本発明の実施例1を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、本発明の実施例1における管継手の配設状況を示す概略図である。図2は、受口部と挿口部とを示す断面図である。図3(a)は、防食部材を示す正面図であり、(b)は、防食部材を示す右側面図であり、(c)は防食部材を示す左側面図であり、(d)は、図3(c)のA−A断面図である。図4(a)は、防食部材が受口部に未だ装着されていない状態を示す拡大断面図であり、(b)は、防食部材が受口部に挿入されている状態を示す拡大断面図であり、(c)は、防食部材が設置位置に装着された状態を示す拡大断面図である。図5(a)は、挿口部の管端面が未だ防食部材により被覆されていない状態を示す断面図であり、(b)は、挿口部が図5(a)の状態から挿入方向に挿入された状態を示す断面図である。図6(a)は、挿口部が図5(b)の状態からさらに挿入方向に挿入された後、挿口部の抜脱が規制された状態を示す断面図、(b)は、挿口部が図6(a)の状態から抜脱方向に移動した状態を示す断面図である。
先ず、本発明の配管路4は、本実施例の図1にて示されるように、例えば地中に配設される直管11、或いはT字管若しくは管軸に沿って一部に曲部を有するエルボ管2または曲部を有するとともに、比較的短寸であるベンド管13等の金属製の流体管から構成されており、配管内部に形成される経路を、例えば上下水道やガスなどの流体が流下したり、或いは電線等が配線されたりするようになっている。
特に、地中には既設管若しくは既設ケーブルなどの既設の埋設物3が埋設されていることが多く、該埋設物3を回避して配管路4を配設することが不可避であり、エルボ管2、直管11、ベンド管13を適宜組み合わせて、該管同士を管継手1、100を介して接続することにより所望の配管経路を構成できる。このように配管路4を構成する部材の種類は多岐にわたり、各々の部材を接続する管継手については、配管内部を流下する流体が外部に漏洩することなく密封することが必要とされる。
また、エルボ管2、直管11及びベンド管13の夫々の両端には、一方の管体を他方の管体に挿入して接続するために一端に形成された大径をなす受口部5と、他端に形成された挿口部12と、を有しており、これら挿口部12及び受口部5は管継手1,100の一部を構成している。また、これら各流体管の表面(内周面、外周面、管端面)には防食塗料等が塗布され、防食用のコーティング層が形成されている。
尚、管継手1及び各管継手100はほぼ同様に構成されているため、以下においては、エルボ管2の受口部5と直管11の挿口部12とからなる管継手1を管継手の一例として説明し、他の管継手100に関する説明は省略することとする。
図2に示されるように、本実施例における管継手1は、受口部5を備えたエルボ管2と、受口部5の内周面に挿入される挿口部12を備えた直管11と、弾性を有し受口部5の内周面と受口部5に挿入される挿口部12の外周面12aとの間から流体が漏出することを防止するシール部材8と、挿口部12の管端面12cの腐食を防止する防食部材14と、受口部5から挿口部12の抜脱を規制する抜脱規制手段15と、から構成されている。
管継手1の接続については後述するが、この挿口部12が受口部5に図2紙面右側に向かう挿入方向に挿入され、抜脱規制手段15で受口部5から挿口部12の抜脱を規制する。以下、図2紙面左側から右側に向かう方向を挿入方向として説明する。尚、後述する図5(b)においては、挿口部12が受口部5から抜け方向に移動していることが示されているが、図5(b)の紙面右側から左側に向かう方向を抜脱方向として説明する。
図2に示されるように、挿口部12の内径(コーティング層12dの内径)は、エルボ管2の管奥側の内周面5gの内径と略同径であり、挿口部12の外径は、受口部5の内径よりもわずかに小径であって、直管11の外周面12aの先端近傍には、面取り加工が施されている。また、挿口部12の先端には、挿口部12の外周面12aと挿口部12の内周面12bと、に連続する周方向に沿って形成された管端面12cを有している。尚、この管端面12cは後述する現場における切断により金属素地が露呈した面となっている。
シール部材8と防食部材14が装着されるエルボ管2の受口部5の内部には、エルボ管2の開口端側に周方向に沿って設けられた凹部5aが形成されている。尚、特に図示しないが、受口部5の内部を形成する内周面にも、挿口部12と同様にコーティング層が薄層に設けられている。
凹部5aよりも管奥側の内周面には、管軸Cとほぼ平行をなす収容面5cが形成されており、この収容面5cの管奥側の端部から、収容面5cよりも小径の内周面5gに連設するように、管軸Cに略直角に近い奥端面5dが形成されている。すなわち、収容面5cと奥端面5dとで段差が形成されている。この奥端面5dには、既存の受口部5の開口端側に開口した凹溝50が環状に特段加工されており、この凹溝50は、後述する防食部材14の係合凸部21が嵌合される被係合部として形成されている(図4(c)参照)。
また、図4(a)に示されるように、凹溝50の外側周面50aは端面50bに向かって漸次縮径するテーパ面状に形成されているとともに、内側周面50cは端面50bに向かって漸次拡径するテーパ面状に形成されており、すなわち凹溝50は、受口部5の開口端側に向かって漸次拡開して形成されており、後述する係合凸部21が凹溝50に係合される際において、係合凸部21が凹溝50に挿入されやすいようになっている。
シール部材8は、図2に示されるように、受口部5の内周面に周方向に沿って形成される凹部5aに嵌合される嵌合部8aと、受口部5の内周面と受口部5に挿入される挿口部12の外周面12aとの間隙を水密的に密封するバルブ部8cと、を有しており、外径が受口部5の内径と略同径のリング体からなり、弾性を有するゴム体からなる(図5(a)参照。)。
シール部材8は、受口部5の内周面に形成される凹部5aに嵌合部8aが周方向に亘って嵌合されている(図5(a)参照。)また、バルブ部8cは、該嵌合された状態において、図2に示されるように、直管11の挿口部12が未だ挿入されずに、バルブ部8cの圧縮がされない状態において、断面形状が略円形に形成されているとともに、嵌合部8aと比較して、内周面が管軸Cに向かって膨出している。
抜脱規制手段15は、受口部5の外端近傍の外周面に周方向に所定間隔おきに複数形成されたボルト孔5bと、エルボ管2の外方から管軸Cに対し直交する方向に向かってボルト孔5bに螺挿された押し込みボルト9と、押し込みボルト9の先方であって、受口部5の外端近傍の内周面に周方向に所定間隔おきに複数(本実施例では60度間隔おきに6個)形成された円弧溝7と、該円弧溝7内に配置され、先端に尖鋭刃10aを有している複数の固定つめ10と、から構成されており、この抜脱規制手段15により、受口部5と挿口部12とが接続され、受口部5からの挿口部12の抜脱を規制できるようになっている。
また、図2に示されるように、挿口部12が挿入されない状態においては、後述する挿口部12の挿入の邪魔にならないように、固定つめ10の尖鋭刃10aが、受口部5の内周面よりも外方に退避している。尚、押し込みボルト9は、必ずしも管軸に対し直交する方向に螺挿されるに限られず、管軸に対し平行若しくは斜方向に螺挿されるものであってもよい。
防食部材14は、図2、図3(a)〜(c)に示されるように、環状に形成された弾性を有するゴム体からなり、この防食部材14は、図3(d)に示されるように、断面視略コ字形状に形成されている。
この防食部材14における挿口部12の管端面12cが当接する当接部には、図2、図3(a)〜(d)に示すように、後述する挿口部12の管端面12cに押圧される膨出部17が形成されている。この膨出部17は、周方向の中央部が外周側及び内周側よりも挿口部12側(図3(d)の紙面左側)に向けて膨出するように形成されており、該膨出部17の表面は、後述する挿口部12が挿入された状態において挿口部12の管端面12cと当接する湾曲状の当接面17aとされている(図5(a)参照)。
防食部材14の内周側には、図2、図3(a)〜(d)に示すように、当接面17aの内周側端部より挿口部12側に向けて突出する内周当接部18が周方向に沿って形成されている。また、この内周当接部18の膨出部17側の周面、すなわち内周当接部18の外周面は、当接面17aの外周端縁部から連設され、挿口部12側に向けて延びる内周当接面18aとされている。
この内周当接面18aは、後述するように、挿口部12が受口部5に挿入される際、受口を広げることにより挿口部12が受口部5に挿入されやすいように、挿口部12の内周面12bに対し漸次離間するテーパ面状に形成されているとともに(図5(a)参照)、防食部材14が管端面12cを被覆している状態において、挿口部12の内周面12bに密着するように構成されている。
防食部材14の背面19は、図3(a)〜(d)、図4(c)に示すように、奥端面5dと略平行に形成されており、後述するように挿口部12が挿入された状態において奥端面5dに密接して、流体の漏洩を防止するようになっている。
この背面19には、奥端面5dとの対向する位置に凹溝50に向かって突設され、環状に形成された係合部としての係合凸部21と、背面19の外周側に防食部材24が受口部5に設置された状態において奥端面5dよりも受口部5の開口端側に延設され、環状に形成された係合部としての係合部16と、が形成されており、後述するように、奥端面5dと背面19が当接する状態で防食部材14が設置される設置位置が決定できるようになっている(図4(c)参照。)。
また、係合凸部21の外側周面21aは端面21bに向かって漸次縮径するテーパ面状に形成されているとともに、内側周面21cは端面21bに向かって漸次拡径するテーパ面状に形成されており、すなわち係合凸部21は端面21bに向かって漸次縮径されており、係合凸部21が凹溝50に挿入されやすいようになっている。
端面21bは、挿口部12の挿入前の状態において、凹溝50の端面50bと当接するように形成されている(図4(c)参照。)。
また、係合部16の膨出部17側の周面、すなわち係合部16の内周面は、当接面17aの外周端縁部から連設され、挿口部12側に向けて延びるガイド面16aとされており、このガイド面16aは、挿口部12が受口部5に挿入される際において、挿口部12の外周面12aを軸心に向けてガイドするために、先端から当接面17aに向けて漸次縮径するテーパ面状に形成されている。
防食部材14の外径は、受口部5の収容面5cにおける内径とほぼ同径に形成されており、図4(c)に示されるように受口部5内に装着されて収容された状態において、防食部材14の外周面である係合部16の外周面20が受口部5の収容面5cに密接するようになっている。
次に、本発明の管継手1の接続について説明する。
先ず、図4(a)、(b)に示されるように、エルボ管2の管端開口から受口部5内に防食部材14を挿入する。受口部5の管奥側に挿入していくと、防食部材14の係合部16の管奥側先端が受口部5の収容面5cと当接し、さらに防食部材14を管奥側に挿入することにより、係合部16の外周面20が受口部5の収容面5cと当接し、防食部材14の軸心が受口部5の軸心と合わせて防食部材14が挿入されることになる。
さらに防食部材14が管奥側に挿入されると、図4(b)に示されるように、端面21bが凹溝50の開口に到達する。この状態においては、係合凸部21の外側周面21a,内側周面21cと、凹溝50の外側周面50a,内側周面50cとは、それぞれ管奥側に向けて縮径するテーパ面状に形成されているため、凹溝50の間口が広がっており、凹溝50内に係合凸部21が嵌合しやすい。
そして、図4(b)の状態から、防食部材14がさらに管奥側に挿入されると、係合凸部21におけるテーパ面状の外側周面21a,内側周面21cが、凹溝50におけるテーパ面状の外側周面50a,内側周面50cにより凹溝50の内方に向けて摺接案内され、図4(c)に示されるように、防食部材14は、背面19が奥端面5dと当接する設置位置に設置される。
図4(c)の状態において外側周面21a,端面21b,内側周面21cと外側周面50a,端面50b,内側周面50cとがそれぞれ確実に当接する。つまり、凹溝50内に係合凸部21が遊びなく嵌合するため、径方向及び管奥側に向かう管軸方向の防食部材14の移動が規制され、結果的に防食部材14が凹溝50に係合し、防食部材14の位置ずれが確実に防止される。
また、係合凸部21が凹溝50に嵌合された状態、すなわち防食部材14が前記設置位置に設置された状態においては、背面19が奥端面5dと当接しているとともに、係合凸部21の外周面20が収容面20cと当接した状態が維持されている。この設置状態においては、奥端面5dと収容面5cとに生じている既存の段差を利用して係合部16が奥端面5d及び収容面5cに係合することになり、係合凸部21が凹溝50に係合するに加え、径方向及び管奥側に向かう管軸方向の防食部材14の位置ずれを確実に防止することができる。
尚、本実施例では、防食部材14が凹溝50に嵌合された状態において、係合凸部21の端面21bと凹溝50の端面50bとが当接しているが、係合凸部21の端面21bを凹溝50の端面50bに当接させず間隙が形成されるようにしてもよい。
そして、防食部材14を設置した後、エルボ管2の受口部5の開口端から受口部5内にシール部材8を挿入し、受口部5の凹部5aに嵌合部8aを嵌合させて装着する(図5(a)参照)。尚、受口部5内への防食部材14の装着作業若しくはシール部材8の装着作業は、エルボ管2の出荷段階において予め完了させる場合もあるし、管継手1の接続現場において実施する場合もある。
次いで、エルボ管2の管端開口内に直管11の挿口部12が挿入されると、挿口部12の外周面12aが受口部5の内周面に嵌合されたシール部材8の嵌合部8aと摺接しつつ、受口部5に挿入され、バルブ部8cを挿口部12の外周面12aと受口部5の内周面との間隙内で圧縮する。これにより、受口部5の内周面と挿口部12の外周面12aとの間隙が密封され、受口部5の内周面と挿口部12の外周面12aとの間からの流体の漏出が防止される。
さらに挿口部12が挿入され、挿口部12の先端が係合部16の先端に到達すると、該挿口部12の開口端部における外周面12aがガイド面16aに当接した後、該ガイド面16aに摺接案内されながら管奥側に向けて挿入される。そして、このガイド面16aは先端から当接面17aに向けて漸次縮径するテーパ面状に形成されていることで、挿口部12の軸心が受口部5の軸心に対してずれた状態で挿入されても、挿口部12の外周面12aがガイド面16aにより軸心に向けて摺接案内される。これにより、図5(a)に示されるように、管端面12cが膨出部17の当接面17aの頂部と当接した当接位置aにおいて、管端面12cの略全域がガイド面16aと内周当接面18aとの間における当接面17aと対向するように配置されるため、管端面12cが当接面17aと周方向に亘って確実に当接する。尚、係合部のガイド面は、防食部材の周方向に沿って形成されていればよく、本実施例のようにガイド面16aが防食部材14の全周に亘って形成されていてもよいし、あるいはガイド面が、防食部材の周方向の一部に、若しくは周方向に所定間隔に形成されていてもよい。
また、内周当接部18の内周当接面18aは、上記したように当接面17a側から内周当接面18aの先端に向けて漸次拡径するテーパ面状に形成され、内周当接部18の間口が広がっているため、管端面12cが内周当接部18の先端に当接することがなく挿口部12が挿入され、該管端面12cにより内周当接部18が押し潰されることがない。尚、当接位置aにおいて、膨出部17は未だ管端面12cにより押し潰されてはいない。
次いで、図5(a)に示される当接位置aから更に挿口部12が管奥側に挿入されると、防食部材14は、挿口部12の管端面12cと受口部5の奥端面5dとの間で管軸方向に挟圧された状態となり、管端面12cにより膨出部17が押圧されて押し潰され、つまり膨出部17の弾性変形が開始される。
係合凸部21、係合部16については、膨出部17の弾性変形が開始されても、係合凸部21は凹溝50に係合しており、係合部16は収容面5c及び奥端面5dに係合しているため、防食部材14の軸心が位置ずれすることなく防食部材14が押し潰される。
そして、図5(b)に示されるように、膨出部17が完全に押し潰された位置、すなわち被覆開始位置bに管端面12cが到達すると、管端面12cにより押圧された膨出部17の当接面17aが管端面12cの略全域にわたり密着するため、該管端面12c略全域が当接面17aにより被覆される被覆状態となる。また、この被覆状態においても、係合凸部21及び係合部16の係合により、防食部材14を位置ずれすることなく管端面12cを当接面17aに確実に当接させて管端面12cが被覆される。
また、図5(b)に示されるように、膨出部17が奥端面5d側に向けて押し潰されて弾性変形することで、防食部材14の内周側が管軸Cに向けて押し出され、この変形作用により内周当接部18が挿口部12の内周面12bに向けて移動して、内周当接面18aが挿口部12の内周面12bと当接する。
そして本実施例では、図6(a)に示されるように、挿口部12は、管端面12cが前記被覆開始位置bから更に被覆幅寸法L1分管奥側の挿入完了位置cまで受口部5に挿入された時点で挿入作業が終了されるようになっている。つまり、被覆開始位置bからさらに深く挿口部12を挿入し、防食部材14を強く押し潰すことにより、該防食部材14の弾性復帰力が高まり、当接面17aによる管端面12cの水密性が向上する。さらに、内周当接面18aが挿口部12の内周面12bに向けて強く押し付けられるため、内周当接面18aによる内周面12bの水密性が向上する。
尚、係合部16については、挿口部12の外周面12a及び受口部5の収容面5cとの間隙内で弾性変形することにより、その圧縮に応じて挿口部12の外周面12aと受口部5の収容面5cとの水密性が増加するとともに、挿口部12の軸心の受口部5の軸心に対する位置ずれが規制される。
また、上述したように、図6(a)に示されるように本実施例では、背面19が奥端面5dと当接する設置位置に防食部材14が設置された状態において係合凸部21の端面21bと凹溝50の端面50bとが当接しているが、端面21bを端面50bに当接しないように端面21bと端面50bとの間に間隙を設けた場合には、管端面12cにより弾性変形した防食部材14の一部の逃げ代として、前記間隙を利用でき、管端面12cにより防食部材14が押圧されても防食部材14の管軸方向の移動が規制され、防食部材14が該設置位置に設置された状態が維持される。
そして管端面12cが前記挿入完了位置cに到達した状態において、この状態を保持したまま、押し込みボルト9を円弧溝7の外側からねじ込み、固定つめ10を挿口部12の外周面12aに押し付け、押し込みボルト9をさらに螺入し、固定つめ10の尖鋭刃10aを管軸Cに向けて押圧して挿口部12の外周面12aに食い込ませ、受口部5と挿口部12とを接続する。これにより、受口部5からの挿口部12の抜脱が規制された規制状態となる。
つまり、受口部5に対する挿口部12の抜脱方向への移動を規制した状態で保持する固定つめ10の保持力は、防食部材14の弾性復帰力よりも大とされている。
従って、管端面12cが、前記被覆開始位置bから前記挿入完了位置c間に位置している状態においては、常に膨出部17の当接面17aにより管端面12cが略全域にわたり密着されている被覆状態であるため、抜脱規制手段15により受口部5からの挿口部12の抜脱が規制されることで、防食部材14により管端面12cが被覆される被覆状態が維持される。
一方、図6(a)に示す抜脱規制状態において、例えば地震等の不測の外力が生じて、挿口部12が受口部5に対して抜脱方向(図6(a)中左方向)に移動しようとする力が働いた場合、挿口部12の管端面12cは、図6(a)に示す挿入完了位置cから図6(b)に示す抜脱規制位置dまでの規制幅寸法L2分の移動が許容されている。
具体的には、固定つめ10は、円弧溝7内で押し込みボルト9の底面を支点として先端側が管軸方向に傾動可能とされており、固定つめ10の先端に形成された尖鋭刃10aが抜脱方向に移動許容幅寸法L3分移動することで、尖鋭刃10aが管軸Cに向かって挿口部12の外周面12aに食い込み、固定つめ10の管端開口側の側面が円弧溝7の内側面に当接することで、挿口部12の受口部5からの抜脱が規制されるようになっている。
このように、図6(b)に示されるように、固定つめ10の移動許容幅寸法L3分、受口部5と挿口部12との相対移動が許容されているため、管端面12cは、図6(a)に示す挿入完了位置cと図6(b)に示す抜脱規制位置dとの間で相対移動可能であり、移動許容幅寸法L3と挿入完了位置cと抜脱規制位置dとの間の規制幅寸法L2とは同寸である(L2=L3)。すなわち、本実施例においては、管端面12cが図6(a)に示す挿入完了位置cと図6(b)に示す抜脱規制位置dとの間に位置している状態において、抜脱規制手段15により受口部5から挿口部12の抜脱が規制されている抜脱規制状態とされている。
また、管端面12cが図6(a)に示す挿入完了位置cに位置している状態において、管端面12cが抜脱方向に規制幅寸法L2分抜脱方向に移動して抜脱規制位置dに位置したとしても、この抜脱規制位置dは、防食部材14により管端面12cが略全域にわたり密着する被覆状態が維持される被覆開始位置bと挿入完了位置cとの間に位置するため、防食部材14の弾性復帰力により管端面12cに追従して防食部材14が管端面12cに密着した状態が維持される。
このように、相対移動が許容される規制幅寸法L2(L3)よりも、前記被覆状態が維持される被覆幅寸法L1が長寸となるように設定されていれば、挿口部12と受口部5とが抜脱規制状態において所定幅の相対移動が許容されるようになっている場合でも、防食部材14により管端面12cが略全域にわたり密着して被覆される被覆状態が維持されるため、本実施例にようにL1>L3の条件を満たすような管継手を適用することが好ましい。
以上に説明したように、本実施例の管継手1においては、防食部材14には、受口部5の凹溝50に係合する係合凸部21と、受口部5の奥端面5d及び収容面5cに係合する係合凸部と、が周方向に沿って形成されており、係合凸部21と係合部16がそれぞれ凹溝50、奥端面5d及び収容面5cに係合することで、防食部材14の受口部5に対する設置位置が決定されるようになっている。このようにすることで、背面19が奥端面5dと当接する設置位置に位置ずれなく防食部材14が設置されるため、受口部5に挿入した挿口部12の管端面12cを防食部材14に確実に当接させて被覆することができる。また、受口部5に防食部材14を設置して挿口部12を挿入するだけの簡単な作業で挿口部12の管端面12cの防食を図ることができ、従来のように挿口部を受口部に挿入する際に挿口部内に防食部材を挿通する等、防食部材が邪魔になることがないため、挿口部と受口部との接続作業が容易になる。
また、本実施例では、係合凸部21は、防食部材14における奥端面5dとの対向する位置に設けられるとともに、奥端面5dには、係合凸部21を係合する凹溝50が形成されているため、奥端面5dに対する防食部材14の位置ずれを確実に防止できるため、挿口部12の管端面12cと防食部材14とが当接する際における位置ずれも効果的に防止できる。
また、本実施例では、係合部16は、奥端面5dよりも受口部5の開口端側の収容面5cに係合可能に延設されている。このようにすることで、防食部材14の背面19が奥端面5dと当接するとともに、係合部16が奥端面5dよりも受口部5の開口端側の収容面5cと当接して受口部5内に設置されるため、奥端面5dと収容面5cとに生じている既存の段差を利用して係合部16が係合することになり、防食部材14の位置ずれが確実に防止される。また、挿口部12を受口部5に挿入する際において、係合部16の内周面に沿って管端面12cが受口部5に挿入されるため、挿口部12が軸心からずれることがあっても、係合部16の内周面を利用して、軸心にむけて摺接案内され、管端面12cを防食部材14により確実に被覆することが可能となる。
特に、本実施例の係合部16には、挿口部12のガイド面16aが当接面17aに向けて漸次縮径するテーパ面状に形成されている。これにより、挿口部12を受口部5に挿入する際において、挿口部12が軸心からずれることがあっても、挿口部12の外周面12aがガイド面16aにより軸心にむけて摺接案内されることにより管端面12cが当接面17aに対して位置ずれなく当接するため、管端面12cが当接面17aに当接した際に該当接面17aに対する管端面12cの位置ずれを補正するといった工程が不要であり、挿口部12を受口部5に挿入する工程だけで当接面17aが管端面12cを確実に被覆することができる。
また、本実施例では、抜脱規制手段15により受口部5からの挿口部12の抜脱が規制され、この受口部5からの挿口部12の抜脱が規制されている状態において、防食部材14は弾性変形した状態で管端面12cを被覆しており、その弾性復帰力により管端面12cを押圧するため、防食部材14により管端面12cのシール性を常に維持することができる。また、不測の外力が生じた場合、受口部5からの挿口部12の抜脱が規制されている状態において、挿口部12が受口部5に対して若干移動しても、管端面12cは、弾性復帰力により管端面12cに追従して密着する防食部材14により、常にシールされる。
また、本実施例では、防食部材14における挿口部12の管端面12cとの当接面17aは、挿口部12側に向けて膨出しているため、管端面12cにより防食部材14が潰れやすくなり、挿口部12の受口部5への挿入が容易になるばかりか、管端面12cが当接面17aを押圧する際に、管端面12cと当接面17aとの間の空気が外に押し出されていくため、管端面12cと当接面17aとの密着性の低下が防止される。
また、本実施例では、防食部材14には、挿口部12の管端面12cとの当接面17aおける内周側端部から連続して挿口部12側に向けて延びる内周当接面18aが周方向に沿って形成されており、内周当接面18aは、防食部材14が管端面12cを被覆している状態において挿口部12の内周面12bに密着している。すなわち、膨出部17が管端面12cにより弾性変形することで、内周当接部18が挿口部12の内周面12bに向けて移動して、内周当接面18aが挿口部12の内周面12bと当接するため、管端面12cが被覆されるだけでなく、挿口部12の内周面12bも被覆され、管端面12cと当接面17aとの間への流体の進入をより確実に阻止できる。
また、本実施例では、内周当接面18aは、内周当接面18aの先端に向けて挿口部12の内周面12bに対し漸次離間するテーパ面状に形成されており、防食部材14が受口部5に挿入された挿口部12の管端面12cと受口部5の奥端面5dとの間で押圧されて弾性変形することにより、挿口部12の内周面12bに当接するように構成されているため、挿口部12が受口部5に挿入される際、間口が広がっているため、挿入された管端面12cにより内周当接部18が押し潰されることなく挿口部12を受口部5に挿入しやすくなるとともに、管端面12cの押圧による弾性変形によって挿口部12の内周面12bに当接されるため、内周当接面18aを挿口部12の内周面12bに対して押圧するための部材等を別途設けることなく、防食部材14の弾性変形を利用するだけで内周当接面18aにより挿口部12の内周面12bを確実に被覆することができる。
また、本実施例では、挿口部12を挿入する前に防食部材14を受口部5内に挿入し、係合凸部21を凹溝50内に係合して背面19が奥端面5dに当接する設置位置に設置した後、つまり係合凸部21全体を凹溝50内に嵌合させた状態で挿口部12を挿入して防食部材14を押圧するようにしていたが、凹溝50が管軸方向に向かって開口しているとともに、係合凸部21が管軸方向に形成されているため、例えば係合凸部21の少なくとも一部が凹溝50内に嵌合されていれば、防食部材14を押し込んでも、背面19が奥端面5dに当接する設置位置に設置することができる。また、係合凸部21の外側周面21a,内側周面21cと、凹溝50の外側周面50a,内側周面50cとは、それぞれ管奥側に向けて縮径するテーパ面状に形成されているため、防食部材14を押し込んでも、このテーパ面を利用して係合凸部21と凹溝50とにより軸心方向にガイドされた状態で防食部材14が位置ずれなく移動されるため、背面19が奥端面5dに当接する設置位置に確実に防食部材14を設置することができる。
また、本実施例では、防食部材14の係合部16の先端は、図5(a)に示されるように、内周当接部18の先端よりも挿口部12側に向けて突出している方が好ましい。このようにすることで、挿口部12が受口部5に挿入される際、挿口部12の外周面12aが内周当接部18の先端よりも先にガイド面16aにより摺接案内されて位置ずれが補正されるため、管端面12cにより内周当接部18を押し潰すことなく、挿口部12を受口部5に挿入することができる。
また、本実施例では、内周当接部18は、先端に向けて漸次肉薄となるように形成されているため、膨出部17が管端面12c押圧され弾性変形作用により挿口部12の内周面12bに向けて変形しやすくなるばかりか、内周面12bに密接した状態において、挿口部12から受口部5方向へ移動する流体による抵抗がかかりにくくなるので、内周当接部18の先端が流体により捲れにくくなる。
次に、実施例2に係る管継手につき図面に基づいて説明すると、図7(a)は、実施例2の防食部材を示す正面図であり、(b)は、防食部材を示す右側面図であり、(c)は防食部材を示す左側面図であり、(d)は、図7(c)のB−B断面図である。図8は、防食部材が受口部に未だ装着されていない状態を示す拡大断面図である。図9は、防食部材が受口部に挿入されている状態を示す拡大断面図である。図10は、防食部材が設置位置に装着された状態を示す拡大断面図である。図11は、管継手が構成された状態を示す断面図である。
実施例2に係る管継手は、防食部材の形状及び受口部の形状が一部異なっているだけで、他の構成は実施例1で示した管継手1の形態とほぼ同様であるため、同様の構成部位には同一の符号を付すことにより、ここでの詳細な説明は省略することとする。
図8、図11に示されるように、実施例2における管継手1を構成する受口部5は、奥端面5dに実施例1の被係合部としての凹溝50等の加工が施されていない既存の受口部であり、収容面5cと奥端面5dとで段差が生じており、また内周面5gと奥端面5dとで段差が生じている。
図7(a)〜(d)に示されるように、実施例2の防食部材24は、環状に形成された弾性を有するゴム体から形成されており、管端面12cに対向する位置には、管端面12cとほぼ平行をなす平坦状の当接面27が形成されている(図10参照。)。
また図7(a)〜(d)、図8〜図10に示されるように、防食部材24の背面29側には、防食部材24を位置決めするための支持片25dとフィン25aとからなる係合突設部25が環状に管奥側に向かって形成されており、この係合突設部25は、防食部材24が受口部5に設置された状態において、奥端面5dと連続し、管奥側に向かって一定の内径寸法Rを有して形成された内周面5gと係合されるようになっている。
詳しくは、防食部材24の背面29の内周側には、防食部材24の内周面28に連続するとともに、奥端面5d側に向かって延設される、すなわち防食部材24が受口部5に設置された状態において奥端面5dよりも管奥側に延設されている支持片25dが周方向に沿って形成されている(図11参照。)。またこの支持片25dには、外径寸法Tを有する周面25bが外周面として形成されており、この周面25bの外径寸法Tは、防食部材24を受口部5に設置する際において内周面5gに挿入しやすいように、内径寸法Rより小径とされている(T<R)。
さらに、この周面25bから径方向に向かって突設されたフィン25aが周方向に沿って複数形成されている(本実施例では所定間隔おきに3個)。また、このフィン25aには、外径寸法Sを有する周面25cが外周面として形成されており、防食部材24が受口部5に設置された状態において、このフィン25aが内周面5gと係合されるようになっている。また後述するように、この係合状態において、フィン25aが弾性変形し、内周面5gと当接することで防食部材24の位置ずれを防止するために周面25cの外径寸法Sが、内径寸法Rより大径となっている(S>R)。
また、防食部材24の係合突設部25の外周側には、防食部材24が受口部5に設置された状態において奥端面5dよりも受口部5の開口端側に延設された係合部26が周方向に沿って環状に形成されており、後述するように、この係合部26は、受口部5の収容面5cに係合するようになっている。さらに、係合部26の当接面27側の周面、すなわち係合部26の内周面は、当接面27の外周端縁部から連設され、挿口部12側に向けて延びるガイド面26aとされており、このガイド面26aは、挿口部12が受口部5に挿入される際において、挿口部12の外周面12aを軸心に向けてガイドするために、先端から当接面27に向けて漸次縮径するテーパ面状に形成されている。
次に、実施例2の管継手1の接続について説明する。尚、実施例2の管継手1の接続工程において、実施例1の管継手1の接続工程と同一工程で重複する工程を省略して説明する。
先ず、エルボ管2の管端開口から受口部5内に防食部材を挿入し(図8参照。)、さらに受口部5の管奥側に防食部材24を挿入すると、防食部材24の係合部26の管奥側の先端が受口部5の収容面5cと当接し、さらに防食部材24を管奥側に挿入することにより、係合部26の外周面30が受口部5の収容面5cと当接し、防食部材24の軸心が受口部5の軸心と合わせて防食部材24が挿入されることになる。
さらに防食部材24が管奥側に挿入されると、支持片25dの管奥側の先端が受口部5の内周面5g内に挿入される。尚、支持片25dの周面25bの外径寸法Tが内周面5gの内径寸法Rより小径であるため、支持片25dが内周面5g内に挿入されやすい。
さらに受口部5の管奥側に防食部材24を挿入すると、図9に示されるように、フィン25aのうち管奥側のフィン25aが内周面5gと当接し、弾性変形して受口部5の内周面5gに当接した状態を維持して係合突設部25が挿入される。
次いで、防食部材24をさらに管奥側に挿入することにより、フィン25aが管奥側から順に当接し、弾性変形して係合突設部25が内周面5g内に挿入され、やがて全てのフィン25aが弾性変形して内周面5gと当接した状態になる。この当接状態においてフィン25aの周面25cの外径寸法Sが、内周面5gの内径寸法Rより大径であるため、フィン25aの弾性復帰力により内周面5gが押圧される。
そして、図10に示されるように、背面19が奥端面5dと当接する設置位置まで防食部材24を挿入する。
これにより、フィン25aの弾性復帰力により内周面5gが押圧されるため、この押圧力によりフィン25aが内周面5gに係合し、径方向の防食部材24の移動が規制され、防食部材24が受口部5内に位置ずれなく設置されることができる。
また、背面19が奥端面5dと当接する設置位置に防食部材24が設置された状態において背面29がフィン25aと当接するとともに、フィン25aが内周面5gと当接するため、奥端面5dと内周面5gとに生じている既存の段差を利用して係合部26が奥端面5dと収容面5cと係合することになり、フィン25aの弾性復帰力に加え、径方向及び管奥側に向かう管軸方向の防食部材24の位置ずれを確実に防止することができる。
また、係合部26については、背面19が奥端面5dと当接する設置位置に防食部材24が設置された状態において背面29が奥端面5dと当接するとともに、係合部26が収容面5cと当接するため、奥端面5dと収容面5cとに生じている既存の段差を利用して係合部26が奥端面5dと収容面5cとに係合することになり、径方向及び管奥側に向かう管軸方向の防食部材24の位置ずれ防止が向上する。
次いで、防食部材24を受口部5内に設置した後、シール部材8を挿入して配置し挿口部12を受口部5内に挿入する。
そして、挿口部12の先端が係合部26の先端に到達すると、該挿口部12の開口端部外周面がガイド面26aに当接した後、該ガイド面26aに摺接案内されながら管奥側に向けて挿入され、管端面12cが当接面27と当接した被覆開始位置e(図11参照。)において、該管端面12cが当接面27に確実に当接する。
ここで、当接面27は平坦状に形成されているため、管端面12cが当接面27に当接した段階で管端面12cが略全域にわたり当接面27により被覆される。
次いで、被覆開始位置eから更に挿口部12が管奥側に挿入されると、防食部材24は、管端面12cと受口部5の奥端面5dとの間で管軸方向に挟圧された状態となり、管端面12cにより当接面27が押圧されて防食部材24の弾性変形が開始され、これにより主に防食部材24の内周面28側が管軸Cに向けて押し出される。このように防食部材24が押し潰されて弾性変形が開始された状態において、管端面12cに対して防食部材24の弾性復帰力が作用することになるため、管端面12cが当接面27により被覆される被覆状態となる。
そして、本実施例においては、図11に示されるように、挿口部12は、管端面12cが前記被覆開始位置eから更に被覆幅寸法L4分僅かに管奥側の挿入完了位置fまで受口部5に挿入された時点で挿入作業が終了される。つまり、被覆開始位置eからL4分挿入方向に挿口部12を挿入し、防食部材24を押し潰すことにより、当接面27による管端面12cの水密性が維持される。さらに、防食部材24の内周面28側が管軸C方向に押し出されて膨出することで、挿口部12の内周面12bにおける当接面27の近傍位置が、膨出した防食部材24の内周面28側により若干被覆され、水密状態になる。
そして、管端面12cが前記挿入完了位置fに到達した状態において、実施例1と同様に抜脱規制手段15により挿口部12と受口部5とを接続する。これにより、受口部5からの挿口部12の抜脱が規制された規制状態となり、管端面12cが、前記被覆開始位置eから前記挿入完了位置f間に位置している状態においては、当接面27により管端面12cが略全域にわたり密着されている被覆状態であるため、抜脱規制手段15により受口部5からの挿口部12の抜脱が規制されることで、防食部材24により管端面12cが被覆される被覆状態が維持される。
以上に説明したように、実施例2における管継手1においては、奥端面5dよりも管奥側の内周面5gに係合可能に延設されている。このようにすることで、背面19が奥端面5dと当接するとともに、係合突設部25が奥端面5dよりも管奥側の受口部5の内周面5gと当接して受口部5内に設置されるため、係合突設部25が、奥端面5dと受口部5の内周面5gとに生じている既存の段差を利用して係合部が係合することになり、受口部5の内周面に特段の加工等を施すことなく、防食部材24の位置ずれが確実に防止される。
また、実施例2では、防食部材24の当接面27は平坦状に形成されているため、挿口部12が受口部5に挿入される際、挿口部12の管端面12cが当接した後、管端面12cを挿入方向に僅かに挿入するだけで、管端面12cに対して防食部材24の弾性復帰力が作用して、管端面12c略全域が当接面27により被覆されるため、管端面12cが防食部材24に当接した位置から挿入完了位置fまでの寸法を小寸にすることができ、挿口部12の挿入が容易になる。
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
また、前記実施例1では、係合凸部21は防食部材14の背面19に突設されて形成されているが、これに限らず、例えば、背面19に受口部5の管奥側に開口した係合凹部を設けるとともに、奥端面5dに該係合凹部により嵌合される凸状部が受口部5の開口端側に向かって形成され、防食部材14が設置された状態において前記係合凹部が該凸状部に嵌合されることにより防食部材が位置決めされるものでもよい。このように係合部が受口部5の内周面に係合するものであれば、係合部は、凸状、凹状のいずれの形状に形成されてもよい。
また、前記実施例1では、凹溝50は、受口部5の開口端側に向かって漸次拡開して形成されているが、これに限らず凹溝は、上記凹溝50とは逆に、受口部の開口端側に向かって漸閉して形成されているものでもよい。このようにすることで、前記凹溝の開口が狭くなるため、この凹溝に対応して適宜形成された係合凸部が、凹溝に嵌合した後に抜け出ることを防止でき、所定の設置位置から防食部材が移動することがない。
前記実施例1、2では、係合凸部21,係合突設部25と係合部16,26とは管軸方向に沿って形成されているが、このようにすることで、係合凸部21,係合突設部25及び係合部16,26と受口部の内周面(係合凸部21は外側周面50a,内側周面50c、係合突設部25は内周面5g、係合部16,26は収容面5c。)に係合する係合延長を大きく取ることができ、防食部材14を受口部5にしっかりと設置することができる。またこれに限らず受口部の内周面に係合する係合凸部であればどこに配設されていてもよく、例えば、当接面17a,27と背面19,29との間に形成される外周等に前記実施例2のようなフィンが径方向に向かって形成されてもよい。
また、前記実施例1、2では、係合凸部21,係合突設部25と係合部16,26が環状に形成されているが、これに限らず係合部は外周面に周方向に沿って所定間隔おきに形成されているものでもよく、また前記実施例2のようなフィンが防食部材14の外周に点在して形成されたものでもよい。また、該係合部が係合される位置に対応して被係合部が形成されていると尚好ましい。
例えば、前記実施例1、2においては、防食部材14,24とシール部材8とが別々に設けられ、かつ、互いに管軸方向に所定距離離間した状態で配置されていたため、挿口部12が挿入した状態において、それぞれ別個に弾性変形するとともに、それぞれ弾性変形した部分が互いに干渉し合うことがなく、影響を及ぼすことがない。つまり、弾性変形した防食部材14,24がシール部材8に干渉して水密性に支障をきたしたり、逆に弾性変形したシール部材8が防食部材14,24に干渉して、管端面12cの被覆に支障をきたすようなことがない。
また、シール部材8には、挿口部12の外周面12aと受口部5の内周面との間からの流体の漏出を防ぐに適した弾性を有する弾性材を選択し、防食部材14には、管端面12cの防食に適した弾性を有する弾性材を選択することができるため、管端面12cの腐食及び挿口部12の外周面12aと受口部5の内周面との間からの流体の漏出を効率よく防止することができる。
また、シール部材8と防食部材14,24とを一体的に形成して、挿口部12の外周面12aと受口部5の内周面との間からの流体の漏出を防止するとともに、挿口部12の管端面12cの腐食を防止することができる防食部材としてもよく、このような場合、受口部5に対する部材の装着が1回で済むため、装着手間が容易になる。
また、前記実施例1では、径方向の中央部が両端部よりも挿口部12側に膨出する環状の膨出部が形成されていたが、例えば膨出部は必ずしも環状に形成されていなくてもよく、管端面との当接面から管端面に向けて複数の膨出部が周方向に沿って突設されていてもよい。
また、前記実施例1、2では、防食部材14,24として適宜弾性変形力を有するゴム材からなるゴム体が適用されていたが、押し潰された管端面12cに対して弾性復帰力により被覆して水密状態を形成しうるものであれば、材質はゴムに限定されるものではなく、種々の弾性材を適用可能である。
また、前記実施例1、2では、防食部材14,24全体が同一素材にて形成されていたが、例えば管端面との当接面近傍のみを、他の部位と比較して軟質なゴム材にて形成して潰れやすくしてもよいし、あるいは管端面との当接面近傍のみを、他の部位と比較して高反発性を有するゴム材にて形成して弾性復帰力を向上させるようにしてもよい。
また、前記実施例における抜脱規制手段は、ボルト孔5bと、固定爪10を押し込む押し込みボルト9と、固定爪10と、固定爪10が収容される円弧溝7と、から構成されていたが、受口部5に挿入された挿口部12の該受口部5からの抜脱を規制するものであれば、上記抜脱規制手段に限定されるものではなく、いわゆる押し輪等の受口部5とは別個に設けられたもの等、他の抜脱規制手段であってもよい。