1つの実装形態は、内燃機関、エンジンに供給される第1の燃料の量を制御するようになされた第1の燃料調整装置、および第1の燃料がエンジンに供給されるのと同時に、エンジンに供給される第2の燃料の量を制御するようになされた第2の燃料調整装置を備えるエンジン・システムを包含する。エンジン・システムは、第2の燃料調整装置に連結され、特定の時間に第1の燃料を点火させる際に、動作させるためにエンジンに供給される第1の燃料の量との関係でエンジンに供給される第2の燃料の量を調整するために、定常状態のエンジン動作の間、第2の燃料調整装置に信号を送るようになされた制御装置も備える。制御装置は同時に、定常状態のエンジン動作での関係とは異なる様式で、エンジンに供給される第2の燃料の量を調整するために過渡的なエンジン動作の間に第2の燃料調整装置に信号を送るようになされている。
別の実装形態は、プロセッサを備えるエンジン制御装置を包含する。プロセッサは、エンジンに供給するための第1の燃料の量を決定すること、特定の時間に第1の燃料を点火させるためにエンジンに供給される第1の燃料の量に関連して、定常状態のエンジン動作状態で第1の燃料と同時にエンジンに供給するための第2の燃料の量を決定すること、過渡的なエンジン動作状態で、定常状態のエンジン動作での関係とは異なる様式で第1の燃料と同時にエンジンに供給するための第2の燃料の量を決定することを含む動作を遂行するように構成されている。
別の実装形態は、燃料をエンジンに供給する方法を包含する。方法では、エンジンに供給するための第1の燃料の量が決定される。定常状態のエンジン動作で第1の燃料と同時にエンジンに供給するための第2の燃料の量は、特定のタイミングで第1の燃料を点火させるための第1の燃料に関連して決定される。過渡的なエンジン動作で第1の燃料と同時にエンジンに供給するための第2の燃料の量は、定常状態のエンジン動作での関係とは異なる様式で決定される。
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細が、添付の図面および以下の説明に明記される。本発明のその他の特徴、目的、および利点は、説明、図面、および特許請求の範囲から明らかになる。
様々な図面での同じ参照符号は、同様の要素を示す。
最初に図1を参照すると、本発明に従って構築された例示のエンジン・システム100が概略的に示される。エンジン制御システム100は、1つまたは複数のエンジン・センサ106、および1つまたは複数のアクチュエータ108と連絡するために動作的に連結されたエンジン制御モジュール(ECM)104を備える。エンジン・センサ106は、内燃機関102に連結され、エンジン102および/またはエンジン・システム100の1つまたは複数の動作特性を感知し、動作特性を表す信号を出力することができる。一般的なエンジン動作特性のいくつかの例には、エンジン速度、マニホルド絶対圧力(manifold absolute pressure)(MAP)または吸気マニホルド密度(IMD)(intake manifold density)などのトルク指示特性(torque indicating characteristic)、エンジンの出力、排気ガス酸素含有量(exhaust oxygen content)などのエンジンの空燃比を示す特性、周囲および/またはエンジン温度、周囲圧力、その他が含まれる。アクチュエータ108は、エンジンおよびその他のエンジン・システム構成要素を制御するのに使用される様々なエンジン・システム構成要素(具体的には示されない)を制御するようになされる。一般的なエンジン構成要素のいくつかの例には、スロットル、ターボチャージャ・バイパス(turbocharger bypass)またはウエイスト・ゲート(wastegate)、点火システム、調整可能な燃料混合気などの空気/燃料調整デバイス、燃料圧力調整器、燃料噴射器、その他が含まれる。ECM104は、その他の構成要素110と連絡するように連結されることもできる。その他の構成要素110のいくつかの例には、使用者がECM104を検索し、あるいはデータまたは命令をECM104に入力できるようにするユーザ・インターフェース、エンジンまたはエンジン・システムの動作特性以外の情報を感知する1つまたは複数の外部センサ、ECM104がシステムの特性を連絡することができる監視または診断装置、その他を含めることができる。
図2を参照すると、ECM104は、コンピュータが読取り可能な媒体またはメモリ114に動作的に接続されたプロセッサ112を備える。コンピュータが読取り可能な媒体114は、ECM104から全体的にまたは部分的に取外し可能である。コンピュータが読取り可能な媒体114は、本明細書に述べられた方法のうちの1つまたは複数を遂行するプロセッサ112によって使用される命令を含む。ECM104は、センサ106、アクチュエータ108、およびその他の構成要素110などから1つまたは複数の入力信号(入力1…入力n)を受け取ることができ、センサ106、アクチュエータ108、およびその他の構成要素110などに1つまたは複数の出力信号(出力1…出力n)を出力することができる。
ECM104は、エンジン102(図1)をたとえば特定の速度、トルク出力、またはその他の特定の動作状態などの特定の動作状態に加速(accelerate)または減速(decelerate)させ、エンジンを定常状態の動作に維持するように動作する。この目的のために、ECM104は、エンジン状態パラメータを含むセンサ106から入力を受け取り、エンジン102を動作させるためにアクチュエータ108を制御するようになされた1つまたは複数のアクチュエータ制御信号を決定し、出力する。
図3は、エンジンに供給される空気と燃料の混合物を制御するのに使用するための例示のECM104を示す。図3の例示のECM104は、エンジン状態パラメータの入力をセンサ106、この場合には、MAPまたはIMDセンサなどのトルク指示特性センサ316およびエンジン速度センサ318から受け取り、信号をアクチュエータ108に出力する。アクチュエータ108は、少なくとも、エンジンに供給される空気および燃料の比率を制御するように動作可能な主燃料制御調整装置322およびパイロット燃料制御調整装置324を備える。主燃料制御調整装置322は主燃料を制御し、パイロット燃料制御調整装置324はパイロット燃料を制御する。燃料制御調整装置322および324の例には、燃料圧力調整装置または固定された空気/燃料混合器を使用するエンジン・システム内のエア・バイパス、調整可能な空気/燃料混合器、燃焼室内に直接的に噴射し、あるいは燃焼室から離れて噴射する1つまたは複数の燃料噴射器、あるいはその他の空気/燃料調整装置が含まれる。パイロット燃料制御調整装置324などの燃料噴射器を使用すると、主燃料に関連するパイロット燃料の正確なタイミングおよび計量が可能になる。したがって、1つの例示のエンジン・システムでは、燃料制御調整装置322は、調整可能な空気/燃料混合器、または燃料圧力調整装置または固定された空気/燃料混合器によって供給される空気および主燃料の比率を制御するのに使用されるエア・バイパスのいずれかである。パイロット燃料調整装置322は、パイロット燃料を燃焼室内に直接的に噴射するように配置された1つまたは複数の燃料噴射器である。ECM104は、トルク指示特性センサ316およびエンジン速度センサ318から入力を受け取り、下記に論じられているような空気/燃料制御調整装置322および324の動作を制御するために、アクチュエータ制御信号を決定し、出力する。
ECM104は、ラムダ目標値決定器326を備え、その決定器は、1つまたは複数のエンジン状態パラメータを受け取り、所望のラムダ目標値を維持するように選択された、主燃料の寄与およびパイロット燃料の寄与を決定し、出力する。ラムダ目標値は、エンジン動作を実質的に定常状態に維持するように選択される。下記により詳細に論じられるように、主燃料およびパイロット燃料の寄与は、燃料制御調整装置322および324を制御するように動作可能なアクチュエータ制御信号を決定するのに使用される。主燃料およびパイロット燃料の寄与を決定する際に、例示のECM104は、エンジン速度センサ318からのエンジン速度、トルク指示特性センサ316からのトルクを指示する特性(たとえばMAPまたはIMD)、および任意で、たとえば、周囲および/または吸気温度などのその他のパラメータを使用する。ECM104は、マスエア・センサ(mass‐air sensor)または燃焼混合物の流れ容量センサなどの他のセンサをその代わりに使用し、または上述のものと組み合わせて使用できることも予見される。
パイロット燃料供給の構成として、パイロット燃料の燃焼は、燃焼室内の圧力と温度を主燃料の点火閾値に上昇させることによって主燃料を点火させることで作用する。主燃料の点火閾値に達すると、主燃料は(残りのパイロット燃料に加えて)燃焼を開始する。パイロット燃料の寄与の量は、エンジンの燃焼サイクルでの特定の時間に主燃料の点火閾値に達するように(1サイクルは燃焼室の吸気から排気までである)、主燃料の寄与の量に関連してラムダ目標値決定器326によって選択される。特定の時間は、燃焼のエネルギーをエンジンからのトルク出力に効率的に変換するために、燃焼室内で空気、主燃料、およびパイロット燃料の実質的な完全燃焼を達成することと、燃焼からのピーク圧力の発生を燃焼室内でのピストンの位置と同期させることとの間の均衡で選択される。
ラムダ目標値決定器326は、定常状態のエンジン動作を維持するために決定された主燃料およびパイロット燃料の寄与と相関関係にある、エンジン速度およびトルク指示特性を表す値を少なくとも含む参照表を使用して、主燃料およびパイロット燃料の寄与を決定することができる。その代わりに、または参照表と組み合わせて、ラムダ目標値決定器324は、1つまたは複数のセンサ106からの入力、たとえば、エンジン速度およびトルク指示特性の関数としての公式をなす計算を使用してラムダ目標値を決定することができる。どちらの場合にも、主燃料の寄与およびパイロット燃料の寄与は、定常状態の動作を維持するためにエンジンに特定の燃焼混合気を提供する目的で、それぞれのエンジン速度およびトルク指示特性値に関連して選択される。したがって、異なるラムダ目標値は、異なるエンジン動作状態を達成することができる。さらに、どちらの場合にも、パイロット燃料の寄与は、特定の時間に主燃料の点火閾値を達成するために、主燃料の寄与の関数として選択される。
ECM104は、燃料決定器340からのトルク要求からの入力を受け取り、過渡的なエンジン動作状態に応答して主燃料の寄与およびパイロット燃料の寄与を増加または減少させるための量を決定する、ラムダ・オフセット決定器(lambda offset determiner)338を備える。ラムダ・オフセット決定器338の出力は、主燃料アクチュエータ伝達機能336の前の主燃料の寄与を修正する(正または負の値の)主燃料のオフセット、およびパイロット燃料アクチュエータ伝達機能334の前のパイロット燃料の寄与を修正する(正または負の値の)パイロット燃料オフセットである。例示のECM104では、主燃料のオフセットおよびパイロット燃料のオフセットは、それぞれ主燃料の寄与およびパイロット燃料の寄与に加えられるが、主燃料およびパイロット燃料のオフセットが乗数としてまたは公式をなす計算で適用される可能性があり、または(たとえば主燃料オフセットが加数(adder)として適用され、パイロット燃料のオフセットが乗数として適用されるなど)それぞれ異なった形で適用される可能性があることが予見される。
過渡的な状態では、エンジンをトルク、速度または両方において加速または減速させた場合、エンジンの空気/燃料要求は、加速(acceleration)の間に増加し、減速(deceleration)の間に減少する傾向にある。アクセレレーションの間に補償するために、希薄または理論混合比付近(たとえば空気/燃料比を濃厚にするなど)で稼動しているとき、ラムダ・オフセット決定器338は、エンジンに供給される燃料の量をエンジンを新しい定常状態の動作状態で動作させることが要求されるところの上に一時的に上昇させる。アクセレレーションの間に供給される燃料の量を増加させることにより、エンジンのトルク出力が増加し、より応答性の良い性能、および増加したトルク負荷のより敏速な許容をもたらす。デセレレーションの間には、ラムダ・オフセット決定器338は、供給される燃料の量をエンジンを新しい定常状態の動作状態で動作させることがエンジンによって要求されるところの下に減少させ(すなわち空気/燃料比を希薄にする)、それによってエンジンが不必要なトルク出力を発散し、過回転を防止するのを助ける。エンジンに供給される燃料の量の増加または減少の量は、エンジンの過渡性の度合いと関連付けることができる。たとえば、エンジンが定常状態の動作から偏るにつれ、定常状態の動作からの偏りが生じる比率は、過渡性の度合いを示す。
主燃料のオフセットおよびパイロット燃料のオフセットが主燃料の寄与およびパイロット燃料の寄与と加数として結び付けられる場合の構成では、ラムダ・オフセット決定器338は、正の主燃料およびパイロット燃料のオフセットを出力することによってアクセレレーションの間に供給される燃料の量を増加させ、主燃料およびパイロット燃料の寄与から減算する負のオフセットを出力することによってデセレレーションの間に供給される燃料の量を減少させる。
ラムダ・オフセット決定器338がパイロット燃料の寄与に影響を与える量は、主燃料に対してそれが定常状態の動作の下で決定されるのと同様な関係で決定される必要はない。たとえば、オフセット決定器338は、燃焼サイクルの特定の時間に主燃料を点火させるのに必要なよりも多くのパイロット燃料がエンジンに提供されるように、アクセレレーションの間のパイロット燃料のオフセットを決定することができる。場合によっては、パイロット燃料のオフセットは、主燃料のオフセットよりも大きくなるように、またはエンジンが主燃料よりも多くのパイロット燃料を与えられるように決定できる。パイロット燃料のオフセットを決定する1つの様式は、速度またはトルクのアクセレレーションの少なくとも一部分の間に、主にパイロット燃料によってエンジンが加速されるようにパイロット燃料のオフセットを選択することを含むことができる。言い換えれば、速度またはトルクのアクセレレーションの少なくとも一部分に関しては、エンジンによって生み出されたトルクの大部分は、パイロット燃料を燃焼させることから生み出される。この目的のために、主燃料とパイロット燃料は、それぞれが所与の燃焼サイクルで生み出すトルクの量を示す相対トルク寄与を割り当てられることができる。上記に示したように、定常状態の動作では、パイロット燃料の燃焼に起因するいかなるトルク寄与も二次的であり、主燃料を点火させるのに必要なパイロット燃料の量はほんのわずかなので、パイロット燃料のトルク寄与は小さなものである。しかし、アクセレレーションにおいては、ラムダ・オフセット決定器338によって決定されたパイロット燃料のオフセットは、主燃料のトルク寄与を上回るパイロット燃料からの相対的なトルク寄与を増加させるように選択できる。ほとんどの場合に、これは特定の時間に主燃料を点火させるのに必要なよりも多くのパイロット燃料を提供し、ならびにたいていは主燃料より多くのパイロット燃料を提供する。増加したパイロット・トルク寄与は、過渡的な状態の間に定常状態の状態から偏るエンジンの動作の量の関数として、また場合によってはその量に比例して選択できる。そのような偏りは、下記により詳細に論じられる燃料決定器340からのトルク要求から導き出すことができる。
デセレレーションの際には、ラムダ・オフセット決定器338は、定常状態での関係と同様な関係で主燃料オフセットおよびパイロット燃料のオフセットを選択するように構成できる。言い換えれば、パイロット燃料のオフセットは、燃焼サイクルでの特定の時間に主燃料を点火させるように主燃料のオフセットに関連して選択できる。主燃料およびパイロット燃料の増加または減少は、過渡的な状態の間に定常状態の状態から偏るエンジンの動作の量の関数として、また場合によってはその量に比例して選択できる。そのような偏りは、下記により詳細に論じられる燃料決定器340からのトルク要求から導き出すことができる。
ラムダ・オフセット決定器338は、(燃料決定器340からのトルク要求からの)燃料からのトルクと、トルク指示特性センサ316からのMAPまたはIMD、ならびにエンジン速度センサ318およびエンジン速度目標値320からのエンジン速度などの1つまたは複数のエンジン状態パラメータとを、主燃料オフセット値と関連付ける参照表を使用して、パイロット燃料のオフセットを決定できる。あるいは、または参照表と組み合わせて、ラムダ・オフセット決定器338は、パイロット燃料のオフセットを決定するための公式をなす計算を使用することができる。同様にして、主燃料のオフセットは、1つまたは複数のエンジン状態のパラメータを主燃料のオフセット値および/または公式をなす計算と関連付ける参照表を使用して決定できる。主燃料のオフセットに関する参照表または公式をなす計算は、燃料決定器340からのトルク要求による燃料からのトルクを評価することができ、または燃料からのトルクを除外することができる。主燃料のオフセットに関する参照表または公式をなす計算が、燃料決定器340からのトルク要求による燃料からのトルクを評価する場合、ラムダ・オフセット決定器338は、たとえば主燃料のオフセットを決定するのに使用される燃料からのトルクの量を低下させることによって量を調整する(入力328として受け取られる)較正係数を適用することができる。燃料からのトルクの残りの部分は、パイロット燃料オフセットを決定するのに使用される。較正係数は、燃料からのトルクの大部分がアクセレレーションの間にパイロット燃料のオフセットを決定するのに使用されるように選択できる。主燃料のオフセットに関する参照表または公式をなす計算が燃料からのトルクを評価しない場合には、燃料の値からの全体のトルクがパイロット燃料のオフセットを決定するのに使用される。あるいは、または較正係数と組み合わせて、参照表または公式をなす計算は、アクセレレーションの際の燃料の要求からのトルクを適合させる際にパイロット燃料のオフセットからの増加された入力を有するための要求を評価することができる。
アクセレレーションの間のパイロット燃料の意図的に増加されたトルク寄与を評価しないラムダ・オフセット決定器によるパイロット燃料のオフセットの決定は、それが主燃料のオフセットのみによってパイロット燃料のオフセットを決定する点でラムダ・オフセット決定器338でのパイロット燃料のオフセットの決定とは異なる。言い換えれば、パイロット燃料のオフセットは、主燃料のオフセットによって加えられた追加の主燃料を点火させるのに必要なパイロット燃料の追加の量の関数として決定される。増加されたトルクの寄与をもたらすためにアクセレレーションの間のパイロット燃料のオフセットを選択することにより、より速い過渡的な応答(たとえば、アクセレレーションおよび負荷の受容など)をもたらすことができる。たとえば、気体状の天然ガスを主燃料とし、ディーゼルをパイロット燃料とするエンジンは多くの場合そうであるように、主燃料がエンジンの吸気のガス・ミキサを使用して導入され、パイロット燃料が燃焼室に直接的に噴射できる。ガス・ミキサは実質的に燃焼室から移動しているので、ガス・ミキサでの主燃料の燃料供給の変化を生じさせることと、エンジンのトルク出力の変化として実現されている燃料の変化との間の給送の遅れは、その結果として(すなわち、負荷における変化への遅い応答、または速度における変化を開始させるのが遅いなど)過渡的な応答を遅くさせる。燃料が燃焼室に直接的に噴射されるので、燃焼室内に直接的に噴射されるパイロット燃料の燃料供給の変化を遂行すること、およびそれがエンジンのトルク出力の変化として実現されることがはるかに速い。
ラムダ・オフセット決定器338は、たとえば多気筒機関の異なるシリンダによって生成されたトルクを均衡させるために、シリンダごとのパイロット燃料のオフセットを調整するように機能することもできる。調整は、たとえば、エンジンの周期的な試験によるなどして予め決められ、エンジンの各燃焼サイクルでエンジンに適用される、静的なものであることができる。あるいは、異なるシリンダによって生成されたトルクが変化するので、調整は、エンジンに連結されたトルクセンサなどから連続的に導かれ、異なる調整の量がパイロット燃料のオフセットに加えられて動的に決定することができる。調整は、所与のシリンダのトルク出力から直接的に決定される必要はないが、ピーク・シリンダ圧、図示平均有効圧力、全放熱量、および瞬時クランクシャフト角速度などのトルクに関連付けられたその他のパラメータに基づくことができる。さらに、ラムダ・オフセット決定器338は、過渡的なエンジン動作状態の間のみ、異なるシリンダによって生成されたトルクを均衡させる働きをする必要はなく、定常状態の状態の間にも動作することができる。パイロット燃料のオフセットを使用するシリンダごとに基づいた調整は、ECM104がシリンダ間のばらつきに対して補償できるようにし、主燃料がガス・ミキサによって計量され、パイロット燃料が燃焼室内に直接的に噴射される場合にシリンダごとに補償できるようにする。
主燃料アクチュエータ転送機能336は、少なくとも主燃料寄与信号(主燃料オフセット信号を組み込む)を受け取り、主燃料調整装置322を動作させるようになされたアクチュエータ制御信号を決定する。パイロット燃料アクチュエータ転送機能334は、少なくともパイロット燃料寄与信号(パイロット燃料オフセット信号を組み込む)を受け取り、パイロット燃料調整装置324を動作させるようになされたアクチュエータ制御信号を決定する。アクチュエータ転送機能336および334は、上述のエンジン状態パラメータ、燃料圧力、周囲圧力、エンジン温度、周囲温度、その他などの、そのそれぞれのアクチュエータ制御信号を決定する際のその他の入力を受け取り、評価することができる。アクチュエータ転送機能334および336は、主/パイロット寄与信号と任意のその他の入力の関数としての計算によって、また参照表および計算の組合せによって、またはその他の方法によって、主/パイロット寄与信号および任意のその他の入力をアクチュエータ制御信号に関連付ける参照表を使用してそのそれぞれのアクチュエータ制御信号を決定する。
図4は、決定器340に適した燃料決定器からの例示のトルク要求の機能的な動作を示す。例示の決定器340は、エンジンのガバナに使用されるPID制御器などのPID制御装置410を備える。PID制御器410は、定常状態のエンジン速度を維持するように構成される場合、使用者が定めたエンジン速度目標値320、およびエンジン速度センサ318から測定されたエンジン速度を受け取る。PID制御器410は、エンジン速度目標値(set−point)320と測定されたエンジン速度(たとえばエラー)の間の差を示す比例ターム(proportional term)、時間によるエラーの積分を示す積分ターム(integral term)、および時間によるエラーの変化の比率を示す微分ターム(differential term)を決定する。個別にまたは共に受け取られる比例タームおよび微分タームは、エンジンの過渡性の度合いを示す。したがって、比例タームは、燃料濃縮オーソリティ因数(fuel enrichment authority factor)342によって因数分解され、燃料からのトルクとして出力される。比例タームの残りの部分、すなわち比例タームとオーソリティ因数342によって因数分解された比例タームの間の差は、積分タームおよび微分タームによって合計され、チャージ制御からのトルクとして出力される。あるいは、決定器340は、燃料からのトルクを決定する際に燃料濃縮オーソリティ因数342によって因数分解された比例タームおよび微分タームを使用し、チャージ制御からのトルクを決定するために、積分タームと共に比例タームおよび微分タームの残りの部分を使用することができる。チャージ制御からのトルクは、エンジンに供給される燃焼混合物(チャージ)の量を制御するためのエンジンの吸気のスロットル・バルブを動作させるのに使用できる。どちらの場合にも、定常状態の動作において比例タームおよび微分タームは0に等しくなる。したがって、燃料からのトルクも0になり、主燃料寄与またはパイロット燃料寄与を修正しない。しかし、アクセレレーションまたはデセレレーション(過渡的な動作状態)の際に、比例タームおよび微分タームの非ゼロ値が燃料からの非ゼロ・トルクを生じる。燃料からの非ゼロ・トルクも主燃料寄与またはパイロット燃料寄与を修正することができる。過渡的な燃料調整は、燃料濃縮オーソリティ因数342を0に設定することによって不能にすることができる。
ラムダ目標値決定器326は任意選択で、負荷の到来信号を導くためにエンジンに加えられる負荷(特別に示されない)または負荷のための制御器と連絡することによってフィード・フォワード補償を含むことができる。この場合には、ラムダ目標値決定器324が負荷の変化を示す負荷の到来信号を受け取り、任意選択で負荷の到来の大きさを任意入力314として受け取る。負荷の到来信号を使用して、ラムダ目標値決定器326は、負荷の到来信号によって連絡された負荷の到来する変化に基づいたエンジン出力要件を予期し、負荷の到来する変化を見越して、決定された主燃料の寄与およびパイロット燃料の寄与を調整することができる。エンジン・システム100で使用できるフィード・フォワード補償の例がFeedforward Engine Control Governing Systemという名称の米国特許第6,564,477号に開示され、その開示は本明細書にその全体が組み込まれる。
図5を参照すると、ECMの動作が概略的に示されている。ブロック510で、ECMは1つまたは複数のエンジン状態パラメータを示す信号を受け取る。上述のように、エンジン状態パラメータは、1つの場合に、エンジン速度、MAPもしくは吸気マニホルド密度IMDなどのエンジン・トルク指示パラメータ、エンジンの出力、排気ガス酸素含有量などのエンジンの空燃比を示す特性、周囲および/またはエンジン温度、周囲圧力、その他を含むことができる。
ブロック520で、ECMは、受け取ったエンジン状態パラメータから、定常状態でのエンジンの動作に関する主燃料およびパイロット燃料の寄与を決定する。定常状態の動作において、パイロット燃料の寄与は、少なくとも部分的には燃焼サイクルの所定の時間に主燃料の寄与を点火させる働きをする主燃料の寄与に関連して決定される。
ブロック530で、ECMは、受け取ったエンジン状態パラメータから、過渡的な状態でのエンジンの動作に関して主燃料およびパイロット燃料の寄与に適用するための主燃料およびパイロット燃料のオフセットを決定する。オフセットは、過渡的な状態が速度またはトルクにおいてアクセレレーションまたはデセレレーションであるかにどうか応じてエンジンに供給される主燃料およびパイロット燃料の量を増加または減少させることができる。定常状態の動作では、オフセットはエンジンに供給される主燃料およびパイロット燃料の量に影響を与えない。ブロック530で、ECMは、第1の燃料との関係とは異なる様式でパイロット燃料のオフセットを決定し、それによってパイロット燃料の寄与がブロック5220で決定される。たとえば、定常状態の動作では、パイロット燃料の寄与に従ってエンジンに供給されるパイロット燃料の量は、エンジンに供給される主燃料よりもはるかに少ない。上記に論じたように、アクセレレーションの際には、パイロット燃料の量が燃焼サイクルの所定の時間に主燃料を点火させるのに必要なよりも多いように、場合によっては、エンジンに供給されるパイロット燃料の量がエンジンに供給される主燃料の量よりも多いようにエンジンに加えられるパイロット燃料の量に影響を与えるようにパイロット燃料のオフセットが決定できる。パイロット燃料のオフセットは、アクセレレーションの際にパイロット燃料によってエンジンの燃焼サイクルに寄与するトルクが、主燃料によって燃焼サイクルに寄与するトルクよりも大きいように決定できる。デセレレーションの際には、パイロット燃料のオフセットは、定常状態の際と同様にパイロット燃料の主燃料に対しての同じ関係を維持するように決定でき、またはその他の様式で決定できる。
ブロック540で、主燃料およびパイロット燃料のオフセットが主燃料の寄与と結び付けられる。ブロック550で、エンジンに供給される主燃料とパイロット燃料の量がブロック540の出力によって調整される。次いで、一連のブロック510〜550は、エンジンを動作させるのに必要なように連続的に繰り返されることが可能である。
本発明のいくつかの実施形態を説明してきた。それにもかかわらず、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに様々な修正を行なうことができることが理解されるであろう。したがって、その他の実施形態が添付の特許請求の範囲の範囲内にある。