以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動車に搭載されたコモンレール式筒内直噴型多気筒(例えば直列4気筒)ディーゼルエンジン(圧縮自着火式内燃機関)に本発明を適用した場合について説明する。
−エンジンの構成−
先ず、本実施形態に係るディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)の概略構成について説明する。図1は本実施形態に係るエンジン1およびその制御系統の概略構成図である。また、図2は、ディーゼルエンジンの燃焼室3およびその周辺部を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るエンジン1は、燃料供給系2、燃焼室3、吸気系6、排気系7等を主要部とするディーゼルエンジンシステムとして構成されている。
燃料供給系2は、サプライポンプ21、コモンレール22、インジェクタ(燃料噴射弁)23、遮断弁24、燃料添加弁26、機関燃料通路27、添加燃料通路28等を備えて構成されている。
上記サプライポンプ21は、燃料タンクから燃料を汲み上げ、この汲み上げた燃料を高圧にした後、機関燃料通路27を介してコモンレール22に供給する。コモンレール22は、サプライポンプ21から供給された高圧燃料を所定圧力に保持(蓄圧)する蓄圧室としての機能を有し、この蓄圧した燃料を各インジェクタ23に分配する。インジェクタ23は、その内部に圧電素子(ピエゾ素子)を備え、適宜開弁して燃焼室3内に燃料を噴射供給するピエゾインジェクタにより構成されている。このインジェクタ23からの燃料噴射制御の詳細については後述する。
また、上記サプライポンプ21は、燃料タンクから汲み上げた燃料の一部を、添加燃料通路28を介して燃料添加弁26に供給する。添加燃料通路28には、緊急時において添加燃料通路28を遮断して燃料添加を停止するための上記遮断弁24が備えられている。
また、上記燃料添加弁26は、後述するECU100による添加制御動作によって排気系7への燃料添加量が目標添加量(排気A/Fが目標A/Fとなるような添加量)となるように、また、燃料添加タイミングが所定タイミングとなるように開弁時期が制御される電子制御式の開閉弁により構成されている。つまり、この燃料添加弁26から所望の燃料が適宜のタイミングで排気系7(排気ポート71から排気マニホールド72)に噴射供給される構成となっている。
吸気系6は、シリンダヘッド15(図2参照)に形成された吸気ポート15aに接続される吸気マニホールド63を備え、この吸気マニホールド63に、吸気通路を構成する吸気管64が接続されている。また、この吸気通路には、上流側から順にエアクリーナ65、エアフローメータ43、スロットルバルブ62が配設されている。上記エアフローメータ43は、エアクリーナ65を介して吸気通路に流入される空気量に応じた電気信号を出力するようになっている。
排気系7は、シリンダヘッド15に形成された排気ポート71に接続される排気マニホールド72を備え、この排気マニホールド72に対して、排気通路を構成する排気管73,74が接続されている。また、この排気通路には、後述するNOx吸蔵触媒(NSR触媒:NOx Storage Reduction触媒)75およびDPNR触媒(Diesel Paticulate−NOx Reduction触媒)76を備えたマニバータ(排気浄化装置)77が配設されている。以下、これらNSR触媒75およびDPNR触媒76について説明する。
NSR触媒75は、吸蔵還元型NOx触媒であって、例えばアルミナ(Al2O3)を担体とし、この担体上に例えばカリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)のようなアルカリ金属、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)のようなアルカリ土類、ランタン(La)、イットリウム(Y)のような希土類と、白金(Pt)のような貴金属とが担持された構成となっている。
このNSR触媒75は、排気中に多量の酸素が存在している状態においてはNOxを吸蔵し、排気中の酸素濃度が低く、かつ還元成分(例えば燃料の未燃成分(HC))が多量に存在している状態においてはNOxをNO2若しくはNOに還元して放出する。NO2やNOとして放出されたNOxは、排気中のHCやCOと速やかに反応することによってさらに還元されてN2となる。また、HCやCOは、NO2やNOを還元することで、自身は酸化されてH2OやCO2となる。すなわち、NSR触媒75に導入される排気中の酸素濃度やHC成分を適宜調整することにより、排気中のHC、CO、NOxを浄化することができるようになっている。本実施形態のものでは、この排気中の酸素濃度やHC成分の調整を上記燃料添加弁26からの燃料添加動作によって行うことが可能となっている。
一方、DPNR触媒76は、例えば多孔質セラミック構造体にNOx吸蔵還元型触媒を担持させたものであり、排気ガス中のPMは多孔質の壁を通過する際に捕集される。また、排気ガスの空燃比がリーンの場合、排気ガス中のNOxはNOx吸蔵還元型触媒に吸蔵され、空燃比がリッチになると、吸蔵したNOxは還元・放出される。さらに、DPNR触媒76には、捕集したPMを酸化・燃焼する触媒(例えば白金等の貴金属を主成分とする酸化触媒)が担持されている。
ここで、ディーゼルエンジンの燃焼室3およびその周辺部の構成について、図2を用いて説明する。この図2に示すように、エンジン本体の一部を構成するシリンダブロック11には、各気筒(4気筒)毎に円筒状のシリンダボア12が形成されており、各シリンダボア12の内部にはピストン13が上下方向に摺動可能に収容されている。
ピストン13の頂面13aの上側には上記燃焼室3が形成されている。つまり、この燃焼室3は、シリンダブロック11の上部にガスケット14を介して取り付けられたシリンダヘッド15の下面と、シリンダボア12の内壁面と、ピストン13の頂面13aとにより区画形成されている。そして、ピストン13の頂面13aの略中央部には、キャビティ13bが凹設されており、このキャビティ13bも燃焼室3の一部を構成している。
このピストン13は、コネクティングロッド18の小端部18aがピストンピン13cにより連結されており、このコネクティングロッド18の大端部はエンジン出力軸であるクランクシャフトに連結されている。これにより、シリンダボア12内でのピストン13の往復移動がコネクティングロッド18を介してクランクシャフトに伝達され、このクランクシャフトが回転することでエンジン出力が得られるようになっている。また、燃焼室3に向けてグロープラグ19が配設されている。このグロープラグ19は、エンジン1の始動直前に電流が流されることにより赤熱し、これに燃料噴霧の一部が吹きつけられることで着火・燃焼が促進される始動補助装置として機能する。
上記シリンダヘッド15には、燃焼室3へ空気を導入する上記吸気ポート15aと、燃焼室3から排気ガスを排出する上記排気ポート71とがそれぞれ形成されていると共に、吸気ポート15aを開閉する吸気バルブ16および排気ポート71を開閉する排気バルブ17が配設されている。これら吸気バルブ16および排気バルブ17はシリンダ中心線Pを挟んで対向配置されている。つまり、本エンジン1はクロスフロータイプとして構成されている。また、シリンダヘッド15には、燃焼室3の内部へ直接的に燃料を噴射する上記インジェクタ23が取り付けられている。このインジェクタ23は、シリンダ中心線Pに沿う起立姿勢で燃焼室3の略中央上部に配設されており、上記コモンレール22から導入される燃料を燃焼室3に向けて所定のタイミングで噴射するようになっている。
更に、図1に示す如く、このエンジン1には、過給機(ターボチャージャ)5が設けられている。このターボチャージャ5は、タービンシャフト52aを介して連結されたタービンホイール52cおよびコンプレッサホイール52bを備えている。コンプレッサホイール52bは吸気管64内部に臨んで配置され、タービンホイール52cは排気管73内部に臨んで配置されている。このためターボチャージャ5は、タービンホイール52cが受ける排気流(排気圧)を利用してコンプレッサホイール52bを回転させ、吸気圧を高めるといった所謂過給動作を行うようになっている。本実施形態におけるターボチャージャ5は、可変ノズル式(可変容量型)ターボチャージャであって、タービンホイール52c側に可変ノズルベーン機構(図1では図示省略)が設けられており、この可変ノズルベーン機構の開度を調整することにより、エンジン1の過給圧を調整することができる。この可変ノズルベーン機構の具体構成については後述する。
吸気系6の吸気管64には、ターボチャージャ5での過給によって昇温した吸入空気を強制冷却するためのインタークーラ61が設けられている。このインタークーラ61よりも更に下流側に設けられた上記スロットルバルブ62は、その開度を無段階に調整することができる電子制御式の開閉弁であり、所定の条件下において吸入空気の流路面積を絞り、この吸入空気の供給量を調整(低減)する機能を有している。
また、エンジン1には、吸気系6と排気系7とを接続する排気還流通路(EGR通路)8が設けられている。このEGR通路8は、排気の一部を適宜吸気系6に還流させて燃焼室3へ再度供給することにより燃焼温度を低下させ、これによってNOx発生量を低減させるものである。また、このEGR通路8には、電子制御によって無段階に開閉され、同通路を流れる排気流量を自在に調整することができるEGRバルブ81と、EGR通路8を通過(還流)する排気を冷却するためのEGRクーラ82とが設けられている。
−ターボチャージャ5−
次に、上記ターボチャージャ(可変容量型ターボチャージャ)5、および、このターボチャージャ5に備えられた可変ノズルベーン機構(充填効率可変機構)9について説明する。
図3は、タービンシャフト52aの軸心に沿ったターボチャージャ5の断面図であり、図4は、タービンホイール52cおよびその周辺を拡大して示す断面図である。また、図5は、可変ノズルベーン機構9の正面図(可変ノズルベーン機構9をコンプレッサホイール52b側から見た図)であって、ノズルベーン開度が大きく設定された状態を示している。更に、図6は、可変ノズルベーン機構9の背面図(可変ノズルベーン機構9をコンプレッサホイール52b側とは反対側から見た図)であって、ノズルベーン開度が大きく設定された状態を示している。
上記ターボチャージャ5は、可変容量型(可変ノズル式)ターボチャージャとして構成されており、図3に示す如く、ハウジング51と、このハウジング51に回転自在に収納されたタービンシャフト52aと、このタービンシャフト52aの一端側(図3における右側)に取付けられたコンプレッサホイール52bと、タービンシャフト52aの他端側(図3における左側)に取付けられたタービンホイール52cとを備えている。これらタービンシャフト52a、コンプレッサホイール52bおよびタービンホイール52cによって回転体であるタービン52が構成されている。
上記ハウジング51は、コンプレッサハウジング51a、センタハウジング(ベアリングハウジング)51b、タービンハウジング51cが一体的に組み付けられて構成されている。つまり、中央のセンタハウジング51bの両側にコンプレッサハウジング51aおよびタービンハウジング51cがそれぞれ組み付けられている。
上記コンプレッサハウジング51aは、中央部(軸心部分)から空気を取り入れて外部へ放出することが可能な形状となっている。
また、上記コンプレッサハウジング51a内に収納されているコンプレッサホイール52bは、ロックナット52dによってタービンシャフト52aに固定されており、このタービンシャフト52aとともに一体的に回転する。コンプレッサホイール52bには複数のコンプレッサブレードが設けられており、コンプレッサホイール52bが回転すると、このコンプレッサブレードにより、空気が遠心力により半径方向外側に加速されて圧縮されるようになっている。このため、コンプレッサハウジング51aの中央部に空気が導入されると、この空気が、回転するコンプレッサホイール52bのコンプレッサブレードにより圧縮され、この圧縮された空気が吸気マニホールド63に向けて吸気管64に吐出されるようになっている。
上記コンプレッサホイール52bに隣接してシールリングカラー52eが配置されている。このシールリングカラー52eは上記タービンシャフト52aを取囲む形状となっている。
上記センタハウジング51bはターボチャージャ5の軸心方向の略中央部に配設されている。このセンタハウジング51bにはスラストベアリング52fが設けられている。このスラストベアリング52fは上記タービンシャフト52aのスラスト方向の荷重を受け止めるためのベアリングであり、オイルなどにより潤滑される。
上記センタハウジング51bには、タービンシャフト52aの回転を保持するためのフローティングベアリング52gが設けられている。このフローティングベアリング52gはタービンシャフト52aのラジアル方向の荷重を保持する。フローティングベアリング52gとタービンシャフト52aとの間には油膜が介在しており、フローティングベアリング52gがタービンシャフト52aに直接接触しないようになっている。さらに、フローティングベアリング52gとセンタハウジング51bとの間にも油膜が存在し、フローティングベアリング52gがセンタハウジング51bと直接接触しないようになっている。このフローティングベアリング52gはリテーナリング52hにより位置決めされている。
次に、可変ノズルベーン機構9について説明する。この可変ノズルベーン機構9は、上記センタハウジング51bとタービンハウジング51cとの間に形成されたリンク室91に配設されている。
この可変ノズルベーン機構9は、上記リンク室91に収納されたユニゾンリング92と、このユニゾンリング92の内周側に位置し、ユニゾンリング92に一部が係合する複数のアーム93,93,…(図5参照)と、タービンハウジング51cに対してターボチャージャ軸心方向で当接するように配設されたノズルプレート(NVプレート)94(図4参照)と、上記複数本のアーム93,93,…を駆動させるためのメインアーム95と、上記アーム93に接続されてノズルベーン96を駆動するベーンシャフト97とを備えている。このベーンシャフト97は上記ノズルプレート94に回転自在に支持されて、各アーム93と各ノズルベーン96とをそれぞれ回動一体に連結している。
また、本実施形態では、上記タービンハウジング51cが、鋳物で成る本体部51c−aと板金で成るプレート部51c−bとの2つの部材が一体的に組み付けられて構成され(図4参照)、軽量化が図られている。
また、このタービンハウジング51cにはハウジングプレート51eが取り付けられている。このハウジングプレート51eは、上記ノズルプレート94と対向する位置に配設されており、このノズルプレート94との間に上記ノズルベーン96の配設空間を形成している。つまり、これらノズルプレート94とハウジングプレート51eとの間で排気ガスの流路が形成され、この流路内にノズルベーン96が配設された構成となっている。このため、ノズルプレート94およびハウジングプレート51eは、ノズルベーン96の回動軸心方向の両側に位置してノズルベーン96の端面に対向するように配設されている。そして、ノズルプレート94とノズルベーン96の端面との間の隙間、ハウジングプレート51eとノズルベーン96の端面との間の隙間(これら隙間をノズルサイドクリアランスと呼ぶ)は、摺動抵抗が大きくならない範囲で、できる限り小さくして、ノズルベーン96,96同士の間で形成される排気ガスの流路のみに排気ガスを流すようにする(ノズルサイドクリアランスからの排気ガスの漏れを少なくする)ことが好ましい。
この可変ノズルベーン機構9は、タービンブレードの外周側に等間隔に配設された上記複数(例えば12枚)のノズルベーン96,96,…の回動角度(回動姿勢)を調整するための機構であり、上記メインアーム95に接続されている駆動リンク95aを所定の角度だけ回動させることにより、その回動力がメインアーム95、ユニゾンリング92、アーム93,93,…、ベーンシャフト97,97,…を介してノズルベーン96,96,…に伝わり、各ノズルベーン96,96,…が連動して回動する構成とされている。
具体的には、上記駆動リンク95aは駆動シャフト95bを中心に回動可能となっている。この駆動シャフト95bは、駆動リンク95aおよびメインアーム95と回動一体に連結されている。このため、駆動リンク95aの回動に伴って駆動シャフト95bが回動すれば、この回動力がメインアーム95に伝えられる。メインアーム95の内周側端部は駆動シャフト95bに固定され、外周側端部はユニゾンリング92に係合している。このため、駆動シャフト95bを中心としてメインアーム95が回動すると、この回動力がユニゾンリング92に伝えられる。ユニゾンリング92の内周面には各アーム93,93,…の外周側端部が嵌まり合っており、ユニゾンリング92が回動すると、この回動力はアーム93,93,…に伝えられる。具体的に、ユニゾンリング92はノズルプレート94に対して周方向に摺動可能に配設されており、その内周縁に設けられた複数の凹部92a,92a,…それぞれには、上記メインアーム95およびアーム93,93,…の外周側端部が嵌め合わされている。各アーム93,93,…はベーンシャフト97を中心として回動することが可能であり、アーム93の回動はベーンシャフト97に伝えられる。ベーンシャフト97はノズルベーン96と連結されているため、ノズルベーン96はベーンシャフト97およびアーム93とともに回動することになる。
上記タービンハウジング51cにはタービンハウジング渦室が設けられており、タービンハウジング渦室に排気が供給されて、この排気の流れがタービンホイール52cを回転させる。この際、上述したように各ノズルベーン96,96,…の回動位置が調整されて、その回動角度を設定することにより、タービンハウジング渦室から排気タービン室へ向かう排気の流量および流速を調整することが可能となっている。これにより、過給性能を調整することが可能になり、例えば、エンジンの低回転時にノズルベーン96,96,…同士の間の流路面積(スロート面積)を減少させるように各ノズルベーン96,96,…の回動位置を調整すれば、排気ガスの流速が増加して、エンジン低速域から高い過給圧を得ることができることになる。
また、上記可変ノズルベーン機構9の駆動リンク95aはモータロッド95cに接続されている。このモータロッド95cは棒状部材であり、図示しない可変ノズルコントローラに接続されている。この可変ノズルコントローラはアクチュエータとしての直流モータ(DCモータ)に接続されており、この直流モータが回転することで、その回転力が歯車機構およびウォーム機構等を介してモータロッド95cに伝わり、このモータロッド95cの移動に伴って駆動リンク95aが回動することにより、上述した如く各ノズルベーン96,96,…が回動する構成となっている。
図5及び図6に示すように、モータロッド95cを図中矢印X方向に引くことで、ユニゾンリング92が図中矢印X1方向に回動し、図6に示すように、各ノズルベーン96,96,…が図中反時計回り方向に回動することでノズルベーン開度が大きく設定される。
また、図7および図8はノズルベーン開度が小さく設定された状態を示しており、図7は可変ノズルベーン機構9の正面図(図5に対応する図)、図8は可変ノズルベーン機構9の背面図(図6に対応する図)である。これら図に示すように、モータロッド95cを図中矢印Y方向に押すことで、ユニゾンリング92が図中矢印Y1方向に回動し、図8に示すように、各ノズルベーン96,96,…が図中時計回り方向に回動することでノズルベーン開度が小さく設定される。
尚、上記ノズルプレート94にはピン94a(図5参照)が差し込まれ、このピン94aにはローラ94bが嵌め合わされている。このローラ94bはユニゾンリング92の内周面をガイドする。これにより、ユニゾンリング92はローラ94bに保持されて所定方向に回動することが可能となっている。また、上記タービンハウジング51cにはスペーサボルト51dが取り付けられている(図4参照)。更に、上記センタハウジング51bの内部には、ターボチャージャ5を冷却するための冷却水が流通する冷却水通路Wが形成されている。
−センサ類−
エンジン1の各部位には、各種センサが取り付けられており、それぞれの部位の環境条件や、エンジン1の運転状態に関する信号を出力する。
例えば、上記エアフローメータ43は、吸気系6内のスロットルバルブ62上流において吸入空気の流量(吸入空気量)に応じた検出信号を出力する。吸気温センサ49は、吸気マニホールド63に配置され、吸入空気の温度に応じた検出信号を出力する。吸気圧センサ48は、吸気マニホールド63に配置され、吸入空気圧力に応じた検出信号を出力する。A/F(空燃比)センサ44は、排気系7のマニバータ77の下流において排気中の酸素濃度に応じて連続的に変化する検出信号を出力する。排気温センサ45は、同じく排気系7のマニバータ77の下流において排気ガスの温度(排気温度)に応じた検出信号を出力する。レール圧センサ41はコモンレール22内に蓄えられている燃料の圧力に応じた検出信号を出力する。スロットル開度センサ42はスロットルバルブ62の開度を検出する。
−ECU−
ECU100は、図9に示すように、CPU101、ROM102、RAM103およびバックアップRAM104などを備えている。ROM102は、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU101は、ROM102に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて各種の演算処理を実行する。また、RAM103は、CPU101での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM104は、例えばエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
以上のCPU101、ROM102、RAM103およびバックアップRAM104は、バス107を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース105および出力インターフェース106と接続されている。
入力インターフェース105には、上記レール圧センサ41、スロットル開度センサ42、エアフローメータ43、A/Fセンサ44、排気温センサ45、吸気圧センサ48、吸気温センサ49が接続されている。さらに、この入力インターフェース105には、エンジン1の冷却水温に応じた検出信号を出力する水温センサ46、アクセルペダルの踏み込み量に応じた検出信号を出力するアクセル開度センサ47、および、エンジン1の出力軸(クランクシャフト)が一定角度回転する毎に検出信号(パルス)を出力するクランクポジションセンサ40などが接続されている。一方、出力インターフェース106には、上記インジェクタ23、燃料添加弁26、スロットルバルブ62、EGRバルブ81、および、可変ノズルベーン機構9(上記可変ノズルコントローラ)などが接続されている。
そして、ECU100は、上記した各種センサの出力に基づいて、エンジン1の各種制御を実行する。さらに、ECU100は、インジェクタ23の燃料噴射制御として、後述するパイロット噴射、プレ噴射、メイン噴射、アフタ噴射、ポスト噴射を制御する。
これらの燃料噴射を実行する際の燃料噴射圧は、コモンレール22の内圧により決定される。このコモンレール内圧として、一般に、コモンレール22からインジェクタ23へ供給される燃料圧力の目標値、すなわち目標レール圧は、エンジン負荷(機関負荷)が高くなるほど、および、エンジン回転数(機関回転数)が高くなるほど高いものとされる。すなわち、エンジン負荷が高い場合には燃焼室3内に吸入される空気量が多いため、インジェクタ23から燃焼室3内に向けて多量の燃料を噴射しなければならず、よってインジェクタ23からの噴射圧力を高いものとする必要がある。また、エンジン回転数が高い場合には噴射可能な期間が短いため、単位時間当たりに噴射される燃料量を多くしなければならず、よってインジェクタ23からの噴射圧力を高いものとする必要がある。このように、目標レール圧は一般にエンジン負荷およびエンジン回転数に基づいて設定される。この燃料圧力の目標値を設定するための具体的な手法については後述する。
上記パイロット噴射やメイン噴射などの燃料噴射における燃料噴射パラメータについて、その最適値はエンジン1や吸入空気等の温度条件によって異なるものとなる。
例えば、上記ECU100は、コモンレール圧がエンジン運転状態に基づいて設定される目標レール圧と等しくなるように、即ち燃料噴射圧が目標噴射圧と一致するように、サプライポンプ21の燃料吐出量を調量する。また、ECU100はエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量および燃料噴射形態を決定する。具体的には、ECU100は、クランクポジションセンサ40の検出値に基づいてエンジン回転速度を算出するとともに、アクセル開度センサ47の検出値に基づいてアクセルペダルへの踏み込み量(アクセル開度)を求め、このエンジン回転速度およびアクセル開度に基づいて総燃料噴射量(後述するプレ噴射での噴射量とメイン噴射での噴射量との和)を決定する。
−燃料噴射形態−
以下、本実施形態における上記パイロット噴射、プレ噴射、メイン噴射、アフタ噴射、ポスト噴射の各動作の概略について説明する。
(パイロット噴射)
パイロット噴射は、インジェクタ23からのメイン噴射(主噴射)に先立ち、予め少量の燃料を噴射する噴射動作である。つまり、このパイロット噴射の実行後、燃料噴射を一旦中断し、メイン噴射が開始されるまでの間に圧縮ガス温度(気筒内温度)を十分に高めて燃料の自着火温度に到達させるようにし、これによってメイン噴射で噴射される燃料の着火性を良好に確保するようにしている。即ち、本実施形態におけるパイロット噴射の機能は、気筒内の予熱に特化したものとなっている。つまり、本実施形態におけるパイロット噴射は、燃焼室3内でのガスの予熱を行うための噴射動作(予熱用燃料の供給動作)である。
具体的に、本実施形態では、噴霧の分配や局所濃度の適正化を図るために、噴射率としては、最小噴射率(例えば1回当たりの噴射量1.5mm3)とし、複数回数のパイロット噴射を実行することで、このパイロット噴射で必要な総パイロット噴射量を確保するようにしている。
また、このようにして分割噴射されるパイロット噴射のインターバルは、インジェクタ23の応答性(開閉動作の速さ)によって決定される。本実施形態のものでは、例えば200μsに設定される。このパイロット噴射のインターバルは、この値に限定されるものではない。
(プレ噴射)
プレ噴射は、メイン噴射による初期燃焼速度を抑制し、安定した拡散燃焼に導くための噴射動作(トルク発生用燃料の供給動作)であって副噴射とも呼ばれる。具体的に、本実施形態では、エンジン回転数、アクセル操作量、冷却水温度、吸気温度等の運転状態に応じて決定される要求トルクを得るための総噴射量(プレ噴射での噴射量とメイン噴射での噴射量との和)に対して10%としてプレ噴射量が設定される。
この場合、上記総噴射量が15mm3未満であった場合には、プレ噴射での噴射量が、インジェクタ23の最小限界噴射量(1.5mm3)未満となるため、プレ噴射は実行しないことになる。尚、この場合、インジェクタ23の最小限界噴射量(1.5mm3)だけプレ噴射での燃料噴射を行うようにしてもよい。一方、プレ噴射の噴射総量としてインジェクタ23の最小限界噴射量の2倍以上(例えば3mm3以上)が要求される場合には、複数回数のプレ噴射を実行することで、このプレ噴射で必要な総噴射量を確保するようにしている。これにより、プレ噴射の着火遅れを抑制し、メイン噴射による初期燃焼速度の抑制を確実に行って、安定した拡散燃焼に導くことができる。
(メイン噴射)
メイン噴射は、エンジン1のトルク発生のための噴射動作(トルク発生用燃料の供給動作)である。具体的に、本実施形態では、エンジン回転数、アクセル操作量、冷却水温度、吸気温度等の運転状態に応じて決定される要求トルクを得るための上記総燃焼噴射量から上記プレ噴射での噴射量を減算した噴射量として設定される。
以下、上述したプレ噴射およびメイン噴射の制御プロセスについて簡単に説明する。先ず、エンジン1のトルク要求値に対して、上記プレ噴射での噴射量とメイン噴射での噴射量との和である総燃料噴射量が算出される。つまり、エンジン1に要求されるトルクを発生させるための量として総燃料噴射量が算出される。
上記エンジン1のトルク要求値は、エンジン回転数、アクセル操作量、冷却水温度、吸気温度等の運転状態、および補機類等の使用状況に応じて決定される。例えば、エンジン回転数(上記クランクポジションセンサ40の検出値に基づいて算出されるエンジン回転数)が高いほど、また、アクセル操作量(アクセル開度センサ47により検出されるアクセルペダルの踏み込み量)が大きいほど(アクセル開度が大きいほど)エンジンのトルク要求値としては高く得られる。
このようにして総燃料噴射量が算出された後、この総燃料噴射量に対するプレ噴射での噴射量の比率(分割率)を設定する。つまり、プレ噴射量は、総燃料噴射量に対して上記分割率で分割された量として設定されることになる。この分割率(プレ噴射量)は、「メイン噴射による燃料の着火遅れの抑制」と「メイン噴射による燃焼の熱発生率のピーク値の抑制」とを両立する値として求められる。これらを抑制することで、高いエンジントルクを確保しながらも、燃焼音の低減やNOx発生量の低減を図ることが可能になる。尚、本実施形態では、上記分割率を10%としている。
(アフタ噴射)
アフタ噴射は、排気ガス温度を上昇させるための噴射動作である。具体的に、本実施形態では、このアフタ噴射により供給された燃料の燃焼エネルギがエンジンのトルクに変換されることなく、その大部分が排気の熱エネルギとして得られるタイミングでアフタ噴射を実行するようにしている。また、このアフタ噴射においても、上述したパイロット噴射の場合と同様に、最小噴射率(例えば1回当たりの噴射量1.5mm3)とし、複数回数のアフタ噴射を実行することで、このアフタ噴射で必要な総アフタ噴射量を確保するようにしている。
(ポスト噴射)
ポスト噴射は、排気系7に燃料を直接的に導入して上記マニバータ77の昇温を図るための噴射動作である。例えば、DPNR触媒76に捕集されているPMの堆積量が所定量を超えた場合(例えばマニバータ77の前後の差圧を検出することにより検知)、ポスト噴射が実行されるようになっている。
−目標燃料圧力の設定−
本実施形態の特徴の一つとしては目標燃料圧力の設定手法にある。具体的には、運転者がアクセルペダルの踏み込み量を大きくする加速要求が生じた場合に、エンジントルクが、現在のエンジン回転数における最大トルクに到達した状態でエンジン回転数が上昇しない状況となった場合に、エンジン回転数が上昇するまで一時的に燃料圧力を上昇させる制御動作(以下、燃料圧力上昇制御と呼ぶ)を実行することにある。例えば、登坂路走行時等において、運転者がアクセルペダルの踏み込み量を増大させる加速要求が生じているにも拘わらず、この登坂路による走行抵抗とエンジントルクとがつり合うような状況になってエンジン回転数が上昇しなくなった場合に、一時的に燃料圧力を上昇させる制御動作である。この燃料圧力上昇制御について具体的に説明する前に、先ず、目標燃料圧力の基本設定手法および燃圧設定マップについて説明する。
(目標燃料圧力の基本設定手法)
ディーゼルエンジン1においては、NOx発生量を削減することによる排気エミッションの改善、燃焼行程時の燃焼音の低減、エンジントルクの十分な確保といった各要求を連立することが重要である。本発明の発明者は、これら要求を連立するための手法として、燃焼行程時における気筒内での熱発生率の変化状態(熱発生率波形で表される変化状態)を適切にコントロールすることが有効であることに着目し、この熱発生率の変化状態をコントロールするための手法として以下に述べるような目標燃料圧力の設定手法を見出した。
図10の実線は、横軸をクランク角度、縦軸を熱発生率とし、メイン噴射で噴射された燃料の燃焼に係る理想的な熱発生率波形を示している。図中のTDCはピストン13の圧縮上死点に対応したクランク角度位置を示している。この熱発生率波形としては、例えば、ピストン13の圧縮上死点(TDC)からメイン噴射で噴射された燃料の燃焼が開始され、圧縮上死点後の所定ピストン位置(例えば、圧縮上死点後10°(ATDC10°)の時点)で熱発生率が極大値(ピーク値)に達し、更に、圧縮上死点後の所定ピストン位置(例えば、圧縮上死点後25°(ATDC25°)の時点)で上記メイン噴射において噴射された燃料の燃焼が終了するようになっている。このような熱発生率の変化状態で混合気の燃焼を行わせるようにすれば、例えば圧縮上死点後10°(ATDC10°)の時点で気筒内の混合気のうちの50%が燃焼を完了した状況となる。つまり、膨張行程における総熱発生量の約50%がATDC10°までに発生し、高い熱効率でエンジン1を運転させることが可能となる。
尚、図10に一点鎖線で示す波形は、上記プレ噴射で噴射された燃料の燃焼に係る熱発生率波形を示している。これにより、メイン噴射で噴射された燃料の安定した拡散燃焼が実現される。例えば、このプレ噴射で噴射された燃料の燃焼によって10Jの熱量が発生する。この値は、これに限定されるものではなく。例えば、上記総燃料噴射量に応じて適宜設定される。また、図示していないが、プレ噴射に先立ってパイロット噴射も行われており、これにより気筒内温度を十分に高めて、メイン噴射で噴射される燃料の着火性を良好に確保している。
また、図10に二点鎖線αで示す波形は、燃料噴射圧力が、適正値よりも高く設定された場合の熱発生率波形であり、燃焼速度およびピーク値が共に高くなりすぎており、燃焼音の増大やNOx発生量の増加が懸念される状態である。一方、図10に二点鎖線βで示す波形は、燃料噴射圧力が、適正値よりも低く設定された場合の熱発生率波形であり、燃焼速度が低く且つピークの現れるタイミングが大きく遅角側に移行していることで十分なエンジントルクが確保できないことが懸念される状態である。
上述したように、本実施形態に係る目標燃料圧力の設定手法は、熱発生率の変化状態の適正化(熱発生率波形の適正化)を図ることで燃焼効率の向上を図るといった技術的思想に基づくものである。そして、それを実現するために後述するような燃圧設定マップに従った目標燃料圧力の設定を行っている。
(燃圧設定マップ)
図11は、本実施形態において目標燃料圧力を決定する際に参照される燃圧設定マップである。この燃圧設定マップは、例えば上記ROM102に記憶されている。また、この燃圧設定マップは、横軸がエンジン回転数であり、縦軸がエンジントルクとなっている。また、図11におけるTmaxは最大トルクラインを示している。
この燃圧設定マップの特徴として、図中にA〜Lで示す等燃料噴射圧力ライン(等燃料噴射圧力領域)は、エンジン1の回転数およびトルクから求められる出力(パワー)の等パワーライン(等出力領域)に割り付けられている。つまり、この燃圧設定マップでは、等パワーラインと等燃料噴射圧力ラインとが略一致するように設定されている。
具体的には、図11の曲線Aはエンジン出力が10kWのラインであり、これに燃料噴射圧力として30MPaのラインが割り付けられている。以下、同様に、曲線Bはエンジン出力が20kWのラインであり、これに燃料噴射圧力として45MPaのラインが割り付けられている。曲線Cはエンジン出力が30kWのラインであり、これに燃料噴射圧力として60MPaのラインが割り付けられている。曲線Dはエンジン出力が40kWのラインであり、これに燃料噴射圧力として75MPaのラインが割り付けられている。曲線Eはエンジン出力が50kWのラインであり、これに燃料噴射圧力として90MPaのラインが割り付けられている。曲線Fはエンジン出力が60kWのラインであり、これに燃料噴射圧力として105MPaのラインが割り付けられている。曲線Gはエンジン出力が70kWのラインであり、これに燃料噴射圧力として120MPaのラインが割り付けられている。曲線Hはエンジン出力が80kWのラインであり、これに燃料噴射圧力として135MPaのラインが割り付けられている。曲線Iはエンジン出力が90kWのラインであり、これに燃料噴射圧力として150MPaのラインが割り付けられている。曲線Jはエンジン出力が100kWのラインであり、これに燃料噴射圧力として165MPaのラインが割り付けられている。曲線Kはエンジン出力が110kWのラインであり、これに燃料噴射圧力として180MPaのラインが割り付けられている。曲線Lはエンジン出力が120kWのラインであり、これに燃料噴射圧力として200MPaのラインが割り付けられている。これら各値は、これに限定されるものではなく、エンジン1の性能特性等に応じて適宜設定される。また、上記各ライン間におけるエンジン出力と燃料噴射圧力との関係は周知の補間計算等により求められる。
また、上記各ラインA〜Lは、エンジン出力の変化量に対する燃料噴射圧力の変化量の割合が、エンジン回転数が低回転領域であるほど小さくなるように設定されている。つまり、高回転領域よりも低回転領域の方が、ライン間の間隔が広く設定されている。また、このライン間の間隔は均等に設定されていてもよい。
このようにして作成された燃圧設定マップに従い、エンジン1の運転状態に適した目標燃料圧力を設定し、サプライポンプ21の制御等を行うようになっている。
具体的に、エンジン回転数とエンジントルクとが共に増加する場合(図11における矢印Iを参照)、および、エンジン回転数が一定でエンジントルクが増加する場合(図11における矢印IIを参照)、並びに、エンジントルクが一定でエンジン回転数が増加する場合(図11における矢印IIIを参照)の何れにおいても燃料噴射圧力が高められる。これにより、エンジントルク(エンジン負荷)が高い場合における吸入空気量に適した燃料噴射量を確保し、また、エンジン回転数が高い場合における単位時間当たりの燃料噴射量を多くして短期間で必要燃料噴射量を確保することができる。このため、エンジン出力およびエンジン回転数に関わりなく、常に、図10に実線で示したような理想的な熱発生率波形での燃焼形態を実現することができ、NOx発生量を削減することによる排気エミッションの改善、燃焼行程時の燃焼音の低減、エンジントルクの十分な確保といった各要求を連立することが可能になる。
一方、エンジン回転数およびエンジントルクが変化したとしても、その変化の前後でエンジン出力が変化していない場合(図11における矢印IVを参照)には、燃料噴射圧力を変化させないようにして、それまで設定されていた燃料噴射圧力の適正値を維持する。つまり、上記等燃料噴射圧力ライン(等パワーラインに一致している)に沿うようなエンジン運転状態の変化では燃料噴射圧力を変化させないようにし、上述した理想的な熱発生率波形での燃焼形態を継続させる。この場合、NOx発生量を削減することによる排気エミッションの改善、燃焼行程時の燃焼音の低減、エンジントルクの十分な確保といった各要求を継続的に連立させることができる。
以上のように、本実施形態における燃圧設定マップでは、エンジン1の出力(パワー)と燃料噴射圧力(コモンレール圧)との間に一義的な相関を持たせ、また、エンジン回転数およびエンジントルクの少なくとも一方が変化することでエンジン出力が変化する状況では、それに応じた適正な燃料圧力での燃料噴射が行えるようにし、逆に、エンジン回転数やエンジントルクが変化してもエンジン出力が変化しない状況では、燃料圧力をそれまで設定されていた適正値から変化させないようにしている。これによって、エンジン運転領域の略全域に亘って熱発生率変化状態を理想状態に近付けることが可能になる。また、この燃圧設定マップのように、エンジン1の出力(パワー)と燃料噴射圧力(コモンレール圧)との間に一義的な相関を持たせることは、種々のエンジンに共通した体系的な燃料圧力設定手法を構築するものとなるので、エンジン1の運転状態に応じた適切な燃料噴射圧力を設定するための燃圧設定マップの作成を簡素化することが可能である。
また、上述した如く、本実施形態における燃圧設定マップでは、エンジン出力の変化量に対する燃料噴射圧力の変化量の割合が、エンジン回転数が低回転領域であるほど小さくなるように設定されている。このため、エンジン1の低回転領域では、燃料噴射圧力の変化が緩やかであって、この運転状態における気筒内の燃焼圧力の急激な増大を回避して燃焼に伴う振動や騒音の発生を抑制できる。一方、エンジン1の高回転領域では、例えばトルクの増大に伴って燃料噴射圧力を大きく変化させ、要求されている出力が迅速に得られるようにしてエンジン1の応答性(レスポンス)を良好に得ることができる。
−充填効率設定マップ−
図12は、本実施形態において、上記ターボチャージャ5におけるノズルベーン96,96,…の開度を決定する際に参照される充填効率設定マップである。この充填効率設定マップは、例えば上記ROM102に記憶されている。また、この充填効率設定マップは、横軸がエンジン回転数であり、縦軸がエンジントルクとなっている。つまり、エンジン回転数およびエンジントルクに応じて、現在のエンジン運転状態に適したノズルベーン96,96,…の開度(この開度によって決まる充填効率)を得るためのマップとなっている。また、図12におけるTmaxは最大トルクラインを示している。更に、図12において斜線を付した領域は、上記EGRバルブ81が開放され、排気の一部を吸気系6に還流させるEGR領域であり、その他の領域は、EGRバルブ81が閉鎖される非EGR(EGR無し)領域である。
この充填効率設定マップは、エンジン1の運転状態(エンジン回転数、エンジントルク)に応じて、吸気の過給効率が最大(吸気過給効率の最高点)となるようなノズルベーン96,96,…の開度を取得するものとなっている。つまり、充填効率設定マップには、吸気の過給効率が最大となるようなノズルベーン96,96,…開度の適合値が各運転状態毎に記憶されている。
具体的に、ここでいう吸気過給効率の最高点とは、スロットルバルブ62を全開とし、且つ気筒内への燃料噴射量、燃料噴射パターン、燃料噴射圧力を略一定とした場合に、ノズルベーン96,96,…の開度を調整していき、それに伴ってエンジントルクが変化していく際に、そのエンジントルクが最高値となる点をいう。つまり、このエンジントルクが最高値となった時点でのノズルベーン96,96,…の開度が、その際のエンジン1の運転状態(エンジン回転数、エンジントルク)における過給効率最大となる開度として設定され、この開度の値が、そのエンジン運転状態での適合値として充填効率設定マップに書き込まれている。以下、具体的に説明する。
図13は、あるエンジン運転状態(上記非EGR領域でスロットルバルブ62を全開にした状態)において、気筒内への燃料噴射量、燃料噴射パターン(プレ噴射やメイン噴射の噴射タイミングやインターバル等)、燃料噴射圧力を略一定とした状態で、ノズルベーン96,96,…の開度を変化させていった場合のエンジントルクの変化を示している。この図13における横軸は、ノズルベーン96,96,…の開度によって決定される充填効率であり、ノズルベーン96,96,…の開度が小さく設定されるほど充填効率は高くなる。また、図13における縦軸はエンジントルクである。
ここで、気筒内への燃料噴射量、燃料噴射パターン、燃料噴射圧力を略一定とする場合の具体例として、燃料噴射量および燃料噴射パターンについては、例えば、上記プレ噴射で噴射された燃料の燃焼による熱発生率が最大となるタイミングと、メイン噴射で噴射された燃料の燃焼開始タイミングと、シリンダ内で往復移動するピストン13が圧縮上死点に達するタイミングとが互いに略一致するように、プレ噴射およびメイン噴射の噴射タイミングおよび噴射量を固定する場合が挙げられる。また、燃料噴射圧力については、上述した如くエンジン回転数およびエンジントルクから求められる出力(パワー)の等出力領域(等パワー線)に対し、等燃料噴射圧力領域(等燃料噴射圧力線)を割り付けておき(図11参照)、このエンジン1の出力に応じて設定される燃料噴射圧力に固定する場合が挙げられる。
図13に示すように、ノズルベーン96,96,…の開度が大きい(上記スロート面積が大きい:充填効率が低い)状況から、その開度を次第に小さくしていくと(充填効率を次第に高くしていくと)、ターボチャージャ5における排気ガスの熱エネルギから回転エネルギへの変換量が次第に多くなっていき、それに従ってエンジントルクも増大していく(図13における充填効率範囲Iを参照)。ところが、このように、ノズルベーン96,96,…の開度を小さくしていった場合、排気エネルギが増加していき、つまり、排気の抜けが悪化していき、これが過給効率の悪化要因として大きくなってくる。そして、ノズルベーン96,96,…の開度を小さくしていくことによる回転エネルギの増加量(効率向上に寄与するエネルギ量)と、排気エネルギの増加量(効率悪化に繋がるエネルギ量)との収支として、排気エネルギの増加量の方が大きくなると、過給効率が低下し、エンジントルクが低下していくことになる(図13における充填効率範囲IIを参照)。従って、これら回転エネルギの増加量と排気エネルギの増加量とがバランスした点(上記充填効率範囲IとIIとの境界点)が過給効率の最大点として求められることになる。
このようにして求められる過給効率の最大点となるノズルベーン96,96,…の開度(適合値)を、エンジンの各運転状態毎に多数点を求めていき、それを座標上(横軸をエンジン回転数とし、縦軸をエンジントルクとする座標上)にプロットして、ノズルベーン96,96,…の開度が同一となっている点を結んだものが図12に示す充填効率設定マップである。この充填効率設定マップにa〜iで示すライン(破線で示している各ライン)が、ノズルベーン96,96,…の開度が同一となる点の集合(充填効率が同一の点の集合)としての等充填効率ライン(等充填効率領域)である。つまり、この等充填効率ライン上では、過給効率の最大点を得るためのノズルベーン96,96,…の開度は同一となる。
言い換えると、この等充填効率ラインは、ターボチャージャ5の過給効率が最大となる点の集合であって、エンジン1の回転数およびトルクに基づいて選択された等充填効率ラインに対応するノズルベーン96,96,…の開度に設定することで、ターボチャージャ5の過給効率を最大とすることができるようになっている。
具体的には、図12の曲線aはノズルベーン開度が90%のラインであり、曲線bから曲線iに向かうに従ってノズルベーン開度が10%ずつ小さく設定され、曲線iはノズルベーン開度が10%のラインとなっている。これら各値は、これに限定されるものではなく、エンジン1の性能特性等に応じて適宜設定される。
このようにして作成された充填効率設定マップに従い、本実施形態に係るエンジン1の運転時におけるノズルベーン96,96,…の開度制御としては、エンジン1の運転状態に適した吸気の充填効率を充填効率設定マップから取得し、この充填効率が得られるようにノズルベーン96,96,…の開度を設定するべく可変ノズルベーン機構9の制御を行うようになっている。
このようにしてノズルベーン96,96,…の開度が設定されることにより、何れのエンジン運転状態においても、吸気過給効率を最大とすることができ、高い効率でエンジン1を運転させることができて、燃料消費率の大幅な改善を図ることができるようになっている。
また、以上のように、本実施形態における充填効率設定マップでは、エンジン回転数と、エンジントルクと、ノズルベーン開度(充填効率)との間に一義的な相関を持たせるようにしている。これによって、エンジン運転領域の略全域に亘って高い過給効率を維持することが可能になる。また、この充填効率設定マップのように、エンジン回転数と、エンジントルクと、ノズルベーン開度との間に一義的な相関を持たせることは、種々のエンジンに共通した体系的な吸気制御手法を構築するものとなるので、エンジン1の運転状態に応じた適切な吸気量を設定するための充填効率設定マップの作成を簡素化することが可能である。
−燃料圧力上昇制御−
次に、本実施形態の特徴とする動作の一つである燃料圧力上昇制御について具体的に説明する。この燃料圧力上昇制御は、上述した如く、運転者がアクセルペダルの踏み込み量を大きくする加速要求が生じた場合に、エンジントルクが、現在のエンジン回転数における最大トルクに到達した状態でエンジン回転数が上昇しない状況となった際、エンジン回転数が上昇するまで一時的に燃料圧力を上昇させる制御動作である。
具体的に、エンジン回転数が比較的低い状態での登坂路走行時に運転者の加速要求が生じた場合について図11を用いて説明する。
図11中の点Xで示す運転状態(例えば、エンジン回転数が約1000rpmで、エンジントルクが約100Nm)での登坂路走行中に、運転者に加速要求が生じてアクセルペダルの踏み込み量が大きくなると、燃料圧力が上昇し、エンジントルクが上昇して図中の点Yの状態(エンジントルクが約250Nm)になる。このように点Xから点Yに移る場合、登坂路による走行抵抗によってエンジン回転数は上昇せず、燃料圧力の上昇に伴ってエンジントルクのみが上昇した状態となっている。そして、この点Yは最大トルクラインTmax上の点である。つまり、この点Yで示す運転状態では、現在のエンジン回転数において出力可能なトルクの限界点に達しているため、エンジン回転数が上昇しない限りエンジントルクも上昇できない状況となっている。
このように、エンジントルクが、現在のエンジン回転数における最大トルクに到達した状態となって、エンジン回転数が上昇しない状況となったことが認識されると、本実施形態では、エンジン回転数が上昇するまで一時的に燃料圧力を上昇させる。
具体的には、上記アクセル開度センサ47によって検出されるアクセル開度の変化量と、上記クランクポジションセンサ40の検出値に基づいて算出されるエンジン回転数の変化量とを比較し、アクセル開度が増大したにも拘わらず、エンジン回転数が殆ど変化しない場合には、エンジン運転状態が最大トルクライン上に達したことでエンジン回転数が上昇しない状況になったと判断する。そして、このような状況が所定時間(例えば1sec)継続すると、燃料圧力上昇制御を開始し、一時的に燃料圧力を上昇させる。例えば上記サプライポンプ21からコモンレール22へ供給される燃料流量を増大させることでコモンレール圧を上昇させ、これによって気筒内への燃料噴射圧力を上昇させる。より具体的には、上記サプライポンプ21の吐出ポート近傍に設けられた図示しない圧力制御弁の制御により、燃料タンクへ戻される燃料量を制限してコモンレール22へ吐出される燃料量を増大させることによりコモンレール圧を一時的に上昇させる。図11に示す状態では、点Yにおいて燃料圧力が約55MPaに設定された状態から燃料圧力を約90MPaまで上昇させることでエンジン運転状態を点Zに向かって移行させるように制御している。
この場合の燃焼室3内における熱発生率波形の変化の一例を図14に示す。この図14における二点鎖線は、点Yの状態、つまり、燃料圧力が約55MPaに設定された状態での熱発生率波形である。また、図14における実線は、点Zの状態、つまり、燃料圧力が約90MPaに設定された状態での熱発生率波形である。
ここで、燃料圧力上昇制御開始時における燃料圧力の目標値(上述したものでは約90MPa)について説明する。この燃料圧力の目標値は、運転者の加速要求に応じて設定される。つまり、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)が大きいほど、燃料圧力の目標値としては高く設定される。具体的には、アクセルペダルの踏み込み量に応じたパワー(エンジン出力)が得られるように、図11上のパワーラインが選択され、そのパワーラインに割り付けられている燃料噴射圧力が目標燃料圧力として設定されるようになっている。つまり、上述の如く目標値が約90MPaに設定されている場合、エンジンに要求されるパワー(エンジン出力)は約50kWとなっている。このようにして燃料圧力の目標値が設定されるため、運転者の加速要求が高いほど、車両加速時における加速度を高くすることができ、運転者の加速要求に応じた加速度で車両を加速させることができるようにしている。
以上のように燃料噴射圧力を上昇させることにより、気筒内での燃焼開始初期時における熱発生率の単位時間当たりの増大量を大きくでき(熱発生率波形の傾斜角度を大きくでき)、且つ同一噴射量を得るための噴射期間を短くすることができて燃焼期間を短縮化できる(熱発生率の低下を早いタイミングに設定することができる)。つまり、クランク角度の進み度合いに対して熱発生率波形の位相を短くできる(熱発生率の低下タイミングを進角側に移行できる)。また、熱発生率のピーク値(熱発生率波形の極大値)も高く得ることができる。このように、燃料圧力を一時的に上昇させることで、熱発生率波形を、運転者が要求する車両の加速要求に適した理想的な波形に近付けることが可能になり、また、吸入空気量やエンジン回転数等の演算処理も必要なくなるので、エンジン回転数の上昇およびエンジントルクの上昇に伴って車両を迅速に加速させることができる。
尚、図14に示す熱発生率波形では、メイン噴射の噴射開始タイミングを、ピストン13の圧縮上死点(TDC)よりも進角側(例えばBTDC5°)に設定し、熱発生率の極大値(ピーク値)が圧縮上死点(TDC)よりも僅かに遅角側(例えばATDC5°付近)で得られるようにしている。
そして、この燃料圧力上昇制御は、例えばアクセルペダルの踏み込み量が所定量に減少するなどして運転者の加速要求が解除されるまで継続される。つまり、運転者の加速要求が解除されると、燃料圧力の一時的な上昇を解除し、通常の燃料圧力設定動作(図11で示した燃圧設定マップに従った燃料圧力(エンジン回転数とエンジントルクとに従って決定される燃料圧力)の設定動作)に復帰させるようにしている。
以上のような燃料圧力上昇制御が行われることにより、エンジン運転状態が最大トルクライン上に達してエンジン回転数が上昇しない状況となった場合であっても、燃料圧力を一時的に上昇させることで、熱発生率波形を、運転者が要求する車両の加速要求に適した理想的な波形に近付けることができる。このため、エンジン回転数の上昇およびエンジントルクの上昇に伴って車両を迅速に加速させることが可能になり、車両の加速性能の向上を図ることができるようになっている。
−充填効率変更動作−
本実施形態の最も特徴とするところは、上述した燃料圧力上昇制御の開始に伴って実行される充填効率変更動作にある。以下、この充填効率変更動作について説明する。
上記燃料圧力上昇制御によって一時的に燃料圧力が上昇すると、それに連動して吸気の充填効率を上昇させる充填効率変更動作を開始する。具体的には、上記ノズルベーン96,96,…の開度を小さくするように可変ノズルベーン機構9の制御を行う。これにより、タービンホイール52cに向かって流れる排気ガスの流速が増加し、排気ガスの熱エネルギから回転エネルギへの変換量が大きくなり、エンジントルクが増大していくことになる(充填効率変更手段による吸気の充填効率変更動作)。
図12における点X,Y,Zは、図11における点X,Y,Zに対応するものであり、上記運転者によるアクセルペダルの踏み込み量が大きくなって燃料圧力が上昇し(図11および図12における点Xから点Yへの移行動作)、その後、上記燃料圧力上昇制御によって一時的に燃料圧力が上昇した場合の充填効率変の変化(図11および図12における点Yから点Zへの移行動作)を示している。特に、この場合、アクセルペダルの踏み込み量が大きくなることに伴う燃料圧力の上昇(点Xから点Yへの移行動作)によって、上記EGRが実行されるEGR領域(比較的軽負荷の運転領域)から、EGRを非実行とする非EGR領域に移行している。また、図15は、吸気の充填効率とエンジントルクとの関係を示す図であって、図15中に破線で示す曲線は、図11および図12における点Yでの燃料圧力における充填効率とエンジントルクとの関係を示している。また、図15中に実線で示す曲線は、燃料圧力上昇制御によって設定された燃料圧力(図11における点Zでの燃料圧力)における充填効率とエンジントルクとの関係を示している。この図15に示すように充填効率を変化させることに伴ってエンジントルクが変化していく理由は、上記図13を用いて既に説明しているので、ここでの説明は省略する。
この図15に示すように、燃料圧力を変化させた場合、充填効率の最適値(最高トルクが得られる充填効率の値)も、上記燃料圧力を変化させる前の状態とは異なっている。つまり、図11における点Yでの燃料圧力から、点Zでの燃料圧力に変化(燃料圧力を上昇)させた場合には、図15に破線で示す特性から実線で示す特性に変化する。この点を考慮し、本実施形態では、上記燃料圧力上昇制御によって燃料圧力が一時的に上昇した場合、その上昇した燃料圧力において最高トルクが得られる充填効率となるようにノズルベーン96,96,…の開度を小さくするべく可変ノズルベーン機構9の制御を行うようになっている。つまり、燃料圧力上昇制御開始前の燃料圧力状態にある際には、図15における破線上の最高トルクに対応する点Y1の充填効率が得られるようにノズルベーン96,96,…の開度が設定されている。そして、燃料圧力上昇制御が開始されて、上昇した後の燃料圧力状態にある際には、図15における実線上の最高トルクに対応する点Z1の充填効率が得られるようにノズルベーン96,96,…の開度が設定(開度が小さく設定)される。これにより、エンジントルクとしては、図15中のTyからTzに上昇することになる。
図16は、充填効率変更動作を実行する際における、燃料圧力上昇量と、それに対応して設定される充填効率上昇量との関係を示す図である。この図16に示すように、燃料圧力上昇量が大きいほど充填効率上昇量も大きく設定されることになる。
以上のように、本実施形態では、燃料圧力上昇制御によって燃料圧力が一時的に上昇した場合に、その上昇した燃料圧力において最高トルクが得られる充填効率となるようにノズルベーン96,96,…の開度を小さくする充填効率変更動作を行う。これにより、燃料圧力上昇制御による燃料圧力の上昇に伴うトルクアップに加えて、充填効率の最適化によるトルクアップも行われることになり、高いエンジントルクを得ることが可能な充填効率の適正化を図ることができる。
−他の実施形態−
以上説明した実施形態は、自動車に搭載される直列4気筒ディーゼルエンジンに本発明を適用した場合について説明した。本発明は、自動車用に限らず、その他の用途に使用されるエンジンにも適用可能である。また、気筒数やエンジン形式(直列型エンジン、V型エンジン等の別)についても特に限定されるものではない。
また、上記実施形態では、マニバータ77として、NSR触媒75およびDPNR触媒76を備えたものとしたが、NSR触媒75およびDPF(Diesel Paticulate Filter)を備えたものとしてもよい。
また、上記実施形態では、エンジン運転領域の全域に亘って、等燃料噴射圧力ラインを等パワーラインに割り付けていた。本発明は、これに限らず、エンジン運転領域の一部分(例えば最大トルクラインTmaxの近傍)では、等燃料噴射圧力ラインが等パワーラインに不一致となる領域が設けられていてもよい。
また、上述した実施形態では、燃料圧力上昇制御開始時における燃料圧力の目標値としては、アクセルペダルの踏み込み量に応じたパワー(エンジン出力)が得られるように、図11上のパワーラインに割り付けられた燃料噴射圧力を目標燃料圧力として設定していた。本発明は、これに限らず、車両の加速性能をよりいっそう向上させるために、アクセルペダルの踏み込み量に応じた図11上のパワーラインに割り付けられた燃料噴射圧力よりも高い燃料噴射圧力を目標燃料圧力として設定するようにしてもよい。
また、上述した実施形態では、登坂路走行中に、運転者に加速要求が生じてアクセルペダルの踏み込み量が大きくなった際に実行される燃料圧力上昇動作に伴って上記充填効率変更動作を実行する場合について説明した。本発明はこれに限らず、その他の要因で燃料圧力を上昇させる場合にも、それに伴って上記充填効率変更動作を実行するようにしてもよい。例えば、EGR量の増加かに伴ってエンジントルクが低下する状況で、エンジントルクを上昇させるために燃料圧力上昇動作が行われる際に、上記充填効率変更動作を実行するようにしてもよい。