つぎに、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明による光学フィルムの製造方法は、搬送フィルムの左右両端部と中央部のうちの少なくとも左右両端部のフィルム表面に、レーザー光の照射により、凹凸を有するエンボス部を形成するものである。
本発明の方法によれば、フィルムの膜厚に応じて、エンボス部の凹凸の高さを変化させる場合においても、高さ調整のために時間を要することなく、フィルムの生産性に優れている。しかもフィルム表面への微小なシワ・キズ等の故障の発生が皆無となり、フィルムの表面性を飛躍的に向上し得る。
本発明においては、フィルムの膜厚に応じてレーザー光の照射出力を調整し、高さ3〜20μmの凹凸を有するエンボス部を形成するのが好ましい。
ここで、エンボス部の凹凸の高さが、3μm未満であれば、フィルム同士の貼り付きが容易となり、エンボスの効果が発揮できないので、好ましくない。またエンボス部の凹凸の高さが、20μmを越えると、フィルム原反において、エンボス部のある端部と未エンボス加工の中央部分の見かけ上の直径差が大きくなり、馬の背故障、変形故障等の故障を誘発するので、好ましくない。
また、本発明の光学フィルムの製造方法においては、レーザー光の照射位置を可変として、フィルム幅に応じてエンボス部を所定箇所に形成するのが好ましい。このように、レーザー光の照射位置を可変とすることで、フィルムの幅手方向の端部あるいは中央部のいずれにも、エンボス部の凹凸を容易に形成することが可能となり、これまでのナーリング加工時に、押圧ロールをバックロールに接圧させたことにより生じたフィルム表面の微小なシワ・キズ等の故障が皆無となって、フィルムの表面性を飛躍的に向上し得るものである。
さらに、本発明においては、レーザー光照射側のフィルム表面の可塑剤の配合比率:Aと、レーザー光未照射側のフィルム表面の可塑剤の配合比率:Bとが、A>Bの関係にあるのが、好ましい。
このように、レーザー光照射部の可塑剤濃度を、レーザー光未照射部の可塑剤濃度よりも高く設定することによって、レーザー光照射部分の発散による汚染を抑制し得るものである。また、レーザー光の照射付近に、飛散物質排出用を設置することで、生産上、問題ないことが分かった。
ところで、レーザー光は、「誘導放出による光の増幅」(Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)という意味で、発振波長によって、いくつかの種類があり、本発明において使用するレーザー光としては、高出力のCO2レーザー光であるのが、好ましい。CO2レーザー光の波長は、9.3〜10.6マイクロメートルであり、YAGレーザー光(波長1.064マイクロメートル)の約10倍の波長を有している。なお、CO2レーザー光は、媒質として気体(CO2)を励起することにより得られるであり、レーザー光YAGレーザー光は、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)結晶を励起することにより得られるレーザー光である。
本発明による光学フィルムの製造方法では、溶液流延製膜法または溶融流延製膜法により得られたフィルムを用いることができる。
以下、これらについて、詳しく説明する。
本発明の光学フィルムには、種々の樹脂を用いることができるが、中でもセルロースエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂が好ましい。
セルロースエステル系樹脂は、セルロース由来の水酸基がアシル基などで置換されたセルロースエステルである。例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートなどのセルロースアシレートや、脂肪族ポリエステルグラフト側鎖を有するセルロースアセテートなどが挙げられる。中でも、セルロースアセテートプロピオネート、脂肪族ポリエステルグラフト側鎖を有するセルロースアセテートが好ましい。本発明の効果を阻害しない範囲であれば、その他の置換基が含まれていてもよい。
セルロースアセテートプロピオネートの例としては、アシル基の置換度が、2.0以上3.0以下、アセチル基の置換度が1.4以上2.4以下であることが好ましい。さらに、アシル基の置換度が、2.5以上2.8以下、アセチル基の置換度が1.5以上2.0以下であることが好ましい。置換度をこの範囲にすることで、溶融流延製膜法による良好な成形性が得られ、かつ所望の面内方向リタデーション(Ro)、及び厚み方向リタデーション(Rt)を容易に得ることができるのである。アセチル基の置換度が、この範囲より低いと、位相差フィルムとしての耐湿熱性、特に湿熱下での寸法安定性に劣る場合があり、置換度が大きすぎると、必要なリタデーション特性が発現しなくなる場合がある。
プロピオニル基を置換基として導入すると、セルロースエステルの可塑性が向上し、成形性が向上するのである。
本発明に用いられるセルロースエステル系樹脂の原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることができる。また、それらから得られたセルロースエステル系樹脂は、それぞれ任意の割合で混合使用することができる。
本発明において、セルロースエステル系樹脂は、セルロース原料をアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて反応される。
アシル化剤が酸クロライド(CH3COCl、C2H5COCl、C3H7COCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行なわれる。具体的には、特開平10−45804号公報に記載の方法で合成することができる。
アシル基の置換度の測定方法は、ASTM−D817−96に準じて測定することができる。
脂肪族ポリエステルグラフト側鎖を有するセルロースアセテートとしては、乳酸を主たる繰り返し単位とする脂肪族ポリエステルグラフト側鎖を有するセルロースアセテートが挙げられる。乳酸を主たる繰り返し単位とする脂肪族ポリエステルグラフト側鎖を有するセルロースアセテートのアセチル置換度は、グルコース単位あたり2.5〜3.0であることが好ましい。アセチル置換度がこの範囲である脂肪族ポリエステルグラフト側鎖を有する熱可塑性セルロースアセテートは、可塑化効果が顕著に現われ、得られるポリマーの脆性が問題とならない。アセチル置換度が2.5未満では、セルロースアセテート内の残存水酸基による水素結合のため、側鎖に脂肪族ポリエステルをグラフトさせても可塑化効果が小さく、成形性が不良となる場合がある。アセチル置換度は、2.7〜3.0であることが好ましく、2.7〜2.9であることが最も好ましい。乳酸を主たる繰り返し単位とするポリ乳酸は、脂肪族ポリエステルの中でも特に熱的安定性が高いとの特徴を有している。
本発明において、脂肪族ポリエステルグラフト側鎖の分子量は、1000〜10000であることが好ましい。この分子量を1000〜10000の範囲にすることで、良好な成形性が得られる。分子量は、より好ましくは2000〜9000、最も好ましくは3000〜8000である。
本発明において、脂肪族ポリエステルグラフト側鎖を有するセルロースアセテートを得るためには、ラクチドをモノマーとしてセルロースアセテートへの開環グラフト重合を行なう方法等公知の方法によって合成できる。開環グラフト反応を行なう場合には、公知の開環重合触媒を用いることができる。例えば、錫、亜鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ゲルマニウム、アンチモン、ナトリウム、カリウム、アルミニウムなどの金属およびその誘導体が挙げられ、特に誘導体については金属有機化合物、炭酸塩、酸化物、ハロゲン化物が好ましい。具体的には、オクタン酸錫、塩化錫、塩化亜鉛、アルコキシチタン、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、アルキルアルミニウムなどを例示できる。
本発明において、セルロースエステル系樹脂の数平均分子量は、60000〜300000の範囲が、得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。さらに70000〜200000が好ましい。
本発明で使用するノルボルネン系樹脂としては、例えば(1)ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体を、必要に応じて、マレイン酸付加、シクロペンタジエン付加のごときポリマー変性を行なった後に、水素添加した樹脂、(2)ノルボルネン系モノマーを付加型重合させた樹脂、(3)ノルボルネン系モノマーとエチレンやα−オレフィンなどのオレフィン系モノマーと付加型重合させた樹脂などを挙げることができる。重合方法および水素添加方法は、常法により行なうことができる。
本発明において、樹脂材料には、種々の添加剤を配合することができる。
本発明では、湿熱下での寸法安定性向上のために、いわゆる可塑剤を配合することが好ましい。可塑剤に湿熱下での寸法安定性改良効果があることは、これまで知られていなかった。可塑剤としては、従来公知のセルロースエステル用の可塑剤が好ましく使用できる。特に相溶性に優れたものが好ましく、例えばリン酸エステルやカルボン酸エステルが好ましい。リン酸エステルとしては、例えばトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート等を挙げることができる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステル等、フタル酸エステルとしては、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジオクチルフタレート及びジエチルヘキシルフタレート等、またクエン酸エステルとしてはクエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチルを挙げることができる。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバチン酸ジブチル、トリアセチン、等も挙げられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートもこの目的で好ましく用いられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートのアルキルは炭素原子数1〜8のアルキル基である。アルキルフタリルアルキルグリコレートとしては、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、プロピルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることができ、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく、特にエチルフタリルエチルグリコレートが好ましく用いられる。分子量の大きい可塑剤は、押し出し成形の際の揮発が抑制でき好ましい。これらの例としては、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどのグリコールと二塩基酸とからなる脂肪族ポリエステル類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのオキシカルボン酸からなる脂肪族ポリエステル類、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリバレロラクトンなどのラクトンからなる脂肪族ポリエステル類、ポリビニルピロリドンなどのビニルポリマー類などが挙げられる。上記可塑剤は、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
上述した可塑剤の含有量は、例えば、セルロースエステル系樹脂に対して1〜30重量%含有させることが好ましい。可塑剤をこの範囲含有させることで、セルロースエステル系樹脂フィルムの湿熱下での寸法安定性を向上することができる。
本発明において、使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
本発明に有用な紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326(何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を好ましく使用できる。
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
これらの紫外線吸収剤の配合量は、セルロースエステル系樹脂に対して、0.01〜10重量%の範囲が好ましく、さらに0.1〜5重量%が好ましい。使用量が少なすぎると、紫外線吸収効果が不十分の場合があり、多すぎると、フィルムの透明性が劣化する場合がある。紫外線吸収剤は熱安定性の高いものが好ましい。
セルロースエステル系樹脂のアセチル基の置換度が低いと、耐熱性が低下する場合がある。この場合、酸化防止剤を配合することが有効である。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等が挙げられる。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
本発明では、フィルムの滑り性を付与するために、表面加工により表面を粗くして滑り性を付与するので、従来使用していたような微粒子の添加は必要ない。ただし、従来の製法と同様のフィルム製造ラインを共用するような場合には、従来添加していた微粒子がコンタミとして混入する可能性がある。その場合でも、実質的に微粒子の添加工程を用いないため、フィルム中の微粒子の含有量は、樹脂に対し0.02重量%以下で含まれることもあるが、極微量であるため異物への影響は無い。
本発明において、微粒子とは、フィルム中あるいははその表面に存在する平均粒径5μm未満の粒子を言い、主に無機微粒子である。これらの含有量や存在状態は、電子顕微鏡によって確認もできるし、アルカリなどでフィルムを溶解後、誘導結合プラズマ発光分光分析装置で元素分析すれば、確認できる。
本発明の光学フィルムは、まず、セルロースエステル系樹脂、またはノルボルネン樹脂をシートに成形し、該シートを延伸配向することにより製造される。
本発明においては、溶液流延製膜法または溶融流延製膜法によりシートを成形する。いずれも公知の方法で製膜することができる。
図1は、溶液流延製膜法による本発明の光学フィルムの製造方法を実施する装置の概略断面図である。なお、本発明の実施にあたっては、図1のプロセスに限定されるものではない。
同図において、例えばセルロースエステルフィルムの製造装置は、溶液流延製膜法によるものであり、セルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを支持体1上に流延するドープ流延ダイ(ドープ流延手段)2と、ドープ流延ダイ2によって支持体1上に形成されたウェブ10を、支持体1から剥離させる剥離ロール(剥離手段)3と、剥離ロール3によって支持体1から剥離させられたウェブ10を、搬送しながら乾燥させる乾燥手段と、乾燥後のフィルムFを巻き取る巻取り機(巻取り手段)15とを具備している。
図1において、まず、セルロースエステル系樹脂を、良溶媒及び貧溶媒の混合溶媒に溶解し、これに上記の可塑剤や紫外線吸収剤を添加して樹脂溶液(ドープ)を調製する。ドープは、例えば加圧型定量ギヤポンプを通して流延ダイ(2)に送液され、流延位置において、ステンレス鋼製エンドレスベルト支持体(1)上に流延ダイ(2)からドープを流延する。製膜時のベルト温度は、一般的な温度範囲0℃から溶剤の沸点未満の温度で、流延することができ、さらには5℃〜溶剤沸点−5℃の範囲が、より好ましい。このとき、周囲の雰囲気温度は露点以上に制御する必要がある。
流延ダイ(2)によるドープの流延には、流延されたドープ膜(ウェブ)をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、あるいは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調製でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。
支持体(1)上へドープを流延する際は、原料樹脂の溶解に用いた溶剤の沸点未満、混合溶剤では最も沸点の低い溶剤の沸点未満の温度に制御し、支持体(1)の温度は、一般的な温度範囲0℃から溶剤の沸点未満の温度で、流延することができるが、5〜30℃の支持体(1)上に流延することがさらに好ましい。
支持体(1)として回転駆動エンドレスベルトを具備する図示の製膜装置では、該ベルト支持体(1)は、一対のドラム及びその中間に配置されかつエンドレスベルト支持体(1)の上部移行部及び下部移行部をそれぞれ裏側より支えている複数のロールより構成される。また、回転駆動エンドレスベルト支持体(1)の両端巻回部のドラムの一方、もしくは両方に、ベルト支持体(1)に張力を付与する駆動装置が設けられ、これによってベルト支持体(1)は張力を掛けられて、張った状態で使用される。
そして、ドープ粘度が1〜200ポイズになるように調整されたドープを、流延ダイ(2)から支持体(1)上にほゞ均一な膜厚になるように流延し、流延膜中の残留溶媒量が、対固形分重量200%以上では、流延膜温度が溶剤沸点以下に、また、残留溶媒量が、対固形分重量100〜200%の範囲では、溶剤沸点+10℃以下に、残留溶媒量100%以下〜剥離までは、溶剤沸点+20℃以下の範囲になるように、乾燥風により流延膜(ウェブ)を乾燥させる。
ドープを流延ダイ(2)から鏡面処理された表面を有するステンレス鋼製エンドレスベルト支持体(1)上に流延してドープ膜(ウェブ)(10)を得、ウェブ(10)がエンドレスベルト支持体(1)の回転によってほぼ3/4周移動したところで、剥離ロール(3)により剥離する。
支持体(1)上は、ウェブ(10)が支持体(1)から剥離可能な膜強度となるまで乾燥固化させるため、ウェブ(10)中の残留溶媒量が150重量%以下まで乾燥させるのが好ましく、80〜120重量%がより好ましい。
支持体(1)からウェブ(10)を剥離するときのウェブ(10)の温度は、0〜30℃が好ましい。また、ウェブ(10)は、支持体(1)から剥離直後に、支持体(1)密着面側からの溶媒触媒で温度が一旦急速に下がり、雰囲気中の水蒸気や溶剤蒸気などの揮発成分がコンデンスしやすいため、剥離時のウェブ温度は5〜30℃がさらに好ましい。
ここで、残留溶媒量は、下記の式で表わせる。
残留溶媒量(重量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での重量、Nは重量Mのものを110℃で3時間乾燥させたときの重量である。
支持体(1)とウェブ(10)を剥離する際の剥離張力は、通常20〜25kg/mで剥離が行なわれるが、剥離できる最低張力〜17kg/mで剥離することが好ましい。さらに好ましくは、最低張力〜14kg/mで剥離することである。
ついで、ウェブ(10)をテンター乾燥装置(4)に導入する。そこで、ウェブ(10)の両側縁部をクリップで把持して延伸するとともに、ウェブ(10)を乾燥する。テンター乾燥装置(4)内においてウェブ(10)は、テンター乾燥装置(4)の底の前寄り部分から吹き込まれ、テンター乾燥装置(4)の天井の後寄り部分から排出せられる温風によって乾燥される。
テンター乾燥装置(4)では、温風を用いて乾燥するものであるが、フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、上記のような熱風、あるいはまた赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点で熱風で行なうのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80〜140℃の範囲で行なうことが寸法安定性を良くするため、さらに好ましい。
つぎに、延伸後のセルロースエステルフィルム(ウェブ)(10)は、ロール搬送乾燥装置(5)に導入する。ロール搬送乾燥装置(5)内では、50〜1000本の搬送ロール(7)によってウェブ(10)が蛇行せられ、その間にウェブ(10)は、例えばロール搬送乾燥装置(5)の底の前寄り部分から吹込まれ、ロール搬送乾燥装置(5)の天井の後寄り部分から排出せられる温風によって乾燥される。
ロール搬送乾燥装置(5)によって乾燥されたフィルムの幅手方向の両端部を、スリッター(12)により製品となる幅にスリットして裁ち落とす。ここで、切断されるウェブ10の幅手方向の両端部の幅は、50〜100mmであるのが、好ましい。
ついで、本発明の方法により、スリット後の搬送フィルム(F)の左右両端部と中央部のうちの少なくとも左右両端部のフィルム表面に、レーザー光の照射装置(13)により、凹凸を有するエンボス部を形成する。なお、(14)は搬送ロールである。
図2に示すように、本発明の方法により、スリット後の搬送フィルム(F)の左右両端部のフィルム表面に、CO2レーザー光照射装置により、例えばレーザー光出力:7.5〜30Wで、9.3〜10.6μmのCO2レーザー光を照射して、波長高さ3〜20μmの凹凸を有するエンボス部(E)を形成するものである。
本発明の方法によれば、レーザー光の照射により、凹凸を有するエンボス部(E)を形成しているから、フィルム(F)の膜厚に応じて、エンボス部(E)の凹凸の高さを変化させる場合においても、高さ調整のために時間を要することなく、フィルム(F)の生産性に優れている。しかもフィルム(F)表面への微小なシワ・キズ等の故障の発生が皆無となり、フィルム(F)の表面性を飛躍的に向上し得る。
本発明においては、フィルム(F)の膜厚に応じてレーザー光の照射出力を調整し、高さ3〜20μmの凹凸を有するエンボス部(E)を形成するのが好ましい。
また、本発明の光学フィルムの製造方法においては、レーザー光の照射位置を可変として、フィルム(F)幅に応じてエンボス部(E)を所定箇所に形成するのが好ましい。このように、レーザー光の照射位置を可変とすることで、フィルム(F)の幅手方向の端部あるいは中央部のいずれにも、エンボス部(E)の凹凸を容易に形成することが可能となり、フィルム(F)表面の微小なシワ・キズ等の故障が皆無となって、フィルム(F)の表面性を飛躍的に向上し得るものである。
さらに、本発明においては、レーザー光照射側のフィルム(F)表面の可塑剤の配合比率:Aと、レーザー光未照射側のフィルム(F)表面の可塑剤の配合比率:Bとが、A>Bの関係にあるのが、好ましい。
このように、レーザー光照射部の可塑剤濃度を、レーザー光未照射部の可塑剤濃度よりも高く設定することによって、レーザー光照射部分の発散による汚染を抑制し得るものである。また、レーザー光の照射付近に、飛散物質排出用を設置することで、生産上、問題ないことが分かった。
本発明において使用するレーザー光としては、高出力のCO2レーザー光であるのが、好ましい。CO2レーザー光の波長は、9.3〜10.6マイクロメートルの間で選定することができる。
本発明の方法により、搬送フィルム(F)の左右両端部と中央部のうちの少なくとも左右両端部のフィルム(F)表面に、レーザー光の照射により、凹凸を有するエンボス部(E)を形成した後は、フィルム(F)を巻取り機(15)によって巻き取る。
本発明の光学フィルムの製造に係わる巻取り機(15)は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
なお、上記の流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。空気雰囲気下の場合、乾燥雰囲気を、蒸発溶媒の爆発限界濃度を考慮して実施することは、勿論のことである。
光学フィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、仕上がりのフィルムとして、本発明において使用される膜厚範囲は30〜200μmで、最近の薄手傾向にとっては40〜120μmの範囲が好ましく、特に40〜100μmの範囲が好ましい。
フィルムの膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、流延ダイ(2)の口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、流延用支持体(1)の速度等をコントロールするのがよい。
上記のように、本発明による光学フィルムの製造方法においては、溶融流延製膜法により作製された樹脂フィルムを使用することができる。
ここで、溶融流延製膜法としては、図示は省略したが、Tダイを用いた方法やインフレーション法などの溶融押し出し法、カレンダー法、熱プレス法、射出成形法などがある。中でも、厚さムラが小さく、50〜500μm程度の厚さに加工しやすく、かつ、リタデーションの絶対値およびそのバラツキを小さくできるTダイを用いた溶融押し出し法が好ましい。
溶融流延製膜法の条件は、他の熱可塑性樹脂に用いられる条件と同様にして成形できる。例えば、乾燥したセルロースエステル系樹脂、及びノルボルネン樹脂を1軸や2軸タイプの押し出し機を用いて、押し出し温度200〜300℃程度で溶融し、リーフディスクタイプのフィルターなどでろ過し異物を除去した後、Tダイからシート状に流延し、冷却ドラム上で固化させる。
供給ホッパーから押し出し機へ導入する際は、減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。冷却ドラムの温度は、セルロースエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)以下が好ましい。冷却ドラムへ樹脂を密着させるために、静電印加により密着させる方法、風圧により密着させる方法、全幅あるいは端部をニップして密着させる方法、減圧で密着させる方法などを用いることが好ましい。また、ダイライン等の表面の欠陥を小さくするためには、押し出し機からダイまでの配管には滞留部が極力少なくなるような構造にすることが好ましい。ダイの内部やリップにキズ等が極力無いものを用いることが好ましい。ダイ周辺に樹脂から揮発成分が析出しダイラインの原因となる場合があるので、揮発成分を含んだ雰囲気は吸引することが好ましい。また、静電印加等の装置にも析出する場合があるので、交流を印加したり、他の加熱手段で析出を防止することが好ましい。
酸化防止剤、可塑剤などの添加剤は、あらかじめ樹脂と混合しておいてもよいし、押し出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
シートの厚さは特に制限はなく、延伸後に所望の厚さになるように設定すればよく、50〜500μmが好ましい。もちろん厚さムラは小さいほど好ましく、全面において±5%以内、好ましくは±3%以内、より好ましくは±1%以内である。
このような溶融流延製膜法で成形されたセルロースエステル系樹脂シートは、溶液流延製膜法で成形されたセルロースエステル系樹脂シートと異なり、厚み方向リタデーション(Rt)が小さいとの特徴があり、このようなセルロースエステル系樹脂シートを延伸することにより面内方向リタデーション(Ro)を発現し易く、延伸倍率を大きくする必要がないので、白濁のない透明性に優れたセルロースエステル系樹脂フィルムが得られるのである。
ついで、得られたシートを一軸方向に延伸する。延伸により分子が配向される。延伸する方法は、特に制限はないが、公知のピンテンターやクリップ式のテンターなどを好ましく用いることができる。延伸方向は長さ方向でも幅手方向でも任意の方向(斜め方向)でも可能であるが、本発明では延伸方向を幅手方向とすることで偏光フィルムとの積層がロール形態でできるので好ましい。幅手方向に延伸することでセルロースエステル系樹脂フィルムの遅相軸は幅手方向になる。一方、偏光フィルムの透過軸も通常幅手方向である。偏光フィルムの透過軸とセルロースエステル系樹脂フィルムの遅相軸とが平行になるように積層した偏光板を液晶表示装置に組み込むことで、良好な視野角が得られるのである。
延伸条件は、所望のリタデーション特性が得られるように温度、倍率を選ぶことができる。通常、延伸倍率は1.1〜2.0倍、好ましくは1.2〜1.5倍であり、延伸温度は、通常、シートを構成する樹脂のTg〜Tg+50℃、好ましくはTg〜Tg+40℃の温度範囲で行なわれる。延伸倍率が小さすぎると所望のリタデーションが得られない場合があり、大きすぎると破断してしまう場合がある。延伸温度が低すぎると、破断し、高すぎると、所望のリタデーションが得られない場合がある。
上記の方法で作製した光学フィルムのリタデーションを合目的の値に修正する場合、フィルムを長さ方向や幅手方向に延伸または収縮させてもよい。長さ方向に収縮するには、例えば、幅延伸を一時クリップアウトさせて長さ方向に弛緩させる、または横延伸機の隣り合うクリップの間隔を徐々に狭くすることによりフィルムを収縮させるという方法がある。後者の方法は一般の同時二軸延伸機を用いて、縦方向の隣り合うクリップの間隔を、例えばパンタグラフ方式やリニアドライブ方式でクリップ部分を駆動して滑らかに徐々に狭くする方法によって行なうことができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は、通常、フィルムが変形しており、製品として使用できないので、切除されて、原料として再利用される。
ついで、本発明の方法により、延伸後の搬送フィルムの左右両端部と中央部のうちの少なくとも左右両端部のフィルム表面に、前述のCO2レーザー光照射装置(13)により、凹凸を有するエンボス部(E)を形成する。
本発明の方法によれば、レーザー光の照射により、凹凸を有するエンボス部(E)を形成しているから、フィルムの膜厚に応じて、エンボス部(E)の凹凸の高さを変化させる場合においても、高さ調整のために時間を要することなく、フィルムの生産性に優れている。しかもフィルム表面への微小なシワ・キズ等の故障の発生が皆無となり、フィルムの表面性を飛躍的に向上し得る。
光学フィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、仕上がりのフィルムとして、本発明において使用される膜厚範囲は30〜200μmで、最近の薄手傾向にとっては40〜120μmの範囲が好ましく、特に40〜100μmの範囲が好ましい。膜厚は、所望の厚さになるように、押し出し流量、ダイスの口金のスリット間隙、冷却ドラムの速度等をコントロールすることで調整できる。また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
本発明の方法によって製造される光学フィルムは、液晶表示用部材、詳しくは偏光板用保護フィルムに用いられるのが好ましい。特に、透湿度と寸法安定性に対して共に厳しい要求のある偏光板用保護フィルムにおいて、本発明の光学フィルムは好ましく用いられる。
ところで、偏光フィルムは、従来から使用されている、例えば、ポリビニルアルコールフィルムの如きの延伸配向可能なフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して縦延伸したものである。偏光フィルム自身では、十分な強度、耐久性がないので、一般的にはその両面に保護フィルムとしての異方性のないセルローストリアセテートフィルムを接着して偏光板としている。
偏光板は、上記偏光フィルムに、本発明の光学フィルムを位相差フィルムとして貼り合わせて作製してもよいし、また本発明の光学フィルムを位相差フィルムおよび保護フィルムも兼ねて、直接偏光フィルムと貼り合わせて作製してもよい。貼り合わせる方法は、特に限定はないが、水溶性ポリマーの水溶液からなる接着剤により行なうことができる。この水溶性ポリマー接着剤は完全鹸化型のポリビニルアルコール水溶液が好ましく用いられる。さらに、若干前述したが、長手方向に延伸し、二色性染料処理した長尺の偏光フィルムと長尺の本発明の位相差フィルムとを貼り合わせることによって長尺の偏光板を得ることができる。偏光板はその片面または両面に感圧性接着剤層(例えば、アクリル系感圧性接着剤層など)を介して剥離性シートを積層した貼着型のもの(剥離性シートを剥すことにより、液晶セルなどに容易に貼着することができる)としてもよい。
このようにして得られた偏光板は、種々の表示装置に使用できる。特に電圧無印加時に液晶性分子が実質的に垂直配向しているVAモードや、電圧無印加時に液晶性分子が実質的に水平かつねじれ配向しているTNモードの液晶セルを用いた液晶表示装置が好ましい。
偏光板は、一般的な方法で作製することができる。例えば、本発明の光学フィルムをアルカリケン化処理し、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬、延伸して作製した偏光膜の両面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリケン化処理とは、水系接着剤の濡れを良くし、接着性を向上させるために、セルロースエステルフィルムを高温の強アルカリ液中に漬ける処理のことをいう。
本発明の光学フィルムには、ハードコート層、防眩層、反射防止層、防汚層、帯電防止層、導電層、光学異方層、液晶層、配向層、粘着層、接着層、下引き層等の各種機能層を付与することができる。これらの機能層は塗布あるいは蒸着、スパッタ、プラズマCVD、大気圧プラズマ処理等の方法で設けることができる。
このようにして得られた偏光板が、液晶セルの片面または両面に設けられ、これを用いて、本発明の液晶表示装置が得られる。
本発明の光学フィルムからなる偏光板用保護フィルムを用いることにより、薄膜化とともに、耐久性及び寸法安定性、光学的等方性に優れた偏光板を提供することができる。さらに、本発明の偏光板あるいは位相差フィルムを用いた液晶表示装置は、長期間に亘って安定した表示性能を維持することができる。
本発明の光学フィルムは反射防止用フィルムあるいは光学補償フィルムの基材としても使用できる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
実施例1
溶液流延製膜法により目標ドライ膜厚40μmの本発明のセルロースアセテートプロピオネートフィルムを製造するにあたり、まずドープを調製した。
(ドープ組成)
セルロースアセテートプロピオネート 100重量部
(アセチル基置換度1.9、プロピオニル基置換度0.8、
Mn=70000、Mw=220000、Mw/Mn=3.14)
トリフェニルフォスフェート 8重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2重量部
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製) 0.5重量部
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製) 0.5重量部
メチレンクロライド 300重量部
エタノール 60重量部
二酸化珪素微粒子 2重量部
(商品名:AEROSIL−R972V,1次粒径:16nm)
上記の材料を密閉したドープ溶解釜に投入して加熱し、撹拌しながら、完全に溶解した。なお、上記材料のうち、紫外線吸収剤、及び二酸化ケイ素微粒子は、紫外線吸収剤添加液の作製のために添加液溶解釜の方に投入した。
その後、溶解釜中のドープを送液ポンプの作動により主濾過器に導き、ドープを1次濾過する。なお、主濾過器では、ドープ液を日本精線株式会社製のファインメットNFで濾過した。
1次濾過後のドープは、一旦、ドープストック釜に貯える。ついで、送液ポンプの作動によりドープストック釜から1次濾過後のドープを、金属焼結フィルターをセットした濾過器に導き、濾過器6においてドープを2次濾過した。
一方、添加液溶解釜で作成した紫外線吸収剤添加液を送液ポンプの作動により濾過器に導き、濾過器9で紫外線吸収剤添加液を事前に濾過する。そして、上記2次濾過後のドープを、スタティックミキサーに導入するとともに、スタティックミキサーの手前において事前濾過後の紫外線吸収剤添加液を導入して、ドープに紫外線吸収剤添加液をインライン添加する。
紫外線吸収剤添加液を添加後のドープは、ベルト流延装置の流延ダイに導入し、溶液流延製膜法によりセルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製する。
すなわち、上記のようにして調整したセルロースアセテートプロピオネートのドープを、温度30℃でステンレスバンド支持体上に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100重量%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離ロールによって、剥離張力162N/mでステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離したセルロースアセテートプロピオネートのウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1650mm幅にスリットし、その後、テンターで幅方向に1.1倍に延伸しながら、135℃の乾燥温度で、乾燥させた。
その後、110℃、120℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1430mm幅にスリットした。
ついで、本発明の方法により、スリット後の搬送フィルム(F)の左右両端部のフィルム表面に、CO2レーザー光照射装置(MLZ9510、株式会社キーエンス社製)により、レーザー光出力:30Wの設定を100%として、この実施例1では、25%のレーザー光出力で、10.6μmのCO2レーザー光を照射して、波長高さ5μmの凹凸を有するエンボス部(E)を形成し、初期張力220N/m、終張力110N/mで内径6インチコアに巻き取り、セルロースアセテートプロピオネートフィルムを得た。
セルロースアセテートプロピオネートフィルムの3000m巻きを、連続して50本生産した時のフィルムのヒゲ状故障の本数、穴あき故障の本数、凹凸の高さ分布(%)を評価し、得られた結果を下記の表1に示した。なお、得られたフィルムの膜厚(μm)、使用したCO2レーザー光出力(%)、凹凸の設定高さ(μm)、並びにレーザー照射時の可塑剤等の飛散有無を、表1にあわせて示した。
ここで、フィルムのヒゲ状故障の本数の評価は、レーザー照射により熱することによってフィルムが部分的に溶けて毛羽立ち(ヒゲ状故障)が生じているか、どうかを評価し、ヒゲ状故障が生じているフィルムの巻き本数で表わした。
また、フィルムの穴あき故障の本数の評価は、レーザー照射により熱することによってフィルムに瞬間的に生じる穴あきの有無を評価し、穴あき故障が生じているフィルムの巻き本数で表わした。
さらに、フィルムのエンボス加工部分の凹凸の高さ分布(%)の評価は、つぎのようにして行なった。
すなわち、フィルム1巻き(1本)中、任意に長手(搬送)方向1mの間に10cm間隔でエンボス加工部分のフィルムの膜厚と未エンボス加工部のフィルム膜厚を測定し、エンボスの高さ(=エンボス加工部膜厚−未エンボス加工部膜厚)を10点、左右両端部併せて20点を測定し、上記セルロースアセテートプロピオネートフィルムの3000m巻きを、連続して合計50本生産した際の高さの平均値を、その標準偏差を算出した場合において、次式によって評価した。
(凹凸の標準偏差/凹凸高さ平均値)×100(%)
ここで、フィルムのエンボス加工部分の凹凸の高さ分布(%)が狭く、単分散であることが、貼り付き、馬の背、変形等の故障の懸念が低くなり、好ましい。
フィルムのエンボス加工部分の凹凸の高さ分布(%)の評価は、好ましくは、30%以下であり、より好ましくは20%以下であり、もっとも好ましいのは10%以下である。
実施例2〜4
上記実施例1の場合と同様にして、本発明によるセルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製するが、実施例1の場合と、フィルムの膜厚(μm)、使用するCO2レーザー光出力(%)、凹凸の設定高さ(μm)を種々変更して、セルロースアセテートプロピオネートフィルムを製造した。
このとき、上記のCO2レーザー光照射装置(MLZ9510、株式会社キーエンス社製)は、レーザー光の出力をフィルムの膜厚に応じて可変とすることで、フィルム端部のエンボス部(E)の凹凸の高さを容易に調整することが可能であり、CO2レーザー光の出力を容易に調整して、レーザー光を照射し、所望の高さを有する凹凸を具備するエンボス部(E)を形成することができた。
また特に、実施例4においては、CO2レーザー光の照射前に、フィルムのレーザー照射面に、フィルム含有量の20%相当量の可塑剤を、インクジェット方式にてオーバーコートして実施した。
比較例1と2
比較のために、実施例1の場合と同様に実施するが、スリット後の搬送フィルム(F)の左右両端部のフィルム表面に、従来のいわゆるホットプレス方式(275℃、押圧可変方式)により、凹凸を有するエンボス部を形成した。
比較例1と2において、セルロースアセテートプロピオネートフィルムの3000m巻きを、連続して50本生産した時のフィルムのヒゲ状故障の本数、穴あき故障の本数、凹凸の高さ分布(%)を評価し、得られた結果を下記の表1にあわせて示した。また、得られたフィルムの膜厚(μm)、および凹凸の設定高さ(μm)を、表1にあわせて示した。
なお、フィルムの膜厚(μm)および凹凸の設定高さ(μm)は、比較例1が実施例1に対応し、比較例2が実施例3に対応するものである。
実施例5
透明樹脂として、セルロースアセテートプロピオネートの代わりにノルボルネン系樹脂を使用した以外は、上記実施例2とほぼ同様にして、ノルボルネン系樹脂フィルムを調製した。
(微粒子分散液の調製)
エタノール 27重量部
微粒子I/二酸化ケイ素微粒子 3重量部
(商品名:AEROSIL−R972V、1次粒径:16nm)
上記の材料を所定の容器に入れて混合し、回転数500rpmにて30分攪拌後、マントンゴーリン型高圧分散機にて、250kgf/cm2の圧力で分散した後、分散液を、メチレンクロライド27重量部で希釈して、微粒子分散液を調製した。
(ノルボルネン系樹脂溶液の調製)
ノルボルネン樹脂(アートンG、JSR社製) 80重量部
トリフェニルホスフェート 8重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2重量部
メチレンクロライド 250重量部
エタノール 10重量部
溶解釜に上記材料を投入し、70℃まで加熱し、撹拌しながら、ノルボルネン系樹脂を完全に溶解し、ノルボルネン系樹脂溶液を得た。なお、溶解に要した時間は4時間であった。ノルボルネン系樹脂溶液は、ついで溶解釜の底部に接続された流送管から排出して、送液ポンプの作動により移送し、濾過器において、絶対濾過精度0.005mmの濾紙を用い、濾過流量300l/m2・時、濾圧1.0×106Paで濾過を行なった。
(添加剤溶液の調製)
上記ノルボルネン系樹脂溶液 75重量部
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製) 0.5重量部
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製) 0.5重量部
上記微粒子分散液 60重量部
メチレンクロライド 290重量部
溶解釜において、メチレンクロライドを撹拌しながら、濾過後の上記ノルボルネン系樹脂溶液の一部を添加した後、さらに、紫外線吸収剤、上記微粒子分散液の順で添加した。添加後に、40℃まで加温して30分間溶解して、上記添加剤溶液を調製した。ついで、この添加剤溶液を、溶解釜の底部に接続された流送管から排出し、送液ポンプの作動により移送して、濾過器において公称濾過精度20μmのフィルターで濾過を行なった。
(ノルボルネン系樹脂フィルム用ドープの調製)
上記濾過器において、絶対濾過精度0.005mmの濾紙を用い、濾過流量300l/m2・時、濾圧1.0×106Paで濾過を行ないかつ流送管により流送される濾過後の上記ノルボルネン系樹脂溶液の主要部(残部)に、流送管からの同じく濾過後の上記添加剤溶液をインライン添加して、スタティックミキサーで混合することにより、ノルボルネン系樹脂フィルム用のドープを調製した。
(ノルボルネン系樹脂フィルム試料の作製)
上記のノルボルネン系樹脂フィルム用のドープを、溶液流延製膜装置(図1)を用い、上記実施例2の場合と同様にして、膜厚80μmのノルボルネン系樹脂フィルムを作製した。
このとき、上記のCO2レーザー光照射装置(MLZ9510、株式会社キーエンス社製)は、レーザー光の出力をフィルムの膜厚に応じて可変とすることで、フィルム端部のエンボス部(E)の凹凸の高さを容易に調整することが可能であり、使用するCO2レーザー光出力(%)、凹凸の設定高さ(μm)を、上記実施例2の場合と同様に調整して、レーザー光を照射し、10μmの高さを有する凹凸を具備するエンボス部(E)を形成することができた。
実施例6
(セルロースアセテートフィルムの製造)
セルロースアセテート(イーストマンケミカル社製、CA−398−3)を用いて80μmのフィルムを、溶融製膜法により製造し、セルロースエステルフィルムを得た。
なお、熱安定剤としてエポキシ化タル油0.6重量%、パラ−tert−ブチルフェノール0.4重量%、ネオペンチルフェニルホスフィット0.07重量%、ストロンチウムナフトエート0.02重量%及び二酸化珪素部粒子(アエロジルR972V)0.05重量%を添加した。
このとき、フィルム巻取り装置の手前に設置した上記のCO2レーザー光照射装置(MLZ9510、株式会社キーエンス社製)は、レーザー光の出力をフィルムの膜厚に応じて可変とすることで、フィルム端部のエンボス部(E)の凹凸の高さを容易に調整することが可能であり、使用するCO2レーザー光出力(%)、凹凸の設定高さ(μm)を、上記実施例2の場合と同様に調整して、レーザー光を照射し、10μmの高さを有する凹凸を具備するエンボス部(E)を形成することができた。
なお、フィルム幅は1430mm、巻き取り長は3000mであり、また製膜速度は、25m/分とした。
実施例2〜6において、各フィルムの3000m巻きを、連続して50本生産した時のフィルムのヒゲ状故障の本数、穴あき故障の本数、凹凸の高さ分布(%)を評価し、得られた結果を下記の表1にあわせて示した。また、得られたフィルムの膜厚(μm)、使用したCO
2レーザー光出力(%)、凹凸の設定高さ(μm)、並びにレーザー照射時の可塑剤等の飛散有無を、表1にあわせて示した。
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜6によれば、フィルムの膜厚に応じて、エンボス部(E)の凹凸の高さを変化させる場合においても、高さ調整のために時間を要することなく、フィルムの生産性に優れており、しかもフィルム表面への微小なシワ・キズ等の故障(ヒゲ状故障、穴あき故障)の発生が皆無であり、フィルムの表面性を飛躍的に向上し、光学特性に優れたフィルムを製造することができた。
これに対し、比較例1のフィルムでは、フィルム表面への微小なシワ・キズ等の故障(ヒゲ状故障)の発生が多く、偏光板用保護フィルム等の光学フィルムとしての使用に問題があった。