JP2009123674A - 金属膜形成用の複合材料液及びそれを用いた金属化合物膜、金属/金属化合物膜、並びに複合材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】平均分散粒子径が500nm以下で、中心部が金属で表皮部が金属酸化物であるコア/シェル構造を有する金属微粒子を含む金属膜形成用の複合材料液である。前記の金属微粒子として、有機溶剤中に金属化合物を分散させる工程と、その後に、有機溶剤中の金属化合物にレーザー光を照射する工程とを含む一連の工程で生成されたものを必須成分として含むことが好ましい。
【選択図】なし
Description
従来この目的には、フレーク状の銀あるいは銅を熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂のバインダに有機溶剤、硬化剤、触媒などと共に混合した導電性ペーストが用いられてきた。この導電性ペーストの使用方法は、対象物にディスペンサやスクリーン印刷により塗布し、常温で乾燥するか、あるいは150℃程度に加熱してバインダ樹脂を硬化し、導電性被膜とすることで行われている。しかし、このような従来の導電性ペーストからなる導電性被膜形成用材料はバインダ樹脂を含むため、粒子の接触が阻害され低抵抗な膜を得ることが難しかった。また、従来の銀ペーストでは、銀粒子が粒径1〜100μmのフレーク状であるため、原理的にフレーク状銀粒子の粒径以下の線幅の配線を印刷することは不可能であった。このため、粒径が500nm以下の粒子を用いたインクが求められており、これらの点から、従来の導電性ペーストは微細な配線パターン形成には不適であった。
これらの銀や銅ペーストの欠点を克服するものとして金属ナノ粒子を用いた配線パターン形成方法が検討されており、金あるいは銀ナノ粒子を用いる方法は確立されている(例えば、特許文献2、3参照。)。具体的には、100nm以下の金あるいは銀ナノ粒子を含む分散液を利用した極めて微細な回路パターンの描画と、その後、金属ナノ粒子相互の焼結を施すことにより、得られる焼結体型配線層において、配線幅および配線間スペースが5〜50μm、体積固有抵抗率が1×10−8Ω・m以下の配線形成が可能となっている。
表1に、粒子表面を低分子処理剤により1分子層処理を行った場合の理論的な処理剤量を示した。粒径が100nmの粒子では処理剤の占める割合は8体積%もの量になる。さらに粒径の小さな粒子になれば表面処理剤の割合は多くなり、特に銅の酸化防止性を持たせた表面処理などではこの計算で用いたものより大きな分子が用いられることも考えられ、表面処理剤の占める割合はさらに大きなものとなる。この多量に含まれる表面処理剤を除くには多大なエネルギーが必要となり200℃以下での焼結は難しいのが現状である。
しかも、十分に取り除くことのできない表面処理剤や体積収縮によるクラックが原因となり、銅粒子の低温での低抵抗化に関してはまだ十分な解決法が見出されていない。
(1)平均粒子径が500nm以下で、中心部が金属で表皮部が金属酸化物であるコア/シェル構造を有する金属微粒子を含むことを特徴とする金属膜形成用の複合材料液。
本発明の金属膜形成用の複合材料液(以下、単に「複合材料液」と呼ぶ場合がある。)は、中心部が金属で表皮部が金属酸化物であるコア/シェル構造を有する金属微粒子を含み、該金属微粒子の平均粒子径が、第1の態様では500nm以下であり、第2の態様では200nm以下である。第1の態様と第2の態様とでは、金属微粒子の平均粒子径が異なるのみでそれ以外は同じである。以下に、まず、当該金属微粒子について説明するが、特に示さない限り、以下の説明は第1の態様及び第2の態様のいずれにも妥当する。
なお、上記金属微粒子の平均粒子径は、ベックマンコールター社製サブミクロン粒子アナライザーN5型(商品名)を用いて25℃で測定し得られる強度分布から求められる。
本発明の金属膜形成用の複合材料液は、インクジェット印刷法やオフセット印刷法などの印刷法による金属化合物膜の形成に用いられるものであり、第1の態様では、平均粒子径500nm以下で、中心部が金属で表皮部が金属酸化物であるコア/シェル構造を有する金属微粒子を含む粒子を含有する。最大粒径が500nmを超える粒子があってもよいが、最大粒径は2μm以下であると、インクジェット印刷での目詰まりの発生等がなく好ましい。コア/シェル構造を有する金属微粒子の平均粒子径が500nm以下であると、分散安定性に優れて好ましい。
また、第2の態様では、当該金属微粒子の平均粒子径が200nm以下であり、前述のようなインクジェット印刷での目詰まりの発生等がしにくくなるとともに、後に述べる還元処理により導体化(低抵抗率化)も容易となるため、より好ましい。
原料は金属化合物であって、具体的には、酸化銅・亜酸化銅・酸化銀・酸化ニッケル・酸化コバルト・酸化ネオジウム・硫化銀・硫化銅・硫化コバルト・硫化タンタル・オクチル酸銅・オクチル酸銀・塩化銅・塩化銀、塩化ロジウム、酸化ルテニウム、塩化パラジウム、その他の金属化合物を用いることができる。
レーザー光の波長は金属化合物の吸収係数がなるべく大きくなるような波長とすることが好ましいが、ナノサイズの金属微粒子の結晶成長を抑制するためには、熱線としての効果が低い短波長のレーザー光を使用することが好ましい。
粒子生成の際の有機溶剤は金属化合物を分散させるための分散媒であるが、還元作用を示さない有機溶剤を用いると、中心部が金属で表皮部が金属酸化物のコア/シェル構造を有する金属微粒子を得ることができるため、分散媒中で凝集させることが少ないので好ましい。また、応用面では、金属微粒子に特別な保護層を設ける必要がないので、電子回路装置等に利用する際に容易に分離できるために好ましい。
本発明に係る複合材料液は、上記金属微粒子を分散媒に分散させた状態で使用される。分散媒として用いられる溶剤としては、25℃における蒸気圧が1.34×103Pa未満の溶剤であることが好ましい。25℃における蒸気圧が1.34×103Pa未満の溶剤を使用することで、溶剤の揮発によるインク粘度の上昇を十分に抑えることができる。例えば、同蒸気圧1.34×103Pa以上の溶剤を単独で使用すると、液滴が乾燥しやすくインクジェットヘッドのノズルから液滴を吐出することが困難になり、更にインクジェットヘッドの目詰まりが生じやすくなる。これに対し、使用する溶剤の25℃における蒸気圧を1.34×103Pa未満にすることで上記現象を回避することができる。
なお、本発明の接着剤用インクは、25℃の蒸気圧が1.34×103Pa未満の溶剤とともに、25℃の蒸気圧が1.34×103Pa以上の溶剤を含んでもよい。その配合割合は、溶剤全量を基準として、60質量%以下とすることが好ましく、50質量%とすることがより好ましく、40質量%以下とすることが更に好ましい。
本発明の金属化合物膜は、上述の本発明の複合材料液を所望の位置に塗布し、溶剤除去を行って得られる。あるいは、該複合材料液を有版印刷又は無版印刷により所望の位置に塗布・パターニングし、溶剤除去を行って得られる。そして、本発明の金属化合物膜は、理由は明らかではないが、機械的強度が高い膜を形成することができる。
なお、近年、20μm程度の細線描画が可能なオフセット印刷が提案されており、インクジェット印刷用インクと同様に、粒子の微細化、低粘度化が求められ、本発明の複合材料液は本印刷方法にも好適なインクとして提供することができる。
本発明の金属・金属化合物膜は、既述の金属化合物膜が形成された複合材料を還元処理し、体積抵抗率を1×10−3Ω・m以下としたものである。すなわち、金属微粒子をパターニングし乾燥の終わった金属化合物膜を還元処理することにより導体化(低抵抗率化)して導体として使用することができる。体積抵抗率は、使用する金属や、金属微粒子の還元の程度などにより変動し得るが、1×10−4Ω・m以下が好ましく、1×10−5Ω・m以下がより好ましい。
高温・減圧環境下での還元方法は、200℃以上の水素などを含む還元雰囲気下での加熱を例示することができる。
溶液還元は、還元性液体中に金属化合物膜を浸漬することで行うことができる。
その他、ホットワイヤー法CVD装置を使用した原子状水素による金属化合物の還元は、低温で還元が可能なため好ましい。
本発明の複合材料は、既述の本発明の金属化合物膜が基板上に形成された態様と、既述の本発明の金属/金属化合物膜が基板上に形成された態様とがある。いずれも、基板上に形成された金属化合物膜に還元処理を施すことにより導体膜を形成することができる。
一方、後者の態様は、基板上に形成された金属化合物膜を還元処理し、体積抵抗率を1×10−3Ω・cm以下の金属/金属化合物膜とした態様であり、導電性を呈するため、導電のための配線などに利用することができる。
なお、実施例の複合材料液の粘度は、株式会社エー・アンド・ディー製小型振動式粘度計SV−10(商品名)を用いて25℃で測定した。表面張力はWilhelmy法(白金プレート法)による表面張力測定装置、協和界面科学株式会社製の全自動表面張力計CBVP−Z(商品名)を用いて25℃で測定した。平均分散粒子径及び最大分散粒径はベックマンコールター社製サブミクロン粒子アナライザーN5型(商品名)を用いて25℃で測定し得られた強度分布から求めた。また、インクジェット印刷は株式会社マイクロジェット製MJP−1500V(商品名)を使用して行った。
まず、レーザー法により、複合材料液の原料として銅微粒子アセトン分散液を以下のようにして調製した。すなわち、
金属化合物としてケミライト工業株式会社製酸化銅(比表面積8m2/g)を用い、還元作用を示さない有機溶剤には和光純薬工業株式会社製アセトン特級試薬を用いた。具体的には、100mlのアセトンに対して1gの酸化銅を、マグネチックスターラーを備えた内容量500mlのガラス製ビーカーに秤量した。レーザー照射装置として、Spectra−Physics社製Quanta−Ray PRO−230 Nd:YAGレーザーを使用し、波長1064nm、パルス幅10ns、パルス周波数10Hz、1パルス当たりの照射エネルギー1100mJのレーザー光を30分間照射した。レーザー光照射後、株式会社トミー精工製高速冷却遠心分離器Suprema23を使用して、ガラス製ビーカー内の内容物を毎分4000回転で5分間遠心分離することにより、沈降物と銅微粒子分散液とを分離しこの銅微粒子アセトン分散液を複合材料液の原料として使用した。
銅微粒子アセトン分散液(銅ナノ粒子の平均粒子径65nm、濃度0.8質量%)を、γ−ブチロラクトンの共存下で加熱することでアセトンを除去し、中心部が金属で表皮部が金属酸化物であるコア/シェル構造を有する金属微粒子として銅ナノ粒子18質量%をγ−ブチロラクトンに分散した複合材料液を得た(平均粒子径65nm、粘度:8mP・s、表面張力:30mN/m)。なお、γ−ブチロラクトンの25℃における蒸気圧は、2.3×102Paである。
実施例1において、ケミライト工業株式会社製酸化銅に代え、和光純薬工業(株)製亜酸化銅試薬を用いたこと以外は実施例1と同様にして複合材料液を得た(平均粒子径68nm、粘度:15mP・s、表面張力:38mN/m)。
実施例1において、ケミライト工業株式会社製酸化銅に代え、和光純薬工業(株)製酸化銀特級試薬を用いたこと以外は実施例1と同様にして複合材料液を得た(平均粒子径65nm、粘度:10mP・s、表面張力:34mN/m)。
実施例1で得た複合材料液を、図1に示すように、ポリイミド基板10上の2つの電極(銅箔を幅5mm、長さ20mmにパターニング、電極間距離10mm)12、14に架かるように、インクジェット装置で幅3mm、長さ14mmの矩形状のパターンを印刷し、インクジェット印刷膜(金属化合物膜)16を形成した。このとき、溶剤除去のために、ポリイミド基板が55℃になるように、基板を載置するステージを加熱した。この結果、厚さ8μm(実施例4)及び厚さ3μm(実施例5)の黒色金属化合物膜塗布基板を得た。この金属化合物膜は、圧力0.1MPaのエアブローをかけても基板から剥離せず、ポリイミド基板と良い密着性を示した。
電極間の抵抗をテスター(CD800a、三和電気計器株式会社製)にて測定し、体積抵抗率を求めたところ実施例4の試験片では4×10−5Ω・cm、実施例5の試験片では5×10−6Ω・cmであった。
実施例2、3で得た複合材料液を用い、実施例4、5と同様にして、図1に示すポリイミド基板10上にインクジェット印刷膜(金属化合物膜)16を形成し、加熱により溶剤を除去し厚さ3μmの黒色金属化合物膜塗布基板を得た(それぞれ、実施例6、7)。次いで、実施例6及び7の試験片を、ホットワイヤー法原子状水素処理装置にセットし、実施例4、5と同様にして還元処理を行った。
電極間の抵抗を、実施例4、5と同様にして測定し、体積抵抗率を求めたところ実施例6の試験片では4×10−5Ω・cm、実施例7の試験片では4×10−5Ω・cmであった。
金属化合物として、2〜3μmの和光純薬工業(株)製酸化銅試薬10gをγ−ブチロラクトン100ml中で超音波分散(30分)により分散液の調製をした。ところが、インクジェット吐出性が安定しないこと、さらに、一日放置後に上澄み部分が生じ、分散安定性が得られなかった。
12 14 電極
16 インクジェット印刷膜(金属化合物膜)
Claims (15)
- 平均粒子径が500nm以下で、中心部が金属で表皮部が金属酸化物であるコア/シェル構造を有する金属微粒子を含むことを特徴とする金属膜形成用の複合材料液。
- 平均粒子径が200nm以下で、中心部が金属で表皮部が金属酸化物であるコア/シェル構造を有する金属微粒子を含むことを特徴とする金属膜形成用の複合材料液。
- 前記金属微粒子が、有機溶剤中に金属化合物を分散させる工程と、その後に有機溶剤中の前記金属化合物にレーザー光を照射する工程とを少なくとも含む一連の工程により生成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の金属膜形成用の複合材料液。
- 25℃における粘度が50mPa・s以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の金属膜形成用の複合材料液。
- 25℃における粘度が50mPa・s以下であり、かつ前記金属微粒子が複合材料液中60質量%以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の金属膜形成用の複合材料液。
- 25℃における粘度が50mPa・s以下であり、かつ前記金属微粒子が複合材料液中30質量%以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の金属膜形成用の複合材料液。
- 25℃における蒸気圧が1.34×103Pa未満の溶剤を必須成分として含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の金属膜形成用の複合材料液。
- 25℃における表面張力が18〜50mN/mであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の金属膜形成用の複合材料液。
- 請求項1から8のいずれか1項に記載の複合材料液を所望の位置に塗布し、溶剤除去を行って得られることを特徴とする金属化合物膜。
- 請求項1から8のいずれか1項に記載の複合材料液を有版印刷により所望の位置に塗布・パターニングし、溶剤除去を行って得られることを特徴とする金属化合物膜。
- 請求項1から8のいずれか1項に記載の複合材料液を無版印刷により所望の位置に塗布・パターニングし、溶剤除去を行って得られることを特徴とする金属化合物膜。
- 請求項11に記載の無版印刷がインクジェット印刷法であることを特徴とする金属化合物膜。
- 請求項9から12のいずれか1項に記載の金属化合物膜が基板上に形成されてなることを特徴とする複合材料。
- 請求項9から12のいずれか1項に記載の金属化合物膜を還元処理し、体積抵抗率を1×10−3Ω・cm以下としてなることを特徴とする金属/金属化合物膜。
- 請求項14に記載の金属/金属化合物膜が基板上に形成されてなることを特徴とする複合材料。
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