JP2009123345A - 固体高分子型燃料電池用電極、固体高分子型燃料電池用焼成膜の製造方法、及び、固体高分子型燃料電池 - Google Patents
固体高分子型燃料電池用電極、固体高分子型燃料電池用焼成膜の製造方法、及び、固体高分子型燃料電池 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】処理の困難な副生成物を発生させることなく短期間で製造でき、良好な燃料ガス透過性を確保しながら高い触媒活性が得られる薄型の固体高分子型燃料電池用電極、固体高分子型燃料電池用電極の製造方法、及び、固体高分子型燃料電池を提供する。
【解決手段】ガス拡散層2(2a,2b)がカーボンナノチューブを焼成して得られる焼成膜で構成されるとともに、焼成膜上に導電性粒子9が積層され、導電性粒子9の積層面に金属触媒6が担持された固体高分子型燃料電池用電極4(4a,4b)と、夫々の電極4(4a,4b)の触媒層3(3a,3b)が固体高分子電解質膜8に対向するように配置して固体高分子型燃料電池1を構成する。
【選択図】図1
【解決手段】ガス拡散層2(2a,2b)がカーボンナノチューブを焼成して得られる焼成膜で構成されるとともに、焼成膜上に導電性粒子9が積層され、導電性粒子9の積層面に金属触媒6が担持された固体高分子型燃料電池用電極4(4a,4b)と、夫々の電極4(4a,4b)の触媒層3(3a,3b)が固体高分子電解質膜8に対向するように配置して固体高分子型燃料電池1を構成する。
【選択図】図1
Description
本発明は、導電性及び通気性を有するガス拡散層と、触媒担持体に担持された触媒を含む触媒層とからなる固体高分子型燃料電池用電極、固体高分子型燃料電池用電極の製造方法、及び、固体高分子型燃料電池に関する。
固体高分子型燃料電池は、固体電解質膜の両側をアノード触媒電極及びカソード触媒電極で挟持した膜−電極接合体で構成される。
アノード触媒電極及びカソード触媒電極は、導電性及び通気性を有するガス拡散層と触媒担持体に担持された触媒とイオン交換樹脂を含む触媒層を備え、触媒層が固体電解質膜と当接した構造となっている。
触媒層はアノード触媒電極及びカソード触媒電極共に白金または白金合金等の触媒をカーボンブラック等の表面積の大きい触媒担持体に担持して構成され、これをイオン交換樹脂と共に前記ガス拡散層上に塗布することによって得られる。
そして、白金または白金合金等の触媒をカーボンブラック等の触媒担持体に担持するために、一般的には湿式法と呼ばれる方法が採用されている。
そのような湿式法の一例として、塩化白金酸のエタノールによる還元反応が例示でき、これによれば、カーボンブラック上に白金が担持されるが、担持作業に数日の日数を費やす必要があることと同時に、その製造工程から出る廃液の処理に困難を要する。廃液としては塩素、塩化エチル、塩化水素等の副生成物並びにpH調整等伴うアルカリ溶液が生じるため、その生産効率の問題に加え、廃液の処理費用が生じ、製造コストの上昇につながるという問題があった。
また、触媒担持体上における触媒の担持部位が任意であるため、例えば触媒担持体表面にある細孔内に触媒が担持された場合には、その触媒は燃料ガスとの接触が断たれ触媒反応を起こさないため、燃料電池全体の出力向上に寄与しないという問題もあった。実際、湿式法においては、カーボンブラック表面にある細孔内にまで溶液が浸透し、白金等の触媒が担持されるため、プロトン伝導をつかさどるイオン交換樹脂との接触が不十分で、触媒としての機能を果たさない触媒が多数存在するといわれている。さらに、担持された触媒は、その反応過程で二次粒子として成長するものもあり、粒子内で触媒反応に寄与しない粒子ができてしまう。
加えて、湿式法では、触媒担持体上における触媒の粒子径を制御するのは非常に難しく、触媒の比表面積を十分に小さく、かつ均一に制御できない。そのため、固体高分子型燃料電池の発電特性を上げるには、多量の触媒を担持する必要があり、経済的にも効率が悪い。
さらに、担持された触媒がその触媒活性を十分に発揮して、固体高分子型燃料電池の出力を向上させるためには、触媒と燃料とイオン交換樹脂が同時に接触するよう、いわゆる三相界面を形成する必要があるが、従来の方法では、イオン交換樹脂と触媒を担持した導電性の触媒担持体とを混合して塗布するため、燃料が透過する経路が失われたり、触媒自体がイオン交換樹脂に覆われて、燃料との接触機会が失われる等の問題や、固体高分子電解質膜と反対側に担持された触媒は、3次元的に電解質膜とのプロトンの受け渡しを十分に行えず、燃料電池全体の発電量の向上に寄与しないという問題もあった。
このような多くの理由から、一般的な燃料電池の触媒層においては、実際に発電反応に寄与している白金または白金合金等の触媒量は、触媒層内に担持されている全触媒量の10〜30重量%に過ぎないといわれている。
さらにまた、ガス拡散層に触媒層を形成する場合には、膜−電極接合体が厚くなり、膜−電極接合体が積層される燃料電池が大型になるため、膜−電極接合体の薄膜化の要請もあった。
本発明の目的は、上述の問題点に鑑み、処理の困難な副生成物を発生させることなく短期間で製造でき、良好な燃料ガス透過性を確保しながら高い触媒活性が得られる薄型の固体高分子型燃料電池用電極、固体高分子型燃料電池用電極の製造方法、及び、固体高分子型燃料電池を提供する点にある。
上述の目的を達成するため、本発明による固体高分子型燃料電池用電極の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、導電性及び通気性を有するガス拡散層と触媒層を備えた固体高分子型燃料電池用電極であって、前記ガス拡散層がカーボンナノチューブを焼成して得られる焼成膜で構成されるとともに、前記焼成膜上に導電性粒子が積層され、前記導電性粒子の積層面に触媒が担持されている点にある。
前記導電性粒子はカーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバ、フラーレンの何れかの群から選択される一種または複数種であることが好ましく、特にカーボンブラックを用いる場合には、極めて安価に且つ特性の良い燃料電池セルを提供できるようになる。
焼成膜として、フッ素が存在する焼成膜を採用すると、燃料ガスの反応により生成される水分による気孔の目詰まりが発生することなく、良好な通気性を維持することができるようになる。
内部に中空構造を有するカップスタック型のカーボンナノチューブは、そのカップ状に炭素網層が積層した構造の内外表面の端面が外部に露出した構造となり、非常に活性が高く、触媒が結合しやすいため、全体として触媒を好適に分散させて担持させることができるようになり、焼成膜の好適な材料として、または触媒担持体の好適な材料として極めて有用である。
また、前記触媒が、前記導電性粒子の積層面にスパッタリング法または蒸着法により担持されていることが好ましく、スパッタリング法または蒸着法によれば前記導電性粒子の積層面に担持される触媒の粒径分布、担持量を適正に制御することができ従来の湿式法のような生産効率及び廃液処理の問題が生じることなく、高い触媒活性を有する固体高分子型燃料電池用電極を提供することができるようになる。
前記触媒の粒子径が1〜10nmの範囲であれば、燃料ガスの通気性を確保して、触媒層で触媒が燃料ガスと十分に接触することができるため、高い触媒反応を得ることができる点で好ましく、前記触媒の担持量が1mg/cm2以下が好ましく、さらに0.5mg以下であることが好ましい。
上述した導電性及び通気性を有するガス拡散層と触媒層を備えた固体高分子型燃料電池用電極の製造方法の特徴構成は、有機溶媒にカーボンナノチューブとバインダ樹脂を分散させる分散処理工程と、前記分散処理工程で得られた分散溶液を膜状に成形して乾燥させる成形工程と、前記成形工程で得られた膜を不活性ガス雰囲気下で焼成する焼成工程と、前記焼成工程で得られた焼成膜の一側面に導電性粒子を積層する積層工程と、前記積層工程で積層された導電性粒子層に触媒を担持する触媒担持工程を備える点にある。
また、上述した積層工程では、導電性粒子が混合されたカーボン分散溶液をスプレー法により塗布することが好ましい。
分散処理工程ではカーボンナノチューブとバインダ樹脂を有機溶媒中で分散させて、カーボンナノチューブ同士が適度に絡まるように分散させ、成形工程では分散処理工程で得られた分散溶液を膜状に成形して乾燥させる。このようにして成形された膜状の成形体を不活性ガス雰囲気下で焼成することにより、カーボンナノチューブの酸化による脆弱化を招くことなく、バインダ樹脂が熱分解することにより多孔質の焼成膜が形成されるのである。
得られた焼成膜の一側面に、例えば、導電性粒子が混合されたカーボン分散溶液をスプレー法により塗布し、その後、触媒を担持させることにより、ガス透過性及び触媒活性に優れた薄型の固体高分子型燃料電池用電極が製造される。
上述した固体高分子型燃料電池用電極が、アノード触媒電極またはカソード触媒電極として、固体高分子電解質膜の何れかの面にその触媒層が接合されることにより、高効率の燃料電池を得ることができるようになる。
以上説明した通り、本発明によれば、処理の困難な副生成物を発生させることなく短期間で製造でき、良好な燃料ガス透過性を確保しながら高い触媒活性が得られる薄型の固体高分子型燃料電池用電極、固体高分子型燃料電池用電極の製造方法、及び、固体高分子型燃料電池を提供することができるようになる。
以下、本発明における固体高分子型燃料電池用電極を採用した固体高分子型燃料電池の好適な実施形態について説明する。
本発明による固体高分子型燃料電池の実施形態の一例を示す。図1に示すように、固体高分子型燃料電池1は、固体高分子電解質膜8の両面にアノード触媒電極4a(4)及びカソード触媒電極4b(4)が夫々接合されて構成されている。
アノード触媒電極4a(4)及びカソード触媒電極4b(4)は、導電性及び通気性を有するガス拡散層2(2a,2b)と、ガス拡散層2(2a,2b)の一側面に積層された導電性粒子9と、導電性粒子9の積層面に担持された触媒6(6a,6b)とイオン交換樹脂7からなる触媒層3(3a,3b)とで構成され、夫々の触媒層3(3a,3b)が固体高分子電解質膜8に対向するように配置されている。
ガス拡散層2は導電性及び通気性を有する焼成膜で構成され、焼成膜上に導電性粒子9が積層され、前記積層面に触媒6がスパッタリング等によって担持されている。
焼成膜は、カーボンナノチューブを用いて形成され、特に、直径が50〜200nmの範囲で、繊維の長さが3μm以上で100μm以下の範囲のカーボンナノチューブを用いて形成されたものであることが好ましい。
一枚のグラフェンシートを筒状に巻いた構造を持ち、直径0.7〜70nm、長さが数十μm程度の大きさの炭素の結晶からなるカーボンナノチューブを用いる場合には、その比表面積の大きさと導電性からガス拡散層2として好適である。
カーボンナノチューブには、単層タイプ、複層タイプ、カーボンホーンタイプ等の種類があり、強度、導電性、熱伝導率など非常に優れた特性を持つ材料として知られている。
一般的に燃料電池の良好な発電特性を得るには、活性化分極、抵抗分極、濃度分極の三つの最適化が必要とされるが、特にカップスタック型カーボンナノチューブを用いると、活性化分極の低減(触媒活性の向上)、既存のカーボンブラックまたはカーボンナノチューブと同等以上の高導電性による抵抗分極の低減、長さ制御による濃度分極の低減という3つの最適化が可能となる。
さらに、フッ素が存在する焼成膜を燃料電池に用いれば、燃料ガスの反応時に生成される水分が焼成膜に浸潤すること無く、良好な通気性が確保されるため、安定した発電特性を確保することができ、さらには、長期にわたり焼成膜自体の保形性を維持することができるようになる。
導電性粒子9で形成される層は、触媒6の担持体としても機能し、導電性粒子9として、触媒6を必要量担持するに足りる表面積を有するカーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバ、フラーレン、ナノカーボンの何れかの群から選ばれる一種または複数種を用いることができる。カーボンブラックとして、ファーネスブラック、チャンネルブラック、グラフトカーボン等が例示できる。また、酸化処理などの化学修飾を施したカーボンブラックを用いることも可能である。
導電性粒子9の積層方法は、ガス拡散層2(2a,2b)の一側面に、導電性粒子が混合されたカーボン分散溶液を複数回スプレーして塗り重ねるスプレー法を用いているが、それ以外に、例えばキャスティング、スクリーン印刷、スピンコート等を採用することも可能である。
導電性粒子が混合されたカーボン分散溶液に用いられる有機溶媒としては、特に制限は無いが、極性有機溶媒を例示することができ、特にN−メチルピロリドンが好ましい。
また、カーボン分散溶液に含まれるカーボン濃度は、6重量%から7重量%程度が好ましい。
触媒6は電極反応を促進する機能を有し、その担持量は1mg/cm2以下が好ましく、さらに0.5mg以下であることが好ましい。また、触媒6としては白金Ptまたは白金合金が好適に用いられるが、その他に、金Au、銀Ag、イリジウムIr、パラジウムPd、ルテニウムRu、オスミウムOs、ニッケルNi、タングステンW、モリブデンMo、マンガンMn、イットリウムY、バナジウムV、ニオブNb、チタンTi、希土類金属、から選択される少なくとも一種を含む金属を用いることができ、さらにはモリブデンカーバイドMo2C等の炭化物を用いることも可能である。
これらの触媒は一種類を単独で用いてもよいし、複数を併用してもよく、これらの一部または全部を合金形態で使用してもよい。これらの触媒は、焼成膜上に積層された導電性粒子9の積層面にスパッタリング法または蒸着法により担持されているのが好ましい。
触媒6の平均粒子径は、小さい方が有効電極面積が増加して触媒活性が向上するため、1〜10nmの範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは、2〜5nmの範囲である。ここで、スパッタリングによって触媒6を導電性粒子9の積層面に担持する場合、触媒6の薄膜が形成されないように諸条件を調節する必要がある。触媒6の薄膜が形成されると、触媒層3の表面全体を触媒6が覆うこととなり、反応ガスや反応ガスと共に供給した水の移動を阻害するためである。
触媒6をスパッタリング法により担持する場合、スパッタリングの処理時間は240秒未満が好ましく、さらに15秒から150秒以下とすることが好ましい。また、スパッタリングの際のRF出力値は特に制限されないが、100W以上とすることが好ましい。
上述のガス拡散層2(2a、2b)は固体高分子電解質膜8と接合して、燃料電池用MEA(Membrane Electrode Assembly)として利用される。両者を接合する際には、触媒6と固体高分子電解質膜8との間にプロトンが通過する経路を得るため、イオン交換樹脂7を塗布することが好ましい。
イオン交換樹脂7としては、少なくとも高いプロトン導電性を有する材料が好ましく、デュポン社製の各種ナフィオン(デュポン社登録商標:Nafion)やダウケミカル社製のイオン交換樹脂等が好ましく例示される。
イオン交換樹脂7の含有量は特に制限されないが、担持された触媒6の全量に対し50〜1500重量%とするのが良い。50重量%より少ない場合には、プロトンが通過する経路が充分に形成されず、一方、1500重量%よりも多い場合には、焼成膜の多孔をふさいでしまい反応ガス(水素ガスや酸素ガス)が通過しなくなり、電池が発電しないという現象を誘発してしまう。また、電極触媒層へのイオン交換樹脂7の塗布は、ピペット塗布、スプレー法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法等を用いることができる。
さらに、触媒層3と固体高分子電解質膜8との接合には、熱プレス装置等を用いて実施することができる。
尚、燃料電池を構成するMEAは、本発明による固体高分子型燃料電池1用の電極4がアノード触媒電極4aまたはカソード触媒電極4bとして、固体高分子電解質膜8の何れかの面に接合されていれば所期の効果が得られ、必ずしも本発明による固体高分子型燃料電池1用の電極4がアノード触媒電極4a及びカソード触媒電極4bの双方に用いられるものに限るものではない。
上述のように、導電性及び通気性を有するガス拡散層2と、導電性粒子9の積層面に担持された触媒6を含む触媒層3とからなり、ガス拡散層2がカーボンナノチューブを焼成して得られる焼成膜、好ましくはフッ素が存在する同様の焼成膜で構成されるとともに、触媒が触媒担持体として機能する焼成膜に導電性粒子9の層を介して担持されている固体高分子型燃料電池1の電極4(4a,4b)が構成され、前記電極4aに燃料ガスとしての水素ガスが供給されると、水素が水素イオンと電子に分解され、電子が電極4aに接続された外部回路に供給されるとともに、水素イオンが固体高分子電解質膜8を通過して対向する電極4bに移動し、外部回路から電極4bに供給される電子と空気中の酸素が結合して水が生成される。
上述した固体高分子型燃料電池1用の電極4(4a,4b)に用いるカーボンナノチューブを用いた焼成膜は、図3(a)に示すように、有機溶媒にカーボンナノチューブとバインダ樹脂を分散させる分散処理工程と、分散処理工程で得られた分散溶液を膜状に成形して乾燥させる成形工程と、成形工程で得られた膜を不活性ガス雰囲気下で焼成する焼成工程の各製造工程を経て製造される。
分散処理工程で用いられる有機溶媒としては、特に制限は無いが、カップスタック型のカーボンナノチューブを用いる場合には、極性有機溶媒を例示することができ、特にN−メチルピロリドンが好ましく、バインダ樹脂としてはカーボン分散性を有するアクリル系樹脂が好適に使用できる。
更に、目的とする焼成膜が得られるのであれば、前記有機溶媒、バインダ樹脂以外の添加剤を適宜添加しても差し支えない。また、フッ素が存在する焼成膜を製造する場合には、カーボンナノチューブ、有機溶媒、バインダ樹脂の他にフッ素樹脂を加えることが好ましい実施形態として例示できる。
混入されるフッ素樹脂は、分散溶液中に固体分濃度として1重量%〜29重量%の範囲で混入すれば、フッ素樹脂を混入せずに得られる焼成膜に比較して良好な通気性、発電特性が得られ、好ましくは3重量%〜25重量%の範囲、さらに好ましくは8重量%〜18重量%の範囲で混入することにより、良好な発電特性に加えて良好な保形性も確保できるようになる。更にフッ素樹脂は、ポリフッ化ビニリデンPVDFを用いることが好ましく、他にエチレンテトラフルオロエチレン共重合体ETFEを用いることも可能である。
また分散処理工程では、有機溶媒にカーボンナノチューブとバインダ樹脂を混合し、ペイントシェーカー等の分散装置を用いて30分から180分の範囲で分散処理することが好ましい。分散処理時間が短い場合にはカーボンナノチューブが適度に分散されず、粒状の塊であるダマが形成され、分散処理時間が長い場合にはカーボンナノチューブ同士の絡まりが解消されるため焼成後の膜の保型性を確保できなくなるためである。
成形工程では、分散処理工程で充分な流動性が得られた分散液がガス拡散層のサイズ及び膜厚に対応した型に流し込まれ、その後乾燥処理されて薄膜の板状体が得られる。その際の乾燥温度は、薄膜の板状体が得られるのであれば特に制限されないが、100〜200℃の範囲が好ましい。即ち、100℃以下の場合には、溶媒の乾燥除去が不充分で薄膜にならない、もしくは乾燥に多大な時間を要する傾向があり、一方で200℃以上の場合には、膜にクラックが発生してしまう傾向があるためである。
焼成工程では、成形工程で得られた薄膜の板状体が、カーボンナノチューブの酸化による脆弱化を招くことが無いように、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、約600℃で1時間程度焼成される。焼成温度は500℃以上、焼成時間は40分から5時間程度が好ましい。焼成時間が30分以下であるとバインダ樹脂が十分に熱分解しないために十分な気孔が形成されず、長時間焼成すると熱劣化により脆弱性が現れる虞があるためである。
つまり、分散処理工程では、カーボンナノチューブ同士が適度に絡まるように分散処理し、成形工程では分散処理工程で得られた分散溶液を膜状に成形して乾燥させる。このようにして成形された膜状の成形体を不活性ガス雰囲気下で焼成することにより、カーボンナノチューブの酸化による脆弱化を招くことなく、バインダ樹脂が熱分解することにより多孔質の焼成膜が形成されるのである。
このようにして得られた焼成膜の一側面に導電性粒子を積層する積層工程と、前記積層工程で積層された導電性粒子層に触媒をスパッタリング等により担持する触媒担持工程を実行することにより固体高分子型燃料電池用電極が製造される。
前記積層工程では、N−メチルピロリドン等の極性有機溶媒に導電性粒子としてのカーボンが6重量%から7重量%の濃度で混合されたカーボン分散溶液を、スプレー法により数回塗布されることが好ましい。また、カーボン分散溶液には本発明の効果を損なわない範囲で適宜分散剤などを添加することも可能である。
従来の固体高分子型燃料電池用電極では、厚さが300μmから400μmのガス拡散層に数十μmの厚さの触媒担持層を形成していたため、電極の厚みが400μm以上になるが、本発明による焼成膜を用いれば電極の厚みを200μm程度の薄型に構成することができ、導電性粒子層を介して触媒を担持させることにより、ガス透過性及び触媒活性に優れた薄型の固体高分子型燃料電池用電極が得られる。
また従来の湿式法による固体高分子型燃料電池用電極の製造プロセスと比較して、より良好な発電効率を確保しながらも、製造時間が大幅に短縮され、製造工程も簡素化されるので、製造コストが低減されるばかりでなく、部品コストも低減されるようになる。
上述した実施形態では、カップスタック型のカーボンナノチューブを用いてガス拡散層を構成する焼成膜を形成した例を説明したが、本発明による焼成膜は、カップスタック型のカーボンナノチューブを用いて製造するものに限るものではなく、他のカーボンナノチューブを用いて構成することができ、何れの場合も導電性粒子層を積層し、スパッタリングにより触媒を担持させることにより良好な特性の固体高分子型燃料電池用電極を得ることができる。
上述の何れの実施形態においても、導電性粒子9の積層面にスパッタリング法や蒸着法により触媒6を担持し触媒層3を形成するものを説明したが、これら以外の方法、例えば、電子照射、CVD、PVD、含浸、スプレーコート、スプレー熱分解、練りこみ、吹き付け、ロールやこてによる塗りつけ、スクリーン印刷、混錬法、光電解法、コーティング法、ゾルゲル法、ディップ法等を採用することも可能である。
さらに上述した実施形態では、分散工程で有機溶媒にカーボンナノチューブとバインダ樹脂とフッ素樹脂を分散させることにより、フッ素が存在する焼成膜を製造する例を説明したが、有機溶媒にカーボンナノチューブとバインダ樹脂を分散させた分散溶液を膜状に成形して乾燥させ、得られた膜を不活性ガス雰囲気下で焼成し、得られた焼成膜をフッ素樹脂溶液にディッピングし或はスプレー法でフッ素樹脂を含浸させて、再度焼成することによりフッ素が存在する焼成膜を製造するものであってもよく、成形して得られた膜にスプレー法でフッ素樹脂を含浸させた後に焼成処理して、フッ素が存在する焼成膜を製造するものであってもよい。
[実施例1]
有機溶媒N−メチルピロリドン(以下NMP)29.9gに、アクリル樹脂(古川化学工業製 BI−2107−SA)を6.345g、カップスタック型カーボンナノチューブ(株式会社GSIクレオス提供、形式:24PS、以下「CNT」と記す。)を1.275g、ポリフッ化ビニリデン(クレハ化学 ♯850、以下「PVDF」と記す。)を1.6g(分散溶液の固形分に対して17.35重量%)混入して、ペイントシェーカーで120分シェーク処理してCNTの分散溶液を得た。
有機溶媒N−メチルピロリドン(以下NMP)29.9gに、アクリル樹脂(古川化学工業製 BI−2107−SA)を6.345g、カップスタック型カーボンナノチューブ(株式会社GSIクレオス提供、形式:24PS、以下「CNT」と記す。)を1.275g、ポリフッ化ビニリデン(クレハ化学 ♯850、以下「PVDF」と記す。)を1.6g(分散溶液の固形分に対して17.35重量%)混入して、ペイントシェーカーで120分シェーク処理してCNTの分散溶液を得た。
この溶液を、予め5cm2となるように区画したSUS板にキャスティングして約250μmの膜厚の板状体に成形した後、乾燥処理して、板状体の膜を得た。
乾燥処理の後、板状体を焼成装置に投入し、窒素ガスの雰囲気下、約600℃の温度で1時間焼成して、アクリル樹脂、フッ素樹脂及びNMPを熱分解及び蒸発させ、フッ素が存在するCNTの焼成膜を得た。
この焼成膜を、エネルギー分散型X線分析装置(堀場製作所製、EMAX ENERGY)にてX線分析した結果、図5に示すように、焼成膜にフッ素原子(白色の斑点で示される)が分散されていることが確認された。
このようにして得られた約250μmの膜厚で平均孔径が数μmの多孔質焼成膜の一側面に、スプレー法を用いて6.68重量%カーボンブラック(キャボット社製vulcan XC−72)NMP溶液を塗布し、170℃で2時間乾燥してNMPを蒸発させ、カーボンブラック積層CNTの焼成膜を得た。
次に、このカーボンブラック積層CNT焼成膜のカーボンブラック積層面に、アルバック社製スパッタリング装置を用いてスパッタリングにより触媒を担持させた。スパッタリングは、ターゲットには白金、不活性ガスとしてアルゴンを用い、直流電源を使用しながら、真空度3.6×103Torr、RF出力300W、スパッタ温度24℃の設定で実施した。
スパッタリング処理を90秒間行なったときに担持された白金の量は、0.062mg/cm2であった。最後に、和光純薬工業製5重量%Nafion(登録商標) Dispersion Solution DE520に蒸留水を加え、Nafionを1.5重量%に希釈したNafion希釈溶液を、カーボンブラック積層カーボンナノチューブ焼成膜−白金積層表面に165μl塗布し、熱風オーブン内で120℃、20分間乾燥させ白金が担持された電極膜を得た。
MEAは次の手順で作成した。予め洗浄処理を施した、Dupont社製Nafion212膜を5cm角の大きさに切り取った。このNafion212膜の中央部分に、白金を担持した電極膜を、担持した白金がNafion212膜側を向くようにして両側から挟みこみ、ホットプレス装置によって接合処理した。接合時の温度は120℃、圧力は10MPa、時間は5分であった。このようにして、本願発明の電極をアノード触媒電極及びカソード触媒電極として接合されたMEAを作成した。
得られたMEAを東洋テクニカ製シングルセル(EFC05−01SP)に組み込んで、燃料電池のIV特性を計測した。計測に際しては、燃料ガスとしてアノード側に水素ガスを、カソード側に酸素ガスを供給した。両ガス共に供給量を500cc/minとし、ガス供給配管の温度を120℃に設定した。また、セル本体の温度は80℃とした。得られた発電特性を図4に示す。
[比較例1]
カーボンブラックが積層されていない点以外は実施例1と同様にし、これを比較例1とし、IV評価を行なった結果、図4に示す発電特性を得た。
カーボンブラックが積層されていない点以外は実施例1と同様にし、これを比較例1とし、IV評価を行なった結果、図4に示す発電特性を得た。
図4に示すように、実施例1の場合には、比較例1に対して特に低電圧領域での電流特性が良好であることが判明した。
[実施例2]
PVDFが混入していない点以外は実施例1と同様にし、これを実施例2としてIV評価を実施した。
PVDFが混入していない点以外は実施例1と同様にし、これを実施例2としてIV評価を実施した。
図4に示すように、カーボンブラックが積層されていない焼成膜よりも、全電圧範囲で電流密度が高いという結果が得られた。
[比較例2]
カーボンブラックが積層されていない点以外は実施例2と同様にし、これを比較例2としてIV評価を実施した。
カーボンブラックが積層されていない点以外は実施例2と同様にし、これを比較例2としてIV評価を実施した。
尚、得られた焼成膜は、水分に対して脆く、形状が崩れやすかった。これはCNTが親水性が高い為であると考えられる。
また、図4に示すように、実施例2の場合には、比較例2に対して特に低電圧領域での電流特性が良好であることが判明した。
以上の実施例を通じて、撥水性樹脂の一例であるPVDFが混入された焼成膜と、PVDFが混入されていない焼成膜の何れに対しても、その表面にカーボンブラック等による導電性粒子層を形成し、その積層面に触媒として白金を担持した固体高分子型燃料電池用電極を用いてMEAを構成することで、導電性粒子層を設けること無く焼成膜上に直接白金を担持した固体高分子型燃料電池用電極を用いて構成されたMEAよりも、良好な発電特性が得られることが判明した。
1:固体高分子型燃料電池
2,2a,2b:ガス拡散層
3,3a,3b:触媒層
4:電極
4a:アノード触媒電極
4b:カソード触媒電極
6,6a,6b:触媒
7:イオン交換樹脂
8:固体高分子電解質膜
9:導電性粒子
2,2a,2b:ガス拡散層
3,3a,3b:触媒層
4:電極
4a:アノード触媒電極
4b:カソード触媒電極
6,6a,6b:触媒
7:イオン交換樹脂
8:固体高分子電解質膜
9:導電性粒子
Claims (10)
- 導電性及び通気性を有するガス拡散層と触媒層を備えた固体高分子型燃料電池用電極であって、
前記ガス拡散層がカーボンナノチューブを焼成して得られる焼成膜で構成されるとともに、前記焼成膜上に導電性粒子が積層され、前記導電性粒子の積層面に触媒が担持されている固体高分子型燃料電池用電極。 - 前記導電性粒子がカーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバ、フラーレンの何れかの群から選択される一種または複数種のカーボンである請求項1記載の固体高分子型燃料電池用電極。
- 前記焼成膜は、カーボンナノチューブを焼成して得られた焼成膜にフッ素が存在することを特徴とする請求項1または2記載の固体高分子型燃料電池用電極。
- 前記焼成膜に用いられるカーボンナノチューブは、内部に中空構造を有するカップスタック型のカーボンナノチューブである請求項1から3の何れかに記載の固体高分子型燃料電池用電極。
- 前記触媒が、前記導電性粒子の積層面にスパッタリング法または蒸着法により担持されている請求項1から4の何れかに記載の固体高分子型燃料電池用電極。
- 前記触媒の粒子径が1〜10nmの範囲である請求項5記載の固体高分子型燃料電池用電極。
- 前記触媒の担持量が1mg/cm2以下である請求項5または6記載の固体高分子型燃料電池用電極。
- 導電性及び通気性を有するガス拡散層と触媒層を備えた固体高分子型燃料電池用電極の製造方法であって、
有機溶媒にカーボンナノチューブとバインダ樹脂を分散させる分散処理工程と、前記分散処理工程で得られた分散溶液を膜状に成形して乾燥させる成形工程と、前記成形工程で得られた膜を不活性ガス雰囲気下で焼成する焼成工程と、前記焼成工程で得られた焼成膜の一側面に導電性粒子を積層する積層工程と、前記積層工程で積層された導電性粒子層に触媒を担持する触媒担持工程を備える固体高分子型燃料電池用電極の製造方法。 - 前記積層工程では、導電性粒子が混合されたカーボン分散溶液をスプレー法により塗布することを特徴とする請求項8記載の固体高分子型燃料電池用電極の製造方法。
- 固体高分子電解質膜の一方の面にアノード触媒電極の触媒層が接合され、他方の面にカソード触媒電極の触媒層が接合されている固体高分子型燃料電池であって、
請求項1から7の何れかに記載の固体高分子型燃料電池用電極が、前記アノード触媒電極または前記カソード触媒電極として、前記固体高分子電解質膜の何れかの面に接合されている固体高分子型燃料電池。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007292513A JP2009123345A (ja) | 2007-11-09 | 2007-11-09 | 固体高分子型燃料電池用電極、固体高分子型燃料電池用焼成膜の製造方法、及び、固体高分子型燃料電池 |
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JP2007292513A JP2009123345A (ja) | 2007-11-09 | 2007-11-09 | 固体高分子型燃料電池用電極、固体高分子型燃料電池用焼成膜の製造方法、及び、固体高分子型燃料電池 |
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ID=40815316
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JP2007292513A Pending JP2009123345A (ja) | 2007-11-09 | 2007-11-09 | 固体高分子型燃料電池用電極、固体高分子型燃料電池用焼成膜の製造方法、及び、固体高分子型燃料電池 |
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JP (1) | JP2009123345A (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2010134375A1 (ja) | 2009-05-21 | 2010-11-25 | タカタ株式会社 | チャイルドシート |
-
2007
- 2007-11-09 JP JP2007292513A patent/JP2009123345A/ja active Pending
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WO2010134375A1 (ja) | 2009-05-21 | 2010-11-25 | タカタ株式会社 | チャイルドシート |
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