JP2008261096A - アンカー金具、ａｌｃパネルおよびａｌｃパネルの取付構造 - Google Patents

Abstract

【課題】補強鉄筋マットの移動や、梁や柱の撓みなどによって取付位置がずれても、構造物の強度を低下させることなく、適確にＡＬＣパネルを建築物躯体に取り付けることができるアンカー金具、ＡＬＣパネルおよびＡＬＣパネルの取付構造を提供すること。
【解決手段】ＡＬＣパネルに埋設され、一端にＴ字形の係止部（６）を有するパネル取付用ボルト（５）と共に使用してＡＬＣパネルを建築物躯体に固定するためのアンカー金具（１）であって、長さ方向に伸長する略長方形の開口部（３）が形成された室内側面を有する略筒状の本体を有し、開口部（３）は、係止部（６）を挿入可能に、かつ、係止部（６）を挿入した状態でパネル取付用ボルト（５）を周方向に回転させると係止部（６）によりパネル取付用ボルト（５）と前記本体とが係合するように、形成されている。
【選択図】図１

Description

本発明は、ＡＬＣパネルに埋設され、該ＡＬＣパネルを建築物躯体に固定するアンカー金具、該アンカー金具を用いたＡＬＣパネル、および該ＡＬＣパネルを用いたＡＬＣパネルの取付構造に関する。

従来、ＡＬＣパネルを建築物躯体に取り付けて外壁を構成する場合、施工現場にて、各ＡＬＣパネルは、次の手順で建築物躯体に取り付けられる。先ず、ＡＬＣパネルの小口面に長穴を形成し、長穴にアンカー金具を挿入する。次に、ＡＬＣパネルの室内側パネル面から、長穴と直交するボルト挿入穴を形成する。そして、アンカー金具にパネル取付用ボルトをネジ止めし、専用金物を用いて、パネル取付用ボルトを建築物躯体に取り付けている。

また、高耐力が必要とされる場合には、アンカー金具が補強鉄筋に固定された状態で埋設されたＡＬＣパネルが用いられる。このアンカー金具埋設ＡＬＣパネルを用いる場合、施工現場において、ＡＬＣパネルの室内側パネル面からアンカー金具に係合するボルトを挿入するためのボルト挿入穴を形成し、次いで、アンカー金具のナットにパネル取付用ボルトをネジ止めし、最後に、専用金物を用いてパネル取付用ボルトを建築物躯体に取り付けている。

このようにして埋設されるアンカー金具には、種々の形状のものがあるが、例えば、図５に示すように、水平部と垂直部を有する断面Ｌ字状の金物（１８）にロングナット（１９）を固定して一体化したアンカー金具や、図６の投影図に示すように、平鋼板製プレート（２０）の中心に起立するようにロングナット（１９）を固定して一体化したアンカー金具がある（例えば、特許文献１参照）。

このようなアンカー金具は、補強鉄筋を籠状に組み立てて構成される鉄筋籠の複数の補強鉄筋に溶接により固定され、当該鉄筋籠と一緒にＡＬＣパネルに埋設される。

従来のアンカー金具は、ロングナット（１９）を使用しているが、ロングナット（１９）自体が高価であるという問題がある。また、ロングナット（１９）をアンカー金具本体に固定する場合に溶接を行うため、アンカー金具の組立て作業が煩雑になり、手間を含めたアンカー金具のコストはさらに高価になるという問題がある。

また、従来のアンカー金具埋設ＡＬＣパネルは、建築物躯体に取り付けられる際に、鉄骨の梁や柱に予め設けられた定規アングルに、アンカー金具のロングナット（１９）とＺ型形状の専用金物とをパネル取付用ボルトで固定し、該専用金物を定規アングルに溶接して固定することが行われている。

一般に、鉄骨の梁や柱は、撓みや傾きにより設計通りの位置に施工されないケースが多く、実際の位置と設計上での位置とのズレは、数十ｍｍに及ぶ場合があった。このような場合、ロングナット（１９）の位置を変更することができないので、専用金物に設けられた長穴により該ズレを吸収している。

しかし、アンカー金具埋設ＡＬＣパネルでは、ＡＬＣパネル製造時に発生する補強鉄筋の位置の誤差も必ず発生するため、長穴のみでの吸収が困難な場合がある。このような想定以上の梁や柱のズレに対応するためには、補強鉄筋に溶接で固定されているアンカー金具の位置の誤差をも専用金物で吸収できるように、専用金物に設けられている長穴をさらに大きくする必要がある。

従って、このようなアンカー金具埋設ＡＬＣパネルを用いる場合には、長穴を大きくするために、専用金物を大型化するか、または、鉄骨の梁や柱の施工およびＡＬＣパネル製造における管理を強化する必要があり、コストが増加する。

さらに、アンカー金具のロングナットの位置に合わせて、建築物躯体へＡＬＣパネルの取付けを行う場合、専用金物の梁や柱への引っ掛り長さが、設計値より小さくなる場合があり、その結果、ＡＬＣパネルを用いた壁構造に強度上の問題が生じうる。

なお、特許文献２には、ロングナットより短い六角ナットを平坦面の反対側に使用した、ＡＬＣパネルに埋設されるアンカー金具が開示されている。かかるアンカー金具では、ロングナットを用いる構成と比較すれば、アンカー金具自体の製造コストやナットのアンカー金具への溶接、アンカー金具の鉄筋籠への取付け等における問題は低減されるが、ロングナットを使用したアンカー金具と同様に、位置ズレへの対策が必要となる。

また、特許文献３には、一端にネジ山と他端にＴ字型の頭部を有するパネル取付用ボルトと、該Ｔ字形の頭部を挿入可能な長方形の開口部が形成され、該開口部の縁部の裏面に突起を備えるアンカー金具と、が開示されている。該Ｔ字形の頭部を開口部に挿入し、Ｔ字形の頭部を回転させて、該頭部をアンカー金具の突起の間に係合させることにより、該頭部は回転不能となり、該アンカー金具とパネル取付用ボルトが係合する。この構成では、ある程度の位置ズレを許容できるなど施工性の改善が図られているが、相当程度以上の位置ズレに対しては、同様に対策が必要となる。
特開平０６−１７９２０７号公報 特開２００６−２７４６１２号公報 特開２００２−１４６９５７号公報

本発明の目的は、補強鉄筋マットの移動や、梁や柱の撓みなどによって取付位置がずれても、構造物の強度を低下させることなく、適確にＡＬＣパネルを建築物躯体に取り付けることができるアンカー金具、該アンカー金具を用いたＡＬＣパネル、および該ＡＬＣパネルを用いたＡＬＣパネルの取付構造を提供することにある。

本発明に係るアンカー金具は、ＡＬＣパネルに埋設され、一端にＴ字形の係止部を有するパネル取付用ボルトと共に使用してＡＬＣパネルを建築物躯体に固定するためのアンカー金具であって、長さ方向に伸長する略長方形の開口部が形成された室内側面を有する略筒状の本体を有し、前記開口部は、前記係止部を挿入可能に、かつ、前記係止部を挿入した状態で前記パネル取付用ボルトを周方向に回転させると前記係止部により前記パネル取付用ボルトと前記本体とが係合するように、形成されている。

前記開口部の幅が、前記パネル取付用ボルトの係止部の短辺より大きく、かつ、該係止部の長辺より短く形成されていることが好ましい。

また、前記室内側面の裏面で、前記開口部の周縁にローレット加工面が形成されていることが好ましい。

本発明に係るＡＬＣパネルは、複数の補強鉄筋が埋設され、本発明に係るアンカー金具が、２本以上の補強鉄筋に跨るように、該補強鉄筋に固定され、埋設されている。

また、前記略長方形の開口部の長さ方向が、ＡＬＣパネルの長さ方向と一致するように、アンカー金具が埋設されていることが好ましい。

本発明に係るＡＬＣパネルの取付構造では、上記のＡＬＣパネルの前記開口部に対応する任意の位置に、該ＡＬＣパネルの室内側パネル面から該開口部まで挿入穴が形成され、該挿入穴に挿入された前記パネル取付用ボルトの係止部が前記アンカー金具と係合し、該パネル取付用ボルトの他端側のネジ山が、建築物躯体に固定される部材にボルト締めにより固定されている。

本発明によれば、補強鉄筋マットの移動や、鉄骨梁や柱の撓みなどによって、ＡＬＣパネルの取付位置がずれた場合でも、該位置ズレがアンカー金具の開口部の長さ方向の許容範囲にあれば、従来通りの施工性と高耐力を確保したまま、位置ズレを吸収して、使い勝手よく、ＡＬＣパネルを建築物躯体に取り付けることができるため、コスト面および施工面において、ＡＬＣパネルを用いた建築物の外壁の施工に大きく貢献しうる。

以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図１は、本発明のＡＬＣパネルの取付構造の一実施形態を示す断面図である。図２は、本発明のアンカー金具の一実施形態を示す三面図である。図３は、図２のアンカー金具の斜視図である。図４は、アンカー金具に連結されるパネル取付用ボルトを示す三面図である。

［アンカー金具］
先ず、アンカー金具について説明する。一実施形態におけるアンカー金具（１）は、断面長方形の筒状の本体からなり、断面の枠形状が２３×４０ｍｍ、枠の肉厚が２．３ｍｍ、当該金具の長さが１５０ｍｍである。なお、本体の形状はこれに限られず、断面円形や断面半円の筒状の形態を採ることもでき、また、室外側に配される面を省略して、金属板を屈曲させて断面コ字形状に形成した形態を採ることもできる。本明細書では、これらの形状を総称して略筒状という。

アンカー金具（１）の室内側には平面状のボルト取付面（２）が形成される。なお、ボルト取付面（２）は平面であることが好ましいが、パネル取付用ボルト（５）と係合可能であれば、湾曲面であってもよい。

一実施形態では、ボルト取付面（２）の幅方向中央には、１２×９０ｍｍの長方形の開口部（３）が形成されている。この開口部（３）もパネル取付用ボルト（５）の取付位置が長さ方向に移動できればよく、長さ方向の端部が円形状に加工してあってもよい。

さらに、ボルト取付面（２）の裏面の開口部（３）の周縁には、ローレット加工面（４）が形成されている。ローレット加工は周知の手段を採りうる。一実施形態では、ローレット加工面（４）の溝の深さは約１ｍｍとされている。このローレット加工面（４）には、アンカー金具（１）の開口部（３）に挿入されるパネル取付用ボルト（５）の係止部（６）が接触し、パネル取付用ボルト（５）のアンカー金具（１）に対する回転が抑止される。

［アンカー金具埋設ＡＬＣパネル]
次に、アンカー金具（１）を補強鉄筋（７）と共にＡＬＣ母材に埋設して、ＡＬＣパネルを製造する方法について説明する。

複数の補強鉄筋（７）を、長手方向および幅方向に交差するように並べ、交差部を溶接することにより格子状の鉄筋マットを製作し、２枚の鉄筋マットを、所定の間隔を置いて並行させた状態でスペーサを用いて連結して、鉄筋籠を作製する。

この際、先ず、アンカー金具（１）のボルト取付け面側と反対側の面（室外側面）が、ＡＬＣパネルの幅方向に伸びる室外側の２本の補強鉄筋（９）に当接して跨るように、アンカー金具（１）を配置する。次いで、該アンカー金具（１）と補強鉄筋（９）との当接部を溶接し、アンカー金具（１）を補強鉄筋（９）に固定する。

一実施形態では、補強鉄筋（９）同士の間隔は、１１０ｍｍとし、アンカー金具（１）が上下側に２０ｍｍずつ突出するようにして固定する。また、アンカー金具（１）の短辺方向端部（１０）およびボルト取付面（室内側面）に設けられた長方形の開口部（３）には、それぞれの形状に合わせて発泡スチロールを挿入しておき、後述するＡＬＣスラリーがアンカー金具（１）の内部へ流れ込むことを防止する。

その後、型枠内にアンカー金具（１）が固定された鉄筋籠を、複数セットした後、ＡＬＣスラリーを注入して、アンカー金具（１）が固定された補強鉄筋マットをＡＬＣ母材に埋設する。ＡＬＣ母材が半硬化してから、ＡＬＣ母材を所定の厚さに切断し、さらに、オートクレーブ養生することにより、図１に示すようなＡＬＣパネルを得る。アンカー金具（１）に挿入した発泡スチロールは、前述のオートクレーブ養生の間に溶解し、アンカー金具（１）の内部には空洞（１２）が形成される。

なお、必要に応じて、横方向の位置ズレを主に吸収する必要がある場合に用いられるＡＬＣパネルでは、アンカー金具（１）を、ＡＬＣパネルの幅方向に沿って配置するように埋設してもよい。この場合、アンカー金具（１）をＡＬＣパネルの長さ方向に沿って配置された室外側の２本の補強鉄筋に跨るように固定すればよい。

[パネル取付用ボルト]
アンカー金具（１）と共に使用されるパネル取付用ボルト（５）について説明する。パネル取付用ボルト（５）は、一端にＴ字形の係止部（６）が設けられ、他端部（１４）にネジ山が形成されている。一実施形態において、係止部（６）は、軸方向から見て１０×２２ｍｍの長方形の端面を有する。係止部（６）の軸方向長さは、１５ｍｍである。パネル取付用ボルト（５）の軸部の外径は、φ１２ｍｍである。

すなわち、アンカー金具（１）の開口部（３）の幅は、パネル取付用ボルト（５）の係止部（６）の短辺より大きくなるように形成されており、一方、開口部（３）の幅は、係止部（６）の長辺より短く形成されていることになる。このように、アンカー金具（１）の開口部（３）とパネル取付用ボルト（５）の係止部（６）の寸法関係を規定することにより、パネル取付用ボルト（５）の係止部（６）は、アンカー金具（１）の開口部（３）に、開口部（３）の長さ方向と係止部（６）の端面の長さ方向を一致させて、挿入可能となる。また、係止部（６）を挿入後、パネル取付用ボルト（５）の軸を中心に周方向に９０°回転させることにより、開口部（３）の幅方向と係止部（６）の長手方向が一致して、アンカー金具（１）にパネル取付用ボルト（５）の係止部（６）が係止し、該ボルト（５）がアンカー金具（１）から抜けないようになる。

［ＡＬＣパネルの取り付け］
アンカー金具（１）が埋設されたＡＬＣパネルを建築物躯体に取り付ける手段について説明する。

以上のように作製されたＡＬＣパネルに対して、先ず、室内側のパネル面から内部に備えられたアンカー金具（１）に達するまで、φ２４ｍｍのパネル取付用ボルト挿入穴（１３）を形成する（図１参照）。すると、パネル取付用ボルト（５）を挿入するためのアンカー金具（１）の開口部（３）が露出する。次いで、パネル取付用ボルト（５）を、ボルト挿入穴（１３）を通じて、該ボルト（５）の係止部（６）がアンカー金具（１）の内側に入るように、長方形の開口部（３）に挿入する。挿入後、パネル取付用ボルト（５）を軸中心に９０°回転させ、パネル取付用ボルト（５）の係止部（６）を、ローレット加工面（４）に引っ掛ける。より具体的には、パネル取付用ボルト（５）を９０°回転させた状態でボルトを抜き取る方向に移動させようとすると、パネル取付用ボルト（５）の係止部（６）がアンカー金具（１）のローレット加工面（４）に引っ掛かり、パネル取付用ボルト（５）とアンカー金具（１）が係合する。

その後、パネル取付用ボルト（５）の他端部（１４）に、専用金物（１５）を通して、ナット（１６）を取り付けることにより、ＡＬＣパネルを鉄骨製の建築物躯体に固定することができる。

この際、建築物躯体である梁や柱の撓みなどにより、ＡＬＣパネルの取付位置が、実際の位置と設計上での位置とで、長さ方向に大きくずれた場合（例えば、数十ｍｍ程度）がある。しかし、本実施形態のアンカー金具（１）には長尺状の開口部（３）が形成されているため、パネル取付用ボルト（５）の係止部（６）を確実に挿入することができる。また、専用金物（１５）の梁や柱への引っ掛り長さが、設計値より小さくなることがなく、構造物の強度を低下させることなく的確に建築物躯体にＡＬＣパネルを取り付けることができる。

かかる位置ズレの吸収方法には、予め位置ズレに基づいて、ＡＬＣパネルにパネル取付用ボルト（５）用の挿入穴（１３）の形成位置を調整する方法や、挿入穴（１３）をやや大きめに形成して、その範囲で、パネル取付用ボルト（５）の取付位置をアンカー金具（１）の開口部（３）の長さ方向に移動させて調整する方法がある。また、開口部（３）をより長くすることで、位置ズレを吸収するようにしてもよい。

さらに、パネル取付用ボルト（５）は、アンカー金具（１）のローレット加工面（４）に引っ掛けられているので、ナット（１６）の締付け時には、空回りを防止することができ、ボルト取付作業が容易である。その一方で、ローレット加工面（４）と係止部（６）とは接触しているだけであるので、パネル取付用ボルト（５）の位置の変更は容易である。従って、施工現場でのＡＬＣパネルの取付作業が非常に良好となる。

本発明のＡＬＣパネルの一実施形態を建築物躯体に取り付けた形態を示す断面図である。 本発明のアンカー金具の一実施形態を示す三面図である。 図２のアンカー金具を示す斜視図である。 パネル取付用ボルトを示す三面図である。 従来のＡＬＣパネル用のアンカー金具を示す三面図である。 従来のＡＬＣパネル用のアンカー金具を示す三面図である。

符号の説明

１ アンカー金具
２ ボルト取付面
３ 開口部
４ ローレット加工面
５ パネル取付用ボルト
６ 係止部
７ 補強鉄筋
９ 補強鉄筋
１０ 短辺方向端部
１２ 空洞
１３ パネル取付用ボルト挿入穴
１４ 他端部
１５ 専用金物
１６ ナット
１８ 金物
１９ ロングナット
２０ 平鋼板製プレート

Claims (6)

1. ＡＬＣパネルに埋設され、一端にＴ字形の係止部を有するパネル取付用ボルトと共に使用してＡＬＣパネルを建築物躯体に固定するためのアンカー金具であって、
   長さ方向に伸長する略長方形の開口部が形成された室内側面を有する略筒状の本体を有し、
   前記開口部は、前記係止部を挿入可能に、かつ、前記係止部を挿入した状態で前記パネル取付用ボルトを周方向に回転させると前記係止部により前記パネル取付用ボルトと前記本体とが係合するように、形成されているアンカー金具。
2. 前記開口部の幅が、前記パネル取付用ボルトの係止部の短辺より大きく、かつ、該係止部の長辺より短く形成されている請求項１に記載のアンカー金具。
3. 前記室内側面の裏面で、前記開口部の周縁にローレット加工面が形成されている請求項１または２に記載のアンカー金具。
4. 複数の補強鉄筋が埋設され、請求項１〜３に記載のアンカー金具が、２本以上の補強鉄筋に跨るように、該補強鉄筋に固定され、埋設されているＡＬＣパネル。
5. 前記略長方形の開口部の長さ方向が、ＡＬＣパネルの長さ方向と一致するように、アンカー金具が埋設されている請求項４に記載のＡＬＣパネル。
6. 請求項４または５に記載のＡＬＣパネルの前記開口部に対応する任意の位置に、該ＡＬＣパネルの室内側パネル面から該開口部まで挿入穴が形成され、該挿入穴に挿入された前記パネル取付用ボルトの係止部が前記アンカー金具と係合し、該パネル取付用ボルトの他端側のネジ山が、建築物躯体に固定される部材にボルト締めにより固定されているＡＬＣパネルの取付構造。

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