JP2009127071A - 厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法 - Google Patents

厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】API5LX70以上で、板厚20mm以上のUOEまたはプレスベンド法によるラインパイプ用鋼管用素材の製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.03〜0.09%、Si:0.01〜0.50%、Mn:1.0〜3.0%、P、S、sol.Al:0.003〜0.100%、B:0.0005%以下、Nb:0.005〜0.1%、Ti:0.005〜0.05%、を含有し、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Ca、Mg、REM、Zrの1種または2種以上を含有し、Ceq:0.36〜0.60、残部Feおよび不可避的不純物の鋼素材を、1000℃以上1250℃以下に加熱し、再結晶温度域において圧延後、未再結晶温度域において累計圧下率40%以上の一次圧延を実施した後、Ar点以上の温度から再結晶温度以上に2℃/sec以上の昇温速度で加熱後、Ar点以下Ar点−50℃以上の温度に冷却後圧延を再開し、2相温度域において累計圧下率15%以上の二次圧延実施し、Ar点以上の温度から600℃以下に加速冷却する。
【選択図】なし

Description

本発明は、靭性に優れた鋼材の製造方法に関し、特に、強度レベルがAPI−5L X70以上で、板厚20mm以上のUOEまたはプレスベンド法によって製造されるラインパイプ用鋼管用素材の製造方法として好適なものに関する。
天然ガス供給地の遠隔化に伴い、天然ガス輸送用パイプラインの長距離化が進み、輸送効率のための操業圧増加を考慮し、ラインパイプの管厚を増大したり、高強度グレードを採用する設計が進められ、厚肉高強度ラインパイプの需要が高まっている。
天然ガス輸送用パイプラインの場合は、脆性亀裂伝播防止の観点から、DWTT(Drop Weight Tear Test)と呼ばれる試験における延性破面率(SA(%))の値が高いことが望まれている。
一般に、鋼板の強度や板厚が増加すると、靭性は低下する傾向にあるため、厚鋼板の靭性を向上させる技術として、制御圧延や制御冷却、さらには、直接焼入れ−焼戻し技術などTMCP技術、また圧延後に行うオンラインの熱処理技術が開発されてきた。
靭性の向上には、結晶粒の微細化が有効であることが従来から知られており、様々な検討がなされている。合金設計や圧延時の加熱温度や圧延温度などの調整による細粒化の場合、現状、圧延−冷却で得られる厚鋼板のγ粒径は20〜30μm程度が限界である。
上記粒径は、圧延後の再加熱焼入れなどで得られる結晶粒径に比べても大きく、圧延−冷却ままあるいは、圧延−冷却−焼戻しプロセスでの靭性の向上には限界があり、特に20mmを超える厚肉材の場合、DWTT試験時のSA値を満足させることは難しい。
厚鋼板の細粒化を促進させる手法として、例えば、特許文献1に、熱間圧延の各パス圧下時の歪速度をコントロールして1パス圧下率を増大させ、動的再結晶により、γ粒径を微細化する手法が開示されている。
特開平08−225883号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法は圧延能率が著しく低下するので、ラインパイプ材などの量産材の生産には適用できず、生産性を損なわない実用的な厚板製造プロセスを用いて靭性を向上させるための新たな微細粒化技術の開発が要望されている。
そこで、本発明は、ラインパイプ用鋼管用素材の製造方法として好適な圧延−加速冷却ままプロセスを用いて、従来材を遥かに凌ぐγ粒の微細化を達成し、γ+αの2相域圧延によってDWTT試験時の脆性破面発生を抑制する鋼の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するため、γ粒径に及ぼす圧延時の加熱・冷却・圧下パターンに着目して鋭意検討し、再結晶温度域圧延後、未再結晶域圧延を行い、再度、再結晶温度域へ急速加熱した場合、微細なγが得られ、その後の圧延・冷却条件の組合せにより、優れた靭性と高強度が得られることを見いだした。
すなわち、1.圧延時の加熱温度と再結晶域圧延により初期γ粒径の粗大化を防止して均一なγ粒を得、その後の未再結晶域圧延の累積圧下率を確保し、変態をさせずにAr以上の温度から再結晶温度域に短時間で加熱することにより微細な再結晶γが得られること、2.さらにその後、微細なγ粒に対してγ+αの2相温度域で圧延を行うことにより、組織の微細化が図られ、加速冷却後に優れた強度・靭性が得られることを見出した。
本発明の要旨は次のとおりである。
1.質量%で、C:0.03〜0.09%、
Si:0.01〜0.50%、
Mn:1.0〜3.0%、
P:0.030%以下、
S:0.010%以下、
sol.Al:0.003〜0.100%、
B:0.0005%以下、
Nb:0.005〜0.1%、
Ti:0.005〜0.05%
を含有し、さらに、
Cu:0.01〜1.0%、
Ni:0.01〜2.0%、
Cr:0.01〜1.0%、
Mo:0.01〜1.0%、
V:0.003〜0.1%
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、
さらに、下記(1)式で計算されるCeq値が0.36〜0.60であり、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を、
1000℃以上1250℃以下に加熱し、再結晶温度域において圧延後、未再結晶温度域において累計圧下率40%以上の圧延を行う一次圧延を実施し、その後、Ar変態点以上の温度から再結晶温度以上に2℃/sec以上の昇温速度で加熱後、Ar変態点以下Ar変態点−50℃以上の温度に冷却してから圧延を再開し、2相温度域において累計圧下率15%以上の圧延を行う二次圧延を実施し、さらに、Ar変態点以上の温度から600℃以下に加速冷却する工程を有することを特徴とする厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法。
Ceq(%)=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5 (1)
各元素は質量%での値とする。
2.前記鋼素材は、さらに、
Ca:0.0001〜0.0060%、
Mg:0.0001〜0.0060%、
REM:0.0001〜0.0200%、
Zr:0.0001〜0.0100%
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする、1記載の厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法。
3.一次圧延において、未再結晶温度域で累積圧下率40%以上の圧延を行う前に、再結晶温度域圧延中または圧延後に水冷を実施し、未再結晶温度域まで冷却する工程を有することを特徴とする、1または2に記載の厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法。
4.一次圧延後、Ar変態点以上の温度から再結晶温度域に加熱後に得られる再結晶後平均γ粒径が15μm以下であることを特徴とする、1乃至3の何れか一つに記載の厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法。
5.1乃至4の何れか一つに記載の方法により製造され、再結晶後平均γ粒径が15μm以下、降伏強度485MPa以上および引張強度565MPa以上で、−40℃におけるシャルピー吸収エネルギーが300J以上かつDWTT試験で得られた延性破面率SA値が90%以上、板厚20mm以上であることを特徴とするラインパイプ用鋼管用素材。
本発明によれば、圧延−加速冷却ままプロセスを用いて、従来材と比較して、DWTT試験における85%SAが得られる温度(SATT)が20℃以上低温となる優れた靭性を備えた、20mmを超える厚肉材が生産性を損なわずに得られ、産業上極めて有用である。
本発明は、再結晶域圧延後に累積圧下率40%以上の未再結晶域圧延を行い、その後、再度、再結晶温度域へ急速加熱を行うことにより、急速加熱ままで15μm以下のγ粒径とし、その後のγ+αの2相域で15%以上の圧延を行い圧延中に変態生成するフェライトのさらなる微細化を行うことを特徴とする。以下、本発明を詳細に説明する。尚、成分組成における%は質量%とする。
[成分組成]
C:0.03〜0.09%
CはAPIX70以上の強度を確保するため、少なくとも0.03%は必要である。一方、0.09%を越えて添加すると加速冷却後に形成される硬質相がマルテンサイトとなり、母材シャルピー吸収エネルギーが低下するため、0.03%以上、0.09%以下(以下、0.03〜0.09%)とする。
Si:0.01〜0.50%
Siは脱酸に必要な元素であるが、0.01%未満ではその効果は少なく、0.50%を越えて添加すると溶接性および母材シャルピー吸収エネルギーを著しく低下させるため、0.01〜0.50%とする。
Mn:1.0〜3.0%
MnはCと同様に鋼板の強度を確保するために必要であり、特にAPIX70以上の強度を確保するためには1.0%以上は必要である。一方、3.0%を超えて添加すると鋳造時に不可避的に形成される偏析部に特に濃化し、その部分がDWTT特性劣化の原因となるため、1.0〜3.0%とする。
P:0.030%以下、S:0.010%以下
P、Sは不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であり、鋼母材や、溶接熱影響部の靭性を劣化させるため、経済性を考慮して可能な範囲で低減する事が好ましく、P:0.030%以下、S:0.010%以下とする。
Al:0.003〜0.100%
Alは脱酸元素であり、0.003%未満ではその効果は十分ではなく、過剰に添加すると靭性の劣化をもたらすため、0.003〜0.100%以下とする。尚、Alはsol.Alとする。
B:0.0005%以下
Bは不純物として鋼中に含有されることがあり、特に0.0005%以上含まれていると、熱間圧延時にγ粒界に偏析し、粒界からのフェライト変態を抑制する働きをする。本願では、後述するように、微細γ粒をさらにγ+αの2相域にて圧延することで圧延中に変態生成するフェライトをも微細化しDWTT特性の向上を図るものであるから、過剰のBが存在するとこの効果が十分得られなくなるため、Bの上限を0.0005%とする。
Nb:0.005〜0.1%
Nbはオーステナイト未再結晶温度域を高温側に拡大する働きをするため、後述するオーステナイト未再結晶温度域での40%以上の累計圧下率を十分確保するために、少なくとも0.005%以上添加する必要がある。また、同時に焼入れ性向上効果があり、加速冷却後の第2相組織を変態強化するが、0.1%以上添加されていると第2相組織が硬くなりすぎて、母材シャルピー吸収エネルギーの低下をもたらすため、0.005〜0.1%とする。
Ti:0.005〜0.05%
Tiは鋼中で窒化物を形成し、特に0.005%以上添加されていると、窒化物のピンニング効果でγ粒の粗大化を防ぐ働きをするため母材の靭性確保や溶接熱影響部での靭性確保の観点で有効である。0.05%を超えて添加すると靭性の著しい低下をもたらすため、0.005〜0.05%とする。
本発明では、強度調整の観点からCu,Ni,Cr,Mo,Vの1種または2種以上を選択元素として添加する。
Cu:0.01〜1.0%
Cuは強度を増加させるための元素で0.01%以上でその効果を発揮し、1.0%を超えて添加すると熱間脆性により鋼板表面の性状を劣化するため、添加する場合は、0.01〜1.0%とする。
Ni:0.01〜2.0%
Niは母材の強度を増加させつつ靭性も向上させることが可能であり、0.01%以上で効果を発揮するが、2.0%を超えると効果が飽和し経済的を損なうため、添加する場合は、0.01〜2.0%とする。
Cr:0.01〜1.0%
Crは強度を増加するのに有効であり、0.01%以上でその効果を発揮し、1.0%を越えて添加すると靭性を劣化させるため、添加する場合は、0.01〜1.0%とする。
Mo:0.01〜1.0%
Moは強度を増加するのに有効であり、0.01%以上でその効果を発揮し、1.0%を越えて添加すると著しく靭性を劣化させるとともに経済性を損なうため、添加する場合は、0.01〜1.0%とする。
V:0.003〜0.1%
Vは炭化物形成により強度を増加するのに有効であり、0.003%以上の添加で効果を発揮する。ただし、0.1%を越えると過剰な炭化物量となり靭性の低下を招くおそれがあるため、添加する場合は、0.003〜0.1%とする。
Ceq(%):0.36〜0.60
Ceq(%)=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5)、各元素は含有量(質量%)とし、板厚25mmの鋼板でAPIX70以上の強度を達成するため、0.36以上とする。一方、Ceq(%)が0.60を超えるような添加を行った場合、溶接性が劣化し特にパイプの円周溶接時の低温割れを防止できなくなるため、上限を0.60とする。尚、添加しない元素は0とする。
本発明の基本成分組成は以上であるが、必要に応じて、Ca:0.0001〜0.0060%、Mg:0.0001〜0.0060%、REM:0.0001〜0.0200%、Zr:0.0001〜0.0100%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することができる。
Ca,Mg,REM,Zrは鋼中のSを固定して鋼板の靭性を向上させる働きがあり、0.0001%以上の添加で効果がある。一方、それぞれ0.0060%、0.0060%、0.0200%、0.0100%を越えて添加すると鋼中の介在物量が増加し靭性を劣化させるようになる。従って、添加する場合は、Ca:0.0001〜0.0060%、Mg:0.0001〜0.0060%、REM:0.0001〜0.0200%、Zr:0.0001〜0.0100%とする。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
[製造条件]
上記組成を有する溶鋼を、転炉、電気炉等の溶製手段で常法により溶製し、連続鋳造法または造塊〜分塊法等で常法によりスラブ等の鋼素材とする。なお、溶製方法、鋳造法については上記した方法に限定されるものではない。その後、所望の形状に特定の条件で圧延し、圧延中または圧延後に、特定の条件で冷却および加熱を行う。
1.スラブ加熱
鋳造後、スラブ温度が室温まで低下してからあるいは高温の状態で、加熱炉に挿入して1000℃以上に加熱する。
加熱温度は、靭性確保の観点からはより低温が好ましいが、1000℃未満ではスラブ厚中央の未厚着ザクが残存して1/2t性能を劣化させる可能性があり、また、Nb,Vなどを十分に固溶させるため、1000℃以上とする。
一方、1250℃を超える温度に加熱すると初期γ粒が粗大化し、靭性が劣化するので、上限を1250℃とする。
圧延は、Ar以上で行う圧延(1次圧延)と、γ+αの2相域で行う圧延(2次圧延)とし、1次圧延後、急速加熱して再度、再結晶温度域まで加熱後、冷却して、2次圧延を行う。
2.1次圧延
1次圧延は、スラブ等の鋼素材を、所望の形状とするために行い、再結晶域温度で1パス以上の圧下を行い、引き続き、未再結晶温度域で累積圧下率40%以上の圧延を行う。
再結晶域圧延は加熱時のγ粒をある程度まで均一微細化するのに必要であり、1パス以上、好ましくは累積で20%以上の圧下を行う。
未再結晶域圧延は、圧下率が小さいと、その後に再結晶域まで再加熱する急速加熱後のミクロ組織微細化効果が発揮できないため、40%以上確保する。圧下率は高い方が好ましいが、工業的には80%程度が上限となる。
また、再結晶域圧延後、未再結晶域圧延開始温度まで、自然放冷(空冷)で待ってもよいが、再結晶域圧延中あるいは圧延後に水冷し、未再結晶域圧延開始までの待ち時間を短縮することが、効率的にも、また、再結晶γの成長を抑制する効果の点からも好ましく、微細化により有効である。
3.1次圧延後急速加熱
未再結晶域圧延の後、Ar変態点以上の温度域から、再結晶温度域までを2℃/sec以上の昇温速度で加熱する。加熱方法は特に限定しないが、高周波加熱装置が好ましい。加熱後、特に保持などは行う必要はない。
加熱開始温度がAr変態点を下回ると、フェライト変態が起こり、再加熱時に逆変態によりγは微細化される。しかし、その後の加熱時の加熱温度代が大きくなり効率および経済性が損なわれるとともに、Nb炭化物などの析出・粗大化が促進され、混粒組織となりやすいとともに靭性低下の原因となる。
従って、Ar変態点以上の温度から昇温を開始する。加熱温度は再結晶温度以上が必要で、再結晶温度+100℃以下の低温が好ましい。温度が高くなるとγ粒が成長し、γ粒の微細化効果が得られないためである。
昇温速度は、2℃/sec以上とする。2℃/sec以下では、再結晶の前に加工組織の回復や、NbやTiなどの炭化物の加工誘起析出が起こり、靭性が劣化する。加熱後の保持は行ってもよいが、再結晶が完了するとその後粒成長が起こるため、必要以上の保持は行うべきではなく、短時間が好ましい。
スラブ加熱温度で初期γ粒を制御した上で未再結晶域圧延の累積圧延率を確保し、再結晶温度域に急速に再加熱することにより、γの微細化が達成されるため、平均粒径15μm以下や10μm以下のγ粒が得られる。本発明では再結晶後のγ粒の平均粒径を再結晶後平均γ粒径と称する。
4.2次圧延
再結晶域に急速加熱後、γ+αの2相域まで冷却して行う圧延(2次圧延)は、累積圧下率15%以上とする。まず、再結晶域までの急速加熱によって15μm以下までγ粒が細粒化した鋼板を、γ+αの2相域に空冷または水冷してから圧延を再開するが、圧延を再開する温度がAr変態点を上回るの場合、十分な2相域圧延を行うことができず、逆に、圧延を再開する温度がAr変態点−50℃を下回る場合、圧延荷重が著しく上昇して圧延できなくなることから、圧延を再開する温度を、Ar変態点以下、Ar変態点−50℃以上とする。その後、累計で少なくとも15%以上の圧下率の圧延を行うと、圧延中に変態生成したフェライト粒が微細化され、DWTT特性が向上する。
累積圧下率は、板厚中央にわたりフェライト粒の微細化効果を得るため、20%以上とすることが好ましい。
5.加速冷却
加速冷却は、APIX70以上の強度を確保するため、第2相をベイナイト組織化することが目的で、冷却開始温度をAr変態点以上、冷却停止温度を600℃以下とする。Ar変態点以下の温度から冷却開始した場合、圧延終了から加速冷却開始までの間に、圧延で微細化されないフェライトが変態生成し、これらのフェライトは十分細粒化されないことからDWTT特性が劣化する。
一方、冷却停止温度が600℃以上の場合、第2相がパーライトとなり、APIX70以上の強度を確保することが難しくなる。冷却速度は、10℃/secの強冷却が好ましい。
以上の説明において、鋼材温度は、鋼材の表面と中心部の平均温度とする。再結晶温度やAr、Ar変態点は成分によって異なり、本願で規定する鋼の化学組成の範囲内では、再結晶温度(再結晶を起こす限界温度)は概ね800〜950℃の範囲に、Ar変態点は概ね700〜800℃の範囲に、Ar変態点は概ね600〜700℃の範囲にある。
表1に示す組成の鋳片を、表2に示す熱間圧延条件により20〜38mm厚の厚鋼板とした。
Figure 2009127071
Figure 2009127071
表1において、鋼種No.G,H,I,J,K,Lの供試鋼は成分組成のいずれかが本発明範囲外となっている。
得られた厚鋼板について、API−5Lに準拠した全厚引張試験片を採取し、引張試験を実施し、降伏強度、引張強度および降伏比(降伏強度と引張強度の比)を求めた。
シャルピ−衝撃試験は、板厚方向1/4の位置からJIS Z 2202(1998改訂版)に準拠したVノッチ標準寸法のシャルピ−衝撃試験片を採取して、JIS Z 2242(1998改訂版)に準拠して−40℃でシャルピー衝撃試験を実施し、吸収エネルギーを求めた。
また、API−5Lに準拠したDWTT試験片を採取し、−40℃で試験を行い、SA値を求めた。
未再結晶域圧延後、再結晶後平均γ粒径は、表2の圧延条件のうち、再加熱までの工程は同一で、再加熱後10秒の保持時間経過後、水焼入した鋼板の一部からγ粒径測定用小型圧延試料を採取した。
当該試料の板厚1/4位置よりミクロ組織観察用試料を採取し、試料の板厚方向断面を鏡面研磨ののちピクリン酸エッチング処理を行ってから、光学顕微鏡を用いて400〜1000倍の範囲でγ粒界が見える写真を撮影し、画像解析にてその平均粒径を算出した。
表3に、調査した厚鋼板の再結晶後平均γ粒径および機械的性質を示す。
本実施例において、本発明範囲は、APIX70の下限降伏強度485MPaおよび下限引張強度565MPa以上、−40℃におけるシャルピー吸収エネルギーが300J以上かつDWTT試験で得られた延性破面率SA値が90%以上とする。
Figure 2009127071
本発明に適合した発明例No.1〜9は、いずれも再結晶後平均γ粒径が15μm以下となっており、かつ、APIX70の下限降伏強度485MPaおよび下限引張強度565MPaを上回る高強度を達成しており、さらに、−40℃におけるシャルピー吸収エネルギーが300J以上かつDWTT試験で得られた延性破面率SA値が90%以上と優れた靭性が認められた。APIX70はAPI−5L X70を指すものとする。
一方、比較例10は、鋼の化学組成は適合しているものの、熱間圧延時の未再結晶域圧延後急速再加熱を行わずに引き続きγ+αの2相域圧延を実施し、以降加速冷却を行ったため、再結晶後平均γ粒径が本発明の範囲を超える粗いサイズとなっており、その結果シャルピー吸収エネルギーおよびDWTT試験のSA値が低い値となった。
比較例11は、未再結晶域圧延後の再加熱における加熱速度が本発明の範囲より遅く、再加熱中にγ粒が一部回復現象を起こし、再加熱時の再結晶が不十分であったため、再結晶後平均γ粒が粗く、シャルピー吸収エネルギーおよびDWTT試験のSA値が低い値となった。
比較例12は、未再結晶域圧延時の累計圧下率が本発明の下限を下回り、再加熱時にγが再結晶するのに十分な加工が加わらなかったため、再結晶後平均γ粒が粗く、同様にシャルピー吸収エネルギーおよびDWTT試験のSA値が低い値となった。
一方、比較例13は、再加熱処理後に実施した2相域圧延時の累計圧下率が本発明の下限を下回っていたため、再結晶後平均γ粒は細かいものの、その後のフェライトの微細化が十分でなく、DWTT試験のSA値が低い値となった。
比較例14は、加速冷却の冷却停止温度が本発明の上限を上回っていたため、第2相のベイナイト化が十分でなく、APIX70の強度の下限に届かなかった。
比較例15は、鋼のC量が本発明の下限を下回り、その結果Ceq値の下限も下回っていたため、同様に強度が低かった。
比較例16は、C量が本発明の上限を上回っていたため、APIX70以上の強度を示したものの、シャルピー吸収エネルギーが著しく低かった。
比較例17は、鋼のSi量が本発明の上限を上回っていたためシャルピー吸収エネルギーが低い値を示した。また、比較例18は、鋼のMn量が本発明の上限を上回っていたため、DWTT試験のSA値が著しく低かった。
比較例19は、鋼のB量が本発明の上限を上回っていたため、フェライト変態が抑制されて、2相域での圧延時にフェライトの微細化を十分に行うことができず、DWTT試験のSA値が低い値となった。
比較例20は、鋼のNb量が本発明の下限を下回っていたため、オーステナイト未再結晶温度域が狭く、累計圧下率を十分行っていても、圧延中に回復現象がおきてしまい、再結晶域への再加熱時のγ粒再結晶が十分でなく、粗い再結晶後平均γ粒であったため、シャルピー吸収エネルギーおよびDWTT試験のSA値が低い値となった。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.03〜0.09%、
    Si:0.01〜0.50%、
    Mn:1.0〜3.0%、
    P:0.030%以下、
    S:0.010%以下、
    sol.Al:0.003〜0.100%、
    B:0.0005%以下、
    Nb:0.005〜0.1%、
    Ti:0.005〜0.05%
    を含有し、さらに、
    Cu:0.01〜1.0%、
    Ni:0.01〜2.0%、
    Cr:0.01〜1.0%、
    Mo:0.01〜1.0%、
    V:0.003〜0.1%
    のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、
    さらに、下記(1)式で計算されるCeq値が0.36〜0.60であり、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を、
    1000℃以上1250℃以下に加熱し、再結晶温度域において圧延後、未再結晶温度域において累計圧下率40%以上の圧延を行う一次圧延を実施し、その後、Ar変態点以上の温度から再結晶温度以上に2℃/sec以上の昇温速度で加熱後、Ar変態点以下Ar変態点−50℃以上の温度に冷却してから圧延を再開し、2相温度域において累計圧下率15%以上の圧延を行う二次圧延を実施し、さらに、Ar変態点以上の温度から600℃以下に加速冷却する工程を有することを特徴とする厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法。
    Ceq(%)=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5 (1)
    各元素は質量%での値とする。
  2. 前記鋼素材は、さらに、
    Ca:0.0001〜0.0060%、
    Mg:0.0001〜0.0060%、
    REM:0.0001〜0.0200%、
    Zr:0.0001〜0.0100%
    のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1記載の厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法。
  3. 一次圧延において、未再結晶温度域で累積圧下率40%以上の圧延を行う前に、再結晶温度域圧延中または圧延後に水冷を実施し、未再結晶温度域まで冷却する工程を有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法。
  4. 一次圧延後、Ar変態点以上の温度から再結晶温度域に加熱後に得られる再結晶後平均γ粒径が15μm以下であることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一つに記載の厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法。
  5. 請求項1乃至4の何れか一つに記載の方法により製造され、再結晶後平均γ粒径が15μm以下、降伏強度485MPa以上および引張強度565MPa以上で、−40℃におけるシャルピー吸収エネルギーが300J以上かつDWTT試験で得られた延性破面率SA値が90%以上、板厚20mm以上であることを特徴とするラインパイプ用鋼管用素材。
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