以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
本発明は、画像の光沢条件(印刷条件)に応じて、記録媒体の表面に透明UVインクが打滴されてからUV光が照射されるまでの時間(UV光照射タイミング)やUV光の照射強度(露光量)を変化させることにより、異なる光沢感の画像を実現することができる。
本発明に係る画像形成方法の全体的な流れについて、図1を参照しながら説明する。
まず、図1(a)に示すように、インクジェットヘッド(色インク用ヘッド)12の各ノズル(不図示)から色インクをそれぞれ吐出して、記録媒体10の表面に画像を形成する。画像を形成する手段は、インクジェット方式に限らず、その他方式を適用することも可能である。
続いて、図1(b)に示すように、インクジェットヘッド(透明UVインク用ヘッド)14の各ノズルから透明UVインクを吐出して、画像が形成された記録媒体10の表面に透明UVインクを打滴する。本発明において、透明UVインクを打滴する手段として、インクジェット方式が好適であり、記録媒体10に対して透明UVインクを選択的に付与することができる。透明UVインクは、色インクが打滴される領域(画像部)だけでなく、色インクが打滴されない領域(非画像部)に打滴される場合もある。
次に、図1(c)に示すように、UV光照射部16に配置されるUV光源(UVランプ)を用いて、記録媒体10の表面に打滴された透明UVインクにUV光を照射する。UV光が照射されると、透明UVインクは硬化し、図1(d)に示すように、記録媒体10の表面に透明UVインクからなる透明UVインク層(ニスコート層)18が形成される。
図2は、UV光照射部16の一例を示した構成図である。図2に示すように、UV光照射部16には、複数のUV光源(UVランプ)20A、20Bが設けられている。各UV光源20A、20Bは、記録媒体10の搬送方向(副走査方向)に沿って順に並べられており、それぞれ副走査方向に沿って前後に移動可能に構成されている。第1のUV光源20Aは、透明UVインクを予備硬化させるための予備硬化手段として機能し、第2のUV光源20Bは、透明UVインクを本硬化させるための本硬化手段として機能する。
UV光照射制御部22は、光沢条件設定部(図11参照)によって設定された画像の光沢条件(印刷条件)に応じて、透明UVインクに対するUV光の照射タイミングを制御する制御部である。本例では、各UV光源20A、20Bの副走査方向の移動を制御することにより、UV光の照射タイミングを制御する。また、UV光照射制御部22は、各UV光源20A、20Bの照射時間、照射間隔、照射強度などの制御を行う。
図3は、全体的にマットにする場合、図4は、全体的にグロスにする場合、図5は、グロス部とマット部を混在させる場合の制御方法を説明するための図である。なお、説明の便宜上、各図では、記録媒体10の表面には既に画像が形成されているものとし、画像を構成するインクのドットの図示を省略する。
図3に示すように、全体的にマットにする場合には、UV光照射制御部22は、記録媒体10上に透明UVインクを打滴してからt1秒後に、第2のUV光源20Bから透明UVインクに対してUV光が照射されるように制御を行う。t1は、例えば数十〜数百ミリ秒程度であり、透明UVインクの組成や記録媒体10の表面材質に応じて最適値が設定される。後述する全体的にグロスにする場合に比べてUV光が照射されるまでの時間を短くすることによって、記録媒体10上の透明UVインクからなるドットが濡れ広がってレベリングされる前に、記録媒体10上の透明UVインクを本硬化させることができる。これにより、全体的にマットな表面を形成することができる。
一方、図4に示すように、全体的にグロスにする場合には、UV光照射制御部22は、記録媒体10上に透明UVインクを打滴してからt2(>t1)秒後に、第2のUV光源20Bから透明UVインクに対してUV光が照射されるように制御を行う。t2は、例えば0.5〜2秒程度であり、透明UVインクの組成や記録媒体10の表面材質に応じて最適値が設定される。上述した全体的にマットにする場合に比べてUV光が照射されるまでの時間を長くすることによって、記録媒体10上で透明UVインクからなるドットが濡れ広がり、他のドットと合一してレベリングされた後に、記録媒体10上の透明UVインクを本硬化させることができる。これにより、全体的にグロスな表面を形成することができる。
図5に示すように、グロス部とマット部を混在させる場合には、UV光照射制御部22は、記録媒体10上に透明UVインクを打滴してからt3秒後に、第1のUV光源20Aから透明UVインクに対してUV光が照射されるように制御を行う。更に、UV光照射制御部22は、記録媒体10上に透明UVインクを打滴してからt4(>t3)秒後に、第2のUV光源20Bから透明UVインクに対してUV光が照射されるように制御を行う。例えば、t3は数十〜数百ミリ秒程度であり、t4は0.5〜2秒程度である。これらの各値(t3,t4)は、透明UVインクの組成や記録媒体10の表面材質に応じて最適値が設定される。また、第1のUV光源20Aの照射強度E1は、第2のUV光源20Bの照射強度E2より低く設定される。
これにより、記録媒体10上に打滴された透明UVインクは、まず、予備硬化(ピニング)工程として、第1のUV光源20AからUV光が照射されることによって、記録媒体10との界面が高粘化し、記録媒体10への浸透が抑制される。このとき、記録媒体10上に打滴された透明UVインクからなるドット同士が互いに重なり合う領域(ドット重複領域)26では、各ドットの表面部が高粘化していないため、それらの表面張力によってドット同士が合一してレベリングが進行する。一方、透明UVインクからなるドット同士が互いに重ならない領域(ドット孤立領域)28では、予備硬化によって記録媒体10と透明UVインクとの界面が高粘化しているため、記録媒体10上で透明UVインクは濡れ広がらず、ドットの孤立状態が維持される。その後、本硬化工程として、第2のUV光源20BからUV光が照射されることによって、記録媒体10上の透明UVインクを本硬化させることができる。これにより、記録媒体10上のドット重複領域26はグロス部(光沢度が高い領域)になり、ドット孤立領域28はマット部(光沢度が低い領域)になる。
第1のUV光源20Aと第2のUV光源20Bの間に乾燥ユニットを追加してもよい。例えば、グロス部とマット部を混在させる場合、記録媒体10上に透明UVインクが打滴された後、第1のUV光源20Aによって透明UVインクの記録媒体10との界面を高粘度化(予備硬化)させて、記録媒体10への透明UVインクの浸透を抑制しつつ、乾燥ユニットによって透明UVインク中の溶媒を除去することができる。更に、その後、第2のUV光源20Bによって透明UVインクを本硬化させることができる。浸透性を有する記録媒体上に水又は揮発溶剤を含む透明UVインクが打滴される場合に好適である。
また、各UV光源20A、20Bが照射するUV光の照射強度を可変としてもよい。この場合、第1のUV光源20Aが予備硬化手段及び本硬化手段を兼ねることができる。例えば、図3に示した場合(全体的にマットにする場合)において、記録媒体10上に透明UVインクを打滴してからt1秒後に、第2のUV光源20Bに代えて、第1のUV光源20Aからから透明UVインクに対してUV光が照射されるように制御を行うことができる。
また、各UV光源20A、20Bが照射するUV光の照射強度を可変とすることにより、光沢感の微妙な調整が可能となる。例えば、図3〜図5に示した各場合において、UV光の照射強度を予め設定された規定値より高めに制御することによって、透明UVインクの濡れ広がりが抑制されるので、より光沢感の低い表面を形成することができる。一方、UV光の照射強度を既定値より低めにすることによって、UV光の照射強度が高い場合に比べて透明UVインクが濡れ広がりやすくなるので、より光沢度の高い表面を形成することができる。
UV光照射部16には、3つ以上のUV光源が設けられていてもよい。例えば、各UV光源を副走査方向に固定した状態にして、これらUV光源の中から選択的にUV光を照射することによって、UV光の照射タイミングを制御することができる。UV光源の移動機構が不要となり、装置構成を簡易にすることができる。上述したUV光源の照射強度を可変とする態様と組み合わせて用いることがより好ましい。
本発明において、記録媒体に対する透明UVインクの付与量(膜厚)を制御する態様が好ましい。記録媒体に対する透明UVインクの付与量(膜厚)は、インクジェットヘッド(透明UVインク用ヘッド)のノズルから吐出される透明UVインクの打滴量(吐出量)や打滴数を変化させることによって制御することができる。これにより、画像の光沢感を多段階に変化させることができる。
画像の光沢感と透明UVインクの付与量との関係の一例を表1及び表2に示す。
表1及び表2において、「主走査方向解像度」及び「副走査方向解像度」は、透明UVインクを打滴するインクジェットヘッドの打滴解像度(打滴密度)を表している。「打滴数」は、インクジェットヘッドのノズルから記録媒体上の同一位置に対して透明UVインクが吐出される回数(打滴数)を表している。「液滴量」は、透明UVインクの打滴量(インクジェットヘッドの1吐出あたりの吐出量)に「打滴数」を乗じた量である。「付与量(ベタ打滴膜厚)」は、上記の打滴条件で記録媒体上に透明UVインクを打滴率100%で打滴したときの透明UVインクの付与量(膜厚)を表している。
表1から分かるように、透明UVインクの打滴数を1(打滴量1.5pl)、2(打滴量(3.0pl)、3(打滴量4.5pl)に変化させて、透明UVインクの付与量(ベタ打滴膜厚)を2.5μm、5.0μm、7.5μmにしたとき、非ニス調の領域(非ニス部)、マット調の領域(マットニス部)、グロス調の領域(グロスニス部)をそれぞれ形成できる。なお、「非ニス部」、「マットニス部」、「グロスニス部」の順に光沢感が高くなる。
また、表2から分かるように、透明UVインクの打滴数を1(打滴量3.5pl)、2(打滴量(7.0pl)、・・・、6(打滴量21.0pl)に変化させて、透明UVインクの付与量(ベタ打滴膜厚)を2.0μm、3.9μm、・・・、7.5μmにしたとき、それぞれ、非ニス調の領域(非ニス部)、ニス調1の領域、・・・、ニス調5の領域を形成できる。なお、「非ニス部」、「ニス調1」、・・・、「ニス調5」の順に光沢感が高くなる。
表1及び表2に示した例では、透明UVインクの打滴量(1吐出あたりの吐出量)を一定にして打滴数のみを変化させているが、透明UVインクの打滴数を一定にして打滴量を変化させてもよい。また、打滴数と打滴量の両方を変化させてもよい。いずれの場合でも、透明UVインクの付与量(膜厚)を制御することができ、同様な結果を得ることができる。
記録媒体10上にニス領域や非ニス領域を混在して形成する場合には、ニス領域に対する透明UVインクの液滴量(打滴量×打滴数)をm1、非ニス領域に対する透明UVインクの液滴量(打滴量×打滴数)をm2(<m1)とすればよい。例えば、透明UVインクの打滴量が一定の場合には、ニス領域に対する透明UVインクの打滴数をn1、非ニス領域に対する透明UVインクの打滴数をn2(<n1)となるように、領域毎に透明UVインクの打滴数の制御を行う。これにより、所望の光沢感を実現することができる。
ニス領域における液滴量(打滴量×打滴数)や打滴解像度を部分的に変化させることにより、画像の光沢感を部分的に変えることもできる。例えば、透明UVインクの打滴量を一定にして打滴数を制御する場合には、マット調にニスコートする部分の打滴数をs1、グロス調にニスコートする部分の打滴数をs2(>s1)となるように制御すればよい。また、透明UVインクの打滴解像度を制御する場合には、マット調にニスコートする部分の打滴解像度をx1×y1[dpi]、グロス調にニスコートする部分の打滴解像度をx2×y2[dpi](x2>x1, y2>y1)となるように制御すればよい。
非ニス領域についても、ニス領域の場合と同様であり、非ニス領域における液滴量(打滴量×打滴数)や打滴解像度を部分的に変化させることにより、画像の光沢感を部分的に変えることができる。
非ニス領域に対する透明UVインクの付与量は、画像強度を確保しつつ、オフセット印刷と違和感のない光沢感の画像を実現させる観点から、5μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは1〜3μmであることが好ましい。
ニス領域に対して処理液を付与する態様が好ましい。画像部(色インクが打滴される領域)と非画像部(色インクが打滴されない領域)では透明UVインクの濡れ性が異なるため、画像部と非画像部で光沢感が異なってしまうことがある。ニス領域に対して、透明UVインクを打滴する前に処理液を打滴することにより、透明UVインクが打滴される表面の濡れ性を一定にし、均一な光沢感を得ることができる。処理液として、濡れ性制御用処理剤(例えば、インク凝集用の酸性液)、浸透抑制剤(例えば、樹脂ラテックス溶液)などを適用可能である。処理液の付与方式は、特に限定されるものではなく、例えばインクジェット方式や塗布方式などを適用することができる。
透明UVインクのモノマーとして、カチオン系モノマーを用いる態様が好ましい。ラジカル系モノマーの場合、浸透性を有する記録媒体に浸透してしまうと、UV光を照射しても未硬化状態で記録媒体中に残ってしまうため、UV光照射タイミングを短くしたり、UV光の照射強度を高めたりする必要がある。一方、カチオン系モノマーの場合、UV光の照射によって重合反応が開始すると、その後にUV光が照射されなくなっても重合が進行する。このため、ラジカル系モノマーを用いる場合に比べて、UV光照射タイミングを長くしたり、UV光の照射強度を低くしたりすることができ、効率的に透明UVインクを硬化させることができる。また、カチオン系モノマーは、未硬化状態でも安全性が高いという利点もある。
図6は、透明UVインクによって形成されるドットの配置状態を示した図である。図6及び後述する図7では、一例として、記録媒体上にベタ画像を形成する場合のように100%の打滴率で透明UVインクを打滴する場合を示したが、もちろん、本例に限定されるものではない。図6(a)は、透明UVインクから成るドット30を主走査方向(記録媒体の搬送方向に直交する方向)及び副走査方向(記録媒体の搬送方向)にそれぞれ一定のドットピッチP1、P2で等間隔に配置した、いわゆる正方格子状のドット配置を表したものである。一方、図6(b)は、図6(a)において副走査方向に配列されたドット列を符号32で表わしたとき、主走査方向に隣接するドット列32、32のうち、一方のドット列を副走査方向に半位相ずらした(即ち、副走査方向のドットピッチP2の1/2(=P2/2))だけ副走査方向に位相をずらした)、いわゆる千鳥状のドット配置を表したものである。なお、図6(a)、(b)において、主走査方向のドットピッチP1は28.2μm、副走査方向のドットピッチP2は42.4μm、ドット30のドット径Dは45μmである。
図6(a)に示すように、透明UVインクから成るドット30が正方格子状に打滴される場合において、透明UVインクの拡がり率が小さく、ドット30のドット径Dが小さいと、符号34で示す位置のようにドット間に隙間が生じてしまい、透明UVインクを均一化できない場合がある。
一方、図6(b)に示すように、透明UVインクから成るドット30が千鳥状に打滴される場合、ドット30のドット径D(即ち、透明UVインクの拡がり率)が図6(a)と同一条件であっても、ドット間に隙間が生じない。つまり、正方格子状にドットを打滴する場合に比べて千鳥状にドットを打滴する場合の方が、ドット間に隙間が生じにくく、透明UVインクを均一化するのに適したドット配置である。
従って、本発明においては、記録媒体上に透明UVインクを千鳥状に打滴する態様の方が好ましい。具体的には、透明UVインクを打滴するインクジェットヘッドのノズル配置や打滴タイミングを適宜変更することによって、千鳥状のドット配置を実現することが可能である。この結果、透明UVインクを均一化することができる。
図7は、千鳥状のドット配置を示した図である。図7(a)は、主走査方向のドットピッチP1が副走査方向のドットピッチP2より大きい場合を表している(即ち、P1>P2)。一方、図7(b)は、主走査方向のドットピッチP1’が副走査方向のドットピッチP2’より小さい場合を表している(即ち、P1’<P2’)。なお、図7(a)、(b)は主走査方向のドットピッチと副走査方向のドットピッチを相互に入れ替えたものである(即ち、P1=P2’、及びP2=P1’が成立している)。具体的には、図7(a)に示す主走査方向のドットピッチP1と図7(b)に示す副走査方向のドットピッチP2’は42.4μmであり、図7(a)に示す副走査方向のドットピッチP2と図7(b)に示す主走査方向のドットピッチP1’は28.2μmである。また、図7(a)、(b)に示すドット30のドット径Dはいずれも45μmである。
透明UVインクから成るドット30が千鳥状に打滴される場合において、図7(a)に示すように、主走査方向のドットピッチP1が副走査方向のドットピッチP2より大きいと(即ち、P1>P2)、符号36で示す位置のようにドット間に隙間が生じてしまい、透明UVインクを均一化できない場合がある。
一方、図7(b)に示すように、主走査方向のドットピッチP1’が副走査方向のドットピッチP2’より小さいと(即ち、P1’<P2’)、ドット30のドット径D(即ち、透明UVインクの拡がり率)が図7(a)と同一条件であっても、ドット間に隙間が生じない。つまり、透明UVインクから成るドット30が千鳥状に打滴される場合においては、主走査方向のドットピッチに比べて副走査方向のドットピッチが大きくなるように打滴する場合の方が、ドット間に隙間が生じにくく、透明UVインクを均一化するのに適したドット配置である。
従って、本発明においては、記録媒体上に透明UVインクを千鳥状に打滴する場合には、主走査方向のドットピッチに比べて副走査方向のドットピッチが大きくなるように打滴する態様が好ましい。この結果、透明UVインクをより均一化することができる。
なお、他の発明として、画像の光沢条件(印刷条件)に応じて、透明UVインクの打滴条件(打滴量、打滴数、打滴密度)のみを制御するようにしてもよい。この場合も、本発明と同様に、異なる光沢感の画像を実現することができる。
〔装置構成例〕
図8は、本発明に係る画像形成方法が適用された画像形成装置の一例を示した概略構成図である。
図8に示す画像形成装置100は、記録媒体114の片面のみに印刷可能な片面機である。この画像形成装置100は、記録媒体114を供給する給紙部102と、記録媒体114に対して浸透抑制処理を行う浸透抑制処理部104と、記録媒体114に処理液を付与する処理液付与部106と、記録媒体114に色インクを付与して画像形成を行う印字部(画像形成部)108と、記録媒体114に透明UVインクを付与する透明UVインク付与部110と、画像が形成された記録媒体114を搬送して排出する排紙部112とから主に構成される。
給紙部102には、記録媒体114を積載する給紙台120が設けられている。給紙台120の前方(図8において左側)にはフィーダボード122が接続されており、給紙台120に積載された記録媒体114は1番上から順に1枚ずつフィーダボード122に送り出される。フィーダボード122に送り出された記録媒体114は、渡し胴124aを介して、浸透抑制処理部104の圧胴126aの表面(周面)に給紙される。
浸透抑制処理部104には、圧胴126aの回転方向(図8において反時計回り方向)に関して上流側から順に、圧胴126aの表面に対向する位置に、用紙予熱ユニット128、浸透抑制剤ヘッド130、及び浸透抑制剤乾燥ユニット132がそれぞれ設けられている。
用紙予熱ユニット128及び浸透抑制剤乾燥ユニット132には、それぞれ所定の範囲で温度制御可能なヒータが設けられる。圧胴126aに保持された記録媒体114が、用紙予熱ユニット128や浸透抑制剤乾燥ユニット132に対向する位置を通過する際、これらユニットのヒータによって加熱される。
浸透抑制剤ヘッド130は、圧胴126aに保持される記録媒体114に対して浸透抑制剤を打滴するものであり、後述する印字部108の各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bと同一構成が適用される。
本例では、記録媒体114の表面に対して浸透抑制処理を行う手段として、インクジェットヘッドを適用したが、浸透抑制処理を行う手段については特に本例に限定されるものではない。例えば、スプレー方式、塗布方式などの各種方式を適用することも可能である。
本例では、浸透抑制剤として、熱可塑性樹脂ラテックス溶液が好適に用いられる。もちろん、浸透抑制剤は、熱可塑性樹脂ラテックス溶液に限定されるものではなく、例えば、平板粒子(雲母等)や撥水剤(フッ素コーティング剤)などを適用することも可能である。
浸透抑制処理部104に続いて処理液付与部106が設けられている。浸透抑制処理部104の圧胴126aと処理液付与部106の圧胴126bとの間には、これらに対接するようにして渡し胴124bが設けられている。これにより、浸透抑制処理部104の圧胴126aに保持された記録媒体114は、浸透抑制処理が行われた後に、渡し胴124bを介して処理液付与部106の圧胴126bに受け渡される。
処理液付与部106には、圧胴126bの回転方向(図8において反時計回り方向)に関して上流側から順に、圧胴126bの表面に対向する位置に、用紙予熱ユニット134、処理液ヘッド136、及び処理液乾燥ユニット138がそれぞれ設けられている。
処理液付与部106の各部(用紙予熱ユニット134、処理液ヘッド136、及び処理液乾燥ユニット138)については、上述した浸透抑制処理部104の用紙予熱ユニット128、浸透抑制剤ヘッド130、及び浸透抑制剤乾燥ユニット132とそれぞれ同様の構成が適用されるため、ここでは説明を省略する。もちろん、浸透抑制処理部104と異なる構成を適用することも可能である。
本例で用いられる処理液は、後段の印字部108に配置される各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bから記録媒体114に向かって吐出されるインクに含有される色材を凝集させる作用を有する酸性液である。
処理液乾燥ユニット138のヒータの加熱温度は、圧胴126bの回転方向上流側に配置される処理液ヘッド136の吐出動作によって記録媒体114の表面に付与された処理液を乾燥させて、記録媒体114上に固体状又は半固溶状の凝集処理剤層(処理液が乾燥した薄膜層)が形成されるような温度に設定される。
ここでいう「固体状または半固溶状の凝集処理剤層」とは、以下に定義する含水率が0〜70%の範囲のものを言うものとする。
本例の如く、記録媒体114上に処理液が付与される前に、用紙予熱ユニット134のヒータによって記録媒体114を予備加熱する態様が好ましい。この場合、処理液の乾燥に要する加熱エネルギーを低く抑えることが可能となり、省エネルギー化を図ることができる。
処理液付与部106に続いて印字部108が設けられている。処理液付与部106の圧胴126bと印字部108の圧胴126cとの間には、これらに対接するようにして渡し胴124cが設けられている。これにより、処理液付与部106の圧胴126bに保持された記録媒体114は、処理液が付与されて固体状又は半固溶状の凝集処理剤層が形成された後に、渡し胴124cを介して印字部108の圧胴126cに受け渡される。
印字部108には、圧胴126cの回転方向(図8において反時計回り方向)に関して上流側から順に、圧胴126cの表面に対向する位置に、CMYKRGBの7色のインクにそれぞれ対応したインクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bと、溶媒乾燥ユニット142a、142bがそれぞれ設けられている。
各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bは、上述した浸透抑制剤ヘッド130や処理液ヘッド136と同様に、インクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)が適用される。即ち、各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bは、それぞれ対応する色インクの液滴を圧胴126cに保持された記録媒体114に向かって吐出する。
各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bは、それぞれ圧胴126cに保持される記録媒体114における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有し、そのインク吐出面には画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズル(図8中不図示、図9に符号161で図示)が複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bが圧胴126cの回転方向(記録媒体114の搬送方向)と直交する方向に延在するように固定設置される。
記録媒体114の画像形成領域の全幅をカバーするノズル列を有するフルラインヘッドがインク色毎に設けられる構成によれば、記録媒体114の搬送方向(副走査方向)について、記録媒体114と各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bを相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録媒体114の画像形成領域に1次画像を記録することができる。これにより、記録媒体114の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドが適用される場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
また、本例では、CMYKRGBの7色の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
溶媒乾燥ユニット142a、142bは、上述した用紙予熱ユニット128、134や浸透抑制剤乾燥ユニット132、処理液乾燥ユニット138と同様に、所定の範囲で温度制御可能なヒータを含んで構成される。後述するように、記録媒体114上に形成された固体状又は半固溶状の凝集処理剤層上にインク液滴が打滴されると、記録媒体114上にはインク凝集体(色材凝集体)が形成されるとともに、色材と分離されたインク溶媒が広がり、凝集処理剤が溶解した液体層が形成される。このようにして記録媒体114上に残った溶媒成分(液体成分)は、記録媒体114のカールだけでなく、画像劣化を招く要因となる。そこで、本例では、各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bからそれぞれ対応する色インクが記録媒体114上に打滴された後、溶媒乾燥ユニット142a、142bのヒータによって加熱を行い、溶媒成分を蒸発させ、乾燥を行っている。
印字部108に続いて透明UVインク付与部110が設けられている。印字部108の圧胴126cと透明UVインク付与部110の圧胴126dとの間には、これらに対接するように渡し胴124dが設けられている。これにより、印字部108の圧胴126cに保持された記録媒体114は、各色インクが付与された後に、渡し胴124dを介して透明UVインク付与部110の圧胴126dに受け渡される。
透明UVインク付与部110には、圧胴126dの回転方向(図8において反時計回り方向)に関して上流側から順に、圧胴126dの表面に対向する位置に、印字部108による印字結果を読み取る印字検出部144、透明UVインクヘッド146、第1のUVランプ148a、148bがそれぞれ設けられている。
印字検出部144は、印字部108の印字結果(各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bの打滴結果)を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
透明UVインクヘッド146は、印字部108の各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bと同一構成が適用され、各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bによって記録媒体114上に打滴された色インクに重なるように透明UVインクを打滴する。もちろん、印字部108の各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bと異なる構成を適用することも可能である。
第1のUVランプ148a、148bは、記録媒体114に透明UVインクが打滴された後、この記録媒体114が第1のUVランプ148a、148bに対向する位置を通過する際、記録媒体114上の透明UVインクにUV光(紫外光)を照射して、透明UVインクを硬化させる。
透明UVインク付与部110に続いて排紙部112が設けられている。排紙部112には、透明UVインクが打滴された記録媒体114を受ける排紙胴150と、該記録媒体114を積載する排紙台152と、排紙胴150に設けられたスプロケットと排紙台152の上方に設けられたスプロケットとの間に掛け渡され、複数の排紙用グリッパを備えた排紙用チェーン154とが設けられている。
また、これらのスプロケットの間には、第2のUVランプ156が排紙用チェーン154の内側に設けられている。第2のUVランプ156は、透明UVインク付与部110の圧胴126dから排紙胴150に受け渡された記録媒体114が排紙用チェーン154によって排紙台152に搬送されるまでの間に、記録媒体114上の透明UVインクにUV光(紫外光)を照射して、透明UVインクを硬化させる。
また、排紙部112には、記録媒体114の表面(透明UVインクが付与された面側)の光沢度を測定する光沢測定部158が設けられている。光沢測定部158で測定された光沢度に応じて、各UVランプ148a、148b、156の照射条件(UV光照射タイミング、照射強度など)や、透明UVインクヘッド146の打滴条件(打滴量、打滴数、打滴密度)の調整が行われる。
各UVランプ148a、148b、156に代えて、UVレーザー及びポリゴンミラーからなるUVレーザスキャン装置を用いてもよい。UV光の照射領域や照射強度を可変させることができ、記録媒体114の表面の光沢感を部分的に変化させることができる。
次に、印字部108に配置されるインクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bの構造について詳説する。なお、インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号160によってインクヘッド(以下、単に「ヘッド」と称することもある。)を示す。
図9(a)はヘッド160の構造例を示す平面透視図であり、図9(b)はその一部の拡大図であり、図9(c)はヘッド160の他の構造例を示す平面透視図である。また、図10はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図9(a)、(b)中のA−A線に沿う断面図)である。
記録媒体114上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド160におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド160は、図9(a)、(b)に示すように、インク滴の吐出孔であるノズル161と、各ノズル161に対応する圧力室162等からなる複数のインク室ユニット163を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(記録媒体搬送方向と直交する主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録媒体114の搬送方向と略直交する方向に記録媒体114の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図9(a)の構成に代えて、図9(c)に示すように、複数のノズル161が2次元に配列された短尺のヘッドブロック160’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録媒体114の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル161に対応して設けられている圧力室162は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル161と供給口164が設けられている。各圧力室162は供給口164を介して共通流路165と連通されている。共通流路165はインク供給源たるインク供給タンク(不図示)と連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは共通流路165を介して各圧力室162に分配供給される。
圧力室162の天面を構成し共通電極と兼用される振動板166には個別電極167を備えた圧電素子168が接合されており、個別電極167に駆動電圧を印加することによって圧電素子168が変形してノズル161からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路165から供給口164を通って新しいインクが圧力室162に供給される。
本例では、ヘッド160に設けられたノズル161から吐出させるインクの吐出力発生手段として圧電素子168を適用したが、圧力室162内にヒータを備え、ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させるサーマル方式を適用することも可能である。
かかる構造を有するインク室ユニット163を図9(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット163を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル161が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
また、本発明の適用範囲はライン型ヘッドによる印字方式に限定されず、記録媒体114の幅方向(主走査方向)の長さに満たない短尺のヘッドを記録媒体114の幅方向に走査させて当該幅方向の印字を行い、1回の幅方向の印字が終わると記録媒体114の幅方向と直交する方向(副走査方向)に所定量だけ移動させて、次の印字領域の記録媒体114の幅方向の印字を行い、この動作を繰り返して記録媒体114の印字領域の全面にわたって印字を行うシリアル方式を適用してもよい。
図11は、画像形成装置100のシステム構成を示す要部ブロック図である。画像形成装置100は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ184等を備えている。
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース170にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介して画像形成装置100に取り込まれ、一旦メモリ174に記憶される。
メモリ174は、通信インターフェース170を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ172を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ174は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従って画像形成装置100の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ172は、通信インターフェース170、メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178等の各部を制御し、ホストコンピュータ186との間の通信制御、メモリ174の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188やヒータ189を制御する制御信号を生成する。
メモリ174には、システムコントローラ172のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、メモリ174は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ174は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
プログラム格納部190には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ172の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部190はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、プログラム格納部190は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示にしたがってモータ188を駆動するドライバである。図11には、装置内の各部に配置されるモータ(アクチュエータ)を代表して符号188で図示されている。例えば、図11に示すモータ188には、図8の圧胴126a〜126dや渡し胴124a〜124d、排紙胴150を駆動するモータなどが含まれている。
ヒータドライバ178は、システムコントローラ172からの指示にしたがって、ヒータ189を駆動するドライバである。図11には、画像形成装置100に備えられる複数のヒータを代表して符号189で図示されている。例えば、図11に示すヒータ189には、図8に示す用紙予熱ユニット128、134や浸透抑制剤乾燥ユニット132、処理液乾燥ユニット138、溶媒乾燥ユニット142a、142bのヒータなどが含まれている。
光沢条件設定部173は、ユーザの指示に従って画像の光沢条件を設定する光沢条件設定手段として機能する。光沢条件設定部173によって設定された光沢条件は、システムコントローラ172に通知される。例えば、複数の光沢条件を所定のメモリ(例えば、メモリ174)に記憶しておき、これらの光沢条件の中からユーザが所望の光沢条件を選択するようにしてもよい。また、光沢条件は領域毎に設定できることが好ましい。光沢条件設定部173で設定された光沢条件に応じて、システムコントローラ172を介して、UV光照射制御部179や透明UVインク打滴制御部180aの制御が実行される。
UV光照射制御部179は、UV光照射手段191から照射されるUV光の照射タイミング、照射強度、その他照射条件(照射時間、照射間隔など)を制御する制御部である。図11には、画像形成装置100に備えられる複数のUV光照射手段を代表して符号191で図示されている。例えば、図11に示すUV光照射手段191には、図8に示す第1のUVランプ148a、148bや第2のUVランプ156が含まれている。光沢条件設定部173で設定可能な画像の光沢条件毎に、各UVランプ148a、148b、156の最適な照射タイミング、照射強度、その他照射条件(照射時間、照射間隔など)が予め求められ、データテーブル化されて所定のメモリ(例えば、メモリ174)に記憶され、光沢条件設定部173で画像の光沢条件が設定されると、当該メモリを参照して各UVランプ148a、148b、156の照射タイミング、照射強度、その他照射条件(照射時間、照射間隔など)が制御される。
本例の画像形成装置100には、上述したように、複数のUVランプ148a、148b、156が備えられる。各UVランプ148a、148b、156の照射タイミングや照射強度を制御することによって、画像の光沢感(表面形状)を制御することができ、異なる光沢感の画像を実現することができる。例えば、第1のUVランプ148a、148bで記録媒体114との界面付近の透明UVインクを高粘度化して記録媒体114への透明UVインクの浸透を抑制しつつ、第2のUVランプ156によって透明UVインクの内部から表面まで硬化させることができる。各UVランプ148a、148b、156の照射時間や照射間隔、照射強度を制御するのに代えて(或いは、これらの制御とともに)、記録媒体114が搬送される速度を制御するようにしてもよいし、各UVランプ148a、148b、156の位置を変化させるようにしてもよい。
光沢測定部158は、記録媒体114の表面(透明UVインクが付与された面側)の光沢度を測定し、その結果をシステムコントローラ172に通知する。例えば、記録媒体10上に形成されたテストパターンの光沢度を測定する。システムコントローラ172は、光沢測定部158で測定された光沢度に応じて、各UVランプ148a、148b、156の照射条件(UV光照射タイミング、照射強度など)や透明UVインクヘッド146の打滴条件(打滴量、打滴数、打滴密度)の調整が行われる。
プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、メモリ174内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ184に供給する制御部である。プリント制御部180において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ184を介してヘッド192の吐出液滴量(打滴量)や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。なお、図11には、画像形成装置100に備えられる複数のヘッド(インクジェットヘッド)を代表して符号192で図示されている。例えば、図11に示すヘッド192には、図8の浸透抑制剤ヘッド130、処理液ヘッド136、インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140B、透明UVインクヘッド146が含まれている。
また、プリント制御部180には、図8に示す透明UVインクヘッド146の打滴条件(打滴量、打滴数、打滴密度)を制御する透明UVインク打滴制御部180aが設けられている。透明UVインク打滴制御部180aは、光沢条件設定部173で設定された光沢条件に応じて、透明UVインクヘッド146の打滴条件を制御する。
また、プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ184は、プリント制御部180から与えられる画像データに基づいてヘッド192の圧電素子168に印加される駆動信号を生成するとともに、該駆動信号を圧電素子168に印加して圧電素子168を駆動する駆動回路を含んで構成される。なお、図11に示すヘッドドライバ184には、ヘッド192の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印字検出部144は、図8で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録媒体114に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部180に提供する。プリント制御部180は、必要に応じて印字検出部144から得られる情報に基づいてヘッド192に対する各種補正を行う。
このように構成された画像形成装置100の作用について説明する。
給紙部102の給紙台120からフィーダボード122に記録媒体114が送り出される。記録媒体114は、渡し胴124aを介して、浸透抑制処理部104の圧胴126aに保持され、用紙予熱ユニット128によって予備加熱され、浸透抑制剤ヘッド130によって浸透抑制剤が打滴される。その後、圧胴126aに保持された記録媒体114は、浸透抑制剤乾燥ユニット132によって加熱され、浸透抑制剤の溶媒成分(液体成分)が蒸発し、乾燥する。
こうして浸透抑制処理が行われた記録媒体114は、浸透抑制処理部104の圧胴126aから渡し胴124bを介して、処理液付与部106の圧胴126bに受け渡される。圧胴126bに保持された記録媒体114は、用紙予熱ユニット134によって予備加熱され、処理液ヘッド136によって処理液が打滴される。その後、圧胴126bに保持された記録媒体114は、処理液乾燥ユニット138によって加熱され、処理液の溶媒成分(液体成分)が蒸発し、乾燥する。これにより、記録媒体114上には固体状又は半固溶状の凝集処理剤層が形成される。
処理液が付与されて固体状又は半固溶状の凝集処理剤層が形成された記録媒体114は、処理液付与部106の圧胴126bから渡し胴124cを介して、印字部108の圧胴126cに受け渡される。圧胴126bに保持された記録媒体114には、入力画像データに応じて、各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bからそれぞれ対応する色インクが打滴される。
凝集処理剤層上にインク液滴が着弾すると、飛翔エネルギーと表面エネルギーとのバランスにより、インク液滴と凝集処理剤層との接触面が所定の面積にて着弾する。インク液滴が凝集処理剤上に着弾した直後に凝集反応が始まるが、凝集反応はインク液滴と凝集処理剤層との接触面から始まる。凝集反応は接触面近傍のみで起こり、インク着弾時における所定の接触面積で付着力を得た状態でインク内の色材が凝集されるため、色材移動が抑止される。
このインク液滴に隣接して他のインク液滴が着弾しても先に着弾したインクの色材は既に凝集化しているので後から着弾するインクとの間で色材同士が混合せず、ブリードが抑止される。なお、色材の凝集後には、分離されたインク溶媒が広がり、凝集処理剤が溶解した液体層が記録媒体114上に形成される。
そして、圧胴126cに保持された記録媒体114は溶媒乾燥ユニット142a、142bによって加熱され、記録媒体114上でインク凝集体と分離した溶媒成分(液体成分)は蒸発し、乾燥する。この結果、記録媒体114のカールが防止されるとともに、溶媒成分に起因する画像品質の劣化を抑えることができる。
印字部108によって色インクが付与された記録媒体114は、印字部108の圧胴126cから渡し胴124dを介して、透明UVインク付与部110の圧胴126dに受け渡される。圧胴126dに保持された記録媒体114は、印字検出部144によって印字部108の印字結果が読み取られた後、透明UVインクヘッド146から記録媒体114上の色インクに重なるように透明UVインクが打滴される。このとき、透明UVインクヘッド146の打滴条件(打滴量、打滴数、打滴密度)は、光沢条件設定部173で設定された光沢条件に応じて、透明UVインク打滴制御部180aにより制御が行われる。
続いて、圧胴126dに保持された記録媒体114は、第1のUVランプ148a、148bに対向する位置を通過し、圧胴126dから排紙胴150に受け渡され、排紙用チェーン154によって排紙台152まで搬送されるときに第2のUVランプ156に対向する位置を通過する。そして、排紙用チェーン154によって排紙台152の上方に搬送され、排紙台152上に積載される。
各UVランプ148a、148b、156の照射条件(照射タイミング、照射強度など)は、光沢条件設定部173で設定された光沢条件に応じて、UV光照射制御部179により制御が行われる。例えば、グロス部とマット部を混在させる場合には、記録媒体114上に透明UVインクが打滴された後、記録媒体114が第1のUVランプ148a、148bに対向する位置を通過する際、第1のUVランプ148a、148bによって透明UVインクにUV光が照射され、透明UVインクは記録媒体114との界面が高粘度化し、記録媒体114への透明UVインクの浸透が抑制される。更に、その後、記録媒体114が第2のUVランプ156に対向する位置を通過する際、第2のUVランプ156によって透明UVインクにUV光が照射され、記録媒体114上の透明UVインクは表面から内部まで硬化した状態となる。これにより、所望の光沢感の画像を実現することができる。
このように本実施形態の画像形成装置100によれば、光沢条件(印刷条件)に応じて、記録媒体114上に透明UVインクが打滴されてからUV光が照射されるまでの時間(UV光照射タイミング)やUV光の照射強度を制御することにより、異なる光沢感の画像を実現することができる。従って、濡れ性の異なる透明UVインクを用いる必要がなく、異なる光沢感の小部数印刷物を効率良く出力することができる。
また、光沢条件に応じて、透明UVインクの打滴数(打滴量)や打滴密度を制御する態様が好ましく、画像の光沢感を多段階的に変化させることができる。
図12は、本発明に係る画像形成方法が適用された画像形成装置の他の例を示した概略構成図である。図12中、図8と共通又は類似する部材には同一の番号を付して説明を省略する。
図12に示す画像形成装置200は、記録媒体114の両面に印刷可能な両面機である。この画像形成装置200は、記録媒体114の搬送方向(図12の右から左へ向かう方向)の上流側から順に、給紙部102と、第1の浸透抑制処理部104Aと、第1の処理液付与部106Aと、第1の印字部108Aと、第1の透明UVインク付与部110Aと、記録媒体114の記録面(画像形成面)の反転を行う反転部202と、第2の浸透抑制処理部104Bと、第2の処理液付与部106Bと、第2の印字部108Bと、第2の透明UVインク付与部110B、排紙部112とを備えている。つまり、反転部202の前後に、図8に示す画像形成装置100の浸透抑制処理部104、処理液付与部106、印字部108、及び透明UVインク付与部110をそれぞれ配置した構成に相当するものである。
本例の画像形成装置200では、まず、図8に示す画像形成装置100と同様にして、給紙部102から給紙された記録媒体114の一方の面に対して、第1の浸透抑制処理部104A、第1の処理液付与部106A、第1の印字部108A、及び第1の透明UVインク付与部110Aによって、浸透抑制処理、処理液の打滴、色インクの打滴、透明UVインクの打滴などが順次行われる。
このようにして記録媒体114の一方の面に画像が形成された後、第1の透明UVインク付与部110Aの圧胴126dから渡し胴206を介して、記録媒体114が反転胴204に受け渡される際、記録媒体114の反転が行われる。なお、記録媒体114の反転機構は公知のものを適用すればよいため具体的な説明については省略する。また、反転胴204の表面に対向する位置には、第2のUVランプ156が設けられており、第1の透明UVインク付与部110Aの第1のUVランプ148a、148bとともに、記録媒体114上に付与された透明UVインクを硬化させる役割を果たしている。
反転後の記録媒体114は、反転胴204から渡し胴208を介して、第2の浸透抑制処理部104Bの圧胴126aに受け渡される。そして、記録媒体114の他方の面に対して、第2の浸透抑制処理部104B、第2の処理液付与部106B、第2の印字部108B、及び第2の透明UVインク付与部110Bによって、浸透抑制処理、処理液の打滴、色インクの打滴、透明UVインクの打滴などが順次行われる。
このようにして記録媒体114の両面に画像が形成された後、記録媒体114は、排紙用チェーン154によって排紙台152の上方に搬送され、排紙台152上に積載される。
以上、本発明の画像形成装置及び画像形成方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
10…記録媒体、12…インクジェットヘッド(色インク用ヘッド)、14…インクジェットヘッド(透明UVインク用ヘッド)、16…UV光照射部、18…透明UVインク層(ニスコート層)、20…UV光源、22…UV光照射制御部、100…画像形成装置、102…給紙部、104…浸透抑制処理部、106…処理液付与部、108…印字部、110…透明UVインク付与部、112…排紙部、114…記録媒体、124a〜124d…渡し胴、126a〜126d…圧胴、128…用紙予熱ユニット、130…浸透抑制剤ヘッド、132…浸透抑制剤乾燥ユニット、134…用紙予熱ユニット、136…処理液ヘッド、138…処理液乾燥ユニット、140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140B…インクヘッド、142a、142b…溶媒乾燥ユニット、144…印字検出部、146…透明UVインクヘッド、148a、148b…第1のUVランプ、150…排紙胴、156…第2のUVランプ、158…光沢測定部、160…ヘッド、173…光沢条件設定部、179…UV光照射制御部、180…プリント制御部、180a…透明UVインク打滴制御部、200…画像記録装置、202…反転部、204…反転胴、206、208…渡し胴