JP2009096083A - 缶用樹脂ラミネート鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】18L缶やペール缶等のような大型缶をはじめとする一般缶用途の缶胴部や蓋部に好適な樹脂ラミネート鋼板であって、耐熱性、汎用性に優れ、且つ内容物保護性、缶体耐圧強度等の諸特性に優れた缶用樹脂ラミネート鋼板を提供する。
【解決手段】電解クロメート処理鋼板の少なくとも片面(缶内面側となる鋼板面)に、接着性樹脂層(下層)と、ポリプロピレン系樹脂層(上層)からなる、厚さの合計が15〜200μmの樹脂層を有する。上層樹脂層であるポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレンとEPRをコンパウンドした共重合体であり、母層のプロピレンの重量比率は70%以上97%以下である。また、下層の接着性樹脂層は、厚みが2〜10μmであり、接着性(熱接着性)ポリプロピレンと接着性(熱接着性)ポリエチレンを主成分樹脂とし、これら両樹脂を混合したものであり、さらに接着性ポリエチレンを8〜20モル%含むものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、18L缶、ペール缶、ドラム缶等のような飲料缶以外の缶体(一般缶)の缶胴部や蓋部として好適な、耐熱性(塗装印刷適性)、汎用性(酸性内容物からアルカリ性内容物までの広範囲な用途適性)に優れ、且つ内容物保護性(加工部や疵つき箇所の耐食性および缶内容物中に金属や有機成分の溶出が生じにくい特性)、製缶後における缶体の耐圧強度等の諸特性に優れた缶用樹脂ラミネート鋼板に関する。
飲料缶以外の一般缶用途(特に大型缶分野)において、各種ラミネート鋼板(樹脂被覆鋼板)を使用した高耐食性缶を製造する試みがなされている。一般缶用途では、飲料缶と異なり、充填される内容物が化学薬品、界面活性剤、塗料、食品、油など多岐にわたり、内容物の性状も酸性からアルカリ性まで多種多様である。ラミネート缶に用いる樹脂として、一般的に使用されているポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂は、アルカリ性の内容物に対してはフィルムが加水分解を起こすため、適用が困難である。酸からアルカリまでの幅広い内容物に対して耐食性を有する樹脂としては、ポリプロピレンやポリエチレンなどのオレフィン樹脂がよく知られている。このようなオレフィン樹脂を用いた缶用材料として、特許文献1等ではポリエチレンラミネート鋼板が、また、特許文献2等ではポリプロピレンラミネート鋼板がそれぞれ開示されている。
しかし、これら従来の一般缶用途のオレフィン系樹脂ラミネート鋼板の特性について詳細に検討した結果、以下のような問題点があることが判明した。
ポリプロピレン樹脂は、オレフィン樹脂としては耐熱性に優れているが、曲げ加工が加わる場合、その曲げの頂点近傍でクラックが生じる場合がある。このクラックは、非常に微細なものもあり、加工時点では検知されなくても、内容物を充填後、問題となるケースがある。例えば、長時間界面活性剤等の浸透性の高い内容物に接している場合などであり、微小なクラック部に液が浸透し、下地を腐食してしまうため、長期間の保管に耐えられないという欠点がある。従来、ポリプロピレン樹脂の耐加工クラック性を改善する方法として、樹脂ラミネート後の冷却速度の調整により結晶化度を最適化する方法が提案されている。しかし、本発明者らが検討したところによれば、ポリプロピレン樹脂は結晶化速度が早いため、ラミネート鋼板の外面に塗装印刷を施す用途においては、塗装印刷の加熱により結晶化が進行し、上記方法による十分な効果を得ることは難しいことが判った。
また、ポリプロピレン樹脂の耐加工クラック性を改善する他の方法として、エチレンなどのαオレフィンを最大で10%程度、ポリプロピレンにランダム共重合化する方法が提案されている。
しかし、本発明者らが検討したところによれば、ランダム共重合化したポリプロピレン樹脂は樹脂全体の融点が低くなるため、ラミネート鋼板の外面に塗装印刷を施す用途においては、塗装印刷工程の加熱処理の際にラミネート樹脂が熱変形(ラミネート樹脂面での接触跡の発生)したり、板搬送設備に融着したりする問題を生じることが判った。
一方、ポリエチレン樹脂は耐加工クラック性が良好であるが、ポリエチレン樹脂を缶内面側にラミネートした場合、樹脂そのものの融点が120℃前後と低いため、塗装印刷工程の焼付処理の際にラミネート樹脂が板搬送設備に融着したり、熱変形(ラミネート樹脂面での接触跡の発生)したりすることが避けられない。
特許文献3には、ポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂を複合化したラミネート鋼板が提案されている。同文献には、ポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂の混合層によりポリプロピレン樹脂層とポリエチレン樹脂層を密着させた3層構造のラミネート鋼板が開示されている。しかし、ポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂は一般に密着性が低いため、樹脂層間で剥離を生じやすく、製缶後に缶体に内圧をかけた際、缶蓋と胴板の巻き締め部で層間剥離がおき、そこから気密が漏洩して所望の耐圧強度が得にくいなど、缶としての実用に適さない。
特許文献4は、ポリプロピレンとポリエチレンのモノマーであるプロピレンと、エチレンをブロック共重合させ、層間剥離の問題を解決するものである。そして、耐加工クラック性、耐熱性をある程度満たすことができるとしている。
しかし、均質に分散しているために耐加工クラック性も、耐熱性もそれなりである。即ち、混合比率分の性能が付与されるに過ぎない。製缶方法や、熱処理条件が厳しい場合には不十分であり問題を起す場合がある。
特開昭53−141786号公報 特許第2733589号公報 特開昭64−82931号公報 特開2003―285394公報
本発明の目的は、18L缶やペール缶等のような大型缶をはじめとする一般缶用途の缶胴部や蓋部に好適なラミネート鋼板であって、耐熱性(塗装印刷適性)、汎用性(酸性内容物からアルカリ性内容物までの用途適性)に優れ、且つ内容物保護性(加工部や疵付箇所の耐食性および缶内容物中に金属や有機成分の溶出を生じにくい特性)、缶体耐圧強度等の諸特性に優れた缶用樹脂ラミネート鋼板を提供することにある。
本発明者らは上述した従来技術の課題を解決すべく各種樹脂皮膜構成を有するラミネート鋼板とその特性について調査および検討を行ない、その結果、以下のような知見を得た。
まず、ラミネート樹脂に必要とされる耐熱性について調査した。その結果、現行の油性印刷塗装の下限焼付温度は、焼付炉の温度変動を含めて約130℃であることが判った。
従って、実際の焼付炉の温度変動を考慮すると、ラミネート樹脂は約140〜150℃の焼付に耐えることが必要である。缶内容物と接する側の樹脂層は、塗装印刷時に板搬送設備と熱融着を生じないことが不可欠であり、140℃、望ましくは150℃以上の融点を有するポリプロピレン樹脂を主体とする樹脂層とすることが必要である。また、単に熱融着しないだけではなく、樹脂層表面が変形しないことも必要である。即ち、焼付け過程で設備と鋼板が線接触、もしくは点接触した場合、接触部に自重がかかる。そして、高熱時、この押圧によって表面が変形し、跡が残り問題となる場合があるので、この問題についても解消する必要がある。
加工部にクラックが生じる原因は、曲げ加工において、その頂点近傍が高速変形することである。エキスパンド加工や張り出し加工において、曲げ部の頂点近傍では、伸び量としては差ほどでも無いが、瞬間に曲げ方向に延ばされることになる。そして、この高速変形に樹脂皮膜が対応しない場合、クラックが生じるのである。これに対して、加工部の耐クラック性を向上させるためには、プロピレンとエチレンをブロック共重合化させることが効果的である。しかし、耐クラック性の向上の程度は十分でない。詳細は不明であるが、エチレン重合部が小さ(あるいは均等に分散し)過ぎる為、ポリエチレン樹脂としての特性が発現しにくいのではないかと考えられる。
そこで、発明者らは、プロピレン−エチレンブロック共重合体の海島構造の不均一さの程度を増加させることを考えた。海島構造は、一般的にサラミ構造とも呼ばれ、例えば、プロピレン樹脂中にエチレン-プロピレンラバーがドメインを形成して存在する状態を指す。即ち、ランダム共重合のものよりもブロック共重合の方が共重合樹脂のそれぞれの特徴が発現し易く、ブロック共重合を更に不均一化させることで、両樹脂の特徴がより発現し易くなるのではと考えた。
不均一化を増す手段として、ポリプロピレンとエチレンプロピレンラバー(以下、EPRと称することもある)のコンパウンドを考えた。EPRはエチレンとプロピレンの共重合体であり、高速変形性に富むゴム状の樹脂である。
具体的には、一般的なフィルム製造過程において、押出機にて、ポリプロピレン樹脂チップとEPR樹脂チップを溶融混練しながらTダイ部に押し出し、Tダイ部から押し出された樹脂を、直接鋼板上に製膜するか、一旦、フィルムとして製膜し、後に、熱圧着法などで鋼板にラミネートすることで得られる。
このようにして作製された、ポリプロピレンとEPRのコンパウンドフィルムを有する鋼板は、既存の、プロピレン-エチレンブロック共重合体に比較して、格段に耐加工クラック性や耐熱性に優れることがわかった。
さらに、本材料(ポリプロピレンとEPRのコンパウンド)を分析してみると、EPRがポリプロピレン中にドメインをつくることがわかった。更に、EPRの中心部はポリエチレンがリッチになっており、ポリエチレンの不均一化(局在化)が達成されていた。即ち、母相となるポリプロピレンは耐熱性が高く高速変形性は低いが、EPRドメイン部は、高速変形性に優れる。ゆえに、高速変形に対しては、この耐クラック性ドメイン部が変形することで全体の変形を可能とすると考えられる。例えば、スポンジは、空隙が沢山あるので容易に変形するが、空隙部分が無く、骨格を構成する樹脂が密に詰まっているとしたら容易に変形しないであろう。スポンジは、空隙を有することで、全体的に容易に変形するといえる。本樹脂の場合は、骨格がポリプロピレンで、空隙がEPRに相当すると考えられる。また、骨格はポリプロピレンなので融点が高く、基本的には耐熱性が高い。更に、EPRドメイン部が表層にあったとしても、ポリエチレンがリッチなのは内部のみであるので、外層部(露出部)の融点は比較的高く耐熱性も良好となる。
しかしながら、上記のポリプロピレン系樹脂は接着性に乏しい。そのため、例えば、電解クロメート処理鋼板(鋼板に金属クロムとその上層にクロム水和酸化物からなる電解クロメート処理を行ったもの、ティンフリースチール:TFS)と密着させるためには、接着性樹脂からなる樹脂層をポリプロピレン系樹脂と鋼板との間に設ける必要がある。すなわち、ポリプロピレン系樹脂からなる樹脂層(上層)と接着性樹脂層(下層)の2層構造が必要となる。
この下層の接着性樹脂層に、ポリプロピレン系の熱接着性樹脂を単独で用いた場合には、接着性樹脂層の耐加工クラック性や、接着性樹脂層−鋼板界面の耐食性が劣っていた。一方、耐加工クラック性が良好なポリエチレン系の熱接着性樹脂を用いた場合、耐加工クラック性、樹脂−鋼板界面の耐食性は良好であったが、耐熱性が劣化し、下層で樹脂の熱変形が生じた。したがって下層においても、熱接着性樹脂の耐食性を保持しつつ耐熱性を満足するには、高融点の接着性ポリプロピレン系樹脂に耐食性の良い接着性ポリエチレン系樹脂を適量混合した樹脂構造にすることが効果的と考えられる。
ここで、内面側をラミネート層で被覆した鋼板から18L缶やペール缶を製缶する際には、一般的に、缶胴を溶接もしくはロックシーム法により接合した後、天蓋あるいは地蓋を2重巻き締めにより取り付ける。巻き締め部では、胴板内面のフィルムと蓋内面のフィルムは、熱融着もしくは接着剤を介して接着される。製缶後の缶体は気密が保持されなければならないが、鋼板とラミネートフィルムの密着力が低い場合、温度上昇などにより内圧が過度に上昇した場合や缶が落下した場合等に、巻き締め部でフィルムが剥離し、内容物が漏洩する等の重大な事故が起こる可能性がある。巻き締め部で十分な気密性を得るには、フィルムは下地鋼板との強い密着力を要すると同時に、上層と下層間にも十分な密着力を付与しければならない。一般にポリプロピレンとポリエチレンとは分子相溶せず密着しにくいため、上層をポリプロピレン系樹脂とした場合、下層の樹脂中のポリエチレン比率が高くなるにしたがい、上層と下層の層間密着力が低下し、剥離して気密が漏洩しやすくなる。ゆえに、気密漏洩を防ぐためにも、下層には接着性ポリプロピレン系樹脂に接着性ポリエチレン系樹脂を適量混合した樹脂構造にすることが効果的となる。
本発明は以上のような知見に基づいてなされたもので、その特徴は以下の通りである。
鋼板と、該鋼板の両面に形成された金属クロム付着量が片面あたり40〜200mg/m2の金属クロムめっき層と、該両金属クロム層の上に形成された金属クロム換算での付着量が片面あたり3〜25mg/m2のクロム水和酸化物層と、該クロム水和酸化物層の少なくとも一方の上に形成された接着性樹脂層、及び該接着性樹脂層の上に形成されたポリプロピレン系樹脂層からなる、厚さ15〜200μmの樹脂層を具備し、前記接着性樹脂層は、厚さ2〜10μmの接着性ポリエチレンと接着性ポリプロピレンの混合物であって、前記接着性ポリエチレンを8〜20%含み、前記ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン樹脂をベースに、エチレン−プロピレンラバーをコンパウンドした共重合体であり、母層のポリプロピレンの重量比率が70%以上97%以下であることを特徴とする缶用樹脂ラミネート鋼板。
本発明によれば、本発明のラミネート鋼板を、18L缶やペール缶等のような大型缶をはじめとする一般缶用途の缶胴部や蓋材に適用した場合、耐熱性(塗装印刷適性)、汎用性(酸性内容物からアルカリ性内容物までの広範囲な用途適性)に優れ、且つ内容物保護性(加工部や傷付箇所の耐食性および缶内容物中に金属や有機成分の溶出を生じにくい特性)、缶体耐圧強度等の諸特性に優れることになる。
以下、本発明の詳細と限定理由について説明する。
本発明のラミネート鋼板の素地である表面処理鋼板は、経済性と樹脂との密着性確保の観点から電解クロメート処理鋼板(以下、ティンフリースチール:TFSと称することもある)とする。
電解クロメートを施す鋼板としては、通常この種の表面処理鋼板に用いられる鋼板であれば特に限定せず、例えば、板厚0.1〜0.5mmの通常の低炭素冷延鋼板、低炭素Alキルド鋼板等が用いられ、これらの鋼板上に電解クロメート処理により、下から金属クロム層、その上にクロム水和酸化物を形成させる。金属クロム層のクロム付着量は、片面あたり40〜200mg/m2とする。付着量が40mg/m2未満の場合、衝撃を与えた際に表面処理層による被覆が損なわれ、腐食が進行しやすいため耐食性が低下する。一方、付着量が200mg/m2を超えても性能上は問題ないが、経済的観点から好ましくない。好ましい範囲は80〜150mg/m2である。
また、クロム水和酸化物層の付着量は、片面あたり金属クロム換算で3〜25mg/m2とする。付着量が3mg/m2未満では金属クロム層がクロム酸化物によって均一に覆われず金属クロム層の露出面積が大となり、樹脂層との密着力が損なわれ、樹脂層に疵がついた場合、腐食が進行しやすく耐食性が低下する。一方、25mg/m2を超えるとクロム酸化物層が厚すぎることによってTFSの表面色調が劣化するので好ましくない。
本発明のラミネート鋼板は、上記電解クロメート処理鋼板の少なくとも片面(缶内面側となる鋼板面)に、接着性樹脂層(下層)と、ポリプロピレン系樹脂層(上層)からなる、厚さの合計が15〜200μmの樹脂層を有する事を特徴とするものである。樹脂の厚みが15μmを下回ると、2回塗装以下の耐食性しか得られず、また、衝撃などにより傷が入りやすい。一方、樹脂層の厚さが200μmを超えると巻締めが行いにくくなると同時に経済性に劣り、実用的ではない。
ラミネートの方法については特に限定されず、事前に作成した樹脂フィルムを熱した鋼板上にラミネートする方法、Tダイなどで溶融した樹脂を鋼板に直接熱押出しする方法、などがあり、そのいずれでも良い。
ポリプロピレン樹脂層(上層)
上記複層の樹脂層のうち缶内容物と接する上層樹脂層は、ポリプロピレン系樹脂からなる。このポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレンとEPRのコンパウンドした共重合体であり、母層のプロピレンの重量比率は70%以上97%以下とする。プロピレン成分の比率が70%未満の領域では、ポリプロピレンのマトリックス効果が薄れ、耐熱性が悪化する。一方、プロピレン成分の比率が97%を越えると、EPR成分による耐加工クラック性の向上の効果が見られなくなる。より好ましい耐加工クラック性を得るには、母相プロピレンの重量比率は95%以下にすることが望ましい。
ポリプロピレン系樹脂は、メルトフローレート(MFR JIS K6758)が0.5〜20g/10minであることが好ましい。メルトフローレートが0.5g/10min未満では、フィルムを製膜する際、もしくは直接押し出しラミネートを行う際、押し出し機のモーター負荷が大きくなり、生産性が低下する場合がある。メルトフローレートが大き過ぎると表面粗さが小さくなり、耐ブロッキングが低下するので20g/10min以下であることが望ましい。
上層に使用するプロピレン−EPRコンパウンド樹脂には、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、顔料、染料などを本発明の効果を損なわない限度で適量配合してもよい。但し、低融点で水溶液などに易溶性の配合物や低融点の配合物、例えばフェノール系の酸化防止剤などはできるだけ配合しないことが望ましい。
接着性樹脂層(下層)
鋼板面と接する下層樹脂層には、接着性(熱接着性)ポリプロピレンと接着性(熱接着性)ポリエチレンを主成分樹脂とし、これら両樹脂は混合したものを接着性樹脂層として具備する。この時、接着性樹脂層の厚みは2〜10μmであり、接着性ポリエチレンを8〜20%含むものとする。
上記の接着性ポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体、若しくはプロピレンとαオレフィンとのブロック又はランダム共重合体である。後者の場合のαオレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
接着性ポリプロピレンのメルトフロレート(MFR JIS K6758)は0.5〜20g/10minであることが好ましい。
また、接着性ポリプロピレンは、ポリプロピレン樹脂に不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を導入することで接着性(熱接着性)を付与したものが好ましい。この酸変性に使用する不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、マレイン酸、アクリル酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、ナジック酸などの不飽和カルボン酸又はその誘導体、例えば、アミド、イミド、無水物、エステル、酸ハライドなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができるが、無水マレイン酸を用いるのが一般的である。これらの不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をポリプロピレンに導入する方法は、グラフト重合が一般的である。特に、無水マレイン酸を0.01〜5重量%とするグラフト重合が好ましい。
上記接着性ポリプロピレン系樹脂に混合する接着性ポリエチレンとしては、エチレンの単独重合体、若しくはエチレンとαオレフィンとのブロック又はランダム共重合体であるが、上層との密着性を確保するためには後者の共重合体が好ましい。ポリエチレン樹脂がエチレンとαオレフィンとのブロック又はランダム共重体である場合、側鎖を与えるαオレフィンの量は1〜25mol%が望ましい。αオレフィンの量が1mol%未満では上層のポリプロピレン系樹脂層との密着性が低下し、一方、25mol%を超えると常温での粘着性が増大し、製膜が難しくなる。αオレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。なお、上記ポリエチレン樹脂の特に好ましい共重合体はランダム共重合体である。
上記接着性ポリエチレンのメルトフローレート(MFR ASTM D1238)は製膜性の観点から0.5〜50g/10minであることが望ましい。
また、上記接着性ポリエチレンは、ポリエチレン樹脂に不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を導入することで接着性(熱接着性)を付与したものが好ましい。この酸変性に使用する不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、マレイン酸、アクリル酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、ナジック酸などの不飽和カルボン酸又はその誘導体、例えば、アミド、イミド、無水物、エステル、酸ハライド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができるが、無水マレイン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等を用いるのが一般的である。また、そのなかでも耐食性の観点からは無水マレイン酸を単独で若しくは無水マレイン酸と他の不飽和カルボン酸の1種又は2種以上を混合したものを用いるのが好ましい。
また、グリシジルメタクリレート、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アイオノマーをそれぞれ単独で、若しくは2種以上を混合して用いてもよい。これらの不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をポリエチレンに導入する方法としては、グラフト重合、ランダム重合、ブロック重合が挙げられる。特に、無水マイレン酸を0.01〜5重量%とするグラフト重合が好ましい。
さらに、上記接着性ポリプロピレンと接着性ポリエチレンからなる接着層樹脂層は、接着性ポリエチレンを8〜20モル%含むこととする。接着性ポリエチレンの割合が8モル%未満では耐食性の向上効果がない。一方、耐熱性の観点からは接着性ポリエチレンの割合が50モル%以下であれば熱変形の問題がなく良好であるが、上層下層間の密着力が低く層間剥離しやすいため、製缶後の耐圧強度が不足し、2重巻き締め部からの気密漏洩の危険性がある。確実に気密漏洩を防止できるだけの缶体の耐圧強度を確保するには、接着性ポリエチレンの割合を20モル%以下にする必要がある。また、接着性樹脂には、前記以外の配合物も、本発明の効果を損なわない限度で適量配合できる。
上記接着性ポリプロピレンと接着性ポリエチレンからなる接着性樹脂層の厚みは、2〜10μmとする。接着層の厚みが2μm未満の場合、接着性樹脂が局所的に薄い箇所ができやすく、鋼板の被覆が局所的に劣化し、耐食性が損なわれる危険性がある。一方で、上層のポリプロピレン樹脂よりも下層の接着性樹脂は一般的に高価であり、接着層厚みを10μmよりも厚くした場合、性能的には問題は発生しないが、経済性に劣るため実用的ではない。
フィルム熱圧着法による本発明例
18L缶等、一般缶用途に通常用いられている板厚0.32mmの冷延鋼板を通常の方法で電解脱脂および酸洗した後、公知の方法により電解クロメート処理し、付着量が100mg/mの金属クロム層と、その上層に金属クロム換算での付着量が8mg/mのクロム水和酸化物層からなる電解クロメート処理層を形成した。この表面処理鋼板を樹脂フィルムの接着層の融点〜250℃に加熱し、鋼板の片面に樹脂フィルムをラミネートした後、2秒以内に水で急冷することによりラミネート鋼板を製造した。次いで、上記のラミネート後、上層樹脂の融点以下の温度で缶外面側に相当する面にクリヤ塗装を行った。なお、接着層としては、接着性ポリプロピレンと接着性ポリエチレンの混合物を用い、詳細には表1に示す通りである。
押し出し法による本発明例
上記フィルム熱圧着法により本発明例と同様の方法により電解クロメート処理層を形成した。
この表面処理鋼板を、140℃程度に予熱し、Tダイ押し出し法(エクストリューダー法)により溶融樹脂を塗布した後、2秒以内に水で急冷することによりラミネート鋼板を製造した。次いで、上記のラミネート後、上層樹脂の融点以下の温度で缶外面側に相当する面にクリヤ塗装を行った。なお、接着層としては、接着性ポリプロピレンと接着性ポリエチレンの混合物を用い、詳細には表1に示す通りである。
Figure 2009096083
比較例
18L缶等、一般缶用途に通常用いられている板厚0.32mmの冷延鋼板を通常の方法で電解脱脂および酸洗した後、公知の方法により電解クロメート処理し、金属クロム層と、その上層にクロム水和酸化物層からなる電解クロメート処理層を形成した。なお、金属クロム層の付着量と、クロム水和酸化物層の金属クロム換算での付着量は表2に示す通りである。
この表面処理鋼板を樹脂フィルムの接着層の融点〜250℃に加熱し、鋼板の片面に樹脂フィルムをラミネートした後、2秒以内に水で急冷することによりラミネート鋼板を製造した。次いで、上記のラミネート後、上層樹脂の融点以下の温度で缶外面側に相当する面にクリヤ塗装を行った。なお、接着層としては、接着性ポリプロピレンと接着性ポリエチレンの混合物を用いた。詳細には表2に示す通りである。
Figure 2009096083
以上により得られた本発明例および比較例のラミネート鋼板に対して、下記に示す方法により性能評価を行った。
(1) 耐熱性 (塗装印刷時におけるラミネート面の金属製の保持台との融着性)
樹脂被覆鋼板のラミネート面に、直径50mm重さ200gの円筒状の筒を静置した。この状態で、150℃×30分保持した後、冷却し、筒状体の接触跡の有無を調べ、接触跡がついた場合は×、つかなかった場合は○とした。
(2) 加工後耐食性
ラミネート鋼板を48mmφに打ち抜き、このサンプルに肩半径1.7mmR、直径25mmのポンチとダイスのセットで、高さ2mmの高さになるように軽度の絞り加工を施した。作製されたサンプルは、ポンチに沿った筒状部と、残余の平板部からなる帽子のような形状のサンプルとなる。この帽子形状外面側(凸側)のサンプルの筒状部の肩部は、略曲げ加工となる。このサンプルを中性洗剤(商品名:ライポンF)中に38℃で2日間浸漬し、
取り出した後に、水洗、乾燥した。次に、シャーレに電解液(1%NaCl+界面活性剤)を適量注ぎ、これにサンプルを、下が凸側になるように置き、サンプルの肩部と上面のみが浸漬される状態にした。この状態で、サンプルの下地鋼板と電解液の間に、6.2Vの電圧をかけ(サンプルが陰極)、電圧負荷後4sec.後の電流値を測定した。電流値が1mA未満であれば○、1mA以上であれば×とした。
(3) 疵つき部耐食性
樹脂被覆鋼板に対して平板のままクロスカットを行ったのち、20g/LのNaOH溶液中で38℃、10日間の浸漬試験を行ない、試験後のカット部の腐食幅を下記の基準により評価した。○:腐食幅1mm以下 ×:腐食幅1mm超
(4) 耐圧強度
ラミネート面を内側にして、ラミネート鋼板をロックシーム法により接合し、18L缶胴状に成形した後、同じくラミネート面を内側にして18L缶の天蓋、地蓋状に成形したものを2重巻き締め法により標準的な巻き締め形状に巻き締め、巻き締め部をフィルム上層樹脂の融点以上の温度に加熱し、胴と蓋のフィルム上層同士を熱融着させた。このようにして出来上がった缶体に内側からエア圧をかけながら水中に没し、巻き締め部から気泡が漏洩する時のエア圧力により評価した。○:1.2kgf/cm以上 ×:1.0kgf/cm未満
(5) 色調
ラミネート鋼板表面の明度を、JIS Z 8729 において規定される10度視野の明度指数L*値に基づき3段階で評価した(数値が大きいほど良好)。○: L*≧55 △:55>L*≧50 ×:50>L* (○以上であれば明るく、良好な色調である。)
表1,2は実施例,比較例の詳細及び性能評価結果を示している。実施例のいずれの場合も、(1)〜(3)の評価に対し、良好な結果が得られ、ラミネート一般缶として十分な性能を有するラミネート鋼板である。
得られた結果を表3に示す。
Figure 2009096083
本発明例では、耐熱性、加工後耐食性、疵つき部耐食性、耐圧強度、色調のいずれの特性も優れていた。
一方、比較例1、2は、上層樹脂の母相プロピレンの比率が高すぎるため、耐熱性は十分であるが、十分な加工後耐食性が得られなかった。比較例3は母相プロピレンの比率が低すぎる為、耐熱性が不充分であった。比較例4は上層ポリプロピレン系樹脂の厚みが薄いため、加工によるクラックの抑制ができず、加工後の耐食性が不十分であった。比較例5は下層樹脂中の接着性ポリエチレンの膜厚が薄すぎるため、接着性が十分でなく、疵つき耐食性が劣る結果となった。比較例6は接着層中の接着性ポリエチレンの混合比率が低すぎるため、鋼板との密着力が不足し、疵つき部耐食性が劣るほか、鋼板との界面で剥離がおきやすくなるため、十分な耐圧強度も得られなかった。比較例7は、接着性ポリエチレンの混合比率が高いため、接着層樹脂と上層ポリプロピレン系の樹脂との接着力が低くなり、耐圧強度が悪くなっている。比較例8では電解クロメート処理鋼板における金属クロムの付着量が少なかったため加工部及び疵つき部で十分な耐食性が得られなかった。比較例9では電解クロメート処理鋼板におけるクロム水和酸化物の付着量が少なかったため、樹脂層との密着が不十分な結果、疵つき部の耐食性が不十分となり、また、耐圧強度も劣る結果となった。比較例10では電解クロメート処理鋼板におけるクロム水和酸化物の付着量が多かったため、色調が劣る結果となった。比較例11〜13は、皮膜組成がポリプロピレンとポリエチレンのブロック共重合体、ランダム共重合体であり、いずれも、耐熱性、加工後耐食性が劣る結果となっていた。

Claims (1)

  1. 鋼板と、該鋼板の両面に形成された金属クロム付着量が片面あたり40〜200mg/m2の金属クロムめっき層と、該両金属クロム層の上に形成された金属クロム換算での付着量が片面あたり3〜25mg/m2のクロム水和酸化物層と、該クロム水和酸化物層の少なくとも一方の上に形成された接着性樹脂層、及び該接着性樹脂層の上に形成されたポリプロピレン系樹脂層からなる、厚さ15〜200μmの樹脂層を具備し、前記接着性樹脂層は、厚さ2〜10μmの接着性ポリエチレンと接着性ポリプロピレンの混合物であって、前記接着性ポリエチレンを8〜20%含み、前記ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン樹脂をベースに、エチレン−プロピレンラバーをコンパウンドした共重合体であり、母層のポリプロピレンの重量比率が70%以上97%以下であることを特徴とする缶用樹脂ラミネート鋼板。
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