JP2008266814A - 金属被覆布帛およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
布帛の風合や強度を損なうことなく、かつ、布帛を構成する繊維と金属層との密着性を向上させることで、該繊維と金属層との界面からの腐食を防止し、柔軟で耐乾および耐湿等の環境耐久性および耐屈曲性に優れた金属被服布帛を得ることのできる製造方法を提供することにある。
【解決手段】
布帛を構成する繊維表面に、JIS Z 8901で定められる中位径4〜150μmの研磨材を含有するスラリーをエアー圧0.06〜0.4MPaで噴射する工程、および、該繊維表面に金属層を形成する工程を含む金属被覆布帛の製造方法である。
【選択図】 なし
布帛の風合や強度を損なうことなく、かつ、布帛を構成する繊維と金属層との密着性を向上させることで、該繊維と金属層との界面からの腐食を防止し、柔軟で耐乾および耐湿等の環境耐久性および耐屈曲性に優れた金属被服布帛を得ることのできる製造方法を提供することにある。
【解決手段】
布帛を構成する繊維表面に、JIS Z 8901で定められる中位径4〜150μmの研磨材を含有するスラリーをエアー圧0.06〜0.4MPaで噴射する工程、および、該繊維表面に金属層を形成する工程を含む金属被覆布帛の製造方法である。
【選択図】 なし
Description
本発明は、金属被覆布帛およびその製造方法に関し、詳細には、繊維布帛の基材表面に金属薄膜を形成した電磁波シールド材や柔軟なセンサー材や電極材などとして使用される金属被覆布帛およびその製造方法に関する。
近年、エレクトロニクス技術の進歩によって、コンピューターや携帯電話等の電子機器から発生する電磁波の影響を軽減するため、各種の電磁波シールド材料が提案されており、
その中の1つとして軽量で柔軟性のある合成繊維からなる織物等の布帛に金属被膜を付与したものが数多く提案されている。合成繊維に金属被膜を形成させる手段としては、真空蒸着法、スパッタリング法、無電解めっき法等があるが、なかでも、金属付与のコストが安価であり、高い導電性を有する金属被膜が均一に形成されるという点で、無電解めっき法が好ましく用いられている。
その中の1つとして軽量で柔軟性のある合成繊維からなる織物等の布帛に金属被膜を付与したものが数多く提案されている。合成繊維に金属被膜を形成させる手段としては、真空蒸着法、スパッタリング法、無電解めっき法等があるが、なかでも、金属付与のコストが安価であり、高い導電性を有する金属被膜が均一に形成されるという点で、無電解めっき法が好ましく用いられている。
従来、携帯電話機のような通信機器やパーソナルコンピューターのような電子機器からの電磁波漏洩や、あるいは電磁波侵入を防止するために合成繊維に導電加工した電磁波シールド材が使用されてきた。しかし、電磁波シールド材料の需要が自動車業界などこれまでにない様々な分野に広がり、金属密着性に優れかつ耐屈曲性、環境耐久性等の耐久性能にも優れた電磁波シールド材が求められてきている。
金属被膜と基材との密着性を向上させる手段としては、例えば化学的もしくは物理的手法によりエッチング処理を行う方法がある。前記化学的なエッチング処理としてアルカリ加水分解による減量加工が公知である。しかし、この方法では繊維単糸全体への均一なエッチング効果がないため、十分なアンカー効果が得られず、布帛を構成する繊維と金属層との密着性が十分とは言い難い。
また、物理的手法として、特許文献1には、ポリエステル繊維表面をプラズマ照射することにより表面粗化する方法が開示されている。しかし、この方法では、照射面の影になる部分には凹凸が形成されないため、やはり繊維単糸全体への均一なエッチング効果はない。また、形成される微細孔の面積が大き過ぎるため、十分なアンカー効果は得られず、布帛を構成する繊維と金属層との密着性について十分満足できるものではなかった。さらに、プラズマ処理の設備は非常に高価であり、工業的な生産に適しているとは言い難い。
上記のいずれの方法においても、得られた金属被覆布帛は、布帛を構成する繊維と金属層との密着性が十分に満足できるものであるとは言い難い。
ところで、金属被覆布帛の環境耐久性(乾熱環境下および湿熱環境下での耐久性)を向上させる手段として、金属層の最上層にニッケルや錫や金などの耐食性にすぐれた金属層を設けることは一般的である。しかし、それだけでは十分な環境耐久性が得られない場合がある。
それは、環境耐久性には、布帛を構成する繊維と金属層との密着性が大きく関わっているためである。繊維と金属層との密着性が不十分であると、繊維と金属層との界面から金属が腐食されやすい。したがって、たとえ金属層の最上層にニッケルや錫などの耐食性にすぐれた金属層が設けられていても、繊維と金属層との密着性が十分でないと、長時間高温高湿度下に放置した場合に繊維と金属層との界面から腐食が起こり、表面の導通性が低下してしまう。
さらに、金属被覆布帛の耐屈曲性においても、布帛を構成する繊維と金属層との密着性が大きな関わりを持っている。繊維と金属層との密着性が不十分であると、屈曲の際に布帛から金属が脱落したり、金属層が割れたりする。その結果、屈曲後の表面の導通性が低下する。
また、特許文献2および特許文献3では、プラスチックフィルムの表面粗化方法として、サンドブラストによるドライブラスト法およびウェットブラスト法が開示されている。ドライブラスト法およびウェットブラスト法は、プラスチックフィルムと金属層との密着性を向上させる手段としては有用である。
しかし、ドライブラスト法では研磨剤を圧縮空気のみで噴射させるため、基材上で不均一に比較的粗く加工されやすく、布帛にドライブラスト処理を施した場合、布帛を構成する繊維単糸1本1本に均一で微細な凹凸を設けることは困難である。また、ドライブラスト法は使用できる研磨剤の粒子径サイズの下限に制限があり、布帛を処理した場合に、布帛へのダメージが大きく、布帛を脆化させる可能性が大きい。
一方、ウェットブラスト法ではサンドブラスト法に比べサイズの小さい研磨材を使用することができるため、比較的プラスチックフィルムにダメージを与えることなく処理は可能である。しかし、布帛へウェットブラスト処理を施した場合、プラスチックフィルムに比べ繊維がより柔軟であるため、使用する粒子サイズやエアー圧によっては、布帛を脆化する恐れがある。そのため、プラスチックフィルムに適用されるウェットブラスト法を、単に布帛の表面粗化に用いることは困難である。
従来提案されている布帛の表面粗化方法では、基材と金属層との密着性が乏しいため、高温高湿下に長時間放置すると、基材を構成する繊維と金属層との界面からの腐食が進み、表面の導通性が低下するという問題があった。また、屈曲性に関しても、屈曲中に布帛から金属が脱落したり、金属層が割れたりするなどして、屈曲後の表面の導通性が低下するなどの問題があった。
また、プラスチックフィルム等の表面粗化の方法としてドライブラスト法およびウェットブラスト法が用いられているが、それらの方法を布帛表面に用いた場合は、プラスチックフィルムに比べて繊維がより柔軟である為、布帛へのダメージが大きくなり、結果として布帛の風合や強度を損なう虞があった。
本発明の目的は、布帛の風合や強度を損なうことなく、かつ、布帛を構成する繊維と金属層との密着性を向上させることで、耐湿等の環境耐久性や耐屈曲性に優れた金属被覆布帛およびその製造方法を提供することにある。
また、プラスチックフィルム等の表面粗化の方法としてドライブラスト法およびウェットブラスト法が用いられているが、それらの方法を布帛表面に用いた場合は、プラスチックフィルムに比べて繊維がより柔軟である為、布帛へのダメージが大きくなり、結果として布帛の風合や強度を損なう虞があった。
本発明の目的は、布帛の風合や強度を損なうことなく、かつ、布帛を構成する繊維と金属層との密着性を向上させることで、耐湿等の環境耐久性や耐屈曲性に優れた金属被覆布帛およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、使用する研磨材の中位径およびエアー圧を特定の範囲で制御することで、ウェットブラスト法による布帛表面処理を可能にした。それにより、布帛の風合や強度を損なうことなく、繊維単糸1本1本に均一で微細な凹凸が設けられることで、布帛を構成する繊維と金属層との密着性が向上し、耐湿等の環境耐久性や耐屈曲性などの耐久性に優れた金属被覆布帛を形成できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、布帛を構成する繊維表面に、JIS Z 8901で定められる中位径4〜150μmの研磨材を含有するスラリーをエアー圧0.06〜0.4MPaで噴射する工程、および、該繊維表面に金属層を形成する工程を含む金属被覆布帛の製造方法に関する。
前記研磨材の中位径が、6〜20μmであることが好ましい。
前記エアー圧が、0.12〜0.24MPaであることが好ましい。
また、前記の製造方法により得られる金属被覆布帛に関する。
前記金属被覆布帛が、温度80℃の環境下に1000時間放置した前後の表面抵抗値変化率、および、温度60℃、湿度90%の環境下に1000時間放置した前後の表面抵抗値変化率が、20%以下であることが好ましい。
前記金属被覆布帛が、曲率半径3mmの冶具を有するMIT屈曲試験機を用いた荷重1kg、1万回の屈曲試験前後の表面抵抗値変化が、20%以下であることが好ましい。
本発明の製造方法によれば、布帛の風合や強度を損なうことなく、繊維単糸1本1本に均一で微細な凹凸が設けることができるため、布帛を構成する繊維と金属層との密着性を向上させることができ、それにより、耐乾および耐湿等の環境耐久性や耐屈曲性などの耐久性に優れた金属被覆布帛を提供することができる。
本発明において用いられる布帛としては、織物、編物、不織布などの形態のものを挙げることができ、特に限定されない。なかでも、布帛の強度や厚みの均一性という観点から織物が好ましい。
また、用いられる繊維素材としては、ポリエステル系(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリアミド系(ナイロン6、ナイロン66など)、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリアクリロニトリル系、ポリビニルアルコール系、ポリウレタン系などの合成繊維、セルロース系(ジアセテート、トリアセテートなど)、蛋白質系(プロミックスなど)などの半合成繊維、セルロース系(レーヨン、キュプラなど)、蛋白質系(カゼイン繊維など)などの再生繊維、セルロース系(木綿、麻など)、蛋白質系(羊毛、絹など)などの天然繊維を挙げることができ、これらが2種類以上組み合わされていてもよい。なかでも、加工性および耐久性を考慮すると合成繊維が好ましく、ポリエステル系繊維がより好ましい。
用いられる繊維の総繊度は11〜167dtexであることが好ましく、33〜110dtexであることがより好ましい。総繊度が11dtexより小さいと金属被覆布帛の強度およびめっき加工性が悪くなる虞があり、167dtexをこえると、金属被覆布帛の風合が粗硬になる虞がある。
本発明においては、布帛を構成する繊維の単糸1本1本に均一で微細な凹凸を形成させるため、ウェットブラスト法を用いる。
そのウェットブラスト処理に使用する研磨材の中位径としては、4〜150μmであり、6〜20μmであることがより好ましい。中位径が4μm未満であると、布帛を構成する繊維表面の表面粗化効果が不十分で、繊維と金属層との間に十分な密着性が得られず、繊維と金属層との界面からの腐食が起こりやすくなる。一方、中位径が150μmをこえると、繊維と金属層との間に密着性は十分得られるため、繊維と金属層との界面からの腐食を抑えることはできるが、一方で布帛の風合いが損なわれ強度も低下する。
なお、中位径は、JIS Z 8901「試験用粉体及び試験用粒子」にて定義されているものであり、粉体の粒径分布において、ある粒子径より大きい個数又は質量が、全粉体のそれの50%をしめるときの粒子径、即ち、オーバサイズ50%の粒径で通常、D50で表されるものである
前記研磨材の材質は、特に限定されるものではなく、アルミナ、ガラス、石、砂等の液体に分散できるものであれば適用が可能である。なかでも、加工性やコストを考慮するとアルミナが好ましい。
前記研磨材を分散させる液体としては、水単体や分散剤や脱脂剤を分散させた水が適している。酸やアルカリは、装置へのダメージが大きく好ましくない。
本発明で使用されるスラリーの固形分濃度としては、10〜30重量%であることが好ましい。10重量%より低いと、処理面の粗化状態がまばらとなる傾向にあり、30重量%をこえると、粒子同士の干渉により粗化能力が低下する傾向にある。
前記研磨材を水等の液体に分散させたスラリーと圧縮空気との混合物を、対象である布帛上部より高圧噴射させて、布帛を構成する繊維表面の表面粗化処理を行う。
その噴射の際のエアー圧は、0.06〜0.4MPaであり、0.12〜0.30MPaであることが好ましく、0.12〜0.24MPaであることがより好ましい。エアー圧が、0.06MPa未満であると、布帛を構成する繊維表面の粗化状態が不十分で、布帛と金属層との間に十分な密着性が得られず、布帛と金属の界面からの腐食が起こりやすい。一方、エアー圧が0.4MPaをこえると、布帛を構成する繊維と金属層との間に密着性は十分得られるため、布帛と金属層界面からの腐食を抑えることはできるが、一方で布帛の柔軟性が損なわれ、かつ強度も低下する。
図1に、本発明で用いられる条件でウェットブラスト処理を行った布帛の繊維表面を写した電子顕微鏡写真を示す。図1(a)は経糸(3500倍)、図1(b)は緯糸(3500倍)である。
また、比較のために、図2において、従来用いられているアルカリ加水分解による減量加工を行った布帛の繊維表面を写した電子顕微鏡写真を示す。図2(a)は経糸(10000倍)、図2(b)は緯糸(10000倍)である。
図1および2からわかるように、本発明で用いられる条件でウェットブラスト処理を行った布帛では、構成する繊維の単糸1本1本に均一で微細な凹凸が形成されているが、アルカリ加水分解による減量加工では、凹凸が均一に形成されていない。
前記繊維表面を金属で被覆する方法としては、蒸着法、スパッタリング法、無電解めっき法、電気めっき法など従来公知の方法により行うことができる。なかでも、形成される金属被膜の均一性、および生産性を考慮すると、無電解めっき法、あるいは、無電解めっき法と電気めっき法の併用が好ましい。
また、金属の定着を確実にするために、ウェットブラスト処理前に、繊維の表面に付着している糊剤、油剤、ゴミなどの不純物を、精練処理により完全に除去しておくことが好ましい。精練処理は従来公知の方法を採用することができ、特に限定されない。
本発明で金属層に用いられる金属としては、金、銀、銅、亜鉛、ニッケル、およびそれらの合金などを挙げることができるが、導電性および製造コストを考慮すると、銅、ニッケルが好ましい。これらの金属によって形成される被膜は1層あるいは2層であることが好ましい。3層以上になると金属被膜の厚みが大きくなり、布帛の風合いが硬くなるばかりか、製造コストも高くなるなど好ましくない。金属被膜を2層に積層する場合は、同種の金属を2層に積層してもよく、また、異なる金属を積層してもよい。これらは、求められる電磁波シールド性や耐久性を考慮して適宜に設定すればよい。
またその金属の被覆量は、5〜80g/m2であることが好ましく、さらには10〜50g/m2が好ましい。金属被膜が5g/m2より少ないと十分な導電性が得られず、また80g/m2を超えると金属被覆布帛の風合が粗硬になる虞がある。
また、このようにして得られた金属被覆布帛は、温度80℃の環境下に1000時間放置した前後の表面抵抗値変化率、および、温度60℃、湿度90%の環境下に1000時間放置した前後の表面抵抗値変化率が、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。前記条件における表面抵抗値変化率が20%をこえると、十分な電磁波シールド性が得られない傾向にある。
さらに、前記金属被覆布帛について、曲率半径3mmの冶具を有するMIT屈曲試験機を用いた荷重1kg、1万回の屈曲試験前後の表面抵抗値変化が、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。前記条件における表面抵抗値変化率が20%をこえると、十分な電磁波シールド性が得られない傾向にある。
前記屈曲試験は、JIS P8115で定められる試験方法において、JISで定められる曲率半径(0.38mm)を3mmに変更してなるものである。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
(1)表面導通性
三菱化学株式会社製のLoresta−EP MCP−T360 ESPタイプの抵抗値測定器を用い、金属被覆布帛表面の抵抗値を測定した。
三菱化学株式会社製のLoresta−EP MCP−T360 ESPタイプの抵抗値測定器を用い、金属被覆布帛表面の抵抗値を測定した。
(2)金属被膜密着性
JIS−H−3430に準じて評価した。すなわち、試料上に粘着テープ(日東電工株式会社製 No.3305)を所定の長さに切って貼付する。ついで、粘着テープの上から重さ2kg、ロール幅25.4mmのローラーを転がして10往復したのち、粘着テープを剥がし、目視で金属被膜の剥がれ状態を判定した。
○ 金属被膜の剥がれがない。
△ 金属被膜の剥がれが少しある。
× 金属被膜の剥がれが多い。
JIS−H−3430に準じて評価した。すなわち、試料上に粘着テープ(日東電工株式会社製 No.3305)を所定の長さに切って貼付する。ついで、粘着テープの上から重さ2kg、ロール幅25.4mmのローラーを転がして10往復したのち、粘着テープを剥がし、目視で金属被膜の剥がれ状態を判定した。
○ 金属被膜の剥がれがない。
△ 金属被膜の剥がれが少しある。
× 金属被膜の剥がれが多い。
(3)環境耐久性
(3−1)乾熱劣化
120mm×120のmmサイズにカットしたサンプルを、80℃の乾燥機中に1000時間投入放置した。1000時間後サンプルを取り出し、三菱化学株式会社製のLoresta−EP MCP−T360 ESPタイプの抵抗値測定器を用い、金属被膜表面の抵抗値を測定した。そして、次式に基づいて試験前後における抵抗値の変化率を算出し評価した。
(3−1)乾熱劣化
120mm×120のmmサイズにカットしたサンプルを、80℃の乾燥機中に1000時間投入放置した。1000時間後サンプルを取り出し、三菱化学株式会社製のLoresta−EP MCP−T360 ESPタイプの抵抗値測定器を用い、金属被膜表面の抵抗値を測定した。そして、次式に基づいて試験前後における抵抗値の変化率を算出し評価した。
(3−2)湿熱劣化
タバイ・エスペック社製恒温恒湿器PR3KPHを60℃、90%に設定し、120mm×120mmのサイズにカットしたサンプルを、1000時間投入放置した。1000時間後サンプルを取り出し、三菱化学株式会社製のLoresta−EP MCP−T360 ESPタイプの抵抗値測定器を用い、金属被膜表面の抵抗値を測定した。そして、次式に基づいて試験前後における抵抗値の変化率を算出し評価した。
タバイ・エスペック社製恒温恒湿器PR3KPHを60℃、90%に設定し、120mm×120mmのサイズにカットしたサンプルを、1000時間投入放置した。1000時間後サンプルを取り出し、三菱化学株式会社製のLoresta−EP MCP−T360 ESPタイプの抵抗値測定器を用い、金属被膜表面の抵抗値を測定した。そして、次式に基づいて試験前後における抵抗値の変化率を算出し評価した。
(4)屈曲耐久性
サンプルを幅15mm、長さ100mmにカットし、東洋精機株式会社製MIT屈曲試験機を用い、曲率半径3mmの冶具にサンプルをセットし、荷重1kgで1万回屈曲試験を行った。試験前後の抵抗値を測定し、次式に基づいて試験前後における抵抗値の変化率を算出し評価した。
サンプルを幅15mm、長さ100mmにカットし、東洋精機株式会社製MIT屈曲試験機を用い、曲率半径3mmの冶具にサンプルをセットし、荷重1kgで1万回屈曲試験を行った。試験前後の抵抗値を測定し、次式に基づいて試験前後における抵抗値の変化率を算出し評価した。
なお、抵抗値の測定は次のように行った。試料接触部分の電極のサイズが10mm×100mmのクリップで、サンプルの両端を電極間100mmになるように挟み、日置電機株式会社製ミリオームハイテスタ3540の抵抗値測定器を用いて、金属被覆布帛の抵抗値を測定した。
環境耐久性評価と屈曲耐久性評価とでは、表面抵抗値の測定方法が異なる。環境耐久性試験では、生地の劣化はサンプル全体に進行するため、表面抵抗値の測定は4端子法が適用できるが、屈曲耐久性試験では、生地への負荷が1箇所に集中してかかるため、4端子法による抵抗値測定は困難である。そのため、サンプルの両端をクリップで挟み、サンプル全体の表面抵抗値を測定している。
(5)引張強度
JIS L1096 A法に準じて測定した。
JIS L1096 A法に準じて測定した。
(6)引裂強度
JIS L1096 A1法に準じて測定した。
JIS L1096 A1法に準じて測定した。
[実施例1]
(表面処理)
ポリエステル系繊維織物(経糸56dtex/18f、緯糸83dtex/36f)を精練、ヒートセットした。ついで、中位径20μmのアルミナ製研磨材と水とを含有するスラリー(固形分濃度20重量%)使用し、マコー株式会社製、PFE処理装置により、エアー圧力0.30MPaでウェットブラスト処理を行った。処理された織物の表面を電子顕微鏡を用いて観察したところ、それを構成する繊維の単糸1本1本に均一で微細な凹凸が形成されていた。
(表面処理)
ポリエステル系繊維織物(経糸56dtex/18f、緯糸83dtex/36f)を精練、ヒートセットした。ついで、中位径20μmのアルミナ製研磨材と水とを含有するスラリー(固形分濃度20重量%)使用し、マコー株式会社製、PFE処理装置により、エアー圧力0.30MPaでウェットブラスト処理を行った。処理された織物の表面を電子顕微鏡を用いて観察したところ、それを構成する繊維の単糸1本1本に均一で微細な凹凸が形成されていた。
(金属被膜の形成)
ウェットブラスト処理した布帛を、MK140(室町テクノス社製 2−アミノタール29.0%、ポリイミダゾール4級塩水溶液10.0%、ポリオキシエチレンレニルフェニルエーテル7.0%を含むカチオン性化合物および界面活性剤の混合液)を含む2.5%水溶液に70℃で2分間浸漬し、十分水洗した。次に、塩化パラジウム0.3g/L、塩化第一錫30g/L、36%塩酸300ml/Lを含む40℃の水溶液に2分間浸漬し水洗した。続いて、酸濃度0.1N、30℃のホウ沸化水素酸に5分間浸漬後水洗した。次に、硫酸銅7.5g/L、37%ホルマリン30ml/L、ロッシェル塩85g/Lを含む30℃の無電解銅メッキ液に10分間浸漬後水洗した。続いて、スルファミン酸ニッケル300g/L、ホウ酸30g/L、塩化ニッケル15g/Lを含む、pH3.7、35℃の電気ニッケルメッキ液に5分間、電流密度5A/dm2で浸漬しニッケルを積層させた後水洗した。その結果、銅が20g/m2、ニッケルが3g/m2析出した金属被覆布帛を得た。
ウェットブラスト処理した布帛を、MK140(室町テクノス社製 2−アミノタール29.0%、ポリイミダゾール4級塩水溶液10.0%、ポリオキシエチレンレニルフェニルエーテル7.0%を含むカチオン性化合物および界面活性剤の混合液)を含む2.5%水溶液に70℃で2分間浸漬し、十分水洗した。次に、塩化パラジウム0.3g/L、塩化第一錫30g/L、36%塩酸300ml/Lを含む40℃の水溶液に2分間浸漬し水洗した。続いて、酸濃度0.1N、30℃のホウ沸化水素酸に5分間浸漬後水洗した。次に、硫酸銅7.5g/L、37%ホルマリン30ml/L、ロッシェル塩85g/Lを含む30℃の無電解銅メッキ液に10分間浸漬後水洗した。続いて、スルファミン酸ニッケル300g/L、ホウ酸30g/L、塩化ニッケル15g/Lを含む、pH3.7、35℃の電気ニッケルメッキ液に5分間、電流密度5A/dm2で浸漬しニッケルを積層させた後水洗した。その結果、銅が20g/m2、ニッケルが3g/m2析出した金属被覆布帛を得た。
[実施例2]
(表面処理)
ポリエステル系繊維織物(経糸56dtex/18f、緯糸83dtex/36f)を精練、ヒートセットした。ついで、中位径30μm のアルミナ製研磨材と水とを含有するスラリー(固形分濃度20重量%)使用し、マコー株式会社製、PFE処理装置により、エアー圧力0.20MPaでウェットブラスト処理を行った。処理された織物の表面を電子顕微鏡を用いて観察したところ、それを構成する繊維の単糸1本1本に均一で微細な凹凸が形成されていた。
(表面処理)
ポリエステル系繊維織物(経糸56dtex/18f、緯糸83dtex/36f)を精練、ヒートセットした。ついで、中位径30μm のアルミナ製研磨材と水とを含有するスラリー(固形分濃度20重量%)使用し、マコー株式会社製、PFE処理装置により、エアー圧力0.20MPaでウェットブラスト処理を行った。処理された織物の表面を電子顕微鏡を用いて観察したところ、それを構成する繊維の単糸1本1本に均一で微細な凹凸が形成されていた。
(金属被膜の形成)
ウェットブラスト処理した布帛を、MK140(室町テクノス社製)を含む2.5%水溶液に70℃で2分間浸漬し、十分水洗した。次に、塩化パラジウム0.3g/L、塩化第一錫30g/L、36%塩酸300ml/Lを含む40℃の水溶液に2分間浸漬し水洗した。続いて、酸濃度0.1N、30℃のホウ沸化水素酸に5分間浸漬後水洗した。次に、硫酸銅7.5g/L、37%ホルマリン30ml/L、ロッシェル塩85g/Lを含む30℃の無電解銅メッキ液に10分間浸漬後水洗した。続いて、スルファミン酸ニッケル300g/L、ホウ酸30g/L、塩化ニッケル15g/Lを含む、pH3.7、35℃の電気ニッケルメッキ液に5分間、電流密度5A/dm2で浸漬しニッケルを積層させた後水洗した。その結果、銅が20g/m2、ニッケルが3g/m2析出した金属被覆布帛を得た。
ウェットブラスト処理した布帛を、MK140(室町テクノス社製)を含む2.5%水溶液に70℃で2分間浸漬し、十分水洗した。次に、塩化パラジウム0.3g/L、塩化第一錫30g/L、36%塩酸300ml/Lを含む40℃の水溶液に2分間浸漬し水洗した。続いて、酸濃度0.1N、30℃のホウ沸化水素酸に5分間浸漬後水洗した。次に、硫酸銅7.5g/L、37%ホルマリン30ml/L、ロッシェル塩85g/Lを含む30℃の無電解銅メッキ液に10分間浸漬後水洗した。続いて、スルファミン酸ニッケル300g/L、ホウ酸30g/L、塩化ニッケル15g/Lを含む、pH3.7、35℃の電気ニッケルメッキ液に5分間、電流密度5A/dm2で浸漬しニッケルを積層させた後水洗した。その結果、銅が20g/m2、ニッケルが3g/m2析出した金属被覆布帛を得た。
[比較例1]
(表面処理)
ポリエステル系繊維織物(経糸56dtex/18f、緯糸83dtex/36f)を精練、ヒートセットした。ついで、中位径320μm のアルミナ製研磨材と水とを含有するスラリー(固形分濃度20重量%)使用し、マコー株式会社製、PFE処理装置により、エアー圧力0.20MPaでウェットブラスト処理を行った。処理された織物の表面を電子顕微鏡を用いて観察したところ、それを構成する繊維の単糸1本1本に比較的大きく深い凹凸が形成されていた。
(表面処理)
ポリエステル系繊維織物(経糸56dtex/18f、緯糸83dtex/36f)を精練、ヒートセットした。ついで、中位径320μm のアルミナ製研磨材と水とを含有するスラリー(固形分濃度20重量%)使用し、マコー株式会社製、PFE処理装置により、エアー圧力0.20MPaでウェットブラスト処理を行った。処理された織物の表面を電子顕微鏡を用いて観察したところ、それを構成する繊維の単糸1本1本に比較的大きく深い凹凸が形成されていた。
(金属被膜の形成)
ウェットブラスト処理した布帛を、MK140(室町テクノス社製)を含む2.5%水溶液に70℃で2分間浸漬し、十分水洗した。次に、塩化パラジウム0.3g/L、塩化第一錫30g/L、36%塩酸300ml/Lを含む40℃の水溶液に2分間浸漬し水洗した。続いて、酸濃度0.1N、30℃のホウ沸化水素酸に5分間浸漬後水洗した。次に、硫酸銅7.5g/L、37%ホルマリン30ml/L、ロッシェル塩85g/Lを含む30℃の無電解銅メッキ液に10分間浸漬後水洗した。続いて、スルファミン酸ニッケル300g/L、ホウ酸30g/L、塩化ニッケル15g/Lを含む、pH3.7、35℃の電気ニッケルメッキ液に5分間、電流密度5A/dm2で浸漬しニッケルを積層させた後水洗した。その結果、銅が20g/m2、ニッケルが3g/m2析出した金属被覆布帛を得た。
ウェットブラスト処理した布帛を、MK140(室町テクノス社製)を含む2.5%水溶液に70℃で2分間浸漬し、十分水洗した。次に、塩化パラジウム0.3g/L、塩化第一錫30g/L、36%塩酸300ml/Lを含む40℃の水溶液に2分間浸漬し水洗した。続いて、酸濃度0.1N、30℃のホウ沸化水素酸に5分間浸漬後水洗した。次に、硫酸銅7.5g/L、37%ホルマリン30ml/L、ロッシェル塩85g/Lを含む30℃の無電解銅メッキ液に10分間浸漬後水洗した。続いて、スルファミン酸ニッケル300g/L、ホウ酸30g/L、塩化ニッケル15g/Lを含む、pH3.7、35℃の電気ニッケルメッキ液に5分間、電流密度5A/dm2で浸漬しニッケルを積層させた後水洗した。その結果、銅が20g/m2、ニッケルが3g/m2析出した金属被覆布帛を得た。
[比較例2]
(表面処理)
ポリエステル系繊維織物(経糸56dtex/18f、緯糸83dtex/36f)を精練、ヒートセットした。ついで、アルカリ加水分解により15%の減量処理を行った。処理された織物の表面を電子顕微鏡を用いて観察したところ、凹凸の形成が不均一であり、織物を構成する繊維の単糸表面の一部にのみ、凹凸が形成されていた。
(表面処理)
ポリエステル系繊維織物(経糸56dtex/18f、緯糸83dtex/36f)を精練、ヒートセットした。ついで、アルカリ加水分解により15%の減量処理を行った。処理された織物の表面を電子顕微鏡を用いて観察したところ、凹凸の形成が不均一であり、織物を構成する繊維の単糸表面の一部にのみ、凹凸が形成されていた。
(金属被膜の形成)
減量処理した布帛を、MK140(室町テクノス社製)を含む2.5%水溶液に70℃で2分間浸漬し、十分水洗した。次に、塩化パラジウム0.3g/L、塩化第一錫30g/L、36%塩酸300ml/Lを含む40℃の水溶液に2分間浸漬し水洗した。続いて、酸濃度0.1N、30℃のホウ沸化水素酸に5分間浸漬後水洗した。次に、硫酸銅7.5g/L、37%ホルマリン30ml/L、ロッシェル塩85g/Lを含む30℃の無電解銅メッキ液に10分間浸漬後水洗した。続いて、スルファミン酸ニッケル300g/L、ホウ酸30g/L、塩化ニッケル15g/Lを含む、pH3.7、35℃の電気ニッケルメッキ液に5分間、電流密度5A/dm2で浸漬しニッケルを積層させた後水洗した。その結果、銅が20g/m2、ニッケルが3g/m2析出した金属被覆布帛を得た。
減量処理した布帛を、MK140(室町テクノス社製)を含む2.5%水溶液に70℃で2分間浸漬し、十分水洗した。次に、塩化パラジウム0.3g/L、塩化第一錫30g/L、36%塩酸300ml/Lを含む40℃の水溶液に2分間浸漬し水洗した。続いて、酸濃度0.1N、30℃のホウ沸化水素酸に5分間浸漬後水洗した。次に、硫酸銅7.5g/L、37%ホルマリン30ml/L、ロッシェル塩85g/Lを含む30℃の無電解銅メッキ液に10分間浸漬後水洗した。続いて、スルファミン酸ニッケル300g/L、ホウ酸30g/L、塩化ニッケル15g/Lを含む、pH3.7、35℃の電気ニッケルメッキ液に5分間、電流密度5A/dm2で浸漬しニッケルを積層させた後水洗した。その結果、銅が20g/m2、ニッケルが3g/m2析出した金属被覆布帛を得た。
前記実施例および比較例について、評価結果を表1に示す。
実施例1および実施例2に関しては、布帛の強度を損なうことなく、また、初期の金属密着性も良好であった。さらに、環境耐久性試験後および屈曲試験後の表面抵抗値の変化率も小さく、環境耐久性および耐屈曲耐久性に優れた金属被覆布帛を得ることができた。
しかし、比較例1は、初期の金属密着性および環境耐久性は十分であるものの、布帛が脆化し、布帛強度が低下し、また耐屈曲耐久性も著しく低下していた。これは、使用する研磨材の中位径が大きすぎたためであると考えられる。また、比較例2における従来のめっき技術を用いて得られた金属被覆布帛では、繊維と金属層との初期の密着性が十分とは言えず、また、環境耐久試験における表面抵抗値の変化、および、屈曲試験後の表面抵抗値の変化が非常に大きく、環境耐久性および耐屈曲耐久性は低いものであった。
Claims (6)
- 布帛を構成する繊維表面に、JIS Z 8901で定められる中位径4〜150μmの研磨材を含有するスラリーをエアー圧0.06〜0.4MPaで噴射する工程、および、該繊維表面に金属層を形成する工程を含む金属被覆布帛の製造方法。
- 前記研磨材の中位径が、6〜20μmである請求項1記載の金属被覆布帛の製造方法。
- 前記エアー圧が、0.12〜0.24MPaである請求項1または2記載の金属被覆布帛の製造方法。
- 請求項1、2または3記載の製造方法により得られる金属被覆布帛。
- 温度80℃の環境下に1000時間放置した前後の表面抵抗値変化率、および、温度60℃、湿度90%の環境下に1000時間放置した前後の表面抵抗値変化率が、20%以下である請求項4記載の金属被覆布帛。
- 曲率半径3mmの冶具を有するMIT屈曲試験機を用いた荷重1kg、1万回の屈曲試験前後の表面抵抗値変化が、20%以下である請求項4または5記載の金属被覆布帛。
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---|---|---|---|
JP2007108625A JP2008266814A (ja) | 2007-04-17 | 2007-04-17 | 金属被覆布帛およびその製造方法 |
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---|---|---|---|---|
JP2011151542A (ja) * | 2010-01-20 | 2011-08-04 | Teijin Fibers Ltd | フレキシブル通信用シート構造体 |
CN110514230A (zh) * | 2019-08-06 | 2019-11-29 | 东南大学 | 拉伸弯曲柔性传感器及其制备方法 |
DE112019000033T5 (de) | 2018-02-28 | 2019-12-24 | Sumitomo Riko Company Limited | Sensorelektrode und Flachsensor, der diese verwendet |
JP2020113471A (ja) * | 2019-01-15 | 2020-07-27 | 日立金属株式会社 | 導電性繊維、ケーブル及び導電性繊維の製造方法 |
-
2007
- 2007-04-17 JP JP2007108625A patent/JP2008266814A/ja active Pending
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