JP2009228416A - 可視光透過性を有する熱線遮蔽シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱可塑性樹脂100重量部に対して、平均短軸径が200〜400nmであり、平均長軸径が1〜4μmであり、且つアスペクト比が5以上を有する棒状酸化チタン微粒子を5〜50重量部配合したことを特徴とする可視光透過性を有する熱線遮蔽シート、および該シートを反射層とし、順次繊維基材層、透過層を積層させた積層状の熱線遮蔽シートである。
【選択図】図1
Description
このような構成からなるターポリンは、熱線の遮蔽性の面では決して良いものではなく、特に半恒久的に使用されるテント倉庫などでは、夏季においては日中の倉庫内温度の上昇が激しく、倉庫内の製品に与える影響は好ましいものではない。また、作業者にとっての作業環境も快適なものとはいえない。
さらに、有事の際に使用される軍事用テントや、災害時に使用される仮設テントなどにあっても同様に、テント内の温度上昇は大きな問題である。
また、この様なシートは、概して光線の透過率が極めて低く、テントとして使用した場合には、日中でもテント内部が真っ暗になってしまい、照明をつける必要があった。特に、テント倉庫等の膜構造物としてシートを使用した場合には、構造物内部での作業に当たっては、日中であっても照明をつけなければならないものであった。
さらに、特許文献1に記載のシートと同様に、可視光域の光まで遮蔽してしまうため、テント等の膜構造物として使用した場合には、構造体の内部が暗くなり、照明をつける必要があった。
しかしながら、当該シートは、熱遮蔽性に優れた効果を発揮するが、可視光線領域における日射透過率が低いものであるため、該シートを用いて構造体とした場合、構造体の内部が暗くなってしまうという問題があった。
反射層が、熱可塑性樹脂100重量部に対して、平均短軸径が200〜400nm、平均長軸径が1〜4μmであるアスペクト比が5以上を有する棒状酸化チタン微粒子を5〜50重量部配合した樹脂層であり、
繊維基材層が、400〜780nmの波長領域における日射透過率が30%以上の織布または編布であり、
透過層が、JIS−A5759の規定をもとに算出される400〜1600nmの波長領域における日射透過率が90%以上である合成樹脂層である、
ことを特徴とする可視光透過性を有する熱線遮蔽シートである。
かかるシートの反射層は、JIS−A5759の規定をもとに算出される、780〜1600nmの波長領域における日射反射率が60%以上であり、400〜780nmの波長領域における日射透過率が10%以上である可視光透過性を有する。
したがって、本発明が提供する熱線遮蔽シートは、テント等のシート状構造体に利用した場合には、太陽光による構造体内部の内温度上昇を抑えることができる。しかも、適度な可視光透過性を有することから、日中においては、構造体内部が明るく、照明を必要としない利点を有する。
次いで、繊維基材の両外層に合成樹脂層を設け、太陽光に暴露される側の合成樹脂層が近赤外線領域の光を高率で反射させ、且つ可視光線領域の光をある程度透過させる層とし、反対側の樹脂層として日射透過性のよい樹脂層を積層させた複層シートについて検討を行なった。
また本発明は、第二の態様として、繊維基材層の両面に合成樹脂層を設け、太陽光に暴露される側の合成樹脂層として、先に検討した近赤外線領域の光を高率で反射させかつ可視光線領域の光をある程度透過させる樹脂層を使用した、いわゆる複層シートである。
以下これらの点を順次説明し、本発明を詳細に説明していく。
780〜1600nmの波長領域は近赤外線領域と称され、該近赤外線領域の光が一般に熱に変換されやすいと言われている。
したがって、可視光領域の光をある程度透過させ、その一方で近赤外線領域の光の吸収を抑えれば、可視光透過性を有しかつ熱線遮蔽性を有するシートが得られることとなる。
すなわち、棒状酸化チタン微粒子を使用することにより、400〜780nmの人の目に見える光(可視光線)はよく透過するが、物体に当たると熱に変わり易い波長領域780〜1600nmの光(近赤外線)はよく反射するシートが得られることが判明した。
この様な現象が現れる理由は定かではないが、ミー散乱とレイリー散乱の理論から、400〜780nmの可視光域の光は、棒状酸化チタンの長軸方向の光を素通りし、短軸方向の光により反射される。そのため、長軸方向の偏光は透過することになる。
また、780〜1600nmの波長領域の光は、短軸方向および長軸方向の両方向の偏光を反射するために、従来の球形状の酸化チタン粒子に比べて反射が多くなるのではないかと思われる。
棒状の酸化チタンとして、可視光線の反射能は短軸径の影響を受け、近赤外線の反射能は長軸径及び短軸径の両者から影響を受ける点を考慮すると、アスペクト比が5未満であると、所望の効果を得ることが困難となる。
また、平均短軸径が200〜400nmの範囲にあるものが、可視光線の反射能及び可視光線の反射とのバランスが優れており、その平均短軸径とアスペクト比により平均長軸径が1〜4μmの範囲内にあるのが好ましいことが判明した。アスペクト比が大きくなりすぎると樹脂への分散性が悪化するので、実質的にはアスペクト比は5〜20が好ましい。
なお、本明細書中における平均長軸径および平均短軸径は、画像解析装置測定による体表面積平均径のことをいう。
また、棒状酸化チタン微粒子は、あらかじめ可塑剤などに分散させたトーナー状態で配合することも任意に実施できる。
これらポリ塩化ビニル系樹脂は、エマルジョン重合法(乳化重合法)、マイクロサスペンジョン重合法、ソープフリーエマルジョン重合法、サスペンジョン重合法(懸濁重合法)などによるものを用いることができ、なかでも、充填材、酸化チタン粒子を多量に入れることができ、可塑剤との混合によりペーストプラスチゾルを形成することが可能なエマルジョン重合法によるものが好ましい。
また、ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とするペーストプラスチゾルを、基材(離型性を有する紙またはフィルム)にコーティングし、加熱固化させることによりシート状に形成してもよい。
日射透過率が30%未満であると、積層シートとして所望の日射透過性が確保できない恐れがある
この糸条は無撚であっても、撚りが掛けられたものであっても良い。この目抜け平織り織布の目付量は、20〜300g/m2のものが適している。また、目抜け平織り織布の空隙率(目抜け度合い)は、10〜85%、特に30〜70%のものが適している。空隙率が85%を越えると、膜材に含まれる糸条の含有量が少なくなりすぎて得られる膜材の寸法安定性と引裂き強度に劣るため、テント膜材などに使用するに不適切となる。また10%未満であると、400〜780nmの波長領域における日射透過率が30%以上を確保しがたい。目抜け度合いを表す空隙率は、目抜け平織り織布の単位面積中に占める糸条の面積を百分率として求め、100から差し引いた値として求めることができる。空隙率は経方向10cm×緯方向10cmを単位面積として求めることが簡便である。
また、透過層の樹脂組成物として、必要に応じて、400〜1600nmの波長領域における日射透過率90%を損なわない範囲において、反射層で添加されるものと同様の紫外線吸収剤、充填材、酸化防止剤、防カビ剤、防曇剤、帯電防止剤、減粘剤、増粘剤などの各種薬品を適宜添加することも可能である。
また、反射層、透過層の両方にポリ塩化ビニル系樹脂ペーストプラスチゾルを用いる場合、離型性を有する紙またはフィルム上に反射層(または透過層)を適宜常法により所定厚みにコーティングし、加熱固化した後、この上に、繊維基材層を積層し、その上にさらに透過層(または反射層)を適宜常法により所定厚みにコーティングし、加熱固化し、その後、上記の剥離紙またはフィルムより剥離することにより、3層積層体を成形することもできる。
さらに、透過層にアクリル系樹脂またはウレタン系樹脂を用いる場合には、反射層のみを離型性を有する紙またはフィルムにコーティングし、繊維基材層を積層した後に剥離して、反射層と繊維基材層の2層シートを作成した後に、別工程で、透過層をラミネーターなどにより積層させることも可能である。
これら薄層は、永久層としてもかまわないし、使用中再度、効果が弱くなった際に再吹付けするようなものであってもかまわない。
特に防汚のための層に関しては、シリコン系、フッ素系の界面活性剤を適宜吹付けることにより、テント等の膜構造物の汚れを防ぎ、長期間綺麗に保つことが可能となる。
[単層シート(反射層:試験例番号R1〜R12)の調製]
下記表1に示す様に、調製した反射層用のポリ塩化ビニル系樹脂ペースト状プラスチゾルを、離型紙上に、所定の厚みとなるようナイフコーティング法によりコーティングし、180℃で2分間加熱固化し、厚み180μmのシートとした。
また、熱可塑性ウレタンエラストマー(TPU)に関しては、樹脂コンパウンドをバンバリーミキサーで混練し、4本ロールカレンダーにて、厚み250μmのシートとした。
[透過層(試験例番号:T1〜T4)の調製]
下記表2に示すように、調製した透過層用のポリ塩化ビニル系樹脂コンパウンドをバンバリーミキサーで混練して、4本ロールカレンダーにて、層厚0.1mmとなるようシート化した。
また、熱可塑性ウレタンエラストマー(TPU)に関しては、反射層と同様に樹脂コンパウンドをバンバリーミキサーで混練して、4本ロールカレンダーにて、層厚0.1mmとなるようシート化した。
シート化したものの分光特性は、前記と同様に自記分光光度計を使用して測定した。
[繊維基材層(試験例番号:B1〜B2)]
繊維基材層として、下記表3に記載の2種の織布を用いた。
(1)塩化ビニル樹脂1(エマルジョン重合ポリ塩化ビニル):新第一塩ビ社製/商品名:PQ−HPN
(2)塩化ビニル樹脂2(サスペンジョン重合ポリ塩化ビニル):ヴイテック社製/商品名:MT−1300
(3)熱可塑性ウレタン樹脂(TPU):日本ミラクトラン社製/商品名:ミラクトランE980
*1:可塑剤(イソノニルフタレート):積水化学工業社製/商品名:DINP
*2:安定剤1(Ba−Zn系複合安定剤):アデカ社製/商品名:アデカスタブAC−183
*3:安定剤(フェノール系酸化防止剤):アデカ社製/商品名:アデカスタブAO−60
*4:酸化チタンA(球状酸化チタン微粒子:粒経200nm)
*5:酸化チタンB(球状酸化チタン微粒子:粒経400nm)
*6:酸化チタンC(棒状酸化チタン微粒子:短軸400nm;長軸3μm)
*7:カーボンブラック:東海カーボン社製/商品名:トーカブラック#8500/F
*8:UV吸収剤1(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤):チバスペシャルティーケミカル社製/商品名:Tinuvin 326
日射吸収率は、日射反射率の場合と同様にして日射透過率を測定し、100%から日射反射率および日射透過率を差し引くことにより算出した。
それらの結果を、以下にまとめて示した。
なお、表4及び表5中、可視光線透過率は波長400〜780nmにおける日射透過率、近赤外線反射率は波長780〜1600nmにおける日射反射率である。
上記で得られた各反射層(試験例番号:R1〜R12)、繊維基材層(試験例番号:B1〜B2)及び透過層(試験例番号:T1〜T4)を組み合わせ積層させ、本発明の積層状の熱線遮蔽シートを調製した。
得られた積層シートについて、可視光線透過率及び近赤外線反射率を求めた。
また、積層シートの遮熱性能試験および照度性能試験を、以下の方法にしたがって行った。
図1に示すような厚み30mmの発泡ポリスチレン(図中、2)で作成した高さ350mm、巾220mm、長さ310mmの大きさの上面以外を囲われた箱の上面に、調製した積層シート(図中、1)を設置し、積層シートの上方300mmの高さから200Wの人工太陽光(ソーラーシュミュレーター:図中、4))灯を40分間照射した後の、底部に置いた黒板(図中、3)の温度を熱電対により測定した。
遮熱性能試験に用いた図1に示すような装置の底部にコニカミノルタ社製T−10型照度計を設置し、平行状態になったときの照度を測定した。
なお、可視光透過率は波長400〜780nmにおける日射透過率、近赤外線反射率は波長780〜1600nmにおける日射反射率である。
本発明が提供する熱線遮蔽シートは、軍事用テント、災害時などの仮設テント、長期間半恒久的に使用されるテント倉庫、トラックの幌などとして好適に用いることができ、とくに、夏季の日中での使用や太陽光線が強い熱帯や砂漠気候下などで用いると効果的であり、その産業上の利用性は大きなものである。
2 発泡ポリスチレン製箱
3 黒板
4 人工太陽灯
Claims (4)
- 熱可塑性樹脂100重量部に対して、平均短軸径が200〜400nm、平均長軸径が1〜4μmであるアスペクト比が5以上を有する棒状酸化チタン微粒子を5〜50重量部配合したことを特徴とする可視光透過性を有する熱線遮蔽シート。
- JIS−A5759の規定をもとに算出される、780〜1600nmの波長領域における日射反射率が60%以上であり、400〜780nmの波長領域における日射透過率が10%以上であることを特徴とする請求項1に記載の可視光透過性を有する熱線遮蔽シート。
- 太陽光に曝露される面から順次、反射層、基材層、透過層となるように積層したシートであって、
反射層が、熱可塑性樹脂100重量部に対して、平均短軸径が200〜400nm、平均長軸径が1〜4μmであるアスペクト比が5以上を有する棒状酸化チタン微粒子を5〜50重量部配合した樹脂層であり、
繊維基材層が、400〜780nmの波長領域における日射透過率が30%以上の織布または編布であり、
透過層が、JIS−A5759の規定をもとに算出される400〜1600nmの波長領域における日射透過率が90%以上である合成樹脂層である、
ことを特徴とする可視光透過性を有する熱線遮蔽シート。 - 前記反射層が、JIS−A5759の規定をもとに算出される、780〜1600nmの波長領域における日射反射率が60%以上であり、400〜780nmの波長領域における日射透過率が10%以上であることを特徴とする請求項3に記載の可視光透過性を有する熱線遮蔽シート。
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