つぎに、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明による光学フィルムの製造方法は、レーザー光の波長を吸収する化合物を含有する光学フィルムに、レーザー光を照射して、光学フィルムを加工する工程を有することを特徴とするものである。
この本発明の光学フィルムの製造方法を用いることにより、例えば、レーザー加工工程(レーザー光を照射して光学フィルムを加工する工程、以下単にレーザー加工と称する場合もある。)が、フィルムの幅方向端部を切断する工程の場合、フィルムがレーザー光の波長を吸収する化合物を含有しているので、レーザー光の吸収効率が向上し、過剰なレーザー強度を不要とし切断部溶融、切断部外観不良などのフィルムへのダメージが少なく、またレーザー強度が多少変動しても、切断部の形状が乱れることがない。また、フィルムの幅方向両端部に凹凸を形成する工程を、従来の凹凸を形成したエンボスローラで加工する工程の替わりに、レーザー照射により加工する工程としたところ、所定の凹凸形状を良好に形成することができた。また、フィルムの膜厚仕様が変わっても、従来のようにフィルム膜厚に対応したエンボスローラに取り替える必要が無く、過剰なレーザー強度を不要とし凹凸部分の損傷などのフィルムへのダメージが少なく、またレーザー光の強度を調節することにより、容易に適切なエンボス加工を行うことができるので、フィルムの生産性に優れている。また、レーザー光の照射位置を可変として、フィルム幅に応じてエンボス部を所定箇所に形成するのが好ましい。このように、レーザー光の照射位置を可変とすることで、フィルムの幅手方向の端部あるいは中央部のいずれにも、エンボス部の凹凸を容易に形成することが可能となり、これまでのエンボス加工時に、押圧用のエンボスロールをバックロールに接圧させたことにより生じたフィルム表面の微小なシワ・キズ等の故障が皆無となって、フィルムの表面性を飛躍的に向上し得るものである。
また、本発明に係るレーザー加工工程は、上記のように切断加工やエンボス加工に限定するものではなく、フィルムの製造工程中で行われるレーザー加工であれば良く、例えば、搬送性を上げるためにフィルム端部の表面を粗面化する加工や溝、凹凸をもうける加工などのレーザー加工であっても良い。
また、本発明において、レーザー加工工程におけるレーザー光が遠赤外線領域の光である場合は、フィルムに含有している化合物は、4〜25μmの波長領域の光を吸収する化合物である。例えば、レーザー光がCO2レーザーである場合は、レーザー光の波長が9.3〜10.6μmであるので、この範囲の波長を吸収する化合物が好ましい。
また、本発明において、レーザー加工工程におけるレーザー光が紫外線領域のUV光である場合は、フィルムに含有、又は、フィルム表面に塗布されている化合物は、0.2〜0.4μmの波長領域の光を吸収する化合物である。例えば、UVレーザーとしては、KrFエキシマレーザー(波長0.248μm)、YAG−FHGレーザー(波長0.266μm)、YAG−THGレーザー(波長0.355μm)などがあり、上記化合物は、それぞれの波長を吸収する化合物が好ましい。
また、本発明において、レーザー加工工程の前に、フィルムの表面のレーザー光を照射する部分に、レーザー光の波長を吸収する化合物を含有させるのが好ましい。
含有させる方法としては塗布、噴射などがあるが、それ以外の方法であってもよく、含有させる手段が特に限定されるものではない。
レーザー照射部分に前記化合物を、例えば塗布することにより、化合物の使用量を少なくすることができると共に、レーザー照射部分以外の光学フィルムの領域の物性(色変化や透明性など)に、前記化合物による影響を与えることがない。フィルムの表面に化合物を塗布する方法は、特に限定するものではなく、必要な膜厚の化合物を含む層を形成できれば良く、インクジェット方式やローラ塗布方式などを用いることができる。
ところで、レーザー光とは、「誘導放出による光の増幅」(Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)という意味で、発振波長によって、上記CO2レーザー光やUVレーザー光に分類される。
次に本発明の光学フィルムについて詳細に説明する。
本発明による光学フィルムは、フィルム基材(高分子化合物)が、セルロースエステル系樹脂、ノルボルネン樹脂、シクロオレフィン系樹脂、及びオレフィン系樹脂よりなる群の中から選ばれた樹脂であるのが、好ましい。
ここで、セルロースエステルフィルムの主原料であるセルロースエステルとしては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。セルローストリアセテートの場合は、特に重合度250〜400、結合酢酸量が54〜62.5%のセルローストリアセテートが好ましく、結合酢酸量が58〜62.5%のセルローストリアセテートは、ベース強度が強いので、より好ましい。セルローストリアセテートは、綿花リンターから合成されたセルローストリアセテート及び木材パルプから合成されたセルローストリアセテートのどちらかを、単独あるいは混合して用いることができる。
溶液流延製膜法による場合、駆動回転ステンレス鋼製エンドレスベルト(または駆動回転ステンレス鋼製ドラム)よりなる支持体上からの剥離性が良い綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートを多く使用した方が、生産性効率が高く好ましい。綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートの比率が60質量%以上で、剥離性の効果が顕著になるため、60質量%以上が好ましく、より好ましくは85質量%以上、さらには、単独で使用することが最も好ましい。
溶液流延製膜法により本発明の光学フィルムとしてセルロースエステルフィルムを製造する場合、セルロースエステルの溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノールなどの低級アルコール類、シクロヘキサンジオキサン類、メチレンクロライドのような低級脂肪族炭化水素塩化物類などを用いることができる。
溶剤比率としては、例えばメチレンクロライド70〜95質量%、その他の溶剤は30〜5質量%が好ましい。またセルロースエステルの濃度は10〜50質量%が好ましい。溶剤を添加しての加熱温度は、使用溶剤の沸点以上で、かつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましく例えば60℃以上、80〜110℃の範囲に設定するのが好適である。また、圧力は設定温度において、溶剤が沸騰しないように定められる。
溶解後は冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器などで冷却し、これを製膜に供する。
本発明による光学フィルムにおいて、ノルボルネン系樹脂フィルムの主原料であるノルボルネン系樹脂は、公知の樹脂であって、例えば特開平3−14882号公報、及び特開平3−122137号公報などに記載されている。
熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを構成するモノマーとしては、例えば、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネン等が挙げられる。
熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂は、例えば、(A)ノルボルネン系モノマーの開環重合体若しくは開環共重合体を、必要に応じてマレイン酸付加、シクロペンタジエン付加の如き変性を行った後に、水素添加した樹脂、(B)ノルボルネン系モノマーを付加重合させた樹脂、(C)ノルボルネン系モノマーとエチレンやα−オレフィンなどのオレフィン系モノマーと付加重合させた樹脂、(D)ノルボルネン系モノマーとシクロペンテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエンなどの環状オレフィン系モノマーと付加重合させた樹脂、並びにこれらの樹脂の変性物等が挙げられ、これらの重合は、常法により行うことができる。
本発明の光学フィルムには、光学フィルムの製造工程において、搬送するフィルムに、遠赤外線領域のレーザー光を照射するレーザー加工工程を有する場合、4〜25μmの波長領域の光を吸収する化合物が含有されている。4〜25μmの波長領域の光を吸収する化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、周期律表1A族、2A族に属する金属を有する無機金属酸化物、周期律表1A族、2A族、3A族に属する金属を少なくとも2種有する無機金属複合酸化物、金属を少なくとも3種有する無機金属複合酸化物、金属を少なくとも1種有する水酸化化合物、硫酸塩化合物、リン酸塩化合物、ハイドロタルサイト類化合物、金属を少なくとも2種有する金属複合塩化合物が好ましく、例えば、特開2004−344074号公報に記載されている、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、燐酸リチウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸マグネシウム、マイカ、ゼオライト、ハイドロタルサイト類化合物、リチウム・アルミニウム複合水酸化物、アルミニウム・リチウム・マグネシウム複合炭酸塩化合物、複数種アニオンを含有する金属複合水酸化物塩等が挙げられる。また、特開2001−172608号公報、特開2008−31375号公報に遠赤外線吸収剤として記載された化合物も使用可能である。
これらの化合物は光学フィルムに0.001質量%以上10質量%以下で含有されることが好ましく、0.05質量%以上5質量%以下で含有されることが更に好ましく、0.01質量%以上1質量%以下で含有されることが特に好ましい。0.001質量%以下の含有量では本発明の効果が見られず、10質量%以上の含有量ではフィルムの透明性が損なわれるために好ましくない。
またこれらの化合物は有機溶媒に分散し、特に光学フィルムを構成する樹脂を溶解するのに用いられる有機溶媒に分散し、これを光学フィルムを構成する樹脂の溶液に添加することで含有することができる。これを上述の通り製膜することでフィルムにこれらの化合物を含有させることができる。
また、本発明の光学フィルムには、光学フィルムの製造工程において、搬送するフィルムに、紫外線領域のレーザー光を照射するレーザー加工工程を有する場合、0.2〜0.4μmの波長領域の光を吸収する化合物が含有される。本発明に用いうる0.2〜0.4μmの波長領域の光を吸収する化合物、いわゆる紫外線吸収剤(以下この表現を使うこともある。)は単一化合物であっても混合物であってもよく、混合物としては構造異性体群から構成されるものを好ましく用いることができる。
本発明に用いうる紫外線吸収剤は0.2〜0.4μmの波長領域の光を吸収する化合物であればいかなる構造をとることもできるが、紫外線吸収剤自体の光堅牢性の点から下記一般式(1)表される2−(2′−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。
上記式中、R1、R2及びR3はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニル基、ニトロ基、又は水酸基を表わす。
ハロゲン原子は、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、特に塩素原子が好ましい。
アルキル基、アルコキシ基としては、炭素数1〜30のものが好ましく、又アルケニル基としては、炭素数2〜30のものが好ましく、これらの基は直鎖でも分岐でもよい。これらアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基はさらに置換基を有していても良い。アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、n−ブチル基、n−アミル基、sec−アミル基、t−アミル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、エイコシル基、α,α−ジメチルベンジル基、オクチルオキシカルボニルエチル基、メトキシ基、エトキシ基、オクチルオキシ基、アリル基等が挙げられる。アリールオキシ基、アリール基としては、例えばフェニル基、フェニルオキシ基が特に好ましく、置換基を有していてもよい。具体的には、例えばフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、2,4−ジ−t−アミルフェニル基等が挙げられる。
R1及びR2で表される基のうち、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、及びアリール基が好ましく、特に水素原子、アルキル基、アルコキシ基が好ましい。
R3で表される基のうち、特に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基が好ましいが、さらに水素原子、アルキル基、アルコキシ基が好ましい。
R1、R2及びR3で表される基のうち、常温で液体となるためには、少なくとも1つはアルキル基であることが好ましく、さらに好ましくは少なくとも2つはアルキル基である。
アルキル基は如何なるものをとることもできるが、少なくとも1つは第3級アルキル基、又は第2級アルキル基であることが好ましい。特にR1、R2で表されるアルキル基の少なくとも一方が第3級アルキル基、又は第2級アルキル基であることが好ましい。
以下に、本発明に好ましく用いられる液状の紫外線吸収剤の代表的な具体例を示す。
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の使用量は、フィルムに含有させる場合、紫外線の吸収効果、透明性の観点からセルロースエステルに対する含有量が0.1〜5質量%、好ましくは0.3〜3質量%、より好ましくは0.5〜2質量%である。
また、フィルムに含有させずに、レーザー光の照射する箇所に塗布する場合は、化合物を溶液に分散させて、スプレー塗布装置、噴射装置やローラ塗布装置などで塗布することができる。
本発明の光学フィルムには、種々の添加剤を配合することができる。
本発明では、湿熱下での寸法安定性向上のために、いわゆる可塑剤を配合することが好ましい。可塑剤に湿熱下での寸法安定性改良効果があることはこれまで知られていなかった。可塑剤としては、特に相溶性に優れたものが好ましく、例えばリン酸エステルやカルボン酸エステルが好ましい。リン酸エステルとしては、例えばトリフェニルホスフェイト、トリクレジルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート等を挙げることができる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステル等、フタル酸エステルとしては、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジオクチルフタレート及びジエチルヘキシルフタレート等、またクエン酸エステルとしてはクエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチルを挙げることができる。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバチン酸ジブチル、トリアセチン、等も挙げられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートもこの目的で好ましく用いられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートのアルキルは炭素原子数1〜8のアルキル基である。アルキルフタリルアルキルグリコレートとしてはメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、プロピルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることができ、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく、特にエチルフタリルエチルグリコレートが好ましく用いられる。分子量の大きい可塑剤は、押し出し成形の際の揮発が抑制でき好ましい。これらの例としては、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどのグリコールと二塩基酸とからなる脂肪族ポリエステル類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのオキシカルボン酸からなる脂肪族ポリエステル類、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリバレロラクトンなどのラクトンからなる脂肪族ポリエステル類、ポリビニルピロリドンなどのビニルポリマー類などが挙げられる。上記可塑剤は、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
上述した可塑剤の含有量は、セルロースエステルに対して1〜30質量%含有させることが好ましい。可塑剤をこの範囲含有させることでセルロースエステルフィルムの湿熱下での寸法安定性を向上することができる。
セルロースエステルのアセチル基の置換度が低いと、耐熱性が低下する場合がある。この場合、酸化防止剤を配合することが有効である。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等が挙げられる。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
本発明では、フィルムの滑り性を付与するために、微粒子を添加してもよい。本発明で用いられる微粒子としては、溶融時の耐熱性があれば無機微粒子または有機微粒子どちらでもよい。
本発明では樹脂との屈折率差小さくするため、有機微粒子が好ましく用いられる。有機微粒子としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル系樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂が好ましく用いられる。
上記記載のシリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン株式会社製)等の商品名を有する市販品が使用できる。また架橋PMMA粒子も好ましく用いられ、例えば、MX−150、同300、同500、同1000、同1500H(綜研化学株式会社製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
また、本発明では、樹脂との屈折率差を0.04以下の微粒子を用いることによりフィルムのヘイズが低く抑えられ透明性が高いフィルムが得られるため好ましい。そのような微粒子としては、屈折率1.49のエポスターMA、屈折率1.52のエポスターGP(以上、株式会社日本触媒社製)、屈折率が任意に調整可能な積水化成品工業製テクポリマーのMSXシリーズ等と樹脂との組み合わせにより達成できる。
一方、無機微粒子としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、さらに好ましくは、ケイ素を含む無機微粒子や酸化ジルコニウムである。中でも、セルロースエステル積層フィルムの濁度を低減できるので、二酸化珪素が特に好ましく用いられる。二酸化珪素の具体例としては、アエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル株式会社製)等の商品名を有する市販品が好ましく使用できる。
本発明に係る酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル株式会社製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
本発明では、フィルム中での微粒子の粒径を円相当径で0.05〜5.0μmにすることでフィルム同士の滑り性を持たせることができる。本発明で用いる微粒子は単分散粒子を用いる場合は、粉体での微粒子の平均粒径がフィルム中での平均粒径となるため、添加する微粒子の平均粒径の選択をすることで上記範囲の粒径が達成できる。粒径が0.05μm未満の場合はフィルムからの突起高さが低いためフィルム同士がくっつき変形を生じるため好ましくない。5.0μmを越えると、樹脂と微粒子の屈折率差が小さくても、ヘイズの上昇を抑えられず、フィルムの透明性が損ねられるため液晶用部材として好ましくない。
フィルム中での微粒子の含有量は0.05〜0.5質量%がフィルム同士の滑り性を持たせるために好ましい。含有量が0.05質量%未満の場合はフィルムからの突起数が少ないためフィルム同士がくっつき変形を生じるため好ましくない。0.5質量%を越えると樹脂と微粒子との屈折率差が小さくてもヘイズの上昇を抑えられず、フィルムの透明性が損ねられるため液晶用部材として好ましくない。
本発明においては、溶液流延製膜法または溶融流延製膜法によりシートを成形する。いずれも公知の方法で製膜することができる。
図1は、溶液流延製膜法による本発明の光学フィルムの製造方法を実施する装置の概略断面図である。なお、本発明の実施にあたっては、図1のプロセスに限定されるものではない。
同図において、例えばセルロースエステルフィルムの製造装置は、溶液流延製膜法によるものであり、セルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを支持体1上に流延する流延ダイ2と、流延ダイ2によって支持体1上に形成されたウェブ10を、支持体1から剥離させる剥離ロール(剥離手段)3と、剥離ロール3によって支持体1から剥離させられたウェブ10を、搬送しながら乾燥させる乾燥手段と、乾燥後のウェブ10(フィルムFとも呼ぶ。)を巻き取る巻取り機(巻取り手段)15とを具備している。
図1において、まず、セルロースエステル系樹脂を、良溶媒及び貧溶媒の混合溶媒に溶解し、これに上記の4〜25μmの波長領域の光を吸収する化合物や0.2〜0.4μmの波長領域の光を吸収する化合物、可塑剤等の添加剤を添加して樹脂溶液(ドープ)を調製する。ドープは、例えば加圧型定量ギヤポンプを通して流延ダイ2に送液され、流延位置において、ステンレス鋼製エンドレスベルトの支持体1上に流延ダイ2からドープを流延する。製膜時のベルト温度は、一般的な温度範囲0℃から溶剤の沸点未満の温度で、流延することができ、さらには5℃〜溶剤沸点−5℃の範囲が、より好ましい。このとき、周囲の雰囲気温度は露点以上に制御する必要がある。
流延ダイ2によるドープの流延には、流延されたドープ膜(ウェブ)をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、あるいは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調製でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。
支持体1上へドープを流延する際は、原料樹脂の溶解に用いた溶剤の沸点未満、混合溶剤では最も沸点の低い溶剤の沸点未満の温度に制御し、支持体1の温度は、一般的な温度範囲0℃から溶剤の沸点未満の温度で、流延することができるが、5〜30℃の支持体1上に流延することがさらに好ましい。
支持体1として回転駆動エンドレスベルトを具備する図示の製膜装置では、該ベルト支持体1は、一対のドラム及びその中間に配置されかつエンドレスベルト支持体1の上部移行部及び下部移行部をそれぞれ裏側より支えている複数のロールより構成される。また、回転駆動エンドレスベルト支持体1の両端巻回部のドラムの一方、もしくは両方に、ベルト支持体1に張力を付与する駆動装置が設けられ、これによってベルト支持体1は張力を掛けられて、張った状態で使用される。
そして、ドープ粘度が1〜200ポイズになるように調整されたドープを、流延ダイ2から支持体1上にほぼ均一な膜厚になるように流延し、流延膜中の残留溶媒量が、対固形分質量200%以上では、流延膜温度が溶剤沸点以下に、また、残留溶媒量が、対固形分質量100〜200%の範囲では、溶剤沸点+10℃以下に、残留溶媒量100%以下〜剥離までは、溶剤沸点+20℃以下の範囲になるように、乾燥風により流延膜(ウェブ)を乾燥させる。
ドープを流延ダイ2から鏡面処理された表面を有するステンレス鋼製エンドレスベルト支持体1上に流延してウェブ(ドープ膜)10を得、ウェブ10がエンドレスベルト支持体1の回転によってほぼ3/4周移動したところで、剥離ロール3により剥離する。
支持体1上は、ウェブ10が支持体1から剥離可能な膜強度となるまで乾燥固化させるため、ウェブ10中の残留溶媒量が150質量%以下まで乾燥させるのが好ましく、80〜120質量%がより好ましい。
支持体1からウェブ10を剥離するときのウェブ10の温度は、0〜30℃が好ましい。また、ウェブ10は、支持体1から剥離直後に、支持体1密着面側からの溶媒触媒で温度が一旦急速に下がり、雰囲気中の水蒸気や溶剤蒸気などの揮発成分がコンデンスしやすいため、剥離時のウェブ温度は5〜30℃がさらに好ましい。
ここで、残留溶媒量は、下記の式で表わせる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、Nは質量Mのものを110℃で3時間乾燥させたときの質量である。
支持体1とウェブ10を剥離する際の剥離張力は、通常20〜25kg/mで剥離が行なわれるが、剥離できる最低張力〜17kg/mで剥離することが好ましい。さらに好ましくは、最低張力〜14kg/mで剥離することである。
ついで、ウェブ10をテンター乾燥装置4に導入する。そこで、ウェブ10の両側縁部をクリップで把持して延伸するとともに、ウェブ10を乾燥する。テンター乾燥装置4内においてウェブ10は、テンター乾燥装置4の底の前寄り部分から吹き込まれ、テンター乾燥装置4の天井の後寄り部分から排出せられる温風によって乾燥される。
テンター乾燥装置4では、温風を用いて乾燥するものであるが、フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、上記のような熱風、あるいはまた赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行う。簡便さの点で熱風で行うのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性を良くするため、さらに好ましい。
つぎに、延伸後のウェブ10は、ロール搬送乾燥装置5に導入する。ロール搬送乾燥装置5内では、50〜1000本の搬送ロール7によってウェブ10が蛇行せられ、その間にウェブ10は、例えばロール搬送乾燥装置5の底の前寄り部分から吹込まれ、ロール搬送乾燥装置5の天井の後寄り部分から排出せられる温風によって乾燥される。
ついで、本発明の方法により、ロール搬送乾燥装置5によって乾燥されたフィルムの幅手方向の両端部を、切断工程としてレーザー光の照射装置12により製品となる幅にスリットして裁ち落とす。ここで、切断されるウェブ10の幅手方向の両端部の幅は、50〜100mmであるのが、好ましい。
ついで、図2(a)、(b)に示すように本発明の方法により、スリット後のフィルムFの左右両端部のフィルム表面に、レーザー光の照射装置13により、エンボス加工工程として高さhの凹凸を有するエンボス部を形成する。なお、14は搬送ロールである。
本発明の方法により、フィルムFに4〜25μmの波長領域の光を吸収する化合物が含有される場合、上記の切断加工、エンボス加工は、フィルム(F)の左右両端部のフィルム表面に、CO2レーザー光照射装置により加工する。切断加工する場合は、例えばレーザー光出力:50〜800Wで、9.3〜10.6μmのCO2レーザー光を照射して、切断することができる。また、エンボス加工する場合は、例えばレーザー光出力:7.5〜30Wで、9.3〜10.6μmのCO2レーザー光を照射して、波長高さ3〜20μmの凹凸を有するエンボス部Eを形成することができる。レーザー光の照射時間、照射強度、スポット径などは、適宜、所望の凹凸を得るのに調整でき、上記値に限定するものではない。
本発明の方法によれば、レーザー光の照射により、凹凸を有するエンボス部Eを形成しているから、フィルムFの膜厚に応じて、エンボス部Eの凹凸の高さを変化させる場合においても、高さ調整のために時間を要することなく、フィルムFの生産性に優れている。しかもエンボス部を形成することにより、巻き取り時に発生しやすいフィルムF表面への微小なシワ・キズ等の故障の発生が皆無となり、フィルムFの表面性を飛躍的に向上し得る。
本発明においては、フィルムFの膜厚に応じてレーザー光の照射出力を調整し、高さ3〜20μmの凹凸を有するエンボス部Eを形成するのが好ましい。
また、本発明の光学フィルムの製造方法においては、レーザー光の照射位置を可変として、フィルムF幅に応じてエンボス部Eを所定箇所に形成するのが好ましい。このように、レーザー光の照射位置を可変とすることで、フィルムFの幅が異なる仕様のフィルムであっても、容易に位置調整をすることができる。
また、本発明において使用するレーザー光としては、フィルムFに0.2〜0.4μmの波長領域の光を吸収する化合物が含有される場合には、UVレーザーを用いて、レーザー加工することが好ましい。
本発明の方法により、フィルムFの左右両端部の表面に、レーザー光の照射により、凹凸を有するエンボス部Eを形成した後は、フィルムFを巻取り機15によって巻き取る。
本発明の光学フィルムの製造に係わる巻取り機15は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
なお、上記の流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。空気雰囲気下の場合、乾燥雰囲気を、蒸発溶媒の爆発限界濃度を考慮して実施することは、勿論のことである。
光学フィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、仕上がりのフィルムとして、本発明において使用される膜厚範囲は30〜200μmで、最近の薄手傾向にとっては40〜120μmの範囲が好ましく、特に40〜100μmの範囲が好ましい。
フィルムの膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、流延ダイ2の口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、流延用支持体1の速度等をコントロールするのがよい。
また、本発明による光学フィルムの製造方法においては、溶融流延製膜法を用いることができる。
ここで、溶融流延製膜法としては、図示は省略したが、Tダイを用いた方法やインフレーション法などの溶融押し出し法、カレンダー法、熱プレス法、射出成形法などがある。中でも、厚さムラが小さく、50〜500μm程度の厚さに加工しやすく、かつ、リタデーションの絶対値およびそのバラツキを小さくできるTダイを用いた溶融押し出し法が好ましい。
溶融流延製膜法の条件は、他の熱可塑性樹脂に用いられる条件と同様にして成形できる。例えば、乾燥したセルロースエステル系樹脂、及びノルボルネン樹脂を1軸や2軸タイプの押し出し機を用いて、押し出し温度200〜300℃程度で溶融し、リーフディスクタイプのフィルターなどでろ過し異物を除去した後、Tダイからシート状に流延し、冷却ドラム上で固化させる。
供給ホッパーから押し出し機へ導入する際は、減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。冷却ドラムの温度は、セルロースエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)以下が好ましい。冷却ドラムへ樹脂を密着させるために、静電印加により密着させる方法、風圧により密着させる方法、全幅あるいは端部をニップして密着させる方法、減圧で密着させる方法などを用いることが好ましい。また、ダイライン等の表面の欠陥を小さくするためには、押し出し機からダイまでの配管には滞留部が極力少なくなるような構造にすることが好ましい。ダイの内部やリップにキズ等が極力無いものを用いることが好ましい。ダイ周辺に樹脂から揮発成分が析出しダイラインの原因となる場合があるので、揮発成分を含んだ雰囲気は吸引することが好ましい。また、静電印加等の装置にも析出する場合があるので、交流を印加したり、他の加熱手段で析出を防止することが好ましい。
本発明に係る4〜25μmの波長領域の光を吸収する化合物や0.2〜0.4μmの波長領域の光を吸収する化合物、酸化防止剤、可塑剤などの添加剤は、あらかじめ樹脂と混合しておいてもよいし、押し出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
シートの厚さは特に制限はなく、延伸後に所望の厚さになるように設定すればよく、50〜500μmが好ましい。もちろん厚さムラは小さいほど好ましく、全面において±5%以内、好ましくは±3%以内、より好ましくは±1%以内である。
このような溶融流延製膜法で成形されたセルロースエステル系樹脂シートは、溶液流延製膜法で成形されたセルロースエステル系樹脂シートと異なり、厚み方向リタデーション(Rt)が小さいとの特徴があり、このようなセルロースエステル系樹脂シートを延伸することにより面内方向リタデーション(Ro)を発現し易く、延伸倍率を大きくする必要がないので、白濁のない透明性に優れたセルロースエステル系樹脂フィルムが得られるのである。
ついで、得られたシートを一軸方向に延伸する。延伸により分子が配向される。延伸する方法は、特に制限はないが、公知のピンテンターやクリップ式のテンターなどを好ましく用いることができる。延伸方向は長さ方向でも幅手方向でも任意の方向(斜め方向)でも可能であるが、本発明では延伸方向を幅手方向とすることで偏光フィルムとの積層がロール形態でできるので好ましい。幅手方向に延伸することでセルロースエステル系樹脂フィルムの遅相軸は幅手方向になる。一方、偏光フィルムの透過軸も通常幅手方向である。偏光フィルムの透過軸とセルロースエステル系樹脂フィルムの遅相軸とが平行になるように積層した偏光板を液晶表示装置に組み込むことで、良好な視野角が得られるのである。
延伸条件は、所望のリタデーション特性が得られるように温度、倍率を選ぶことができる。通常、延伸倍率は1.1〜2.0倍、好ましくは1.2〜1.5倍であり、延伸温度は、通常、シートを構成する樹脂のTg〜Tg+50℃、好ましくはTg〜Tg+40℃の温度範囲で行なわれる。延伸倍率が小さすぎると所望のリタデーションが得られない場合があり、大きすぎると破断してしまう場合がある。延伸温度が低すぎると、破断し、高すぎると、所望のリタデーションが得られない場合がある。
上記の方法で作製した光学フィルムのリタデーションを合目的の値に修正する場合、フィルムを長さ方向や幅手方向に延伸または収縮させてもよい。長さ方向に収縮するには、例えば、幅延伸を一時クリップアウトさせて長さ方向に弛緩させる、または横延伸機の隣り合うクリップの間隔を徐々に狭くすることによりフィルムを収縮させるという方法がある。後者の方法は一般の同時二軸延伸機を用いて、縦方向の隣り合うクリップの間隔を、例えばパンタグラフ方式やリニアドライブ方式でクリップ部分を駆動して滑らかに徐々に狭くする方法によって行うことができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は、通常、フィルムが変形しており、製品として使用できないので、切除されて、原料として再利用される。
ついで、本発明の方法により、延伸後の搬送フィルムの左右両端部の切断加工およびエンボス加工として、フィルム表面に、前述のCO2レーザー光照射装置13やUVレーザー光照射装置を用いて加工する。加工後は、巻き取り装置により巻き取り、ロール状の光学フィルムとする。
本発明の方法によって製造される光学フィルムは、液晶表示用部材、詳しくは偏光板用保護フィルムに用いられるのが好ましい。特に、透湿度と寸法安定性に対して共に厳しい要求のある偏光板用保護フィルムにおいて、本発明の光学フィルムは好ましく用いられる。
偏光板に用いる偏光子は、従来から使用されている、例えば、ポリビニルアルコールフィルムの如きの延伸配向可能なフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して縦延伸したものである。偏光子自身では、十分な強度、耐久性がないので、少なくとも偏光子の片側に本発明の光学フィルムを配置して用いることができる。好ましくは、その両面に保護フィルムとして本発明の光学フィルムを接着して偏光板としている。
偏光板は、上記偏光子に、本発明の光学フィルムを位相差フィルムとして貼り合わせて作製してもよいし、また本発明の光学フィルムを位相差フィルムおよび保護フィルムも兼ねて、直接偏光子と貼り合わせて作製してもよい。貼り合わせる方法は、特に限定はないが、水溶性ポリマーの水溶液からなる接着剤により行うことができる。この水溶性ポリマー接着剤は完全鹸化型のポリビニルアルコール水溶液が好ましく用いられる。さらに、若干前述したが、長手方向に延伸し、二色性染料処理した長尺の偏光フィルムと長尺の本発明の位相差フィルムとを貼り合わせることによって長尺の偏光板を得ることができる。偏光板はその片面または両面に感圧性接着剤層(例えば、アクリル系感圧性接着剤層など)を介して剥離性シートを積層した貼着型のもの(剥離性シートを剥すことにより、液晶セルなどに容易に貼着することができる)としてもよい。
このようにして得られた偏光板は、種々の表示装置に使用できる。特に電圧無印加時に液晶性分子が実質的に垂直配向しているVAモードや、電圧無印加時に液晶性分子が実質的に水平かつねじれ配向しているTNモードの液晶セルを用いた液晶表示装置が好ましい。
また、本発明による光学フィルムのうち、4〜25μmの波長領域の光を吸収する化合物を含有する光学フィルムは、該光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いた偏光板の偏光子の長期使用時の性能劣化を防止するという効果も奏し、よって、該偏光板を用いた液晶表示装置の視認性の劣化を防止できるという効果もある。これは、偏光子の劣化要因として、4〜25μmの波長領域の光による影響が大きいことが考えられる。さらに、4〜25μmの波長領域の光を吸収する化合物の他に、0.2〜0.4μmの波長領域の光を吸収する化合物を含むと、より偏光子の長期使用時の性能劣化を防止し、液晶表示装置の視認性の劣化を防止できることも判った。
偏光板は、一般的な方法で作製することができる。例えば、本発明の光学フィルムをアルカリケン化処理し、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬、延伸して作製した偏光膜の両面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリケン化処理とは、水系接着剤の濡れを良くし、接着性を向上させるために、セルロースエステルフィルムを高温の強アルカリ液中に漬ける処理のことをいう。
本発明の光学フィルムには、ハードコート層、防眩層、反射防止層、防汚層、帯電防止層、導電層、光学異方層、液晶層、配向層、粘着層、接着層、下引き層等の各種機能層を付与することができる。これらの機能層は塗布あるいは蒸着、スパッタ、プラズマCVD、大気圧プラズマ処理等の方法で設けることができる。
このようにして得られた偏光板が、液晶セルの片面または両面に設けられ、これを用いて、本発明の液晶表示装置が得られる。
本発明の光学フィルムからなる偏光板用保護フィルムを用いることにより、薄膜化とともに、耐久性及び寸法安定性、光学的等方性に優れた偏光板を提供することができる。さらに、本発明の偏光板あるいは位相差フィルムを用いた液晶表示装置は、長期間に亘って安定した表示性能を維持することができる。
本発明の光学フィルムは反射防止用フィルムあるいは光学補償フィルムの基材としても使用できる。