JP2009127597A - 触媒劣化診断装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】より精度の高い触媒の劣化検出が可能な触媒劣化診断装置を提供する。
【解決手段】内燃機関の排気通路に配置された触媒の劣化を診断する内燃機関の触媒劣化診断装置であって、燃燃料中の硫黄濃度を判別する際に触媒上流の空燃比をアクティブ制御によりリッチからリーンに切り替えたときの、触媒下流の酸素センサの出力値のリッチ側最大値と、このリッチ側最大値からリーン側へ値が落ち込んでほぼ定常状態となったときの定常値との差に基づいて、燃料中の硫黄濃度を判別し、その判別結果を考慮して触媒劣化を判断する構成、とした。この構成によれば、硫黄の影響を考慮して触媒劣化を判断するので、より精度の高い触媒の劣化検出が可能となる。
【選択図】図1
【解決手段】内燃機関の排気通路に配置された触媒の劣化を診断する内燃機関の触媒劣化診断装置であって、燃燃料中の硫黄濃度を判別する際に触媒上流の空燃比をアクティブ制御によりリッチからリーンに切り替えたときの、触媒下流の酸素センサの出力値のリッチ側最大値と、このリッチ側最大値からリーン側へ値が落ち込んでほぼ定常状態となったときの定常値との差に基づいて、燃料中の硫黄濃度を判別し、その判別結果を考慮して触媒劣化を判断する構成、とした。この構成によれば、硫黄の影響を考慮して触媒劣化を判断するので、より精度の高い触媒の劣化検出が可能となる。
【選択図】図1
Description
本発明は、触媒劣化診断装置に関する。
例えば、車両用の内燃機関において、その排気系には排気ガスを浄化するための触媒が設置されている。この触媒の中には酸素吸蔵能(O2ストレージ能)を有するものがあり、これは、触媒に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比(ストイキ)よりも大きくなると、即ちリーンになると排気ガス中に存在する過剰酸素を吸着保持し、触媒流入排気ガスの空燃比がストイキよりも小さくなると、即ちリッチになると吸着保持された酸素を放出する。例えばガソリンエンジンでは触媒に流入する排気ガスがストイキ近傍となるよう空燃比制御が行われるが、酸素吸蔵能を有する三元触媒を使用すると、運転条件により実際の空燃比がストイキから多少振れてしまっても、三元触媒による酸素の吸蔵・放出作用により、そのような空燃比ずれを吸収することができる。
触媒が劣化すると触媒の浄化効率が低下する。触媒の劣化度と酸素吸蔵能の低下度との間にはともに貴金属を介する反応であるため相関関係がある。よって、酸素吸蔵能が低下したことを検出することで触媒が劣化したことを検出することができる。一般的には、触媒に流入する排気ガスの空燃比を強制的にリッチ及びリーンに切り替えるアクティブ空燃比制御を行い、このアクティブ空燃比制御の実行に伴って触媒の酸素吸蔵容量を計測し、計測した酸素吸蔵容量に基づいて触媒の劣化を診断するいわゆるCmax法が採用される。
酸素吸蔵容量の計測においては、例えば、特許文献1,2等に開示されているように、硫黄濃度が高い燃料の場合、硫黄被毒により、触媒が一時的に劣化し、計測される酸素吸蔵容量が低下することが知られている。
酸素吸蔵容量の計測においては、例えば、特許文献1,2等に開示されているように、硫黄濃度が高い燃料の場合、硫黄被毒により、触媒が一時的に劣化し、計測される酸素吸蔵容量が低下することが知られている。
燃料中の硫黄が一時的に触媒の表面に吸着されると、これが触媒の酸素吸放出反応を阻害し、あたかも熱劣化により触媒の貴金属がシンタリングしたような判定結果と同様の判定結果が生じ、触媒の劣化が熱劣化によるものと誤って判定してしまう可能性があった。
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、より精度の高い触媒の劣化検出が可能な触媒劣化診断装置を提供することにある。
本発明に係る触媒劣化診断装置は、内燃機関の排気通路に配置された触媒の劣化を診断する内燃機関の触媒劣化診断装置であって、燃料中の硫黄濃度を判別する硫黄濃度判別手段と、前記硫黄濃度判別手段の判別結果を考慮して触媒劣化を判断する触媒劣化判断手段と、を有し、前記硫黄濃度判別手段は、触媒上流の空燃比をアクティブ制御によりリッチからリーンに切り替えたときの、触媒下流の酸素センサの出力値のリッチ側最大値と、このリッチ側最大値からリーン側へ値が落ち込んでほぼ定常状態となったときの定常値との差に基づいて、燃料中の硫黄濃度を判別する、ことを特徴とする。
上記構成において、前記硫黄濃度判別手段は、燃料中の硫黄濃度を判別する際に、前記リッチ側最大値と定常値との差に加えて、前記触媒下流の酸素センサの出力波形形状が高硫黄燃料特有の形状をとるか否かを判断する、構成を採用できる。
上記構成において、前記触媒劣化判断手段は、触媒上流空燃比のアクティブ制御時の触媒の酸素吸蔵容量に基いて触媒劣化を判断し、前記硫黄濃度判別手段の判別結果に応じて、触媒劣化判断に用いる酸素吸蔵容量または触媒劣化を判断するための判定値を補正する、構成を採用できる。
本発明によれば、硫黄の影響を考慮して触媒劣化を判断するので、より精度の高い触媒の劣化検出が可能となる。
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態の構成を示す概略図である。図示されるように、内燃機関1は、シリンダブロック2に形成された燃焼室3の内部で燃料および空気の混合気を燃焼させ、燃焼室3内でピストン4を往復移動させることにより動力を発生する。内燃機関1は車両に搭載された多気筒エンジン(1気筒のみ図示)であり、火花点火式内燃機関、より具体的にはガソリンエンジンである。
図1は、本実施形態の構成を示す概略図である。図示されるように、内燃機関1は、シリンダブロック2に形成された燃焼室3の内部で燃料および空気の混合気を燃焼させ、燃焼室3内でピストン4を往復移動させることにより動力を発生する。内燃機関1は車両に搭載された多気筒エンジン(1気筒のみ図示)であり、火花点火式内燃機関、より具体的にはガソリンエンジンである。
内燃機関1のシリンダヘッドには、吸気ポートを開閉する吸気弁Viと、排気ポートを開閉する排気弁Veとが気筒ごとに配設されている。各吸気弁Viおよび各排気弁Veは図示しないカムシャフトによって開閉させられる。また、シリンダヘッドの頂部には、燃焼室3内の混合気に点火するための点火プラグ7が気筒ごとに取り付けられている。
各気筒の吸気ポートは気筒毎の枝管を介して吸気集合室であるサージタンク8に接続されている。サージタンク8の上流側には吸気集合通路をなす吸気管13が接続されており、吸気管13の上流端にはエアクリーナ9が設けられている。そして吸気管13には、上流側から順に、吸入空気量を検出するためのエアフローメータ5と、電子制御式スロットルバルブ10とが組み込まれている。なお吸気ポート、サージタンク8及び吸気管13により吸気通路が形成される。
吸気通路、特に吸気ポート内に燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射弁)12が気筒ごとに配設される。インジェクタ12から噴射された燃料は吸入空気と混合されて混合気をなし、この混合気が吸気弁Viの開弁時に燃焼室3に吸入され、ピストン4で圧縮され、点火プラグ7で点火燃焼させられる。
一方、各気筒の排気ポートは気筒毎の枝管を介して排気集合通路をなす排気管6に接続されており、排気管6には、O2ストレージ機能(酸素吸蔵能)を有する三元触媒からなる触媒11が取り付けられている。なお排気ポート、枝管及び排気管6により排気通路が形成される。触媒11の上流側と下流側とにそれぞれ、排気中の酸素濃度に基づいて排気空燃比を検出する空燃比センサ17及びO2(酸素)センサ18が設置されている。空燃比センサ17は所謂広域空燃比センサからなり、比較的広範囲に亘る空燃比を連続的に検出可能で、排気空燃比に比例した値の信号を出力する。他方、O2センサ18は、理論空燃比を境に出力値が急変する特性を持つ。
上述の点火プラグ7、スロットルバルブ10及びインジェクタ12等は、制御手段としての電子制御ユニット(以下ECUと称す)20に電気的に接続されている。ECU20は、何れも図示されないCPU、ROM、RAM、入出力ポート、および記憶装置等を含むものである。またECU20には、図示されるように、前述のエアフローメータ5、空燃比センサ17、O2センサ18のほか、内燃機関1のクランク角を検出するクランク角センサ14、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ15、その他の各種センサが図示されないA/D変換器等を介して電気的に接続されている。ECU20は、各種センサの検出値等に基づいて、所望の出力が得られるように、点火プラグ7、スロットルバルブ10、インジェクタ12等を制御し、点火時期、燃料噴射量、燃料噴射時期、スロット
ル開度等を制御する。
ル開度等を制御する。
触媒11は、これに流入する排気ガスの空燃比A/Fが理論空燃比(ストイキ、例えば、A/Fs=14.6)近傍のときにNOx ,HCおよびCOを同時に浄化する。そしてこれに対応して、ECU20は、内燃機関の通常運転時、触媒11に流入する排気ガスの空燃比即ち触媒前空燃比A/Ffrが理論空燃比に一致するように空燃比を制御する。具体的にはECU20は、理論空燃比に等しい目標空燃比A/Ftを設定すると共に、空燃比センサ17により検出された触媒前空燃比A/Ffrが目標空燃比A/Ftに一致するように、インジェクタ12から噴射される燃料噴射量をフィードバック制御する。これにより触媒11に流入する排気ガスの空燃比は理論空燃比近傍に保たれ、触媒11において最大の浄化性能が発揮されるようになる。
ここで、触媒11についてより詳細に説明する。図2に示すように、触媒11においては、図示しない担体基材の表面上にコート材31が被覆され、このコート材31に微粒子状の触媒成分32が多数分散配置された状態で保持され、触媒11内部で露出されている。触媒成分32は主にPt,Pd等の貴金属からなり、NOx ,HCおよびCOといった排ガス成分を反応させる際の活性点となる。他方、コート材31は、排気ガスと触媒成分32との界面における反応を促進させる助触媒の役割を担うと共に、雰囲気ガスの空燃比に応じて酸素を吸収放出可能な酸素吸蔵成分を含む。酸素吸蔵成分は例えば酸化セリウムCeO2やジルコニアからなる。例えば、触媒成分32及びコート材31の雰囲気ガスが理論空燃比よりリッチであると、触媒成分32の周囲に存在する酸素吸蔵成分に吸蔵さ
れていた酸素が放出され、この結果、放出された酸素によりHCおよびCOといった未燃成分が酸化され、浄化される。逆に、触媒成分32及びコート材31の雰囲気ガスが理論空燃比よりリーンであると、触媒成分32の周囲に存在する酸素吸蔵成分が雰囲気ガスから酸素を吸収し、この結果NOxが還元浄化される。
れていた酸素が放出され、この結果、放出された酸素によりHCおよびCOといった未燃成分が酸化され、浄化される。逆に、触媒成分32及びコート材31の雰囲気ガスが理論空燃比よりリーンであると、触媒成分32の周囲に存在する酸素吸蔵成分が雰囲気ガスから酸素を吸収し、この結果NOxが還元浄化される。
このような酸素吸放出作用により、通常の空燃比制御の際に触媒前空燃比A/Ffrが理論空燃比に対し多少ばらついたとしても、NOx、HCおよびCOといった三つの排気ガス成分を同時浄化することができる。よって通常の空燃比制御において、触媒前空燃比A/Ffrを敢えて理論空燃比を中心に微小振動させ、酸素の吸放出を繰り返させることにより排ガス浄化を行うことも可能である。
ところで、新品状態の触媒11では前述したように細かい粒子状の触媒成分32が多数均等に分散配置されており、排気ガスと触媒成分32との接触確率が高い状態に維持されている。しかしながら、触媒11が劣化してくると、一部の触媒成分32に消失が見られるほか、触媒成分32同士が排気熱で焼き固まって焼結状態になるものがある(図の破線参照)。こうなると排気ガスと触媒成分32との接触確率の低下を引き起こし、浄化率を落としめる原因となる。そしてこのほかに、触媒成分32の周囲に存在するコート材31の量、即ち酸素吸蔵成分の量が減少し、酸素吸蔵能自体が低下する。
このように、触媒11の劣化度と触媒11の持つ酸素吸蔵能の低下度とは相関関係にある。そこで本実施形態では、触媒11の酸素吸蔵能を検出することにより触媒11の劣化度を検出することとしている。ここで、触媒11の酸素吸蔵能は、現状の触媒11が吸蔵し得る最大酸素量である酸素吸蔵容量(OSC;O2 Strage Capacity、単位はg)の大きさによって表される。
以下、触媒劣化診断について説明する。
触媒劣化診断は、前述のCmax法によるものを基本とする。そして触媒11の劣化診断に際しては、ECU20によりアクティブ空燃比制御が実行される。アクティブ空燃比制御において、触媒前空燃比A/Ffrは、所定の中心空燃比A/Fcを境にリッチ側及びリーン側に強制的に(アクティブに)交互に切り替えられる。なおリッチ側に変化されたときの空燃比をリッチ空燃比A/Fr、リーン側に変化されたときの空燃比をリーン空燃比A/Flと称す。このアクティブ空燃比制御によって触媒前空燃比A/Ffrがリッチ側又はリーン側に変化されているときに触媒の酸素吸蔵容量OSCが計測される。
触媒劣化診断は、前述のCmax法によるものを基本とする。そして触媒11の劣化診断に際しては、ECU20によりアクティブ空燃比制御が実行される。アクティブ空燃比制御において、触媒前空燃比A/Ffrは、所定の中心空燃比A/Fcを境にリッチ側及びリーン側に強制的に(アクティブに)交互に切り替えられる。なおリッチ側に変化されたときの空燃比をリッチ空燃比A/Fr、リーン側に変化されたときの空燃比をリーン空燃比A/Flと称す。このアクティブ空燃比制御によって触媒前空燃比A/Ffrがリッチ側又はリーン側に変化されているときに触媒の酸素吸蔵容量OSCが計測される。
触媒11の劣化診断は、内燃機関1の定常運転時で且つ触媒11が活性温度域にあるときに実行される。触媒11の温度(触媒床温)の計測については、温度センサを用いて直接検出してもよいが、本実施形態の場合内燃機関の運転状態から推定することとしている。例えばECU20は、エアフローメータ5によって検出される吸入空気量Gaと、クランク角センサ14の出力に基づいて検出される機関回転速度Ne(rpm)とに基づいて、予め実験等を通じて設定されたマップ又は関数を利用し、触媒11の温度を推定する。
図3(A),(B)にはそれぞれ、アクティブ空燃比制御実行時における空燃比センサ17及びO2センサ18の出力が実線で示されている。また、図3(A)には、ECU20内部で発生される目標空燃比A/Ftが破線で示されている。空燃比センサ17及びO2センサ18の出力値はそれぞれ触媒前空燃比A/Ffr及び触媒後空燃比A/Frrの値に対応する。
図3(A)に示されるように、目標空燃比A/Ftは、中心空燃比A/Fcを中心として、そこからリッチ側に所定の振幅(リッチ振幅Ar、Ar>0)だけ離れた空燃比(リッチ空燃比A/Fr)と、そこからリーン側に所定の振幅(リーン振幅Al、Al>0)だけ離れた空燃比(リーン空燃比A/Fl)とに強制的に、且つ交互に切り替えられる。そしてこの目標空燃比A/Ftの切り替えに追従して、実際値としての触媒前空燃比A/Ffrも、目標空燃比A/Ftに対し僅かな時間遅れを伴って切り替わる。このことから目標空燃比A/Ftと触媒前空燃比A/Ffrとは時間遅れがあること以外等価であることが理解されよう。
図示例においてリッチ振幅Arとリーン振幅Alとは等しい。例えば中心空燃比A/Fc=14.6、リッチ空燃比A/Fr=14.1、リーン空燃比A/Fl=15.1、リッチ振幅Ar=リーン振幅Al=0.5である。通常の空燃比制御の場合に比べ、アクティブ空燃比制御の場合は空燃比の振り幅が大きく、即ちリッチ振幅Arとリーン振幅Alとの値は大きい。
目標空燃比A/Ftがリッチとリーンとで切り替えられるタイミングは、O2センサ18の出力に基づいて決定される。具体的には、図3(B)に図示したように、触媒後空燃比A/Frrがリッチ側からリーン側に変化し、O2センサ18の出力がリーン判定値VLと等しくなる時点(t1,t3等)で、目標空燃比A/Ftはリーン空燃比A/Flからリッチ空燃比A/Frに切り替えられる。触媒後空燃比A/Frrがリーン側からリッチ側に変化し、O2センサ18の出力がリッチ判定値VRとなる時点(t2等)で目標空燃比A/Ftはリッチ空燃比A/Frからリーン空燃比A/Flに切り替えられる。尚、VR>VLであり、例えばVR=0.59(V)、VL=0.21(V)である。
このような空燃比変化を行うアクティブ空燃比制御を実行しつつ、次のようにして触媒11の酸素吸蔵容量OSCが計測され、触媒11の劣化が判定される。
図3に示す時刻t1より前では目標空燃比A/Ftがリーン空燃比A/Flとされ、触媒11にはリーンガスが流入されている。このとき触媒11では酸素を吸収し続けているが、一杯に酸素を吸収した時点でそれ以上酸素を吸収できなくなり、リーンガスが触媒11を通り抜けて触媒11の下流側に流れ出す。こうなると触媒後空燃比A/Frrがリーン側に変化し、O2センサ18の出力電圧がリーン判定値VLに達した時点(t1)で、目標空燃比A/Ftがリッチ空燃比A/Frに切り替えられる。このように目標空燃比A/FtはO2センサ18の出力をトリガにして反転される。
図3に示す時刻t1より前では目標空燃比A/Ftがリーン空燃比A/Flとされ、触媒11にはリーンガスが流入されている。このとき触媒11では酸素を吸収し続けているが、一杯に酸素を吸収した時点でそれ以上酸素を吸収できなくなり、リーンガスが触媒11を通り抜けて触媒11の下流側に流れ出す。こうなると触媒後空燃比A/Frrがリーン側に変化し、O2センサ18の出力電圧がリーン判定値VLに達した時点(t1)で、目標空燃比A/Ftがリッチ空燃比A/Frに切り替えられる。このように目標空燃比A/FtはO2センサ18の出力をトリガにして反転される。
そして、今度は触媒11にリッチガスが流入されることとなる。このとき触媒11では、それまで吸蔵されていた酸素が放出され続ける。触媒11から酸素が放出され続けると、やがて触媒11からは全ての吸蔵酸素が放出され尽くし、その時点でそれ以上酸素を放出できなくなり、リッチガスが触媒11を通り抜けて触媒11の下流側に流れ出す。こうなると触媒後空燃比A/Frrがリッチ側に変化し、O2センサ18の出力電圧がリッチ判定値VRに達した時点(t2)で、目標空燃比A/Ftがリーン空燃比A/Flに切り替えられる。
酸素吸蔵容量OSCが大きいほど、酸素を吸収或いは放出し続けることのできる時間が長くなる。つまり、触媒が劣化していない場合は目標空燃比A/Ftの反転周期(例えばt1からt2までの時間)が長くなり、触媒の劣化が進むほど目標空燃比A/Ftの反転周期は短くなる。
そこで、このことを利用して酸素吸蔵容量OSCが以下のようにして計測される。図4に示すように、時刻t1で目標空燃比A/Ftがリッチ空燃比A/Frに切り替えられた直後、僅かに遅れて実際値としての触媒前空燃比A/Ffrがリッチ空燃比A/Frに切り替わる。そして触媒前空燃比A/Ffrが理論空燃比A/Fsに達した時点t11から、次に目標空燃比A/Ftが反転する時点t2まで、次式(1)により、所定の微小時間毎の酸素吸蔵容量dOSC(酸素吸蔵容量の瞬時値)が算出され、且つこの微小時間毎の酸素吸蔵容量dOSCが時刻t11から時刻t2まで積算される。こうしてこの酸素放出サイクルにおける酸素吸蔵容量即ち放出酸素量が計測される。
ここで、Qは燃料噴射量であり、空燃比差ΔA/Fに燃料噴射量Qを乗じるとストイキに対し不足又は過剰分の空気量を算出できる。Kは空気に含まれる酸素割合(約0.23)を表す定数である。
基本的には、この1回で計測された酸素吸蔵容量OSCを用い、これを所定の劣化判定値OSCsと比較し、酸素吸蔵容量OSCが劣化判定値OSCsを超えていれば正常、酸素吸蔵容量OSCが劣化判定値OSCs以下ならば劣化、というように触媒の劣化を判定できる。精度を向上させるため、目標空燃比A/Ftがリーン側となっている酸素吸蔵サイクルでも同様に酸素吸蔵容量(この場合酸素吸蔵量)を計測し、これら酸素吸蔵容量の平均値を1吸放出サイクルに係る1単位の酸素吸蔵容量として計測することもできる。そしてさらに、吸放出サイクルを複数回繰り返し、複数単位の酸素吸蔵容量の値を得、その平均値を最終的な酸素吸蔵容量計測値とし、劣化判定値と比較して、最終的な劣化判定を行うこともできる。なお、触媒が劣化と判定されたときにはその事実をユーザ(ドライバ)に告知するため、図示しない警告装置(チェックランプ等)を作動させるのが好ましい。
酸素吸蔵サイクルにおける酸素吸蔵容量(酸素吸蔵量)の計測については、図4に示すように、時刻t2で目標空燃比A/Ftがリーン空燃比A/Flに切り替えられた後、触媒前空燃比A/Ffrが中心空燃比A/Fcに達した時点t21から、次に目標空燃比A/Ftがリッチ側に反転する時点t3まで、前式(1)により微小時間毎の酸素吸蔵容量dOSCが算出され、且つこの微小時間毎の酸素吸蔵容量dOSCが積算される。こうしてこの酸素吸収サイクルにおける酸素吸蔵容量OSC即ち吸蔵酸素量(図4のOSC2)が計測される。前回サイクルの酸素吸蔵容量OSC1と今回サイクルの酸素吸蔵容量OSC2とはほぼ等しい値となるはずである。
次に、燃料中の硫黄濃度を考慮した触媒劣化診断について図5ないし図8を参照して説明する。
ここで、図5は触媒11の上流の空燃比をアクティブ制御によりリッチとリーンの間で切り替えたときの空燃比センサ及びO2センサの出力波形例を示すグラフであって、(1)が高硫黄燃料、(2)が低硫黄燃料の場合である。
アクティブ制御時のO2センサ18の出力波形は、図5(B)からわかるように、燃料の硫黄濃度が高い高硫黄燃料(1)の場合には、一端リッチ側にピーキーな出力波形(最大値)をとり、その後若干リーン側にシフトして(落ち込んで)、略定常状態となる定常値をとり、その後しばらくしてリーン出力となる。
燃料の硫黄濃度が低い低硫黄燃料(2)の場合には、リーンからリッチ、リッチからリーンと単純に変化する波形となるが、これと比べると、高硫黄燃料(1)の場合の出力波形は、特有の波形形状を有している。
高硫黄燃料(1)の場合に、O2センサ18の出力波形がリッチ出力後にリーン側にシフトする理由は、触媒11上の酸素を吸蔵する部分が硫黄で覆われ、吸蔵されずに触媒11上をすり抜けるリーンガスが低硫黄燃料(2)の場合と比べて多いためであり、O2センサ18の出力がリーン反転するまでには至らない程度のガス濃度であるためと考えられる。すなわち、A/Fのリーン制御により、触媒11に流入してきたO2は、触媒11に吸蔵されるが、硫黄が存在する場合には、硫黄により反応が鈍ることで吸蔵しきれないO2が触媒11の下流のO2センサ18に達するため、リッチ側に最大値をとり、その後若干リーン側に落ち込んで略定常値をとると考えられる。
本実施形態では、この高硫黄燃料(1)に特有の出力波形形状を検出することにより、燃料の硫黄濃度を判別する。
ここで、図5は触媒11の上流の空燃比をアクティブ制御によりリッチとリーンの間で切り替えたときの空燃比センサ及びO2センサの出力波形例を示すグラフであって、(1)が高硫黄燃料、(2)が低硫黄燃料の場合である。
アクティブ制御時のO2センサ18の出力波形は、図5(B)からわかるように、燃料の硫黄濃度が高い高硫黄燃料(1)の場合には、一端リッチ側にピーキーな出力波形(最大値)をとり、その後若干リーン側にシフトして(落ち込んで)、略定常状態となる定常値をとり、その後しばらくしてリーン出力となる。
燃料の硫黄濃度が低い低硫黄燃料(2)の場合には、リーンからリッチ、リッチからリーンと単純に変化する波形となるが、これと比べると、高硫黄燃料(1)の場合の出力波形は、特有の波形形状を有している。
高硫黄燃料(1)の場合に、O2センサ18の出力波形がリッチ出力後にリーン側にシフトする理由は、触媒11上の酸素を吸蔵する部分が硫黄で覆われ、吸蔵されずに触媒11上をすり抜けるリーンガスが低硫黄燃料(2)の場合と比べて多いためであり、O2センサ18の出力がリーン反転するまでには至らない程度のガス濃度であるためと考えられる。すなわち、A/Fのリーン制御により、触媒11に流入してきたO2は、触媒11に吸蔵されるが、硫黄が存在する場合には、硫黄により反応が鈍ることで吸蔵しきれないO2が触媒11の下流のO2センサ18に達するため、リッチ側に最大値をとり、その後若干リーン側に落ち込んで略定常値をとると考えられる。
本実施形態では、この高硫黄燃料(1)に特有の出力波形形状を検出することにより、燃料の硫黄濃度を判別する。
ここで、図6に示すように、高硫黄燃料(1)に特有の出力波形形状の特徴を表すパラメータを定義する。
図6(B)において、OXSMAXは、(A)に示す目標空燃比(A/F目標)がリーン反転している間のO2センサ18の出力の最大値(ピーク値)である。
OXSMIDは、A)に示す目標空燃比(A/F目標)がリーン反転している間に、O2センサ18の出力がOXSMAXからリーン側へ低下して略定常状態に保持される定常値である。
ΔOXSは、OXSMAXとOXSMIDとの差である。本実施形態では、このΔOXSが所定の閾値よりも大きいことが、高硫黄燃料と判断する条件(A)とする。
図6(C)において、diff1,diff2,diff3は、O2センサ18の出力の偏差(微分)値であり、リーン反転中にdiff1となり、その後、O2センサ18の出力がリーン側にシフトする際にマイナス(diff2)となり、その後、リーン出力への低下の傾きが小さくなるので、diff3はdiff2よりも大きな値となる。
本実施形態では、diff1>diff2かつdiff2<diff3の条件を満たすことが、高硫黄燃料の出力波形形状の特徴を有している条件(B)とする。
図6(B)において、OXSMAXは、(A)に示す目標空燃比(A/F目標)がリーン反転している間のO2センサ18の出力の最大値(ピーク値)である。
OXSMIDは、A)に示す目標空燃比(A/F目標)がリーン反転している間に、O2センサ18の出力がOXSMAXからリーン側へ低下して略定常状態に保持される定常値である。
ΔOXSは、OXSMAXとOXSMIDとの差である。本実施形態では、このΔOXSが所定の閾値よりも大きいことが、高硫黄燃料と判断する条件(A)とする。
図6(C)において、diff1,diff2,diff3は、O2センサ18の出力の偏差(微分)値であり、リーン反転中にdiff1となり、その後、O2センサ18の出力がリーン側にシフトする際にマイナス(diff2)となり、その後、リーン出力への低下の傾きが小さくなるので、diff3はdiff2よりも大きな値となる。
本実施形態では、diff1>diff2かつdiff2<diff3の条件を満たすことが、高硫黄燃料の出力波形形状の特徴を有している条件(B)とする。
ここで、図7は、ECU20による燃料中の硫黄濃度を考慮した触媒劣化検出処理の一例を示すフローチャートである。尚、図7に示す処理は、例えば、所定時間毎に繰り返し実行される。
先ず、所定の触媒劣化検出を実行する条件が成立しているかを判断し(ステップS1)、成立している場合には、空燃比アクティブ制御を開始する(ステップS2)。
先ず、所定の触媒劣化検出を実行する条件が成立しているかを判断し(ステップS1)、成立している場合には、空燃比アクティブ制御を開始する(ステップS2)。
そして、O2センサ18の出力波形から、OXSMAX,OXSMID,diff1,diff2,diff3を取得し、先ず上記条件(A)の判別をする。すなわち、ΔOXS=OXSMAX−OXSMIDと所定の閾値とを比較し(ステップS3)、ΔOXSが所定の閾値以下の場合には、使用燃料が高硫黄燃料ではない(低硫黄燃料)と判別する(ステップS6)。
ΔOXSが所定の閾値より大きい場合には、上記条件(B)の判別、すなわち、diff1>diff2かつdiff2<diff3の条件を満たすかを判断する(ステップS4)。
diff1>diff2かつdiff2<diff3の条件を満たす場合には、使用燃料が高硫黄燃料と判別する(ステップS5)。この条件を満たさない場合には、使用燃料が高硫黄燃料ではない(低硫黄燃料)と判別する(ステップS6)。
diff1>diff2かつdiff2<diff3の条件を満たす場合には、使用燃料が高硫黄燃料と判別する(ステップS5)。この条件を満たさない場合には、使用燃料が高硫黄燃料ではない(低硫黄燃料)と判別する(ステップS6)。
使用燃料が高硫黄燃料と判別した場合には、この後の処理の触媒劣化判断に用いる補正量を算出する(ステップS7)。この補正量は、触媒劣化判断に用いる酸素吸蔵容量または触媒劣化を判断するための判定値を補正するためのものである。尚、この補正量については後述する。
次いで、ステップS5、S6における判別結果を考慮して、触媒劣化を判断する(ステップS8)。触媒劣化の判断は、基本的には、図8に示すように、触媒上流空燃比のアクティブ制御時の触媒11の酸素吸蔵容量(OSC)に基いて判断する。すなわち、計測した触媒11のOSCと異常判定値JVとを比較し、OSCが異常判定値JVよりも大きい場合には、正常判定とし、異常判定値JV以下の場合には異常判定とする。
ここで、使用燃料が高硫黄燃料の場合には、図8に示すように、そのOSCの値OSC_Hは、使用燃料が低硫黄燃料の場合のOSCの値OSC_Lと比べて小さくなる。
本実施形態では、触媒劣化の判断への硫黄濃度の影響を省くために、硫黄濃度の判別結果に応じて、触媒劣化判断に用いるOSCまたは触媒劣化を判断するための異常判定値JVをステップS7で算出した補正量で補正する。
本実施形態では、触媒劣化の判断への硫黄濃度の影響を省くために、硫黄濃度の判別結果に応じて、触媒劣化判断に用いるOSCまたは触媒劣化を判断するための異常判定値JVをステップS7で算出した補正量で補正する。
使用燃料が高硫黄燃料と判別された場合には、例えば、測定されたOSCに所定の補正量α1を掛け合わせて低硫黄燃料と同等の値に補正する。あるいは、測定されたOSCに所定の補正量α2を足し合わせて低硫黄燃料と同等の値に補正する。
硫黄濃度の影響を省くための他の補正方法として、使用燃料が高硫黄燃料と判別された場合には、例えば、異常判別値JVから所定の補正量β1を引いて新たな異常判別値JV1に引き下げる、あるいは、異常判別値JVに所定の補正量β2を掛け合わせて新たな異常判別値JV1に引き下げることが考えられる。
上記実施形態では、硫黄濃度が高いか低いかを判別したが、これに限定されるわけではなく、硫黄濃度を段階的に判別することも可能であり、この場合には、測定されたOSC又は異常判別値を補正する場合に、補正量は硫黄濃度に応じて変える構成とすることが可能である。
1…内燃機関
6…排気管
11…触媒
12…インジェクタ
14…クランク角センサ
15…アクセル開度センサ
17…空燃比センサ
18…O2センサ
20…電子制御ユニット(ECU)
6…排気管
11…触媒
12…インジェクタ
14…クランク角センサ
15…アクセル開度センサ
17…空燃比センサ
18…O2センサ
20…電子制御ユニット(ECU)
Claims (3)
- 内燃機関の排気通路に配置された触媒の劣化を診断する内燃機関の触媒劣化診断装置であって、
燃料中の硫黄濃度を判別する硫黄濃度判別手段と、
前記硫黄濃度判別手段の判別結果を考慮して触媒劣化を判断する触媒劣化判断手段と、を有し、
前記硫黄濃度判別手段は、触媒上流の空燃比をアクティブ制御によりリッチからリーンに切り替えたときの、触媒下流の酸素センサの出力値のリッチ側最大値
と、このリッチ側最大値からリーン側へ値が落ち込んでほぼ定常状態となったときの定常値との差に基づいて、燃料中の硫黄濃度を判別する、
ことを特徴とする内燃機関の触媒劣化診断装置。 - 前記硫黄濃度判別手段は、燃料中の硫黄濃度を判別する際に、前記リッチ側最大値と定常値との差に加えて、前記触媒下流の酸素センサの出力波形形状が高硫黄燃料特有の形状をとるか否かを判断する、
ことを特徴とする請求項1に記載の触媒劣化診断装置。 - 前記触媒劣化判断手段は、触媒上流空燃比のアクティブ制御時の触媒の酸素吸蔵容量に基いて触媒劣化を判断し、
前記硫黄濃度判別手段の判別結果に応じて、触媒劣化判断に用いる酸素吸蔵容量または触媒劣化を判断するための判定値を補正する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の触媒劣化診断装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007306443A JP2009127597A (ja) | 2007-11-27 | 2007-11-27 | 触媒劣化診断装置 |
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Family Applications (1)
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012031762A (ja) * | 2010-07-29 | 2012-02-16 | Toyota Motor Corp | 触媒異常診断装置 |
US8649956B2 (en) | 2010-05-20 | 2014-02-11 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Apparatus for acquiring responsibility of oxygen concentration sensor |
US8670917B2 (en) | 2009-10-06 | 2014-03-11 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Air-fuel-ratio imbalance determination apparatus for internal combustion engine |
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KR20190068971A (ko) * | 2017-12-11 | 2019-06-19 | 현대자동차주식회사 | 배기가스 후처리 시스템 및 이의 제어 방법 |
-
2007
- 2007-11-27 JP JP2007306443A patent/JP2009127597A/ja active Pending
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