JP2009078998A - Jagged2を用いる制癌剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】癌治療は、従来の化学療法だけでは長期的な治癒が期待できないので、従来の抗癌剤とは作用機序の異なる新しい治療方法として、免疫療法の確立が望まれる。癌の治療や再発防止に確固たる術のない現状を打開するため、安全かつ有効な癌の免疫療法の確立が期待される。
【解決手段】NotchリガンドであるJagged2遺伝子の発現が増強された抗原提示細胞を有効成分とする制癌剤、配列番号1又は3の全長アミノ酸配列からなるJagged2タンパク質あるいはその活性ドメインを含むJagged2断片を有効成分とする制癌剤、Jagged2又はそれと同様の活性を有するペプチドをコードする塩基配列をベクターに挿入連係することにより構築される発現ベクター、前記発現ベクターを導入した細胞である抗原提示細胞、及び前記発現ベクターを有効成分とするDNAワクチン。
【選択図】図1

Description

本発明は、Jagged2を用いる制癌剤に関する。更に詳細には、NotchリガンドであるJagged2遺伝子の発現が増強された抗原提示細胞を有効成分とする制癌剤、配列番号1又は3の全長アミノ酸配列からなるJagged2タンパク質あるいはその活性ドメインを含むJagged2断片を有効成分とする制癌剤、Jagged2又はそれと同様の活性を有するペプチドをコードする塩基配列をベクターに挿入連係することにより構築される発現ベクター、前記発現ベクターを導入した細胞である抗原提示細胞、及び前記発現ベクターを有効成分とするDNAワクチンに関する。
用語「ノッチ(Notch)」は、1917年にモルガン(T.H. Morgan)らによる、翅末端にV字の切り込み(notch)を有するショウジョウバエの記述において最初に用いられ、その遺伝子DNAの塩基配列は1985年に初めて報告された。ノッチ分子は、そのN末端を占めるシクナルペプチド、膜貫通(細胞外)ドメイン、細胞内ドメイン等からなる膜タンパク質ないしは膜貫通レセプターであり、発生や分化を制御するノッチの機能は細胞表面のリガンドにより活性化される。ノッチとそのリガンドは多数の細胞で発現され、哺乳類では4種のノッチ、即ち、Notch1〜Notch4、及び5種のノッチリガンド、即ち、Delta1、Delta3、Delta4、Jagged1及びJagged2が現在知られている(非特許文献1)。
係るノッチとそのリガンドの作用・機能に関しては、例えば、これ等のシグナル伝達によるリンパ球分化の制御、即ち、造血幹細胞のT細胞やB細胞等への分化、ノッチとそのリガンドによるT細胞やB細胞への機能化の制御等(非特許文献2)、ノッチによる成熟T細胞への分化とその活性の支配(非特許文献3)、転写後修飾である糖鎖付加(glycosylation)によるノッチのシグナル伝達の制御(非特許文献1)等が、上記の通り、非特許文献1〜3において総説されている。
更に、前述した哺乳類のノッチとそのリガンド並びにこれ等の遺伝子の利用に関しては以下が知られている:全能性幹細胞培養用フィーダー(特許文献1)、幹細胞培養媒体(特許文献2)、骨髄移植や臓器移植等における拒絶反応やアレルギー反応の抑制(特許文献3)、骨粗鬆症や破骨細胞分化等の治療剤(特許文献4)、血管細胞調節剤(特許文献5)、細胞分化の制御(特許文献6)、前立腺細胞の増殖抑制(特許文献7)、細胞分化の抑制による前駆細胞の増幅(特許文献8)、Delta又はJagged遺伝子、及びアレルゲン、MHC抗原、癌抗原等の遺伝子を移入した免疫担当細胞を用いるワクチン(特許文献9)、Deltaの細胞外ドメインとIgGのFcドメインとの融合タンパク質を用いるIL4発現とTh1/Th2バランスの調節剤(特許文献10)、Deltaを用いる臓器移植での拒絶反応の抑制剤や骨髄移植に伴う疾患の治療剤(特許文献11)、ノッチリガンドと担体薬物との複合体を用いる癌、アレルギー、感染症等の免疫療法剤(特許文献12)、サイトカインの発現調節剤(特許文献13)、Delta1とJagged1による骨髄性白血病細胞株の増殖抑制(非特許文献4)等。
上記に加えて、Delta1又はDelta4(即ち、Delta1又はDelta4を強制的に過剰発現させた抗原提示細胞)でCD8陽性Tリンパ球を刺激すると、CTLへの分化が促進されて抗腫瘍作用が生じるが、この時にJagged1又はJagged2の発現を強制的に抑制すると、Delta1又はDelta4の効果は相乗的に増強されるという報告もある(特許文献14)。また、Jagged2はin vitroの系において、造血幹細胞からのナチュラルキラー細胞(NK細胞)の発生を促進するという報告もある(非特許文献6)。
以上に見られる通り、既にノッチとそのリガンドの作用機能の活用技術は多様に開発されているが、Jagged2の制癌作用については未だ知られていない。
特開2005−34 WO02/016556 特開2003−93048 特開2001−122798 特開平10−316582 特開2004−65243 特表2004−524269 特表2000−511043 WO04/083372 WO04/062686 WO04/022730 WO03/087159 WO03/011317 特開2006−241087 Nature Reviews Molecular Cell Biology、 第4巻、 786-797、 October 2003. Nature Immunology、 第5巻 (3号)、 247-253、 March 2004. Journal of Immunology、第173巻、7109-7113、 2004. International Journal of Molecular Medicine、 第14巻 (2号)、 223-226、 2004. Gene Therapy、 第7巻、 1063-1066、 2000. Blood、 第105巻 (9号)、 3521-3527、 2005.
癌の治療や再発防止に確固たる術のない現状にあっては、安全かつ有効な癌の免疫療法の確立は、患者とその家族、そして担当臨床医のみならず、全人類にとって解決されるべき待望の課題である。
本発明の目的は、Notchリガンドの1つであるJagged2による癌の増殖抑制を利用した制癌剤及び癌に対する治療方法を提供することにある。
Jagged2遺伝子の発現が増強された抗原提示細胞やJagged2タンパク質を有効成分とする制癌剤、Jagged2遺伝子の過剰発現をもたらすDNAワクチンなどを投与することによって、癌の増殖を抑制し、更には腫瘍体積を縮小することもできる。従って、本発明によって、癌に対する免疫療法の確立が可能となる。
(略語の説明)
先ず、本明細書で使用する略語について、略語(用語)の形で以下に列記する:CTL(細胞傷害性Tリンパ球;Cytotoxic T Lymphocyte)、IgG(免疫グロブリンG;Immunoglobulin G)、NK細胞(ナチュラルキラー細胞;natural killer cell)、抗aGM1抗体(抗アシアロ−GM1抗体;anti-GM1 antibody)、及びIFNγ(インターフェロンγ;interferon γ)。
(配列表の説明)
配列番号1:マウスJagged2の全長アミノ酸配列である。
配列番号2:マウスJagged2をコードするcDNAの塩基配列であって、コード領域は第12番〜第3757番塩基である。
配列番号3:ヒトJagged2の全長アミノ酸配列である。
配列番号4:ヒトJagged2をコードするcDNAの塩基配列であって、コード領域は第405番〜第4121番塩基である。
配列番号5と6:マウスJagged2 cDNA増幅用のプライマーである。
本発明によれば、前述の課題を解決するための手段として、次の(1)〜(11)がそれぞれ提供される:
(1)NotchリガンドであるJagged2又はその活性ドメインをコードする遺伝子の発現が増強された抗原提示細胞を有効成分とし、薬効を奏する量の該抗原提示細胞を含有することを特徴とする制癌剤。
(2)該遺伝子が、配列番号1又は3の全長アミノ酸配列あるいはその活性ドメインを含む部分有効配列をコードする遺伝子であることを特徴とする、上記1項に記載の制癌剤。
(3)該活性ドメインが、配列番号1の第1番〜第1083番アミノ酸又は配列番号3の第1番〜第943番アミノ酸であることを特徴とする、上記1又は2項に記載の制癌剤。
(4)該遺伝子が、配列番号2の第12番〜第3757番の配列、配列番号2の第12番〜第3260番の配列、配列番号4の第405番〜第4121番の配列及び配列番号4の第405番〜第3233番の配列からなる群より選ばれる塩基配列を含むものであることを特徴とする、上記1〜3項のいずれかに記載の制癌剤。
(5)配列番号1又は3の全長アミノ酸配列からなるJagged2タンパク質、あるいはその活性ドメインを含むJagged2断片を有効成分とし、薬効を奏する量の有効成分を含有することを特徴とする制癌剤。
(6)該活性ドメインが、配列番号1の第1番〜第1083番アミノ酸又は配列番号3の第1番〜第943番アミノ酸であることを特徴とする、上記5項に記載の制癌剤。
(7)Jagged2又はその活性ドメインが、NK細胞のインターフェロンγ誘導能又は細胞傷害活性を増強するものであることを特徴とする、上記1〜6項のいずれかに記載の制癌剤。
(8)Jagged2又はそれと同様の活性を有するペプチドをコードする塩基配列をベクターに挿入連係することにより構築される発現ベクター。
(9)該塩基配列が、配列番号2の第12番〜第3757番の配列、配列番号2の第12番〜第3260番の配列、配列番号4の第405番〜第4121番の配列及び配列番号4の第405番〜第3233番の配列からなる群より選ばれる塩基配列を含むものであることを特徴とする、上記8項に記載の発現ベクター。
(10)上記8又は9項の発現ベクターを導入した細胞である抗原提示細胞。
(11)上記8又は9項の発現ベクターを有効成分とするDNAワクチン。
本発明者はNotchリガンドの1つであるJagged2に着目し、Jagged2遺伝子の過剰発現がもたらす効果について鋭意検討した。その結果、驚くべきことに、Jagged2を過剰発現させると、腫瘍の増殖が抑制された。具体的には、Jagged2をコードするcDNAを挿入連携した発現ベクターをマウスリンパ腫細胞に導入したところ、空のベクターを導入したリンパ腫細胞と比べて、マウス皮下における腫瘍の増殖が抑制された(実施例1と図1を参照)。Jagged2が生体内で腫瘍の増殖を抑制するメカニズムについては明らかになっていないが、研究を進めたところ、以下に詳述する知見が得られた。
Jagged2による腫瘍の増殖抑制を詳細に検討するために、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)に着目した。初めに、NK細胞を除去する抗体である抗aGM1抗体がJagged2の過剰発現に与える影響を観察した。抗aGM1抗体を投与した場合には、腫瘍の増殖は抑制されなかった(実施例2と図2(b)を参照)。このことから、Jagged2の効果はNK細胞を介していると考えられた。更にJagged2がNK細胞に与える影響について検討したところ、Jagged2はNK細胞からのインターフェロンγの誘導を高めることが明らかになった(実施例3と図3を参照)。また、Jagged2はNK細胞の細胞傷害活性を増強した(実施例4と図4を参照)。上記の知見から、Jagged2は生体内において単にNK細胞の分化を促進してその数を増やすのではなく、NK細胞そのものに作用することでNK細胞を介した抗腫瘍作用を発揮し、腫瘍の増殖を抑制することが明らかとなった。
更に本発明者は、可溶性Jagged2をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターをDNAワクチンとして構築し、マウスに免疫することでその効果を確認し(実施例5と図5を参照)、本発明を完成するに至った。
尚、上述した非特許文献6にはJagged2はin vitroの系において、造血幹細胞からのNK細胞の発生を促進するという報告がある。しかし、この文献には、生体内におけるJagged2の腫瘍増殖抑制効果や、Jagged2がNK細胞に与える影響(即ち、IFNγ誘導能や細胞傷害活性の増強)については全く記載がない。従って、Jagged2そのもののin vivoにおける抗腫瘍効果は、本発明者によって初めて知見されたものである。
次に、本発明について具体的に説明する。

(1)Jagged2のアミノ酸配列とそれをコードするcDNA
Jagged2のアミノ酸配列とそれをコードするcDNAはいずれも公知である。例えば、マウスやヒトのJagged2の配列は公知のデータベース、例えば、NCBI(National Center for Biotechnology Information)から入手することができる。ヒトとマウスのJagged2全長アミノ酸配列及びそれをコードするcDNA塩基配列を配列表の配列番号1〜4に記載した。
尚、本発明の制癌剤やDNAワクチンを使用する際には、その安全性と有効性を確保するために、同種の生物に由来するタンパク質とそれをコードする遺伝子の使用が望ましい。例えば、ヒトが対象の場合には、配列表の配列番号3と4に記載したヒトJagged2のアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列に基づいて発明を実施することが好ましい。
(2)Jagged2発現ベクター
Jagged2又はその活性ドメインをコードする遺伝子の発現を強制的に増強するために、Jagged2又はその活性ドメインをコードするcDNA塩基配列を外来遺伝発現用ベクターに挿入連係することにより構築したJagged2発現ベクターを使用することができる。また、発現ベクターに組み込む塩基配列としては、Jagged2の全長アミノ配列をコードする全長cDNA塩基配列が挙げられる。全長cDNA塩基配列は配列番号2と4に示したが、そのコード領域(配列番号2の第12番〜第3757番の塩基配列と配列番号4の第405番〜第4121番の塩基配列)のみを使用することもできる。また、Jagged2の活性ドメインを含むペプチドをコードするDNA(例えば、配列番号2の第12番〜第3260番の塩基配列と配列番号4の第405番〜第3233番の塩基配列)を発現ベクターに組み込むこともできる。この部分配列がコードするペプチドは全長Jagged2と同様の活性を示すが、可溶性になっているので好ましい。
本発明で使用する外来遺伝子発現用ベクターに特に限定はないが、動物細胞を宿主とする公知又は市販のベクターを使用することができる。例えば、レトロウイルス系、アデノウイルス系、EBウイルス系、SV40系、ポリオーマ系等々を使用することができる。本願の実施例ではpCDNA3.1(米国、Invitrogen社製)を使用したが、これに限定されるものではない。
(3)Jagged2遺伝子の発現が増強された細胞
上述したJagged2発現ベクターは、DNAワクチンとしてそのまま使用することもできるし、Jagged2を過剰発現する形質転換体の作製に用いることもできる。
Jagged2を過剰発現する形質転換体は抗原提示細胞として、制癌剤の有効成分として使用することができる。Jagged2発現ベクターを導入する細胞に特に限定はなく、樹状細胞、B細胞、マクロファージ等を挙げることができる。Jagged2発現ベクターを細胞に導入する方法にも特に限定はなく、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、FuGENE法(米国、Roche社製)、電気穿孔法等によるトランスフェクション、アデノウイルスベクターやレトロウイルスベクター等を用いるウイルス感染による導入方法、マイクロインジェクション等を挙げることができる。
(4)Jagged2を用いる制癌剤
本発明においては、Jagged2タンパク質又はその活性ドメインを含むJagged2断片を、単離した形態あるいは抗原提示細胞に提示された形態で、制癌剤の有効成分として使用することができる。有効成分として使用するJagged2は配列番号1と3に示した全長アミノ酸配列からなるタンパク質のみならず、その活性ドメインを含むJagged2断片でもよい。Jagged2の活性ドメインは、マウスでは配列番号1の第1番〜第1083番アミノ酸であり、ヒトでは配列番号3の第1番〜第943番アミノ酸である。これらの活性ドメインを含む部分配列は全長タンパク質と同様の活性を示すものである。
単離したJagged2タンパク質又はJagged2断片は、配列表に示したアミノ酸配列に基づいて、公知のペプチド合成法で合成してもよいし、公知のタンパク質精製法を用いて細胞や組織から抽出してもよい。又、本願の実施例5で作製したDNAワクチン用の発現ベクターは可溶性のJagged2をコードしているので、この発現ベクターを細胞に導入して得た形質転換体を培養すれば、培養上清からJagged2を単離することができる。Jagged2タンパク質やその断片を単離・精製する方法に特に限定はなく、公知のタンパク質精製方法を実施すればよい。具体的には、塩析、有機溶媒による沈殿、市販のゲルや樹脂への吸着脱着を用いるバッチ法やカラム精製等を使用することができる。
抗原提示細胞に提示された形態で、Jagged2タンパク質又はその活性ドメインを使用する場合には、上記(3)項で詳述した、Jagged2発現ベクターを導入した形質転換体を抗原提示細胞として使用することができる。
例えば、抗原提示細胞を皮下や腹腔内等に接種すると、腫瘍の増殖が抑制される。同様の効果が、Jagged2遺伝子を挿入連結した発現ベクターであるDNAワクチンでマウスを免疫した場合にも観察される。これらの結果は、単離したJagged2タンパク質又はその活性ドメインを含む断片を投与しても、同様の効果が達成されることを示している。本発明の制癌剤が腫瘍の増殖を抑制するメカニズムは明らかではないが、生体内において単にNK細胞の分化を促進してその数を増やすのではなく、NK細胞そのものに作用することでNK細胞を介した抗腫瘍作用を発揮し、腫瘍の増殖を抑制すると考えられる。
本発明の効果、即ち、Jagged2を過剰発現する形質転換体、Jaggedタンパク質やその断片、及びJagged2発現ベクターであるDNAワクチンの抗腫瘍効果は、NK細胞の細胞傷害活性の測定や、腫瘍の増殖の計測によって評価することができる。
NK細胞の細胞傷害活性を測定するためには、Jagged2で誘導したNK細胞をエフェクター細胞とし、51Crで標識した腫瘍細胞を標的細胞として混合する。次に一定時間培養した後、培養上清に遊離される51Crの放射活性を計測する。この場合、培養上清から計測される51Crの放射活性が高いほど、細胞傷害活性も高いとみなす(実施例4を参照)。
又、腫瘍の増殖に対する本発明の効果は、例えば、腫瘍細胞の移植前又は移植後にJagged2(又はJagged2を過剰発現する抗原提示細胞)あるいはDNAワクチンを投与し、腫瘍細胞の増殖により拡大する腫瘍のサイズ(円状の腫瘍細胞領域の縦径×横径)を計測することによって評価することができる(実施例1を参照)。この場合、腫瘍のサイズが変化しないか、減少すれば、腫瘍細胞の増殖が抑制されたと評価する。
本発明に係るJagged2タンパク質やその断片、抗原提示細胞又は発現ベクター、及びそれらを有効成分とする制癌剤は、アンプルやバイアル瓶等に分注し、液状又は乾燥品(凍結乾燥品)の形状で、密封された状態で提供かつ使用に供される。
以下、実施例を挙げて本発明の構成と効果を具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(1)Jagged2発現ベクターの構築
マウスJagged2の全長cDNA配列を次の方法で用意した。
C57BL/6マウスの脾臓からRNAを抽出し、抽出したRNAをテンプレートとしてcDNAを逆転写した。次に、マウスJagged2のコード領域の全長、即ち、配列番号2の第12番〜第3757番塩基をPCR法で増幅した。具体的には、プライマーとして、以下の配列を使用し、TaKaRa PCR Thermal Cycler Dice(日本国、Takara社製)で増幅した:
forward 5' atgcgggcac gcggctgggg acg 3'(配列番号5)及び
reverse 5' ttctgggtgc cagcctggt 3'(配列番号6)。
上記のcDNA配列を発現ベクターであるpCDNA3.1(米国、Invitrogen社製)のCMVプロモーターの下流に位置するXhoIサイトとEcoRIサイトに、日本国、Takara社製のラーゲーションキット(DNA Ligation Kit Ver.2.1, カタログ番号:6022)を用いて組み込んで、Jagged2発現ベクターを構築した。
(2)Jagged2発現細胞の樹立
次に、構築した発現ベクターをマウスリンパ腫細胞に導入した。
BALB/cマウス由来のマウスリンパ腫細胞であるA20細胞(ATCCのカタログ番号:TIB−208TM)に、上記(1)項で作製したJagged2発現ベクターを電気穿孔法で導入した。具体的には、細胞数を5×106個、導入するベクターの量を15μgとし、米国、BIO RAD社製のGenePulser Xcellを用い、220V、950μF、抵抗∞の条件で電気穿孔法を実施した。得られた細胞を、10%牛胎仔血清を添加したRPMI1640培地に終濃度50μg/mlのG418を添加しもので20日間培養し、ベクターの導入された細胞を選択した。得られた細胞をA20/Jag2細胞と命名した。
コントロール用の細胞は、Jagged2を組み込んでいないpCDNA3.1を用いて上記と同様にA20細胞をトランスフェクトすることで樹立した。得られたコントロール細胞をA20/mock細胞と命名した。
(3)Jagged2の制癌作用
10匹のSCIDマウスの腹部に、腫瘍として上記(2)項で作製したA20/Jag2細胞又はA20/mock細胞を皮下注射した。注射した細胞の量は1×106個とした。細胞の注射から1日おきに腫瘍のサイズ(腫瘍領域の縦径×横径)を測定した。
結果を図1に示した。コントロールであるA20/mock細胞からなる腫瘍は22日間で3cm2以上になったが、Jagged2を導入したリンパ腫細胞であるA20/Jag2細胞はたった0.5cm2ほどしか増殖しなかった。従って、Jagged2の過剰発現によって、腫瘍の増殖は抑制された。
Jagged2の制癌作用に対する抗アシアロGM1抗体の影響
20匹のSCIDマウスを2つの群にわけ、一方の群(n=10)においては、各マウスの腹腔内に100μgの抗アシアロGM1抗体(日本国、MBL社製)を、他方の群(n=10)においては、コントロールとして100μgのウサギ免疫グロブリンG(Rb IgG)(米国、Jackson laboratory社製)を投与した。次の日に、全てのSCIDマウスの腹の左側に腫瘍として1×106個のA20細胞(以下「A20/wt」と略す)を移植し、各群の半分(即ち、5匹)のマウスの腹部右側に抗原提示細胞として上記のA20/Jag2細胞を、残り半分(即ち、5匹)にはコントロールとして上記のA20/mock細胞を1×106個移植した。腫瘍移植の3日後と5日後には、各マウスの腹腔内に再び前回と同じ抗体を投与した。細胞を移植してから径時的に左側の腫瘍のサイズを測定し、腫瘍の増殖に対する右側に移植した細胞の影響を確認した。尚、腫瘍のサイズは、腫瘍の縦径×横径とした。
結果を図2(a)と(b)に示した。対照として使用したRb IgGはJagged2の腫瘍増殖抑制効果に影響を与えなかった(図2(a)参照)。一方、抗aGM1抗体を投与した群においては、Jagged2による腫瘍増殖抑制効果は見られなかった(図2(a)参照)。抗aGM1抗体はNK細胞を除去する抗体であるため、この結果から、Jagged2の効果はNK細胞を介していることが判明した。
Jagged2のインターフェロンγ誘導作用
BALB/cマウスからDX5陽性細胞(即ち、NK細胞)を分離した。具体的には、BALB/cマウスから脾臓細胞を調製し、PBSに溶解した。次に細胞を抗DX5抗体(ドイツ国、Miltenyi Biotech社製)を結合させたビーズと反応させ、LCカラム(ドイツ国、Miltenyi Biotech社製)を用いてDX5陽性細胞を分離した。また、50μg/mlのA20/Jag2細胞又はA20/mock細胞(2×105個)(実施例1で作製したもの)をマイトマイシンC(MMC)と37℃で30分反応させて、MMC処理した細胞を得た。2×106個の分離したDX5陽性細胞を、2×106個のMMC処理したA20/Jag2細胞又はA20/mock細胞と共に10%の胎仔血清を含むRPMI 1640培地中で24時間培養した。培養上清を回収し、そこに含まれるIFNγの量をELISAキット(Mouse IFNg ELISA Ready-SET-Go;米国、eBiosiences社製)を用いて測定した。
結果を図3に示した。NK細胞をA20/Jag2細胞と共に培養した場合には、A20/mock細胞と共に培養した場合の2倍以上のIFNγが培養上清から検出された。従って、Jagged2はIFNγ誘導能が高いことが明らかとなった。
In vivoにおける、Jagged2によるNK細胞の細胞傷害活性の増強
2×107個の、上記のA20/Jag2細胞又は上記のA20/mock細胞をBALB/cマウスの腹腔内に移入することにより免疫した。免疫から3日後に、マウスの脾臓から実施例3と同様の方法でDX5陽性細胞(NK細胞)を分離した。得られた2種のDX5陽性細胞(即ち、A20/Jag2細胞で誘導したDX5陽性細胞とA20/mock細胞で誘導したDX5陽性細胞)をそれぞれエフェクター細胞として以下の実験に用いた。
標的細胞としては、51Crで標識したA20/Jag2細胞を用いた。細胞の標識は、次の方法で行った。1×106個の細胞を100μCiの51Crと共に1時間培養し、フリーの51Crは遠心分離で除去した。
エフェクター細胞であるDX5陽性細胞と、標的細胞である51Cr標識A20/Jag2細胞とを混合培養した。細胞の混合比、即ち、エフェクター細胞と標的細胞の細胞数の比(E/T)は、100:1、50:1と25:1とし、10%の胎仔血清を含むRPMI 1640培地中で5時間培養した。培養上清を実施例4と同様の方法で回収し、培養上清に含まれる遊離51Crをベーターカウンターで測定した。
51Crで標識したA20/Jag2細胞をTriton-Xで溶解して測定したCrの値を100とし、それに対する比として結果をグラフ(図4)に示した。この結果から明らかなように、Jagged2はNK細胞の細胞傷害活性を増強した。
(1)Jagged2 DNAワクチンの構築
Jagged2 DNAワクチンとして、図5に示した発現ベクターを構築した。マウスJagged2の全長cDNA配列(配列番号2)の第12番〜第3260番塩基(配列番号1のアミノ酸配列の第1番〜第1083番アミノ酸に相当)を用意し、その5’末端にFlagタグをつけた。この配列を発現ベクターであるpCDNA3.1(米国、Invitrogen社製)のCMVプロモーターの下流に位置するXhoI−EcoRVサイトに組み込んで、可溶性Jagged2を発現するベクターを構築した。
(2)Jagged2 DNAワクチンの効果
上記(1)項で構築したJagged2 DNAワクチン又はコントロールDNAとなる空のpCDNA3.1ベクターをSCIDマウスの腓腹筋に接種することで免疫した。いずれの場合もDNA量は50μgとした。免疫から2日後には1×106個のA20細胞を腫瘍としてマウスの皮膚に移植した。腫瘍を移植した日にもJagged2 DNAワクチン又は空のpCDNA3.1ベクターでマウスを免疫した。腫瘍を移植した日から経時的に腫瘍のサイズを計測した。尚。腫瘍のサイズは腫瘍の縦径×横径とした。
結果を図6に示した。空のベクターで免疫した群では腫瘍は20日を過ぎたころから急激に増殖し始めるが、Jagged2 DNAワクチンで免疫した群においては、腫瘍の増殖はほとんど見られなかった。
本発明は、癌の治療や再発防止のための免疫療法において有用であり、医薬品、診断剤等の製造・販売の分野で利用できる。
SCIDマウスにおける、Jagged2の過剰発現による腫瘍増殖の抑制を示す。 Jagged2の過剰発現による腫瘍増殖の抑制に対する、(a)コントロールであるRb IgGの影響及び(b)抗aGM1抗体の影響を示す。 NK細胞のINFγ誘導能に対するJagged2の影響を示す。 NK細胞の細胞傷害活性に対するJagged2の影響を示す。 DNAワクチンとして用いるJagged2発現ベクターの模式図である。 SCIDマウスにおける、Jagged2 DNAワクチンの腫瘍増殖抑制効果を示す。
配列番号5: フォワードプライマーである。
配列番号6: リバースプライマーである。

Claims (11)

  1. NotchリガンドであるJagged2又はその活性ドメインをコードする遺伝子の発現が増強された抗原提示細胞を有効成分とし、薬効を奏する量の該抗原提示細胞を含有することを特徴とする制癌剤。
  2. 該遺伝子が、配列番号1又は3の全長アミノ酸配列あるいはその活性ドメインを含む部分有効配列をコードする遺伝子であることを特徴とする、請求項1に記載の制癌剤。
  3. 該活性ドメインが、配列番号1の第1番〜第1083番アミノ酸又は配列番号3の第1番〜第943番アミノ酸であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の制癌剤。
  4. 該遺伝子が、配列番号2の第12番〜第3757番の配列、配列番号2の第12番〜第3260番の配列、配列番号4の第405番〜第4121番の配列及び配列番号4の第405番〜第3233番の配列からなる群より選ばれる塩基配列を含むものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の制癌剤。
  5. 配列番号1又は3の全長アミノ酸配列からなるJagged2タンパク質、あるいはその活性ドメインを含むJagged2断片を有効成分とし、薬効を奏する量の有効成分を含有することを特徴とする制癌剤。
  6. 該活性ドメインが、配列番号1の第1番〜第1083番アミノ酸又は配列番号3の第1番〜第943番アミノ酸であることを特徴とする、請求項5に記載の制癌剤。
  7. Jagged2又はその活性ドメインが、NK細胞のインターフェロンγ誘導能又は細胞傷害活性を増強するものであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の制癌剤。
  8. Jagged2又はそれと同様の活性を有するペプチドをコードする塩基配列をベクターに挿入連係することにより構築される発現ベクター。
  9. 該塩基配列が、配列番号2の第12番〜第3757番の配列、配列番号2の第12番〜第3260番の配列、配列番号4の第405番〜第4121番の配列及び配列番号4の第405番〜第3233番の配列からなる群より選ばれる塩基配列を含むものであることを特徴とする、請求項8に記載の発現ベクター。
  10. 請求項8又は9の発現ベクターを導入した細胞である抗原提示細胞。
  11. 請求項8又は9の発現ベクターを有効成分とするDNAワクチン。
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