JP2009135466A - 半導体発光素子およびその製造方法 - Google Patents

半導体発光素子およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】発光素子そのものの品質改善を図る。
【解決手段】発光素子10は、バッファ層22、第一導電型半導体層、活性構造25および第二導電型半導体層を含む薄膜結晶層を有している。薄膜結晶層は、少なくとも第二導電型半導体層の一部が絶縁膜で覆われている。絶縁膜は、薄膜結晶層の結晶性を回復させる結晶品質改善層30を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、半導体発光素子、特にバッファ層を含む所定の薄膜結晶層が積層された半導体発光素子およびその製造方法に関する。
さらに詳しくは、本発明は、半導体発光素子、特にバッファ層を含む所定の薄膜結晶層が積層され、バッファ層に対して同じ側に電流注入用の電極を有するフリップチップ型の半導体発光素子およびその製造方法に関する。
近年、GaN、AlGaN、InGaNなどの窒化ガリウム系化合物半導体を用いた半導体発光素子(以下、単に発光素子と称することがある。)の開発が盛んに行なわれている。
また最近では、青色光を発する発光素子とこれによって励起される黄色蛍光体とを組み合わせた発光源が、白色光を発する照明装置の光源として実用化されている。しかし、この発光源は、発光素子から発せられた青色光と黄色蛍光体から発せられる黄色光との混色によって白色光を得るものであるため、演色性があまり高くない。
そこで、より演色性の高い白色照明を得るため、青色蛍光体、緑色蛍光体および赤色蛍光体の3色の蛍光体を発光素子と組み合わせた発光源が検討されている。この発光源では、発光素子として、例えば近紫外光を発する発光素子が用いられる。青色蛍光体、緑色蛍光体および赤色蛍光体は、発光素子から発せられた近紫外光によって励起され、近紫外光をそれぞれ青色光、緑色光および赤色光に波長変換する。波長変換によって得られた3色の光が混色されることによって、演色性の高い白色光が得られる。
しかし、一般に、近紫外光を発する発光素子は青色光を発する発光素子よりも発光効率が低い。そのため、近紫外光を発する発光素子には、さらなる高出力化および高発光効率化が求められている。
さて、発光素子における半導体層の積層構造は、一般に薄膜結晶成長により形成される。この薄膜結晶の状態は、微細なレベルで発光素子の発光特性に重要な影響を及ぼす。例えば、薄膜結晶成長により形成された半導体層は薄膜結晶成長工程中、さらにはそれ以降のプロセスにおいて、特にその積層構造の界面あるいは最表面にダメージを受け、結晶状態が劣化することがある。結晶状態の劣化は、発光素子の信頼性にも悪影響を及ぼすため、結晶状態の劣化が少ない発光素子が求められる。
前述の様に、近年の高出力化および高発光効率化に耐え得る発光素子を提供する上で、かかる結晶状態の劣化あるいはダメージが少ないことは極めて重要である。
一方、発光素子の高出力化および高発光効率化に有効な構造として、フリップチップマウント構造が知られている。この構造では、基板上に所定の半導体層を堆積し、基板と反対側に電流注入用のn側電極およびp側電極を形成し、基板側を主たる光取り出し方向とする。このため、発光素子から出る光が遮られず、また電極を光の反射面として使用可能であるために、光の取り出し効率が向上する。
このようなフリップチップマウント構造では、発光素子をサブマウント(配線用、放熱用の基板)に搭載するときに電極間などで意図しない短絡が生じないように、基板上に形成された積層構造を絶縁膜で覆う構成が採られていることが多い。
従来の発光素子においては、光の取り出し効率をより向上させるために、その絶縁膜に光反射機能を持たせたものも知られている。
特許文献1〜3には、SiO2膜およびTiO2膜からなる1組または複数組の誘電体多層膜で絶縁膜を構成することによって、絶縁膜に光反射機能を持たせた発光素子が開示されている。光反射機能を持つ絶縁膜は、電極の少なくとも一部が露出するように発光素子の側面および基板と反対側の面を覆って形成されている。これによって、発光素子内で発生し発光素子の側面および基板と反対側に向かう光は基板側へ反射されるので、基板側からの光の取り出し効率がより向上する。
特許第3423328号公報 特開2000−164938号公報 特開2002−344015号公報
しかしながら、従来の発光素子、特にフリップチップ型のマウントを前提とした発光素子では、当該素子内で発生した光の大部分を基板側(あるいは基板を除去した素子などにおいては反射電極と反対側)から取り出すように構成した結果、取り出される光の配光特性に大きな偏りが生じ、発光素子上方の空間的な放射束密度が高くなる。しかも、例えば近紫外光を発する発光素子の場合、近紫外光は青色光などの可視光と比べてエネルギーが高いので、発光素子上方に取り出される光の空間的なエネルギー密度もさらに高くなる。発光素子から発せられる光の配光特性の偏りによって、空間的なエネルギー密度が過度に上昇すると、発光素子を蛍光体と組み合わせた発光源において、蛍光体の劣化が顕著に発現する。
一方、前述の通り発光素子における半導体層の積層構造は、一般に薄膜結晶成長により形成される。薄膜結晶成長により形成された半導体層は薄膜結晶成長工程中、さらにはそれ以降のプロセスにおいて、特に表面にダメージを受け、結晶状態が劣化してしまう。結晶状態の劣化は、発光素子の信頼性にも悪影響を及ぼすため、結晶状態の劣化が少ないことも発光素子には重要である。
本発明の目的は、発光素子そのものの品質改善を図り、さらなる高出力化および高発光効率化に耐え得るようにすることである。本発明はさらに、上記の目的に加え、発光素子の放射束および発光効率を低下させることなく、当該発光素子と蛍光体とを組み合わせて発光源を構成した際に蛍光体の劣化を抑制すべく発光素子の配光特性を適正なものとし、結果として、発光素子上方(あるいは基板を除去した素子などにおいては反射電極と反対側)の空間的な放射束密度あるいはエネルギー密度を低減させた発光素子およびその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明は以下の事項に関する。
[1] バッファ層、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層がこの順番に積層された薄膜結晶層を有する半導体発光素子であって、
前記薄膜結晶層は、少なくとも前記第二導電型半導体層の一部が絶縁膜で覆われ、
前記絶縁膜は、前記薄膜結晶層の結晶性を向上させる結晶品質改善層を有することを特徴とする半導体発光素子。
[1] 前記絶縁膜は、前記結晶品質改善層の少なくとも一部を覆って形成され前記薄膜結晶層側から入射する光の反射を抑制する少なくとも1層の反射抑制層をさらに有する上記[1]に記載の半導体発光素子。
[3] 前記薄膜結晶層で発生した光が前記絶縁膜に垂直入射したときの前記絶縁膜の光の反射率をR%としたとき、
0.001(%)<R<3(%)
を満たすように前記反射抑制層が調整されている上記[2]に記載の半導体発光素子。
[4] 前記反射抑制層は単一の層で構成されている上記[3]に記載の半導体発光素子。
[5] 前記反射抑制層は、AlOx、SiOx、TiOx、MgF2、SiNxおよびSiOxから選択される材料からなる上記[2]から[4]のいずれかに記載の半導体発光素子。
[6] 前記第二導電型側電極は前記第二導電型半導体層との対向面全体が前記第二導電型半導体層と接しており、かつ、前記絶縁膜は、前記第二導電型側電極の一部をも覆っている上記[1]から[5]のいずれかに記載の半導体発光素子。
[7] 前記第一導電型側電極は、前記第一導電型半導体層との対向面の一部のみが前記第一導電型側半導体層と接しており、前記第一導電型半導体層と前記第一導電型側電極との間に前記絶縁膜の一部が介在している上記[1]から[6]のいずれかに記載の半導体発光素子。
[8] 前記絶縁膜は前記薄膜結晶層の側壁の少なくとも一部に接している上記[1]から[7]のいずれかに記載の半導体発光素子。
[9] 前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層は窒化物半導体である上記[1]から[8]のいずれかに記載の半導体発光素子。
[10] 前記窒化物半導体は、In、Ga、AlおよびBの少なくとも1種の元素を含有する上記[9]に記載の半導体発光素子。
[11] 前記活性層構造内から発せられる光の中心波長λ(nm)が下記式を満たす上記[1]から[10]のいずれかに記載の半導体発光素子。
300(nm)≦λ≦430(nm)
[12] 第一導電型がn型であり、第二導電型がp型である、上記[1]から[11]のいずれかに記載の半導体発光素子。
[13] 前記第二導電型半導体層の表面にMgおよびHを含有する上記[1]から[12]のいずれかに記載の半導体発光素子。
[14] 前記結晶品質改善層はNおよびHを含有する上記[1]から[13]のいずれかに記載の半導体発光素子。
[15] 前記結晶品質改善層での水素原子の濃度が1×1021atoms/cm3以上1×1022atoms/cm3以下である上記[14]に記載の半導体発光素子。
[16] 前記結晶品質改善層は、窒化物、酸窒化物のいずれか1以上を含む上記[1]から[15]のいずれかに記載の半導体発光素子。
[17] 前記窒化物、酸窒化物は、B、Al、Si、Ti、V、Cr、Mo、Hf、Ta、またはWのいずれか1種またはそれ以上の元素を含む上記[16]に記載の半導体発光素子。
[18] 前記第一導電型半導体層および第二導電型半導体層にそれぞれ電流を注入するための第一導電型側電極および第二導電型側電極が共に、前記バッファ層に対して前記第一導電型半導体層と同じ側に配置されたフリップチップ型である上記[1]から[17]のいずれかに記載の半導体発光素子。
[19] 基板上に、バッファ層、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する薄膜結晶層を形成する結晶成長工程と、
前記第二導電型半導体層上の予定された第二電流注入領域上に第二導電型側電極を形成する第二導電型側電極形成工程と、
前記第一導電型側半導体層の一部を露出させる第一エッチング工程と、
少なくとも前記第二導電型半導体層の一部と前記第一導電型半導体層の一部を覆うように、前記薄膜結晶層の結晶性を向上させるための結晶品質改善層を含む絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜の少なくとも前記第一導電型半導体層上の一部分を除去して第一電流注入領域を形成する第一電流注入領域形成工程と、
前記第一電流注入領域上に第一導電型側電極を形成する第一導電型側電極形成工程と、
を、この順に実施することを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
[20] 前記絶縁膜形成工程は、前記結晶品質改善層上に、前記薄膜結晶層側から入射する光の反射を抑制する反射抑制層を形成することを含む上記[19]に記載の半導体発光素子の製造方法。
[21] 前記絶縁膜形成工程は、前記薄膜結晶層側からの光が前記結晶品質改善層および反射抑制層に垂直入射したときの反射率をR%としたとき、
0.001(%)<R<3(%)
を満たすように前記反射抑制層を形成することを含む上記[20]に記載の半導体発光素子の製造方法。
[22] 前記絶縁膜形成工程は、前記結晶品質改善層の形成および前記反射抑制層の形成を、同一の成膜装置内で連続して行なう上記[20]または[21]に記載の半導体発光素子の製造方法。
[23] 前記結晶品質改善層は、窒化物、酸窒化物のいずれか1以上を含む上記[19]から[22]のいずれかに記載の半導体発光素子の製造方法。
[24] 前記窒化物、酸窒化物は、B、Al、Si、Ti、V、Cr、Mo、Hf、Ta、またはWのいずれか1種またはそれ以上の元素を含む上記[23]に記載の半導体発光素子の製造方法。
[25] 前記絶縁膜形成工程は、窒素原料として少なくともアンモニアを含有するガス種を用いて前記結晶品質改善層を形成することを含む上記[19]から[24]のいずれかに記載の半導体発光素子の製造方法。
[26] 前記絶縁膜形成工程は、酸素原料として少なくともNOを含有するガス種を用いて前記結晶品質改善層を形成することを含む上記[19]から[25]のいずれかに記載の半導体発光素子の製造方法。
[27] 前記絶縁膜形成工程は、プラズマCVD法によって前記結晶品質改善層を形成することを含む上記[19]から[26]のいずれかに記載の半導体発光素子の製造方法。
[28] 前記絶縁膜形成工程は、水素原子の濃度が1×1021atoms/cm3以上1×1022atoms/cm3以下となるように前記結晶品質改善層を形成することを含む上記[19]から[27]のいずれかに記載の半導体発光素子の製造方法。
本発明によれば、絶縁膜が上記のように結晶品質改善層を有することで、薄膜結晶層の結晶性は向上し、結晶状態の劣化が少なく、高出力化および高発光効率化に耐え得る半導体発光素子を提供することができる。また、これに加えて、絶縁膜を、反射抑制層を含んだ多層膜として極めて低い反射率で形成することによって、半導体発光素子を構成する薄膜結晶層から発せられた光は絶縁膜を通して取り出すことができる。これにより、従来のように反射機能を主として発現する絶縁膜を有する半導体発光素子と比較して、たとえ全放射束が同じであっても、発光素子上方の空間的な放射束密度が低下する。すなわち、絶縁膜が極めて低い反射率で形成されたフリップチップ型半導体発光素子は素子の上方側のみならず、側壁、電極側等あらゆるところからの放射が期待されるようになる。
よって、本発明の発光素子は、反射機能を有する絶縁膜を有する半導体発光素子で、薄膜結晶層の成長用の基板が存在する場合には基板側からの放射あるいは基板を除去した素子などにおいては反射電極と反対側からの放射が主である半導体発光素子と比較して、発光素子上方の空間的な放射束を大きく低下させ、発光素子の側面側、電極側(下方)等さまざまな方向に光を放射することができる。その結果、半導体発光素子部分の品質を改善しさらなる高出力化および高発光効率化に耐えうるようにしつつ、かつ、当該半導体発光素子を蛍光体励起光源として用いて発光源を構成した場合においても、全体としての出力および発光効率を低下させることなく、蛍光体の劣化を抑制する事が可能となる。
この効果は、特に、紫外、近紫外光を発する放射エネルギーの高い(あるいは青色、緑色等と比較して波長の短い)発光素子を蛍光体と組み合わせて発光源を構成した場合において顕著である。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内であれば種々に変更して実施することができる。
本明細書において、「積層」または「重なる」の表現は、もの同士が直接接触している状態に加え、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、互いに接触していなくても、一方を他方に投影した際に空間的に重なる状態をも指す場合がある。また、「〜の上(〜の下)」の表現も、もの同士が直接接触して一方が他方の上(下)に配置されている状態に加え、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、互いに接触していなくても、一方が他方の上(下)に配置されている状態にも使用する場合がある。さらに、「〜の後(前、先)」との表現は、ある事象が別の事象の直後(前)に発生する場合にも、ある事象が別の事象との間に第三の事象を挟んだ後(前)発生する場合にも、どちらにも使用する。また、「接する」の表現は、「物と物が直接的に接触している場合」に加えて、本発明の趣旨に適合する限りにおいて、「物と物が直接的には接触していなくても、第三の部材を介して間接的に接している場合」、「物と物が直接的に接触している部分と、第三の部材を介して間接的に接している部分が混在している場合」などを指す場合もある。
さらに、本発明において、「薄膜結晶成長」とは、いわゆる、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)、MBE(Molecular Beam Epitaxy)、プラズマアシストMBE、PLD(Pulsed Laser Deposition)、PED(Pulsed Electron Deposition)、PSD(Pulsed sputtering Deposition)、VPE(Vapor Phase Epitaxy)、LPE(Liquid Phase Epitaxy)法等の結晶成長装置内における薄膜層、アモルファス層、微結晶、多結晶、単結晶、あるいはそれらの積層構造の形成に加えて、その後の薄膜層の熱処理、プラズマ処理等によるキャリアの活性化処理等も含めて薄膜結晶成長と記載する。
本発明の一実施形態による半導体発光素子(以下、単に発光素子という)は、図1に示すように、基板21と、基板21の片面に積層された化合物半導体薄膜結晶層(以下、単に薄膜結晶層ともいう)とを有する。化合物半導体薄膜結晶層は、バッファ層22、第一導電型クラッド層24を含む第一導電型半導体層、活性層構造25、および第二導電型クラッド層26を含む第二導電型半導体層が基板21側からこの順番に積層されて構成されている。
第二導電型クラッド層26の表面の一部に、電流注入用の第二導電型側電極27が配置されており、第二導電型クラッド層26と第二導電型側電極27の接触している部分が、第二導電型半導体層に電流を注入する第二電流注入領域35となっている。また、化合物半導体薄膜結晶層の一部が、その厚さ方向において第二導電型クラッド層26側から第一導電型クラッド層24の途中まで除去されており、除去された箇所に露出する第一導電型クラッド層24に接して、電流注入用の第一導電型側電極28が配置されている。第一導電型クラッド層24と第一導電型側電極28の接触している部分が、第一導電型半導体層に電流を注入する第一電流注入領域36となっている。
第二導電型側電極27および第一導電型側電極28が上記のように配置されることによって、両者はバッファ層22に対して第一導電型半導体層と同じ側に配置され、発光素子10はフリップチップ型の発光素子10として構成されている。
第二導電型側電極27および第一導電型側電極28は、サブマウント40上の金属層41に、金属ハンダ42を介してそれぞれ接続されている。
第一導電型側電極28および前記第二導電型側電極27は、互いに空間的に重なりを有していない。これは、図1に示すように、第一導電型側電極28および第二導電型側電極27を基板面に対して投影したときに、影が重ならないことを意味する。
化合物半導体薄膜結晶層は、少なくとも第二導電型半導体層の第二導電型側電極27との接触部を除く部分が、絶縁膜によって覆われている。図1に示す例では、バッファ層22の一部、第一導電型半導体層の第一電流注入領域36を除く部分、活性層構造25、および第二導電型半導体層の第二電流注入領域35を除く部分が、絶縁膜によって覆われている。つまり、バッファ層22、第一導電型半導体層、活性層構造25および第二導電型半導体層を有する化合物半導体薄膜結晶層の側壁の少なくとも一部が絶縁膜で覆われている。
絶縁膜は、発光素子をフリップチップマウントした際に、マウント用のハンダや導電性ペースト材等が、「第二導電型側電極と第一導電型側電極の間」、「活性層構造などの薄膜結晶層の側壁」等に回りこんで、意図しない短絡が発生しないようにする機能をも有する。
絶縁膜は、薄膜結晶層の結晶性を向上させる結晶品質改善層30を有しており、好ましくは、この結晶品質改善層30の少なくとも一部を覆って形成された少なくとも1層の反射抑制層31をさらに有する多層膜で構成される。絶縁膜はこのように、結晶品質改善層30および反射抑制層31を有する場合であっても、第一層目が結晶品質改善層30である。よって、本発明において「絶縁膜で覆われている」といった場合、絶縁膜に覆われている部分は結晶品質改善層30と接していることになる。
絶縁膜は上記のように少なくとも第二導電型半導体層を覆っている部分を有していればよいが、本形態ではさらに、第二導電型側電極27は第二導電型半導体層との対向面全体が第二導電型半導体層と接しており、かつ、このようにして第二導電型半導体層と接して配置された第二導電型側電極27の一部をも、絶縁膜は覆っている。このような構造は、第二導電型クラッド層26上に第二導電型側電極27を形成した後に、絶縁膜を形成することによって得ることができる。
さらに本形態では、第一導電型側電極28は、第一導電型半導体層との対向面の一部のみが第一導電型半導体層と接しており、第一導電型半導体層と第一導電型側電極28との間に絶縁膜の一部が介在している。このような構造は、第一導電型クラッド層24上に絶縁膜を形成した後に、第一導電型側電極を形成することによって得ることができる。
絶縁膜と各電極とのこのような位置関係により、プロセスダメージの少ない工程により発光素子10を製造することが可能である。本形態では、以上のように、プロセスダメージ、フリップチップマウントを実施した際の放熱性、絶縁性等が総合的に考慮された絶縁膜の配置となっている。
発光素子10は、詳しくは後述するが、同一の基板21上に複数の発光素子10を形成し、隣接する発光素子10の境界部で基板21を切断することによって、個々の発光素子10に分離して製造することができる。このような製造方法を考慮すると、本発明においては、(A)発光素子の端部の段差形状、(B)発光素子の端部の絶縁膜の形状、の2つの点で異なる形態を取ることができ、それぞれの組み合わせにより図1、図1−1、図1−2および図1−3の4種類の形態に分けられる。
(A)発光素子の端部の段差形状については、製造工程において同一の基板21上に複数の発光素子10を形成する場合に、隣接する発光素子10の境界部に装置間分離溝(後述する図5の符号13)を形成する際のエッチング深さにより、大きく分けて(A−i)バッファ層22の途中まで、(A−ii)基板21に達するまで(またはそれより深く)、の2つの選択がある。
装置間分離溝の深さ(A−i)〜(A−ii)に対応して、(A−i)では、バッファ層22の一部が第一導電型半導体層、活性層構造25および第二導電型半導体層と共に、基板21の端面でもある発光素子10の端面(以下、素子端面ともいう)より後退した側壁を構成し、バッファ層22の側壁に段差が存在する形状となる。なお、(A−i)に対応するのは、図1および図1−3である。(A−ii)では、バッファ層22の側壁はすべて素子端面より後退した位置にあり、基板21の端面に段差が存在する形状となる。さらに、(A−ii)において、基板21をさらに掘り込むように装置間分離溝を形成した場合は、基板21の端面の一部も素子端面より後退した側壁を構成する。素子端面より後退した側壁に形成された絶縁膜は、素子分離の際に剥離するおそれがなく、その効果を有効に発揮することができる。よって、基板21をさらに掘り込むように装置間分離溝を形成することは、発光素子10の側壁での絶縁膜の形成領域を増やすことにつながり、本発明のように構成された絶縁膜による効果(特に、後述するように側壁からの光取り出し量を増加させる効果)をより効果的に発揮するうえでも好ましいものである。なお、(A−ii)に対応するのは、図1−1および図1−2である。
(B)発光素子の端部の絶縁膜の形状については、製造工程において、装置間分離溝の側壁に形成された絶縁膜を残したまま、分離溝の底面上の中央を含む領域の絶縁膜のみを除去するか、または分離溝の底面に形成された絶縁膜の全てに加え分離溝内の側壁の一部までも含めて絶縁膜を除去するか、の選択がある。よって、その結果製造される発光素子においては、(B−i)絶縁膜が分離溝の底面に付いている態様、(B−ii)絶縁膜が分離溝の底面から離れている態様、の2つの形態がある。(B−i)に対応するのは、図1および図1−1である。(B−ii)に対応するのは、図1−2および図1−3である。
以下に、発光素子10の端部近傍での形状を、上記の(B−i)の態様および(B−ii)の態様に分けて説明する。
まず、絶縁膜が分離溝の底面に付いている(B−i)の態様について説明する。(B−i)の態様の代表的な例が、図1に示した形状である。図1に示す例は、装置間分離溝がバッファ層22の途中まで形成されて製造された発光素子10である。素子同士の分離は、装置間分離溝内で行われる。その結果、図1に示す例では、バッファ層22の側壁面の一部は素子端面と一致し、バッファ層22の途中から側壁面が素子端面より後退し、第二導電型半導体層の側壁面と共に、素子端面より後退した側壁面を構成している。これによってバッファ層22には、素子端面と一致した面と、後退した側壁面との間に段差面が存在している。
素子分割前には、絶縁膜(結晶品質改善層30と反射抑制層31との積層膜)は、装置間分離溝の底面の全てを覆うのではなく、装置間分離溝の底面中央部には形成されていない。この絶縁膜が形成されていない部分がスクライブ領域となる。
その結果得られる分離された後の発光素子10では、バッファ層22の側壁のうち素子端面と一致した部分は露出し、素子端面より後退した部分は、段差面の素子端面から後退した部分も含めて絶縁膜で被覆されている。
図1−1に、(B−i)の形態の他の例を示す。図1−1に示す例は、装置間分離溝が基板21に達するまで形成されて製造された発光素子10である。基板21の切断による素子の分離は、分離溝内で行われる。その結果、薄膜結晶層の側壁面は素子端面より後退している。この態様では、薄膜結晶層、特に電流注入、発光等の本質的な機能に関わる部分である第一導電型半導体層、活性層構造25および第二導電型半導体層は、一般に使用されるスクライブ、ブレーキング等の素子分離の際のプロセスを被歴せず素子が分離されるので、性能に関わる薄膜結晶層に直接的にダメージを与えない。このため、この態様の発光素子10は特に大電流注入においてその耐性や信頼性等の性能が優れている。
絶縁膜(結晶品質改善層30と反射抑制層31との積層膜)は、図1に示した例と同様、装置間分離溝の底面中央部には形成されておらず、その部分がスクライブ領域とされる。製造工程中の素子分離の際には、絶縁膜の剥れが生じないので、確実な絶縁性を保てることに加え、絶縁膜の剥れの際に生じる引っ張りによって薄膜結晶層にダメージが与えられることもない。上記のように絶縁膜が形成されることによって、分離された後の発光素子では、絶縁膜は、薄膜結晶層の側壁面が後退して露出した基板面の全面を覆うのではなく、基板の端から離れた位置より内側を覆っている。
次に、絶縁膜が分離溝の底面から離れている(B‐ii)の態様について説明する。(B−ii)の態様の幾つかの例を図1−2および図1−3に示す。この態様は、(B−i)の態様と対比して、薄膜結晶層の形状および層構成等は同じであるが、発光素子端部の絶縁膜の形状が異なっている。
具体的には、例えば、装置間分離溝が基板21に達するまで形成されて製造された発光素子10の例である図1−2に示すように、基板21の表面(装置間分離溝の底面)にも絶縁膜(結晶品質改善層30と反射抑制層31との積層膜)は存在しない。薄膜結晶層の素子端面より後退した側壁面のうち、絶縁膜で覆われていない部分は、バッファ層22の側壁面の基板21側に存在している。基板21の一部にまで装置間分離溝が形成された場合は、薄膜結晶層の側壁面の全てが絶縁膜で覆われている場合がある。
絶縁膜で覆われていないバッファ層22の部分は、ドーピングされていないアンドープ層であることが好ましい。露出している部分が絶縁性の高い材料であれば、ハンダの回り込みによる短絡等のおそれがなく、信頼性の高い発光素子となる。
図1−2に示す例では、基板21と接している部分に絶縁膜が形成されていないので、製造工程中のスクライブ、ブレーキング等の素子分離の際に基板21のみをスクライブ、ブレーキングすればよいので、薄膜結晶層に直接的にダメージを与えることがない。また、絶縁膜の剥れが生じないので、確実な絶縁性を保てることに加え、絶縁膜の剥れの際に生じる引張りによって薄膜結晶層にダメージを与えることもない。上記のように絶縁膜が形成されることによって、分離された後の発光素子では、薄膜結晶層の側壁面が後退して露出した基板面を絶縁膜が覆っていない。さらに、後述するように、発光素子の製造過程で基板21を除去する場合があるが、このように基板21と接している部分に絶縁膜が形成されていないことは、基板21を除去する際にも絶縁膜が剥離するおそれがなく好ましい。
(B−ii)の態様においても、装置間分離溝がバッファ層22の途中まで形成されることも好ましい。この場合、完成した発光素子では、少なくとも第一導電型半導体層、活性層構造および第二導電型半導体層は発光素子の端(基板端)より内側に後退し、分離溝の底面に基づく段差により基板面と平行な面が発光素子の端部に存在する。
図1−3に、(B−ii)の態様において装置間分離溝がバッファ層22の途中まで形成されて製造された発光素子10の一例を示す。図に示すように、バッファ層22の側壁面の一部は素子端面と一致しバッファ層22の途中から側壁面が素子端面より後退し、これによってバッファ層22には、素子端面と一致した面と、後退した側壁面との間に段差面が存在している。バッファ層22の素子端面と一致した面および段差面は絶縁膜(結晶品質改善層30と反射抑制層31との積層膜)で被覆されておらず、また、素子端面より後退した側壁面では、絶縁膜が形成されていない部分が基板21側に存在する。絶縁膜が形成されていない部分は、場合によっては、バッファ層22の側壁面の全部にわたってもよい。
図1−3に示す例のように、装置間分離溝をバッファ層22の途中まで形成した場合にも、側壁を覆う絶縁膜が発光素子10の端まで達していないことにより、製造工程において絶縁膜の剥れがないことが保証され、また露出している層を絶縁性の高い材料で構成することにより、図1−2に示した発光素子と同じく信頼性の高い素子となる。
以下に、装置を構成する各部材と構造についてさらに詳細に説明する。
<基板>
基板21は、光学的に発光素子10の発光波長に対しておおよそ透明であれば、材料等は特に限定されない。ここでおおよそ透明とは、発光波長に対する吸収が無いか、あるいは、吸収が存在しても、その基板21の吸収によって光出力が50%以上低減しないものである。
基板21は、電気的には絶縁性であることが好ましい。これは、発光素子10をフリップチップマウントした際に、たとえハンダ材などが基板21の周辺に付着しても、発光素子10への電流注入には影響を与えないからである。一方、発光素子10が後述する上下導通型の場合は、基板21は導電性を有することが好ましい(例えば図21および22)。具体的な材料としては、例えばInAlGaN系発光材料またはInAlBGaN系材料をその上に薄膜結晶成長させるためには、サファイア(Al)、SiC、GaN、LiGaO2、LiAlO、ZnO、ScAlMgO4、NdGaO3、およびMgOから選ばれることが望ましく、特にサファイア、GaNが好ましい。
本発明で使用される基板21は、いわゆる面指数によって完全に確定されるジャスト基板だけではなく、薄膜結晶成長の際の結晶性を制御する観点から、いわゆるオフ基板(miss oriented substrate)であることもできる。オフ基板は、ステップフローモードでの良好な結晶成長を促進する効果を有するため、素子のモフォロジ改善にも効果があり、基板として広く使用される。たとえば、サファイアのc+面基板をInAlGaN系材料の結晶成長用基板として使用する際には、m+方向に0.2度程度傾いた面を使用することが好ましい。オフ基板としては、0.1〜0.2度程度の微傾斜を持つものが広く一般的に用いられるが、サファイア上に形成されたInAlGaN系材料においては、活性層構造25内の発光ポイントである量子井戸層にかかる圧電効果による電界を打ち消すために、比較的大きなオフ角度をつけることも可能である。
また基板21はGaN基板であることも望ましい。GaNは屈折率がサファイア等と比較して圧倒的に高く導波効率が良い。よって、側壁面を反射抑制層31によって極低反射化できれば、より効率的に薄膜結晶層側から基板21側に出ようとする光を基板21の側壁面に導波し、基板上面からではなく基板21の側壁面から光を出射できるようになるため、非常に好ましい。
基板21は、MOCVDやMBE等の結晶成長技術を利用して発光素子10を製造するために、あらかじめ化学エッチングや熱処理等を施しておいてもよい。また、後述するバッファ層22との関係で、基板21のバッファ層22が積層される面に意図的に凹凸加工をしておき、これによって、薄膜結晶層と基板21との界面で発生する貫通転移を発光素子の活性層近傍に導入しないようにすることも可能である。
基板21の厚みとしては、本発明の1形態においては、素子作成初期においては、通常350〜700μm程度のものであり、発光素子10の結晶成長、素子作製プロセスにおける機械的強度が確保されるようにしておくのが普通である。これを用いて薄膜結晶層を成長した後に、各々の素子に分離しやすくするために、適宜、研磨工程によってプロセス途中で薄くし、最終的に装置としては100μmの厚さ程度以下となっていることが普通である。また、通常30μm以上の厚みである。
さらに本発明の異なる形態では、基板21の厚さは、従来とは異なり厚いものでもよい。このような厚みのある基板を用いる場合には、基板を薄膜化した発光素子と比較して、側壁の面積が実効的に増加するため、たとえ全放射束が同じ程度であっても、反射抑制層31を効果的に機能させることができる。すなわち、装置間分離溝が、基板21に達し、かつ、基板21の一部を掘り込むように形成された構成においては、基板21の側面にも絶縁膜を形成し、そこを通じて側壁からの光取り出し量を増加させることができることから、厚みのある基板21を用いることは、結果として基板面上側からの光の出射を抑制する事が可能であって、好ましい。このような形態の発光素子においては、基板21の厚みとしては、100μm以上が好ましく、150μm以上が更に好ましく、250μm以上が特に好ましい。
なお、基板21は、それ自身が発光に寄与するものではないので、薄膜結晶層や絶縁膜など、発光素子10を構成する全ての構造が形成された後、除去されてもよい。よって、本発明において基板21は必須の要素ではない。
基板21の除去は、例えば、第一導電型側電極28および第二導電型側電極27を支持体(不図示)に接合し、その後、薄膜結晶層から基板21を剥離することによって行なうことができる。基板21の剥離には、研磨、エッチング、レーザディボンディング等のあらゆる方法を用いることが可能である。また、基板21を除去する場合は、絶縁膜が基板21に接して形成されていると、基板21を剥離する際に絶縁膜も剥離するおそれがあるため、絶縁膜を基板21に接しないように形成することが好ましい。
<バッファ層>
バッファ層22は、基板21上に薄膜結晶成長する上で、転移の抑制、基板結晶の不完全性の緩和、基板結晶と所望の薄膜結晶層との各種の相互不整合の軽減など、主に薄膜結晶成長のための目的のために形成される。
バッファ層22は、薄膜結晶成長で成膜され、本発明で望ましい形態であるInAlGaN系材料、InAlBGaN系材料、InGaN系材料、AlGaN系材料、GaN系材料などを異種基板上に薄膜結晶成長する際には、必ずしも基板21との格子定数のマッチングが確保されないので、バッファ層22は特に重要である。たとえば、薄膜結晶層を有機金属気相成長法(MOVPE法)で成長する際には、600℃近傍の低温成長AlN層をバッファ層に用いたり、あるいは500℃近傍で形成した低温成長GaN層を用いたりすることも出来る。また、同種基板上に薄膜結晶成長する場合、例えばGaN基板上にGaN、AlGaN、InGaN、AlInGaNなどの材料を成長する場合であっても、バッファ層22は重要である。この場合はバッファ層22として、800℃から1000℃程度の高温で成長したAlN、GaN、AlGaN、InAlGaN、InAlBGaNなども使用可能である。これらの層は一般に薄く5〜40nm程度である。
バッファ層22は必ずしも単一の層である必要はなく、低温で成長したGaNバッファ層22の上に、結晶性をより改善するために、ドーピングをほどこさない1000℃程度の温度で成長したGaN層を数μm程度有するようにしてもかまわない。実際には、このような厚膜バッファ層を有することが普通であって、その厚みは0.5〜7μm程度である。バッファ層22は、Si等でドーピングされていてもよいし、バッファ層内にドーピング層とアンドープ層を積層して形成することも可能である。
典型的な形態としては、基板21に接して350℃〜650℃未満程度の低温で薄膜結晶成長させた低温バッファ層と、650℃〜1100℃程度の高温で薄膜結晶成長させた高温バッファ層の2層構造のものが挙げられる。
また、バッファ層22の形成に関しては、いわゆるマイクロチャネルエピタキシーの一種である横方向成長技術(ELO)も使用可能であり、これによってサファイア等の基板とInAlGaN系材料の間で発生する貫通転移の密度を大幅に低減することも可能である。
本発明においては、バッファ層22の厚みは、発光素子10の側壁の面積を実効的に増加させる。そのため、たとえ全放射束が同じ程度であっても、反射抑制層31を効果的に機能させることができ、絶縁膜を通じた側壁からの光取り出し量を増加させ、結果として基板面上側からの光の出射を抑制する事が可能であるという点で、バッファ層22は厚い方が好ましい。ただし、過度に厚いバッファ層22を用いた場合には、薄膜結晶層の結晶品質が低下するため、バッファ層22の厚みとしては、1μm〜6μmの範囲が好ましく、2μm〜5μmの範囲がより好ましく、最も好ましくは、3μm〜4μmの範囲である。
<第一導電型半導体層および第一導電型クラッド層>
本発明の代表的形態では、図1に示すようにバッファ層22に接して、第一導電型クラッド層24が存在する。第一導電型クラッド層24は、後述する活性層構造25に対して、後述する第二導電型クラッド層26と共に機能して、キャリアを効率よく注入し、かつ、活性層構造からのオーバーフローも抑制し、量子井戸層における発光を高効率で実現するための機能を有している。また、あわせて活性層構造近傍への光の閉じ込めにも寄与し、量子井戸層における発光を高効率で実現するための機能を有している。第一導電型半導体層は、上記のクラッド機能を有する層に加えて、コンタクト層のように装置の機能向上のため、または製造上の理由により、第一導電型にドープされた層を含むものである。広義には、第一導電型半導体層の全体を第一導電型クラッド層24と考えてもよく、その場合にはコンタクト層等は、第一導電型クラッド層24の一部と見ることもできる。
一般的に第一導電型クラッド層24は、後述する活性層構造25の平均的屈折率より小さな屈折率を有する材料で、かつ、後述する活性層構造25の平均的なバンドギャップよりも大きな材料で構成される事が望ましい。さらに、第一導電型クラッド層24は、活性層構造25内の特にバリア層との関係において、いわゆるタイプI型のバンドラインナップとなる材料で構成されるのが一般的である。このような指針の元で、第一導電型クラッド層24の材料としては、所望の発光波長を実現するために準備される基板21、バッファ層22、活性層構造25等に鑑みて、適宜選択することができる。
例えば、基板21としてC+面サファイアを使用し、バッファ層22として低温成長したGaNと高温成長したGaNの積層構造を使用する場合には、第一導電型クラッド層24としてGaN系材料、AlGaN系材料、AlGaInN系材料、InAlBGaN系材料、もしくはその多層構造を用いることができる。
第一導電型クラッド層24のキャリア濃度としては、下限としては1×1017cm-3以上が好ましく、5×1017cm-3以上がより好ましく、1×1018cm-3以上が最も好ましい。上限としては5×1019cm-3以下が好ましく、1×1019cm-3以下がより好ましく、7×1018cm-3以下が最も好ましい。また、ここでは、第一導電型がn型の場合、ドーパントとしては、Siが最も望ましい。
また、本発明においては、第一導電型クラッド層24の厚みは、発光素子10の側壁の面積を実効的に増加させる。そのため、たとえ全放射束が同じ程度であっても、反射抑制層31を効果的に機能させることができ、絶縁膜を通じた側壁からの光取り出し量を増加させ、結果として基板面上側からの光の出射を抑制する事が可能であるという点で、第一導電型クラッド層24は厚い方が好ましい。ただし、過度に厚い第一導電型クラッド層24を用いた場合には、薄膜結晶層の結晶品質が低下するため、第一導電型クラッド層24の厚みとしては、1μm〜10μmの範囲が好ましく、3μm〜8μmの範囲がより好ましく、最も好ましくは、4μm〜6μmの範囲である。
第一導電型クラッド層24の構造は、図1の一例では単一の層からなる第一導電型クラッド層24を示すが、第一導電型クラッド層24は、2層以上の層からなるものであってもよい。この場合には、たとえばGaN系材料とAlGaN系材料、InAlGaN系材料、InAlBGaN系材料を使用することも可能である。また第一導電型クラッド層24の全体を異種材料の積層構造として超格子構造とすることもできる。さらに、第一導電型クラッド層24内において、前述のキャリア濃度を変化させることも可能である。
第一導電型クラッド層24の第一導電型側電極28と接触している部分においては、そのキャリア濃度を意図的に高くして、当該電極との接触抵抗を低減することも可能である。
第一導電型クラッド層24の一部はエッチングされており、かつ、第一導電型クラッド層24の露出した側壁、エッチングされた部分などは、後述する第一導電型側電極27との接触を実現する第一電流注入領域36を除いて、すべて絶縁膜で覆われている構造が望ましい。
第一導電型クラッド層24に加えて、第一導電型半導体層として、必要によりさらに異なる層が存在してもよい。例えば、電極との接続部にキャリアの注入を容易にするためのコンタクト層が含まれていてもよい。また、各層を、組成または形成条件等の異なる複数の層に分けて構成してもよい。
<活性層構造>
第一導電型クラッド層24の上には、活性層構造25が形成されている。活性層構造25とは、前述の第一導電型クラッド層24と、後述する第二導電型クラッド層26から注入される、電子と正孔(あるいは正孔と電子)が再結合して発光する層である量子井戸層を含み、かつ、量子井戸層に隣接して配置される、あるいは、量子井戸層とクラッド層間に配置されるバリア層をも含む構造を指す。ここで、発光素子10の高出力化、高効率化を実現するためには、活性層構造中の量子井戸層の層数をW、バリア層の層数をBとすると、B=W+1を満たすことが望ましい。すなわち、クラッド層24、26と活性層構造25の全体の層の関係は、「第一導電型クラッド層、活性層構造、第二導電型クラッド層」と形成され、活性層構造25は、「バリア層、量子井戸層、バリア層」、あるいは、「バリア層、量子井戸層、バリア層、量子井戸層、バリア層」のように形成されることが、高出力化のために望ましい。
ここで、量子井戸層においては量子サイズ効果を発現させて、発光効率を高めるために、その層厚はド・ブロイ波長と同程度にうすい層である。このため、高出力化を実現するためには、単層の量子井戸層のみではなく、複数の量子井戸層を設けてこれを分離して活性層構造とすることが望ましい。この際に各量子井戸層間の結合を制御しつつ分離する層がバリア層である。また、バリア層は、クラッド層と量子井戸層の分離のためにも存在することが望ましい。たとえば、クラッド層がAlGaNからなり、量子井戸層がInGaNからなる場合には、この間にGaNからなるバリア層が存在する形態が望ましい。これは結晶成長の最適温度が異なる場合の変更も容易にできるので、薄膜結晶成長の観点からも望ましい。また、クラッド層が、最もバンドギャップの広いInAlGaNからなり、量子井戸層が最もバンドギャップの狭いInAlGaNからなる場合は、バリア層にその中間のバンドギャップを有するInAlGaNを用いることも可能である。さらに、一般にクラッド層と量子井戸層との間のバンドギャップの差は、バリア層と量子井戸層の間のバンドギャップの差よりも大きく、量子井戸層へのキャリアの注入効率を考えても、量子井戸層はクラッド層に直接隣接しないことが望ましい。
量子井戸層は意図的なドーピングは実施しないほうが望ましい。一方、バリア層には、ドーピングを施して、系全体の抵抗を下げるなどのことを実施するのが望ましい。特に、バリア層にはn型のドーパント、特にSiをドーピングするのが望ましい。これは、p型のドーパントであるMgはデバイス内では拡散しやすく、高出力動作時においては、Mgの拡散を抑制することが重要となる。このために、Siは有効であって、バリア層にはSiがドーピングされていることが望ましい。但し量子井戸層とバリア層との界面においては、ド−ピングを実施しないほうが望ましい。
<第二導電型半導体層および第二導電型クラッド層>
第二導電型クラッド層26は、前述の活性層構造25に対して、前述の第一導電型クラッド層24と共に、キャリアを効率よく注入し、かつ、活性層構造25からのオーバーフローも抑制し、量子井戸層における発光を高効率で実現するための機能を有している。また、あわせて活性層構造近傍への光の閉じ込めにも寄与し、量子井戸層における発光を高効率で実現するための機能を有している。第二導電型半導体層は、上記のクラッド機能を有する層に加えて、コンタクト層のように装置の機能向上のため、または製造上の理由により、第二導電型にドープされた層を含むものである。広義には、第二導電型半導体層の全体を第二導電型クラッド層26と考えてもよく、その場合にはコンタクト層等は、第二導電型クラッド層26の一部と見ることもできる。
一般的に第二導電型クラッド層26は、前述の活性層構造25の平均的屈折率より小さな屈折率を有する材料で、かつ、前述の活性層構造25の平均的なバンドギャップよりも大きな材料で構成される事が望ましい。さらに、第二導電型クラッド層26は、活性層構造25内の特にバリア層との関係において、いわゆるタイプI型のバンドラインナップとなる材料で構成されるのが一般的である。このような指針の元で、第二導電型クラッド層26の材料としては、所望の発光波長を実現するために準備される基板21、バッファ層22、活性層構造25等に鑑みて、適宜選択することができる。例えば、基板21としてC+面サファイアを使用し、バッファ層22としてGaNを使用する場合には、第二導電型クラッド層26としてGaN系材料、AlGaN系材料、AlGaInN系材料、AlGaBInN系材料等を用いることができる。また、上記材料の積層構造であってもかまわない。また、第一導電型クラッド層24と第二導電型クラッド層26は同じ材料で構成することも可能である。
第二導電型クラッド層のキャリア濃度としては、下限としては1×1017cm-3以上が好ましく、4×1017cm-3以上がより好ましく、5×1017cm-3以上がさらに好ましく7×1017cm-3以上が最も好ましい。上限としては7×1018cm-3以下が好ましく、3×1018cm-3以下がより好ましく、2×1018cm-3以下が最も好ましい。また、ここでは、第二導電型がp型の場合ドーパントとしては、Mgが最も望ましい。
第二導電型クラッド層26の構造は、図1の一例では単一の層で形成された例を示しているが、第二導電型クラッド層26は、2層以上の層からなるものであってもよい。この場合には、たとえばGaN系材料とAlGaN系材料を使用することも可能である。また第二導電型クラッド層26の全体を異種材料の積層構造からなる超格子構造とすることもできる。さらに、第二導電型クラッド層26内において、前述のキャリア濃度を変化させることも可能である。
一般に、GaN系材料においてはn型ドーパントがSiであって、かつ、p型ドーパントがMgである場合には、p型GaN、p型AlGaN、p型AlInGaNの結晶性は、n型GaN、n型AlGaN、n型AlInGaNにはそれぞれ及ばない。このため、素子作製においては、結晶性の劣るp型クラッド層を活性層構造25の結晶成長後に実施することが望ましく、この観点で、第一導電型がn型で、第二導電型がp型である場合が望ましい。
また、結晶性の劣るp型クラッド層(これは、望ましい形態をとった場合の第二導電型クラッド層26に相当する)の厚みは、ある程度薄いほうが望ましい。但し、極端に薄い場合には、キャリアの注入効率が低下してしまうため、最適値が存在する。第二導電型側クラッド層26の厚みは、適宜選択可能であるが、0.05μmから0.3μmが望ましく、0.1μmから0.2μmが最も望ましい。
第二導電型クラッド層26の第二導電型側電極27と接触している部分においては、そのキャリア濃度を意図的に高くして、当該電極との接触抵抗を低減することも可能である。
第二導電型クラッド層26の露出した側壁は、後述する第二導電型側電極27との接触を実現した第二電流注入領域35を除いて、すべて絶縁膜で覆われている構造であることが望ましい。
前述のとおり第二導電型クラッド層26がp型層である場合が望ましいが、このような場合においては、結晶品質改善層30の効果は顕著に見られ、この観点でも望ましい。すなわち、結晶品質改善層30は、後述するとおり、それ自体が窒素を含有し、かつ、その形成工程において活性な窒素が薄膜結晶層表面にも供給されることで、さまざまな素子作製工程を経ることで窒素抜けが生じた薄膜結晶層に対しての窒素供給源となり、ミクロにみた化学量論的組成とのズレを抑制し、その結晶性を改善すると考えられる。または、ダメージを受けた薄膜結晶層を構成する元素のダングリングボンド(未結合手)を終端させることで(終端効果)結晶品質改善効果を発現すると考えることもできる。この効果によって、p型層が、薄膜結晶成長工程を含むさまざまな素子作製工程を経ることで、その表面の正孔濃度が低減してしまうことを抑制/回復する効果も期待される。
さらに、第二導電型クラッド層26に加えて、第二導電型半導体層として、必要によりさらに異なる層が存在してもよい。例えば、電極と接する部分にキャリアの注入を容易にするためのコンタクト層が含まれていてもよい。また、各層を、組成または形成条件等の異なる複数の層に分けて構成してもよい。
第二導電型半導体層の表面には、少なくともMgおよびHが含有されていてもよい。
尚、本発明の要旨に反しない限り、薄膜結晶層として、必要により上述のカテゴリに入らない層を形成してもよい。
<第二導電型側電極>
第二導電型側電極27は、第二導電型の窒化物化合物半導体と良好なオーム性接触を実現し、かつ、フリップチップマウントした際に、ハンダ材などによるサブマウント40などとの良好な接着を実現するものである。本目的のためには、適宜材料選択が可能であり、第二導電型側電極27は単一の層であっても、複数の層からなる場合でもかまわない。一般には、電極に要請される複数の目的を達するために、複数の層構成をとるのが普通である。
また、第二導電型がp型で第二導電型側クラッド層26の第二導電型側電極27側がGaNである場合には、第二導電型側電極27を構成する材料として、Ni、Pt、Pd、Mo、Auのいずれか、またはそれらの2種以上の元素を含む材料が好ましい。この電極は、多層構造であってもよく、少なくとも1層は上記元素を含む材料で形成され、好ましくは各層が上記元素を含み構成成分(種類および/または比率)が異なる材料で構成される。電極構成材料は、好ましくは単体金属または合金である。
特に好ましい形態では、第二導電型側電極27のp側クラッド層側の第一層目はNiであり、第二導電型側電極27のp側クラッド層側と反対側の表面はAuである。これは、Niの仕事関数の絶対値が大きく、p型材料にとって都合がよく、また、Auは、後述するプロセスダメージに対する耐性、マウントの都合などを考えると最表面の材料として好ましい。
第二導電型側電極27は、第二導電型のキャリアを注入可能であれば、薄膜結晶層のどの層と接してもよく、例えば第二導電型側コンタクト層が設けられるときは、それに接するように形成される。
<第一導電型側電極>
第一導電型側電極28は、第一導電型の窒化物化合物半導体と良好なオーム性接触を実現し、かつ、フリップチップマウントした際に、ハンダ材等によるサブマウント40などとの良好な接着を実現するものであって、本目的のためには、適宜材料選択が可能である。第一導電型側電極28は単一の層であっても、複数の層からなる場合でもかまわない。一般には、電極に要請される複数の目的を達するために、複数の層構成をとるのが普通である。
第一導電型がn型であるとすると、n側電極は、Ti、Al、Ag、Moのいずれか、またはそれらの2種以上の元素を含む材料が好ましい。この電極は、多層構造であってもよく、少なくとも1層は上記元素を含む材料で形成され、好ましくは各層が上記元素を含み構成成分(種類および/または比率)が異なる材料で構成される。電極構成材料は、好ましくは単体金属または合金である。これらは、これらの金属の仕事関数の絶対値が小さいためである。
本発明においては、第一導電型側電極28は第一電流注入領域36の大きさよりも大きな面積に形成され、かつ、第一導電型側電極28と第二導電型側電極27は、空間的に重なりを有さないことが望ましい。これは、発光素子10をハンダなどでフリップチップマウントした際に、サブマウント40などとの十分な密着性を確保するに十分な面積を確保しつつ、第二導電型側電極27と第一導電型側電極28との間のハンダ材等による意図しない短絡を防止するのに十分な間隔を確保するために重要である。
第一導電型側電極28は、第一導電型のキャリアを注入可能であれば、薄膜結晶層のどの層と接してもよく、例えば第一導電型側コンタクト層が設けられるときは、それに接するように形成される。
<絶縁膜>
絶縁膜は、前述したように、第一層目が結晶品質改善層30であり、第二層目以降が少なくとも1層の反射抑制層31である多層膜とする場合が好ましい。絶縁膜をこのような多層膜とする場合は、発光素子の生産性の向上および信頼性の確保の点などから、結晶品質改善層30の形成および反射抑制層31の形成は、同一の成膜装置内で連続して行なうことが好ましい。
結晶品質改善層30は、薄膜結晶層の表面に生じた結晶性の向上、さらにはダメージを回復させるための層である。結晶品質改善層30による結晶品質の改善効果は、例えば、薄膜結晶層のダメージの原因の一つであるミクロにみた化学量論的組成とのズレを抑制し、その結晶性を改善することにより発現すると考えられる。または、ダメージを受けた薄膜結晶層を構成する元素のダングリングボンド(未結合手)を終端させることで(終端効果)、結晶品質改善効果を発現すると考えることもできる。
この結晶品質改善層30による改善効果のメカニズムに限定はないが、以下の様に、結晶品質改善層の材質を適宜選択することで、本発明の目的をより良好に達成することができる。
薄膜結晶層では、その形成中あるいはそれ以降のプロセスなどにより、薄膜結晶層を構成する元素の中で蒸気圧の高い元素が脱離することがある。そこで、結晶品質改善層30は、その形成時において、薄膜結晶層を構成する元素の中で蒸気圧の高い元素をプラズマ化するなどの方法で活性化して、供給する事が好ましいと考えられる。通常、薄膜結晶層には、通常GaN系等の材料が用いられるため、薄膜結晶層を形成する蒸気圧の高い窒素の脱離を、結晶品質改善層30から供給することが好ましい。
例えば、MOCVDによる結晶成長でGaN系の薄膜結晶層を形成した場合、薄膜結晶層形成中あるいはそれ以降のプロセスにおいて、薄膜結晶層の表面から、また場合によっては、薄膜結晶層側面などから窒素抜けが生じる。そこで、結晶品質改善層30は、それ自体が窒素を含有し、かつ、その形成工程において比較的活性な窒素が薄膜結晶層表面に、またその他側面などの露出面に、供給されることで、さまざまな素子作製工程に起因する窒素抜けが生じた薄膜結晶層に対しての窒素供給源となり、ミクロにみた化学量論的組成とのズレを抑制し、その結晶性を改善すると考えられる。さらには、この結晶性の改善は、薄膜結晶層の結晶品質改善層30に接している部分、あるいは結晶品質改善層30の形成時に供給する比較的活性な窒素にさらされる薄膜結晶層部分の、キャリア活性化率が改善するなどの効果も期待される。また、発光素子作製途上で、素子構造の側壁、表面などに意図せず導入される各種のダメージに対して、結晶品質改善層30の効果は場所を問わずに期待される。特に、その効果は薄膜結晶層のPL(Photo Luminescence)発光強度の改善、キャリア濃度の改善等に顕著に現れると考えられる。
薄膜結晶層が窒化物である場合、結晶品質改善層30が上記のような役割を果たすためには、結晶品質改善層30は、窒素および水素を含有していることが好ましく、結晶品質改善層30の形成時に原料として比較的活性な窒素と水素を、共に供給して形成する事が好ましい。薄膜結晶層が酸窒化物の場合は、結晶品質改善層30は、窒素および酸素を含有していることが好ましく、結晶品質改善層30の形成時に原料として比較的活性な窒素と比較的活性な酸素を、共に供給して形成する事が好ましい。
このような観点から、結晶品質改善層30の材料は、通常窒化物、酸窒化物を含むことが好ましく、B、Al、Si、Ti、V、Cr、Mo、Hf、Ta、またはWのいずれか1種またはそれ以上の元素を含む窒化物、酸窒化物を含むことが更に好ましい。このような、窒化物、酸窒化物としては、AlNx、AlOxy、SiNx、SiOxy、TiNx、TiOxy、CrNx、CrOxyなどを挙げることができる。中でもSiNxやSiOxyは非常に好ましい。なお、上記組成式において、x、yは任意の正数を示す。
上記のように、例えば薄膜結晶層が窒化物や酸窒化物を含む場合は、結晶品質改善層30が窒素を含有することで、窒素抜けの生じた薄膜結晶層に対して窒素の供給源となり、薄膜結晶層の結晶性を向上させることができると考えられる。しかも、薄膜結晶層への窒素の供給源が層として形成されているので、例えば薄膜結晶層の表面にアンモニア処理を施すことなどによって窒素抜けを補うようにした場合と比較して、長期間にわたって安定して薄膜結晶層の結晶性を向上させる機能を維持することができると考えられる。よって、本発明における好ましい態様である、薄膜結晶層としてGaN系材料を用いる場合は、結晶品質改善層30として、窒化物や酸窒化物を含むことが好ましい。中でも、窒化物、酸窒化物としては、以下の観点から、適宜好ましいものを選択して用いることができる。
まず、窒素抜けの生じた薄膜結晶層に対する窒素の供給源という観点を主眼にする場合は、SiNxのような窒化物が好ましい。すなわちPL強度の改善、あるいは薄膜結晶層の結晶品質の大幅な改善を目的とする場合には、窒化物を結晶品質改善層30として選択することが好ましい。
一方、絶縁膜全体の低反射化を主目的とする場合においては、SiOxyのような酸窒化物を選択することが好ましい。これは、薄膜結晶層がGaN系材料である場合、結晶品質改善層30を含む絶縁膜全体を発光素子内から出射される光に対して低反射とすべく、OとNの比を調節して、屈折率調節ができるからである。この場合には、本発明者らの検討によれば、結晶品質改善効果は、SiNxのような窒化物には及ばないものの、屈折率調節範囲が広いことから実際の発光素子に対する絶縁膜の光学設計に際しては利便性が高く、好ましい。さらに、SiOxyのような酸窒化物を選択する場合においては、その屈折率調節の程度により、酸窒化物のみで絶縁膜を構成し、結晶品質改善層30と後述する反射抑制層31の両方の効果を発現させることもできる。
一方、異なる材料系であって、薄膜結晶層が酸化物または酸窒化物を含む場合は、例えば酸化物を含む結晶品質改善層30を形成することにより、酸素の供給源として薄膜結晶層の結晶性を向上させることができると考えられる。このような、酸化物、酸窒化物としては、AlOxy、SiOxy、TiOxy、CrOxyなどを挙げることができる。なお、上記組成式において、x、yは任意の正数を示す。
また、薄膜結晶層には、その形成中あるいはそれ以降のプロセスによって、ダングリングボンド(未結合手)の終端が薄膜結晶層の最表面に高密度に存在するとも考えられる。このような場合には、結晶品質改善層30としては、終端効果が顕著に発現する元素が含まれている事が好ましい。終端効果を発現する元素としては、Si、Ge、Se、S、Al、P、Asなどを挙げることができる。中でもSi、Ge、Se、Sが好ましく、Siは更に好ましい。
結晶品質改善層30が、前記元素を単体として含む場合には、終端効果を発現する元素そのものもある程度のダングリングボンドを有していて、加工された基板表面に存在する基板側のダングリングボンドと結合しやすい形態となっていることが好ましい。従って、元素単体である場合には、多結晶であっても、単結晶であってもその効果はある程度発現すると考えられるが、アモルファスであることが最も好ましい。
結晶品質改善層30を形成する際の原料は、窒素原料としては、少なくともアンモニアを含有するガス種を用いることが好ましく、酸素原料としては、少なくともNOを含有するガス種を用いることが好ましい。結晶品質改善層30は、プラズマCVD法、イオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法、イオンビームスパッタ法などの各種成膜方法を使用する事が可能である。結晶品質改善層30の形成方法は、結晶品質改善層30の形成時に、原料を比較的活性な原料として供給しうる方法が好ましい。
本明細書中における活性な原料とは、原料そのものが、ラジカル化、プラズマ化、イオン化、場合によっては原子状化しており、分子状の、化学的に安定な状況でないことを総称して使用している。
たとえば、プラズマCVD法では、アンモニア(NH3)を原料ガスとして用い、SiNxを形成する事が望ましい。ここでは、NH3はプラズマ化され、比較的活性な窒素と水素を供給しつつ結晶品質改善層が形成される。また、イオンアシスト蒸着法においてもSi原料を蒸着しつつ、イオン銃によってNH3等をプラズマ化してSiNxを作製する事が可能である。イオンビームスパッタ法においては、たとえばSiターゲットをArやN2でスパッタしつつイオン銃によってNH3等をプラズマ化してSiNxを作製する事が可能である。また、RFスパッタ法においても、たとえばSiNxターゲットをArやN2でスパッタしつつイオン銃によってN2とH2を独立にプラズマ化して供給しつつ、SiNxを作製する事も可能である。
これらの、比較的活性な窒素と水素を共に原料として供給しつつ結晶品質改善層30を形成する方法の中でも、プラズマCVD法は最も好ましい。これは他の成膜方法に比較してステップカバレッジも良好であって、かつ、膜中のストレス制御も容易なため、発光素子構造の所望の部分を被覆するのに好都合であるからである。
なお、窒素を含有し比較的水素が少ない膜は、N2ガスを導入し、SiターゲットをAr等でスパッタして、N2あるいはArプラズマ中でSiNx膜を形成する反応性スパッタ法などでも形成することができるが、薄膜結晶層の品質を改善する効果、すなわち、薄膜結晶層のPL強度を改善するなどの効果はほとんどない。一方、NH3等を原料として導入しプラズマCVD法などで作成した膜、H2とN2プラズマを独立に供給して形成した膜では、水素原子の濃度が高く、後述する発明者らの実験では、薄膜結晶層のPL強度を大きく改善する効果が確認されている。これは、結晶品質改善効果に直接影響すると考えられる活性な窒素が薄膜結晶層や結晶品質改善層30に取り込まれることにより、NH3由来の活性な水素も同時に取り込まれることに起因する。ここで活性な水素の直接的な効果は必ずしも明らかではないが、各種プロセスによって汚染された素子表面をクリーニングする効果、薄膜結晶層の表面/表面近傍に存在するダングリングボンドを終端する効果、膜の過度な内部応力を低減する効果などがあると思われる。しかしながら、過度に活性な原子状水素の供給は、たとえば第二導電型側半導体層がMgドープされたp型層である場合には、キャリアの不活性化を助長するために好ましくない。
本発明者らの実験によれば、比較的活性な窒素と水素のいずれかを原料として供給しない方法、例えば、N2ガスを導入し、SiターゲットをArガスでスパッタする、反応性スパッタ法などにおいては、さまざまな成膜方法、成膜条件において実験を繰り返し、成膜されたSiNx膜の水素原子の濃度を測定したところ、いずれの膜からも1020atoms/cm3オーダーの水素しか検出されなかった。これは、成膜環境中に残留している水分に由来する水素と考えられる。
一方、比較的活性な窒素と水素を共に原料として供給する、例えば、NH3等を原料として導入するプラズマCVD法によって成膜されたSiNx膜においても、また、N2とH2を独立にプラズマ化して供給し成膜したSiNx膜においても、さまざまな成膜条件において実験を繰り返し、SiNx膜の水素原子の濃度を測定した。この結果、成膜条件を変化させても、水素原子の濃度は常に、1×1021atoms/cm3以上であって、かつ、1×1022atoms/cm3以下であった。これは原料のひとつであるNH3、あるいはH2とN2がプラズマ化され、その中に比較的活性な窒素と水素を共に含んでおり、この比較的活性な水素が成膜中に原料として使用された証として、当該SiNx膜中に取り込まれたものと考えられる。
さらに、比較的活性な窒素と水素を共に原料として供給する、例えば、NH3等を原料として導入するプラズマCVD法によって成膜されたSiNx膜においても、また、N2とH2を独立にプラズマ化して供給し成膜したSiNx膜においても、さまざまな成膜条件において実験を繰り返し、SiNx成膜後の薄膜結晶層の結晶品質をPL強度によって評価した際に、その薄膜結晶層のPL強度が10%以上改善する場合のSiNx膜の水素原子の濃度を測定したところ、水素原子の濃度は常に、2×1021atoms/cm3以上であって、かつ、7×1021atoms/cm3以下であった。さらに、その薄膜結晶層のPL強度が30%以上改善する場合のSiNx膜の水素原子の濃度を測定したところ、水素原子の濃度は常に、3×1021atoms/cm3以上であって、かつ、5×1021atoms/cm3以下であった。
よって、結晶品質改善層30における水素原子の濃度は特に限定されないが、好ましくは1×1021atoms/cm3以上、1×1022atoms/cm3以下の範囲、より好ましくは2×1021atoms/cm3以上、7×1021atoms/cm3以下の範囲である。最も好ましくは3×1021atoms/cm3以上、5×1021atoms/cm3以下の範囲である。水素原子と同様、結晶品質改善層30における窒素原子の濃度も特に限定されないが、好ましくは30atomic%以上、60atomic%以下の範囲、より好ましくは40atomic%以上、50atomic%以下の範囲である。
なお、膜中の水素原子の濃度はSIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)、窒素原子の濃度は、XPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)で測定しており、その測定誤差は、SIMSの場合、±20%程度、XPSの場合、±30%程度と考えられる。いずれの方法でも、低エネルギーのイオンミリングを併用し、膜の深さ方向に対するプロファイルを測定し、これらの結果から濃度を得ている。
この膜中の水素原子の濃度等に違いによって、結晶品質改善層30として使用可能なSiNx膜の特徴はその屈折率にも現れる。先ず、比較的活性な窒素と水素を共に原料として供給し形成する、結晶品質改善層30として使用可能なSiNx膜を形成した。具体的には、NH3を原料として導入するプラズマCVD法などによって成膜する際に、さまざまな、製造方法、成膜条件において実験を繰り返し、SiNx膜の屈折率を測定した。この結果、製造条件、成膜条件を変化させても、屈折率は、405nmの波長において1.80以上2.00以下、633nmの波長において1.75以上1.95以下であった。これは原料のひとつであるNH3がプラズマ化され、その中に比較的活性な窒素と水素を共に含んでおり、この比較的活性な水素が成膜中に原料として使用された証として、当該SiNx膜中に水素が取り込まれ、活性な水素を含まない場合に比較して低屈折率な膜になっているものと考えられる。
また、結晶品質改善層30として使用可能なSiOx膜の特徴も、その屈折率に現れる。本発明者らは、N2OとNH3などを原料ガスとし、これらをプラズマ化することで比較的活性な窒素と比較的活性な酸素を共に原料として供給してSiOxy膜を形成する際に、さまざまな、製造方法、成膜条件において実験を行い、結晶品質改善層30として使用可能であったSiOx膜の屈折率を測定した。その結果、製造条件、成膜条件を変化させた場合の屈折率は、405nmの波長においても633nmの波長においても、1.45以上1.90以下であった。この屈折率はSiNxよりも低いものとなっているが、これは原料のひとつであるN2Oがプラズマ化され、酸素が成膜中に原料として使用された結果であると考えられる。
さらに、本発明者らの検討によれば、SiOx膜を結晶品質改善層30として使用する場合においては、そのNの濃度が低い場合であっても、単なるSiO等の酸化物を結晶品質改善層に相当するように形成した場合と異なり、結晶品質改善の効果が確認できる。これは、生成される結晶品質改善層中への窒素の取り込みが低い条件であっても、NHなどを原料ガスとして供給して活性化された窒素が存在する雰囲気においてSiOx膜を成膜すれば、結晶品質改善の効果が発現されるためと考えられる。
一方、前記のとおり、比較的活性な窒素と水素のいずれかを原料として供給しない方法、例えば、N2ガスを導入し、SiターゲットをArガスでスパッタする、反応性スパッタ法などにおいて形成したSiNx膜は結晶品質改善層としては機能しないが、このような膜を、さまざまな成膜方法、成膜条件において実験を繰り返し、成膜されたSiNx膜の屈折率を測定した。この結果、SiNx膜の屈折率は405nmの波長においては、2.00より大きく2.15以下、633nmの波長においては1.95より大きく2.10以下であった。
よって、結晶品質改善層30の屈折率は、特に以下の数字に限定はされないが、窒化物の場合、好ましくは405nmの波長における屈折率が1.80以上2.00以下であって、また633nmの波長においては、屈折率が1.75以上1.95以下である。また、酸窒化物の場合、好ましくは405nmの波長における屈折率が1.45以上1.90以下であって、633nmの波長においても、屈折率が1.45以上1.90以下である。
反射抑制層31は、薄膜結晶層側から絶縁膜側に入射した光の反射率を低減させるための層である。具体的には、薄膜結晶層で発生した光が絶縁膜に垂直入射したとき、絶縁膜全体での光の反射率(以下、単に絶縁膜の反射率ともいう)をRとすると、好ましくはR<3%であり、より好ましくはR<1%であり、最も好ましくはR<0.2%である。絶縁膜の反射率は、結晶品質改善層30および反射抑制層31の材料や膜厚を適宜設定することで調整でき、中でも反射抑制層31の膜厚に大きく依存する。よって、絶縁膜の反射率は、好ましくは反射抑制層31の膜厚を変化させることで調整することができる。
なお、結晶品質改善層30としてSiOxのような酸窒化物を用いる場合は、供給するN2OとNH3との流量比を調節するなどしてOとNの成分比を変化させ、絶縁膜の屈折率を調節することもできる。このようにして、SiOxの場合は、屈折率を変化させれば、その結果として絶縁膜の反射率を調節することができる。
絶縁膜の反射率は、一般的に反射抑制層31の膜厚に対して周期的に変化する傾向を有する。図9に、薄膜結晶層上に、プラズマCVD法によって、SiNxを30nmの膜厚で成膜した上にSiOxを成膜した際の、SiOxの膜厚と反射率の関係を表したグラフを示す。ここで、SiOxの膜厚が50nmと190nmでは、反射率はともに0.02%である。このような場合においては、絶縁膜全体の反射率が同一であれば、反射抑制層31の膜厚は薄いほうが好ましい。これは、反射抑制層31が薄いほうが、発光素子からの放熱性が良好で絶縁膜の総厚は、薄い方を選択する方が好ましい。
また、絶縁膜の総厚は、以下の制約を考慮して決定されることがこのましい。図1に示すように、絶縁膜は、第一導電型側電極28と第一導電型クラッド層24の間に位置し、第一電流注入領域36を決定する。この際に、絶縁膜の総厚が過度に厚いと、活性層構造25から、図1の紙面左横方向(第一導電型側電極28へ向かう方向)に出射される光が絶縁膜を構成する各層に水平に入射する形となるため、この部分では反射抑制機能が十分に発現しなくなるおそれがある。このために、図2に示すとおり、活性層構造に対して、絶縁膜のなかで最終的に形成される層(最上層)、換言すると第一導電型側電極28と直接接する層(最上層)は、活性層構造25の第一導電型側クラッド層24に接する部分よりも、バッファ層22側に近い位置とする事が好ましい。
ここで、図2に示すように、後述する第一エッチング工程により露出した第一導電型クラッド層24の部分から、第一導電型クラッド層24と活性層構造25が接する部分までの長さをTaとし、後述する第一エッチング工程により露出した第一導電型クラッド層24の一部に形成した絶縁膜の厚さをTbとしたとき、TaとTbの関係は、
Ta>Tb
となっていることが好ましい。
さらに、絶縁膜の最上層は、後述するように、ウェットエッチング後に形成される形状を制御するため、SiNxであることがこのましい。
なお、絶縁膜の反射率Rの下限は特に限定されず、理論上はゼロより大きければよく、現実的には0.001%よりも大きい。
このように絶縁膜の反射率を極めて低くするために、反射抑制層31は、AlOx、SiOx、TiOx、MgF2、SiNxおよびSiOxから選択される材料からなることが好ましい。
例えば、405nmの波長において、GaN上に絶縁膜として単層のSiNx膜を形成し、GaN側からSiNx膜に垂直に光を入射させた場合、SiNx膜での光の反射率は理論的に3%を下回ることはない。ところが、結晶品質改善層となるSiNx膜の上にさらにSiO膜を形成すると、その膜厚によっては、0.02%という極めて低い反射率を達成することができる。一方、GaN上に絶縁膜としてSiOx膜を形成し、GaN側からSiOx膜に垂直に光を入射させた場合、SiOxの屈折率を、発光素子の発光波長における、GaNの屈折率とGaN系発光素子の周辺にある媒質の屈折率の積の平方根の値に極めて近づける事で、低反射率を達成することができる。具体的には、GaNの屈折率が2.55で、その周辺媒質が空気であって、空気の屈折率が1であるとすると、絶縁膜としてSiOxを形成する場合は、その屈折率を√(2.55×1)≒1.597に近づける事で、極めて低い反射率を達成することができる。さらには、GaNの屈折率が2.55で、その周辺媒質がいわゆるシリコーン樹脂であって、樹脂の屈折率が1.40であるとすると、絶縁膜としてSiOxを形成する場合は、その屈折率を√(2.55×1.40)≒1.889に近づける事で、極めて低い反射率を達成することができる。
反射抑制層31によって絶縁膜の反射率を極めて低くすることで、反射抑制層31が形成された部分では、薄膜結晶層で発生した光の大部分は反射抑制層31を透過して発光素子10の外部へ取り出される。よって、従来のように絶縁膜に反射機能を持たせて基板側のみから光を取り出すことを意図した発光素子に比べて、全体としての光量を変えることなく、半導体発光素子上方(あるいは基板を除去した素子などにおいては反射電極と反対側)の空間的な放射束密度あるいはエネルギー密度を低下させることができる。その結果、発光素子10と蛍光体を有する発光源において、当該発光素子を蛍光体励起光源として用いた場合に、蛍光体の劣化が抑制され、発光源の信頼性が向上する。さらに、発光源が、青色蛍光体からの青色光、緑色蛍光体からの緑色光および赤色蛍光体からの赤色光を混色して白色光を得るものである場合は、各色蛍光体の劣化の程度の違いによる色度、色温度等の変化も抑制することができる。
このような蛍光体の劣化を抑制する効果は、発光素子10が、より空間的なエネルギー密度の高い紫外光、あるいは近紫外光を発する素子である場合に特に有効である。この意味では、発光素子10は、活性層構造25内から発せられる光の中心波長をλ(nm)としたとき、以下の式1を満たすことが望ましく、この場合に、反射抑制層31による効果がより効果的に発現する。
300nm≦λ≦430nm・・・(式1)
また、GaN系の薄膜結晶層においては、そのバンドギャップに相当する光よりも波長の短い光(中心波長λが363nmよりも短い光)を吸収する本来的な特性がある。一方、中心波長λが363nmよりも長い光は、その波長が長くなるほどGaN系薄膜結晶層は透明になるので、薄膜結晶層における劣化やダメージ等の外因的吸収が相対的に大きくなる傾向があり、中心波長λが390nm以上でその傾向が強く表れる。従って、薄膜結晶層で発生した光の光学損失を低減させ、効率的に反射抑制層31を透過して発光素子10の外部へ取り出すためには、光の中心波長λ(nm)が、以下の式2を満たすことが望ましく、以下の式3を満たすことがさらに望ましい。
363nm≦λ≦430nm・・・(式2)
390nm≦λ≦430nm・・・(式3)
なお、図1に示した例では反射抑制層31が2層構造である例を示したが、反射抑制層31は1層であってもよいし、3層以上であってもよい。
<サブマウント>
サブマウント40は、金属層を有し、フリップチップマウントをした発光素子10への電流注入と放熱の機能を併せ持つものである。サブマウント40の母材は、金属、AlN、SiC、ダイヤモンド、BN、CuWのいずれかであることが望ましい。これら材料は、放熱性に優れ、高出力の発光素子10に不可避である発熱の問題を効率よく抑制できて望ましい。またAl23、Si、ガラス等も安価であってサブマウント40の母材として利用範囲が広く好ましい。なお、サブマウントの母材を金属から選択する際には、その周りを耐エッチング性のある誘電体等で覆うことが望ましい。
発光素子10は各種ハンダ材、ペースト材によってサブマウント40上の金属層に接合される。発光素子10の高出力動作と高効率な発光のために放熱性を十分に確保するためには、特に金属ハンダによって接合されることが望ましい。金属ハンダとしては、In、InAg、PbSn、SnAg、AuSn、AuGeおよびAuSi等を挙げることができる。これらハンダは安定であって、使用温度環境等に照らして適宜選択可能である。
なお、サブマウントの表面は発光素子の発光波長領域の光に対して高反射特性となっていることが好ましい。
以上、本発明の好ましい実施形態として、フリップチップ型構造を有する半導体発光素子を説明したが、本発明のその他の実施形態として、いわゆる上下導通型構造を有する半導体発光素子を挙げることができる。
図21および22に示すように、上下導通型構造を有する半導体発光素子(発光素子10)は、基板21と、基板21の一方の面に積層された化合物半導体薄膜結晶層とを有する。化合物半導体薄膜結晶層は、バッファ層22、第一導電型クラッド層24を含む第一導電型半導体層、活性層構造25、第二導電型クラッド層26を含む第二導電型半導体層、およびコンタクト層23が基板21側からこの順番に積層されて構成されている。
コンタクト層23の表面の一部に、電流注入用の第二導電型側電極27が配置されており、コンタクト層23と第二導電型側電極27の接触している部分が、第二導電型半導体層に電流を注入する第二電流注入領域35となっている。また、基板21の前記薄膜結晶層と反対側の面、即ち裏面に第一導電型側電極28が配置されている。
第二導電型側電極27および第一導電型側電極28が上記のように配置されることによって、両者は基板21を挟んで、反対側に配置され、発光素子10は、いわゆる上下導通型の発光素子10として構成されている。上下導通型の発光素子10は、上下から第一導電型側電極および第二導電型側電極をそれぞれ取り出すことができ、第一導電型側電極を設けるために積層した半導体層の一部をエッチングなどにより除去する必要がなく、製造工程を簡便化することができる。
さらに、本形態においても、図21のように、第二導電型側電極27の表面の一部および第一導電型側電極28の表面の一部を除いて、上述した構造全体を覆う絶縁膜が形成され、第二導電型半導体層の側壁は絶縁膜で覆われている。発光素子10への電流注入は、絶縁膜が形成されていないことによって第二導電型側電極27が露出した部分および第一導電型側電極28が露出した部分から行うことができる。
また、図22のように、第一導電型側電極28には絶縁膜が形成されない構造であってもよい。この場合、発光素子10への電流注入は、絶縁膜が形成されていないことによって第二導電型側電極27が露出した部分および第一導電型側電極28から行うことができる。
絶縁膜は、図21および図22に示したとおり、前述したフリップチップ型の発光素子と同様、少なくとも結晶品質改善層30を有していればよく、結晶品質改善層30を覆う少なくとも1層の反射抑制層31をさらに有していることが好ましい。本形態では、絶縁膜は、結晶品質改善層30と2層の反射抑制層31を有する多層膜で形成されている。
発光素子10を構成する各層は、前述のフリップチップ型の発光素子と同様に構成することができる。ただし、本形態では、基板21の裏面に第一導電型側電極28を設けるため、基板21およびバッファ層22が、通常第一導電型である必要があり、例えば、第一導電型をn型とした場合は、基板21およびバッファ層22がn型ドーパントによりドープされていることが好ましい。発光素子10の作製においては、結晶性の劣るp型クラッド層を活性層構造25の結晶成長後に実施することが望ましく、この観点で、第一導電型がn型で、第二導電型がp型である場合が望ましい。
〔製造方法〕
次に、本発明の半導体発光素子の製造方法について、フリップチップ型の発光素子を例に挙げて説明する。
本発明の製造方法の1例では、図3に示すように、まず基板21を用意し、その表面にバッファ層22、第一導電型クラッド層24、活性層構造25および第二導電型クラッド層26を薄膜結晶成長により順次成膜する。これらの薄膜結晶層の形成には、MOCVD法が望ましく用いられる。しかし、MBE法、PLD法、PED法、PSD法、VPE法、LPE法なども全部の薄膜結晶層、あるいは一部の薄膜結晶層を形成するために用いることが可能である。これらの層構成は、素子の目的等に合わせて適宜変更が可能である。また、薄膜結晶層の形成後には、各種の処理を実施してもかまわない。なお、本明細書では、薄膜結晶層の成長後の熱処理等も含めて、「薄膜結晶成長」と記載している。
薄膜結晶層成長の後、図3に示すように、第二導電型側電極27を形成することが好ましい。即ち、予定されている第二電流注入領域35に対する第二導電型側電極27の形成が、絶縁膜の形成よりも、また、第一電流注入領域36の形成よりも、さらには、第一導電型側電極28の形成よりも、早く実施されることが望ましい。これは、望ましい形態として第二導電型がp型である場合において、表面に露出しているp型クラッド層の表面に対して各種プロセスを経た後にp側電極を形成すると、GaN系材料では比較的活性化率の劣るp型クラッド層中の正孔濃度をプロセスダメージによって低下させてしまうからである。このため、本発明では薄膜結晶成長の後には第二導電型側電極27の形成が他のプロセス工程(たとえば後述する第一エッチング工程、第二エッチング工程、第二導電型側電極露出部分形成工程、第一電流注入領域形成工程や第一導電型側電極形成工程など)よりも先に実施されることが望ましい。
一方、本発明においては、結晶品質改善層30、場合によっては絶縁膜全体の形成は適宜実施し、プロセス毎に薄膜結晶層内に発生するダメージを除去する事も可能である。また、たとえば結晶品質改善層30がSiNxやSiOxyであった場合には、一度、発光素子作成途上で形成したSiNxやSiOxyをウェットエッチング等の比較的プロセスダメージの少ない方法によって除去し、薄膜結晶層のダメージを回復して、つぎのプロセスを実施する事も望ましい。
例えば、後述する第一エッチング工程のエッチングマスクを原料として、比較的活性な窒素と水素を共に供給して形成する事によって、結晶品質改善層としての効果も発現させることも可能であって好ましい。このような場合であっても、その構成材料は、SiNxやSiOxyを形成する事が好ましい。また、この際の、エッチングマスクを兼ねた結晶品質改善層の水素原子の濃度は、SiNxの場合においては1×1021atoms/cm3以上1×1022atoms/cm3以下とし、窒素原子の濃度が30atomic%以上60atomic%以下の範囲とする事が好ましい。さらにこの場合の屈折率は、SiNxの場合においては、好ましくは405nmの波長における屈折率として1.80以上2.00以下であって、また633nmの波長においては、屈折率が1.75以上1.95以下である。また、SiOxの場合、好ましくは405nmの波長における屈折率が1.45以上1.90以下であって、633nmの波長においても、屈折率が1.45以上1.90以下である。ただし、このようなエッチングマスクを兼ねた結晶品質改善層で、完成後の素子において全て除去される場合には、長期間にわたって安定して薄膜結晶層の結晶性を維持する事はできない。そこで、さらに絶縁膜の第一層として結晶品質改善層30を別途形成する事が最も好ましい。
なお、結晶品質改善層30の効果を発現させつつ、反射抑制層31も簡便に形成しようとする場合には、絶縁膜の形成は、第二導電型側電極27の形成、第一エッチング工程、第二エッチング工程のすべてが完了した後に行うことが好ましい。
本発明では、第二導電型側電極27が形成される層が、第二導電型コンタクト層である場合にも同様に、第二導電型半導体層に対してのプロセスダメージを低減することができる。
第二導電型側電極27の形成には、スパッタ、真空蒸着、メッキ等種々の成膜技術を適応可能であり、所望の形状とするためには、フォトリソグラフィー技術を用いたリフトオフ法や、メタルマスク等を用いた場所選択的な蒸着等を適宜使用可能である。
第二導電型側電極27を形成した後、図4に示すように、第一導電型クラッド層24の一部を露出させる。この工程は、第二導電型クラッド層26、活性層構造25、さらには第一導電型クラッド層24の一部をエッチングにより除去することが好ましい(第一エッチング工程)。第一エッチング工程においては、後述する第一導電型側電極が第一導電型のキャリアを注入する半導体層を露出することが目的であるので、薄膜結晶層に他の層、たとえば、クラッド層が2層からなる場合や、あるいはコンタクト層がある場合には、その層を含んでエッチングしてもかまわない。
第一エッチング工程では、エッチング精度があまり要求されないので、SiNxのような窒化物やSiOx等の酸化物、SiOxy等の酸窒化物をエッチングマスクとして、Cl2等を用いたプラズマエッチング法による公知のドライエッチングを使用することができる。ここで、第一エッチング工程で用いるエッチングマスクを、原料として比較的活性な窒素と水素を、共に供給して形成する事によって、エッチングマスクに結晶品質改善層としての効果も発現させることも可能であって好ましい。このような場合であっても、エッチングマスクの構成材料は、SiNxやSiOxyを形成する事が好ましい。また、この際の水素原子の濃度は、SiNxの場合においては、好ましくは1×1021atoms/cm3以上、1×1022atoms/cm3以下の範囲、より好ましくは2×1021atoms/cm3以上、7×1021atoms/cm3以下の範囲、最も好ましくは3×1021atoms/cm3以上、5×1021atoms/cm3以下の範囲である。窒素原子の濃度は、好ましくは30atomic%以上、60atomic%以下の範囲、より好ましくは40atomic%以上、50atomic%以下の範囲である。さらにこの場合の屈折率は、SiNxの場合においては、405nmの波長における屈折率として1.80以上2.00以下であることが好ましく、また633nmの波長においては、屈折率が1.75以上1.95以下であることが好ましい。また、SiOxの場合、好ましくは405nmの波長における屈折率が1.45以上1.90以下であって、633nmの波長においても、屈折率が1.45以上1.90以下であることが好ましい。但し、このようなエッチングマスクを兼ねた結晶品質改善層で、完成後の素子において全て除去される場合には、長期間にわたって安定して薄膜結晶層の結晶性を維持する事はできない。そこで、さらに絶縁膜の第一層として結晶品質改善層を別途形成する事が最も好ましい。
一方、第二エッチング工程では、金属フッ化物マスクを用いたドライエッチングを実施することも望ましい。特に、SrF2、AlF3、MgF2、BaF2、CaF2およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる金属フッ化物層を含むエッチングマスクを用いて、Cl2、SiCl4、BCl3、SiCl4等のガスを用いたプラズマ励起ドライエッチングによりエッチングを行うことが好ましい。さらに、ドライエッチングの方法としては、高密度プラズマを生成可能なICP型のドライエッチングが最適である。
次に図5に示すように、装置間分離溝13を、第二エッチング工程により形成する。本発明では、装置間分離溝13をバッファ層22の厚さ方向の途中まで形成する。ただし、装置間分離溝13を基板21に達するまで形成することもできる。この場合には、素子同士を分離するために、スクライブ、ブレーキング等の工程において、薄膜結晶層が形成されている側からダイヤモンドスクライブを実施した際にも、サファイア基板上のGaN系材料の剥離を抑制することが可能である。またレーザスクライブを実施した場合にも、薄膜結晶層にダメージが入らない利点がある。さらに、サファイア基板の一部までエッチングして装置間分離溝を形成することも同様に好ましい。
第二エッチング工程は、第一エッチング工程と比較して、さらに深くGaN系材料をエッチングすることが必要となる。一般に、第一エッチング工程によってエッチングされる層の総和は、0.5μm程度が普通であるが、第二エッチング工程においては、第一導電型クラッド層24のすべてと、バッファ層22をエッチングすることが必要なことから、3〜10μmとなることがある。
一般に、金属マスク、SiNx等の窒化物マスク、SiOx等の酸化物マスク等は、Cl2系プラズマに対するエッチング耐性を示すGaN系材料に対する選択比は5程度であって、膜厚の厚いGaN系材料をエッチングする必要のある第二エッチング工程を実施するには、比較的厚めのSiNx膜が必要となってしまう。たとえば第二エッチング工程で10μmのGaN系材料をエッチングする最には、2μmを越えるSiNxマスクが必要となってしまう。しかし、この程度の厚みのSiNxマスクになると、ドライエッチング実施中にSiNxマスクもエッチングされてしまい、その縦方向の厚みのみではなく水平方向の形状も変ってしまい、所望のGaN系材料部分のみを選択的にエッチングすることができなくなってしまう。
そこで、第二エッチング工程において装置間分離溝13を形成する際には、金属フッ化物層を含むマスクを用いたドライエッチングが好ましい。金属フッ化物層を構成する材料は、ドライエッチング耐性とウェットエッチング性のバランスを考慮すると、MgF2、CaF2、SrF2、BaF2、AlF3が好ましく、この中でもSrF2が最も好ましい。
金属フッ化物膜は、第一、第二エッチング工程で行うドライエッチングに対しては十分な耐性があり、一方でパターニングのためのエッチング(好ましくはウェットエッチング)に対しては、容易にエッチング可能でかつパターニング形状、特に側壁部分の直線性の良いものが求められる。金属フッ化物層の成膜温度を150℃以上にすることで、下地との密着性に優れ、緻密な膜が形成され、同時にエッチングによってパターニングした後に、マスク側壁の直線性にも優れている。成膜温度は、好ましくは250℃以上、さらに好ましくは300℃以上、最も好ましくは350℃以上である。特に350℃以上で成膜された金属フッ化物層は、あらゆる下地との密着性に優れ、かつ、緻密な膜となり、高いドライエッチング耐性を示しつつ、パターニング形状についても、側壁部分の直線性に非常に優れ、開口部の幅の制御性も確保されるようになり、エッチングマスクとして最も好ましい。
このようなことに配慮してパターニングされたマスク(金属フッ化物層が表面層になるようにSiNx、SiO、SiOxなどと積層されていてよい)を用いて、ドライエッチングを行う。ドライエッチングのガス種としては、Cl2、BCl3、SiCl4、CCl4およびこれらの組み合わせから選ばれるものが望ましい。ドライエッチングの際に、SrF2マスクのGaN系材料に対する選択比は100を越えるため、厚膜GaN系材料のエッチングが容易に、かつ、高精度に行うことができる。さらに、ドライエッチングの方法としては、高密度プラズマを生成可能なICP型のドライエッチングが最適である。
このような第二エッチング工程により、図5に示すように、装置間分離溝13が形成される。
なお、第一エッチング工程と第二エッチング工程は、どちらの工程を先に実施しても、後に実施してもかまわない。
第二エッチング工程の後には、図6に示すように、絶縁膜を、結晶品質改善層30および反射抑制層31の順に形成する。結晶品質改善層30および反射抑制層31の材料は適宜選択することができ、詳細は前述のとおりである。成膜方法は、先ず結晶品質改善層を形成するためには、プラズマCVD法、イオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法、イオンビームスパッタ法などの各種成膜方法を使用する事が可能であって、結晶品質改善層形成時に比較的活性な窒素と水素を共に原料として供給しうる方法が好ましい。特に結晶品質改善層30は、プラズマCVD法でNH3を原料ガスとして供給しつつ形成する事が好ましい。この際に成膜方法、成膜条件によりステップカバレッジが変わり、絶縁膜の膜厚は、例えば、薄膜結晶層の各層の積層方向における膜厚と、薄膜結晶層の側壁上での膜厚が異なる場合がある。そこで本発明では、絶縁膜の膜厚(絶縁膜を構成する結晶品質改善層30の膜厚、反射抑制層31の膜厚をいう場合も含む)をいう場合、薄膜結晶層の各層の積層方向における膜厚をいう。
絶縁膜全体の厚みは、前述のとおり、Ta>Tbの関係を満たすように形成することが好ましい(図2参照)。なお、この関係を満たすような絶縁膜全体の厚みは、前述した、結晶品質改善層30による効果および反射抑制層31による効果を発現し得るような各層の膜厚だけでなく、第一エッチング工程における第一導電型クラッド層24のエッチング深さをも考慮して決定することが望ましい。
また、反射抑制層31は、結晶品質改善層30を形成した装置と同一の装置で、連続して形成する事が好ましい。しかし、反射抑制層31は、比較的活性な窒素と水素を共に原として供給する事は必須ではないため、異なる条件での形成が可能である。
次に、図7に示すように、結晶品質改善層30および反射抑制層31の多層膜である絶縁膜の所定部分を除去し、第二導電型側電極27上の一部で絶縁膜が除去された第二導電型側電極27の露出部分、第一導電型クラッド層上で絶縁膜が除去された第一電流注入領域36、装置間分離溝13内で絶縁膜が除去されたスクライブ領域を形成する。第二導電型側電極27上の絶縁膜の除去は、第二導電型側電極27の周辺部分が絶縁膜によって覆われているように実施する。すなわち第二導電型側電極露出部分の表面積は第二電流注入領域の面積よりも小さい。
絶縁膜の所定部分の除去は、選択された材質によってドライエッチング、ウェットエッチング等のエッチング手法が選択可能である。
ここで、絶縁膜の所定部分の除去においてウェットエッチング法を用いる場合には、反射抑制層31の最上層に、ウェットエッチング時の形状制御を容易にする材質を用いることは好ましい。たとえば、反射抑制層31がSiOxのみの1層で構成される場合には、フッ酸とフッ化アンモニウムの混合液などのウェットエッチャントに対して比較的サイドエッチングが起こりやすい。このため、第二導電型側電極27の露出部分を高い面積精度で露出したり、あるいは、第一電流注入領域36を寸法精度よく形成したりする際に、プロセス実施時の時間的なマージン等が少なく困難を伴う。このような場合に、反射抑制層31を、結晶品質改善層30側から、SiOxとSiNxの2層で形成し、最上層、すなわち最後に形成される層をSiNxとする事で、過度なサイドエッチングを抑制する事が可能であって好ましい。このような場合であっても、最上層のSiNxは反射抑制層31全体の反射率設定にほとんど影響を与えないほどに薄いことが好ましい。
反射抑制層31の材料としては、AlOx、SiOx、TiOx、MgF2、SiNxおよびSiOxから選択される材料がこのましい。また、反射抑制層31が2層以上の層で形成される場合には、その最上層は、反射抑制層31全体の反射率設定にほとんど影響を与えないほどに薄く、最上層を除く層のウェットエッチング時のサイドエッチングを抑制する役割を持たせることは好ましい。このように反射抑制層31が2層以上の層で形成される場合には、最上層はSrF2などの金属フッ化物、SiNxなどの窒化物などによって形成が可能であり、特にSiNxであることが好ましい。例えば、絶縁膜を、30nmの厚さのSiNxからなる単層の結晶品質改善層30、および38nmの厚さのSiOxの上に5nmの厚さのSiNxを形成した2層の反射抑制層31で構成すると、405nmの波長において、理論的に0.02%と極めて低い反射率が実現できる。
第二導電型側電極27の露出部分、第一電流注入領域36、およびスクライブ領域の形成は、別々に行ってもよいが、通常は同時にエッチングで形成する。
次に、図8に示すように、第一導電型側電極28を形成する。本形態においては、第一導電型側電極28は第一電流注入領域の大きさよりも大きな面積に形成され、かつ、第一導電型側電極28と第二導電型側電極27は、空間的に重なりを有していない。これは、当該発光素子をハンダなどでフリップチップマウントした際に、サブマウントなどとの十分な密着性を確保するに十分な面積を確保しつつ、第二導電型側電極27と第一導電型側電極28との間のハンダ材等による意図しない短絡を防止するのに十分な間隔を確保するために重要である。
電極材料としては、すでに説明したとおり、第一導電型がn型であるとすると、Ti、Al、AgおよびMoのいずれかから選択される材料、またはすべてを構成元素として含むことが望ましい。電極材料の成膜には、スパッタ、真空蒸着、メッキ等種々の成膜技術を適応可能であり、電極形状とするためには、フォトリソグラフィー技術を用いたリフトオフ法や、メタルマスク等を用いた場所選択的な蒸着等を適宜使用可能である。
第一導電型側電極28は、この例では、第一導電型クラッド層24にその一部が接して形成されるが、第一導電型側コンタクト層が形成されるときはそれに接するように形成することができる。
本形態の製造方法では、第一導電型側電極28が、積層構造形成の最終段階にて製造されることにより、プロセスダメージ低減の観点でも有利である。第一導電型がn型である場合には、n側電極は、好ましい形態では、Alがその電極材の表面に形成される。この場合に、もしn側電極が第二導電型側電極のように絶縁膜の形成よりも前になされると、n側電極表面、すなわちAl金属は、絶縁膜のエッチングプロセスを履歴することになる。絶縁膜のエッチングには、前述のとおりフッ酸系のエッチャントを用いたウェットエッチング等が簡便であるが、Alはフッ酸を含めた各種エッチャントに対する耐性が低く、このようなプロセスを実効的に実施すると電極そのものにダメージが入ってしまう。また、ドライエッチングを実施してもAlは比較的反応性が高く酸化を含めたダメージが導入される可能性がある。従って、本発明においては、第一導電型側電極28の形成が絶縁膜の形成後かつ絶縁膜の予定されている不要部分の除去後に行われることは、電極に対するダメージの低減に効果がある。
このようにして、図8の構造が形成された後には、各発光素子を1つ1つ分離するために、装置間分離溝13が形成された位置で、基板21に対してダイヤモンドスクライブによる傷入れ、レーザスクライブによる基板材料の一部のアブレーションが実施される。
素子間分離工程の際に、装置間分離溝13が形成された位置では大部分の薄膜結晶層がないので、薄膜結晶層へのプロセスダメージの導入がほとんどない。また、スクライブ領域に絶縁膜も存在しないので、スクライブ時に、絶縁膜の剥離等が生じる可能性もない。
傷入れ(スクライブ)が終了した後には、発光素子はブレーキング工程において個々の装置に分割され、好ましくはハンダ材料等によってサブマウントに搭載される。
以上のようにして、図1に示した発光素子が完成する。
この製造方法では、説明のとおり薄膜結晶層の形成、第二導電型側電極27の形成、エッチング工程(第一エッチング工程および第二エッチング工程)、結晶品質改善層30の形成、反射抑制層31の形成、結晶品質改善層30および反射抑制層31の除去(第二導電型側電極露出部分の形成、第一電流注入領域36の形成、スクライブ領域の形成)、第一導電型側電極28の形成は、この順に実施されることが望ましい。この工程順により、第二導電型側電極27直下の薄膜結晶層のダメージがなく、各プロセス中に意図せず導入された結晶成長層のダメージも結晶品質改善層によって回復されるため、品質として良好な発光素子10を得ることができる。
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。また、以下の実施例において参照している図面は、構造を把握しやすくするために敢えて寸法を変えている部分があるが、実際の寸法は以下の文中に記載されるとおりである。
(実施例1)
図10に示した発光素子を以下の手順で作製した。関連する工程図として、図3〜8を参照する。
厚みが430μmのc+面サファイア基板21を用意し、この上に、まずMOCVD法を用いて、第1のバッファ層22aとして10nmの厚さの低温成長したアンドープのGaNを形成し、この後に第2のバッファ層22bとして厚み4.0μmのアンドープGaNを1040℃で形成した。
さらに、第一導電型(n型)クラッド層24としてSiドープ(Si濃度5×1018cm−3)のGaN層を4.5μmの厚さに形成した。さらに活性層構造25として、バリア層として860℃で13nmの厚さに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として720℃で2nmの厚さに成膜したアンドープIn0.06Ga0.94N層とを、量子井戸層が全部で8層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。さらに成長温度を1000℃にして、第二導電型(p型)クラッド層26としてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.2Ga0.8Nを0.02μmの厚さで形成した後、Mgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaNを0.1μmの厚さに形成した。
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウェハーを取り出し、薄膜結晶成長を終了した。
その後、薄膜結晶成長が終了したウェハーに対してp側電極27を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてp側電極27をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでp側電極27としてNi20nm/Au500nmを真空蒸着法によって形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、熱処理を実施してp側電極27を完成させた。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図3に対応する。
次いで、第一エッチング工程を実施するために、エッチング用マスクの形成を実施した。ここでは、プラズマCVD法を用いて0.4μmの厚さのSiNをウェハー全面に成膜した。SiNの成膜条件は、基板加熱温度250℃、SiH4流量9sccm、NH3流量13sccm、N2流量225sccmにおいて、圧力200Pa、RFパワー250Wとした。次に再度フォトリソグラフィー工程を実施してSiNマスクをパターニングし、SiNエッチングマスクを作製した。この際には、SiN膜の不要部分のエッチングはRIE法により、SFプラズマを用いて実施し、後述する第一エッチング工程において薄膜結晶層のエッチングを行わない部分はマスクを残し、かつ予定されている薄膜結晶層のエッチング部分に相当する部分のSiN膜を除去した。RIE法によるエッチグ条件は、SF6流量90sccm、圧力20Pa、RFパワー235Wとした。
次いで第一エッチング工程として、第二導電型(p型)クラッド層26、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25を経て第一導電型(n型)クラッド層24の途中まで、Clガスを用いたICPエッチングを実施した。
次いで、装置間分離溝13を形成する第二エッチング工程を実施するために、真空蒸着法を用いて、SrFマスクをウェハー全面に形成した。続いて、装置間分離溝13を形成する領域のSrF膜を除去し、薄膜結晶層の装置間分離溝形成用マスク、すなわち、第二エッチング工程用SrFマスクを形成した。
次いで第二エッチング工程として、装置間分離溝13に相当する部分の、第二導電型(p型)クラッド層26、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、第一導電型(n型)クラッド層24のすべて、およびアンドープGaNバッファ層22の途中までの薄膜結晶層を、Clガスを用いてICPエッチングした。この第二エッチング工程中には、SrFマスクはほとんどエッチングされなかった。装置間分離溝13の幅は、マスクの幅どおり形成できた。
第二エッチング工程によって装置間分離溝13を形成後は、不要となったSrFマスクを除去した。続いて、SiNマスクをバッファフッ酸を用いてすべて除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、まったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図5に対応する。
次いで、プラズマCVD法によって、SiNxからなる結晶品質改善層30を30nmの膜厚で形成した。このときの基板加熱温度400℃とした。SiNxの成膜条件は、SiH4流量5sccm、NH3流量13sccm、N2流量225sccmにおいて、圧力45Pa、RFパワー300Wとした。
さらに、薄膜結晶層側から絶縁膜に垂直入射した光の反射率を0.02%とすべく、結晶品質改善層30の形成後、プラズマCVD法によって、反射抑制層31をSiOを38nm、続いてSiNxを5nmの膜厚でウェハー全面に形成した。ここまでの工程で得られた構造は、概ね図6に対応する。
SiOの成膜条件は、基板加熱温度400℃、SiH4流量9sccm、N2O流量180sccm、において、圧力200Pa、RFパワー300Wとした。絶縁膜の最上層である、SiNの成膜条件は、基板加熱温度400℃、SiH4流量5sccm、NH3流量13sccm、N2流量225sccmにおいて、圧力45Pa、RFパワー300Wとした。
ここで、本実施例と同様に薄膜結晶成長が終了したウェハーを用意し、プラズマCVD法によって、結晶品質改善層(絶縁膜の最上層)の形成と同一条件にてSiNx膜を80nmの厚さで形成した屈折率確認予備実験を行い、分光エリプソメータにより屈折率を測定したところ、405nmの波長においては、1.92であった。同様に、プラズマCVD法によって、反射抑制層の第一層の形成と同一条件にてSiOx膜を100nmの厚さで形成した屈折率確認予備実験を行い、分光エリプソメータにより屈折率を測定したところ、405nmの波長においては、1.45であった。
図11に、GaN上に、SiNxからなる結晶品質改善層を膜厚30nmで成膜し、さらにその上にSiOxおよびSiNxからなる反射抑制層を成膜することによって絶縁膜を形成する際の、絶縁膜の最上層であるSiNxを5nmの膜厚とした場合の、405nmの波長における、絶縁膜の反射率とSiOの膜厚との関係のグラフを示す。この計算に使用したSiNxおよびSiOxの405nmの波長における屈折率は、上記の屈折率確認予備実験より、それぞれ1.92および1.45とした。このグラフから明らかなように、絶縁膜の反射率は、反射抑制層のSiOxの膜厚が38nmのときに最も小さく、その値は0.02%である。
次いで、Ni−Auからなるp側電極27上のp側電極露出部分と、第一導電型(n型)クラッド層24上のn側電流注入領域と、装置間分離溝内のスクライブ領域とを同時に形成すべく、結晶品質改善層30および反射抑制層31の一部分の除去のために、フォトリソグラフィー技術を用いてレジストマスクを形成した。次いでフッ酸系のエッチャントで、レジストマスクで覆われていない部分の結晶品質改善層30および反射抑制層31を除去した。ここで、ウェットエッチング後のサイドエッチング量は、絶縁膜の最上層のSiNxが無い場合に比べて、3分の1に低減された。
この後に、不要となったレジストマスクは、アセトンで除去した。ここまでの工程で絶縁膜が形成され、ここまでの工程で得られた構造は、概ね図7に対応する。
次いで、n側電極28を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてn側電極をリフトオフ法でパターニングする準備のために、レジストパターンを形成した。ここでn側電極28としてTi(20nm)/Al(300nm)を真空蒸着法でウェハー全面に形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してn側電極28を完成させた。n側電極28は、その面積がn側電流注入領域よりも大きくなるように、かつ、p側電極27との重なりを有さないように形成し、金属ハンダによるフリップチップボンディングが容易で、かつ放熱性等にも配慮した。Al電極は、プラズマプロセス等により変質しやすく、かつ、フッ酸等によってもエッチングされるが、素子作製プロセスの最後にn側電極28の形成を行ったことから、まったくダメージを受けなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図8に対応する。
次いで、ウェハー上に形成された1つ1つの発光素子を分割するために、レーザスクライバーを用いて薄膜結晶成長側から装置間分離溝13内にスクライブラインを形成した。さらにこのスクライブラインに沿ってサファイア基板21をブレーキングし、1つ1つの発光素子を完成させた。この際に、薄膜結晶層へのダメージ導入はなかった。
次いで、この素子を金属ハンダ42を用いてサブマウント40の金属層41と接合し、図10に示す発光素子を完成させた。この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。さらに、金属製のパッケージに搭載し、発光素子を完成させた。
完成した発光素子は、初期特性として、350mA電流注入時に全放射束が185mWであって、発光波長(中心波長)のピークは401nmであった。
さらにこの発光素子を、青色蛍光体、緑色蛍光体および赤色蛍光体を含有する蛍光体ペーストで封止し、白色光を発する発光源を作製した。
蛍光体ペーストは、封止液に蛍光体を含有させたものである。封止液の作製では、まず、両端末シラノールジメチルシリコーンオイル(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社(旧社名はGE東芝シリコーン)製、XC96−723)385g、メチルトリメトキシラン10.28g、および触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末0.791gを、室温にて15分間攪拌し、その後、100℃全還流下で30分間攪拌しつつ初期加水分解を行った。続いて、窒素を液中に吹き込みながら、100℃にて1時間攪拌し、さらに130℃に昇温して5.5時間重合反応を継続し、粘度389mPa・sの反応液を得た。得られた反応液を室温まで冷却した後、減圧加熱条件(120℃、1kPa)下で20分間保持することにより、粘度584mPa・sの封止液を得た。
得られた封止液1g、疎水性ヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、RX200)0.12g、赤色蛍光体((Sr,Ca)AlSiN:Eu)0.0115g、緑色蛍光体((Ba,Sr)SiO:Eu)0.0221g、および青色蛍光体(BaMgAl1017:Eu)0.1891gを脱泡しつつ混合して蛍光体ペーストを得た。
蛍光体ペーストによる発光素子の封止は、ピペットを用いて、蛍光体ペースト40μlを前出の発光素子に滴下し、90℃〜150℃の高温下で6時間保持して封止液を硬化させることで行なった。
得られた発光源について、温度85℃、湿度85%の環境において、発光素子に350mAの電流を注入して高温高湿寿命試験を実施した。この結果、1000時間後の白色光の光束は試験開始直後の光束に対して8%しか低減せず、安定した駆動が実現された。
(実施例2)
絶縁膜を、薄膜結晶層側から絶縁膜に垂直入射した光の反射率を0.02%とすべく、SiNxからなる結晶品質改善層の膜厚が30nmとなるとともに、SiOからなる反射抑制層の膜厚が50nmとなるように形成し、絶縁膜の最上層としてのSiNxを形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。
図12に、GaN上に、SiNxからなる結晶品質改善層を膜厚30nmで成膜し、さらにその上にSiOからなる反射抑制層を成膜することによって絶縁膜を形成した場合の、405nmの波長における、絶縁膜の反射率と反射抑制層(SiO)の膜厚との関係のグラフを示す。この計算に使用したSiNxおよびSiOxの405nmの波長における屈折率は、実施例1における屈折率確認予備実験より、それぞれ1.92および1.45とした。このグラフから明らかなように、絶縁膜の反射率は反射抑制層の膜厚が50nmのときに最も小さく、その値は0.02%である。
また、完成した発光素子は、初期特性として350mA電流注入時に全放射束が184mWであって、発光波長(中心波長)のピークは400nmであった。
さらに、完成した発光素子を用いて、実施例1と同様にして白色光を発する発光源を作製した。得られた発光源について、実施例1と同じ条件で高温高湿寿命試験を実施した。その結果、1000時間後の白色光の光束は試験開始直後の光束に対して8%しか低減せず、安定した駆動が実現された。
(実施例3)
絶縁膜を、薄膜結晶層側から絶縁膜に垂直入射した光の反射率を0.6%とすべく、SiNxからなる結晶品質改善層の膜厚が10nmとなるとともに、SiOからなる反射抑制層の膜厚が62nmとなるように形成し、絶縁膜の最上層としてのSiNxを形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。
図13に、GaN上に、SiNxからなる結晶品質改善層を膜厚10nmで成膜し、さらにその上にSiOからなる反射抑制層を成膜することによって絶縁膜を形成した場合の、405nmの波長における、絶縁膜の反射率と反射抑制層(SiO)の膜厚との関係のグラフを示す。この計算に使用したSiNxおよびSiOxの405nmの波長における屈折率は、実施例1における屈折率確認予備実験より、それぞれ1.92および1.45とした。このグラフから明らかなように、絶縁膜の反射率は反射抑制層の膜厚が62nmのときに最も小さく、その値は0.6%である。
また、完成した発光素子は、初期特性として、350mA電流注入時に全放射束が184mWであって、発光波長(中心波長)のピークは400nmであった。
さらに、完成した発光素子を用いて、実施例1と同様にして白色光を発する発光源を作製した。得られた発光源について、実施例1と同じ条件で高温高湿寿命試験を実施した。その結果、1000時間後の白色光の光束は試験開始直後の光束に対して9%しか低減せず、安定した駆動が実現された。
(実施例4)
絶縁膜を、薄膜結晶層側から絶縁膜に垂直入射した光の反射率を1.9%とすべく、SiNxからなる結晶品質改善層の膜厚を50nmとし、さらに、反射抑制層を、電子ビーム蒸着法による、MgF2からなる膜厚53nmの層とし、絶縁膜の最上層としてのSiNxを形成せず、MgF2の所定部分の除去にArガスを使用したイオンミリングを用いたこと以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。MgF2の成膜条件は、基板加熱温度300℃、加速電圧6kV、成膜開始時真空度は5.5×10−4Paであった。
ここで、実施例1と同様に薄膜結晶成長が終了したウェハーを用意し、電子ビーム蒸着法によって、本実施例の反射抑制層の形成と同一条件にてMgF2膜を110nmの厚さで形成した屈折率確認予備実験を行い、分光エリプソメータにより屈折率を測定したところ、405nmの波長においては、1.39であった。
図14に、GaN上に、SiNxからなる結晶品質改善層を膜厚50nmで成膜し、さらにその上にMgF2からなる反射抑制層を成膜することによって絶縁膜を形成した場合の、405nmの波長における、絶縁膜の反射率と反射抑制層(MgF2)の膜厚との関係のグラフを示す。この計算に使用したSiNxおよびMgF2の405nmの波長における屈折率は、実施例1および本実施例の屈折率確認予備実験より、それぞれ1.92および1.39とした。このグラフから明らかなように、絶縁膜の反射率は反射抑制層の膜厚が53nmのときに最も小さく、その値は1.9%である。
また、完成した発光素子は、初期特性として、350mA電流注入時に全放射束が181mWであって、発光波長(中心波長)のピークは401nmであった。
さらに、完成した発光素子を用いて、実施例1と同様にして白色光を発する発光源を作製した。得られた発光源について、実施例1と同じ条件で高温高湿寿命試験を実施した。その結果、1000時間後の白色光の光束は試験開始直後の光束に対して11%しか低減せず、安定した駆動が実現された。
(実施例5)
絶縁膜を、薄膜結晶層側から絶縁膜に垂直入射した光の反射率を0.5%とすべく、SiNxからなる結晶品質改善層の膜厚を10nmとし、さらに、反射抑制層を、電子ビーム蒸着法によるTiO2からなる膜厚42.6nmの層、および電子ビーム蒸着法によるSiOからなる膜厚77nmの層の2層構造とし、絶縁膜の最上層としてのSiNxを形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。
TiO2の成膜条件は、基板加熱温度250℃、加速電圧6kVで、成膜開始時真空度が1.5×10−2PaとなるようにO2を導入した。続いて成膜したSiOの成膜条件は、基板加熱温度250℃、加速電圧6kV、成膜開始時真空度が2.0×10−2PaとなるようにO2を導入した。
ここで、実施例1と同様に薄膜結晶成長が終了したウェハーを用意し、電子ビーム蒸着法によって、本実施例の反射抑制層の第一層の形成と同一条件にてTiO2膜を70nmの厚さで形成した屈折率確認予備実験を行い、分光エリプソメータにより屈折率を測定したところ、405nmの波長においては、2.38であった。同様に、電子ビーム蒸着法によって、反射抑制層の第二層の形成と同一条件にてSiOx膜を100nmの厚さで形成した屈折率確認予備実験を別に行い、分光エリプソメータにより屈折率を測定したところ、405nmの波長においては、1.47であった。
図15に、GaN上に、SiNxからなる結晶品質改善層を膜厚10nmで成膜し、さらにその上に、TiO2(膜厚42.6nm)およびSiOの2層構造の反射抑制層を成膜することによって絶縁膜を形成した場合の、405nmの波長における、絶縁膜の反射率とSiOの膜厚との関係のグラフを示す。この計算に使用したSiNx、TiO2およびSiOの405nmの波長における屈折率は、実施例1および本実施例の屈折率確認予備実験より、それぞれ1.92、2.38および1.47とした。このグラフから明らかなように、絶縁膜の反射率はSiOの膜厚が77nmのときに最も小さく、その値は0.5%である。
また、完成した発光素子は、初期特性として、350mA電流注入時に全放射束が182mWであって、発光波長(中心波長)のピークは402nmであった。
さらに、完成した発光素子を用いて、実施例1と同様にして白色光を発する発光源を作製した。得られた発光源について、実施例1と同じ条件で高温高湿寿命試験を実施した。その結果、1000時間後の白色光の光束は試験開始直後の光束に対して10%しか低減せず、安定した駆動が実現された。
(実施例6)
薄膜結晶成長工程および絶縁膜の形成を以下の(1)〜(2)のように実施したこと以外は実施例1と同様にして発光素子を作製した。
(1)薄膜結晶層の成長において、活性層構造25の量子井戸層として、アンドープIn0.1Ga0.9N層とした。
(2)絶縁膜を、薄膜結晶層側から絶縁膜に垂直入射した光の反射率を0.02%とすべく、SiNxからなる結晶品質改善層の膜厚を25nmとし、さらに、SiOからなる反射抑制層の膜厚を62nmとし、絶縁膜の最上層としてのSiNxを形成しなかった。
ここで、実施例1と同様に屈折率確認予備実験を別に行い、分光エリプソメータにより屈折率を測定したところ、460nmの波長においては、SiNxは1.91であり、SiOは1.44であった。
図16に、GaN上に、SiNxからなる結晶品質改善層を膜厚25nmで成膜し、さらにその上に、SiOからなる反射抑制層を成膜することによって絶縁膜を形成した場合の、460nmの波長における、絶縁膜の反射率と反射抑制層(SiO)の膜厚との関係のグラフを示す。この計算に使用したSiNxおよびSiOの460nmの波長における屈折率は、本実施例の屈折率確認予備実験より、それぞれ1.91および1.44とした。このグラフから明らかなように、絶縁膜の反射率は反射抑制層の膜厚が62nmのときに最も小さく、その値は0.02%である。
完成した発光素子は、初期特性として、350mA電流注入時に全放射束が251mWであって、発光波長(中心波長)のピークは459nmであった。
さらに、完成した発光素子を用いて、以下に示すようにして、白色光を発する発光源を作製した。
両末端シラノールジメチルシリコーンオイル(GE東芝シリコーン製、XC96−723)140g、フェニルトリメトキシシラン14g、及び、触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末0.308gを、室温にて15分間攪拌し、その後、120℃全還流下で30分間攪拌しつつ初期加水分解を行った。続いて、窒素を液中に吹き込みながらさらに6時間攪拌を行なった。得られた反応液を室温まで冷却した後、減圧加熱条件(120℃、1kPa)下で20分間保持することにより、封止液を得た。
得られた封止液1g、疎水性ヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、RX200)0.07g、赤色蛍光体(CaAlSiN:Eu)0.0079g、および緑色蛍光体(Ca3(Sc,Mg)2Si312:Ce)0.0721gを脱泡しつつ混合して蛍光体ペーストを得た。
次いで、得られた蛍光体ペースト40μlを、ピペットを用いて前出の発光素子に滴下し、実施例1と同じ条件で硬化させ、発光源を得た。
得られた発光源について、実施例1と同じ条件で高温高湿寿命試験を実施した。その結果、1000時間後の白色光の光束は試験開始直後の光束に対して1%しか低減せず、安定した駆動が実現された。
(実施例7)
実施例7では、第一エッチング工程におけるエッチング用マスクをプラズマCVD法によるSiOxにより形成したこと、およびSiOxの所定部分のエッチングに、バッファフッ酸を用いたこと以外は実施例1と同様にして発光素子を作製した。ここで、エッチング用マスクとしてのSiOの成膜条件は、基板加熱温度400℃、SiH4流量9sccm、N2O流量180sccm、において、圧力200Pa、RFパワー300Wとした。
完成した発光素子は、初期特性として350mA電流注入時に全放射束が183mWであって、発光波長(中心波長)のピークは402nmであった。
さらに、完成した発光素子を用いて、実施例1と同様にして白色光を発する発光源を作製した。得られた発光源について、実施例1と同じ条件で高温高湿寿命試験を実施した。その結果、1000時間後の白色光の光束は試験開始直後の光束に対して9%しか低減せず、安定した駆動が実現された。
(実施例8)
実施例8では、実施例1による発光素子の作製工程を想定した幾つかの段階で、薄膜結晶層の結晶品質改善効果を確認した。
まず、発光波長(中心波長)のピークを465nmに変更した以外は実施例1と同様にして薄膜結晶成長したウェハーを用意し、この段階で、得られた薄膜結晶層の品質を確認するために、PL強度の測定を行った。ここで、用いた光の励起波長は325nmで、励起密度は0.7mW/cm2とした。この段階(薄膜結晶成長段階)における代表的な位置でのPL強度を、図17に太い実線で示す。なお、PL積分強度は、サファイア基板と薄膜結晶層界面における干渉ピークを含んで測定した。
次に、薄膜結晶層の上に、プラズマCVD法を用いて0.4μmの厚みのSiNx膜を成膜した。これは、実施例1において第一エッチング工程のためのエッチングマスクとなるSiNxをウェハー全面に成膜したことに相当する。SiNx膜の成膜条件は、実施例1における第一エッチング工程のためのエッチング用マスクとなるSiNxの成膜条件と同じとした。
SiNx膜の成膜後にPL測定を実施したところ、ウェハー面内の平均PL積分強度は薄膜結晶成長段階と比較して1.95倍となり、大きく上昇した。この段階(マスク成膜段階)における、代表的な位置におけるPL強度を、図17に細い実線で示す。よって、第一エッチング工程のためのエッチングマスクとなるSiNx膜を成膜することによって、薄膜結晶層の結晶品質改善に効果があることが確認された。
また、この段階で、SiNx膜の水素原子の濃度をSIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)によって測定した。測定には、Q−pole型SIMSを用いた。また、水素原子の濃度は既知の標準試料を同時に測定し、定量を行った。測定の結果、水素原子の濃度は3.5×1021atoms/cm3であった。
さらに、SiNx膜の窒素原子の濃度を、XPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)によって測定した。測定には、励起X線としてMgKα線を用いた。また、取り出し角度45度で光電子を検出した。測定の結果、窒素原子の濃度は46atomic%であった。
さらに、分光エリプソメータによって、SiNx膜の屈折率を測定したところ、405nmの波長において、1.92であり、633nmの波長においては、1.88であった。
次に、SiNx膜上にフォトリソグラフィー工程を実施してレジストパターンを形成した。その後、露出したSiNx膜の部分を、RIE法を用いて、SF6プラズマにより除去した。RIE法によるエッチング条件は、SF6流量90sccm、圧力20Pa、RFパワー235Wとした。
次いで、レジストパターンをアセトンにより全て除去した。これは、実施例1において、SiNマスクをパターニングし、SiNエッチングマスクを作製したことに相当する。
この段階(マスク除去段階)で、SiNx膜の除去部分の1点においてPL強度を測定したところ、薄膜結晶成長段階のほぼ同じ位置のPL強度と比較して1.54倍であり、PL強度の改善効果は確認されたものの、マスク成膜段階でのPL強度と比較すると低下しており、改善効果の程度が減少した。この段階における、代表的な位置におけるPL強度を、図17に破線で示す。
続いて、残ったSiNx膜をバッファフッ酸により全て除去し、再度、ウェハー全面にプラズマCVD法によりSiNx膜を30nmの膜厚で成膜した。これは、実施例1において、絶縁膜の第一層目として結晶品質改善層をウェハー全面に成膜したことに相当する。SiNx膜の成膜条件は、実施例1における結晶品質改善層の成膜条件と同じとした。
ここで、マスク除去段階においてSiNx膜を除去してPL強度を測定したのとほぼ同じ位置のPL強度を測定したところ、薄膜結晶成長段階のほぼ同じ位置でのPL強度と比較して1.90倍であった。この工程においても、SiNx膜の成膜による結晶品質改善層の効果が確認された。この段階(結晶品質改善層成膜段階)における、代表的な位置におけるPL強度を、図17に、四角で示されるデータポイントを細い実線で結んだ曲線で示す。
続いて、実施例1と同様の条件で、プラズマCVD法により、反射抑制層に相当する、SiOを38nmの膜厚で、続いてSiNxを5nmの膜厚でウェハー全面に形成した。この段階においても、結晶品質改善層の効果は持続されていた。
(実施例9)
実施例9では、実施例7と同様の条件で反射抑制層の形成までを行ない、その途中の幾つかの段階で、実施例8と同様にして、PL強度を測定した。測定の結果、薄膜結晶成長段階でのPL強度との相対比で、マスク成膜段階では1.14倍と、PL強度の大きな向上は見られなかった。また、マスク除去段階では、同じく0.93倍であり、PL強度は低下した。しかし、結晶品質改善層成膜段階では1.85倍となり、SiNx膜による結晶品質改善効果が確認された。この結晶品質改善効果は、反射抑制層の成膜段階においても持続されていた。
(実施例10)
厚みが430μmのc+面サファイア基板21を用意し、この上に、まずMOCVD法を用いて、第1のバッファ層22aとして20nmの厚さの低温成長したアンドープのGaNを形成し、この後に第2のバッファ層22bとして厚み1.0μmのアンドープGaNを1070℃で形成した。
さらに、第一導電型(n型)クラッド層24としてSiドープ(Si濃度5×1018cm−3)のGaN層を3.0μmの厚さに形成した。さらに活性層構造25として、バリア層として775℃で12nmの厚さに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として775℃で1.2nmの厚さに成膜したアンドープIn0.07Ga0.93N層とを、量子井戸層が全部で5層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。さらに成長温度を970℃にして、第二導電型(p型)クラッド層26としてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.1Ga0.9Nを0.01μmの厚さで形成した後、Mgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.03Ga0.97Nを20nmの厚さに形成した。
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウェハーを取り出し、薄膜結晶成長を終了した。
この段階で、得られた薄膜結晶層の品質を確認する為に、PL強度の測定を行った。ここで、用いた光の励起波長は325nmで、励起密度は0.7mW/cm2とした。
次にプラズマCVD法を用いて、薄膜結晶層の上に、基板加熱温度350℃、SiH4流量7sccm、NH3流量13sccm、N2流量225sccm、圧力100Pa、RFパワー200Wの成膜条件において、SiNx膜を0.125μmの膜厚で成膜した。
成膜後にPL測定を実施したところ、ウェハー面内の平均PL積分強度は薄膜結晶成長後と比較して1.59倍となり、薄膜結晶構造の異なるウェハーにおいても、PL積分強度の向上が確認された。
次に、SiNx膜上にフォトリソグラフィー工程を実施してレジストパターンを形成した。その後、露出したSiNx膜の部分を、バッファフッ酸により除去した。次いでレジストパターンをアセトンにより全て除去した。
ここで、SiNx膜の除去部分の1点においてPL強度を測定したところ、薄膜結晶成長後のほぼ同じ位置のPL強度と比較して1.41倍であり、PL強度の改善効果は確認されたものの、マスク成膜段階でのPL強度と比較するとPL強度は若干低下し、改善効果の程度が減少した。
続いて、残ったSiNx膜をバッファフッ酸により全て除去し、再度、ウェハー全面にプラズマCVD法によりSiNx膜を50nmの膜厚で成膜した。SiN膜の成膜条件は、基板加熱温度250℃、SiH4流量9sccm、NH3流量13sccm、N2流量225sccm、圧力200Pa、RFパワー250Wとした。
ここで、前工程においてSiNx膜の所定部分をバッファフッ酸を用いて除去してPL強度を測定したのとほぼ同じ位置のPL強度を測定したところ、薄膜結晶成長後のほぼ同じ位置のPL強度と比較して1.55倍であり、この工程においても、SiNx成膜による結晶品質改善の効果が確認された。
(実施例11)
実施例1と同様にして薄膜結晶成長したウェハーを用意し、この段階で、得られた薄膜結晶層の品質を確認するために、PL強度の測定を行った。ここで、用いた光の励起波長は325nmで、励起密度は0.7mW/cm2とした。この段階(薄膜結晶成長段階)における代表的な位置でのPL強度を、図18に太い実線で示す。なお、PL積分強度は、サファイア基板と薄膜結晶層界面における干渉ピークを含んで測定した。
次に、薄膜結晶層の上に、プラズマCVD法を用いて0.19μmの厚みのSiOxy膜を成膜した。これは、実施例1において第一エッチング工程のためのエッチングマスクとなるSiOxyをウェハー全面に成膜したことに相当する。SiOxy膜の成膜条件は、基板加熱温度250℃、SiH4流量7sccm、NH3流量13sccm、N2O流量10sccm、N2流量100sccmにおいて、圧力150Pa、RFパワー250Wとした。
SiOxy膜の成膜後にPL測定を実施したところ、ウェハー面内の平均PL積分強度は薄膜結晶成長段階と比較して1.30倍と上昇した。この段階(マスク成膜段階)における、代表的な位置におけるPL強度を、図18に細い実線で示す。よって、第一エッチング工程のためのエッチングマスクとなるSiOxy膜を成膜することによって、薄膜結晶層の結晶品質改善に効果があることが確認された。
分光エリプソメータによって、SiOxy膜の屈折率を測定したところ、405nmの波長において、1.71であり、633nmの波長においては、1.68であった。
次に、SiOxy膜上にフォトリソグラフィー工程を実施してレジストパターンを形成した。その後、露出したSiOxy膜の部分を、フッ酸およびフッ化アンモニウムの混合液(体積比で1:5)を用いて除去した。エッチングは室温で10分間行った。
次いで、レジストパターンをアセトンにより全て除去した。これは、実施例1において、SiOxyマスクをパターニングし、SiOxyエッチングマスクを作製したことに相当する。
この段階(マスク除去段階)で、SiOxy膜の除去部分の1点においてPL強度を測定したところ、薄膜結晶成長段階のほぼ同じ位置のPL強度と比較して1.16倍であり、マスク成膜段階でのPL強度と比較すると低下しており、改善効果の程度が減少した。しかしながら、この段階においても、結晶品質改善層の効果は持続されていた。この段階における、代表的な位置におけるPL強度を、図18に破線で示す。
(実施例12)
発光波長(中心波長)のピークを465nmに変更した以外は、実施例11と同様にして薄膜結晶成長したウェハーを用意し、この段階で、得られた薄膜結晶層の品質を確認するために、PL強度の測定を行った。この段階(薄膜結晶成長段階)における代表的な位置でのPL強度を、図19に太い実線で示す。なお、PL積分強度は、サファイア基板と薄膜結晶層界面における干渉ピークを含んで測定した。
次に、薄膜結晶層の上に、プラズマCVD法を用いて0.19μmの厚みのSiOxy膜を成膜した。SiOxy膜の成膜条件は、基板加熱温度250℃、SiH4流量7sccm、NH3流量13sccm、N2O流量20sccm、N2流量100sccmにおいて、圧力150Pa、RFパワー250Wとした。
SiOxy膜の成膜後にPL測定を実施したところ、ウェハー面内の平均PL積分強度は薄膜結晶成長段階と比較して1.16倍と上昇した。この段階(マスク成膜段階)における、代表的な位置におけるPL強度を、図19に細い実線で示す。よって、第一エッチング工程のためのエッチングマスクとなるSiOxy膜を成膜することによって、薄膜結晶層の結晶品質改善に効果があることが確認された。
分光エリプソメータによって、SiOxy膜の屈折率を測定したところ、405nmの波長において、1.59であり、633nmの波長においては、1.56であった。
次に、実施例11と同様にして、SiOxy膜上にフォトリソグラフィー工程を実施してレジストパターンを形成した。その後、露出したSiOxy膜の部分を、フッ酸およびフッ化アンモニウムの混合液を用いて除去した。次いで、レジストパターンをアセトンにより全て除去した。
この段階(マスク除去段階)で、SiOxy膜の除去部分の1点においてPL強度を測定したところ、薄膜結晶成長段階のほぼ同じ位置のPL強度と比較して1.12倍であり、マスク成膜段階でのPL強度と比較すると低下しており、改善効果の程度が減少した。しかしながら、この段階においても、結晶品質改善層の効果は持続されていた。この段階における、代表的な位置におけるPL強度を、図19に破線で示す。
(実施例13)
実施例12と同様にして薄膜結晶成長したウェハーを用意し、この段階で、得られた薄膜結晶層の品質を確認するために、PL強度の測定を行った。この段階(薄膜結晶成長段階)における代表的な位置でのPL強度を、図20に太い実線で示す。なお、PL積分強度は、サファイア基板と薄膜結晶層界面における干渉ピークを含んで測定した。
次に、薄膜結晶層の上に、プラズマCVD法を用いて0.16μmの厚みのSiOxy膜を成膜した。SiOxy膜の成膜条件は、基板加熱温度250℃、SiH4流量7sccm、NH3流量13sccm、N2O流量40sccm、N2流量100sccmにおいて、圧力150Pa、RFパワー250Wとした。
SiOxy膜の成膜後にPL測定を実施したところ、ウェハー面内の平均PL積分強度は薄膜結晶成長段階と比較して1.29倍と上昇した。この段階(マスク成膜段階)における、代表的な位置におけるPL強度を、図20に細い実線で示す。よって、第一エッチング工程のためのエッチングマスクとなるSiOxy膜を成膜することによって、薄膜結晶層の結晶品質改善に効果があることが確認された。
分光エリプソメータによって、SiOxy膜の屈折率を測定したところ、405nmの波長において、1.47であり、633nmの波長においては、1.46であった。
次に、実施例11と同様にして、SiOxy膜上にフォトリソグラフィー工程を実施してレジストパターンを形成した。その後、露出したSiOxy膜の部分を、フッ酸およびフッ化アンモニウムの混合液を用いて除去した。次いで、レジストパターンをアセトンにより全て除去した。
この段階(マスク除去段階)で、SiOxy膜の除去部分の1点においてPL強度を測定したところ、薄膜結晶成長段階のほぼ同じ位置のPL強度と比較して1.21倍であり、マスク成膜段階でのPL強度と比較すると低下しており、改善効果の程度が減少した。しかしながら、この段階においても、結晶品質改善層の効果は持続されていた。この段階における、代表的な位置におけるPL強度を、図20に破線で示す。
(比較例1)
比較例1では、絶縁膜に反射機能を持たせた。具体的には、絶縁膜を、薄膜結晶層側から絶縁膜に垂直入射した光の反射率を52%とすべく、電子ビーム蒸着法による膜厚67.6nmのSiOからなる第一層と、電子ビーム蒸着法による膜厚42.6nmのTiO2からなる第二層との多層膜で形成した。絶縁膜の最上層としてのSiNxは形成しなかった。TiO2の成膜条件は、基板加熱温度250℃、加速電圧6kVで、成膜開始時真空度が1.5×10−2PaとなるようにO2を導入した。続いて成膜したSiOの成膜条件は、基板加熱温度250℃、加速電圧6kV、成膜開始時真空度が2.0×10−2PaとなるようにO2を導入した。それ以外の構成および作製工程は実施例1と同様として発光素子を作製した。
完成した発光素子は、初期特性として、350mA電流注入時に全放射束が183mWであって、発光波長のピークは403nmであった。
さらに、完成した発光素子を用いて、実施例1と同様にして白色光を発する発光源を作製した。得られた発光源について、実施例1と同じ条件で高温高湿寿命試験を実施した。その結果、1000時間後の白色光の光束は試験開始直後の光束に対して30%も低減し、急速な光束の低減が見られた。
(比較例2)
絶縁膜を、薄膜結晶層側から絶縁膜に垂直入射した光の反射率を18%とすべく、プラズマCVD法によるSiOからなる膜厚135nmの単層膜で形成したこと、および絶縁膜の最上層としてのSiNxを形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。SiOxの成膜条件は、基板加熱温度400℃、SiH4流量9sccm、N2O流量180sccm、において、圧力200Pa、RFパワー300Wとした。
完成した発光素子は、初期特性として、350mA電流注入時に全放射束が182mWであって、発光波長のピークは400nmであった。
さらに、完成した発光素子を用いて、実施例1と同様にして白色光を発する発光源を作製した。得られた発光源について、実施例1と同じ条件で高温高湿寿命試験を実施した。その結果、1000時間後の白色光の光束は試験開始直後の光束に対して26%も低減し、急速な光束の低減が見られた。
(比較例3)
比較例3では、以下のようにして絶縁膜を形成した以外は実施例1と同様にして発光素子を作製した。
まず、反応性スパッタ法によって、SiNからなる第一層を10nmの膜厚で形成した。成膜条件は、基板加熱温度200℃、Ar流量10sccm、N流量5sccm、圧力0.32Pa、RFパワー300Wとした。第一層の形成後、その上にプラズマCVD法によって、SiOからなる第二層を薄膜結晶層側から絶縁膜に垂直入射した光の反射率を0.7%とすべく、65nmの膜厚で形成した。SiOxの成膜条件は、基板加熱温度400℃、SiH4流量9sccm、N2O流量180sccm、において、圧力200Pa、RFパワー300Wとした。また、絶縁膜の最上層としてのSiNxは形成しなかった。
完成した発光素子は、初期特性として、350mA電流注入時に全放射束が182mWであって、発光波長のピークは400nmであった。
さらに、完成した発光素子を用いて、実施例1と同様にして白色光を発する発光源を作製した。得られた発光源について、実施例1と同じ条件で高温高湿寿命試験を実施した。その結果、1000時間後の白色光の光束は試験開始直後の光束に対して21%も低減し、急速な光束の低減が見られた。
(比較例4)
比較例4では、エッチングマスクとして薄膜結晶層上に形成したSiNx膜をバッファフッ酸により全て除去した工程までは、実施例8と同様とした。比較例4においても、実施例8と同様、薄膜結晶成長後にPL強度の測定を行なった。
SiNx膜の除去後、薄膜結晶層の上に、ウェハー全面にプラズマCVD法によりSiO膜を135nmの膜厚で成膜した。SiOx膜の成膜条件は、基板加熱温度400℃、SiH4流量9sccm、N2O流量180sccm、において、圧力200Pa、RFパワー300Wとした。これは、比較例2における、絶縁膜をウェハー全面に成膜したことに相当する。
ここで、前工程において所定部分をRIE法を用いてSF6プラズマにより除去し、PL強度を測定したのとほぼ同じ位置のPL強度を測定したところ、薄膜結晶成長後のほぼ同じ位置のPL強度と比較して1.29倍となり、実施例8と比較して結晶品質改善効果が劣っていた。
(比較例5)
エッチングマスクとして薄膜結晶層上に形成したSiNx膜をバッファフッ酸により全て除去した工程までは、実施例8と同様とした。比較例5においても、実施例8と同様、薄膜結晶成長後にPL強度の測定を行なった。
SiNx膜の除去後、ウェハー全面に反応性スパッタ法を用いて、薄膜結晶層の上に、基板加熱温度200℃、Ar流量10sccm、N流量5sccm、圧力0.32Pa、RFパワー300Wの成膜条件において、SiNx膜を10nmの膜厚で成膜した。これは、比較例3における、絶縁膜の第一層をウェハー全面に成膜したことに相当する。
ここで、前工程において所定部分をRIE法を用いてSF6プラズマにより除去し、PL強度を測定したのとほぼ同じ位置のPL強度を測定したところ、薄膜結晶成長後のほぼ同じ位置のPL積分強度と比較して1.11倍となり、実施例8と比較して結晶品質改善効果が劣っていた。
(比較例6)
発光波長(中心波長)のピークを465nmに変更した以外は実施例1と同様に薄膜結晶成長したウェハーを用意し、この段階で、得られた薄膜結晶層の品質を確認する為に、PL強度の測定を行った。ここで、用いた光の励起波長は325nmで、励起密度は0.7mW/cm2とした。
次に反応性スパッタ法を用いて、薄膜結晶層の上に、基板加熱温度200℃、Ar流量10sccm、N流量5sccm、圧力0.32Pa、RFパワー300Wの成膜条件において、SiNx膜を0.33μmの膜厚で成膜した。
成膜後にPL強度を測定したところ、ウェハー面内の平均PL積分強度は薄膜結晶成長後と比較して0.82倍となり、PL積分強度は低下した。またこの段階で、実施例8と同様にして、SiNx膜の水素原子の濃度および屈折率を測定した。測定の結果、水素原子の濃度は3.6×1020atoms/cm3であり、実施例8において測定したプラズマCVD法により成膜されたSiNxの水素原子の濃度と比較して1桁程度低かった。また、屈折率は、405nmの波長において、2.07、633nmの波長において、2.02であり、プラズマCVD法によって成膜されたSiNx膜と比較して大きな差がみられた。
次に、SiNx膜上にフォトリソグラフィー工程を実施してレジストパターンを形成した。その後、露出したSiNx膜の部分を、バッファフッ酸を用いて除去した。次いでレジストパターンをアセトンにより全て除去した。
ここで、SiNx膜の除去部分の1点においてPL強度を測定したところ、薄膜結晶成長後のほぼ同じ位置のPL強度と比較して0.72倍と低下した。
続いて、残ったSiNx膜をバッファフッ酸により全て除去し、ウェハー全面にプラズマCVD法によりSiOx膜を50nmの膜厚で成膜した。成膜条件は、基板加熱温度400℃、SiH4流量9sccm、N2O流量180sccm、において、圧力200Pa、RFパワー300Wの条件とした。
ここで、前工程において所定部分をバッファフッ酸を用いて除去しPL強度を測定したのとほぼ同じ位置のPL強度を測定したところ、薄膜結晶成長後のほぼ同じ位置のPL強度と比較して0.65倍となり、著しい低下が見られた。
本発明の一実施形態による発光素子の断面図である。 本発明の発光素子の他の形態の断面図である。 本発明の発光素子の他の形態の断面図である。 本発明の発光素子の他の形態の断面図である。 図1に示す発光素子の一部分を詳細に示した断面図である。 図1に示す発光素子の製造方法の一例を説明する断面図である。 図1に示す発光素子の製造方法の一例を説明する断面図である。 図1に示す発光素子の製造方法の一例を説明する断面図である。 図1に示す発光素子の製造方法の一例を説明する断面図である。 図1に示す発光素子の製造方法の一例を説明する断面図である。 図1に示す発光素子の製造方法の一例を説明する断面図である。 薄膜結晶層上に、プラズマCVD法によって、SiNxを30nm成膜した上にSiOxを成膜した際の、SiOxの膜厚と反射率の関係を示すグラフである。 実施例1で製造した発光素子の断面図である。 実施例1における絶縁膜の反射率とSiOの膜厚との関係を示すグラフである。 実施例2における絶縁膜の反射率とSiOの膜厚との関係を示すグラフである。 実施例3における絶縁膜の反射率とSiOの膜厚との関係を示すグラフである。 実施例4における絶縁膜の反射率とMgF2の膜厚との関係を示すグラフである。 実施例5における絶縁膜の反射率とSiOの膜厚との関係を示すグラフである。 実施例6における絶縁膜の反射率とSiOの膜厚との関係を示すグラフである。 実施例8における、各工程での、薄膜結晶層のPL強度と波長との関係を示すグラフである。 実施例11における、各工程での、薄膜結晶層のPL強度と波長との関係を示すグラフである。 実施例12における、各工程での、薄膜結晶層のPL強度と波長との関係を示すグラフである。 実施例13における、各工程での、薄膜結晶層のPL強度と波長との関係を示すグラフである。 本発明の他の実施形態による発光素子の断面図である。 本発明の他の形態による発光素子の断面図である。
符号の説明
10 発光素子
21 基板
22 バッファ層
24 第一導電型クラッド層
25 活性層構造
26 第二導電型クラッド層
27 第二導電型側電極
28 第一導電型側電極
40 サブマウント

Claims (28)

  1. バッファ層、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層がこの順番に積層された薄膜結晶層を有する半導体発光素子であって、
    前記薄膜結晶層は、少なくとも前記第二導電型半導体層の一部が絶縁膜で覆われ、
    前記絶縁膜は、前記薄膜結晶層の結晶性を向上させる結晶品質改善層を有することを特徴とする半導体発光素子。
  2. 前記絶縁膜は、前記結晶品質改善層の少なくとも一部を覆って形成され前記薄膜結晶層側から入射する光の反射を抑制する少なくとも1層の反射抑制層をさらに有する請求項1に記載の半導体発光素子。
  3. 前記薄膜結晶層で発生した光が前記絶縁膜に垂直入射したときの前記絶縁膜の光の反射率をR%としたとき、
    0.001(%)<R<3(%)
    を満たすように前記反射抑制層が調整されている請求項2に記載の半導体発光素子。
  4. 前記反射抑制層は単一の層で構成されている請求項3に記載の半導体発光素子。
  5. 前記反射抑制層は、AlOx、SiOx、TiOx、MgF2、SiNxおよびSiOxから選択される材料からなる請求項2から4のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
  6. 前記第二導電型側電極は前記第二導電型半導体層との対向面全体が前記第二導電型半導体層と接しており、かつ、前記絶縁膜は、前記第二導電型側電極の一部をも覆っている請求項1から5のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
  7. 前記第一導電型側電極は、前記第一導電型半導体層との対向面の一部のみが前記第一導電型側半導体層と接しており、前記第一導電型半導体層と前記第一導電型側電極との間に前記絶縁膜の一部が介在している請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
  8. 前記絶縁膜は前記薄膜結晶層の側壁の少なくとも一部に接している請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
  9. 前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層は窒化物半導体である請求項1から8のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
  10. 前記窒化物半導体は、In、Ga、AlおよびBの少なくとも1種の元素を含有する請求項9に記載の半導体発光素子。
  11. 前記活性層構造内から発せられる光の中心波長λ(nm)が下記式を満たす請求項1から10のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
    300(nm)≦λ≦430(nm)
  12. 第一導電型がn型であり、第二導電型がp型である、請求項1から11のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
  13. 前記第二導電型半導体層の表面にMgおよびHを含有する請求項1から12のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
  14. 前記結晶品質改善層はNおよびHを含有する請求項1から13のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
  15. 前記結晶品質改善層での水素原子の濃度が1×1021atoms/cm3以上1×1022atoms/cm3以下である請求項14に記載の半導体発光素子。
  16. 前記結晶品質改善層は、窒化物、酸窒化物のいずれか1以上を含む請求項1から15のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
  17. 前記窒化物、酸窒化物は、B、Al、Si、Ti、V、Cr、Mo、Hf、Ta、またはWのいずれか1種またはそれ以上の元素を含む請求項16に記載の半導体発光素子。
  18. 前記第一導電型半導体層および第二導電型半導体層にそれぞれ電流を注入するための第一導電型側電極および第二導電型側電極が共に、前記バッファ層に対して前記第一導電型半導体層と同じ側に配置されたフリップチップ型である請求項1から17のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
  19. 基板上に、バッファ層、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する薄膜結晶層を形成する結晶成長工程と、
    前記第二導電型半導体層上の予定された第二電流注入領域上に第二導電型側電極を形成する第二導電型側電極形成工程と、
    前記第一導電型側半導体層の一部を露出させる第一エッチング工程と、
    少なくとも前記第二導電型半導体層の一部と前記第一導電型半導体層の一部を覆うように、前記薄膜結晶層の結晶性を向上させるための結晶品質改善層を含む絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
    前記絶縁膜の少なくとも前記第一導電型半導体層上の一部分を除去して第一電流注入領域を形成する第一電流注入領域形成工程と、
    前記第一電流注入領域上に第一導電型側電極を形成する第一導電型側電極形成工程と、
    を、この順に実施することを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
  20. 前記絶縁膜形成工程は、前記結晶品質改善層上に、前記薄膜結晶層側から入射する光の反射を抑制する反射抑制層を形成することを含む請求項19に記載の半導体発光素子の製造方法。
  21. 前記絶縁膜形成工程は、前記薄膜結晶層側からの光が前記結晶品質改善層および反射抑制層に垂直入射したときの反射率をR%としたとき、
    0.001(%)<R<3(%)
    を満たすように前記反射抑制層を形成することを含む請求項20に記載の半導体発光素子の製造方法。
  22. 前記絶縁膜形成工程は、前記結晶品質改善層の形成および前記反射抑制層の形成を、同一の成膜装置内で連続して行なう請求項20または21に記載の半導体発光素子の製造方法。
  23. 前記結晶品質改善層は、窒化物、酸窒化物のいずれか1以上を含む請求項19から22のいずれか1項に記載の半導体発光素子の製造方法。
  24. 前記窒化物、酸窒化物は、B、Al、Si、Ti、V、Cr、Mo、Hf、Ta、またはWのいずれか1種またはそれ以上の元素を含む請求項23に記載の半導体発光素子の製造方法。
  25. 前記絶縁膜形成工程は、窒素原料として少なくともアンモニアを含有するガス種を用いて前記結晶品質改善層を形成することを含む請求項19から24のいずれか1項に記載の半導体発光素子の製造方法。
  26. 前記絶縁膜形成工程は、酸素原料として少なくともNOを含有するガス種を用いて前記結晶品質改善層を形成することを含む請求項19から25のいずれか1項に記載の半導体発光素子の製造方法。
  27. 前記絶縁膜形成工程は、プラズマCVD法によって前記結晶品質改善層を形成することを含む請求項19から26のいずれか1項に記載の半導体発光素子の製造方法。
  28. 前記絶縁膜形成工程は、水素原子の濃度が1×1021atoms/cm3以上1×1022atoms/cm3以下となるように前記結晶品質改善層を形成することを含む請求項19から27のいずれか1項に記載の半導体発光素子の製造方法。
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