JP6095159B2 - 導電性セルロース系繊維材料の製造方法 - Google Patents

導電性セルロース系繊維材料の製造方法 Download PDF

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本発明は、セルロース系繊維材料に対して導電性を付与する導電性セルロース系繊維材料の製造方法に関する。
従来より、繊維に導電性を付与する方法として、アセチレンカーボンブラック等の導電性フィラーを繊維に練りこんで導電性繊維を製造する方法が提案されている。こうした導電性繊維の製造方法は、コストが比較的安く、しかも量産化にも適しているため、多くの産業分野で広く使用されている。例えば、静電複写機に用いられる帯電用、除電用ブラシとして、このような導電性繊維が広く実用化されている。
従来のブラシ式帯電装置のブラシに用いる原糸としては、導電性カーボンブラックを再生セルロースに均一分散した導電性再生セルロース系繊維(例えば、特許文献1及び2参照)が使用されている。こうした導電性再生セルロース系繊維は、導電性カーボン粒子の連鎖による電気導通性能に限界があり、帯電防止性能レベルの102Ω・cm以下の体積固有抵抗に至らない基本的な問題点があった。さらに、添加したカーボン微粒子はその粒子径をいかに小さくしても2次凝集を防ぐことは極めて困難であったので、繊維製糸性が悪く、凝集状態のカーボンが再生セルロースの環境による性能変化に対して敏感に影響を受ける欠点を有していた。また、紡糸練り込みの場合、カーボンブラックを高濃度に均一分散させる必要があるが、数μm〜数十μmのカーボン等の導電性フィラー紡糸原液中でフィラーの凝集や沈降のため均一な分散は実質的に難しい。そのため、繊維が脆く、ブラシとしての機械的物性に劣ることなどの問題点があった。また、マトリックス高分子がナイロンやポリエステル、オレフィン等の合成高分子の熱可塑性樹脂材料の場合、複写機等では定着時の加熱によって内部の温度が高温になることから、これら用途に使用される導電性繊維には長時間にわたって熱を受けても変形しないことが要求されている。そのため、耐熱性を有するセルロースは重要な高分子材料であった。
また、近年、携帯電話や電子機器の飛躍的な普及に伴い、これらの機器から漏洩する電磁波の人体への影響や他の電子機器への誤動作等の問題が取り沙汰されている。こうした電磁波を遮蔽する遮蔽材として導電性布帛が用いられている。遮蔽材として用いる場合には、より高い導電性能が必要であり、体積固有抵抗が102Ω・cm以下とはならない導電性フィラーの練り込み繊維等は電磁波の遮蔽性能を発現させることはできない。
軽量で柔軟性のある合成繊維からなる布帛表面に金属被膜を形成させて導電性を付与することが広く知られており、真空蒸着法、スパッタリング法、無電解メッキ法等によって金属被膜を形成することが可能である。しかしながら、このような方法で作られた金属被膜は、耐摩耗性や耐候性、長期使用に伴う化学的変化による物性劣化といった問題があり、こうした問題に対する一層の改善が求められている。
アクリル系繊維の導電性付与方法として、塩化第二銅などの銅化合物を繊維表面に吸着させた後、これを硫化物で還元処理することにより、繊維表面に導電性を示す硫化銅薄膜層を形成させる技術が知られている(例えば特許文献3及び4参照)。こうした導電性付与方法では、繊維の表面に存在するシアノ基やメルカプトン基の銅イオン捕捉基を介して硫化銅が繊維に対して5〜15質量%程度結合されており、繊維表面に導電性を有する薄膜層が形成されることで10-1Ω・cm以下の高い導電性能を示すようになる。しかしながら、得られた導電性繊維は100nm程度の極めて薄い表面の硫化銅層のみで、メッキ層や蒸着膜と同様に、耐摩耗性や耐候性、長期使用に伴う摩耗や化学的変化に対する耐久性に問題があった。さらに、繊維の表面に存在するシアノ基やメルカプトン基等は一価の銅イオン捕捉能に優れているため、処理工程中において二価の銅塩をわざわざ一価の銅イオンに還元する必要性があり、その分コストが高くなる問題もある。以上のように、アクリル系繊維に対する従来の導電性付与方法は、コスト負担が大きく実用化を図る上で制約が大きいという課題がある。
上述のカーボンフィラー練り込み繊維は、技術的には中程度の導電性(102Ω・cm〜1010Ω・cm)のものしか得られず、化学メッキや金属メッキ繊維では高い導電性(10-2〜10-6Ω・cm)を有するものしか得られない。そのため、面状発熱体、ストリーマ(火花放電)の発生しない電磁波遮蔽材、センサー類といった製品に要求されている約102Ω・cm〜10-2Ω・cmの繊維材料を得ることは困難であった。
近年、CNT(カーボンナノチューブ)分散液をバインダー等に配合して糸条や布帛にコーティングする方法が提案されている。CNTは凝集力が非常に強く、高分子中に練り込み分散させることは、カーボン微粒子よりさらに困難であるため、分散液に配合する方法が採用されている(例えば、特許文献5参照)。性能的には、体積固有抵抗が1.0×10-2Ω・cm〜1.0×102Ω・cmとなる。こうした体積固有抵抗の範囲の繊維材料は、金属電線代替発熱体、ストリーマの発生しない帯電防止用導電性繊維材料、非鉄金属製導電性繊維による電磁波遮蔽材、またはスマートテキスタイル等の電気信号回路用導電繊維材料といった用途に好適である。しかしながら、CNTを使用する場合、CNT等のナノ材料を使用する場合の安全性が十分確立されておらず、実用化には至っていないのが現状である。その点、上述した硫化銅を用いる導電性付与方法は、CNTを用いる導電性付与方法に比べて安全性に対するリスクは小さい。
最近では,硫化銅ナノ微粒子を繊維中に微細に分散させ,導電性に優れたPVA(ポリビニルアルコール)系繊維を作製する方法も提案されている(例えば、特許文献6から8参照)。この方法によれば、体積固有抵抗が1.0×10-3〜1.0×108Ω・cmの値を示す導電性繊維を製造することが可能であるが、PVA系繊維内部で形成される硫化銅粒子は粒子径が認識できる形状であり、微粒子が析出できるのはPVAの重合度や結晶化度の低いものだけであるため、ほぼ形状の類似した微粒子しか形成することができなかった。そのため、結晶化度の低いPVA系繊維では、熱水中で溶解したり、縮んだりするといった問題がある。
特開2000−160427号公報 特開平9−49116号公報 特開昭57−21570号公報 特開昭59−108043号公報 特開2007−39623号公報 特開2005−264419号公報 特開2007−131977号公報 特開2007−119950号公報
本発明者らは、PVAより分子鎖間の水素結合力が強いセルロース系高分子材料を用い、繊維結晶構造が形成されたセルロース系高分子材料を原料とし、アルカリ膨潤下で硫化銅微粒子を析出形成することで、セルロース系高分子材料の結晶構造に基づいて、これらの微粒子が内部に不定形粒子として形成されるとともに繊維表面の外周部分には棒状微粒子が形成されることを知得した。
そこで、本発明は、上述した従来技術の課題に鑑み、セルロース系繊維材料に導電性を付与して耐久性を有する導電性セルロース系繊維材料を製造することのできる製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る導電性セルロース系繊維材料の製造方法は、アルカリ金属水酸化物を含む水溶液によりセルロース系繊維材料を膨潤率20質量%〜300質量%で膨潤させる膨潤工程と、銅イオンを含む化合物を濃度5g/リットル〜70g/リットルで溶解させた水溶液によりセルロース系繊維材料の外周部及び内部に銅イオンを含浸させる含浸工程と、硫化物イオンを含む化合物を濃度5g/リットル〜120g/リットルで溶解させた水溶液によりセルロース系繊維材料に含浸させた銅イオンを硫化還元させてセルロース系繊維材料の外周部に長さ200nm以下の棒状の硫化銅からなる微粒子及び内部に平均粒子径50nm以下の不定形の硫化銅からなる微粒子を生成させる硫化還元工程とを含む。さらに、前記膨潤工程は、前記含浸工程と並行して行われる。さらに、前記含浸工程は、水溶液に濃度0g/リットル〜70g/リットルのカルボン酸が含まれている。
本発明によれば、導電性が付与された耐熱性及び耐熱水性を有する導電性セルロース系繊維材料を得ることができ、繊維材料の体積固有抵抗値を容易に調整することが可能となる。
実施例1で得られた導電性セルロース系繊維材料の繊維表面をSEMで撮影した写真である。 実施例1で得られた導電性セルロース系繊維材料の繊維断面をTEMで撮影した写真である。 実施例4で得られた導電性セルロース系繊維材料の繊維表面をSEMで撮影した写真である。 実施例4で得られた導電性セルロース系繊維材料の繊維断面をTEMで撮影した写真である。 実施例1から実施例10で得られた酢酸銅及び硫化ナトリウムの濃度の組み合せを変化させた場合の導電性糸に関する体積固有抵抗値および酢酸銅(II)一水和物の濃度を変化させた場合の導電性糸に関する体積固有抵抗値を示すグラフである。 実施例12において、含浸処理及び硫化還元処理の回数並びに硫化ナトリウムの濃度の組み合せを変化させた場合の導電性糸に関する体積固有抵抗値を示すグラフである。 実施例13から実施例17で得られたクエン酸添加濃度と導電性布帛の体積固有抵抗との関係を示すグラフである。 実施例18において、通電時間(秒)と布帛の平均温度(℃)との関係を示すグラフである。
以下、本発明について具体的に説明する。本発明に用いるセルロース系繊維材料は、特に限定されるものではないが、得られる繊維材料の機械的特性や寸法安定性等を考慮すると、再生セルロース繊維材料、セルロースジアセテート繊維材料、セルローストリアセテート繊維材料が好適である。再生セルロース繊維材料の場合には、ビスコース・レーヨン法、銅アンモニア人絹法、NMMO(N−メチルモルホリンオキサイド)有機溶剤によるリヨセル法といった作製方法により得ることができる。
また、セルロース系繊維材料の形態は、後述する加工処理を行うことができる形態であればよく特に限定されないが、ステープルファイバー、ショートカットファイバーといった繊維の形態、長繊維糸や紡績糸といった糸の形態、紐状物、ロープといった長尺物の形態、紙、不織布、織物、編物といった布帛の形態が挙げられる。
繊維の断面形状に関しても特に制限はなく、円形、中空、あるいは星型等異型断面であってもかまわない。繊維の繊度についても特に限定されず、例えば0.1〜10000dtex、好ましくは1〜1000dtexの繊度の繊維を使用することができる。繊維の繊度はノズル径や延伸倍率により適宜調整すればよい。
一般に、セルロース系高分子は、その水酸基を介して銅などの金属イオンと強く配位結合することが知られている(例えば、Polymer、Vol37,No.14、3097、1996参照)。繊維中においてセルロース分子鎖及び銅イオンで形成された錯体ブロックは、その大きさが数オングストロームであることから、後述する硫化銅ナノ微粒子構成ユニットとなりえる。本発明では、まず銅イオンをセルロース系繊維材料の内部にまで浸透させ、セルロース系高分子の有する水酸基と配位させ、セルロース系高分子及び銅の配位結合を形成させる。こうした配位結合を形成するには、糸条や布帛の染色工程において浴溶媒で所定の膨潤状態にあるセルロース系繊維材料を、銅イオンを含有する化合物が溶解された浴中を通過させることにより、繊維材料の外周部から内部まで銅イオンを均一に浸透させ、配位させることができる。
次に、セルロース系繊維材料の外周部及び内部においてセルロース系高分子の有する水酸基と配位結合させた銅イオンを硫化還元処理することで、硫化銅ナノ微粒子を形成させることができる。すなわち、上述した銅イオンの含浸処理に引き続き、硫化還元能力を有する硫化物イオンを含む化合物が溶解された浴中を通過させることで、セルロース系高分子と銅イオンの配位を外すことにより、硫化銅微粒子を繊維内部にまで形成させることができる。そして、こうした硫化還元処理は、特別に高価な工程を設ける必要はなく、通常の染色工程でも処理可能である。
本発明で使用する銅イオンを含む化合物としては、可溶であるものであれば特に限定されないが、酢酸銅、硝酸銅、蟻酸銅、クエン酸銅、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、沃化第一銅、沃化第二銅などが用いられる。こうした銅イオンは一価でも二価でもよく、特に限定されるものではない。一価の銅イオンを含有する化合物を用いる場合は、その溶解性を向上させる目的で、塩酸、沃化カリウム、アンモニア等を併用してもかまわない。これらの中でも、溶液状態でセルロース系高分子と配位結合し易いものがより望ましく、その観点からは、銅イオンを含む化合物は、酢酸銅や硝酸銅などが好適である。
本発明では、アルカリの存在下で銅イオンが水酸化銅として析出することを阻害するために、カルボン酸を用いることが好ましい。カルボン酸としては、蟻酸、酢酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸といったものが挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、銅イオンと錯体を形成し、アルカリの存在下で銅イオンが水酸化銅として析出することを阻害するものがより望ましく、その観点からは、クエン酸が好適である。
セルロース系繊維材料の外周部及び内部において配位結合した銅イオンを硫化還元する硫化剤としては、硫化物イオンを放出し得る化合物が用いられる。こうした化合物としては、例えば、硫化ナトリウム、第二チオン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ硫酸ナトリウム、硫化水素、チオ尿素、チオアセトアミド等が挙げられる。これらの中でも、コスト、入手し易さ、低腐食性の観点から、硫化ナトリウムが好適である。
本発明で得られる導電性セルロース系繊維材料は、従来の導電性繊維とは異なり、繊維材料の外周部及び内部に硫化銅からなる微粒子を分散析出させて微粒子の粒子間距離を著しく小さくすることで、繊維材料に通電した場合の電流量を高めることができ導電性に優れた繊維材料である。
本発明では、導電性セルロース系繊維材料を得るために、乾燥した繊維材料又は延伸後の繊維材料に対して、アルカリ金属水酸化物を含む化合物の水溶液により膨潤処理を行う。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム等が挙げられ、価格の点から最も安価な水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。そして、銅イオンを含む化合物及びアルカリ金属水酸化物を溶解した浴中を通過させて銅イオンを含む化合物を繊維材料の外周部及び内部に含浸させる。なお、セルロース系繊維材料に対して予めアルカリ金属水酸化物により膨潤処理を行った後銅イオンを含む化合物により含浸処理を行うようにしてもよい。
セルロース系繊維材料の外周部及び内部に銅イオンを含む化合物を均一に含浸させ、銅イオンをセルロース系高分子の水酸基と配位結合させるためには、繊維材料を浴溶媒により膨潤させることが必要である。アルカリ金属水酸化物として水酸化ナトリウムを用いる場合には、浴溶媒中の水酸化ナトリウムを3重量%〜10重量%添加することが好ましい。水酸化ナトリウムの添加量が3重量%より少ない場合には、硫化銅の析出量が少なく、所望の導電性能が得られない、といった問題があり、10重量%より多い場合には、セルロースの重合度の低下が生じ、導電性繊維の力学強度が低下する、といった問題がある。そして、水酸化ナトリウムの添加量を多くすることで、得られる導電性セルロース系繊維材料の体積固有抵抗を低下させることができる。
そして、アルカリ金属水酸化物を含む浴溶媒によりセルロース系繊維材料を膨潤させる場合、繊維材料の膨潤率は20質量%以上であることが好ましい。膨潤率が20質量%未満の場合、銅イオンがセルロース系高分子の水酸基と十分な配位結合を形成できず、繊維材料の内部まで硫化銅からなる微粒子を生成させることが難しくなる。一方、膨潤率が大きくなりすぎた場合、浴中へのセルロース系高分子の溶出などが起こり、工程通過性の面で好ましくない。以上のことから、銅イオンを含む化合物が溶解された浴中での膨潤率は、20質量%〜300質量%であることが好ましく、50質量%〜250質量%であることがより好ましい。なお、膨潤率の調整を行うために、繊維材料をまずアルカリ金属水酸化物を含む浴中に浸漬し、その後銅イオンを含む化合物が溶解した浴中に浸漬することもできる。
セルロース系繊維材料に対して、上述したように、硫化銅の導入量及び繊維材料の配向度などを調整することで、セルロース系繊維材料の体積固有抵抗値を調整することができる。銅イオンを含む化合物の浴中への溶解量は、要求される導電性能に応じて適宜設定すればよいが、1g/リットル〜100g/リットルの範囲であることが好ましく、より好ましくは5g/リットル〜70g/リットルである。添加量が1g/リットル未満の場合には、所望の体積固有抵抗値を得られず、また100g/リットルより大きい場合は、処理に使用する加工ローラ等への化合物の付着といった工程上の不都合が生じるので好ましくない。
セルロース系繊維材料が所望の膨潤状態にある場合、銅イオンが溶解された浴中にセルロース系繊維材料を通過する際に、銅イオンを含む化合物の繊維材料への含浸が生じるので、浴中での繊維材料の滞留時間については特に制限はないが、繊維材料の内部にまで銅イオンを均一に含浸させ、セルロース系高分子及び銅イオンの配位結合を十分に生成させるためには、浴中での繊維材料の滞留時間は3秒以上、好ましくは30秒以上に設定するとよい。
セルロース系繊維材料の外周部及び内部において配位結合している銅イオンを硫化還元処理するために、硫化物イオンを含む化合物を溶解した浴中に繊維材料を通過させる必要がある。その場合、硫化物イオンを含む化合物の浴中への添加量は、銅イオンの導入量によって必要に応じて適宜設定すればよいが、1g/リットル〜200g/リットルの範囲であることが好ましい。添加量が1g/リットル未満の場合、繊維材料内部の銅イオンまで還元処理が進まない可能性があるので好ましくない。また、200g/リットルより大きい場合は、セルロース系繊維材料の内部に含まれる銅イオンを還元処理するのに十分な量ではあるが、化合物の回収に手間がかかり作業時の臭気が強くなるといった工程上の点で不都合が生じるためあまり好ましくない。セルロース系繊維材料に含浸された銅イオンを硫化する反応は、特に硫化還元能の大きい化合物を用いた場合は瞬時に起こることから、浴中での繊維材料の滞留時間については特に制限はないが、繊維材料の内部にまで十分硫化還元処理を施すためには、浴中での繊維材料の滞留時間は0.1秒以上に設定することが好ましい。
セルロース系繊維材料の導電性能を高めるためには、銅イオンを繊維材料の外周部及び内部に含浸させる工程と、含浸した銅イオンを硫化還元処理する工程を繰り返し行い、繊維材料中の硫化銅含有量を高めることが効果的である。一旦セルロース系高分子に配位結合した銅イオンを硫化還元処理することで硫化銅からなる微粒子が生成するが、その際に、銅イオンと配位結合していた水酸基は回復し、再度銅イオンを配位可能な水酸基が存在することになる。具体的には、上述した含浸工程及び硫化還元処理工程を少なくとも2回以上繰り返すことで、効果的に繊維材料内部に硫化銅からなる微粒子を生成させ、導電性能を高めることができる。さらに、繊維材料の配向度が高いものほど、すなわち繊維材料の総延伸倍率が高いものほど、導電性能が向上するようになる。こうした配向度及び導電性能の関係については、その理由が現段階では明らかではないが、繊維材料の配向度が高いほど、硫化銅からなる微粒子が繊維軸方向に沿って生成し、微粒子間の距離が一層小さくなるためと考えられる。ここで、繊維材料の配向度は、銅イオンを含浸させた後の配向度を指す。繊維材料中に硫化銅からなる微粒子を生成した後に延伸を行うと、導電性能が低下する傾向があるので好ましくない。これは、延伸により繊維材料中の微粒子の粒子間距離が増加するためであると考えられる。
以上説明した含浸工程及び硫化還元工程により製造された導電性セルロース系繊維材料は、セルロース系繊維材料の内部に平均粒子径50nm以下の硫化銅からなる不定形微粒子が生成されるとともに繊維材料の外周部に長さ200nm以下の硫化銅からなる棒状微粒子が生成される。すなわち、導電性セルロース系繊維材料は、単に硫化銅からなる微粒子が存在するだけでなく、繊維材料の外周部に長さ200nm以下の硫化銅からなる棒状微粒子が分散析出しており、内部の不定形微粒子と外周部の棒状微粒子が相互に連なって電圧印加時に電気伝導作用を生じるようになる。そして、硫化銅からなる微粒子全体の含有量をセルロース系繊維材料の量に対して0.5質量%以上とすることで、セルロース系繊維材料に導電性を付与することができる。
得られた導電性セルロース系繊維材料の体積固有抵抗値は、上述したように、硫化銅の導入量によって容易に調整することが可能で、1.0×10-2Ω・cm〜1.0×102Ω・cmに設定することができる。
導電性セルロース系繊維材料は、硫化銅からなる微粒子をセルロース系繊維材料に対して3質量%以上を含有することが好ましく、より好ましくは5質量%以上含有するものである。硫化銅からなる微粒子の含有量がセルロース系繊維材料に対して1質量%より少ないと、所望の導電性能が得られない。一方、硫化銅からなる微粒子の含有量が多くなりすぎると、導電性セルロース系繊維材料の機械的性質や耐摩耗性が不十分になることから、硫化銅からなる微粒子の含有量はセルロース系繊維材料に対して50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
硫化銅からなる微粒子は、繊維材料内部のセルロース系高分子中に平均粒子径50nm以下の不定形粒子が5個/(μm)2以上の密度で微細に分散析出するとともに繊維材料の外周部に長さ200nm以下の棒状微粒子が5個/(μm)2以上の密度で分散析出しており、不定形微粒子及び棒状微粒子が相互に連なっている。このように硫化銅からなる微粒子が分布していることにより、繊維材料中での微粒子の粒子間距離を著しく小さくすることが可能となる。例えば、同じ質量%の含有量において、粒子径が百分の一になると、粒子間距離は一万分の一にまで小さくなることが知られている。また、このような場合、粒子間の相互作用が非常に強く働き、その間に挟まれたポリマー分子は、あたかも粒子と同じような機能を示すことも知られている(例えば、中條 澄著、ナノコンポジットの世界、p22、工業調査会、2000年 参照)。したがって、製造された導電性セルロース繊維材料では、こうしたナノサイズ効果により、トンネル電流がより流れやすくなり、硫化銅からなる微粒子の量が少なくても優れた導電性能を付与することができる。
得られた導電性セルロース系繊維材料は、導電性及び柔軟性に優れているので、面状発熱体として有利に用いることができる。例えば、導電性セルロース系繊維材料を50重量%以上、好ましくは、80重量%以上、特に、90重量%以上含む布帛を用いることで、高導電性を示すセルロース系繊維製品を得ることができる。この場合、導電性セルロース系繊維材料に併用することができる繊維材料として特に限定されないが、硫化銅からなる微粒子を含有しないセルロース系繊維材料、ポリエステル系繊維材料、ポリアミド系繊維材料を挙げることができる。
本発明では、長繊維糸や紡績糸、紙、不織布、織物、編物等の布帛といった様々な形態のセルロース系繊維材料に導電性を付与することが可能である。そして、得られた導電性セルロース系繊維材料は、力学的物性、耐熱性、柔軟性、導電性に優れており、産業資材用、衣料用、医療用等あらゆる用途に好適に使用できる。例えば、面状発熱布帛、帯電材、除電材、ブラシ、センサー、電磁波シールド材、電子回路用非金属電線、電子材料をはじめとして多くの用途に極めて有用である。
以上説明したように、本発明者らは、アルカリ金属水酸化物を含む水溶液中でセルロース系繊維材料を膨潤させ、銅イオンを含む化合物を溶解させた水溶液中でセルロース系繊維材料の外周部及び内部に銅イオンを含浸させ、含浸させた銅イオンを硫化物イオンを含む化合物を溶解させた水溶液中で硫化還元処理することにより、繊維材料内部に平均粒子径50nm以下の硫化銅からなる不定形微粒子及び繊維材料外周部に長さ200nm以下の硫化銅からなる棒状微粒子が生成することを見い出し、優れた導電性を有する導電性セルロース系繊維材料を安価に製造できることを知得した。こうした処理工程は、特別に高価な設備を必要とせず、セルロース系繊維材料の繊維製造工程や染色工程において実施することができる。なお、セルロース系繊維材料の膨潤処理、含浸処理及び硫化還元処理は、セルロース系繊維材料に対して処理液を塗布、噴霧、浸漬といった付与方法により処理することができる。塗布又は噴霧といった付与方法を使用することで、部分的に付与量を変化させれば、生成する硫化銅の量を部分的に変化させることができる。そのため、例えば面状発熱体の場合に、発熱面の抵抗分布を変化させて所望の発熱分布となるように設定することが可能となる。
また、浴中にセルロース系繊維材料を浸漬する場合には、アルカリ膨潤状態のセルロース系繊維材料を、銅イオンを含む化合物5g/リットル〜70g/リットル及びカルボン酸0g/リットル〜70g/リットルの濃度で溶解した浴中に通して繊維材料内部にまで銅イオンを均一に含浸させた後、銅イオンが含浸したセルロース系繊維材料を、硫化物イオンを含む化合物5g/リットル〜120g/リットルの濃度で溶解した浴中に通して銅イオンを硫化還元させることで、上述した硫化銅からなる不定形微粒子及び棒状微粒子を生成する。
また、得られた導電性セルロース系繊維材料は、セルロース系繊維材料と、セルロース系繊維材料の内部においてセルロース系高分子中に微細に分散析出した平均粒子径50nm以下の硫化銅からなる不定形微粒子と、セルロース系繊維材料の外周部に長さ200nm以下の硫化銅からなる棒状微粒子とからなり、不定形粒子及び棒状粒子が相互に連なって電圧印加時に電気伝導作用を生じるようになる。硫化銅からなる微粒子粒子全体の含有量は、セルロース系繊維材料に対して0.5質量%以上が好ましく、0.5質量%〜50質量%であることがより好ましい。導電性セルロース系繊維材料の体積固有抵抗値は、1.0×10-2Ω・cm〜1.0×102Ω・cmであることが好ましい。
なお、硫化銅からなる微粒子を予め原液に投入しておくことも考えられるが、繊維材料の内部に微微粒子を分散させることはできず、所望の物性を発現させるには、多量の微粒子の添加が必要となる。この場合、原液中での微粒子の分散不良、凝集、沈降等が生じるため、導電特性が良好な繊維材料を得ることは困難である。また、予め銅イオンを配位させたセルロース系高分子を原料として繊維材料を製造することも考えられるが、銅の配位による溶液粘度の上昇や、固化性が悪化するなど、工程性が悪化することに加えて、得られる繊維の力学物性は低いものとならざるを得ない。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、本実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、硫化銅からなる微粒子の形状や個数、セルロース系繊維材料の体積固有抵抗値及び強度は、以下の方法により測定している。
[繊維材料内部に生成された微粒子の観察]
導電性セルロース系繊維材料に対して、超薄切片法及びFIB(集束イオンビーム)法を用いて繊維材料の切片を作成し、TEM(透過型電子顕微鏡)により切片の断面に表出した微粒子を観察した。超薄切片法では、切片作成時にしわ(アーティファクト)が入りやすく、FIB法では、薄膜加工中の熱ダメージにより網目構造が観察される問題点があるため、両者の切片をTEMにより観察して微粒子の形状や繊維材料の断面に表出する微粒子密度を測定した。なお、FIB法では、細く絞った集束イオンビームを試料表面に照射してエッチングすることにより、試料表面の加工を行う。薄膜試料を加工する場合には、イオンビームで薄膜試料表面から加工していき、最終的には電子線が通過する厚さ(100nm以下)まで加工して観察用の試料としている。繊維材料の断面に対するTEMの観察条件は、以下の通りに設定した。
<FIB法>
試料調製 FIB法:マイクロサンプリングシステム(日立製FB−2000A)
観察装置 透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA)
観察条件 加速電圧 100kV
<超薄切片法>
試料調製 超薄切片法
観察装置 透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA)
観察条件 加速電圧 100kV
[繊維材料の表面の観察]
SEM(走査型電子顕微鏡;KEYENCE社製の3D real view 顕微鏡VE9800)を用いて、導電性セルロース系繊維材料の表面を観察した。観察する前に、繊維材料の表面にイオンコーターを用いて金コーティングを行った。
[繊維材料の導電性(体積固有抵抗値)測定 Ω・cm]
導電性セルロース系繊維材料からなる繊維5〜10本を無作為に選択してスライドガラスに並列配置し、配列した繊維の両端に銀ペーストを塗布して固定した。電極間距離を5mmに設定し、直流電源装置(TRIO PR−602A DC POWER SUPPLY)を用いて測定繊維に電圧を1〜5V印加させた。そして、設定電圧における電流値をデジタルマルチメータ(三和電気計器株式会社製)により測定した。電流測定は、設定電圧で5回測定した。そして、体積固有抵抗値(ρ)(Ω・cm)=R×(S/L)により、各繊維の体積固有抵抗値を求めた。なお、Rは試験片の抵抗値(Ω)、Sは断面積(cm2)及びLは長さ(5mm)である。ここで、繊維の断面積は、繊維を顕微鏡下で観察することにより算出した。
[布帛の導電性(体積固有抵抗値)測定 Ω・cm]
導電性セルロース系繊維材料からなる布帛の表面を、エタノールを染みこませたウエスを用いて洗浄し、抵抗率計(三菱化学アナリテック株式会社製抵抗率計MCP−T370)により布帛の体積固有抵抗値を測定した。測定方法は、四探針法に準拠して行い、抵抗率補正係数を4.532に設定した。
[繊維材料の強伸度測定]
導電性セルロース系繊維材料からなる繊維10本を無作為に選択し、選択した繊維を支持体にエポキシ樹脂により固定した。圧縮試験機(KATO TECH CO.,LTD製高精度圧縮試験機)を用いて、測定条件(チャック間距離20mm、引張伸び歪み検出2mm/10V、引張荷重検出100g/10V)を設定し、繊維の強伸度を測定した。
[布帛の強伸度測定]
導電性セルロース系繊維材料からなる布帛を矩形状(10mm×50mm)に切り出して測定に用いた。測定には、引張試験機(東洋ボールドウィン株式会社製テンシロン型引張り試験機UTM−III−500)を用い、測定条件(チャック間距離30mm、引張速度10mm/分)を設定して布帛の強伸度を測定した。
[布帛の通電による発熱量評価]
導電性セルロース系繊維材料からなる布帛を矩形状(30mm×50mm)に切り出し、電極間距離が40mmとなるように、対向する辺部に導電性ペースト(藤倉化成株式会社製導電性ペーストD−500)を塗布し、常温で24時間乾燥して電極を形成した。形成した電極に対して直流電源装置(トリオ商事株式会社製直流電源装置PR−602A)を用いて電圧15Vを印加した。電圧印加後の布帛の発熱量を評価するために、サーモグラフィ(株式会社アピステ製サーモグラフィFSV−7000E)を用いて、温度分布の経時変化を測定した。測定条件は放射率1とし、測定温度が低いため温度補正は行わなかった。
[実施例1]
(1)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸の製造
キュプラ繊維からなる糸(旭化成株式会社製)に対して、酢酸銅(II)一水和物(ナカライテスク株式会社製)を濃度5g/リットル及び水酸化ナトリウム(ナカライテスク株式会社製)を濃度9重量%でそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して含浸処理を行った。含浸処理した糸を、引き続き、硫化ナトリウム九水和物(ナカライテスク株式会社製)を濃度40g/リットル及び水酸化ナトリウム(ナカライテスク株式会社製)を濃度9重量%でそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して硫化還元処理を行った。これらの含浸処理及び硫化還元処理を4回繰り返した後、十分な水洗後110℃の熱風で乾燥して導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸を得た。
(2)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸の評価
得られた導電性糸の初期弾性率、破断伸度及び破断強度は、それぞれ178.5MPa、2.7%及び94.8MPaであった。導電性糸の体積固有抵抗値は、2.8×10-1Ω・cmであった。導電性糸の繊維の外観は良好で糸斑等はなかった。図1は、SEMで撮影した繊維表面に関する写真である。図1の写真に示すように、析出した硫化銅からなる微粒子が表出しているが、スムースな繊維表面であることがわかる。この導電性糸に含まれる硫化銅の重量について、示差熱重量分析装置(島津製作所製TG/DTA同時測定装置DTG−60)を用いてDTA−TG(示差熱/熱重量)分析を行った。約600℃までDTA−TG分析を行った結果、残存重量は8重量%であった。
図2は、TEMで撮影した導電性糸の繊維の断面に関する写真である。図2に示すように、硫化銅からなる微粒子として、繊維内部の平均粒子径50nm以下の不定形微粒子と繊維外周部の長さ200nm以下の棒状微粒子が存在して相互に連なっていることが観察された。平均粒子径50nm以下の不定形微粒子の密度は118個/(μm)2で、棒状微粒子の密度は54個/(μm)2であった。
[実施例2]
(1)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸の製造
実施例1と同様のキュプラ繊維からなる糸に対して、実施例1と同様の酢酸銅(II)一水和物を濃度10g/リットル及び実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度9重量%でそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して含浸処理を行った。含浸処理した糸を、引き続き、実施例1と同様の硫化ナトリウム九水和物を濃度40g/リットル及び実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度9重量%でそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して硫化還元処理を行った。これらの含浸処理及び硫化還元処理を4回繰り返した後、十分な水洗後110℃の熱風で乾燥して導電性セルロース繊維材料からなる導電性糸を得た。
(2)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸の評価
得られた導電性糸の初期弾性率、破断伸度及び破断強度は、それぞれ172.1MPa、2.1%及び73.1MPaであった。導電糸の体積固有抵抗値は、7.4×10-2Ω・cmであった。導電性糸に含まれる硫化銅の重量について、実施例1と同様にDTA−TG分析を約600℃まで行った結果、その残存重量は15重量%であった。また、実施例1と同様に、TEMで撮影した導電性糸の繊維断面の写真に基づいて分析したところ、繊維内部の平均粒子径50nm以下の不定形微粒子と繊維外周部の長さ200nm以下の棒状微粒子が存在して相互に連なっていることが観察された。平均粒子径50nm以下の不定形微粒子の密度は249個/(μm)2で、棒状微粒子の密度は113個/(μm)2であった。
[実施例3]
(1)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸の製造
実施例1と同様のキュプラ繊維からなる糸に対して、実施例1と同様の酢酸銅(II)一水和物を濃度20g/リットル及び実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度9重量%でそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して含浸処理を行った。含浸処理した糸を、引き続き、実施例1と同様の硫化ナトリウム九水和物を濃度40g/リットル及び実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度9重量%でそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して硫化還元処理を行った。これらの含浸処理及び硫化還元処理を4回繰り返した後、十分な水洗後110℃の熱風で乾燥して導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸を得た。
(2)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸の評価
得られた導電性糸の初期弾性率、破断伸度及び破断強度は、それぞれ201.8MPa、2.1%及び78.8MPaであった。導電性糸の体積固有抵抗値は、6.4×10-2Ω・cmであった。導電性糸に含まれる硫化銅の重量について、実施例1と同様のDTA−TG分析を約600℃まで行った結果、その残存重量は21重量%であった。また、実施例1と同様に、TEMで撮影した導電性糸の繊維断面の写真に基づいて分析したところ、繊維内部の平均粒子径50nm以下の不定形微粒子と繊維外周部の長さ200nm以下の棒状微粒子が存在して相互に連なっていることが観察された。平均粒子径50nm以下の不定形粒子の密度は528個/(μm)2で、棒状微粒子の密度は240個/(μm)2であった。
[実施例4]
(1)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸の製造
実施例1と同様のキュプラ繊維からなる糸に対して、実施例1と同様の酢酸銅(II)一水和物を濃度40g/リットル及び実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度9重量%でそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して含浸処理を行った。含浸処理した糸を、引き続き、実施例1と同様の硫化ナトリウム九水和物を濃度40g/リットル及び実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度9重量%でそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して硫化還元処理を行った。これらの含浸処理及び硫化還元処理を4回繰り返した後、十分な水洗後110℃の熱風で乾燥して導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸を得た。
(2)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸の評価
得られた繊維の初期弾性率、破断伸度及び破断強度は、それぞれ218.6MPa、2.7%及び104.5MPaであった。導電性糸の体積固有抵抗値は3.4×10-1Ω・cmであった。導電性糸の繊維の外観は良好で糸斑等はなかった。図3は、SEMで撮影した繊維表面に関する写真である。図3の写真に示すように、析出した硫化銅からなる微粒子が表出しているが、スムースな繊維表面であることがわかる。この導電性糸に含まれる硫化銅の重量について、実施例1と同様のDTA−TG分析を約600℃まで行った結果、残存重量は28重量%であった。
図4は、TEMで撮影した導電性糸の繊維の断面に関する写真である。図4に示すように、硫化銅からなる微粒子として、繊維内部の平均粒子径50nm以下の不定形微粒子と繊維外周部の長さ200nm以下の棒状微粒子が形成されて相互に連なっていることが観察された。平均粒子径50nm以下の不定形微粒子の密度は743個/(μm)2で、棒状微粒子の密度は337個/(μm)2であった。
[実施例5]
(1)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸の製造
実施例1と同様のキュプラ繊維からなる糸に対して、実施例1と同様の酢酸銅(II)一水和物を濃度5g/リットル及び実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度9重量%でそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して含浸処理を行った。含浸処理した糸を、引き続き、実施例1と同様の硫化ナトリウム九水和物を濃度5g/リットル及び実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度9重量%でそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して硫化還元処理を行った。これらの含浸処理及び硫化還元処理を4回繰り返した後、十分な水洗後110℃の熱風で乾燥して導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸を得た。
(2)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸の評価
得られた繊維の初期弾性率、破断伸度及び破断強度は、それぞれ139.6MPa、2.7%及び82.7MPaであった。導電性糸の体積固有抵抗値は7.3×10-1Ω・cmであった。導電性糸に含まれる硫化銅の重量について、実施例1と同様のDTA−TG分析を約600℃まで行った結果、残存重量は5重量%であった。TEMで撮影した導電性糸の繊維の断面を観察したところ、硫化銅からなる微粒子として、繊維内部の平均粒子径50nm以下の不定形微粒子と繊維外周部の長さ200nm以下の棒状微粒子が形成されて相互に連なっていることが観察された。平均粒子径50nm以下の不定形微粒子の密度は78個/(μm)2で、棒状微粒子の密度は34個/(μm)2であった。
[実施例6]
(1)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸の製造
実施例1と同様のキュプラ繊維からなる糸に対して、実施例1と同様の酢酸銅(II)一水和物を濃度5g/リットル及び実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度9重量%でそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して含浸処理を行った。含浸処理した糸を、引き続き、実施例1と同様の硫化ナトリウム九水和物を濃度10g/リットル及び実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度9重量%でそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して硫化還元処理を行った。これらの含浸処理及び硫化還元処理を4回繰り返した後、十分な水洗後110℃の熱風で乾燥して導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸を得た。
(2)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸の評価
得られた繊維の初期弾性率、破断伸度及び破断強度は、それぞれ161.2MPa、2.5%及び80.5MPaであった。導電性糸の体積固有抵抗値は1.9×10-1Ω・cmであった。導電性糸に含まれる硫化銅の重量について、実施例1と同様のDTA−TG分析を約600℃まで行った結果、残存重量は12重量%であった。
TEMで撮影した導電性糸の繊維の断面に関する写真を観察したところ、硫化銅からなる微粒子として、繊維内部の平均粒子径50nm以下の不定形微粒子と繊維外周部の長さ200nm以下の棒状微粒子が形成されて相互に連なっていることが観察された。平均粒子径50nm以下の不定形微粒子の密度は290個/(μm)2で、棒状微粒子の密度は133個/(μm)2であった。
[実施例7]
(1)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸の製造
実施例1と同様のキュプラ繊維からなる糸に対して、実施例1と同様の酢酸銅(II)一水和物を濃度5g/リットル及び実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度9重量%でそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して含浸処理を行った。含浸処理した糸を、引き続き、実施例1と同様の硫化ナトリウム九水和物を濃度20g/リットル及び実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度9重量%でそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して硫化還元処理を行った。これらの含浸処理及び硫化還元処理を4回繰り返した後、十分な水洗後110℃の熱風で乾燥して導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸を得た。
(2)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸の評価
得られた繊維の初期弾性率、破断伸度及び破断強度は、それぞれ144.4MPa、2.2%及び71.3MPaであった。導電性糸の体積固有抵抗値は2.1×10-1Ω・cmであった。導電性糸に含まれる硫化銅の重量について、実施例1と同様のDTA−TG分析を約600℃まで行った結果、残存重量は19重量%であった。TEMで撮影した導電性糸の繊維の断面を観察したところ、硫化銅からなる微粒子として、繊維内部の平均粒子径50nm以下の不定形微粒子と繊維外周部の長さ200nm以下の棒状微粒子が形成されて相互に連なっていることが観察された。平均粒子径50nm以下の不定形微粒子の密度は525個/(μm)2で、棒状微粒子の密度は236個/(μm)2であった。
[実施例8]
(1)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸の製造
実施例1と同様のキュプラ繊維からなる糸に対して、実施例1と同様の酢酸銅(II)一水和物を濃度40g/リットル及び実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度9重量%でそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して含浸処理を行った。含浸処理した糸を、引き続き、実施例1と同様の硫化ナトリウム九水和物を濃度10g/リットル及び実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度9重量%でそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して硫化還元処理を行った。これらの含浸処理及び硫化還元処理を4回繰り返した後、十分な水洗後110℃の熱風で乾燥して導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸を得た。
(2)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸の評価
得られた繊維の初期弾性率、破断伸度及び破断強度は、それぞれ209.8MPa、3.6%及び143.8MPaであった。導電性糸の体積固有抵抗値は3.6×101Ω・cmであった。導電性糸に含まれる硫化銅の重量について、実施例1と同様のDTA−TG分析を約600℃まで行った結果、残存重量は3重量%であった。TEMで撮影した導電性糸の繊維の断面を観察したところ、硫化銅からなる微粒子として、繊維内部の平均粒子径50nm以下の不定形微粒子と繊維外周部の長さ200nm以下の棒状微粒子が形成されて相互に連なっていることが観察された。平均粒子径50nm以下の不定形微粒子の密度は68個/(μm)2で、棒状微粒子の密度は31個/(μm)2であった。
[実施例9]
(1)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸の製造
実施例1と同様のキュプラ繊維からなる糸に対して、実施例1と同様の酢酸銅(II)一水和物を濃度40g/リットル及び実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度9重量%でそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して含浸処理を行った。含浸処理した糸を、引き続き、実施例1と同様の硫化ナトリウム九水和物を濃度20g/リットル及び実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度9重量%でそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して硫化還元処理を行った。これらの含浸処理及び硫化還元処理を4回繰り返した後、十分な水洗後110℃の熱風で乾燥して導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸を得た。
(2)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸の評価
得られた繊維の初期弾性率、破断伸度及び破断強度は、それぞれ198.1MPa、2.5%及び120.7MPaであった。導電性糸の体積固有抵抗値は2.0×100Ω・cmであった。導電性糸に含まれる硫化銅の重量について、実施例1と同様のDTA−TG分析を約600℃まで行った結果、残存重量は11重量%であった。TEMで撮影した導電性糸の繊維の断面を観察したところ、硫化銅からなる微粒子として、繊維内部の平均粒子径50nm以下の不定形微粒子と繊維外周部の長さ200nm以下の棒状微粒子が形成されて相互に連なっていることが観察された。平均粒子径50nm以下の不定形微粒子の密度は278個/(μm)2で、棒状微粒子の密度は126個/(μm)2であった。
[実施例10]
(1)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸の製造
実施例1と同様のキュプラ繊維からなる糸に対して、実施例1と同様の酢酸銅(II)一水和物を濃度40g/リットル及び実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度9重量%でそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して含浸処理を行った。含浸処理した糸を、引き続き、実施例1と同様の硫化ナトリウム九水和物を濃度80g/リットル及び実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度9重量%でそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して硫化還元処理を行った。これらの含浸処理及び硫化還元処理を4回繰り返した後、十分な水洗後110℃の熱風で乾燥して導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸を得た。
(2)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性糸の評価
得られた繊維の初期弾性率、破断伸度及び破断強度は、それぞれ199.4MPa、1.3%及び110.5MPaであった。導電性糸の体積固有抵抗値は1.3×10-1Ω・cmであった。導電性糸に含まれる硫化銅の重量について、実施例1と同様のDTA−TG分析を約600℃まで行った結果、残存重量は25重量%であった。TEMで撮影した導電性糸の繊維の断面を観察したところ、硫化銅からなる微粒子として、繊維内部の平均粒子径50nm以下の不定形微粒子と繊維外周部の長さ200nm以下の棒状微粒子が形成されて相互に連なっていることが観察された。平均粒子径50nm以下の不定形微粒子の密度は788個/(μm)2で、棒状微粒子の密度は354個/(μm)2であった。
図5は、実施例1から実施例10で得られた酢酸銅及び硫化ナトリウムの濃度の組み合せを変化させた場合の導電性糸に関する体積固有抵抗値及び酢酸銅(II)一水和物の濃度を5g/リットル、10g/リットル、20g/リットルと変化させた場合の導電性糸に関する体積固有抵抗値を示す。図5に示すように、硫化ナトリウムの濃度が高くなると体積固有抵抗値は低くなる傾向が認められた。このことは、硫化銅の残留重量が大きくなるとともに棒状微粒子の密度が大きくなっている結果と合致している。
[実施例11]
レーヨン繊維(株式会社クラレ製)からなる糸に対して、実施例1と同様の酢酸銅(II)一水和物を濃度10g/リットル及び実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度9重量%でそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して含浸処理を行った。含浸処理した糸を、引き続き、実施例1と同様の硫化ナトリウム九水和物の濃度を5g/リットル、10g/リットル、20g/リットル、40g/リットル、80g/リットルと変化させて、水酸化ナトリウムの濃度をいずれも9重量%に設定して溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して硫化還元処理を行った。これらの含浸処理及び硫化還元処理を2回又は4回繰り返した後、十分な水洗後110℃の熱風で乾燥して導電性セルロース繊維材料からなる導電性糸を得た。得られた導電性糸の体積固有抵抗値は、3×10-1Ω・cm〜2×102Ω・cmの範囲の値であった。
[実施例12]
実施例11と同様のレーヨン繊維からなる糸に対して、実施例1と同様の酢酸銅(II)一水和物を濃度20g/リットル及び実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度9重量%でそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して含浸処理を行った。含浸処理した糸を、引き続き、実施例1と同様の硫化ナトリウム九水和物の濃度を5g/リットル、10g/リットル、20g/リットル、40g/リットル、80g/リットル、120g/リットルと変化させて、水酸化ナトリウムの濃度をいずれも9重量%に設定して溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導糸して硫化還元処理を行った。これらの含浸処理及び硫化還元処理を2回又は4回繰り返した後、十分な水洗後110℃の熱風で乾燥して導電性セルロース繊維材料からなる導電性糸を得た。得られた導電性糸の体積固有抵抗値は、2×10-1Ω・cm〜6×100Ω・cmの範囲の値であった。SEMで撮影した繊維表面を観察したところ、繊維の外観は良好で糸斑等はなく、繊維表面には硫化銅粒子が分散析出していた。
図6は、含浸処理と硫化還元処理の回数及び硫化ナトリウムの濃度の組み合せを変化させた場合の導電性糸に関する体積固有抵抗値の測定結果を示すグラフである。硫化ナトリウムの濃度及び処理回数を変化させることで、導電糸の体積固有抵抗値を大幅に変更できることがわかった。
[実施例13]
(1)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性布帛の製造
キュプラ繊維からなる布帛(旭化成せんい株式会社製)に対して、実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度6重量%で溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導入し、引き続き、実施例1と同様の酢酸銅(II)一水和物を濃度70g/リットルで溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導入して含浸処理を行った。含浸処理した布帛を、引き続き、実施例1と同様の硫化ナトリウム九水和物を濃度80g/リットルで溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導入して硫化還元処理を行った。これらの含浸処理及び硫化還元処理を8回繰り返した後、十分な水洗後110℃の熱風で乾燥して導電性セルロース繊維材料からなる導電性布帛を得た。
(2)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性布帛の評価
得られた導電性布帛の初期弾性率、破断伸度及び破断強度は、それぞれ313.6MPa、6.6%及び25.8MPaであった。導電性布帛の体積固有抵抗値は、2.4×101Ω・cmであった。導電性布帛に含まれる硫化銅の重量について、実施例1と同様にDTA−TG分析を約600℃まで行った結果、その残存重量は12重量%であった。
[実施例14]
(1)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性布帛の製造
実施例13と同様のキュプラ繊維からなる布帛に対して、実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度6重量%で溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導入し、引き続き、実施例1と同様の酢酸銅(II)一水和物を濃度70g/リットル及びクエン酸(ナカライテスク株式会社製)を濃度10g/リットルでそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導入して含浸処理を行った。含浸処理した布帛を、引き続き、実施例1と同様の硫化ナトリウム九水和物を濃度80g/リットルで溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導入して硫化還元処理を行った。これらの含浸処理及び硫化還元処理を8回繰り返した後、十分な水洗後110℃の熱風で乾燥して導電性セルロース繊維材料からなる導電性布帛を得た。
(2)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性布帛の評価
得られた導電性布帛の初期弾性率、破断伸度及び破断強度は、それぞれ352.8MPa、16.6%及び28.7MPaであった。導電性布帛の体積固有抵抗値は、7.2×100Ω・cmであった。
[実施例15]
(1)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性布帛の製造
実施例13と同様のキュプラ繊維からなる布帛に対して、実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度6重量%で溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導入し、引き続き、実施例1と同様の酢酸銅(II)一水和物を濃度70g/リットル及び実施例14と同様のクエン酸を濃度30g/リットルでそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導入して含浸処理を行った。含浸処理した布帛を、引き続き、実施例1と同様の硫化ナトリウム九水和物を濃度80g/リットルで溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導入して硫化還元処理を行った。これらの含浸処理及び硫化還元処理を8回繰り返した後、十分な水洗後110℃の熱風で乾燥して導電性セルロース繊維材料からなる導電性布帛を得た。
(2)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性布帛の評価
得られた導電性布帛の初期弾性率、破断伸度及び破断強度は、それぞれ588.0MPa、13.3%及び36.9MPaであった。導電性布帛の体積固有抵抗値は、4.3×100Ω・cmであった。
[実施例16]
(1)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性布帛の製造
実施例13と同様のキュプラ繊維からなる布帛に対して、実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度6重量%で溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導入し、引き続き、実施例1と同様の酢酸銅(II)一水和物を濃度70g/リットル及び実施例14と同様のクエン酸を濃度50g/リットルでそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導入して含浸処理を行った。含浸処理した布帛を、引き続き、実施例1と同様の硫化ナトリウム九水和物を濃度80g/リットルで溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導入して硫化還元処理を行った。これらの含浸処理及び硫化還元処理を8回繰り返した後、十分な水洗後110℃の熱風で乾燥して導電性セルロース繊維材料からなる導電性布帛を得た。
(2)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性布帛の評価
得られた導電性布帛の初期弾性率、破断伸度及び破断強度は、それぞれ313.1MPa、8.9%及び24.3MPaであった。導電性布帛の体積固有抵抗値は、2.9×100Ω・cmであった。
[実施例17]
(1)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性布帛の製造
実施例13と同様のキュプラ繊維からなる布帛に対して、実施例1と同様の水酸化ナトリウムを濃度6重量%で溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導入し、引き続き、実施例1と同様の酢酸銅(II)一水和物を濃度70g/リットル及び実施例14と同様のクエン酸を濃度70g/リットルでそれぞれ溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導入して含浸処理を行った。含浸処理した布帛を、引き続き、実施例1と同様の硫化ナトリウム九水和物を濃度80g/リットルで溶解した25℃の水浴中に滞留時間が120秒になるように導入して硫化還元処理を行った。これらの含浸処理及び硫化還元処理を8回繰り返した後、十分な水洗後110℃の熱風で乾燥して導電性セルロース繊維材料からなる導電性布帛を得た。
(2)導電性セルロース系繊維材料からなる導電性布帛の評価
得られた導電性布帛の初期弾性率、破断伸度及び破断強度は、それぞれ536.4MPa、25.6%及び39.0MPaであった。導電性布帛の体積固有抵抗値は、2.7×100Ω・cmであった。
図7は、実施例13から実施例17で得られたクエン酸添加濃度と導電性布帛の体積固有抵抗との関係を示している。図7に示すように、クエン酸の濃度が上昇するに従い体積固有抵抗が低下する傾向が認められる。
[実施例18]
実施例13から実施例17で得られた導電性布帛について、通電による発熱量の評価を行った。図8は、通電時間(秒)と布帛の平均温度(℃)との関係を示すグラフである。クエン酸の濃度が高いほど定常状態の平均温度が高くなっており、さらに定常状態の温度に達するまでの時間が短時間であることがわかる。また、定常状態では布帛全体がほぼ均一な発熱状態となっており、1時間発熱状態としたままでも導電性布帛に変化は認められず、発熱前と同様の導電性を維持しており、十分な耐熱性を有することが確認できた。また、70℃の熱水中に導電性布帛を12時間浸漬した状態のままでも特に変化は認められず、熱水への浸漬前と同様の導電性を備えていた。
[比較例1]
実施例1と同様に含浸処理及び硫化還元処理を行う際に、水酸化ナトリウムを添加せずそれ以外は同じ条件で処理を行った。得られた糸の初期弾性率、破断伸度及び破断強度は、それぞれ214.5MPa、8.9%及び180MPaであった。また、糸の体積固有抵抗は検出限界外であった。
本発明によれば、優れた導電性を有する繊維材料を得ることができ、またセルロース系繊維材料を用いることで耐熱性及び耐熱水性を兼備した導電性セルロース系繊維材料を製造することができる。また、導電性セルロース系繊維材料は、繊維の製造工程でも製造可能で、繊維、糸、布帛の後処理で製造することもでき、製造コストを安価に抑えることも可能である。そして、本発明により製造された導電性セルロース系繊維材料は、耐熱性、耐熱水性に優れた帯電材、除電材、ブラシ、センサー、電磁波シールド材、電子回路用非金属電線、面状発熱体、電子材料といった幅広い用途に適用することが可能である。

Claims (6)

  1. アルカリ金属水酸化物を含む水溶液によりセルロース系繊維材料を膨潤率20質量%〜300質量%で膨潤させる膨潤工程と、銅イオンを含む化合物を濃度5g/リットル〜70g/リットルで溶解させた水溶液によりセルロース系繊維材料の外周部及び内部に銅イオンを含浸させる含浸工程と、硫化物イオンを含む化合物を濃度5g/リットル〜120g/リットルで溶解させた水溶液によりセルロース系繊維材料に含浸させた銅イオンを硫化還元させてセルロース系繊維材料の外周部に長さ200nm以下の棒状の硫化銅からなる微粒子及び内部に平均粒子径50nm以下の不定形の硫化銅からなる微粒子を生成させる硫化還元工程とを含む導電性セルロース系繊維材料の製造方法。
  2. 前記膨潤工程は、前記含浸工程と並行して行われる請求項1に記載の導電性セルロース系繊維材料の製造方法。
  3. 前記含浸工程は、水溶液に濃度0g/リットル〜70g/リットルのカルボン酸が含まれている請求項1又は2に記載の導電性セルロース系繊維材料の製造方法。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の導電性セルロース系繊維材料の製造方法により得られた体積固有抵抗値が1.0×10 -2 〜1.0×10 2 Ω・cmである導電性セルロース系繊維材料。
  5. 請求項4に記載の導電性セルロース系繊維材料を含む布帛。
  6. 請求項5に記載の布帛を含む面状発熱体。
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