JP2009064591A - 燃料電池用電極とその製造方法並びに該電極を用いた膜電極接合体 - Google Patents

燃料電池用電極とその製造方法並びに該電極を用いた膜電極接合体 Download PDF

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紀彰 佐野
Koji Kusumura
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Abstract

【課題】触媒金属の使用効率が極めて高く、しかも触媒金属を必要な部分に強固に支持でき、長期間安定して使用が可能な燃料電池用電極を提供する。
【解決手段】炭素材料で形成された導電性多孔質体12aからなるガス拡散層12と、ガス拡散層12の表面に直接合成したカーボンナノチューブ14aからなり、カーボンナノチューブ14aを三次元方向にランダムに成長させると共に、カーボンナノチューブ14a同士を互いに絡合させて形成したウェブ層14と、ウェブ層14の表面に担持させた電極反応用の触媒金属16とで構成されていることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、主として固体高分子形燃料電池用の電極として好適な燃料電池用電極とその製造方法、並びに当該電極を用いた膜電極接合体に関する。
水素と酸素とを化学反応させて直接「電気」を発生させる燃料電池は、理論的に高効率発電が可能であり、発電時に窒素酸化物(NOX),硫化物(SOX)と云った有害物質や二酸化炭素(CO2)が発生しないこと等から、エネルギー問題や環境問題を解決し得るキーテクノロジーとして注目されている。
この燃料電池としてアルカリ形、リン酸形、溶融炭酸塩形、固体酸化物形および固体高分子形など様々な種類のものが開発されているが、とりわけ固体高分子形燃料電池(以下、「PEFC」という。)は、上記特徴に加えて、電解質部分が固体であり移動しないので、電池本体を単純且つコンパクトにできると云った特徴を有する。又、溶融炭酸塩形や固体酸化物形の燃料電池に比べて極めて低い温度(具体的には80℃前後)で作動させることができる。このため、PEFCは燃料電池自動車用の電源や家庭用の熱電併給装置或いは携帯用の電源としての実用化が期待されている。
このPEFCは、上述のように極めて低い温度で動作させることができる反面、「電極反応」の反応速度が遅いと云う問題がある。しかしながら、かかる問題に関しては、白金などの貴金属からなる高価な触媒金属を使用することで解決が図られている。
ここで、「電極反応」とは、水素をプロトンと電子とに分ける反応、或いはプロトンと酸素と電子から水を生成する反応を云うが、PEFCでは、この「電極反応」が、ガス,触媒金属,固体電解質が互いに触れ合う領域、すなわち「三相界面」でのみ起こる。したがって、「三相界面」の形成をいかに多くするかがPEFCの電気特性を向上させるための重要なポイントとなる。
そこで、従来より、この「三相界面」を多く形成する技術として、図8に示すような膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly; MEA)が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
この膜電極接合体(1)は、電解質膜(3)の表裏両面に触媒層(5)を配置し、更にその外側にカーボンペーパー(又はカーボン布)からなるガス拡散層(7)を配置すると共に、これらを圧着して接合一体化したものであり、触媒層(5)が、ナノサイズの触媒金属(5a)[ 主として白金]を担持させたカーボンブラックなどの微小な炭素粒子(5b)で構成されている。このように触媒金属(5a)を比表面積の大きい微小な炭素粒子(5b)に担持させることによって、「三相界面」をより多く形成することができる。
特開2002−305000号公報
しかしながら、図8に示すように、膜電極接合体(1)において、「三相界面」が形成されるのは電解質膜(3)と触媒層(5)とが接触する界面領域(A)である。したがって、炭素粒子(5b)に担持されているものの、電解質膜(3)と触媒層(5)とが接触する領域(A)に存在しない触媒金属(5a)は、「三相界面」を形成することができず、電極反応に全く寄与しない。このため、図8に示すような従来の膜電極接合体(1)では、電極反応に全く寄与しない触媒金属(5a)が必然的に多く含まれることになり、触媒金属(5a)の使用効率を向上させるのが困難であると云う問題があった。
また、かかる膜電極接合体(1)では、「三相界面」の形成をより多くするためには、触媒金属(5a)を担持させた炭素粒子(5b)の量を増やさなければならないが、そうすると燃料や空気が触媒層(5)を通過する際の圧力損失が大きくなると云う問題があった。
加えて、このように炭素粒子(5b)で構成された触媒層(5)は、ガス拡散係数が小さく、電解質膜(3)の面に沿う方向での物質移動が乏しい。このため、電解質膜(3)の表面全体に均一且つ効率よく「三相界面」を形成して電極反応を生起させるのが困難であった。
さらに、かかる膜電極接合体(1)では、触媒層(5)を構成する炭素粒子(5b)と電解質膜(3)或いはガス拡散層(7)との結合が弱く、当該膜電極接合体(1)を用いたPEFCを燃料電池自動車に適用した場合、自動車運転時の振動などに起因して外部より与えられる応力によって触媒金属(5a)を担持する炭素粒子(5b)が触媒層(5)から離脱して様々なトラブルを生じさせる虞がある。
それゆえ、本発明の主たる課題は、触媒金属の使用効率が極めて高く、しかも触媒金属を必要な部分に強固に支持でき、長期間安定して使用することが可能な燃料電池用電極とその製造方法、並びに該電極を用いた膜電極接合体を提供することである。
請求項1に記載した発明は、「炭素材料で形成された導電性多孔質体(12a)からなるガス拡散層(12)と、ガス拡散層(12)の表面に直接合成したカーボンナノチューブ(14a)からなり、カーボンナノチューブ(14a)を三次元方向にランダムに成長させると共に、カーボンナノチューブ(14a)同士を互いに絡合させて形成したウェブ層(14)と、ウェブ層(14)の表面に担持させた電極反応用の触媒金属(16)とで構成されている」ことを特徴とする燃料電池用電極(10)である。
この発明では、ガス拡散層(12)の表面にカーボンナノチューブ(14a)からなるウェブ層(14)を形成し、このウェブ層(14)の表面に電極反応用の触媒金属(16)を担持させているので、電極(10)に担持させた電極反応用の触媒金属(16)の大部分を「三相界面」の形成に寄与させることができる。
また、上記ウェブ層(14)は、三次元方向にランダムに成長させたカーボンナノチューブ(14a)を互いに絡合させることによって構成されており、その表面の比表面積が極めて大きく、又、燃料(水素)や空気がウェブ層(14)を通過する際の圧力損失が小さい。加えて、このように構成されたウェブ層(14)はガス拡散係数が大きく、ウェブ層(14)の表面に沿う方向での物質移動も活発になる。したがって、ウェブ層(14)の表面に担持させた触媒金属(16)と電解質膜(E)とを高い確率で接触させることができると共に、低空気送気速度でも電解質膜(E)と触媒(16)との界面に燃料や空気などのガスを供給でき、電解質膜(E)の表面全体に均一且つ効率よく「三相界面」を形成することができる。
さらに、ウェブ層(14)を形成するカーボンナノチューブ(14a)は、ガス拡散層(12)を構成する導電性多孔質体(12a)の表面に直接合成されており、しかも、このカーボンナノチューブ(14a)が三次元方向にランダムに成長し、互いに絡合してウェブ層(14)が形成されているので、当該ウェブ層(14)に外部から応力が加わったとしても、カーボンナノチューブ(14a)が容易に破壊することがなく、カーボンナノチューブ(14a)及びこれに担持させた触媒金属(16)がウェブ層(14)から簡単に離脱する心配はない。
ここで、請求項2に記載したように「電極反応用の触媒金属(16)がナノサイズの白金」である場合には、当該電極(10)を燃料電池の燃料極(アノード)及び空気極(カソード)の何れに使用した場合であっても優れた電極反応を生起させることができる。
また、電極反応用の触媒金属(16)としてナノサイズの白金を用いる場合には、「ウェブ層(14)表面への白金の担持量が0.008mg/cm2以上で且つ0.03mg/cm2以下の範囲である」ようにすることが好ましい。白金の担持量が0.008mg/cm2未満の場合には、PEFCに使用した際、触媒層を白金担持炭素粒子で形成した従来の電極に比べて、触媒質量当たりの電力値は極めて高いものになるが、最大出力密度が低下するようになり、逆に、白金の担持量が0.03mg/cm2より多くなると、従来の電極に比べて、触媒質量当たりの電力値自体は高いものの、その低下割合が大きくなり、又、最大出力密度も頭打ちとなるからである。
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載の燃料電池用電極(10)の製造方法であって、「(a)炭素材料で形成された導電性多孔質体(12a)の表面にカーボンナノチューブ成長用の触媒金属をスパッタリングし、これを水素処理してカーボンナノチューブ成長用の触媒金属をナノサイズに粒状化させると共に活性化させるカーボンナノチューブ成長用触媒担持工程、(b)化学気相成長法を用いて導電性多孔質体(12a)の表面に直接カーボンナノチューブ(14a)を合成すると共に、カーボンナノチューブ(14a)同士が互いに絡合するようカーボンナノチューブ(14a)を三次元方向にランダムに成長させてウェブ層(14)を形成するウェブ層形成工程、及び(c)カーボンナノチューブ(14a)によって形成されたウェブ層(14)の表面に電極反応用の触媒金属(16)をスパッタリングする電極反応用触媒担持工程で構成されている」こと特徴とする燃料電池用電極(10)の製造方法である。
この発明では、「カーボンナノチューブ成長用触媒担持工程」において、導電性多孔質体(12a)の表面にカーボンナノチューブ成長用の触媒金属をスパッタリングして担持させているので、触媒金属の酢酸塩を用いて担持させる従来の方法に比べて、効率的且つ簡便にカーボンナノチューブ成長用の触媒金属を導電性多孔質体(12a)の極表面に担持させることができる。
また、導電性多孔質体(12a)の表面に担持させたカーボンナノチューブ成長用の触媒金属を水素処理して当該触媒金属をナノサイズに粒状化させると共に活性化させているので、続く「ウェブ層形成工程」では、いわゆるcrowding効果が抑制され、個々のカーボンナノチューブ(14a)が単独に合成されると共に、カーボンナノチューブ(14a)同士が互いに絡合するように三次元方向にランダムに成長してウェブ層(14)が形成される。
ここで、「水素処理」とは、不活性雰囲気の高温条件下で、水素を用いて導電性多孔質体(12a)の表面に担持させたカーボンナノチューブ成長用触媒金属を還元する処理を云う。
そして、「電極反応用触媒担持工程」では、カーボンナノチューブ(14a)によって形成されたウェブ層(14)の表面に電極反応用の触媒金属(16)をスパッタリングして担持させているので、スパッタリングターゲットに対面するウェブ層(14)の極表面にのみ電極反応用の触媒金属(16)をナノサイズにて担持させることができる。
請求項4に記載した発明は、「電解質膜(E)と、電解質膜(E)の表裏両面に、電極反応用の触媒金属(16)が当接するようにして接合一体化された一対の請求項1又は2に記載の燃料電池用電極(10)とで構成されている」ことを特徴とする膜電極接合体(M)で、このように燃料電池用電極(10)と電解質膜(E)とを接合一体化して1つのユニットとすることにより、ハンドリングや燃料電池への組み付けを容易にすることができる。
請求項1、2又は4に記載の発明によれば、燃料電池用電極に担持させた電極反応用の触媒金属と電解質膜とを高い確率で接触させることができ、電極反応用の触媒金属の大部分を「三相界面」の形成に寄与させることができる。
また、ウェブ層に外部から応力が加わったとしても、ウェブ層を形成するカーボンナノチューブが離脱するのを防止でき、ウェブ層の表面に担持させた電極反応用の触媒金属が移動するのを防止することができる。
請求項3に記載の発明によれば、ガス拡散層を構成する導電性多孔質体の表面に、カーボンナノチューブからなるウェブ層を効率的且つ簡便に形成することができると共に、ウェブ層の極表面にのみ電極反応用の触媒金属を担持させることができる。
したがって、触媒金属の使用効率が極めて高く、しかも触媒金属を必要な部分に強固に支持でき、長期間安定して使用することが可能な燃料電池用電極とその製造方法、並びに該電極を用いた膜電極接合体を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明の燃料電池用電極(10)を用いたPEFC用の膜電極接合体(M)の要部を示す模式図である。本発明の一実施例の膜電極接合体(M)は、燃料電池の単セルを形成する部材であり、電解質膜(E)とこれを挟持する一対の燃料電池用電極(10)とで構成されている。
電解質膜(E)
電解質膜(E)は、電気絶縁性を有し、燃料として供給された水素から電子をはぎ取った際に生じる水素イオン(プロトン)のみを通過させる陽イオン伝導膜(固体電解質)である。現在、PEFCに用いられる電解質膜(E)としては、スルホン酸フルオロポリマー(フルオロエチレン)を用いたものが主流であり、かかる材料のなかで最もよく知られているものは、デュポン社製のナフィオン(登録商標)膜である。なお、本発明の膜電極接合体(M)に用いる電解質膜(E)は、スルホン酸フロオロポリマーを用いたものに限定されるのでなく、電気絶縁性及びプロトン伝導性を有するものであれば如何なるものであってもよい。
燃料電池用電極(10)
燃料電池用電極(10)は、単セルにおける燃料極(アノード)及び/又は空気極(カソード)を構成する部材であり、図1に示すように、ガス拡散層(12),ウェブ層(14)及び電極反応用の触媒金属(16)で構成されている。
ガス拡散層(12)は、燃料電池用電極(10)の骨格を形成し、単セルに供給された燃料(水素)や空気を拡散させてウェブ層(14)表面全体に担持させた触媒金属(16)に与えると共に、電極反応によって生成した水を排出し、又、後述するセパレータなどの集電体と電気的に結合するためのものであり、炭素材料で形成された厚さ100〜300μm程度の導電性多孔質体(12a)によって構成されている。
このガス拡散層(12)を構成する導電性多孔質体(12a)としては、炭素繊維紙や炭素繊維布など、炭素繊維によって構成された布帛を挙げることができる。このうち、ガス拡散性やシートの剛性と云った物理的性質およびコスト等を勘案すると、炭素繊維(特に短繊維)をバインダーで接合して形成した炭素繊維紙を用いるのが好ましい。
ウェブ層(14)は、ガス拡散層(12)の表面に直接合成したカーボンナノチューブ(14a)からなり、当該カーボンナノチューブ(14a)を三次元方向にランダムに成長させると共に、カーボンナノチューブ(14a)同士を互いに絡合させて形成した層である。このウェブ層(14)は、後述する電極反応用の触媒金属(16)を担持する担体となるものである。
ここで、ウェブ層(14)を形成するカーボンナノチューブ(14a)は、1枚のグラフェンシートが円筒状に丸まってできる、その名のとおり炭素からなるナノサイズの直径を持つチューブ状の物質である。このカーボンナノチューブ(14a)は、直径がナノサイズであるのに対してその長さは数μmから数十μmという非常に高いアスペクト比を有する。したがって、このようなカーボンナノチューブ(14a)で形成されたウェブ層(14)は、表面の比表面積が極めて大きなものとなる。又、燃料(水素)や空気がウェブ層(14)を通過する際の圧力損失が極めて小さくなることに加え、このように構成されたウェブ層(14)ではガス拡散係数が大きく、ウェブ層(14)の表面に沿う方向での物質移動が活発になる。
また、カーボンナノチューブ(14a)は、電気伝導性に優れ、化学的に安定で且つ不活性であり、疎水性を示すことなどから、電極反応用の触媒金属(16)の担体として極めて優れた材料である。
さらに、このカーボンナノチューブ(14a)は、6員環ネットワークが丸まることによってシームレスに閉じた構造をしているので、炭素原子間共有結合の強さをそのまま生かすことができ、力学的に非常に高い比強度と剛性とを有している。また、曲げ変形に対しても非常に強く、原子間力顕微鏡(AFM)を用いた実験では大きな曲げに対してもほとんど欠陥が生じることなく復元し、弾性変形することも知られている。したがって、このようなカーボンナノチューブ(14a)を導電性多孔質体(12a)の表面に直接合成し、三次元方向にランダムに成長させると共に、これらを互いに絡合させて形成したウェブ層(14)では、外部から応力が加わったとしても、カーボンナノチューブ(14a)が容易に破壊することはなく、又、ウェブ層(14)から簡単に離脱する心配もない。
電極反応用の触媒金属(16)は、上述した電極反応を低温でも可能とするために用いられる触媒である。この電極反応用の触媒金属(16)として、白金やルテニウムなどの貴金属単体あるいはこれらの合金を挙げることができる。現在のところ、燃料極(アノード)及び空気極(カソード)の何れに使用した場合であっても優れた電極反応を生起させることができる触媒金属(16)は、白金およびその合金である。
ここで、この触媒金属(16)は、触媒機能を効率よく発揮できるようにするため、ナノサイズ(例えば1〜10nm前後)に微粒子化させた状態でウェブ層(14)の極表面のみに担持させている(図1参照)。
また、触媒金属(16)としてナノサイズの白金を用いる場合、ウェブ層(14)表面への白金の担持量が0.008mg/cm2以上で且つ0.03mg/cm2以下の範囲であるようにすることが好ましい。白金の担持量が0.008mg/cm2未満の場合には、PEFCに使用した際、触媒層を白金担持炭素粒子で形成した従来の電極に比べて、触媒質量当たりの電力値は極めて高いものになるが、最大出力密度が低下するようになり、逆に、白金の担持量が0.03mg/cm2より多くなると、従来の電極に比べて、触媒質量当たりの電力値自体は高いものの、その低下割合が大きくなり、又、最大出力密度も頭打ちとなるからである(詳しくは後述する)。
以上のように構成された燃料電池用電極(10)によれば、ガス拡散層(12)の表面にカーボンナノチューブ(14a)からなるウェブ層(14)を形成し、このウェブ層(14)の表面に電極反応用の触媒金属(16)を担持させている、つまり、図1に示すように、電解質膜(M)とウェブ層(14)とが接触する領域(A)にのみ電極反応用の触媒金属(16)を配置させているので、電極(10)に担持させた電極反応用の触媒金属(16)の大部分を「三相界面」の形成に寄与させることができる。
また、上記ウェブ層(14)は、三次元方向にランダムに成長させたカーボンナノチューブ(14a)を互いに絡合させることによって構成されており、その表面の比表面積が極めて大きく、又、燃料や空気がウェブ層(14)を通過する際の圧力損失が小さい。加えて、このように構成されたウェブ層(14)はガス拡散係数が大きく、ウェブ層(14)の表面に沿う方向での物質移動も活発になる。したがって、ウェブ層(14)の表面に担持させた触媒金属(16)と電解質膜(E)とを高い確率で接触させることができると共に、低空気送気速度でも電解質膜(E)と触媒(16)との界面に燃料(水素)や空気などのガスを供給でき、電解質膜(E)の表面全体に均一且つ効率よく「三相界面」を形成することができる。
さらに、ウェブ層(14)を形成するカーボンナノチューブ(14a)は、ガス拡散層(12)を構成する導電性多孔質体(12a)の表面に直接合成されており、しかも、このカーボンナノチューブ(14a)が三次元方向にランダムに成長し、互いに絡合してウェブ層(14)が形成されているので、当該ウェブ層(14)に外部から応力が加わったとしても、カーボンナノチューブ(14a)が容易に破壊することはなく、カーボンナノチューブ(14a)及びこれに担持させた触媒金属(16)がウェブ層(14)から簡単に離脱する心配はない。
燃料電池用電極(10)の製造方法
本発明の燃料電池用電極(10)を製造する際には、「カーボンナノチューブ成長用触媒担持工程」,「ウェブ層形成工程」及び「電極反応用触媒担持工程」がこの順に実行される。
「カーボンナノチューブ成長用触媒担持工程」は、炭素材料で形成された導電性多孔質体(12a)の表面に、鉄(Fe),ニッケル(Ni),コバルト(Co)などのカーボンナノチューブ成長用の触媒金属を単体で、或いはこれらに助触媒としてモリブデン(Mo)などを加えたものをスパッタリングした後、これを水素処理して導電性多孔質体(12a)の表面に担持させたカーボンナノチューブ成長用の触媒金属をナノサイズに粒状化させると共に活性化させる工程である。
ここで、スパッタリングとは、真空チャンバー内に薄膜としてつけたい金属をターゲットとして設置し、このターゲットに高電圧をかけてイオン化させたアルゴンなどの希ガス元素(すなわち、プラズマ)を衝突させて、はじき飛ばされたターゲット表面の原子をターゲットに対面する基板の表面に堆積させて薄膜を形成する成膜方法である。このスパッタリングには、2極,高周波プラズマ,マグネトロン,イオンビームなど様々な方式のものがあり、何れの方式も本発明の「カーボンナノチューブ成長用触媒担持工程」に使用可能であるが、このうち、プラズマ内に磁界をつくることにより、プラズマ内のイオンを増やしスパッタリングの速度を向上させることが可能なマグネトロン・スパッタリングを用いるのが好適である。
このようにカーボンナノチューブ成長用の触媒金属をスパッタリングすることによって、スパッタリングターゲットに対面する導電性多孔質体(12a)の極表面のみにカーボンナノチューブ成長用の触媒金属を担持させることができる。
そして、表面にカーボンナノチューブ成長用触媒金属を担持させた導電性多孔質体(12a)は、図2に示すようなCVD装置(18)にセットされ、水素処理が行われる。このCVD装置(18)は、続く「ウェブ層形成工程」を実行する装置であり、大略、石英ガラス管からなる耐熱性の反応器(20)と、この反応器(20)を加熱する電気炉(22)と、電気炉(22)の温度を制御する温度制御手段(24)とで構成されている。また、反応器(20)の両端は、シリコン栓などで密閉されると共に、一端にアルゴン(Ar)ガス供給源(26),水素(H2)ガス供給源(28)及びエチレン(C24)ガス供給源(30)が接続され、他端に反応ガスの排出口が設けられる。
かかるCVD装置(18)を用いて水素処理を行う際には、まず始めに、反応器(20)内にArガスなどを導入してパージし、反応器(20)内の空気を完全に追い出す。そして、パージ終了後、反応器(20)内にArガス及びH2ガスを所定の流量流しならが、電気炉(22)を設定温度(すなわち還元温度)まで昇温させ、一定時間保持する。
ここで、水素処理を行う際の還元温度は、導電性多孔質体(12a)として炭素繊維紙(カーボンペーパー)を用いた場合、概ね550℃程度に設定するのが好ましい。水素処理は高温で長時間(例えば1〜2時間程度)保持して行われるため、仮に還元温度を750℃程度の高温にすると、炭素繊維同士を結合するバインダーが徐々に分解(劣化)し、導電性多孔質体(12a)を構成する炭素繊維紙の機械的強度が低下するようになるからである。又、還元温度を550℃程度とすることにより、カーボンナノチューブ成長用触媒金属の粒子の融合による肥大化が抑制され、カーボンナノチューブの直径を小さくできると共に、その合成密度を大きくすることができるからである。
以上のような「カーボンナノチューブ成長用触媒担持工程」が完了すると、続く「ウェブ層形成工程」が実行される。
「ウェブ層形成工程」は、化学気相成長(CVD)法を用いて導電性多孔質体(12a)の表面に直接カーボンナノチューブ(14a)を合成すると共に、カーボンナノチューブ(14a)同士が互いに絡合するようカーボンナノチューブ(14a)を三次元方向にランダムに成長させてウェブ層(14)を形成する工程である。
具体的には、上述の水素処理が終了した後、反応器(20)内にArガス及びH2ガスを所定の流量流しなら電気炉(22)を750℃まで昇温させる。続いて、電気炉(22)が750℃に達した後、反応器(20)内に炭素源(反応ガス)としてC24ガスを所定流量導入する。なお、カーボンナノチューブ成長用触媒金属の活性を維持するため、H2ガスは引き続き導入している。すると、導電性多孔質体(12a)の表面に直接カーボンナノチューブ(14a)が合成される。このカーボンナノチューブ(14a)は、多層ナノチューブ(MWCNT)であり、上述のような水素処理を行うことによって、いわゆるcrowding効果が抑制され、カーボンナノチューブ(14a)同士が互いに絡合するよう三次元方向にランダムに成長し、導電性多孔質体(12a)やCVD装置(18)の大きさ或いはCVDの際のガス濃度や温度等にもよるが、C24ガス導入開始から概ね数分から1時間程度でウェブ層(14)が形成される。
ここで、個々のカーボンナノチューブ(14a)を十分に成長させ、多くの交絡点で当該カーボンナノチューブ(14a)同士を絡合させて機械的強度に優れたウェブ層(14)を成形するためには、CVDの反応時間を長くするのみならず、カーボンナノチューブ成長用触媒金属が失活するのを防止する必要がある。そこで、この「ウェブ層形成工程」では、反応器(20)内に、C24ガス等の反応ガスと共に水蒸気やアルコールを導入するのが好ましい。このように反応器(20)内に水蒸気やアルコールを導入することにより、カーボンナノチューブ成長用触媒金属の表面に蓄積するアモルファスカーボンを酸化除去して当該触媒金属が失活するのを防止することができ、カーボンナノチューブ(14a)を十分に成長させることができるからである。
そして、CVD反応終了後、反応器(20)内へのC24ガスおよびH2ガスの導入を止め、Arガスのみ流し、室温まで温度を下げることによって、図3に示すようなウェブ層(14)が完成する。
なお、上述の例では、炭素源(反応ガス)としてエチレン(C24)を用いる場合を示したが、炭素源はこれに限定されるものではなく、例えば、メタン(CH4),アセチレン(C22),一酸化炭素(CO)及びエタノール(CH3CH2OH)などを用いることもできる。
以上のような「ウェブ層形成工程」が完了すると、続く「電極反応用触媒担持工程」が実行される。
「電極反応用触媒担持工程」は、カーボンナノチューブ(14a)によって形成されたウェブ層(14)の表面に電極反応用の触媒金属(16)をスパッタリングする工程である。
ここで、ウェブ層(14)の表面に電極反応用の触媒金属(16)をスパッタリングする方法としては、上述の「カーボンナノチューブ成長用触媒担持工程」と同様に、2極,高周波プラズマ,マグネトロン,イオンビームなど様々な方式のものを使用できるが、プラズマ内に磁界をつくることにより、プラズマ内のイオンを増やしスパッタリングの速度を向上させることが可能なマグネトロン・スパッタリングを用いるのが好適である。
このように電極反応用の触媒金属(16)をスパッタリングすることによって、スパッタリングターゲットに対面するウェブ層(14)の極表面にのみ電極反応用の触媒金属(16)をナノサイズにて担持させることができる。
以上のような各工程で構成された燃料電池用電極(10)の製造方法によれば、「カーボンナノチューブ成長用触媒担持工程」において、導電性多孔質体(12a)の表面にカーボンナノチューブ成長用の触媒金属をスパッタリングして担持させているので、触媒金属の酢酸塩を用いて担持させる従来の方法に比べて、効率的且つ簡便にカーボンナノチューブ成長用の触媒金属を導電性多孔質体(12a)の極表面に担持させることができる。
また、導電性多孔質体(12a)の表面に担持させたカーボンナノチューブ成長用の触媒金属を水素処理して当該触媒金属をナノサイズに粒状化させると共に活性化させているので、続く「ウェブ層形成工程」では、いわゆるcrowding効果が抑制され、個々のカーボンナノチューブ(14a)が単独に合成されると共に、カーボンナノチューブ(14a)同士が互いに絡合するように三次元方向にランダムに成長してウェブ層(14)が形成される。
膜電極接合体(M)及びPEFCの製造方法
上述した燃料電池用電極(10)を用いて膜電極接合体(M)を製造する際には、まず、電解質膜(E)の表裏両面を、電極反応用の触媒金属(16)が電解質膜(E)に当接するよう配置した一対の燃料電池用電極(10)で挟持する。そして、これらを圧着して接合一体化させることによって膜電極接合体(M)が完成する。このように、燃料電池用電極(10)と電解質膜(E)とを接合一体化して1つのユニットとした膜電極接合体(M)は、ハンドリングや燃料電池への組み付けを容易にすることができる。
また、この膜電極接合体(M)を用いてPEFCを製造する際には、まず、膜電極接合体(M)を、反応ガスの供給流路が彫り込まれた、セパレータ,インターコネクタ或いはバイポーラプレート等と称される導電板で挟み込んで1つの基本単位、すなわち単セル(single cell)を構成する。そして、この単セルを複数積層(スタック)して単セル同士を直列接続することによって、PEFCが完成する。
以下に、実施例をあげて本発明の燃料電池用電極を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
燃料電池用電極の製造
15×15mm2の寸法に断裁したカーボンペーパー(販売元;株式会社メガケム,炭素繊維紙2050−A,厚さ0.26mm)を準備し、該カーボンペーパー表面にマグネトロンスパッタ装置(日本電子(株)製,JFC−1600)を用い、カーボンナノチューブ成長用触媒金属のニッケル(Ni)をスパッタリングした。なお、スパッタリングの条件は、下表1に示す通りである。
続いて、表面にNiをスパッタリングしたカーボンペーパーを図2に示すCVD装置にセットした。本実施例で使用した反応器(20)は長さ500mm,内径20mm,外径23mmの石英管で構成されており、内部への空気の混入を防ぐため、両端をシリコン栓で密栓した。また、反応器(20)の加熱には、長さ300mmの電気炉(22)を用いた。
そして、カーボンペーパーをセットした反応器(20)の内部にArガス,H2ガス,C24ガスを導入してパージし、反応器(20)内の空気を完全に追い出した後、C24ガスの導入を止め、下表2に示す条件で水素処理を行った。
続いて、水素処理によるNiの還元終了後、反応器(20)の温度を750℃まで昇温させ、当該温度に達した後、下表3に示す条件で1時間程度CVD反応を行い、カーボンペーパー上にカーボンナノチューブを十分成長させてウェブ層を形成した。
CVD反応終了後、C24ガス及びH2ガスの導入を止め、Arガスのみ流し、室温まで冷却した後、表面にウェブ層を形成したカーボンペーパーをCVD装置から取り出し、ウェブ層の表面にマグネトロンスパッタ装置(日本電子(株)製,JFC−1600)を用い、電極反応用の触媒金属として白金(Pt)をスパッタリングした。なお、スパッタリングの条件は、下表4に示す通りであり、スパッタ時間を変更した4水準の電極を作製した。
ここで、表4に示す白金スパッタ条件(スパッタ時間を除く)でスパッタリングを行った際のスパッタ時間と白金担持量との関係について予め検討を行なったところ、両者には、下式(1)に示すような線形関係が成り立つことが明らかとなった。
したがって、表4に示した4水準のスパッタ時間それぞれにおける単位面積当たりの白金担持量は下表5の通りとなる。
また、スパッタ時間15秒で白金を担持させた電極について、ウェブ層の表面に担持させた白金粒子を透過電子顕微鏡で観察したところ、その粒径は概ね1〜7nmであった。
燃料電池用電極の性能評価方法
得られた燃料電池用電極の性能を、以下の方法で評価した。
(1)評価用燃料電池の作成
上述の方法で作成した4水準の燃料電池用電極それぞれについて、図4に示すような単セルからなる燃料電池(F)[具体的にはPEFC]を製作し、性能評価を行った。
図4に示す電極性能評価用の燃料電池(F)は、Nafion(登録商標)117(デュポン社製)からなる電解質膜(E)の表裏両面を、10×10mm2の寸法に調整した一対の燃料電池用電極(10)で挟持し、その外側をステンレス・メッシュ(stainless mesh)からなる一対のセパレータ(32)で挟持すると共に、さらにその外側を一対のアクリル製プレート(34)で挟持し、アクリル製プレート(34)の四隅をボルト(36)で3.5Nmのトルクにて締め付けて構成されている。
また、アクリル製プレート(34)と電解質膜(E)との間に形成される空間がシリコンゴム(38)で密閉されると共に、セパレータ(32)の一部がアクリル製プレートの縁部より突出して接続端子(40)が形成されている、この接続端子(40)には、後述する電気化学計測ステーション(42)が接続される。
そして、燃料電池用電極(10)の一方[図4において電解質膜(E)の左側に位置するもの]には、水素(H2)ガス供給源(44)より供給されるH2が蒸留水(W)で加湿された後に与えられるようになっており、燃料電池用電極(10)の他方[図4において電解質膜(E)の右側に位置するもの]には、ポンプ(46)より供給される空気が蒸留水(W)で加湿された後に与えられるようになっている。
ここで、電解質膜(E)の表裏両面を一対の燃料電池用電極(10)で挟持する際には、ウェブ層の表面に担持させた白金と電解質膜(E)との接触性を向上させるため、燃料電池用電極(10)の白金担持面に5wt%ナフィオン(登録商標)溶液(Aldrich社製)をスポイトで滴下して塗布した後、予め蒸留水に浸して十分な水分を保持させた電解質膜(E)の表裏両面を一対の燃料電池用電極(10)で素早く挟持した。そして、電解質膜(E)が十分な水分を保持している間に、図4に示す燃料電池(F)を組み立てた。
また、比較例として、従来の白金担持炭素粒子を用いた電極性能評価用の燃料電池(F)を以下の方法で作成した。すなわち、白金担持炭素粒子としてVALCAN XC72(Carbot社製)に40wt%の白金が担持されたIFPC40(石福金属興業(株)製)を準備した。そして、0.5mlの5wt%ナフィオン(登録商標)溶液(Aldrich社製)にIFPC40を2mg加え、3分間超音波により分散させた後、当該分散液を直ちに10×10mm2の寸法に調整したカーボンペーパー2枚にスポイトで滴下して塗布し、以降、上述の実施例と同様の方法で電極性能評価用の燃料電池(F)を組み立てた。なお、IFPC40を用いた電極(比較例)の単位面積当たりの白金担持量は、0.4mg/cm2となるように調整した。
(2)電極性能の評価
上述のように構成した4水準の実施例及び比較例の燃料電池(F)に、電気化学計測ステーション(北斗電工(株)製,電気化学測定システムHZ−5000)を接続し、I−V特性を測定することによって電極性能の評価を行った。
具体的には、下表6に示す条件で、計測前に予め2時間、燃料電池(F)の予備運転を行い、I−V特性が定常に達した後に測定を行った。I−V特性測定時のスキャン速度は40mV/secとし、サンプリング間隔は0.05secとした。
燃料電池用電極の性能評価結果
上記性能評価方法によって得られた結果を以下に示す。
(1)白金スパッタ時間とPt触媒質量当たりの電力値との関係
白金スパッタ時間(換言すれば、ウェブ層表面における単位面積当たりの白金担持量)とPt触媒質量当たりの電力値との関係を図5に示す。
この図が示すように、白金スパッタ時間が15秒のとき、すなわち単位面積当たりの白金担持量が0.011mg/cm2のときにPt触媒質量当たりの電力値が最大となり、白金スパッタ時間が15秒より長くなるに連れて、すなわち単位面積当たりの白金担持量が0.011mg/cm2よりも多くなるに従って、Pt触媒質量当たりの電力値が低下するようになる。つまり、ウェブ層表面における単位面積当たりの白金担持量が0.011mg/cm2のときに白金使用効率が極大化することが分かる。
ここで、白金スパッタ時間が15秒より長くなるに連れて白金使用効率が低下していく理由としては、白金スパッタ時間を長くして白金担持量を増加させることで、ウェブ層に担持させた白金粒子の粒径が大きくなり、島状構造でウェブ層表面に担持されていたナノサイズの白金粒子が連続膜へと変化するようになる結果、白金粒子の比表面積が低下することによるものと考えられる。
また、図6に、白金スパッタ時間が15秒の電極(実施例)におけるPt触媒質量当たりの電力値と、IFPC40を用いた従来の電極(比較例) におけるPt触媒質量当たりの電力値とを示す。
この図が示すように、白金スパッタ時間が15秒の電極は、IFPC40を用いた従来の電極に比べて20倍以上の高い白金使用効率を示すことが分かる。
なお、上述のように、単位面積当たりの白金担持量が0.011mg/cm2よりも多くなるに従って白金使用効率は低下するようになるが、そのような場合であっても、従来の白金担持炭素粒子を用いた電極に比べれば、依然として高い白金使用効率を有している。
(2)白金スパッタ時間と最大電力密度との関係
白金スパッタ時間と最大電力密度との関係を図7に示す。
この図が示すようにスパッタ時間15秒(白金担持量0.011mg/cm2)付近を境に、スパッタ時間が短くなる(白金担持量0.011mg/cm2よりも少なくなる)と最大電力密度が急激に低下するようになる。一方、スパッタ時間が15秒を超える(白金担持量0.011mg/cm2よりも多くなる)と最大電力密度は若干上昇するものの、スパッタ時間30秒(白金担持量0.023mg/cm2)を超えるとほぼ頭打ちとなる。
なお、IFPC40を用いた従来の電極について最大電力密度を測定した結果、概ね26〜39mW/cm2 (平均31.4mW/cm2)の範囲であったことから、白金スパッタ時間が15秒前後より多ければ、従来のものとほぼ同等の発電出力を得ることができる。
ちなみに、ウェブ層を設けず、カーボンペーパーの表面に直接0.011mg/cm2の白金を担持させた電極について最大電力密度を調べたところ、その値は2.9mW/cm2と極めて低いものであった。
以上、(1)及び(2)の結果をまとめると、触媒金属としてナノサイズの白金を用いる場合、ウェブ層表面への白金の担持量は0.008mg/cm2以上で且つ0.03mg/cm2以下の範囲にするのが好ましい。なぜなら、白金の担持量が0.008mg/cm2未満の場合には、PEFCに使用した際、触媒層を白金担持炭素粒子で形成した従来の電極に比べて、触媒質量当たりの電力値は極めて高いものになるが、最大出力密度が低下するようになり、逆に、白金の担持量が0.03mg/cm2より多くなると、従来の電極に比べて、触媒質量当たりの電力値自体は高いものの、その低下割合が大きくなり、又、最大出力密度も頭打ちとなるからである
本発明の燃料電池用電極並びに該電極を用いた膜電極接合体は、PEFCのみならず、ダイレクトメタノール燃料電池などにも好適に利用することができる。
本発明の燃料電池用電極を用いた膜電極接合体の要部を示す模式図である。 ウェブ層形成に用いるCVD装置を示す概略図である。 ガス拡散層の表面に形成されたウェブ層を示すSEM写真である。 電極特性評価用の燃料電池を示す概略図である。 白金スパッタ時間とPt触媒質量当たりの電力値との関係を示すグラフである。 白金スパッタ時間が15秒の電極(実施例)とIFPC40を用いた従来の電極(比較例)のPt触媒質量当たりの電力値を示すグラフである。 白金スパッタ時間と最大電力密度との関係を示すグラフである。 従来の燃料電池用電極を用いた膜電極接合体の要部を示す模式図である。
符号の説明
(10)…燃料電池用電極
(12)…ガス拡散層
(12a)…導電性多孔質体
(14)…ウェブ層
(14a)…カーボンナノチューブ
(16)…触媒金属
(18)…CVD装置
(20)…反応器
(22)…電気炉
(24)…温度制御手段
(32)…セパレータ
(34)…アクリル製
(36)…ボルト
(38)…シリコンゴム
(40)…接続端子
(42)…電気化学計測ステーション
(M)…膜電極接合体
(E)…電解質膜
(F)…燃料電池

Claims (4)

  1. 炭素材料で形成された導電性多孔質体からなるガス拡散層と、
    前記ガス拡散層の表面に直接合成したカーボンナノチューブからなり、前記カーボンナノチューブを三次元方向にランダムに成長させると共に、前記カーボンナノチューブ同士を互いに絡合させて形成したウェブ層と、
    前記ウェブ層の表面に担持させた電極反応用の触媒金属とで構成されていることを特徴とする燃料電池用電極。
  2. 前記電極反応用の触媒金属がナノサイズの白金であり、前記ウェブ層表面への前記白金の担持量が0.008mg/cm2以上で且つ0.03mg/cm2以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用電極。
  3. (a)炭素材料で形成された導電性多孔質体の表面にカーボンナノチューブ成長用の触媒金属をスパッタリングし、これを水素処理して前記カーボンナノチューブ成長用の触媒金属をナノサイズに粒状化させると共に活性化させるカーボンナノチューブ成長用触媒担持工程、
    (b)化学気相成長法を用いて前記導電性多孔質体の表面に直接カーボンナノチューブを合成すると共に、前記カーボンナノチューブ同士が互いに絡合するよう前記カーボンナノチューブを三次元方向にランダムに成長させてウェブ層を形成するウェブ層形成工程、及び
    (c)カーボンナノチューブによって形成されたウェブ層の表面に電極反応用の触媒金属をスパッタリングする電極反応用触媒担持工程で構成されていること特徴とする燃料電池用電極の製造方法。
  4. 電解質膜と、前記電解質膜の表裏両面に前記電極反応用の触媒金属が当接するようにして接合一体化された一対の請求項1又は2に記載の燃料電池用電極とで構成されていることを特徴とする膜電極接合体。
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