JP2009274223A - 塩化ビニリデン系共重合体コーティングフィルム - Google Patents

塩化ビニリデン系共重合体コーティングフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】基材フィルムとの密着性、耐ブラッシング性、ガスバリア性、ボイル熱処理耐性に優れた性能を有する塩化ビニリデン系共重合体コーティング二軸延伸フィルムを提供する。
【解決手段】二軸延伸ポリエステルフィルム(I)の少なくとも片面に、熱架橋剤が共重合されていない塩化ビニリデン系共重合体(II)層がプライマー層を介さずに塗布形成されたフィルム(III)であって、塩化ビニリデン系共重合体(II)が2種以上の塩化ビニリデン系共重合体混合物からなり、そのうちの1種の塩化ビニリデン系共重合体Aの結晶融点が170℃以上210℃以下の範囲であり、かつ塩化ビニリデン系共重合体Aが塩化ビニリデン系共重合体混合物100質量部に対し25〜45質量部含んでなることを特徴とするコーティング二軸延伸フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、基材フィルムとの密着性、耐ブラッシング性、ガスバリア性、ボイル熱処理耐性に優れた性能を有する塩化ビニリデン系共重合体コーティング二軸延伸フィルムに関するものである。
塩化ビニリデン系共重合体は、その皮膜の優れたガスバリア性のため、食品包装用または工業用のフィルムなどに広く利用されている。
塩化ビニリデン系共重合体の皮膜は、ラテックスを基材とするプラスチックフィルム(以下、基材フィルムという。)に塗布することにより形成されるが、塩化ビニリデン系共重合体ラテックスは一般的に、基材フィルムとの接着性が不十分である。そのため、基材フィルムにコロナ放電処理やプラズマ処理などの物理的処理または酸、アルカリなどの化学薬品を使用してフィルム表面を活性化させる化学的処理を施すことにより基材フィルムの表面改質を図り、塩化ビニリデン系共重合体ラテックスとの接着性を高める試みがなされている。しかし、物理的処理による方法は、工程は簡便であるが得られる接着性は不十分であり、また化学的処理による方法は、工程が複雑となり作業環境が悪化などの問題がある。
上記の物理的、化学的処理方法とは別に、基材フィルムに接着活性を有する下塗り剤を塗布して、易接着塗膜(以下プライマー層という)を積層する方法があるが、この方法は各種の塩化ビニリデン系共重合体ラテックスに応じてプライマー成分が選択できることなどから広く利用されている。(特許文献1)しかし、プライマー層による方法は、接着性は得られるが、工程が少なくとも1工程余分に必要となり、工程の複雑化やコスト面からも、必ずしも有効な手段とは言えない。
特許文献2には、塩化ビニリデン系共重合体へのニトリル基導入などにより印刷インキとの接着性の改善、特許文献3には、水酸基の導入などにより剥離剤との接着性の改善が提案されているが、基材フィルム、特に表面改質処理の施されていない基材フィルムとの接着性については不十分なものである。
また、配向結晶化終了前の基材フィルムに塩化ビニリデン系共重合体ラテックスを塗布した後、フィルム延伸時の高熱量により処理するいわゆるプレコート法が、形成された皮膜のガスバリア性を高めるといった観点から広く用いられている(特許文献4)。しかし、このプレコート法で高温により融着されたラテックス皮膜は、フィルム成形直後の巻き取り時は柔らかい状態にあり、経時によりフィルムロールの巻き締り現象などで、皮膜と相接する基材フィルムの非コート面との間に接圧が加わることにより、ブロッキング現象を生じる。その結果、フィルムを巻き取りロールから繰り出す際に皮膜表面が粗面化され、コートフィルムの光学的均一性が失われるという欠点がある(ブラッシング現象)。
特許文献5には、フィルム成形後の巻物状態においてエージング状態を調整することによってブラッシング現象を改善する方法が提案されている。しかしこの方法では、エージング室のコントロールプログラムが複雑で、工程管理や連続運用といった面からも、有効な手段とは言えない。
特許文献6、特許文献7には、エポキシ基を有する架橋剤を共重合させた塩化ビニリデン系共重合体ラテックスが提案されている。該ラテックスを使用することにより皮膜の耐ブラッシング性は得られるが、塩化ビニリデン系共重合体樹脂皮膜がフィルム延伸時の高熱量によって高度に架橋されることにより、弾性が低下し基材フィルムとの接着性については不十分なものであった。
特許文献8、特許文献9には、高結晶性の塩化ビニリデン系重合体を少量混合するラテックスが提案されている。該ラテックスを使用することにより、耐ブラッシング性は得られるが、高結晶性であるため一定の添加量以上となると混合ラテックスの融着不良によりガスバリア性の低下が発生し、また皮膜は高剛性化される方向のため基材熱可塑性フィルムとの接着性がさらに悪化する、といった点で全ての性能を満足するものではなかった。
近年、包装形態や用途の多様化により、フィルムに求められる要求特性が高まっている。特に、基材フィルムとの密着性、耐ブラッシング性、ガスバリア性、ボイル熱処理耐性、コスト面、工程の簡略化、などに対しては以前とは比べ物にならないほど要求が厳しくなっており、当然全ての要求特性を同時に満足するものでなければならない。
特開平8−238728号公報 特開昭62−256871号公報 特開平8−239536号公報 特開昭58−158247号公報 特開昭59−93324号公報 特開昭58−176235号公報 特開昭61−167528号公報 特公昭58−7664号公報 特開昭56−5844号公報
本発明は、基材フィルムとの密着性、耐ブラッシング性、ガスバリア性、ボイル熱処理耐性に優れた性能を有する塩化ビニリデン系共重合体コーティング二軸延伸フィルムを提供するものである。
本発明者らは、皮膜として使用する塩化ビニリデン系共重合体組成とフィルム延伸塗工技術に着目して鋭意研究を行った結果、両者を制御することで、皮膜性能が改善され、基材フィルムとの密着性、耐ブラッシング性、ガスバリア性、ボイル熱処理耐性の特性が向上することを見出した。
すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
(1)二軸延伸ポリエステルフィルム(I)の少なくとも片面に、熱架橋剤が共重合されていない塩化ビニリデン系共重合体(II)層がプライマー層を介さずに塗布形成されたフィルム(III)であって、塩化ビニリデン系共重合体(II)が2種以上の塩化ビニリデン系共重合体混合物からなり、そのうちの1種の塩化ビニリデン系共重合体Aの結晶融点が170℃以上210℃の以下の範囲であり、かつ塩化ビニリデン系共重合体Aが塩化ビニリデン系共重合体混合物100質量部に対し25〜45質量部含んでなることを特徴とするコーティング二軸延伸フィルム。
(2)ポリエステルフィルム(I)と塩化ビニリデン系共重合体(II)層間の密着強力が、常態、95℃30分熱水処理後ともに1.0N/cm以上であることを特徴とする(1)記載のコーティング二軸延伸フィルム。
(3)(1)または(2)に記載のコーティング二軸延伸フィルムにおいて、塩化ビニリデン系共重合体(II)層上に、印刷インキ層(IV)を積層してなる積層物。
(4)(1)〜(3)いずれかの積層物において、塩化ビニリデン系共重合体(II)層に直にまたは、印刷インキ層(IV)を介して、ラミネート接着剤層(V)、ヒートシール層(VI)の順に積層してなる積層物。
(5)塩化ビニリデン系共重合体(II)ラテックスを、未延伸もしくは一軸延伸されたポリアミドフィルム上に塗布した後、二軸延伸あるいは一軸延伸した後150〜250℃の温度範囲で熱固定処理することを特徴とする(1)または(2)に記載のコーティング二軸延伸フィルムの製造方法。
(6)(5)において、熱固定処理温度が、150〜250℃であって、かつ、[熱固定処理温度]−[塩化ビニリデン系共重合体Aの結晶融点]≦50(℃)を満足する範囲であることを特徴とするコーティング二軸延伸フィルムの製造方法。
(7)塩化ビニリデン系共重合体(II)ラテックスを未延伸または一軸延伸されたポリエステルフィルム上に塗布した後、二軸延伸または一軸延伸することによって請求項1または2に記載のコーティング二軸延伸フィルムを製造する方法において、塩化ビニリデン系共重合体(II)ラテックスの塗布工程後の未延伸または一軸延伸されたポリエステルフィルムの結晶化度が20%以下となるように調整することを特徴とするコーティング二軸延伸フィルムの製造方法。
本発明によれば、基材フィルムとの密着性、耐ブラッシング性、ガスバリア性、ボイル熱処理耐性の全てにおいて優れた性能を有する塩化ビニリデン系共重合体コーティング二軸延伸フィルムが得られる。基材フィルムとの密着性が向上されたことにより、ラミネート構成袋とした場合、落下などへの耐性が著しく改善され、輸送などの流通面で大きなメリットが得られる。さらに、印刷インキや接着剤、ポリオレフィン樹脂などとも良好な接着性を示し、接着性はボイル熱水処理後も維持される。またフィルム成形直後の巻き取り時などの接圧下においても、皮膜と相接する基材フィルムの非コート面とのブロッキングが生じることなくコーティング二軸延伸フィルムの光学的均一性が失われないので、包装袋用途における意匠性や内容物を確認できる安全性といった観点から非常に大きなメリットが得られる。このような本発明のフィルムは、包装材料、電気絶縁材料、一般工業材料等として好適に使用することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明における基材フィルムとしての二軸延伸ポリエステルフィルム(I)は、押出法に従い押出口金から溶融押出しされた未延伸ポリエステルシートを縦および横方向の二軸方向に延伸して配向させてなるものである。二軸延伸ポリエステルフィルム(I)は、単一の層から構成されるものであってもよいし、同時溶融押出しやラミネーションによって形成された、複数の層から構成されるフィルムであってもよい。
本発明で用いるポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレン−α,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボキシレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート、ポリ乳酸、及びそれらの混合物、共重合体、複合体等が挙げられる。また本発明の効果を阻害しない範囲であれば各種添加剤が混合または共重合されていてもかまわない。特にコストパフォーマンスに優れるポリエチレンテレフタレートが、生産性や性能の面で好ましく用いられる。また、密着性や耐衝撃性の向上や結晶化速度の低減等の目的で、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートの混合物や共重合体なども好ましく用いられる。
フィルムを構成するポリエステル樹脂の極限粘度は、特に制限されるものではないが、溶媒としてフェノール/テトラクロロエタン(等質量混合物)を用い、温度25℃の条件で測定した極限粘度が0.6〜1.0dl/gであることが好ましい。この極限粘度が0.6未満のものはフィルムの力学的特性が著しく低下しやすくなる。また、1.0を超えるものはフィルムの製膜性に支障をきたしやすくなる。
ポリエステル樹脂には、所望により、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、防腐剤などの添加剤を1種あるいは2種類以上添加することができる。これらの添加剤の配合量は、樹脂100質量部当り合計量として0.001〜5.0質量部の範囲が適当である。
ポリエステル樹脂には、包装材等としての強度を確保するために、補強材を配合することができる。補強材としては、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、カーボン繊維、パルプ、コットン・リンター等の繊維補強材;カーボンブラック、ホワイトカーボン等の粉末補強材;ガラスフレーク、アルミフレーク等のフレーク状補強材が挙げられる。これらは1種類でもよいし2種類以上併用してもよい。補強材の配合量は、樹脂100質量部当り合計量として2〜150質量部の範囲が適当である。
ポリエステル樹脂には、増量等の目的で、重質または軟質の炭酸カルシウム、雲母、滑石、カオリン、石膏、クレイ、硫酸バリウム、アルミナ粉、シリカ粉、炭酸マグネシウム等の充填剤を配合することができる。これらの充填剤は、1種類あるいは2種類以上を使用でき、樹脂100質量部当り合計量として5〜100質量部の範囲が適当である。
本発明において、ポリエステルフィルム(I)と塩化ビニリデン系共重合体(II)層との層間密着性を良好に保つため、最終延伸工程直前の基材フィルム、つまり同時二軸延伸法では未延伸シート、逐次二軸延伸法では一軸延伸シート、の結晶化度は20%以下、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5.0%以下である。結晶化度が20%を超えると、延伸応力増大による延伸作業性の低下もしくはフィルム破断を招いたり、剛性化に伴い塩化ビニリデン系共重合体(II)皮膜との応力歪みが生じて層間密着性を低下させたりする傾向にあるため好ましくない。
結晶化度を調整する方法としては、公知の方法が用いられる。例えば、溶融押出しシートを固化する際の冷却条件を調整する方法、溶融押出しシートと冷却ロールとの間の空気層の厚みを制御する方法、パスロールまたは一方向に延伸する工程の温度条件を調整する方法、塩化ビニリデン系共重合体ラテックスの水分を蒸発乾燥する工程の温度条件を調整する方法、などが用いられる。この中でも、塩化ビニリデン系共重合体(II)ラテックスの水分を蒸発乾燥する工程の温度条件を調整する方法が、結晶化度を低く抑えるために好ましく用いられる。
ポリエステルフィルムの二軸方向の延伸配向方法については、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法等が採用されるが、最終延伸工程直前の熱可塑性樹脂シートの結晶化度をより低く抑えることが可能なため、同時二軸延伸法が特に好ましい。同時二軸延伸法としては、未延伸シートを通常60〜150℃、好ましくは70〜140℃の延伸温度で、機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法である。延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜20倍である。
逐次二軸延伸法としては、ポリエステル樹脂未延伸シートをまずは一方向に、ロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は60〜140℃、好ましくは70〜130℃であり、延伸倍率は2.5〜6倍、好ましくは2.5〜3.5倍である。延伸温度または延伸倍率が高い場合は、一軸延伸シートの結晶化度が高くなるため好ましくない。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸を行う。延伸温度は通常60〜150℃、好ましくは70〜140℃であり、その時の延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。
上記した逐次二軸延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。また、必要に応じて熱処理を行う前または後に再度縦および/または横方向に延伸してもよい。
得られた延伸フィルムを引き続き、150〜250℃、好ましくは170〜245℃、より好ましくは190〜240℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱固定処理を行う。熱固定処理工程の最高温度が150℃未満であると、延伸配向フィルムの熱寸法安定性に劣ったり、あるいは塩化ビニリデン系共重合体(II)皮膜の溶解融着性が劣ることによりガスバリア性が低下したり基材フィルムとの密着性が低下したりする傾向がある。また250℃を超えると、場合によってはポリエステル樹脂が融点以上となり延伸フィルム製造が困難となったり、あるいは塩化ビニリデン系共重合体(II)の結晶核がすべて溶解されてしまい耐ブラッシング効果が損なわれる傾向がある。また熱固定処理工程は異なる温度分布に区切られていてもよく、そのなかの最高温度を示す処理工程にかける時間は、基材フィルムや塩化ビニリデン系共重合体(II)皮膜の厚みや比熱によって任意に選択されるが、通常は0.01〜30秒、好ましくは1〜20秒である。0.01秒未満であると延伸配向フィルムの熱寸法安定性が低下したり、あるいは被熱媒体である塩化ビニリデン系共重合体(II)皮膜が所定の温度まで到達せず皮膜の溶解融着が不十分となりガスバリア性や基材フィルムとの密着性が低下する傾向がある。また30秒を超えると、場合によってはポリエステル樹脂が融点以上となり延伸フィルム製造が困難となったり、塩化ビニリデン系共重合体(II)の結晶核がすべて溶解して耐ブラッシング効果が低下する傾向がある。
このようにして得られたコーティング二軸延伸フィルムは、冷却ゾーンを通過した後、巻き取り機へと連続的に巻き取られるが、このとき、表面温度が結晶融点を超えていると塩化ビニリデン系共重合体(II)皮膜中の再結晶核生成量が少なくなり耐ブラッシング効果が低下する傾向があるため、塩化ビニリデン系共重合体(II)皮膜の表面温度は、塩化ビニリデン系共重合体Aの結晶融点以下であることが好ましい。前記表面温度は、機械などへのダメージや安全性の点で、より好ましくは20〜150℃、特に好ましくは20〜100℃の温度範囲である。
本発明のコーティング二軸延伸フィルム(III)の厚さは特に限定されるものではないが、通常5〜150μm、好ましくは7〜50μm、さらに好ましくは10〜35μmである。フィルムの厚さが5μm未満の場合は、フィルム強度が低下する恐れがあり、印刷やラミネート工程などにおける取扱性なども悪くなる傾向がある。また、フィルムの厚さが150μmを超える場合は、可撓性の低下やコスト的に不利な傾向がある。
本発明において、皮膜として用いる塩化ビニリデン系共重合体(II)は、後述する塩化ビニリデン系共重合体Aを含む2種以上の塩化ビニリデン系共重合体の混合物である。塩化ビニリデン系共重合体は、原料としての塩化ビニリデン50〜99質量%と塩化ビニリデンと共重合可能な1種以上の他の単量体を公知の乳化重合方法によって重合され、媒体に分散したラテックスとして得られる。共重合可能な他の単量体の割合が1質量%未満であると樹脂内部の可塑化が不十分となり皮膜の造膜性が低下し、また他の単量体の割合が50質量%を超えるとガスバリア性が低下するため、ともに好ましくない。また、塩化ビニリデンの比率が高いほど結晶融点が高い塩化ビニリデン系共重合体が得られるので、塩化ビニリデン比率を上記上限に近い比率、例えば、塩化ビニリデンが95〜99質量%の範囲で重合することにより塩化ビニリデン系共重合体Aを得ることができる。一方、塩化ビニリデン系共重合体Aと混合する他の塩化ビニリデン系共重合体は、フィルム製造条件下で連続皮膜を形成するものであることが必要であるため、塩化ビニリデン比率が高すぎるものは好ましくない。通常塩化ビニリデン比率80〜95質量%のものが好ましく用いられる。
塩化ビニリデンと共重合可能な単量体としては、例えば、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、2−エチルへキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジルなどのメタクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらの単量体は1種または2種以上を選択して用いることができる。
また塩化ビニリデン系共重合体(II)は、さらに他の樹脂と組み合わせて用いることができる。他の樹脂として、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル共重合体、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。これらの樹脂は1種または2種以上を選択して用いることができる。
塩化ビニリデン系共重合体(II)には、室温では反応せずに100℃程度以上の高温にて架橋反応が進行する、いわゆる熱架橋剤が共重合されていないことが必要である。なお、熱架橋剤はその機能を発揮する程度の量が共重合されてはじめて熱架橋剤と言え、顕著な架橋効果を示すには0.1質量%を超える量が必要となるため、本発明において「熱架橋剤が共重合されていない」とは、熱架橋剤が0.1質量%以下であることを意味する。熱架橋剤としては、エポキシ基またはメラミン基を有する化合物、前記化合物のメチロール化物あるいはメチルメチロール化物、オキゾリン基を有する化合物などが挙げられる。より具体的には、グリシジルメタクリレート、メチロールメタクリレートなどが挙げられる。熱架橋剤が塩化ビニリデン系共重合体に共重合されると、高度に熱架橋反応が進行することにより皮膜の弾性が低下し、基材フィルムとの密着性が低下する。特に180°剥離における密着性や、剛性の高いヒートシール層と貼り合わせる場合などのようにラテックス皮膜への応力が集中し易い状態での密着性が低下する。
塩化ビニリデン系共重合体(II)には所望により、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、防腐剤などの添加剤を1種あるいは2種類以上添加することができる。さらに増量等の目的で、重質または軟質の炭酸カルシウム、雲母、滑石、カオリン、石膏、クレイ、硫酸バリウム、アルミナ粉、シリカ粉、炭酸マグネシウム等の充填剤を配合することができる。これらの添加剤の配合量は、塩化ビニリデン系共重合体100質量部当り合計量として0.001〜2.0質量部の範囲が適当である。
塩化ビニリデン系共重合体(II)ラテックスには、基材フィルムに塗布する際の塗工性を向上させるために、界面活性剤を添加してもよい。かかる界面活性剤は、ラテックスの基材フィルムへの濡れを促進するものであり、例えばポリエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型界面活性剤、アセチレングリコール等のノニオン型界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤の添加量は特に規定されないが、基材フィルムへの塗工性や密着性を考慮するとラテックス表面張力が30〜48mN/m(デュヌイ表面張力計:20℃円環法表面張力)の範囲となる量であることが好ましい。ラテックス表面張力が30mN/m未満であると、ラテックスの泡立ちが激しくなったりラテックスの分散性が悪化する傾向がある。48mN/mを越えると基材フィルムへの均一な塗工や皮膜形成性が困難となったり基材フィルムとの密着性や親和性が低下する傾向がある。
塩化ビニリデン系共重合体(II)ラテックスの固形分濃度は、塗装装置や乾燥・加熱装置の仕様によって適宜変更され得るものであるが、希薄な溶液では乾燥に長時間を要し、濃度が高すぎると、保存時に皮膜形成が進行し液ポットライフが短くなったり、塗工が困難になるなどの問題を生じ易い。このような観点から、塩化ビニリデン系共重合体(II)ラテックスの固形分濃度は10〜70質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは30〜55質量%の範囲である。
塩化ビニリデン系共重合体Aは、主として耐ブラッシング性の向上のために添加され、塩化ビニリデン系共重合体(II)を構成する塩化ビニリデン系共重合体混合物中でもっとも高い結晶融点を示すものである。塩化ビニリデン系共重合体Aは、その結晶融点として、170℃以上210℃以下、より好ましくは180℃以上210℃以下の範囲を有する。塩化ビニリデン系共重合体Aの結晶融点が210℃を超えると皮膜の溶解融着性が悪くなりガスバリア性が低下し、また170℃を下回ると形成された塩化ビニリデン系共重合体ラテックスAの結晶核が熱処理時にほぼ溶融される結果、十分な耐ブラッシング効果が得られない。
塩化ビニリデン系共重合体Aの結晶融点は、フィルム延伸製造工程における熱処理最高温度以下であることが好ましい。また、塩化ビニリデン系共重合体ラテックスAの結晶核の溶融を抑制するために、フィルム延伸製造工程における熱処理最高温度を、[熱処理最高温度]−[塩化ビニリデン系共重合体Aの結晶融点]≦50(℃)を満足する範囲とすることがより好ましい。フィルム延伸製造工程における熱処理最高温度は、一般に熱固定処理時の温度である。熱固定処理温度が塩化ビニリデン共重合体Aの結晶融点との温度差において50℃を超えると、延伸工程中にフィルムが切断したり、フィルムが得られても耐ブラッシング性が低下する傾向にある。
塩化ビニリデン系共重合体Aの割合は、塩化ビニリデン系共重合体(II)を構成する塩化ビニリデン系共重合体混合物100質量部に対し25〜45質量部とすることが必要であり、好ましくは35〜45質量部である。Aの割合が25質量部未満であると耐ブラッシング効果に劣り、45質量部を超えると皮膜の造膜性が低下しガスバリア性が低下する。
塩化ビニリデン系共重合体(II)ラテックスの基材フィルムへの塗布は、未延伸フィルムもしくは未延伸フィルムを縦横いずれかの方向に延伸した1軸延伸フィルムのいずれのフィルムにあっても、製造工程の任意の段階で実施することができる。基材フィルムに塩化ビニリデン系共重合体(II)ラテックスを塗布したのちそのまま延伸処理と皮膜形成処理を同時に実施する方法や、ラテックスを塗布したのち熱風吹付けや赤外線照射などにより塩化ビニリデン系共重合体(II)ラテックスの水分を蒸発乾燥して熱融着させる工程を経たのち、延伸処理と皮膜形成処理を同時に施す方法などが用いられる。延伸処理前にあらかじめ塩化ビニリデン系共重合体(II)ラテックスの結晶核の形成を促進させることのできる後者の方法が耐ブラッシング性の点でより好ましい。その水分蒸発乾燥工程の温度としては、70℃〜150℃であることが好ましく、より好ましくは塩化ビニリデン系共重合体(II)ラテックスの造膜性が良い80℃〜120℃の範囲である。乾燥温度が70℃未満であると造膜性が下がり、また150℃を越えるとラテックスの激しい温度上昇に伴い突沸現象が生じて、均一な皮膜が得られなくなる。水分蒸発乾燥工程は異なる温度分布に区切られていてもよく、そのなかの最高温度を示す処理工程にかける時間は、基材フィルムや塩化ビニリデン系共重合体(II)層の厚み、ラテックスの固形分量や比熱などによって任意に選択されるが、通常は0.01〜120秒、好ましくは1〜80秒である。0.01秒未満であると塩化ビニリデン系共重合体(II)ラテックスの水分蒸発性に劣ったり、塩化ビニリデン系共重合体(II)皮膜の造膜が不十分となる傾向がある。また120秒を超えると、ポリエステル樹脂の結晶化が過度に促進されて延伸フィルム製造が困難となったりラテックス皮膜との密着性が低下する傾向がある。
塩化ビニリデン系共重合体(II)ラテックスを基材フィルムに塗布する方法は特に限定されないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティング、ダイコーティング、カーテンダイコーティング等の方法を用いることができる。
本発明のコーティング二軸延伸フィルムにおいて、塩化ビニリデン系共重合体(II)層の膜厚は0.1〜3.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜2.0μmである。皮膜が0.1μm未満であるとガスバリア性が不十分となり、3.0μmを超えると造膜性が低下して皮膜の外観が損なわれる傾向がある。
本発明のコーティング二軸延伸フィルムは、その塩化ビニリデン系共重合体(II)層上に直に、または印刷インキ層(IV)を介してラミネート接着剤層(V)、さらにその上にヒートシール層(VI)の順に積層して、ラミネート積層物(VII)を形成することができる。また塩化ビニリデン系共重合体(II)層とラミネート接着剤層(V)もしくは印刷インキ層(IV)との間の密着性を向上させるために、塩化ビニリデン系共重合体(II)層には、コロナ処理、オゾン処理などの表面処理が施されてもよい。
印刷インキ層(IV)は、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、塩化ビニル系等のインキバインダー樹脂に各種顔料、体質顔料及び可塑剤、乾燥剤、安定剤等の添加剤などが添加されてなるインキにより形成される層であり、例えば、文字、絵柄等の印刷層である。印刷インキ層の形成方法としては、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアーコート等の塗布方式を用いることができる。
ラミネート接着剤層(V)は、コート剤により形成される。コート剤は、公知のものであってもよく、例えば、イソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、ポリオレフィン系、アルキルチタネート系等のコート剤が挙げられる。これらの中で密着性、耐熱性、耐水性などの効果を勘案すると、イソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系のコート剤が好ましく、イソシアネート化合物、ポリウレタンおよびウレタンプレポリマーの1種または2種以上の混合物および反応生成物、ポリエステル、ポリオールおよびポリエーテルの1種または2種以上とイソシアネートとの混合物および反応生成物、またはこれらの溶液または分散液であることが好ましい。ラミネート接着剤層(V)の厚みは、ヒートシール層(VI)との密着性を充分高めるためには0.1μmより厚くすることが好ましい。ラミネート接着剤層(V)の形成方法は特に限定されないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティング等の方法を用いることができる。
ヒートシール層(VI)は、袋状包装袋などを形成する際の熱接着層として設けられるものであり、熱シール、高周波シールなどのシール方法が適用可能な材料が使用される。例えば低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸塩共重合体、エチレン−アクリレート共重合体などが挙げられる。厚みは目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmである。
ラミネート接着剤層(V)とヒートシール層(VI)の形成には、ドライラミネーション法、ウエットラミネーション法、無溶剤ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法などのラミネーション法や、二つ以上の樹脂層を同時に押出し積層する共押し出し法、コーターなどで膜を生成するコーティング法などが用いられるが、密着性、耐熱性、耐水性などを勘案するとドライラミネーション法が好ましい。
本発明のコーティング二軸延伸フィルムは優れた加工性を有しているとともに、形成された塩化ビニリデン共重合体皮膜が、基材フィルムとの密着性、耐ブラッシング性、ガスバリア性、ボイル熱処理耐性に優れているので、包装材料、電気絶縁材料、一般工業材料等として好適に使用することができる。
以下、本発明を実施例により詳述する。なお、本発明において各種の物性の測定方法、評価方法は以下の通りである。
(1)結晶化度
ポリエステルフィルムサンプルを採取し、5×5mm程度の大きさに切り取り、25℃に管理された恒温水槽にn−ヘプタンと四塩化炭素からなる密度勾配管を作成し、試験片を投入して24時間後の読み取り密度dを測定した。ポリエチレンテレフタレートの非晶密度1.335および結晶密度1.455を用いて、次の式により算出した。
結晶化度(%)=(d−1.335)/(1.455−1.335)×100
なお、ポリエステルフィルムに塩化ビニリデン系共重合体層が形成されている場合は、THFを含浸させた脱脂綿にてこの層を拭き取って除去して評価に供した。
(2)塩化ビニリデン系共重合体の結晶融点
示差走査熱量測定計(DSC:PERKIN ELMER社 DSC−60)を用いて、塩化ビニリデン系共重合体ラテックスの乾燥皮膜2mgを一定速度(10℃/分)で室温から230℃まで昇温した時に得られるチャートの吸熱ピークの頂点から求めた。
(3)基材フィルムとの密着性
[ラミネートフィルムの調製]
コーティング二軸延伸フィルムの塩化ビニリデン系共重合体層の表面にグラビアロールにて乾燥塗布量が3.0g/mとなるように一般・ボイル用途向けのドライラミネート接着剤(DIC社製 ディックドライ LX401S/SP60)を塗布したのち80℃で熱処理をおこない、未延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ社製、RXC−21、50μm)を80℃に加熱した金属ロール上で490kPaのニップ圧力でドライラミネートした。接着剤推奨のエージングを施し、ラミネートフィルムを得た。
[ラミネート強力の測定]
ラミネートフィルムから巾15mmの試験片を採取し、20℃、65%RH雰囲気中で、試験片の端部からポリプロピレンフィルムとコーティング二軸延伸フィルムとの界面を剥離したのち、引張試験機(島津製作所製AGS−100G)を用いて引張速度300mm/minにてポリプロピレンフィルムとコーティング二軸延伸フィルムとがT型をなす状態で剥離したときのラミネート強力を測定した。また、ラミネートフィルムを95℃の熱水処理槽中で30分間浸漬処理を実施した後、同様にラミネート強力を測定し、ボイル処理後の値とした。
[評価]
評価結果は、数値で表すとともに次のように判定した。
A:2.0N/cm以上もしくはシーラントフィルム伸びや基材フィルム切れが発生し、塩化ビニリデン系共重合体層界面の剥離ができない
B:1.5N/cm以上、2.0N/cm未満
C:1.0N/cm以上、1.5N/cm未満
D:1.0N/cm未満
なおラミネート強力測定後のサンプルにおいて基材フィルムである二軸延伸ポリエステルフィルムと塩化ビニリデン系共重合体層との層間で剥離していない場合は、基材フィルムと塩化ビニリデン系共重合体層間の剥離強力は少なくとも測定値以上の値を有しているものと考えられる。
実用的には1.0N/cm以上、すなわち、評価A〜Cであれば問題なく使用できるが、1.5N/cm以上あればより好ましく、2.0N/cm以上あれば最も好ましい。
(4)ガスバリア性
モコン社製酸素バリア測定器(OX−TRAN 2/20)を用いて、温度20℃、相対湿度85%の雰囲気下におけるコーティング二軸延伸フィルムの酸素透過度を測定し、次のように評価した。
A:70ml/m・d・MPa未満
B:70ml/m・d・MPa以上、90ml/m・d・MPa未満
C:90ml/m・d・MPa以上、110ml/m・d・MPa未満
D:110ml/m・d・MPa以上
実用的には110ml/m・d・MPa未満、すなわち、評価A〜Cであれば問題なく使用できるが、90ml/m・d・MPa未満であればより好ましく、70ml/m・d・MPa未満であれば最も好ましい。
(5)耐ブラッシング性の評価
熱固定処理および冷却ゾーン通過直後の2枚のコーティング二軸延伸フィルムを用い、これらのフィルムの塩化ビニリデン系共重合体(II)層同士を重ね合わせ、荷重30kg/10×10cmにて40℃・24時間圧着処理を行った後、密着したフィルムの端部を口出しして引張試験機(島津製作所製AGS−100G)を用いて引張速度100mm/minにて上下フィルムをT型をなす状態で引っ張り剥離した。剥離する際の強力、および剥離したのちのフィルムの目視外観を次のように評価した。
A:剥離強度が100g/10cm未満である。剥離後のフィルム外観異常なし。
B:剥離強度が100g/10cm以上、150g/10cm未満である。剥離後のフィルム外観異常なし。
C:剥離強度が150g/10cm以上、200g/10cm未満である。剥離後のフィルム外観でごく一部分にわずかながらの白化みられる。
D:剥離強度が200g/10cm以上である。剥離後のフィルム外観でほぼ全面的に明確な白化みられる。もしくは、剥離出来ず、フィルムが切れる。
実用的にはA〜Cの状態であれば問題なく使用できるが、Bの状態であればより好ましく、Aの状態がもっと好ましい。Dの状態は実用的に使用できない。
本発明において各種のサンプルの製造方法は以下の通りである。
各種塩化ビニリデン系共重合体ラテックスの製造例を以下に示す。
(A−1)
ガラスライニングを施した耐圧反応容器中に水85質量部、アルキルスルホン酸ソーダ0.15質量部および過硫酸ソーダ0.10質量部を仕込み、脱気した後内容物の温度を55℃に保った。これとは別の容器に塩化ビニリデン97質量部とアクリル酸メチル2質量部とアクリル酸1質量部を計量混合してモノマー混合物を作成した。前記反応容器中にモノマー混合物の10質量部を仕込み攪拌下反応を進行させた。反応容器の内圧が降下することで反応がほとんど進行したことを確認した後、15質量%水溶液のアルキルスルホン酸ソーダ10質量部を圧入し、しかるのちモノマー混合物の残り全量を15時間にわたって連続して定量添加した。得られたラテックスに、20℃における液表面張力が42mN/mとなるように15質量%水溶液のアルキルスルホン酸ソーダを加えた。なお重合収率は99.9%であったため、得られた塩化ビニリデン系共重合体ラテックスの組成は仕込み比にほぼ等しい。このラテックスの固形分濃度は51質量%であった。結晶融点は190℃であった。
(A−2)
塩化ビニリデン96.2質量部とアクリル酸メチル2.3質量部とアクリル酸1.5質量部に変更した以外はA−1と同様の方法にて塩化ビニリデン系共重合体ラテックスを得た。このラテックスの固形分濃度は51質量%であった。結晶融点は180℃であった。
(A−3)
塩化ビニリデン95質量部とアクリル酸メチル3.0質量部とアクリル酸2.0質量部に変更した以外はA−1と同様の方法にて塩化ビニリデン系共重合体ラテックスを得た。このラテックスの固形分濃度は51質量%であった。結晶融点は170℃であった。
(A−4)
塩化ビニリデン98.9質量部とアクリル酸メチル0.6質量部とアクリル酸0.5質量部に変更した以外はA−1と同様の方法にて塩化ビニリデン系共重合体ラテックスを得た。このラテックスの固形分濃度は51質量%であった。結晶融点は210℃であった。
(A−5)
塩化ビニリデン94.5質量部とアクリル酸メチル3.5質量部とアクリル酸2.0質量部に変更した以外はA−1と同様の方法にて塩化ビニリデン系共重合体ラテックスを得た。このラテックスの固形分濃度は51質量%であった。結晶融点は166℃であった。
(A−6)
塩化ビニリデン99.5質量部とアクリル酸0.5質量部に変更した以外はA−1と同様の方法にて塩化ビニリデン系共重合体ラテックスを得た。このラテックスの固形分濃度は51質量%であった。結晶融点は213℃であった。
(B−1)
塩化ビニリデン90質量部とアクリル酸メチル9質量部とアクリル酸1質量部に変更した以外はA−1と同様の方法にて塩化ビニリデン系共重合体ラテックスを得た。このラテックスの固形分濃度は51質量%であった。結晶融点は140℃であった。
(B−2)
塩化ビニリデン86質量部とアクリル酸メチル13質量部とアクリル酸1質量部に変更した以外はA−1と同様の方法にて塩化ビニリデン系共重合体ラテックスを得た。このラテックスの固形分濃度は51質量%であった。結晶融点は120℃であった。
(C−1)
塩化ビニリデン90質量部とアクリル酸メチル6質量部とアクリル酸1質量部とグリシジルメタクリレート3質量部に変更した以外はA−1と同様の方法にて塩化ビニリデン系共重合体ラテックスを得た。このラテックスの固形分濃度は52.5質量%であった。この塩化ビニリデン系共重合体ラテックスにはエポキシ基由来の熱架橋剤が3質量部共重合されている。結晶融点は142℃であった。
得られた塩化ビニリデン系共重合体ラテックスの原料組成と塩化ビニリデン系共重合体の結晶融点を表1に示す。
実施例1
ラテックスA−1とB−1とを攪拌混合して混合ラテックスを得た。ここで、A−1の塩化ビニリデン系共重合体量が、混合ラテックスに含まれる塩化ビニリデン系共重合体全量100質量部に対して25質量部となるようにした。
一方、ポリエチレンテレフタレートチップを押出機に投入し、温度280℃に加熱したシリンダー内で溶融し、Tダイオリフィスよりシート状に押し出し、10℃に冷却された回転ドラムに密着させて急冷し、厚さ120μmの未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
次いで、未延伸フィルムの未処理面に前記の混合ラテックスをエアーナイフコーティング法により塗布し、温度110℃の赤外線照射機により30秒間乾燥処理を行いラテックス中の水分を蒸発乾燥した。このときの未延伸シートの結晶化度は3.0%であった。
続いて、温度85℃の同時二軸延伸機に導き、縦3.3倍、横3.0倍の倍率で同時二軸延伸を施した。続いて、温度220℃で5秒間熱風固定処理と横方向に5%の弛緩処理を行ったのち、フィルム表面温度40℃まで冷却処理し、ポリエチレンテレフタレートフィルム厚み12μmコート厚み1.2μmのコーティング二軸延伸フィルムを得た。
得られたコーティング二軸延伸フィルムのガスバリア性、耐ブラッシング性、および基材フィルムとの密着性の評価を行った。結果を表2に示した。
実施例2〜13
用いる塩化ビニリデン系共重合体ラテックスの種類と樹脂比率、および熱風固定処理温度を表2のように変更した以外は実施例1と同様にしてコーティング二軸延伸フィルムを得た。得られたコーティング二軸延伸フィルムのガスバリア性、耐ブラッシング性、および基材フィルムとの密着性の評価を実施例1と同様に行い結果を表2に示した。
実施例14
実施例1で得られたコーティング二軸延伸フィルムの塩化ビニリデン系共重合体皮膜面にグラビアロールにて乾燥塗布量が1.0g/mとなるように一液型のウレタン系ラミネートインキ(東洋インキ製造社製 ファインスターR631白)を塗布したのち60℃で熱処理を行った以外は実施例1と同様に基材フィルムとの密着性の評価を行い結果を表2に示した。
実施例15
ポリエチレンテレフタレートチップを押出機に投入し、温度280℃に加熱したシリンダー内で溶融し、Tダイオリフィスよりシート状に押し出し、10℃に冷却された回転ドラムに密着させて急冷し、厚さ120μmの未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
続いて、周速の異なる加熱ローラ群からなる温度110℃の縦延伸機により縦2.7倍で縦延伸を施した。この縦一軸延伸フィルムの未処理面に実施例1で作成した混合ラテックスをエアーナイフコーティング法により塗布し、温度110℃の赤外線照射機により30秒間乾燥処理を行いラテックス中の水分を蒸発乾燥した。この未延伸シートの結晶化度は15%であった。
続いて、温度95℃の横延伸機に導き、横3.8倍の倍率で逐次二軸延伸を施した。続いて、温度220℃で5秒間熱風固定処理と横方向に5%の弛緩処理を行ったのち、フィルム表面温度40℃まで冷却処理し、ポリエチレンテレフタレートフィルム厚み12μmコート厚み1.2μmのコーティング二軸延伸フィルムを得た。
得られたコーティング二軸延伸フィルムのガスバリア性、耐ブラッシング性、および基材フィルムとの密着性の評価を行った。結果を表1に示した。
比較例1〜7
用いる塩化ビニリデン系共重合体ラテックスの種類と樹脂比率、および熱風固定処理温度を表2のように変更した以外は実施例1と同様にしてコーティング二軸延伸フィルムを得た。得られたコーティング二軸延伸フィルムのガスバリア性、耐ブラッシング性、および基材フィルムとの密着性の評価を実施例1と同様に行い結果を表2に示した。
実施例1〜13、15はいずれも耐ブラッシング性、基材との密着性、ガスバリア性において問題のない優れたコーティングフィルムが得られた。実施例14においても、密着性は良好であった。
一方、比較例1は、ビニリデン共重合体Aの混合比率が本発明で規定する範囲を下回ったため、耐ブラッシング性に問題があった。
比較例2は、ビニリデン共重合体Aの混合比率が本発明で規定する範囲を上回ったため、基材フィルムとの密着性に劣り、ガスバリア性も不十分であった。
比較例3は、ビニリデン共重合体Aの結晶融点が本発明で規定する範囲を下回っていたため、耐ブラッシング性に劣っていた。
比較例4は、ビニリデン共重合体Aの結晶融点が本発明で規定する範囲を上回っていたため、基材フィルムとの常態での密着性に劣り、ガスバリア性も不十分であった。
比較例5、6は、ラテックスとして熱架橋剤が共重合されたものを用いたので、基材フィルムとの密着性に劣ったものとなった。
比較例7は、ビニリデン共重合体Aのみの組成であり、本発明で規定する混合物組成と異なっていたため、造膜性に劣り出来上がったフィルムの状態は、ビニリデン共重合体皮膜にクラックが発生していたため、白化していた。
比較例8は、ビニリデン共重合体Bのみの組成であり、本発明で規定する混合物組成と異なっていたため、耐ブラッシング性に劣っていた。
参考例1は、コーティング二軸延伸フィルムとしては本発明の実施例に相当するものであるが、熱固定処理温度が250℃を超えた製造条件を採用したため、フィルム破断が発生し製造が出来なかった。
参考例2は、コーティング二軸延伸フィルムとしては本発明の実施例に相当するものであるが、熱固定処理温度が150℃を下回る製造条件を採用したため、耐ブラッシング性に問題があった。
参考例3は、コーティング二軸延伸フィルムとしては本発明の実施例に相当するものであるが、熱固定処理温度がビニリデン共重合体Aの結晶融点との温度差において50℃を超えた製造条件を採用したため、耐ブラッシング性に問題があった。

Claims (7)

  1. 二軸延伸ポリエステルフィルム(I)の少なくとも片面に、熱架橋剤が共重合されていない塩化ビニリデン系共重合体(II)層がプライマー層を介さずに塗布形成されたフィルム(III)であって、塩化ビニリデン系共重合体(II)が2種以上の塩化ビニリデン系共重合体混合物からなり、そのうちの1種の塩化ビニリデン系共重合体Aの結晶融点が170℃以上210℃以下の範囲であり、かつ塩化ビニリデン系共重合体Aが塩化ビニリデン系共重合体混合物100質量部に対し25〜45質量部含んでなることを特徴とするコーティング二軸延伸フィルム。
  2. ポリエステルフィルム(I)と塩化ビニリデン系共重合体(II)層間の密着強力が、常態、95℃30分熱水処理後ともに1.0N/cm以上であることを特徴とする請求項1記載のコーティング二軸延伸フィルム。
  3. 請求項1または2に記載のコーティング二軸延伸フィルムにおいて、塩化ビニリデン系共重合体(II)層上に、印刷インキ層(IV)を積層してなる積層物。
  4. 請求項1〜3いずれかの積層物において、塩化ビニリデン系共重合体(II)層に直にまたは、印刷インキ層(IV)を介して、ラミネート接着剤層(V)、ヒートシール層(VI)の順に積層してなる積層物。
  5. 塩化ビニリデン系共重合体(II)ラテックスを、未延伸もしくは一軸延伸されたポリエステルフィルム上に塗布した後、二軸延伸あるいは一軸延伸した後、150〜250℃の温度範囲で熱固定処理することを特徴とする請求項1または2に記載のコーティング二軸延伸フィルムの製造方法。
  6. 請求項5において、熱固定処理温度が、150〜250℃であって、かつ、[熱固定処理温度]−[塩化ビニリデン系共重合体Aの結晶融点]≦50(℃)を満足する範囲であることを特徴とするコーティング二軸延伸フィルムの製造方法。
  7. 塩化ビニリデン系共重合体(II)ラテックスを未延伸または一軸延伸されたポリエステルフィルム上に塗布した後、二軸延伸または一軸延伸することによって請求項1または2に記載のコーティング二軸延伸フィルムを製造する方法において、塩化ビニリデン系共重合体(II)ラテックスの塗布工程後の未延伸または一軸延伸されたポリエステルフィルムの結晶化度が20%以下となるように調整することを特徴とするコーティング二軸延伸フィルムの製造方法。
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