Faixら、2004年)。選択が生物学的活性のための適切なアッセイまたは計算機モデル化と合わせられた場合、抗体に加えて、ファージディスプレイ技術を用いて、生物活性ペプチド選択を検出することができる(Pastorら、2004年、Falcianiら、2005年)。
ファージによって発現されるペプチド配列モチーフによってアレルゲン、抗イディオタイプ、BもしくはT細胞エピトープ、またはワクチンの定義が可能になるように、バクテリオファージによって提示された非ランダムまたはランダムペプチドのライブラリーをスクリーニングして、抗体を特異的に結合するペプチドを発現しているファージを選択することができる(Zhongら、1997年、Daviesら、2000年、De Berardinisら、2000年、Goletzら、2002年)。あるいは、「サンドイッチ」アッセイは、ファージ上の可変鎖のみのクローニングおよび発現に基づくが、可変軽鎖および重鎖複合体の抗原駆動型の安定化を利用するために、抗原および一方の可変鎖が溶液中に提供される(Watanabeら、2002年)。
ファージのさらなる操作は、種々の理由のために、選択プロセスの間に行うことができる。例えば、ファージを発現している抗体および抗原の混合物を、溶液中でインキュベートすることができ、免疫複合体が、セファロースビーズに結合したプロテインGまたはプロテインAとともに沈殿する。次いで、生成されるプラークの数を判定することによって沈殿したファージを定量することが可能なように、沈殿したファージを、大腸菌(E.Coli)の感染を誘導するため、またはELISAによって相互作用を測定するために、用いることができる(Al-bukhariら、2002年)。
ライブラリーが供される細胞全体または組織を用いることによって、ファージディスプレイ技術を用いて、発現およびスクリーニングされるタンパク質配列の生物学的活性の、より一般的な分析を行うことができる。次いで、関連のある組換えファージが、腫瘍細胞を含む特定の特性を有するヒト細胞の表面等の複合体構造へのそれらの結合(または結合がないこと)に基づいて選択され、新規なマーカーおよび治療標的の同定を助ける(Edwardsら、2000年、LandonおよびDeutscher、2003年、Mutuberriaら、2004年、ShuklaおよびKrag、2005年)。あるいは、相互作用はまた、細胞へのファージの結合だけでなく、その内在化にも関連があり、この特異的活性を有する細胞特異的ペプチドまたは抗体の同定を可能にする(LegendreおよびFastrez、2002年、Floreaら、2003年Elrickら、2005年)。
特異的リガンドとの相互作用の検出は、通常のパニング方法を適用することによって、または蛍光ベースの分光法もしくは顕微鏡法(Lagerkvistら、2001年、Jayeら、2004年)、ホスファターゼ反応(Hanら、2004年)、または他のハイスループット技術(Pausら、2003年、Rhynerら、2004年、Steukersら、2006年)等の、提示されるタンパク質とその結合パートナーとの間の相互作用の評価のためのより精巧な生物物理学的な技術を適用することによって、行うことができる。一般に、抗体断片を提示する多くのライブラリーについて示されているように、それらの中でクローニングされた、より多くの異なる配列を有するライブラリーにおいて、標的に対してより高い親和性を有するタンパク質が見出されているので、パニング手法の成功はまた、スクリーニングされるライブラリーの大きさによる(HustおよびDubel、2005年)。
一般に、本発明の方法によって得られる組換えファージまたは融合タンパク質は、リガンド、細胞、または標的分子を、結合、検出、中和、および/または変化させるために、直接用いることができ、ここで前記組換えファージまたは融合タンパク質は、単離された形態または混合物の形態である。
本発明のファージミドベクターにクローニングおよび配置された選択されたコートタンパク質の一方または他方のいずれかとの融合タンパク質として提示される1つまたは複数のタンパク質配列が1つまたは複数のパニングサイクルの後に一旦選択されると、関連のある組換えファージおよび関連のあるDNA配列を、当該分野で公知の方法(例えば、制限酵素を用いてファージミドベクターから分離する、直接配列決定する、および/またはPCRによって増幅する)に従って、単離および特徴付けすることができる。次いで、Oxford University Press発行の「A Practical Approach」のシリーズの何冊か(「DNA Cloning 2:Expression Systems」、1995年、「DNA Cloning 4:Mammalian Systems」、1996年、「Protein Expression」、1999年、「Protein Purification Techniques」、2001年)を含む、どのようにして組換えタンパク質をクローニングおよび生成するかに関する多くの書籍および総説に記載されているように、これらの配列を、原核または真核宿主細胞へのさらなる修飾および/または発現のための、より適切なベクターに移すことができる。
一旦適したエピソームの、または非相同的もしくは相同的に組み込むベクターに挿入された、提示および選択されるタンパク質配列をコードするDNA配列を、任意の適した手段(形質転換、トランスフェクション、結合、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、直接のマイクロインジェクション等)によって、適切な宿主細胞に導入して、それらを形質転換することができる。特定のプラスミドまたはウイルスベクターの選択における重要な因子としては、ベクターを含まないレシピエント細胞から、ベクターを含むレシピエント細胞を認識および選択することができる容易さ、特定の宿主における、所望されるベクターのコピー数、ならびに異なる種の宿主細胞の間でベクターを「往復させる」ことができることが望ましいかどうか、が挙げられる。
ベクターは、転写開始/終止調節配列の制御下で、原核または真核宿主細胞における融合タンパク質の発現を可能にするべきであり、これらは前記細胞中で構成的に活性があるか、または誘導可能であるよう選択される。次いで、かかる細胞が実質的に豊富になった細胞系を単離して、適した細胞系を提供することができる。真核宿主(例えば、酵母、昆虫または哺乳動物細胞)について、宿主の性質に応じて、異なる転写および翻訳調節配列を採用してもよい。これらは、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サルウイルス等のウイルスの供給源に由来してもよく、ここで調節シグナルは、高レベルの発現を有する特定の遺伝子と関連がある。例は、ヘルペスウイルスのTKプロモーター、SV40初期プロモーター、酵母gal4遺伝子プロモーター等である。遺伝子の発現を調節することができるように、抑制および活性化を可能にする転写開始調節シグナルを選択してもよい。発現ベクターを含む宿主細胞の選択を可能にする1つまたは複数のマーカーも導入することによって、導入されたDNAによって安定して形質転換されている細胞を選択することができる。マーカーはまた、栄養要求性宿主への光合成栄養、殺生物剤耐性、例えば抗生物質または銅等の重金属を提供してもよい。選択可能なマーカー遺伝子を、発現されるDNA遺伝子配列に直接連結させるか、またはコトランスフェクションによって同じ細胞に導入することができる。さらなる転写調節要素もまた、最適な発現に必要な場合がある。
宿主細胞は、原核または真核のどちらでもよい。真核宿主、例えばヒト、サル、マウス等の哺乳動物細胞、昆虫(バキュロウイルスベースの発現系を用いる)およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等の哺乳動物細胞が、タンパク質分子に正しい折りたたみまたは正しい部位での糖鎖付加を含む翻訳後修飾を提供するので、好ましい。酵母細胞もまた、糖鎖付加を含む翻訳後ペプチド修飾を行うことができる。酵母において所望のタンパク質の生成に利用することができる強力なプロモーター配列および多くのコピー数のプラスミドを利用するいくつかの組換えDNA戦略が存在する。酵母は、クローニングされた哺乳動物遺伝子生成物においてリーダー配列を認識し、リーダー配列を有するペプチド(すなわち、プレペプチド)を分泌する。組換えポリペプチドの、長期間の高収量の生成、安定した発現が好ましい。例えば、同じまたは別々のベクター上にウイルスの複製開始点および/または内在性発現要素および選択可能なマーカー遺伝子を含んでもよい発現ベクターを用いて、目的のポリペプチドを安定して発現する細胞系を形質転換してもよい。ベクターの導入の後、濃縮された培地中で1〜2日間細胞を増殖させてから選択培地に切り替えてもよい。選択可能なマーカーの目的は、選択に耐性を付与するものであり、その存在によって、導入された配列をうまく発現している細胞の増殖および回収が可能になる。安定して形質転換されている細胞の耐性クローンは、細胞型に適切な組織培養技術を用いて増殖することができる。かかる細胞が実質的に濃縮されている細胞系は、次いで単離して安定した細胞系を提供することができる。
発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞系は当該分野で公知であり、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa、ベビーハムスター腎臓(BHK)、サル腎臓(COS)、C127、3T3、BHK、HEK 293、Per.C6、Bowesメラノーマおよびヒト肝細胞癌(例えばHep G2)細胞ならびにいくつかの他の細胞系を含むがこれらに限定されない、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞系が挙げられる。バキュロウイルス系において、バキュロウイルス/昆虫細胞発現系のための物質は、キット形態で市販されている(例えば、Invitrogenによって商業化されている)。
免疫グロブリン可変鎖、具体的にはヒト免疫グロブリン可変鎖を発現するファージの場合、重要な修飾は、選択されたFabまたはscFvの、好ましいアイソタイプおよび定常領域を有する完全な免疫グロブリンタンパク質への転換である。この種の修飾によって、例えば、ファージディスプレイライブラリー由来単鎖FvまたはFabから構築された全てのアイソタイプの全長ヒトモノクローナル抗体を生成すること、ならびに哺乳動物または昆虫細胞において発現させることが可能になる(Amesら、1995年、Mahlerら、1997年、Persicら、1997年、Boelら、2000年、Liangら、2001年、Guttieriら、2003年)。次いで、本発明のベクターおよび方法を用いて選択されたタンパク質を、例えばマルトース結合タンパク質等の別のディスプレイ足場(display scaffold)への融合(Zwickら、1998年)または単離された組換えタンパク質としてではなく組換えタンパク質の混合物としてのそれらの発現および選択(Sharonら、2005年、Meijerら、2006年)を可能にする他のベクター中でクローニングおよび発現することができる。本発明に従って提示および選択されたペプチド(および100アミノ酸未満のタンパク質)の場合、これらの配列は、固相合成および液相合成等の化学的合成技術を用いて生成されるのに十分短い。固相合成として、例えば、合成されるペプチドのカルボキシ末端に対応するアミノ酸が、有機溶媒中に不溶性の支持体に結合され、それらのアミノ基および適切な保護基で保護された側鎖官能基を有するアミノ酸がカルボキシ末端からアミノ末端の順で1つずつ縮合されるものと樹脂またはペプチドのアミノ基の保護基に結合したアミノ酸が放出されるものとの交互の反応の繰り返しによって、このようにしてペプチド鎖が伸長する。精製されたペプチドは、合成の間に導入された他の化学基も含むか、またはこれらは、さらに修飾されてデンドリマーを形成することもできる(Piniら、2005年)。
組換えタンパク質の精製は、この目的のための公知の方法の任意のもの、すなわち、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、電気泳動法等を含む任意の従来の手順によって行うことができる。本発明のタンパク質を精製するために好ましく使用することができるさらなる精製手順は、標的タンパク質に結合し、生成されてカラム内に含まれるゲルマトリックス上に固定されたモノクローナル抗体またはアフィニティーグループを用いた、アフィニティークロマトグラフィーである。タンパク質を含む不純な調製物はカラムを通過する。ヘパリン、プロテインA、プロテインG、または特異的抗体によって、タンパク質はカラムに結合するが、不純物は通過する。洗浄の後、pHまたはイオン強度の変化によって、タンパク質をゲルから溶出させる。あるいは、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いることができる。溶出は、タンパク質精製に一般的に採用される水−アセトンベースの溶媒を用いて行うことができる。
本発明の方法によって同定されたファージ提示タンパク質配列は、免疫検出、T細胞/MHC関連活性の研究(Matsushitaら、2001年、Zhaoら、2001年、Kurokawaら、2002年、Liら、2005年)、および生物学的に活性のある抗体またはタンパク質のBまたはT細胞エピトープマッピング(Bugliら、2001年、Dromeyら、2004年、Di Niroら、2005年)等のいくつかの他の適用を提供することができる。本発明の方法に従って作製されたコンビナトリアルライブラリーはまた、各ファージにおいてタンパク質の配列変異体を発現させ、次いでファージをスクリーニングして、受容体、リガンド、抗原、または酵素基質に対するより高い親和性を有する融合タンパク質変異体を発現しているものを同定することによってタンパク質操作に使用することもでき(Heinisら、2001年、SchooltinkおよびRose-John、2005年)、防御または病原性ヒト抗体の検出に使用することもできる(Ditzel、2000年)。あるいは、これらの変異体は、タンパク質分解に対するそれらの安定性に基づいて選択することができる(BaiおよびFeng、2004年)。ファージディスプレイ技術はまた、脂肪酸(Gargirら、2002年)、植物ホルモン(Suzukiら、2005年)、DNA(Nilssonら、2000年)、またはグリカン(van de Westerloら、2002年、Ravnら、2004年)等の非タンパク質標的を認識するタンパク質を特徴付けするために使用することもできる。
実施例は、レアカット制限酵素認識部位(rare cutting restriction enzyme site)およびGly4Serベースの配列を含むDISリンカー2を用いてN末端で増幅および変異されている2つのコートタンパク質(cp3およびcp8)をコードするDNA配列を利用することによって、本発明のファージディスプレイ技術を確立するための構築物および実験の設計を説明している。N末端修飾cp3およびcp8タンパク質(cp3*およびcp8*)を別々に発現するファージミドベクターが作製されている。cp3*またはcp8*DNAコード配列のいずれかのN末端で融合した異種配列(ヒトFabのペプチド)を正しく発現している細胞および組換えファージの生成が実証されている。修飾ファージタンパク質−ペプチド融合タンパク質の発現は、ファージ生成、集合および感染性に影響を及ぼさない。融合ペプチドおよび抗体の結合特性に基づいて行われた、修飾タンパク質を発現するファージの親和性選択が効率的であることを実証して、システムは検証されており、細胞膜周辺腔におけるFab分子の正しい集合が示されている。
DISリンカーで修飾されたコートタンパク質配列を、pBluescript由来の足場に適切な方向で挿入することができる。この基本的なpDDベクターは、提示される配列(ペプチドまたは抗体可変領域)および抗生物質耐性マーカーを含むDDカセットとライゲートされており、これらの配列が2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合している組換えpDDベクターの選択を可能にしている。
本発明の他の特性および利点は、以下の詳細な実施例から、より明らかになるであろう。本発明のさらなる実施形態は、本明細書中に記載されている特性の任意の組合せを含むことができる。本願全体で引用されている全ての参考文献、係属中の特許出願および公開された特許の内容は、参照によって明確に援用される。
実施例1
タンパク質およびペプチドを提示するための、繊維状ファージコートタンパク質3(cp3*)をコードするDISリンカー2修飾DNA配列の調製および発現
a)材料および方法
M13ヘルパー二本鎖DNAの生成
市販のバクテリオファージM13ヘルパー(VCSM13、Stratagene、カリフォルニア州ラ・ホーヤ)を、その二本鎖複製形態DNAを単離するための供給源として使用した。2mlのLB培地に、F’エピソームを保有する細菌株(大腸菌(E.Coli)XL1Blue、Stratagene、カリフォルニア州ラ・ホーヤ)の50μlの培養物を、1×1011個のバクテリオファージ粒子と混合した。混合物を、一定して振とうしながら、37℃で4〜5時間インキュベートした。次いで、混合物を12000xgで5分間遠心分離して、感染した細菌をペレット化した。上清を除去した後、細菌ペレットを、Qiagenミニプレップキットを用いた標準的なDNA抽出プロトコルにおいて使用し、1%アガロースゲル電気泳動法において分析した。
タンパク質およびペプチドを提示するための、繊維状ファージコートタンパク質3(cp3*)をコードするDISリンカー2修飾DNA配列の調製および発現
a)材料および方法
M13ヘルパー二本鎖DNAの生成
市販のバクテリオファージM13ヘルパー(VCSM13、Stratagene、カリフォルニア州ラ・ホーヤ)を、その二本鎖複製形態DNAを単離するための供給源として使用した。2mlのLB培地に、F’エピソームを保有する細菌株(大腸菌(E.Coli)XL1Blue、Stratagene、カリフォルニア州ラ・ホーヤ)の50μlの培養物を、1×1011個のバクテリオファージ粒子と混合した。混合物を、一定して振とうしながら、37℃で4〜5時間インキュベートした。次いで、混合物を12000xgで5分間遠心分離して、感染した細菌をペレット化した。上清を除去した後、細菌ペレットを、Qiagenミニプレップキットを用いた標準的なDNA抽出プロトコルにおいて使用し、1%アガロースゲル電気泳動法において分析した。
DISリンカー2N末端修飾cp3タンパク質(cp3*タンパク質)をコードする遺伝子の生成
プライマーcp3*FWおよびcp3*RW(配列番号13および配列番号14、表1)を用いて、cp3*をコードする遺伝子を生成するためのPCR反応を行った。50pgの鋳型DNAおよび300mMの各プライマーを用いて、製造業者の使用説明書に従って、Expand High Fidelity(Roche)を用いて、PCR増幅を行った。使用したPCR条件は、95℃で2分間(1サイクル);95℃で20秒間、63℃で30秒間、72℃で40秒間(35サイクル)であった。PCR増幅の後、2.5単位のAmpliTaqポリメラーゼ(Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティ)をPCR反応に加え、増幅された断片の3’末端に温度依存的に単一のデオキシアデニンの付加を可能にするために、これを72℃でさらに20分間インキュベートした。1.5%アガロースゲル中でPCR産物を電気泳動し、ゲル抽出キット(Qiagen)を用いて精製した。
プライマーcp3*FWおよびcp3*RW(配列番号13および配列番号14、表1)を用いて、cp3*をコードする遺伝子を生成するためのPCR反応を行った。50pgの鋳型DNAおよび300mMの各プライマーを用いて、製造業者の使用説明書に従って、Expand High Fidelity(Roche)を用いて、PCR増幅を行った。使用したPCR条件は、95℃で2分間(1サイクル);95℃で20秒間、63℃で30秒間、72℃で40秒間(35サイクル)であった。PCR増幅の後、2.5単位のAmpliTaqポリメラーゼ(Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティ)をPCR反応に加え、増幅された断片の3’末端に温度依存的に単一のデオキシアデニンの付加を可能にするために、これを72℃でさらに20分間インキュベートした。1.5%アガロースゲル中でPCR産物を電気泳動し、ゲル抽出キット(Qiagen)を用いて精製した。
次いで、製造業者の使用説明書に従って、3’末端に付加された単一のデオキシアデニンによって、cp3*遺伝子をpGEM T−Easyベクター(Promega)にライゲートした。ライゲーション混合物を用いて、エレクトロコンピテント大腸菌(E.Coli)DH5α細胞を形質転換した。翌日、10個の白色のコロニーを取り出し、4mlのLuria−Bertaniブロス(LB、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Sambrookら、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク、1989年)に接種し、一定して振とうしながら37℃で一晩インキュベートした。翌日、2mlの細菌上清を、ミニプレップQiagenキットを用いたプラスミドDNA抽出/精製に使用した。次いで、制限エンドヌクレアーゼ酵素によって、cp3*遺伝子を保有しているpGEM T−Easyプラスミドを分析した。cp3*をコードする遺伝子の正しいヌクレオチド配列を検証するために、1つのクローンを選択し、配列決定し、ヌクレオチド配列中の変異A523からG523がアミノ酸置換Ser175からGly175を生じることを同定した。
基本的pRIBベクター
基本的pRIBベクターは、ファージ複製開始点(F1(+))、塩基対3〜459)、プラスミド複製開始点(ColE1、塩基対1032〜1972)、およびアンピシリン耐性遺伝子(Ampr、塩基対1975〜2832)を含む、pBluescript II SK(+)ベクター(Stratagene、Genbank受託番号X52328)中に存在する要素を含む。
基本的pRIBベクターは、ファージ複製開始点(F1(+))、塩基対3〜459)、プラスミド複製開始点(ColE1、塩基対1032〜1972)、およびアンピシリン耐性遺伝子(Ampr、塩基対1975〜2832)を含む、pBluescript II SK(+)ベクター(Stratagene、Genbank受託番号X52328)中に存在する要素を含む。
さらなる3つの要素が、このベクターに含まれる発現カセットに含まれる。第一の要素は、リーダー配列(5’末端のPelB)とともにインフレームで、終止コドンで終わる断片としてクローニングされる、LacZオペロンのプロモーター(配列番号23)、ATG含有リーダー配列PelB(配列番号24および配列番号25)、およびタンパク質配列(例えば、免疫グロブリン軽鎖)をコードするDNAの挿入を可能にする、SacI−XbaIクローニング部位を含む。第二の要素は、クロラムフェニコール耐性遺伝子(CAT)である。第三の要素は、リーダー配列(5’末端のPelB)、および終止コドンを含む機能性コートタンパク質(例えば、cp3*)をコードするDNA配列(3’末端で)とともにインフレームで、SpeI−NheIクローニング部位を用いてクローニングすることができる、Lac Zオペロンのプロモーター(配列番号23)、ATG含有リーダー配列PelB、タンパク質配列(例えば、免疫グロブリン重鎖上の可変領域)をコードするDNAの挿入を可能にする、XhoI−SpeIクローニング部位を含む。空のベクターにおいて、SacI−XbaI、SpeI−NheI、およびXhoI−SpeIクローニング部位は、クローニング工程の間に置換される適合する末端を有するDNAスタッファー断片によって分離されている。例えば、スタッファーDNA配列は、SacI−XbaIクローニング部位に、かかる制限酵素認識部位と適合する単鎖末端を有する2つのオリゴヌクレオチド(LCスタッファーFWおよびLCスタッファーRW、配列番号26および配列番号27、表1)をアニーリングすることによって得られる合成断片をライゲートすることによって、挿入することができる。
cp3*および関連する融合タンパク質の発現のための、pRIB1ベクターの構築
pGEM−TEasyから切除されたcp3*をコードするSpeI−NheI断片が上述のSpeI−NheIクローニング部位にライゲートされているpRIB基本的ベクターを用いて、pRIB1−cp3*ベクターを構築した。ライゲーション混合物を用いて、エレクトロコンピテント大腸菌(E.Coli)DH5α細胞を形質転換し、翌日、10個のコロニーを取り出し、4mlのLBブロスに接種し、一定して振とうしながら37℃で一晩インキュベートした。翌日、2mlの細菌懸濁液を、ミニプレップQiagenキットを用いたプラスミドDNA抽出/精製に使用した。次いで、正しいcp3*方向を検証するために、制限エンドヌクレアーゼ酵素によって、修飾cp3*遺伝子を保有するプラスミドを分析した。
pGEM−TEasyから切除されたcp3*をコードするSpeI−NheI断片が上述のSpeI−NheIクローニング部位にライゲートされているpRIB基本的ベクターを用いて、pRIB1−cp3*ベクターを構築した。ライゲーション混合物を用いて、エレクトロコンピテント大腸菌(E.Coli)DH5α細胞を形質転換し、翌日、10個のコロニーを取り出し、4mlのLBブロスに接種し、一定して振とうしながら37℃で一晩インキュベートした。翌日、2mlの細菌懸濁液を、ミニプレップQiagenキットを用いたプラスミドDNA抽出/精製に使用した。次いで、正しいcp3*方向を検証するために、制限エンドヌクレアーゼ酵素によって、修飾cp3*遺伝子を保有するプラスミドを分析した。
XhoIおよびSpeIで二重消化して、インフルエンザウイルス赤血球凝集素由来のエピトープをコードし(HAタグ配列YPYDVPDYA)、XhoIおよびSpeI適合末端を有する二本鎖合成DNA配列とライゲートしたpRIB1−cp3*から開始して、pRIB1−HAcp3*ベクターを構築した。1μMの濃度でオリゴヌクレオチド(HAタグリンカーFWおよびHAタグリンカーRW、表1の配列参照、配列番号17および配列番号18)を混合し、それらを95℃で5分間変性させることによって、HAタグリンカーを得た。次いで、特異的アニーリングを得るために、オリゴヌクレオチド混合物を95℃の予め温めた水に移し、室温で冷ました。XhoI−SpeI二重消化pRIB1−cp3*およびHAタグリンカーによって構成されたライゲーション混合物を用いて、エレクトロコンピテント大腸菌(E.Coli)DH5α細胞を形質転換した。翌日、10個のコロニーを取り出し、4mlのLBに接種し、一定して振とうしながら37℃で一晩放置した。翌日、2mlの細菌懸濁液を、ミニプレップQiagenキットを用いたプラスミドDNA抽出/精製に使用し、次いで、HAタグの存在を検証するために、制限エンドヌクレアーゼ酵素によって分析した。cp3*とともにインフレームで融合したHAタグを有する、所望の特性を示す1つのクローンを選択し、発現実験に使用した。
ファージディスプレイライブラリーからC型肝炎ウイルスE2タンパク質に対するその親和性について単離されたヒトモノクローナル組換えFabの重鎖および軽鎖をコードするDNA配列(e44と呼ばれるがe8と同一である)を用いて、pRIB1−e44cp3*ベクターを構築した(Burioniら、1998年b)。XhoI−SpeIおよびXbaI−SacIクローニング部位をそれぞれ用いて、e44重鎖および軽鎖をpRIB1−cp3*にクローニングした。所望の特性を示し、したがってcp3*とともにインフレームで融合したe44重鎖およびXbaI−SacI部位の間にクローニングされたe44軽鎖を有する形質転換大腸菌(E.Coli)クローンを、発現実験に使用した。非修飾cp3配列を用いて、同様に対照ベクター(pRIB−e44cp3)を構築した(DISリンカー2なし)。
文献中(Burioniら、1997年、Burioniら、1998年)で入手可能なファージミドに基づいて、N末端に融合したfab(e44)またはペプチド(HAタグ)ありまたはなしで、cp3をコードする対照pRIBプラスミドを作製(およびpRIB−cp3、pRIB−HAcp3、pRIB−e44cp3と名づけた)した。
pRIB1−cp3*ベースのプラスミドを用いた、HAcp3*およびe44cp3*発現の分析
アンピシリン(100μg/ml)を含む10mlのスーパーブロス(SB、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Sambrookら、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク、1989年)に、適切な大腸菌(E.Coli)XL1Blueクローン(pRIB1−cp3*、pRIB1−HAcp3*、pRIB1−e44cp3*、またはpRIB1−e44cp3を含む)を接種し、ロータリーシェイカー中、37℃で8時間増殖させた。この時点で、増殖している細菌に、イソプロピルチオ−β−Dガラクトシド(IPTG、1mmol/L、Sigma、ミシガン州セントルイス)を加え、さらに30℃で一晩インキュベートした。次いで、細胞を遠心分離によって採取し、1mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Sambrookら、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク、1989年)中に再懸濁し、凍結−解凍処理(37℃および−80℃の3サイクル、各工程15分間)に供した。細胞残屑(残渣)を、微小遠心において、室温で、15000gでの遠心分離によって、ペレット化し、上清を用いてタンパク質含有量を定量した。20μgの全タンパク質を12%アクリルアミドゲル(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Sambrookら、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク、1989年)にロードし、電気泳動によって分離した。再溶解したタンパク質をニトロセルロース膜に移し、次いでこれを、10%乳を含むPBS/0.1% Tween−20(Sigma)との第一の1時間のインキュベーションによってブロックした。次いで、膜を洗浄し、PBS/0.1% Tween−20含有5%乳中の、1:1000希釈した抗HAタグ抗体(HA.11、Covance)または1:10000希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP、Sigma)に結合したヤギ抗ヒトFabとともに、インキュベートした。第二の1時間のインキュベーションの後、PBS/0.1% Tween−20で膜を3回洗浄した。Fab検出のために、膜を、Supersignal West Pico化学発光基質(Pierce)を用いた、増強された化学発光検出に、直接供した。HAタグ検出のために、膜を、PBS/0.1% Tween−20中のホースラディッシュペルオキシダーゼン結合した抗マウス(1:1000希釈)とともに、さらに1時間インキュベートした。PBS/0.1% Tween−20での3回の洗浄の後、膜を、Supersignal West Pico化学発光基質(Pierce)を用いた、増強された化学発光検出に供した。
アンピシリン(100μg/ml)を含む10mlのスーパーブロス(SB、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Sambrookら、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク、1989年)に、適切な大腸菌(E.Coli)XL1Blueクローン(pRIB1−cp3*、pRIB1−HAcp3*、pRIB1−e44cp3*、またはpRIB1−e44cp3を含む)を接種し、ロータリーシェイカー中、37℃で8時間増殖させた。この時点で、増殖している細菌に、イソプロピルチオ−β−Dガラクトシド(IPTG、1mmol/L、Sigma、ミシガン州セントルイス)を加え、さらに30℃で一晩インキュベートした。次いで、細胞を遠心分離によって採取し、1mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Sambrookら、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク、1989年)中に再懸濁し、凍結−解凍処理(37℃および−80℃の3サイクル、各工程15分間)に供した。細胞残屑(残渣)を、微小遠心において、室温で、15000gでの遠心分離によって、ペレット化し、上清を用いてタンパク質含有量を定量した。20μgの全タンパク質を12%アクリルアミドゲル(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Sambrookら、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク、1989年)にロードし、電気泳動によって分離した。再溶解したタンパク質をニトロセルロース膜に移し、次いでこれを、10%乳を含むPBS/0.1% Tween−20(Sigma)との第一の1時間のインキュベーションによってブロックした。次いで、膜を洗浄し、PBS/0.1% Tween−20含有5%乳中の、1:1000希釈した抗HAタグ抗体(HA.11、Covance)または1:10000希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP、Sigma)に結合したヤギ抗ヒトFabとともに、インキュベートした。第二の1時間のインキュベーションの後、PBS/0.1% Tween−20で膜を3回洗浄した。Fab検出のために、膜を、Supersignal West Pico化学発光基質(Pierce)を用いた、増強された化学発光検出に、直接供した。HAタグ検出のために、膜を、PBS/0.1% Tween−20中のホースラディッシュペルオキシダーゼン結合した抗マウス(1:1000希釈)とともに、さらに1時間インキュベートした。PBS/0.1% Tween−20での3回の洗浄の後、膜を、Supersignal West Pico化学発光基質(Pierce)を用いた、増強された化学発光検出に供した。
b)結果
N末端をトランケートし、DISリンカー2を制限エンドヌクレアーゼ部位SpeIおよびSfiI(5’末端で、12アミノ酸配列をコードする)ならびに終止コドンの後のNheI制限酵素認識部位(3’で、図1)とともに組み込む、cp3をコードする天然のM13遺伝子の配列を、PCR増幅によって修飾した。BAC76618としても公知であり、エンテロバクテリア(Enterobacteria)ファージM13 cp3タンパク質のアミノ酸216〜424(SWISSPROT受託番号P69168)を含むこの変異体は、元々のシグナル配列およびさらなるN末端構造要素を欠くが、pFCAH−E8d(GENBANK受託番号AB096107)等のこの範囲のために使用されるファージミドにおいて示されるように、依然として正しく融合タンパク質を提示することができる。
N末端をトランケートし、DISリンカー2を制限エンドヌクレアーゼ部位SpeIおよびSfiI(5’末端で、12アミノ酸配列をコードする)ならびに終止コドンの後のNheI制限酵素認識部位(3’で、図1)とともに組み込む、cp3をコードする天然のM13遺伝子の配列を、PCR増幅によって修飾した。BAC76618としても公知であり、エンテロバクテリア(Enterobacteria)ファージM13 cp3タンパク質のアミノ酸216〜424(SWISSPROT受託番号P69168)を含むこの変異体は、元々のシグナル配列およびさらなるN末端構造要素を欠くが、pFCAH−E8d(GENBANK受託番号AB096107)等のこの範囲のために使用されるファージミドにおいて示されるように、依然として正しく融合タンパク質を提示することができる。
次いで、こうして得られたcp3*タンパク質(221アミノ酸、図2)をコードする、N末端を修飾されたcp3(cp3*)をコードするPCR産物を、pGEM T−Easyにライゲートし、配列決定した。増幅されたセグメントは、本特許出願において試験されるようなタンパク質の配置または活性に対する影響を有さないアミノ酸置換Ser175からGly175を生じるヌクレオチド配列中に、変異A523からG523を含む。
基本的なpRIBベクターは、プラスミドおよびファージ増幅に十分な周知のpBluescript II SK(+)ベクター中に存在する要素、ならびに抗生物質耐性遺伝子を含む。このベクターは、さらなるマーカー遺伝子(クロラムフェニコール耐性遺伝子)および2つの転写単位とともに、発現カセットをさらに含む。両方の転写単位は、lacオペロンのプロモーター、ATG含有リーダー配列PelB、およびタンパク質配列をコードするDNAの挿入を可能にする特異的クローニング部位を含む。具体的には、かかる部位の一方によって、組換えファージの表面上の異種タンパク質配列(例えば、cp3*)を発現するために使用される機能性コートタンパク質をコードするDNA配列との融合が可能になる。
次いで、得られたpRIB1−cp3*を、十分特徴付けられたペプチド抗原(HAタグ)、またはe44と呼ばれ、HCVタンパク質E2に結合するとして特徴付けられている(Burioniら、1998年a)、ヒトFabのいずれかをコードするDNAがcp3*とともにインフレームで融合している、一連のpRIB1ベクターを作製するために使用した(図3)。次いで、対応する対照ファージミドpRIB1−cp3*およびpRIB−e44と比較して、得られたベクターpRIB1−HAcp3*およびpRIB1−e44cp3*(図4)を用いて、ファージディスプレイ適用のために、cp3*特性を特徴付けた。
pRIB1−cp3*、pRIB1−HAcp3*、pRIB−e44cp3またはpRIB1−e44cp3*を含む細菌クローンで調製した全タンパク質抽出物のウエスタンブロットによって、cp3*ベースの融合タンパク質の発現を検証し、抗HAタグ(図5A)または抗ヒトFab(図5B)で分析した。ウエスタンブロットから、pRIB1−cp3*ベクターを用いて、cp3*との融合タンパク質として、細菌においてHAタグおよびe44 fabの両方が正しく発現していることが示される。
c)結論
DISリンカー2で修飾されたcp3タンパク質配列(cp3*)をファージミドベクターにおいてクローニングおよび発現させて、細菌におけるcp3*ベースの融合タンパク質の正しい発現を可能にすることができる。
実施例2
タンパク質およびペプチドを提示するための、繊維状ファージコートタンパク質8(cp8*)をコードするDISリンカー2修飾DNA配列の調製および発現
a)材料および方法
DISリンカー2 N末端修飾cp8タンパク質(cp8*タンパク質)をコードする遺伝子、cp8*ベースの融合タンパク質を発現する関連のあるベクターの生成、およびそれらの分析
市販のバクテリオファージM13ヘルパーから開始するcp8*の生成およびクローニング戦略は、cp3*について実施例1で示されたものと同一である。プライマーcp8*FWおよびcp8*RW(配列番号15および配列番号16、表1)を用いて、PCRを行った。使用したPCR条件は、95℃で2分間(1サイクル);95℃で20秒間、63℃で30秒間、72℃で40秒間(35サイクル)であった。取扱説明書に従って、Expand High Fidelity(Roche)を用いて、PCR増幅を行った。使用したDNA鋳型(VCSM13から得られる)およびプライマー濃度は、cp3*PCR増幅について記載されたものと同じであった。PCR増幅の後、2.5単位のAmpliTaqポリメラーゼを加え、72℃でさらに20分間反応をインキュベートした。1.5%アガロースゲル中でPCR産物を電気泳動し、遺伝子抽出キット(Qiagen)を用いて精製した。
DISリンカー2で修飾されたcp3タンパク質配列(cp3*)をファージミドベクターにおいてクローニングおよび発現させて、細菌におけるcp3*ベースの融合タンパク質の正しい発現を可能にすることができる。
実施例2
タンパク質およびペプチドを提示するための、繊維状ファージコートタンパク質8(cp8*)をコードするDISリンカー2修飾DNA配列の調製および発現
a)材料および方法
DISリンカー2 N末端修飾cp8タンパク質(cp8*タンパク質)をコードする遺伝子、cp8*ベースの融合タンパク質を発現する関連のあるベクターの生成、およびそれらの分析
市販のバクテリオファージM13ヘルパーから開始するcp8*の生成およびクローニング戦略は、cp3*について実施例1で示されたものと同一である。プライマーcp8*FWおよびcp8*RW(配列番号15および配列番号16、表1)を用いて、PCRを行った。使用したPCR条件は、95℃で2分間(1サイクル);95℃で20秒間、63℃で30秒間、72℃で40秒間(35サイクル)であった。取扱説明書に従って、Expand High Fidelity(Roche)を用いて、PCR増幅を行った。使用したDNA鋳型(VCSM13から得られる)およびプライマー濃度は、cp3*PCR増幅について記載されたものと同じであった。PCR増幅の後、2.5単位のAmpliTaqポリメラーゼを加え、72℃でさらに20分間反応をインキュベートした。1.5%アガロースゲル中でPCR産物を電気泳動し、遺伝子抽出キット(Qiagen)を用いて精製した。
次いで、修飾cp8*遺伝子をpGEM−T easyベクターにライゲートし、次いで、正しいcp8*配列を検証するために、制限エンドヌクレアーゼ酵素によってクローンを分析し、配列決定した。
SpeI−NheIで消化して、SpeI−NheI消化で切除されたpGEM−TEasy由来のcp8*とライゲートしたpRIB1−cp3*を用いて、pRIB2−cp8*ベクターを構築した。ライゲーション混合物を用いて、実施例1に示されるように、エレクトロコンピテント大腸菌(E.coli)DH5α細胞を形質転換した。結果として、pRIB2−cp8*から開始し、pRIB1−HAcp3*およびpRIB1−e44cp3*について上述されたのと同じクローニング戦略を用いて、pRIB2−HAcp8*およびpRIB2−e44cp8*も作製した。
HAcp3*およびe44cp3*について上述されているように、HAcp8*およびe44cp8*を検出するための全細胞抽出物分析に関するウエスタンブロットを行った。
b)結果
cp8のN末端をDISリンカー2で修飾し、関連するファージミドベクターを作製するための手法は、cp3を修飾するために用いたものと同じである(実施例1参照)。エンテロバクテリア(Enterobacteria)ファージM13 cp8タンパク質のアミノ酸24〜73を含むこの変異体(SWISSPROT受託番号P69541)は、元々のシグナル配列のみを欠く。cp8をコードするM13遺伝子の配列を、PCR増幅によって修飾し(cp8*、62アミノ酸、図6A)、次いでpRIB2−cp8*ベクター、およびHAタグを含むcp8*ベースの融合タンパク質(図7)またはヒトFab e44がクローニングされている一連のベクターを構築するのに使用される、PCR産物(図6B)を作製した。
cp8のN末端をDISリンカー2で修飾し、関連するファージミドベクターを作製するための手法は、cp3を修飾するために用いたものと同じである(実施例1参照)。エンテロバクテリア(Enterobacteria)ファージM13 cp8タンパク質のアミノ酸24〜73を含むこの変異体(SWISSPROT受託番号P69541)は、元々のシグナル配列のみを欠く。cp8をコードするM13遺伝子の配列を、PCR増幅によって修飾し(cp8*、62アミノ酸、図6A)、次いでpRIB2−cp8*ベクター、およびHAタグを含むcp8*ベースの融合タンパク質(図7)またはヒトFab e44がクローニングされている一連のベクターを構築するのに使用される、PCR産物(図6B)を作製した。
pRIB2−HAcp8*、pRIB2−e44cp8*を含むか、またはいかなるファージミドベクターも含まない細菌クローンで調製した、全タンパク質抽出物のウエスタンブロットによって、cp3*ベースの融合タンパク質と同様に、cp8*ベースの融合タンパク質の発現を検証し、抗HAタグ(図8A)または抗ヒトFab抗体(図8B)で分析した。ウエスタンブロットによって、HAタグおよびe44 Fabの両方が、pRIB2−cp8*ベクターを用いて、cp8*との融合タンパク質として、細菌において、正しく発現されていることが示される。
c)結論
DISリンカー2で修飾されたcp8タンパク質配列(cp8*)を、ファージミドベクター中でクローニングおよび発現させて、細菌において、cp8*ベースの融合タンパク質の正しい発現を可能にすることができる。
実施例3
ペプチドまたは抗体に融合したcp3*またはcp8*を提示しているファージの機能的検証
a)材料および方法
ファージミドの増幅
文献(Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Sambrookら、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク、1989年)に記載されているように、以下の方法を行った。エレクトロコンピテント大腸菌(E.coli)XL1−Blue細胞に、50ngのファージミドベクター(pRIB1−cp3、pRIB−HAcp3、pRIB−e44cp3、pRIB1−cp3*、pRIB1−HAcp3*、pRIB1−e44cp3*、pRIB2−cp8*、pRIB2−HAcp8*、またはpRIB2−e44cp8*)をエレクトロポレーションした(0.2cm大腸菌(E.coli)Pulserキュベット、2.5Kv)。
DISリンカー2で修飾されたcp8タンパク質配列(cp8*)を、ファージミドベクター中でクローニングおよび発現させて、細菌において、cp8*ベースの融合タンパク質の正しい発現を可能にすることができる。
実施例3
ペプチドまたは抗体に融合したcp3*またはcp8*を提示しているファージの機能的検証
a)材料および方法
ファージミドの増幅
文献(Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Sambrookら、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク、1989年)に記載されているように、以下の方法を行った。エレクトロコンピテント大腸菌(E.coli)XL1−Blue細胞に、50ngのファージミドベクター(pRIB1−cp3、pRIB−HAcp3、pRIB−e44cp3、pRIB1−cp3*、pRIB1−HAcp3*、pRIB1−e44cp3*、pRIB2−cp8*、pRIB2−HAcp8*、またはpRIB2−e44cp8*)をエレクトロポレーションした(0.2cm大腸菌(E.coli)Pulserキュベット、2.5Kv)。
室温で、各キュベットを1ml、および次いで2mlのSOC培地(塩化ナトリウム0.5g/L、トリプトン20.0g/L、酵母エキス5.0g/L、KCl 2.5mMol、pHはNaOHで7.0に調節、オートクレーブの後、使用の直前に1lの培地について5mlの2M MgCl2無菌溶液および20mlの1M無菌グルコース溶液を加えた)で、直ちに洗い流した。3ml培養物を50mlポリプロピレンチューブに移し、250rpm、37℃で1時間振とうした。各培養物からの1μlおよび10μlを回収し、形質転換効率を計算した。これらを、アンピシリン(Amp、100μg/ml)およびテトラマイシン(Tet、10μg/ml)を加えたLB寒天プレートに播種し、播種したものを37℃で一晩インキュベートした。各チューブの残った内容物を、4μlの低濃度Amp(20μg/ml)および40μlのTet(10μg/ml)を加えた20mlのSBを含む瓶に移し、250rpm、37℃で1時間、インキュベートおよび振とうした。SB+50μlの高濃度Amp(50μg/ml)+200μlのTet(10μg/ml)で各培養物を100mlにし、37℃でさらに1時間インキュベートした。
ヘルパーファージ重感染
VCSM13ヘルパーファージ(Stratagene、1012プラーク形成単位[pfu])を、37℃、250rpmで2時間さらにインキュベートした各液体培養物に加えた。カナマイシン(70μg/ml)を加え、培養物を、250rpm、30℃で一晩インキュベートおよび振とうした。
VCSM13ヘルパーファージ(Stratagene、1012プラーク形成単位[pfu])を、37℃、250rpmで2時間さらにインキュベートした各液体培養物に加えた。カナマイシン(70μg/ml)を加え、培養物を、250rpm、30℃で一晩インキュベートおよび振とうした。
ポリエチレングリコール(PEG)媒介ファージ沈殿
各培養物由来の50mlの細菌を、JA10ローター(Beckman)における4000rpm(2700g)で、4℃で30分の遠心分離によって、ペレット化した。各上清を、10mlの20%PEG(ポリエチレングリコール、重量8000、Sigma)/2.5M NaCl溶液を含む清潔なチューブに移した。チューブを穏やかに3〜4回反転させることによって、溶液を徹底的に混合した。次いで、混合物を氷上で少なくとも30分間インキュベートした。15000rpm、4℃で40分間遠心分離することによって、各ファージ試料をペレット化した。ペレットを乱さないよう注意しながら、上清を廃棄した。1mlピペッターで吸引することによって、残りの上清を除去した。ペレットは、1mlの1%BSA/PBS(100mlのPBSに1gのウシ血清アルブミンを溶解させ、pHをpH7.4に調節する)中に再懸濁し、これを1.5mlチューブに移した。
各培養物由来の50mlの細菌を、JA10ローター(Beckman)における4000rpm(2700g)で、4℃で30分の遠心分離によって、ペレット化した。各上清を、10mlの20%PEG(ポリエチレングリコール、重量8000、Sigma)/2.5M NaCl溶液を含む清潔なチューブに移した。チューブを穏やかに3〜4回反転させることによって、溶液を徹底的に混合した。次いで、混合物を氷上で少なくとも30分間インキュベートした。15000rpm、4℃で40分間遠心分離することによって、各ファージ試料をペレット化した。ペレットを乱さないよう注意しながら、上清を廃棄した。1mlピペッターで吸引することによって、残りの上清を除去した。ペレットは、1mlの1%BSA/PBS(100mlのPBSに1gのウシ血清アルブミンを溶解させ、pHをpH7.4に調節する)中に再懸濁し、これを1.5mlチューブに移した。
再懸濁されたファージでのXL−1Blue細胞感染
大腸菌(E.coli)XL1−Blueの1つのコロニーを、Tet(10μg/ml)を加えられた30mlのSBを含む100ml瓶に接種し、培養物を37℃でインキュベートした。対数増殖期中期(mid−log phase)(OD600=約0.6)の細菌培養物由来の2mlに、1μlの各ファージ(1:100希釈)(iii)を感染させ、細胞を37℃で20分間、インキュベートおよび振とうした。各感染した培養物をSBで10ml(ii)にし、それを1:1000希釈(i)した。各培養物からの10μlおよび100μlを、Amp(100μg/ml)およびTet(10μg/ml)を加えたLB寒天プレートに播種した。プレートを37℃で一晩インキュベートした。
大腸菌(E.coli)XL1−Blueの1つのコロニーを、Tet(10μg/ml)を加えられた30mlのSBを含む100ml瓶に接種し、培養物を37℃でインキュベートした。対数増殖期中期(mid−log phase)(OD600=約0.6)の細菌培養物由来の2mlに、1μlの各ファージ(1:100希釈)(iii)を感染させ、細胞を37℃で20分間、インキュベートおよび振とうした。各感染した培養物をSBで10ml(ii)にし、それを1:1000希釈(i)した。各培養物からの10μlおよび100μlを、Amp(100μg/ml)およびTet(10μg/ml)を加えたLB寒天プレートに播種した。プレートを37℃で一晩インキュベートした。
ファージCFU判定
コロニーが最適なサイズであるときに(プレート上で明確に見える)、それらを計数し、式(I):
(計数されたコロニー/播種した体積)×103(i)×104(ii)×102(iii)
を用いてcfu/μlを計算した。
コロニーが最適なサイズであるときに(プレート上で明確に見える)、それらを計数し、式(I):
(計数されたコロニー/播種した体積)×103(i)×104(ii)×102(iii)
を用いてcfu/μlを計算した。
ファージ−抗原結合アッセイ
96ウェル高結合能力ELISAプレート(Costar)中の一連の2つのウェルを、0.3μgの異なる試験タンパク質:市販のネズミ抗HAタグモノクローナル抗体(HA.11、Covance、25μlのPBS中に溶解させる)、またはECBバッファー(Envコーティングバッファー、0.1M重炭酸ナトリウム、pH8.6)中に溶解している、文献中(Lesniewskiら、1995年)に記載されているように調製した組換えE2タンパク質でコーティングした。50μlの1%BSA/PBSを加えることによって、陰性対照のためのウェルを調製した。プレートを4℃で一晩インキュベートした。180μlの1%BSA/PBSを加えることによってコーティング反応をブロックし、37℃で2時間インキュベートした。ELISAプレートの各ウェルからBSA/PBS溶液を吸引し、70μlの再懸濁したファージ(ファージミドベクターpRIB1−HAcp3*、pRIB1−e44cp3*、pRIB2−e44cp8*、pRib2−HAcp8*について上記で提供されたプロトコルを用いて作製した)を各ウェルに加え、プレートを37℃で2時間インキュベートした。ウェルの内容物を吸引し、別々のチューブ(INPUTと名づける)に移し、4℃で保存した。プレートを、予め56℃に温めたPBS/Tween−20(0.5%(v/v)Tween−20を含有するPBS、Sigma)で、10回洗浄した。次いで、各ウェルを50μlのパニング溶出バッファー(0.1M HCl pH2.2)で溶出した。同じ抗原を有する両方のウェルの内容物を混合し(OUTPUTと名づける)、12μlのパニング中和バッファー(1M Tris塩基、pH9.1)を含む清潔なチューブに移した。
96ウェル高結合能力ELISAプレート(Costar)中の一連の2つのウェルを、0.3μgの異なる試験タンパク質:市販のネズミ抗HAタグモノクローナル抗体(HA.11、Covance、25μlのPBS中に溶解させる)、またはECBバッファー(Envコーティングバッファー、0.1M重炭酸ナトリウム、pH8.6)中に溶解している、文献中(Lesniewskiら、1995年)に記載されているように調製した組換えE2タンパク質でコーティングした。50μlの1%BSA/PBSを加えることによって、陰性対照のためのウェルを調製した。プレートを4℃で一晩インキュベートした。180μlの1%BSA/PBSを加えることによってコーティング反応をブロックし、37℃で2時間インキュベートした。ELISAプレートの各ウェルからBSA/PBS溶液を吸引し、70μlの再懸濁したファージ(ファージミドベクターpRIB1−HAcp3*、pRIB1−e44cp3*、pRIB2−e44cp8*、pRib2−HAcp8*について上記で提供されたプロトコルを用いて作製した)を各ウェルに加え、プレートを37℃で2時間インキュベートした。ウェルの内容物を吸引し、別々のチューブ(INPUTと名づける)に移し、4℃で保存した。プレートを、予め56℃に温めたPBS/Tween−20(0.5%(v/v)Tween−20を含有するPBS、Sigma)で、10回洗浄した。次いで、各ウェルを50μlのパニング溶出バッファー(0.1M HCl pH2.2)で溶出した。同じ抗原を有する両方のウェルの内容物を混合し(OUTPUTと名づける)、12μlのパニング中和バッファー(1M Tris塩基、pH9.1)を含む清潔なチューブに移した。
試料の組を収集した。
組1:
抗HAに対するOUTPUT pRIB1−HAcp3*
抗HAに対するOUTPUT pRIB2−HAcp8*
BSAに対するOUTPUT pRIB1−HAcp3*
BSAに対するOUTPUT pRIB2−HAcp8*
E2に対するOUTPUT pRIB1−HAcp3*
E2に対するOUTPUT pRIB2−HAcp8*
組2:
E2に対するOUTPUT pRIB1−e44cp3*
E2に対するOUTPUT pRIB−e44cp3
BSAに対するOUTPUT pRIB1−e44cp3*
BSAに対するOUTPUT pRIB−e44cp3
組3:
E2に対するOUTPUT pRIB−e44cp3
E2に対するOUTPUT pRIB2−e44cp8*
BSAに対するOUTPUT pRIB−e44cp3
BSAに対するOUTPUT pRIB2−e44cp8*
上述のINPUTおよびOUTPUTファージに感染した対数増殖期中期(OD600=約0.6)の細菌培養物由来の2mlを使用して、OUTPUTおよびINPUTファージを定量した。感染細胞を、37℃で20分間インキュベートおよび振とうした。細胞に全てのoutputおよび1μlのINPUT(1:100希釈)(iii)を感染させた。各感染培養物を、SBで10ml(ii)にし、各培養物由来の以下の体積を、Amp(100μg/ml)およびTet(10μg/ml)を加えたLB寒天プレートに播種した:10μlおよび100μlのINPUT感染培養物1:1000希釈(i)1μl、および希釈していない10μlのOUTPUT感染培養物。プレートを37℃で一晩インキュベートした。
抗HAに対するOUTPUT pRIB1−HAcp3*
抗HAに対するOUTPUT pRIB2−HAcp8*
BSAに対するOUTPUT pRIB1−HAcp3*
BSAに対するOUTPUT pRIB2−HAcp8*
E2に対するOUTPUT pRIB1−HAcp3*
E2に対するOUTPUT pRIB2−HAcp8*
組2:
E2に対するOUTPUT pRIB1−e44cp3*
E2に対するOUTPUT pRIB−e44cp3
BSAに対するOUTPUT pRIB1−e44cp3*
BSAに対するOUTPUT pRIB−e44cp3
組3:
E2に対するOUTPUT pRIB−e44cp3
E2に対するOUTPUT pRIB2−e44cp8*
BSAに対するOUTPUT pRIB−e44cp3
BSAに対するOUTPUT pRIB2−e44cp8*
上述のINPUTおよびOUTPUTファージに感染した対数増殖期中期(OD600=約0.6)の細菌培養物由来の2mlを使用して、OUTPUTおよびINPUTファージを定量した。感染細胞を、37℃で20分間インキュベートおよび振とうした。細胞に全てのoutputおよび1μlのINPUT(1:100希釈)(iii)を感染させた。各感染培養物を、SBで10ml(ii)にし、各培養物由来の以下の体積を、Amp(100μg/ml)およびTet(10μg/ml)を加えたLB寒天プレートに播種した:10μlおよび100μlのINPUT感染培養物1:1000希釈(i)1μl、および希釈していない10μlのOUTPUT感染培養物。プレートを37℃で一晩インキュベートした。
コロニーが最適なサイズであるときに、それらを計数し、INPUTファージについての以下の式(II):
(計数されたコロニー/播種した体積)×103(i)×104(ii)×102(iii)
に従って、ファージcfu/μlを計算した。
(計数されたコロニー/播種した体積)×103(i)×104(ii)×102(iii)
に従って、ファージcfu/μlを計算した。
OUTPUTファージについての最適なサイズのコロニーを計数し、以下の式(III):
(計数されたコロニー/播種した体積)×104(ii)
を用いてファージcfu/μlを計算した。
(計数されたコロニー/播種した体積)×104(ii)
を用いてファージcfu/μlを計算した。
b)結果
cp3*またはcp8*ベースの融合タンパク質を発現する組換えファージが細胞に感染して異種タンパク質を提示する効率の比較分析を行った。
cp3*またはcp8*ベースの融合タンパク質を発現する組換えファージが細胞に感染して異種タンパク質を提示する効率の比較分析を行った。
エレクトロポレーション効率は、全ての実験における両方の形質転換反応(対応する陽性対照、cp3ベースのベクターを用いる)で同じであった。pRIB1−cp3*、pRIB1−HAcp3*、およびpRIB1−e44cp3*ベクターで得られたcfu/μl値は、陽性対照ファージと同じであり、cp3*における配列修飾が、ファージタンパク質の正しい発現をもたらす正しいファージ集合に影響を及ぼさなかったことが実証された(図9)。この証拠を、pRIB2ベースのベクターについても確認した(図10)。
ELISAプレート上に固定された(抗体またはウイルスタンパク質等の)特定の結合剤に対してcp3*またはcp8*ベースのファージをパニングした場合の濃縮および選択を評価するために、より機能的なアッセイを行った。
陰性対照タンパク質(BSA、HCVのE2タンパク質)に関して、HAタグに対する市販のモノクローナル抗体を用いて、pRIB1−HAcp3*およびpRIB2−HAcp8*ファージの高い濃縮が得られ、cp3*またはcp8*に融合したHAタグを有するファージがペプチドを正しく提示しており、特定の結合剤に対して効率的に選択することができることが実証された(図11)。
HCVのE2タンパク質(e44 Fabによって特異的に認識される抗原)を用いて、pRIB2−e44cp3*またはpRIB1−e44cp8*ファージの同様のレベルの濃縮が得られ、ここでも、ファージが抗体を正しく提示しており、正しい抗原に対して効率的に選択することができることが確認された(図12)。対照抗原(BSA)と比較した場合、e44cp3*を発現するファージは、e44cp3を発現するファージのものに匹敵する、特異的抗原に対する選択性を示したが、e44cp8*は、おそらく価数の高いcp8タンパク質上で発現される他のfabについて観察される公知の非特異的結合効果のためにより効率が低いことが示された。
c)結論
組換えファージの表面上での、タンパク質の提示、ならびにペプチドおよび抗体断片を含む特定の結合剤の同定のために、cp3*およびcp8*発現ファージミドベクターを使用することができる。
組換えファージの表面上での、タンパク質の提示、ならびにペプチドおよび抗体断片を含む特定の結合剤の同定のために、cp3*およびcp8*発現ファージミドベクターを使用することができる。
実施例4
pDD−cp3*cp8*、およびpDD−cp3*cp8*に適合するDDカセットの構築
a)材料および方法
pDD−cp3*cp8*バックボーンの構築
SfiIは、低効率で、DISリンカー2中のその単一の部位を切断することができるが、ベクターはまた、同じSfiIコア配列(GCCnnnnnGGC、図13A参照)を認識する、BgIIと名づけられた別の制限酵素で線状化することもできる。
pDD−cp3*cp8*、およびpDD−cp3*cp8*に適合するDDカセットの構築
a)材料および方法
pDD−cp3*cp8*バックボーンの構築
SfiIは、低効率で、DISリンカー2中のその単一の部位を切断することができるが、ベクターはまた、同じSfiIコア配列(GCCnnnnnGGC、図13A参照)を認識する、BgIIと名づけられた別の制限酵素で線状化することもできる。
しかしながら、pBlueScript II(SK+)中に2つの他のBgII部位がすでに存在するので、元々のDNA配列中に存在する2つのBgII部位を除去するために、Mut BgIIA FWおよびRW(配列番号28および配列番号29、表1)ならびにMut BgIIB FWおよびRW(配列番号30および配列番号31、表1)と名づけられた2組のプライマーを用いた2回の部位特異的変異誘発において、pBlueScript II(SK+)の元々の配列を修飾した。PvuIIおよびSapI制限酵素認識部位の間に含まれるMCSおよびLacZ配列を含む0.5kb断片を欠失させること、ならびにこれらの部位の間で、適合する末端(一方の側では平滑であり、他方の側では単鎖5’末端に配列AGCを有する)を保有する2つのオリゴヌクレオチド(pDDリンカーFWおよびpDDリンカーRW、配列番号32および配列番号33、表1)をアニーリングすることによって得られた合成リンカーをライゲートすることによって、得られたベクター(pBS−δBgII)を修飾した。4℃で一晩のインキュベーションの後、10μlのライゲーション混合物を、大腸菌(E.Coli)XL−1 Blueコンピテント細胞を形質転換するために用いた。翌日、10個のコロニーを取り出し、合成リンカーの存在を検証するために、ミニプレップ(mini prep)DNA抽出に使用した。正しい制限パターンを示す1つのクローンを選択し、配列決定し、pBS−DdδBgIと名づけた。
このプラスミドを、pDD−cp3*cp8*バックボーンの生成に使用した。この範囲で、pBS−DDδBgIを、EcoRIおよびNheIで消化し、関連のある制限酵素認識部位(具体的にはSpeI)および適合する末端を保有する、pDDリンカー2と呼ばれる合成リンカー(配列番号34)とライゲートした。pDDリンカー2 FWおよびRW(配列番号35および配列番号36、表1)を用いて、pBlueScript IIのPCR増幅によって、合成pDDリンカー2を作製した。PCR増幅の後、pDDリンカー2を、EcoRIおよびNheIで消化し、pBS−DDδBgIにクローニングした。得られたライゲーション混合物を、4℃で一晩インキュベートし、次いで、大腸菌(E.Coli)XL−1 Blue細胞を形質転換するのに使用した。翌日、10個のコロニーを取り出し、SpeI部位を保有するpDDリンカー2の正しい挿入を検証するために、ミニプレップDNA抽出に使用した。
pRIB1−cp3*およびpRIB2−cp8*から得られたが、望ましくない制限酵素認識部位を排除するために部位特異的変異誘発によって予め修飾されているcp3*およびcp8*をコードするDNA配列を用いてpDD−cp3*cp8*を作製するために、かかるプラスミド(pBS−DDδBgI2と呼ばれる)を使用した。実際、これらの配列中に元々存在するDISリンカー2は、コードされるアミノ酸(グリシン)を変化させることなく、SfiI部位に含まれるものに加えて、BgII制限酵素認識部位を含む。ここでcp3*dBgI(配列番号39)およびcp8*dBgI(配列番号40)と呼ばれるcp3*およびcp8*をコードするDNAを生じるプライマーδBgIIリンカーFWおよびRW(配列番号37および配列番号38、表1)を用いて、cp3*およびcp8*において、CからAの置換(DISリンカー2の27位において、配列番号2)を除去した。また、プライマーcp8*FW newおよびcp8*RW(配列番号39および配列番号40、表1)を用いて、cp8*dbgIの、5’にEcoRIを挿入した。
pBS−DDδBgI2プラスミドを、まずSpeIおよびNheIで消化し、次いで、適合する末端を保有するcp3*dBgII断片とライゲートした。得られたライゲーション混合物を4℃で一晩インキュベートし、次いで、大腸菌(E.Coli)DH5α細胞を形質転換するのに使用した。翌日、10個のコロニーを取り出し、cp3*dBgIの正しい挿入を検証するために、ミニプレップDNA抽出に使用した。1つの陽性クローンから抽出されたプラスミドを、次いで、EcoRIおよびSpeIで消化し、適合する末端を保有するcp8*dBgII断片とライゲートした。翌日、10個のコロニーを取り出し、cp8*dBgIの正しい挿入を検証するために、ミニプレップDNA抽出に使用し、pDD−cp3*cp8*をもたらした。
CATを発現するDDカセット(DDaカセット)の構築
BgIupd FWおよびRW(配列番号43および配列番号44)を用いた1回の部位特異的変異誘発によってSacIおよびXbaIクローニング部位の5’にBgII部位を挿入するために、ベクターpRIB1−HAcp3*をまず修飾した。pRIB1−DDaと名づけられる、得られたプラスミドを、BgIIで消化し、このカセットを保有する断片(配列番号11)を、BgIIで消化したpDD−cp3*cp8*にライゲートした。得られたライゲーション混合物を4℃で一晩インキュベートし、次いで、クロラムフェニコール(20μg/ml)を加えたLB寒天プレート上で増殖させた大腸菌(E.Coli)DH5α細胞を形質転換するのに使用した。翌日、10個のコロニーをランダムに取り出し、NheIおよびXbaI消化によって、一方または他方のいずれかの方向でのDDaカセットの挿入、結果としてCAT耐性を発現しているベクターpDDa−cp3*およびpDDa−cp8*を検証するために、ミニプレップDNA抽出に使用した。
BgIupd FWおよびRW(配列番号43および配列番号44)を用いた1回の部位特異的変異誘発によってSacIおよびXbaIクローニング部位の5’にBgII部位を挿入するために、ベクターpRIB1−HAcp3*をまず修飾した。pRIB1−DDaと名づけられる、得られたプラスミドを、BgIIで消化し、このカセットを保有する断片(配列番号11)を、BgIIで消化したpDD−cp3*cp8*にライゲートした。得られたライゲーション混合物を4℃で一晩インキュベートし、次いで、クロラムフェニコール(20μg/ml)を加えたLB寒天プレート上で増殖させた大腸菌(E.Coli)DH5α細胞を形質転換するのに使用した。翌日、10個のコロニーをランダムに取り出し、NheIおよびXbaI消化によって、一方または他方のいずれかの方向でのDDaカセットの挿入、結果としてCAT耐性を発現しているベクターpDDa−cp3*およびpDDa−cp8*を検証するために、ミニプレップDNA抽出に使用した。
ゼオシンに対する耐性を発現するDDカセット(ZEO、DDbカセット)の構築
pSVZeoプラスミド(Invitrogen)由来のプライマーZeo FWおよびRW(配列番号45および配列番号46、表1)を用いて、ゼオシン耐性遺伝子をPCR増幅した。PCR断片をpGEMTeasyにクローニングした。遺伝子中にBgII部位が存在したので、プライマーZeoδBgI FWおよびRW(配列番号47および配列番号48、表1)を用いて、1回の部位特異的変異誘発を行った。次いで、修飾されたZEO遺伝子を、StuIおよびXbaIで消化し、pDDa−cp3*の対応する部位にクローニングし、pDDb−cp3*を得た。pDDb−cp3*をBgIIで消化し、2つの断片を再ライゲートすることによって、対応するpDDb−cp8*ベクターを得た。一方または他方の方向でDDbカセットに対応するBgII断片を有するクローンを、ランダムに選択されたコロニーから抽出されたプラスミドDNAのNheIおよびXbaI消化によって同定した。ゼオシン(10μg/ml)を添加した、細菌細胞のための通常の培地中で、プラスミドpDDb−cp3*およびpDDb−cp8*を含むクローンを選択した。
pSVZeoプラスミド(Invitrogen)由来のプライマーZeo FWおよびRW(配列番号45および配列番号46、表1)を用いて、ゼオシン耐性遺伝子をPCR増幅した。PCR断片をpGEMTeasyにクローニングした。遺伝子中にBgII部位が存在したので、プライマーZeoδBgI FWおよびRW(配列番号47および配列番号48、表1)を用いて、1回の部位特異的変異誘発を行った。次いで、修飾されたZEO遺伝子を、StuIおよびXbaIで消化し、pDDa−cp3*の対応する部位にクローニングし、pDDb−cp3*を得た。pDDb−cp3*をBgIIで消化し、2つの断片を再ライゲートすることによって、対応するpDDb−cp8*ベクターを得た。一方または他方の方向でDDbカセットに対応するBgII断片を有するクローンを、ランダムに選択されたコロニーから抽出されたプラスミドDNAのNheIおよびXbaI消化によって同定した。ゼオシン(10μg/ml)を添加した、細菌細胞のための通常の培地中で、プラスミドpDDb−cp3*およびpDDb−cp8*を含むクローンを選択した。
市販のキット(QuickChange部位特異的変異誘発キット:Stratagene番号200518)を使用して、全ての構築物において、部位特異的変異誘発を行った。これらのプライマーは、酵素消化または配列決定によって容易に調べることができ、ベクターの他の特性を変化させない、関連のある部位において、単一のヌクレオチド置換を誘導する。プラスミドDNA抽出および消化、DNA断片精製およびライゲーション、ならびに細胞形質転換のための他の技術は、文献中に記載されているように行った。
ミニプレップキット(Qiagen)を用いて、プラスミドDNA抽出を行った。ライゲーション混合物を用いて、取り出しおよび特徴付けに十分なコロニーを有するために、エレクトロコンピテント大腸菌(E.Coli)DH5α細胞を形質転換した。
b)結果
上記の前の実施例から、DISリンカー(具体的にはDISリンカー2)の挿入による2つの機能性コートタンパク質の配列における修飾が依然として完全に機能的なコートタンパク質を提供することが示される。cp3*およびcp8*をコードする配列は、図13に要約した戦略に従って、本発明のファージミドベクター(pDD)中に組み込むことができる。
上記の前の実施例から、DISリンカー(具体的にはDISリンカー2)の挿入による2つの機能性コートタンパク質の配列における修飾が依然として完全に機能的なコートタンパク質を提供することが示される。cp3*およびcp8*をコードする配列は、図13に要約した戦略に従って、本発明のファージミドベクター(pDD)中に組み込むことができる。
pBlueScript II(SK+)ベクターを修飾し、反対方向に位置してそれらの5’末端がDD−DISリンカー(DD−DISリンカー2)によって分離されている、cp3*およびcp8*の連続的クローニングを可能にする合成リンカーを導入することによって、基本的なベクターpDD−cp3*cp8*を作製した。クローニングプロセスを有効にする構築の間に、特定の制限酵素認識部位を付加または欠失させた。
ベクターpDD−cp3*cp8*(図13)は、BgII線状化ベクターと適合し、他の要素を含でもよい5’および3’末端を有するDDカセットがどの方向であるかに応じて、cp3*(pRIB1系列のベクターと概念的に同一なプラスミドになる)またはcp8*(pRIB2系列のベクターと概念的に同一なプラスミドになる)のいずれかとの融合タンパク質として提示されるタンパク質配列の双方向性クローニングに進むための、バックボーンベクターである。
このプラスミドは、cp3*またはcp8*含有融合タンパク質のいずれかとしてタンパク質を発現するためにDDカセットを挿入することができるバックボーンを表す。完全なDISリンカーを備えたカセットの一方の末端がpDDバックボーン中の2つの機能性コートタンパク質の一方とのインフレームでの配列の融合および転写を媒介することができるように異なる型の配列を非対称に組み合わせることによって、DDカセットを形成することができる(図14)。配列の残りの部分によって、DDカセットの挿入される方向によらない、他の機能を提供することができる。
DDカセットの挿入がマーカー遺伝子の欠失または付加と関連し、DDカセットが挿入されているクローンの選択を容易にするように、スタッファーDNAまたはマーカー遺伝子を挿入することによって、基本的なベクターpDD−cp3*cp8*(および一般に、図14、15、および16に示される、DD−DISリンカーによって分離した機能性コートタンパク質コード配列の同じ組立てを示すすべてのベクター)を、さらに修飾することができる(図15)。
pRIB1−HAcp3”から開始し、BgII部位を挿入し、HAを、提示されるべきタンパク質配列をクローニングするのに使用するDISリンカーの近くの位置でスタッファーDNAとして維持して、DDaおよびDDbカセットと呼ばれる2つの型のDDカセット(図17および18)を生成した。2つのカセットは、融合タンパク質を転写するために使用されるプロモーターの5’末端と、DDカセット中の任意の他の目的の配列(例えば、fabを発現するときの軽鎖の可変領域)をクローニングするのに使用される制限酵素認識部位の対の間に位置する、マーカー遺伝子に関して異なる。このマーカー遺伝子(CATまたはZEO)を、DDカセット中の他の転写単位と同じ方向(すなわち、融合タンパク質を発現するためにDISリンカーが形成されているDDカセットの末端を指す)で、DDカセットにクローニングすることができるか、または反対の方向を有してもよい(他のプロモーターからの読み過ごし転写活性(read-through transcriptional activity)を避ける利点がある)。
カセットを限定する制限酵素認識部位(すなわち、BgII)を使用することによってDDaカセットおよびDDbカセットをpDDベクターから切断し、同じ酵素で切断されたpDDベクター中にDDカセットが再度ライゲートされる場合、DDカセットは、ライゲーション混合物で形質転換された各クローンに、一方がカセットの内部で切断し、他方がバックボーン内で切断する2つの酵素の組合せでの消化として、2つの可能な方向の一方で挿入される(図19)。この結果から、ベクターを配列決定することなくどのようにして挿入事象を分析することができるか、およびスクリーニング手順の前または間にどのようにしてグループ分けすることもできるかが、示される。
DDaおよびDDbカセットを、それらをpDDまたは任意の他のベクターにクローニングするときに、ライブラリーを構築するために使用することができる。しかしながら、BgIIでの消化、および適合する末端を有するpDDベクターとのライゲーションは、所望の特性を有するライブラリーを有するために役立つ。
結論
その後にプラスミドDNA抽出/精製方法を用いてクローンからのpDDベースの中間体ベクターの配列決定および/または消化が容易に続くことができる一連のクローニング工程によって、pDDベクターおよび適合するDDカセットを作製することができる。
その後にプラスミドDNA抽出/精製方法を用いてクローンからのpDDベースの中間体ベクターの配列決定および/または消化が容易に続くことができる一連のクローニング工程によって、pDDベクターおよび適合するDDカセットを作製することができる。
これらのpDDベクターおよびDDカセットが一旦作製されると、これらを、可能な方向の一方または他方でクローニングされた配列のライブラリーを作製するために使用することができる。例えば、このようにして作製されたFabライブラリーは、重鎖断片がcp3*またはcp8*と融合タンパク質として生成および提示されている、代替的な組換えファージを含むはずである。HAタグペプチド、または抗原由来の他のペプチドも同様である。
ファージ表面上の2つのコートタンパク質のいずれか一方に連結した抗体断片、ペプチド、または他のタンパク質の構築およびダブルディスプレイのために、上記で概説したベクターを効率的に使用して、二重のクローニング、形質転換、および感染手順なしに、2つの形態で提示される配列の同時のスクリーニングを可能にすることができる。
本発明の手法によって、発現および/または提示効率が融合したコートタンパク質の内容に依存する抗体または他のタンパク質配列をクローニングする可能性が増大する。さらに、異なる組合せの選択システムの使用(「空の」およびDDカセット含有ファージミドベクターに特異的である)によって、正しい構造および配列を有するクローンの同定が容易になる。
実施例5
ペプチドまたは抗体に融合したcp3*またはcp8*を提示するpDDベースの組換えファージの機能的検証
a)材料および方法
図1および文献中(Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Sambrookら、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク、1989年)に記載されているように、ファージミドの増幅、ヘルパーファージ重感染、ポリエチレングリコール(PEG)媒介ファージ沈殿、再懸濁したファージでのXL−1Blue細胞感染、ファージCFU判定、ファージ−抗原結合アッセイ、およびファージcfu/μlの計算を行った。
実施例5
ペプチドまたは抗体に融合したcp3*またはcp8*を提示するpDDベースの組換えファージの機能的検証
a)材料および方法
図1および文献中(Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Sambrookら、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク、1989年)に記載されているように、ファージミドの増幅、ヘルパーファージ重感染、ポリエチレングリコール(PEG)媒介ファージ沈殿、再懸濁したファージでのXL−1Blue細胞感染、ファージCFU判定、ファージ−抗原結合アッセイ、およびファージcfu/μlの計算を行った。
細胞選択の条件に関して、上述のようにTetを使用したが、アンピシリンを、pDD誘導体を含む実験においてはクロラムフェニコール(Caf、20μg/mlおよび100μg/ml)で、pDDa誘導体を含む実験においてはゼオシン(Zeo、10μg/mlおよび50μg/ml)で、置換した。
エレクトロコンピテント大腸菌(E.coli)XL1−Blue細胞を、50ngのファージミドベクター(pRB32、pRIB1−HAcp3*、pRIB2−HAcp8*、pRIB1−e44cp3*、pRIB2−e44cp8*、pDDa−HAcp3*、pDDa−HAcp8*、pDDa−e44cp3*、pDDa−e44cp8*、pDDb−HAcp3*、pDDb−HAcp8*、pDDb−e44cp3*、pDDb−e44cp8*)でエレクトロポレーションした(0.2cm大腸菌(E.coli)Pulserキュベット、2.5Kv)。
以下の組の試料を収集した:
組1:
抗HAに対するOUTPUT pDDa−HAcp3*
BSAに対するOUTPUT pDDa−HAcp3*
抗HAに対するOUTPUT pDDa−HAcp8*
BSAに対するOUTPUT pDDa−HAcp8*
抗HAに対するOUTPUT pRIB1−HAcp3*
BSAに対するOUTPUT pRIB1−HAcp3*
抗HAに対するOUTPUT pRIB2−HAcp8*
BSAに対するOUTPUT pRIB2−HAcp8*
抗HAに対するOUTPUT pRB32
BSAに対するOUTPUT pRB32
組2:
E2に対するOUTPUT pDDa−e44cp3*
BSAに対するOUTPUT pDDa−e44cp3*
E2に対するOUTPUT pDDa−e44cp8*
BSAに対するOUTPUT pDDa−e44cp8*
E2に対するOUTPUT pRIB1−e44cp3*
BSAに対するOUTPUT pRIB1−e44cp3*
E2に対するOUTPUT pRB32
BSAに対するOUTPUT pRB32
組3:
抗HAに対するOUTPUT pDDa−HAcp3*
BSAに対するOUTPUT pDDa−HAcp3*
抗HAに対するOUTPUT pDDb−HAcp3*
BSAに対するOUTPUT pDDb−HAcp3*
抗HAに対するOUTPUT pRIB1−HAcp3*
BSAに対するOUTPUT pRIB1−HAcp3*
抗HAに対するOUTPUT pDDa−HAcp8*
BSAに対するOUTPUT pDDa−HAcp8*
抗HAに対するOUTPUT pDDb−HAcp8*
BSAに対するOUTPUT pDDb−HAcp8*
抗HAに対するOUTPUT pRIB2−HAcp8*
BSAに対するOUTPUT pRIB2−HAcp8*
組4:
E2に対するOUTPUT pDDa−e44cp3*
BSAに対するOUTPUT pDDa−e44cp3*
E2に対するOUTPUT pDDb−e44cp3*
BSAに対するOUTPUT pDDb−e44cp3*
E2に対するOUTPUT pRIB1−e44cp3*
BSAに対するOUTPUT pRIB1−e44cp3*
E2に対するOUTPUT pDDa−e44cp8*
BSAに対するOUTPUT pDDa−e44cp8*
E2に対するOUTPUT pDDb−e44cp8*
BSAに対するOUTPUT pDDb−e44cp8*
E2に対するOUTPUT pRIB2−e44cp8*
BSAに対するOUTPUT pRIB2−e44cp8*
b)結果
pDDに基づき、cp3*またはcp8*ベースの融合タンパク質を発現する組換えファージを、pRIB1およびpRIB2ベースの組換えファージを機能的に比較したのと同じ手法に従って分析した。
組1:
抗HAに対するOUTPUT pDDa−HAcp3*
BSAに対するOUTPUT pDDa−HAcp3*
抗HAに対するOUTPUT pDDa−HAcp8*
BSAに対するOUTPUT pDDa−HAcp8*
抗HAに対するOUTPUT pRIB1−HAcp3*
BSAに対するOUTPUT pRIB1−HAcp3*
抗HAに対するOUTPUT pRIB2−HAcp8*
BSAに対するOUTPUT pRIB2−HAcp8*
抗HAに対するOUTPUT pRB32
BSAに対するOUTPUT pRB32
組2:
E2に対するOUTPUT pDDa−e44cp3*
BSAに対するOUTPUT pDDa−e44cp3*
E2に対するOUTPUT pDDa−e44cp8*
BSAに対するOUTPUT pDDa−e44cp8*
E2に対するOUTPUT pRIB1−e44cp3*
BSAに対するOUTPUT pRIB1−e44cp3*
E2に対するOUTPUT pRB32
BSAに対するOUTPUT pRB32
組3:
抗HAに対するOUTPUT pDDa−HAcp3*
BSAに対するOUTPUT pDDa−HAcp3*
抗HAに対するOUTPUT pDDb−HAcp3*
BSAに対するOUTPUT pDDb−HAcp3*
抗HAに対するOUTPUT pRIB1−HAcp3*
BSAに対するOUTPUT pRIB1−HAcp3*
抗HAに対するOUTPUT pDDa−HAcp8*
BSAに対するOUTPUT pDDa−HAcp8*
抗HAに対するOUTPUT pDDb−HAcp8*
BSAに対するOUTPUT pDDb−HAcp8*
抗HAに対するOUTPUT pRIB2−HAcp8*
BSAに対するOUTPUT pRIB2−HAcp8*
組4:
E2に対するOUTPUT pDDa−e44cp3*
BSAに対するOUTPUT pDDa−e44cp3*
E2に対するOUTPUT pDDb−e44cp3*
BSAに対するOUTPUT pDDb−e44cp3*
E2に対するOUTPUT pRIB1−e44cp3*
BSAに対するOUTPUT pRIB1−e44cp3*
E2に対するOUTPUT pDDa−e44cp8*
BSAに対するOUTPUT pDDa−e44cp8*
E2に対するOUTPUT pDDb−e44cp8*
BSAに対するOUTPUT pDDb−e44cp8*
E2に対するOUTPUT pRIB2−e44cp8*
BSAに対するOUTPUT pRIB2−e44cp8*
b)結果
pDDに基づき、cp3*またはcp8*ベースの融合タンパク質を発現する組換えファージを、pRIB1およびpRIB2ベースの組換えファージを機能的に比較したのと同じ手法に従って分析した。
第一の組の実験は、まずpDD−cp3*cp8*と、CAF選択マーカーを発現するDDカセットとの組合せ(pDDa型ファージミド)によって、cp3*またはcp8*上でのペプチドおよびfabの正しい発現および選択が可能になることを検証するよう意図した(図20)。次いで、第二の組の実験は、pDD−cp3*cp8*と、CAF(pDDa型ファージミド)またはZEO(pDDb型ファージミド)選択マーカーのいずれかを発現するDDカセットとの組合せによっても、cp3*またはcp8*上でのペプチドおよびfabの正しい発現および選択が可能になることを検証するよう意図した(図22)。
エレクトロポレーション効率は、全ての実験において、両方の形質転換反応(対応する陽性対照、cp3ベースのベクターを用いる)について同じであった。pRIB1ベース、pRIB2ベース、pDDaベース、およびpDDbベースのベクターで得られたcfu/μl値は、同様であり(約108〜109)、ZEOまたはCAT選択マーカーのいずれかを含むpDDベースのファージミドが作製された場合に、中間体ファージミドpRIB1およびpRIB2を用いてcp3およびcp8に導入された修飾も、正しいファージ集合に影響を及ぼさないことが実証された。
タンパク質または抗体をかかるファージの標的として使用する場合、ここでも、CAFまたはZEOベースのDDカセットを含むファージミドの間のいかなる関連のある差もなしで、特定のpDDベースの組換えファージの高い濃縮が得られる。この特性はcp3*またはcp8*のいずれかを用いてペプチドを発現しているpDDファージミド中で、再現性良く見られるが、これは、高度に特異的なFabを発現するpDDファージミドにcp8*が用いられる場合、有意に低く、依然として、文献中ならびに前述のpRIB1およびpRIB2ファージミドについて得られた結果が確認される。
c)結論
pDD−cp3*cp8*ファージミドを、CAFまたはZEOのいずれかを、組換えファージの表面上でcp3*またはcp8*ベースの融合タンパク質の形態でタンパク質配列を発現および選択するための選択マーカーとして含む、DDカセットと組み合わせることができる。
実施例6
pDDベースのライブラリーを用いて選択される配列を発現するための、pDD適合性ベクターの構築
a)材料および方法
ヒト骨髄由来のcDNAライブラリーを調製し、このライブラリーを、文献(Burioniら、1998年a、「Phage Display:A laboratory Manual」、Burton DRら、CSHL Press、2001年)に従って、ヒトIgG1免疫グロブリンの軽鎖および重鎖の可変領域をコードするDNAを増幅するPCR反応の鋳型として使用した。
pDD−cp3*cp8*ファージミドを、CAFまたはZEOのいずれかを、組換えファージの表面上でcp3*またはcp8*ベースの融合タンパク質の形態でタンパク質配列を発現および選択するための選択マーカーとして含む、DDカセットと組み合わせることができる。
実施例6
pDDベースのライブラリーを用いて選択される配列を発現するための、pDD適合性ベクターの構築
a)材料および方法
ヒト骨髄由来のcDNAライブラリーを調製し、このライブラリーを、文献(Burioniら、1998年a、「Phage Display:A laboratory Manual」、Burton DRら、CSHL Press、2001年)に従って、ヒトIgG1免疫グロブリンの軽鎖および重鎖の可変領域をコードするDNAを増幅するPCR反応の鋳型として使用した。
PCRプライマーを、3’末端で部分的に消化し、それらの5’末端をDDbカセットにクローニングするのに必要な制限酵素認識部位を、それらの5’末端に含ませた。軽鎖に特異的な増幅産物を、まず、XbaIおよびSacIで消化し、アガロースゲルから精製した。5μgのpDDb−HAcp3*を、XbaIおよびSacIで消化し、得られたベクターバックボーンをゲル精製し、脱リン酸化し、軽鎖をコードする適合するDNAセグメントとのライゲーション混合物の調製に使用した。4℃で一晩のインキュベーションの後、DNA混合物を沈殿させ、20μlの水に再懸濁し、コンピテント大腸菌(E.coli)XL1 Blue細胞をエレクトロポレーションによって形質転換するために使用した。次いで、細胞を、3mlのSOC中、37℃で1時間インキュベートした。クローンの数を定量するために、10および100μlの培養物を播種した。次いで、細菌培養物の残りの部分を、アンピシリン(10μg/ml)、(ゼオシン10μg/ml)、およびテトラサイクリン(10μg/ml)を含む10mlのSBに希釈した。37℃で1時間のインキュベーションの後、アンピシリン(50μg/ml)、ゼオシン(50μg/ml)、およびテトラサイクリン(10μg/ml)を含む100mlのSB培地に細胞を希釈し、37℃で一晩インキュベートした。翌日、細胞を採取し、DNA精製および抽出に使用した。
軽鎖を保有する、得られたpDDbベースのライブラリーを、XhoIおよびSpeIで消化し、XhoIおよびSpeIで予め消化されて、アガロースゲルから精製された、元々の増幅産物から回収した重鎖の挿入に使用した。上述のようにエレクトロポレーションによってコンピテント大腸菌(E.coli)XL1 Blue細胞を形質転換するために、ライゲーション反応を用いた。
次いで、軽鎖および重鎖を保有する、得られたpDDbベースのライブラリーを、BgIIで消化し、断片を、同じベクター中で再ライゲートした。ライブラリーの一部(アリコート)を、アンピシリン(50μg/ml)およびゼオシン(50μg/ml)を含むLB寒天上に播種した。104〜105個程度のクローンで、ライブラリー中のクローンの数を評価した。プレートからコロニーをランダムに選択し、培養物中で一晩増殖させ、ミニプレップDNA抽出/精製(その後に、上述のようなNheIおよびXbaIでの消化ならびにアガロースゲルにおける分析が続く)およびウエスタンブロット(上述のように、検出のために、ホースラディッシュペルオキシダーゼに結合したヤギ抗ヒトFabを使用する)におけるタンパク質分析の両方に使用した。
結果
ヒト骨髄細胞由来のDNAライブラリーを、HAタグをXhoI−SpeIの間にスタッファーDNAとして有するpDDbベクター内にすでにクローニングされているDDbカセットへのいずれかのIgG1由来の軽鎖および重鎖のクローニングに使用した。
ヒト骨髄細胞由来のDNAライブラリーを、HAタグをXhoI−SpeIの間にスタッファーDNAとして有するpDDbベクター内にすでにクローニングされているDDbカセットへのいずれかのIgG1由来の軽鎖および重鎖のクローニングに使用した。
軽鎖および重鎖をコードするDNAを、このベクター中で連続的にクローニングし、スタッファーDNAを排除し、得られたライブラリーを、2つの可能な方向のいずれか一方でDDbカセットを再挿入する範囲で、BgIIで消化し、再ライゲートして、このようにして、重鎖がcp3*またはcp8*との融合タンパク質として発現されるpDDbベースのライブラリーを作製した。
ゼオシン(DDbカセット中のマーカー遺伝子のために、細胞がこれに対して耐性を有する)存在下で増殖している大腸菌(E.coli)形質転換体のコロニーをランダムに選択し、DNAおよびタンパク質の両方のレベルで分析した(図22)。かかるクローンは、抽出されたプラスミドDNAの制限分析によって示されるように、可能な方向の一方または他方のいずれかに方向付けられたDDbカセットを有し、重鎖がcp8*またはcp3*に連結されているヒトfab融合タンパク質を発現する。cp8*への重鎖の融合を可能にする方向に方向付けられたDDbカセットを有するクローンが、cp3*への重鎖の融合を可能にする方向に方向付けられたDDbカセットを有するクローンと比較して、より高いレベルで生成される、より小さい組換えタンパク質を発現するので、分子量および発現のレベルの差は、制限分析の結果と一致する。
結論
DDbカセットは、重鎖がcp3*またはcp8*含有融合タンパク質のいずれかとして発現されるヒトfabのライブラリーを作製するために使用されている。このライブラリーは、単純にDISリンカーにおける制限酵素認識部位で消化され、再度ライゲートされた、pDDベースのプラスミドに基づく単一のライブラリーを用いることによって獲得された。
DDbカセットは、重鎖がcp3*またはcp8*含有融合タンパク質のいずれかとして発現されるヒトfabのライブラリーを作製するために使用されている。このライブラリーは、単純にDISリンカーにおける制限酵素認識部位で消化され、再度ライゲートされた、pDDベースのプラスミドに基づく単一のライブラリーを用いることによって獲得された。
この基本的なプロセスはまた、任意の型のプラスミド内のDDカセット中でクローニングされた配列のライブラリーにも適用することができ、次いで、本実施例において、または図15に簡潔に要約される他の状況において例示されているように、pDDベースのベクターに移すことができる。
ファージディスプレイおよび親和性選択による、ベクターについてのpDDベースのシステムにおける関連のある配列を同定するためのプロセス全体を、概説することができる(図23)。DDカセット中にクローニングされる、pDDベクターと、分析される配列のライブラリーとの適切な組合せから開始して、ライゲーションおよび形質転換工程によって、2つの型の融合タンパク質(例えば、cp3*またはcp8*のいずれかを含む)をコードする、正しい抗生物質の組合せを適用することによって選択可能な細胞ライブラリーが提供される。次いで、ヘルパーファージ感染によって、スクリーニングされるタンパク質が、単一のpDDベクターを用いて作製される同じライブラリー中で混合された2つの集団のファージ上で発現される、組換えファージのライブラリーを同時に生成することが可能になる。次いで、cp3*またはcp8*のいずれかとの融合タンパク質として発現および提示される、関連のあるタンパク質およびペプチドを、単離、配列決定、および特徴付けするために、文献中に報告されている手法を用いて、このライブラリーをスクリーニングすることができる。
参考文献
Claims (18)
- 2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合するアミノ酸配列をコードするDNAの双方向性クローニングのためのファージミドベクター。
- a)第一のDNAリンカーをその5’末端に含む第一の機能性コートタンパク質をコードするDNA、および
b)第一の機能性コートタンパク質と反対の転写の方向を有し、第二のDNAリンカーをその5’末端に含む、第二の機能性コートタンパク質をコードするDNA
を含み、
第一および第二のDNAリンカーが、ファージミドベクター中で前記リンカーの外側に存在しない少なくとも1つの、同一の、制限酵素のための部位を含む、ファージミドベクター。 - DNAリンカーが、機能性コートタンパク質をコードするDNAの5’末端、および前記機能性コートタンパク質に融合し、これによって提示されるタンパク質配列をコードするDNAの3’末端とともにインフレームで転写することができる、請求項2に記載のベクター。
- 第一および第二のDNAリンカーが、配列番号1および配列番号2から選択される配列を含む、請求項3に記載のベクター。
- 第一および第二のDNAリンカーが、配列番号4および配列番号5から選択される配列を形成する、請求項3に記載のベクター。
- cp3*DDcp8*(配列番号10)を含む、請求項5に記載のベクター。
- 前記DNAリンカーの1つによって前記機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合する少なくとも1つのタンパク質配列のクローニング、発現、および提示のためのDNAカセットをさらに含む、前記請求項のいずれかに記載のベクター。
- DNAリンカーによって2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合するタンパク質配列が、抗体、抗体断片、エピトープ、エピトープ結合領域、抗原、アレルゲン、生物活性ペプチド、酵素、酵素阻害剤、酵素触媒部位、DNA結合タンパク質、単離されたタンパク質ドメイン、受容体のリガンド、受容体、増殖因子、サイトカイン、および目的のタンパク質配列の近接または重複する断片である、請求項7に記載のファージミドベクター。
- 2つの機能性コートタンパク質をコードするDNAが、修飾されたcp3(cp3*、配列番号6)およびcp8(cp8*、配列番号8)である、前記請求項のいずれかに記載のベクター。
- DDaカセット(配列番号11)またはDDbカセット(配列番号12)を含む、請求項7に記載のベクター。
- ライブラリーの各タンパク質配列がDNAリンカーによって2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合しているファージまたは細胞ライブラリーを作製するための、請求項1から10のいずれかに記載のベクターの使用。
- ライブラリーの各タンパク質配列がDNAリンカーによって2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合している、請求項1から10のいずれかに記載のベクターを用いて得られるファージまたは細胞ライブラリー。
- DNAリンカーによって2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合するタンパク質配列が、抗体、抗体断片、エピトープ、エピトープ結合領域、抗原、アレルゲン、生物活性ペプチド、酵素、酵素阻害剤、酵素触媒部位、DNA結合タンパク質、単離されたタンパク質ドメイン、受容体のリガンド、受容体、増殖因子、サイトカイン、および目的のタンパク質配列の近接または重複する断片である、請求項12に記載のファージまたは細胞ライブラリー。
- 2つの機能性コートタンパク質が、修飾cp3タンパク質(cp3*タンパク質、配列番号7)および修飾cp8タンパク質(cp8*タンパク質、配列番号9)である、請求項12に記載のファージまたは細胞ライブラリー。
- 請求項1から10のいずれかに記載のベクターを含む、ライブラリーの各タンパク質配列がDISリンカーによって2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合しているファージまたは細胞ライブラリーを作製するためのキット。
- a)請求項2に記載のベクターのDNAリンカーに対応するDNAカセットを挿入すること、および
b)得られたベクターで細菌細胞を形質転換すること
を含む、ライブラリーの各タンパク質配列がDNAリンカーによって2つの機能性コートタンパク質の一方または他方のいずれかのN末端で融合しているファージまたは細胞ライブラリーを生成するための方法。 - 前記DDカセットの挿入が、DNAカセットとBgIIで消化された前記ベクターとをライゲートすることによって得られる、請求項11に記載の方法。
- リガンド、細胞、または標的分子を結合、検出、中和、および/または変化させるための、請求項16または17のいずれかに記載の方法によって得られる組換えファージまたは融合タンパク質の使用であって、前記組換えファージまたは融合タンパク質が、単離された形態または混合物の形態である、使用。
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