6.発明の詳細な説明
本発明は、高エフェクター機能と相関するIgG抗体のFc領域における特定のアミノ酸残基を提供する。さらに、本発明は、Fc受容体であるFcγRIIIAに対し高い結合親和性を呈示する抗体のFc領域における高エフェクター機能残基を提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、少なくとも1個の本発明の高エフェクター機能アミノ酸残基の導入であって、FcγRIIB受容体との結合の増大を伴わない、上記導入を包含する。別の実施形態では、本発明は、少なくとも1個の本発明の高エフェクター機能アミノ酸残基を導入することにより、FcγRIIB受容体および/またはC1qとの結合を低下させることを包含する。さらに別の実施形態では、少なくとも1個の本発明の高エフェクター機能アミノ酸残基を導入することにより、FcγRIIIA およびFcγRIIB受容体両方との結合を増大させる。好ましくは、FcγRIIIA/FcγRIIB平衡解離定数(KD)の比を低下させる。さらに、少なくとも1個の本発明の高エフェクター機能アミノ酸残基の存在により、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)活性が増強した抗体が得られる。従って、本発明は、本発明の分子と同じアミノ酸配列を有するが、本発明の新規アミノ酸残基を含まない抗体(または他のFcドメイン含有ポリペプチド)(本明細書では「同等分子」と呼ぶ)、例えば、Fcドメインの対応位置に天然に存在するアミノ酸残基を含む非改変Fc領域を含んでなる抗体と比較して、改変されたエフェクター機能(例えば、ADCC、CDCなど)、および/または少なくとも1つのFcリガンド(例えば、FcγRIIIA、FcγRIIB、C1qなど)に対し改変された結合親和性を呈示するFc変異体を提供する。特に、本発明は、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合する可変領域、またはそのフラグメントと、少なくとも1つの高エフェクター機能アミノ酸残基をさらに含むFc領域とを含んでなる新規のFc変異体を提供する。
本発明はさらに、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合する抗体のFc変異体を提供し、該Fc変異体は、少なくとも1つのアミノ酸残基が置換されたFc領域を含んでいる。本発明はまた、同等分子(例えば、本来の非改変Fc領域を有する抗体)と比較して、そのFcγRに対する結合親和性が改変されたFc変異体に関する。一実施形態では、上記Fc変異体は、活性化FcγR(例えば、FcγRIIIA)に対し高い結合親和性を有する。具体的実施形態では、本発明のFc変異体は、同等分子と比較して低い平衡解離定数(KD)を有する。別の実施形態では、Fc変異体は、活性化FcγRに対し高い結合親和性を有し、かつ、阻害性FcγR(例えば、FcγRIIIB)に対し不変または低い結合親和性を有する。別の実施形態では、上記変異体は、同等分子と比較して、FcγRIIIA/FcγRIIB平衡解離定数(KD)の比が低いFc変異体である。さらに別の実施形態では、本発明のFc変異体は、前記FcγR親和性の変更に加え、同等分子(例えば、本来の非改変Fc領域を有する抗体)と比較して、高いADCC活性も呈示する。別の実施形態では、本発明のFc変異体は、少なくとも1つのEph受容体(例:EphA1、A2、A3a、A3b、A4、A5a、A5b、A6、A7、A8、B1、B2a、B2b、B3、B4およびB6)と免疫特異的に結合する抗体の変異体である。具体的実施形態では、本発明のFc変異体は、少なくとも1つのEph受容体と結合し、しかも、少なくとも1つのEph受容体のアンタゴニストである。別の具体的実施形態では、本発明のFc変異体は、少なくとも1つのEph受容体と結合し、しかも、少なくとも1つのEph受容体のアゴニストである。
本発明の抗体は、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合する可変領域、またはそのフラグメントと、本明細書に開示する1以上の高エフェクター機能残基を含むFcドメインを組み合わせることにより、「新たに」作製するか、もしくは、Fcドメインに1以上の高エフェクター機能および/または他の調節アミノ酸残基を導入して、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合するFcドメイン含有抗体を改変することにより、作製することができる。
本発明はまた、同等分子(例えば、本来の非改変Fc領域を有する抗体)と比較して、阻害性FcγRに対する結合親和性が高く、かつ活性化FcγR(例えば、FcγRIIIA)に対する結合親和性をが低い新規のFc変異体に関する。一実施形態では、上記Fc変異体は、同等分子(例えば、本来の非改変Fc領域を有する抗体)と比較して、低いADCC活性仲介能力も呈示しうる。別の実施形態では、本発明のFc変異体は、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合する抗体の変異体である。具体的実施形態では、阻害性FcγRに対する結合親和性が高く、かつ活性化FcγRに対する結合親和性が低い本発明のFc変異体は、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合し、しかも、少なくとも1つのEph受容体のアンタゴニストである。別の具体的実施形態では、阻害性FcγRに対する結合親和性が高く、かつ活性化FcγRに対する結合親和性が低い本発明のFc変異体は、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合し、しかも、少なくとも1つのEph受容体のアゴニストである。
加えて、本発明はさらに、同等分子(例えば、本来の非改変Fc領域を有する抗体)と比較して、C1qに対する結合親和性が改変されたFc変異体を提供する。具体的には、本発明のFc変異体は、C1qに対する高い結合親和性と、増大したCDC活性を呈示しうる。あるいは、本発明のFc変異体は、C1qに対する低い結合親和性と、低減したCDC活性を呈示しうる。さらに別の状況では、C1qに対する結合が改変された本発明のFc変異体は、同等分子と比較して不変のCDC活性を呈示する。具体的には、C1q結合およびCDC活性が改変されたFc変異体は、1以上のFcγRに対する結合および/またはADCC活性の改変を示すことができる。一実施形態では、本発明のFc変異体は、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合する抗体の変異体である。具体的実施形態では、C1qとの結合が改変された本発明のFc変異体は、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合し、しかも、少なくとも1つのEph受容体のアンタゴニストである。
別の具体的実施形態では、C1qとの結合が改変された本発明のFc変異体は、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合し、少なくとも1つのEph受容体のアンタゴニストである。
本発明のFc変異体は、腫瘍の転移を予防、治療もしくは管理する、またはEph受容体により仲介または影響される他の機能、例えば、限定するものではないが、細胞増殖、細胞接着、細胞遊走、肉芽組織発生、腫瘍成長、腫瘍細胞侵入および/または炎症などを阻害する上で有用となりうる。いずれの作用機構にも拘束される意図はないが、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合する本発明のFc変異体は、多様な機構により機能することができ、このようなものとして、限定するものではないが、Eph受容体を異常に発現する細胞をターゲッティングして破壊する、あるいは1以上のEph受容体活性のアゴニストまたはアンタゴニストとして作用する、などがある。また、少なくとも1つのEph受容体の機能活性を阻害または刺激することにより、Eph受容体仲介の病因を阻害するFc変異体も本発明に含まれる。EphA2およびEphA4は、PCT公開番号WO 04/014292、WO 03/094859および米国特許出願番号10/863,729に記載されている。尚、これら文献はすべて、参照としてその全文を本明細書に組み込むものとする。
別の実施形態では、本発明のFc変異体を用いて、細胞の過増殖に関連する疾患または障害、例えば、限定するものではないが、癌、喘息、慢性閉塞性肺病、腸、小腸、胃およびその他生命維持に必要な器官の炎症性疾患、再狭窄(平滑筋および内皮)、クローン病、乾癬、ならびにその他の非転移性疾患を治療、予防、および/または管理する。一実施形態では、過増殖細胞は上皮細胞である。別の実施形態では、過増殖細胞はEphA4を過剰発現する。別の実施形態では、細胞同士の接触の低下、細胞下局在の改変、もしくはEphA4リガンドに対するEphA4の量的増加のいずれかにより、リガンドと結合しないEphA4も存在する。さらに別の実施形態では、過増殖細胞はEphA2を過剰発現する。別の実施形態では、細胞同士の接触の低下、細胞下局在の変化、もしくはEphA2リガンドに対するEphA2の量的増加のいずれかにより、リガンドと結合しないEphA2も存在する。
本明細書で用いる用語「抗体」とは、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id抗体)、ならびに前記いずれかのエピトープ結合フラグメントを意味する。特に、抗体は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性のフラグメント、すなわち、抗原結合部位を含む分子を含み、これらのフラグメントを別の免疫グロブリンドメイン(限定するものではないが、Fc領域またはそのフラグメント)と融合してもよいし、しなくてもよい。本明細書に概説したように、用語「抗体」は、本明細書に記載するFc変異体、全長抗体、ならびに、免疫グロブリンの免疫学的に活性のフラグメントまたは本明細書に記載する他のタンパク質と融合した、本明細書に記載する少なくとも1個の新規アミノ酸残基を含む、Fc領域またはそのフラグメントを含んでなる変異体Fc-融合物を指す。このような変異体Fc融合物として、限定するものではないが、scFv-Fc融合物、可変領域(例えば、VLおよびVH)-Fc融合物、scFv-scFv-Fc融合物が挙げられる。免疫グロブリン分子は、いずれの型(例:IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)もしくはサブクラスでもよい。
本明細書で用いる用語「Eph受容体」とは、既知のEph受容体チロシンキナーゼ(RTK)との所定程度の相同性により定義されるタンパク質を含むポリペプチドのファミリーを意味する。Eph受容体として、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:EphA1(エフリンA型受容体1としても知られ、エリトロポエチン生産肝癌増幅配列であり、GenBank受託番号:NP 005223.2により例示される)、EphA2(上皮細胞受容体プロテインチロシンキナーゼとしても知られ、GenBank受託番号:NP 004422.2により例示される)、EphA3(ヒト胎児キナーゼ1、eph様チロシンキナーゼ1、TYRO4プロテインチロシンキナーゼとしても知られ、GenBank受託番号:NP 005224.2およびNP 872585.1イソ型3aおよび3bによりそれぞれ例示される)、EphA4(エフリンA型受容体4、TYRO1プロテインチロシンキナーゼ、チロシン−プロテインキナーゼ受容体SEK、受容体プロテイン−チロシンキナーゼHEK8としても知られ、GenBank受託番号:NP 004429.1により例示される)、EphA5(Eph相同性キナーゼ-1、エフリンA型受容体5、受容体プロテイン−チロシンキナーゼHEK7、チロシン−プロテインキナーゼ受容体EHK-1としても知られ、GenBank受託番号:NP 004430.2およびNP 872272イソ型5aおよび5bによりそれぞれ例示される)、EphA6(GenBank受託番号:XP 114973.4により例示される)、EphA7(Eph相同性キナーゼ-3、エフリンA型受容体7、受容体プロテイン−チロシンキナーゼHEK11、チロシン−プロテインキナーゼ受容体EHK-3としても知られ、GenBank受託番号:NP 004431.1により例示される)、EphA8(チロシルプロテインキナーゼ、プロテイン−チロシンキナーゼ、ヒドロキシアリール−プロテインキナーゼ、エフリンA型受容体8前駆体、ephおよびelk関連チロシンキナーゼ、チロシン−プロテインキナーゼ受容体eekとしても知られ、GenBank受託番号:NP 0065387.1により例示される)、EphB1(ephチロシンキナーゼ2として知られ、GenBank受託番号:NP 004432.1により
例示される)、EphB2(ephチロシンキナーゼ3、elk関連チロシンキナーゼ、発生調節eph関連チロシンキナーゼとしても知られ、GenBank受託番号:NP 0059145.1およびNP 004432.2イソ型2aおよび2bによりそれぞれ例示される)、EphB3(ヒト胎児キナーゼ2、EPH様チロシンキナーゼ-2としても知られ、GenBank受託番号:NP 004434.2により例示される)、EphB4(ヘパトーマ膜貫通キナーゼとしても知られ、GenBank受託番号:NP 004435.3により例示される)、ならびにB6(GenBank受託番号:NP 004445.1により例示される)。本発明により考慮されるいくつかのEph受容体ポリペプチドのアラインメントを図18に示す。
本明細書で用いる用語「免疫特異的にEph受容体と結合する」、ならびに類似の用語は、少なくとも1つのEph受容体またはその断片と特異的に結合する、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質ならびに抗体またはそのフラグメントを意味する。少なくとも1つのEph受容体またはその断片と免疫特異的に結合する、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、もしくは抗体は、低い親和性で別のペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質と結合してもよく、その際、親和性は、例えば、免疫検定法、BIAcore、もしくは当分野で周知の他のアッセイにより決定する。少なくとも1つのEph受容体またはその断片と免疫特異的に結合する抗体またはそのフラグメントは、関連抗原と交差反応性であってもよい。好ましくは、少なくとも1つのEph受容体またはその断片と免疫特異的に結合する抗体またはそのフラグメントは、他の抗原より、少なくとも1つのEph受容体と優先的に結合する。しかし、本発明は、具体的に、「Eph受容体に免疫特異的に結合する抗体」の定義に、多重特異性を有する抗体(例えば、2以上の異なる抗原に対して特異性を有する抗体)(詳しくは、Caoら、2003, Adv Drug Deliv Rev 55:171;Hudsonら、2003, Nat med 1:129参照)も含む。例えば、二重特異性抗体は、互いに融合した2つの異なる結合特異性を含む。最も簡単なケースでは、二重特異性抗体は、単一標的抗原上の2つの隣接するエピトープに結合するが、このような抗体は他の抗原と交差反応しない(前述した通り)。あるいは、二重特異性抗体は2つの異なる抗原と結合することができる。このような抗体は、免疫特異的に2つの異なる分子に結合するが、他の無関係の分子には結合しない。別のクラスの多重特異性抗体は、1以上の特定の複合体に関して、多サブユニット複合体からなる共有サブユニットを認識することができる。加えて、Eph受容体に免疫特異的に結合する抗体は、関連Eph受容体またはRTKと交差反応するものでもよい。
Eph受容体またはその断片に免疫特異的に結合する抗体またはそのフラグメントは、例えば、免疫検定法、BIAcore、もしくは当業者には周知の他の方法により同定する。抗体またはそのフラグメントは、それが、どの交差反応性抗原より高い親和性でEph受容体またはその断片に結合するとき、免疫特異的に結合するといい、これは、放射免疫測定法(RIA)および酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)のような実験方法を用いて決定する。抗体特異性に関しては、例えば、Paulら、1989, Fundamental Immunology 第2版、Raven Press, ニューヨーク(332-336頁)を参照されたい。
特定の理論に拘束されるものではないが、本発明のアミノ酸置換は、タンパク質−タンパク質相互作用(例えば、受容体−リガンドと抗体−抗原相互作用)を調節する1以上の因子をモジュレートすることにより、FcγRおよび/または補体タンパク質C1qに対する抗体の親和性を改変する。このような因子として、限定するものではないが、タンパク質フォールディング(折り畳み)または三次元立体配置に作用する因子(例えば、水素結合、疎水的相互作用、イオン相互作用、ファン・デル・ワールス力および/またはジスルフィド結合)、ならびにアロステリック相互作用、溶解性および共有結合変更に作用する因子が挙げられる。
特定の理論に拘束されるものではないが、本発明のアミノ酸置換は、下流エフェクター機能に影響を与える1以上の因子(限定するものではないが、FcγRおよび/またはC1qに対する抗体の親和性、細胞傷害性エフェクターおよび/または補体カスケード機能を仲介する能力、タンパク質安定性、抗体半減期、ならびにエフェクター細胞および/または分子のリクルート)を改変することにより、抗体のADCCおよび/またはCDC活性をモジュレートする。
本明細書で用いるFc領域(本明細書では「Fc」および「Fcポリペプチド」とも呼ぶ)が、最初の定常領域免疫グロブリンドメインを除いた抗体の定常領域を含むポリペプチドを包含することは理解されよう。従って、Fcは、IgA、IgD、およびIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメインと、IgEおよびIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメインと、これらドメインに対する可変ヒンジN末端を指す。IgAとIgMの場合、FcはJ鎖を含んでいてもよい。IgGの場合、Fcは免疫グロブリンドメインCガンマ2およびCガンマ3(Cγ2およびCγ3)と、Cガンマ1(Cγ1)およびCガンマ2(Cγ2)間のヒンジを含む。Fc領域の境界は変化しうるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、そのカルボキシル末端に残基C226またはP230を含むよう規定される。その際、番号付けは、KabatらによるEU指数(1991, NIH Publication 91-3242, National Technical Information Service;バージニア州スプリングフィールド)に従う。KabatらによるEU指数とは、Kabatら(前掲)により記載されたヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを意味する。Fcは、分離した上記領域、または抗体に関する上記領域、抗体フラグメント、もしくはFc融合タンパク質を指すこともある。多数のFc位置(限定するものではないが、Kabat 270、272、312、315、356および358など)で多型性が観察されているため、従来技術で示された配列には若干の相違が存在しうることに留意されたい。
本明細書に記載する相補性決定領域(CDR)残基の番号は、Kabatら(1991, NIH Publication 91-3242, National Technical Information Service ;バージニア州スプリングフィールド)によるものであることは理解されたい。具体的には、軽鎖可変ドメインにおける残基24-34(CDR1)、50-56(CDR2)および89-97(CDR3)と、重鎖可変ドメインにおける残基31-35(CDR1)、50-65(CDR2)および95-102(CDR3)である。CDRは、抗体によってかなり変動する(また、定義により、Kabat共通配列との相同性を示さない場合もある)ことに留意すべきである。フレームワーク残基の最大アラインメントは、Fv領域に用いるのに、番号付け方式に「スペーサー」残基の挿入を必要とすることが多い。本明細書に記載するCDRはKabatら(前掲)によるものであることは理解されよう。加えて、所与のKabat部位番号におけるいくつかの個々の残基の同一性は、種間または対立遺伝子ダイバージェンスのために抗体鎖によって変動することがある。
一実施形態では、本発明のFc変異体は、Fc領域の少なくとも1つのアミノ酸置換を有し、その際、該抗体変異体は、同等分子(例えば、このような置換を含まない本来の抗体)と比較して、そのFcγRおよび/またはC1qに対する結合親和性が改変されている。
具体的実施形態では、本発明のFc変異体は、234E、235R、235A、235W、235P、235V、235Y、236E、239D、265L、269S、269G、298I、298T、298F、327N、327G、327W、328S、328V、329H、329Q、330K、330V、330G、330Y、330T、330L、330I、330R、330C、332E、332H、332S、332W、332F、332D、および332Yからなる群より選択される少なくとも1個の高エフェクター機能アミノ酸残基を含むFc領域を含んでなり、ここで番号付け方式は、Kabatらにより記載されたEU指数によるものである。本発明の考えられる高エフェクター機能アミノ酸残基は、表1にも記載する。
別の実施形態では、本発明のFc変異体は、少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも10個、または少なくとも20個、または少なくとも30個、または少なくとも40個、または少なくとも50個、または少なくとも60個、または少なくとも70個、または少なくとも80個、または少なくとも90個、または少なくとも100個、もしくは少なくとも200個の高エフェクター機能アミノ酸残基を含むFc領域を含んでなる。
別の具体的実施形態では、本発明のFc変異体は、239D、330K、330V、330G、330Y、330T、330L、330I、330R、330C、332E、332H、332S、332W、332F、332D、および332Yからなる群より選択される少なくとも1個の高エフェクター機能アミノ酸残基を含むFc領域を含んでなり、ここで番号付け方式は、Kabatらにより記載されたEU指数によるものである。
さらに別の具体的実施形態では、本発明のFc変異体は、239D、330Lおよび332Eからなる群より選択される少なくとも1個の高エフェクター機能アミノ酸残基を含むFc領域を含んでなる。一実施形態では、本発明のFc変異体は、少なくとも1個の高エフェクター機能アミノ酸残基332Eを含むFc領域を含んでなる。具体的実施形態では、本発明のFc変異体は、高エフェクター機能アミノ酸残基239D、330Lおよび332Eを含むFc領域を含んでなる。
具体的実施形態では、本発明のFc変異体は、Fc領域の206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、239、242、246、250、251、257、259、260、261、265、269、273、274、275、277、281、282、284、287、291、298、300、302、304、306、308、310、314、316、318、319、321、323、327、328、329、330、332および336からなる群より選択される位置での少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、その際、Fc領域における残基の番号付けは、Kabatらにより記載されたEU指数によるものである。
別の具体的実施形態では、本発明のFc変異体は、L234E、L235R、L235A、L235W、L235P、L235V、L235Y、G236E、S239D、D265L、E269S、E269G、S298I、S298T、S298F、A327N、A327G、A327W、L328S、L328V、P329H、P329Q、A330K、A330V、A330G、A330Y、A330T、A330L、A330I、A330R、A330C、I332E、I332H、I332S、I332W、I332F、I332D、およびI332Yからなる群より選択される少なくとも1つの置換を含み、ここで番号付け方式は、Kabatらにより記載されたEU指数によるものである。
別の実施形態では、上記Fc変異体は、Fc領域の少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つ、または少なくとも5つ、または少なくとも6つ、または少なくとも10、または少なくとも20、または少なくとも30、または少なくとも40、または少なくとも50、または少なくとも60、または少なくとも70、または少なくとも80、または少なくとも90、または少なくとも100、もしくは少なくとも200のアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、本発明のFc変異体は、S239D、A330LおよびI332Eからなる群より選択される少なくとも1つの置換を含む。別の実施形態では、上記Fc変異体は、次の置換:S239D、A330LおよびI332Eの少なくとも1つを含む。さらに別の実施形態では、本発明のFc変異体は、少なくとも高エフェクター機能アミノ酸残基332Eを含む。
前記(表1参照)のような、目的とする抗体のFcにおける前記アミノ酸置換のために保存的アミノ酸置換を実施できることが特に意図される。「保存的アミノ酸置換」とは、機能的に同等のアミノ酸を置換するアミノ酸置換を意味する。保存的アミノ酸置換により、得られるペプチドのアミノ酸配列にサイレント改変が起こる。例えば、類似極性の1以上のアミノ酸は機能的同等物として働き、ペプチドのアミノ酸配列にサイレント改変をもたらす。電荷中性であり、より小さい残基で残基を置換する置換は、残基が異なる群に属するものであっても(例えば、より小さいイソロイシンによるフェニルアラニンの置換)「保存的置換」とみなすこともある。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当分野で定義されている。保存的アミノ酸置換のいくつかのファミリーを表2に示す。
用語「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸類似体または変異体の使用も意味する。表現型がサイレントのアミノ酸置換を実施する方法に関する手引きはBowieら、”Deciphering the Message in Protein Sequences: Tolerance to Amino Acid Substitutions”(1990, Science 247:1306-1310)に記載されている。
別の実施形態では、Fc変異体は、少なくとも高エフェクター機能アミノ酸332Dを含む。
当業者は、本発明のFc変異体が、改変されたFcγRおよび/またはC1q結合特性(結合特性の例として、限定するものではないが、結合特異性、平衡解離定数(KD)、解離および会合率(それぞれ、KoffおよびKon)、結合親和性および/または結合活性が挙げられる)を有すること、また、特定の改変が多かれ少かれ望ましいことを理解するであろう。当分野において、平衡解離定数(KD)が、Koff/Konとして定義されることは周知である。KDが低い結合分子(例えば、抗体)の方が、KDが高い結合分子(例えば、抗体)より好ましいことは一般に知られている。しかし、場合によっては、KonまたはKoffの値の方がKDの値より関連性が高いこともある。当業者は、どの速度論的パラメーターが所与の抗体の適用に最も重要であるかを決定することができる。例えば、ADCC活性を高めるためには、負の調節因子FcγRIIBとの Fc結合は不変のまま、もしくは低減させて、1以上の正の調節因子(例えば、FcγRIIIA)とのFc結合を増強する改変がより好ましいと言えよう。あるいは、ACDD活性を低下させるためには、1以上の正の調節因子に対する結合を低減し、および/またはFcγRIIBとの結合を増強する改変が好ましいであろう。従って、結合親和性の比(例えば、平衡解離定数(KD))は、Fc変異体のADCC活性が増大したか、低下したかを示すことができる。例えば、FcγRIIIA/FcγRIIB平衡解離定数(KD)の比の低下はADCC活性の改善と相関するのに対し、この比の増加はADCC活性の低下と相関する。加えて、C1qとの結合の増強は、CDC活性を高めるのに好ましく、また、C1qとの結合を低減する改変は、CDC活性を低下または排除するのに好ましい。
リガンドに対するFcドメインの結合親和性および特性は、Fc-FcγR相互作用、すなわちFc領域のFcγRとの特異的結合を決定するために当分野で周知の多様なin vitroアッセイ方法(生化学または免疫学的アッセイ)により決定することができ、このような方法として、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:平衡方法(例:酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA;実施例3を参照)または放射免疫測定法(RIA))、または速度論(例:BIACORE(登録商標)分析)、ならびに間接結合アッセイ、競合的阻害アッセイ、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、ゲル電気泳動およびクロマトグラフィー(例:ゲル濾過)。上記方法およびその他周知の方法では、1以上の被検成分に標識を用いてもよく、および/または限定するものではないが、色素源、蛍光、ルミネセンス、もしくは同位体標識などの様々な検出方法を使用してもよい。結合親和性および速度論についての詳細な説明は、抗体−免疫原相互作用を主題とするPaul, W.E.編、Fundamental Immunology, 第4版、Lippincott-Raven, フィラデルフィア(1999)を参照されたい。
一実施形態では、本発明のFc変異体は、同等分子と比較して、高い親和性でFcγRIIIAに結合する。別の実施形態では、本発明のFc変異体は、同等分子と比較して、高い親和性でFcγRIIIAに結合すると共に、不変の結合親和性でFcγRIIBに結合する。さらに別の実施形態では、本発明のFc変異体は、同等分子と比較して、高い親和性でFcγRIIIAに結合すると共に、低い結合親和性でFcγRIIBに結合する。別の実施形態では、本発明のFc変異体は、同等分子と比較して、低下したFcγRIIIA/FcγRIIB平衡解離定数(KD)の比を有する。
好ましい実施形態では、本発明のFc変異体は、同等分子と比較して、増大した親和性でFcγRIIIAに結合すると共に、低下した結合親和性でFcγRIIBに結合し、しかもEph受容体に免疫特異的に結合する。
一実施形態では、上記Fc変異体は、増大した親和性でFcγRIIIAに結合する。別の実施形態では、上記Fc変異体は、同等分子と比較して、少なくとも2倍、または少なくとも3倍、または少なくとも5倍、または少なくとも7倍、または少なくとも10倍、または少なくとも20倍、または少なくとも30倍、または少なくとも40倍、または少なくとも50倍、または少なくとも60倍、または少なくとも70倍、または少なくとも80倍、または少なくとも90倍、または少なくとも100倍、または少なくとも200倍高い、FcγRIIIAに対する親和性を有する。さらに別の実施形態では、上記Fc変異体は、同等分子と比較して、少なくとも約2倍、または少なくとも約3倍、または少なくとも約5倍、または少なくとも約7倍、または少なくとも約10倍、または少なくとも約20倍、または少なくとも約30倍、または少なくとも約40倍、または少なくとも約50倍、または少なくとも約60倍、または少なくとも約70倍、または少なくとも約80倍、または少なくとも約90倍、または少なくとも約100倍、または少なくとも約200倍高い、FcγRIIIAに対する親和性を有する。
別の実施形態では、本発明のFc変異体は、同等分子と比較して、約2分の1〜約10分の1、または約5分の1〜約50分の1、または約25分の1〜約250分の1、または約100分の1〜約500分の1、または約250分の1〜約1,000分の1に低減した平衡解離定数(KD)を有する。さらに別の具体的実施形態では、本発明のFc変異体は、同等分子と比較して、2分の1〜10分の1、または5分の1〜50分の1、または25分の1〜250分の1、または100分の1〜500分の1、または250分の1〜1,000分の1に低減した平衡解離定数(KD)を有する。具体的実施形態では、上記Fc変異体は、同等分子と比較して、少なくとも2分の1、または少なくとも3分の1、または少なくとも5分の1、または少なくとも7分の1、または少なくとも10分の1、または少なくとも20分の1、または少なくとも30分の1、または少なくとも40分の1、または少なくとも50分の1、または少なくとも60分の1、または少なくとも70分の1、または少なくとも80分の1、または少なくとも90分の1、または少なくとも100分の1、または少なくとも200分の1、または少なくとも400分の1、または600分の1に低減した、FcγRIIIAに対する平衡解離定数(KD)を有する。別の具体的実施形態では、上記Fc変異体は、同等分子と比較して、少なくとも約2分の1、または少なくとも約3分の1、または少なくとも約5分の1、または少なくとも約7分の1、または少なくとも約10分の1、または少なくとも約20分の1、または少なくとも約30分の1、または少なくとも約40分の1、または少なくとも約50分の1、または少なくとも約60分の1、または少なくとも約70分の1、または少なくとも約80分の1、または少なくとも約90分の1、または少なくとも約100分の1、または少なくとも約200分の1、または少なくとも約400分の1、または約600分の1に低減した、FcγRIIIAに対する平衡解離定数(KD)を有する。
一実施形態では、上記Fc変異体は、不変または低い親和性でFcγRIIBに結合する。別の実施形態では、上記Fc変異体は、同等分子と比較して、不変であるか、あるいは、少なくとも1分の1、または少なくとも3分の1、または少なくとも5分の1、または少なくとも10分の1、または少なくとも20分の1、もしくは少なくとも50分の1に低減した、FcγRIIBに対する親和性を有する。さらに別の実施形態では、上記Fc変異体は、同等分子と比較して、不変であるか、あるいは、少なくとも約1分の1、または少なくとも約3分の1、または少なくとも約5分の1、または少なくとも約10分の1、または少なくとも約20分の1、または少なくとも約50分の1に低減した、FcγRIIBに対する親和性を有する。
別の実施形態では、上記Fc変異体は、同等分子と比較して、不変であるか、あるいは、少なくとも2倍、または少なくとも3倍、または少なくとも5倍、または少なくとも7倍、または少なくとも10倍、または少なくとも20倍、または少なくとも30倍、または少なくとも40倍、または少なくとも50倍、または少なくとも60倍、または少なくとも70倍、または少なくとも80倍、または少なくとも90倍、または少なくとも100倍、もしくは少なくとも200倍増大した、FcγRIIBに対する平衡解離定数(KD)を有する。さらに別の具体的実施形態では、上記Fc変異体は、同等分子と比較して、不変であるか、あるいは、少なくとも約2倍、または少なくとも約3倍、または少なくとも約5倍、または少なくとも約7倍、または少なくとも約10倍、または少なくとも約20倍、または少なくとも約30倍、または少なくとも約40倍、または少なくとも約50倍、または少なくとも約60倍、または少なくとも約70倍、または少なくとも約80倍、または少なくとも約90倍、または少なくとも約100倍、もしくは少なくとも約200倍増大した、FcγRIIBに対する平衡解離定数(KD)を有する。
別の実施形態では、上記Fc変異体は、置換されたFcを含まない本来の抗体と比較して、低減した親和性でFcγRIIIAに結合し、増大した親和性でFcγRIIBに結合する。一実施形態では、上記Fc変異体は、置換されたFcを含まない本来の抗体と比較して、少なくとも1分の1、または少なくとも3分の1、または少なくとも5分の1、または少なくとも10分の1、または少なくとも20分の1、または少なくとも50分の1に低減した、FcγRIIIAに対する親和性を有する。別の実施形態では、上記Fc変異体は、置換されたFcを含まない本来の抗体と比較して、少なくとも約1分の1、または少なくとも約3分の1、または少なくとも約5分の1、または少なくとも約10分の1、または少なくとも約20分の1、または少なくとも約50分の1に低減した、FcγRIIIAに対する親和性を有する。さらに別の実施形態では、上記Fc変異体は、同等分子と比較して、、少なくとも2倍、または少なくとも3倍、または少なくとも5倍、または少なくとも7倍、または少なくとも10倍、または少なくとも20倍、または少なくとも50倍、または少なくとも100倍高い、FcγRIIBに対する親和性を有する。さらに別の実施形態では、上記Fc変異体は、同等分子と比較して、少なくとも約2倍、または少なくとも約3倍、または少なくとも約5倍、または少なくとも約7倍、または少なくとも約10倍、または少なくとも約20倍、または少なくとも約50倍、または少なくとも約100倍高い、FcγRIIBに対する親和性を有する。
さらに別の実施形態では、上記Fc変異体は、置換されたFcを含まない本来の抗体と比較して、少なくとも1倍、または少なくとも3倍、または少なくとも5倍、または少なくとも10倍、または少なくとも20倍、もしくは少なくとも50倍増大した、FcγRIIIAに対する平衡解離定数(KD)を有する。別の具体的実施形態では、上記Fc変異体は、置換されたFcを含まない本来の抗体と比較して、、少なくとも約1倍、または少なくとも約3倍、または少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍、または少なくとも約20倍、または少なくとも約50倍増大した、FcγRIIIAに対する平衡解離定数(KD)を有する。別の実施形態では、上記Fc変異体は、同等分子と比較して、少なくとも2分の1、または少なくとも3分の1、または少なくとも5分の1、または少なくとも7分の1、または少なくとも10分の1、または少なくとも20分の1、または少なくとも50分の1、または少なくとも100分の1に低減した、FcγRIIBに対する平衡解離定数(KD)を有する。さらに別の実施形態では、上記Fc変異体は、同等分子と比較して、少なくとも約2分の1、または少なくとも約3分の1、または少なくとも約5分の1、または少なくとも約7分の1、または少なくとも約10分の1、または少なくとも約20分の1、または少なくとも約50分の1、または約100分の1に低減した、FcγRIIBに対する平衡解離定数(KD)を有する。
「抗体依存性細胞性細胞傷害」または「ADCC」とは、特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に結合した分泌Igが、これら細胞傷害性エフェクター細胞を抗原担持標的細胞に特異的に結合させた後、細胞毒で標的細胞を死滅させることができる細胞傷害の形態を意味する。標的細胞の表面に向かう特異的高親和性IgG抗体は、細胞傷害性細胞を「アーミングする(arm)」ことから、このような死滅には絶対に必要である。標的細胞の溶解は細胞外であり、直接の細胞同士の接触を必要とし、補体には関与しない。
任意の抗体がADCCにより標的細胞の溶解を仲介する能力をアッセイすることができる。ADCC活性を評価するためには、免疫エフェクター細胞と組み合わせた標的細胞に目的の抗体を添加し、これらを抗原抗体複合体により活性化させることにより、標的細胞の細胞溶解を起こすことができる。細胞溶解は、一般に、溶解した細胞からの標識(例えば、放射性基質、蛍光染料もしくは天然の細胞内タンパク質)の放出により検出することができる。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞として、末梢血液単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。In vitro ADCCアッセイの具体例は、Wisecarverら、1985, 79:277;Bruggemannら、1987, J Exp Med 166:1351;Wilkinsonら、2001, J Immunol Methods 258:183;Patelら、1995 J Immunol Methods 184:29(これらの各々を参照として本明細書に組み込む)ならびに本明細書(実施例3を参照)に記載されている。前記に代わり、または加えて、目的の抗体のADCC活性をin vivoで、例えば、Clynesら、1998, PNAS USA 95:652(参照として本明細書に組み込む)に開示されているような動物モデルで評価することもできる。
一実施形態では、1以上のFcγRメディエーターエフェクター細胞機能を決定するin vitro機能アッセイ(実施例3参照)によっても本発明のFc変異体の特性決定を行なう。別の実施形態では、本発明の分子のin vivoモデル(本明細書に記載および開示したものなど)における結合特性およびエフェクター細胞機能は、in vitroアッセイのものと類似している。しかし、本発明は、in vitroアッセイで所望の表現型を示さないが、in vivoで所望の表現型を示す本発明の分子を排除するものではない。
本発明はさらに、ADCC機能を増強したFc変異体を提供する。一実施形態では、本発明のFc変異体は、増大したADCC活性を有する。一実施形態では、上記Fc変異体は、同等分子と比較して、少なくとも2倍、または少なくとも3倍、または少なくとも5倍、または少なくとも10倍、または少なくとも50倍、または少なくとも100倍高い、ADCC活性を有する。別の実施形態では、上記Fc変異体は、同等分子と比較して、少なくとも約2倍、または少なくとも約3倍、または少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍、または少なくとも約50倍、または少なくとも約100倍高い、ADCC活性を有する。具体的実施形態では、本発明のFc変異体は、同等分子と比較して、増大した親和性でFcγRIIIAに結合すると共に、低減した親和性でFcγRIIBに結合し、しかも、高められたADCC活性を有する。
別の実施形態では、本発明のFc変異体は、高いADCC活性を有し、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合する。別の実施形態では、本発明のFc変異体は、同等分子と比較して、高められたADCC活性を有すると共に、FcγRIIIA/FcγRIIB平衡解離定数(KD)の比が低減し、しかも、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合する。さらに別の実施形態では、本発明のFc変異体は、高められたADCC活性を有し、高い親和性で活性化FcγR(例えば、FcγRIIIA)に結合すると共に、不変または低い親和性で阻害性FcγR(例えば、FcγRIIB)と結合し、しかも、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合する。
本発明はまた、ADCC機能を低減したFc変異体を提供する。一実施形態では、本発明のFc変異体は、低減したADCC活性を有する。別の実施形態では、上記Fc変異体は、同等分子と比較して、少なくとも2分の1、または少なくとも3分の1、または少なくとも5分の1、または少なくとも10分の1、または少なくとも50分の1、または少なくとも100分の1の低いADCC活性を有する。別の実施形態では、上記Fc変異体は、同等分子と比較して、少なくとも約2分の1、または少なくとも約3分の1、または少なくとも約5分の1、または少なくとも約10分の1、または少なくとも約50分の1、または少なくとも約100分の1の低いADCC活性を有する。具体的実施形態では、本発明のFc変異体は、同等分子と比較して、低減した親和性でFcγRIIIAと結合すると共に、増大した親和性でFcγRIIBと結合し、しかも、低減したADCC活性を有する。
一実施形態では、本発明のFc変異体は、低減したADCC活性を有し、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合する。別の実施形態では、本発明の抗体変異体は、低減したADCC活性を有し、低い親和性で活性化FcγR(例えば、FcγRIIIA)に結合すると共に、高い親和性で阻害性FcγR(例えば、FcγRIIB)と結合し、しかも、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合する。
「補体依存性細胞傷害」および「CDC」は、補体の存在下での標的細胞の溶解を意味する。補体活性化経路は、補体系の第1成分(C1q)と、1分子、例えば、コグネイト抗原と複合体化した抗体との結合により開始する。補体活性化を評価するためには、Gazzano-Santoroら、1996, J. Immunol. Methods, 202:163に記載されたCDCアッセイを実施することができる。
本発明はさらに、CDC機能を増強したFc変異体を提供する。一実施形態では、本発明のFc変異体は、高いCDC活性を有する。別の実施形態では、上記Fc変異体は、同等分子と比較して、少なくとも2倍、または少なくとも3倍、または少なくとも5倍、または少なくとも10倍、または少なくとも50倍、もしくは少なくとも100倍高いCDC活性を有する。別の実施形態では、上記Fc変異体は、同等分子と比較して、少なくとも約2倍、または少なくとも約3倍、または少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍、または少なくとも約50倍、もしくは少なくとも約100倍高いCDC活性を有する。別の実施形態では、上記Fc変異体は、同等分子と比較して、少なくとも2倍、または少なくとも3倍、または少なくとも5倍、または少なくとも7倍、または少なくとも10倍、または少なくとも20倍、または少なくとも50倍、もしくは少なくとも100倍高い親和性でC1qに結合する。さらに別の実施形態では、上記Fc変異体は、同等分子と比較して、少なくとも約2倍、または少なくとも約3倍、または少なくとも約5倍、または少なくとも約7倍、または少なくとも約10倍、または少なくとも約20倍、または少なくとも約50倍、もしくは少なくとも約100倍高い親和性でC1qに結合する。具体的実施形態では、本発明のFc変異体は、増大した親和性でC1qに結合し;高いCDC活性を有すると共に、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合する。
本発明はさらに、CDC機能を低減したFc変異体を提供する。一実施形態では、本発明のFc変異体は、低減したCDC活性を有する。別の実施形態では、上記Fc変異体は、同等分子と比較して、少なくとも2分の1、または少なくとも3分の1、または少なくとも5分の1、または少なくとも10分の1、または少なくとも50分の1、または少なくとも100分の1の低いCDC活性を有する。別の実施形態では、上記Fc変異体は、同等分子と比較して、少なくとも約2分の1、または少なくとも約3分の1、または少なくとも約5分の1、または少なくとも約10分の1、または少なくとも約50分の1、または少なくとも約100分の1の低いCDC活性を有する。別の実施形態では、本発明のFc変異体は、同等分子と比較して、少なくとも1分の1、または少なくとも3分の1、または少なくとも5分の1、または少なくとも10分の1、または少なくとも20分の1、または少なくとも50分の1に低減した親和性でC1qに結合する。さらに別の実施形態では、本発明のFc変異体は、同等分子と比較して、少なくとも約1分の1、または少なくとも約3分の1、または少なくとも約5分の1、または少なくとも約10分の1、または少なくとも約20分の1、または少なくとも約50倍分の1に低減した親和性でC1qに結合する。具体的実施形態では、本発明のFc変異体は、少なくとも1つのEph受容体に結合し、低減した親和性でC1qと結合すると共に、低減したCDC活性を有し、しかも、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合する。
本発明のFc変異体に、特に、1以上の追加のアミノ酸残基置換、突然変異および/または変更を含有させることにより、限定するものではないが、以下に挙げる好ましい特性を備えた抗体を得ることも具体的に考えられる:長い血清半減期、高い結合親和性、低い免疫原性、高い生産性、改変されたFcリガンド結合、増強または低減されたADCCまたはCDC活性、改変されたグリコシル化および/またはジスルフィド結合、ならびに変更された結合特異性(例えば、以下参照)。本発明は、本発明のFc変異体と他のFc改変を組み合わせることにより、抗体またはFc融合物に付加的、相乗的、もしくは新規の特性をもたらすことを包含する。一実施形態では、別のFc改変により、これらと組み合わせたFc変異体の表現型を増強する。例えば、野生型Fc領域を含む同等分子より高い親和性でFcγRIIIAに結合することが知られる突然変異体と、本発明のFc 変異体を組み合わせれば、本発明の突然変異体との組合せにより、FcγRIIIA親和性が大幅に増大する。
一実施形態では、本発明のFc変異体を、以下の文献に開示されているような別の周知のFc変異体と組み合わせることができる:Ghetieら、1997, Nat Biotech. 15:637-40;Duncanら、1988, Nature 332:563-564;Lundら、1991, J. Immunol 147:2657-2662;Lundら、1992, Mol Immunol 29:53-59;Alegreら、1994, Transplantation 57:1537-1543;Hutchinsら、1995, Proc Natl. Acad Sci U S A 92:11980-11984;Jefferisら、1995, Immunol Lett. 44:111-117;Lund ら、1995, Faseb J 9:115-119;Jefferisら、1996, Immunol Lett 54:101-104;Lundら、1996, J Immunol 157:4963-4969;Armourら、1999, Eur J Immunol 29:2613-2624;Idusogie ら、2000, J Immunol 164:4178-4184;Reddyら、2000, J Immunol 164:1925-1933;Xuら、2000, Cell Immunol 200:16-26;Idusogie ら、2001, J Immunol 166:2571-2575;Shieldsら、2001, J Biol Chem 276:6591-6604;Jefferisら、2002, Immunol Lett 82:57-65;Prestaら、2002, Biochem Soc Trans 30:487-490;米国特許第5,624,821号;第5,885,573号;第5,677,425号;第6,165,745号;第6,277,375号;第5,869,046号;第6,121,022号;第5,624,821号;第5,648,260号;第6,194,551号;第6,737,056号;第6,821,505号;第6,277,375号;米国特許出願番号10/370,749およびPCT 公開WO 94/2935;WO 99/58572;WO 00/42072;WO 02/060919、WO
04/029207(これらは各々、参照としてその全文を本明細書に組み込む)。
いくつかの実施形態では、本発明のFc変異体は、Fc領域を含む分子に共有結合した1以上の操作型糖形態、すなわち、炭水化物組成物を含む。操作型糖形態は、様々な目的、例えば、エフェクター機能を増強または低減する上で有用であると考えられる。操作型糖形態は、当業者には周知のあらゆる方法、例えば、遺伝子操作型または変異型発現株を使用する;1以上の酵素、例えば、DI N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnRI11)との共発現を実施する;各種生物または各種生物由来の細胞系にFc領域含有分子を発現させる;もしくはFc領域含有分子を発現させた後、炭水化物を変更することにより、作製することができる。操作型糖形態の作製方法は、当業者には周知であり、限定するものではないが、以下の文献に記載のものが挙げられる:Umanaら、1999, Nat. Biotechnol 17:176-180;Daviesら、20017 Biotechnol Bioeng 74:288-294;Shieldsら、2002, J Biol Chem 277:26733-26740;Shinkawaら、2003, J Biol Chem 278:3466-3473;米国特許第6,602,684号;米国特許出願番号10/277,370;米国特許出願番号10/113,929;PCT WO 00/61739A1;PCT WO 01/292246A1;PCT WO 02/311140A1;PCT WO 02/30954A1;Potillegent(商標)technology(Biowa, Inc.;ニュージャージー州プリンストン);GlycoMAb(商標)glycosylation engineering technology (GLYCART biotechnology AG;スイス国ズーリッヒ)(これらは各々参照としてその全文を本明細書に組み込む)。例えば、WO 00061739;EA01229125;US 20030115614;Okazakiら、2004, JMB, 336: 1239-49を参照されたい(各々、参照としてその全文を本明細書に組み込む)。さらに別の方法は、「本発明の抗体」と題する以下の第6.2節に記載する。
受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、細胞外環境から細胞質にシグナルを伝達する膜貫通分子である。RTKのEphファミリーはRTKの最も大きなサブファミリーである。この群は、細胞外ドメインにおけるシステインが豊富な領域と、2つのフィブロネクチンIII型反復配列により識別される。Eph受容体は、細胞表面アンカー型タンパク質の第2ファミリー、エフリンにより活性化される。Ephチロシンキナーゼとエフリンリガンド両方のメンバーが受容体−リガンド相互作用後にシグナル伝達を仲介する(Brucknerら、1997, Science 275:1640;Hollandら、1996, Nature 383:722)。この二方向シグナル伝達は、細胞接着、細胞遊走および組織境界形成のような細胞相互作用に関与する過程に影響を与えることがわかっている(Boydら、2001 Sci STKE RE20;Schmucherら、2001, Cell 105:701-4;Kullanderら、2002 Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 3:475)。さらに近年、Eph受容体は、癌の発現および進行に関連することがわかった。細胞表面分子としてEph受容体は、抗体特異的療法の場合、容易に接近できる標的細胞である。一実施形態では、本発明のFc変異体は少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合する抗体の変異体である。本発明のFc変異体が免疫特異的に結合するEph受容体として、限定するものではないが、EphA1、EphA2、EphA3a、EphA3b、EphA4、EphA5a、EphA5b、EphA6、EphA7、EphA8、EphB1、EphB2a、EphB2b、EphB3、EphB4およびEphB6が挙げられる。
当業者は、本発明のEph受容体が、既知Eph受容体(例えば、前掲を参照)に対し実質的な程度の相同性を示す分子であって、このような分子が、そのアミノ酸配列に基づいてEph受容体ファミリー分子として分類されている、または分類できることは理解されよう。Clustal Wアルゴリズムを含むMegaALignプログラム(DNASTAR)を用いて、既知ヒトEph受容体の対方式の比較が実施されている(Thompsonら、1994 Nucleic Acids Res 22:4673-80)。これらの結果(図18)から、各タンパク質において、Eph受容体ファミリーメンバー間に高度の類似性を共有する多数の領域があることがわかる。当業者は、抗体が高い親和性で1つのファミリーだけに免疫特異的に結合するように、ファミリーメンバー間で上記抗体の交差反応性、またはさらに制限された特異性を可能にするような、Eph受容体の領域に対する抗体を作製できることが具体的に考えられる。タンパク質特異的であるか、または1以上のEph受容体と結合することができる抗体の作製に使用するための免疫原性ペプチド候補を同定するために、Jameson-Wolfアルゴリズムを用いたProteanプログラム(DNASTAR)により、各タンパク質の抗原性指数を調べることができる。Eph受容体ファミリーの全メンバーの中で最も高い抗原性指数を有する領域を同定することができ、1以上のファミリーメンバーの中で高度に保存された領域が、1以上のファミリーメンバーを認識する抗体を生産するための優れた候補となりうる。これに対し、保存度の低い領域を使用すれば、1つのEph受容体ファミリーメンバーに特異的な抗体を作製することができると考えられる。
一実施形態で、本発明のFc変異体は、腫瘍細胞に存在するEph受容体に優先的に結合するが、非腫瘍細胞に存在するEph受容体には結合しない。別の実施形態では、本発明のFc変異体は、正常な組織、限定するものではないが、脳、肺、膵臓、肝臓、前立腺、心臓、卵巣、皮膚、腎臓、腸および胃を染色しない。抗体結合および特異的染色パターンは、限定するものではないが、免疫組織化学および蛍光細胞分析分離装置(FACS)など、当分野で周知の免疫学的標識方法により容易に決定することができる。具体的方法およびプロトコルは、特に、以下に挙げる文献に記載されている:PolakおよびVan Moorden(1997)Introduction to Immunocytochemistry, 第2版、Springer Verlag, N.Y.およびHaugland(2004)Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, 第9版、Molecular Probes, Inc.(オレゴン州ユージーン)により刊行されたハンドブックおよびカタログ組合せ。
別の実施形態では、EphA2および/またはEphA4に免疫特異的に結合する抗体の変異体、その誘導体、類似体およびエピトープ結合フラグメントであり、例えば、限定するものではないが、本明細書、ならびにPCT公開番号WO 04/014292、WO 03/094859および米国特許出願番号10/863,729(これらの各々は、参照としてその全文を本明細書に組み込む)に開示されているもの、ならびに、表4に記載した抗体のすべてが挙げられる。具体的実施形態では、本発明のFc変異体は、12G3H11、および/または3F2および/または表4に記載した抗体のいずれかに由来する可変領域(例えば、1以上のCDR)の全部または一部を含むEphA2および/またはEphA4に免疫特異的に結合する抗体である。
本発明はさらに、少なくとも1つのEph受容体に対し高い親和性を有する本発明のFc変異体の使用も含む。具体的実施形態では、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合する本発明のFc変異体は、その会合速度定数すなわちkon速度(Fc変異体(Ab)+抗原(Ag)k on←Ab−Ag)が、少なくとも105M-1s-1、少なくとも5×105M-1s-1、少なくとも106M-1s-1、少なくとも5×106M-1s-1、少なくとも107M-1s-1、少なくとも5×107M-1s-1、もしくは少なくとも108M-1s-1である。別の具体的実施形態では、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合する本発明のFc変異体は、その会合速度定数すなわちkon速度(Fc変異体(Ab)+抗原(Ag)k on←Ab−Ag)が、少なくとも約105M-1s-1、少なくとも約5×105M-1s-1、少なくとも約106M-1s-1、少なくとも約5×106M-1s-1、少なくとも約107M-1s-1、少なくとも約5×107M-1s-1、もしくは少なくとも約108M-1s-1である。別の実施形態では、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体は、そのkonが、少なくとも2×105M-1s-1、少なくとも5×105M-1s-1、少なくとも106M-1s-1、少なくとも5×106M-1s-1、少なくとも107M-1s-1、少なくとも5×107M-1s-1、もしくは少なくとも108M-1s-1である。さらに別の具体的実施形態では、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体は、そのkon速度が、少なくとも約2×105M-1s-1、少なくとも約5×105M-1s-1、少なくとも約106M-1s-1、少なくとも約5×106M-1s-1、少なくとも約107M-1s-1、少なくとも約5×107M-1s-1、もしくは少なくとも約108M-1s-1である。
別の実施形態では、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合する本発明のFc変異体は、そのkoff速度(Fc変異体(Ab)+抗原(Ag)k off←Ab−Ag)が、10-1s-1以下、5×10-1s-1以下、10-2s-1以下、5×10-2s-1以下、10-3s-1以下、5×10-3s-1以下、10-4s-1以下、5×10-4s-1以下、10-5s-1以下、5×10-5s-1以下、10-6s-1以下、5×10-6s-1以下、10-7s-1以下、5×10-7s-1以下、10-8s-1以下、5×10-8s-1以下、10-9s-1以下、5×10-9s-1以下、もしくは10-10-1s-1以下である。さらに別の実施形態では、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合する本発明のFc変異体は、そのkoff速度(Fc変異体(Ab)+抗原(Ag)k off←Ab−Ag)が、約10-1s-1以下、約5×10-1s-1以下、約10-2s-1以下、約5×10-2s-1以下、約10-3s-1以下、約5×10-3s-1以下、約10-4s-1以下、約5×10-4s-1以下、約10-5s-1以下、約5×10-5s-1以下、約10-6s-1以下、約5×10-6s-1以下、約10-7s-1以下、約5×10-7s-1以下、約10-8s-1以下、約5×10-8s-1以下、約10-9s-1以下、約5×10-9s-1以下、もしくは約10-10-1s-1以下である。また別の実施形態では、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体は、そのkoff速度が、5×10-4s-1以下、10-5s-1以下、5×10-5s-1以下、10-6s-1以下、5×10-6s-1以下、10-7s-1以下、5×10-7s-1以下、10-8s-1以下、5×10-8s-1以下、10-9s-1以下、5×10-9s-1以下、もしくは10-10-1s-1以下である。別の実施形態では、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体は、そのkoff速度が、約5×10-4s-1以下、約10-5s-1以下、約5×10-5s-1以下、約10-6s-1以下、約5×10-6s-1以下、約10-7s-1以下、約5×10-7s-1以下、約10-8s-1以下、約5×10-8s-1以下、約10-9s-1以下、約5×10-9s-1以下、もしくは約10-10-1s-1以下である。
別の実施形態では、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合する本発明のFc変異体の親和定数すなわちKa(kon/koff)が、少なくとも102M-1、少なくとも5×102M-1、少なくとも103M-1、少なくとも5×103M-1、少なくとも104M-1、少なくとも5×104M-1、少なくとも105M-1、少なくとも5×105M-1、少なくとも106M-1、少なくとも5×106M-1、少なくとも107M-1、少なくとも5×107M-1、少なくとも108M-1、少なくとも5×108M-1、少なくとも109M-1、少なくとも5×109M-1、少なくとも1010M-1、少なくとも5×1010M-1、少なくとも1011M-1、少なくとも5×1011M-1、少なくとも1012M-1、少なくとも5×1012M-1、少なくとも1013M-1、少なくとも5×1013M-1、少なくとも1014M-1、少なくとも5×1014M-1、少なくとも1015M-1、もしくは少なくとも5×1015M-1である。さらに別の実施形態では、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合する本発明のFc変異体の親和定数すなわちKa(kon/koff)が、少なくとも約102M-1、少なくとも約5×102M-1、少なくとも約103M-1、少なくとも約5×103M-1、少なくとも約104M-1、少なくとも約5×104M-1、少なくとも約105M-1、少なくとも約5×105M-1、少なくとも約106M-1、少なくとも約5×106M-1、少なくとも約107M-1、少なくとも約5×107M-1、少なくとも約108M-1、少なくとも約5×108M-1、少なくとも約109M-1、少なくとも約5×109M-1、少なくとも約1010M-1、少なくとも約5×1010M-1、少なくとも約1011M-1、少なくとも約5×1011M-1、少なくとも約1012M-1、少なくとも約5×1012M-1、少なくとも約1013M-1、少なくとも約5×1013M-1、少なくとも約1014M-1、少なくとも約5×1014M-1、少なくとも約1015M-1、もしくは少なくとも約5×1015M-1である。
別の実施形態では、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体の解離定数すなわちKd(koff/kon)が、10-2M以下、5×10-2M以下、10-3M以下、5×10-3M以下、10-4M以下、5×10-4M以下、10-5M以下、5×10-5M以下、10-6M以下、5×10-6M以下、10-7M以下、5×10-7M以下、10-8M以下、5×10-8M以下、10-9M以下、5×10-9M以下、10-10M以下、5×10-10M以下、10-11M以下、5×10-11M以下、10-12M以下、5×10-12M以下、10-13M以下、5×10-13M以下、10-14M以下、5×10-14M以下、10-15M以下、もしくは5×10-15M以下である。さらに別の実施形態では、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体の解離定数すなわちKd(koff/kon)が、約10-2M以下、約5×10-2M以下、約10-3M以下、約5×10-3M以下、約10-4M以下、約5×10-4M以下、約10-5M以下、約5×10-5M以下、約10-6M以下、約5×10-6M以下、約10-7M以下、約5×10-7M以下、約10-8M以下、約5×10-8M以下、約10-9M以下、約5×10-9M以下、約10-10M以下、約5×10-10M以下、約10-11M以下、約5×10-11M以下、約10-12M以下、約5×10-12M以下、約10-13M以下、約5×10-13M以下、約10-14M以下、約5×10-14M以下、約10-15M以下、もしくは約5×10-15M以下である。
Fc変異体の標的として考えられるその他のRTK分子として、未分化リンパ腫キナーゼ(ANK)、オーファンRTKが挙げられる。ALKは、初め、t(2;5)転座のためにヌクレオホスミン(npm/ALK)との融合タンパク質として同定された(Morrisら、1994)。この融合により、細胞内ALKキナーゼの構成的活性化が起こり、これが未分化リンパ腫を誘発することが明らかにされた。全長ALK受容体は、発生中の神経系に高度に発現し、生後ダウンレギュレートされることがわかっている(Iwaharaら、1997)。近年、ALKは、ヒトにおけるプレイオトロフィン(PTN)の細胞受容体であり、このチロシンキナーゼ受容体はヒトグリア芽細胞腫に過剰発現し、グリア芽細胞腫の異種移植片モデルの増殖について律速的であることがみいだされた(米国特許公開番号2002/034768)一実施形態では、本発明のFc変異体は、ALK(例:Genbank受託番号:Q9UM73)に免疫特異的に結合する。具体的実施形態では、本発明のFc変異体は、ALKの細胞外ドメインに免疫特異的に結合する。別の実施形態では、本発明のFc変異体は、PTN(例:Genbank受託番号:NP 002816)に免疫特異的に結合する。具体的実施形態では、本発明のFc変異体は、PTNとALKの結合を阻止する。
6.1 Eph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体
前述したように、本発明は、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合する可変領域と、さらに少なくとも1つの高エフェクター機能アミノ酸残基(例えば、239D、330L、332Eが挙げられ、ここで、残基の番号付けはKabatにより記載されたEU指数によるものである)を含むFc領域とを含んでなるFc変異体を包含する。本発明はさらに、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合し、同等分子と比較して、改変されたADCCおよび/またはCDC活性と、1以上のFcリガンド(例えば、FcγR、C1q)に対し変更された結合親和性とを有する。本発明は具体的に、限定するものではないが、以下のものを含む抗Eph受容体抗体またはそのフラグメントから誘導されたFc変異体を包含する:Eph099B-102.147(ATCC受託番号PTA-4572)、Eph099B-208.261(ATCC受託番号PTA-4573)、Eph099B-210.248(ATCC受託番号PTA-4574)、Eph099B-233.152(ATCC受託番号PTA-5194)、(PCT公開番号WO 03/094859:参照としてその全文を本明細書に組み込む);EA2(ATCC受託番号PTA-4380)、EA3、EA4、EA5(ATCC受託番号PTA-4381)、(PCT公開番号WO 04/014292:参照としてその全文を本明細書に組み込む);LX-13およびscFv(ATCC受託番号PTA-6044)、(米国特許出願番号10/863,729:参照としてその全文を本明細書に組み込む)、および12G3H11(後述)ならびにこれらの類似体、誘導体、もしくは断片。具体的には、本発明のFc変異体は、12G3H11(表3参照)および/または表4に記載した抗体のいずれかに由来する可変領域の全部または一部(例えば、1以上のCDR)を含むものが考えられる。
一実施形態では、Fc変異体は、12G3H11、すなわち、EphA2に結合するヒト化アゴニストモノクローナル抗体のFc変異体である。12G3H11の重および軽鎖の可変領域のDNAおよび推定アミノ酸配列をそれぞれ図2Aおよび2Bに示す。本明細書では、上記重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号64および配列番号65として示す(図2Aおよび2B)。また、本明細書では、上記重鎖可変領域および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列をそれぞれ配列番号62および配列番号63として示す(図2Aおよび2B)。別の実施形態では、本発明のFc変異体は、12G3H11と同じエピトープに結合するか、または12G3H11と競合してEphA2に結合する。さらに別の実施形態では、Eph受容体に免疫特異的に結合する本発明のFc変異体は、12G3H11のFc変異体ではない。
別の実施形態では、本発明のFc変異体は、3F2、すなわち、EphA2に結合するヒト化アゴニストモノクローナル抗体のFc変異体である。3F2の重および軽鎖の可変領域のDNAおよび推定アミノ酸配列をそれぞれ図3Aおよび3Bに示す。本明細書では、上記重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号68および配列番号69として示す(図3Aおよび3B)。また、本明細書では、上記重鎖可変領域および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列をそれぞれ配列番号66および配列番号67として示す(図3Aおよび3B)。別の実施形態では、本発明のFc変異体は、3F2と同じエピトープに結合するか、または3F2と競合してEphA2に結合する。さらに別の実施形態では、Eph受容体に免疫特異的に結合する本発明のFc変異体は、3F2のFc変異体ではない。
具体的実施形態では、本発明のFc変異体は、Eph受容体(前掲参照)に免疫特異的に結合する抗体またはそのフラグメントの抗原結合ドメイン(例えば、可変領域)またはその断片と、少なくとも1つの高エフェクター機能アミノ酸残基を含むFc領域を組み合わせることにより作製する。このような組換え抗体の作製方法は、当業者には周知であり、以下に詳しく説明する。
一実施形態では、本発明のFc変異体は、他のEph受容体より、EphA2に優先的に結合する。別の実施形態では、本発明のFc変異体は、他のEph受容体より、EphA4に優先的に結合する。さらに別の実施形態では、本発明のFc変異体は、1以上のEph受容体複合体(例えば、Eph受容体−エフリンリガンド複合体)と免疫反応する。また別の実施形態では、本発明のFc変異体は、1以上のEph受容体に免疫特異的に結合する。1以上のEph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体によって結合されたEph受容体の組合せは、次の式で示される:EphA(x) + EphB(y);EphA (x) + EphA (x);EphB(y) + EphB(y);式中、(x)は1、2、3、3a、3b、4、5、5a、5b、6、7もしくは8であり、(y)は1、2、2a、2b、3、4、5もしくは6である。具体的実施形態では、1以上のEph受容体と免疫反応するFc変異体は、例えば、EphA2 + EphA4、またはEphA2 + EphA3、またはEphA2 + EphB4、またはEphA4 + EphA3、もしくはEphA4 + EphB4に結合する。具体的には、1以上のEph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体は二重特異性抗体であることが考えられる。さらに、1以上のEph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体は、2以上のEph受容体の共通エピトープに結合する抗体であることも意図されている。さらにまた、1以上のEph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体は、1以上のEph受容体と交差反応する抗体であることも意図されている。加えて、本発明のFc変異体は、1以上のEph受容体(例えば、EphA2とEphA4)に対し同じ免疫反応性を有するものでも、あるいは、他の受容体より1つのEph受容体と強く免疫反応するものでもよい。
本発明は、EphA2受容体に免疫特異的に結合するFc変異体であって、該抗体が、12G3H11、Eph099B-102.147、Eph099B-208.261、Eph099B-210.248、Eph099B-233.152、EA2、EA3、EA4、もしくはEA5のアミノ酸配列を有する可変重鎖(VH)ドメインを含む、上記Fc変異体を包含する。本発明はまた、EphA2受容体に免疫特異的に結合するFc変異体であって、該抗体が、12G3H11、Eph099B-102.147、Eph099B-208.261、Eph099B-210.248、Eph099B-233.152、EA2、EA3、EA4、もしくはEA5のアミノ酸配列を有する可変軽鎖(VL)ドメインを含む、上記Fc変異体を包含する。本発明はさらに、EphA2受容体に免疫特異的に結合するFc変異体であって、該抗体が、本明細書に開示のVLドメイン、もしくは他のVLドメインと組み合わせた本明細書に開示のVHドメインを含む、上記Fc変異体も包含する。本発明はさらに、EphA2受容体に免疫特異的に結合するFc変異体であって、該変異体が、本明細書に開示のVHドメイン、もしくは他のVHドメインと組み合わせた本明細書に開示のVLドメインを含む、上記Fc変異体も包含する。
本発明は、EphA4受容体に免疫特異的に結合するFc変異体であって、該抗体が、LX-13またはscFv EA44のVHドメインのアミノ酸配列を有する可変重鎖(VH)ドメインを含む、上記Fc変異体を包含する。本発明はまた、EphA4受容体に免疫特異的に結合するFc変異体であって、該抗体が、LX-13またはscFv EA44のVLドメインのアミノ酸配列を有する可変軽鎖(VL)ドメインを含む、上記Fc変異体を包含する。本発明はさらに、EphA4受容体に免疫特異的に結合するFc変異体であって、該抗体が、本明細書に開示のVLドメイン、もしくは他のVLドメインと組み合わせた本明細書に開示のVHドメインを含む、上記Fc変異体も包含する。本発明はさらに、EphA4受容体に免疫特異的に結合するFc変異体であって、該変異体が、本明細書に開示のVHドメイン、もしくは他のVHドメインと組み合わせた本明細書に開示のVLドメインを含む、上記Fc変異体も包含する。
本発明は、Eph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体であって、該抗体が、表3(後掲)に記載するVH CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVH CDRを含む、上記Fc変異体を包含する。本発明はまた、Eph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体であって、該抗体が、表3(後掲)に記載するVL CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVL CDRを含む、上記Fc変異体を包含する。本発明はまた、Eph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体であって、該Fc変異体が、表3に記載する1以上のVH CDRと、1以上のVL CDRを含む、上記Fc変異体を包含する。本発明はさらに、Eph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体であって、該Fc変異体が、表3(後掲)に記載するVH CDRおよびVL CDRのいくつかまたはすべての組合せを含む、上記Fc変異体を包含する。
本発明はまた、12G3H11、Eph099B-102.147、Eph099B-208.261、Eph099B-210.248、Eph099B-233.152、EA2、EA3、EA4、EA5、LX-13またはscFv EA44、もしくはそれらの抗原結合フラグメントと競合して、Eph受容体に結合するFc変異体も包含する。このような抗体を同定するのに用いられる競合アッセイは、当業者には周知である。具体的実施形態では、周知のORIGEN分析で測定すると、1μg/mlの本発明の抗体は、ORIGEN TAG標識した12G3H11、Eph099B-102.147、Eph099B-208.261、Eph099B-210.248、Eph099B-233.152、EA2、EA3、EA4、EA5、LX-13もしくはscFv EA44が、ビオチン標識したEph受容体に結合するのを75%、80%、85%、もしくは90%阻止する。
本発明はまた、当業者には周知のフレームワーク領域を含むFc変異体を提供する。一実施形態では、本発明の抗体またはそのフラグメントのフレームワーク領域はヒト由来か、もしくはヒト化されている。
本発明は、任意の他の置換または改変(例えば、前述のFc置換)に加えて、突然変異(例えば、1以上のアミノ酸置換)を含む、12G3H11、Eph099B-102.147、Eph099B-208.261、Eph099B-210.248、Eph099B-233.152、EA2、EA3、EA4、EA5、LX-13もしくはscFv EA44のアミノ酸配列を有するFc変異体を包含する。一実施形態では、これら抗体における突然変異は、これらが免疫特異的に結合するEph受容体に対する該抗体の結合活性および/または親和性を維持もしくは増強する。当業者には周知の標準的方法(例えば、免疫検定法)を用いて、特定の抗原に対する抗体の親和性をアッセイすることができる。
本発明は、Eph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体をコードする、一般に単離された核酸分子の使用を包含する。具体的実施形態では、単離された核酸分子は、Eph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体をコードし、その際、該Fc変異体は、1以上のFc置換(例えば、前記のもの)を含む、12G3H11、Eph099B-102.147、Eph099B-208.261、Eph099B-210.248、Eph099B-233.152、EA2、EA3、EA4、EA5、LX-13もしくはscFv EA44のアミノ酸配列を有する。別の実施形態では、単離された核酸分子は、Eph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体をコードし、その際、該Fc変異体は、12G3H11、Eph099B-102.147、Eph099B-208.261、Eph099B-210.248、Eph099B-233.152、EA2、EA3、EA4、EA5、LX-13もしくはscFv EA44のVHドメインのアミノ酸配列を有するVHドメインを含む。別の実施形態では、単離された核酸分子が、Eph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体をコードし、その際、該抗体は、12G3H11、Eph099B-102.147、Eph099B-208.261、Eph099B-210.248、Eph099B-233.152、EA2、EA3、EA4、EA5、LX-13もしくはscFv EA44のVLドメインのアミノ酸配列を有するVLドメインを含む。
本発明は、Eph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体をコードする単離された核酸分子の使用を包含するが、その際、該Fc変異体は、表3に記載するVH CDRのいずれかのアミノ酸配列、および/または表4に記載する抗体のいずれかの重鎖由来のアミノ酸配列を有するVH CDRを含む。特に、本発明は、Eph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体をコードする単離された核酸分子の使用を包含し、その際、該抗体は、表3に記載するVH CDRのいずれかのアミノ酸配列、および/または表4に記載する抗体のいずれかの重鎖由来のアミノ酸配列を有する1、2、もしくはそれ以上のVH CDRを含む。
本発明は、Eph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体をコードする単離された核酸分子の使用を包含するが、その際、該Fc変異体は、表3に記載するVL CDRのいずれかのアミノ酸配列、および/または表4に記載する抗体のいずれかの軽鎖由来のアミノ酸配列を有するVL CDRを含む。特に、本発明は、Eph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体をコードする単離された核酸分子の使用を包含し、その際、該抗体は、表3に記載するVL CDRのいずれかのアミノ酸配列、および/または表4に記載する抗体のいずれかの軽鎖由来のアミノ酸配列を有する1、2もしくはそれ以上のVL CDRを含む。
本発明は、Eph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体をコードする単離された核酸分子の使用を包含するが、その際、該Fc変異体は、Eph受容体に免疫特異的に結合する、本明細書に記載のVHドメイン、VH CDR、VLドメイン、もしくはVL CDRの誘導体を含む。本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列に突然変異(例えば、付加、欠失、および/または置換)を導入するのに用いることができる当業者には周知の標準的方法(例えば、部位特異的突然変異誘発およびPCR仲介突然変異誘発など)を通常に用いて、アミノ酸置換を実施する。一実施形態では、VHおよび/またはVL CDR誘導体は、本来のVHおよび/またはVL CDRに対して、25以下のアミノ酸置換、20以下のアミノ酸置換、15以下のアミノ酸置換、10以下のアミノ酸置換、5以下のアミノ酸置換、4以下のアミノ酸置換、3以下のアミノ酸置換、2以下のアミノ酸置換を含む。別の実施形態では、VHおよび/またはVL CDR誘導体は、1以上の推定非必須アミノ酸残基(すなわち、抗体が、Eph受容体に免疫特異的に結合する上で重要ではないアミノ酸残基)で実施される保存的アミノ酸置換(例えば、前記のもの)を有する。あるいは、例えば、飽和突然変異誘発により、VHおよび/またはVL CDRコード配列の全部または一部に沿ってランダムに突然変異を導入し、得られた突然変異体を生物活性についてスクリーニングにすることにより、活性を保持する突然変異体を同定することができる。突然変異誘発後、コードした抗体を発現させ、抗体の活性を決定することができる。
本発明は、可変軽鎖(VL)ドメインおよび/または可変重鎖(VH)ドメインに1以上の別のアミノ酸残基置換を含む、12G3H11、Eph099B-102.147、Eph099B-208.261、Eph099B-210.248、Eph099B-233.152、EA2、EA3、EA4、EA5、LX-13もしくはscFv EA44のFc変異体を含む。本発明はまた、1以上のVL CDRおよび/または1以上VH CDRに1以上の別のアミノ酸残基置換を含む、12G3H11、Eph099B-102.147、Eph099B-208.261、Eph099B-210.248、Eph099B-233.152、EA2、EA3、EA4、EA5、LX-13もしくはscFv EA44のFc変異体を含む。12G3H11、Eph099B-102.147、Eph099B-208.261、Eph099B-210.248、Eph099B-233.152、EA2、EA3、EA4、EA5、LX-13もしくはscFv EA44のFc変異体のVHドメイン、VH CDR、VLドメインおよび/またはVL CDRに置換を導入することにより作製した抗体は、in vitroおよびin vivoで、例えば、それがEph受容体および/またはFcγRに結合する能力について(例えば、限定するものではないが、ELISAおよびBIAcoreにより)、またはそれがADCCを仲介し、癌または1以上のその症状を予防、治療、管理もしくは改善する能力について試験することができる。
本発明はまた、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体またはそのフラグメントの使用も包含し、その際、該Fc変異体は、12G3H11(すなわち、配列番号64および/または配列番号65)、3F2(すなわち、配列番号68および/または配列番号69)、Eph099B-102.147、Eph099B-208.261、Eph099B-210.248、Eph099B-233.152、EA2、EA3、EA4、EA5、LX-13もしくはscFv EA44の可変重鎖および/または可変軽鎖のアミノ酸配列に対し、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%同一の可変重鎖および/または軽鎖のアミノ酸配列を含む。本発明はまた、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体またはそのフラグメントの使用も包含し、その際、該Fc変異体は、12G3H11(すなわち、配列番号64および/または配列番号65)、3F2(すなわち、配列番号68および/または配列番号69)、Eph099B-102.147、Eph099B-208.261、Eph099B-210.248、Eph099B-233.152、EA2、EA3、EA4、EA5、LX-13もしくはscFv EA44の可変重鎖および/または可変軽鎖のアミノ酸配列に対し、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、もしくは少なくとも約99%同一の可変重鎖および/または軽鎖のアミノ酸配列を含む。本発明はさらに、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体またはそのフラグメントの使用を包含し、その際、該抗体または抗体フラグメントは、12G3H11、Eph099B-102.147、Eph099B-208.261、Eph099B-210.248、Eph099B-233.152、EA2、EA3、EA4、EA5、LX-13もしくはscFv EA44の1以上のCDRのアミノ酸配列に対し、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%同一の1以上のCDRのアミノ酸配列を含む。本発明はさらに、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体またはそのフラグメントの使用を包含し、その際、該抗体または抗体フラグメントは、12G3H11、Eph099B-102.147、Eph099B-208.261、Eph099B-210.248、Eph099B-233.152、EA2、EA3、EA4、EA5、LX-13もしくはscFv EA44の1以上のCDRのアミノ酸配列に対し、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、もしくは少なくとも約99%同一の1以上のCDRのアミノ酸配列を含む。2つのアミノ酸配列の同一性百分率の決定は、当業者には周知のあらゆる方法(例えば、BLASTタンパク質検索など)により実施することができる。
本発明はまた、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体またはそのフラグメントの使用も包含し、その際、該Fc変異体は、12G3H11(すなわち、配列番号62および/または配列番号63)、3F2(すなわち、配列番号66および/または配列番号67)、Eph099B-102.147、Eph099B-208.261、Eph099B-210.248、Eph099B-233.152、EA2、EA3、EA4、EA5、LX-13もしくはscFv EA44のヌクレオチド配列とストリンジェント条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によりコードされる。別の好ましい実施形態では、本発明は、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体またはそのフラグメントの使用を包含し、その際、該Fc変異体は、12G3H11、Eph099B-102.147、Eph099B-208.261、Eph099B-210.248、Eph099B-233.152、EA2、EA3、EA4、EA5、LX-13もしくはscFv EA44の1以上のCDRのヌクレオチド配列とストリンジェント条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によりコードされる。ストリンジェントハイブリダイゼーション条件としては、限定するものではないが、約45℃での6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)におけるフィルター結合DNAとのハイブリダイゼーションの後、約50〜65℃で0.2X SSC/0.1%SDSにおける1回以上の洗浄を行なうもの;約45℃での6X SSCにおけるフィルター結合DNAとのハイブリダイゼーションの後、約60℃で0.2X SSC/0.2%SDSにおける1回以上の洗浄のような高ストリンジェント条件、もしくは当業者には周知のその他のストリンジェントハイブリダイゼーション条件(例えば、Ausubel, F.M.ら、1989 Current Protocols in Molecular Biology, 第1巻、Green Publishing Associates, Inc.およびJohn Wiley and Sons, Inc., NY、6.3.1〜6.3.6および2.10.3頁)が挙げられる。
本発明の様々な形態に含まれる抗体のさらに詳細な説明を以下に記載する。
6.2 本発明の抗体
本発明のFc変異体には、限定するものではないが、合成抗体、モノクローナル抗体、オリゴクローナル抗体、組換えにより作製した抗体、イントラボディー(intrabodies)、多重特異性抗体、二重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体、一本鎖FvFc(scFvFc)、一本鎖Fv(scFv)、ならびに抗イディオタイプ(抗Id)抗体が含まれる。特に、本発明に用いる抗体は、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性の部分を含む。本発明の抗体は、あらゆるタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)もしくはサブクラスの免疫グロブリン分子でよい。
本発明の変異体は、鳥類および哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、もしくはニワトリ)を含む動物に由来するものでよい。好ましくは、抗体はヒトまたはヒト化モノクローナル抗体である。本明細書で用いる「ヒト」抗体とは、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体、ならびに、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、またはヒト遺伝子由来の抗体を発現するマウスから単離した抗体を包含する。
抗体はあらゆるポリペプチドと同様に等電点(pI)を有し、これは、一般に、ポリペプチドが正味電荷を帯びていないpHとして定義される。溶液のpHがタンパク質の等電点(pI)と等しいとき、一般にタンパク質溶解度が最も低いことは当分野で周知である。抗体におけるイオン化可能残基の数および位置を改変して、pIを調節することにより、溶解度を最適化することができる。例えば、ポリペプチドのpIは、適切なアミノ酸置換を実施する(例えば、アラニンのような非荷電残基をリシンのような荷電アミノ酸で置換することにより)ことにより、操作することができる。特定の理論に拘束されるわけではないが、上記抗体のpIを変化させる抗体のアミノ酸置換により、抗体の溶解度および/または安定性を改善することができる。当業者であれば、特定の抗体について所望のpIを達成するのにどんなアミノ酸置換が最も適しているかわかるであろう。タンパク質のpIは、限定するものではないが、等電点電気泳動や、各種コンピューターアルゴリズム(例えば、Bjellqvistら、1993, Electrophoresis 14:1032参照)など、様々な方法により決定することができる。一実施形態では、本発明のFc変異体のpIは、約6.5、約7.0、約8.0、約8.5、もしくは約9.0より高い。別の実施形態では、本発明のFc変異体のpIは、6.5、7.0、8.0、8.5、もしくは9.0より高い。一実施形態では、本発明のFc変異体のpIに変化をもたらす置換は、Eph受容体に対する結合親和性を有意に減少させるものではない。具体的には、FcγRとの結合を改変させるFc領域の置換(前掲参照)が、pIも変化させることが考えられる。好ましい実施形態では、FcγR結合に所望する改変とpIに所望する改変の両方を実施するように、Fc領域の置換を具体的に選択する。本明細書で用いるpI値は、優勢な電荷形態のpIとして定義する。タンパク質のpIは、、限定するものではないが、等電点電気泳動や、各種コンピューターアルゴリズム(例えば、Bjellqvistら、1993, Electrophoresis 14:1032参照)など、様々な方法により決定することができる。
抗体のFabドメインのTmは、抗体の熱安定性の優れた指標であり、貯蔵寿命の指標も提供しうる。Tmが低いほど、凝集が多く、安定性が低いことを示すのに対し、Tmが高いほど、凝集が少なく、安定性が高いことを示す。従って、Tmが高い抗体ほど好ましい。一実施形態では、Fc変異体のFabドメインは、少なくとも50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃もしくは120℃より高いTm値を有する。別の実施形態では、Fc変異体のFabドメインは、少なくとも約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、約100℃、約105℃、約110℃、約115℃もしくは約120℃より高いTm値を有する。タンパク質ドメイン(例えば、Fabドメイン)の熱融解温度(Tm)は、当業者には周知の標準的方法、例えば、示差走査熱量測定法(例えば、Vermeerら、2000, Biophys. J. 78:394-404;Vermeerら、2000, Biophys. J. 79:2150-2154を参照)を用いて測定することができる。
本発明のFc変異体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性もしくはそれ以上の多重特異性のいずれでもよい。多重特異性抗体は、所望の標的分子の様々なエピトープと免疫特異的に結合するか、あるいは、標的分子および異種エピトープ(例えば、異種ポリペプチドまたは固体支持材料)の両方と免疫特異的に結合することができる。例えば、国際公開番号WO 94/04690;WO 93/17715;WO 92/08802;WO 91/00360;ならびにWO 92/05793;Tuttら、1991, J.Immunol. 147:60-69;米国特許第4,474,893号、第4,714,681号、第4,925,648号、第5,573,920号、および第5,601,819号;ならびに、Kostenlyら、1992, J. Immunol. 148:1547(各々、全文を参照として本明細書に組み込む)を参照されたい。一実施形態では、結合特異性の1つは、Eph受容体に対するものであり、もう一つは他のいずれかの抗原(すなわち、別のEph受容体、エフリン、シグナル伝達またはエフェクター分子)に対するものである。
多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有する。このような分子は通常、2つの抗原にしか結合しない(すなわち、二重特異性抗体、BsAb)が、これに加えてさらに特異性を備えた抗体、例えば、三重特異性抗体も本発明に含まれる。BsAbの例として、限定するものではないが、一方のアームがインテグリンαvβ3に対するものであり、他方のアームが別の抗原に対するものである。二重特異性抗体の作製方法は当分野では周知である。全長二重特異性抗体の伝統的作製方法は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の共発現に基づくが、その際、これら2つの鎖は異なる特異性を有する(Millsteinら、1983, Nature, 305:537-539;その全文を参照として本明細書に組み込む)。免疫グロブリン重鎖および軽鎖のランダムな集まりのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ(quadroma))は、様々な抗体分子からなる候補混合物を産生し、そのうちの1つだけが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製(通常クロマトグラフィー工程により実施される)は、かなり面倒で、しかも生成物の収率が低い。同様の手順がWO 93/08829、ならびにTrauneckerら、1991, EMBO J., 10:3655-3659に記載されている。より特異性の高い手法は、ジ−ダイアボディ(Di-diabody)、すなわち、四価二重特異性抗体の作製である。Di-diabodyの製造方法は当分野で周知である(例えば、Luら、2002, J Immunol Methods 279:219-32;Marvinら、2005, acta Pharmacolical Sinica 26:649参照)。
別の手法によれば、所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合させる。融合は、ヒンジ、CH2、およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインと行なうのが好ましい。一実施形態では、軽鎖結合に必要な部位を含む第1重鎖定常領域(CH1)は、融合物の少なくとも1つに存在する。免疫グロブリン重鎖融合物、および所望であれば、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを個別の発現ベクターに挿入し、好適な宿主生物に共トランスフェクションする。これにより、構築物に用いた3つのポリペプチド鎖の比率をまちまちして最適収率を得る場合に、3つのポリペプチド断片の相互比率を調節する上で大きなフレキシビリティーがもたらされる。しかし、等しい比率で少なくとも2つのポリペプチド鎖を発現させて高収率を得る、または比率が特に重要でない場合には、1つの発現に2または3つ全部のポリペプチド鎖のコード配列を挿入することが可能である。
この手法の一実施形態では、二重特異性抗体は、一方のアームに第1結合特異性(例えば、Eph受容体)を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、他方のアームにハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)から構成される。この非対称構造は、二重特異性分子の半分だけに免疫グロブリン軽鎖が存在して、容易な分離方法を提供することから、不要な免疫グロブリン鎖の組合せから所望の二重特異性化合物の分離を容易にする。この手法は、WO 94/04690(参照として本明細書にその全文を組み込む)に開示されている。二重特異性抗体の作製についてさらに詳しくは、例えば、Sureshら、1986, Methods in Enzymology, 121:210(参照として本明細書にその全文を組み込む)を参照されたい。WO 96/27011(参照として本明細書にその全文を組み込む)に記載されている別の手法によれば、組換え細胞培養物から回収したヘテロ二量体の百分率を最大にするように1対の抗体分子を作製することができる。好ましい界面は、抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの1以上の小さいアミノ酸側鎖をこれより大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプロファン)で置換する。大きいアミノ酸側鎖をこれより小さい側鎖(例えば、アラニンまたはトレオニン)で置換することにより、第2抗体分子の界面に、大きい側鎖と同じか、または類似したサイズの補償「キャビティー」が形成される。これにより、ホモ二量体のような望まない最終生成物と比較して、ヘテロ二量体の収率を高める機構が提供される。
二重特異性抗体は、架橋または「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲートにおける抗体の1つをアビジンと、他方をビオチンと結合させることができる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞にターゲッティングするのに(米国特許第4,676,980号)、また、HIV感染の治療のために(WO 91/00360、WO 92/200373、および欧州特許第03089号)に提案されている。尚、前記参照文献は、各々参照として本明細書にその全文を組み込むものとする。ヘテロコンジュゲートは、任意の好適な架橋方法を用いて作製することができる。好適な架橋剤は、当分野で周知であり、米国特許第4,676,980号に開示されているものなど、多数の架橋方法がある。尚、前記参照文献は、各々参照として本明細書にその全文を組み込むものとする。
本発明の少なくとも1つのヒンジ変更を含む2価以上の抗体が意図される。例えば、三重特異性抗体を作製することができる。例えば、Tuttら、J. Immunol. 147:60(1991)(参照として本明細書にその全文を組み込む)を参照されたい。
本発明のFc変異体は、単一ドメイン抗体を含むが、そのような抗体として、ラクダ化単一ドメイン抗体が挙げられる(例えば、Muyldermansら、2001, Trends Biochem. Sci. 26:230;Nuttallら、2000, Cur. Pharm. Biotech. 1:253;ReichmannおよびMuyldermans, 1999, J. Immunol. Meth. 231:25;国際公開番号WO 94/04678およびWO 94/25591;米国特許第6,005,079号参照;これらの文献は、参照として本明細書にその全文を組み込む)。
具体的に考慮される別の抗体は「オリゴクローナル」抗体である。本明細書に用いる用語「オリゴクローナル抗体」とは、異なるモノクローナル抗体の予定された混合物を意味する。例えば、国際公開WO 95/20401;米国特許第5,789,208号および第6,335,163号(参照として本明細書にその全文を組み込む)を参照されたい。オリゴクローナル抗体は、1以上のエピトープに対する抗体の予定された混合物からなり、単一細胞で作製するのが好ましい。さらに好ましくは、オリゴクローナル抗体は、多重特異性を有する抗体を作製できるように、共通の軽鎖と対を形成することができる複数の重鎖を含む(例えば、国際公開番号WO 04/009618参照;参照として本明細書に組み込む)。オリゴクローナル抗体は、単一標的分子(例えば、インテグリンαvβ3)上の複数のエピトープをターゲッティングしたい場合、特に有用である。当業者は、どの種類の抗体または抗体の混合物が意図する目的および所望のニーズに適用可能かを知っている、もしくは決定することができる。
一実施形態では、本発明の抗体は、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、5日以上、10日以上、15日以上、好ましくは20日以上、25日以上、30日以上、35日以上、40日以上、45日以上、2ヶ月以上、3ヶ月以上、4ヶ月以上、もしくは5ヶ月以上の半減期(例えば、血清半減期)を有するFc変異体も包含する。別の実施形態では、本発明の抗体はまた、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、約5日以上、約10日以上、約15日以上、好ましくは約20日以上、約25日以上、約30日以上、約35日以上、約40日以上、約45日以上、約2ヶ月以上、約3ヶ月以上、約4ヶ月以上、もしくは約5ヶ月以上の半減期(例えば、血清半減期)を有するFc変異体も包含する。哺乳動物、好ましくはヒトにおける本発明の抗体の半減期の増加により、哺乳動物における該抗体または抗体フラグメントの血清力価が高くなるため、該抗体または抗体フラグメントの投与頻度を減らす、および/または投与しようとする該抗体または抗体フラグメントの濃度を低減することができる。In vivo半減期が増加した抗体は、当業者には周知の方法により作製することができる。例えば、in vivo半減期が増加した抗体は、FcドメインとFcRn受容体同士の相互作用に関与するものとして同定されたアミノ酸残基を改変(例えば、置換、欠失もしくは付加)することにより、作製することができる(例えば、国際公開番号WO 97/34631;WO 04/029207;米国特許第6,737,056号および米国特許公開番号2003/0190311を参照;これらは各々参照として本明細書にその全文を組み込む)。
一実施形態では、本発明のFc変異体は、化学的に改変(例えば、1以上の化学成分を抗体に結合させる)してもよいし、そのグリコシル化を改変する、あるいは、抗体の1以上の機能特性を改変するように変更してもよい。
さらに別の実施形態では、本発明のFc変異体のグリコシル化を改変する。例えば、非グリコシル化抗体を作製することができる(すなわち、抗体がグリコシル化を欠失している)。グリコシル化は、例えば、標的抗原に対する抗体の親和性を高めるように改変することができる。このような炭水化物変更は、例えば、抗体配列内の1以上のグリコシル化部位を改変することにより達成することができる。例えば、1以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位を除去して、その部位でのグリコシル化を排除するような1以上のアミノ酸置換を行うことができる。このようなグリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を高めることを可能にする。このような手法についてさらに詳細には、米国特許第5,714,350号および第6,350,861号(いずれも、参照として本明細書にその全文を組み込む)に記載されている。
前記に加えて、または代わりに、グリコシル化タイプを改変したFc変異体、例えば、フコシル残基の量を低減した低フコシル化抗体またはバイセクティング(bisecting)GlcNA構造が増加した抗体を作製することができる。このような改変グリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を高めることが証明されている。このような炭水化物改変は、例えば、グリコシル化機構が改変された宿主細胞に該抗体を発現させることにより達成することができる。改変グリコシル化機構を有する細胞は当分野に記載されており、これを宿主細胞として用いて、そこに本発明の組換え抗体を発現させることにより、グリコシル化が改変された抗体を生産することができる。例えば、Shields, R. L.ら(2002)J. Biol. Chem. 277:26733-26740;Umanaら(1999)Nat. Biotech. 17:176-1、ならびに、欧州特許番号:EP1,176,195;PCT公開 WO03/035835;WO 99/54342(各々、参照として本明細書にその全文を組み込む)を参照されたい。
さらに別の実施形態では、本発明のFc変異体のグリコシル化を改変する。例えば、非グリコシル化抗体を作製することができる(すなわち、抗体がグリコシル化を欠失している)。グリコシル化は、例えば、標的抗原に対する抗体の親和性を増大するように改変することができる。このような炭水化物変更は、例えば、抗体配列内の1以上のグリコシル化部位を改変することにより達成することができる。例えば、1以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位を除去して、その部位でのグリコシル化を排除するような1以上のアミノ酸置換を行うことができる。このようなグリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を高めると考えられる。このような手法についてさらに詳細には、米国特許第5,714,350号および第6,350,861号(いずれも、参照として本明細書にその全文を組み込む)に記載されている。
前記に加えて、または代わりに、グリコシル化タイプを改変したFc変異体、例えば、フコシル残基の量を低減した低フコシル化抗体またはバイセクティング(bisecting)GlcNA構造が増加した抗体を作製することができる。このような改変グリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を高めることが証明されている。上記炭水化物変更は、例えば、グリコシル化機構が改変された宿主細胞に該抗体を発現させることにより達成することができる。改変グリコシル化機構を有する細胞は当分野に記載されており、これを宿主細胞として用いて、そこに本発明の組換え抗体を発現させることにより、グリコシル化が改変された抗体を生産することができる。例えば、Shields, R. L.ら(2002)J. Biol. Chem. 277:26733-26740;Umanaら(1999)Nat. Biotech. 17:176-1、ならびに、欧州特許番号:EP1,176,195;PCT公開 WO03/035835;WO 99/54342(各々、参照として本明細書にその全文を組み込む)を参照。
6.3 抗体コンジュゲートおよび誘導体
本発明のFc変異体は、変更された(すなわち、任意のタイプの分子を抗体に共有結合させることにより)誘導体を含む。例えば、限定するものではないが、抗体誘導体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化(pegylation)、リン酸化、アミド化、既知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたはその他のタンパク質との結合などにより、変更された抗体を含む。多数の化学的変更のいずれかを周知の技術(限定するものではないが、特異的化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成など)により実施することができる。さらに、誘導体は、1以上の非古典的アミノ酸を含んでいてもよい。
in vivo半減期が増加した抗体またはそのフラグメントは、該抗体または抗体フラグメントに高分子量ポリエチレングリコール(PEG)のようなポリマー分子を結合させることにより作製することができる。PEGと該抗体または抗体フラグメントのNまたはC末端との部位特異的結合により、あるいはリシン残基に存在するイプシロン−アミノ基を介して、多機能リンカーを用いて、または用いずに、PEGを上記抗体または抗体フラグメントに結合させることができる。生物活性の損失を最小限にする線状または分枝ポリマー誘導体化を用いてもよい。結合の程度は、SDS-PAGEおよび質量分析法により密にモニターし、PEG分子と上記抗体の適正な結合を確実にする。例えば、サイズ排除またはイオン交換クロマトグラフィーにより、未反応PEGを抗体−PEGコンジュゲートから分離してもよい。
さらに、抗体をアルブミンに結合させることにより、抗体または抗体フラグメントをin vivoで安定性の高いものにする、またはin vivoで半減期の長いものにすることもできる。そのための技術は当分野では周知であり、例えば、WO 93/15199、WO 93/15200、およびWO 01/77137;ならびに欧州特許第413,622号(各々、参照として本明細書にその全文を組み込む)を参照されたい。本発明は、1以上の成分(限定するものではないが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質、核酸分子、小分子、模倣薬剤、合成薬剤、無機分子および有機分子)に結合または融合した抗体またはそのフラグメントの使用を包含する。
一実施形態では、本発明は、異種タンパク質またはポリペプチド(あるいはその断片、好ましくは少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、または少なくとも100個のアミノ酸のポリペプチド)に組換えにより融合、または化学的に結合(共有および非共有結合の両方を含む)させて、融合タンパク質を作製する抗体またはそのフラグメントの使用を包含する。別の実施形態では、本発明は、異種タンパク質またはポリペプチド(あるいはその断片、好ましくは少なくとも約10個、少なくとも約20個、少なくとも約30個、少なくとも約40個、少なくとも約50個、少なくとも約60個、少なくとも約70個、少なくとも約80個、少なくとも約90個、または少なくとも約100個のアミノ酸のポリペプチド)に、組換えにより融合、または化学的に結合(共有および非共有結合の両方を含む)させて、融合タンパク質を作製する抗体またはそのフラグメントの使用を包含する。融合は、必ずしも直接である必要はなく、リンカー配列を介して行なってもよい。例えば、特定の細胞表面受容体に特異的な抗体に上記抗体を融合または結合させることにより、このような抗体を用いて、in vitroまたはin vivoのいずれかで異種ポリペプチドを特定の細胞型にターゲッティングすることができる。異種ポリペプチドに融合または結合させた抗体は、当分野で周知の方法を用いて、in vitro免疫検定法および精製方法に用いることもできる。例えば、国際公開 WO93/21232;欧州特許第439,095号;Naramuraら、1994, Immunol. Lett. 39:91-99;米国特許第5,474,981号;Gilliesら、1992, PNAS 89:1428-1432;ならびにFellら、1991, Immunol. 146:2446-2452(各々、参照として本明細書にその全文を組み込む)を参照されたい。
本発明は、抗体フラグメントに融合または結合した異種タンパク質、ペプチドまたはポリペプチドを含む製剤も包含する。例えば、異種ポリペプチドをFabフラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、F(ab)2フラグメント、VHドメイン、VLドメイン、VH CDR、VL CDRあるいはそのフラグメントに融合または結合させることができる。ポリペプチドを抗体部分に融合または結合させる方法は、当分野では周知である。例えば、米国特許第5,336,603号、第5,622,929号、第5,359,046号、第5,349,053号、第5,447,851号および第5,112,946号;欧州特許第307,434号および第367,166号;国際公開番号WO 96/04388およびWO 91/06570;Ashkenaziら、1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 10535-10539;Zhengら、1995, J. Immunol. 154:5590-5600;ならびにVilら、1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:11337- 11341(これらの参照文献は、参照として本明細書にその全文を組み込む)を参照されたい。
遺伝子シャフリング、モチーフシャフリング、エキソンシャフリング、および/またはコドンシャフリング(総称的に、「DNAシャフリング」と呼ぶ)の技術により、例えば、Eph受容体(例えば、前掲)に免疫特異的に結合する抗体の別の融合タンパク質を作製することもできる。DNAシャフリングを用いて、本発明の抗体またはそのフラグメントの活性を改変する(例えば、高い親和性と低い解離速度を有する抗体またはそのフラグメント)ことができる。例えば、米国特許第5,605,793号;第5,811,238号;第5,830,721号;第5,834,252号;および第5,837,458号; Pattenら、1997, Curr. Opinion Biotechnol. 8:724-33;Harayama, 1998, Trends Biotechnol. 16(2): 76-82; Hanssonら、1999, J. Mol. Biol. 287:265-76;ならびにLorenzoおよびBlasco, 1998, Biotechniques 24(2): 308- 313(これらの参照文献および刊行物の各々は、参照として本明細書にその全文を組み込む)を参照されたい。抗体またはそのフラグメント、もしくはコードされた抗体またはそのフラグメントは、エラー−プローンPCR、ランダムヌクレオチド挿入もしくはその他の方法によりランダム突然変異誘発に付した後、組換えすることにより、改変することができる。一部がEph受容体に免疫特異的に結合する抗体または抗体フラグメントをコードするポリヌクレオチドの1以上の部分を、1以上の異種分子の1以上の成分、モチーフ、セクション、部分、ドメイン、断片などで組み換えることもできる。
さらに、抗体またはそのフラグメントをマーカー配列(例えば、ペプチド)と融合させて、精製を容易にすることができる。好ましい実施形態では、マーカーアミノ酸配列としては、特に、ヘキサ−ヒスチジンペプチド(例えば、pQEベクター(QIAGEN, Inc., 9259 Eton Avenue, Chatsworth, CA 91311)に付与されるタグがあり、その多くは市販されている。Gentzら、1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821-824に記載されているように、例えば、ヘキサ−ヒスチジンは、融合タンパク質の好適な精製を可能にする。精製に有用なその他のタグとして、限定するものではないが、赤血球凝集素「HA」タグ(インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質(Wilsonら、1984, Cell 37:767)由来のエピトープに対応する)および「フラグ」タグが挙げられる。
別の実施形態では、本発明のFc変異体またはその類似体もしくは誘導体を診断または検出薬と結合させる。このような抗体は、特定の治療法の効力を決定するなどの臨床試験方法の一環として、癌の発生または進行をモニタリングまたは予測するのに有用となりうる。このような診断および検出は、限定するものではないが、以下に挙げる検出可能な物質と該抗体を結合させることにより達成することができる:各種酵素、例えば、限定するものではないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、もしくはアセチルコリンエステラーゼ;補欠分子族、例えば、限定するものではないが、ストレプトアビジンビオチンおよびアビジン/ビオチン;蛍光材料、例えば、限定するものではないが、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルもしくはフィコエリトリン;発光物質、限定するものではないが、例えば、ルミノール;生物発光物質、限定するものではないが、例えば、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリン;放射性物質、例えば、限定するものではないが、ヨウ素(131I、125I、123I、121I)、炭素(14C)、イオウ(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(115In、113In、112In、111In)、およびテクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133We)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Sn、ならびに117Tin;各種の陽電子放射断層撮影法を用いた陽電子放射金属、非放射性常磁性金属イオン、ならびに特定の放射性同位体に放射性標識または結合した分子。
本発明はさらに、治療薬と結合した本発明のFc変異体またはそのフラグメントも包含する。
抗体またはそのフラグメントを細胞毒、例えば、細胞***抑制または細胞致死薬、治療薬もしくは放射性金属イオン、例えば、α線放射物質などの治療薬成分と結合させることができる。細胞毒または細胞毒性物質は、細胞に有害なあらゆる物質を含む。例として以下のものが挙げられる:パクリタキセル、シトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、ミトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルチシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロパノロール、ピューロマイシン、エピルビシン、およびシクロホスファミド、ならびに、これらの類似体または相同体。治療薬として、限定するものではないが、抗代謝物(例:メトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例:メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BCNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマニトール、ストレプトゾトシン、ミトマイシンC、ならびにシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラシクリン(例:ダウノロルビシン(以前のダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例:ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、ならびに抗***誘発剤(例:ビンクリスチンおよびビンブラスチン)。治療薬成分のさらに広範なリストは、PCT公開WO 03/075957(参照として本明細書にその全文を組み込む)に記載されている。
さらに、抗体またはそのフラグメントを所与の生物学的応答を変更する治療薬または薬剤成分と結合させてもよい。治療薬または薬剤成分は、従来の化学療法薬に限定されると解釈すべきではない。例えば、薬剤成分は、所望の生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドであってもよい。このようなタンパク質として、例えば、以下のものが挙げられる:毒素、例えば、アブリン、リシンA、オンコナーゼ(または別の細胞傷害性RNase)、シュードモナス外毒素、コレラ毒素、ジフテリア毒素;タンパク質、例えば、腫瘍壊死因子、αインターフェロン、βインターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、アポトーシス因子、例えば、TNF-α、TNF-β、AIM I(国際公開番号WO 97/33899参照)、AIM II(国際公開番号WO 97/34911参照)、Fasリガンド(Takahashiら、1994, J. Immunol., 6:1567)、およびVEGI(国際公開番号WO 99/23105参照)、血栓形成剤および抗血管新生剤、例えば、アンジオスタチンまたはエンドスタチン;あるいは、生物学的応答改因子、例えば、リンホキン(例:インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-6(IL-6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、および顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、もしくは成長因子(例:成長ホルモン(GH))。
さらに、放射性金属イオンに結合させるのに有用な放射性物質または大環状キレート剤(放射性物質の例については前記参照)のような治療薬成分と結合させることができる。特定の実施形態では、大環状キレート剤は、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’-テトラ酢酸(DOTA)であり、これらは、リンカー分子を介して抗体に結合することができる。このようなリンカー分子は、一般に当分野では周知であり、Denardoら、1998, Clin Cancer Res. 4:2483;Petersonら、1999, Bioconjug, Chem. 10:553;ならびに、Zimmermanら、1999, Nucl. Med. Biol. 26:943(各々、参照として本明細書にその全文を組み込む)に記載されている。
治療薬成分を抗体と結合させる技術はよく知られている。限定するものではないが、アルデヒド/Schiff結合、スルフィドリル結合、酸不安定結合、シス−アコニチル結合、ヒドラゾン結合、酵素により分解可能な結合(概要は、Garnett, 2002, Adv Drug Deliv Rev 53:171参照)など、当分野では周知の任意の方法により、成分を抗体と結合させることができる。治療薬成分を抗体と結合させる技術はよく知られており、例えば、以下を参照されたい:Arnonら、“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeldら、(編)、pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985);Hellstrom ら、“Antibodies For Drug Delivery”, in Controlled Drug Delivery (第2版.), Robinsonら、(編)、pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987);Thorpe, “Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”, in Monoclonal Antibodies ‘84: Biological And Clinical Applications, Pincheraら、(編)、pp. 475-506 (1985);“Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwinら、(編)、pp. 303-16 (Academic Press 1985);ならびにThorpe ら、1982, Immunol. Rev. 62:119(各々、参照として本明細書にその全文を組み込む)。
抗体をポリペプチド部分と融合または結合させる方法は、当分野では周知である。例えば、米国特許第5,336,603号;第5,622,929号;第5,359,046号;第5,349,053号;第5,447,851号、および第5,112,946号;欧州特許第307,434号;第367,166号;PCT公開番号WO 96/04388およびWO 91/06570;Ashkenaziら、1991, PNAS USA 88: 10535;Zhengら、1995, J. Immunol. 154:5590;ならびにVilら、1992, PNAS USA 89:11337(これらの参照文献は、参照として本明細書にその全文を組み込む)を参照されたい。抗体と上記成分との融合は、必ずしも直接である必要はなく、リンカー配列を介して行なってもよい。このようなリンカー分子は当分野では周知であり、Denardoら、1998, Clin Cancer Res. 4:2483;Petersonら、1999, Bioconjug, Chem. 10:553;Zimmermanら、1999, Nucl. Med. Biol. 26:943;Garnett, 2002, Adv Drug Deliv Rev 53:171(各々、参照として本明細書にその全文を組み込む)に記載されている。
あるいは、米国特許第4,676,980号(参照として本明細書にその全文を組み込む)でSegalにより記載されているように、抗体を第2抗体と結合させることにより、抗体へテロコンジュゲートを形成することもできる。
抗体を固体支持体に結合させてもよく、これは、標的抗原の免疫検定または精製に特に有用である。このような固体支持体として、限定するものではないが、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルもしくはポリプロピレンが挙げられる。
Eph受容体に免疫特異的に結合する抗体またはそのフラグメントと結合させる治療薬成分または薬剤は、被検者における特定の疾患に対し所望の予防または治療効果を達成するように選択しなければならない。臨床医またはその他の医療スタッフは、Eph受容体に免疫特異的に結合する抗体またはそのフラグメントにどの治療薬成分または薬剤を結合させるかを決定する際、次の事項:疾患の種類、その重症度、ならびに被検者の状態を考慮しなければならない。
6.4 抗体の作製方法
本発明のFc変異体は、抗体を合成するための当分野では周知の任意の方法により、特に、化学的合成または組換え発現方法により作製することができる。
Eph受容体に対するポリクローナル抗体は、当分野では周知の様々な方法により作製することができる。例えば、Eph受容体またはその免疫原性断片を各種宿主動物(限定するものではないが、ウサギ、マウス、ラットなど)に投与して、Eph受容体に特異的なポリクローナル抗体を含む血清の生産を誘導する。宿主の種に応じ、各種アジュバントを用いて免疫応答を高めることもでき、このようなアジュバントとして、限定するものではないが、フロイント(完全および不完全)アジュバント、水酸化アルミニウムのような無機ゲル、リソレシチンのような界面活性剤、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性エマルション、スカシガイヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびに、有用と考えられるヒトアジュバント、例えば、BCG(カルメットゲラン菌)およびコリネバクテリウム・パルブム(corynebacterium parvum)が挙げられる。このようなアジュバントは当分野では周知である。
モノクローナル抗体は、当分野では周知の極めて多様な技術、例えば、ハイブリドーマ、組換え体、およびファージ展示技術、またはこれらの組合せの使用により作製することができる。例えば、当業者には周知であり、Harlowら、 Antibodies: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 第2版、1988);Hammerlingら、 Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier, N.Y., 1981)(参照として本明細書にその全文を組み込む)に教示されているようなハイブリドーマ技術を用いて、モノクローナル抗体を作製することができる。本明細書で用いる用語「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ技術を用いて作製した抗体に限定されるわけではない。用語「モノクローナル抗体」は、真核生物、原核生物、もしくはファージクローンなどの単一クローンに由来する抗体を指すのであって、これを作製する方法を意味するのではない。
ハイブリドーマ技術を用いて特定の抗体を作製およびスクリーニングする方法は当分野で常用され、周知である。簡単に言えば、マウスをEph受容体またはそのドメイン(例えば、細胞外ドメイン)で免疫し、免疫応答が検出された、例えば、Eph受容体に特異的な抗体がマウス血清中に検出されたら、マウスの脾を採取し、脾細胞を単離する。次に、周知の方法で脾細胞を好適な骨髄腫細胞、例えば、ATCCから入手可能な細胞系SP20由来の細胞と融合させる。さらに、RIMNS(反復免疫、多部位)技術を用いて、動物を免疫することができる(Kilpatrickら、1997, Hybridoma 16:381-9;参照として本明細書にその全文を組み込む)。ハイブリドーマは、限界希釈培養法により選択およびクローン化する。次に、本発明のポリペプチドに結合することができる抗体を分泌する細胞について、上記ハイブリドーマクローンを当分野で周知の方法によりアッセイする。陽性ハイブリドーマクローンを免疫することにより、一般に高レベルの抗体を含む腹水を生産させることができる。
従って、抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養することにより、モノクローナル抗体を生産することができ、その際、上記ハイブリドーマは、Eph受容体またはその免疫原性断片で免疫したマウスから単離した脾細胞を骨髄腫細胞と融合した後、Eph受容体に結合することができる抗体を分泌するハイブリドーマクローンについて、上記融合物から得られたハイブリドーマをスクリーニングすることにより作製する。
本発明のFc変異体は、そのFc領域に新規のアミノ酸残基を含む。Fc変異体は、当業者には周知の多数の方法により作製することができる。その非制限的例は、抗体コード領域を単離(例えば、ハイブリドーマから)した後、単離した抗体コード領域のFc領域に1以上の所望の置換を導入することを含む。あるいは、1以上の高エフェクター機能アミノ酸残基を含むFc領域をコードするベクターに上記可変領域をサブクローン化してもよい。さらに別の方法および詳細については以下に記載する。
当分野で周知の技術により、Eph受容体エピトープを特異的に認識する抗体フラグメントを作製することができる。例えば、パパイン(Fabフラグメントを作製)またはペプシン(F(ab’)2フラグメントを作製)のような酵素を用いて、免疫グロブリン分子のタンパク質分解切断により、FabおよびF(ab’)2フラグメントを作製することができる。F(ab’)2フラグメントは、可変領域、軽鎖定常領域および重鎖のCH1ドメインを含む。さらに、当分野で周知の様々なファージ展示方法を用いて、本発明の抗体を作製することもできる。
ファージ展示方法では、機能的抗体ドメインをコードするポリヌクレオチド配列を担持するファージ粒子の表面に該機能的抗体ドメインを展示する。特に、VHおよびVLドメインをコードするDNA配列は、動物のcDNAライブラリー(例えば、リンパ系組織のヒトまたはマウスcDNAライブラリー)から増幅する。VHおよびVLドメインをコードするDNAは、PCRによりscFvリンカーと一緒に組換え、ファージミドベクター(例えば、pCANYAB6またはpComb HSS)にクローン化する。大腸菌に上記ベクターをエレクトロポレーションし、大腸菌にヘルパーファージを感染させる。これらの方法で用いるファージは、典型的には、fdおよびM13を含む繊維状ファージであり、VHおよびVLドメインは通常、組換えにより、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIのいずれかと融合させる。目的のEph受容体エピトープに結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、例えば、標識抗原、あるいは固体表面またはビーズに結合または捕獲した抗原を用いて、抗原と一緒に選択または同定することができる。本発明の抗体を作製するのに用いることができるファージ展示方法の例として、以下の文献に開示されたものが挙げられる:Brinkmanら、1995, J. Immunol. Methods 182:41-50;Amesら、1995, J. Immunol. Methods 184:177-186;Kettleboroughら、1994, Eur. J. Immunol. 24:952-958;Persicら、1997, Gene 187:9-18;Burtonら、1994, Advances in Immunology 57:191-280;PCT公開番号WO 90/02809、WO 91/10737、WO 92/01047、WO 92/18619、WO 93/11236、WO 95/15982、WO 95/20401、およびWO97/13844、ならびに米国特許第5,698,426号、第5,223,409号、第5,403,484号、第5,580,717号、第5,427,908号、第5,750,753号、第5,821,047号、第5,571,698号、第5,427,908号、第5,516,637号、第5,780,225号、第5,658,727号、第5,733,743号および第5,969,108号(各々、参照として本明細書にその全文を組み込む)。
前記参照文献に記載されるように、ファージ選択後、ファージからの抗体コード領域を単離し、これを用いて、全抗体、例えば、ヒト抗体、またはその他の所望の抗原結合フラグメントを作製した後、所望の宿主、例えば、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母および細菌(例えば、以下に記載するもの)に発現させることができる。Fab、Fab’およびF(ab’)2フラグメントを組換えにより作製する技術は、以下の文献に開示されているような当分野で周知の方法を用いて、使用することもできる:国際公開番号WO 92/22324;Mullinaxら、1992, Bio Techniques 12(6):864-869;Sawaiら、1995, AJRI 34:26-34;ならびにBetterら、1988, Science 240:1041-1043(これらの文献は、参照として本明細書にその全文を組み込む)。
全抗体を作製するためには、VHまたはVLヌクレオチド配列、制限部位、および該制限部位を保護する隣接配列を含むPCRプライマーを用いて、scFvクローンにおいてVHまたはVL配列を増幅させることができる。当業者には周知のクローニング技術を用いて、VH定常領域、例えば、ヒトγ定常領域を発現するベクターにPCR増幅VHドメインをクローン化し、また、VL定常領域、例えば、ヒトκまたはλ定常領域を発現するベクターにPCR増幅VLドメインをクローン化することができる。一実施形態では、定常領域は少なくとも1個の高エフェクター機能アミノ酸を含むFc領域である。別の実施形態では、VHまたはVLドメインを発現するベクターは、プロモーター、分泌シグナル、可変および定常ドメインの両方に対するクローニング部位、ならびに、ネオマイシンのような選択マーカーを含む。また、所望の定常領域を発現する1つのベクターにVHおよびVLドメインをクローン化してもよい。次に、当業者には周知の技術を用いて、重鎖変換ベクターおよび軽鎖変換ベクターを細胞系に共トランスフェクションすることにより、全長抗体、例えば、IgGを発現する安定または一過性細胞系を作製する。
キメラ抗体は、抗体の様々な部分が様々な免疫グロブリン分子に由来する、分子である。キメラ抗体を作製する方法は当分野で周知である。例えば、Morrison, 1985, Science 229:1202;Oiら、1986, Bio Techniques 4:214;Gilliesら、1989, J. Immunol. Methods 125:191-202;ならびに米国特許第5,807,715号、第4,816,567号、第4,816,397号、および第6,311,415号(これらの文献は、参照として本明細書にその全文を組み込む)を参照されたい。
抗体をヒトにおいてin vivoで用いる、in vitro検出アッセイで用いるなど、いくつかの使用の場合、ヒトまたはキメラ抗体を用いるのが好ましいこともある。ヒト被検者の治療のためには完全にヒトの抗体が特に望ましい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列由来の抗体ライブラリーを用いて、前記のファージ展示方法など、当分野で周知の様々な方法により作製することができる。また、米国特許第4,444,887号および第4,716,111号;ならびにPCT公開番号WO 98/46645、WO 98/50433、WO 98/24893、WO 98/16654、WO 96/34096、WO 96/33735、およびWO 91/10741(各々、参照として本明細書にその全文を組み込む)を参照されたい。
ヒト化抗体は、予定した抗原に結合することができ、実質的にヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有するフレームワーク領域と、実質的に非ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有するCDRとを含んでなる抗体、またはその変異体もしくはフラグメントである。ヒト化抗体は、少なくとも1つ、および典型的には2つの可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fabc、Fv)の実質的に全部を含み、該ドメインにおいて、CDR領域の全部または実質的に全部が非ヒト免疫グロブリン(すなわち、供与抗体)のものに対応し、かつフレームワーク領域の全部または実質的に全部がヒト免疫グロブリン共通配列のものである。一実施形態では、ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的には、ヒトグロブリンの該領域も含む。通常、上記抗体は、軽鎖と、重鎖の少なくとも可変ドメインのいずれも含む。この抗体はまた、重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3、およびCH4領域を含むこともある。ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含むあらゆるクラスの免疫グロブリン、ならびに、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むあらゆるイソタイプから選択することができる。通常、定常ドメインは、補体結合定常ドメインであり、そこでヒト化抗体が細胞傷害活性を呈示することが望ましく、またクラスは典型的にIgG.sub.1である。このような細胞傷害活性が望ましくない場合には、定常ドメインはIgG.sub.2クラスでもよい。ヒト化抗体は、1以上のクラスまたはイソタイプからの配列を含むものでよく、当業者であれば、所望のエフェクター機能を最適化するために特定の定常ドメインを容易に選択することができよう。ヒト化抗体のフレームワークおよびCDR領域は、親配列と正確に対応する必要はなく、例えば、少なくとも1個の残基の置換、挿入もしくは欠失により、供与体CDRまたは共通フレームワークに突然変異を誘発させて、当該部位のCDRまたはフレームワーク残基が共通または移入抗体のいずれかと対応しないようにすることもできる。しかし、このような突然変異は広範囲ではない。一実施形態では、ヒト化抗体残基の少なくとも75%が親フレームワーク領域(FR)およびCDR配列のそれと一致する。別の実施形態では、ヒト化抗体残基の少なくとも90%が親フレームワーク領域(FR)およびCDR配列のそれと一致する。別の実施形態では、ヒト化抗体残基の95%以上が親フレームワーク領域(FR)およびCDR配列のそれと一致する。さらに別の実施形態では、ヒト化抗体残基の少なくとも約75%が親フレームワーク領域(FR)およびCDR配列のそれと一致する。別の実施形態では、ヒト化抗体残基の少なくとも約90%が親フレームワーク領域(FR)およびCDR配列のそれと一致する。さらに別の実施形態では、ヒト化抗体残基の約95%以上が親フレームワーク領域(FR)およびCDR配列のそれと一致する。ヒト化抗体は、限定するものではないが、以下に挙げるような当分野で周知の様々な技術を用いて作製することができる:CDR移植(欧州特許第239,400号;国際公開番号WO 91/09967;ならびに米国特許第5,225,539号、第5,530,101号、ならびに第5,585,089号)、ベニアリング(veneering)またはリサーフェイシング(resurfacing)(欧州特許第592,106号および第519,596号;Padlan, 1991, Molecular Immunology 28(4/5):489-498;Studnickaら、1994, Protein Engineering 7(6):805-814;およびRoguskaら、1994, PNAS 91:969-973)、チェーンシャフリング(米国特許第5,565,332号)、ならびに、例えば、以下の文献に開示された技術:米国特許第6,407,213号、米国特許第5,766,886号、WO 9317105;Tanら、J. Immunol. 169:1119-25 (2002);Caldasら、Protein Eng. 13(5): 353 - 60 (2000);Moreaら、Methods 20(3): 267-79 (2000);Bacaら、J. Biol. Chem. 272(16): 10678-84 (1997);Roguskaら、Protein Eng. 9(10): 895-904 (1996);Coutoら、Cancer Res. 55 (23 Supp): 5973s - 5977s (1995);Coutoら、Cancer Res. 55(8): 1717-22 (1995);Sandhu JS, Gene 150(2): 409-10 (1994);ならびにPedersenら、J. Mol. Biol. 235(3): 959-73 (1994)。多くの場合、フレームワーク領域におけるフレームワーク残基は、CDR供与体抗体由来の対応残基で置換して、抗原結合を改変、好ましくは改善する。これらのフレームワーク置換の同定は、当業者には周知の方法、例えば、CDRおよびフレームワーク残基の相互作用のモデル化によって、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定する;配列比較によって、特定位置での特異フレームワーク残基を同定することにより、実施する(例えば、Queenら、米国特許第5,585,089号;およびRiechmannら、1988, Nature 332:323を参照のこと;これらの文献は、参照として本明細書にその全文を組み込む)。
機能的内因性免疫グロブリンは発現することができないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを用いて、ヒト抗体を作製することもできる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体をランダムに、または相同組換えによりマウス胚性幹細胞に導入する。あるいは、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子に加えて、ヒト可変領域、定常領域、および多様性領域をマウス胚性幹細胞に導入してもよい。相同組換えによるヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入とは別に、またはこれと同時に、マウス重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子を非機能的にすることもできる。特に、JH領域の同型接合体欠失は、内因性抗体生産を阻止する。変更した胚性幹細胞を増殖し、胚盤胞にマイクロインジェクションすることにより、キメラマウスを作製する。キメラマウスを飼育して、ヒト抗体を発現する同型接合体子孫を生産させる。選択した抗原、例えば、Eph受容体またはその免疫原性断片を用いて、通常の方法によりトランスジェニックマウスを免疫する。通常のハイブリドーマ技術を用いて、免疫したトランスジェニックマウスから、抗原に対して指令されたモノクローナル抗体を取得することができる。トランスジェニックマウスが保有するヒト免疫グロブリントランスジーンは、B細胞分化中に再編成し、その後、クラススイッチおよび体細胞突然変異を受ける。従って、このような技術を用いて、治療に有用なIgG、IgA、IgMおよびIgE抗体を作製することができる。ヒト抗体を作製するこの技術の概要については、LonbergおよびHuszar(1995, Int. Rev. Immunol. 13:65-93)を参照されたい。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を作製する上記技術、ならびにこのような抗体を作製するプロトコルの詳細な記述については、例えば、以下に挙げる文献を参照されたい:PCT公開番号WO 98/24893、WO 96/34096、およびWO 96/33735、米国特許第5,413,923号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,569,825号、第5,661,016号、第5,545,806号、第5,814,318号、および第5,939,598号(これらの文献は、参照として本明細書にその全文を組み込む)。加えて、Abgenis, Inc.(カリフォルニア州フリーモント)、Genpharm(カリフォルニア州サンホセ)およびMedarex(ニュージャージー州プリンストン)と契約し、前述と同様の技術を用いて、選択した抗原に対するヒト抗体を供給してもらうこともできる。
さらに、本発明の抗体を使用して、当業者には周知の技術により、Eph受容体を模倣する抗イディオタイプ抗体を作製することもできる(例えば、GreenspanおよびBona, 1989, FASEB J. 7(5):437-444;およびNissinoff, 1991, J. Immunol. 147(8):2429-2438参照)。例えば、Eph受容体に結合して、該Eph受容体がそのリガンドと結合するのを競合的に阻害する(当分野で周知であり、かつ以下に開示するアッセイにより決定される)本発明の抗体を用いて、Eph受容体結合ドメインを「模倣」し、その結果、Eph受容体および/またはそのリガンドと結合して、それらを中和する抗イディオタイプ抗体を作製することができる。このような抗イディオタイプ抗体またはそのFabフラグメントを治療プログラムに用いて、Eph受容体を中和することができる。本発明は、本発明の抗体またはそのフラグメントをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの使用を含む方法を提供する。
好ましい実施形態では、Eph受容体に免疫特異的に結合する抗体をコードするヌクレオチド配列を取得し、これを用いて、本発明のFc変異体を作製する。上記ヌクレオチド配列は、ハイブリドーマクローンDNAの配列決定により得られる。特定の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントをコードする核酸を含むクローンは入手できないが、抗体分子またはそのエピトープ結合フラグメントがわかっている場合には、免疫グロブリンをコードする核酸を化学的に合成してもよいし、好適な供給源(例えば、抗体を発現するために選択したハイブリドーマなど、抗体を発現する任意の組織または細胞から作製した抗体cDNAライブラリー、またはcDNAライブラリー、もしくは該組織または細胞から単離した核酸、好ましくはポリA + RNA)から、以下の方法で取得することも可能である:配列の3’および5’末端にハイブリダイズする合成プライマーを用いたPCR増幅;あるいは、特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いたクローニングにより、抗体をコードするcDNAライブラリーから例えば、cDNAクローンを同定する。次に、当分野で周知の方法を用いて、PCRにより作製した増幅核酸を複製可能なクローニングベクターにクローン化してもよい。
抗体のヌクレオチド配列を決定したら、当分野で周知のヌクレオチド配列の操作方法、例えば、組換えDNA技術、部位指定突然変異誘発、PCRなどを用いて、抗体のヌクレオチド配列を操作し(例えば、以下の文献に記載される方法を参照:Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubelら、編、John Wiley & Sons (英国チシェスター、1998);Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版、J. Sambrookら、編、Cold Spring Harbor Laboratory Press (ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、2001);Antibodies: A Laboratory Manual, E. HarlowおよびD. Laneら、Cold Spring Harbor Laboratory Press (ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、1988);ならびにUsing Antibodies: A Laboratory Manual, E. HarlowおよびD. Lane、編、Cold Spring Harbor Laboratory (ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、1999);これらは、参照として本明細書にその全文を組み込む)、例えば、欠失、および/または挿入を抗体の所望の領域に導入することにより、様々なアミノ酸配列を有する抗体を作製することができる。
好ましい実施形態では、Eph受容体に免疫特異的に結合することができる抗体のFc領域(例えば、前述)内で1以上の置換を実施する。一実施形態では、アミノ酸置換は1以上のFcリガンド(例えば、FγR、C1q)との結合を変更し、ADCCおよび/またはCDC活性を改変する。
具体的実施形態では、常用の組換えDNA技術を用いて、フレームワーク領域内に1以上のCDCを挿入する。フレームワーク領域は、天然に存在する、または共通フレームワーク領域のいずれでもよく、好ましくはヒトフレームワーク領域である(例えば、ヒトフレームワーク領域の一覧は、Chothiaら、1998, J. Mol. Biol. 278:457-459を参照)。一実施形態では、フレームワーク領域とCDRの組合せにより作製したポリヌクレオチドは、Eph受容体に免疫特異的に結合する抗体をコードする。別の実施形態では、既述したように、フレームワーク領域内で1以上のアミノ酸置換を実施してもよく、また別の実施形態では、アミノ酸置換により抗体とその抗原の結合を改善する。さらに、このような方法を用いて、鎖内ジスルフィド結合に参加する1以上の可変領域システイン残基のアミノ酸置換または欠失を実施して、1以上の鎖内ジスルフィド結合を欠失した抗体分子を作製することもできる。ポリヌクレオチドに対するその他の改変も本発明に含まれ、これらについて当業者は熟知している。
6.5 Eph受容体に結合するポリペプチドおよび融合タンパク質
本発明は、Eph受容体に免疫特異的に結合するポリペプチドおよび融合タンパク質を包含する。
一実施形態では、Eph受容体に免疫特異的に結合するポリペプチドまたは融合タンパク質は、本明細書に記載する、もしくは当業者には周知のin vivoまたはin vitroアッセイにおいて、Eph受容体とそのリガンドの相互作用を約25%、30%、35%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、もしくは98%阻害または低減する。これに関して、「約」とは±0.1%〜2.5%を意味する。別の実施形態では、Eph受容体に免疫特異的に結合するポリペプチドまたは融合タンパク質は、本明細書に記載する、もしくは当業者には周知のin vivoまたはin vitroアッセイにおいて、Eph受容体とそのリガンドの相互作用を有意に阻害しない。
一実施形態では、Eph受容体に免疫特異的に結合するポリペプチドまたは融合タンパク質は、Fcドメインと融合したEph受容体に免疫特異的に結合するEph受容体リガンドまたはその断片を含む。具体的には、上記融合タンパク質のFcドメインは、少なくとも1つの前記高エフェクター機能アミノ酸および/または置換を含むことが意図される。好ましい実施形態では、上記Fcドメインは本発明のFc変異体のそれであり、以後Fc変異体のFcドメインを変異体Fcドメインと呼ぶ。Eph受容体リガンドの例として、限定するものではないが、エフリン-Aサブクラス(例:A1、A2、A3、A4、A5)のGPI膜アンカー型リガンド、およびエフリン-Bサブクラス(例:B1、B2、B3)の膜貫通ドメイン膜アンカー型リガンドが挙げられる。本発明の好ましいエフリン分子のアラインメントを図19に示す。
別の実施形態では、Eph受容体に免疫特異的に結合するポリペプチドまたは融合タンパク質は、本発明の変異体Fcドメインと融合した生物活性分子を含む。これらの実施形態によれば、上記生物活性分子は、Eph受容体に免疫特異的に結合する。Eph受容体に免疫特異的に結合する生物活性分子としては、限定するものではないが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、小分子、模倣物質、合成薬剤、無機分子、および有機分子が挙げられる。一実施形態では、Eph受容体に免疫特異的に結合する生物活性分子は、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個もしくは少なくとも100個の連続したアミノ酸残基を含むポリペプチドであり、しかも、本発明の変異体Fcドメインのアミノ酸配列とは異なるものである。別の実施形態では、Eph受容体に免疫特異的に結合する生物活性分子は、少なくとも約5個、少なくとも約10個、少なくとも約20個、少なくとも約30個、少なくとも約40個、少なくとも約50個、少なくとも約60個、少なくとも約70個、少なくとも約80個、少なくとも約90個もしくは少なくとも約100個の連続したアミノ酸残基を含むポリペプチドであり、しかも、本発明の変異体Fcドメインのアミノ酸配列とは異なるものである。
別の実施形態では、Eph受容体に免疫特異的に結合するペプチド、ポリペプチドもしくは融合タンパク質は、本発明の変異体Fcドメインと融合したEph受容体リガンド(例えば、エフリン-Aおよび/または-Bサブクラス、図19参照)またはその断片のアミノ酸配列に対し、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。さらに別の実施形態では、Eph受容体に疫特異的に結合するペプチド、ポリペプチドもしくは融合タンパク質は、本発明の変異体Fcドメインと融合したEph受容体リガンド(例えば、エフリン-Aおよび/または-Bサブクラス、図19参照)またはその断片のアミノ酸配列に対し、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、もしくは少なくとも約99%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
本発明は、Eph受容体リガンド(例えば、エフリン-Aおよび/または-Bサブクラス、図19参照)、またはその断片をコードするヌクレオチド配列とハイブリダイズする核酸分子によりコードされるポリペプチドと融合した本発明の変異体Fcドメインを含む、Eph受容体に免疫特異的に結合するポリペプチドまたは融合タンパク質を提供する。
具体的実施形態では、Eph受容体に免疫特異的に結合するポリペプチドまたは融合タンパク質は、ストリンジェント条件下で、例えば、約45℃での6x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)におけるフィルター結合DNAとのハイブリダイゼーションの後、約50〜65℃で0.2x SSC/0.1%SDSで1回以上洗浄することにより;高ストリンジェント条件下で、例えば、約45℃での6x SSCにおけるフィルター結合核酸とのハイブリダイゼーションの後、約68℃で0.1x SSC/0.2%SDSにおいて1回以上洗浄することにより;もしくは当業者には周知のその他のストリンジェントハイブリダイゼーション条件(例えば、Ausubel, F.M.ら、編、1989 Current Protocols in Molecular Biology, 第I巻、Green Publishing Associates, Inc.およびJohn Wiley & Sons, Inc., ニューヨーク、6.3.1〜6.3.6および2.10.3ページ)で、Eph受容体リガンド(例えば、エフリン-Aおよび/または-Bサブクラス、図19参照)またはその断片をコードするヌクレオチド配列とハイブリダイズする核酸分子によりコードされるポリペプチドと融合した本発明の変異体Fcドメインを含む。
本発明はまた、変異体Fcドメインを含む、Eph受容体に免疫特異的に結合するポリペプチドおよび融合タンパク質であって、精製を容易にするためにマーカー配列、限定するものではないが、例えば、ペプチドと融合した、上記ポリペプチドおよび融合タンパク質も包含する。好ましい実施形態では、マーカーアミノ酸配列は、ヘキサ−ヒスチジンペプチド、特に、例えば、pQEベクター(QIAGEN, Inc., 9259 Eton Avenue, Chatsworth, CA 91311)に賦与されるタグであり、その多くは市販されている。精製に有用なその他のタグとして、限定するものではないが、赤血球凝集素「HA」タグ(インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質由来のエピトープに対応する)(Wilsonら、1984, Cell 37:767)および「フラグ」タグが挙げられる。
本発明はさらに、本発明の変異体Fcドメインと融合した、Eph受容体に免疫特異的に結合するポリペプチドおよび融合タンパク質であって、さらに治療成分と結合した上記ポリペプチドおよび融合タンパク質も包含する。Eph受容体に免疫特異的に結合するポリペプチドまたは融合タンパク質は、細胞毒、例えば、細胞***抑制または細胞致死薬、治療利益を有すると考えられる薬剤、もしくは放射性金属イオン、例えば、α線放射物質などの治療薬成分と結合させることができる。細胞毒または細胞傷害性物質は、細胞に有害なあらゆる物質を含む。治療薬成分、および細胞毒もしくは細胞傷害性物質は前文に列挙した(第6.3節「抗体コンジュゲートおよび誘導体」を参照)。
標準的組換えDNA技術、またはタンパク質合成技術、例えば、ペプチド合成装置を用いて、ポリペプチド、タンパク質および融合タンパク質を作製することができる。例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質もしくは融合タンパク質をコードする核酸分子は、自動DNA合成装置など、通常の技術により合成することができる。あるいは、アンカープライマーを用いて、遺伝子断片のPCR増幅を実施することもでき、これによって2つの連続した遺伝子断片の間に相補的突出部を形成し、次に、これらをアニーリングし、再増幅することにより、キメラ遺伝子配列を作製することができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubelら、編、John Wiley & Son, 1992参照)。さらに、生物活性分子をコードする核酸を、変異体Fcドメインまたはそのフラグメントを含む発現ベクターにクローン化し、該生物活性分子と、変異体Fcドメインまたは変異体Fcドメインフラグメントをフレーム内で結合させることもできる。
ポリペプチドを抗体の定常領域と融合または結合させる方法は当分野で周知である。例えば、米国特許第5,336,603号、第5,622,929号、第5,359,046号、第5,349,053号、第5,447,851号、第5,723,125号、第5,783,181号、第5,908,626号、第5,844,095号、および第5,112,946号;欧州特許第307,434号;第367,166号;第394,827号;国際公開番号91/06570、WO 96/04388、WO 96/22024、WO 97/34631、およびWO 99/04813;Ashkenaziら、1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 10535-10539;Trauneckerら、1988, Nature, 331:84-86;Zhengら、1995, J. Immunol. 154:5590-5600;ならびにVilら、1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:11337- 11341(参照として本明細書にその全文を組み込む)を参照されたい。
生物活性分子と、Fcドメインまたはそのフラグメントをコードするヌクレオチド配列は、当業者が入手可能なあらゆる情報(すなわち、GenBank、文献、もしくは常用のクローニング)から取得することができる。Eph受容体リガンドをコードするヌクレオチド配列は、当業者が入手可能なあらゆる情報(例えば、GenBank、文献、もしくは常用のクローニング)から取得することができる。図3を参照されたい。ポリペプチドまたは融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、好適な発現ベクター、すなわち、挿入したタンパク質コード配列の転写および翻訳に必要なエレメントを含むベクターに挿入することができる。本発明では様々な宿主ベクター系を用いて、タンパク質コード配列を発現させることができる。このようなものとして、限定するものではないが、ウイルス(例:ワクシニアウイルス、アデノウイルスなど)に感染した哺乳動物細胞系;ウイルス(例:バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;酵母ベクターを含む酵母などの微生物;あるいは、バクテリオファージ、DNA、プラスミドDNA、もしくはコスミドDNAで形質転換した細菌が挙げられる。ベクターの発現エレメントはその強度および特異性がそれぞれ異なる。使用する宿主ベクター系に応じて、多数の好適な転写および翻訳エレメントのいずれを用いてもよい。
6.6 抗体および融合タンパク質の組換え発現
変異体Fcドメインを含むFc変異体または融合タンパク質(本明細書では「変異体Fcドメイン融合タンパク質」または「変異体Fcドメイン融合物」と呼ぶ)、その誘導体、類似体もしくはフラグメント(例えば、本発明の抗体の重または軽鎖もしくはその部分、または本発明の一本鎖抗体)の組換え発現は、抗体または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの構築を必要とする。本発明の抗体、または融合タンパク質の抗体分子もしくは重または軽鎖をコードするポリヌクレオチドを取得したら、抗体または融合タンパク質の作製のためのベクターを、当分野では周知の方法を用いた組換えDNA技術により作製する。従って、抗体または融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの発現によりタンパク質を作製する方法を本明細書に記載する。当業者には周知の方法を用いて、抗体または融合タンパク質をコードする配列、ならびに適切な転写および翻訳制御シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法として、例えば、in vitro組換えDNA技術、合成技術、およびin vivo遺伝子組換えなどが挙げられる。従って、本発明は、プロモーターに機能的に結合した、本発明のFc変異体または変異体Fc融合物をコードするヌクレオチド配列を含む複製可能なベクターを提供する。このようなベクターとして、抗体分子の定常領域および抗体の可変領域をコードするヌクレオチド配列(例えば、国際公開番号WO 86/05807;国際公開番号WO 89/01036;および米国特許第5,122,464号)があり、また、変異体Fc融合物を作製するためのポリペプチドを全長抗体鎖(例えば、重または軽鎖)または完全変異体Fc融合タンパク質の発現のためのベクターにクローン化することもできる。
通常の技術により発現ベクターを宿主細胞に移した後、トランスフェクションした細胞を通常の技術により培養して、本発明のFc変異体または変異体Fc融合タンパク質を作製する。従って、本発明は、異種プロモーターに機能的に結合した、本発明のFc変異体または変異体Fc融合タンパク質もしくはそのフラグメント、もしくはその重または軽鎖、もしくはその部分、あるいは本発明の一本鎖抗体をコードするポリヌクレオチド配列を含む宿主細胞を包含する。二本鎖抗体発現のための好ましい実施形態では、以下に詳述するように、重および軽鎖の両方をコードするベクターを宿主細胞に共発現させて、全免疫グロブリン分子を発現させることができる。
様々な宿主発現ベクター系を用いて、本発明の抗体または融合タンパク質を発現させることができる(例えば、米国特許第5,807,715号参照)。好適な宿主発現系は、目的のコード配列を生産した後、精製することができるビヒクルを示すが、好適なヌクレオチドコード配列で形質転換またはトランスフェクションしたとき、in situで本発明の抗体または融合タンパク質分子を発現することができる細胞も示す。このような宿主発現系として、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:抗体または融合タンパク質コード配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAもしくはコスミドDNA発現ベクターで形質転換した細菌(例えば、大腸菌および枯草菌)などの微生物;抗体または融合タンパク質コード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換した酵母(例えば、サッカロミセス・ピキア);抗体または融合タンパク質コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染した植物細胞系、もしくは抗体または融合タンパク質コード配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換した植物細胞系;あるいは、哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例えば、アデノ後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含む組換え発現構築物を保有する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、NS0、および3T3細胞)。一実施形態では、大腸菌などの細菌細胞、また別の実施形態では、特に全組換え抗体または融合タンパク質分子を発現する場合、真核生物細胞を、組換え抗体または融合タンパク質分子の発現に用いる。例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)は、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要中間初期遺伝子プロモーターエレメントのようなベクターと一緒に、抗体の有効な発現系である(Foeckingら、1986, Gene 45:101;およびCockettら、1990, Bio/Technology 8:2)。具体的実施形態では、Eph受容体に結合する抗体または融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーター、誘導的プロモーターもしくは組織特異的プロモーターにより調節する。
細菌系では、発現させようとする抗体または融合タンパク質分子に意図する使用に応じて、多数の発現ベクターを有利に選択することができる。例えば、抗体または融合タンパク質分子の医薬組成物を製造するために、このようなタンパク質を大量に生産したい場合には、容易に精製される高レベルの融合タンパク質産物の発現を指令するベクターが望ましい。このようなベクターとして、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:大腸菌発現ベクターpUR278(Rutherら、1983, EMBO 12:1791)、そこで、抗体または融合タンパク質コード配列を個別に、lacZコード領域と同じフレーム内のベクターに結合させることにより、lac Z融合タンパク質を生産するようにしてもよい;pINベクター(Inouye & Inoye, 1985, Nucleic Acids Res. 13:3101-3109;Van Heeke & Schster, 1989, J. Biol. Chem. 24:5503-5509)など。pGEXベクターを用いて、グルタチオン5-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質のような外来ポリペプチドを発現させることもできる。一般に、このような融合タンパク質は可溶性であり、マトリックスグルタチオンアガロースビーズへの吸着および結合後、遊離グルタチオンの存在下での溶離により、溶解細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、トロンビンまたはXa因子プロテアーゼ切断部位を含むことによって、クローン化標的遺伝子産物がGST部分から放出されるように設計されている。
昆虫系では、オートグラファ・カリフォルニア核多角体病ウイルス(AcNPV)をベクターとして用いて、外来遺伝子を発現させる。このウイルスは、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞で成長する。抗体または融合タンパク質コード配列を個別に、上記ウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)にクローン化し、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下におくことができる。
哺乳動物細胞では、多数のウイルス発現系を用いることができる。アデノウイルスを発現ベクターとして用いる場合には、目的の抗体または融合タンパク質コード配列をアデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーターおよび三ツ組リーダー配列と結合させる。次に、このキメラ遺伝子をin vitroまたはin vivo組換えによりアデノウイルスゲノムに挿入することができる。非必須領域(例えば、E1またはE3)へのウイルスゲノムの挿入により、生存可能で、感染宿主に抗体または融合タンパク質を発現することができる組換えウイルスが得られる(例えば、Logan & Shenk, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:355-359を参照)。挿入した抗体コード配列の効率的な翻訳のために特定の開始シグナルが必要な場合もある。これらのシグナルは、ATG開始コドンおよび隣接する配列を含む。さらに、開始コドンは、全挿入片の翻訳を確実にするために、所望のコード配列のリーディングフレームと位相が同じでなければならない。これらの外性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然および合成いずれの多様な供給源のものでよい。適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含有させることにより、発現の効率を高めることができる(例えば、Bittnerら、1987, Methods in Enzymol. 153:516-544参照)。
当業者には周知のいずれかのプロモーターまたはエンハンサーエレメントにより、抗体または融合タンパク質の発現を制御することができる。抗体または融合タンパク質をコードする遺伝子の発現を制御するのに用いることができるプロモーターとして、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:SV40初期プロモーター(BernoistおよびChambon, 1981, Nature 290:304-310)、ラウス肉腫ウイルスの3’長末端反復配列に含まれるプロモーター(Yamamotoら、1980, Cell 22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら、1981, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:1441-1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら、1982, Nature 296:39-42)、テトラサイクリン(Tet)プロモーター(Gossenら、1995, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:5547-5551);βラクタマーゼプロモーターのような原核生物発現ベクター(Villa-Kamoroffら、1978, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 75:3727-3731)、またはtacプロモーター(DeBoerら、1983, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:21-25;”Useful protein from recombinant bacteria” in Scientific American, 1980, 242:74-94も参照);ノパリンシンテターゼプロモーター領域を含む植物発現プロモーター(Herrera-Estrellaら、Nature 303:209-213)もしくはカリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーター(Gardnerら、1981, Nucl. Acids Res. 9:2871)、ならびに光合成酵素リブロース二リン酸カルボキシラーゼ(Herrera-Estrellaら、Nature 310:115-120);酵母またはその他の真菌由来のプロモーターエレメント(例えば、Gal 4プロモーター)、ADC(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリホスファターゼプロモーター、ならびに、組織特異性を呈示し、かつトランスジェニック動物に用いられてきた下記の動物転写制御領域:膵腺房細胞で活性のエラスターゼI遺伝子制御領域(Swiftら、1984, Cell 38:639-649;Ornitzら、1986, Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409;MacDonald, 1987, Hepatology 7:425-515);膵β細胞で活性のインスリン遺伝子制御領域(Hanahan, 1985, Nature 315:115-122)、リンパ系細胞で活性の免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlら、1984, Cell 38:647-658;Adamesら、1985, Nature 318:533-538;Alexanderら、1987, Mol. Cell. Biol. 7:1436-1444)、精巣、***、リンパ系およびマスト細胞で活性のマウス***腫瘍ウイルス制御領域(Lederら、1986, Cell 45:485-495)、肝臓で活性のアルブミン遺伝子制御領域(Pinkertら、1987, Genes and Devel. 1:268-276)、肝臓で活性のαフェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlaufら、1985, Mol. Cell. Biol. 5:1639-1648;Hammerら、Science 235:53-58;肝臓で活性のα1-抗トリプシン遺伝子制御領域(Kelseyら、1987, Genes and Devel. 1:161-171)、骨髄性細胞で活性のβグロビン遺伝子制御領域(Mogramら、1985, Nature 315:338-340;Kolliasら、1986, Cell 46:89-94);脳のオリゴデンドロサイト細胞で活性のミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadら、1987, Cell 48:703-712);骨格筋で活性のミオシン軽鎖-2遺伝子制御領域(Sani, 1985, Nature 314:282-286);ニューロン細胞で活性のニューロン特異的エノラーゼ(NSE)(Morelliら、1999, Gen. Virol. 80:571-83);ニューロン細胞で活性の脳由来の神経栄養因子(BDNF)遺伝子制御領域(Tabuchiら、1998, Biochem. Biophysic. Res. Com. 253:818-823);星状細胞で活性のグリア繊維酸性タンパク質(GFAP)プロモーター(Gomesら、1999, Braz J Med Biol Res 32(5):619-631;Morelliら、1999, Gen. Virol. 80:571-83)ならびに視床下部で活性の性腺刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域(Masonら、Science 234:1372-1378)。
抗体または融合タンパク質をコードする遺伝子の挿入片を含む発現ベクターは、次の3つの一般的手法により同定することができる:(a)核酸ハイブリダイゼーション、(b)「マーカー」遺伝子機能の存在または非存在、および(c)挿入した配列の発現。第1の手法では、発現ベクターにおけるペプチド、ポリペプチド、タンパク質もしくは融合タンパク質をコードする遺伝子の存在は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質もしくは融合タンパク質をコードする挿入遺伝子にそれぞれ相同の配列を含むプローブを用いた核酸ハイブリダイゼーションにより検出することができる。第2の手法では、抗体または融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列をベクターに挿入することによって起こる特定の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質に対する耐性、形質転換表現型、バキュロウイルスにおける閉鎖体の形成など)の存在または非存在に基づき、組換えベクター/宿主系を同定することができる。例えば、抗体または融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列をベクターのマーカー遺伝子配列内に挿入した場合、マーカー遺伝子機能の非存在ににより、抗体または融合タンパク質をコードする遺伝子を含む組換え体を同定することができる。第3の手法では、組換え体により発現させた遺伝子産物(例えば、抗体または融合タンパク質)をアッセイすることにより、組換え発現ベクターを同定することができる。このようなアッセイは、例えば、in vitroアッセイ系における融合タンパク質の物理的または機能的特性(例えば、抗生物活性分子抗体との結合)に基づいて行なうことができる。
加えて、挿入配列の発現をモジュレートする、または遺伝子産物を所望の特定の様式で変更およびプロセシングする宿主細胞を選択してもよい。特定のプロモーターからの発現を特定の誘導物質の存在下で高めることができる;このように、遺伝子工学的に作製した融合タンパク質の発現を制御することが可能である。さらに、様々な宿主細胞が、翻訳および翻訳後プロセシングおよび改変のための特有かつ特異的な機構を備えている(例えば、タンパク質のグリコシル化、リン酸化)。好適な細胞系または宿主系を選択して、発現させる外来タンパク質の所望の改変およびプロセシングを確実にすることができる。例えば、細菌系での発現は非グリコシル化産物を産生するが、酵母での発現はグリコシル化産物を産生する。遺伝子産物の一次転写物の適切なプロセシング(例えば、グリコシル化、リン酸化)のための細胞機構を備えた真核生物宿主細胞を用いてもよい。このような哺乳動物宿主細胞として、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、WI38、NS0、ならびに、特に、ニューロン細胞系、例えば、SK-N-AS、SK-N-FI、SK-N-DZヒト神経芽細胞腫(Sugimotoら、1984, J. Natl. Cancer Inst. 73:51-57)、SK-N-SHヒト神経芽細胞腫(Biochim. Biophys. Acta, 1982, 704:450-460)、Daoyヒト小脳髄芽腫(Heら、1992, Cancer Res. 52:1144-1148)、DBTRG-05MGグリア芽腫細胞(Kruseら、1992, In vitro Cell. Dev. Biol. 28A:609-614)、IMR-32ヒト神経芽細胞腫(Cancer Res., 1970, 30:2110-2118)、1321N1ヒト星状細胞腫(Proc. Natil Acad. Sci. USA, 1977, 74:4816)、MOG-G-CCMヒト星状細胞腫(Br. J. Cancer, 1984, 49:269)、U87MGヒトグリア芽腫−星状細胞腫(Acta Pathol. Microbiol. Scand., 1968, 74:465-486)、A172ヒトグリア芽腫(Olopadeら、1992, Cancer Res. 52:2523-2529)、C6ラットグリオーマ細胞(Bendaら、1968, Science 161:370-371)、Neuro-2aマウス神経芽細胞腫(Proc. Natil Acad. Sci. USA, 1970, 65:129-136)、NB41 A3マウス神経芽細胞腫(Proc. Natil Acad. Sci. USA, 1962, 48:1184-1190)、SCPヒツジ脈絡叢(Bolinら、1994, J. Virol. Methods 48:211-221)、G355-5、PG-4ネコ正常星状細胞(Haapalaら、1985, J. Virol. 53:827-833)、Mpfフェレット脳(Trowbridgeら、1982, In vitro 18:952-960)、ならびに正常細胞系 例えば、CTX TNA2ラット正常大脳皮質(Radanyら、1992, Proc. Natil Acad. Sci. USA 89:6467-6471)、例えば、CRL7030およびHsS578Bst。さらに、多様なベクター/宿主発現系が、様々な程度までプロセシング反応に作用しうる。
組換えタンパク質の長期にわたる高収率生産のためには、多くの場合、安定した発現が望ましい。例えば、抗体または融合タンパク質を安定して発現させる細胞系を作製することができる。ウイルス複製起点を含む発現ベクターを使うのではなく、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)および選択マーカーにより制御されるDNAで宿主細胞を形質転換することができる。外来DNAの導入後、作製した細胞を濃縮培地で1〜2日増殖させてから、選択性培地に移す。組換えプラスミド中の選択マーカーは、選択に対する耐性を賦与し、細胞がその染色体にプラスミドを安定的に組み込み、フォーカスを形成するまで増殖させてから、これらフォーカスをクローン化し、細胞系に増殖させることができる。この方法は、Eph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体または変異体Fc融合タンパク質を発現する細胞系を作製するのに有意に用いることができる。このような作製細胞系は、Eph受容体に免疫特異的に結合するポリペプチドまたは融合タンパク質の活性に作用する化合物のスクリーニングおよび評価に特に有用である。
多数の選択系を用いることができ、このような選択系として、限定するものではないが、単純ヘルペスチミジンキナーゼ(Wigletら、1977, Cell 11:223)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(SzybalskaおよびSzybalski, 1962, Proc. Natil Acad. Sci. USA 48:2026)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら、1980, Cell 22:817)遺伝子をあげることができ、これらはそれぞれtk-、hgprt-もしくはaprt-細胞で用いることができる。また、メトトレキセートに対する耐性を付与するdhfr(Wiglerら、1980, Natl. Acad. Sci. USA 77:3567;O’Hareら、1981, Proc. Natil Acad. Sci. USA 78:1527);ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt(MulliganおよびBerg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072);アミノグリコシドG-418に対する耐性を賦与するneo(Colberre-Garapinら、1981, J. Mol. Biol. 150:1);ならびに、ヒグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Santerreら、1984, Gene 30:147)遺伝子の選択基準として、抗代謝物耐性を用いることができる。
組換え発現により本発明のペプチド、ポリペプチド、タンパク質もしくは融合タンパク質を作製したら、当分野では周知のタンパク質の精製方法、例えば、クロマトグラフィー(例:イオン交換、親和性、特にプロテインA後の特定の抗原に対する親和性により、およびサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差溶解度、もしくはその他の標準的タンパク質精製技術により、それらを精製することができる。
ベクター増幅により、抗体または融合タンパク質分子の発現レベルを高めることができる(詳しくは、BebbingtonおよびHentschel, The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning, 第3巻(Academic Press、ニューヨーク、1987))。抗体または融合タンパク質を発現するベクター系におけるマーカーが増幅可能な場合には、宿主細胞の培養物に存在する阻害因子のレベルが高くなれば、マーカー遺伝子のコピー数も増加する。また、増幅領域は抗体遺伝子と関連しているため、抗体または融合タンパク質分子の生産も増加する(Crouseら、1983, Mol. Cell. Biol. 3:257)。
宿主細胞を本発明の2つの発現ベクターで共トランスフェクションしてもよい。例えば、第1ベクターは、重鎖由来のポリペプチドをコードし、第2ベクターは、軽鎖由来のポリペプチドをコードする。2つのベクターは、同じ選択マーカーを含んでいてもよく、これによって重および軽鎖ポリペプチドの等しい発現を可能にする。あるいは、融合タンパク質または重鎖および軽鎖両ポリペプチドをコードし、また、これらを発現することができる単一ベクターを用いてもよい。融合タンパク質または重および軽鎖のコード配列はcDNAまたはゲノムDNAを含んでもよい。
6.7 Eph受容体のアンタゴニスト
本発明は、少なくとも1つのEph受容体のアンタゴニストである本発明のFc変異体、または変異体Fc融合物を包含する。本明細書で用いる用語「アンタゴニスト」とは、Eph受容体のような標的分子の機能、活性および/または発現を阻止、阻害、低減もしくは中和する、あらゆるタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド模倣物、糖タンパク質、抗体、抗体フラグメント、炭水化物、核酸、有機分子、無機分子、高分子、もしくは小分子を意味する。様々な実施形態で、アンタゴニストは、リン酸緩衝食塩水(PBS)のような対照と比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%、別の分子の機能、活性および/または発現を低減する。さらに具体的には、少なくとも1つのEph受容体のアンタゴニストは、少なくとも1つのEph受容体の機能、活性および/または発現を阻害、低減もしくは中和するか、あるいは、少なくとも1つのEph受容体仲介の病因を低減する。
アンタゴニストは、リガンドに対する受容体の結合または受容体に対するリガンドの結合を妨害する;リガンドにより活性化された細胞を無能力にするか、死滅させる;および/またはリガンドと細胞受容体の結合後、受容体またはリガンド活性化(例えば、チロシンキナーゼ活性化)またはシグナル伝達を妨害することにより、作用すると考えられる。アンタゴニストは、受容体−リガンド相互作用を完全に阻止するか、またはこのような相互作用を実質的に低減することができる。アンタゴニストによるこのような介入点は、本発明の目的に関してすべて同等とみなすものとする。従って、Eph受容体、EphリガンドまたはEph受容体とEphリガンドの複合体;本発明の変異体Fc領域と融合した可溶性Eph受容体または可溶性Ephリガンドに結合するアンタゴニスト(例えば、Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質(後述))、ならびに、本発明の変異体Fcと融合したEph受容体またはEphリガンドに結合する合成または天然配列ペプチドは、本発明の範囲に含まれる。加えて、本明細書に記載するEph受容体「アンタゴニスト」は、限定するものではないが、少なくとも1つのEph受容体と拮抗し、しかも癌細胞表現型(例えば、軟質寒天中でのコロニー形成、もしくは三次元基底膜または細胞外マトリックス調製物における管状網状体の形成)も阻害する。Eph受容体アンタゴニストは、非癌細胞と比較して癌細胞内に露出したEphエピトープに優先的に結合しても、結合しなくてもよく、またKoff速度は低くても、低くなくてもよい。
本発明はまた、Eph受容体のアンタゴニストのスクリーニング方法も提供する。このようなスクリーニング方法として、限定するものではないが、Eph受容体活性(例えば、Eph受容体のリン酸化、Eph受容体タンパク質の分解、および下流Eph受容体仲介のシグナル伝達事象)、リガンド結合および/または血漿濃度をモニターするアッセイが挙げられる。前記およびその他の方法は後述(第6.9節「生物学的アッセイ」を参照)およびPCT公開番号WO 03/094859、WO 04/014292、WO 04/069264、WO 04/028551、WO 03/004057、ならびに米国特許第5,795,734号、および米国特許出願番号10/863,729、10/770,543(各々、参照として本明細書にその全文を組み込む)に記載されている。加えて、本発明は、このようなスクリーニング方法を用いて同定した抗体のADCC活性およびFcγRに対する結合親和性の両方を操作する方法も提供する。
このようなスクリーニング方法から同定した抗体のFcを前述のように置換して、ADCC活性および/またはCDC活性を改変し、1以上のFcリガンド(例えば、FcγR、Clq)の結合親和性を変更することができる。このようなスクリーニング方法から同定した他のアンタゴニスト結合分子(例えば、Eph受容体リガンドおよびその変異体)を本発明の変異体Fcドメインと融合させることもできる。さらに、新たに同定したEph受容体アンタゴニスト抗体のFc変異体および新たに同定したEph受容体アンタゴニス体の変異体Fc融合物は、Eph受容体仲介および/または関連の疾患および障害の予防、管理および治療に有用であると考えられ、このような疾患として、限定するものではないが、炎症性疾患、自己免疫疾患、骨代謝に関連する疾患、血管新生に関連する疾患、Eph受容体の異常発現および/または活性に関連する疾患、および癌が挙げられる。このようなFc変異体および/または変異体Fc融合物を本発明の方法および製剤に用いることができる。
6.8 Eph受容体の抗体アゴニスト
本明細書で用いる「アゴニスト」とは、Eph受容体のような標的分子の1以上の生物学的活性を活性化することができる、あらゆるタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド模倣物、糖タンパク質、抗体、抗体フラグメント、炭水化物、核酸、有機分子、無機分子、高分子、もしくは小分子を意味する。様々な実施形態において、アゴニストは、リン酸緩衝食塩水(PBS)のような対照と比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%、別の分子の機能、活性および/または発現を活性化する。さらに別の様々な実施形態では、アゴニストは、リン酸緩衝食塩水(PBS)のような対照と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、もしくは少なくとも約99%、別の分子の機能、活性および/または発現を活性化する。さらに具体的には、少なくとも1つのEph受容体のアゴニストは、少なくとも1つのEph受容体の機能、活性および/または発現を活性化する。具体的には、少なくとも1つのEph受容体を作動する作用により、少なくとも1つのEph受容体が仲介する病因の阻害または低減がもたらされることが考えられる。
アゴニストは、例えば、標的分子を活性化するおよび/またはシグナル伝達を仲介することにより、作用すると考えられる。Eph受容体、EphリガンドもしくはEph受容体とEphリガンドの複合体に結合し、これらを活性化するFc変異体または変異体Fc融合タンパク質(後述);Eph受容体を活性化する、本発明の変異体Fcと融合した可溶性Eph受容体または可溶性Ephリガンド、ならびに、Eph受容体、EphリガンドもしくはEph受容体とEphリガンドの複合体に結合し、これらを活性化する、本発明の変異体Fc領域に融合した合成または天然配列ペプチド、Eph受容体もしくはEphリガンドは、本発明の範囲に含まれる。
加えて、本明細書に記載するEph受容体「アゴニスト」は、限定するものではないが、少なくとも1つのEph受容体を作動し、しかも癌細胞表現型(例えば、軟質寒天中でのコロニー形成、もしくは三次元基底膜または細胞外マトリックス調製物における管状網状体の形成)も阻害する。Eph受容体アゴニストは、非癌細胞と比較して癌細胞内に露出したEphエピトープと優先的に結合しても、結合しなくてもよく、そのKoff速度は低くても、低くなくてもよい。
従って、一実施形態では、本発明のEph抗体(およびそのFc変異体)はEph受容体(例えば、Epha2および/またはEpha4)シグナル伝達を作動し、Eph受容体および/またはEph関連のポリペプチドのリン酸化を高める。
本発明はまた、Eph受容体の抗体アゴニストのスクリーニング方法も提供する。このようなスクリーニング方法として、限定するものではないが、Eph受容体活性(例えば、Eph受容体のリン酸化、Eph受容体タンパク質の分解、および下流Eph受容体仲介のシグナル伝達事象)、リガンド結合および/または血漿濃度をモニターするアッセイが挙げられる。前記およびその他の方法は、後述(第6.9節「生物学的アッセイ」を参照)およびPCT公開番号WO 03/094859、WO 04/014292、WO 04/069264、WO 04/028551、WO 03/004057、ならびに米国特許出願番号10/863,729、10/770,543(各々、参照として本明細書にその全文を組み込む)に記載されている。加えて、本発明は、このようなスクリーニング方法を用いて同定した抗体のADCC活性およびFcγRに対する結合親和性の両方を操作する方法も提供する。
このようなスクリーニング方法から同定した抗体のFcを前述のように置換して、ADCCおよび/またはCDC活性を改変し、1以上のFcリガンド(例えば、FcγR、Clq)の結合親和性を変更することができる。このようなスクリーニング方法から同定した他のアゴニスト結合分子(例えば、Eph受容体リガンドおよびその変異体)を本発明の変異体Fcドメインと融合させることもできる。さらに、新たに同定したEph受容体アゴニスト抗体のFc変異体および新たに同定したEph受容体アゴニストの変異体Fc融合物は、Eph受容体仲介および/または関連の疾患および障害の予防、管理および治療に有用であると考えられ、このような疾患として、限定するものではないが、炎症性疾患、自己免疫疾患、骨代謝に関連する疾患、血管新生に関連する疾患、Eph受容体の異常発現および/または活性に関連する疾患、ならびに癌が挙げられる。このようなFc変異体および/または変異体Fc融合物を本発明の方法および製剤に用いることができる。
6.9 生物学的アッセイ
1以上の本発明のFc変異体、または変異体Fc融合タンパク質のアンタゴニストおよび/またはアゴニスト効果は、当分野で周知のいずれかの方法により決定することができる。このような方法として、限定するものではないが、後述する方法、ならびに以下の文献に記載されているものがある:PCT公開番号WO 04/014292、WO 03/094859、WO 04/069264、WO 04/028551、WO 03/004057、WO 03/040304、米国特許第5,795,734号、ならびに米国特許出願番号10/770,543、および10/863,729(各々、参照として本明細書にその全文を組み込む)。例えば、Eph受容体活性および/またはEph受容体の血漿濃度の阻害は、Eph受容体の活性および/または発現を測定する当分野で周知のいずれかの方法(限定するものではないが、ウエスタンブロット、ノーザンブロット、RNase保護アッセイ、酵素活性アッセイ、in situハイブリダイゼーション、免疫組織化学、ならびに、免疫細胞化学など)によりアッセイすることができる。さらに具体的には、Fc変異体または変異体Fc融合タンパク質の活性は、Eph受容体との結合、他のEph受容体との交差反応性、Eph受容体リン酸化の阻害または刺激、Eph受容体分解、Eph受容体リガンド(例えば、エフリン)結合を測定することにより決定する。
本発明のFc変異体、または変異体Fc融合タンパク質の結合特異性、親和性および機能的活性は、当分野で周知の様々なin vitro結合および細胞接着アッセイにより特性決定することができ、このような方法として、限定するものではないが、ELISA、ウエスタンブロット分析、細胞表面染色、リガンド−受容体相互作用の阻害、フローサイトメトリー分析、ならびに、以下の文献に開示されているものが挙げられる:PCT公開番号WO 04/014292、WO 03/094859、WO 04/069264、WO 04/028551、WO 03/004057、WO 03/040304、WO 00/78815、WO 02/070007、およびWO 03/075957、ならびに米国特許第5,795,734号、第6,248,326号、および第6,472,403号、ならびに米国特許出願番号10/770,543、および10/863,729;Pecheurら、2002, FASEB J. 16(10):1266-1268;Almedら、The Journal of Histochemistry & Cytochemistry 50:1371-1379(2002)(これらはすべて、参照として本明細書に組み込む)。例えば、Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質の親和性、結合特異性および解離速度(off-rate)は、親抗Eph受容体抗体との競合的結合アッセイを測定することにより、Eph受容体とエフリンの結合に対する本発明のFc変異体、または変異体Fc融合タンパク質の阻害活性を測定することにより、決定することができる。競合的結合アッセイの一例として、非標識Eph受容体の存在下でその量を増やしながら、目的のFc変異体と一緒に標識Eph受容体(例えば、3Hまたは125I)をインキュベートした後、標識Eph受容体に結合したモノクローナル抗体を検出することを含む放射免疫測定法がある。Eph受容体に対するFc変異体の親和性および結合解離速度は、スキャッチャードプロット分析によりデータから決定することができる。放射免疫測定法により、第2抗体との競合も決定することができる。この場合、非標識モノクローナル抗体の存在下でその量を増やしながら、標識化合物(例えば、3Hまたは125I)に結合したFc変異体と一緒にEph受容体
をインキュベートする。
また、当分野では周知の表面プラスモン共鳴(SPR)アッセイを用いて、Fc変異体、または変異体Fc融合タンパク質の速度論的パラメーターを決定することもできる。SPRを用いた技術について詳しくは、Mulletら、2000, Methods 22:77-91;Dongら、2002, Review in Mol. Biotech., 82:303-23;Fivashら、1998, Current Opinion in Biotechnology 9:97-101;Richら、2000, Current Opinion in Biotechnology 11:54-61(これらはすべて、参照として本明細書にその全文を組み込む)を参照されたい。さらに、米国特許第6,373,577号;第6,289,286号;第5,322,798号;第5,341,215号;第6,268,125号に記載されている、タンパク質−タンパク質相互作用を測定するためのSPR装置およびSPR方法のいずれも本発明の方法で考慮され、これれら文献はすべて参照として本明細書にその全文を組み込むものとする。
本発明のFc変異体または変異体Fc融合タンパク質の結合特異性は、限定するものではないが、Eph受容体との結合および他のEph受容体に対する交差反応性の測定など、当分野では周知の方法により評価することができる。加えて、結合親和性および特異性は、Eph受容体に対し親抗Eph受容体抗体との競合的結合アッセイにより;もしくは、Eph受容体とそのリガンド、エフリンの結合に対する本発明のFc変異体、または変異体Fc融合タンパク質の阻害活性を測定することにより、決定することができる。
本発明のFc変異体、または変異体Fc融合タンパク質の阻害、アンタゴニストおよび/またはアゴニスト活性は、当分野では周知の多数の方法により試験することができ、このような方法として、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:リン酸化アッセイ(Koolpeら、2002, J Biol Chem 277:46974およびGuら、2001, Mol Cell Biol 21:4579)、細胞接着(Lawrensonら、2002, J Cell Sci 115:1059およびDavyら、2000, EMBO 19:5396)、上皮細胞遊走アッセイ、例えば、トランスウェル細胞遊走アッセイ(Choiら、1994, J Vascular Sur 19:125-134およびLeaveslyら、1993, J Cell Biol 121:163-170)、ならびに細胞球体化アッセイ(Miaoら、2000, Nature, Cell Bio. 2:62)、シグナル伝達アッセイ(Sharfeら、2002, Eur J Immunol 32:3745;Zouら、1999, PNAS U.S.A. 96:13813)(これらはすべて参照として本明細書にその全文を組み込む)。本発明のFc変異体、または変異体Fc融合タンパク質が癌細胞表現型を阻害する能力は、限定するものではないが、軟質寒天でのコロニー形成、三次元基底膜または細胞外マトリックス調製物(例えば、MATRIGEL(商標))における管状網状体形成を含むin vitroアッセイにより決定することができる。
米国特許第5,766,863号、ならびにPCT公開番号WO 03/094859、WO 04/014292、WO 04/069264(これらはすべて参照として本明細書にその全文を組み込む)に記載されているように、リン酸化/分解アッセイを実施することができる。手短に言うと、Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質もしくは対照分子の存在下で、細胞を37℃で少なくとも15分インキュベートする。次に、細胞溶解物を好適な抗Eph抗体(例えば、抗Eph抗体は、Santa Cruz Biotechnolory, Inc(カリフォルニア州サンタクルス)などから市販されている)で免疫沈降させ、SDS-PAGEにより分離した後、抗ホスホチロシン抗体4G10(Upstate Biotechnology;ニューヨーク州レークプラシド)とPY20(BD Transduction Laboratories;ニュージャージー州フランクリンレークス)のカクテルを用いたウェスタンブロット分析に付す。Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質による処理後Eph受容体リン酸化が増加していれば、Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質がEph受容体を作動し、自己リン酸化を促進したと考えられ、また、リン酸化の低下はFc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質のアンタゴニスト活性と一致することを示している。ウェスタンブロット分析および免疫沈降は、これまで記載されている(Zantekら、1999, Cell Growth Diff. 10:629;参照として本明細書にその全文を組み込む)ように実施する。手短には、1%Triton X-100を含むトリス緩衝食塩水(Sigma;ミズリー州セントルイス)において細胞単層のデタージェント抽出物を抽出する。タンパク質濃度を測定(BioRad;カリフォルニア州ハーキュリーズ)後、1.5 mgの細胞溶解物を免疫沈降させ、SDS-PAGEにより分解してから、ニトロセルロース(PROTRAN(商標)、Schleicher and Schuell;ニューハンプシャー州キーン)に移す。増強した化学発光(Pierce;イリノイ州ロックフォード)およびオートラジオグラフィー(Kodak X-OMAT;ニューヨーク州ロチェスター)により抗体結合を検出する。
細胞接着および細胞球体化アッセイはMiaoら(Nature Cell Biol. 2:62, 2000)(参照として本明細書にその全文を組み込む)に記載のように実施することもできる。細胞接着を試験するために、手短には、事前に各種ECMタンパク質またはポリ-L-リシンをコートした96-ウェルプレートへの細胞の平板培養を3回繰り返す。Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質の存在または非存在下で、1ウェルあたり1×105細胞の密度で細胞を培養し、37℃で30分接着させる。非接着細胞を洗浄によりウェルから除去し、接着細胞を固定、染色した後、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)読取り装置での吸光度を測定することにより、定量する。Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質で処理した細胞は、本発明のFc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質の非存在下で接着することができた対照細胞と比較して、ECMタンパク質処理ウェルへの弱い接着を示す。
細胞球体化アッセイの場合には、ECMタンパク質をコートした6ウェル皿、または24ウェル皿のECMタンパク質コートカバースリップに細胞を平板培養する。細胞を48時間接着させた後、Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質を含む、または含まない培地で10分処理する。プレートまたはカバースリップを洗浄し、染色した後、顕微鏡で視覚化する。Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質で処理した細胞は、Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質を含まない培地で処理した細胞に比べ、細胞球体化を示すが、これはECMマトリックスへの接着の弱さを意味している。
本発明の抗体が軟質ゲル中で癌細胞の形成を阻害する能力についてアッセイすることもできる(このようなアッセイは、例えば、Zelinskiら、2001, Cancer Res. 61:2301(参照として本明細書にその全文を組み込む)に記載のように実施することができる)。手短には、Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質もしくは対照溶液(PBS)の存在下で、細胞を37℃で7日軟質ゲル中に懸濁させる。Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質とインキュベートした後、細胞を洗浄し、抗Fc変異体および/または抗変異体Fc融合タンパク質第二モノクローナル抗体(第二mab)またはPBSのいずれかと一緒にインキュベートする。コロニー形成について顕微鏡で評点する。少なくとも3個の細胞を含むクラスターを陽性として評点する。
三次元微小環境(例えば、MATRIGEL(商標))内での腫瘍細胞挙動から、***上皮細胞の分化状態および攻撃性を高い信頼度で予測することができる。Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質もしくは対照溶液(PBS)の存在下で、良性(MCF-10A)または悪性(MDA-MB-231)***上皮細胞の単層培養物をMATRIGEL(商標)でインキュベートする。MATRIGEL(商標)上の細胞の挙動をZelinskiら(2001, Cancer Res. 61:2301)に記載のように分析する。手短には、組織培養皿にMATRIGEL(商標)(Cpllaborative Biomedical Products;マサチューセッツ州ベッドフォード)をコートし、事前にFc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質もしくは対照溶液(PBS)と氷上で1時間インキュベートしておいた1×105 MDA-MB-231またはMCF-10A細胞を添加する。細胞を37℃のMATRIGEL(商標)上で24時間インキュベートし、オリンパスIX-70逆光顕微鏡を用いて細胞挙動を評価する。画像はすべて35mmフィルム(T-Max-400. Kodak;ニューヨーク州ロチェスター)に記録する。
前記以外のin vitroアッセイの例、例えば、ウエスタンブロット分析、フローサイトメトリー分析、皮質骨および細胞外マトリックスタンパク質に対する細胞接着アッセイ、細胞遊走アッセイ、細胞侵入アッセイ、ならびに細胞増殖アッセイは、Pecheurら、2002, FASEB J. 16(10):1266-1268(参照として本明細書にその全文を組み込む)に記載されている。
本発明のFc変異体、または変異体Fc融合タンパク質の抗癌活性は、癌の試験のための各種実験動物モデル、例えば、マウスEph受容体をヒトEph受容体で置換したscidマウスモデルまたはトランスジェニックマウス、ヒト異種移植片を含むヌードマウス、ハムスター、ウサギなどの動物モデルを用いて決定することができ、このような動物は当分野では周知であり、以下の文献に記載されている:Relevance of Tumor Models for Anticancer Drug Development(1999, FiebigおよびBurger編);Contributions to Oncology(1999, Karger);The Nude Mouse in Oncology Research(1991, BovenおよびWinograd編);ならびにAnticancer Drug Development Guide(1997, Teicher編)(参照として本明細書にその全文を組み込む)。例えば、本発明のFc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質がin vivoで腫瘍癌成長を阻害する能力は以下のようにしてアッセイするすることができる:MDA-MB-231乳癌細胞を無胸腺症マウスに皮下移植する。腫瘍が100 mm3の平均体積まで成長したら、3週間にわたり毎週2回Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質あるいは対照溶液(PBS)をマウスに腹腔内投与する。腫瘍成長を評価し、腫瘍体積を初期腫瘍体積(100 mm3)で割った比率として表す。腫瘍体積が1,000 mm3に達するまで、腫瘍成長を進行させる。処理後毎日マウス生存率を評点することにより、マウスの生存を評価する。同様に、動物、例えば、ヌードマウスに結腸癌細胞を継代させて、これらの動物に腫瘍を出現させることにより、結腸癌の動物モデルを作製する。ヌードマウスにおけるヒト結腸癌の正常位移植モデルについては、例えば、Wangら、1994, Cancer Research, 54:4726およびTooら、1995, Cancer Research, 55:681に記載されている。このモデルは、AntiCancer, Inc.,(カリフォルニア州サンディエゴ)により販売されている、いわゆる”METAMOUSS”に基づく。
標的疾患または障害、例えば、炎症性疾患、自己免疫疾患、異常骨代謝もしくは異常血管新生に関連する疾患または障害、癌、Eph受容体の異常発現および/または活性に関連する疾患に関連する当分野で周知の様々な動物モデルを用いることができ、このようなモデルとして、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:ニワトリ漿尿膜(CAM)における成長因子または腫瘍誘導性血管新生(例えば、Ausprunkら(1980)Am. J. Pathol., 79:597-618;Ossonskiら(1975)Cancer Res., 40:2300-2309;Brooksら(1994)Science, 264:569-571およびBrooksら(1994), Cell, 79:1157-1164参照)、ウサギにおけるV x 2癌細胞(例えば、Voelkelら、(1975)Metabolism 24:973-86参照)、BALB/c nu/nuマウスにおいて誘導した腫瘍、ならびに皮下移植したヒト骨断片を有するSCIDマウス(SCID−ヒト−骨モデル)。腫瘍モデルの別の例がTeicherら、Tumor Models in Cancer Research(Humana Press;ニュージャージー州トトワ、2001)に記載されている。
本発明のプロトコルおよび製剤は、ヒトに使用する前に、所望の治療または予防活性についてin vitroで、次にin vivoで試験するのが好ましい。例えば、本発明の特定の治療プロトコル製剤または組合せ治療法の投与が必要であるかどうかを決定するのに用いることができるin vitroアッセイとして、患者の組織サンプルを培養して増殖し、これを本発明の製剤に暴露または接触させ、組織サンプルに対する該製剤の効果を観察する、in vitro細胞培養アッセイがある。組織サンプルは、患者からの生検により取得することができる。この試験により、個々の患者の治療に最も有効な予防または治療薬を確認することができる。様々な具体的実施形態では、自己免疫疾患、炎症性疾患、少なくとも1つのEph受容体の異常発現および/または活性に関連する疾患に関与する細胞型の代表的細胞を用いて実施することにより、本発明の製剤がこのような細胞型に所望の効果を有するかどうかを決定することができる。接触させた細胞の増殖レベルが低いほど、本発明の化合物が患者の状態を治療するのに有効であることを示している。あるいは、患者からの細胞を培養するのではなく、腫瘍または悪性細胞系、破骨細胞、内皮細胞もしくは内皮細胞系の細胞を用いて、本発明の製剤をスクリーニングしてもよい。当分野で標準的な多数のアッセイを用いて、このような生存および/または増殖を評価することができる:例えば、細胞増殖は、3Hチミジン取込みの測定により、直接細胞計数により、原癌遺伝子(例:fos、myc)または細胞周期マーカーのような既知遺伝子の転写活性の変化を検出することにより、評価し;細胞生存能力はトリパンブルー染色により、分化は、視覚による形態の変化などに基づき、それぞれ評価することができる。
予防または治療薬は、ヒトで試験する前に、好適な動物モデル系、限定するものではないが、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギ、ハムスターなどで試験することができる。
当分野においてよく知られ、広範に用いられている主な動物モデルは、当分野で周知であり、前述のように記載されている。
さらに、当業者には周知のアッセイを用いて、癌の治療または予防に対する本明細書に開示した組合せ治療薬の予防および/または治療有効性を評価することができる。
6.10 予防および治療のための使用
前述のように、Eph受容体に免疫特異的に結合する薬剤を用いて、血管新生の阻害、Eph受容体仲介の、またはその影響を受ける他の機能、限定するものではないが、細胞増殖、細胞接着、細胞遊走、肉芽組織発生、および/または炎症の阻害が含まれる。従って、本発明は、癌またはその1以上の症状の予防、管理、治療もしくは改善および/または血管新生の阻害を目的とする、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合し、かつ、好ましくはその活性をモジュレートする薬剤の使用に関する。
血管新生(新生血管形成とも呼ぶ)とは、組織内の既存の血管から新しい血管が形成する過程である。既述したように、Eph受容体は、この過程に特定の役割を果たすと考えられる。新しい血管形成または組織血管新生を必要とする様々な病状があり、この過程を阻害することが病状の阻害につながる。このように、成長または維持のために血管新生を必要とする病状は、Eph受容体仲介の疾患であると考えることができる。従って、これらの疾患の治療、もしくは重症度軽減の程度は、血管新生の阻害の程度に左右される。これらのEph受容体仲介の疾患として、例えば、免疫および非免疫炎症、血栓症、急性虚血性発作、慢性関節リウマチ、乾癬、血管の異常侵入に関連する疾患、例えば、糖尿病網膜症、血管新生緑内障、およびアテローム動脈硬化斑中の毛細血管増加、ならびに癌疾患などが挙げられる。
このような癌疾患として、例えば、充実性腫瘍、腫瘍転移、血管線維腫、血管肉腫、水晶体後方、線維増殖、血管腫、カポジ肉腫、癌、癌肉腫、ならびに、腫瘍の成長を支持するのに新生血管形成を必要とするその他の癌が挙げられる。血管新生性と考えられる別の疾患として、乾癬および関節リウマチ、ならびに網膜疾患(例えば、黄斑変性)が挙げられる。
このような癌のさらに別の例を以下に挙げる:白血病、限定するものではないが、例えば、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、例えば、骨髄芽球性、前骨髄性、骨髄単球性、単球性、および赤白血病、ならびに骨髄異形成症候群;慢性白血病、限定するものではないが、例えば、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ性白血病、ヘアリーセル白血病;真性赤血球増加;リンパ腫、限定するものではないが、例えば、ホジキン病、非ホジキン病;多発性骨髄腫、限定するものではないが、例えば、くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞性白血病、孤立性形質細胞腫および髄外形質細胞腫;ワルデンシュトレームマクログロブリン血症;有意性が不明なモノクローナル免疫グロブリン血症;良性モノクローナル免疫グロブリン血症;H鎖病;骨および結合組織肉腫、限定するものではないが、例えば、骨肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨大細胞腫瘍、骨の線維肉腫、軟骨腫、傍骨肉腫、軟組織肉腫、血管肉腫(血管肉腫)、線維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫;脳腫瘍、限定するものではないが、例えば、グリオーマ、星状細胞腫、脳幹グリオーマ、上衣細胞腫、希突起グリオーマ、非グリア腫瘍、聴音神経腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、髄膜腫、松果体細胞腫、松果体芽腫、原発性脳リンパ腫;乳癌、限定するものではないが、例えば、腺癌、小葉(小細胞)癌、導管内癌、髄様乳癌、ムチン様乳癌、管状乳癌、乳頭状乳癌、パジェット病、および炎症性乳癌;副腎癌、限定するものではないが、例えば、クロム親和細胞腫および副腎皮質;甲状腺癌、限定するものではないが、例えば、乳頭または胞状甲状腺癌、髄様甲状腺癌および異形成甲状腺癌;膵臓癌、限定するものではないが、例えば、インスリーマ、ガストリノーマ、グリカゴノーマ、ビポーマ、ソマトスタチン分泌腫瘍、およびカルチノイドまたは膵島細胞腫;下垂体癌、限定するものではないが、例えば、クッシング病、プロラクチン分泌腫瘍、先端巨大病、および尿崩症;眼の癌、限定するものではないが、例えば、眼黒色腫(例:虹彩黒色腫、軟骨黒色腫、および繊毛体黒色腫)、ならびに網膜芽細胞腫;膣癌、例えば、扁平上皮癌、腺癌、および黒色腫;外陰癌、例えば、扁平上皮癌、黒色腫、腺癌、基底細胞癌、肉腫、およびパジェット病;頚管癌、限定するものではないが、例えば、扁平上皮癌、および腺癌;子宮癌、限定するものではないが、例えば、子宮内膜癌および子宮肉腫;卵巣癌、限定するものではないが、例えば、卵巣上皮癌、境界腫瘍、生殖細胞腫瘍、および間質腫瘍;食道癌、限定するものではないが、例えば、扁平上皮癌、腺癌、腺様嚢胞癌、粘表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、黒色腫、形質細胞腫、いぼ状癌、および燕麦細胞(小細胞)癌;胃癌、限定するものではないが、例えば、腺癌、菌状発生型(ポリープ状)、潰瘍形成型、表在拡大型、分散性拡大型、悪性リンパ腫、リンパ肉腫、線維肉腫、および癌肉腫;結腸癌;直腸癌;肝臓癌、限定するものではないが、例えば、肝細胞癌および肝芽腫;胆嚢癌、例えば、腺癌;胆管癌、限定するものではないが、例えば、乳頭状、結節状、およびびまん性;肺癌、例えば、非小細胞癌、扁平上皮癌(類表皮癌)、腺癌、大細胞癌および小細胞肺癌;精巣癌、限定するものではないが、例えば、生殖器腫瘍、セミトーマ、異形成、古典的(典型的)、***細胞、非セミノーマ、胎生期癌、奇形腫、絨毛癌(卵黄嚢腫瘍);前立腺癌、限定するものではないが、例えば、腺癌、平滑筋肉腫、および横紋筋肉腫;陰茎癌;口腔癌、限定するものではないが、例えば、扁平上皮癌;基底細胞癌;唾液腺癌、限定するものではないが、例えば、腺癌、粘液性類表皮癌、および腺様嚢胞癌;咽頭癌、限定するものではないが、例えば、扁平上皮癌、およびいぼ状癌;皮膚癌、限定するものではないが、例えば、基底細胞癌、扁平上皮癌および黒色腫、表在拡大型黒色腫、結節性黒色腫、悪性黒子黒色腫、末端部黒子黒色腫;腎臓癌、限定するものではないが、例えば、腎細胞癌、腺癌、副腎腫、線維肉腫、移行細胞癌(腎盤および/または子宮);ウィルムス腫;膀胱癌、限定するものではないが、例えば、移行細胞癌、扁平上皮癌、腺癌、癌肉腫。前記に加えて、癌には、粘液肉腫、骨形成肉腫、内皮肉腫、リンパ管内皮肉腫、中皮腫、滑膜性腫瘍、血管芽細胞腫、上皮癌、嚢胞腺癌、気管支原生癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌および乳頭状腺癌も含まれる(このような疾患について詳しくは、Fishmanら、1985, Medicine, 第2版、J.B.Lipppincott Co., Philadelphia and Murphyら、1997, Informed Decisions: The Complete Book of Cancer Diagnosis, Treatment, and Recovery, Viking Penguin, Penguin Books U.S.A., Inc.,(米国)を参照)。
従って、本発明は、癌、充実性腫瘍転移、ならびに、炎症性疾患、例えば、関節リウマチおよび乾癬、もしくはそれらの1以上の症状の予防、管理、治療もしくは改善、および/または血管新生またはそれに関連する状態の阻害を目的とする、少なくとも1つのEph受容体に免疫特異的に結合し、好ましくはその活性をモジュレートする薬剤の使用に関する。
一実施形態では、本発明の方法および製剤は血管新生を阻害するために使用する。具体的実施形態では、本発明の方法および製剤は、充実性腫瘍における血管新生を阻害するために使用する。別の実施形態では、本発明の方法および製剤は、炎症を起こした血管新生組織(限定するものではないが、網膜組織および結合組織など)における血管新生を阻害するために使用する。
さらに、本発明は、Eph受容体に免疫特異的に結合し、好ましくはこれを阻害するFc変異体であって、治療目的、さらに具体的には、癌の治療、予防、管理、もしくは改善に有用な上記Fc変異体を提供する。本発明に従い予防、管理、治療もしくは改善することができる癌の具体例として、限定するものではないが、頭部、頸部、眼、口、咽喉、食道、胸部、骨、肺、結腸、直腸、結腸直腸、もしくは胃腸管の各種器官、胃、脾、腎臓、骨格筋、皮下組織、転移性黒色腫、子宮内膜、前立腺、***、卵巣、精巣またはその他の生殖器官、皮膚、甲状腺、血液、リンパ節、腎臓、肝臓、膵臓、ならびに脳もしくは中枢神経系の癌が挙げられる。
具体的実施形態では、本発明の方法および製剤は、Eph受容体を発現する原発性または二次性癌の予防、管理、治療もしくは改善に用いる。別の実施形態では、本発明の方法および製剤は、Eph受容体を発現しない原発性または二次性癌の予防、管理、治療もしくは改善に用いる。好ましい実施形態では、本発明の方法および製剤は、他の組織または器官(例えば、骨)に転移する可能性がある、または転移した癌の予防、管理、治療もしくは改善に用いる。別の好ましい実施形態では、本発明の方法および製剤は、肺癌、前立腺癌、卵巣癌、黒色腫、骨癌もしくは乳癌の予防、管理、治療もしくは改善に用いる。Eph受容体を免疫特異的に阻害する薬剤を用いた方法としては、限定するものではないが、PCT公開番号WO 03/094859およびWO 04/014292、ならびに米国特許出願番号10/863,729(参照として本明細書にその全文を組み込む)に開示されているものがある。
本発明は、Eph受容体の抗体、ならびにその他のアンタゴニストおよびアゴニストをスクリーニングする方法を提供する。さらに、本発明は、このようなスクリーニング方法を用いて同定した抗体および/またはその他のアンタゴニストまたはアゴニストの1以上のFcリガンド(例えば、FcγR、C1q)に対するADCCおよび/またはCDC活性および結合親和性を操作する方法も提供する。このような方法を用いて同定し、操作したEph受容体アンタゴニストおよびアゴニストは、単独または他の治療法と組み合わせて、Eph受容体仲介および/または関連の疾患および障害もしくはそれらの1以上の症状(限定するものではないが、癌、炎症性および自己免疫疾患など)の予防、治療、管理もしくは改善に用いることができる。
本発明はまた、Eph受容体に免疫特異的に結合する変異体Fc融合タンパク質も提供する。この変異体Fc融合タンパク質は、単独または他の治療法と組み合わせて、Eph受容体仲介および/または関連の疾患および障害もしくはそれらの1以上の症状(限定するものではないが、癌、炎症性および自己免疫疾患など)の予防、治療、管理もしくは改善に用いることができる。
具体的実施形態では、Eph受容体に免疫特異的に結合する本発明のFc変異体および/またはFc変異体融合タンパク質を癌またはその1以上の症状の予防、管理、治療もしくは改善のために用いる。好ましい実施形態では、癌または1以上のその症状の予防、管理、治療もしくは改善に用いる本発明のFc変異抗体および/またはFc変異体融合タンパク質は、Eph受容体のアンタゴニストである。
本発明はまた、インテグリンαVβ3仲介の疾患および障害もしくはそれらの1以上の症状(限定するものではないが、癌、炎症性および自己免疫疾患など)の予防、治療、管理もしくは改善を目的とする、1以上のFcリガンド(例えば、FcγR、C1q)に対する結合親和性が変更され、かつADCCおよび/またはCDC活性が改変された、Eph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体および/またはFc変異体融合タンパク質であって、1成分(例えば、治療薬剤または薬剤)と結合または融合した、上記Fc変異体および/またはFc変異体融合タンパク質の使用も包含する。本発明はさらに、上記Fc変異体および/またはFc変異体融合タンパク質の、予防または治療効果を高める治療プロトコルも包含する。
本発明は、組織または器官(例えば、骨)に転移する可能性がある、または転移した癌もしくはその1以上の症状の予防、管理、治療もしくは改善のための方法を提供し、この方法は、それが必要な患者に、予防または治療に有効な量の1以上の本発明のFc変異体および/またはFc変異体融合タンパク質を1以上の用量で投与することを含む。
本発明は、癌もしくはその1以上の症状の予防、管理、治療もしくは改善のための方法を提供し、この方法は、それが必要な患者に、予防または治療に有効な量の1以上のFc変異体および/またはFc変異体融合タンパク質を1以上の用量投与することを含むが、その際、該Fc変異体および/またはFc変異体融合タンパク質は、1以上のFcリガンド(例えば、FcγR、C1q)に対する結合親和性が変更され、かつADCCおよび/またはCDC活性が改変された、Eph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体および/またはFc変異体融合タンパク質であって、1成分(例えば、治療薬剤または薬剤)と結合または融合している。Fc変異体を融合または結合させることのできる成分の例として、限定するものではないが、PCT公開番号WO 2003/075957(参照として本明細書にその全文を組み込む)に開示したものが挙げられる。1以上のFcリガンド(例えば、FcγR、C1q)に対する結合親和性が変更され、かつADCCおよび/またはCDC活性が改変されたFc変異体および/またはFc変異体融合タンパク質の例として、限定するものではないが、前文に開示した変異体が挙げられる。
本発明は、Eph受容体仲介の疾患および障害もしくはその1以上の症状(限定するものではないが、癌、炎症性および自己免疫疾患もしくはその1以上の症状)の予防、管理、治療もしくは改善のためのプロトコルであって、1以上のFcリガンド(例えば、FcγR、C1q)に対する結合親和性が変更され、かつADCCおよび/またはCDC活性が改変され1以上のFc変異体および/またはFc変異体融合タンパク質を、予防または治療に有効な量の用量のFc変異体および/またはFc変異体融合タンパク質以外の1以上の治療薬の投与と組み合わせて用いる、上記プロトコルを包含する。本発明は、本発明のFc変異体および/または変異体融合タンパク質が、他の治療法(既存の標準的および実験的化学療法)の効力を増し、これと相乗し、その効能を高め、許容度を改善し、および/またはそれによる副作用を低減するという認識に一部基づいている。本発明の組合せ治療法は、付加的効力、付加的治療効果もしくは相乗効果を有する。本発明の組合せ治療法により、Eph受容体仲介の疾患および障害もしくはその1以上の症状(限定するものではないが、癌、炎症性および自己免疫疾患など)の予防、管理、治療もしくは改善のために、Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質と一緒に用いる治療薬(例えば、予防または治療薬)の用量を減らし、および/またはEph受容体仲介の疾患(例えば、癌)の被検者に対するこのような予防または治療薬の投与頻度を少なくして、該被検者のクオリティオブライフを改善する、および/または予防または治療効果を達成することができる。さらに、本発明の組合せ治療は、疾患(例えば、癌)のための既存の単一薬剤治療および/または既存の組合せ治療の投与に伴う不要な、または有害な副作用を軽減または解消し、これによって、治療プロトコルに対する患者のコンプライアンスを高める。
一実施形態では、本発明は、Eph受容体仲介の疾患(例えば、癌)もしくはその1以上の症状を予防、管理、治療もしくは改善する方法を提供し、この方法は、インテグリンアンタゴニスト、標準的または実験的化学療法、ホルモン療法、生物学的療法/免疫療法および/または放射線療法の投与と組み合わせて、予防または治療に有効な量の用量のFc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質を、必要とする被検者に投与することを含む。別の実施形態では、本発明は、Eph受容体仲介の疾患(例えば、癌)もしくはその1以上の症状を予防、管理、治療もしくは改善する方法を提供し、この方法は、外科手術と組み合わせて、単独で、あるいは、Eph受容体アンタゴニストおよび/またはEph受容体アゴニスト、標準的または実験的化学療法、ホルモン療法、生物学的療法/免疫療法および/または放射線療法の投与とさらに組み合わせて、予防または治療に有効な量の用量のFc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質を、必要とする被検者に投与することを含む。これらの実施形態によれば、Eph受容体仲介の疾患(例えば、癌)もしくはその1以上の症状を予防、管理、治療もしくは改善するために用いるFc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質は、1成分(例えば、治療薬剤または薬剤)と結合または融合させても、させなくてもよく、また、上記Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質は、Eph受容体に免疫特異的に結合するアゴニストまたはアンタゴニストである。
治療または予防薬として、限定するものではないが、小分子、合成薬剤、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸(例えば、DNAおよびRNAヌクレオチド:限定するものではないが、アンチセンスヌクレオチド配列、三重らせん、ならびに生物学的に活性のタンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドをコードするヌクレオチド配列)、抗体、合成または天然の無機分子、模倣薬剤、ならびに合成または天然の有機分子が挙げられる。Eph受容体仲介の疾患および障害(限定するものではないが、癌、炎症性および自己免疫疾患もしくはこれらに関連する症状など)の予防、治療、管理もしくは改善に有用であることが知られる、またはそのために使用されてきた、もしくは現在使用されている薬剤と、本明細書に記載の本発明のFc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質を組み合わせて用いることができる。
前記の組合せ治療で用いようとする薬剤の例を以下に挙げるが、これらに限定されるわけではない:インテグリンアンタゴニスト(例えば、RGDペプチドおよびジスインテグリン)、標準的または実験的化学療法(例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、シクロホスファミド、5-フルオロウラシル、タキサン(例:ドセタキセルおよびパシリタキセル)、ロイコボリン、レバミソール、イリノテカン、エストラムスチン、エトポシド、ビンブラスチン、ダカルバジン、ニトロソウレア(例:カルムスチンおよびロムスチン)、ビンカアルカロイド、白金化合物、シスプラチン、ミトマイシン、ビノレルビン、ゲンシタビン、カルボプラチン、ヘキサメチルメラミンおよび/またはトポテカン)、免疫調節薬(例えば、サイトカイン、抗体、インターロイキンおよび造血因子)、生物学的療法/免疫療法(例えば、タモキシフェン、LHRHアゴニスト、非ステロイド抗男性ホルモン、ステロイド抗男性ホルモン、エストロゲン、アミノグルテチミド、ヒドロコルチゾン、フルタミド投与中止、プロゲステロン、ケトコナゾール、プレドニゾン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン-2、腫瘍壊死因子α、およびメルファラン)、抗炎症薬(例えば、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、ステロイド抗炎症薬、βアゴニスト、抗コリン作用薬、およびメチルキサンチン)、鎮痛薬(例えば、NSAID、サリチル酸塩、アセトミノフェン、麻酔薬、ならびに非麻薬および抗不安定薬の組合せ)。上記以外の薬剤、治療薬およびそれらの用量、投与経路ならびに推奨する用法は当分野で周知であり、Physician’s Desk Reference(第57版、2003)のような文献に記載されている。別の薬剤およびその他の組合せ治療は、PCT出願番号WO 02/070007;WO 04/066956;WO 03/075741;およびWO 03/075957(参照として本明細書にその全文を組み込む)に記載されている。
前記の組合せ治療で用いられる薬剤のさらに別の例には、限定するものではないが、本発明の様々な実施形態で用いることができる抗癌薬の例(本発明の医薬組成物および投薬形態、ならびにキットを含む)も含まれ、限定するものではないが、以下に挙げるものを含む:アシビシン、アクラルビシン、塩酸アコダゾール、アクロニン、アドゼレシン、アルデロイキン、アルトレタミン、アンボマイシン、酢酸アメタントロン、アミノグルテチミド、アンサクリン、アナストロゾール、アントラマイシン、アスパラギナーゼ、アスペルリン、アザシチジン、アゼテパ、アゾトマイシン、バチマスタト、ベンゾデパ、ビカルタミド、塩酸ビサントレン、ビスナフィドジメシレート、ビゼレシン、硫酸ブレオマイシン、ブレキナールナトリウム、ブロピリミン、ブルスルファン、カクチノマイシン、カルステロン、カラセミド、カルベチメール、カルボプラチン、カルムスチン、塩酸カルビシン、カルゼレシン、セデフィンゴール、クロランブシル、シロレマイシン、シスプラチン、クラドリビン、クリスナトールメシレート、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、デカルバジン、デシタビン、デキソルマプラチン、デザグアニン、デザグアニンメシレート、ジアジクオン、ドセタキセル、ドキソルビシン、塩酸ドキソルビシン、ドロロキシフェン、クエン酸ドロロキシフェン、プロピオン酸ドロモスタノロン、デュアゾマイシン、エダトレキセート、塩酸エフロルニチン、エルサミトルシン、エノプラチン、エンプロメート、エピプロピジン、塩酸エピルビシン、エルブロゾール、塩酸エソルビシン、エストラムスチン、エストラムスチンリン酸ナトリウム、エタニダゾール、エトポシド、リン酸エトポシド、エトプリン、塩酸ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フロクスリジン、リン酸フルダラビン、フルオロウラシル、フルオロシタビン、ホスキドン、ホストリエシンナトリウム、ゲムシタビン、塩酸ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、塩酸イダルビシン、イホスファミド、イルモフォスシン、インターロイキン2(組換えインターロイキン2またはrII2を含む)、インターフェロンα2a、インターフェロンα2b、インターフェロンαn1、インターフェロンαn3、インターフェロンβI a、インターフェロンγI b、イプロプラチン、塩酸イリノテカン、酢酸ランレオチド、レトロゾール、酢酸ロイプロリド、塩酸リアロゾール、ロメトレキソールナトリウム、ロムスチン、塩酸ロソキサントロン、マソプロコール、マイタンシン、塩酸メクロレタミン、酢酸メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルカプトプリン、メトトレキセート、メトトレキセートナトリウム、メトプリン、メツレデパ、ミチンドミド、ミトカルシン、ミトクロミン、ミトギリン、ミトマルシン、マイトマイシン、ミトスペル、ミトタン、塩酸ミトキサントロン、マイコフェノール酸、ニトロソウレア、ノコダゾール、ノガラマイシン、オルマプラチン、オキシスラン、パクリタキセル、ペガスパルガーゼ、ペリオマイシン、ペンタムスチン、硫酸ペプロマイシン、ペルホスファミド、ピポブロマン、ピポスルファン、塩酸ピロキサントロン、プリカマイシン、プロメスタン、ポルフィメルナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、塩酸プロカルバジン、プロマイシン、塩酸プロマイシン、ピラゾフリン、リボプリン、ログレチミド、サフィンゴール、塩酸サフィンゴール、セムスチン、シントラゼン、スパルフォセートナトリウム、スパルソマイシン、塩酸スピロゲルマニウム、スプロムスチン、スピロプラチン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スロフェヌル、タリソマイシン、テコガランナトリウム、テガフル、塩酸テロキサントロン、テモポルフィン、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、チアミプリン、チオグアニン、チオテパ、チアゾフリン、チラパザミン、クエン酸トレミフェン、酢酸トレストロン、リン酸トリシリビン、トリメトレキセート、グルクロン酸トリメトレキセート、トリプトレリン、塩酸ツブロゾール、ウラシルマスタード、ウレデパ、バプレオチド、ベルテポルフィン、硫酸ビンプラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデスチン、硫酸ビンデスチン、硫酸ビンピジン、硫酸ビングリシネート、硫酸ビンロイロシン、酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンロシジン、硫酸ビンゾリジン、ボロゾール、ゼニプラチン、ジノスタチン、塩酸ゾルビシン。その他の抗癌薬として、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:20-epi1,25ジヒドロキシビタミンD3,5-エチニルウラシル、アビラテロン、アクラルビシン、アシルフルベン、アデシペノール、アドゼレシン、アルデスロイキン、ALL-TKアンタゴニスト、アルトレタミン、アンバムスチン、アミドクス、アミホスチン、アミノレブリン酸、アンルビシン、アンサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アンドログラホリド、血管新生阻害剤、アンタゴニストD、アンタゴニストG、アンタレリクス、抗背方化形態形成タンパク質-1、抗男性ホルモン、抗エステロゲン、アンチネオプラストン、グリシン酸アフィジコリン、アポトーシス遺伝子モジュレーター、アポトーシス調節因子、アプリン酸、アラ-CDP DL PTBA、アルギニンデアミナーゼ、アスラクリン、アタメスタン、アトリムスチン、アキシナスタチン1、アキシナスタチン2、アキシナスタチン3、アザセトロン、アザトキシン、アザチロシン、バッカチンIII誘導体、バラノール、バチマスタト、BCR/ABLアンタゴニスト、ベンゾクロリン、ベンゾリスタウロスポリン、βラクタム誘導体、βアレチン、ベタクラマイシンB、ベツリン酸、bFGF阻害剤、ビカルタミド、ビサントレン、ビサジリジニルスペルミン、ビスナフィド、ビストラテンA、ビゼレシン、ブレフレート、ブロピリミン、ブドチタン、ブチオニンスルホキシミン、カルシポトリオール、カルホスチンC、カンプトテシン誘導体、カナリポクスIL 2、カペシタビン、カルボキサミド アミノ トリアゾール、カルボキシアミドトリアゾール、CaRest M3、CARN 700、軟骨由来の阻害剤、カルゼレシン、カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS)、カスタノスペルミン、セクロピンB、セトロレリクス、クロロキノキサリンスルホアミド、シカプロスト、シスポルフィリン、クラドリビン、クロミフェン類似体、クロトリマゾール、コリスマイシンA、コリスマイシンB、コンブレタスタチンA4、コンブレタスタチン類似体、コナゲニン、クランベシジン816、クリスナトール、クリプトフィシン8、クリプトフィシンA誘導体、クラシンA、シクロペンタントラキノン、シクロプラタム、シペマイシン、シタラビンオクホスフェート、細胞溶解因子、シトスタチン、ダクリキシマブ、デシタビン、デヒドロジデムニンB、デストレリン、デキサメタゾン、デキシホスタミド、デキスラゾキサン、デキスベラパミル、ジアジクオン、ジデムニンB、ジドクス、ジエチルノルスペルミン、ジヒドロ5アザシジン、ジヒドロタキソール、ジオキサマイシン、ジフェニルスピロムスチン、ドセタキセル、ドコサノール、ドラセトロン、ドキシフリジン、ドロロキシフェン、ドロナビノール、デュオカルマイシンSA、エブセレン、エコムスチン、エデルホシン、エドレコロマブ、エフロルニチン、エレメン、エミテフル、エピルビシン、エプリステリド、エストラムスチン類似体、エストロゲンアゴニスト、エストロゲンアンタゴニスト、エタニダゾール、リン酸エトポシド、エキセメスタン、ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フィルグラスチム、フィナステリド、フラボピリドール、フレゼラスチン、フルアステロン、フルダラビン、塩酸フルオロダウノルニシン、ホルフェニメクス、フォルメスタン、ホストリエシン、ホテムスチン、ガドリニウムテキサフィリン、硝酸ガリウム、ガロシタビン、ガニレリクス、ゲラチナーゼ阻害剤、ゲムシタビン、グルタチオン阻害剤、ヘプスルファム、ヘレグリン、ヘキサメチレンビサセタミド、ヒペリシン、イバンドロン酸、イダルビシン、イドキシフェン、イドラマントン、イルモフォシン、イロマスタト、イミダゾアクリドン、イミキモド、免疫刺激ペプチド、インスリン様成長因子1受容体阻害剤、インターフェロンアゴニスト、インターフェロン、インターロイキン、ヨーベングアン、ヨウドドキソルビシン、イポメアノール、イロプラクト、イルソグラジン、イソベンガゾール、イソホモハリコンドリンB、イタセトロン、ジャスプラキノリド、カハラリドF、ラメラリンN三酢酸、ランレオチド、レイナマイシン、レノグラスチム、硫酸レンチナン、レプトルスタチン、レオトロゾール、白血病阻害因子、白血球αインターフェロン、ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン、ロイプロレリン、レバミソール、リアロゾール、線状ポリアミン類似体、親油性二糖ペプチド、親油性白金化合物、リッソクリナミンド7、ロバプラチン、ロンブリシン、ロメトレキソール、ロニダミン、ロソキサントロン、ロバスタチン、ロキソリビン、ルルトテカン、ルテチウムテキサフィリン、リソフィリン、溶菌ペプチド、マイタンシン、マンノスタチンA、マリマスタト、マソプロコール、マスピン、マトリシリン阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、メノガリル、メルバロン、メテレリン、メチオニナーゼ、メトクロプラミド、MIF阻害剤、ミフェプリストン、ミルテホシン、ミリモスチム、ミスマッチ二本鎖RNA、ミトグアゾン、ミトラクトール、マイトマイシン類似体、ミトナフィド、ミトトキシン線維芽細胞成長因子サポリン、ミトキサントロン、モファロテン、モルグラモスチム、モノクローナル抗体、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、モノホスホリル脂質A+ミオバクテリア細胞壁sk、モピダモール、多剤耐性遺伝子阻害剤、多発性腫瘍サプレッサー1による療法薬、マスタード抗癌薬、ミカペロキシドB、マイコバクテリア細胞壁抽出物、ミリアポロン、N-アセチルジナリン、N-置換ベンザミド、ナファレリン、ナグレスチプ、ナロキソン+ペンタゾシン、ナパビン、ナフテルピン、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ネモルビシン、ネリドロン酸、中性エンドペプチダーゼ、ヌルタミド、ニサマイシン、酸化窒素モジュレーター、ニトロキシド抗酸化剤、ニトルリン、O6ベンジルグアニン、オクトレオチド、オキセノン、オリゴヌクレオチド、オナプリストン、オンダンセトロン、オンダンセトロン、オラシン、経口サイトカイン誘導剤、オルマプラチン、オサテロン、オキサリプラチン、オキサウノマイシン、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、パクリタキセル誘導体、パラウアミン、パルミトイルリゾキシン、パミドロン酸、パナキシトリオール、パノミフェン、パラバクチン、パゼリプチン、ペガスパルガーゼ、ペルデシン、ペントサンポリスルフェートナトリウム、ペントスタチン、ペントロゾール、ペルフルブロン、ペルホスファミド、ペリリルアルコール、フェナジノマイシン、フェニル酢酸、ホスファターゼ阻害剤、ピシバニル、塩酸ピロカルピン、ピラルビシン、ピリトレキシム、プラセチンA、プラセチンB、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター、白金複合体、白金化合物、白金−トリアミン複合体、ポルフィメルナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニゾン、プロピルビスアクリドン、プロスタグラジンJ2、プロテアソーム阻害剤、プロテインAを用いた免疫モジュレーター、プロテインキナーゼC阻害剤、プロテインキナーゼC阻害剤、ミクロアルガール、プロテインチロシンホスファターゼ阻害剤、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤、プルプリン、ピラゾロアクリジン、ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート、rafアンタゴニスト、ラルチトレキセド、ラモセトロン、rasファルネシルプロテイントランスフェラーゼ阻害剤、ras阻害剤、ras GAP阻害剤、デメチル化レテリプチン、レニウムRe 186エチドロネート、リゾキシン、リボザイム、RIIレチナミド、ログレチミド、ロヒツカイン、ロムルチド、ロキニメクス、ルビギノンB1、ルゴキシル、サフィンゴール、サイントピン、SarCNU、サルコフィトールA、サルグラモスチム、Sdi 1模倣物、セムスチン、セネッセンス由来のインヒビター1、セ
ンスオリゴヌクレオチド、シグナル伝達阻害剤、シグナル伝達モジュレーター、一本鎖抗原結合タンパク質、シゾフィラン、ソブゾキサン、ナトリウムボロカプテート、フェニル酢酸ナトリウム、ソルベロール、ソマトメジン結合タンパク質、ソネルミン、スパルフォシン酸、スピカマイシンD、スピロムスチン、スプレノペンチン、スポンジスタチン1、スクアラミン、幹細胞阻害剤、幹細胞***阻害剤、スチピアミド、ストロメリシン阻害剤、スルフィノシン、過度活性血管作用性腸管ペプチドアンタゴニスト、スラジスタ、スラミン、スワインソニン、合成グリコサミノグリカン、タリムスチン、タモキシフェンメチオジド、タウロムスチン、タキソール、タザロテン、テコガランナトリウム、テガフル、テルラピリリウム、テロメラーゼインヒビター、テモポルフィン、テモゾロミド、テニポシド、テトラクロロデカオキシド、テトラゾミン、タリブラスチン、チオコラリン、チオグアニン、トロンボポイエチン、トロンボポイエチン模倣物、チマルファシン、チモポイエチン受容体アゴニスト、チモトリナン、甲状腺刺激ホルモン、錫エチルエピオプルプリン、チラパザミン、チタノセンビクロリド、トプセンチン、トレミフェン、全能性幹細胞因子、翻訳阻害剤、トレチノイン、トリアセチルウリジン、トリシリビン、トリメトレキセート、トリプトレリン、トロピセトロン、ツロステリド、チロシンキナーゼインヒビター、チルホスチン、UBC阻害剤、ウベニメクス、尿生殖洞由来の成長阻害因子、ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト、バプレオチド、バリオリンB、ベクター系、赤血球遺伝子療法薬、ベラレソール、ベラミン、ベルジン、ベルテポルフィン、ビノレルビン、ビンキサルチン、ビタキシン、ボロゾール、ザノテロン、ゼニプラチン、ジラスコルブ、ならびにジノスタチンスチマラマー。別の抗癌薬は5-フルオロウラシルおよびロイコボリンである。
本発明の方法および製剤は、限定するものではないが、頭部、頸部、眼、口、咽喉、食道、胸部、骨、肺、結腸、直腸、結腸直腸またはその他胃腸管の各種器官、胃、脾、腎臓、骨格筋、皮下組織、転移性黒色腫、子宮内膜、前立腺、***、卵巣、精巣またはその他の生殖器官、皮膚、甲状腺、血液、リンパ節、腎臓、肝臓、膵臓、ならびに脳もしくは中枢神経系の癌を予防、管理、治療もしくは改善するのに有用である。具体的実施形態では、本発明の方法および製剤は、Eph受容体を発現する原発性または二次性癌の予防、管理、治療もしくは改善に用いる。別の実施形態では、本発明の方法および製剤は、Eph受容体を発現しない原発性または二次性癌の予防、管理、治療もしくは改善に用いる。
本発明の方法および製剤は、既存の標準的および実験的癌療法(例えば、限定するものではないが、化学療法、ホルモン療法、生物学的療法、放射線療法、および/または外科手術)に対し部分的または完全に治療不応性の癌患者の管理または治療に有用である。
6.11製剤及び投与
前述のように、本発明は、Eph受容体仲介の疾患(例えば、癌)もしくはその1以上の症状の予防、管理、治療もしくは改善および/または血管新生の阻害を目的とする、1以上のEph受容体に免疫特異的に結合し、好ましくはこれを阻害する薬剤の使用に関する。従って、本発明は、1以上のFcリガンド(例えば、FcγR、C1q)に対する結合親和性が変更され、かつADCCおよび/またはCDC活性が改変された、Eph受容体に免疫特異的に結合する1以上のFc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質を含む製剤(例えば、医薬組成物)(本明細書では「本発明の製剤」または簡単に「製剤」とも呼ぶ)を提供する。具体的実施形態では、上記Fc変異体および/またはFc変異体融合タンパク質は、1以上のEph受容体のアンタゴニストである。別の具体的実施形態では、上記Fc変異体および/またはFc変異体融合タンパク質は、1以上のEph受容体のアゴニストである。
一実施形態では、1以上のFc変異体および/またはFc変異体融合タンパク質を含む製剤(例えば、医薬組成物)は、液体製剤(本明細書では、「液体製剤」と呼び、総称「本発明の製剤」および「製剤」に具体的に含まれる)である。具体的実施形態では、液体製剤は、界面活性剤および/または無機塩を実質的に含まない。別の実施形態では、液体製剤は、約5.0〜約7.0、約5.5〜約6.5、約5.8〜約6.2、および約6.0のpH範囲を有する。さらに別の具体的実施形態では、液体製剤は、5.0〜7.0、5.5〜6.5、5.8〜6.2、および6.0のpH範囲を有する。さらにまた別の具体的実施形態では、液体製剤は、濃度が約1mM〜約100 mM、約5mM〜約50 mM、約10 mM〜約25 mMのヒスチジンを含む。別の具体的実施形態では、液体製剤は、濃度が1mM〜100 mM、5mM〜50 mM、10 mM〜25 mMのヒスチジンを含む。
好ましい実施形態では、液体製剤は、濃度が約50 mg/ml、約75 mg/ml、約100 mg/ml、約125 mg/ml、約150 mg/ml、約175 mg/ml、約200 mg/ml、約225 mg/ml、約250 mg/ml、約275 mg/ml、もしくは約300 mg/mlの1以上のFc変異体および/またはFc変異体融合物を含む。一実施形態では、液体製剤は、以下に挙げる特性の1以上を呈示する:安定性;低レベル〜検出不可能なレベルの抗体フラグメント化および/または凝集;製造、調製および貯蔵中、抗体または抗体フラグメントの生物活性の喪失がほとんどまたは全くない。別の実施形態では、4℃または約4℃の適切な条件下で1年以内の貯蔵中、液体製剤の抗体活性の喪失は、50%以下、30%以下、20%以下、10%以下、あるいは5%もしくは1%以下である。さらに別の実施形態では、4℃または約4℃の適切な条件下で1年以内の貯蔵中、液体製剤の抗体活性の喪失は、約50%以下、約30%以下、約20%以下、約10%以下、あるいは約5%もしくは約1%以下である。抗体の活性は、それぞれの抗体について好適な抗原結合またはエフェクター機能アッセイにより決定することができる。別の好ましい実施形態では、液体製剤は、粘度および濁り度が低い。具体的実施形態では、液体製剤は、1℃〜26℃または約1℃〜約26℃の範囲内のあらゆる温度で10.00 cPまたは約10.00 cP以下の粘度を有する。粘度は、当分野では周知の多数の方法により決定することができる。例えば、ポリペプチド溶液の粘度はViscoLab 4000 Viscometer System(Cambridge Applied Systems)を用いて、測定することができ、これはViscoLab Piston(SN:7497, 0.355”, 1-20 cP)およびS6S Reference Standard(Koehler Instrument Company, Inc.)を備え、かつ水浴に接続されて、分析するサンプルの温度を調節する。所望の出発温度(例えば、2℃)のチャンバにサンプルを充填し、ピストンをサンプル中に下げる。サンプルをチャンバの温度まで平衡した後、測定を開始する。温度を所望の速度で所望の最終温度(例えば、≧25℃)まで上昇させる。そして時間経過による粘度を記録する。
液体製剤は、1以上の賦形剤、例えば、サッカリド、アミノ酸(例えば、アルギニン、リシン、およびメチオニン)およびポリオールをさらに含むことが考えられる。液体製剤についてのその他の説明、調製および分析方法については、例えば、WO 03/106644;WO 04/066957;およびWO 04/091658(各々、参照として本明細書にその全文を組み込む)に記載されている。
一実施形態では、本発明の製剤(例えば、液体製剤)は、内毒素および/または関連する発熱物質を実質的に含まない発熱物質非含有製剤である。内毒素とは、微生物の内部に閉じ込められ、該微生物が分解される、または死ぬとき、遊離する毒素を意味する。発熱物質はまた、細菌およびその他の微生物の外膜からの熱誘発性熱安定性物質(糖タンパク質)も含む。これら物質はいずれも、ヒトに投与すると、熱、低血圧およびショックを引き起こしうる。有害な作用が考えられるため、静脈内投与する医薬剤溶液から、たとえ低量であっても内毒素を除去するのが有利である。米国食品医薬品局(FDA)は、静脈内の薬剤適用の場合、1時間に体重1キログラム当たりの用量につき5内毒素単位(EU)の上限を定めている(The United States Pharmacopeial Convention, Pharacopeial Forum 26 (1):223(2000))。モノクローナル抗体の場合に考えられるように、体重1キログラム当たり数百から数千ミリグラムの量の治療タンパク質を投与する場合、微量の内毒素であっても除去するのが有利である。一実施形態では、組成物における内毒素および発熱物質レベルは、10 EU/mg以下、または5EU/mg以下、または1EU/mg以下、または0.1 EU/mg以下、または0.01 EU/mg以下、または0.001 EU/mg以下である。別の実施形態では、組成物における内毒素および発熱物質レベルは、約10 EU/mg以下、または約5EU/mg以下、または約1EU/mg以下、または約0.1 EU/mg以下、または約0.01 EU/mg以下、または約0.001 EU/mg以下である。
必要とする被検者(例えば、ヒト)に投与しようとする1以上のFc変異体および/またはFc変異体融合物を含む製剤を、薬学的に許容される賦形剤で製剤化すべきであることは明らかであろう。本発明の製剤、特に医薬組成物の例として、限定するものではないが、PCT公開番号WO 02/070007;WO 04/066957およびWO 03/075957(各々、参照として本明細書にその全文を組み込む)に開示されているものが挙げられる。手短には、これらの製剤(例えば、液体製剤)に本発明のFc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質と一緒に含まれる賦形剤は、治療に用いる組成物の予想される投与経路に基づいて選択することができる。組成物の投与経路は、治療しようとする状態に応じて変わってくる。例えば、静脈内注射は、リンパ系癌または転移した腫瘍のような全身性疾患の治療に好ましいと考えられる。投与しようとする組成物の用量は、標準的用量応答試験と一緒に過度の実験を行なうことなく、当業者によって決定することができる。このような決定を実施する上で考慮すべき関連状況として、治療しようとする状態、投与しようとする組成物の選択、個々の患者の年齢、体重、および応答、ならびに患者の症状の重症度が挙げられる。例えば、実際の患者の体重を用いて、投与しようとする製剤における本発明のFc変異体および/または変異体Fc融合物の用量をミリリットル(mL)単位で計算することができる。「理想的」重量までの下方調節がないこともある。そのような状況では、以下の式により適切な用量を計算することができる:
用量(mL)=[患者の体重(kg)×用量レベル(mg/kg)/薬剤濃度(mg/mL)]
状態に応じて、製剤を患者に経口、非経口、筋内、鼻内、膣内、直腸、舌、舌下、頬側、口腔内、静脈内、皮膚、皮下および/または経皮投与することができる。
従って、当分野で周知の手段により、例えば、不活性希釈剤または食用担体を用いて、過度の実験を行なうことなく、経口、非経口、筋内、鼻内、膣内、直腸、舌、舌下、頬側、口腔内、静脈内、皮膚、皮下および/または経皮投与するための製剤を製造することができる。製剤は、ゼラチンカプセルに封入するか、または錠剤に圧縮することができる。経口治療投与の目的では、本発明の製剤に賦形剤を含有させ、錠剤、トローチ剤、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハース、チューイングガムなどの形態で使用することができる。
また、錠剤、丸薬、カプセル、トローチ剤などに、結合剤、受容体、崩壊剤、潤滑剤、甘味料、および/または香味料を含有させてもよい。結合剤の例として、微晶質セルロース、トラガカントおよびゼラチンが挙げられる。賦形剤の例として、デンプンおよびラクトースが挙げられる。崩壊剤の例として、アルギン酸、コーンスターチなどが挙げられる。滑沢剤の例として、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カリウムが挙げられる。滑り剤の例は、コロイド状二酸化ケイ素である。甘味料の例として、ショ糖、サッカリンなどが挙げられる。香味料の例として、ハッカ、サリチル酸メチル、オレンジ香料などが挙げられる。このような各種製剤を製造するのに用いる材料は、使用する量で薬学的に純粋であり、かつ無毒でなければならない。
本発明の医薬製剤は、例えば、静脈内、筋内、硬膜下腔内および/または皮下注射などにより、非経口投与することができる。非経口投与は、本発明の製剤を溶液または懸濁液に含有させることにより達成することができる。このような溶液または懸濁液として、滅菌希釈剤、例えば、注射用蒸留水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールおよび/またはその他の合成溶剤が挙げられる。非経口投与製剤には、抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールおよび/またはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸および/または亜硫酸水素ナトリウム;ならびにキレート剤、例えば、EDTAも含まれる。また、バッファー、例えば、酢酸、クエン酸およびリン酸バッファー;ならびに、等張性調節剤、例えば、塩化ナトリウムおよびデキストロースを添加してもよい。非経口投与製剤は、アンプル、使い捨て注射器および/またはガラスまたはプラスチック製の多用量バイアルに封入することができる。直腸投与は、直腸および/または大腸への製剤の投与を含む。これは、座薬および/または浣腸を用いて達成することができる。当分野で周知の方法により座薬製剤を製造することができる。経皮投与は、皮膚を通して製剤を経皮吸収させることを含む。経皮投与製剤として、パッチ、軟膏、クリーム、ゲル、軟膏剤などが挙げられる。本発明の製剤を患者に鼻内投与することができる。本明細書で用いる表現「鼻内投与(する)」とは、患者の鼻内経路および/または鼻腔の粘膜に製剤を投与することを含む。
別の実施形態では、製剤(例えば、液体製剤)を皮下(すなわち、皮膚の下)投与により哺乳動物に投与する。この目的のために、注射器を用いて、製剤を注射することができる。しかし、製剤を投与するためのその他の装置を使用してもよく、そのような装置として、例えば、注射装置(例:Inject-easeおよびGenject device)、インジェクターペン(例:GenPen(商標));自動インジェクター装置、針のない装置(例:MejiJectorおよびBioJector);ならびに皮下パッチ送達系などが挙げられる。
本発明の別の形態では、低速放出製剤を提供する。具体的実施形態では、低速放出製剤は、液体製剤を含む。低速放出製剤は、限定するものではないが、ポリマーナノまたは微粒子およびゲル(例えば、ヒアルロン酸ゲル)を含む多数の薬剤から製剤化することができる。利便性以外にも、低速放出製剤は、タンパク質薬剤の送達の場合、長時間にわたりタンパク質(例えば、Fc変異体および/または変異体Fc融合物)を分解または放出から保護し、また、タンパク質を特定の部位または身体区分に局所的に送達することよって全身への暴露を低減できるといった利点も提供する。
本発明は、例えば、タンパク質(例えば、Fc変異体および/または変異体Fc融合物)を生物分解性ポリマーマトリックスに包理した注射可能な貯留物製剤も考慮する。用いることができるポリマーとして、限定するものではないが、乳酸およびグリコール酸のホモ−およびコ−ポリマー(PLGA)が挙げられる。PLGAは加水分解により分解し、最終的に酸性モノマーをもたらし、例えば、微小球の製造に用いる条件下で化学的に非反応性であるため、該タンパク質を変更することはない。皮下または筋内注射後、分散とポリマー分解を組み合わせてタンパク質を放出させる。様々な組成物および分子量のポリマーを用いることにより、加水分解速度を変動させ、放出を数日から数ヶ月持続させるさせることができる。別の形態では、本発明は、鼻内スプレー製剤を提供する。具体的実施形態では、鼻内スプレー製剤に本発明の液体製剤を含有させる。
本発明の製剤は、本発明の方法に従い、癌、炎症性疾患および自己免疫疾患もしくはそれらの1以上の症状の予防、管理、治療もしくは改善のために用いることができる。一実施形態では、本発明の製剤は無菌であり、しかも、癌、炎症性疾患および自己免疫疾患、特にEph受容体仲介の疾患を有する被検者に対する特定の投与方法に適した形態をしている。
本発明は、癌、炎症性疾患および自己免疫疾患(特にEph受容体仲介の疾患)もしくはそれらの1以上の症状を予防、管理、治療もしくは改善する方法を提供し、この方法は、以下のステップを含んでなる:(a)必要とする患者に、予防または治療に有効な量の、Eph受容体に免疫特異的に結合する1以上の本発明のFc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質を含む製剤を1用量投与し、(b)1用量以上の上記Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質を後に投与することにより、継続してEph受容体に免疫特異的に結合する上記Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質の血漿濃度を所望のレベル(例えば、約0.1〜約100μg/ml)に維持する。具体的実施形態では、上記Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質の血漿濃度を10μg/ml 、15μg/ml 、20μg/ml 、25μg/ml 、30μg/ml 、35μg/ml 、40μg/ml 、45μg/ml もしくは50μg/mlに維持する。具体的実施形態では、投与しようとする上記Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質の有効量は、1用量当たり、少なくとも1mg/kg〜100 mg/kgである。別の具体的実施形態では、投与しようとする上記Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質の有効量は、1用量当たり、少なくとも1mg/kg〜20 mg/kgである。別の具体的実施形態では、投与しようとする上記Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質の有効量は、1用量当たり、少なくとも4mg/kg〜10 mg/kgである。さらに別の実施形態では、投与しようとする上記Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質の有効量は、1用量当たり、50 mg/kg〜250 mg/kgである。さらにまた別の実施形態では、投与しようとする上記Fc変異体および/またはFc変異体融合タンパク質の有効量は、1用量当たり、100 mg〜200 mgである。
本発明は、癌、炎症性および自己免疫疾患、特にEph受容体仲介の疾患の予防、治療、管理、改善、検出、モニタリングもしくは診断に使用するための、1以上のFcリガンド(例えば、FcγR、C1q)に対する結合親和性が変更され、かつADCCおよび/またはCDC活性が改変された、Eph受容体に免疫特異的に結合する1以上のFc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質であって、検出可能な薬剤、治療薬もしくは薬剤と結合または融合した上記Fc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質を1以上の容器に含むキットを提供する。
本発明はまた、癌、炎症性および自己免疫疾患、特にEph受容体仲介の疾患の予防、治療、管理、改善、検出、モニタリングもしくは診断に使用するための、1以上のFcリガンド(例えば、FcγR、C1q)に対する結合親和性が変更され、かつADCCおよび/またはCDC活性が改変された、Eph受容体に免疫特異的に結合する、1以上のFc変異体および/または変異体Fc融合物を第1バイアルに含み、Eph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体以外の1以上の予防または治療薬を第2バイアルに含むキットを提供する。本発明はさらに、癌、炎症性および自己免疫疾患、特にEph受容体仲介の疾患の予防、治療、管理、改善、検出、モニタリングもしくは診断に使用するための、1以上のFcリガンド(例えば、FcγR、C1q)に対する結合親和性が変更され、かつADCCおよび/またはCDC活性が改変された、Eph受容体に免疫特異的に結合する1以上のFc変異体および/またはFc変異体融合物であって、治療薬もしくは薬剤と結合または融合した該Fc変異体および/またはFc変異体融合物を第1バイアルに含み、Eph受容体に免疫特異的に結合するFc変異体および/または変異体Fc融合タンパク質以外の1以上の予防または治療薬を第2バイアルに含むキットを提供する。上記キットはさらに、パッケージング材料および/または説明書を含む場合もある。