JP2009220342A - ガスバリアフィルムの製造方法及びガスバリアフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】
高いガスバリア性を実現すると同時に従来並の柔軟性をも確保できるガスバリアフィルムを製造するための製造方法、及び該製造方法により得られるガスバリアフィルムを提供する。
【解決手段】
基材となるプラスチックフィルムの表面に、ウェットコーティング法又は気相化学堆積法によりバッファー層を積層するバッファー層積層工程と、前記バッファー層積層工程を終えたバッファー層のさらに表面にガスバリア性を備えたガスバリア層を積層するガスバリア層積層工程と、を備えてなるガスバリアフィルムの製造方法であって、前記バッファー層はテトラエトキシシラン(TEOS)、パーヒドロポリシラザン(PHPS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、等を利用して積層してなる、ガスバリアフィルムの製造方法、及びかかる製造方法により得られるガスバリアフィルムとした。
【選択図】 なし

Description

本発明はガスバリアフィルムを製造するための製造方法に関するものであり、より具体的には高度なガスバリア性を確保しつつ同時に柔軟性をも備えたガスバリアフィルムを製造することを可能とする方法及び該方法により得られるガスバリアフィルムに関する。
従来より種々の画像表示装置や電子ディスプレイ素子用基板、あるいは太陽電池用基板などには、ガスや水蒸気などを透過させない性質(以下「ガスバリア性」とも言う。)が重用であるとされており、そのためにガラス板を用いることが広く行われていた。
確かにガラス板を基板に用いると種々のガスや水蒸気はガラス板を透過しないので、ガラス板の内部に位置するものは外部からの種々のガスや水蒸気等から守られることになる。しかしその一方、ガラス板は容易に破損する、重量が増してしまう、等の取扱上の問題が指摘されてきた。
そこで、割れやすく比較的重いガラス板に対し、屈曲性もあり割れにくくしかも軽量である基板として透明プラスチックフィルムが注目されるようになった。
しかしプラスチックフィルムはガスや水蒸気を透過してしまうため、上述したようなガスバリア性を備えておらず、故にプラスチックフィルムを何ら加工せずそのままの状態でかかる部材に用いることはできなかった。
そこでプラスチックフィルムに何らかの加工や処理を施すことによってガスバリア性を付与したプラスチックフィルム(以下「ガスバリアフィルム」とも言う。)とすることが種々検討開発されてきた。開発初期には金属をプラスチックフィルムの表面に積層することに関する開発がなされてきたが、やがてガスバリア性と同時に透明性をも得ることも重要なテーマとなり、さらにまたガスバリア性を向上させることに対する要望も高まる中で主にプラスチックフィルムの表面に珪素、アルミニウム、インジウム、マグネシウム、等の酸化物や窒化物、酸窒化物、フッ化物などを原材料とする薄膜層を積層することで透明性を確保しつつより高いガスバリア性を得ようとするようになり、そのための研究がさらに種々進められてきた。
このような物質群を単純に透明プラスチックフィルムの表面に積層するには、主に物理的気相成長法(以下「PVD法」とも言う。)、化学的気相成長法(以下「CVD法」とも言う。)、塗布法(以下「ゾル−ゲル法」とも言う。)のいずれかの手法によることが一般的である。そしてこれらの手法の中でも、特にCVD法を用いることがガスバリアフィルムを製造するのに最適であると言える。これは、PVD法による場合、積層する際の確実性が充分ではなく、また高真空条件が必要であり、さらには積層物にクラックが発生しやすい、即ちクラックからガスバリア性が損なわれてしまう、という問題が生じやすく、またゾル−ゲル法であると、溶媒に原料を溶解させて得られた塗液をプラスチックフィルム上に塗布し、しかる後に乾燥させる、という工程よりなるため、特に乾燥時に微細な気泡が発生することにより必要充分なガスバリア性を確保することが大変困難だからである。
このように理論的にはガスバリアフィルムを製造するのにCVD法が、中でもプラズマ化学的気相成長法(プラズマCVD法)と呼ばれる手法を用いることが好適であると言える。これはガスバリアフィルムの基材となるプラスチックフィルムが高熱処理に対し脆弱であるところ、プラズマCVD法において基材に対し加えられる高温とはプラスチックフィルムであっても耐えられる程度の温度だからであり、故にプラスチックフィルム表面に何らかの物質を積層する場合、プラズマCVD法が好ましいと言えるのである。
そしてこのプラズマCVD法であって、収率を向上させ、また製膜速度もそれなりに向上させた手法を提供する発明として、例えば特許文献1にて開示されている。
特開2005−200710号公報
この特許文献1にて開示された発明は、要すればプラズマの放電の仕方を工夫することにより迅速にかつ効率よく蒸着させるための方法であり、かかる手法によれば収率よく迅速にガスバリアフィルムを得ることができる、とされている。
しかしこれだけでは収率よく、かつ迅速にガスバリアフィルムを得られたとして、そもそもの課題である高度なガスバリア性を確保しつつフィルムとしての柔軟性も維持しているガスバリアフィルムを得る、という要望には充分こたえたものとすることはできない。
即ち、この特許文献1に記載された発明は従来品と同等の特性を有したガスバリアフィルムを効率よく製造するものであって、昨今要求の高まってきている、従来品の特性に比してガスバリア性を向上させると同時に従来通りの柔軟性も確保する、という市場の要望にこたえるに至るものではなかった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来のガスバリアフィルムにおいて見られる、ガスバリア性は高いが柔軟性が低い、又は柔軟性は充分あるがガスバリア性を高められない、といった特性に比べ、高いガスバリア性を実現すると同時に従来並の柔軟性をも確保できるガスバリアフィルムを製造するための製造方法、及び該製造方法により得られるガスバリアフィルムを提供することである。
以上の課題を解決するために、本願発明の請求項1にかかる製造方法は、基材となるプラスチックフィルムの表面に、ウェットコーティング法又は気相化学堆積法によりバッファー層を積層するバッファー層積層工程と、前記バッファー層積層工程を終えたバッファー層のさらに表面にガスバリア性を備えたガスバリア層を積層するガスバリア層積層工程と、を備えてなるガスバリアフィルムの製造方法であって、前記バッファー層は、前記ガスバリア層の欠陥を低減させるために設けられるものであって、かつ前記バッファー層はテトラエトキシシラン(TEOS)、パーヒドロポリシラザン(PHPS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、又はその他ポリシラザン、アルコキシシラン、シロキサン系化合物、のいずれか又は複数を利用して積層されてなるものであり、前記バッファー層の表面積と前記プラスチックフィルムの表面積との比率が、原子間力顕微鏡により一辺の長さが2μm四方の観察面積を測定した結果、(バッファー層表面積/プラスチックフィルム表面積)≦1.0008となり、前記ガスバリア層の表面積と前記プラスチックフィルムの表面積との比率が、原子間力顕微鏡により一辺の長さが2μm四方の観察面積を測定した結果、(ガスバリア層表面積/プラスチックフィルム表面積)≦1.0010となること、を特徴とする。
本願発明の請求項2にかかる製造方法は、請求項1に記載のガスバリアフィルムの製造方法であって、前記プラスチックフィルムの表面粗さがJIS B 0601による測定値でRaが100nm以下であること、を特徴とする。
本願発明の請求項3にかかる製造方法は、請求項1又は請求項2に記載のガスバリアフィルムの製造方法であって、前記ガスバリア層が珪素−金属複合体酸化物(SiXO)による層であって、前記珪素チタン複合酸化物における珪素に対するチタンの重量濃度が0.2重量%以上40重量%以下であること、を特徴とする。
本願発明の請求項4にかかる製造方法は、請求項3に記載のガスバリアフィルムの製造方法であって、前記珪素−金属複合体酸化物を構成する金属Xが、チタン、アルミニウム、マグネシウム、又はニオブ、のいずれか若しくは複数であること、を特徴とする。
本願発明の請求項5にかかる製造方法は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法であって、前記バッファー層積層工程を実行する前に、前記プラスチックフィルムの表面に平滑層を積層してなる平滑層積層工程を実行してなり、前記平滑層の表面積と前記プラスチックフィルムの表面積との比率が、原子間力顕微鏡により一辺の長さが2μm四方の観察面積を測定した結果、(平滑層表面積/プラスチックフィルム表面積)≦1.0010となること、を特徴とする。
本願発明の請求項6にかかる製造方法は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法であって、前記ガスバリア層積層工程を実行した後に、前記ガスバリア層のさらに表面に保護層を積層してなる保護層積層工程を実行してなり、前記保護層の表面積と前記プラスチックフィルムの表面積との比率が、原子間力顕微鏡により一辺の長さが2μm四方の観察面積を測定した結果、(保護層表面積/プラスチックフィルム表面積)≦1.0050となること、を特徴とする。
本願発明の請求項7にかかる製造方法は、請求項5又は請求項6に記載のガスバリアフィルムの製造方法であって、前記平滑層又は前記保護層のいずれか若しくは双方がアミノ系樹脂からなるものであり、かつその厚みが50nm〜500nmであること、を特徴とする。
本願発明の請求項8にかかるガスバリアフィルムは、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法により得られてなること、を特徴とする。
以上のように、本願発明にかかるガスバリアフィルムの製造方法であれば、ガスバリア層の欠陥を低減させるためにバッファー層を設けると同時に、バッファー層としてテトラエトキシシラン(TEOS)、パーヒドロポリシラザン(PHPS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、又はその他ポリシラザン、アルコキシシラン、シロキサン系化合物、のいずれか又は複数を利用して積層されてなるためにバッファー層が超平滑状態とすることができることとなり、これは基材フィルムとバッファー層との間に余分な隙間が殆ど発生していないことを意味し、即ちそれらが密着していることを示している。また基材となるプラスチックフィルムの表面粗さがJIS B 0601による測定値でRaが100nm以下であるものを用いると、より一層各層表面が平滑であることより、密着性が良好なものとできる。
またかかるバッファー層が超平滑状態であるので、その表面に積層するガスバリア層も従来より超平滑状態とすることが可能となるが、この場合も前述同様、これらの層が密着していることを示すものであると言える。故に、各層がそれぞれ従来以上に密着することでより一層ガスバリア性を良好なものとできるようになる。特にガスバリア層を珪素−金属複合体酸化物により形成することとすれば超平滑状態を現出しやすくなり、さらには珪素−金属複合体を構成する金属が、チタン、アルミニウム、マグネシウム、又はニオブ、のいずれか若しくは複数であればより一層現出しやすくなる。
さらにガスバリア層をウェットコーティング法又は気相化学堆積法により積層するので柔軟性を有するが、同時にバッファー層にテトラエトキシシラン(TEOS)、パーヒドロポリシラザン(PHPS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、のいずれか又は複数を利用することより、バッファー層自体にも柔軟性が備わるので、本願発明にかかる製造方法によれば高ガスバリア性を備えつつ柔軟性をも確保したガスバリアフィルムを得ることができる。
そして基材とバッファー層との間にさらに平滑層を存在させることでより一層層間密着力を向上させることができ、この平滑層をアミノ系樹脂で形成するとバッファー層との層間密着力はより一層効果的に向上させることが容易に可能となる。
以下、本願発明の実施の形態について説明する。尚、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずもこの実施の形態に限定されるものではない。
(実施の形態1)
本願発明にかかるガスバリア性を有するフィルムであるガスバリアフィルムを製造するための製造方法(以下、単に「製造方法」とも言う。)につき、第1の実施の形態として説明する。
まず本実施の形態にかかる製造方法全体について述べると、基材となるプラスチックフィルムの表面に、ウェットコーティング法又は気相化学堆積法によりバッファー層を積層するバッファー層積層工程と、バッファー層積層工程を終えたバッファー層のさらに表面にガスバリア性を備えたガスバリア層を積層するガスバリア層積層工程と、よりなる製造方法であるが、特に本実施の形態にかかる製造方法ではガスバリア層においどうしても生じてしまう欠陥を出来る限り低減させるためにバッファー層を設ける工程を備えている点が重要である。
以下、順次さらに本実施の形態にかかる製造方法につき説明する。
まず最初に基材となるプラスチックフィルムであるが、これは特段制限されるものではなく普通にガスバリアフィルムの基材として用いられるものであってよく、例えばポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムや、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム等が利用でき、本実施の形態ではPENフィルムを基材フィルムとして用いることとする。これはPENフィルムが寸法安定性及び耐熱性に優れているからであり、製造過程におけるガスバリア膜の欠陥発生が少ないからである。
尚、この基材として用いられるプラスチックフィルムの厚みは12μm以上200μm以下であることが好適であるが、加工中に皺が入りにくい等の利点を考えると100μm以上であればより好ましいと言える。尚、この厚みに関しても従来のガスバリアフィルム用基材として用いられる程度のものであってよい。
また、この基材として用いられるプラスチックフィルムの表面が、JIS B 0601による測定値がRa=100nm以下であるものとするならば、後述するように各層の表面が平滑な上に基材フィルム表面も平滑であることより、各層及び基材フィルムそれぞれの密着性が非常に良好なものとなり、即ち表面平滑性が良好であるために密着も大変好適なものとすることが可能となる。そこで、以下本実施の形態においては基材プラスチックフィルムは上述の条件を満たすものを用いることとするが、本実施の形態において必ずしもそれ以外のものは利用不可というものではないことを断っておく。尚、層間の密着が良好なものとなる、という点に関しては後述する。
本実施の形態にかかる製造方法では基材フィルムの表面にバッファー層を積層するバッファー層積層工程を実行するが、次にこの工程につき説明する。
積層する手法については特段制限するものではないが、本実施の形態ではグラビアコーティング法やロールコーティング法等のいわゆるウェットコーティング法、又は気相化学堆積法を用いると好適に積層が可能となるが、本実施の形態ではグラビアコーティング法により積層することとする。またこの工程においてバッファー層を形成する材料としては、テトラエトキシシラン(TEOS)、パーヒドロポリシラザン(PHPS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、又はその他ポリシラザン、アルコキシシラン、シロキサン系化合物、のいずれか又は複数、特にPHPSを利用すると好適なバッファー層を得ることができる。
この点に関し、PHPSを用いる場合を例にさらに説明をする。
PHPSは大気中の水分と反応して酸化珪素に転化するものであり、本実施の形態ではこの特質を利用する。具体的にはキシレンやジブチルエーテル、ターペン等の有機溶剤に溶解させたPHPSを基材フィルム表面にグラビアコーティング法により塗布することにより基材フィルム表面にPHPSを積層する。そして有機溶剤を揮発させることでPHPSは大気中の水分と反応し自己架橋を行い、その結果PHPSの塗布層は酸化珪素層となる。
ここでグラビアコーティング法を用いることにより、スパッタリング法により酸化珪素を蒸着させて酸化珪素層を得る場合に比してその表面をより一層平滑にすることが容易に可能となる。そしてこのPHPSを積層することにより得られる酸化珪素によるバッファー層の表面が平滑であるということは、結果的にその基材であるプラスチックフィルムと密着している、ということが言えるのであるが、この点につき説明すると、特定された四方に囲まれたプラスチックフィルムの表面積を「1」とした場合、その特定の四方に囲まれた部分と同一の表面に積層された層の表面積が「2」であるならば、対象となる表面積を形作る四方の長さは双方同じであるはずなので、必然的に積層物の表面には皺が発生しており、その皺の分だけ表面積が増加していることとなる。つまり、上記の場合、積層された層の表面積がプラスチックフィルムの表面積の2倍であることより、その分、即ちプラスチックフィルムの表面積と同等の表面積合計を有する余計な皺が発生していることがわかる。そして皺が発生している、ということはその分表面は平滑ではなく、その皺の部分におけるプラスチックフィルムと積層物との間に、本来ならば存在してはならない空間が発生していることが考えられる。即ちこの空間が発生していることこそ、これらが密着していたにことを示すものであり、この考察に基づいて積層物の表面が平滑であればあるほど密着していると判断できるのである。
また仮に皺の部分において上記空間が生じていない現象が生じているならば、それは確かにその部分は密着していることになるが、後述する、さらなる積層物をその表面に積層する場合、発生している皺の部分のさらなる表面部分は決して平滑になることはなく、換言するならば皺部分は略断面視で凸部となっているのでその部分に積層してもその表面は同様に凸部となることは必定であり、表面平滑性を求められるガスバリアフィルムにあってかような現象が発生することは好ましいことではないのである。付言するならば、この皺、凸部の存在故にその部分にピンホールが発生してガスバリア性を低下させてしまう可能性があること、皺、凸部の存在故にその部分を起点としたクラックが発生してしまう可能性があること、等により、いずれにせよ表面は平滑であることが望ましいと言えるのである。
さらに述べるなら、そもそも積層部分表面に凹凸が存在した場合であってその表面にガスバリア層を積層しなおかつガスバリア層がガスバリア性を発揮させるためには、まず凹凸部分を均した上でさらにその表面に均一にガスバリア層を積層する必要があるが、凹凸が存在することにより結果的にガスバリア層全体の厚みが増してしまうこととなり、層の厚みが増えることで可撓性が失われてしまうのであるが、最初から凹凸が存在しない、若しくは微細な程度であれば結果的にガスバリア層の厚みが薄くともガスバリア性は充分に発揮されることが期待できるのであって、この観点からも表面は平滑であることが望ましいのである。
以上の通り本願発明にかかる発明者は酸化珪素をウェットコーティング法により基材フィルム表面に直接積層できない代わりに、有機溶媒等に熔融させたPHPSを塗布することで塗布後のPHPSが酸化珪素となることを用いて結果的に酸化珪素をウェットコーティング法により基材フィルム表面に塗布、積層することで、かかる積層物表面を超平滑にすることを見いだしたのである。
以上はPHPSの場合における説明であるが、PHPSの硬化収縮による基材フィルムの湾曲を防止するために、PHPSにHMDSやその他のポリシラザンを添加してもよい。特にHMDSはその末端がメチル基であるため、PHPSが酸化珪素へと転化する際の密度上昇を制限することが可能であり、ひいてはその結果硬化収縮によるフィルム湾曲を防止しやすくするので好適であると言える。
また、その他TEOS、HMDS、又はその他ポリシラザン、アルコキシシラン、シロキサン系化合物、のいずれか又は複数を利用しても同様の効果、即ちウェットコーティング法により基材フィルム表面に塗布積層することにより酸化珪素によるバッファー層を得られることは同様であり、その説明は省略する。
以上の説明はバッファー層に関わるものであるが、このバッファー層は後述のガスバリア層が生じてしまう欠陥を補完するために設けられる層である。そこで先にこのガスバリア層につき説明をする。
本実施の形態におけるガスバリア層は、珪素と金属との複合体の酸化物よりなる層であり(SiXO)、金属としては例えばチタン、アルミニウム、マグネシウム、又はニオブ、のいずれか若しくは複数であること、が好ましく、特に珪素−チタン複合体酸化物(SiTiO)を用いることが好適であり、さらには珪素に対するチタンの重量濃度は0.2重量%以上40重量%以下であることがより好適である。そして前述したバッファー層積層工程により積層されたバッファー層の表面に、スパッタリング法等によって積層をし、ガスバリア層を得る。
これら、珪素−金属複合体酸化物が好適である主な理由は次の通りである。珪素酸化物は絶縁体であり、これをスパッタリングにより所望の箇所に蒸着しようとしてもスパッタリングの効率が極端に低くなる。そのため、酸化珪素をスパッタリングにより積層しようとしても、所望のレベルまでガスバリア性を高めた層を積層するために要する時間は長くなり、即ち成膜速度を高めることに対して限界が生じる。しかし上述の通り珪素と金属との複合体の酸化物を用いることにより、珪素に抵抗値の低い材料を混合することとなり、その結果所望のレベルまでガスバリア性を高めた層を積層するのにさほど時間を要する必要はなくなり、即ち成膜速度を高めることができるので、生産性という観点から好適なものとすることができる、という理由である。
その他に、酸化珪素を積層してなるガスバリア層は確かに結果的に高度なガスバリア性を得ることが容易ではあるものの酸化珪素による層は大変圧縮応力が高くなってしまい、その結果容易にクラックが発生しやすくなり、ひいてはガスバリア性が低下してしまいやすい、という問題が生じるが、上述の通り珪素と金属との複合体の酸化物を用いることで圧縮応力をある程度低いものとすることができるようになり、即ちクラックの発生を回避できるようになり、それがガスバリア性を維持することとなる、という理由も考えられる。
いずれにせよ、単純にガスバリア性の高性能化のみを希求するのであれば酸化珪素を用いることは好適であると言えるが、高度なガスバリア性とある程度の可撓性とを求める本実施の形態にあっては、酸化珪素を用いても構わないが、それよりも珪素と金属との複合体の酸化物を用いることが好適であることを本願発明者は見いだしたのである。
以上説明したように、基材フィルムの表面にバッファー層積層工程を実行することによりその表面が超平滑状態なバッファー層を積層し、さらにその表面にガスバリア層積層工程を実行することによりガスバリア層を積層するが、バッファー層が超平滑状態であるために、その表面に積層するガスバリア層も超平滑状態とすることが可能となる。
そして本実施の形態にかかるガスバリアフィルムの製造方法により得られるガスバリアフィルムにおいて、バッファー層の表面積とプラスチックフィルムの表面積との比率が、原子間力顕微鏡により一辺の長さが2μm四方の観察面積を測定した結果、
(バッファー層表面積/プラスチックフィルム表面積)≦1.0008
であれば超平滑状態が実現されていると言え、またガスバリア層の表面積とプラスチックフィルムの表面積との比率が、原子間力顕微鏡により一辺の長さが2μm四方の観察面積を測定した結果、
(ガスバリア層表面積/プラスチックフィルム表面積)≦1.0010
であればやはり超平滑状態が実現されていると言えるのであり、本実施の形態にかかるガスバリアフィルムの製造方法によれば、上記条件を満たすことができるのである。
尚、上記条件をより一層具現化しやすくするためには、バッファー層の厚みは20nm以上2000nm以下であること、またガスバリア層の厚みは20nm以上100nm以下であること、が好ましいと言える。
(実施の形態2)
第1の実施の形態におけるバッファー層積層工程はウェットコーティング法によるものとしたが、これを気相化学堆積法とした場合につき、第2の実施の形態として説明する。
気相化学堆積法を簡単に説明すると、基板となるプラスチックフィルム表面に対し、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、基板フィルム表面あるいは気相での化学反応により基板フィルム表面に積層する手法である。
そこで本実施の形態はこの手法を用いることにより基材フィルムの表面にバッファー層を積層するバッファー層積層工程を実行する。またこの工程においてバッファー層を形成する材料としては先の実施の形態と同様、テトラエトキシシラン(TEOS)、パーヒドロポリシラザン(PHPS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、又はその他ポリシラザン、アルコキシシラン、シロキサン系化合物、のいずれか又は複数、特にPHPSを利用すると好適なバッファー層を得ることができる。
この点に関し、TEOSを用いる場合を例にさらに説明をする。
まずTEOSを原材料として、平行平板型プラズマCVD法により酸素プラズマ雰囲気中でこれを堆積させる。この時、TEOSは酸素プラズマと反応して二酸化珪素となり、これが基材フィルム表面に順次積層していく。この際、TEOSと酸素プラズマが反応することによりあたかも霧状となった二酸化珪素が基材フィルム表面に降り注ぐように積層していくので、凹凸面を有する表面に対しても満遍なく成膜させることが容易に可能であり、また実際に物理蒸着(PVD)等の真空蒸着に比べてその表面が滑らかなものとなる。また製膜速度も速く、処理面積も大きくすることが可能であるため、本実施の形態のような基材フィルム全面に対しその表面が滑らかとなるように、かつ迅速に積層するのに好適な手法と言うことができる。
尚、CVDを用いる場合、理論的にはシランガスを用いることにより限りなく酸化珪素に近い膜を堆積させることが可能であるが、シランガス自体は猛毒性を有しているため工業的にこれを使用することは決して好ましいものとは言えないので、本実施の形態では上述の通りTEOSを用いているのである。
またTEOS等を原料としたCVD製膜を実施する場合、成膜された膜中におけるカーボンの含有率が高くなりその結果理想的な酸化珪素膜を得ることが困難であり、一報でPHPSはその構造上カーボンを含まず、またシランガスとは違い毒性が低いので、PHPSを積層するをCVD材料として用い、TEOSと別々の導入口から反応室内にそれらを導入し、堆積させることにより理想的な酸化珪素に近い酸化珪素膜を堆積させることも考えられるが、ここではこれ以上の詳述は省略する。
そして本実施の形態におけるバッファー層積層工程により得られるバッファー層表面も、やはり第1の実施の形態の場合と同様に超平滑状態とすることが可能となるので、第1の実施の形態にて実行されたウェットコーティング法による積層方法と同等に、本実施の形態にかかる気相化学蒸着法も利用することができるのである。
以上はプラズマCVD法を用いた場合につき説明したが、これ以外の起草化学体積法としてマイクロ波CVDや熱CVD、触媒CVD等の手法を用いることも考えられ、またそれらのいずれかを用いても上述したのと同様の膜を堆積させることが可能であるがここではこれ以上の詳述は省略する。
尚、その他の工程等については第1の実施の形態と同様であるので、やはりそれらの説明は省略する。
(実施の形態3)
以上説明した本願発明にかかるガスバリアフィルムの製造方法において、さらに層間密着力を向上させるための工程を設けたガスバリアフィルムの製造方法につき、第3の実施の形態として以下説明する。
前述した第1の実施の形態にかかるガスバリアフィルムの製造方法により得られるガスバリアフィルムの構成は、基材フィルム/バッファー層/ガスバリア層、というものであった。このバッファー層はPHPS等を塗布等により形成するバッファー層積層工程により得られており、これだけでもすでに充分密着性は良好であると言えるが、より一層基材フィルムとバッファー層との密着性を向上させるために、これらの層の間に平滑層を設けることが考えられる。尚、第2の実施の形態にかかるガスバリアフィルムの製造方法により得られるガスバリアフィルムの構成も同様であるので、ここではその説明は省略する。
この平滑層としては、基材フィルムとの密着性が良好であると同時に、バッファー層との密着性も同時に良好でなければならない。そしてそのような物質として例えばアミノ系樹脂を用いることが好適である。
ガスバリアフィルムにおけるガスバリア性を少しでも良好なものとするためには、それを構成する各部材の表面が平滑であることが好ましく、さらには超平滑状態であればより一層好ましいと言えるが、そもそも基材フィルムの表面自体がある程度は平滑であっても、その一部が平滑でない場合もあり得るし、むしろそのような状態であることの方が自然である。
そこで基材フィルム表面の一部が平滑でない、という問題を解消するために、その表面にバッファー層を積層するバッファー層積層工程を実行する前に、プラスチックフィルムの表面に平滑層を積層してなる平滑層積層工程を実行するとよい。尚この平滑層としては上述の通りアミノ系樹脂であれば、特にPHPS、TEOS、HMDSなどとの密着性も良好であり、また一般的なプラスチックフィルムとの密着性も良好であるので好ましい素材であると
言える。
この平滑層の積層方法は、従来公知のウェットコーティング法によるものであってよく、例えばグラビアコーティング法等であればよい。そして本実施の形態ではグラビアコーティング法によりこれを積層することとする。
また積層に際して、平滑層の表面積とプラスチックフィルムの表面積との比率が、原子間力顕微鏡により一辺の長さが2μm四方の観察面積を測定した結果、
(平滑層表面積/プラスチックフィルム表面積)≦1.0010
となるようにすれば、より一層良好に密着していると言える。
そしてこのように平滑層を超平滑状態に積層した後に、第1の実施の形態と同様にしてバッファー層を積層すれば、バッファー層はより容易に超平滑状態に積層することが可能となると言える。
さらに最表面の珪素−金属複合体酸化物によるガスバリア層のさらに表面に、このガスバリア層を保護するための保護層を積層する保護層積層工程を実行することもまたガスバリア性を保持するために好適な手段であると言える。
そしてこの保護層の表面積とプラスチックフィルムの表面積との比率が、原子間力顕微鏡により一辺の長さが2μm四方の観察面積を測定した結果、
(保護層表面積/プラスチックフィルム表面積)≦1.0050
となるようにすれば、これらの層はやはり良好に密着していると判断することができる。
このように、第1ないし第3の実施の形態にかかる製造方法により得られるガスバリアフィルムは、製造方法が難解なものではないものであるにもかかわらず、容易に高ガスバリア性を獲得することに成功している。これは特に構成する各層の表面が超平滑状態であることに由来するものと考えられるのであり、逆に本願発明にかかる製造方法を用いることにより各層の表面を容易に超平滑状態とすることが可能となったのであり、その結果容易な手法により高ガスバリアフィルムを得ることができるようになったのである。
以下、本発明にかかるガスバリアフィルムにつき、さらに実施例により説明する。
以下説明する事例は、基材フィルムの表面にガスバリア性物質を積層してガスバリアフィルムを製造することにより得られたガスバリアフィルムの性能を比較したものである。
尚、以下の説明に記載した表面積比とは、原子間力顕微鏡により一辺の長さが2μm四方の観察面積を測定した結果を用いて計算されたものである。
また全ての実施例及び比較例において用いた基材フィルムはPENフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製:製品名「Q65FA」:厚み125μm)であり、その表面にグラビアリバースコーターでメチルイソブチルケトン(MIBK)を主溶媒とするメラミン樹脂をコーティングし、コーティング後150℃で2分間乾燥して平滑層とした。得られた平滑層の膜厚は0.2μmであり、表面積比は1.0003であった。(但し比較例3においては平滑層は積層していない。)
そして得られたガスバリアフィルムを、直径10mmの鉄棒にかけて、これを10往復して屈曲試験を行い、屈曲試験前及び屈曲試験後のガスバリア性(水蒸気透過率)を、測定条件を湿度90%、温度40℃、としてJIS_Z0208の規定に準じて測定した。
(実施例1)
平滑層を積層した基材フィルムの平滑層側表面に、さらにPHPSを積層した。その厚みは0.2μmであり、面積比は1.0003である。次いでバッファー層の表面に、組成がSiTiOであるバリア層を、ACマグネトロンスパッタリングによりアルゴンと微量の酸素プラズマの雰囲気下で堆積させた。成膜する際の圧力は0.5Paであり、投入電力は300Wであった。得られたバリア層の膜厚は60nmであり、表面積比は1.0002であった。さらにバリア層の表面に、平滑層を積層したと同等の手法により保護層としてメラミン樹脂をコーティングした。その膜厚は0.2μmであり、表面積比は1.0003であった。
また得られたガスバリアフィルムの水蒸気透過率は、屈曲試験前で0.01(g/m/day)以下であり、測定限界以下に到達した。また屈曲試験後では0.01(g/m/day)であった。
(実施例2)
実施例1と同様であるがバッファー層の積層については以下の通りである。
即ち、平滑層の表面に対し、TEOSを原材料とし、平行平板型プラズマCVD法によって酸素プラズマ雰囲気下でSiOを堆積させた。この際のプラズマ電源はRF13.56MHzであり、投入電力は250Wであった。得られた平滑層の膜厚は0.2μmであり、表面積比は1.0002であった。
得られたガスバリアフィルムの水蒸気透過率は屈曲試験前で0.01(g/m/day)以下であり、測定限界以下に到達し、これは屈曲試験後も同様であった。
(実施例3)
実施例1と同様であるがバッファー層の積層については以下の通りである。
即ち、平滑層の表面に対し、TEOSとPHPSとを1:1の割合で混合させた溶液を原材料とし、平行平板型プラズマCVD法によって酸素プラズマ雰囲気下でSiOを堆積させた。この際の条件は実施例2と同様である。得られた平滑層の膜厚は0.2μmであり、表面積比は1.0002であった。
得られたガスバリアフィルムの水蒸気透過率は屈曲試験前で0.01(g/m/day)以下であり、測定限界以下に到達し、これは屈曲試験後も同様であった。
(実施例4)
実施例1と同様であるがバリア層の積層については以下の通りである。
即ち、実施例1ではバリア層をSiTiOとしたが、この実施例3ではこれをAlSiOとした。堆積の方法は実施例1の場合と同様である。得られたバリア層の膜厚は60nmであり、表面積比は1.0003であった。
得られたガスバリアフィルムの水蒸気透過率は屈曲試験前で0.01(g/m/day)以下であり、測定限界以下に到達し、屈曲試験後は0.01(g/m/day)であった。
(実施例5)
実施例1と同様であるが保護層の積層については以下の通りである。
即ち、実施例1では保護層としてメラミン樹脂をコートしたが、この実施例4ではイソプロピルアルコール(IPA)を主溶媒とするグリシドキシ基を有するシランカップリング材の加水分解物をグラビアリバースコーターでコーティングした。その膜厚は0.2μmであり、表面積比は1.0010であった。
得られたガスバリアフィルムの水蒸気透過率は屈曲試験前で0.01(g/m/day)以下であり、測定限界以下に到達し、これは屈曲試験後も同様であった。
(比較例1)
実施例1のガスバリアフィルムにおいて、バリア層をSiOとした。その具体的な積層方法は実施例1の場合と同様である。得られたバリア層の膜厚は60nmであり、表面積比は1.0025であった。
得られたガスバリアフィルムの水蒸気透過率は屈曲試験前で2.0(g/m/day)であり、これは屈曲試験後も同様であった。
(比較例2)
実施例1のガスバリアフィルムにおいて、バッファー層を積層しなかった。この場合のバリア層表面積比は1.0012であった。
得られたガスバリアフィルムの水蒸気透過率は屈曲試験前で0.02(g/m/day)であったが、屈曲試験後では0.05(g/m/day)となってしまった。
(比較例3)
実施例1のガスバリアフィルムにおいて、平滑層を積層しないと同時に、バッファー層の厚みを0.02μmとした。この場合のバッファー層の表面積比は1.004であった。
得られたガスバリアフィルムの水蒸気透過率は屈曲試験前で0.2(g/m/day)であり、屈曲試験後で0.3(g/m/day)であった。
以上、各実施例及び比較例を検討すると以下の通りである。
実施例1の結果より、本願発明を実施することによりガスバリア性が非常に高いこと、また同時に柔軟性も備えていることがわかった。
実施例2及び実施例3の結果より、バッファー層をプラズマCVD法により積層しても実施例1と同様の効果が得られることがわかった。
実施例4の結果より、バリア層の組成物に金属(Al)を含有するものを用いても実施例1と同様の効果が得られることがわかった。
実施例5の結果より、保護層がアミノ系樹脂以外の物質であっても表面積比が1.0010以下であれば実施例1と同様の効果が得られることがわかった。
比較例1の結果より、バリア層をSiOとした場合充分なガスバリア性を得られないことがわかった。これは バリア層をSiOとしたことによる応力によって欠陥が発生しその結果表面積比が増大してしまったことが原因と考えられる。
比較例2の結果より、バッファー層が存在せずとも比較的ガスバリア性のあるものが得られるものの、表面積比が大きいことよりバリア層に欠陥が発生しているものと考えられるので、結果としてこれ以上のガスバリア性向上は期待できず要求にこたえられないものと考えられる。
比較例3の結果より、バッファー層を設けてあったとしてもバリア層の表面積比が充分に低い値にできない限り、要求にこたえられないものと考えられる。
また実施例1〜5においては屈曲試験後であっても所定のガスバリア性を維持していることより柔軟性を備えたガスバリアフィルムであると言えるのに対し、比較例1〜3では屈曲試験前ではある程度のガスバリア性を発揮させることは可能であっても屈曲試験後では同等のガスバリア性を維持できていないことより、これらのガスバリアフィルムはガスバリア性は備えているものの柔軟性を備えていないと言える。つまりこの結果より本願発明にかかるガスバリアフィルムには高度のガスバリア性と柔軟性とを両立していることがわかる。

Claims (8)

  1. 基材となるプラスチックフィルムの表面に、ウェットコーティング法又は気相化学堆積法によりバッファー層を積層するバッファー層積層工程と、
    前記バッファー層積層工程を終えたバッファー層のさらに表面にガスバリア性を備えたガスバリア層を積層するガスバリア層積層工程と、
    を備えてなるガスバリアフィルムの製造方法であって、
    前記バッファー層は、前記ガスバリア層の欠陥を低減させるために設けられるものであって、かつ前記バッファー層はテトラエトキシシラン(TEOS)、パーヒドロポリシラザン(PHPS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、又はその他ポリシラザン、アルコキシシラン、シロキサン系化合物、のいずれか又は複数を利用して積層されてなるものであり、
    前記バッファー層の表面積と前記プラスチックフィルムの表面積との比率が、原子間力顕微鏡により一辺の長さが2μm四方の観察面積を測定した結果、
    (バッファー層表面積/プラスチックフィルム表面積)≦1.0008
    となり、
    前記ガスバリア層の表面積と前記プラスチックフィルムの表面積との比率が、原子間力顕微鏡により一辺の長さが2μm四方の観察面積を測定した結果、
    (ガスバリア層表面積/プラスチックフィルム表面積)≦1.0010
    となること、
    を特徴とする、ガスバリアフィルムの製造方法。
  2. 請求項1に記載のガスバリアフィルムの製造方法であって、
    前記プラスチックフィルムの表面粗さがJIS B 0601による測定値でRaが100nm以下であること、
    を特徴とする、ガスバリアフィルムの製造方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のガスバリアフィルムの製造方法であって、
    前記ガスバリア層が珪素−金属複合体酸化物(SiXO)による層であって、
    前記珪素チタン複合酸化物における珪素に対するチタンの重量濃度が0.2重量%以上40重量%以下であること、
    を特徴とする、ガスバリアフィルムの製造方法。
  4. 請求項3に記載のガスバリアフィルムの製造方法であって、
    前記珪素−金属複合体酸化物を構成する金属Xが、チタン、アルミニウム、マグネシウム、又はニオブ、のいずれか若しくは複数であること、
    を特徴とする、ガスバリアフィルムの製造方法。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法であって、
    前記バッファー層積層工程を実行する前に、前記プラスチックフィルムの表面に平滑層を積層してなる平滑層積層工程を実行してなり、
    前記平滑層の表面積と前記プラスチックフィルムの表面積との比率が、原子間力顕微鏡により一辺の長さが2μm四方の観察面積を測定した結果、
    (平滑層表面積/プラスチックフィルム表面積)≦1.0010
    となること、
    を特徴とする、ガスバリアフィルムの製造方法。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法であって、
    前記ガスバリア層積層工程を実行した後に、前記ガスバリア層のさらに表面に保護層を積層してなる保護層積層工程を実行してなり、
    前記保護層の表面積と前記プラスチックフィルムの表面積との比率が、原子間力顕微鏡により一辺の長さが2μm四方の観察面積を測定した結果、
    (保護層表面積/プラスチックフィルム表面積)≦1.0050
    となること、
    を特徴とする、ガスバリア層の製造方法。
  7. 請求項5又は請求項6に記載のガスバリアフィルムの製造方法であって、
    前記平滑層又は前記保護層のいずれか若しくは双方がアミノ系樹脂からなるものであり、かつその厚みが50nm〜500nmであること、
    を特徴とする、ガスバリアフィルムの製造方法。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法により得られてなること、
    を特徴とする、ガスバリアフィルム。
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