JP2008521889A - ヒドロキシ芳香族化合物、その製造方法およびその化合物の使用 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、ヒドロキシ芳香族化合物に関する。
ヒドロキシ芳香族化合物それ自体は公知であり、少なくとも1つのOH基が直接結合している芳香環を有する化合物と定義される。そのような化合物の例にフェノールがある。そのような化合物の別の例に、フェノールとホルムアルデヒドの公知の付加物があり、このヒドロキシ芳香族化合物はフェノール−ホルムアルデヒド樹脂の製造に使用される。これらの樹脂は、例えば、A.ノップ(A.Knop)、L.A.ピラト(L.A.Pilato)、フェノリック・レジンズ(Phenolic Resins)、シュプリンガー・フェアラーク(Springer Verlag)、ベルリン(Berlin)、1990年により知られている。これらの樹脂には、例えばパーティクルボード製造用の接着剤にこれらの樹脂を使用するなど、多くの知られた用途がある。
公知のヒドロキシ芳香族化合物、および、特にそれらのホルムアルデヒド付加物の欠点は、それらの使用が、樹脂の製造過程、樹脂の硬化過程および最終製品におけるホルムアルデヒドの放出に関係して、健康へのリスクを伴うということである。
本発明の目的は、ヒドロキシ芳香族樹脂の製造に適した化合物を提供する一方、前記欠点を低減もしくは解消することにある。
この目的は、ヒドロキシ芳香族化合物が、式(I):
[式中、
・R1、R3およびR5からなる組の少なくとも1つが、式(II)で示される基であり、R1、R3およびR5からなる組の残りの1つまたは2つが、H、OH、C1〜C12のアルキル基またはオリゴマーもしくはポリマー系であり;
・R2およびR4が、H、OH、C1〜C12のアルキル基またはオリゴマーもしくはポリマー系であり;
・式(II)が次の基:
(式中、EWGは電子吸引性基である)である]
で示される化合物であることにより達成される。
[式中、
・R1、R3およびR5からなる組の少なくとも1つが、式(II)で示される基であり、R1、R3およびR5からなる組の残りの1つまたは2つが、H、OH、C1〜C12のアルキル基またはオリゴマーもしくはポリマー系であり;
・R2およびR4が、H、OH、C1〜C12のアルキル基またはオリゴマーもしくはポリマー系であり;
・式(II)が次の基:
(式中、EWGは電子吸引性基である)である]
で示される化合物であることにより達成される。
本発明の化合物の利点は、ホルムアルデヒドの使用に伴う健康へのリスクが低減されるかまたは全くないヒドロキシ芳香族ベースの樹脂が製造されることにある。したがって、本発明の化合物を使用して製造された樹脂は、接着剤、コーティング、積層材および成形品などの多くの用途での使用に特に適している。
ヒドロキシ芳香族の化学で知られているように、芳香環上のヒドロキシ基に隣接する位置と反対側の位置(すなわち、オルトおよびパラ)は、残りの2つのメタ位とは異なる反応性を有している。したがって、式(I)では、R1、R3およびR5の基は類似の状況にあると見なすべきであり、ここでは、1つの組とする。
本発明の化合物において、R1、R3およびR5からなる組の少なくとも1つの基は、式(II)で与えられ、前記組中の他の1つまたは2つの基は、前記組の3つ全てが式(II)で与えられない場合、H、OHもしくはC1〜C12アルキル基、好ましくはH、OHもしくはC1〜C9アルキル基であるか、またはオリゴマーもしくはポリマー系である。2つの基が式(II)でないとき、それらは同じであっても異なっていてもよい。オリゴマーもしくはポリマー系は、ヒドロキシ芳香族樹脂であってよく、それはレゾールおよびノボラック型のいずれでもよいが、好ましくはノボラック型であり、また、異なるタイプの熱硬化性もしくは熱可塑性の系であってよい。本発明における組の採り得る構成例としては、R1が式(II)で示される基で、R3がHで、R5がH;R1が式(II)で示される基で、R3がHで、R5がCH3;R1がHで、R3が式(II)で示される基で、R5がH;R1とR3が式(II)で示される基で、R5がH;R1、R3およびR5が全て式(II)で示される基、が挙げられる。
本発明の化合物において、R2およびR4は、H、OH、C1〜C12アルキル基、またはオリゴマーまたはポリマー系であり、好ましくは、R2およびR4は、H、OHもしくはC1〜C9アルキル基である。R2とR4は同じであっても異なっていてもよい。いくつかの好ましい実施形態では、R2およびR4は、R2がOHで、R4がH;R2はCH3で、R4がH;R2がCH3で、R4がCH3;R2がHで、R4がC4H9、である。R1およびR2は多環化合物(multicyclic compound)の一部であってもよく、R2とR3、R3とR4またはR4とR5についても同様である。
式(II)で示される基は、本発明の化合物の不可欠の部分であり、式(I)中のR1、R3およびR5のいずれかであるか、これらの中の2つであるか、あるいは3つ全てである。式(II)において、EWGは電子吸引性基である。EWGそれ自体は、当業者には知られている。EWGの例としては、酸基、エステル基、シアノ基、ジアルキルアセタール基、アルデヒド基、置換フェニル基またトリハロメチル基が挙げられる。水素はEWGではない。好ましい実施形態では、式(II)の基は、式(III)で示される基である。
(式中、R6は、C1〜C12アルキル基、アリール基、アラルキル基またはシクロアルキル基である)
好ましくは、R6は、C1〜C12アルキル基であり、その例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルが挙げられる。より好ましくは、R6は、メチル基またはエチル基である。
(式中、R6は、C1〜C12アルキル基、アリール基、アラルキル基またはシクロアルキル基である)
好ましくは、R6は、C1〜C12アルキル基であり、その例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルが挙げられる。より好ましくは、R6は、メチル基またはエチル基である。
本発明のヒドロキシ芳香族化合物の好ましい実施形態では、R1、R3およびR5からなる組の少なくとも1つがHである。これは、ヒドロキシ芳香族化合物が、ヒドロキシ芳香族樹脂に典型的なオリゴマーまたはポリマー構造の製造により適するという利点を有する。別の好ましい実施形態では、R1、R3およびR5からなる組の2つがHである。これは、そのようなヒドロキシ芳香族化合物を、ヒドロキシ芳香族樹脂によく望まれる特性である3次元ネットワークの形成に使用することができるという利点を有する。R1、R3およびR5の全てがHであるか、または式(II)で示される基であるような実施形態においても、ヒドロキシ芳香族化合物は同様に3次元ネットワークを形成することができる。
上述したように、本発明は、また、ヒドロキシ芳香族化合物の製造方法に関する。本発明の方法は、式(IV)で示されるヒドロキシ芳香族化合物を式(V)で示される化合物と、場合により触媒の存在下で、接触させる反応工程を含む。ここで、式(IV)は、
(式中、R7、R8、R9、R10およびR11は、H、OH、C1〜C12アルキル基またはオリゴマーもしくはポリマー系であって、R7、R9およびR11からなる組の少なくとも1つ、好ましくは2つまたは3つさえもがHである)
であり、式(V)は、
(式中、EWHは、電子吸引性基であり、R12は、H、C1〜C12アルキル基、アリール基、アラルキル基またはシクロアルキル基である)
である。
(式中、R7、R8、R9、R10およびR11は、H、OH、C1〜C12アルキル基またはオリゴマーもしくはポリマー系であって、R7、R9およびR11からなる組の少なくとも1つ、好ましくは2つまたは3つさえもがHである)
であり、式(V)は、
(式中、EWHは、電子吸引性基であり、R12は、H、C1〜C12アルキル基、アリール基、アラルキル基またはシクロアルキル基である)
である。
式(V)で示される化合物は、式(VI)で示されるアルカノールヘミアセタールであることが好ましい。
(式中、R6は、C1〜C12アルキル基、アリール基、アラルキル基またはシクロアルキル基であり、R12は、H、C1〜C12アルキル基、アリール基、アラルキル基またはシクロアルキル基である)
好ましくは、R6およびR12は、C1〜C12アルキル基である。これらの例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびヘプチルが挙げられる。R6およびR12は、特にメチル基またはエチル基である。
(式中、R6は、C1〜C12アルキル基、アリール基、アラルキル基またはシクロアルキル基であり、R12は、H、C1〜C12アルキル基、アリール基、アラルキル基またはシクロアルキル基である)
好ましくは、R6およびR12は、C1〜C12アルキル基である。これらの例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびヘプチルが挙げられる。R6およびR12は、特にメチル基またはエチル基である。
本発明の方法は、反応工程を含む。反応工程の目的は、式(IV)で示されるヒドロキシ芳香族化合物を式(V)で示される化合物と反応させることである。したがって、これらの化合物は混合されなければならない。式(IV)または式(V)のいずれかの化合物は、ある単独の化合物であってもよいし、上に定義した式の範囲に含まれる2つもしくはそれ以上の化合物の混合物であってもよい。式(IV)で示される化合物の好ましい例としては、フェノール、(2,3もしくは4−)クレゾール、レゾルシノール、(2,3もしくは4−)tert−ブチルフェノール、(2,3もしくは4−)ノニルフェノール、(2,3− 2,4− 2,5− 2,6−もしくは3,4−)ジメチルフェノール、(2,3もしくは4−)エチルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびハイドロキノンが挙げられる。式(V)で示される化合物の例、特に式(VI)で示されるアルカノールヘミアセタールの好ましい例としては、メチルグリオキシレートメタノールヘミアセタール(GMHATM、DSMファイン・ケミカルズ(DSM Fine Chemicals)、リンツ(Linz))、エチルグリオキシレートエタノールヘミアセタール(GEHATM、DSMファイン・ケミカルズ(DSM Fine Chemicals)、リンツ(Linz))、エチルグリオキシレートメタノールヘミアセタール、ブチルグリオキシレートブタノールヘミアセタール、ブチルグリオキシレートメタノールヘミアセタール、ブチルグリオキシレートエタノールヘミアセタール、イソプロピルグリオキシレートイソプロパノールヘミアセタール、プロピルグリオキシレートプロパノールヘミアセタール、シクロヘキシルグリオキシレートメタノールヘミアセタールおよび2−エチルヘキシルグリオキシレートメタノールヘミアセタールが挙げられる。式Vで示される化合物のさらなる例としては、グリオキシル酸ハイドレート、メチルグリオキシレートハイドレートおよびエチルグリオキシレートハイドレートがある。
本発明の反応工程は、溶媒または分散媒中で実施することが好ましい。溶媒としては、反応物質が反応を起こすために十分に溶解するような化合物が適している。そのような溶媒の例としては、水および各種有機溶媒が挙げられる。式(IV)および(V)で示される特定の化合物によっては、1種もしくはそれ以上の反応物質を溶媒として使用することが十分可能である。そのような場合には、本来反応物質でない溶媒を使用せずに済ますことができ、反応工程を大規模に実施することが可能になる。特に、式(V)、特に式(VI)で示される化合物の多くは、10℃〜100℃の温度で液体であり、反応物質としてのみならず分散媒/溶媒として機能する。
それぞれの化合物が一旦混合されると、反応工程は自然に進行するが、反応を促進するために触媒の存在下に化合物を混合することが有用である。触媒としては、酸または塩基の使用が好ましい。特にルイス(Lewis)またはブレンステッド(Bronsted)タイプの酸(例えば硫酸など)が好ましく、これによりpHは0〜5、好ましくは1〜4に、さらに好ましくは2〜3に低下する。適当な酸触媒の例としては、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、ホウ酸、テトラフルオロホウ酸、パラトルエンスルホン酸、蟻酸、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムが挙げられる。適当な塩基触媒の例としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、DABCO(ジアザビシクロオクタン)、DBU(ジアザビシクロウンデセン)、DMAP(4−ジメチルアミノピリジン)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。
本方法の反応工程の温度は、広い範囲で変化させることができ、好ましくは10℃〜100℃である。より好ましくは、方法は40℃〜90℃で実施される。本方法の圧力は、好ましくは0.005MPa〜1.0MPaであり、より好ましくは0.02MPa〜0.2MPaであり、特に好ましくは圧力は大気圧である。
反応工程の結果、式(I)で示される化合物が生成される。また、化合物R12OHが副生成物として放出される。式(I)で示される化合物を分離することが望ましく、これは、例えばpH変化、溶媒の交換、蒸発および/または沈殿の組み合わせなど、それ自体知られる技術により達成される。式(I)の化合物が分離されないなら、R12OHを除去することがなお望ましい。これは、例えば蒸留など、それ自体知られる技術により達成される。しかしながら、式(I)で示される化合物の存在下にR12OHを残留させることが許容される場合、あるいは、望ましい場合すらもある。
本発明のヒドロキシ芳香族化合物の製造方法において、式(V)(E)のEWG含有化合物と式(IV)(H)のヒドロキシ芳香族化合物とのモル比(ここでは、E/H比と称する)は広い範囲で変化させることができる。E/H比は、好ましくは約0.1〜約10であり、より好ましくは約0.5〜約3である。E/H比が約0.5以下であると、得られる本発明のヒドロキシ芳香族化合物は、式(I)中、R1、R3およびR5からなる組の1つが式(II)で示される基である化合物を大量に含む混合物となる。E/H比が約3以上であると、得られる本発明のヒドロキシ芳香族化合物は、式(I)中、R1、R3およびR5からなる組の3つ全てが式(II)で示される基である化合物を大量に含む混合物となる。E/H比が約1または2であると、得られる本発明のヒドロキシ芳香族化合物は、式(I)中、R1、R3およびR5からなる組の1つ、2つまたは3つ全てが式(II)で示される基である化合物が全て明確に現れる混合物となる。
本発明の反応工程を実施した場合に、多くのヒドロキシ芳香族化合物は、芳香環部分のオルトの位置で反応する前に、まずパラの位置で反応する傾向があり、したがって式(VII)または式(VIII)で示される化合物が生成されることがわかった。したがって本発明はまた、式(VII)、特に式(VIII)で示される化合物、最も好ましくはR1、R2、R4およびR5が全てHで、R6がメチル基である化合物に関するものである。
式(VII)および式(VIII)で示される化合物は、通常、式(I)で示される化合物を製造するための前述の反応工程を長時間実施し、E/Hモル比を好ましくは0.3〜0.7、より好ましくは0.4〜0.6とすることによって生成される。
本発明は、さらに、ヒドロキシ芳香族樹脂の製造方法に関するものである。そのような製造方法はそれ自体公知であり、ヒドロキシ芳香族化合物とアルデヒドなどの化合物との縮合反応を含み、また、通常、その後の縮合反応も含む。そのような方法の例には、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂の製造方法がある。本発明の製造方法では、式(I)で示される化合物が、(後の)縮合反応に使用される。(後の)縮合反応は、通常、時間はさらに延長されるものの、式(I)、(VII)および(VIII)で示される化合物の製造について前に記載したのと同じ方法でかつ類似の条件で実施することができる。式(V)、そして特に式(VI)の範囲内の化合物は、式(I)で示されるヒドロキシ芳香族化合物および/または既に生成しているオリゴマーもしくはポリマー構造は別として、樹脂の縮合反応に関与する唯一の他の化合物であり、式(V)で示される化合物と組み合わせて、ホルムアルデヒドまたはフルフラール(C5H4O2)のようなアルデヒドなどの他の化合物を使用することも可能である。しかしながら、樹脂中のヒドロキシ芳香環部分との縮合反応に関与する化合物の少なくとも5または10モル%は、式(V)で示される化合物の1つまたはそれ以上であることが好ましく、これは少なくとも20または30%であることがより好ましく、これは少なくとも40または50%であることが特に好ましい。樹脂中のヒドロキシ芳香環部分と反応する化合物の少なくとも60または70モル%が、式(V)で示される化合物の1つまたはそれ以上であることがさらに好ましく、これが少なくとも80または90%、あるいは実質的に100%でさえあることが最も好ましい。
樹脂は、出発材料として使用されるヒドロキシ芳香族化合物由来のヒドロキシ芳香族部分(H)を含む。樹脂は、また、EWG由来の部分、および、恐らくはアルデヒド由来の部分を含む(まとめて、Aと称する)。したがって、樹脂はA/Hモル比を有する。樹脂のA/Hモル比は、好ましくは0.5〜3であり、より好ましくは0.75〜2である。A/Hモル比が1を超えると、活性な「A」由来のヒドロキシ基が利用できるレゾール型の樹脂を生成することができる。A/Hモル比が1未満であると、実質的に全ての「A」由来のヒドロキシル官能基がC−CおよびC−Oエーテル結合の生成反応に消費されているノボラック型の樹脂を生成することができる。
上記方法の結果として、本発明はまた、そのようにして得られるヒドロキシ芳香族樹脂に関するものである。
本発明の一実施形態においては、ヒドロキシ芳香族化合物としての式(IV)で示される化合物と式(V)で示される化合物とを含む原料から、ヒドロキシ芳香族樹脂を直接製造することができる。これを達成する条件は、式(I)で示される化合物のプロセスないし製造に関して、上に示したものと類似しており、当業者が簡単なルーチンの実験を行い、またフェノールホルムアルデヒド樹脂の製造に関する知識も使用することによって、確立され得るものである。
さらに、本発明は、コーティング、または、パーティクルボードのような木材ベースのパネルや積層材などの成形品、あるいは、ストーンウールまたはグラスウールなどの鉱物ウールの製造のための、本発明のヒドロキシ芳香族アルデヒド樹脂の使用に関する。この目的のために、フェノールホルムアルデヒド樹脂のような公知のヒドロキシ芳香族アルデヒド樹脂の使用から本質的に知られているものと類似した方法および条件によって、この樹脂を使用することができる。最終的な適用の処理で使用する前に、触媒や他の添加剤をこの樹脂に加えてもよい。一般的な添加剤の例としては、離型剤、帯電防止剤、接着促進剤、可塑剤、色増強剤、難燃剤、充填剤、流動促進剤、着色剤、希釈剤、重合開始剤、紫外線安定剤、熱安定剤が挙げられる。充填剤の例としては、ガラス繊維、マイカ、炭素繊維、金属繊維、クレー、アラミド繊維および強ポリエチレン繊維が挙げられる。
本発明の樹脂は、そのまま使用してもよいが、しかし、また、変性工程に供することも可能である。これは、特定の方法でその機能性を変化もしくは強化するよう設計された反応工程である。機能性を変化させる例としては、樹脂の水への溶解度が挙げられる。機能性を強化する例としては、反応性基の付加が挙げられる。変性工程の例としては、樹脂をOH基と反応する化合物と接触させることが挙げられる。そのような化合物の例としては、エピクロロヒドリンが挙げられる。変性工程の別の例としては、樹脂をOR6基と反応する化合物と接触させることが挙げられる。そのような化合物の例としては、水が挙げられる。OR6基をCOOH基に加水分解すると、樹脂の水への溶解度が増大する。また、変性工程はOR6基とアミンなどの適当な化合物とのエステル交換反応により行うことも可能である。
本発明は、以下の限定されない具体的実施形態で示すように、種々の方法で実施することができる。
第1の具体的実施形態においては、フェノールおよびホルムアルデヒドを原料として使用し、pH2で、公知の方法で、ノボラック型の樹脂を製造する。フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂は、その後、メチルグリオキシレートメタノールヘミアセタール(GMHA)と混合する。これは、水性環境で、約80℃の温度および酸性触媒を使用してpH2で行われる。反応は60〜120分継続し、メタノールを放出し、本発明の樹脂が生成される。本発明の樹脂は、その後、好ましくは硫酸などの酸性触媒が添加され、パーティクルボードの製造、または鉱物ウールの製造における接着剤として使用される。パーティクルボードの製造では、使用量、圧力条件および他の状況は、標準である(例えば温度は約140℃)。得られるパーティクルボードは、標準のフェノールホルムアルデヒド樹脂のみを使用して製造されたパーティクルボードと比べ、ホルムアルデヒドの放出が極めて少ない。ストーンウールなどの鉱物ウールの製造では、樹脂は、含水量が約95〜98重量%の混合物が生成されるよう、場合により助剤として金属水酸化物またはアミンもしくはアンモニアなどの塩基を添加して、水と混合される。この混合物は、その後、生成された直後の約1900℃の温度を有するストーンウールにスプレーされる。この混合物は、冷却剤として作用し、同時に樹脂はそれによって部分的に硬化して実質的に最終製品を生成する。これは全て約1〜3秒の間に起こる。約140〜200℃の高温空気で後処理することによって、完全に硬化した製品が得られる。
第2の具体的実施形態においては、フェノールとGMHAとを水性溶液中で混合する。フェノールとGMHAのモル比は2:3である。高温(約80℃)およびpH2以下で、レゾール型の樹脂が約60分で生成される。その後、温度を約150℃に上げ、その温度で混合物を約3時間攪拌し、安定な樹脂を得る。その後、硫酸などの酸触媒を追加して使用への準備を整える。この樹脂は、その後、先の具体的実施形態と同じ方法で、ストーンウールの製造に使用される。
第3の具体的実施形態では、クレゾールとGMHAとを水性溶液中で混合する。クレゾールとGMHAのモル比は4:3である。高温(90℃)および低pH(2)の条件下で、ノボラック型の樹脂が生成される。この樹脂は、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)などの硬化剤を加えることによって、水性コーティングに変換することができる。ADHを硬化剤として使用すると、コーティングは室温で急速(30分以内)に硬化する。
第4の具体的実施形態では、クレゾールとGMHAとを水性溶液中で混合する。クレゾールとGMHAのモル比は4:3である。高温(90℃)および低pH(2)の条件下で、ノボラック型の樹脂が生成される。樹脂のエステル官能基は、その後、場合によりpHを10に上げることによって鹸化される。続いて、pHを約2に低下させ、水を蒸発させて、酸機能の固体樹脂を得る。この樹脂は、その後、エピコートTM828(EpikoteTM828)(ビスフェノールAとエピクロロヒドリンから生成する液状エポキシ樹脂)などのエポキシ樹脂と混合される。得られた混合物は、その後、成型されプレスされて成形品の形態で硬化する。
図1および図2を参照しながら、以下の実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1および図2の図面は、実施例1に記載するように、NMRの測定結果を示す。
実施例1
メチルグリオキシレートメタノールヘミアセタール(GMHA;純度90重量%、3モル)313.7グラムとフェノール(純度100%、2モル)190.1グラムとを、攪拌しながら、23℃、大気圧で、1リットルの容器に加えた。フェノール型の変色をできる限り避けるために、容器を窒素雰囲気下に置いた。固体フェノールを液体GMHAに溶解した。攪拌しながら、85重量%の硫酸5mlを反応混合物に滴下した。透明な反応混合物を100℃に加熱し、100℃で3時間保持した。この反応時間の間、樹脂の粘度(室温で測定)は1Pa・sから330Pa・sに上昇した。その後、樹脂を室温にまで冷却することによって反応を終了させた。こうして得られた樹脂のNMRスキャン(DMSOに溶解)を図1に示す。パラ位のみが置換されたフェノール部分の強い存在を示す証拠であり、その存在および/または式(VIII)で示される化合物からの樹脂生成を示す、ピーク3および6が存在することに留意されたい。
メチルグリオキシレートメタノールヘミアセタール(GMHA;純度90重量%、3モル)313.7グラムとフェノール(純度100%、2モル)190.1グラムとを、攪拌しながら、23℃、大気圧で、1リットルの容器に加えた。フェノール型の変色をできる限り避けるために、容器を窒素雰囲気下に置いた。固体フェノールを液体GMHAに溶解した。攪拌しながら、85重量%の硫酸5mlを反応混合物に滴下した。透明な反応混合物を100℃に加熱し、100℃で3時間保持した。この反応時間の間、樹脂の粘度(室温で測定)は1Pa・sから330Pa・sに上昇した。その後、樹脂を室温にまで冷却することによって反応を終了させた。こうして得られた樹脂のNMRスキャン(DMSOに溶解)を図1に示す。パラ位のみが置換されたフェノール部分の強い存在を示す証拠であり、その存在および/または式(VIII)で示される化合物からの樹脂生成を示す、ピーク3および6が存在することに留意されたい。
こうして得られた樹脂を使用して、さらに2種類の試験、反応性試験および硬化性/溶解性試験を実施した。
反応性試験では、少量の樹脂を容器に入れ、130℃に加熱した。触媒や他の化合物は加えなかった。攪拌棒を樹脂に突き刺し、それによって、樹脂が塊/ゲルになる段階にまで反応して攪拌が不可能になるまで(これは10分以内に起こった)、樹脂を連続的に攪拌した。ここで部分的に硬化した樹脂を、困難ではあったが、DMSOに溶解し、NMRスペクトルを測定した(図2参照)。図1と比較すると、ピーク3および6は小さくなるか、または消失さえした。これは、パラ位のみが置換したフェノール部分が実質的に存在していないことを意味する。そのようなフェノール部分の全ては依然存在しているものの、少なくとも1つのオルト位でも反応したからである。
溶解性試験では、樹脂を200℃に昇温し、その温度に2時間保持した。触媒や他の化合物は加えなかった。2時間後、樹脂は硬質なガラス状物質へと硬化した。これは完全硬化にかなり近いものであり、さらに、この物質はもはやDMSOに溶解させることができないという事実によっても確認される。冷却後、硬化した樹脂を粉砕して微小粒子にした。その後、粉砕樹脂5グラムと水95グラムからなる混合物を調製した。この混合物を80℃に加熱し、この温度に3時間保持した。冷却後、硬化樹脂粒子を混合物から濾過し、120℃で乾燥し秤量した。96重量%、すなわち4.80グラムの樹脂が回収された。
Claims (13)
- R1、R3およびR5からなる組の1つまたは2つが、式(II)で示される基であり、かつ、R1、R3およびR5からなる組の前記残りの1つまたは2つの少なくとも1つが、Hである請求項1または2に記載のヒドロキシ芳香族化合物。
- 酸が触媒として使用される請求項4または5に記載の方法。
- 請求項1、2、3、6または7のいずれか一項に記載の化合物が原料として使用されることを特徴とするヒドロキシ芳香族樹脂の製造方法。
- 原料は、ヒドロキシ芳香族化合物として式(IV)で示される化合物と、式(V)で示される化合物とを含むことを特徴とするヒドロキシ芳香族樹脂の製造方法。
- 請求項9または10に記載の方法によって得られるヒドロキシ芳香族樹脂。
- 請求項11に記載のヒドロキシ芳香族樹脂の、コーティングにおける使用。
- 請求項11に記載のヒドロキシ芳香族樹脂の、成形品、特に木材ベースのパネルまたは鉱物ウールの製造における使用。
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