JP2009034973A - 導電性プレコートアルミニウム合金板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウム合金板よりなる基板2と、基板2の片面又は両面に形成した化成皮膜3と、化成皮膜3上に形成した導電層4とよりなる。導電層4は、ウレタン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂のうち1種又は2種以上からなる合成樹脂よりなる。導電層4の膜厚Tは0.05μm〜1.0μmであり、基板2の表面粗さRaは0.1μm〜0.8μmであり、導電層4の膜厚Tと基板2の表面粗さRaとの比(T/Ra)は0.07〜4.0である。導電層4は、さらに、一次粒子径が5nm〜80nmのコロイダルシリカを含有することが好ましい。
【選択図】図1
Description
特許文献1及び特許文献2には、りん化鉄、グラファイト、カーボンブラック等の導電性物質を所定割合含む有機皮膜が形成された複合被覆アルミニウム板が開示されている。
特許文献3には、金属酸化物を含有する塗膜が形成された導電性プレコート金属板が示されている。
特許文献9、特許文献10、特許文献11では、Ni微粒子を塗膜中に含有させたアルミニウム板が提案されている。
特許文献12では、Zrを含有した樹脂皮膜でのアルミニウム板が提案されている。
以上のように、導電物質自身が導通し、かつ、極めて薄い膜厚でも保持されるくらいの極微粒子が必要となってくる。さらに、樹脂皮膜自身もミクロ的に均一に極薄膜になる性質の膜が必要となってくる。
また、導電性プレコートアルミニウム合金板は、例えば筐体等の材料として使用されることが多い。そして、筐体等は、人の目に触れる機会が多いため、指紋付着等による外観劣化を抑える必要がある。
該導電層は、ウレタン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂のうち1種又は2種以上からなる合成樹脂よりなり、
上記導電層の膜厚Tは0.05μm〜1.0μmであり、
上記基板の表面粗さRaは0.1μm〜0.8μmであり、
上記導電層の膜厚Tと上記基板の表面粗さRaとの比(T/Ra)は0.07〜4.0であることを特徴とする導電性プレコートアルミニウム合金板にある(請求項1)。
また、上記導電層は、上記列挙された特定の合成樹脂よりなり、これらは比較的撥水性が強いため、これらの合成樹脂を用いて導電層を形成することにより、指紋がつきにくくなるという耐指紋性を得ることができる。
このように、優れた導電性を有し、かつ、耐指紋性に優れた導電性プレコートアルミニウム合金板を得ることができる。
本発明における上記基板となるアルミニウム合金としては、用途に応じて様々なアルミニウム合金を適用することができる。具体的には、5000系、6000系その他の種々の合金系がある。
また、高強度の導電性プレコートアルミニウム合金板が得られるという理由から、上記基板は、Mgを1.0〜5.0質量%含有することが好ましい(請求項8)。
なお、上記クロメート処理やノンクロメート処理等の化成処理方法には、反応型及び塗布型があるが、本発明においてはいずれの手法が採用されても何ら差し支えない。
また、上記導電層の膜厚Tが1.0μmを超える場合には、上記導電層の電気抵抗が大きくなって導電性が低下すると共に、プレス成形性等の塗膜の成形性が低下するおそれがある。なお、上記膜厚Tの下限値は、耐食性を維持するという理由から0.05μmとした。
上記基板の表面粗さRaが0.1μm未満の場合には、工業的に生産が困難な他、導電性が低下するおそれがある。一方、表面粗さRaが0.8μmを超える場合には、上記導電層が基板を覆いきれない塗膜切れ現象が発生し、耐食性やプレス加工性、耐傷つき性、耐指紋性等が低下するおそれがある。
上記T/Raが0.07未満の場合には、耐食性、プレス加工性、耐傷つき性、及び耐指紋性が低下するという問題があり、一方、上記T/Raが4.0を超える場合には、工業的に生産が困難な他、導電性が低下するという問題がある。
この場合には、さらに上記導電性プレコートアルミニウム合金板の導電性を向上することができる。
上記コロイダルシリカの一次粒子径が5nm未満の場合には、電気抵抗が大きくなって導電性が低下するおそれがある。一方、上記コロイダルシリカの一次粒子径が80nmを超える場合には、化成皮膜と塗膜との間の密着性が低下するおそれや、耐指紋性が低下するおそれがある。
上記各直径は、コロイダルシリカを乾燥し、BET法(比表面積測定法)を用いて比表面積を求め、重量と密度から逆算することにより求めることができる。
上記コロイダルシリカは、上記導電層全体の乾燥重量を100重量部とした場合、1〜60重量部含有することが好ましく、5〜40重量部含有することがより好ましい。
この場合には、さらに上記導電性プレコートアルミニウム合金板の導電性を向上することができ、耐傷つき性を向上することができる。
界面活性剤としては、例えば、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物のハイドロカルビルエーテル、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステル、カルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、脂肪酸アルカノールアミド等を用いることができ、これらの中から選ばれる1種を単独で用いても良いし、異なる構造を有する2種以上の混合物を用いても良い。
ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
また、潤滑性、水による除去性の点より、上記アルコールとしては、炭素数12〜18の範囲のものが好ましい。
炭素数2〜6のアルキレンオキサイドとしては、具体的には、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−エポキシブタン(α−ブチレンオキサイド)、2,3−エポキシブタン(β−ブチレンオキサイド)、1,2−エポキシ−1−メチルプロパン、1,2−エポキシヘプタン等が挙げられる。
また、水酸基を2〜6個有する多価アルコールにアルキレンオキサイドを付加させる際は、すべての水酸基に付加させてもよいし、一部の水酸基にのみ付加させてもよい。
炭化水素基としては、たとえば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、及びアリールアルキル基等がある。
この場合には、インナーワックスの存在によって、表面の摩擦係数が低減し、耐傷付き性向上や成形性の向上を図ることができ、また、油分や水分の接触角低減や、耐指紋性向上等を図ることができる。
ここで、上記合成樹脂としてポリエチレンを用いる場合には、上記インナーワックスとしてポリエチレンを使用せず、ポリエチレンではないラノリン、カルナバ等を用いることが好ましい。
この場合には、さらに上記導電性プレコートアルミニウム合金板の導電性を向上させることができる。
この場合には、導電性を必要とする様々な用途に好適に利用することができる。
また、上記異なる20箇所は、A4版の試料の端部から30mm内側において、満遍なくばらつかせた20箇所とする。
また、上記異なる20箇所の表面部位の電気抵抗の平均値が10Ωを超える場合も、電磁波シールド性が悪い部分が生じるおそれがある。
上記導電層の表面の表面粗さRaが0.05μm未満の場合には、耐傷付き性や耐指紋性が低下するおそれがあり、一方、0.6μmを超える場合には、粗さの山の頂上部の膜厚が薄くなり易い傾向にあり、耐食性が劣化するおそれがある。
この場合には、上述した優れた導電性、耐指紋性等を生かして、優れた電気機器用筐体あるいは電子機器用筐体を得ることができる。
本例は、本発明の導電性プレコートアルミニウム合金板にかかる実施例及び比較例について説明する。
本例では、化成皮膜、導電層の構成等を変化させて、本発明品として、表2に示す21種類の導電性プレコートアルミニウム合金板(試料E1〜試料E21)と、比較品として、表3に示す10種類の導電性プレコートアルミニウム合金板(試料C1〜試料C10)を作製し、種々の性能評価試験を実施した。
以下、これを詳説する。
試料C1〜試料C10は、基本的な構成は試料E1〜試料E21と同様である。
化成処理aは、リン酸クロメート処理によって、クロム量が20mg/m2となるように反応型クロメート皮膜を形成するものである。具体的には、化成処理液に試料を浸漬するどぶ漬け法により化成処理を行い、その後、約100℃の雰囲気で乾燥させた。
化成処理dは、塗布型ジルコニウム処理によって、ジルコニウム量が20mg/m2となるように塗布型ノンクロメート皮膜を形成するものである。処理方法は上記化成処理dと同様である。
表2及び表3における、合成樹脂含有量、コロイダルシリカ含有量、インナーワックス含有量は、乾燥後の導電層全体の重量100重量部に対する重量である。
表2及び表3において、
ウレタン樹脂:A、
アイオノマー樹脂:B、
ポリエチレン樹脂:C、
エポキシ樹脂:D、
フッ素樹脂:E、
ポリエステル樹脂:F
ポリビニルアルコール:G、
ポリアクリル酸:Hと示した。
また、界面活性剤として、オキシエチレンパルミチン酸ブチルエステル、ナトリウムスルホネートの2種類を準備した。
表2及び表3において、
オキシエチレンパルミチン酸ブチルエステル:EO、
ナトリウムスルホネート:NSと示した。
表2及び表3において、
ポリエチレン:PE、
カルナバ:CAと示した。
<導電性>
導電性は、針状電極法により、A4版の試料の端部から30mm内側において、満遍なくばらつかせた20箇所の表面部位の電気抵抗値を測定することにより評価した。針状電極法は、φ0.2mmの球面状の針先を有する純銅製の針を、導電層の表面に載せ、針先が導電層を貫通することのない荷重を針に付与し、この状態で、脱膜して露出させた基板と針との間を導通させることにより、針先が接触している部分の導電層の電気抵抗値を測定する方法である。本例では、針に付与する荷重を一律10gとして行った。評価が3点以上の場合を合格、2点以下の場合を不合格とした。
5点:測定した電気抵抗値が30Ω以下を示した割合が100%の場合。
4点:測定した電気抵抗値が30Ω以下を示した割合が80%以上100%未満の場合。
3点:測定した電気抵抗値が30Ω以下を示した割合が50%以上80%未満の場合。
2点:測定した電気抵抗値が30Ω以下を示した割合が30%以上50%未満の場合。
1点:測定した電気抵抗値が30Ω以下を示した割合が10%以上30%未満の場合。
0点:測定した電気抵抗値が30Ω以下を示した割合が10%未満の場合。
プレス加工性は、図2に示されるように、各試料50に対して、それぞれ曲げ加工を繰り返して行い、曲げ加工部の導電層の塗膜割れが消滅する曲げ回数で評価した。
評価点は5段階とし、曲げ回数1回の場合を5点、曲げ回数2回の場合を4点、曲げ回数3回の場合を3点、曲げ回数4回の場合を2点、曲げ回数5回の場合を1点とした。評価点が3点以上の場合を合格、評価点が2点以下の場合を不合格とした。
耐食性は、試料の導電層の表面から、カッターナイフを用いてクロスカットを入れ、JIS K5400に規定された塩水噴霧試験に準拠し、噴霧時間を720時間として行った後、試料の外観を観察した。
評価点は5段階とし、外観上変化がない場合を5点、0.5mm未満の塗膜膨れがあった場合を4点、0.5mm以上1mm未満の塗膜膨れがあった場合を3点、1mm以上3mm未満の塗膜膨れがあった場合を2点、3mm以上の塗膜膨れがあった場合を1点とした。評価点が3点以上の場合を合格、評価点が2点以下の場合を不合格とした。
耐傷付き性は、図3に示されるバウデン試験にて行った。即ち、荷重100gで直径1/4インチの硬球51を、サンプル台59上に載置した試料50の導電層の表面において摺動させ、塗膜破れが発生した際の摺動回数にて評価した。
評価点は5段階とし、摺動回数100回以上の場合を5点、摺動回数75回以上100回未満の場合を4点、摺動回数50回以上75回未満の場合を3点、摺動回数25回以上50回未満の場合を2点、摺動回数25回未満の場合を1点とした。評価点が3点以上の場合を合格、評価点が2点以下の場合を不合格とした。
耐指紋性は、各試料を50mm×50mmの面積に切り出し、その半分の面積に10mg/dm2の量のワセリンを塗布し、全体をエタノール中に1回漬けて引き上げ、その後、ワセリンの残存面積を目視観察した。
評価点は5段階とし、残存無しの場合を5点、1/4残存の場合を4点、1/2残存の場合を2点、3/4残存の場合を2点、全面残存の場合を1点とした。評価点が3点以上の場合を合格、評価点が2点以下の場合を不合格とした。
耐溶剤性は、1ポンドハンマーにウエスを5重に被せ、トリクロロエチレンを染み込ませ、各試料の導電層の表面に乗せて50mm長さを繰り返し摺動させ、何回目で塗膜表面が溶解し変色するかを観察した。
評価点は5段階とし、10回以上の場合を5点、7回以上10回未満の場合を4点、5回以上7回未満の場合を3点、2回以上5回未満の場合を2点、1回の場合を1点とした。評価点が3点以上の場合を合格、評価点が2点以下の場合を不合格とした。
総合評価は、上記導電性、プレス加工性、耐食性、耐傷付き性、耐指紋性、耐溶剤性の全ての項目が合格である場合を合格(評価○)とし、上記導電性、プレス加工性、耐食性、耐傷付き性、耐指紋性、耐溶剤性のいずれかの項目で不合格である場合を不合格(評価×)とした。
これより、本発明によれば、優れた導電性を有し、かつ、耐指紋性に優れた導電性プレコートアルミニウム合金板を得ることができることが分かる。
また、比較品としての試料C2、試料C4は、導電層がポリアクリル酸よりなるため、耐指紋性が不合格であった。
また、比較品としての試料C6は、導電層の膜厚Tが本発明の上限を上回るため、導電層の電気抵抗が大きくなり導電率が得られず、不合格であった。
また、比較品としての試料C8は、基板の表面粗さRaが本発明の上限を上回るため、上記導電層が基板を覆いきれない塗膜切れ現象が発生し、耐食性、プレス加工性、耐傷つき性、耐指紋性等、及び耐溶剤性が得られず、不合格であった。
また、比較品としての試料C10は、(T/Ra)が本発明の上限を上回るため、導電性が得られず、不合格であった。
2 基板
3 化成皮膜
4 導電層
Claims (9)
- アルミニウム合金板よりなる基板と、該基板の片面又は両面に形成した化成皮膜と、該化成皮膜上に形成した導電層とよりなり、
該導電層は、ウレタン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂のうち1種又は2種以上からなる合成樹脂よりなり、
上記導電層の膜厚Tは0.05μm〜1.0μmであり、
上記基板の表面粗さRaは0.1μm〜0.8μmであり、
上記導電層の膜厚Tと上記基板の表面粗さRaとの比(T/Ra)は0.07〜4.0であることを特徴とする導電性プレコートアルミニウム合金板。 - 請求項1において、上記導電層は、さらに、一次粒子径が5nm〜80nmのコロイダルシリカを含有することを特徴とする導電性プレコートアルミニウム合金板。
- 請求項1又は2において、上記導電層は、さらに、上記導電層全体の乾燥重量を100重量部とした場合、界面活性剤を0.1重量部〜10重量部含有することを特徴とする導電性プレコートアルミニウム合金板。
- 請求項1〜3のいずれか1項において、上記導電層は、さらに、上記導電層全体の乾燥重量を100重量部とした場合、インナーワックスを0.05重量部〜15重量部含有することを特徴とする導電性プレコートアルミニウム合金板。
- 請求項1〜4のいずれか1項において、上記導電層は、さらに、上記導電層全体の乾燥重量を100重量部とした場合、一次粒子径が5〜100nmのナノカーボン粒子を0.01重量部〜10重量部含有することを特徴とする導電性プレコートアルミニウム合金板。
- 請求項1〜5のいずれか1項において、針状電極法により上記導電層の異なる20箇所の表面部位の電気抵抗を測定した際に、10箇所以上の表面部位の電気抵抗が30Ω以下であり、かつ、上記20箇所の表面部位の電気抵抗の平均値が10Ω以下であることを特徴とする導電性プレコートアルミニウム合金板。
- 請求項1〜6のいずれか1項において、上記導電層の表面の表面粗さRaは0.05μm〜0.6μmであることを特徴とする導電性プレコートアルミニウム合金板。
- 請求項1〜7のいずれか1項において、上記基板は、Mgを1.0〜5.0質量%含有することを特徴とする導電性プレコートアルミニウム合金板。
- 請求項1〜8のいずれか1項において、上記導電性プレコートアルミニウム合金板は、電気機器用筐体あるいは電子機器用筐体に用いられることを特徴とする導電性プレコートアルミニウム合金板。
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