JP2009161830A - ブロック化イソシアネート基含有オルガノシロキサン、およびこれを用いた金属表面処理用組成物 - Google Patents

ブロック化イソシアネート基含有オルガノシロキサン、およびこれを用いた金属表面処理用組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 優れた塗膜密着性および耐食性を備えた化成皮膜を形成できる金属表面処理用組成物を提供すること。
【解決手段】 加水分解性ケイ素含有基と反応性官能基とを有するオルガノシランをモノマーとして含んでなるオルガノシロキサンであって、前記反応性官能基としてブロック化イソシアネート基を有するブロック化イソシアネート基含有オルガノシロキサン;およびこのブロック化イソシアネート基含有オルガノシロキサンと水とを含む金属表面処理用組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ブロック化イソシアネート基含有オルガノシロキサンと、これを用いた金属表面処理用組成物に関する。
一般に、金属基材に塗装を施す場合、耐食性および塗膜の密着性を確保する観点から、表面処理が施される。特に、曲面や屈曲部を有する金属構造物(たとえば、自動車車体その他の複雑構造の金属構造物)を塗装する場合には、金属表面に化学的に化成皮膜を形成する反応型の表面処理(化成処理)が施される。
その化成処理の一例としては、クロム酸塩によるクロメート化成処理がある。しかし、クロムによる有害性が指摘されるようになっており、近年、クロムを含まない処理剤(表面処理剤、化成処理剤)としてリン酸亜鉛系処理剤による処理(リン酸亜鉛処理)が知られている(特許文献1)。
しかし、上記リン酸亜鉛系処理剤には、次のような問題点がある。第一に、金属イオン濃度および酸濃度が高く非常に反応性の高い処理剤であるため、排水処理における経済性および作業性が良好ではない。第二に、リン酸亜鉛系処理剤による金属表面処理に伴い、水に不溶な塩類が生成して沈殿となって析出するため、このような沈殿物(スラッジ)を除去し廃棄することによるコスト等が必要となる。第三に、リン酸イオンは、富栄養化によって環境に対して負荷を与えるおそれがあるため、廃液処理には労力を要し、使用しないことが好ましい。第四に、リン酸亜鉛系処理剤による金属表面処理においては、表面調整を行うことが必要とされており、工程が長くなる。
このようなリン酸亜鉛系処理剤またはクロメート化成処理剤以外の処理剤として、ジルコニウム化合物を含む化成処理剤が知られている(特許文献2)。このジルコニウム化合物からなる化成処理剤は、金属イオン濃度および酸濃度がそれほど高くなく、反応性もあまり高くない処理剤であるため、排水処理における経済性、作業性が良好である。また、スラッジの発生が抑制される点で、上述したようなリン酸亜鉛系処理剤に比べて優れた性質を有している。
また、ジルコニウム化合物とともにアミノ基含有シランカップリング剤を含有した化成処理剤も提供されている(特許文献3)。この化成処理剤によれば、ジルコニウムは化成皮膜の形成成分として作用し、アミノ基含有シランカップリング剤は、金属基材の表面ばかりでなく、化成処理の後に形成される塗膜に作用することにより、化成皮膜と塗膜との密着性を向上させることができる。
特開平10−204649号公報 特開2003−155578号公報 特開2004−218070号公報
しかしながら、高度な表面処理技術が要求されている現状においては、さらに優れた塗膜密着性および耐食性が得られる金属表面処理剤の開発が望まれている。
そこで本発明は、優れた塗膜密着性および耐食性を有する表面保護膜を形成できる金属表面処理剤を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明者は、新たなオルガノシロキサンを開発し、それを用いた表面処理用組成物を完成させた。
本発明の第一の側面によれば、加水分解性ケイ素含有基と反応性官能基とを有するオルガノシランをモノマーとして含んでなるオルガノシロキサンであって、前記反応性官能基としてブロック化イソシアネート基を有するブロック化イソシアネート基含有オルガノシロキサンが提供される。
本発明の第二の側面によれば、上記本発明の第一の側面によるブロック化イソシアネート基含有オルガノシロキサンと水とを含む金属表面処理用組成物が提供される。
本発明の第三の側面によれば、上記本発明の第二の側面による金属表面処理用組成物を金属基材に塗布した後、水洗せずに乾燥させることにより当該金属基材に表面保護膜を形成する工程を含む、表面被覆金属基材の製造方法が提供される。
本発明の第四の側面によれば、上記本発明の第二の側面による金属表面処理用組成物を金属基材に接触させた後、さらに金属基材を水洗する工程を含む、表面被覆金属基材の製造方法が提供される。
本発明の第五の側面によれば、上記本発明の第三の側面による製造方法により表面被覆金属基材を製造した後、前記表面被覆金属基材の表面に塗料を塗布して塗膜を形成する工程、および前記塗膜を加熱乾燥する工程、を含む金属塗装物の製造方法が提供される。
本発明で用いるブロック化イソシアネート基含有オルガノシロキサンは、ブロック化イソシアネート基を有する。このブロック化イソシアネート基は、金属表面処理用組成物中では安定に存在するが、加熱等によりブロック基が外れると、イソシアネート基の活性が発現される。
したがって、このブロック化イソシアネート基含有オルガノシロキサンを含む本発明に係る金属表面処理用組成物は、処理液としての貯蔵安定性に優れ、かつ、金属基材に表面保護膜を形成した後、加熱乾燥によりブロック基が外されてイソシアネート基の活性が発現されることにより、金属基材表面に密着性および耐食性に優れた保護膜を形成することができる。
<ブロック化イソシアネート基含有オルガノシロキサン>
本発明に係るブロック化イソシアネート基含有オルガノシロキサン(以下、「オルガノシロキサンA」ともいう。)は、加水分解性ケイ素含有基と反応性官能基とを有する少なくとも一種のオルガノシランをモノマーとして含んでなるオルガノシロキサンであって、この反応性官能基としてブロック化イソシアネート基を含むものである。
オルガノシロキサンAは、反応性官能基として、さらにアミノ基および/またはグリシジル基を含むオルガノシロキサン(以下、「オルガノシロキサンB」ともいう。)であることが好ましい。
以下の説明において、オルガノシロキサンAとオルガノシロキサンBをまとめて、単にオルガノシロキサンと記す場合がある。また、オルガノシロキサンAとBは、それぞれ、単一のモノマーからなる単重縮合物であっても、複数のモノマーを含む共重縮合物であってもよく、これらをまとめて重縮合物と記し、単重縮合と共重縮合をまとめて重縮合と記す場合がある。
オルガノシロキサンは、金属基材の表面と、表面処理後に形成される塗膜の双方に作用するため、両者の密着性を向上させることができる。このような効果は、オルガノシロキサン中のシラノールが、金属基材の表面と水素結合的に作用すること、および、イソシアネート基が化学結合的にまたは水素結合的に塗膜に作用することにより、塗膜と金属基材の密着性が高まるために生じると推測される。
本発明のオルガノシロキサンにおいてイソシアネート基(−N=C=O)は、−N−C(=O)−OR(Rはブロック基)のようにブロック化されているが、このブロック基は、塗装後の加熱乾燥処理により外れて、イソシアネート基を生成させる。この活性の高いイソシアネート基が、塗膜中の様々な官能基(たとえばヒドロキシ基、アミノ基等)と化学結合し、あるいは化成皮膜中の別の官能基と反応することにより、より密着性の高い、より緻密な化成皮膜を形成できると考えられる。さらに、外れたブロック基(−OR)も、耐食性の向上に寄与していることが考えられる。
このようにして、化成皮膜中に含まれるオルガノシロキサンが、金属基材および塗膜の双方に作用することによって、相互の密着性が向上するものと考えられる。
上記のように活性の高い反応性官能基であるイソシアネート基は、金属表面処理用組成物(以下、「処理液」ともいう。)中ではブロック化されているため安定に存在する。したがって、この処理液は貯蔵安定性に優れている。
処理液の貯蔵安定性が悪いと、使用を始めてから短期間に劣化し、使用開始当初のような性能を有する化成皮膜が形成できなくなるという問題がある。なかでも自動車車体・部品等の大型金属基材用の金属表面処理用組成物は、処理浴の容量が大きいために、特に処理液の寿命が長いことが望まれていた。このオルガノシロキサンは、こうした要請にも応えるものである。
オルガノシランが一旦ポリマー化してオルガノシロキサンとなると、希釈しても容易に加水分解することはなく、容易にモノマー化することはないと考えられる。このようにオルガノシロキサンが水溶液中で安定であるのは、オルガノシロキサンのSi−O−Siの結合エネルギーがSi−O−Cの結合エネルギーと比較して大変大きいためである。したがって、金属表面処理用組成物中に配合された場合であっても、上記オルガノシロキサンは比較的安定に存在し、化成皮膜中に有効に取り込まれて化成皮膜の密着性の向上に寄与すると考えられる。
オルガノシロキサンBは、反応性官能基として、ブロック化イソシアネート基に加えて、さらにアミノ基および/またはグリシジル基を含むことにより、化成処理剤に使用された際に、塗膜の様々な種類の官能基とさらに化学結合または水素結合しやすくなり、塗膜との密着性および親和性のより高い化成皮膜を形成できる。
アミノ基またはグリシジル基は、化成皮膜中のイソシアネート基とも反応して、より緻密な化成皮膜を形成することができる。
加えてアミノ基を含むこのオルガノシロキサンBの場合、これをジルコニウム系の反応型の表面処理剤として使用した場合、アミノ基の塩基性によって、ジルコニウムの化成皮膜形成時にオルガノシロキサンを共沈させて皮膜を析出しやすくし、化成皮膜の迅速な形成を促すと考えられる。さらに、アミノ基によるシラノールの中和効果(シラノールの分極を緩和させる効果)が得られ、オルガノシロキサンBは、水溶液中で、より安定に存在することが考えられる。
たとえば上記オルガノシロキサンAは、ブロック化イソシアネート基と加水分解性ケイ素含有基とを有する少なくとも1種のイソシアネートシラン(以下、「イソシアネートシランM1」ともいう。)をモノマーとして含む、単または共重縮合物である。
たとえば上記オルガノシロキサンBは、少なくとも1種の上記イソシアネートシランM1と、アミノ基および/またはグリシジル基と加水分解性ケイ素含有基とを有するオルガノシラン(以下、「オルガノシランM2」ともいう。)とをモノマーとする共重縮合物である。
あるいは、オルガノシロキサンBは、1分子中にブロック化イソシアネート基と、加水分解性ケイ素含有基と、アミノ基および/またはグリシジル基とを有する少なくとも1種のイソシアネートシラン(以下、「イソシアネートシランM3」ともいう。)をモノマーとして含む、単または共重縮合物である。
ここで、オルガノシロキサンを構成するモノマーである上記イソシアネートシランM1、オルガノシランM2、イソシアネートシランM3をまとめて、「オルガノシラン」と記す場合がある。つまり、オルガノシランとは、オルガノシロキサンを構成する反応性モノマーをいう。
共重縮合物の場合に用いられる、これらのオルガノシランM1〜M3以外の他のモノマーとしては、一般的なアルコキシシラン等の、重縮合可能な官能基を含むシラン(後述するオルガノシランM4)が挙げられる。
イソシアネートシランM1は、1分子中に少なくとも1つのイソシアネート基と、少なくとも1つの加水分解性ケイ素含有基とを有する化合物である。加水分解性ケイ素含有基は、−SiOR(Rはアルキル基)、−SiOX(XはCl等のハロゲン)などの加水分解可能な官能基である。
すなわち、イソシアネートシランM1は、SiR(4つのRは、それぞれ独立に水素、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、−OX(Xはハロゲン)などの1価の置換基であり、少なくとも1つのRはアルコキシ基または−OX等の加水分解性基であり、少なくとも1つのRはイソシアネート基を含む。)で示される化合物である。
より具体的には、好ましい一例として、以下の一般式(1)によりイソシアネートシランM1を示すことができる。
〔化1〕
−Si(OR3−m−R−NCO (1)
一般式(1)において、mは0、1、または2であり、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基またはヒドロキシ基を表し、Rは炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜6のアルキレン基を表す。また、Rは炭素数4〜6のアルキレン基であることがより好ましい。
好ましい化合物例として、さらに具体的には、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
イソシアネートシランM1は、たとえば、イソシアネート基含有化合物と、イソシアネート基と反応し得る官能基と加水分解性ケイ素含有基とを有する化合物とを反応させて得ることができる。具体的にはたとえば、メチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のジイソシアネートと、アミノアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン等のシランカップリング剤とを反応させて、イソシアネートシランM1を合成することができる。
オルガノシランM2は、1分子中に少なくとも一つのアミノ基またはグリシジル基と、少なくとも1つの加水分解性ケイ素含有基を有する化合物である。
すなわち、オルガノシランM2は、SiR(4つのRは、それぞれ独立に水素、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、−OX(Xはハロゲン)などの1価の置換基であり、少なくとも1つのRはアルコキシ基または−OX等の加水分解性基であり、少なくとも1つのRはアミノ基またはグリシジル基を含む。)で示される。アミノ基は、N−置換アミノ基でもよいが、全て水素である−NH基であることが好ましい。
より具体的には、好ましい一例として、たとえば以下の一般式(2)により、このオルガノシランM2を表すことができる。
〔化2〕
−Si(OR3−m−R−Y (2)
一般式(2)において、mは0、1、または2であり、Rは炭素数1〜6のアルキル基またはヒドロキシ基を表し、Rは炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜6のアルキレン基またはイミノアルキル基(−NH−R−)を表し、Yは−NH基またはグリシジル基を表す。イミノ基もアミノ基と同様に塗膜密着性に寄与する官能基であることから、Rはイミノアルキル基であることが好ましい。
Yがグリシジル基の場合、mは0または1であることがより好ましく、Rは炭素数3〜6のアルキレン基であることがより好ましい。
さらに具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどを好ましい化合物として例示できる。
Yがアミンの場合、m=0、Yが−NH、Rが−CNHC−、Rがメチル基であるN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン;またはm=0、Yが−NH、Rがプロピレン基、Rがメチル基の3−アミノプロピルトリエトキシシランの他、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、および3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が好ましい。
市販されているシランカップリング剤としては、アミノ基含有シランカップリング剤であるKBM−403、KBM−602、KBM−603、KBE−603、KBM−903、KBE−903、KBE−9103、KBM−573(以上、信越化学工業(株)製)、XS1003(チッソ(株)製)等を使用することができる。
イソシアネートシランM3は、SiR(4つのRは、それぞれ独立に水素、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、−OX(Xはハロゲン)などの1価の置換基であり、少なくとも1つのRはアルコキシ基または−OX等の加水分解性基であり、少なくとも1つのRはイソシアネート基を含み、さらに少なくとも1つのRはアミノ基またはグリシジル基を含む。)で示される化合物である。
オルガノシロキサンAおよびBの一部に使用することができる、オルガノシランM1〜M3以外の他のオルガノシランM4は、加水分解性ケイ素含有基を有し、イソシアネート基、アミノ基、またはグリシジル基からなる反応性官能基を含まない、重縮合可能なシランである。
具体的にはオルガノシランM4としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、等を挙げることができる。
オルガノシロキサンAは、たとえば、上記イソシアネートシランM1のイソシアネート基をブロック化剤を用いてブロック化し、得られたブロック化イソシアネートシランM1を加水分解縮合させることにより好ましく製造することができる。モノマーとして、複数種のブロック化イソシアネートシランM1を使用してもよいし、アルコキシシラン等のオルガノシランM4を併用してもよい。
オルガノシロキサンBは、たとえば、上記イソシアネートシランM1のイソシアネート基をブロック化剤を用いてブロック化し、得られたブロック化イソシアネートシランM1と、上記オルガノシランM2とを加水分解縮合させることにより好ましく製造することができる。モノマーとして、複数種のブロック化イソシアネートシランM1と複数種のオルガノシランM2とを使用してもよいし、アルコキシシラン等のオルガノシランM4を併用してもよい。
共重縮合物を製造する場合、たとえば、イソシアネートシランM1等のイソシアネート基をまずブロック化し、これを加水分解して重縮合させたのちに、他のオルガノシランM4と共重縮合させることもできる。
イソシアネートシランM1のブロック化剤としては、たとえば、
n−ブタノール、n−ヘキシルアルコール、2−エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、フェノールカルビノール、メチルフェニルカルビノール等の1価のアルキル(または芳香族)アルコール類;
エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル等のセロソルブ類;
フェノール、パラ−t−ブチルフェノール、クレゾール等のフェノール類;
ジメチルケトオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;
ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタム等のラクタム類;
を挙げることができる。これらを単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、各種アルコール類、フェノール類、オキシム類を使用することが好ましい。
ブロック化は、すべてのイソシアネート基に対して行われてもよいし、一部のイソシアネート基にのみ行われてもよい。特に、アミノ基等のカチオン性の官能基を含まないオルガノシロキサンを反応型の化成処理剤として使用する場合は、すべてのイソシアネート基をブロック化せずに、一部を残しておくことが好ましい。それによりイソシアネート基がカチオン性になり、処理液中の化成皮膜形成成分(ジルコニウム)とオルガノシロキサンが共析できるようになる。
したがってブロック化剤は、所望するブロック化の程度に応じてその反応当量を選択すればよく、イソシアネート基1当量に対し0.2〜2当量で反応させることが好ましく、0.5〜1.2当量で反応させることがより好ましい。
上記オルガノシロキサンの分子量は、特に限定されないが、2量体以上、さらには3量体以上である方が、ジルコニウムが水酸化物または酸化物として化成皮膜を形成する際に、当該化成皮膜中に取り込まれやすい傾向にあることから、塗膜および金属基材との密着性を向上させるため好ましい。
このため、オルガノシランを重縮合反応させる際には、オルガノシランがより加水分解しやすく、重縮合しやすい条件下で反応させることが好ましい。
オルガノシランがより加水分解しやすく、重縮合しやすい条件下とは、たとえば、溶媒をアルコールとした反応条件、および、単重縮合よりも共重縮合となるようなオルガノシランの配合による反応条件等である。また、オルガノシラン濃度が比較的高い条件下で反応させることによって、より高分子量化され重縮合率の高いオルガノシロキサンが得られる。具体的には、オルガノシラン濃度が5質量%以上70質量%以下の範囲内で重縮合反応させることが好ましく、5質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以上30質量%以下であることが特に好ましい。
さらに、上記密着性に加え、貯蔵安定性のよい金属表面処理用組成物とするためには、上記オルガノシロキサンは、オルガノシランに解離しにくいものであることが好ましい。
オルガノシランに解離しにくいオルガノシロキサンとは、シロキサン結合が加水分解されにくいか、シロキサン結合が加水分解されても、全てがオルガノシランモノマーにまでは完全に加水分解されにくいものをいい、具体的には、化学構造的に加水分解が生じにくいオルガノシロキサン、1回の加水分解によりオルガノシランモノマーにまでは解離されないオルガノシロキサン等をいう。
オルガノシランに解離しにくいオルガノシロキサンとしては、
(i)末端イソシアネート基の窒素原子とシリル基のケイ素原子とが、原子4個分以上離れているイソシアネートシランの重縮合物であるオルガノシロキサン;
(ii)末端アミノ基の窒素原子または末端グリシジル基の炭素原子とシリル基のケイ素原子とが、原子4個分以上離れているオルガノシランの重縮合物であるオルガノシロキサン;
(iii)分岐構造を有するオルガノシロキサン;および
(iv)オルガノシロキサンにおいて、シロキサン結合を構成する酸素原子を介して他の2個以上のケイ素原子と結合するケイ素原子の割合が、金属表面処理用組成物中に含まれるオルガノシロキサンおよび未反応のオルガノシランが有するケイ素原子の総モル量に対して20モル%以上であるオルガノシロキサンが挙げられる。
上記「(i)末端イソシアネート基の窒素原子とシリル基のケイ素原子とが、原子4個分以上離れているイソシアネートシランの重縮合物であるオルガノシロキサン」とは、上記一般式(1)において、Rとして、4個以上の原子が結合しているものをいう。
このようなイソシアネートシランと、そうではない(一般式(1)のRの原子数が3個以下である)イソシアネートシランとを組み合わせて使用してもよい。
上記「(ii)末端アミノ基の窒素原子または末端グリシジル基の炭素原子とシリル基のケイ素原子とが、原子4個分以上離れているオルガノシランの重縮合物であるオルガノシロキサン」とは、上記一般式(2)において、Rとして、4個以上の原子が結合しているものをいう。たとえば、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらはいずれも、末端アミノ基の窒素原子とシリル基のケイ素原子とが、原子6個分以上離れているため、これらを用いることにより、金属表面処理用組成物の貯蔵安定性が良好となる。さらに、これらのオルガノシランはいずれも、末端のアミノ基と、イミノ基とを有しているため、これらの官能基に基づき塗膜との密着性も良好である。
このようなオルガノシランと、そうではない(一般式(2)のRの原子数が3個以下である)オルガノシラン(たとえば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランなど)とを組み合わせて使用してもよい。
末端アミノ基の窒素原子とシリル基のケイ素原子との距離が原子3個分以下であると、希釈水溶液中では末端アミノ基がシロキサン結合を加水分解し、オルガノシロキサンとしてよりもオルガノシランとして単独で安定化するために、オルガノシロキサンの解離が進み易いと考えられるのに対し、末端アミノ基の窒素原子とシリル基のケイ素原子との距離が原子4個分以上であると、末端アミノ基がシロキサン結合部分を加水分解し易い構造を形成しにくく、オルガノシロキサンの解離が進みにくいためであると推測される。
上記「(iii)分岐構造を有するオルガノシロキサン」とは、オルガノシランの重縮合によってオルガノシロキサンが直鎖構造ではなく分岐構造となっているもの、またはオルガノシロキサンを構成するオルガノシラン自体に分岐があるものをいう。
オルガノシロキサンが分岐構造を有すると、そのシロキサン結合が立体障害により加水分解されにくい立体構造をとること、あるいは分岐構造を有するオルガノシロキサンは、一回の加水分解では全てがオルガノシランにまで分解されないことが考えられる。
分岐構造を有するオルガノシロキサンを得るためには、重縮合反応の際に、オルガノシラン濃度を3質量%以上にする手段、および/またはpHを6〜14に調整する手段が有効である。オルガノシランの濃度が3質量%未満であると、重縮合が進みにくいおそれがあり、pHが6未満であると、直鎖状に重縮合が進み易い。このときのオルガノシラン濃度は、好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。また、このときのpHは、好ましくは7〜13、より好ましくは8〜13である。
上記(iv)のオルガノシロキサンにおいて、「シロキサン結合を構成する酸素原子を介して他の2個以上のケイ素原子と結合するケイ素原子」とは、次のとおりである。たとえば、オルガノシロキサンが、ケイ素原子に結合するアルコキシ基を3個有するオルガノシランの重縮合物である場合、即ち、上記一般式(1)または(2)においてmが0であるオルガノシランの重縮合物であるときは、「オルガノシロキサンにおいて、シロキサン結合を構成する酸素原子を介して他の2個のケイ素原子と結合するケイ素原子」としては、これらのアルコキシ基が加水分解されてなる3個のシラノール基のうち、縮合してシロキサン結合を形成していないシラノール基が1個であるケイ素原子が該当する。
また、「オルガノシロキサンにおいて、シロキサン結合を構成する酸素原子を介して他の3個のケイ素原子と結合するケイ素原子」としては、これらのアルコキシ基が加水分解されてなる3個のシラノール基のうち、縮合してシロキサン結合を形成していないシラノール基が0個であるケイ素原子が該当する。
オルガノシロキサンがケイ素原子に結合するアルコキシ基を2個有するオルガノシランの重縮合物であるとき、即ち、上記一般式(1)または(2)においてmが1であるオルガノシランの重縮合物であるときは、「オルガノシロキサンにおいて、シロキサン結合を構成する酸素原子を介して他の2個のケイ素原子と結合するケイ素原子」としては、当該アルコキシ基が加水分解されてなる2個のシラノール基のうち、縮合してシロキサン結合を形成していないシラノール基が0個であるケイ素原子が該当する。
この「オルガノシロキサンにおいて、シロキサン結合を構成する酸素原子を介して他の2個以上のケイ素原子と結合するケイ素原子」の存在は、当該オルガノシロキサンが、少なくも3量体以上であることを示すものである。オルガノシロキサンにおいて、3量体以上の多量体の割合が多いことは、密着性を向上させるだけでなく、金属表面処理用組成物の貯蔵安定性を向上させるものであると考えられる。かかる貯蔵安定性向上のメカニズムとしては、オルガノシロキサンが3量体以上の多量体であると、シロキサン結合が加水分解されにくい構造をとり易く、また、加水分解されたとしても、一回の加水分解では全てがオルガノシランにまで解離されないためと推測される。
上記「オルガノシロキサンにおいて、シロキサン結合を構成する酸素原子を介して他の2個以上のケイ素原子と結合するケイ素原子」の割合は、金属表面処理用組成物中に含まれるオルガノシロキサンおよび未反応のオルガノシランが有するケイ素原子の総量に対して、好ましくは20モル%以上であり、より好ましくは25モル%以上であり、さらに好ましくは30モル%以上であり、一層好ましくは35モル%以上であり、特に好ましくは40モル%以上である。
ここで、金属表面処理用組成物中には、オルガノシロキサン合成時の重縮合反応における未反応オルガノシランが存在し得るが、上記ケイ素原子の総量は、これらの未反応オルガノシランのケイ素原子も含めたものである。未反応オルガノシランとは、重縮合していないオルガノシランをいい、重縮合により一旦オルガノシロキサンとなった後に加水分解されて生じたオルガノシランを含む。
上記のように、オルガノシロキサンの重合の度合いが大きければ貯蔵安定性が向上すると考えられることから、「オルガノシロキサンにおいて、シロキサン結合を構成する酸素原子を介して他の3個以上のケイ素原子と結合するケイ素原子」の割合は、金属表面処理用組成物中に含まれるオルガノシロキサンおよび未反応のオルガノシランが有するケイ素原子の総量に対して、好ましくは10モル%以上であり、より好ましくは15モル%以上であり、さらに好ましくは20モル%以上であり、一層好ましくは30モル%以上であり、特に好ましくは50モル%以上である。
オルガノシロキサンが、前記(i)〜(iv)のいずれか1つを満たせば、貯蔵安定性の良好な金属表面処理用組成物を得ることができるが、前記(i)〜(iv)のうち、2以上を満たすことがより好ましい。
たとえば、オルガノシロキサンが、前記(ii)のオルガノシロキサンであって、且つ(iii)のオルガノシロキサンであることがより好ましい。4量体以上の多量体が分岐構造を有することにより、さらに解離しにくい立体構造をとると考えられるためである。
さらに、オルガノシロキサンが、前記(i)のオルガノシロキサンであって、且つ前記(ii)および/または前記(iii)のオルガノシロキサンであることもより好ましい。この場合、オルガノシランに解離しにくい立体構造に加え、さらに末端アミノ基の窒素原子とシリル基のケイ素原子との間の主鎖において、4個以上の原子があることによる効果が得られる。
<金属表面処理用組成物>
金属表面処理用組成物は、金属の表面処理に用いられるものであり、上記ブロック化イソシアネート基含有オルガノシロキサン(すなわち、オルガノシロキサンAおよび/またはオルガノシロキサンB)と水とを含む。この組成物は、さらに使用時に必要に応じて水で希釈、調製されて、金属表面処理液として金属の表面処理に供される。
この金属表面処理用組成物を反応型の化成処理剤として使用する場合、化成皮膜形成成分としてジルコニウム化合物を含むことが好ましい。金属基材がエッチングされるのに伴ってジルコニウムを含む化成皮膜が形成されることにより、金属基材の耐食性や耐磨耗性を向上させることができる。
ジルコニウム化合物としては特に限定されるものではないが、たとえば、KZrF等のアルカリ金属フルオロジルコネート、(NHZrF等のフルオロジルコネート、HZrF等の可溶性フルオロジルコネート、フッ化ジルコニウム、酸化ジルコニウム、硝酸ジルコニル、炭酸ジルコニウム、等を挙げることができる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用される。
表面処理に供する際(すなわち使用時)の金属表面処理用組成物中におけるオルガノシロキサンの含有量は、ケイ素元素換算で1ppm以上2000ppm以下であることが好ましい。
使用時の処理液中のジルコニウム化合物含有量は、金属元素換算で、金属基材上に十分な皮膜量を確保する観点から10ppm以上であることが好ましい。その上限は特に制限はされないが、それ以上含まれていてもさらなる効果は望めないことから10000ppm以下であることが好ましい。より好ましくは、金属元素換算で50ppm以上1000ppm以下、さらに好ましくは金属元素換算で50ppm以上600ppm以下である。
金属表面処理用組成物は、オルガノシロキサン合成時の重縮合反応における未反応オルガノシラン(上記のように、加水分解により生じたオルガノシランも含む。)をさらに含有するものであってもよい。オルガノシロキサンと同様に、未反応オルガノシランも、化成皮膜中に取り込まれた場合には密着性の向上に寄与すると考えられる。しかしながら、重縮合してなるオルガノシロキサンが一分子あたりに有する反応性官能基の数は、未反応オルガノシランが一分子あたりに有する反応性官能基よりも増加するため、重縮合してなるオルガノシロキサンが金属基材と塗膜との間に介在することによって、未反応オルガノシロキサンでは得られないような密着性をもたらす。
したがって、金属表面処理用組成物が未反応オルガノシランを含有する場合には、下記数式(1)で表されるオルガノシロキサンの重縮合率が、密着性を向上させるための重要な要素となる。すなわち、オルガノシロキサンの重縮合率を適度に制御することによって、密着性を向上させることが可能となる。
〔数1〕
重縮合率(%)=オルガノシロキサン質量×100/(未反応オルガノシラン質量+オルガノシロキサン質量) (1)
上記数式(1)中、オルガノシロキサン質量は、2量体以上のオルガノシロキサンの質量であり、未反応モノマーの質量を含まない。
この数式(1)で示されるオルガノシロキサンの重縮合率は、密着性向上の観点から40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることが一層好ましい。
オルガノシロキサンの重縮合率の評価は、オルガノシロキサンの29Si−NMRの測定により行われる。具体的には、原料のオルガノシランのケイ素原子がオルガノシロキサンを構成する他のケイ素原子と結合していないものを未反応オルガノシラン(モノマー)とし、それ以外を重縮合物のオルガノシロキサンとして、上記数式(1)より重縮合率を求めることができる。
オルガノシロキサンにおいて、未反応オルガノシランおよびオルガノシランの2量体に対する、オルガノシランの3量体以上の多量体の質量比は、密着性をより向上させる観点から、1以上であることが好ましい。
オルガノシランの2量体(ダイマー)、多量体(ポリマー)の分析は、上記重縮合率の評価と同様に29Si−NMRの測定により行われる。
金属表面処理用組成物中におけるオルガノシロキサン(未反応オルガノシランも含む)の含有量は、ケイ素元素換算で、密着性の観点から1ppm以上であることが好ましく、得られる効果と経済性との兼ね合いから2000ppm以下であることが好ましい。このオルガノシロキサンの含有量は、より好ましくは、5ppm以上500ppm以下であり、さらに好ましくは、10pm以上200ppm以下である。
上記オルガノシロキサン中に含まれるケイ素元素(未反応オルガノシランも含む)に対する、ジルコニウム化合物中に含まれるジルコニウム元素の質量比は、ジルコニウムとオルガノシロキサンがバランスよく取り込まれた化成皮膜の形成を確保する観点から、0.5以上であることが好ましく、500以下であることが好ましい。
金属表面処理用組成物のpHは、反応型の場合は被処理物である金属基材がエッチングされる必要があるため、1.5以上6.5以下であることが好ましく、2.0以上5.0以下であることがより好ましく、2.5以上4.5以下であることがさらに好ましい。pHが1.5未満であると、エッチングが過剰となり充分な皮膜形成が行われないおそれがある他、皮膜が不均一となり、塗膜外観に悪影響を与える場合がある。一方、pHが6.5を超えると、エッチングが不充分となり良好な化成皮膜が得られなくなる恐れがある。このpHは、硝酸、硫酸等の酸性化合物、および、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の塩基性化合物を使用して、適宜調整することができる。
この金属表面処理用組成物は、好ましい実施形態において、さらに、遊離フッ素成分としてフッ素化合物を含有する。フッ素化合物から生じるフッ素元素は、金属基材のエッチング剤としての役割の他、ジルコニウムの錯化剤としての役割を果たすものである。フッ素元素の供給源であるフッ素化合物としては、特に限定されず、たとえば、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化ホウ素酸、フッ化水素アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化水素ナトリウム等のフッ化物を挙げることができる。また、錯フッ化物を供給源とすることも可能であり、たとえば、ヘキサフルオロケイ酸塩、具体的には、ケイフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸亜鉛、ケイフッ化水素酸マンガン、ケイフッ化水素酸マグネシウム、ケイフッ化水素酸ニッケル、ケイフッ化水素酸鉄、ケイフッ化水素酸カルシウム等を挙げることができる。
使用時の金属表面処理用組成物中で遊離状態にあるフッ素イオンの濃度(遊離フッ素元素の含有量)は、0.01ppm以上100ppm以下であることが好ましく、0.1ppm以上20ppm以下であることがより好ましい。この遊離フッ素元素の含有量は、フッ素イオン電極を有するメーターで測定することにより求められる。金属表面処理用組成物中における遊離フッ素元素の含有量が0.01ppm未満であると、不安定となり沈殿が生じる場合があるうえ、エッチング力が低下して十分に皮膜形成が行われないおそれがある。一方、遊離フッ素元素の含有量が100ppmを超えると、エッチング過多となりジルコニウムの皮膜形成が充分に行われないおそれがある。
別の好ましい実施形態において、この金属表面処理用組成物は、さらに、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、銅、鉄、マンガン、ニッケル、コバルト、セリウム、ストロンチウム、希土類元素、スズ、ビスマス、および銀からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素イオンを含有する。これらの金属元素は、いずれも、塗膜の密着性および耐食性を向上させることができる。
別の好ましい実施形態において、この金属表面処理用組成物は、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、およびキレート剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含む。界面活性剤を含有する場合は、金属基材をあらかじめ脱脂処理して清浄化しておかなくても、良好な化成皮膜を形成させることができる点で好ましい。キレート剤を含有する場合は、ジルコニウムの均一析出の点で好ましい。
これらの界面活性剤およびキレート剤としては、それぞれ従来公知のもの用いることができる。キレート剤としては、たとえば、グルコン酸、アスパラギン酸、ジエチレントリアミン5酢酸、メタンスルホン酸が挙げられる。
さらに別の好ましい実施形態において、この金属表面処理用組成物には、皮膜形成反応を促進するための酸化剤を含有させることができる。この酸化剤としては、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、リン酸、カルボン酸基含有化合物、スルホン酸基含有化合物、塩酸、臭素酸、塩素酸、過酸化水素、HMnO、HVO、HWO、および、HMoO、ならびにこれらの酸素酸の塩類が挙げられる。これらの酸化剤は、単独で、あるいは複数種を組み合わせて配合することができる。
以上のような金属表面処理用組成物は、塗布型の処理剤として、あるいは化成皮膜形成成分を配合した反応型の処理剤として使用できる。
ここで、塗布型の処理剤とは、金属基材に処理剤を塗布したのち、これを水洗せずに乾燥させて表面保護膜を形成して使用することにより表面処理を行うタイプのものである。たとえば、その一例としては防錆塗料が挙げられ、亜鉛めっき鋼板、ガルバニウム鋼板(Al−Zn溶融メッキ鋼板)等の耐食鋼板の防錆処理に使用されることが好ましい。
一方、反応型の処理剤とは、金属基材と処理剤とを反応させて、表面保護膜として化成皮膜を析出させるタイプの処理剤をいう。反応型の場合は、塗布型に比べて濃度の希薄な処理液を用いて、より薄い化成皮膜を析出させることができる。反応型の処理剤と金属基材との接触は、通常、処理剤中への被塗物の浸漬により行なわれ、反応により密着性の高い化成皮膜が形成されるため、処理後には乾燥ではなく水洗が行われる。
具体的には、ジルコニウムを含む金属表面処理用組成物により金属基材の表面処理を行うと、金属基材を構成する金属の溶解反応(エッチング)が起こる。金属の溶解反応が起こると、ジルコニウムのフッ化物を含む場合は、金属表面処理用組成物中に溶出した金属イオンがZrF 2−のフッ素を引き抜くことにより、また、界面のpHが上昇することにより、当該金属基材の表面にジルコニウムの水酸化物または酸化物が析出する。
このように、本発明の一実施形態に係る金属表面処理用組成物を反応型化成処理剤として使用することができ、複雑な形状を有する金属基材の化成処理用として適している。処理対象金属に関しては、上記の耐食鋼板に加えて、従来、密着性や耐食性に優れた均一な化成皮膜の形成が困難であった鉄板等の鉄系基材にも適している点が特徴的である。
<表面被覆金属基材の製造方法>
表面被覆金属基材の製造方法は、上記本発明に係る金属表面処理用組成物で金属基材の表面を処理して、金属基材表面に、前記金属表面処理用組成物に由来する表面保護層を被覆する工程を含む。当該表面保護層としては、塗布型、反応型のいずれの処理剤によって形成されたものであってもよい。
金属基材としては、特に限定されるものではないが、たとえば、鋼板、アルミニウム板等を挙げることができる。鋼板は、冷延鋼板または熱延鋼板、および軟鋼板または高張力鋼板のいずれをも含むものであり、特に限定されず、たとえば鉄系基材(鉄系金属基材)、アルミニウム系基材(アルミニウム系金属基材)、亜鉛系基材(亜鉛系金属基材)、およびマグネシウム系基材(マグネシウム系金属基材)等を挙げることができる。鉄系基材とは鉄および/またはその合金からなる基材(金属基材)、アルミニウム系基材とはアルミニウムおよび/またはその合金からなる基材(金属基材)、亜鉛系基材とは亜鉛および/またはその合金からなる基材(金属基材)を意味する。マグネシウム系基材とはマグネシウムおよび/またはその合金からなる基材(金属基材)を意味する。
さらに、鉄系基材、アルミニウム系基材、および、亜鉛系基材等の複数の金属基材からなる金属基材に対しても適用することができる。特に、自動車車体や自動車用部品等は、鉄、亜鉛、アルミニウム等の種々の金属基材により構成されているが、上記金属表面処理用組成物を用いることにより、十分な密着性を有する化成皮膜を形成することができ、良好な耐食性を付与できる。
鉄系基材としては、特に限定されず、たとえば、冷延鋼板、熱延鋼板等を挙げることができる。
アルミニウム系基材としては、特に限定されず、たとえば、5000番系アルミニウム合金、6000番系アルミニウム合金、アルミニウム系の電気めっき、溶融めっき、蒸着めっき等のアルミニウムめっき鋼板等を挙げることができる。
亜鉛系基材としては、特に限定されず、たとえば、亜鉛めっき鋼板、亜鉛−ニッケルめっき鋼板、亜鉛−鉄めっき鋼板、亜鉛−クロムめっき鋼板、亜鉛−アルミニウムめっき鋼板、亜鉛−チタンめっき鋼板、亜鉛−マグネシウムめっき鋼板、亜鉛−マンガンめっき鋼板等の亜鉛系の電気めっき、溶融めっき、蒸着めっき鋼板等の亜鉛または亜鉛系合金めっき鋼板等を挙げることができる。
マグネシウム系基材としては、特に限定されず、たとえば、Mg−Al系合金AM100A、Mg−Al−Zn系合金A291D、Mg−Zn系合金ZK51A等が挙げられる。
高張力鋼板としては、強度や製法により多種多様なグレードが存在するが、たとえばJSC440J、440P、440W、590R、590T、590Y、780T、780Y、980Y、1180Y等を挙げることができる。
金属表面処理用組成物の金属基材への適用の仕方は、特に限定されるものではないが、塗布型の場合は、たとえば、浸漬法、スプレー法、ロールコート法、バーコート法、及び流しかけ処理法等を適用することができ、乾燥後の表面保護膜の厚さを厳密に管理できるという点から、特にロールコート法およびバーコート法が好ましい。
反応型の場合も、特に限定されず、たとえば、浸漬法、スプレー法、ロールコート法、流しかけ処理法等を挙げることができる。
反応型の場合は、金属基材を陰極として電解処理することにより金属表面処理用組成物を適用することもできる。この場合、陰極である金属基材界面で水素の還元反応が起こり、pHが上昇する。pHの上昇に伴い、陰極界面でのジルコニウム元素を含む化合物の安定性が低下し、酸化物または水を含む水酸化物として、表面処理皮膜(化成皮膜または表面保護膜)が析出する。
反応型の場合の表面処理における処理液の温度は、20℃以上70℃以下の範囲内であることが好ましく、30℃以上50℃以下の範囲であることがより好ましい。20℃未満では、十分な皮膜形成が行われない可能性があり、一方、70℃を超えても、特にそれ以上の効果は得られない。
反応型の場合の表面処理時間は、2秒以上1100秒以下の範囲内であることが好ましく、30秒以上120秒以下の範囲であることがより好ましい。2秒未満では、十分な皮膜量が得られにくく、1100秒を超えても、それ以上の効果は得られにくいことがある。
金属表面処理用組成物を金属基材に適用して表面保護膜を形成したのち、加熱乾燥させることができる。加熱温度としては、イソシアネート基を脱ブロックできる温度であることが好ましく、例えば110℃以上240℃以下が好ましい。
金属基材は、表面処理に先立ち、脱脂処理により清浄化されることが好ましい。さらには、脱脂処理をした後、水洗処理が行われることが好ましい。これら脱脂処理や水洗処理は、金属基材の表面に付着している油分や汚れを除去するために行われるものであり、無リン・無窒素脱脂洗浄液等の脱脂剤により、通常30℃〜55℃において数分間程度の浸漬処理がなされる。所望により、脱脂処理の前に、予備脱脂処理を行うことも可能である。脱脂処理後の水洗処理は、脱脂剤を水洗するために、大量の水洗水によって少なくとも1回以上、スプレー処理により行われる。
上述したように、金属表面処理用組成物が任意の界面活性剤を含有する場合は、金属基材をあらかじめ脱脂処理し、清浄化しておかなくても、良好な皮膜を形成させることができる。すなわち、この場合には、処理液の適用(接触)工程において、金属基材の脱脂処理が同時に行われる。
反応型の場合に行うことのできる表面処理後の水洗処理は複数回行うことができ、その場合の最終の水洗は、純水で実施されることが好ましい。この表面処理後の水洗処理においては、スプレー水洗または浸漬水洗のいずれであってもよく、これらの方法を組み合わせて水洗することもできる。
反応型において、冷延鋼板、熱延鋼板、鋳鉄、焼結材等の鉄系金属基材の耐食性を高め、均一な表面処理皮膜を形成し、良好な密着性を得るためには、鉄系金属基材表面に形成される表面処理皮膜層は、金属元素換算で、ジルコニウム元素を10mg/m以上含有し、ケイ素元素を0.5mg/m以上含有するのが好ましい。ジルコニウム元素を20mg/m以上含有し、ケイ素元素を1mg/m以上含有する表面処理皮膜層を有することがより好ましく、ジルコニウム元素を30mg/m以上含有し、ケイ素元素を1.5mg/m以上含有する表面処理皮膜層を有することがさらに好ましい。
亜鉛または亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板等の亜鉛系金属基材に良好な耐食性を付与する目的で、均一な化成皮膜を形成して良好な密着性を得るためには、亜鉛系金属基材表面に形成される表面処理皮膜層の皮膜量は、ジルコニウム元素を10mg/m以上含有し、ケイ素元素を0.5mg/m以上含有するのが好ましい。ジルコニウム元素を20mg/m以上含有し、ケイ素元素を1mg/m以上含有する表面処理皮膜層を有することがより好ましく、さらには、ジルコニウム元素を30mg/m以上含有し、ケイ素元素を1.5mg/m以上含有する表面処理皮膜層を有することがさらに好ましい。
アルミニウム鋳物、アルミニウム合金板等のアルミニウム系金属基材に良好な耐食性を付与する目的で、均一な化成皮膜を形成して良好な密着性を得るためには、アルミニウム系金属基材表面に形成される表面処理皮膜層の皮膜量は、ジルコニウム元素を5mg/m以上含有し、ケイ素元素を0.5mg/m以上含有するのが好ましい。ジルコニウム元素を10mg/m以上含有し、ケイ素元素を1mg/m以上含有する表面処理皮膜層を有することがより好ましい。
さらに、マグネシウム合金板、マグネシウム鋳物等のマグネシウム系金属基材に良好な耐食性を付与する目的で、均一な化成皮膜を形成して良好な密着性を得るためには、マグネシウム系金属基材表面に形成される表面処理皮膜層の皮膜量は、ジルコニウム元素を5mg/m以上含有し、ケイ素元素を0.5mg/m以上含有するのが好ましい。ジルコニウム元素を10mg/m以上含有し、ケイ素元素を1mg/m以上含有する表面処理皮膜層を有することがより好ましい。
いずれの金属基材においても、表面処理皮膜層の皮膜量の上限は特にないが、皮膜量が多すぎると、表面処理皮膜層にクラックが発生し易くなり、良好な皮膜を得ることが困難となる。この点で、表面処理皮膜の皮膜量は、ジルコニウムを金属元素換算で1g/m以下含むことが好ましく、800mg/m以下含むことがより好ましい。
また、いずれの金属基材においても、表面処理皮膜のケイ素元素に対するジルコニウム元素質量比は、0.5以上50以下であることが好ましい。0.5未満では、耐食性、密着性を得ることができない。50を超えると、表面処理皮膜層にクラックが発生し易くなり、均一な皮膜を得ることが困難となる。
表面被覆後に、さらに金属基材を、コバルト、ニッケル、スズ、銅、チタニウムおよびジルコニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する酸性水溶液と接触させてもよい。この酸接触工程を含むことにより、化成皮膜の耐食性をさらに高めることができる。
金属元素であるコバルト、ニッケル、スズ、銅、チタニウムおよびジルコニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の供給源は、特に限定されないが、入手が容易である、前記金属元素の酸化物、水酸化物、塩化物、硝酸塩、オキシ硝酸塩、硫酸塩、オキシ硫酸塩、炭酸塩、オキシ炭酸塩、リン酸塩、オキシリン酸塩、シュウ酸塩、オキシシュウ酸塩、有機金属化合物等を好適に用いることができる。
上記金属元素を含有する酸性水溶液のpHは、2〜6であるのが好ましい。酸性水溶液のpHは、リン酸、硝酸、硫酸、フッ化水素酸、塩酸、有機酸等の酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アルカリ金属塩、アンモニア、アンモニウム塩、アミン類等のアルカリで調整することができる。
あるいは、表面処理後の金属基材を、水溶性高分子化合物および水分散性高分子化合物のうち少なくとも一方を含有する高分子含有液と接触させてもよい。この高分子含有液接触工程を含むことにより、化成皮膜の耐食性をさらに高めることができる。
水溶性高分子化合物および水分散性高分子化合物としては、特に限定されないが、たとえば、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルレート等のアクリル系単量体との共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、ポリウレタン、アミノ変性フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、タンニン、タンニン酸およびその塩、フィチン酸が挙げられる。
<金属塗装物の製造方法>
金属塗装物の製造方法は、上記表面被覆金属基材の製造方法により製造された表面被覆金属基材の表面、すなわち表面保護膜上に任意の塗料を塗布して塗膜を形成すること、および塗膜を加熱乾燥することを含む。
反応型による表面処理の場合は、表面処理後に水洗処理を実施することができる。当該水洗処理した後には、必要に応じて、公知の方法に従って乾燥してもよいが、次工程が水性塗装工程の場合は、水洗処理後に乾燥処理を行わずに、次工程の塗装工程に進むことができる。つまり、ウェットオンウェット塗装方法を採用することができる。
したがって、曲面や屈曲部を有する金属構造物である、自動車車体、二輪車車体等の乗物外板、各種部品等について、反応型の表面処理を行った後、電着塗装をするにあたり必ずしも乾燥を行う必要がなく、ウェットオンウェット塗装方法を採用すれば、表面処理工程から電着塗装工程までの一連の工程を短縮することができる。
塗膜としては、電着塗装の他にも、溶剤塗料、水性塗料、粉体塗料等の従来公知の塗料により形成される塗膜を挙げることができる。
電着塗装の場合は、金属基材を陰極とするカチオン電着塗装であることが好ましい。通常、カチオン電着塗料は、イソシアネート基との反応性または相溶性を示す官能基を有する樹脂からなるため、化成処理剤である金属表面処理用組成物に含まれるイソシアネート基を含有するオルガノシロキサンの働きにより、電着塗膜と化成皮膜の密着性をより高めることができるからである。カチオン電着塗料としては、特に限定されず、たとえばアミノ化エポキシ樹脂、アミノ化アクリル樹脂、スルホニウム化エポキシ樹脂等からなる公知のカチオン電着塗料を挙げることができる。
塗装後に、塗膜の加熱乾燥処理(焼き付け処理)が行われる。この加熱処理により、当該塗膜だけでなく、その下層にある表面保護膜も加熱され、オルガノシロキサンのブロックイソシアネート基のブロックが外れてイソシアネート基が生じ、金属基材と塗膜との密着性および耐食性の良好な皮膜を形成することができる。
この場合、当該加熱乾燥の温度は特に限定されないが、脱ブロックが起こる温度であることが好ましく、例えば110℃以上240℃以下であることが好ましい。加熱時間も、特に限定されないが、2〜120分程度が好ましい。
次に、本発明を実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量部を、「%」は質量%を表す。
<金属基材>
市販の溶融亜鉛めっき鋼板(GI、日本テストパネル(株)製、70mm×150mm×0.8mm)、および、市販の冷延鋼板(SPC、日本テストパネル(株)製、70mm×150mm×0.8mm)を金属基材として用意した。
各金属基材には、前処理として、アルカリ脱脂処理剤「サーフクリーナーEC92」(日本ペイント(株)製)を使用して、40℃で2分間、金属基材の脱脂処理を行った。
脱脂処理後、水洗槽で浸漬洗浄した後、水道水で約30秒間スプレー洗浄を行った。
<ブロック化イソシアネートシランM1の製造>
(1)イソシアネートシランとして、KBE9007(3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、有効濃度100%、信越化学工業(株)製)100部を用い、80℃に加温した。その後、窒素雰囲気下、メチルエチルケトキシム(試薬)40.8部を、滴下漏斗から60分間かけて均一に滴下した。さらに60分間エージングして、ブロック化イソシアネートシラン(例1)を得た。
(2)イソシアネートシランとして、KBE9007(上記同)100部を用い、80℃に加温した。その後、窒素雰囲気下、メチルイソブチルケトキシム(試薬)100部とオルトパラフェノール(試薬)69部の混合溶液を、滴下漏斗から60分間かけて均一に滴下した。さらに60分間エージングして、ブロック化イソシアネートシラン(例2)を得た。
<オルガノシロキサンAの製造>
上記ブロック化イソシアネートシラン(例1)30部を滴下漏斗から、脱イオン水35部とエタノール35部の混合溶媒中に60分間かけて均一滴下した後、窒素雰囲気下、25℃で24時間反応を行った。その後、反応溶液を減圧することによりエタノールを蒸発させ、さらに脱イオン水を加え、有効成分30%のオルガノシロキサンA(単重縮合体)を得た。ここで、有効成分とは不揮発成分をいう(以下同じ)。
<オルガノシロキサンBの製造>
(1)上記ブロック化イソシアネートシラン(例1)6部と、オルガノシランM2としてのアミノシラン「KBE903」(3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、有効濃度100%、信越化学工業(株)製)14部との混合溶液を滴下漏斗から、脱イオン水40部とエタノール40部の混合溶媒中に60分間かけて均一滴下した後、窒素雰囲気下、60℃で24時間反応を行った。その後、反応溶液を減圧することによりエタノールを蒸発させ、さらに脱イオン水を加え、有効成分10%のオルガノシロキサンB(共重縮合体1)を得た。
(2)上記ブロック化イソシアネートシラン(例2)15部と、オルガノシランM2としてのKBE903(同上)64部との混合溶液に、脱イオン水25部を、滴下漏斗から60分間かけて均一滴下した後、窒素雰囲気下、25℃で24時間反応を行った。その後、反応溶液を減圧することによりエタノールを蒸発させ、さらに脱イオン水を加え、有効成分75%のオルガノシロキサンB(共重縮合体2)を得た。
(3)上記ブロック化イソシアネートシラン(例1)15部と、オルガノシランM2としてのエポキシシラン「KBM403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、有効濃度100%、信越化学工業(株)製)15部との混合溶液を、滴下漏斗から、脱イオン水35部とエタノール35部の混合溶媒中に60分間かけて均一滴下した後、窒素雰囲気下、60℃で24時間反応を行った。その後、反応溶液を減圧することによりエタノールを蒸発させ、さらに脱イオン水を加え、有効成分30%のオルガノシロキサンB(共重縮合体3)を得た。
<金属表面処理用組成物の調製>
上記得られたオルガノシロキサンAまたはBを用いて、表1および表2に示す組成の金属表面処理用組成物(処理液)を調製した。水は脱イオン水を使用し、ジルコニウムとしてはジルコンフッ化水素酸(試薬)を使用した。Snは硫酸スズ、Alは硝酸アルミニウム、Cuは硝酸銅、Znは硝酸亜鉛、Mgは硝酸マグネシウムを用いた。DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、タウリン(試薬)はキレート剤である。
比較例には、シランとして、アミノシラン「KBE−903」(同上)、エポキシシラン「KBM−403」(同上)、または「サーフコートCMML705」(日本ペイント製)を用いた。
処理液中の金属元素濃度は、プラズマ発光分光分析装置(機器名:(ICP)UPO−1 MARKII、京都光研(株)製)を用いて測定した。
表2の実施例および比較例において、調製した金属表面処理用組成物のpHを、水酸化ナトリウム水溶液により3.5に調整し、さらに遊離フッ素イオンが5ppmとなるように、酸性フッ化ナトリウムで調整した。
<表面被覆金属基材の製造>
表1の実施例および比較例の処理液を、バーコータNo.4でGI鋼板表面に塗布し、その後120℃で30秒間加熱乾燥して、固形分0.5g/mの皮膜を形成した。
表2の実施例および比較例の処理液を30℃に調整し、その中に金属基材(SPC)を60秒間浸漬して化成処理を行った。化成処理後の金属基材に対して、水道水で30秒間のスプレー処理を行い、次いでイオン交換水で10秒間のスプレー処理を行った。
水洗処理後の金属基材を電気乾燥炉において、40℃で10分間乾燥した。得られた化成皮膜の皮膜量(mg/m)を、「XRF1700」(島津製作所製蛍光X線分析装置)を用いて測定した。
<金属塗装物の製造>
化成処理後に水洗処理を施したウェットな状態にある各々の金属基材に対し、カチオン電着塗料「パワーニクス110」(日本ペイント(株)製)を塗布し、電着塗膜を形成した。電着塗装後の乾燥膜厚は、20μmであった。その後、各々の金属基材を水洗した後、170℃で20分間加熱して焼付けることで、試験板を得た。
溶剤塗料としては、オルガセレクトOST900ホワイト「日本ペイント製」を使用し、これを乾燥膜厚30μmとなるように塗布して試験板を得た。
水性アクリル塗料としては、オーデエコラインOEL100「日本ペイント製」を使用し、これを乾燥膜厚30μmとなるように塗布して試験板を得た。
実施例および比較例で得られた試験板に、次の試験を行った。
<一次防錆試験>
表面処理後のテストピースに対し、35℃雰囲気下で24時間塩水(5%NaCl)を噴霧した後、一次防錆性能を評価した。錆の発生のないものを◎、わずか(表面積の20%未満)に錆が発生したものを○、表面積の約20%以上50%未満に錆が発生したものを△、表面積の約50%を超えてほぼ全面に錆が発生したものを×とした。
<SST(塩水噴霧試験)>
塗膜に、金属基材素地にまで達する長さ10cmの傷をカッターで入れて、35℃雰囲気下で、840時間塩水(5%NaCl)を噴霧した後、テープを剥離した。傷からの塗膜の片側最大剥離幅が1mm未満のものを◎、1mm以上3mm未満のものを○、3mm以上6mm未満のものを△、6mm以上のものを×として評価した。
得られた結果を、表1および表2に併せて示す。
Figure 2009161830
Figure 2009161830
上記実施例で得られた表面被覆金属基材は、十分な塗膜密着性および耐食性を備えていた。
したがって、本発明に係る表面処理用組成物は、たとえば、塗装前の自動車車体、二輪車車体等の乗物外板、各種部品、容器外面、コイルコーティング等の、塗装処理がその後施される分野において好ましく使用される。特に、処理液寿命が長いことが要求される自動車車体等の大型部品の表面処理に好ましく使用される。

Claims (8)

  1. 加水分解性ケイ素含有基と反応性官能基とを有するオルガノシランをモノマーとして含んでなるオルガノシロキサンであって、前記反応性官能基としてブロック化イソシアネート基を有するブロック化イソシアネート基含有オルガノシロキサン。
  2. 前記ブロック化イソシアネート基含有オルガノシロキサンが、反応性官能基として、さらにアミノ基および/またはグリシジル基を含むものである、請求項1記載のブロック化イソシアネート基含有オルガノシロキサン。
  3. 請求項1または2記載のブロック化イソシアネート基含有オルガノシロキサンと水とを含む金属表面処理用組成物。
  4. さらにジルコニウム化合物を含む、請求項3記載の金属表面処理用組成物。
  5. 請求項3または4記載の金属表面処理用組成物を金属基材に塗布した後、水洗せずに乾燥させることにより当該金属基材に表面保護膜を形成する工程を含む、表面被覆金属基材の製造方法。
  6. 請求項3または4記載の金属表面処理用組成物を金属基材に接触させた後、さらに金属基材を水洗する工程を含む、表面被覆金属基材の製造方法。
  7. 請求項5または6記載の製造方法により表面被覆金属基材を製造した後、
    前記表面被覆金属基材の表面に塗料を塗布して塗膜を形成する工程、および
    前記塗膜を加熱乾燥する工程
    を含む、金属塗装物の製造方法。
  8. 前記塗膜を形成する工程が、カチオン電着塗装により行なわれる、請求項7項記載の金属塗装物の製造方法。
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