JP2009035694A - アクリル系重合体及び光学フィルムの製造方法 - Google Patents

アクリル系重合体及び光学フィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】重合体溶液の粘度上昇を抑制して、高分子量のアクリル系重合体を製造することができるアクリル系重合体の製造方法を実現する。
【解決手段】本発明のアクリル系重合体の製造方法は、水酸基含有単量体と(メタ)アクリル酸エステルとを含む単量体組成物を溶液重合するアクリル系重合体の製造方法であり、上記重合溶液中の単量体組成物の濃度が45質量%以上である条件下で重合を行う工程を含み、上記工程では、重合性基を有していないアルコールを上記重合溶液が含有している方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、アクリル系重合体の製造方法、並びに当該アクリル系重合体をフィルム成形する光学フィルムの製造方法に関するものである。
透明性と耐熱性とを共に有し、更には機械的強度や成形加工性等の各種特性を備えた透明性耐熱樹脂としてラクトン環含有重合体が提案されている。
ラクトン環含有重合体は、表面光沢や表面硬度に優れる点で、各種フィルム、シート等への応用が期待されている。しかしながら、従来のラクトン環含有重合体はフィルム化やシート化等の成形加工性が極めて悪く、成形して得られるフィルムやシートにおいては、割れが発生したり表面状態が悪かったりし、機械的強度にも劣っていた。
上記ラクトン環含有重合体の成形加工性を改善するためには、ラクトン環含有重合体を高分子量化することが考えられ、そのためには前駆体である、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を高分子量化する必要がある。
しかしながら、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体の従来の製造方法では、重合溶液のゲル化等が生じるため高分子量化には限界があった(例えば、特許文献1,2参照)。
最近、上記問題を解決する目的で、より高分子量のラクトン環含有重合体の製造方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
特開平10−17623号公報(1998年1月20日公開) 特開2004−18836号公報(2004年1月22日公開) 特開2005−146084号公報(2005年6月9日公開)
しかしながら、特許文献3の方法では高分子量の重合体を得ることはできるが、重合が進むと重合体溶液の粘度が高くなり、製造が困難となるため、重合体溶液を溶媒で希釈する必要があるという問題を生じる。
具体的には、特許文献3の方法における重合体溶液の粘度は、実験室スケールでの製造では問題とならないが、実機スケールでの製造においては問題となる。このため、重合体溶液を溶媒で希釈する必要があり、一度に製造できる重合体の量が減り、生産効率を高めることができないという問題が生じる。
また、特許文献3の方法では得られる重合体の分子量分布(Mw/Mn)が広くなり、機械的強度、特にフィルムにした場合の可撓性が満足のいくものではなかった。更には、特許文献3の方法では使用できる溶媒がケトン系又はエーテル系に限られるという問題があった。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、重合体溶液の粘度上昇を抑制して、分子量分布の狭い高分子量のアクリル系重合体を製造することができるアクリル系重合体の製造方法、並びに当該アクリル系重合体を用いた光学フィルムの製造方法を実現することにある。
本発明者は上記課題を解決するために、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有するアクリル系重合体の重合溶液の粘度が高くなる原因、並びに分子量分布が広くなる原因について、鋭意検討を行った。その結果、重合溶液の粘度が高くなること及び分子量分布が広くなることは、分子間でエステル化反応が起こり分子間架橋が生じていることが原因であるとの結論に達した。そして、重合性基を有していないアルコールを重合溶液中に添加することにより、分子間エステル化反応を抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明に係るアクリル系重合体の製造方法は、上記課題を解決するために、水酸基含有単量体と(メタ)アクリル酸エステルとを含む単量体組成物を溶液重合するアクリル系重合体の製造方法であり、上記重合溶液中の単量体組成物の濃度が45質量%以上である条件下で重合を行う工程を含み、上記工程では、重合性基を有していないアルコールを上記重合溶液が含有していることを特徴としている。
上記方法によれば、重合性基を有していないアルコール存在下で重合を行うため、重合体の分子間架橋反応を抑制することができる。具体的には、重合体はエステル基と水酸基とを有するため、重合中にこれら置換基がエステル交換反応を起こすことにより分子間架橋反応が起こると考えられるが、重合溶液中に重合性基を有していないアルコールが存在する場合、当該アルコールが重合体分子間のエステル基と水酸基とのエステル交換反応(分子間架橋)の平衡を反応系にずらすため、言い換えると脱架橋反応を引き起こすと考えられる。このため、重合体間のエステル結合による上記分子間架橋反応を抑制することができると考えられる。
よって、上記方法によれば、分子間架橋反応が抑制されるため、重合体溶液の粘度の上昇を抑制することができる。このため、実機スケールであっても単量体濃度を高めて重合を行うことができ、高分子量の重合体を得ることができる。
従って、上記方法によれば、重合体溶液の粘度上昇を抑制して、分子量分布の狭い高分子量のアクリル系重合体を製造することができるという効果を奏する。
本発明に係るアクリル系重合体の製造方法では、重合性基を有していない上記アルコールが飽和アルコールであることが好ましい。
また、本発明に係るアクリル系重合体の製造方法では、上記水酸基含有単量体が、下記一般式(1)
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を示す。)
で表される構造を有することが好ましい。
上記方法によれば、耐熱性に優れたアクリル系重合体を製造することができるという更なる効果を奏する。
また、本発明に係るアクリル系重合体の製造方法では、上記(メタ)アクリル酸エステルがメタクリル酸メチルであることが好ましい。
上記方法によれば、耐熱性、透明性に優れるアクリル系重合体を製造することができるという更なる効果を奏する。
また、本発明に係るアクリル系重合体の製造方法は、上記工程では、重合性基を有していない上記アルコールを上記単量体組成物100質量部に対して1質量部以上122質量部以下の範囲内で上記重合溶液が含有していることが好ましい。
また、本発明に係るアクリル系重合体の製造方法では、上記重合により得られた重合体を、更に分子内脱アルコール反応をさせることにより、分子内にラクトン環構造を形成させることが好ましい。
上記方法によれば、耐熱性により優れたアクリル系重合体を製造することができるという更なる効果を奏する。
更には、本発明に係るアクリル系重合体の製造方法では、上記ラクトン環構造が、下記一般式(2)
(式中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。尚、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。)
で表される構造であることが好ましい。
上記方法によれば、耐熱性、透明性、耐溶剤性、高い表面硬度並びに熱安定性に優れたアクリル系重合体を製造することができるという更なる効果を奏する。
本発明に係る光学フィルムの製造方法は、上記課題を解決するために、上記本発明の製造方法によりアクリル系重合体を製造する工程と、上記アクリル系重合体をポリマーフィルタにより濾過する工程と、上記濾過する工程後に上記アクリル系重合体をフィルムに成形する工程とを含むことを特徴としている。
上記方法によれば、機械強度、耐衝撃性並びに可撓性に優れる光学フィルムを製造することができるという効果を奏する。
本発明に係る光学フィルムは、上記課題を解決するために、上記光学フィルムの製造方法により得られることを特徴としている。
上記構成によれば、機械強度、耐衝撃性、並びに可撓性に優れる光学フィルムを提供することができるという効果を奏する。
本発明に係るアクリル系重合体の製造方法は、以上のように、水酸基含有単量体と(メタ)アクリル酸エステルとを含む単量体組成物を溶液重合するアクリル系重合体の製造方法であり、上記重合溶液中の単量体組成物の濃度が45質量%以上である条件下で重合を行う工程を含み、上記工程では、重合性基を有していないアルコールを上記重合溶液が含有していることを特徴としている。
このため、重合体溶液の粘度上昇を抑制して、分子量分布の狭い高分子量のアクリル系重合体を製造することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る光学フィルムの製造方法は、以上のように、上記本発明の製造方法によりアクリル系重合体を製造する工程と、上記アクリル系重合体をポリマーフィルタにより濾過する工程と、上記濾過する工程後に上記アクリル系重合体をフィルムに成形する工程とを含むことを特徴としている。
このため、機械強度、耐衝撃性並びに可撓性に優れる光学フィルムを製造することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る光学フィルムは、以上のように、上記光学フィルムの製造方法により得られることを特徴としている。
このため、機械強度、耐衝撃性、並びに可撓性に優れる光学フィルムを提供することができるという効果を奏する。
以下、本発明について詳しく説明する。尚、本明細書では、「重量」は「質量」と同義語として扱い、「重量%」は「質量%」と同義語として扱い、「ppm」は特に断らない限り質量換算で求められる値を意味し、例えば、10,000ppmは1質量%を意味する。また、範囲を示す「A〜B」は、A以上B以下であることを意味する。
また、本明細書では、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「アクリル系重合体」とは、(メタ)アクリル酸若しくは(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体を主成分として含有する単量体成分を重合して得られる重合体を意味し、「主成分」とは、50質量%以上含有していることを意味する。
(I)アクリル系重合体
本実施の形態に係るアクリル系重合体の製造方法は、水酸基含有単量体と(メタ)アクリル酸エステルとを含む単量体組成物を溶液重合するアクリル系重合体の製造方法であり、上記重合溶液中の単量体組成物の濃度が45質量%以上である条件下で重合を行う工程を含み、上記工程では、重合性基を有していないアルコールを上記重合溶液が含有している方法である。
上記水酸基含有単量体としては、水酸基を含有する単量体であれば特には限定されないが、例えば、一般式(1)
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を示す。)
で表される単量体(以下、「水酸基含有単量体A」と記す)が挙げられ、より具体的には、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸n−ブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸t−ブチル等が挙げられる。
上記一般式(1)で表される単量体以外の水酸基含有単量体(以下、「水酸基含有単量体B」と記す)としては、例えば、メタリルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン等のアリルアルコール、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル等の2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン等が挙げられる。
更には、その他の水酸基含有単量体(以下、「水酸基含有単量体C」と記す)としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、及び(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル等が挙げられる。
上記水酸基含有単量体の中でも、水酸基含有単量体A及びBは、加熱等によりラクトン環を形成し、得られる重合体の耐熱性が向上するので好ましい。
また、これらの中でも、水酸基含有単量体Aは、耐熱性や重合性の点でより優れており、また、ラクトン環化後の耐熱性や耐溶剤性にも優れているためより好ましい。この中でも、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましく、耐熱性向上効果が高い点で、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが特に好ましい。水酸基含有単量体Aは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸nーブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル等が好ましい。これらは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、耐熱性、透明性が優れる点から、メタクリル酸メチルがより好ましい。
重合性基を有していない上記アルコールとしては、上記単量体の何れかと重合するビニル基等の置換基を有していないアルコールであれば特には限定されない。このようなアルコールとしては、例えば、第1級飽和アルコール、第2級飽和アルコール、及び第3級飽和アルコール等の飽和アルコールや、芳香族含有アルコールが挙げられる。
上記第1級飽和アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−オクタデカノール、2−メチルプロパノール、4,5−ジメチルヘキサノール及びシクロヘキサンメタノール等のアルキルアルコールが挙げられる。
上記第2級飽和アルコールとしては、2−プロパノール、2−ブタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール等のアルキルアルコール;シクロヘキシルアルコール等のシクロアルキルアルコール等が挙げられる。
上記第3級飽和アルコールとしては、t−ブタノール、1,1−ジメチルプロパノール等のアルキルアルコール等が挙げられる。
上記芳香族含有アルコールとしては、ベンジルアルコール、4−メチルベンジルアルコール、4−ヒドロキシメチルビフェニル、2−(ヒドロキシメチル)アントラセン等が挙げられる。
上述したアルコールは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。上記アルコールとしては、飽和アルコールがより好ましく、炭素数1〜20の飽和アルコールが更に好ましく、炭素数1〜12の飽和アルコールが特に好ましく、炭素数1〜6の飽和アルコールが最も好ましい。
上記飽和アルコールとしては、アルキルアルコールがより好ましく、炭素数1〜20のアルキルアルコールが更に好ましく、炭素数1〜12のアルキルアルコールが特に好ましく、炭素数1〜6のアルキルアルコールが最も好ましい。また、アルキルアルコールとしては、第1級アルコールであることがより好ましい。
尚、上記「飽和アルコール」とは、炭素−炭素結合が全て単結合をしているアルコールを意味する。
本実施の形態に係る製造方法では、得られる重合体の分子量を高めるという観点から、上記重合溶液中の単量体組成物の濃度が45質量%以上である条件下で重合を行う工程を含むが、当該単量体組成物の濃度はより好ましくは45〜70質量%の範囲内であり、更に好ましくは45〜65質量%の範囲内であり、特に好ましくは47.5〜65質量%の範囲内であり、最も好ましくは47.5〜60質量%の範囲内である。
また、単量体組成物と当該単量体組成物から得られる重合体との上記重合溶液中の濃度の合計が、全重合工程において45質量%以上を維持していることがより好ましい。
上記工程では、上記重合溶液中の上記水酸基含有単量体の濃度は3質量%以上であることが好ましく、より好ましくは3〜30質量%の範囲内であり、更に好ましくは5〜25質量%の範囲内であり、特に好ましくは7〜20質量%の範囲内であり、最も好ましくは10〜20質量%の範囲内である。
また、上記工程では、上記重合溶液中の上記(メタ)アクリル酸エステルの濃度は20質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20〜67質量%の範囲内であり、更に好ましくは20〜62質量%の範囲内であり、特に好ましくは25〜57質量%の範囲内であり、最も好ましくは30〜50質量%の範囲内である。
上記工程では、上記重合溶液は上記アルコールを上記単量体組成物100質量部に対して1質量部以上122質量部以下の範囲内で含有することが好ましく、より好ましくは2〜100質量部の範囲内であり、更に好ましくは5〜75質量部の範囲内であり、特に好ましくは10〜50質量部の範囲内であり、最も好ましくは15〜35質量部の範囲内である。
また、上記アクリル系重合体は、上述した(メタ)アクリル酸エステルを重合した構造及び水酸基含有単量体を重合した構造以外の構造を有していてもよい。当該構造としては、酸性及び塩基を示す構造でなければ特には限定されないが、下記一般式(3)
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R基、又はC−O−R基を表し、Ac基はアセチル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表し、Rは炭素数1〜20の有機残基を表す。)
で表される単量体を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)が好ましい。
尚、上記単量体として、アクリル酸やメタクリル酸等の(アルキル)アクリル酸を用いてもよいが、エステル交換反応並びに環化反応の触媒として作用させないという観点から、上記重合液中における(アルキル)アクリル酸の濃度は、好ましくは0〜5質量%の範囲内、より好ましくは0〜3質量%の範囲内、更に好ましくは0〜1質量%の範囲内、最も好ましくは0質量%である。
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル等が挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。尚、上記一般式(3)で表される化合物等のその他の単量体は、例えば、重合溶液中0〜22質量%の範囲で用いることができる。
上記溶液重合に用いられる溶剤は特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;等が挙げられ、これらの1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、使用する溶剤の沸点が高すぎると、最終的に得られる重合体の残存揮発分が多くなることから、沸点が50〜200℃の範囲内のものが好ましい。
重合反応時には、必要に応じて、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシイソノナノエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;等が挙げられ、これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、用いる単量体の組み合わせや反応条件等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
重合を行う際には、反応液のゲル化を抑止するために、重合反応混合物中の生成した重合体の濃度が70質量%以下となるように制御することがより好ましい。具体的には、重合反応混合物中の生成した重合体の濃度が70質量%を超える場合には、重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加して70質量%以下となるように制御することが好ましい。重合反応混合物中の生成した重合体の濃度は、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。尚、重合反応混合物中の重合体の濃度が低すぎると生産性が低下するため、重合反応混合物中の重合体の濃度は、40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましい。
重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加する形態としては、特に限定されず、連続的に重合溶剤を添加してもよいし、間欠的に重合溶剤を添加してもよい。このように重合反応混合物中の生成した重合体の濃度を制御することによって、反応液のゲル化をより十分に抑止することができ、特に、分子鎖中の水酸基及びエステル基の割合を高めた場合であってもゲル化を十分に抑制できる。添加する重合溶剤としては、重合反応の初期仕込み時に用いた溶剤と同じ種類の溶剤であってもよいし、異なる種類の溶剤であってもよいが、重合反応の初期仕込み時に用いた溶剤と同じ種類の溶剤を用いることが好ましい。また、添加する重合溶剤は、1種のみの溶剤であってもよいし、2種以上の混合溶剤であってもよい。
尚、溶媒を滴下する場合であっても、単量体組成物と当該単量体組成物から得られる重合体との上記重合反応混合物中の濃度の合計が全重合工程において、45〜70質量%の範囲内を維持していることが好ましく、より好ましくは45〜65質量%の範囲内、更に好ましくは47.5〜65質量%の範囲内、特に好ましくは47.5〜60質量%の範囲内である。
上記重合時の温度については、特には限定されないが、例えば、0〜150℃の範囲内、より好ましくは80〜140℃の範囲内で行うことができる。
以上の重合工程で得られた重合体は、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体である。本実施の形態に係る方法では、上記アクリル系重合体の粘度を全重合工程において、30,000cps以下、より好ましくは20,000cps以下に抑制することができるため、希釈等の操作を行うことなく実機スケールでの生産が可能である。また、得られる重合体の重量平均分子量を100,000以上とすることができるため、後述するラクトン環構造を付与させても得られる重合体は、可撓性に優れるフィルムを提供することができる。
また、本実施の形態に係る方法では、分子間架橋反応を抑制することができるため、得られる重合体の分子量分布(Mw/Mn)を2.6以下にすることができ、得られる重合体は、機械強度、特にフィルムにした場合の可撓性に優れる。
上記重合体を更に分子内脱アルコール反応をさせることにより、分子内にラクトン環構造を形成させることがより好ましい。
上記重合工程を終了した時点で得られる重合反応混合物中には、通常、得られた重合体以外に溶剤が含まれている。上記重合体をラクトン環含有重合体とする場合では、溶剤を完全に除去して重合体を固体状態で取り出す必要はなく、溶剤を含んだ状態で、その後に続くラクトン環化縮合工程を行うことが好ましい。また、必要な場合は、固体状態で取り出した後に、続くラクトン環化縮合工程に好適な溶剤を再添加してもよい。
上記重合体へラクトン環構造を導入するための反応は、加熱により、重合体の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基とが環化縮合してラクトン環構造を生じる反応であり、その環化縮合によってアルコールが副生する。ラクトン環構造が重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中)に形成されることにより、重合体に高い耐熱性が付与される。ラクトン環構造を導く環化縮合反応の反応率が不十分であると、耐熱性が十分に向上しなかったり、成形時の加熱処理によって成形途中に縮合反応が起こり、生じたアルコールが成形品中に泡やシルバーストリークとなって存在する恐れがあるため好ましくない。
ラクトン環化縮合工程において得られるラクトン環含有重合体は、好ましくは、一般式(2)
(式中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。尚、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。)
で表されるラクトン環構造を有する。
尚、上記一般式(1)、(2)、(3)における有機残基は、炭素数が1〜20の範囲内であれば特には限定されないが、例えば、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、直鎖若しくは分岐状のアルキレン基、アリール基、−OAc基、−CN基等が挙げられる。
上記重合体を加熱処理する方法については特に限定されず、公知の方法を利用することができる。例えば、重合工程によって得られた、溶剤を含む重合反応混合物を、そのまま加熱処理してもよい。また、溶剤の存在下で、必要に応じて閉環触媒を用いて加熱処理してもよい。また、揮発成分を除去するための真空装置あるいは脱揮装置を持つ加熱炉や反応装置、脱揮装置のある押出機等を用いて加熱処理を行うこともできる。
環化縮合反応を行う際に、上記重合体に加えて、他の熱可塑性樹脂を共存させてもよい。また、環化縮合反応を行う際には、必要に応じて、環化縮合反応の触媒として一般に用いられるp−トルエンスルホン酸等のエステル化触媒又はエステル交換触媒を用いてもよいし、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸等の有機カルボン酸類を触媒として用いてもよい。特開昭61−254608号公報や特開昭61−261303号公報に示されている様に、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩等を用いてもよい。
環化縮合反応を行う際には、有機リン化合物を触媒として用いることが好ましい。触媒として有機リン化合物を用いることにより、環化縮合反応率を向上させることができるとともに、得られるラクトン環含有重合体の着色を大幅に低減することができる。更に、有機リン化合物を触媒として用いることにより、後述の脱揮工程を併用する場合において起こり得る分子量低下を抑制することができ、優れた機械的強度を付与することができる。
環化縮合反応の際に触媒として用いることができる有機リン化合物としては、例えば、メチル亜ホスホン酸、エチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸等のアルキル(アリール)亜ホスホン酸(但し、これらは、互変異性体であるアルキル(アリール)ホスフィン酸になっていてもよい)及びこれらのジエステルあるいはモノエステル;ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、フェニルエチルホスフィン酸等のジアルキル(アリール)ホスフィン酸及びこれらのエステル;メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、トリフルオルメチルホスホン酸、フェニルホスホン酸等のアルキル(アリール)ホスホン酸及びこれらのジエステルあるいはモノエステル;メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸等のアルキル(アリール)亜ホスフィン酸及びこれらのエステル;亜リン酸メチル、亜リン酸エチル、亜リン酸フェニル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸ジエステルあるいはモノエステルあるいはトリエステル;リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸イソデシル、リン酸ラウリル、リン酸ステアリル、リン酸イソステアリル、リン酸フェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジ−2−エチルヘキシル、リン酸ジイソデシル、リン酸ジラウリル、リン酸ジステアリル、リン酸ジイソステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリイソデシル、リン酸トリラウリル、リン酸トリステアリル、リン酸トリイソステアリル、リン酸トリフェニル等のリン酸ジエステルあるいはモノエステルあるいはトリエステル;メチルホスフィン、エチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のモノ、ジ若しくはトリアルキル(アリール)ホスフィン;メチルジクロロホスフィン、エチルジクロロホスフィン、フェニルジクロロホスフィン、ジメチルクロロホスフィン、ジエチルクロロホスフィン、ジフェニルクロロホスフィン等のアルキル(アリール)ハロゲンホスフィン;酸化メチルホスフィン、酸化エチルホスフィン、酸化フェニルホスフィン、酸化ジメチルホスフィン、酸化ジエチルホスフィン、酸化ジフェニルホスフィン、酸化トリメチルホスフィン、酸化トリエチルホスフィン、酸化トリフェニルホスフィン等の酸化モノ、ジ若しくはトリアルキル(アリール)ホスフィン;塩化テトラメチルホスホニウム、塩化テトラエチルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム等のハロゲン化テトラアルキル(アリール)ホスホニウム;等が挙げられる。これらの中でも、触媒活性が高くて低着色性のため、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸ジエステルあるいはモノエステル、リン酸ジエステルあるいはモノエステル、アルキル(アリール)ホスホン酸が好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸ジエステルあるいはモノエステル、リン酸ジエステルあるいはモノエステルがより好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、リン酸ジエステルあるいはモノエステルが特に好ましい。これら有機リン化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
環化縮合反応の際に用いる触媒の使用量は、特に限定されないが、上記重合体に対して、好ましくは0.001〜5質量%の範囲内、より好ましくは0.01〜2.5質量%の範囲内、更に好ましくは0.01〜1質量%の範囲内、特に好ましくは0.05〜0.5質量%の範囲内である。触媒の使用量が0.001質量%未満であると、環化縮合反応の反応率の向上が十分に図れないおそれがあり、一方、5質量%を超えると、着色の原因となったり、重合体の架橋により溶融賦形し難くなることがある。
触媒の添加時期は特に限定されず、反応初期に添加しても、反応途中に添加しても、それらの両方で添加してもよい。
環化縮合反応を溶剤の存在下で行い、且つ、環化縮合反応の際に、脱揮工程を併用することが好ましい。この場合、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態、及び、脱揮工程を環化縮合反応の過程全体にわたっては併用せずに過程の一部においてのみ併用する形態が挙げられる。脱揮工程を併用する方法では、縮合環化反応で副生するアルコールを強制的に脱揮させて除去するので、反応の平衡が生成側に有利となる。
脱揮工程とは、溶剤、残存単量体等の揮発分と、ラクトン環構造を導く環化縮合反応により副生したアルコールとを、必要により減圧加熱条件下で、除去処理する工程をいう。この除去処理が不十分であると、生成した樹脂中の残存揮発分が多くなり、成形時の変質等によって着色したり、泡やシルバーストリーク等の成形不良が起こったりする問題等が生じる。
環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、使用する装置については特に限定されないが、本反応をより効果的に行うために、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置やベント付き押出機、また、上記脱揮装置と上記押出機とを直列に配置したものを用いることが好ましく、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置又はベント付き押出機を用いることがより好ましい。
上記熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置を用いる場合の反応処理温度は、150〜350℃の範囲内が好ましく、200〜300℃の範囲内がより好ましい。反応処理温度が150℃より低いと、環化縮合反応が不十分となって残存揮発分が多くなるおそれがあり、350℃より高いと、着色や分解が起こるおそれがある。
上記熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置を用いる場合の、反応処理時の圧力は、931〜1.33hPa(700〜1mmHg)の範囲内が好ましく、798〜66.5hPa(600〜50mmHg)の範囲内がより好ましい。上記圧力が931hPaより高いと、アルコールを含めた揮発分が残存し易いという問題があり、1.33hPaより低いと、工業的な実施が困難となるという問題がある。
上記ベント付き押出機を用いる場合、ベントは1個でも複数個でもよいが、複数個のベントを有する方が好ましい。
上記ベント付き押出機を用いる場合の反応処理温度は、150〜350℃の範囲内が好ましく、200〜300℃の範囲内がより好ましい。上記温度が150℃より低いと、環化縮合反応が不十分となって残存揮発分が多くなるおそれがあり、350℃より高いと、着色や分解が起こるおそれがある。
上記ベント付き押出機を用いる場合の、反応処理時の圧力は、931〜1.33hPa(700〜1mmHg)の範囲内が好ましく、798〜13.3hPa(600〜10mmHg)の範囲内がより好ましい。上記圧力が931hPaより高いと、アルコールを含めた揮発分が残存し易いという問題があり、1.33hPaより低いと、工業的な実施が困難になっていくという問題がある。
尚、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、後述するように、厳しい熱処理条件では得られるラクトン環含有重合体の物性が悪化するおそれがあるので、好ましくは、上述した脱アルコール反応の触媒を使用し、できるだけ温和な条件で、ベント付き押出機等を用いて行うことが好ましい。
また、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、好ましくは、重合工程で得られた重合体を溶剤とともに環化縮合反応装置系に導入するが、この場合、必要に応じて、もう一度ベント付き押出機等の上記反応装置系に通してもよい。
脱揮工程を環化縮合反応の過程全体にわたっては併用せずに、過程の一部においてのみ併用する形態を行ってもよい。例えば、重合体を製造した装置を、更に加熱し、必要に応じて脱揮工程を一部併用して、環化縮合反応を予めある程度進行させておき、その後に引き続いて脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行い、反応を完結させる形態である。
先に述べた環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態では、例えば、重合体を、二軸押出機を用いて、250℃近い、あるいはそれ以上の高温で熱処理する時に、熱履歴の違いにより環化縮合反応が起こる前に一部分解等が生じ、得られるラクトン環含有重合体の物性が悪くなるおそれがある。そこで、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う前に、予め環化縮合反応をある程度進行させておくと、後半の反応条件を緩和でき、得られるラクトン環含有重合体の物性の悪化を抑制できるので好ましい。特に好ましい形態としては、脱揮工程を環化縮合反応の開始から時間をおいて開始する形態、即ち、重合工程で得られた重合体の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基とをあらかじめ環化縮合反応させて環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う形態が挙げられる。具体的には、例えば、予め釜型の反応器を用いて溶剤の存在下で環化縮合反応をある程度の反応率まで進行させておき、その後、脱揮装置の付いた反応器、例えば、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置や、ベント付き押出機等で、環化縮合反応を完結させる形態が好ましく挙げられる。特にこの形態の場合、環化縮合反応用の触媒が存在していることがより好ましい。
上述のように、重合工程で得られた重合体の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基とを予め環化縮合反応させて環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う方法は、ラクトン環含有重合体を得る上で好ましい形態である。この形態により、環化縮合反応率もより高まり、ガラス転移温度がより高く、耐熱性に優れたラクトン環含有重合体が得られる。この場合、環化縮合反応率の目安としては、ダイナッミクTG測定における、150〜300℃間での重量減少率が2%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5%以下であり、更に好ましくは1%以下である。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際に採用できる反応器は特に限定されないが、好ましくは、オートクレーブ、釜型反応器、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置等が挙げられ、更に、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応に好適なベント付き押出機も使用できる。より好ましくは、オートクレーブ、釜型反応器である。しかしながら、ベント付き押出機等の反応器を使用するときでも、ベント条件を温和にしたり、ベントをさせなかったり、温度条件やバレル条件、スクリュウ形状、スクリュウ運転条件等を調整することで、オートクレーブや釜型反応器での反応状態と同じ様な状態で環化縮合反応を行うことが可能である。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際には、好ましくは、重合工程で得られた重合体と溶剤とを含む混合物を、(i)触媒を添加して、加熱反応させる方法、(ii)無触媒で加熱反応させる方法、及び、上記(i)又は(ii)を加圧下で行う方法が挙げられる。
尚、ラクトン環化縮合工程において環化縮合反応に導入する「重合体と溶剤とを含む混合物」とは、重合工程で得られた重合反応混合物をそのまま使用してもよいし、一旦溶剤を除去した後に環化縮合反応に適した溶剤を再添加してもよいことを意味する。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際に再添加できる溶剤としては、特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;クロロホルム、DMSO、テトラヒドロフラン等でもよいが、好ましくは、重合工程で用いることができる溶剤と同じ種類の溶剤である。
上記方法(i)で添加する触媒としては、一般に用いられるp−トルエンスルホン酸等のエステル化触媒又はエステル交換触媒、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩等が挙げられるが、本実施の形態においては、前述の有機リン化合物を用いることが好ましい。
触媒の添加時期は特に限定されず、反応初期に添加しても、反応途中に添加しても、それらの両方で添加してもよい。添加する触媒の量は特に限定されないが、重合体の重量に対し、好ましくは0.001〜5質量%の範囲内、より好ましくは0.01〜2.5質量%の範囲内、更に好ましくは0.01〜0.1質量%の範囲内、特に好ましくは0.05〜0.5質量%の範囲内である。方法(i)の加熱温度と加熱時間とは特に限定されないが、加熱温度としては、好ましくは室温以上、より好ましくは50℃以上であり、加熱時間としては、好ましくは1〜20時間の範囲内、より好ましくは2〜10時間の範囲内である。加熱温度が低いと、あるいは、加熱時間が短いと、環化縮合反応率が低下するので好ましくない。また、加熱時間が長すぎると、樹脂の着色や分解が起こる場合があるので好ましくない。
上記方法(ii)としては、例えば、耐圧性の釜等を用いて、重合工程で得られた重合反応混合物をそのまま加熱する方法等が挙げられる。加熱温度としては、好ましくは100℃以上、更に好ましくは150℃以上である。加熱時間としては、好ましくは1〜20時間の範囲内、より好ましくは2〜10時間の範囲内である。加熱温度が低いと、あるいは、加熱時間が短いと、環化縮合反応率が低下するので好ましくない。また、加熱時間が長すぎると、樹脂の着色や分解が起こる場合があるので好ましくない。
上記方法(i)、(ii)ともに、条件によっては加圧下となっても何ら問題はない。また、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際には、溶剤の一部が反応中に自然に揮発しても何ら問題ではない。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の終了時、即ち、脱揮工程開始直前における、ダイナミックTG測定における150〜300℃の間での重量減少率は、2%以下が好ましく、より好ましくは1.5%以下であり、更に好ましくは1%以下である。重量減少率が2%より高いと、続けて脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行っても、環化縮合反応率が十分高いレベルまで上がらず、得られるラクトン環含有重合体の物性が低下するおそれがある。尚、上記の環化縮合反応を行う際に、重合体に加えて、他の熱可塑性樹脂を共存させてもよい。
重合工程で得られた重合体の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基とを予め環化縮合反応させて環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う形態の場合、予め行う環化縮合反応で得られた重合体(分子鎖中に存在する水酸基とエステル基の少なくとも一部が環化縮合反応した重合体)と溶剤とを単離することなく、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行ってもよい。また、必要に応じて、上記重合体(分子鎖中に存在する水酸基とエステル基の少なくとも一部が環化縮合反応した重合体)を単離してから溶剤を再添加する等のその他の処理を経てから脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行っても構わない。
脱揮工程は、環化縮合反応と同時に終了することのみには限定されず、環化縮合反応の終了から時間をおいて終了しても構わない。
また、触媒を添加して環化反応を十分行った後にも、重合体中に微量の未反応の反応性基が残存しているため、成形時、特にポリマーフィルタによる濾過を行う工程で異物の増加や、ポリマー分子間での架橋による増粘等の問題が起こることがある。このため、触媒を添加し環化縮合反応を十分行った後に、環化縮合触媒の失活剤を添加することが好ましい。
環化縮合反応には、酸性触媒若しくは塩基性触媒が用いられることが多く、その場合、中和反応により失活剤は触媒を失活させる。このため、触媒が酸性物質である場合には失活剤は塩基性物質を用いればよく、逆に触媒が塩基性物質である場合には失活剤は酸性物質を用いればよい。
上記失活剤としては、熱加工時に重合体の物性を阻害する物質等を発生しない限り特に限定されないが、失活剤に塩基性物質を用いる場合、例えば、金属カルボン酸塩、金属錯体、金属酸化物等が挙げられる。これらの中で金属カルボン酸塩、及び金属酸化物が好ましく、金属カルボン酸塩が特に好ましい。
上記塩基性物質における金属としては、重合体の物性を阻害せず、廃棄時に環境汚染を招くことがない限り特に限定はされないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;亜鉛;ジルコニウム等が挙げられる。
上記金属カルボン酸塩を構成するカルボン酸としては特には限定されないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、トリデカン酸、ペンタデカン酸、ヘプタデカン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸等が挙げられる。
上記金属錯体における有機成分としては、特には限定されないが、アセチルアセトン等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等が挙げられ、酸化亜鉛が好ましい。
また、失活剤に酸性物質を用いる場合には、例えば、有機リン酸化合物やカルボン酸等が挙げられる。本実施の形態で用ることができる失活剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。尚、失活剤は粉末状等の固形物や、懸濁液、水溶液等の溶媒に分散した状態等の何れの形態で用いてもよい。
上記失活剤の添加量は、環化縮合反応に使用した触媒の量に応じて適宜調製すればよく、特に限定されないが、好ましくは、アクリル系重合体に対して10〜10,000ppmの範囲内、より好ましくは50〜5,000ppmの範囲内、更に好ましくは100〜3,000ppmの範囲内である。
失活剤の添加量が10ppm未満であると、失活剤の作用が不十分となり、成形時に発泡やポリマー分子間の架橋による増粘が起こることがある。逆に、失活剤の添加量が10,000ppmを超えると、必要以上に失活剤を使用することになり、分子量低下が起こる等、重合体の物性を阻害することがある。
失活剤を添加するタイミングは、アクリル系重合体の製造において、触媒を添加し環化縮合反応を十分行った後であり、且つ、得られた重合体が熱加工される前である限り、特には限定されない。例えば、アクリル系重合体を製造中に所定の段階で失活剤を添加するか、あるいはアクリル系重合体を製造した後、アクリル系重合体、失活剤、及びその他の成分等を同時に加熱溶融させて混練する方法;アクリル系重合体、及びその他の成分等を加熱溶融させた後に失活剤を添加して混練する方法;アクリル系重合体を加熱溶融させた後に失活剤、及びその他の成分等を添加して混練する方法等が挙げられる。
また、失活剤を添加する場合、得られたアクリル系重合体が熱加工時に発泡をほとんど起こさないという観点から、失活剤と混練した後に脱揮工程を行うことが好ましい。脱揮工程としては、上述した、ラクトン環含有重合体の製造に際して行う脱揮工程と同様の工程を行うことができる。
得られたラクトン環含有重合体は、ダイナミックTG測定における150〜300℃の間での重量減少率が1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以下、更に好ましくは0.3%以下である。
ラクトン環含有重合体は、環化縮合反応率が高いので、成形後の成形品中に泡やシルバーストリークが入るという欠点が回避できる。更に、高い環化縮合反応率によってラクトン環構造が重合体に十分に導入されるため、得られたラクトン環含有重合体が十分に高い耐熱性を有している。
ラクトン環含有重合体は、15質量%のクロロホルム溶液中での着色度(YI)が6以下となるものが好ましく、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、最も好ましくは1以下である。着色度(YI)が6を越えると、着色により透明性が損なわれ、本来目的とする用途に使用できない場合がある。
ラクトン環含有重合体の上記ラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90質量%の範囲内、より好ましくは10〜85質量%の範囲内、更に好ましくは20〜65質量%の範囲内、特に好ましくは25〜55質量%の範囲内である。上記ラクトン環構造の含有割合が5質量%よりも少ないと、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が不十分になることがあり、好ましくない。上記ラクトン環構造の含有割合が90質量%よりも多いと、成形加工性に乏しくなる傾向があり、好ましくない。
ラクトン環含有重合体は、熱重量分析(TG)における5%重量減少温度が、330℃以上であることが好ましく、より好ましくは350℃以上、更に好ましくは360℃以上である。熱重量分析(TG)における5%重量減少温度は、熱安定性の指標であり、これが330℃未満であると、十分な熱安定性を発揮できないおそれがある。
ラクトン環含有重合体は、それに含まれる残存揮発分の総量が、好ましくは1,500ppm以下、より好ましくは1,000ppm以下である。残存揮発分の総量が1,500ppmよりも多いと、成形時の変質等による着色、発泡、シルバーストリーク等の成形不良の原因となる。
ラクトン環含有重合体は、射出成形により得られる成形品の、ASTM−D−1003に準じた方法で測定された全光線透過率が、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、更に好ましくは90%以上である。全光線透過率は、透明性の目安であり、これが85%未満であると、透明性が低下し、本来目的とする用途に使用できないおそれがある。
本実施の形態に係るアクリル系重合体は、透明性や耐熱性に優れるのみならず、低着色性、機械的強度、成形加工性等の所望の特性を備えるので、例えば、光学レンズ、光学プリズム、光学フィルム、光学ファイバー、光学ディスク等の用途に有用である。これらの中でも特に、光学レンズ、光学プリズム、光学フィルムの用途に用いることがより好ましい。
本実施の形態に係るアクリル系重合体は、用途に応じて様々な形状に成形することができる。形成可能な形状としては、例えば、フィルム、シート、プレート、ディスク、ブロック、ボール、レンズ、ロッド、ストランド、コード、ファイバー等が挙げられる。成形方法としては、従来公知の形成方法の中から形状に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
(II)光学フィルム
本実施の形態に係る光学フィルムは、上記アクリル系重合体と、必要により、後述するその他の成分とを、従来公知の混合方法にて混合し、フィルム状に成形することで得られる。また、延伸することによって延伸フィルムとしてもよい。
上記アクリル系重合体と他の成分との混合は、例えば、オムニミキサー等、従来公知の混合機で上記アクリル系重合体と他の成分とをプレブレンドした後、得られた混合物を押出混練することにより行うことができる。この場合、押出混練に用いる混合機は、特に限定されるものではなく、例えば、単軸押出機、二軸押出機等の押出機や加圧ニーダー等、従来公知の混合機を用いることができる。
フィルム成形の方法としては、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法等、公知のフィルム成形方法が挙げられる。これらの中でも、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法が好ましい。
溶液キャスト法(溶液流延法)に用いられる溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等の塩素系溶媒;トルエン、キシレン、ベンゼン、及びこれらの混合溶媒等の芳香族系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ジオキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル;等が挙げられる。これら溶媒は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
溶液キャスト法(溶液流延法)を行うための装置としては、例えば、ドラム式キャスティングマシン、バンド式キャスティングマシン、スピンコーター等が挙げられる。
溶融押出法としては、Tダイ法、インフレーション法等が挙げられ、その際の、フィルムの成形温度は、好ましくは200〜350℃の範囲内、より好ましくは250〜300℃の範囲内、更に好ましくは260〜300℃の範囲内である。
上記Tダイ法で押出成形する場合は、公知の単軸押出機や二軸押出機の先端部にTダイを取付け、フィルム状に押出したフィルムを巻き取ることにより、ロール状のフィルムを得ることができる。この際、巻き取りロールの温度を適宜調整して、押出方向に延伸を加えることで、一軸延伸工程とすることも可能である。また、押出方向と垂直な方向にフィルムを延伸する工程を加えることで、逐次二軸延伸、同時二軸延伸等の工程とすることも可能である。
本実施の形態に係る光学フィルムの製造に用いる押出機は、単軸押出機、多軸押出機の何れも用いることが可能であるが、重合体が十分に可塑化し混練した状態を得るために、L/D(Lは押出機のシリンダー長さ、Dはシリンダー内径を表す)が10〜100の範囲内であることが好ましく、20〜50の範囲内であることが更に好ましく、25〜40の範囲内であることが最も好ましい。L/Dが10未満であれば、重合体が十分に可塑化し混練した状態が得られ難く、100を超えると、重合体に過度なせん断発熱が加わり、重合体が分解する可能性がある。
また、シリンダーの設定温度は、200〜300℃の範囲内が好ましく、250〜300℃の範囲内がより好ましく、260〜300℃の範囲内が更に好ましい。200℃未満では重合体の溶融粘度が高くなるため、必要以上の高い動力や可塑化に必要なL/Dが必要となり生産性に支障をきたす。300℃を超えると重合体が分解する可能性がある。
本実施の形態に係る光学フィルムの製造方法において、押出機の形状は特に限定はされないが、押出機が1個以上の開放ベント部を有し、減圧状態で発生する分解ガスを吸引する構成であれば、残存揮発分の増加を抑制することができるためより好ましい。
開放ベント部を減圧状態にする場合、その減圧度は931〜1.3hPa(700〜1mmHg)の範囲内が好ましく、798〜13.3hPa(600〜10mmHg)の範囲内がより好ましい。上記圧力が931hPaより高いと、溶融樹脂中の残存揮発分や樹脂分解により発生する単量体成分等が残存し易い。また、1.3hPaより低いと、工業的な実施が困難になっていくという問題がある。
本実施の形態に係る光学フィルムは、成形後の外観に異物が影響を与えることを防ぐため、重合体中の異物をポリマーフィルタで除去した後に成形することが好ましい。ポリマーフィルタで濾過すると、高温で溶融状態の重合体がポリマーフィルタ内を通る際に重合体が劣化し、連続成形した場合に炭化物等の異物が多く観察されることがある。従って、重合体の溶融粘度を低下させてポリマーフィルタにおける滞留時間をできるだけ短くする観点から、成形温度は250〜300℃の範囲内が好ましく、260〜300℃の範囲内が特に好ましい。
上記光学フィルムは、用途によるが、異物の含有量が500個/m以下、更に好ましくは100個/m以下、更に好ましくは30個/m以下、最も好ましくは10個/m以下、理想的には0個/mであることが好ましい。異物としては、例えば、光学フィルムの製造工程において、原料の溶融混練中にアクリル系重合体が部分的に加熱され、劣化することにより発生する炭化物(いわゆる、「焼け異物」)、重合体製造工程中に発生するゲル、各工程において混入する汚染物質(環境異物)等が挙げられる。
光学フィルムの異物の含有量を500個/m以下と非常に少なくすることで、外観にも優れた光学フィルムとすることができる。
ポリマーフィルタとしてはハウジング内に複数のリーフディスク型フィルタを配したポリマーフィルタが用いられる。リーフディスク型フィルタの濾材としては、金属繊維不織布を焼結したタイプ、金属粉末を焼結したタイプ、金網を数枚積層したタイプ、あるいはこれらを組み合わせたハイブリッドタイプ等の何れであってもよく、金属繊維不織布を焼結したタイプが最も好ましい。
また、濾過精度としては15μm以下が好ましく、更に好ましくは10μm以下、最も好ましくは5μm以下である。また、濾過精度が1μm以下であると濾過滞留時間が長くなるため、樹脂の熱劣化並びに生産性の観点から濾過精度は1μmよりも大きいことが好ましい。一方、濾過精度が15μmを超えると、異物が混入し易くなる。
上記ポリマーフィルタの時間当たりの樹脂処理量に対する濾過面積は、特に限定されず、処理量に応じて適宜設定され、例えば0.001〜0.15m/(kg/h)の範囲内に設定することができる。
上記ポリマーフィルタにおけるセンターポールはその形状に特に制限は無く、例えば、樹脂流通口が複数ありセンターポール内に樹脂流路を有する内流型、断面が複数の頂点若しくは面でリーフディスクフィルタ内周面に接し、センターポールの外面に樹脂流路がある外流型等が挙げられる。これらの中では、樹脂流路において滞留箇所の少ない外流型がより好ましい。
上記ポリマーフィルタでの濾過時における滞留時間に特に制限は無いが、好ましくは20分以下、更に好ましくは10分以下、最も好ましくは5分以下である。また、濾過時におけるフィルタ入口圧及びフィルタ出口圧は、例えばそれぞれ3〜15MPaの範囲内、0.3〜10MPaの範囲内であり、圧力損失(フィルタの入口圧と出口圧との圧力差)は1〜15MPaの範囲内であることが好ましい。圧力損失が1MPa未満では重合体がフィルタを通過する流路に偏りが生じ易く、得られるフィルムの品質低下が起こる傾向がある。逆に15MPaを超えるとフィルタの破損が起こり易くなる。
フィルタへ導入される上記アクリル系重合体を含む樹脂組成物の樹脂温度は粘度に合わせて適宜設定され、好ましくは200〜350℃の範囲内であり、より好ましくは250〜300℃の範囲内、最も好ましくは260℃〜300℃の範囲内に設定される。
また、ポリマーフィルタによる濾過処理により異物及び着色物の少ないフィルムを得る方法としては、(1)重合体製造時にクリーンな環境下で濾過処理を行い、引き続きクリーンな環境下で成形を行う方法、(2)異物及び着色物を有する重合体をクリーンな環境下で濾過処理を行い、引き続きクリーンな環境下で成形を行う方法、(3)異物及び着色物を有する重合体をクリーンな環境下で濾過処理を行うと同時に成形を行う方法、が挙げられる。尚、ポリマーフィルタによる濾過処理は複数回行ってもよい。
また、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機等の用いる押出機の種類に関わらず、押出機とフィルタとの間にギアポンプを設置し、フィルタ内の樹脂圧力を安定させることがより好ましい。
本実施の形態に係る光学フィルムは、未延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムである場合は、一軸延伸フィルムであってもよいし、二軸延伸フィルムであってもよい。二軸延伸フィルムとする場合には、同時二軸延伸したものであってもよいし、逐次二軸延伸したものであってもよい。二軸延伸した場合は、機械強度が向上しフィルム性能が向上する。
上記延伸を行なう装置としては、例えば、ロール延伸機、テンター型延伸機、小型の実験用延伸装置として引張試験機、一軸延伸機、逐次二軸延伸機、同時二軸延伸機等が挙げられ、これら何れの装置を用いてもよい。
延伸温度としては、フィルム原料の重合体のガラス転移温度近辺で行うことが好ましい。具体的には、(ガラス転移温度−30)℃〜(ガラス転移温度+100)℃の範囲内で行うことが好ましく、より好ましくは(ガラス転移温度−20)℃〜(ガラス転移温度+50)℃の範囲内、更に好ましくは(ガラス転移温度−10)℃〜(ガラス転移温度+30)℃の範囲内である。(ガラス転移温度−30)℃よりも低いと、十分な延伸倍率が得られないために好ましくない。(ガラス転移温度+100)℃よりも高いと、樹脂の流動(フロー)が起こり安定な延伸が行えなくなるために好ましくない。
面積比で定義した延伸倍率は、好ましくは1.1〜25倍の範囲内、より好ましくは1.2〜10倍の範囲内、更に好ましくは1.3〜5倍の範囲内で行われる。1.1倍よりも小さいと、延伸に伴う位相差性能の発現や靭性の向上につながらないために好ましくない。25倍よりも大きいと、延伸倍率の増加に対する効果が小さくなる。
ある方向に延伸する場合、その一方向に対する延伸倍率は、好ましくは1.05〜10倍の範囲内、より好ましくは1.1〜5倍の範囲内、更に好ましくは1.2〜3倍の範囲内で行われる。1.05倍よりも小さいと、所望の位相差値が得られない場合があり好ましくない。10倍よりも大きいと、延伸倍率の増加に対する効果が小さくなり、また延伸中にフィルムの破断が起こる場合があり好ましくない。
延伸速度(一方向)としては、好ましくは10〜20,000%/分の範囲内、より好ましくは100〜10,000%/分の範囲内である。10%/分よりも遅いと、十分な延伸倍率を得るために時間がかかり、製造コストが高くなるために好ましくない。20,000%/分よりも早いと、延伸フィルムの破断等が起こるおそれがあるために好ましくない。
本実施の形態に係る光学フィルムにはシート状であってもよい。また、上記光学フィルムの膜厚は特に限定されるものではないが、1μm以上10mm以下の範囲内であることが好ましく、1〜350μmの範囲内であることがより好ましく、5〜200μmの範囲内であることが更に好ましく、10〜150μmの範囲内であることが最も好ましい。膜厚が上記範囲内の光学フィルムは、延伸を行う場合に破断等が起こり難く、強度が高く、また成形性に優れている。
本実施の形態に係る光学フィルムは、ガラス転移温度が110℃〜200℃の範囲内であることが好ましい。更に好ましくは120℃〜200℃の範囲内、特に好ましくは125℃〜190℃の範囲内、最も好ましくは130℃〜180℃の範囲内である。110℃未満であると、厳しくなる使用環境に対して耐熱性が不足し、フィルムが変形して位相差のムラが発生し易くなることがあるため好ましくない。また、200℃を超えると、超高耐熱性のフィルムとなるが、該フィルムを得るための成形加工性が悪かったり、フィルムの可撓性が大きく低下する場合があるため好ましくない。
本実施の形態に係る光学フィルムは、全光線透過率が85%以上であることが好ましい。より好ましくは90%以上、更に好ましくは91%である。全光線透過率は、透明性の目安であり、85%未満であると透明性が低下し、光学フィルムとして適さない。
本実施の形態に係る光学フィルムは、ヘイズが5%以下であることが好ましい。より好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下である。ヘイズが5%を超えると透明性が低下し、光学フィルムとして適さない。
本実施の形態に係る光学フィルムは、可撓性を有する。フィルム面内の任意の直交する2方向に対して可撓性を有することがより好ましく、具体的には、25℃、65%RH(relative humidity:相対湿度)の雰囲気下、折り曲げ半径1mmにおいて、フィルム面内の遅相軸と平行方向及びフィルム面内の遅相軸と垂直方向に180°折り曲げた際、どちらの方向でもクラックを生じないことが好ましい。ここで、折り曲げ半径とは、フィルムの折り曲げの中心から屈曲部の最端部までの距離を意味する。折り曲げ半径1mmにおいて180°折り曲げた際、クラックを生じないフィルムは、取り扱いが非常に容易であり、工業的に有用である。25℃で65%RHの雰囲気下、折り曲げ半径1mmにおいて180°折り曲げた際、クラックを生じるフィルムは、可撓性が不十分であり、取り扱いが困難である。尚、折り曲げ試験は、JISに準拠して行えばよい。例えば、K5600−5−1(1999年)に準拠して行うことが好ましい。上記クラックの形状は、特には限定されず、例えば、長さが1mm以上の割れのことを意味する。
また、本実施の形態に係る光学フィルムは、25℃、65%RH(relative humidity:相対湿度)の雰囲気下、折り曲げ半径1mmにおいて、フィルム面内の遅相軸と平行方向及びフィルム面内の遅相軸と垂直方向に180°折り曲げた際、どちらの方向でもフィルムが折り曲げ部を境界として部分的に又は全体的に分離しない(割れない)ことが好ましい。この場合、フィルムが折り曲げ部を境界として分離するに至らない程度の微小な割れが生じてもよいが、そのような微小な割れが生じないことがより好ましい。
本実施の形態に係る光学フィルムは、各種光ディスク(VD(video disk),CD(compact disc),DVD(Digital Versatile Disc),MD(magnetic disk),LD(Laser Disc)等)基板の保護フィルム、液晶表示装置用の偏光板に用いる偏光子保護フィルム等の光学用保護フィルム、位相差フィルム、視野角補償フィルム、光拡散フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、タッチパネル用導電フィルム等として使用することができる。
また、本実施の形態に係る光学フィルムは、液晶表示装置用の光学補償部材として好適に用いられる。具体的には、例えば、STN型LCD、TFT−TN型LCD、OCB型LCD、VA型LCD、IPS型LCD等のLCD用位相差フィルム;1/2波長板;1/4波長板;逆波長分散特性フィルム;偏光板光学補償フィルム等の光学補償フィルムが挙げられる。
本実施の形態に係る光学フィルムは、フィルムに成形したアクリル系重合体に、目的に応じて、帯電防止層、粘接着剤層、接着層、易接着層、防眩(ノングレア)層、光触媒層等の防汚層、反射防止層、ハードコート層、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層、電磁波遮蔽層、ガスバリア層等の種々の機能性コーティング層を積層塗工したフィルムであってもよい。また、フィルムに成形したアクリル系重合体に、上記種々の機能性コーティング層が塗工された部材を、粘着剤や接着剤を介して積層したフィルムであってもよい。尚、各層の積層順序は特に限定されるものではなく、積層方法も特に限定されない。
本実施の形態に係る光学フィルムは、単独での使用以外に、同種光学材料及び/又は異種光学材料と積層させて用いることにより、更に光学特性を制御することができる。この際に積層される光学材料としては、特には限定されないが、例えば、偏光板、ポリカーボネート製延伸配向フィルム、環状ポリオレフィン製延伸配向フィルム等が挙げられる。尚、本実施の形態に係る光学フィルムを応用した用途は、これらに制限されるものではない。
(III)アクリル系重合体以外の含有成分
本実施の形態に係る光学フィルムは、上記アクリル系重合体以外の重合体を含有していてもよい。
上記アクリル系重合体以外の重合体としては、例えば、弾性有機微粒子や、その他の重合体として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、上述した以外のポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂やASA(アクリルゴム−スチレン−アクリロニトリル)樹脂等のゴム質重合体等が挙げられる。ゴム質重合体は、表面に本実施の形態に係るラクトン環含有重合体と相溶し得る組成のグラフト部を有することが好ましい。また、ゴム質重合体の平均粒子径は、押出フィルム状とした際の透明性向上の観点から300nm以下であることが好ましく、150nm以下であることが更に好ましい。
中でも、上記アクリル系重合体が上述したラクトン環含有重合体である場合、光学フィルムは正の複屈折性(正の位相差)を示すことから、正の複屈折性(正の位相差)を増加させる点で、塩化ビニル、ポリカーボネート、その他の主鎖に芳香族環を含有する重合体等、正の複屈折性(正の位相差)を示す重合体を含有させることが好ましい。
また、ラクトン環含有重合体と熱力学的に相溶し易い熱可塑性樹脂としては、アクリロニトリル−スチレン系共重合体等のシアン化ビニル系単量体由来の構造と芳香族ビニル系単量体由来の構造とを含む共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、並びにメタクリル酸エステル類由来の構造を50質量%以上含有する重合体が挙げられる。これらの中でもアクリロニトリル−スチレン系共重合体が、広範囲の共重合組成でラクトン環含有重合体と相溶性が良く、また、ラクトン環の正の複屈折性(正の位相差)とアクリロニトリル−スチレン系共重合体の負の複屈折性(負の位相差)とを組み合わせることで位相差を低くコントロールすることが可能となるため好ましい。
本実施の形態に係る光学フィルム中のその他の重合体の含有割合は、好ましくは0〜50質量%の範囲内、より好ましくは0〜40質量%の範囲内、更に好ましくは0〜30質量%の範囲内、特に好ましくは0〜20質量%の範囲内である。
また、本実施の形態に係る光学フィルムは、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;フェニルサリチレート、(2,2´−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーや無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤;可塑剤;滑剤;帯電防止剤;難燃剤;等が挙げられる。
本実施の形態に係る光学フィルム中のその他の添加剤の含有割合は、好ましくは0〜5質量%の範囲内、より好ましくは0〜2質量%の範囲内、更に好ましくは0〜0.5質量%の範囲内である。
尚、上述した実施の形態の説明で挙げた各分析の具体的な方法について、以下説明する。
<ダイナミックTG>
重合体(若しくは重合体溶液あるいはペレット)を一旦テトラヒドロフランに溶解若しくは希釈し、過剰のヘキサン若しくはメタノールへ投入して再沈殿を行い、取り出した沈殿物を真空乾燥(1mmHg(1.33hPa)、80℃、3時間以上)することによって揮発成分等を除去し、得られた白色固形状の樹脂を以下の方法(ダイナミックTG法)で分析する。
測定装置:Thermo Plus2 TG−8120 Dynamic TG((株)リガク社製)
測定条件:試料量 5〜10mg
昇温速度:10℃/min
雰囲気:窒素フロー 200ml/min
方法:階段状等温制御法(60℃〜500℃の間で重量減少速度値0.005%/sec以下で制御)
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<重合反応率、重合体組成分析>
重合反応時の反応率及び重合体中の特定単量体単位の含有率は、得られた重合反応混合物中の未反応単量体の量をガスクロマトグラフィー(島津製作所社製、装置名:GC17A)を用いて測定して求めた。
<重量平均分子量>
重合体の重量平均分子量は、GPC(東ソー社製GPCシステム、クロロホルム溶媒)のポリスチレン換算により求めた。
<重合体及びフィルムの熱分析>
重合体及びフィルム等の熱分析は、試料約10mg、昇温速度10℃/min、窒素フロー50cc/minの条件で、DSC((株)リガク社製、装置名:DSC−8230)を用いて行った。尚、ガラス転移温度(Tg)は、ASTM−D−3418に従い、中点法で求めた。
<重合反応中の粘度>
重合反応中の最高粘度は、B型粘度計(B type Viscometer(Model BH)、TOKIMEC社製)を用いて測定した。
<光学特性>
位相差値は、王子計測器社製KOBRA−WRを用いて測定した、波長589nmにおけるフィルム面内位相差値(Re)の値から求めた。
アッベ屈折率計で測定したフィルムの平均屈折率、膜厚d、傾斜中心軸として遅相軸、入射角を40°と入力し、面内位相差値(Re)及び厚さ方向位相差値(Rth)、遅相軸を傾斜軸として40°傾斜させて測定した位相差値(Re(40°))、三次元屈折率nx、ny、nzの値を得た。
全光線透過率及びヘイズは、日本電色工業社製NDH−1001DPを用いて測定した。屈折率は、JIS K 7142に準拠して、測定波長589nmに対する、23℃での値を屈折計((株)アタゴ社製、装置名:デジタルアッベ屈折計DR−M2)を用いて測定した。
<フィルムの厚さ>
デジマチックマイクロメーター((株)ミツトヨ製)を用いて測定した。
〔実施例1〕
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した反応釜に、メタクリル酸メチル(MMA)30質量部、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)15質量部、メタクリル酸n−ブチル(BMA)5質量部、トルエン40質量部、n−ブタノール(BtOH)10質量部を仕込み、これに窒素を通じながら105℃まで昇温させた。還流開始後、開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(商品名:ルペロックス570、アルケマ吉富(株)製)0.03質量部を添加すると同時に、t−アミルパーオキシイソノナノエート0.06質量部gとトルエン2.67質量部とBtOH0.665質量部とからなる開始剤溶液を6時間かけて滴下しながら、還流下(約105〜111℃)で溶液重合を行った。開始剤溶液の滴下後、更に2時間熟成を行った。
得られた重合体(1A)の重量平均分子量は158,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であり、反応率は96.1%であった。また、重合体中のMHMA構造単位の含有量は30.0質量%であり、MMA構造単位の含有量は60.0質量%であり、BMA構造単位の含有量は10.0質量%であった。重合反応中の最高粘度(重合終了直前)は106℃において8,000cpsであった。
〔比較例1〕
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した30L反応釜に、メタクリル酸メチル(MMA)30質量部、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)15質量部、メタクリル酸n−ブチル(BMA)5質量部、トルエン50質量部を仕込み、これに窒素を通じながら105℃まで昇温させた。還流開始後、開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(商品名:ルペロックス570、アルケマ吉富(株)製)0.03質量部を添加すると同時に、t−アミルパーオキシイソノナノエート0.06質量部とトルエン3.335質量部とからなる開始剤溶液を6時間かけて滴下しながら、還流下(約105〜111℃)で溶液重合を行った。開始剤溶液の滴下後、更に2時間熟成を行った。
得られた重合体(2A)の重量平均分子量は195,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.8であり、反応率は96.2%であった。また、重合体中のMHMA構造単位の含有量は30.2質量%であり、MMA構造単位の含有量は59.9質量%であり、BMA構造単位の含有量は9.9質量%であった。重合反応中の最高粘度(重合終了直前)は106℃において31,000cpsであった。
〔実施例2〕
実施例1で得られた上記重合体溶液に、リン酸オクチル/リン酸ジオクチル混合物(商品名:Phoslex A−8、堺化学製)0.1質量部を加え、還流下(約85〜105℃)で2時間環化縮合反応(重合体分子内で脱アルコール反応させ、重合体中にラクトン環構造を形成させる反応)を行い、更に240℃の熱媒を用いて、オートクレーブ中で加圧下、240℃で1.5時間環化縮合反応を行った。
上記環化縮合反応で得られた重合体溶液を、バレル温度250℃、回転数170rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出機(φ=42mm、L/D=42)に、樹脂量換算で15kg/時間の処理速度で導入し、押出機内で環化縮合反応と脱揮とを行った。その際、第一フォアベントと第二フォアベントとの中間で、オクチル酸亜鉛(ニッカオクチックス亜鉛18%、日本化学産業(株)製)9.8質量部と、Irganox1010(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)0.8質量部と、アデカスタブAO−412S(旭電化工業(株)製)0.8質量部と、トルエン88.6質量部とからなる溶液を、0.46kg/時間の速度で注入した。上記脱揮操作により、透明なペレット(1B)を得た。
得られたペレット(1B)の重量平均分子量は126,000であり、ガラス転移温度は128℃であった。
〔実施例3〕
実施例2で得たペレット(1B)を、φ65mm、L/D=32、ユニメルトスクリューを有するベント付き単軸押出機に仕込んだ。ペレット(1B)の温度は、ホッパーに加熱した除湿空気を送風することにより、60℃に加熱した。また、ホッパー下部に窒素導入間を設けて押出機内に窒素ガスを導入した。
ベント口から13hPa(10mmHg)にて吸引を行いながら、ペレット(1B)をユニメルトスクリューにて30kg/時間の速度で溶融混練した。溶融混練後、ペレット(1B)に対してギアポンプを用いて、濾過面積0.75m、濾過精度5μmのリーフディスクフィルタに通し、幅600mmのTダイより、90℃の冷却ロール上にフィルムを形成した。シリンダー、ギアポンプ、フィルタ及びTダイの温度を265℃に設定した。得られた光学フィルム(1C)の膜厚は140μmであり、顕微鏡下、目視による観察で見られた20μm以上の異物が平均18個/mであり、フィルム外観は良好であった。
得られた未延伸フィルム(1C)からサンプルを切り出し、位相差測定を行ったところ、面内位相差値は5nmであった。また、全光線透過率は93%であり、ヘイズは0.3%であり、ガラス転移温度は128℃であった。
〔実施例4〕
オートグラフ(AGS−100D、島津製作所製)を用いて、実施例3で得られたフィルム(1C)を137℃で400%/分の速度で1.7倍に単軸延伸することで、厚さ100μmの延伸フィルム(1D)を得た。
得られた延伸フィルム(1D)の位相差測定を行ったところ、面内位相差値は180nmであった。また、全光線透過率は93%であり、ヘイズは0.3%であり、ガラス転移温度は128℃であった。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明のアクリル系重合体の製造方法は、重合体溶液の粘度上昇を抑制して、高分子量のアクリル系重合体を製造することができる。このため、ラボスケールからプラントスケールまでの様々なアクリル系重合体の製造に適用することができる。

Claims (9)

  1. 水酸基含有単量体と(メタ)アクリル酸エステルとを含む単量体組成物を溶液重合するアクリル系重合体の製造方法であり、
    上記重合溶液中の単量体組成物の濃度が45質量%以上である条件下で重合を行う工程を含み、
    上記工程では、重合性基を有していないアルコールを上記重合溶液が含有していることを特徴とするアクリル系重合体の製造方法。
  2. 重合性基を有していない上記アルコールが飽和アルコールであることを特徴とする請求項1に記載のアクリル系重合体の製造方法。
  3. 上記水酸基含有単量体が、下記一般式(1)
    (式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を示す。)
    で表される構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のアクリル系重合体の製造方法。
  4. 上記(メタ)アクリル酸エステルがメタクリル酸メチルであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のアクリル系重合体の製造方法。
  5. 上記工程では、重合性基を有していない上記アルコールを上記単量体組成物100質量部に対して1質量部以上122質量部以下の範囲内で上記重合溶液が含有していることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のアクリル系重合体の製造方法。
  6. 上記重合により得られた重合体を、更に分子内脱アルコール反応をさせることにより、分子内にラクトン環構造を形成させることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のアクリル系重合体の製造方法。
  7. 上記ラクトン環構造が、下記一般式(2)
    (式中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。尚、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。)
    で表される構造であることを特徴とする請求項6に記載のアクリル系重合体の製造方法。
  8. 請求項1〜7の何れか1項に記載の製造方法によりアクリル系重合体を製造する工程と、
    上記アクリル系重合体をポリマーフィルタにより濾過する工程と、
    上記濾過する工程後に上記アクリル系重合体をフィルムに成形する工程と、
    を含むことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  9. 請求項8に記載の製造方法により得られることを特徴とする光学フィルム。
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