JP2009300387A - 加圧水型原子力プラントの2次系における循環ポンプの鉄酸化物除去方法および加圧水型原子力プラントの2次系 - Google Patents
加圧水型原子力プラントの2次系における循環ポンプの鉄酸化物除去方法および加圧水型原子力プラントの2次系 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】加圧水型原子力発電プラント1の2次系5における給水ポンプ31aの鉄酸化物除去方法は、加圧水型原子発電プラント1の2次系5における液体を送る給水ポンプ31aへの鉄酸化物の付着状況に対応し、限定された時間、給水ポンプ31a内を比較的強い還元雰囲気とすることを特徴とする。
【選択図】図2
Description
たとえば、給水ポンプにスケールが付着すると、給水ポンプを駆動する軸動力が増加したり、振動が増加したりする。
軸動力が増加すると、それに使用する蒸気が増加するので、その分コストが増加することになる。たとえば、軸動力が増加するだけで、コスト増加となる。また、振動が増加することは、プラントの健全性が低下することになる。
また、給水中の溶存酸素を低減させるため、低濃度、たとえば、0.1ppmのヒドラジンを注入することも実施されている。2次系では、蒸気発生器に入る給水から塩化物イオン、ナトリウムイオン、硫酸イオン等の不織を起こす不純物を除去するためにイオン交換樹脂が備えられている。ヒドラジンを注入するとヒドラジンがこのイオン交換樹脂に吸着し、イオン交換樹脂の脱塩性能を低下させる恐れがあるため、ヒドラジンを常時供給する場合には、濃度を適切に管理する必要がある。
この対策としては、プラントの水質を改善(pH上昇)が挙げられるが、これもpH上昇のために、構成機器の取替えが必要である。このため多額の費用・期間がかかるので、実施困難な場合があり、スケール付着による問題を回避できない。
このため、除去が必要な時期に行うことができず、上述の不具合を解消することができない。
また、除去が必要な時期に行うとすると、プラントを停止させることになるので、運用上問題が出る。
すなわち、本発明の加圧水型原子力プラントの2次系における循環ポンプの鉄酸化物除去方法は、加圧水型原子プラントの2次系における液体を送る循環ポンプへの鉄酸化物の付着状況に対応し、限定された時間、該循環ポンプ内を比較的高濃度の還元剤を投入して、強い還元雰囲気とすることを特徴とする。
このとき、還元雰囲気とされるのは限定された時間であるので、下流側への悪影響を抑制することができる。
また、たとえば、これは運転中に行うことができる。
このように、運転中に必要に応じてスケールを除去できるので、運転コストの増加を抑制できるとともにプラントの健全性を確保できる。
なお、循環ポンプは、液体を送るものであり、たとえば、給水ポンプ、給水ブースタポンプ、復水ポンプ、復水ブースタポンプ等である。
なお、還元剤としては、たとえば、ヒドラジン、水素等が用いられる。
これが所定量よりも大きくなると、スケールの除去が必要と判定することができる。
この停止されている循環ポンプはラインに接続される前に、起動され、準備運転される。本発明では、停止された循環ポンプのスケール除去が必要な場合、あるいは、このタイミングで2次系の下流側と切り離された状態で強い還元雰囲気とするので、還元雰囲気による下流側への悪影響を防止した状態でスケールの除去を行うことができる。
このように循環ポンプ内を比較的強い還元雰囲気とするので、鉄酸化物の溶解度が上昇する。鉄酸化物の溶解度が上昇すると、スケールは溶出するので、スケールを除去することができる。
このとき、還元剤が投入されるのは限定された時間であるので、下流側への悪影響を抑制することができる。
また、たとえば、これは運転中に行うことができる。
このように、運転中に必要に応じてスケールを除去できるので、運転コストの増加を抑制できるとともにプラントの健全性を確保できる。
この停止されている循環ポンプはラインに接続される前に、起動され、準備運転される。このとき、この分岐流路に接続された排出ラインを系外に連通させると、この循環ポンプから送られる液体は、排出ラインを通って系外に排出されることになる。
停止された循環ポンプのスケール除去が必要な場合、あるいは、このタイミングで投入ラインから還元剤を投入して強い還元雰囲気とすると、循環ポンプから送られる液体が系外に排出されるので、還元雰囲気による下流側への悪影響を防止した状態でスケールの除去を行うことができる。
この状態で、投入ラインから還元剤を投入すると、投入された還元剤が循環して作用するので、スケール除去の効率を向上させることができる。
また、上記発明では、前記循環ポンプの内部は、少なくとも一部は電解研磨が施されていることが望ましい。
なお、クロムメッキあるいは電解研磨は、たとえば、ポンプインペラの外周面等の特に影響の大きな部分にのみ施してもよい。
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態について、図1および図2を参照して説明する。
本実施形態は、本発明を加圧水型原子力発電プラント(加圧水型原子力プラント)1に適用したものである。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的同一のものが含まれる。
図1は、加圧水型原子力発電プラント1の全体概略構造を模式的に示すブロック図である。図2は、給水ポンプの部分を示すブロック図である。
1次系3には、原子炉7と、1次冷却水の圧力を調節する加圧器9と、蒸気発生器11の第1水室13、第2水室15および複数のU字管17と、1次冷却水循環ポンプ19と、これらを接続する1次冷却水配管21とが備えられている。
1次冷却水循環ポンプ19によって送り出される1次冷却水は、原子炉7で加熱され、加圧器9によって加圧され、蒸気発生器11の第1水室13に導入される。第1水室13に導入された1次冷却水は、多数のU字管17を通って第2水室15から1次冷却水循環ポンプ19の受入口に戻る。
復水器27の内部には、冷却水供給ポンプ37によって冷却水39が循環される冷却水配管41が装着されている。
蒸気発生器11の2次側出口および高圧タービン23の間、高圧タービン23および低圧タービン25の間、ならびに、低圧タービン25および復水器27の間を接続する蒸気配管45が備えられている。
2次冷却配管43は、分岐点Aで分岐され、合流点Bで合流する3本の分岐配管(分岐流路)49a,49b,49cに分離されている。分岐配管49a,49b,49cは並列の流路を形成している。
3台の給水ポンプ31a,31b,31cは、それぞれの分岐配管49a,49b,49cに設置されている。
通常、給水ポンプ31a,31b,31cの1台は、予備として運転が停止されている。
また、給水ポンプ31a,31b,31cの下流側には、分岐配管49a,49b,49cと脱気器29とを接続するミニマムフローライン53a,53b,53cが接続されている。ミニマムフローライン53a,53b,53cには、このラインを開閉するミニマムフロー開閉弁55a,55b,55cが備えられている。
系外排出ライン57a,57b,57cには、このラインを開閉する排出開閉弁59a,59b,59cが備えられている。
分岐配管49a,49b,49cにおける系外排出ライン57a,57b,57cの接続部の下流側には、分岐配管49a,49b,49cを開閉する分岐開閉弁61a,61b,61cが備えられている。
1次冷却水循環ポンプ19によって原子炉7内に送給された1次冷却水は、原子炉7の炉心で加熱された後、加圧器9で加圧されながら蒸気発生器11の第1水室13に導入される。
給水ポンプ31によって供給される2次冷却水は、高圧給水加熱器33によって加熱され、蒸気発生器11の2次側入口に導入される。
この復水は、イオン交換機35によって脱塩され、脱気器29によって気体成分を除去され、2次冷却水として給水ポンプ31に戻され、蒸気発生器11へ供給される。
蒸気発生器11で2次冷却水と熱交換された1次冷却水は、1次冷却水循環ポンプ19で原子炉7内に再び送給される。
3台の給水ポンプ31a,31b,31cは、通常運転では、2台が運転され、1台が予備として停止されている。ここでは、給水ポンプ31aが停止され、給水ポンプ31b,31cが運転されているとする。
すなわち、ミニマムフロー開閉弁55a,55b,55cおよび排出開閉弁59a,59b,59cは全て閉鎖され、ミニマムフローライン53a,53b,53cおよび系外排出ライン57a,57b,57cに2次冷却水が流れない状態とされている。
分岐開閉弁61b,61cは開放され、給水ポンプ31b,31cは運転されている。2次冷却水は、給水ポンプ31b,31cによって、分岐配管49b,49cを通って蒸気発生器11へ供給されている。
軸動力は、たとえば、給水ポンプ31a,31b,31cを駆動する蒸気量で判定する。この蒸気量が、通常よりも、たとえば、10%多くなると、給水ポンプ31a,31b,31c内に除去すべきスケールが付着していると判断する。
このとき、交代で給水ポンプ31bを停止させ、給水ポンプ31aを稼働させる場合、ミニマムフロー開閉弁55aを開放する。これにより、脱気器29から分岐配管49aおよびミニマムフローライン53aを通る循環流路が形成されるので、給水ポンプ31aを通る2次冷却水の流れができる。ミニマムフローラインを流れる2次冷却水の流量は、給水ポンプ31aを起動できる程度の量である。
この状態で、給水ポンプ31aは起動される。
次いで、ミニマムフロー弁55aが閉鎖され、給水ポンプ31aで供給される2次冷却水は分岐配管49aから系外排出ラインを通って系外に排出される。図2はこの状態を示している。すなわち、白抜きの弁は開放されている弁を、黒塗りの弁は閉鎖されている弁を示している。
このタイミングで、投入ライン51aからヒドラジンを、たとえば、濃度が1〜2ppmとなる量投入する。この濃度は、通常運転時の、たとえば0.1ppmに比べて10〜20倍の濃度とされている。
なお、この濃度は例示であり、たとえば、0.5〜3ppmの範囲で適宜選択される。
このように給水ポンプ31a内を比較的強い還元雰囲気とするので、鉄酸化物(マグネタイト)の溶解度が上昇する。鉄酸化物の溶解度が上昇すると、スケールは溶出するので、スケールを除去することができる。
すなわち、まず、(1)式に示されるようにヒドラジンが分解されて水素が供給される。
なお、(2)式左辺のOH−項は既添加のアンモニアによる供給が支配的となるため、ヒドラジン添加により増加するOH−濃度(N2H4+H2O→N2H5 ++OH−)は無視できる。
運転中にヒドラジンを投入すると、それが給水ポンプ31b,31c内に流入するので、給水ポンプ31b,31c内を比較的強い還元雰囲気とすることができる。
このとき、給水ポンプ31b,31cを通過した2次冷却水はそのまま下流側へ供給されることになるが、ヒドラジンが投入される時間は限定された時間であるので、たとえば、イオン交換機35のイオン交換樹脂に吸着し、その脱塩性能を劣化させる等の悪影響を抑制することができる。
このようにすると、給水ポンプ31a,31b,31cのスケール付着および成長を抑制できるので、スケール除去作業の頻度を低減させることができる。
このようにすると、給水ポンプ31a,31b,31cのスケール付着および成長を抑制できるので、スケール除去作業の頻度を低減させることができる。
水素ガスは、分岐配管49a,49b,49cを通る2次冷却水が高圧であるので、溶存した状態で給水ポンプ31a,31b,31cに供給される。
鉄酸化物の除去効果を高めるため、水素濃度を1ppm〜2ppmとなるように注入する。
すなわち、マグネタイトの溶解(除去)と鉄イオンの供給(平衡式)は前記(2)式で表される。
水素添加により(2)式の右辺の水素濃度が増加するため,(2)式は左辺(マグネタイトが溶解する方向)への平衡反応が支配的となり、マグネタイトが溶解・除去されるメカニズムとなる。
次に、本発明の第二実施形態について、図3を用いて説明する。
本実施形態は、第一実施形態と基本的構成は同じで、分岐配管49の構成が異なるだけである。以下この相違点を主体として説明し、その他については重複した説明を省略する。
なお、第一実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施形態では、分岐配管49a,49b,49cにおける給水ポンプ31a,31b,31cおよびミニマムフローライン53a,53b,53cの接続部の間と、投入ライン51a,51b,51cの上流側位置とを接続するバイパスライン(分岐ライン)63a,63b,63cが備えられている。
バイパスライン63a,63b,63cには、その開閉を行うバイパス開閉弁65a,65b,65cが備えられている。
第一実施形態において、給水ポンプ31aが起動された際、排出開閉弁59aが開放され、分岐配管49aは系外に連通されるが、本実施形態では、この前に、バイパス開閉弁65aが開放される。
これにより、分岐配管49aとバイパスライン63aとによって給水ポンプ31aを通過する循環経路が形成されるので、分岐開閉弁61aおよび排出開閉弁59aが閉じ、分岐配管49aの下流側との接続および系外排出ライン57aによる系外との連通が断たれた状態で給水ポンプ31aを継続して運転できる。
この状態で、投入ライン51aからヒドラジンを投入すると、投入されたヒドラジンが循環して何度も作用するので、スケール除去の効率を向上させることができる。
したがって、ヒドラジンの投入量を低減できる、あるいは、同量とすると作業時間を短縮することができる。
たとえば、系外排出ライン57a,57b,57cおよび/またはバイパスライン63a,63b,63cを省略するようにしてもよい。
また、前記実施形態では本発明を給水ポンプ31に適用しているが、必要に応じて給水ブースタポンプ、復水ポンプ、復水ブースタポンプ等に適用してもよい。
5 2次系
31,31a,31b,31c 給水ポンプ
49a,49b,49c 分岐配管
51a,51b,51c 投入ライン
57a,57b,57c 系外排出ライン
63a,63b,63c バイパスライン
Claims (10)
- 加圧水型原子プラントの2次系における液体を送る循環ポンプへの鉄酸化物の付着状況に対応し、限定された時間、該循環ポンプ内を比較的強い還元雰囲気とすることを特徴とする加圧水型原子力プラントの2次系における循環ポンプの鉄酸化物除去方法。
- 前記高濃度の還元剤雰囲気は前記循環ポンプの上流側に所定の濃度の還元剤を投入して形成されることを特徴とする請求項1に記載の加圧水型原子力プラントの2次系における循環ポンプの鉄酸化物除去方法。
- 前記循環ポンプの軸動力が所定量よりも大きくなったことで鉄酸化物の付着状況を判定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加圧水型原子力プラントの2次系における循環ポンプの鉄酸化物除去方法。
- 前記強い還元雰囲気とする処理は、予備として停止されている前記循環ポンプに対し、前記2次系と切り離した状態で行なわれることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の加圧水型原子力プラントの2次系における循環ポンプの鉄酸化物除去方法。
- 還元剤を投入する投入ラインが液体を送る循環ポンプの上流側に接続され、該循環ポンプへの鉄酸化物の付着状況に対応して前記投入ラインから前記還元剤が限定された時間投入されるように構成されていることを特徴とする加圧水型原子力プラントの2次系。
- 前記循環ポンプは、並列の流路を形成する複数の分岐流路のそれぞれに備えられ、前記投入ラインは、各分岐流路における前記循環ポンプの上流側に接続されていることを特徴とする請求項5に記載の加圧水型原子力プラントの2次系。
- 前記分岐流路は、選択的に開閉可能とされ、前記分岐流路における前記循環ポンプの下流側には、選択的に系外と連通する排出ラインが接続され、
前記投入ラインからの前記還元剤の投入は、閉鎖された前記分岐流路に備えられた停止された前記循環ポンプに対してその起動時に行なわれることを特徴とする請求項6に記載の加圧水型原子力プラントの2次系。 - 前記分岐流路には、前記循環ポンプおよび前記排出ラインの間の位置と前記投入ラインの上流側位置とを接続する分岐ラインが備えられていることを特徴とする請求項7に記載の加圧水型原子力プラントの2次系。
- 前記循環ポンプの内部には、少なくとも一部はクロムメッキが施されていることを特徴とする請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の加圧水型原子力プラントの2次系。
- 前記循環ポンプの内部は、少なくとも一部は電解研磨が施されていることを特徴とする請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の加圧水型原子力プラントの2次系。
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