ところが、特許文献1及び特許文献2に示されたものでは、共に、閉回路からの洩れ油量が大きくなり、この洩れ油量が補給用の油圧ポンプ(特許文献1では上記補給ポンプ、特許文献2では上記容量操作用油圧ポンプ)を上回ると、該補給用油圧ポンプ備えているにも拘らず、その吐出量では上記洩れ油量を補充し切れず、該閉回路の作動油不足を解消できなくなるという問題が起こり得る。
さらに、上記特許文献1に示されたものでは、
(イ)作業用アクチュエータとなる油圧シリンダには常にピストンの低圧側にチャージング圧が作用する構成であることからチャージング圧力分だけ出力が低下する。また、上記閉回路に作動油不足が生じ、上記補給ポンプからの吐出油が上記閉回路に補給されると、その分だけ上記作業用アクチュエータへの供給油量が減少し、該作業用アクチュエータの出力低下を招来する、
(ロ)上記作業用アクチュエータが油圧シリンダであって、特に伸長側油室と縮小側油室の面積比が大きい場合には、シリンダ縮小時における伸長側油室からの排出油量が過大となり、チャージング圧確保用バルブの容量を越え、該バルブの適正な機能が損なわれる、(ハ)例えば、作業用アクチュエータとして、油圧モータ等の外部ドレーンを必要とするアクチュエータを使用すると、補給ポンプからの吐出油の一部が系外に洩れ、上記閉回路に必要な油量を確保できない、
等の問題があり、これらのことから、上記作業用アクチュエータとしては限られた構造のものしか適用できない、という問題もある。
そこで本願発明では、閉回路への作動油の補充を的確に行なうことで該閉回路の作動油量を常時適正に維持し得るようにしたチャージングポンプ回路を提案することを目的としてなされたものである。
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
本願の第1の発明では、駆動源20で駆動される第1の油圧ポンプP1からの作動油によって油圧モータ4を駆動し得るようにした閉回路21と、該閉回路21からの作動油の洩れに応じて該閉回路21に作動油を補充する第2の油圧ポンプP2を備えた閉回路のチャージングポンプ回路において、上記第2の油圧ポンプP2による作動油の補充不足を補う第3の油圧ポンプP3を備え、上記第3の油圧ポンプP3は少なくとも上記第2の油圧ポンプP2による上記閉回路21への作動油の補充が追従しない場合に上記閉回路21に作動油を供給することを特徴としている。
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る閉回路のチャージングポンプ回路において、上記第2の油圧ポンプP2と上記閉回路21の間にチエック弁14を介してチャージングライン22を設けるとともに、上記第3の油圧ポンプP3の吐出ライン23を分岐ライン24にて上記チャージングライン22に接続し、さらに上記チャージングライン22にチャージングリリーフ弁12を設け、上記第1の油圧ポンプP1と上記第2の油圧ポンプP2を同軸駆動するとともに、上記第1の油圧ポンプP1がレギュレータ7に供給される油圧によって容量が制御される可変容量ポンプであって、上記レギュレータ7にはパイロット弁5から上記第2の油圧ポンプP2の吐出流量に比例した圧力が供給され、且つ上記パイロット弁5の下流の圧力が上記チャージングリリーフ弁12によって一定に保持される一方、上記パイロット弁5の上流側に、上記第3の油圧ポンプP3から吐出される作動油が所定の圧力に減圧されたのち絞り11を介して供給されることを特徴としている。
本願の第3の発明では、上記第1の発明に係る閉回路のチャージングポンプ回路において、上記第2の油圧ポンプP2と上記閉回路21の間にチエック弁14を介してチャージングライン22を設けるとともに、上記第3の油圧ポンプP3の吐出ライン23を分岐ライン24にて上記チャージングライン22に接続し、さらに上記チャージングライン22にチャージングリリーフ弁12を設け、上記第1の油圧ポンプP1と上記第2の油圧ポンプP2を同軸駆動するとともに、上記第1の油圧ポンプP1がレギュレータ7に供給される油圧によって容量が制御される可変容量ポンプであって、上記レギュレータ7にはパイロット弁5から上記第2の油圧ポンプP2の吐出流量に比例した圧力が供給され、且つ上記パイロット弁5の下流側圧力が上記チャージングリリーフ弁12によって一定に保持される一方、上記第3の油圧ポンプP3から吐出される作動油を、上記チャージングライン22における上記パイロット弁5の下流側で且つ上記チエック弁14の上流側に、所定の圧力に減圧されたのち供給されることを特徴としている。
本願の第4の発明では、上記第2又は第3の発明に係る閉回路のチャージングポンプ回路において、上記第3の油圧ポンプP3の上記吐出ライン23に切換弁9を備え、上記油圧モータ4を駆動しないときには上記切換弁9によって上記閉回路21への作動油の供給を阻止することを特徴としている。
本願の第5の発明では、上記第1の発明に係る閉回路のチャージングポンプ回路において、上記第3の油圧ポンプP3が作業機に備えられたアクチュエータを駆動する油圧ポンプ3で構成され、上記アクチュエータは上記油圧モータ4の駆動状態下では作動中又は作動待機状態にあることを特徴としている。
本願の第6の発明では、上記第1の発明に係る閉回路のチャージングポンプ回路において、上記第3の油圧ポンプP3が電動油圧ポンプ15で構成され、該第3の油圧ポンプP3は上記閉回路21からの作動油の洩れに応じて該閉回路21への作動油の供給が制御されることを特徴としている。
本願の第7の発明では、上記第1の発明に係る閉回路のチャージングポンプ回路において、上記第2の油圧ポンプP2を複数のポンプで構成したことを特徴としている。
本願発明では次のような効果が得られる。
(a)本願の第1の発明に係る閉回路のチャージングポンプ回路によれば、駆動源20で駆動される第1の油圧ポンプP1からの作動油によって油圧モータ4を駆動し得るようにした閉回路21と、該閉回路21からの作動油の洩れに応じて該閉回路21に作動油を補充する第2の油圧ポンプP2を備えた閉回路のチャージングポンプ回路において、上記第2の油圧ポンプP2による作動油の補充不足を補う第3の油圧ポンプP3を備え、上記第3の油圧ポンプP3は少なくとも上記第2の油圧ポンプP2による上記閉回路21への作動油の補充が追従しない場合に上記閉回路21に供給する作動油を増大するようにしているので、上記油圧モータ4等からの作動油の洩れ量が上記第2の油圧ポンプP2の吐出流量を越え、該第2の油圧ポンプP2からの吐出流量では上記洩れ量を補充することができないような場合でも、上記第3の油圧ポンプP3から上記閉回路21へ作動油が供給されることで上記洩れ量が確実に補充され、上記油圧モータ4の適正な出力特性が確保される。
さらに、上記閉回路21においては、上記油圧モータ4の負荷の増大に伴って該閉回路21内の油圧が上昇するとき、これに対応して上記油圧モータ4等からの作動油の洩れ量が増大するものであるところ、この洩れ量が過度に増大したときの緊急避難的な対策として上記第3の油圧ポンプP3から上記閉回路21へ供給する吐出油を増大するようにしたものであり、該第3の油圧ポンプP3によって作動油を増大して補充する時間が上記油圧モータ4の全運転時間に占める割合はそう高くはない。従って、上記第2の油圧ポンプP2の容量設定に際して、上記閉回路21における作動油の洩れが過度に増加しない状態、即ち、上記油圧モータ4の常用使用状態を基準として上記第2の油圧ポンプP2の容量設定を行なうことで、例えば、上記第2の油圧ポンプP2の容量を、過度の作動油漏れにも該第2の油圧ポンプP2によって対処できるように該第2の油圧ポンプP2の容量を大き目に設定する場合に比して、該第2の油圧ポンプP2の容量を比較的小さく抑えることができ、その結果、油圧系全体としてのエネルギー損失を低く抑えることができる。
(b)本願の第2、第3の発明に係る閉回路のチャージングポンプ回路によれば、上記(a)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記第2の油圧ポンプP2と上記閉回路21の間にチエック弁14を介してチャージングライン22を設けるとともに、上記第3の油圧ポンプP3の吐出ライン23を上記チャージングライン22に接続し、さらに上記チャージングライン22にチャージングリリーフ弁12を設けているため、作動油の洩れによって上記閉回路21内の油圧が低下した場合、上記チャージングライン22から上記チエック弁14を介して上記第2の油圧ポンプP2からの吐出油が上記閉回路21側に供給される。
この場合、上記第2の油圧ポンプ2からの吐出油量によって上記閉回路21側の洩れ量を補充できるときには、上記チャージングライン22の油圧が上記チャージングリリーフ弁12において規定される油圧以下には低下しないため、上記第3の油圧ポンプP3側からの作動油の供給は行なわれないが、上記第2の油圧ポンプP2からの吐出油量のみでは上記閉回路21側の洩れ量を補充できないときには、上記チャージングライン22の油圧が上記チャージングリリーフ弁12において規定される油圧以下に低下することから、上記第3の油圧ポンプP3側からの作動油が上記チャージングライン22に追加的に供給されて該チャージングライン22の油圧が上記チャージングリリーフ弁12によって規定された油圧に維持され、該チャージングライン22と上記閉回路21の間の差圧に対応する量が該閉回路21側へ供給され、その作動油不足が未然に且つ確実に回避される。 即ち、この発明によれば、簡単な構成で、上記閉回路21における作動油の洩れ量の増大に対応して、上記第2の油圧ポンプP2と第3の油圧ポンプP3の双方から上記閉回路21に作動油を供給して作動油不足を回避できるものであって、油圧系の適正な作動特性の維持と低コスト化の両立が図れるものである。
(c)特に、第2の発明では、上記第1の油圧ポンプP1と上記第2の油圧ポンプP2を同軸駆動するとともに、上記第1の油圧ポンプP1をレギュレータ7に供給される油圧によって容量が制御される可変容量ポンプとし、上記レギュレータ7にパイロット弁5から上記第2の油圧ポンプP2の吐出流量に比例した圧力を供給するとともに、上記パイロット弁5の下流の圧力を上記チャージングリリーフ弁12によって一定に保持する一方、上記パイロット弁5の上流側に、上記第3の油圧ポンプP3から吐出される作動油を所定の圧力に減圧したのち絞り11を介して供給するようにしている。
従って、上記第1の油圧ポンプP1の回転数が上記駆動源の回転数の増加に応じて増加されるとともに、その容量が、上記駆動源の回転数の増加に応じて増加される上記第2の油圧ポンプP2の吐出流量に比例した圧力が上記パイロット弁5から上記レギュレータ7に供給されることで増加される制御形態、即ち、上記駆動源の回転数の増加に応じて上記第1の油圧ポンプP1の回転数と容量が共に増加される制御特性をもつものにおいて、上記パイロット弁5の上流側に上記第3の油圧ポンプP3から吐出される作動油を供給したとしても(即ち、上記第2の油圧ポンプP2の吐出油量とは別に上記第3の油圧ポンプP3からの油量が追加供給されても)、この第3の油圧ポンプP3からの吐出油は所定の圧力に減圧されたのち上記絞り11を介して供給されることで、その供給油量は上記絞り11の前後の差圧に対応した油量に規制されるので、上記第2の油圧ポンプP2の吐出流量に比例した圧力が上記パイロット弁5から上記レギュレータ7に供給されることで上記第1の油圧ポンプP1の容量が増加されるという制御特性は略維持されることになる。
また、上記閉回路21での作動油の洩れが増加し、これに伴って上記チャージングライン22の油圧が、上記パイロット弁5の上流側及び下流側でそれぞれ低下する場合、この油圧の低下に伴い、上記絞り11の上流側と下流側の間の差圧に応じた油量が上記第3の油圧ポンプP3から上記チャージングライン22側へ供給されるので、上記閉回路21での作動油の洩れに伴う作動油不足が確実に回避されることになる。
(d)本願の第3の発明に係る閉回路のチャージングポンプ回路では、上記(a)(b)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記第1の油圧ポンプP1と上記第2の油圧ポンプP2を同軸駆動するとともに、上記第1の油圧ポンプP1をレギュレータ7に供給される油圧によって容量が制御される可変容量ポンプとし、上記レギュレータ7にパイロット弁5から上記第2の油圧ポンプP2の吐出流量に比例した圧力を供給するとともに、上記パイロット弁5の下流の圧力を上記チャージングリリーフ弁12によって一定に保持する一方、上記パイロット弁5の上流側に、上記第3の油圧ポンプP3から吐出される作動油を所定の圧力に減圧したのち絞り11を介して供給するようにしている。
従って、上記第1の油圧ポンプP1の回転数が上記駆動源の回転数の増加に応じて増加されるとともに、その容量が、上記駆動源の回転数の増加に応じて増加される上記第2の油圧ポンプP2の吐出流量に比例した圧力が上記パイロット弁5から上記レギュレータ7に供給されることで増加される制御形態、即ち、上記駆動源の回転数の増加に応じて上記第1の油圧ポンプP1の回転数と容量が共に増加される制御特性をもつものにおいて、上記パイロット弁5の上流側に上記第3の油圧ポンプP3から吐出される作動油を供給したとしても(即ち、上記第2の油圧ポンプP2の吐出油量とは別に上記第3の油圧ポンプP3からの油量が追加供給されても)、この第3の油圧ポンプP3からの吐出油は所定の圧力に減圧されたのち上記絞り11を介して供給されることで、その供給油量は上記絞り11の前後の差圧に対応した油量に規制されるので、上記第2の油圧ポンプP2の吐出流量に比例した圧力が上記パイロット弁5から上記レギュレータ7に供給されることで上記第1の油圧ポンプP1の容量が増加されるという制御特性は略維持されることになる。
また、上記閉回路21での作動油の洩れが増加し、これに伴って上記チャージングライン22の油圧が、上記パイロット弁5の上流側及び下流側でそれぞれ低下する場合、この油圧の低下に伴い、上記絞り11の上流側と下流側の間の差圧に応じた油量が上記第3の油圧ポンプP3から上記チャージングライン22側へ供給されるので、上記閉回路21での作動油の洩れに伴う作動油不足が確実に回避されることになる。
(e)本願の第4の発明に係る閉回路のチャージングポンプ回路では、上記(c)又は(d)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記第3の油圧ポンプP3の上記吐出ライン23に切換弁9を備え、上記油圧モータ4を駆動しないときには上記切換弁9によって上記閉回路21への作動油の供給を阻止するようにしているので、上記油圧モータ4を駆動しないときには、上記第3の油圧ポンプP3の吐出油量の全量を上記油圧モータ4以外のアクチュエータの駆動に用いることで、該アクチュエータの必要油量を確保することができる。
(e)本願の第5の発明に係る閉回路のチャージングポンプ回路によれば、上記(a)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記第3の油圧ポンプP3を作業機に備えられたアクチュエータを駆動する油圧ポンプ3で構成するとともに、上記アクチュエータを、上記油圧モータ4の駆動状態下では作動中又は作動待機状態とするように構成しているので、上記油圧モータ4の駆動状態下では、上記アクチュエータが作動中又は作動待機状態であって、上記第3の油圧ポンプP3から作動油が吐出されている。
従って、係る状態においては、上記第3の油圧ポンプP3からの吐出油を上記閉回路21への作動油の洩れ補充に充てることができ、例えば、アクチュエータの作動中又は作動待機状態において余剰油を単にタンク側にリターンさせる構成とする場合に比して、油圧系全体のエネルギー損失を低減させて高効率化を図ることができる。
さらに、上記第3の油圧ポンプP3は、上記油圧モータ4の作動中、常時作動油を吐出するが、この第3の油圧ポンプP3の吐出油量は、アクチュエータの作動の確実性を担保する等の観点から、該アクチュエータの必要油量よりも多目に設定されており、この多目に設定された油量は、上記アクチュエータの作動中にはその一部が余剰油として、また上記アクチュエータの作動待機状態ではその全量が余剰油として、それぞれタンクに戻される。この場合、上記アクチュエータの作動中又は作動待機状態下において上記第3の油圧ポンプP3から吐出される作動油を上記閉回路21の作動油洩れの補充用に用いることで、余剰油としてタンクに戻される油量を減少させることができ、その分だけ油圧系全体のエネルギー損失を低減させて高効率化を図ることが可能となる。
また、例えば、上記第1の油圧ポンプP1からの吐出油によって駆動される上記油圧モータ4を走行式作業機の駆動源として利用する場合には、該第1の油圧ポンプP1とは異なる別の油圧ポンプからの吐出油をブレーキ機構のブレーキ圧として用いることが必要であるが、この場合、上記第3の油圧ポンプP3をブレーキ圧確保用の油圧ポンプとして利用したとき、ブレーキ非作動時にはブレーキ圧確保用の油圧が無駄となるが、このブレーキ圧確保用の油圧を上記閉回路21の作動油の洩れ補充に利用することで、作動油の有効利用、延いては油圧系全体のエネルギー損失を低減させて高効率化を図ることができる。
(f)本願の第6の発明に係る閉回路のチャージングポンプ回路によれば、上記(a)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記第3の油圧ポンプP3が電動油圧ポンプ15で構成され、該第3の油圧ポンプP3は上記閉回路21からの作動油の洩れに応じて該閉回路21への作動油の供給が制御されるようにしているので、上記閉回路21を含む油圧回路全体の構成を維持したまま、上記第3の油圧ポンプP3を付設するという簡単な構成によって、上記閉回路21の作動油の洩れに対する上記第2の油圧ポンプP2からの作動油の補充不足を補うことができる。
(g)本願の第7の発明に係る閉回路のチャージングポンプ回路によれば、上記(a)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明のチャージングポンプ回路では、上記第2の油圧ポンプP2を複数のポンプで構成しているので、通常ならば作動油の洩れが顕著になるところ、この洩れの補充がより効果的に行なわれ、閉回路における作動油不足が未然に且つ確実に回避される。
以下、本願発明を、軌道上を走行する鉄輪と路面を走行するタイヤ輪を備えた車体に、高所作業機等の作業機を搭載してなる軌陸車の油圧回路を例にとり、幾つかの好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
I:第1の実施形態
図1には、本願発明の第1の実施形態に係るチャージングポンプ回路を備えた軌陸車の油圧回路図を示しており、同図において符号20は、次述の閉回路用油圧ポンプ1とチャージング用油圧ポンプ2及び作業機用油圧ポンプ3を同軸駆動するエンジンである。
上記閉回路用油圧ポンプ1は、特許請求の範囲中の「第1の油圧ポンプP1」に該当するものであって、上記エンジン20の回転数に基づいてその回転数が増減制御されるとともに、後述するレギュレータ7を介してその容量が増減制御される可変容量ポンプで構成される。この閉回路用油圧ポンプ1の二つの吐出ポート1a,1bには、それぞれライン21a,21bを介して油圧モータ4の二つの入力ポート4a,4bに接続されており、これら各ライン21a,21bで閉回路21が構成され、上記閉回路用油圧ポンプ1の吐出方向及び吐出量によって上記油圧モータ4の回転方向及び回転速度が制御され、軌陸車の進行方向と走行速度がコントロールされる。
ここで、上記油圧モータ4は、軌陸車の鉄輪の駆動源となるものであり、従って、軌陸車の鉄輪走行時における走行方向は上記閉回路用油圧ポンプ1の作動油吐出方向によって、また走行速度は上記閉回路用油圧ポンプ1の回転数と容量によって、それぞれ制御される。
一方、上記閉回路21内の作動油の油量は、上記油圧モータ4や閉回路用油圧ポンプ等からの作動油の洩れによって減少し、この作動油の減少は上記油圧モータ4の出力低下、走行速度の低下として現れ、何れも軌陸車の性能低下につながることから、係る作動油不足を回避することが必要である。なお、以下の説明においては、この作動油の洩れとして、油圧モータ4からの洩れを代表して説明を行う。
このため、上記チャージング用油圧ポンプ2(特許請求の範囲中の「第2の油圧ポンプP2」に該当する)を設け、該チャージング用油圧ポンプ2からの吐出油を上記閉回路21に補充するようにしている。即ち、上記チャージング用油圧ポンプ2の吐出ポートに接続されたチャージングライン22を、上記閉回路21のライン21aとライン21bにそれぞれチエック弁14を介して接続し、上記チャージング用油圧ポンプ2からの吐出油を上記閉回路21側へ供給し得るようにしている。また、上記チャージングライン22にはチャージングリリーフ弁12が設けられている。このチャージングリリーフ弁12の設定圧は、上記閉回路21に必要とされる圧力に設定される。
さらに、この実施形態では、上記チャージング用油圧ポンプ2の吐出圧を上記閉回路用油圧ポンプ1の容量制御圧として利用するようにしている。即ち、上記チャージングライン22にはパイロット弁5が介設されるとともに、該パイロット弁5からの圧力ライン25は、4ポート三位置電磁切換式の方向切換弁6を介して、上記閉回路用油圧ポンプ1のレギュレータ7の二つの入力ポート7a,7bに対して選択的に接続可能とされている。
上記パイロット弁5は、三ポート二位置油圧切換式の方向切換弁で構成され、上記チャージング用油圧ポンプ2から上記チャージングライン22へ吐出される作動油の一部を、上記方向切換弁6を介して上記レギュレータ7側へ供給するようになっている。また、上記チャージングライン22の上記パイロット弁5側への油圧取出位置よりも上流側には絞り19が設けられ、該絞り19の上流側と下流側からそれぞれパイロット圧が取り出されて上記パイロット弁5の左右のパイロットポートに導入されている。従って、上記パイロット弁5の弁開度、即ち、上記方向切換弁6側への供給油量は、上記絞り19の上流側と下流側の差圧に応じて設定され、差圧が大きいほど供給油量が増大するようになっている。
ここで、上記方向切換弁6を介して上記レギュレータ7の一方の入力ポート7aに上記パイロット弁5からの作動油(即ち、制御油)が入力された場合には、上記閉回路用油圧ポンプ1の一方の吐出ポート1aから作動油が吐出されて上記油圧モータ4が一方向へ回転されるとともに、上記レギュレータ7への供給油量に対応したポンプ容量とされ、該ポンプ容量とその回転数に応じて軌陸車の走行速度が設定される。なお、上記レギュレータ7の他方の入力ポート7bに上記パイロット弁5からの制御油が入力された場合も、同様に他方向への制御が行われる。
上記作業機用油圧ポンプ3は、作業機側に作動油を供給するものであるが、それと同時に、後述のように特許請求の範囲中の「第3の油圧ポンプP3」としても機能するもので、大小二容量切換式の可変容量ポンプで構成されている。そして、この作業機用油圧ポンプ3には、レギュレータ18とパイロットシリンダ17が備えられており、該作業機用油圧ポンプ3から吐出される作動油は、吐出ライン23を介してシーケンス弁8に供給される。そして、上記パイロットシリンダ17に電磁切換弁13側からパイロット圧が導入されたときには、該パイロットシリンダ17によって上記レギュレータ18が小容量側へ作動され、上記作業機用油圧ポンプ3のポンプ容量が小容量に設定される。これに対して、上記パイロットシリンダ17に上記電磁切換弁13側からのパイロット圧が導入されていないときには、上記レギュレータ18が大容量側へ復帰作動し、上記作業機用油圧ポンプ3のポンプ容量が大容量に設定される。
上記シーケンス弁8には、上記油圧モータ4で駆動される鉄輪にブレーキ力を付与するブレーキ機構(図示省略)にブレーキ圧を供給するライン28と、作業機(例えば、クレーン機構)のアクチュエータに作動油を供給するライン29が接続されている。ここで、上記作業機用油圧ポンプ3は、上述のように、ブレーキ圧源として利用されることから、上記油圧モータ4の作動中は常時作動状態にあって上記シーケンス弁8側へ作動油を供給していることが必要であり、このため、この実施形態では上述のように、上記閉回路用油圧ポンプ1及び上記チャージング用油圧ポンプ2と共に、上記エンジン20によって駆動させるようにしている。
以上のような構成の油圧系によれば、上記エンジン20によって上記閉回路用油圧ポンプ1が駆動されると、該閉回路用油圧ポンプ1からの作動油の吐出方向及び吐出油量に応じて上記油圧モータ4が軌陸車を所定速度で前進あるいは後進させる。また、上記チャージング用油圧ポンプ2からの吐出油量に対応した制御圧を受けて上記レギュレータ7が所定方向へ所定量だけ作動することで上記閉回路用油圧ポンプ1の作動油吐出方向(即ち、上記油圧モータ4の回転方向)とポンプ容量が増減制御される。
ここで、上記油圧モータ4における作動油の洩れが少ない場合には、上記閉回路21の油圧が基準圧近くに維持されており、従って、上記チャージング用油圧ポンプ2からの作動油の補充は十分に行われる。この場合、パイロット弁5下流側圧力は上記チャージングリリーフ弁12によって設定圧に保持され、余剰油は該チャージングリリーフ弁12からタンクに戻される。
一方、例えば、油圧モータ4が高負荷運転されて該油圧モータ4からの作動油の洩れが増加し、その油圧が上記チャージングリリーフ弁12の設定圧以下に低下すると、上記チャージング用油圧ポンプ2から吐出される作動油が増加し、該閉回路21内の漏れ油量が補充される。従って、上記閉回路21の作動油不足が未然に防止され、上記閉回路用油圧ポンプ1による上記油圧モータ4の駆動特性が適正に維持される。
ところが、以上のような作動油の補充による効果は、上記チャージング用油圧ポンプ2からの吐出油量によって上記閉回路21側の漏れ油量が補われることを前提として成立するものであって、例えば、上記閉回路21側の漏れ油量が上記チャージング用油圧ポンプ2からの吐出油量を上回った状態では、いくら上記チャージング用油圧ポンプ2側から作動油を補充しても、上記閉回路21の作動油不足を解消することはできない。このような状態は、例えば、上記油圧モータ4が高負荷運転されるような場合、例えば、鉄輪の走行抵抗が過大であるとか、登坂走行状態であるとか、作業車が重量物を牽引して走行するような場合に起こり得るものである。
このように、上記チャージング用油圧ポンプ2の吐出油量によって上記閉回路21側の漏れ油量を補えなくなった場合の対策として、この実施形態では次述のように、上記作業機用油圧ポンプ3を利用するようにしている。
即ち、上記作業機用油圧ポンプ3の吐出ライン23から分岐ライン24を設け、その下流端を上記チャージングライン22の上記チャージング用油圧ポンプ2と上記パイロット弁5の中間位置に接続している。さらに、この分岐ライン24には、油圧作動式の切換弁9と、減圧弁10及びオリフィス11が、上流側から下流側へ向けて順次設けられている。
上記切換弁9のパイロットポートには、上記パイロットライン31が接続されており、上記電磁切換弁13の切換えに伴って切換えられる。具体的には、上記電磁切換弁13は上記油圧モータ4の作動時にはOFF作動とされ、上記パイロットライン31にパイロット圧を供給するように構成されている。従って、上記切換弁9は、上記油圧モータ4の作動時には、上記パイロットライン31からのパイロット圧を受けて、上記分岐ライン24を開き、上記吐出ライン23側の作動油を上記減圧弁10及びオリフィス11を介して上記チャージングライン22側へ供給することになる。この場合、上述のように、上記パイロットシリンダ17にも上記パイロット圧が供給されており、上記作業機用油圧ポンプ3のポンプ容量が小容量に設定されているため、上記分岐ライン24から上記チャージングライン22側への作動油の供給油量は、上記油圧モータ4の非作動時よりも少ないものとなっている。これにより、ポンプ3の吐出流量を作業時の低回転時に設定された大流量から、軌陸車を走行する高回転時のチャージング用に適した小流量に抑えている。
これに対して、上記油圧モータ4の作動時には、上記電磁切換弁13がON作動とされ、上記パイロットライン31にパイロット圧が供給されないため、上記切換弁9によって上記分岐ライン24が開成され、上記チャージングライン22側への作動油の供給は停止される。なお、この場合、上述のように、上記パイロットシリンダ17にも上記パイロット圧が供給されないため、上記作業機用油圧ポンプ3のポンプ容量は大容量に設定されており、作業中におけるポンプ回転数が低い状態において上記シーケンス弁8を介して接続されるアクチュエータの必要油量が確保される。
上記減圧弁10は、上記分岐ライン24のオリフィス11上流の最高油圧を規定するもので、この実施形態では、装置の設定圧を上記チャージングリリーフ弁12の設定圧よりも高い圧力に設定している。
上記オリフィス11は、上記吐出ライン23の作動油が上記分岐ライン24を介して上記チャージングライン22側へ過度に供給され、上記シーケンス弁8側への供給油量が過度に減量されてアクチュエータの作動に悪影響が及ぶのを回避することと、該オリフィス11の前後(即ち、上記減圧弁10の下流側と上記チャージングライン22側)に差圧を発生させ、差圧に対応する油量を上記チャージングライン22側へ供給すること、を目的とするものである。
このような構成とすることで、以下のような作用効果が得られる。
(イ) この実施形態のチャージングポンプ回路によれば、エンジン20で駆動される閉回路用油圧ポンプ1からの作動油によって油圧モータ4を駆動し得るようにした閉回路21と、該閉回路21からの作動油の洩れに応じて該閉回路21に作動油を補充するチャージング用油圧ポンプ2を備えたものにおいて、上記チャージング用油圧ポンプ2による作動油の補充不足を補うために上記作業機用油圧ポンプ3を備える。そして、上記作業機用油圧ポンプ3を、上記チャージング用油圧ポンプ2による上記閉回路21への作動油の補充が追従しない場合に上記閉回路21に供給する作動油を増大するようにしているので、上記油圧モータ4等からの作動油の洩れ量が上記チャージング用油圧ポンプ2の吐出流量を越え、該チャージング用油圧ポンプ2からの吐出流量では上記洩れ量を補充することができないような場合でも、上記作業機用油圧ポンプ3から上記閉回路21へ作動油が供給されることで上記洩れ量が確実に補充され、上記油圧モータ4の適正な出力特性が確保されることになる。
(ロ) 上記閉回路21においては、上記油圧モータ4の負荷の増大に伴って該閉回路21内の油圧が上昇するとき、これに対応して上記油圧モータ4等からの作動油の洩れ量が増大するものであるところ、この洩れ量が過度に増大したときの緊急避難的な対策として上記作業機用油圧ポンプ3から上記閉回路21へ供給する吐出油を増大するようにしたものであり、該作業機用油圧ポンプ3によって作動油を増大して補充する時間が上記油圧モータ4の全運転時間に占める割合はそう高くはないことから、上記チャージング用油圧ポンプ2の容量設定に際して、上記閉回路21における作動油の洩れが過度に増加しない状態、即ち、上記油圧モータ4の常用使用状態を基準として上記チャージング用油圧ポンプ2の容量設定を行なうことで、例えば、上記チャージング用油圧ポンプ2の容量を、過度の作動油漏れにも該チャージング用油圧ポンプ2によって対処できるように該チャージング用油圧ポンプ2の容量を大き目に設定する場合に比して、該チャージング用油圧ポンプ2の容量を比較的小さく抑えることができ、その結果、油圧系全体としてのエネルギー損失を低く抑えることができる。
(ハ) 本実施形態のチャージングポンプ回路では、少なくとも上記チャージング用油圧ポンプ2と上記閉回路21の間に上記チエック弁14を介して上記チャージングライン22を設けるとともに、上記作業機用油圧ポンプ3の吐出ライン23を上記チャージングライン22に接続し、さらに上記チャージングライン22にチャージングリリーフ弁12を設けている。このため、作動油の洩れによって上記閉回路21内の油圧が低下した場合、上記チャージングライン22から上記チエック弁14を介して上記チャージング用油圧ポンプ2からの吐出油が上記閉回路21側に供給される。
この場合、上記チャージング用油圧ポンプ2からの吐出油量によって上記閉回路21側の洩れ量を補充できるときには、上記チャージングライン22の油圧が上記チャージングリリーフ弁12において規定される油圧以下には低下しないため、上記作業機用油圧ポンプ3側からの作動油の供給は行なわれない。しかし、上記チャージング用油圧ポンプ2からの吐出油量のみでは上記閉回路21側の洩れ量を補充できないときには、上記チャージングライン22の油圧が上記チャージングリリーフ弁12において規定される油圧以下に低下することから、上記作業機用油圧ポンプ3側からの作動油が上記チャージングライン22に追加的に供給されて該チャージングライン22の油圧が上記チャージングリリーフ弁12によって規定された油圧に維持され、該チャージングライン22と上記閉回路21の間の差圧に対応する油量が該閉回路21側へ供給され、その作動油不足が未然に且つ確実に回避される。即ち、簡単な構成で、上記閉回路21における作動油の洩れ量の増大に対応して、上記チャージング用油圧ポンプ2と作業機用油圧ポンプ3の双方から上記閉回路21に作動油を供給して作動油不足を回避できるものであって、油圧系の適正な作動特性の維持と低コスト化の両立が図れるものである。
(ニ) 上記閉回路用油圧ポンプ1と上記チャージング用油圧ポンプ2を同軸駆動するとともに、上記閉回路用油圧ポンプ1を上記レギュレータ7に供給される油圧によって容量が制御される可変容量ポンプとし、上記レギュレータ7に上記パイロット弁5から上記チャージング用油圧ポンプ2の吐出流量に比例した圧力を供給するとともに、上記パイロット弁5の下流の圧力を上記チャージングリリーフ弁12によって一定に保持する。さらに、上記パイロット弁5の上流側に、上記作業機用油圧ポンプ3から吐出される作動油を所定の圧力に減圧したのち上記オリフィス11を介して供給するようにしている。
係る構成により、上記閉回路用油圧ポンプ1の回転数が上記エンジン20の回転数の増加に応じて増加されるとともに、その容量が、上記エンジン20の回転数の増加に応じて増加される上記チャージング用油圧ポンプ2の吐出流量に比例した圧力が上記パイロット弁5から上記レギュレータ7に供給されることで増加されるという制御形態、即ち、上記エンジン20の回転数の増加に応じて上記閉回路用油圧ポンプ1の回転数と容量が共に増加されるという制御特性をもつ油圧回路構成において、上記パイロット弁5の上流側に上記作業機用油圧ポンプ3から吐出される作動油を供給したとしても(即ち、上記チャージング用油圧ポンプ2の吐出油量とは別に上記作業機用油圧ポンプ3からの油量が追加供給されても)、この作業機用油圧ポンプ3からの吐出油は上記減圧弁10において所定の圧力に減圧されたのち上記オリフィス11を介して供給されることで、その供給油量は上記オリフィス11の前後の差圧に対応した油量に規制される。従って、上記チャージング用油圧ポンプ2の吐出流量に比例した圧力が上記パイロット弁5から上記レギュレータ7に供給されることで上記閉回路用油圧ポンプ1の容量が増加される、という制御特性は略維持されることになる。
なお、この場合、「制御特性は略維持される」ものであって、上記作業機用油圧ポンプ3からの作動油の補充を行なわない場合と同一の制御特性が得られるものではなく、「制御特性の傾向が維持される」ものである。従って、上記作業機用油圧ポンプ3からの作動油の補充が行なわれる場合の制御特性を、該補充が行なわれない場合の制御特性に可及的に近づけるためには、上記パイロット弁5のバネ圧を調整すれば良い。
また、上記閉回路21での作動油の洩れが増加し、これに伴って上記チャージングライン22の油圧が、上記パイロット弁5の上流側及び下流側でそれぞれ低下する場合、この油圧の低下に伴い、上記オリフィス11の上流側と下流側の間の差圧に応じた油量が上記作業機用油圧ポンプ3から上記チャージングライン22側へ供給されるので、上記閉回路21での作動油の洩れに伴う作動油不足は確実に回避されることになる。
(ホ) 上記作業機用油圧ポンプ3の上記吐出ライン23に上記切換弁9を備え、上記油圧モータ4を駆動しないときには上記切換弁9によって上記閉回路21への作動油の供給を阻止するようにしているので、上記油圧モータ4を駆動しないときには、上記作業機用油圧ポンプ3の吐出油量の全量を上記油圧モータ4以外のアクチュエータの駆動に用いることで、該アクチュエータの必要油量を確保することができる。
(ヘ) 上記作業機用油圧ポンプ3を作業機に備えられたアクチュエータを駆動する油圧ポンプとして構成するとともに、上記アクチュエータを、上記油圧モータ4の駆動状態下では作動中又は作動待機状態とするように構成しているので、上記油圧モータ4の駆動状態下においては、上記アクチュエータが作動中又は作動待機状態となっており、上記作業機用油圧ポンプ3からは作動油が吐出されている。
従って、係る状態においては、上記作業機用油圧ポンプ3からの吐出油を上記閉回路21への作動油の洩れ補充に充てることができ、例えば、アクチュエータの作動中又は作動待機状態において余剰油を単にタンク側にリターンさせる構成とする場合に比して、油圧系全体のエネルギー損失を低減させて高効率化を図ることができる。
さらに、上記作業機用油圧ポンプ3は、上記油圧モータ4の作動中、常時作動油を吐出するが、この作業機用油圧ポンプ3の吐出油量は、アクチュエータの作動の確実性を担保する等の観点から、該アクチュエータの必要油量よりも多目に設定されており、この多目に設定された油量は、上記アクチュエータの作動中にはその一部が余剰油として、また上記アクチュエータの作動待機状態ではその全量が余剰油として、それぞれタンクに戻される。この場合、上記アクチュエータの作動中又は作動待機状態下において上記作業機用油圧ポンプ3から吐出される作動油を上記閉回路21の作動油洩れの補充用に用いることで、余剰油としてタンクに戻される油量を減少させることができ、その分だけ油圧系全体のエネルギー損失を低減させて高効率化を図ることが可能となる。
また、この実施形態では、上記閉回路用油圧ポンプ1からの吐出油によって駆動される上記油圧モータ4を軌陸車の駆動源として利用するとともに、上記作業機用油圧ポンプ3をブレーキ圧確保用の油圧ポンプとして利用しているので、ブレーキ非作動時にはブレーキ圧確保用の油圧が無駄となるが、このブレーキ圧確保用の油圧を上記閉回路21の作動油の洩れ補充に利用することで、作動油の有効利用、延いては油圧系全体のエネルギー損失を低減させて高効率化を図ることができる。
II:第2の実施形態
図2には、本願発明の第2の実施形態に係るチャージングポンプ回路を備えた軌陸車の油圧回路図を示している。この実施形態は、上記第1の実施形態に係る油圧回路構成を基本とするものであって、これと異なる点は、上記分岐ライン24の接続構成である。
即ち、上記第1の実施形態では、図1に示すように、上記分岐ライン24の下流端を上記チャージングライン22の上記チャージング用油圧ポンプ2と上記パイロット弁5の中間位置に接続していたのに対して、この実施形態では図2に示すように、上記分岐ライン24の下流端を上記チャージングライン22の上記パイロット弁5の下流側に接続した点である。
このような接続構成を採用した場合には、上記閉回路用油圧ポンプ1の回転数が上記エンジン20の回転数の増加に応じて増加されるとともに、その容量が、上記エンジン20の回転数の増加に応じて増加される上記チャージング用油圧ポンプ2の吐出流量に比例した圧力が上記パイロット弁5から上記レギュレータ7に供給されることで増加されるという制御形態、即ち、上記駆動源の回転数の増加に応じて上記閉回路用油圧ポンプ1の回転数を容量が共に増加されるという制御特性をもつ油圧回路構成において、上記パイロット弁5の下流側に上記作業機用油圧ポンプ3から吐出される作動油を供給したとしても(即ち、上記チャージング用油圧ポンプ2の吐出油量とは別に上記作業機用油圧ポンプ3からの油量が追加供給されても)、この作業機用油圧ポンプ3からの吐出油は上記減圧弁10において所定の圧力に減圧されたのち上記オリフィス11を介して上記パイロット弁5の下流側に供給されることから、その供給油量は上記オリフィス11の前後の差圧に対応した油量に規制され、その結果、上記チャージング用油圧ポンプ2の吐出流量に比例した圧力が上記パイロット弁5から上記レギュレータ7に供給されることで上記閉回路用油圧ポンプ1の容量が増加される、という制御特性が略維持されることになる。
また、上記構成によれば、例えば、上記減圧弁10の設定圧を、上記チャージングリリーフ弁12の設定圧と同等または少し低めに設定しておけば、上記パイロット弁5の下流側の油圧と上記作業機用油圧ポンプ3からの吐出油の油圧の間に差が無い場合(即ち、上記閉回路21での作動油の洩れを上記チャージングライン22から供給される作動油で補充し得る状態下)には上記作業機用油圧ポンプ3からの作動油の供給は行なわれないが、上記パイロット弁5の下流側の油圧と上記作業機用油圧ポンプ3からの吐出油の油圧の間に差が生じた場合(即ち、上記閉回路21での作動油の洩れを上記チャージングライン22から供給される作動油で補充し切れない状態下)には、この差圧に応じた油量が上記作業機用油圧ポンプ3からチャージングライン22側へ供給されることになる。即ち、上記閉回路21での作動油の洩れが増加し、チャージング用油圧ポンプ2からの作動油の補充不足が生じたときにだけ、上記作業機用油圧ポンプ3からの作動油によって上記不足分が補われることとなり、上記閉回路21での作動油の洩れに伴う作動油不足が確実に回避されることになる。
上記以外の構成及び作用効果は、上記第1の実施形態の場合と同様であるので、図2の各構成要素に、図1の各構成要素に付したと同じ符号を付した上で、該第1の実施形態の該当説明を援用し、ここでの説明を省略する。
III:第3の実施形態
図3には、本願発明の第3の実施形態に係るチャージングポンプ回路を備えた軌陸車の油圧回路図を示している。この実施形態は、上記第1の実施形態に係る油圧回路構成を基本とするものであって、これと異なる点は、上記チャージング用油圧ポンプ2による作動油の補充が追いつかない場合に、この補充不足を補うための第3の油圧ポンプP3として、上記作業機用油圧ポンプ3を用いるのではなく、該作業機用油圧ポンプ3とは別に、補充専用の電動油圧ポンプ15を備え、該電動油圧ポンプ15から吐出される作動油を、ライン33を介して、上記チャージングライン22の上記チャージング用油圧ポンプ2と上記パイロット弁5の中間位置に供給するようにした点である。
係る構成とすることで、上記閉回路21を含む油圧回路全体の構成を維持したまま、上記電動油圧ポンプ15を付設するという簡単な構成によって、上記閉回路21の作動油の洩れに対する上記チャージング用油圧ポンプ2からの作動油の補充不足を補うことができる。
上記以外の構成及び作用効果は、上記第1の実施形態の場合と同様であるので、図3の各構成要素に、図1の各構成要素に付したと同じ符号を付した上で、該第1の実施形態の該当説明を援用し、ここでの説明を省略する。
なお、以上の説明では、1つの油圧ポンプに1つの油圧モータを接続した閉回路を用いて説明を行ってきたが、軌陸車では、駆動される鉄輪を複数構成することもでき、例えば4つの鉄輪にそれぞれ独立して油圧モータを接続し、1つの油圧ポンプで4つの油圧モータを駆動する閉回路を構成することができる。このような複数の油圧モータを使用した閉回路では作動油の洩れも顕著になるため、このような閉回路に本願のチャージングポンプ回路を適用すると洩れの補充がより効果的に行える。