JP2009050171A - 表面プラズモン共鳴による基板上におけるリン酸化の検出方法 - Google Patents

表面プラズモン共鳴による基板上におけるリン酸化の検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】簡便で安全な方法により、ハイスループット化も可能な、On−chipでのプロテインキナーゼ活性の網羅的な解析のための評価系を提供する。
【解決手段】プロテインキナーゼの基質となる、9〜11個の特定のアミノ酸配列を有するペプチドを、複数(5種以上)種基板上の金表面に固定化し、該ペプチドの該キナーゼによるリン酸化を、リン酸化部位を認識しうる抗体または金属錯体化合物を作用させた後、表面プラズモン共鳴イメージングにより検出する、ペプチドアレイおよびそれを用いたリン酸化検出方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、表面プラズモン共鳴(SPR)を用いることにより、チップ上におけるリン酸化の検出方法に関する。より詳細には、ペプチド基質が固定化されてなるチップ上で、プロテインキナーゼを含有するもしくは含有すると考えられる溶液を作用させることにより該固定化されたペプチド基質のリン酸化を検出する方法に関する。
近年、生体分子の相互作用解析、発現分子のプロファイリング、もしくは診断に用いるバイオチップが注目を集めている。基板上に生体分子が固定化されることで操作が容易になり、場合によっては非常に多くの物質の相互作用を解析することができる。特に比較的分子量の小さなペプチドを基板上に固定化したペプチドアレイは、蛋白質のような変性の問題が比較的少なく、またコンビナトリアルケミストリーの側面が強いことから、近年酵素の基質探索や、あるいはインヒビターの探索などに広く用いられるようになってきている。なかでも、ポストゲノムの中にあっては、蛋白質の翻訳後修飾、特にリン酸化の解析は蛋白質の活性調節、機能調節を詳細に解明するうえで重要である。そして、リン酸化反応を担っているプロテインキナーゼの活性を網羅的に解析するための技術が必要となってきている。そのための手段としては、アレイ解析が操作性やコスト面で有利ではあるが、未だ十分なものが確立されていない。更に、網羅的にプロテインキナーゼ活性を解析するためには、様々なプロテインキナーゼの基質の選択が非常に重要である。
既に報告されている関連技術として、例えばSPOT技術によりセルロースメンブラン上で直接ペプチドを合成し、その後チップ上に固定化する技術が知られている。この技術を利用して、p60チロシンキナーゼの基質をチップ上に固定化し、蛍光物質もしくは放射性物質を用いてキナーゼ活性を評価したことが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。また、同様の技術で作製されたペプチドアレイを用いて、プロテインキナーゼA(以下、PKAと示すこともある。)やNIMA−related キナーゼ6(NEK6)などの活性を、放射性物質を用いてアッセイしたことについての報告(例えば、非特許文献2及び3参照)もある。その他、アビジンでコートした基板上にビオチン結合したペプチドを固定化し、PKA活性を検討した例(例えば、非特許文献4参照)もある。しかしながら、上記いずれの方法においても、検出の際のバックグラウンドがスポットを観察する上で悪影響し、その低減が大きな課題となっている。更には、放射性物質を用いる方法が主流であり、安全性の問題はもとより専用施設を設置する必要性もあり、限られた研究機関でしか実施できないという問題がある。あるいは抗体を用いる方法の場合には、そのコストや要求特性が十分でないなどの課題があり、必ずしも満足なものであるとは言い難いのが実情である。
Curr.Opin.Biotechnol. 13,315,2002 Angew.Chem.Int.Ed. 43,2671,2004 Nature Methods 1,27,2004 J.Biol.Chem. 277,27839,2002
本発明の課題は、簡便で安全な方法による、創薬スクリーニングのためのハイスループット対応も可能であるOn−chipでのプロテインキナーゼ活性の網羅的な解析のための評価系を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示すような手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
(1)配列番号1〜26よりなる群から選ばれるアミノ酸配列を含有する、少なくとも2種以上のペプチド基質が金表面上に固定化されていることを特徴とする基板上におけるリン酸化を表面プラズモン共鳴によりリン酸化を検出するためのペプチドアレイ。
(2)基板上におけるリン酸化を表面プラズモン共鳴イメージングにより検出するための(1)のペプチドアレイ。
(3)配列番号1〜26よりなる群から選ばれるアミノ酸配列を含有するペプチド基質が5種以上固定化されていることを特徴とする(1)又は(2)のペプチドアレイ。
(4)配列番号1〜26よりなる群から選ばれるアミノ酸配列を含有するペプチド基質が10種以上固定化されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかのペプチドアレイ。
(5)配列番号1〜26よりなる群から選ばれるアミノ酸配列を含有するペプチド基質が末端にシステイン残基を有していることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかのペプチドアレイ。
(6)配列番号1〜26よりなる群から選ばれるアミノ酸配列を含有するペプチド基質が式(I)もしくは(II)に示される化合物を架橋剤として用いて金表面に固定化されていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかのペプチドアレイ。
Figure 2009050171
Figure 2009050171
(7)(1)〜(6)のいずれかのペプチドアレイを用いて、基板上でリン酸化反応を行った後、リン酸化部位を認識することのできる抗体を作用させることにより得られる表面プラズモン共鳴のシグナルによりリン酸化を検出する方法。
(8)(1)〜(6)のいずれかのペプチドアレイを用いて、基板上でリン酸化反応を行った後、リン酸化部位を認識することのできる金属錯体化合物を作用させることにより得られる表面プラズモン共鳴のシグナルによりリン酸化を検出する方法。
(9)金属錯体化合物がビオチンで修飾されてなり、かつ該金属錯体化合物をペプチドアレイに作用させた後、アビジンもしくはストレプトアビジンを作用させることを特徴とする(8)のリン酸化を検出する方法。
(10)金属錯体化合物が亜鉛キレート化合物であることを特徴とする(8)又は(9)のリン酸化を検出する方法。
(11)金属錯体化合物が式(III)で示される化合物であることを特徴とする(8)〜(10)のいずれかのリン酸化を検出する方法。
Figure 2009050171
(12)細胞ライゼートによる基板上でのリン酸化反応を検出することを特徴とする(1)〜(11)のいずれかのリン酸化を検出する方法。
(13)薬剤による刺激を与えた細胞のライゼートによる基板上でのリン酸化反応を検出することを特徴とする(12)のリン酸化を検出する方法。
本発明におけるアレイを用いた特にSPRによる相互作用解析により、On−chipでのプロテインキナーゼの活性検出のための測定系を得ることができる。アレイでの解析を行うことにより、ハイスループット化への対応も可能である点も有用である。また、細胞ライゼートを用いたSPR測定においても、非常に有用なものである。特に、癌などの疾患の診断やリン酸化阻害剤などの新規な創薬スクリーニングのための評価系として非常に有用なものとして期待される。
本発明は、SPRによる相互作用解析により、On−chipでのプロテインキナーゼによるリン酸化の網羅的な検出を行うことを特徴とする。SPRを用いることにより、ラベルフリーに解析できる長所があり、一般的なチップ、アレイにおいては、放射線同位体等によるラベル手段による検出が必要なことに比べて、簡便性のみならず安全性の点でも優位である。この場合、最終的に物質が結合したかどうかだけを検出することができ、相互作用に関係のない物質が非特異的に吸着しても、誤って検出されることはない。従って、相互作用する対象物質がネガティブコントロールに対して非特異的に吸着してなければ、正確に測定できているものと判断することができる。
本発明において用いられる基板の素材は、特に限定されるものではないが、金、銀などの金属が好適に用いられる。なかでも、酸・アルカリ・有機溶媒などに非常に安定な金が好ましい。実際、金は上記光学的検出方法で多用される物質である。また、金を支持する物質は透明である方が好ましく、透明なガラスであるとより好ましい。透明なガラスは容易に入手できるだけでなく、SPR測定に極めて適しているからである。
金属基板を形成する方法としては、金属薄層をコーティングする方法が好ましい。金属をコーティングする方法は特に限定されるものではないが、一般的に蒸着法、スパッタリング法、イオンコーティング法などが選択される。光学的な検出方法に供するために、金属薄層の厚みをナノレベルでコントロールする必要がある。金属薄層の厚みも特に限定されるものではないが、一般的には30nmから80nmの範囲で選択される。金属薄層の剥離を抑制するため、0.5nmから10nmのクロム層やチタン層を予め基板にコーティングしておいてもよい。
このSPRをアレイ解析技術に応用したSPRイメージング法は、広範囲に偏光光束を照射し、その反射像を解析することで、物質間の相互作用の様子を、画像処理技術等を駆使することによりモニター化する方法であり、複数の物質を固定化したチップをスクリーニングすることや、表面に吸着する物体のモルホロジーを高感度に観察することが可能である。SPRイメージング法においては、反射像を解析するためにチップに広範囲で偏光光束を照射し、かつ光束の照度を十分に確保するための手段が必要である。図1においてその一例を示した。偏光光束の照度は明るいほどセンサーの感度が上昇してより好ましい。
光源の種類は特に限定されるものではないが、SPR共鳴角の変化が特に敏感になる近赤外光を含む光を用いるのが好ましい。具体的には、メタルハライドランプ、水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯、白熱灯などの広範囲に光を照射することのできる白色光源を用いることができるが、なかでも得られる光の強度が十分に高く、光の電源装置が簡易で安価なハロゲンランプが特に好ましい。
通常の白色光源はフィラメント部に光の明暗ムラが生じる欠点がある。光源の光をそのまま照射すると、反射して得られる像に明暗ムラが生じ、スクリーニングやモルホロジー変化を評価するのが困難となる。したがって、チップに均一に光を照射する手段として、光をピンホールに通してから平行光にする方法が好ましい。ピンホールを通す手段は、明るさの均一な光束を得る手段としては好ましいが、そのままピンホールに光を通すと照度が低下する欠点がある。そこで、十分な照度を確保する手段として、ピンホールと光源の間に凸レンズを設置し、集光してピンホールを通す方法を用いることが好ましい。
白色光源は放射光であるため、集光する前に凸レンズを用いて平行光にする必要がある。凸レンズの焦点距離近傍に光源を設置することで、平行光を得ることができる。もう一枚凸レンズを設置し、そのレンズの焦点距離近傍にピンホールを設置することで集光した光をピンホールに通すことが可能である。ピンホール内で交差し、通過した光はカメラ用のCCTVレンズで平行光とするが、その際に得られる平行光束の断面面積は10〜1000mmに調節するのが好ましい。この方法によって広範囲にわたるスクリーニングやモルホロジー観察が可能となる。
相互作用をモニターする際に、上記偏光光束は物質あるいは物質の集合体が固定化されている金属薄膜の反対面に照射される。上記偏光光束は物質もしくは物質の集合体が固定化されている金属薄膜の反対面に照射され、その反射光束が得られる。金属薄膜からの反射光束は近赤外波長の光干渉フィルターを通し、ある波長付近の光のみを透過させてからCCDカメラにより撮影される。
光干渉フィルターの中心波長は、SPRの感度が高い600〜1000nmが好ましい。光干渉フィルターの透過率が極大時の半分になる波長の波長幅を半値巾と呼ぶが、半値巾は小さい方が波長の分布がシャープとなり好ましく、具体的には半値巾100nm以下が好ましい。光干渉フィルターを通してCCDカメラで撮影された像はコンピュータに取り込まれ、ある部分の明るさの変化をリアルタイムで評価することや、画像処理により全体像の評価が可能である。こうして複数の物質を固定化したチップをスクリーニングすることや、表面に吸着する物体のモルホロジーを高感度に観察することができる。
本発明において用いるSPR用のチップは好ましくは透明な基板上に金属薄膜が形成された金属基板からなり、上記金属薄膜上に直接的もしくは間接的に、化学的もしくは物理的に、物質もしくは物質の集合体が固定化されているスライドが用いられる。基板の素材は特に限定されるものではないが、透明なものを用いるのが好ましい。具体的にはガラス、あるいはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、アクリルなどのプラスチック類が挙げられる。中でもガラスが特に好ましい。
基板の厚さは0.1〜20mm程度が好ましく1〜2mm程度がより好ましい。金属薄膜からの反射像を評価する目的を達成するために、SPR共鳴角はできるだけ小さい方が撮影される画像がひしゃげる恐れがなく解析がしやすい。したがって、透明基板あるいは透明基板とそれに接触するプリズムの屈折率nは1.5以上であることが好ましく、1.6以上が更に好ましい。
本発明においては、ペプチド基質が上述したような基板上に固定化されたアレイを用いる。ペプチド基質は、種々のプロテインキナーゼの基質として機能しうるようなアミノ酸配列を含有するものとして、配列番号1〜26のアミノ酸配列を含有するペプチドを少なくとも2種以上、好ましくは5種以上、より好ましくは10種以上、更に好ましくは20種以上を用いる。これらのペプチドは、種々のプロテインキナーゼによる応答性が確認されているものであり、これら26種の中からいくつかを適宜選択して、組み合わせてアレイ解析に用いることにより、網羅的なプロテインキナーゼ活性の解析を行うことができるものである。アレイ解析における検出手段として、非標識に測定できる点に加えて、定量的な再現性の観点から、例えば蛍光アレイ解析などの方法と比べて、SPRによる検出法は特に有利である。
26種のペプチドと対応するキナーゼを以下の表1に示す。
Figure 2009050171
上記の表1に示されるように、26種のペプチドは、特定のキナーゼにより認識される基質であるので、これらを組み合わせることにより、1種または2種以上のキナーゼ活性が容易にかつ同時に検出できる。
更には、測定に関する信頼性を確認するために、予めリン酸化されたアミノ酸残基を含むもの(ポジティブコントロール)、あるいはネガティブコントロールも同じ基板上に固定化されているのが好ましい。ネガティブコントロールを用いる場合は、リン酸化部位がセリン残基、スレオニン残基の場合はアラニン残基に、リン酸化部位がチロシン残基の場合はフェニルアラニン残基に置換されたものが好ましい。合成のしやすさ、取り扱いやすさ、保存安定性などの点では、比較的低分子量のペプチドを用いる方が好ましい。ここでペプチドとは一般的に用いられる意味のものを指し、アミノ酸が2個以上ペプチド結合により連結されたものである。そのアミノ酸残基の数は特に限定されないが、通常は5〜60残基程度であり、7〜30残基程度が好ましく、10〜25残基程度がより好ましい。
本発明のペプチドアレイにおけるペプチド基質の固定化方法は特に限定されるものではなく、ペプチド配列におけるアミノ基やチオール基のような官能基を介した方法、Hisタグ、GSTタグ、MBPタグなどのアフィニティ結合を利用する方法などが挙げられる。この中では、特にチオール基を介してペプチド基質を固定化する方法が、特異性、感度の両面から特に好ましい。
チオール基を介して固定化される場合、ペプチドのアミノ酸配列において少なくとも1箇所以上のシステイン残基が存在することが好ましい。システイン残基は固定化されるペプチドが本来の機能を奏するために必要なアミノ酸配列として必須な残基として存在している場合であっても、あるいはペプチドが本来の機能を奏するために必要なアミノ酸配列に対してさらに付加された場合であってもよい。固定化されるペプチド基質におけるシステイン残基の存在位置は特に限定されないが、好ましくはペプチド部分(両末端にアミノ酸を有しで囲まれ、スペーサーをアミノ酸の間に有していてもよい)の少なくとも一方の末端に、より好ましくは一方の末端のみに付加されてなる方がよい。一方の末端にシステイン残基を付加させる場合、システイン残基のみを付加してもよいが、固定化されたペプチドの自由度を上げることにより作用させる物質との相互作用の効率を高めるためにスペーサーとして1乃至数残基のアミノ酸配列をさらに付加させてもよい。スペーサー部分のアミノ酸配列は特に限定されないが、なかでもグリシン残基及び/又はアラニン残基もしくはセリン残基が1乃至数個の配列を付加させることが特に好ましい。
本発明においては、上記基板に固定化される部位と基質配列部位との間にスペーサーとして親水性化合物が挿入されていることを特徴とする。親水性化合物の分子量は特に限定されないが、100〜1,000が好ましく、400〜1,000がより好ましい。また、上記親水性化合物とともに、アミノ酸残基数が2〜10個、より好ましくは2〜6個からなるスペーサー配列を更に付加させてもよい。スペーサー配列を構成するアミノ酸残基の種類は特に限定されるものではないが、高次構造の形成を起こしにくいアミノ酸を含むことが好ましい。具体的には、少なくとも1つはグリシン残基を含むことが好ましい。より好ましくは、1残基のグリシン(G)、2残基のグリシン(GG)、グリシンとアラニン(GAもしくはAG)、あるいはグリシンとセリン(GSもしくはSG)残基の繰り返しを1回以上、更に好ましくは2回以上含んでなる。
ここで、親水性化合物とは水に可溶もしくは水に膨潤する性質をもつ、繰り返し単位をもつ化合物のことをいうものであり、合成物であっても天然物であってもよい。具体的に例示すると、親水性高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、カルボン酸もしくはその塩やスルホン酸もしくはその塩を含有するモノマーまたはポリエチレングリコール等の親水性部分を共重合させたポリエステルやポリウレタン、カルボキシメチルセルロース、さらにはキトサン、カラギーナン、グルコマンナンなどの多糖類が挙げられる。なかでも、ポリエチレングリコール(PEG)が特に好ましい。こうしたスペーサーを付加させることにより、固定化されたペプチド基質の自由度を向上させることができ、その結果としてプロテインキナーゼの固定化ペプチド基質へのアクセスが容易になることより、受けるリン酸化作用の効率をより高めることが可能となる。
また、固定化されるペプチド基質に対して、チオール基を有する化合物が1箇所以上のいずれかのアミノ酸残基において化学結合されている状態のものを用いてもよい。該化合物の結合箇所も特に限定はされないが、いずれかの末端のアミノ酸残基に結合されていることが好ましい。また、親水性化合物の挿入される位置に関しても、固定化部位とリン酸化を受ける部位との間であれば、特には制限されるものではないが、固定化部位に近接している方がより好ましい。親水性化合物の挿入されたペプチドの合成方法も特に限定されるものではなく、例えば市販されているペプチド合成用の保護基で修飾されている化合物を用いることにより容易に得ることが可能である。保護基の種類も特に限定されるものではなく、Fmoc基、tBoc基などの一般的なものが用いられる。
本発明において、チオール基を介してペプチド基質を固定化する場合、予めアミノ基を表面に導入した後、スクシンイミド(NHS)基もしくは硫酸スクシンイミド基とマレイミド(MAL)基を有するヘテロ二官能型架橋剤を用いることが特に好ましい。このようなヘテロ二官能型架橋剤としては、PEGのような親水性高分子の両端がNHS基とMAL基で修飾されたものを用いることも可能であるが、ペプチド基質の固定化収率を向上させるためには、より低分子量のものを用いてもよい。具体的には、式(I)に示す化合物Succinimidyl 4−[N−maleimidomethyl]cyclohexane−1−carboxylate(以下、SMCCと示す。)もしくは式(II)に示す化合物Sulfosuccinimidyl 4−[N−maleimidomethyl]cyclohexane−1−carboxylate(以下、SSMCCと示す。)が挙げられる。なお、式(I)もしくは式(II)に示す化合物と完全に同一構造のものだけを指すのではなく、その機能を損なわない範囲でアナログ化された化合物をも包含する。また、本発明においてはSMCC及びSSMCCのいずれも適用することが可能であるが、水に対する溶解性の点からは、緩衝液のような水系で反応させる場合においてはSSMCCを用いる方がより好ましい。ペプチドの溶解性に応じて、両方を使い分けることが可能である。
Figure 2009050171
Figure 2009050171
上述したような低分子量化合物を適用することにより、特に高分子量の物質を架橋剤として用いる場合と比べて、ペプチド基質のチップへの固定化効率が格段に高くなるため標的物質との結合効率も向上して、結合によるシグナルがより鮮明になるという効果を奏するものである。また、非特異的な影響に関してもほとんど問題とならず、いわゆるS/N比を大きくすることができる点で有利である。しかしながら、本発明において架橋剤の種類は、特にこれらに限定されるものではない。
上記SMCCもしくはSSMCCをチップ上に導入させてマレイミド表面を形成させるためには、SMCCにおけるもう一方の端に有するスクシンイミド基あるいはSSMCCにおけるもう一方の端に有する硫酸スクシンイミド基と反応性を有する官能基、具体的にはアミノ基を予めチップ上に導入させておく必要がある。チップ上にアミノ基を導入する手段は特に限定されるものではない。基板表面に分子を整列させる自己組織化表面の手法、反応試薬を用いて導入する方法、官能基を有する物質をチップ上にコーティングする手段などが挙げられる。また、表面に導入しておいた官能基を起点として、架橋剤を用いてアミノ基を導入する手段なども含まれる。
本発明において用いられるペプチドアレイは、ペプチド基質の固定化されていない部分(バックグラウンド部)が、式(IV)に示すような化合物によりコーティングされていることが好ましい。式(IV)においてmは1〜20の整数、nは1〜10の整数を示す。mの値は、2〜10の範囲がより好ましく、4〜8の範囲が更に好ましい。nの値は、2〜8の範囲がより好ましく、3〜6の範囲が更に好ましい。この化合物によりバックグラウンド部をコーティングすることにより、バックグラウンド部における非特異的吸着を非常に効果的に抑制することが実現される。また、本発明のペプチドアレイは、基板の製造ロットや処理条件などの様々な変動要因に依存されるデータの再現性も向上し、非常に安定な測定データを得ることが可能である。
Figure 2009050171
しかし、ラベルフリーな光学的検出方法においては、どのような物質がチップ上に吸着してもシグナルとして検出される。すなわち、測定対象ではない物質が非特異的に吸着するのと、特異的な吸着を区別することが難しい。よって、よりシビアに非特異的な吸着を抑制する手段が求められるため、上記の固定化方法は非常に効果的である。
ELISA法やラベル物質を用いる相互作用解析方法においてはブロッキング方法として牛血清アルブミンやカゼインなどによる物理吸着が一般的に選択されている。物理吸着の方法は容易ではあるが、安定しておらず、経時的にチップ表面から脱離する場合がある。上記の光学的検出方法にはブロッキング剤の脱離さえも検出するため、共有結合によるブロッキングを行うことが好ましい。特に未反応のマレイミド基表面をブロッキングする場合は、チオール基を有する化合物を用いるのが好ましく、特にPEG(ポリエチレングリコール)の誘導体が好適に用いられる。
本発明は、アレイ上でのリン酸化の検出を目的とする。したがって、上述のようにして得られたアレイ上で、プロテインキナーゼを含有するもしくは含有すると考えられる溶液を作用させるに際しては、該プロテインキナーゼ活性を阻害するもしくは阻害すると考えられる化合物を該溶液中に共存させることになる。プロファイリングの対象となるプロテインキナーゼは市販されているような試薬であってもよいが、細胞由来の破砕液中に既に含まれる、もしくは含まれると推定されるものを用いることも可能である。例えば、バッファーもしくは細胞破砕液(細胞ライゼート)または両者混合液中にプロテインキナーゼ試薬もしくは細胞破砕液中にすでに含まれるプロテインキナーゼとヌクレオシド三リン酸(ATP)を加えたものを直接アレイに作用させることにより固定化基質のリン酸化を行うことができる。
特に、種々の薬剤による刺激を与えた細胞ライゼートを、本発明に適用することにより、薬剤による各種プロテインキナーゼ活性についての応答パターンの変化を捉えることが可能である。また、阻害剤を共存させる系でのリン酸化の阻害評価を行うことも可能である。したがって、例えば、各種プロテインキナーゼの阻害剤のような新規なドラッグのスクリーニング、プロテインキナーゼをマーカーとして癌などの疾患診断などに展開することも可能である。
リン酸化の条件はプロテインキナーゼの種類により変動するが、通常は10〜40℃程度、好ましくは20〜40℃程度の温度で5分〜8時間程度、好ましくは10分〜5時間程度反応させることで、固定化されたペプチドをリン酸化することができる。また、必要に応じて反応液中には、cAMP、cGMP、Mg2+、Ca2+などのリン酸化を補助、促進する物質を共存させてもよい。
また、本発明は、アレイ上でのリン酸化阻害活性の検出を目的とすることも可能である。この場合は、プロテインキナーゼを含有するもしくは含有すると考えられる溶液を作用させるに際しては、該プロテインキナーゼ活性を阻害するもしくは阻害すると考えられる化合物を該溶液中に共存させることになる。共存される阻害剤は特に限定されるものではないが、ペプチドもしくは蛋白質であってもよいし、その他の低分子化合物であってもよい。低分子化合物としては、分子量2,000以下のものが挙げられるが特に制約されない。
ところで、ペプチドのリン酸化に際しては、分子量としては80の増大しか伴わないため、SPRによる検出を試みる場合には、直接的な検出シグナルを得ることは困難である。そこで、間接的にリン酸基もしくはリン酸化されたアミノ酸に特異的に結合しうる物質もしくは化合物を検出プローブとして用いる必要がある。
特にアレイ上における基質のリン酸化を特異的に感度よくモニターするための検出プローブの種類として、リン酸化蛋白質を認識する抗体を用いることが可能である。具体的には、リン酸化セリン、リン酸化スレオニン、もしくはリン酸化チロシン抗体が用いられる。抗体は、ポリクロナール抗体、モノクロナール抗体のいずれも適用が可能ではあるが、特異性の点で、一般的にはモノクロナール抗体の方が好ましい。
また、検出プローブとしては、キレート化合物を用いる方法も適用することができる。キレート化合物とは一般に多座配位子ないしキレート試薬が金属イオンに配位して生じた錯体をいうものを指すが、特にリン酸に選択的かつ可逆的に結合する性質を有する化合物が好ましく、ポリアミン亜鉛錯体を用いることがより好ましい。ポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体を用いることが更に好ましい。更に、二核亜鉛(II)錯体を基本構造にもつヘキサアミン二核亜鉛(II)錯体を用いることがより好ましい。
このような化合物の典型としては、式(V)に示されるような、1,3−ビス[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]−2−ハイドロキシプロパノラート(IUPAC名:1,3−bis[bis(2−pyridylmethyl)amino]−2−propanolatodizinc(II) complex)を基本骨格とするポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体(ただし、プロパノール骨格の水酸基はアルコラートとして二つの亜鉛2価イオンの架橋配位子になっている)が挙げられるが、本発明は特にこの化合物に限定されるものではない(Dalton Trans Vol.8,pp.1189−1193(2004)参照)
Figure 2009050171
本発明で用いられる錯体は、一般的な化学合成技術を利用して合成することが可能であるが、市販の化合物を原料としても合成することができる。例えば、上記式(V)で示される化合物(ZnL)は、市販の1,3−ビス[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]−2−ハイドロキシプロパンと酢酸亜鉛を原料として次の方法により合成することができる。1,3−ビス[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]−2−ハイドロキシプロパンのエタノール溶液に10M水酸化ナトリウム水溶液を加え、次いで酢酸亜鉛二水和物を加える。溶媒を減圧留去することにより褐色のオイルを得ることができる。この残渣に水を加えて溶解後、1M過塩素酸ナトリウム水溶液を70℃に加温しながら滴下して加え、析出する無色の結晶を濾取し、加熱乾燥することにより式(V)の構造式で表される酢酸イオン付加体の二過塩素酸塩(ZnL−CHCOO・2ClO ・HO)を高収率で得ることができる。この結晶は一分子の結晶水を含んでいる。
更には、例えばAnal.Chem.Vol.77,pp.3979−3985(2005)において報告されているように、亜鉛キレート化合物でビオチン修飾されたもの(式(III)を参照)を用いて、アビジンもしくはストレプトアビジン、更には抗ストレプトアビジン抗体を作用させることにより、特異的にリン酸化に起因するSPRシグナルを増幅させる方法も好ましい。この場合に、作用されるビオチン修飾ポリアミン亜鉛錯体の溶液濃度は特に限定されないが、通常は1μM〜10M、好ましくは10μM〜1M、より好ましくは10μM〜10mMの範囲である。またアレイへの作用様式に関しても特に限定されないが、ビオチン修飾ポリアミン亜鉛錯体溶液をアレイ表面全体に広がるのに必要な液量をドロップしてもよいし、溶液中にアレイを浸漬させてもよい。あるいはポンプを用いて溶液を送液しながら、アレイ表面上に溶液を接触させることにより作用させてもよい。作用温度は室温でもよいし、20〜40℃程度の一定温度でインキュベートさせてもよい。作用時間は10分から2時間程度が好ましく、30分から1時間程度がより好ましい。
Figure 2009050171
上述のように、ビオチン修飾された亜鉛キレート化合物を作用させた後、アビジンもしくはストレプトアビジンを作用させ、更にアビジンもしくはストレプトアビジンを認識する抗体を作用させることにより、検出感度を更に高めることが可能になる。この場合の、アビジンもしくはストレプトアビジン、あるいは抗体を作用させる際の濃度は特に限定されないが、好ましくは0.01〜10μg/ml、より好ましくは0.1からμg/ml程度である。抗体としてはモノクロナール抗体、ポリクロナール抗体のいずれも適用できるが、特異性の点でモノクロナール抗体の方が好ましい。
また、ビオチン修飾ポリアミン亜鉛錯体、アビジンもしくはストレプトアビジンを順次作用させてもよいが、予めビオチン修飾ポリアミン亜鉛錯体とアビジンもしくはストレプトアビジンの複合体を形成させたものを直接作用させてもよい。この場合も上述のように、さらにアビジンもしくはストレプトアビジンを認識する抗体を作用させてもよい。複合体の形成に際しては、ビオチン修飾ポリアミン亜鉛錯体とアビジンもしくはストレプトアビジンとのモル比にして1:1乃至4:1にして反応させるのがよい。反応物は精製して未反応物を除去する方が好ましいが、反応物をそのまま適用することも可能である。
こうしたキレート性化合物の適用は、上述したような方法により非常に安価に合成することができる点で有利である。また常温により保存ができる点でも安定で使いやすく、流通面においても有利である。またリン酸化されるアミノ酸残基の種類に関係なく作用をすることや、リン酸化されたアミノ酸の近傍におけるアミノ酸配列に対して反応が依存しない点において、特に抗体を用いて検出する方法と比較して非常に大きな優位性を有している。
上記プロテインキナーゼとしては、種々のチロシンキナーゼあるいはセリン/スレオニンキナーゼが挙げられる。これらプロテインキナーゼの種類については特に限定されるものではなく、基本的にはあらゆる種類のプロテインキナーゼに対して適用することが可能である。
上述したような本発明の方法により、On−chipでリン酸化反応を行うことにより、プロテインキナーゼ活性のプロファイリングによる網羅的な解析を実現することができる。特に、創薬のスクリーニングや癌などの診断の分野において、有用な技術となりうることが期待される。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。
[実施例1]
(SPRアレイの作製)
式(VI)に示すような、末端官能基がチオール基である直鎖型チオールPEG試薬(SensoPath製SPSPT−0011)を1mMの濃度でエタノール7mlに溶解させた。直鎖型チオールPEGの分子量は336.54である。特に、金に対する金属結合性を示す。
Figure 2009050171
18mm四方、2mm厚のSF15ガラススライドにクロムを3nm蒸着し、金を45nm蒸着した金蒸着スライドを、上記直鎖型PEGチオール溶液に3時間浸漬させ、金基板全体にPEGチオールを結合させた。
このスライドの上にフォトマスクを載せ、500W超高圧水銀ランプ(ウシオ電機製)で2時間照射し、UV照射部のPEGチオールを除去した。フォトマスクは500μm四方の正方形の穴が96個有し(8個×12個のパターンからなる。)、穴の中心間のピッチは1mmに設計されている。フォトマスクの穴があいている部分はUV光が透過し、スライドに照射されてパターン化される。照射されなかった部分はPEGが残り、チップのバックグラウンド(Background)部分としてレファレンス部として機能する。
8−Amino−1−Octanethiol, Hydrochrolide(8−AOT,同仁化学研究所製)の1mMエタノール溶液に1時間浸漬し、UV照射部に8−AOTの自己組織化表面を形成させた。SSMCC(ピアス製)を20mM リン酸緩衝液(150mM NaCl;pH7.2)に0.4mg/mlで溶解し、金表面の8−AOTに15分間反応させた。8−AOTのアミノ基とSSMCCのNHS基とが反応し、MAL基は未反応のまま残るため、PEGを介してマレイミド基を表面に導入することができた。
上記のようにして得られた表面に、配列番号1〜26に示されるアミノ酸配列からなるペプチドを、図1に示すようなパターンで、3箇所ずつ、いずれもリン酸緩衝液(20mMリン酸、150mM NaCl;pH7.2)に0.5mM濃度で溶解して、MultiSPRinter(登録商標)自動スポッター(東洋紡績製)を用いて10nlずつスポッティングを行った。ペプチドは全て、システイン(Cys)−グリシン(Gly)−グリシン(Gly)の配列を末端に付加されたものを用いた。その後、ウェットな環境下で室温、16時間静置させて固定化反応を行った。チップの表面に形成させたマレイミド基と基質ペプチド末端のシステイン残基が有するチオール基とが反応し、基質ペプチドを共有結合的に表面に固定化することができる。
(未反応マレイミド基のブロッキング)
基質ペプチドを固定化した表面をリン酸緩衝液で洗浄した後、未反応のマレイミド基をブロッキングするために、片末端の官能基がチオール基、もう一方の官能基がメトキシ基であるPEGチオール(日本油脂製SUNBRIGHT(登録商標) MESH−50H)を1mM濃度になるようにリン酸緩衝液(20mMリン酸、150mM NaCl;pH7.2)に溶解して、250μlをチップ上に注出し、室温で1時間反応させた。ここで用いたPEGチオールの分子量は5,000である。
[実施例2]
(SPR解析によるSrcキナーゼによるリン酸化の検出)
上記のようにブロッキングを行ったアレイを用いて、チップ上でのSrcによるリン酸化を行った。Srcキナーゼ溶液300μlをアレイ上にドロップして、37℃で2時間の反応を行った。Src溶液の組成は、Srcキナーゼ(カルナバイオサイエンス製;20pg/μl)6μl、15mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5) 252μl、10mM ATP 3μl、0.1% Tween20 30μl、100mM DTT 6μl、500mM 塩化マグネシウム3μlとした。
上記リン酸化反応を施されたアレイをPBS及び水でアレイの洗浄を行い、アレイ表面を乾燥した後、SPRイメージング機器(MultiSPRinter(登録商標):東洋紡績製)にセットし、ランニングバッファーとして50mM トリス−塩酸緩衝液(pH7.4)を100μl/minの速度でフローセル内に流した。SPRからのシグナルが安定したのを確認した後に、リン酸化チロシン抗体PT−66(シグマ製)の1.3μg/ml濃度溶液をSPR装置内のセルへ注入して作用させた。その際のSPRシグナルの変化を観察して、シグナル上昇がプラトー状態になった時点で再度ランニングバッファーを送液して洗浄を行った。シグナル変化の観察は、各基質のスポット部位に加え、Backgroundにおいても実施した。
(観察の結果と考察)
SPRイメージングを行った結果を図2(A)に示した。SPR解析に際して、CCDカメラによる画像の取り込みを5秒ごとに行い、抗体反応後における時点で取り込まれた画像から、反応前の時点での画像を画像演算処理ソフトウエアScion Image(Scion Corp.製)を用いて引き算処理を行った結果である。
また、各プローブにおいて得られたSPRセンサグラムにおけるシグナル値をグラフ化した結果を図3に示した。シグナル値は、3点における値を平均化し、ブランクにおけるシグナル値を差し引いた結果である。No.23,9,20,22,13,5,19において、特に強いシグナルが得られている。これらのほとんどは、別途検討した蛍光アレイ解析やマススペクトル解析においても、Srcの基質としての有用性が確認されているものである。
[実施例3]
(SPR解析によるPKAによるリン酸化の検出)
実施例1と同様にして得た、ブロッキングを行ったアレイを用いて、チップ上でのPKAによるリン酸化を行った。PKA溶液400μlをアレイ上にドロップして、37℃で2時間の反応を行った。PKA溶液の組成は、PKA(プロメガ製;80U/μl、2.5mg蛋白質/ml)1μl、20mM HEPES緩衝液(pH7.5) 383μl、10mM ATP 8μl、500mM 塩化マグネシウム 8μlとした。
上記リン酸化反応を施されたアレイをPBS及び水でアレイの洗浄を行い、ビオチン修飾ポリアミン亜鉛錯体を作用させた。ビオチン修飾ポリアミン亜鉛錯体としては、以下の式(III)に示されるPhos−tag(登録商標)BTL−104(株式会社ナード研究所)を用いた。Phos−tag(登録商標)BTL−104は10μg/ml濃度とし、溶解液には0.005% Tween20,10%(v/v)エタノール、0.2M 硝酸ナトリウム、1mM 硝酸亜鉛を含む10mM HEPES−NaOH緩衝液(pH7.4)を用いた。インキュベーションは室温で30分間行った。
Figure 2009050171
その後、PBS及び水で3回ずつアレイの洗浄を行い、アレイ表面を乾燥した後、SPRイメージング機器(MultiSPRinter(登録商標):東洋紡績製)にセットし、ランニングバッファーとして50mM トリス−塩酸緩衝液(pH7.4)を100μl/minの速度でフローセル内に流した。SPRからのシグナルが安定したのを確認した後に、4μg/ml濃度のストレプトアビジン(Molecular Probes製)溶液をSPR装置内のセルへ注入して作用させた。その際のSPRシグナルの変化を観察して、シグナル上昇がプラトー状態になった時点で再度ランニングバッファーを送液して洗浄を行い、更に抗ストレプトアビジン抗体を4μg/ml濃度で同様に作用させた。この場合も、SPRシグナル上昇がプラトー状態になった時点で再度ランニングバッファーを送液して洗浄を行った。シグナル変化の観察は、各基質のスポット部位に加え、Backgroundにおいても実施した。
SPRイメージングを行った結果を図2(B)に示した。Src反応により得られた図2(A)とはイメージングのパターンに大きな相違が認められている。画像演算処理については、実施例2と同じ方法により行った。また、各プローブにおいて得られたSPRセンサグラムにおけるシグナル値を、実施例2と同様にしてグラフ化した結果を図4に示した。No.9,4,16、5,1,6,19において、特に強いシグナルが得られている。これらのほとんどは、別途検討した蛍光アレイ解析やマススペクトル解析においても、PKAの基質としての有用性が確認されているものである。
[実施例4]
実施例1と同様にして得た、ブロッキングを行ったアレイを用いて、薬剤刺激を与えた細胞ライゼートを用いた、プロテインキナーゼ活性のSPRによる検出を検討した。
(細胞ライゼートの調製)
無血清MEM中で培養したヒト乳がん由来MCF−7細胞(株)(ヒューマンサイエンス研究資源バンク)を10cmシャーレに1×10cells/wellとなるように播種した後、20時間培養した。神経成長因子(NGF)を無血清培地に添加し、終濃度が50ng/mlになるように、細胞に添加して、COインキュベーター内で10分間インキュベートを行った。Dulbecco’s PBS(D−PBS)5mlで洗浄した後、D−PBS1mlを加えて、細胞をセルスクレーパーではがし、細胞懸濁液を回収した。300gで5分間遠心分離した後、ペレットにlysis buffer(50mM リン酸化カリウム、pH7.25,1mM EDTA、1mM EGTA、10mM 塩化マグネシウム、1mM DTT、1mM sodium orthovanadate、80mM β−グリセロリン酸、3μg/ml pepstatin A、5μg/ml aprotinin、1mM phenylmethansulfonylfluoride)を加えて、15秒間の超音波処理を3回行い、細胞を破砕した。100,000gで60分の超遠心を4回行い、上清(cytosol)を回収した。沈殿に2%Triton X−100入りのlysis bufferを加えて、15秒間の超音波処理を3回行い、細胞を破砕した。100,000gで40分の超遠心を4回行い、上清(membrane)を回収して用いた。なお、対照としてNGFを加えない細胞に関しても、同様の処理を行いライゼートを調製した。ライゼート中に含まれる蛋白質の定量は、DCプロテインアッセイキット(バイオラッド製)を用いて定量を行った。
(細胞ライゼートを用いたSPR解析)
上記で得られた細胞ライゼートを蛋白質濃度が100μg/mlになるように、反応バッファーで希釈した。終濃度条件として、15mM Tris−HCl(pH7.5)、5mM 塩化マグネシウム、0.01%(v/v) Tween20、2mM DTT、0.1mM ATPとなるように調整した。該組成からなるライゼート溶液300μlを実施例1で作製したブロッキングを行ったアレイ上にドロップして、37℃で2時間の反応を行った。その後、アレイを1%SDS−PBS,0.05%Tween20−PBS,ミリQ水の順に超音波処理しながら、各10分ずつ洗浄を行った。
洗浄を終えたアレイを、SPRイメージング機器(MultiSPRinter(登録商標):東洋紡績製)にセットし、実施例2と同じ方法、条件にてSPR解析を実施した。各プローブにおいて得られたSPRセンサグラムにおけるシグナル値を、グラフ化した結果を図5に示した。(A)はNGFによる刺激のない細胞ライゼート、(B)はNGFにより刺激を与えた細胞ライゼートを用いて測定を行った結果である。NGF刺激により、No.19の基質ペプチドにおいて、シグナルの増大が最も顕著であった。その他にも、No.22,23,18などにおいてもシグナルが増大している。これらは、実施例2で行ったSrc反応において、応答を示した基質であることから、NGF刺激によりSrc活性が増幅されている可能性が示唆される結果である。最もシグナル増幅されたNo.19に関しては、Srcでの応答は見られているが、他の基質と比べて特に強い応答ではなかった。したがって、Src以外のチロシンキナーゼの活性化も促進されているものと推察される。
[実施例5]
実施例4で調製したNGFで刺激された細胞のライゼートを用いて、Src阻害剤であるSU6656(Calbiochem製)を共存させた場合の、各プローブにおける応答変化を検討した。実施例4と同じ方法、条件にて、SU6656を10−7,10−6,10−5,10−4Mの濃度で共存させて、On−chipでのリン酸化反応を行った。SPR解析も実施例4と同様にして行った。各プローブにおいて得られたSPRセンサグラムにおけるシグナル値を、グラフ化した結果を図6に示した。シグナルが確認されているペプチドに関しては、阻害剤が高濃度になるほど、シグナルが低下していく様子が確認されている。このことからも、実施例4で確認されていたSPRシグナルは主にSrc反応によるリン酸化に起因するものであったことが裏づけられたと考えられる。
本発明を利用することにより、多種類のプロテインキナーゼシグナルを網羅的に解析することができ、機能未知な遺伝子の導入、あるいは薬物投与に伴う細胞内のプロテインキナーゼ動態を効果的にプロファイリングすることができる。これにより新規な遺伝子からの機能解析、新薬探索へのアプローチといったゲノム創薬への展開が期待される。
実施例1において作製したアレイにおける、固定化ペプチドのパターンを示す図である。数字は、配列番号を示す。 実施例2及び実施例3により得られたSPRイメージングを行った結果を示す図である。(A)Src反応、(B)PKA反応 実施例2において、Src反応により得られた各基質ペプチドにおけるSPRシグナルを示す図である。 実施例3において、PKA反応により得られた各基質ペプチドにおけるSPRシグナルを示す図である。 実施例4において、細胞ライゼートによるリン酸化反応により得られた各基質ペプチドにおけるSPRシグナルを示す図である。(A)NGF刺激なし、(B)NGF刺激あり 実施例5において、NGF刺激を与えた細胞ライゼートに関して、Src阻害剤SU6656を共存させた場合の、各基質ペプチドにおけるリン酸化シグナルの変動を検討した結果示す図である。

Claims (13)

  1. 配列番号1〜26よりなる群から選ばれるアミノ酸配列を含有する、少なくとも2種以上のペプチド基質が金表面上に固定化されていることを特徴とする基板上におけるリン酸化を表面プラズモン共鳴によりリン酸化を検出するためのペプチドアレイ。
  2. 基板上におけるリン酸化を表面プラズモン共鳴イメージングにより検出するための請求項1に記載のペプチドアレイ。
  3. 配列番号1〜26よりなる群から選ばれるアミノ酸配列を含有するペプチド基質が5種以上固定化されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のペプチドアレイ。
  4. 配列番号1〜26よりなる群から選ばれるアミノ酸配列を含有するペプチド基質が10種以上固定化されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のペプチドアレイ。
  5. 配列番号1〜26よりなる群から選ばれるアミノ酸配列を含有するペプチド基質が末端にシステイン残基を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のペプチドアレイ。
  6. 配列番号1〜26よりなる群から選ばれるアミノ酸配列を含有するペプチド基質が式(I)もしくは(II)に示される化合物を架橋剤として用いて金表面に固定化されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のペプチドアレイ。
    Figure 2009050171
    Figure 2009050171
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のペプチドアレイを用いて、基板上でリン酸化反応を行った後、リン酸化部位を認識することのできる抗体を作用させることにより得られる表面プラズモン共鳴のシグナルによりリン酸化を検出する方法。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載のペプチドアレイを用いて、基板上でリン酸化反応を行った後、リン酸化部位を認識することのできる金属錯体化合物を作用させることにより得られる表面プラズモン共鳴のシグナルによりリン酸化を検出する方法。
  9. 金属錯体化合物がビオチンで修飾されてなり、かつ該金属錯体化合物をペプチドアレイに作用させた後、アビジンもしくはストレプトアビジンを作用させることを特徴とする請求項8に記載のリン酸化を検出する方法。
  10. 金属錯体化合物が亜鉛キレート化合物であることを特徴とする請求項8又は9に記載のリン酸化を検出する方法。
  11. 金属錯体化合物が式(III)で示される化合物であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のリン酸化を検出する方法。
    Figure 2009050171
  12. 細胞ライゼートによる基板上でのリン酸化反応を検出することを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載のリン酸化を検出する方法。
  13. 薬剤による刺激を与えた細胞のライゼートによる基板上でのリン酸化反応を検出することを特徴とする請求項12に記載のリン酸化を検出する方法。
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