JP2008262735A - 燃料電池システム及び排出弁の制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料電池内で発生した水を貯水部に貯留して排出弁により外部に排出する燃料電池システムにおいて、排水へのガスの混入を効果的に抑制する。
【解決手段】燃料電池2と、燃料電池2から排出される水を貯留する貯水部40と、貯水部40に設けられた排水口41の下流に配設される排出弁31と、排出弁31を制御する制御手段5と、を備える燃料電池システム1において、貯水部40の加速度Auを検出する加速度検出手段6を備え、制御手段5は、加速度検出手段6により検出された貯水部40の加速度Auに基づいて貯水部40内の水が排水口から排出可能な位置にあるか否かの判定を行うとともに、判定の結果に基づいて排出弁31の開閉を制御する。
【選択図】図4
【解決手段】燃料電池2と、燃料電池2から排出される水を貯留する貯水部40と、貯水部40に設けられた排水口41の下流に配設される排出弁31と、排出弁31を制御する制御手段5と、を備える燃料電池システム1において、貯水部40の加速度Auを検出する加速度検出手段6を備え、制御手段5は、加速度検出手段6により検出された貯水部40の加速度Auに基づいて貯水部40内の水が排水口から排出可能な位置にあるか否かの判定を行うとともに、判定の結果に基づいて排出弁31の開閉を制御する。
【選択図】図4
Description
本発明は、燃料電池システム及び排出弁の制御方法に関する。
従来より、反応ガス(燃料ガス及び酸化ガス)の供給を受けて発電を行う燃料電池を備えた燃料電池システムが提案され、実用化されている。かかる燃料電池システムでは、発電に伴い、燃料電池の内部や燃料オフガスの循環流路に、窒素や一酸化炭素等の不純物や水分が経時的に蓄積する。そこで、燃料電池システムの循環流路に気液分離器を設け、この気液分離器に接続した排出弁を開放することにより、不純物や水分を外部に排出する技術(パージ技術)が提案されている。
近年においては、気液分離器の貯水容器に貯留された水の水位を算出することにより、排出弁からのガス及び水分の排出を制御する技術が提案されている(特許文献1参照)。かかる技術においては、貯水容器内(又は排水管内)における水圧と水面上のガス圧との差圧に基づいて貯水容器内の水位を算出し、低水位の時には排出弁を閉じることにより、排水へのガスの混入を抑制している。
特開2006−139957号公報
ところで、貯水容器から外部へ排出される排水へのガスの混入をより確実に抑制するためには、排水管と貯水容器との接続部である排水口が水面上に現れているか水面下へ隠れているかを正確に判定する必要がある。
ところが、燃料電池システムが車両等の移動体に搭載されている場合には、移動体の加減速や旋回に起因して、貯水容器内の貯留水に加速度に応じた慣性力が作用し、貯水容器内の貯留水がこの慣性力の方向や大きさに応じて移動し、水面は傾いた状態となる。従って、排水管と貯水容器との接続部が水面下に隠れるかどうかを正確に判定するためには、移動体の加速度による水面の傾きを考慮して貯水容器内の水位を算出する必要がある。
前記した特許文献1には、移動体の加減速や旋回に起因した水面の傾きを考慮した水位の算出方法については記載されていない。このため、前記した特許文献1に記載された従来の技術を採用すると、車両の加減速時や旋回時に排水管と貯水容器との接続部が水面下に隠れるかどうかを正確に判定することは困難であり、排水にガスが混入してしまう可能性があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、燃料電池内で発生した水を貯水部に貯留して排出弁により外部に排出する燃料電池システムにおいて、排水へのガスの混入を効果的に抑制することを目的とする。
前記目的を達成するため、本発明に係る燃料電池システムは、燃料電池と、燃料電池から排出される水を貯留する貯水部と、貯水部に設けられた排水口の下流に配設される排出弁と、排出弁を制御する制御手段と、を備える燃料電池システムにおいて、貯水部の加速度を検出する加速度検出手段を備え、制御手段は、加速度検出手段により検出された貯水部の加速度に基づいて貯水部内の水が排水口から排出可能な位置にあるか否かの判定を行うとともに、判定の結果に基づいて排出弁の開閉を制御するものである。
かかる構成を採用すると、加速度に基づく慣性力の発生によって水が貯水部内で移動している時に、水が排水口から排出可能な位置にあるか否かを判定し、その結果に基づいて排出弁の開閉制御を行うことができるので、排水へのガスの混入を効果的に抑制することができる。従って、燃料電池に循環させるべきガス(発電に寄与する燃料ガス)が無駄に排出されることを抑制することができるとともに、パージ動作における排水制御誤差の低減を図ることができる。
前記燃料電池システムにおいて、貯水部の加速度に基づいて、排出口が水面下に隠れているか否かの判定を行うとともに、排出口が水面下に隠れているときには排出弁の開放を許容し、排出口が水面下に隠れていないときには排出弁の開放を禁止する制御手段を採用することができる。
かかる構成を採用すると、排出口が水面下に隠れていないときには排出弁が開放されないので、排水へのガスの混入を効果的に抑制することができる。
また、前記燃料電池システムにおいて、貯水部の側面に排出口を設けることができる。また、貯水部として、燃料電池から排出される燃料オフガスから水を分離する気液分離器に設けられる貯水容器を採用することができる。また、排出弁として、貯水部内の水及び燃料オフガスの排出を行う排気排水弁を採用することができる。
また、前記燃料電池システムを、移動体に搭載することができる。かかる場合、移動体の直線運動及び/又は旋回運動に伴って発生する貯水部の加速度を検出する加速度検出手段を採用することができる。
かかる構成を採用すると、燃料電池システムを搭載した移動体の排水にガスが混入することを抑制することができる。従って、燃料電池に循環させるべきガス(燃料ガス)が無駄に排出されることを抑制することができるので、移動体の燃料消費率を向上させる(単位移動距離当りの燃料消費量を低減させる)ことが可能となる。
また、前記燃料電池システムにおいて、移動体の直線運動に伴って発生する直線方向の加速度を検出する加速度検出手段を採用することができる。かかる場合、直線方向の加速度に基づいて貯水部内の水が排水口から排出可能な位置にあるか否かの判定を行うとともに、判定の結果に基づいて排出弁の開閉を制御する制御手段を採用することができる。
また、前記燃料電池システムにおいて、移動体の旋回運動に伴って発生する遠心力方向の加速度を検出する加速度検出手段を採用することができる。かかる場合、遠心力方向の加速度に基づいて貯水部内の水が排水口から排出可能な位置にあるか否かの判定を行うとともに、判定の結果に基づいて排出弁の開閉を制御する制御手段を採用することができる。
また、前記燃料電池システムにおいて、移動体の直線運動及び旋回運動に伴って発生する直線方向及び遠心力方向の加速度を検出する加速度検出手段を採用することができる。かかる場合、直線方向及び遠心力方向の加速度に基づいて貯水部内の水が排水口から排出可能な位置にあるか否かの判定を行うとともに、判定の結果に基づいて排出弁の開閉を制御する制御手段を採用することができる。
また、前記燃料電池システムにおいて、燃料電池の発電量に基づいて貯水部に貯留される水量を推定する水量推定手段を備えることができる。かかる場合、加速度検出手段により検出された貯水部の加速度と、水量推定手段により推定された水量と、に基づいて貯水部内の水が排水口から排出可能な位置にあるか否かの判定を行うとともに、判定の結果に基づいて排出弁の開閉を制御する制御手段を採用することができる。
また、本発明に係る制御方法は、燃料電池と、燃料電池から排出される水を貯留する貯水部と、貯水部に設けられた排水口の下流に配設される排出弁と、を備える燃料電池システムにおける排出弁の制御方法であって、貯水部の加速度を検出する加速度検出工程と、加速度検出工程において検出された加速度に基づいて貯水部内の水が排水口から排出可能な位置にあるか否かの判定を行う水位判定工程と、水位判定工程における判定の結果に基づいて排出弁の開閉を制御する弁制御工程と、を備えるものである。
かかる方法を採用すると、加速度に基づく慣性力の発生によって水が貯水部内で移動している時に、水が排水口から排出可能な位置にあるか否かを判定し、その結果に基づいて排出弁の開閉制御を行うことができるので、排水へのガスの混入を効果的に抑制することができる。従って、燃料電池に循環させるべきガス(発電に寄与する燃料ガス)が無駄に排出されることを抑制することができるとともに、パージ動作における排水制御誤差の低減を図ることができる。
前記制御方法を、移動体に搭載される燃料電池システムにおける排出弁の制御方法に適用することができる。かかる場合、加速度検出工程で、移動体の直線運動及び/又は旋回運動に伴って貯水部に発生する加速度を検出することができる。
かかる方法を採用すると、燃料電池システムを搭載した移動体の排水にガスが混入することを抑制することができる。従って、燃料電池に循環させるべきガス(燃料ガス)が無駄に排出されることを抑制することができるので、移動体の燃料消費率を向上させる(単位移動距離当りの燃料消費量を低減させる)ことが可能となる。
本発明によれば、燃料電池内で発生した水を貯水部に貯留して排出弁により外部に排出する燃料電池システムにおいて、排水へのガスの混入を効果的に抑制することが可能となる。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る燃料電池システム1について説明する。本発明の燃料電池システム1は、図1に示すように、燃料電池車両(移動体)Sに搭載される車載発電システムである。
本実施形態に係る燃料電池システム1は、図2に示すように、反応ガス(酸化ガス及び燃料ガス)の供給を受けて電力を発生する燃料電池2と、酸化ガスとしての空気を燃料電池2に供給する酸化ガス配管系3と、燃料ガスとしての水素ガスを燃料電池2に供給する燃料ガス配管系4と、システム全体を統括制御する制御装置5と、燃料電池車両Sの加速度を検出する加速度センサ6と、を備えている。
燃料電池2は、例えば固体高分子電解質型で構成され、多数の単電池を積層したスタック構造を備えている。燃料電池2の単電池は、イオン交換膜からなる電解質の一方の面に空気極を有し、他方の面に燃料極を有し、さらに空気極及び燃料極を両側から挟みこむように一対のセパレータを有している。一方のセパレータの燃料ガス流路に燃料ガスが供給され、他方のセパレータの酸化ガス流路に酸化ガスが供給され、このガス供給により燃料電池2は電力を発生する。
酸化ガス配管系3は、燃料電池2に供給される酸化ガスが流れる空気供給流路11と、燃料電池2から排出された酸化オフガスが流れる排気流路12と、を有している。空気供給流路11には、フィルタ13を介して酸化ガスを取り込むコンプレッサ14と、コンプレッサ14により圧送される酸化ガスを加湿する加湿器15と、が設けられている。排気流路12を流れる酸化オフガスは、背圧調整弁16を通って加湿器15で水分交換に供された後、図示しない希釈器において水素オフガスと合流して水素オフガスを希釈し、最終的に排ガスとしてシステム外の大気中に排気される。コンプレッサ14は、図示されていないモータの駆動により大気中の酸化ガスを取り込む。
燃料ガス配管系4は、水素供給源21と、水素供給源21から燃料電池2に供給される水素ガスが流れる水素供給流路22と、燃料電池2から排出された水素オフガス(燃料オフガス)を水素供給流路22の合流点A1に戻すための循環流路23と、循環流路23内の水素オフガスを水素供給流路22に圧送する水素ポンプ24と、循環流路23に分岐接続された排気排水流路25と、を有している。
水素供給源21は、所定圧力(例えば35MPa又は70MPa)の水素ガスを貯留可能な高圧ガスタンクで構成されている。なお、炭化水素系の燃料から水素リッチな改質ガスを生成する改質器と、この改質器で生成した改質ガスを高圧状態にして蓄圧する高圧ガスタンクと、から水素供給源21を構成してもよい。また、水素吸蔵合金を有するタンクを水素供給源21として採用することもできる。
水素供給流路22には、水素供給源21からの水素ガスの供給を遮断又は許容する遮断弁26と、水素ガスの圧力を調整する調圧弁27と、電磁駆動式の開閉弁28と、が設けられている。開閉弁28の上流側には、水素供給流路22内の水素ガスの圧力及び温度を検出する図示されていない圧力センサ及び温度センサが設けられている。また、開閉弁28と合流部A1との間にも図示されていない圧力センサが設けられている。これらのセンサで検出された水素ガスのガス状態(圧力、温度)に係る情報は、水素ガスの供給制御やパージ制御に用いられる。調圧弁27は、水素ガスのガス圧を予め設定した二次圧に減圧する。開閉弁28は、制御装置5から伝送される制御信号により駆動制御され、水素供給流路22側に供給する水素ガスの流量やガス圧を高精度に調整する。
水素ガスの循環系は、水素供給流路22の合流点A1の下流側流路と、燃料電池2のセパレータに形成される燃料ガス流路と、循環流路23と、によって構成されることとなる。水素ポンプ24は、図示されていないモータの駆動により、循環系内の水素ガスを燃料電池2に循環供給する。
循環流路23には、気液分離器30及び排気排水弁31を介して、排気排水流路25が接続されている。気液分離器30は、水素オフガスから水分を回収するものであり、後述する貯水容器40(図3)を有している。排気排水弁31は、制御装置5からの指令によって作動することにより、気液分離器30で回収した水分と、循環流路23内の不純物を含む水素オフガス(燃料オフガス)と、を外部に排出(パージ)するものであり、本発明における排出弁の一実施形態である。なお、本実施形態においては、気液分離器30の貯水容器40が燃料電池車両Sに固定状態で搭載されており、燃料電池車両Sに発生した加速度がそのまま貯水容器40に発生するものとする。
排気排水弁31の開放により、循環流路23内の水素オフガス中の不純物の濃度が下がり、循環供給される水素オフガス中の水素濃度が上がる。排気排水弁31及び排気排水流路25を介して外部に排出される水素オフガスは、排気排水弁31の下流に設けられた図示しない希釈器において、排気流路12内の酸化オフガス(空気)と合流して希釈される。
制御装置5は、図示していない車両のアクセル信号(要求負荷)等の制御情報を受けて、システム内の各種機器の動作を制御する。なお、制御装置5は、図示していないコンピュータシステムによって構成されている。かかるコンピュータシステムは、CPU、ROM、RAM、HDD、入出力インタフェース及びディスプレイ等を備えるものであり、ROMに記録された各種制御プログラムをCPUが読み込んで実行することにより、各種制御動作が実現される。
制御装置5には、各配管系を流れる流体の圧力、温度、流量等を検出する各センサの検出情報が入力される。制御装置5は、これらの検出情報や燃料電池2内の要求発電量に応じて、燃料電池2へ供給すべき反応ガスの流量を算出するとともに、排気排水弁31から排出すべき水素オフガスの目標排出量(目標パージ量)を算出する。そして、制御装置5は、システム内の各種機器の動作を制御し、燃料電池2内への反応ガスの供給やパージ制御などの種々の処理や制御を行う。なお、図2においては、排気排水弁31への制御信号及び加速度センサ6からの検出信号のみを表示し、他の制御信号及び検出信号については表示を省略している。
制御装置5には、加速度センサ6から、燃料電池車両S(及び気液分離器30の貯水容器40)に発生する加速度に係る情報が入力される。燃料電池車両Sには、図示しない車速センサが設けられており、加速度センサ6は、燃料電池車両Sが直進している時には、この車速センサの検出情報から車速の変化率を求めることにより、車両進行方向(直線方向)の加速度Au(図4)を検出する。また、加速度センサ6は、燃料電池車両Sが旋回している時には、燃料電池車両Sの操舵系に発生するトルクや操舵角度の変化率を求めることにより、横加速度(遠心力方向の加速度)Av(図5)を検出する。また、加速度センサ6は、直進と旋回の複合運動を行っている時には、直線方向の加速度(Au)及び遠心力方向の加速度(Av)の双方を検出することができる。加速度センサ6で検出された加速度Au及び横加速度Avは、後述するように、排気排水弁31の開閉制御に用いられる。加速度センサ6は、本発明における加速度検出手段の一実施形態である。
制御装置5は、排気排水弁31を所定のタイミングで開閉することにより、気液分離器30で回収された循環流路23内の不要な水分を外部に排出するとともに、目標パージ量の水素オフガスを外部に排出するパージ制御を行う。制御装置5は、このパージ制御において、車両の加速度による慣性力が発生しているときには、気液分離器30内に貯留された水の状態、すなわち、後述する貯水容器40内の水の滞留位置に基づいて、排気排水弁31の開放を許容又は禁止する制御を行う。すなわち、制御装置5は、本発明における制御手段の一実施形態として機能する。以下、その詳細について説明する。
図3(A)、(B)は、気液分離器30に設けられた貯水部としての貯水容器40の断面図である。図3(A)は貯水容器40の車両前後方向の断面図、図3(B)は貯水容器40の車幅方向の断面図である。図3において、貯水容器40の車両前後方向の寸法をU、車幅方向の寸法をVで示している。なお、この図は貯水容器40の構成を概略的に示すものであり、貯水容器40の上部及び細部は省略している。
本実施形態における貯水容器40は略直方体であり、その底面と水平面とが略一致するように燃料電池車両Sに搭載されている。排気排水弁31は、貯水容器40の下方でなく、側方に配置されている。貯水容器40は、車両側方(本実施形態においては車両右側)の側面下端に開口する排水口41を有しており、この排水口41に側方から排気排水流路25が接続するようになっている。排水口41から排出された水は、排気排水流路25に設けられた排気排水弁31へ流入する。排水口41の中心の位置は、貯水容器40の底面と同じ高さであり、かつ、車両後方側の側面からの距離がUaで示される位置である。
貯水容器40には、その上部に設けられた図示しない導入口から、循環流路23内の水素オフガスから回収された水が導入される。導入された水は貯水容器40の底部に溜まる。図3は、燃料電池車両Sに加速度が発生していない状態、例えば、燃料電池車両Sが停止している時や、一定速度で移動している時の水の状態を示している。この時、貯水容器40内の水に作用する加速度は重力加速度gのみであるため、水面は水平となっている。
以下、燃料電池車両Sに加速度が発生した状態における排気排水弁31の制御について説明する。
まず、車両直進時の制御について説明する。図4に、燃料電池車両Sが加速度Auで加速しながら直線的に前進走行している時の貯水容器40内の状態を示す。この図に示すように、燃料電池車両Sが加速度Auで加速すると、貯水容器40内の水には、重力に加えて、加速度Auに対応する慣性力が加速度Auの向きとは逆向き(車両後方向き)に発生する。この場合、貯水容器40内の水は慣性力と重力の合力を受けて車両後方側に移動し、水面が傾いた状態となる。水面の傾きθuは、以下の式(1)に基づいて算出される角度であり、車両後方側から車両前方側に向かって水面が低くなるように傾く。なお、式(1)において、「Gu」は、燃料電池車両Sの加速に伴って車両後方向きに発生した見かけの加速度であり、加速度Auの大きさに等しい。
慣性力が大きく水面の傾きθuが大きい場合には、貯水容器40の車両後方側のみに水が滞留し、車両前方側では貯水容器40の底面が露出した状態となる。貯水容器40の底面が水面下に隠れていない領域と隠れている領域との境界の位置を、車両後方側の側面から距離uの位置とし、貯水容器40内の水量をQとすると、Qは以下の式(2)により算出される。そして、式(1)及び式(2)に基づいて、距離uは以下の式(3)により算出される。
式(3)において、「V」及び「g」は定数である。従って、制御装置5は、貯水容器40内に貯留した水量Qと、貯水容器40内の水に作用する見かけの加速度Gu(=Au)と、に基づいてuを算出することができる。本実施形態における制御装置5は、燃料電池2の発電量に基づいて、貯水容器40内に貯留される水量Qを推定することとしている。すなわち、制御装置5は、本発明における水量推定手段としても機能する。
次いで、制御装置5は、排気排水弁31の開放を許容するか否かを決定するために、貯水容器40内に滞留する水が、排水口41から排出可能な位置にあるか否かの判定を行う。図4に示すように、燃料電池車両Sが加速している時には、この判定は、「u>Ua」の判定式によって行うことができる。制御装置5は、この判定式に基づいて、貯水容器40内の水が排水口41から排出可能な位置にあるか否かの判定を行い、その判定結果に基づいて排気排水弁31の開閉を制御する。
具体的には、制御装置5は、「u>Ua」の判定式を満たす時は、排水口41が水面下にあるものと判定し、排気排水弁31の開放を許容する。これにより、排水口41から水のみを排出することができる。一方、制御装置5は、「u>Ua」の判定式を満たさない時は、排水口41が水面と同一高さ又は水面上にあるものと判定し、排気排水弁31の開放を禁止する。「u>Ua」の判定式を満たさない状態で排気排水弁31を開放すると、水は一応排出できるものの水素オフガスが混入したり、水素オフガスのみが排出されたりするためである。
次に、車両旋回時の制御について説明する。図5に、燃料電池車両Sが右回りに旋回している時の貯水容器40内の状態を示す。この図に示すように、燃料電池車両Sが旋回して貯水容器40に横加速度Avが発生すると、貯水容器40内の水には、重力に加えて、横加速度Avに対応する慣性力(遠心力)が横加速度Avの向きとは逆向き(車両左側向き)に発生する。この場合、貯水容器40内の水は慣性力と重力の合力を受けて車両左側に移動し、水面が傾いた状態となる。水面の傾きθvは、以下の式(4)に基づいて算出される角度であり、車両左側から車両右側に向かって水面の位置が低くなるように傾く。なお、式(4)において、「Gv」は燃料電池車両Sの右旋回に伴って車両左側向きに発生した見かけの加速度であり、横加速度Avの大きさに等しい。
遠心力が大きく水面の傾きθvが大きい場合には、貯水容器40の車両左側のみに水が滞留し、車両右側では貯水容器40の底面が露出した状態となる。貯水容器40の底面が水面下に隠れていない領域と隠れている領域との境界の位置を、車両左側の側面から距離vの位置とし、貯水容器40内の水量をQとすると、Qは以下の式(5)により算出される。そして、式(4)及び式(5)に基づいて、距離vは以下の式(6)により算出される。
式(6)において、「U」及び「g」は定数である。従って、制御装置5は、貯水容器40内に貯留した水量Qと、貯水容器40内の水に作用する見かけの加速度Gv(=Av)と、に基づいてvを算出することができる。
次いで、制御装置5は、排気排水弁31の開放を許容するか否かを決定するために、貯水容器40内に滞留する水が、排水口41から排出可能な位置にあるか否かの判定を行う。排水口41は、車両右側の側面下端に設けられているため、燃料電池車両Sが右回りに旋回している時における判定は、「v>V」の判定式によって行うことができる。制御装置5は、この判定式に基づいて、貯水容器40内の水が排水口41から排出可能な位置にあるか否かの判定を行い、その判定結果に基づいて排気排水弁31の開閉を制御する。
具体的には、制御装置5は、「v>V」の判定式を満たす時は、排水口41が水面下にあるものと判定し、排気排水弁31の開放を許容する。これにより、排水口41から水のみを排出することができる。一方、制御装置5は、「v>V」の判定式を満たさない時は、排水口41が水面と同一高さ又は水面上にあるものと判定し、排気排水弁31の開放を禁止する。「v>V」の判定式を満たさない状態で排気排水弁31を開放すると、水は一応排出できるものの水素オフガスが混入したり、水素オフガスのみが排出されたりするためである。
次に、燃料電池車両Sが直進と旋回の複合運動を行う場合の制御について説明する。かかる場合には、制御装置5は、加速度センサ6で検出される直線方向の加速度(加速度Au)及び遠心力方向の加速度(横加速度Av)の双方に基づいて、前記した判定式(「u>Ua」及び「v>V」)を満たすか否かの判定を行う。そして、制御装置5は、2つの判定式の双方を満たす場合にのみ排気排水弁31の開放を許容し、いずれか1つでも満たさない場合には、排気排水弁31の開放を禁止する。
続いて、図6のフローチャートを用いて、上記各制御が行われる排気排水弁31の制御方法について説明する。
まず、制御装置5は、加速度センサ6を用いて、燃料電池車両S(貯水容器40)に発生する直線方向の加速度(加速度Au)及び遠心力方向の加速度(横加速度Av)を検出する(加速度検出工程:S1)。
次いで、制御装置5は、燃料電池車両Sが直線方向に加速している場合に、燃料電池2の発電量に基づいて推定した貯水容器40内の水量Qと、加速度検出工程S1で検出した加速度Auと、に基づいて、「u>Ua」の判定式を満たすか否かの判定を行う。また、制御装置5は、右旋回している場合に、推定した水量Qと、加速度検出工程S1で検出した横加速度Avと、に基づいて、「v>V」の判定式を満たすか否かの判定を行う(水位判定工程:S2)。これらの判定は、前記したように、貯水容器40内の水が排水口41から排出可能な位置にあるか否か(すなわち排水口41が水面下に隠れているか否か)の判定を意味する。なお、制御装置5は、加速度Auが零の場合には「u>Ua」の判定を行わず、横加速度Avが零の場合には「v>V」の判定を行わないものとする。
次いで、制御装置5は、水位判定工程S2において、加速度Auに基づく判定及び横加速度Avに基づく判定の双方を行った場合には、これらの双方の判定式を満たす場合にのみ排気排水弁31の開放を許容して貯水容器40から水のみを排出する(弁開放工程:S3a)。一方、制御装置5は、いずれかの判定式を満たさない場合には、排気排水弁31の開放を禁止する(弁閉鎖工程:S3b)。なお、制御装置5は、加速度Auが零の場合には、横加速度Avに基づく判定のみを行っているため、この判定式を満たせば排気排水弁31の開放を許容し(弁開放工程:S3a)、満たさなければ排気排水弁31の開放を禁止する(弁閉鎖工程:S3b)。同様に、横加速度Avが零の場合には、加速度Auに基づく判定のみを行っているため、この判定式を満たせば排気排水弁31の開放を許容し(弁開放工程:S3a)、満たさなければ排気排水弁31の開放を禁止する(弁閉鎖工程:S3b)。弁開放工程S3a及び弁閉鎖工程S3bは、本発明における弁制御工程の一実施形態を構成する。
以上説明した実施形態に係る燃料電池システム1においては、加速度に基づく慣性力の発生によって水が貯水容器40内で移動している時に、加速度センサ6によって加速度を検出し、これに基づいて水が排水口41から排出可能な位置にあるか否かを判定し、その結果に対応して排気排水弁31の開閉制御を行う。具体的には、排出口41が水面下に隠れているか否かを判定し、水面下に隠れていないときには排気排水弁31の開放を禁止する。これにより、排水へのガスの混入を抑制することができ、パージ動作において、意図しないガスの排出を抑制することができる。従って、燃料電池車両Sの燃料消費率を向上させることができるとともに、排水制御誤差の低減を図ることができ、目標量の排水を排出することができる。
また、以上説明した実施形態に係る燃料電池システム1においては、排水口41を貯水容器40の側面に設けているので、貯水容器40からの水の排出流路である排気排水流路25及び排気排水弁31を、貯水容器40の下方でなく側方に配置することができる。従って、貯水容器40と排気排水弁31の搭載スペースの高さを低くすることができ、燃料電池車両Sの低床化への対応が容易となる。
また、以上説明した実施形態に係る燃料電池システム1においては、燃料電池車両Sに発生する直線方向の加速度と遠心力方向の加速度との双方に基づいて判定を行っているので、直線運動と旋回運動の複合運動を行っている場合にも、簡易な判定式で水が排出可能か否かを判定することができる。
なお、以上の実施形態においては、燃料電池車両Sが加速した場合の排気排水弁制御について説明したが、燃料電池車両Sが減速した場合においても同様の排気排水弁制御を行うことができる。
また、以上の実施形態においては、排水口41を車両右側の側面下端に設け、燃料電池車両Sを右旋回させた場合の排気排水弁制御について説明したが、排水口41を車両左側の側面下端に設け、燃料電池車両Sを左旋回させた場合においても同様の排気排水弁制御を行うことができる。
また、以上の実施形態においては、貯水容器40の底面を水平としていたが、貯水容器40の形状は種々改変可能である。例えば、矩形の底面でなく円形又は楕円形の底面や、多角形の底面であってもよい。また、底面に段差や傾斜が設けられていてもよい。このように貯水容器の形状を種々改変しても、排出口が水面の下に隠れるか否かを判定するための判定式を適切に設定することにより、同様の判定を行うことが可能である。よって、前記実施形態と同様に排水へのガスの混入を抑制することができる。
また、以上の実施形態においては、気液分離器30の下流に排気と排水を一体で行う排気排水弁31を設けた構成を採用したが、気液分離器30で回収した水分を外部に排出する排水弁と、循環流路23内のガスを外部に排出するための排気弁と、を別々に設け、制御装置5で排水弁及び排気弁を別々に制御し、排水弁の制御に上記実施形態の制御を適用することができる。かかる場合においても、前記実施形態と同様に排水へのガスの混入が抑制され、排水制御誤差の低減を図ることができるとともに、意図しないガスの排出を抑制することができる。
また、以上の実施形態においては、本発明に係る燃料電池システムを燃料電池車両に搭載した例を示したが、燃料電池車両以外の各種移動体(例えばロボット、船舶、航空機、電車等)に本発明に係る燃料電池システムを搭載することもできる。また、本発明に係る燃料電池システムを、建物(例えば住宅、ビル、工場等)用の発電設備として用いられる定置用発電システムに適用してもよい。
1…燃料電池システム、2…燃料電池、5…制御装置(制御手段、水量推定手段)、6…加速度センサ(加速度検出手段)、30…気液分離器、31…排気排水弁(排出弁)、40…貯水容器(貯水部)、41…排水口、Au…加速度(直線方向の加速度)、Av…横加速度(遠心力方向の加速度)、S…燃料電池車両(移動体)。
Claims (12)
- 燃料電池と、前記燃料電池から排出される水を貯留する貯水部と、前記貯水部に設けられた排水口の下流に配設される排出弁と、前記排出弁を制御する制御手段と、を備える燃料電池システムにおいて、
前記貯水部の加速度を検出する加速度検出手段を備え、
前記制御手段は、前記加速度検出手段により検出された前記貯水部の加速度に基づいて前記貯水部内の水が前記排水口から排出可能な位置にあるか否かの判定を行うとともに、前記判定の結果に基づいて前記排出弁の開閉を制御するものである、
燃料電池システム。 - 前記制御手段は、前記貯水部の加速度に基づいて、前記排出口が水面下に隠れているか否かの判定を行うとともに、前記排出口が水面下に隠れているときには前記排出弁の開放を許容し、前記排出口が水面下に隠れていないときには前記排出弁の開放を禁止するものである、
請求項1に記載の燃料電池システム。 - 前記排出口は、前記貯水部の側面に設けられるものである、
請求項1又は2に記載の燃料電池システム。 - 前記貯水部は、前記燃料電池から排出される燃料オフガスから水を分離する気液分離器に設けられる貯水容器である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料電池システム。 - 前記排出弁は、前記貯水部内の水及び燃料オフガスの排出を行う排気排水弁である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料電池システム。 - 移動体に搭載される燃料電池システムであって、
前記加速度検出手段は、前記移動体の直線運動及び/又は旋回運動に伴って発生する前記貯水部の加速度を検出するものである、
請求項1から5のいずれか一項に記載の燃料電池システム。 - 前記加速度検出手段は、前記移動体の直線運動に伴って発生する直線方向の加速度を検出し、
前記制御手段は、前記直線方向の加速度に基づいて前記貯水部内の水が前記排水口から排出可能な位置にあるか否かの判定を行うとともに、前記判定の結果に基づいて前記排出弁の開閉を制御するものである、
請求項6に記載の燃料電池システム。 - 前記加速度検出手段は、前記移動体の旋回運動に伴って発生する遠心力方向の加速度を検出し、
前記制御手段は、前記遠心力方向の加速度に基づいて前記貯水部内の水が前記排水口から排出可能な位置にあるか否かの判定を行うとともに、前記判定の結果に基づいて前記排出弁の開閉を制御するものである、
請求項6に記載の燃料電池システム。 - 前記加速度検出手段は、前記移動体の直線運動及び旋回運動に伴って発生する直線方向及び遠心力方向の加速度を検出し、
前記制御手段は、前記直線方向及び遠心力方向の加速度に基づいて前記貯水部内の水が前記排水口から排出可能な位置にあるか否かの判定を行うとともに、前記判定の結果に基づいて前記排出弁の開閉を制御するものである、
請求項6に記載の燃料電池システム。 - 前記燃料電池の発電量に基づいて前記貯水部に貯留される水量を推定する水量推定手段を備え、
前記制御手段は、前記加速度検出手段により検出された前記貯水部の加速度と、前記水量推定手段により推定された水量と、に基づいて前記貯水部内の水が前記排水口から排出可能な位置にあるか否かの判定を行うとともに、前記判定の結果に基づいて前記排出弁の開閉を制御するものである、
請求項1から9の何れか一項に記載の燃料電池システム。 - 燃料電池と、前記燃料電池から排出される水を貯留する貯水部と、前記貯水部に設けられた排水口の下流に配設される排出弁と、を備える燃料電池システムにおける排出弁の制御方法であって、
前記貯水部の加速度を検出する加速度検出工程と、
前記加速度検出工程において検出された加速度に基づいて、前記貯水部内の水が前記排水口から排出可能な位置にあるか否かの判定を行う水位判定工程と、
前記水位判定工程における判定の結果に基づいて前記排出弁の開閉を制御する弁制御工程と、を備える、
排出弁の制御方法。 - 移動体に搭載される燃料電池システムにおける排出弁の制御方法であって、
前記加速度検出工程では、前記移動体の直線運動及び/又は旋回運動に伴って発生する前記貯水部の加速度を検出する、
請求項10に記載の排出弁の制御方法。
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